宇宙開発利用部会(第86回) 議事録

1.日時

令和6年4月23日(火曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. JAXAマネジメント改革検討委員会の活動結果について
  2. H3ロケット3号機の準備状況および先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)の開発状況等について
  3. 与圧ローバによる月面探査の実施取り決めへの署名について

4.出席者

委員

部会長 村山 裕三
部会長代理 田中 明子
臨時委員 秋山 文野
臨時委員 金井 宣茂
臨時委員 芝井 広
臨時委員 白井 恭一
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 髙橋 徳行
臨時委員 鶴岡 路人
臨時委員 松岡 彩子
臨時委員 村松 加奈子
臨時委員 山崎 直子
臨時委員 米澤 千夏

文部科学省

研究開発局宇宙開発利用課課長 嶋崎 政一
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室室長 鈴木 優香
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 橋本 郁也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 副理事長 石井 康夫
 理事 佐藤 寿晃
 理事 岡田 匡史
 理事 瀧口 太
 経営企画部長 三保 和之
 経営企画部次長 松本 邦裕
 経営企画部企画課長 笠原 希仁
 宇宙輸送技術部門 H3ロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 有田 誠
 第一宇宙技術部門 先進レーダ衛星プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 有川 善久

5.議事録

【村山部会長】 それでは、定刻になりましたので第86回の宇宙開発利用部会を開催いたします。今回も前回同様オンラインでの開催となっております。委員の皆様には、御多忙のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。まずは事務局から本日の会議に関する事務連絡をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局の竹上です。本日もよろしくお願いいたします。本日は宇宙開発利用部会の16名の委員のうち13名にご出席いただいております。次に、本日の資料ですが、議事次第に記載のとおりです。オンライン状況について音声がつながらない等の問題がございましたら、事務局へメール、電話等でご連絡ください。事務局からの連絡は以上ですが、本年4月1日付けで事務局の宇宙開発利用課の課長に異動がありましたので、一言ご挨拶させていただければと思います。
 
【嶋崎課長】 4月1日付けで宇宙開発利用課長に着任いたしました嶋崎と申します。CPU使用率が高いので画面オフで失礼させていただきます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。こちらこそ今後ともどうぞよろしくお願いいたします。それでは、早速議題の方に移りたいと思います。本日の議題は3件あり、全て報告案件となっております。最初の議題は「JAXAマネジメント改革検討委員会の活動結果について」です。昨年9月末にJAXA内にマネジメント改革検討委員会が設置され、委員会、分科会、また、社内SNS等の全社的な議論等を踏まえ、今般報告書が取りまとめられました。本年1月の第81回宇宙開発利用部会でも途中経過に関する報告を頂いておりますが、本日改めて報告書の内容を中心にこれまでの活動結果についてご報告いただきたいと思います。それでは、JAXA石井副理事長、佐藤理事、説明をお願いいたします。
 
【石井副理事長(JAXA)】 JAXA石井でございます。4月1日付けで副理事長を拝命いたしました。それまでも経営企画担当、国際協力担当としまして役員として皆様にいろんな場面でご報告させていただいておりました。引き続き重責を担わせていただくことになりましたので、よろしくお願いいたします。私の後任が佐藤なので、佐藤からも一言お願いします。
 
【佐藤理事(JAXA)】 石井から引き継ぎまして4月から経営企画担当等の理事になりました佐藤です。これの前はH3の原因究明等、大変お世話になりました。このマネジメント改革検討委員会報告書についてはしっかりとフォローアップしていく立場になりますのでよろしくお願いいたします。
 
