宇宙開発利用部会(第87回) 議事録

1.日時

令和6年6月17日(月曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 宇宙基本計画工程表改訂に向けた重点事項について
  2. 宇宙利用拡大・産業振興に係る新事業促進部の活動報告
  3. 宇宙探査イノベーションハブの活動報告
  4. JAXAにおける宇宙分野の産業競争力強化に係る取組と今後の方向性について
  5. 宇宙戦略基金に対応したJAXAの体制について
  6. スターダストプログラム「衛星用の通信フルデジタル化技術開発」成果報告

4.出席者

委員

部会長 村山 裕三
部会長代理 田中 明子
臨時委員 秋山 文野
臨時委員 笠原 次郎
臨時委員 金井 宣茂
臨時委員 木村 真一
臨時委員 芝井 広
臨時委員 白井 恭一
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 髙橋 徳行        
臨時委員 松岡 彩子
臨時委員 村松 加奈子
臨時委員 山崎 直子
臨時委員 山室 真澄
臨時委員 米澤 千夏

文部科学省

研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課 課長補佐 上田 尚之
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 橋本 郁也

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 副理事長 石井 康夫
 理事 瀧口 太
 理事補佐 川崎 一義
 新事業促進部長 内木 悟
 宇宙探査イノベーションハブ ハブ長 船木 一幸
 経営企画部企画課長 笠原 希仁
 経営企画部宇宙戦略基金準備室 室長 上村 俊作
 第一宇宙技術部門 技術試験衛星9号機プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 深津 敦

5.議事録

【村山部会長】 それでは、定刻になりましたので第87回の宇宙開発利用部会を開催いたします。今回も前回同様オンラインでの開催となっております。委員の皆様には御多忙のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。まずは事務局から本日の会議に関する事務連絡をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局の竹上でございます。本日もよろしくお願いいたします。本日、宇宙開発利用部会の16名の委員のうち12名にご出席いただいております。次に、本日の資料ですが、議事次第に記載のとおりです。オンライン状況について音声がつながらない等の問題がございましたら事務局へメール、電話等でご連絡ください。事務局からの連絡は以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、早速議題の方に移りたいと思います。最初の議題は「宇宙基本計画工程表改訂に向けた重点事項について」です。先月31日、政府の宇宙開発戦略本部が開催され、年末に予定されている宇宙基本計画工程表の改訂に向けた重点事項が決定されております。本日は、まずはそのポイントについて事務局より簡単に紹介いただきます。それでは、資料の説明をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局でございます。お手元の資料87の1-1と1-2(本文)がありますが、本日は1-1の方を使って説明したいと思います。御案内のとおり、総理を本部長とし、全閣僚を構成員とする宇宙開発戦略本部、これが大体、年に最近は2回ずつ、この5月又は6月のタイミングと、12月のタイミングの2回開催され、12月は工程表の改訂でございますが、この5月6月のタイミングでは、昨年は基本計画の閣議決定がございましたのでこの時期には作っていなかったのですが、2年ぶりに、工程表改訂に向けた今後の重点事項を政府全体として取りまとめるというアクションを、今回政府で行っておりまして、既に公表済みの資料でございますが、この部会の場でも簡単にご報告させていただければと思います。
 この資料にあるように、工程表を進めていく、今後改訂していく上での重要なものとして、基本計画の4つの柱に沿って取組を整理しているところです。もちろん工程表に書かれた取組は、本文の最後のところにも書いていますように、全てやっていくわけですが、その中で重要視していくものが記載事項となります。
文科省関係でいうと、1の宇宙安全保障の確保のところは、主な取組として防衛省の取組であるとか、準天頂衛星、あるいは情報収集衛星の今後の開発方針が記載されているところでございまして、2からが主に文科省関係ということになります。国土強靭化・地球規模課題への対応とイノベーションの実現ということで、まず一つ目のボツ、これは昨年度末、この3月に大臣級のタスクフォースがございまして、そこで決定された事項ですが、この令和6年度からの3年間を、民間衛星の活用拡大期間という位置付けで、衛星データ利用の促進を各省連携でしっかり進めていくということが明記されております。また、二つ目のポツ、商業衛星コンステレーション構築の早期実現に向けた民間企業による技術開発ということで、これは主に経産省関係の基金を中心に実施する方針が記載されているところでございます。三つ目のポツが、この宇宙開発利用部会でも約1年間ご審議いただいた内容でございますが、民間主体による高頻度の3次元観測を可能とする高精細な小型光学衛星による観測システム技術の高度化、高度計ライダー衛星の開発、高出力なレーザ技術を活用した更に革新的なライダー衛星の実現に向けた技術開発ということで、先日御議論・確認いただいた次期光学事業構想の内容をしっかりやっていくということを、一部は基金も含めますが、こうした内容を記載しております。また、打上げ日が近付いてまいりましたが、2024年度中に打ち上げるALOS-4の運用を開始するということ。一つ飛びまして最後のポツ、GOSAT-GWも2024年度の打上げに向けて開発していくといったことを重点事項として記載しております。
 また、3ポツ、宇宙科学・探査における新たな知と産業の創造。こちらはほぼ文科省の取組で構成されておりますが、一つ目のポツ、アルテミス計画に参画し、日本人宇宙飛行士による2回の月面着陸の実現を目指す。有人与圧ローバの開発を推進する。また、日本人宇宙飛行士による月面着陸については2020年代後半までの実現を目指すということ。二つ目のポツですが、MMXの探査機を2026年度に打ち上げるべく開発をしっかりと進めていくということ。三つ目のポツですが、今後のHTV-X1号機、2号機、3号機の打上げに向けてしっかりと開発・運用を行って、現行のISSに安定的に物資補給を行うということ。また、2025年以降、このISS運用延長に係る運用経費あるいは我が国の分担及び履行方法についてしっかりとISS関係各局と協議を行って、その方法の実現に向けた開発を進めていくといった内容が記載されています。最後のポツ、ISS後のポストISSに向けて、こちらも先般基金の実施方針のところでテーマ化していただきましたが、物資補給システムあるいは自律飛行型モジュールシステム、こうした民間主体での開発・実証に着手するとともに、当然ながら関係国・関係機関との調整についても並行して進めていくといった方針を記載しております。
 最後に、こちらも文科省が重要な役割を持ちます総合的基盤の強化でございます。H3ロケットの高度化、打上げの高頻度化、そしてイプシロンSロケットの2024年度下半期の実証機打上げ。さらには、次世代の宇宙輸送技術の研究開発、民間事業者によるロケット開発、コンポーネント、あるいは地上系設備等に関する研究開発。これを宇宙戦略基金あるいは一部SBIR基金を使ってしっかりと推進していくということ。また、こちらは内閣府の担当内容になりますが、新たな宇宙輸送形態を可能とするために、宇宙活動法の改正を視野に、年度内に制度の見直しの考え方を内閣府で取りまとめるという新しい方針が打ち出されているところでございます。また、一つ飛ばしまして、スペースデブリの低減・除去に資する技術開発、あるいはこうしたものの国際的な規範作りに率先して取り組むということ。また、予算の面では、SBIRあるいはいわゆるK Proと呼ばれるプログラム、宇宙戦略基金等を活用して民間企業、大学等を支援するということ。さらにこの宇宙戦略基金につきましては、昨年の経済対策の閣議決定で方針が既に示されておりますが、速やかに総額1兆円規模の支援を目指すということをここにも記載させていただくとともに、「併せて」のところですが政府によるアンカーテナンシーも確保して、民間企業の事業展開の好循環を政府全体で実現していくということも記載されております。また、これらを全て実現していく上で、JAXAの体制強化、あるいは本日議論を頂きますが既存事業の再編・強化、人的資源の拡充・強化にも取り組んでいくということ。また、情報発信の面でEXPO2025 大阪・関西万博の機会も捉えて、宇宙開発利用の意義、成果の価値と重要性について情報発信を行うこと。こうしたことを重点事項として取りまとめておりまして、今後これを踏まえまして、文科省としても関係府省と連携しながら取組の検討、あるいは宇宙戦略基金に関しては公募の着実な実施、さらには交付金も含めた来年度の概算要求といったことにしっかりとつなげていこうと考えております。説明としては以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、ただ今の説明に対して御意見、御質問がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。我々が議論していた部分で御存じだとは思うのですが、確認も込めての質問でも結構ですので、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。大体我々が把握しているポイントだと思いますので、いいかと思います。それでは、次の議題に移らせていただきたいと思います。
 
【竹上企画官(事務局)】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 ここからの議題4つはいずれもJAXAにおける宇宙分野の産業競争力強化の取組に関する話題です。御案内のとおりJAXAには既に新事業促進部による様々な民間との共創プログラム、宇宙探査イノベーションハブにおける民間企業参入型の技術開発等、産業振興のためのプログラムが複数存在し、成果を上げてきています。そこに今回宇宙戦略基金という新たな枠組みが加わったことで、産業競争力強化の観点からのJAXAの役割はますます重要になってきております。本日は、これは例年報告いただいている内容ですが、新事業促進部と探査ハブからそれぞれの活動状況についてまずはご報告いただきたいと思います。一旦それぞれ質疑応答を行った後、こうした取組や宇宙戦略基金も加えたJAXAの産業競争力強化に係る取組全体の方向性について、JAXAから現在の検討状況を御報告いただき、本日は委員の皆様と自由に意見交換いただければと考えております。最後に、宇宙戦略基金事業の立ち上げに向けた準備状況についての報告も行っていただく予定です。それでは、まず7年目を迎えたJ-SPARCをはじめとする新事業促進部の活動報告についてです。それでは、新事業促進部の内木部長、資料の御説明をよろしくお願いいたします。
 