【石井副理事長(JAXA)】 石井の方から報告をさせていただきます。今画面に投影されておりますが、こちらを使わせていただきまして、且つ報告書が多分皆様のお手元にあるのではないかと想定しまして、その報告書も若干引用しながらご説明させていただきたいと思います。
 経緯でございますが、2022年度にイプシロン6号機及びH3ロケット試験機1号機の打上げ失敗がございました。さらに同じ年度に医学系研究に関する倫理指針の不適合事案の報告もございました。これらの状況の中で、2022年度の主務大臣評価におきまして大変厳しい御意見を賜りました。私の記憶では昨年度の8月ぐらいの時期にこの評価を頂いたわけですが、その約1カ月後になりますが9月28日付けでJAXA内に当時鈴木副理事長を委員長としましたマネジメント改革の検討委員会を発足いたしました。
 報告書の5頁、6頁辺りにその辺の経緯を詳しく述べさせていただいております。さらに、どういう気持ちでこの議論に取り組むかといったことも5頁のミッションステートメントというような形で書いておりまして、「外部評価による厳しい御意見を踏まえて真摯に内省する」、「より強い組織に進化するべく前向きに検討を行う」、「この活動自体を意識改革のきっかけにするべく、可能な限りオープンな議論を行う」、ということで進めてまいりました。
 ということで、報告書の6頁辺りに書いてありますが、委員会は11回開催、その下に置いてある開発マネジメント改革の分科会、内部統制の改革の分科会、それらが12回、7回で、トータルしますとおよそ30回議論の場を設け、整理をしてまいったものでございます。それに加えまして、SNS等を使いまして社内からも職員の意見を積極的に上げてもらうということも含めて進めてまいりました。
 2ポツの報告書のポイントというところに行きまして、これが7頁・8頁の辺りにまず課題の分析の結果というのがサマライズされておりまして、マネジメント・ガバナンスに関する課題、それから人材に関する課題、組織に関する課題、技術力に関する課題、さらにJAXAだけでなく航空宇宙の産業基盤に関する課題、これはもちろんJAXAとの関わりという観点を踏まえて、でございますが、そういった観点も含めて課題を分類いたしました。そして、その課題を深掘りしていく中で、これらの課題は相互に関連する関係にありまして、一つを解決すれば全部解決するというものではなく、全部を取り組んでいくことによって全体が改善に向かうということであるということも理解をいたしました。その辺りが8頁辺りに書かれてございます。
 9頁・10頁辺りには人員不足のお話が書いてございます。基本的には第3期から第4期に入りましてJAXAの役割が広がってくるといいますか、担う業務の範囲も広がっていくという中で、人員をそれに見合って増加させるということができていなかったと。もちろんその原因は予算要求による人員制度というところを意識し過ぎたというところがあろうかと思いまして、実質的にはその人員不足の解消に向けて少しずつ受託経費等も使ってプロパー職員の採用というものに取り組んでまいりましたが、それが十分でなかったという反省をしております。
 11頁・12頁辺りに行きますと、人がいない、余力がない、この中で人材育成の活動が縮小していくという負のスパイラルが生じていたということを問題として識別いたしました。
 さらに、13頁・14頁ですが、産業界も同じような課題を抱えていて、我々と産業界と一体となった技術力の維持・継承ということに十分に取り組めてこられなかったということが書いてございます。
 15頁・16頁辺りからは、研究開発マネジメントにおける課題ということで、これは委員会の下に分科会を設けまして、チーフエンジニアオフィス、それから安全信頼性推進部という、プロジェクトを並行して支えていく組織の関わりが十分であったかというところを振り返り、そこも課題があったということを識別しております。社内の声等も拾い上げまして、プロジェクト推進組織とこのチーフエンジニアオフィス、安全信頼性推進部との関わり方についての改善に取り組むということが書いてございます。
 18頁・19頁・20頁辺りには、大臣評価でも具体的に指摘がありましたが、新規開発ロケットの衛星搭載に関わる課題、こういったところについても深掘りをしまして整理をいたしました。従来はロケットの初号機が他の号機と比べて特段リスクが高いという考え方ではないというところに立って検討をしていたところでございますが、それを改めまして、やはり新規開発のロケットについては基本的には性能確認のペイロード搭載というのを方針としつつ、個々のケースでケースバイケースに判断するというような考え方。さらに、ロケットは基本的には飛行実績というものを評価しつつ搭載衛星について判断していくのだということもまとめてございます。
 それから、22頁辺りから内部統制環境における課題ということで、そもそも内部統制というものの役割であるとか、それぞれの仕事の考え方というところに職員の理解が十分でないというところを内省いたしまして、それをより分かりやすく且つ効率的に進める方策というものに取り組むということにしてございます。
 さらに、25頁に参りますと、こういった課題を改善していくためには、役職員の意識面を含めた組織の根底にある風土、こういったところも考えていく必要があるということで考察をいたしました。
 この中では26頁にありますが、社内SNSでは約600名の職員が意見を出し、1,700件以上の投稿を頂いております。そういう中で、組織風土の改善意識・認識については、我々各階層において意識改革をしなければならないというところに立ち返りまして、35頁・36頁に各経営層、それから管理職、それから現場職員、それぞれがそのレイヤーで現在においての内省、さらに今後意識改革はこういうふうにしていくというのを宣言するという形にまとめてございます。
 こういった意識改革と併せて具体的に何をするのかというのを、37頁からの今後の施策というところにまとめておりまして、表5-1から表5-3までの3つの表がございまして、全てアクションプランとなっております。マネジメント改革検討委員会報告書についての2頁目に別添としていましてアクションプランの主な内容ということを整理して示させていただいております。最初の四角が表5-1、報告書の37頁の方に書かれております。読み上げは割愛いたしますが、まずは人材を多様化していくこと、それから増加させていくことを掲げます。さらに、人材育成の活動に注力をいたします。産業界とも一体となりまして技術力の継承等に力を合わせていく。それから、組織風土と意識改革の継続的な推進として、経営層・管理職・現場をつなぐ各層でのコミュニケーション機会の拡充こういったことに取り組んでまいります。
 それから、この頁の真ん中、主務大臣評価を受けた研究開発マネジメントに関わる課題への対応ということで、表の5-2、報告書の39頁になりますが、こちらの課題に対しましてもプロジェクトとのコミュニケーション強化とフィードバック評価の導入。技術継承と基盤維持に向けた継続的開発ロケットのリスク評価プロセス及び実衛星搭載可否の判断プロセスの整備。さらに、内部統制環境としましてリスクを早期に検知し対処するための体制や手法の見直しに取り組んでまいります。いくつかは既に着手をしたものもございますが、表の方にてそこはお読み取りいただければと思います。
 最後に一番下ですが、今回のマネジメント改革の議論を通じまして識別しました課題としまして、定量データに基づく経営判断のための経営指標を導入するでありますとか、基盤技術維持のためのプログラムを設定する。人材と組織の開発を経営的な視点で推進する。それから、ミドルマネジメント層による人に対応するマネジメントといったスキルも強化をしてまいるということ。最後ですが、組織に関する課題としまして組織横断活動の推進や、現場の対話の継続、理事長によるハラスメント防止宣言の社内ホームページ掲載、業務効率化推進等々、いくつか既に対応したものもございますし、これから継続的に取り組むものもございます。
 これらのアクションプランをフォローアップするために、JAXAの中に人材組織開発統括会議(仮称)という会議を置きまして、全体的にアクションをフォローアップしていくという活動を継続してまいります。この会議の委員長は私でございますので、私の方で責任を持ってこのアクションに取り組んでまいるということを報告させていただきます。私からは以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、ただ今の説明について御意見、御質問がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。米澤委員、お願いいたします。
 
【米澤委員】 どうもありがとうございました。いろいろと検討されていることがすごくよく分かりました。資料を拝見していて少し思ったのですが、非常にJAXAさんはいろんなことやっていらっしゃって、これからますますいろいろ活動される幅が広がると思うのですが、対外的にいろんな企業と接する機会がこれから多くなると思われるので、人というところで中だけではなくてJAXA外の方に対しても風通しの良いようにといいますか、そういうような対応といいますか規定というのを広げていただけるとよいかというふうに感じました。コメントです。どうもありがとうございました。
 
【石井副理事長(JAXA)】 ありがとうございます。正にそういったところが現場の意見、それから産業界からもヒアリングをさせていただきました中で我々気付きがございました。技術の前では平等であるというようなこと。そういった考え方を企業の皆さんと共有しながら、対等な立場で且つお互いに意見交換がしやすい、そういう環境づくりというのにも企業の皆さんと一緒に取り組んでいくということを考えております。ありがとうございます。
 
【米澤委員】 よろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 他にはいかがでしょうか。山崎委員、お願いいたします。
 
【山崎委員】 取りまとめと御説明をくださいましてありがとうございます。非常に多岐にわたって識別をされて知見がまとまった報告書だと私も感じております。特に現場の方からの御意見として、やはり立ち上げた後の維持も大変であるとか、「言ったもん負け」にならないようなことが大切であるとか、それらはどの部署でも同じでしょうし、先ほどの御質問にもありましたが産業界の皆様も多分同じような課題を感じていらっしゃるのではないかと思っています。
 ですので、JAXAの皆さんが今回こうして改革をされて、それが教育・研修として意識を高めると同時に、やはりシステムとしてインセンティブがきちんとそういう改革を重んじるような、きちんと挑戦できる文化に持っていくということも正に大切だと思っておりますので、引き続き本件もそのフォローアップの方がむしろ大変かもしれませんが、よろしくお願いいたしますというコメントになります。
 