【内木部長(JAXA)】 新事業促進部の内木でございます。よろしくお願いいたします。それでは、ご説明させていただきます。まず、私は本年6月1日から新事業促進部の部長を拝命しております内木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、資料2に沿って御説明を申し上げます。
 宇宙利用拡大・産業振興に係る新事業促進部の取組についてでございます。1頁めくっていただきまして目次でございますが、本日は最初に全般的などういった取組をしているかという概要を見ていただいた上で、個別の施策としてJ-SPARC、それから出資、拡充プログラム、それから昨年度行っておりました衛星コンステレーションによるミッション共創プログラム等を中心に御説明をさせていただいと思っております。
 本件については昨年2月に宇宙開発利用部会に状況報告をさせていただいておりまして、それ以来ですので1年3カ月ほど間をおいてということで、その間の動きを中心に御説明をさせていただこうと思っております。次の頁をお願いいたします。
 こちらが新事業促進部も含め国の政策とも連携してやらせていただいております全般の取組の概要図でございますが、新しい企業が事業化をしていくという様々なフェーズに合わせまして、国の政策と相互補完をしながら様々な取組をさせていただいているという図でございまして、この中で本日は星印が付いているところの御説明を特にさせていただくというようなことでお話をさせていただければと思っております。次の頁をお願いいたします。
 まず、J-SPARCでございます。タイトルは共創型研究開発プログラムという名前が付いておりまして、こちらは図の真ん中辺りを見ていただきますとあるように、民間側の事業の発想、それから意欲があるものについて、JAXAの技術とタイアップすることで新しい事業を創出していくということを目指すものでございます。これをやることによって事業創出と、それからJAXA側も新しい発想でものを考えられる機会を頂くということで、これでいいますと1階部分と書いていますが、JAXAの事業の研究開発にも資するというようなことを狙っております。先ほど御紹介もあったように2018年からスタートしております。次の頁に概要、状況をご説明する図を作っておりますので、そちらの方に移っていただければと思います。
 図がビジーで大変恐縮ですが、2番の方を見ていただきますと分かるように、300件ほどの企業との対話をさせていただいておりまして、その中で48件に見込みがあるということで本格的に取り組もうとしてスタートしていったJ-SPARCの事業になります。非常に民間の意欲が高いということもあって、取り組んだもののほとんどが結果を出すべく継続しているという状況でございまして、その中で11件が実際に事業化を達成しております。それから13件が企業の独自の活動に移行しているということで、非常に高い率で事業化に向かって取組が進んでいるという状況でございます。その欄の下のグラフを見ていただきますと、JAXA側もこの事業を進めるために内部での研究開発のための資金を使っておりますが、それよりもかなり多くの資金を企業も拠出していただいているということで、企業の本気度が見て取れるかと思っております。
 その結果としまして、3番の欄にあるようにJAXAの研究開発についても大きく加速しておりますし、併せて民間の中で新たなコンソーシアムが四つできるであるとかということで実際の成果も出てきているという状況でございます。併せて、これは前回の宇宙開発利用部会の際にも御紹介をして関心を頂いておりますが、JAXAの人材の育成・輩出という観点でも、この事業を民間と一緒に成果に結び付けるためのプロデューサーというのをJAXAの中に置いておりまして、現在取り組んでいるのは8名でございますが累計20名のプロデューサーを輩出しているということと、これを実現するために技術的な観点で研究開発、連携をしている者もおりまして、これも200名を超える職員が携わっているということで、そういう意味では事業化に向けて取り組む人材の輩出というところにも貢献しているかと思っております。さらに波及効果として下の欄にございますが、この取組の結果として例えば文科省のSBIRに採択されるものが出てくるであるとか、それから企業の方で事業会社ができてくるであるとか、そういったことで波及効果も出ているというふうに考えてございます。
 次の頁に参りまして、この取組は先ほど申し上げたようにかなりの数のお問い合わせを頂きながら会話をさせていただいておりまして、J-SPARC活動に参画する企業も約200社ということで、かなり広がりが出てきているというふうに実績が出ております。以上がJ-SPARCでございます。
 次の頁に参りまして、次にJAXA出資についての御紹介になります。JAXAは主にシード・アーリー段階のビジネスを盛り上げるということで、出資というのを22年度に始めております。やはりシード・アーリー段階の企業が実際に成果を出していくためにはかなり大きな山を登らなければいけないというところですので、こういった出資という形でも支援をすることでベンチャーが育っていく環境をつくろうということで取り組ませていただいております。
 次の頁ですが、実際に法律で出資機能を認めていただいたのは21年度、その後いろいろな準備をさせていただいて実際に出資を開始したのは22年の4月ということになりますが、22年4月の募集からスタートしまして1件目が12月、左側にあります株式会社天地人に直接出資をさせていただきまして、続いて23年の4月には2件目の直接出資ということでSPACE WALKERに出資をさせていただいております。JAXAからの直接出資自体は自己収入を充ててやらせていただいていますので金額的には大した金額ではないのですが、JAXAが出資するということを呼び水としましてこういった企業が資金集めができるような状況をつくるというのが一つの成果になるかと思っておりまして、そういう意味では各社とも増資の成果が出ているということを確認できております。
 続きまして、次の頁は間接出資の取組になります。これは先週の金曜日に発表させていただいたものでございますが、新しく創設されるファンドに対してLPという形でJAXAが参画をして出資をしていくというような取組をさせていただいております。これは国立研究開発法人では初ということだというふうに認識しております。今回はFrontier Innovations 1号ファンドというものに出資をするということで、このファンドはシード・アーリーのファンドなのですが、宇宙事業とそれからそれ以外の事業とをバランスよく出資をするという方針で取り組まれているということが確認できておりまして、そういう意味では宇宙とそれ以外との連携波及効果というのも狙えるのではないかということで選ばせていただいているものでございます。こういった形で出資という新しい機能も頂きまして企業の取組に対して支援をしていくという事業もさせていただいております。
 続きまして次の頁に参りまして、こちらはJAXAと、それから衛星の実証機会を欲していただいている大学等の皆さんと、それから打ち上げの機会を提供できる企業とのJAXAを含めた三つの連携によって打上げ実証機会を作っていきましょうというような取組でございます。JAXA-SMASHと呼んでおりますが、JAXAの強み、それから大学等で小型衛星等をやっている強み、それからロケット開発企業などがお持ちの強みをうまく活用しまして、新しい宇宙実証機会を作っていくと。さらにそれによってロケット企業の打ち上げ機会も提供できることによってロケット産業の活性化も狙っていくというようなことを意図してやらせていただいております。22年の5月から募集をさせていただいておりまして、この右の下にありますように九工大の衛星を来年度打ち上げるための準備を進めるというところまで行っております。
 次の頁に参りまして、こちらはコンステレーションで革新的な衛星観測ミッションを生み出すために、民間と一緒にどういったことができるかという検討をするようなプログラムをやらせていただいておりました。22年からスタートしておりまして、コンステレーションというのはなかなか日本では進んでいなかったところもありまして、JAXAが開発してきている大型の衛星と、それから民間が意図している小型のコンステレーションというものをうまく組み合わせることで新しい価値を生み出すということはできないかということで、意欲のある企業と一緒に課題の発掘と、それに対する対応、方針の検討のようなことをさせていただいておりまして、昨年度末にはおよその検討結果をまとめるというところまで参りまして、今年度にはその成果を公表できるのではないかと思っております。それから、技術的な開発状況につきましては、この成果を活用してさらにSBIRのフェーズ3事業に採択されるというような結果に結び付いているというところでございます。
 それから、次に参りまして、その他でございますが、様々な民間、それから地域の連携であるとか、それから海外への進出の支援、それから成果活用等、様々な取組をさせていただいております。昨年度の具体的な成果の一つとしましては、H3のTF2に超小型の衛星の相乗り機会というものを調整・連携させていただきまして、結果的にH3で超小型の衛星の実証をする機会を作ることができたという取組もさせていただいております。
 次の頁が、JAXAベンチャーというベンチャーの新しい創出の支援等もさせていただいておりまして、昨年度は新しく2社の設立を支援することができまして、トータルで今13社のJAXAベンチャーの企業が活躍をしているという状況でございます。以上が新事業促進部の主な事業としての取組でございます。
 次の頁には参考・補足がございますが、文科省のSBIRフェーズ3、宇宙分野の運営支援というのも取り組ませていただいておりまして、こういった形でテーマに対する募集、選考、それから技術的な支援といったところのお手伝いというような仕事もさせていただいておりまして、こちらは先ほど言及のありました宇宙戦略基金のJAXAの資金配分機能を実現するためのステップとして新しい取組としてやらせていただいているということで、こういったものが次につながる活動につながっているかと思っております。以上、雑駁(ざっぱく)でございますが新事業促進部からの御報告とさせていただきます。ありがとうございました。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、ただ今の説明について御意見、御質問がありましたらお願いいたします。では、まず鈴木委員、お願いいたします。
 
【鈴木委員】 鈴木でございます。ご説明ありがとうございました。個人的にも興味があったのが頁8に記載される出資機能のうちFrontier Innovations 1号ファンドに対する出資の件です。やはり公的機関が直接投資先を決めて運用をマネジメントするとうまくいかなかったケースというものも多かったことに対して、今回民間と一緒に投資をしていくということで、新しい取組として成果が大きく期待できるのではないかと思っています。
 今回の投資対象が宇宙以外というお話もご説明いただいたのですが、宇宙というところが投資先になるがゆえに、ファンドの運用方針として一般的な運用と違うポイント、特徴等があれば、もう少し投資領域以外にどういったことがあるのかというのを教えていただきたいのが一つです。
 もう一つは、お答えいただけないかもしれないのですがJAXAのLPの出資の割合というのがどれくらいなのか。余り大き過ぎると、昔の公的資金で多くの企業に対して投資してうまくいったりうまくいかなかったりというところがあったかと思うのですが、その辺りの割合みたいなものも今後を占うのに大きな影響が出てくるかと思っており、その辺りを教えていただける範囲でお願いいたします。
 
【内木部長(JAXA)】 ご質問ありがとうございます。まず投資の割合につきましては、申し訳ございませんがやはり全体GPが別機関でございますので私どもからお話することはできないのですが、JAXAとしましては1億円を約束させていただいております。一気に1億ではないのですが、1億円という額はお約束させていただいておりまして、これをうまく活用して投資を進めていくということを考えてございます。
 それから特徴につきましては、基本的には宇宙への投資と、それから宇宙以外への投資というのをバランスよく進めるというのがこのファンドの特徴というふうに理解をしておりまして、そういう意味ではうまくそのシナジーを作っていくということを目指していきたいなというところでございます。特徴としまして、JAXAはこのファンドの中ではアンカーという扱いをしていただいておりまして、そういう意味で出資先の決定であるとか運営であるとかというところにもかなり支援をさせていただくということを意図しておりますので、そういったところで宇宙と宇宙以外も含めたシナジーを生むような投資というものをうまくできるようになればということでやっております。我々にとっても初めての取組でございますので、そういう意味でそうやって試行錯誤しながら、ということになりますが、そういった形で取り組んでいきたいと思っております。
 