【石井副理事長(JAXA)】 全くそのとおりだと思っていまして、現段階ではこれは本当に課題を識別してこういうことができていないということを指摘したに等しいと思っております。これを本当に我々の課題として昇華させていく。本当にこの組織の雰囲気がよくなっていく。そういうふうに実行していくことが大事だと思っております。ありがとうございます。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして、村松委員、お願いいたします。
 
【村松委員】 どうも詳細なご検討ありがとうございます。こういった問題は大学でもすごく参考になるお話なのですが、一つ、JAXAさんなどの場合は新しい技術を開発していくにあたって、昔からの技術の継承を人材育成でする部分と、あと日本は今後人口が減っていきますのでどこもそうなのですが、今までのような大きさの組織というのを確保していくのは難しくなるにあたり、新しい管理方法などを積極的に導入して余分な作業を減らしていくという長期的な視点も必要かと思いますが、そのような点もどこかで検討されていきますでしょうか。
 
【石井副理事長(JAXA)】 はい。全くそのとおりの議論が行われまして、これは委員会の下の開発マネジメントの分科会の方で、業務改善というものにどう取り組むのかという側面が大事であるという意見が出てきまして、それを具体化する動きも既に始まっております。具体的には、JAXAの中の総務部というところがその意見取りまとめをしつつ、業務改善・業務改革というもののグッドプラクティスを拾い上げて皆さんに広げていくという活動をするということになっております。
 
【村松委員】 どうもありがとうございました。
 
【村山部会長】 続きまして芝井委員、お願いいたします。
 
【芝井委員】 芝井です。少し抽象的な意見になるのですが3点申し上げます。1点目は、この種のご検討をされた結果として、JAXA内部のことに記述が集中しているのですが、これだけのことをやろうとしたときに本当にJAXA内部だけで全部解決できるのかどうか。むしろ文部科学省、あるいは大学、産業界と関係あるというのであれば、大学や産業界に何を要求するのかと。要するに外部に対してこうしてほしいというのも一方では考えないといけないのではないかと思いました。内部だけで解決できることには限界があるというふうに思いました。
 それから2番目は、我々も見聞きしていますとアメリカやヨーロッパでも同じとはいいませんが少し似た議論が長年行われてきたわけで、そういうことを参考にされるとよいのかもしれないというのが2点目です。
 それから3点目は、こういう活動をされますと、これは現在ではなくて次世代のためのものなのですよね。だから次世代の人たちのためにぜひ良い結果を残すようなことをやっていただけると有り難いと思いますし、そうなっていることを願うということであります。以上です。
 
【石井副理事長(JAXA)】 ありがとうございます。御指摘のとおり、今回の活動はまず真摯に内省するというところからスタートしておりましたので、かなりの部分がJAXA内で改善に取り組むという話になっております。ただ、例えば人員が足りないということにつきましては、人員増の予算を文科省さん財務省さんにお認めいただくであるとか、やはり我々だけでは成し得ないところがございますので、そういったところは重要になってくると思いますし、大学それから企業との連携強化、先ほどの業務の改善というのもありますが、外部との協力の仕方を変えていくことによってJAXA内の業務の負荷を減らすというような場面もあろうかと思います。そういうところは今後継続的に対応する必要があるのではないかと思っております。
 欧米につきましても、この報告書の検討の段階ではまずは中の課題識別だというところで入っておるのですが、海外の駐在員とかそういう研修をしている人からの情報で、海外の宇宙機関も同様な課題に対してインターナルコミュニケーションエキスパートというような人を置いているというような情報もありますので、そういうことも参考にしながらアクションプランの具体化に取り組んでまいりたいと思っております。
 最後の次世代のためにというところは正にそのとおりでございまして、若手職員の皆さんに本当に一緒にこれをやってもらわないといけないと思っていますし、新入職員に対してもこの説明をやるというのも開始しております。若い人たちにこの改革をぜひ前向きに受け取ってもらいたいというふうに思っております。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。他にはご質問、コメント等いかがでしょうか。いいでしょうか? それでは、私の方から2点コメントをさせていただきます。短期間に非常に立派なものをまとめられて非常に感謝しております。その一方で、これは内部の方による報告書ですので、やはり最初に出てきたマネジメント・ガバナンスについては若干この委員会の力の及ばないところがあると思うのですが、これについて若干私の視点からコメントをしたいと思います。先ほど米澤委員からコメントがありましたように民間との関わりがかなり増えてきているわけで、それから宇宙事業自体も民間にシフトしていると。その中で理事会の構成がやはりJAXA中心で文科省の方が1人入っておられる状態ですので、ここはやはり民間からの人材登用というのも今後お考えいただければというふうに思います。この報告書とはちょっと枠外かと思うのですが、そういう視点も必要かというふうに思います。
 それと、私が非常にショックを感じたのはやはり人員不足の問題なのですね。やはり非常に多くの問題がこの人員不足に起因しているものが多いのではないかという感じを受けました。これだけJAXAの業務が広がっているにもかかわらず250人ぐらい人が減っているということなのですね。これはかなりシリアスな問題でして、これは予算要求だけではなくてJAXA内でも抜本的にこれは解決に向けて進むべきかと思います。例えばJAXAにしかできない技術分野、事業分野というのはどういうところかと。それを見極めてそういうところにシフトしていくだとか、それから、最近宇宙事業のマネジメントの仕事が増えていると思うのですが、その辺りにどうシフトしていくか。それによってある程度外部に今までJAXAがやっていたことを委託して、そのマネジメントに務めるとか、何かそういう形でないとなかなか解決が難しい問題のような感じがするのです。この報告書の枠外かも分からないですが、そういう点もご考慮いただければというふうに思います。
 
【石井副理事長(JAXA)】 ありがとうございます。1点目の民間の視点ということでは、現在も小林監事という方は民間のNTT出身の方で、他の会社の監事もやられつつJAXAの監事をやっていただいていまして、いろんな場面で非常に有益なアドバイスを頂いております。このマネジメント改革についても非常に評価を頂きました。それから、3月までは佐野理事という方がホンダ出身で役員をやっていただいていました。現時点で佐野理事の後任がJAXAから出ているという状況ではございますが、そういった観点で全く民間の意見が入っていないような役員構成ではないということだけ付言させていただきます。今後の課題かと思っております。
 2つ目の人員の問題は正に根幹の課題でございまして、これを解決しないと全体の課題は悪くなるばかりというふうに認識しておりますので、抜本的な改善ができるように取り組みたいと思っておりますが、なかなか特効薬というのが見つからないという状況はございます。JAXAにしかできない仕事はJAXAでやって、できるだけ外に出すという方法は既に第3期中期の頃に議論がかなり進みまして、例えば環境試験の設備の運用は民間に委託をし、外部利用というのを積極的にやることでJAXAの負担を減らすということもやっておりますし、追跡のアンテナの運用につきましても、長期的に民間事業者との契約というのをちょうど結んだところでございます。かなりそういうことを積極的にやってはおるのですが、それでも増えている役割の方が多いというのが我々の感じているところでございますので、やはりどうしても人を増やしていくという方向で考えていきたいというふうに考えております。それは若干時間を要するというものでございますが、しっかり取り組んでまいりたいと思っております。
 
【村山部会長】 それでは、文科省の方からもコメントがあるようですので、お願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局でございます。一点補足ですが、正に今回ご提言いただいたものを文科省としても受け止めて、今までは運営費交付金しかなかった中で、今般新しく宇宙戦略基金というものを作っており、そうしたものも活用しながら、あとちょうどJAXAは今年度が中長期目標最終年度でございます。JAXA自身がやるものと、外部の組織等を活用しながらやっていくようなものがある中で、ちょうどそのJAXAの役割を議論できるタイミングにございますので、次の中長期目標の議論の中でも、その観点もしっかりと議論していきたいと考えております。事務局からは以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。方向性はつかんでおられてその方向に向かっているようですので安心いたしました。これからもそういう取組をぜひとも続けていただければというふうに思います。それでは、本日の報告内容を基にアクションプランに記載された取組等を進めていただければと思います。今日はどうもありがとうございました。
 