【鈴木委員】 ありがとうございます。ぜひ今回の取組、いろんな学びもあると思いますので、全体に波及できるような成果が得られることを期待しています。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。他の方は御意見、御質問いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、また後ほど今後の計画のところでも質問できる機会があると思いますので、ここでは次に進めさせていただきます。
 
【内木部長(JAXA)】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 次は「宇宙探査イノベーションハブの活動報告 」についてです。探査ハブは活動開始から約10年になり、この間に200を超える非宇宙企業との共同研究等を通じ創出された技術の宇宙ミッションへの採用や、民間企業による新事業の立上げ等に貢献してきました。最近では月着陸小型実証機SLIMに搭載されたSORA-Qの例が記憶に新しいです。本日は探査ハブのこれまでの活動について10年間の活動の総括としてご報告いただきます。それでは、宇宙探査イノベーションハブの船木ハブ長、資料の説明をお願いいたします。
 
【船木ハブ長(JAXA)】 では、説明させていただきます。よろしくお願いいたします。活動報告ということで説明させていただきます。次の頁に目次がございますので、めくっていただけますでしょうか。部会長からご紹介いただきましたとおり10年間の活動ということで、事業概要、2に達成状況、それから3、4、5といったところで今日主にご紹介したいと思いますが研究コミュニティの広がり、それから成果ハイライトと説明した後に、今年度の活動計画といったところまでご紹介したいと思います。次の頁をお願いいたします。
 こちらには探査ハブの設立経緯から最近の動きまで事業概要を示しておりますが、詳細は割愛させていただきます。10年前にJSTからイノベーションハブの構築支援事業としてスタートさせていただきまして、2019年度からは運営費交付金の方で事業の方をさせていただいております。一貫しましてこの右下の図にあるように探査ハブはJAXA内のいろいろな研究部門と民間企業を中心とした民間の活動等を結びまして、共同研究によって探査活動、探査研究を実施してまいりました。次の頁をお願いいたします。
 探査ハブの活動のキーワードは、このスライドで真ん中ぐらいの状況というところにオープンイノベーションという言葉と、それから宇宙探査と社会実装に展開するDual Utilizationというキーワードを二つ記載してございますが、そのコンセプトは図の右下のような絵でいつも紹介させていただいております。探査ハブは真ん中のギアに相当しまして、右上の緑色の方は民間、企業あるいは大学といったいわゆる民間活動でして、こちらの社会課題の解決、産業競争力の向上と、それから左側のギアは青がJAXA、宇宙開発、宇宙探査の部分ですが、宇宙探査シナリオとミッションの実現、これらの双方をともに実現するというような研究活動を行ってまいりました。
 左下の方にこれまでの研究活動について、件数等のサマリー、先ほども部会長からもご紹介いただきましたが、特徴は達成状況の下の方で、参入企業のうち9割が非宇宙企業、これまで必ずしも宇宙あるいは探査あるいは衛星事業に携わってこなかった企業の皆様でして、非常に多くのニューカマーをこの共同研究として宇宙にインバイトしていくといったところに成功があります。次の頁に行っていただけますでしょうか。
 こちらの右上の方には、探査ハブの方で実施してまいりました月面での探査活動(探る)それから月面で作る、それから月面にものを建てる、そして住むといった四つの領域で様々な研究活動を実施していることが見て取れますが、左上の方に文字で記載しておりますように、これらの研究は地上の技術と、それから宇宙探査技術の共通項、シナジーの部分に注目しまして宇宙探査、月面で使える、その技術は地上でも光ったものであると。そうしたDual Utilization、共通項に注目して、そこにフォーカスして研究活動を進めてまいりました。
 左の方にはそのステップアップの状態、様々な研究のレベルがあるのですが、最終的には左図の上の方のように事業化あるいは宇宙探査適用というところで、そうしたゴールになるのですが、その多くの研究は一番下のアイディア型・チャレンジ型あるいは課題解決型というところで実施していただいておりまして、こちらはコミュニティの裾野を広げるという役割、それから探査技術の獲得と社会実装とを同時に実現するという課題設定型の研究での成果ということになります。
 この頁の右下の方にJAXAの研究資金と、それから企業の自己投資とを両方記載させていただいておりますが、共同研究に、共通して取り組むことによって、企業の自己投資も獲得しながら研究を展開してきたというところが探査ハブの研究の特徴になっております。次の頁に行っていただけるでしょうか。
 研究とコミュニティの広がりという意味では、探査ハブの中で実施するのは非常にある意味小規模な研究あるいは中規模な研究ですが、これらがこの左の図にあるようなスターダスト、ムーンショットといったような非常に大きな政府プログラムにつながっているところが一点。
 それから右の方ですが、先ほどJ-SPARCの御紹介等もありましたが、革新的将来宇宙輸送プログラムをはじめとして様々な他の制度との連携に成功しているというところがあると思います。右下の方ではSpace Food Sphereとの連携についても記載しておりますが、かなり将来になってしまうかもしれませんけれども宇宙の農業、食糧生産といったところも研究として真剣に扱っておりまして、これらがSpace Food Sphereの更に次の活動につながるといったような循環を作り出しているという、あるいはそういうところを目指しているということになります。次のスライドをお願いいたします。
 それから、まだここまで到達した研究課題は少ないのですが、右上の絵にあるような月面での初めてのこのプログラムからの参入が成功したSORA-Q(LEV-2)の例のように、いくつかの宇宙実証あるいは探査適用といったところもかなり10年間の活動を通して増えてきているということになります。
 右下の方には、来年度以降になりますがLUPEX(月極域探査機)に搭載予定の小型微量水分計の絵もお伝えしてございますが、こちらも宇宙探査で使える水分計であって、なおかつ地上の事業にも生きるような、半導体プロセスにも生きるような成果、いわゆるDual Utilizationの成果を着実に積み重ねてきているというところがこのスライドでご紹介したいところです。次の頁をお願いいたします。
 10年間の活動総括という意味では、丸1から丸4まで記載しておりますが、裾野の拡大、それからこれまで宇宙に携わってこなかった非宇宙企業の皆様、大きな会社もベンチャーの会社も多数参画いただいて、共に研究開発を実施してきたということ。それから丸3、宇宙実証が少しずつ増えてきておりまして、それからいくつかの研究活動についてはより上位のJAXAミッションですとか政府プログラムに接続しているということで、順調に成果が拡大しているというふうに考えております。また、丸4に記載してございますように民間企業等の宇宙参入意欲が非常に強い、高い、圧倒されるぐらい大きくなりつつあるというのを我々は感じておりまして、彼らと一緒にやることで継続的な成果が出てくるということで、JAXAの技術と民間の技術が融合してこうした宇宙探査の研究活動をするということが重要だということを認識しております。
 一方、課題もございます。丸1ですが、環境が大きく変化してきて、宇宙の参入プレーヤーが多様化、拡大している。一つひとつの研究を育てているだけでは全体としてのシステムができてこないということで、国際的なイノベーション競争も加速している中、新しいプレーヤーあるいはこれまでのプレーヤーを集約して、一つ二つ、ものになっていくシステムの開発をしていくというようなチャレンジが今後必要かと思っております。その次も同じことを申し上げておりますが、探査機器やインフラの開発までできるだけストレートにつながるような、システムの研究制度の工夫を今後していこうと思っております。
 次の8頁目が最後のスライドになります。今年度の研究活動という意味では、これまでどおり地上の革新的な技術を探査研究に応用することを基本としまして、月から始まる国際宇宙探査のニーズをより高く意識して、これらを段階的に実現するための共同研究に取り組むということで、現在RFIの募集等をしまして、7月に次の研究公募をスタートさせる予定です。持続的に皆さんがより成長しながら、そして新たなミッションあるいは事業を生んでいくというような循環をいかに作ることができるかというのを企業の皆様と対応しながら日々考えているところになります。私の方からの説明は以上になります。御質問や御意見を頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、御質問、御意見があればお願いいたします。いかがでしょうか。Dual Utilizationというのは非常に重要なコンセプトで、それを中心にやっておられるのは非常に結構なことだと思うのですが、いかがでしょうか。それでは、まず木村委員からお願いいたします。
 
【木村委員】 東京理科大学の木村でございます。ありがとうございます。探査イノベーションハブは我々東京理科大学としてもムーンショットであるとか、あるいはレタス栽培だとか、いろいろとご協力させていただいていて、非常に良い素晴らしい枠組みだと思っています。先ほど主査の方からありましたようにDual Utilizationというのは非常に重要で、我々のセンターでも重視しているポイントで、非常に素晴らしいなと思っています。宇宙分野でいうと例えば居住みたいなものを考えたときに、非常に広い分野で、しかも宇宙だけにとどまらずに生活関連であるとかそういうところまで含めて広く関係しているところに、日本はおそらく環境関連とか資源関連というところに非常に力を持っているはずだと思っていて、その辺の参入を促していく仕組みとして、このDual Utilizationというのは非常に重要なコンセプトだなと思っています。この後議論になると思いますが、例えば戦略ファンド等比較して考えた時に、どちらかというと戦略ファンドは戦略的に重点的に投下していく仕組みであるに対して、ニューカマーを広く導入していくという意味合いにおいて、戦略ファンドを含めた新しい体制の中でもすごく重要な役割を果たしていくのではないかと思っております。まずその辺が感想というところです。
 一つ確認をさせていただきたいところが、実はこのDual Utilizationであるからこそ、地上展開の部分であるとか、先ほどミッション化しなかった部分というのについて反省があったかと思うのですが、この両方についての距離感というのは非常に技術によってまちまちではないかなと思うのです。社内的にもそのどのくらいのレベルで地上実装していくかという距離感もありますし、それから、ミッションに対しても距離感が非常に難しいと。この辺のハンドリングについて何か工夫といいますか、何かその辺りについてお考えはありますでしょうか。
 