【石井副理事長(JAXA)】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 それでは、次の議題に移らせていただきたいと思います。2つ目の議題は「H3ロケット3号機の準備状況および先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)の開発状況等について」です。H3ロケットについては、2月17日の試験機2号機の打上げ結果を受けて、その評価を踏まえた反映も含めて、3号機の準備が現在進められています。また、だいち2号の後継機として先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)も打上げに向けて準備作業が進められています。本日は、H3ロケット、「だいち4号」のそれぞれについて、JAXA宇宙輸送技術部門及び、第一宇宙技術部門より、現在の開発状況等についてご報告いただきます。質疑は資料ごとに分けて行いますので、まずはH3ロケットについて、JAXA宇宙輸送技術部門の岡田理事、H3ロケットプロジェクトの有田プロジェクトマネージャから資料の説明をお願いいたします。
 
【岡田理事(JAXA)】 JAXAの岡田でございます。H3ロケットにつきましては、2月17日に試験機2号機の打上げに成功いたしました。2度の延期、そして1度の失敗を経まして、10年の歳月を要してしまいましたが、軌道に到達できるシステムとして実証ができました。これまで様々な御指導を頂きまして本当にありがとうございました。まだH3ロケットに関しましては残る開発を含めまして磨きを掛けていくフェーズです。4月からはプロジェクトマネージャをバトンタッチいたしまして新たな体制で今後に取り組んでまいりたいと考えております。本日は試験機2号機の結果、そして3号機の準備状況につきまして、有田プロジェクトマネージャよりご説明させていただきます。よろしくお願いします。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 今ご紹介いただきました有田でございます。資料に基づきまして試験機2号機の打上げ結果、それから3号機の準備状況についてご説明させていただきます。次の頁をお願いします。
 目次でございますが、1ポツの概要に続きまして2章で2号機のフライト結果についてご説明したいと思います。そして3章で3号機の準備状況についてご説明いたします。次の頁をお願いします。
 まず概要でございます。いま岡田の方からありましたように2月17日9時22分55秒にH3ロケット試験機2号機、ここからはTF2と呼びますが、これの打上げを行いました。TF2は計画どおり飛行いたしまして、第2段の機体を所定の軌道に投入するとともに、搭載しておりました2基の小型衛星CE-SAT-1E及びTIRSATを良好に分離いたしました。その後、地球を1周回した後に第2段機体をデブリ化防止のために制御再突入させ、その後ロケット性能確認用ペイロード(VEP-4)の分離を良好に実施いたしました。TF2の打上げにおきまして、打上げ計画書等に基づきまして安全確保、関係機関への打上げ情報の通報を計画どおり実施いたしました。そして現在H3ロケット3号機(F3)の打上げに向けて機体の組立等の準備作業を種子島宇宙センターにて実施しているところでございます。次の頁をお願いします。
 ここからが2号機のフライト結果についての御説明になります。まず飛行シーケンスですが、右の表に示しますようにまずリフトオフをしました。ここが時間の基準になっております。そこからSRB-3(固体ロケットブースタ)の分離、それから衛星フェアリングの分離、そして第1段エンジンの燃焼停止、第1・2段分離。ここまでほぼ予定どおり(1秒の遅れ)で実施をいたしました。そして試験機1号機の不具合の時にはこれができなかった(6)のところ、第2段エンジンの第1回の推力立ち上がり、こちらも1秒遅れで計画どおり実施できました。
 その後、600秒程度の2段エンジンの燃焼を行いまして、約6秒早く2段エンジンの第1回目の燃焼停止を迎えております。これは特段異常ということではなくて、2段エンジンの性能がむしろ良くて燃焼時間が少なくて済んだという結果でございます。
 その後、CE-SAT-1E、TIRSATを正常に分離をいたしました。そして約110分間の慣性飛行の後、第2段エンジンの第2回推力立ち上がりということで、上の図にありますように機体を180度回転させまして進行方向に逆噴射をするということで軌道離脱のための燃焼を30秒間ほど実施しました。そしてその後、搭載しておりましたダミー衛星でありますVEP-4を分離するというシーケンスを完了いたしております。次の頁をお願いします。