【船木ハブ長(JAXA)】 確かに企業あるいは分野によって非常に研究開発の時間スケールも違いますし、それから理科大とも共同研究を何件かさせていただいておりますが、ハビテーション、人の関わる研究開発というのは、やはり産業ですので現在地上で起きている研究開発でまずはものにして、これが将来宇宙でも使えるかもしれないと。ここはやはり“かもしれない”というところで押さえるのかなと思っております。
 我々が宇宙実証で力を入れているのはやはり基盤技術、共通技術系ということになります。例えばJAXAでは遅れがあると思うのですがAIを探査あるいは衛星系にぜひ導入したいと。こちらは比較的早い段階で衛星あるいは探査の実機に投入して、おそらくできるだけ早く一度実証して試験をするというところが求められてくると思います。なので、先生がおっしゃっていただいたことと同じなのですが、分野によってはまずは地上での技術を十分に温めていただいて、これをじっくりと宇宙探査へ持っていくと。それから、基盤技術として我々が今すぐにでも欲しいようなものについては、先ほども少し絵を示しましたが速やかに、全固体電池で宇宙実証をして、そこを突破口に開発基金につなげていくというようなところをやっていきたいと思っております。ありがとうございます。
 
【木村委員】 ありがとうございます。結構そこのところは裕度がある運用が必要なのかなというふうにいつも思っていまして、その辺りはぜひ考えていただけると有り難いなと思います。
 
【船木ハブ長(JAXA)】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。続きまして、笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 笠原でございます。ご説明どうもありがとうございます。非常に素晴らしい取組で、特にオープンイノベーションということで間口が極めて広くて敷居が低い形でいろんな非宇宙企業の方を巻き込みながら大切に育て上げていく、そういう仕組みを非常にうまく運用されているなというふうな印象を持ちました。今の木村先生とのお話とも非常に近いと思うのですが、やはりそういう間口が広くて本当に新しいことというのは、かなり小さい萌芽的な段階から支援をしなくてはいけなかったりしますし、また、そのキャラクターも多分非常に多様で、まるで人が皆さん違うように人を大切に育てて、ある人に関してはあっという間に月のSORA-Qのように実現すると。非常に柔軟に対応されていて、一つイメージとしてはまるで人が生まれたときにしっかり育てていくような、そういう重要な仕組みを作り上げていらっしゃるのだなというのは再度認識させていただきました。
 質問は、昨今の宇宙開発基金と非常に大きな盛り上がりの中で正にコアになるような取組をされているというふうな認識を持つものですので、ここにこそ非常に大きなリソースを割いていくべきだというふうな認識を持たせていただきまして、ハブ長にお聞きするべきなのか文科省の方にお聞きするべきなのか悩むところではあるのですが、どれほど今後この活動に対してより様々なリソースを、もちろんこれだけの分野を育てていくわけですので、そのような人材を投入しなくてはいけないでしょうし、先ほどの出資の話も多々ありましたし、そういう資金的な問題も、それから全体の組織的な問題もあると思うのですが、どういう御計画をお持ちなのか、今後の発展させ方をお聞きさせていただきたいなと思うのですが、いかがでしょうか。
 
【船木ハブ長(JAXA)】 私から申し上げられることは限られておりますし、おそらく今日の部会の趣旨は我々の活動もクリティカルに見ていただきながら今後どうあるべきか、というのを先生方に議論していただく、そういった議題がおそらくこの後あると思いますので、全体的な活動についてコメントするのは私からは控えさせていただこうと思います。ただ、探査ハブとしては先生がおっしゃっていただいたとおり企業を育てる。育てるというのは、彼らが地上では非常に光ったものを持っているのですが、これを一緒に宇宙で展開するにはどうすればよいかというところを一緒に考え、伴走するといったところが非常に重要だと思っておりまして、そういった活動を、ある部分は先ほど木村先生からもご指摘いただいたとおり民間事業の活性化という観点から。別の視点では、まずはではなくて宇宙にできるだけ早く近付いていくようなやり方。これらの活動を、これは第1段階あるいはインキュベーションの段階だと思いますので、こうした活動を加速するためにより大きなJAXA、戦略基金等の活動になるかと思っておりますので、後ほど議論していただければよいかと思います。よろしくお願いいたします。
 
【笠原委員】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。続きまして、山崎委員、お願いいたします。
 
【山崎委員】 ありがとうございます。10年間にわたった多々の取組をご説明くださいましてありがとうございました。おっしゃってくださったようにボトムアップの部分とこれから目指すトップダウンの部分と両方のバランスかとは思うのですが、質問はまず宇宙実証が全体10年の中で6件あったということですが、大体どれくらいの割合の皆さんが宇宙実証を目指されているのかと。そのうちどれくらいの割合の中の6件なのかということを教えてください。
 今後、技術戦略、それから後の議題にもありますように基金等も含めてトップダウンの方向も連携をされていくかなとは思うのですが、やはりこうした間口を広げるというボトムアップの大事な部分もあるかと思いますので、ぜひこの辺りのバランス、とても大切な点を常に推進してくださっていて本当に有り難いと思っております。よろしくお願いいたします。
 
【船木ハブ長(JAXA)】 バランスについてはいつも苦慮するところではあります。どのくらいの数が宇宙実証を目指しているのかというと、私から見て宇宙実証に進めるかというテーマは今日ご紹介した件も含めておそらく20件ぐらいかと思っています。全体が200件ぐらいなので、そのうちの10%ぐらいにもしかしたら宇宙で使えるかもしれないと思うものがございます。ただ、我々が全て投資や研究開発をしてあげて、あるいはサポートをし過ぎて、これが企業の成功につながったとしてもよくないと思うのですよね。我々はですのでいつも宇宙実証に進むテーマについてはある程度企業に投資してくださいと。それから企業御自身も開発にきちんと僭越(せんえつ)ながら参加してくださいという言い方で、企業の力と、それから企業のある意味資金面での力と、これらがそろった段階で宇宙実証に進むというふうに心掛けています。時間が掛かるプロセスなのですが、ここを一度パスしてしまえばより大きな研究活動あるいは事業活動に進んでいけるかと思っておりまして、ここはじっくりとご指摘いただいたバランスを取りながら進めてまいりたいと思っております。
 
【山崎委員】 ありがとうございます。こうしてやはり継続して取り組んでいただけることが本当に大切なことだなと思いました。
 
【船木ハブ長(JAXA)】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、髙橋委員、お願いいたします。
 
【髙橋委員】 委員の髙橋です。ご説明ありがとうございました。私は今回の御説明の中で大変共感した頁がございまして、7頁目の見えてきた課題の丸2なのですが「シーズを幅広く集める従来の研究制度では探査機器やインフラの開発まで結びつかないケースが多かった」。その下の2ポツ目にあるように「国際宇宙探査のニーズからのバックキャスト型研究の強化」これが非常に重要だという、そういう課題だと思うのですが、正に「我が意を得たり」という感じがしておりまして、やはりピンポイント技術だけではなくて、その先にある特に社会インフラですとかプラットフォーム、あるいはアプリケーションサービス等で、それぞれが国際社会の中で不可欠となるような存在になってくると。そういったものが特に求められていくのではないかというふうに思います。
 来年度から第5期の中長期目標が始まりますので、今策定中だと思いますが、ぜひJAXA全体でこのバックキャスト型研究の強化という観点で、インフラですとかプラットフォームといった社会に大きい影響力を与えるような観点というものが何かということのあるべき姿から、バックキャスト型の研究の強化ということをぜひJAXA全体で取り組んで第5期の中長期目標を策定していただきたいというふうに思っていますが、いかがでしょうか。
 
【船木ハブ長(JAXA)】 JAXA全体についてのイエスという回答は私からはできないのですが、後ほど副理事長含めて議論があると思いますので、その中で再度きっと御回答があると思います。私としては最後のこの頁、バックキャストして我々がやらなければいけないと思うところ、企業もそうだねといってくれるもの、そこに何社か集まってみんなで研究をするというのが大事だと思っておりまして、そういったプロセスをきちんと今年度から実施してまいりたいと思っております。大事なコメントをありがとうございました。
 
【髙橋委員】 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。それでは、船木さんは一度切らせていただきます。
 
【船木ハブ長(JAXA)】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 今いろいろ御意見が出まして、将来に関わる御意見が多かったのですが、これからそれについて御自由に発言いただければというふうに思います。まず産業競争力についてということなのですが、ただ今ご説明いただいた取組も含め、JAXAの宇宙分野における産業競争力強化の取組の今後について、JAXAの現状の検討状況をご紹介いただきます。ちょうど現在、来年度からの新たな第5期中長期目標、中長期計画が検討されているところでありますので、こうした重要な時期にあたって、皆様からは忌憚(きたん)のない御意見を頂きますよう、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、石井副理事長、御説明をお願いいたします。
 
【石井副理事長(JAXA)】 よろしくお願いします。それでは、まず資料の説明をさせていただきたいと思います。テーマは産業競争力強化に関わる取組の方向性ということで、今新事業促進部関係と、それから探査ハブ関係でご紹介しましたような活動、それ以外にも産業競争力強化、これは第4期の重要なテーマとして我々は取り組んできておりますので、さらに全体をご説明した上で、今後ということで、既に皆さんからいろんな御意見を頂いているところでございますが、ぜひ忌憚のない御意見を頂ければと考えております。次の頁をお願いします。
 目次です。繰り返しになる部分もございますが、新事業促進部、探査イノベーションハブの事例のお話も改めてご説明した後で、戦略基金とのシナジー、総合的に補完強化していく関係というのを構築していくということを考えておりますので、その辺をご紹介させていただきたいと思います。次の頁をお願いします。
 まず、JAXAにおける産業競争力強化に係る取組ということですが、状況としましては、第4期中長期に様々な支援メニューを立ち上げまして、細やかな支援ができる体制が整いつつあるというふうに認識しております。右側に先ほど新事業部で説明しましたJ-SPARC、それから宇宙探査イノベーションハブ、これに加えまして、これは研究開発部門が主体で行っておりますが、革新的衛星技術実証プログラムということで、イプシロンロケットを使ったコンポーネントとか部品、それから小型の衛星の実証プログラム。さらに、小型技術刷新衛星研究開発プログラムということで、これも研究開発部門が主体でございますが、小型の衛星の利用の拡大であるとか、小型の衛星の設計開発のシステム自体を刷新するというような共同研究のプログラム、それからJAXA-SMASHというのを新事業促進部の方でご説明させていただきましたが、産学官が連携して打上げを民間のロケットを使って行うというものも始めております。
 左側に文字で説明してございますが、こういった様々な事業コンセプトの検討、それから研究開発をJAXAと民間と共同で行ってきたという状況にございます。新事業促進部の方で行ってきたのは、主に事業者が事業意思を持ってJAXAにそれをどううまく進めたらよいかということを相談しはじめるところからスタートするというもの。探査イノベーションハブであれば宇宙探査、月面を主にターゲットとしておりましたが、その探査活動に必要な技術といったものをJAXAが示して、そこに対して民間企業からのRFI、RFPというプロセスを経て共同研究のテーマを選定するといった形で進めてきたもの、様々な形がございます。革新衛星技術実証プログラムも、小型の衛星であるとかコンポーネントを実証したいという民間事業者がそれを持ち込んで、打上げ機会はJAXAが提供し、共同で打上げを行うというような仕組みを持ってきております。
 それから三つ目にありますが事業化、事業者支援ということでJAXA発のベンチャーを育成するとか、それからシード・アーリーの企業に対してJAXAの技術を使った企業の支援をするための出資、こういったところを行ってまいりました。さらに四つ目に書いてございますが、戦略的かつ弾力的な資金供給機能の強化について昨年度末に法律改正も行われまして宇宙戦略基金が始まります。これが既に3000億円という補正予算を頂戴しまして、現在JAXAの方で基金の運用の準備中でございます。この次のセッションで私の方からこの準備状況についてもう少し具体的にご紹介させていただきます。
 第5期に向けてということなのですが、宇宙戦略基金が始まったということで、資金規模は非常に大きいものでございます。それに3府省からの22テーマというのが現在示されておりますが、かなり具体的なチャレンジが急加速して始まるという状況にあると考えております。こういった宇宙戦略基金を効果的に運用していくことが我々の重要な使命として加わったと思っております。JAXAもそもそも今までやってきました研究開発の活動、上の方でもお示ししました企業との共同の活動。こういったところを宇宙戦略基金との連動を強化させていく。説明の中でも探査ハブやJ-SPARCで扱っていたものがSBIRに採択されたり、宇宙基金のテーマの方に望めそうなものに育っているものがあったりというふうな御説明もさせていただいております。こういったところを強化するという観点で、既存の産業競争力強化に関わる取組、この右側の絵に書いてあるような取組、これについては現行のリソースも勘案しながら見直しを行おうというふうに考えております。現行のリソースもということは主に人員のことを申し上げておりまして、宇宙戦略基金では人件費も潤沢に頂戴いたしますので、人員の採用というのも行いますが、やはり今までこのJAXAでの研究開発、それから共同研究での事業の開拓、こういったことをやってきた人材が主体となってまず宇宙戦略基金を立ち上げるという状況を作っておりますので、やはり人材を育成しながら強化していくという状況においては現行の事業内容にも若干の制約も生じているという状況でございます。次の頁をお願いします。
 こちらはJAXAのやってまいりました産業競争力強化に向けた活動と、それから宇宙戦略基金とのシナジーというのをイメージとして表したものが図として上に書いてございます。これは横軸が時間でございまして、左から右に時間が流れていくとお考えください。縦軸はその主体を表しておりまして、ピンク色のところが民間や大学等が主体的に行って、独自にと書いておりますが活動が一定程度存在するものです。一番下の濃い青は、今までの政府・JAXAが宇宙の研究開発プロジェクトを進めてきたという活動を示しております。一番上に青い矢印がありまして、時間としては最初の頃が企画・芽出し、次が研究開発や共創活動、さらに次が技術の実証、事業の実装という段階を経まして、一番右側のサービスインということで黄色に書いてありますとおり、最終的には社会実装、事業化を目指しているというようなものになります。実施主体が中間的なところとして薄い青があって、今までJ-SPARCですとか探査ハブ、革新実証衛星プログラム等で民間大学等との共同の研究開発活動を進めてまいりました。ここに緑色で示しておりますとおり宇宙戦略基金が入ってまいります。こちらは緑色の帯の左上に書いてございますが宇宙戦略基金の実施主体は民間・大学等であるということでございます。JAXAは宇宙戦略基金をお預かりし運用する。つまりは公募をして、採択をさせていただき、資金を配分し、その支援を行っていくという形になるわけでございます。ですので、これはこのピンク色で書いてあったような民間大学等が独自にといったところが、さらに資金を得て強力に進められるという状況が生じているというふうにご理解いただければと思います。こちらはイメージでございますので詳細を細かに正確に表しているというふうなものにはなってはおりませんが、こういったイメージをご理解いただいた上で、下に四角を三つ置いております。
 まず、宇宙戦略基金が創設されたことによりまして、民間等が主体となる活動への支援が抜本的に強化されたと考えております。一方、こうした取組を加速又は相互補完する仕組みとして、宇宙分野への参入促進や企画段階からの共同活動、民間等単独では困難な技術実証等、JAXAの研究開発力を生かした共同活動が必要であるというふうに考えております。二つ目になりますが、JAXAの研究開発力を生かした共同活動によりまして、宇宙戦略基金への接続等……接続というのはこの企画・芽出しの段階でJAXAと民間等が企画を温めて共同でそれを育てて、それが宇宙戦略基金に採択されるというようなイメージでお話ししておりますが、そういう経路も含め社会実装に至る様々なルートが生まれたということだと理解しております。個々の課題に対応するきめ細かな支援がこれによって可能となっていくというふうに考えます。三つ目になりますが、こうした企画・芽出し、研究開発・共創、実証、社会実装・事業化のサイクルを絶やすことなく継続することは、我が国の産業競争力を強化する観点から重要でありまして、様々な政策の効果的・効率的な連動が必要であるというふうに考えております。次の頁をお願いいたします。
 ここは繰り返しになるところでございますので簡単に行きたいと思いますが、J-SPARC(宇宙イノベーションパートナーシップ)ということで共創プロセス、共創事例と書いております。先ほども申しましたが、基本的には事業化までをスコープとした民間事業者等が提案した内容についてパートナーシップを組んでJAXAと共同研究を進めるというものでございます。2018年5月以降、累計48件の共創、これは先ほどの内木部長からもありましたが300件を超える細かなものから大きなものまでいろいろな御相談を経て48件具体的に取り組んでいるという状況にございます。
 下に4つ成功した例を挙げています。Pale Blueの超小型電気推進機事業。それからソニー、東京大学によります宇宙感動体験事業。3つ目がSynspectiveの小型SAR衛星コンステ技術を利用した災害状況把握サービスの社会実装。4つ目が小型衛星用の衛星分離部の事業、これは製品化までして具体的にH3ロケット2号機でキヤノン電子とJSS/セーレンが開発された小型衛星を2機、この分離部を使って宇宙実証を行わせていただいております。次の頁をお願いします。
 これは探査ハブになりますが、先ほども申し上げましたけれども、JAXA側の方で探査を進めるにあたって必要な技術というのはこういう技術があるということをお示しした上でRFI、どのような民間事業者たちが新しい技術とかチャレンジをしたいというところとどう我々の求めるものとがマッチングできるかというところを踏まえまして採択させていただいたものを共同研究として進めてまいりました。
 成功例としまして3つここに書いてあります。1つ目がSORA-Qで、実際に宇宙探査に適用された事例でございますが、一方で民間事業者の方でおもちゃとして販売が始まったと。それから2つ目がソニーの小型光通信実験装置ということで、宇宙実証も行われまして、ソニーの方ではそれ専用の事業会社も設立されたというふうに伺っております。それから3つ目が全固体リチウムイオン電池ということで、宇宙実証も行われ、民間でもこの事業化が進んだというふうに見聞きしております。こういった事例を生むことができたというものでございます。それで次の頁に参ります。
 4ポツ、今後の方向性ということでございますが、宇宙戦略基金の創設によりまして民間等が主体となる活動への支援が抜本的に強化されたと。繰り返しになりますが、これは非常に大きな方向性が出たというふうに考えております。
 二つ目としまして、この基金の取組を加速したり、それから新しい芽を生み出していったりする補完的な仕組みとしまして、宇宙分野への参入促進や企画段階からの共同活動、民間等単独では困難な技術実証等、JAXAの研究開発力を生かした共同活動も重要であると考えております。
 そこで現在、宇宙戦略基金との効果的・効率的な連携が取れるように、既存事業等の再編・強化を考えておりまして、先ほども申しましたが人員のリソースという観点ではどうしても数年の間は厳しい状況が続くと考えております。ただ、これを言い訳として進めないということではなく、この苦しい状況をいかに効率的に進めて強力にこの宇宙戦略基金と補完する共同の研究の両方を進めていけるということを考えているところでございます。3つ例を書いておりますが、1つは産業競争力強化のための各種の取組を総合的に調整する体制。新しい話というのはできるだけ1カ所で情報を集約して、それがどういう進み方をするのがよいのかということを、当然この大きな方向性の基金というものを頭に置きながら考えられるようなことを体制として整えたいと。それから、各プログラムの機能を識別して効率化。より基金の活動が大きくなるという状況でございますので、そちらをしっかりとさせていくような効率化、運用の変更、こういったことも考えていきたいと思っております。3つ目が利用者への分かりやすさ向上。これが最初に申し上げましたような、新しい話が来る場合に、あっちでもこちらでも相談というのではないようなことを考えつつ、且つ実証の機会も利用者の方に分かりやすくしていくような見直しをしたいというふうに考えております。
 こういった方向性で、今日はもう概略のことだけしか申し上げられません。逆に言いますと、この段階で忌憚のない意見を頂くことによりまして今後の詳細化に向けての御意見として承れればと思っております。よろしくお願いいたします。以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、ただ今の御説明について御意見、コメントがあればお願いいたします。いかがでしょうか。木村委員、お願いいたします。
 
【木村委員】 ありがとうございます。木村でございます。先ほどの探査イノベーションハブのところでの説明に対しても少しコメントさせていただいたのですが、宇宙戦略ファンドが動きだしたということは非常に大きい、とても素晴らしいことだと思います。その一方でやはりそこについては非常に戦略的且つ具体的な取組になっていくだろうということを考えたときに、これまでイノベーションハブなりJ-SPARCなりで広げてきたいろんなところから非宇宙の分野も含めて参入させていくような枠組みという役割はやはり重要なのだろうなと思っています。先ほどその辺の話を非常にきれいにまとめていただいて、そのような意味で相互補完的に働いていくのは非常に大事なのだなというふうに思いました。
 そこで実は少し心配なのは、宇宙戦略ファンドの方にも人員がおそらく必要になるでしょうし、それを補完する役割としてのこの二つの活動というのは非常に重要度がおそらく増すだろうと思われますが、その辺りの人的な部分も含めてリソースが十分配分できるのでしょうかといいますか、ぜひそこは配分してほしいという思いも込めてコメントさせていただいたのが一点です。
 あと、これは余り良い表現かどうか分からないのですが、正直外側から見たときに、仕組みが非常にいろいろ工夫されてそれぞれ存立しているがために、先ほど正に石井さんがおっしゃっていただいたように、どこにご相談すればよいのか分からないといいますか、外から見たときにどういう形で戦略が練られているのかが非常に見えづらいところもあるかと思うんです。その辺りも横串の何か戦略みたいなものが必要なのではないかというふうに思っておりますが、その辺りのお考えをぜひ教えていただければと思います。
 
【石井副理事長(JAXA)】 ありがとうございます。先ほど私も悩み事に触れさせていただきましたが、やはり人間というのは人件費をもらうと同じような人が3人も4人も増えるというものではございませんので、新しい人を雇いながら育てながら仕事を進めていかざるを得ませんので、そこを両方やりながらやるしかないと。プロ野球でいうと新人を育てながら優勝を狙いますみたいな話なのですが。ということで、宇宙戦略基金をしっかりとやっていくということをまずは最も重要というふうに我々としては考えているというふうにここでは申し上げておきます。後ほどその辺は体制も含めてどこまで整えてきたかというところはご紹介申し上げたいと思います。
 一方で、そういう状況の中ではどうしても今までの活動が今まで通りにできるかというのは難しいところが出てくると思っておりますが、そこは時間軸をちゃんと意識して、重要な事業を途絶えさせることなく、且つバランスを崩さないように進めていくということかと思っております。どうしてもやはり宇宙戦略基金は重要と考えてしっかりと対応していくということから、例えばJ-SPARCの件数の伸びが若干スピード落ちてくるとか、そういうことが生じる可能性はあるかというふうには考えております。今のような御説明でよろしいでしょうか。
 
【村山部会長】 あと戦略作りの話が2番目に出ていたのですが、いかがでしょうか。
 
【石井副理事長(JAXA)】 ここの三つ目の四角の下に3本あるうちの最初のところと3つ目なのですが、要は新しい話が来たときには、それはできるだけ1カ所で受けて情報集約していく。これは結局それがうまく良い話になっているものがいきなり来れば、当然すぐにこれは戦略基金のネタの方に持っていくとか。逆にしばらく一緒に考えなければいけないねというようなところがあれば、それはそちらにというふうに考えていくということができるようにしていきたいというふうに考えております。基本的には、まずは我々のこの戦略基金の中では広く情報を集めて検討するという、それを各府省に情報提供するということが戦略基金の仕事として加わりましたので、その枠組みの中でできないかということも追求していきたいと思っております。
 
【木村委員】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。続きまして、村松委員、お願いいたします。
 
【村松委員】 村松です。方向性のご説明どうもありがとうございました。今回私の方からは特に長期的な観点でデータ利用の裾野拡大という案件に関してなのですが、先ほども子供用のおもちゃをさらに宇宙の技術を使って開発されたというような話もありましたが、例えばJAXAの方で撮ったデータをもう少し教育現場に積極的に利用していただくような方向性というのもあるかと思うのですが、例えばもっと衛星データとかそういう宇宙のデータがいろんな人にとって身近なものになれば、その次の世代としてまたこういったものに応募してくる人も増えてくるのではないかと思われます。例えば中学・高校生でしたら、もう十数年すれば社会で活躍されていると思いますので、その教育現場に向けて高校の先生とか中学の先生も取り込みながら、民間企業の方の協力も得ながら、JAXAの方から例えば教育現場の教材として強くプッシュするような計画とかはございますか。
 
【石井副理事長(JAXA)】 ありがとうございます。正にそういった活動をさせていただいております。宇宙教育推進室というところがございまして、もう18年以上活動させていただいておりますが、小学校の教材に使っていただくとか、正に地球観測衛星のデータを使って中学校の授業、それから高校でも最近は学科をまたいだような授業企画というのがあるというふうに聞いておりますが、そういったところにもご提案するということをさせていただいております。
 これは宇宙教育推進室だけではなくて、衛星利用であれば第一宇宙技術部門、それから宇宙飛行士関係といえば有人宇宙技術部門、こういったところと協力・連携して教材作りとかをさせていただいております。なかなかこういうのが努力をしておるところなのですが、学校の先生たちもものすごく忙しいというのが現場の実情というふうに伺っておりまして、少しずつ協力を広げさせていただいているというような状況にございます。
 
【村松委員】 なかなか学校の方で採用していただくというところはハードルが高いのかもしれませんが、できれば夏の間の短期講習とか一時的なものだけでなくて、本当に教材が教育の中に入り込むような形になったらよいのかなと思いました。どうもありがとうございます。
 
【石井副理事長(JAXA)】 ありがとうございます。引き続き頑張ります。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。続きまして、松岡委員、お願いいたします。
 
【松岡委員】 松岡です。ありがとうございます。宇宙戦略基金に設定されているテーマに対する企画・芽出しというところでご質問させていただければと思います。この宇宙戦略基金のテーマはもちろんいきなり出てくるようなものではなく、そこに至るまでは検討、開発、そういった活動があって、それを下地として設定されていくものだというふうに考えております。ですので、宇宙戦略基金がうまくいくかどうかというのはこの企画・芽出しというものが非常に重要になってくると思うのですが、私の理解が足りていなかったら申し訳ないのですけれども、今日はJ-SPARCについても紹介いただいて、J-SPARCという活動によってこれまでのいろんな技術が実際の事業化までつながったとご紹介いただいたと思うのですが、今後宇宙戦略基金のテーマを上げるその企画・芽出しの場として今後もこのJ-SPARCが活用されるというような文脈でお話しいただいたのか、それとも、そういう企画・芽出しのような場というのは今後また他のものも含めて拡大される予定があるのか、その辺りを少しご説明いただければと思います。よろしくお願いします。
 
【石井副理事長(JAXA)】 J-SPARCのような活動から出てきたものが基金のテーマに応募できるようなものに育っているというのは事実としてはあると思っていますし、そういったものを踏まえますと重要性があるということは我々としても認識しておるところでございます。ただ、我々としては、その戦略基金が非常に大きい資金規模で設定されておるところですので、よりそちらに加速していくというような形を取れればなというふうに考えております。民間との共同の活動の場とか共創の場というのは芽を出していくというためには重要でありますが、戦略基金があるということから、ダイレクトに戦略基金にJAXAのアドバイスを踏まえて企業若しくは大学等が主体的に宇宙戦略基金に応募していけるという状況が増えていくということを期待しているというところでございますが、お答えになっておりますでしょうか。
 
【松岡委員】 はい。いろんなパスがあるのかとは思いますが、やはり企画・芽出しというところは非常に大事になろうかというふうに思いますので、今後もそういうところでご検討いただければよいかなと思います。よろしくお願いいたします。
 
【石井副理事長(JAXA)】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。時間が押してきていますので最後に、笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 手短に質問させていただきます。既にたくさん質問がございましたが、今副理事長も予算を倍にしても人はすぐ同じレベルに育てられないという、非常に大変な状況だと思います。それでも今後、やはりこれだけの予算規模ですので、どれくらいの定量的な感覚で組織を大きくされていこうと考えられているのかというのが一つ目の質問です。
 もう一つ、すみません、4頁目で松岡先生から企画・芽出しのお話がございまして、やはり戦略的な基金とはいえ最初のところというのは非常に重要ですので、そこの入口の話も木村先生からございましたが、そこへの手当といいますか、どのように仲間を作って、コミュニティを作って、一緒にオープンにやっていかれるのか、その入口への思いといいますか、入口のエネルギッシュにこれからやっていくぞというたくさんの人たちに対する副理事長のお考えというのを少しお聞かせいただけると大学にいる者としては大変うれしく感じるのですが、いかがでしょうか。以上でございます。
 
【石井副理事長(JAXA)】 ありがとうございます。体制は次の資料でもご紹介しますが、現状、主に基金をやる人員として50名程度で考えておりまして、更にそこに加えて専門家は各部署におります。衛星の専門家もロケットの専門家も、宇宙ステーション関係、無重力環境利用の専門家も各事業部門におりますので、その方々の10%から多い日でも20%ぐらいの従事率をこちら基金の方に割いていただくという調整を現在していまして、頭数でいいますとそういった方々が50名程度というぐらいの規模で対応するというのを今考えているところでございます。
 それから、初期のいろんなことをやりたいという人の、それをどこに相談したらよいかとか、何を見ていればよいのかというところのお話かと思いましたが、我々としてはその新しい話というのがどういう経路をたどってどういうふうに社会実装されていくのかというところを意識しながら、いろんな方と御相談をするというような活動になるのかと思っております。そこには宇宙戦略基金の活動の中で広く情報を調査・検討する。そしてそれが基金のテーマとなるような情報は各府省に提供するというプロセスを踏みますので、そういった流れにうまくつなげていければというふうに考えておりますし、当然JAXA側がその宇宙探査活動を意識して共同研究テーマを求めていく活動、これは探査ハブの方の活動ですが、こことも連携するようなことをやっていきたいというふうに考えております。
 
【笠原委員】 ぜひJAXAを中心に一つのグループといいますかコミュニティといいますかそれができるような形にしていただけると有り難いです。どうもありがとうございました。
 
【石井副理事長(JAXA)】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 竹上さんからお手が挙がっているようですが。
 
【竹上企画官(事務局)】 基金のテーマ設定や、企画・芽出しのプロセスについて、改めて一言だけコメントよろしいですか。基金のテーマの企画・芽出しについては、この部会の場でもご審議いただきましたが、そこに至るまでに、例えば今日説明いただいたJ-SPARCあるいは探査ハブであったり、革新将来輸送プログラムであったり、こうしたプログラムからも情報を収集していまして、今回初めて作った基金なので、我々はいろんなルートから、結果的にいろんな情報を活用してテーマを設定しましたが、もちろんその時にはJAXAの職員からも情報収集をしています。そして、CONSEOといったより現場やアカデミアに近い組織からの検討結果であったり、部会等での政策審議であったり、更には内閣府での技術戦略をめぐる様々な議論、こうしたものを総合的に情報収集、そして検討して、テーマ設定に至っています。正にそうしたプロセスの中で、企画・芽出しの位置づけで結果的に使っているものとして、このJ-SPARCやJAXAの色々なプログラムが、そういう場であるということを改めて明確にしていく、また、現場の方々から見たときに、そうしたプロセスのルートをできるだけ分かりやすく「見える化」していくということが、今後我々がしっかりとやっていかないといけない部分だと思っています。ですので、引き続きそのテーマ化に向けたプロセス、これは複数の様々なルートを経て、日本としてやるべきテーマ、これは文科省だけではなくて経産省も総務省も一緒だと思いますが、テーマの検討を色々なパスを通じてやっていきますけれども、そこの流れの全体像をご認識いただけるようになるとよいかなと思っています。以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。そこは非常に重要なポイントでして、産業競争力の強化ということですので、これは相手がいることですね。世界で果たしてどこの国がどこに競争力があって、日本はどこを攻めていけば競争力を得られるかと。それもやはり入口になると思いますので、そういう視点を入れていただいて、その辺りを慎重に検討していただければというふうに思います。
 その下支えをするのは次にご報告いただく組織についてですので、次に宇宙戦略基金に対応したJAXAの体制についてのお話をしていただきます。先般創設された宇宙戦略基金を着実に運営し、成果を上げるための準備がJAXAの中で進められています。本日はその準備状況についての御報告を頂きます。それでは、引き続き石井副理事長、御説明をお願いいたします。
 
【石井副理事長(JAXA)】 まず、表紙の頁については、Webの方にもティザーサイトというのをオープンいたしました。戦略基金の情報を掲示するところの最初の頁にこういう絵を掲げさせていただいております。次の頁をお願いします。
 準備状況ですが、4月26日に政府による基本方針・実施方針を出していただきまして、7月以降の公募開始を目指しまして、現在公募要領の策定、事業運営体制の構築等を鋭意準備中でございます。表紙に経営企画部の宇宙戦略基金準備室と書いてあります。その組織が中心となって今こういった準備をしております。
 5月20日にはYouTubeでこの説明をするところを公開しました他、6月6日にティザーサイト(先ほどの表紙の頁)を公開済み。さらに14日、先週の金曜に公募の予告を出させていただいております。7月上旬に予定している5テーマを掲載させていただいております。
 プログラムディレクターに一般社団法人SPACETIDE代表理事の石田さんに就任いただいております。ステアリングボードの座長として各領域の取組状況、課題等の把握、基金事業全体運営に関わる管理、総合調整等を担っていただきます。各領域の各技術開発課題の採択、評価等を行うプログラムオフィサー及び審査員は現在調整中ということになっております。次の頁をお願いします。これはプログラムディレクターの石田さんの御紹介の頁でございます。時間もありますので次をお願いします。
 準備としまして、7月1日に宇宙戦略基金事業部を発足することでもう準備を進めております。これはJAXA内でということです。今まで準備室だったものを新しく部としてスタートします。社内外の多様な人材、これは役所からも9名の方を派遣していただいております。それで、先ほども触れましたが本務だけで50名の人員を確保。加えて、輸送・衛星・探査等の各部門エンジニアを中心に併任者、これはエフォート率は内容によって異なるということなのですが、これが約50名ということで、トータル規模は数でいうと100人規模ということを準備しているところでございます。
 二つ目が、技術開発テーマ・22テーマについて、7月以降順次公募を開始いたします。三つ目、候補予告等の情報は宇宙戦略基金等のWebサイトにて随時掲載を予定しております。公募の予告ということで5つのテーマが既に掲示されております。以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。人員を含めた質問は既に出ましたが、この体制というのは非常に重要なポイントですので、皆様の忌憚のない御意見を聞ければというふうに思います。いかがでしょうか。……よろしいでしょうか? 先ほど人員についての質問が若干出ましたが、もし石井副理事長の方から何か補完するようなところがあればもう少しお話しいただければというふうに思います。
 
【石井副理事長(JAXA)】 いえ、もう皆様には拙い説明ながらも私の悩みを本当にご理解いただいてアドバイスを頂けたかと思います。我々としては戦略基金を成功させることが、第4期の最終年から始まるわけですが第5期の大きな期待になっていると思っておりますので、しっかりとそこに対応していきたいと考えております。以上です。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。特に急にお金が増えて人員のマネジメントも大変になると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、今後当部会としてもこの宇宙戦略基金についての動きは注視していきたいと思います。石井副理事長、本日はどうもありがとうございました。
 
【石井副理事長(JAXA)】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 それでは、本日最後の議題に移らせていただきたいと思います。本日最後の議題は「スターダストプログラム『衛星用の通信フルデジタル化技術開発』 成果報告」についてです。スターダストプログラム第1期の採択案件として、令和3年度より着手した本件は、令和5年度末までにフルデジタルペイロードの開発・実証を完了しており、本日はその成果報告となります。それでは、JAXA瀧口理事、技術試験衛星9号機プロジェクトチームから深津プロジェクトマネージャ、資料の御説明をお願いいたします。
 
【瀧口理事(JAXA)】 はじめに、私第一部門長理事瀧口の方から少しご挨拶させていただきます。村山部会長から今ご説明ありましたように、スターダストを活用いたしまして3年ほど開発いたしましたフルデジタルペイロードがETS-9にようやく搭載できるようなところまで来たということで、ETS-9は来年度、工程表通りの打上げを目指して今開発中でございますが、スターダストとしての成果ということも含めてここで少しご紹介させていただければと思っております。詳細はプロジェクトマネージャの深津から説明させていただきます。では、深津さん、お願いします。
 
【深津プロジェクトマネージャ(JAXA)】 それでは、JAXA技術試験衛星9号機プロジェクトチームのプロジェクトマネージャをしています深津の方から、資料に基づきまして説明させていただきたいと思います。今映していただいております頁につきまして経緯を書いておりますが、このフルデジタル技術につきましては令和3年2月2日に宇宙政策委員会 衛星開発・実証小委員会におきまして、衛星用の通信フルデジタル化技術ということで採択されております。その後、文科省経由でJAXAの方が受託をいたしまして開発を進めているところでございます。
 宇宙開発利用部会におきましても毎年経緯について報告させていただいているところでございまして、本日この3年間の期間が完了いたしまして、地上レベルといたしましては開発が完了したということで報告させていただきたいと思います。次の頁をお願いいたします。
 簡単にフルデジタル通信ペイロード、以下のFDPと省略させていただきますが、FDPの背景と目的について少し紹介させていただきます。ETS-9自体は2017年に開発に着手していたのですが、2019年ごろから欧米の衛星メーカーの方でも通信の周波数や通信領域をフレキシブルに変更できる高速・大容量通信が可能な通信衛星が必要だというところで、当然我が国もETS-9を使って要素的な研究していたのですが、世界的には更にその先の方に進んで全体的にデジタルをするというところで、そういう意味でフルデジタル化という言葉を使わせていただいておりますが、その発表が相次いでおりました。ということで世界に追いついて競争力を維持するという観点から我が国としても開発の提案をさせていただいたところです。
 我が国の通信衛星の国際競争力確保のために、世界的には大体1 Gbps当たり$1 Mぐらいのコストというのが市場競争力の指標という形で通信衛星でいわれておりますところ、大体200 Gbpsの通信容量というのを基に、その200 Gbpsの通信容量を有してこの競争力にしようという、我々ビット単価と呼んでおりますがこの1 Gbps当たり$1 Mを実現するということで、その中に通信サービスのフレキシビリティを備えた次世代静止通信衛星を早期に実現することが必要だと考えております。それで、このフルデジタル通信ペイロードをETS-9に搭載するということで開発をしていきたいと考えております。次の頁をお願いいたします。
 フルデジタルペイロードは何かというところでは、大きくは技術的に2つございます。1つ目のところに書いてありますように、ビーム照射地域の変更(デジタルビームフォーミング技術)になります。それと、通信容量配分、これは周波数帯域幅が変更できるデジタルチャネライジング機能といっておりますが、大きくはこの2つの技術になります。この2つの技術を持てば、従来ペイロードではできなかった通信需要の変化に対応することが可能になります。下のイラストをご覧いただきたいと思いますが、左の方は従来型のペイロードを指しておりまして、給電素子というところからの通信ビームが照射されるのですが、下の方にサンプルとして1番、2番、3番、4番と書いておりますが、従来の通信衛星ではこのように一度決めてしまうとそこの通信ビームにつきましては変更できないと。したがって、例えばこの2番のところにたくさんビームを配置して、3番が急に必要になったというときに既にもう変えることができない。なおかつ、最近は10年~15年ぐらいの寿命が必要となっておりますので、それだけ長期にわたって通信が変えられない。これが従来のペイロードでございました。
 それに対して今回のフルデジタルペイロードを使いますと、この左のように、比較のために1、2、3、4と付けておりますが、この給電素子アレイというところで給電素子を密集させてその電波を合成することによってビームフォーミング技術を使うことでフレキシブルな対応ができると。右の方に例えばこれはチャンネルライジング機能なのですが、1番から4番までのビーム配置が、左側ですと変えられないのですが、デジタル化することによって下のように2番の領域を少し減らして4番や1番に割り振るとかそういうチャネライジング機能ができるということが一つ。もう一つは、例えば左と右で4番のところを比べていただきますと、4番は小さい円しかできなかったのが、このような大きな楕円形を使うということができると。こういうところがフルデジタル技術になります。次の頁をお願いいたします。
 これはFDPとしてのコンフィギュレーションを説明した頁になりますが、この青点線の下のところが今回開発をしたところになります。次世代通信衛星としては200 Gbpsができるようにということを目標としておりますが、ETS-9では今回の受託の範囲におきましては、コストの観点が強いのですが構成としては最小に、一方で技術的に検証すべきところは検証するという観点でコンフィギュレーションを考えております。また、既存の総務省のペイロードがありまして、そこでの資産を有効活用させていただきたいというところから、上の方にDBF/DCHというところがあります。これは固定/可変ビームのところでございまして、こちらから入ってきたビームを有効活用しながら下の青点線以下のところに入れるという形になっております。下のいわゆるフルデジタルでもデジタル処理をするところはこの赤枠で囲ったDPPといっているところになりまして、デジタルペイロードプロセッサなのですけれども、ここのところで処理を行いますが、左の方にDAFRの受信部、右側に送信部というものがございます。これで電波を左から受けて、このDPP中で処理をして右から出すというところで通信を行うのですが、その制御を行うために上の方からも電波が出入りできるという形のコンフィギュレーションにしております。次の頁をお願いいたします。
 この頁は、3年間でどういうプロセスでやってきたかというスケジュールを示しておきますので、ご覧いただければと思います。次の頁をお願いいたします。
 開発結果の方の説明に移りますが、送信部・受信部というところで、この送信用に用います給電素子を実際にどういうふうに配置したかというのを示したのが右図になっております。素子としては20個用意しているのですが、実際に給電部のアンプにつなげているのは16個にしておりまして、グレーのところはダミーでアンプはつなげておりません。この1番から16番までの番号を付けておりますが、この赤いのが右回りの電波、青いところが左回りの電波になっておりまして、このビームの形成の基本パターンというところで5つと9つという二つのパターンを比較・検証しております。例えばこの5素子使用時というのが右側の図で見ていただきますと例えばここから3番、5番、8番、11番、13番を選んでいただきますと、ちょうど照射域としては和歌山県の先端のところに8番が来ていますが、これと同じようなところで9番と比較するために2、3、7、5、8、11、10、13、15を取りますと、9素子で8番が真ん中に来るというような形でビームを送るというような解析をしております。実際に下にその作った機器の写真を載せております。次の頁をお願いいたします。
 これはその電波の出し入れに対して処理を行うコンポーネントの図になりますが、基本的にはこの左側からKa帯の電波が入ってきてデジタル信号処理を行って右側に出すというところで、下の図の左の青い矢印のLNAで、アンプから入ってきた電波が、このダイレクトサンプリングする機器のところを通って、少し見づらくて申し訳ないのですが、信号自体はこの黄色の主信号(電気)がA/Dコンバータに入って、そこからDX、SWDBF、MXとありますが、これらの機器を通じて電波を分割したり方向を変えたり合成したりというデジタル処理を行います。A/Dコンバータから先は信号データが大量になりますので、これは光通信ケーブルを使って処理をしております。最終的にはD/Aコンバータからまた電波に戻しまして青い信号で地球に通信するというコンフィグレーションになっております。アンプ処理をして出すというところは従来の通信衛星と基本コンセプトは変わらないのですが、これがアナログからデジタル信号処理にすることで、全てソフトウェアで処理を行うというところが大きなコンフィグレーションの違いでございます。次の頁をお願いします。
 これは実際に実験している写真でございますが、左側が電波暗室で2頁ぐらい前にあったDAFRの電波をこの給電クラスタというのが実際に出して、反射鏡を通じてちゃんと設計通りの電波が出ているかというのを確認した試験になります。一方、右側のDPP試験のところは、模擬信号を入れて実際にソフトウェア処理ができているかということを確認している様子でございます。次の頁をお願いします。
 信号のやり取りはなかなかうまい絵がなくて恐縮でございますが、ここはデジタルチャネライザ機能といっておりますが、先ほどの信号処理部のところで入力信号を分けて方向を変えて合成するというところとか、チャネライジングの機能を行うとかいうところを実験したというところでございますが、分かりやすいデータがなかったのですけれども、これは例えばフィーダリンクで、地上から衛星まで2.56 GHzの電波を送ると、その後衛星で処理したときにちゃんとその2.56 GHz分がきちんとこのようにきれいな形で信号が出せるとか、一方、ユーザビームとして1.2 GHzにつきましても衛星に上がったものがきちんと衛星で処理できるというところを示した図になってございます。次の頁をお願いいたします。
 先ほど5素子、9素子と説明させていただきましたが、基本的には地球上にターゲットとするところには1つのビームを送りたいのですが、それを5つの素子を使ってビームを作る場合、それから9個の素子を使ってビームを作る場合、それを解析で示しております。電波暗室の中では確認できているのですが、それ以上実際日本には出していませんので、これは解析の図でございます。一番左が5素子、真ん中が9素子です。5と9をなぜやったかといいますと、基本的にはこの真ん中のところを見てみますとマイナス3という数字の輪がありますが、大体これくらいの信号で行ければ実用的なところということで、ほぼ設計通りのビームが出せるということを確認できているのですが、左側の5素子を見ていただきますとマイナス15デシベルのところで少し出っ張っているところがあったりしています。このように素子がちょっと少ないと電波の乱れが発生するというところが分かっておりますので、それで9素子にしてそういうところをなくせるのではないかというところで9素子の解析もしております。それで任意形状のところという形で右側の方に広いビームを作ったらどうなるかというのを確認したのがこの図でございます。
 以上でFDPにつきましては地上レベルでは開発の確認ができたというところで、受託いたしました内容につきましては開発が完了したと評価をしております。この後は装置をETS-9に搭載させていただきまして、実際に衛星上での組立て試験、衛星レベルでの試験を行った上で打上げに臨むというところでございます。一方、この開発成果を用いまして、開発していただいているのは三菱電機なのですが、三菱電機には積極的に市場の方に売込みを掛けていただきたいというふうに考えております。次の頁をお願いいたします。
 こちらは委員会等でご指摘いただいていた市場動向についても調査するようにというところで、この図は大まかに言いますと衛星通信に関しましては特に2021年ぐらいから急速にその需要が伸びているというところです。特に右側の方の図をご覧いただきますと当然その衛星通信の需要が伸びておりまして、このNGSO、要するに静止衛星ではない低軌道の方で、こういうところの需要も伸びているのですが、実際の衛星の中で大体半分ぐらいのところで静止衛星はまだ残っているだろうというところで評価をしております。次の頁をお願いします。
 FDPにつきましては2020年当時、当然LEOコンステレーションによる通信インフラの開発計画があったのですが、その当時はまだ具体的になっていなかったと。ただし最近はStarlinkが十分市場に投入されていると。また、OneWeb等も計画を立てているというところで、そういう要求があるのも、現実になっているのも理解しておりますが、一方、先ほどの分析に示しますように、衛星通信の需要の中で大体世界では静止対低軌道というよりは、静止も低軌道も使ってロバストな通信インフラを構築するというふうに世界が動いているというところから、この世界的なマルチオービットというコンセプトでそういう世界を目指していると。また、このフルデジタルペイロードで取り組んでおります技術の適用先は、静止ということだけではなくてデジタル化は軌道に関係なく適用できますので、意味のある開発をしていると評価しております。次の頁をお願いいたします。
 この頁は、フルデジタルペイロードが今後静止衛星においてどういう動向かというのを分析したものでございますが、下の方を見ていただきますとHTS-FLEXという表現がございますが、こちらのデータ全てEuroconsult社のデータを基にしておりますので英語で申し訳ないのですが、ここら辺のデータを見ていただきますと2017~2019年ごろから徐々にデジタル化衛星が増えてきまして、2023~2025年ごろには半分ぐらいに伸びてきていると。26年以降は調査中というところもあってグレーのNAとしておりますが、基本的にはこのフルデジタルペイロードが増えていくというところは変わらないだろうと評価しております。昨今インフレ等もございましてコスト競争力につきましてはなかなか世界的にも厳しい状況にありますが、これが競争の指標であることは変わらないということで、我々としてはそういう取組を継続していきたいと考えております。次の頁をお願いいたします。
 これまでの評価におきまして留意事項としてご指摘いただいております。特に欧米メーカーとの競争の中で、この取組を行うにあたって民間事業者の支援が必要であろうというふうに考えておりまして、それについての取組を継続するようにというふうに留意事項として頂いております。これにつきまして、我々といたしましては本受託業務としてはこの3月で完了させていただきましたが、引き続き特にデジタル衛星につきましては日々世界が進歩しておりまして、その中で高効率の排熱システムというところが必要であるということで提案させていただきまして、今新たにスターダストプログラムを取り組ませていただいておりますので、その中で引き続き支援を継続していきたいと考えております。次の頁をお願いいたします。
 まとめになりますが、これでフルデジタル通信ペイロードにつきましても地上の開発を完了させていただきました。これでETS-9の打上げも目指しますし、民間事業者にも商用化に向けて取り組んでいただきたいというふうに考えております。以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。会議の予定時間が過ぎておりますので、御都合のある方は退室していただいて結構です。それでは、改めましてただ今の御説明について御意見、御質問があればお願いいたします。いかがでしょうか。秋山委員、お願いいたします。
 
【秋山委員】 秋山です。よろしくお願いいたします。少し細かいところの確認的な質問なのですが、13頁の市場動向の調査結果というのをお示しいただいたところで、下の赤と青の吹き出しで強調されたところで、上のフルデジタルペイロードによるフレキシビリティをスループット向上により狙える市場のところはご説明いただいたのですが、その下側の青い白抜きのところ、すみません、例えばこの「ラインナップS/M/L」とか、これどういうところを意図されていたとかというのを少し補足をお願いできないでしょうか。
 
【深津プロジェクトマネージャ(JAXA)】 これは元々はフルデジタル化の進展ということのみならず、衛星のサイズとしては元々4.5 t級という形で開発着手させていただいておりますが、市場動向を見ますと5 tより大きなもの、それからそれよりも小さなものといろんなサイズがあるだろうというところで、そういうサイズ感での取組をしなければいけないだろうという意味でこう書かせていただいております。デジタル化かどうかというということではなくて、当然通信衛星の世界ではこれまで周波数の調整経緯を踏まえて、アナログタイプのままでも継続して使いたいという事業者がいらっしゃるようですので、そういう方々にも柔軟に対応できるように衛星サイズを変えることで取り組みたいという趣旨でこう書かせていただいております。フルデジタル化とは違う経緯でしたので少し適切でなかったかもしれません。申し訳ありません。
 
【秋山委員】 ありがとうございます。質問は以上です。
 
【村山部会長】 よろしいでしょうか。他の方もよろしいでしょうか。他にお手は挙がっていないようですので、本件はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。
 
【深津プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございました。
 
【瀧口理事(JAXA)】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 本日の議事はこれで終了となります。最後に事務局から連絡事項があればお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局です。本日もありがとうございました。会議資料と議事録の公開ですが、本日の資料は文科省ホームページに既に掲載させていただいております。また、議事録につきましては委員の皆様にご確認いただいた後、文科省ホームページに掲載させていただきます。最後に、次回の宇宙開発利用部会ですが、7月中の開催を予定しております。委員の皆様には別途ご連絡いたします。事務連絡は以上となります。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。宇宙戦略基金絡みのところというのは非常に重要なところで、正に日本の宇宙産業が転換点であるということで、十分に議論をこれからもしていきたいので、もう少し時間を取って十分に議論ができるようにしてみたいと思います。それでは、本日はこれをもって閉会といたします。長時間にわたり誠にありがとうございました。失礼いたします。
 

―― 了 ――

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