 こちらの写真はオンボードのカメラで撮影をしたものであります。こちらの左側の写真が固体ロケットブースタの分離を表しております。上側が右側、下側が左側の映像になります。いずれも良好に分離をしております。真ん中の写真が1・2段分離の画像で、上側が分離前、下側が分離後ということで、下側の図を見ていただきますと、第1弾が後方に離れていっているというのが見ていただけるかと思います。右側が衛星フェアリングの分離のところでございまして、この上側の写真で黒い地に白いマットのようなものを張ってございますが、これが吸音材でございまして、衛星フェアリングの内部を写したところです。その真ん中にはVEP-4と書いておりますダミー衛星の先端が写っております。フェアリングを分離いたしますと、この周りの覆いが取れまして太陽光が差し込んでくると。これが下の画像でございます。次の頁をお願いします。
 次が各系統の評価ということで、こちらの表に示しますとおり機体各部の挙動が良好であるということを確認いたしました。一部3号機の打上げに向けまして反映が必要な項目がございまして、これらにつきましては必要時期までに処置する計画でございます。また、この内容につきましてはJAXA内で独立的な第三者によるリスク評価を行いまして、これらの評価について妥当であるということを確認していただいています。
 それでは、各系統についてご説明いたします。システムにつきましては先ほどご説明したフライトシーケンスが正常であるということ。それから、後ほどご説明いたします飛行経路。それから小型衛星の投入軌道。こちらが良好であるということを確認しております。後ほどご説明いたします。
 電気系につきましては、1段の機器、2段の機器共に想定どおりの挙動でありまして良好でございました。また、2段エンジンの不着火事象の対策として、PSC2と書いてございますが、これは2段の推進系コントローラでございます。こちらのエンジン駆動系統の過電圧ですとか過電流といった兆候はなく、結果は良好でございました。一点特記事項といたしまして、機体に搭載しております慣性計測装置でありますIMU、こちらが小型衛星を軌道投入した後の地球軌道周回中に、許容範囲ではあったのですが精度低下を起こすということを検知いたしました。こちらの方は今故障解析を進めておりますが、ジャイロの個体差、それから、周回中の一定の条件下で生じる事象だというふうに特定できておりまして、3号機の打上げまでに対応可能な見込みでございます。
 続きまして推進系ですが、フライト中の燃料供給等の挙動は良好でございました。また、1段エンジンの作動は事前の予測の範囲内でありまして良好です。第2段エンジンにつきましては、所定のシーケンスに従いまして着火をして、異常の兆候もございませんでした。
 続いて構造系ですが、フライト中の機体各部の荷重条件や環境条件が良好でございました。SRB-3の構造の一部に許容範囲内ではございますが温度上昇が見られました。これにつきましてはSRB-3やLE-9のプルーム(燃焼ガス)が外部から侵入したということを原因と特定しておりまして、これを防ぐ対策を強化することで対応可能な見込みでございます。次の頁をお願いします。
 こちらが小型衛星の投入軌道の評価でございます。軌道長半径の誤差0.4 km。それから離心率、軌道傾斜角につきましても極めて小さい誤差ということがこちらの表で見ていただけるかと思います。右の図はこれを図に表したもので、横軸は軌道傾斜角の誤差、それから縦軸は軌道長半径の誤差をσ値に換算して表したもので、ほぼ真ん中のところにTF2のデータがございます。他、最近のH-IIAの投入起動のデータと比べても遜色のないものというふうに評価しております。次の頁をお願いします。
 こちらが飛行経路の評価でございます。左上の図は横軸に地表面距離、縦軸に高度を取ったものです。下の図に凡例が書いてございますが、黒い破線が計画の線、赤い実線が飛行結果ということで、ほぼ真上に乗っており計画どおり飛行したということを示しております。
 右上の図が機体の位置を示したものですが、種子島から通常どおり東の方に打ち出しまして、太陽同期軌道ですのでドッグレッグと呼んでいますが右側に舵を切って南に向けていくと。そして、フィリピンの東海上を抜けましてニューギニア島の北の海上で燃焼停止、軌道投入が行われたということを示しております。
 左下の図は、横軸がリフトオフ後の秒時、縦軸が慣性速度ということになっておりますが、こちらも計画どおり加速がうまくいっているということを示しております。
 右下は、同じように加速度を示しておりまして、こちらもほぼ計画どおりの結果を示しております。次の頁お願いします。
 こちらが2号機のフライト結果の最後で、試験機1号機の対策の評価ということでございます。1号機の失敗を受けまして、この表に示します直接対策及び改善を講じて打上げに臨みました。このフライト結果をこちらの表で評価しております。各対策及び改善は妥当であったと評価しておりまして、3号機以降も引き続き適用してまいりたいと考えております。
 まず、2段エンジンの点火器に用いているエキサイタですが、こちらにつきましては内部の電気部品の絶縁強化やX線CTの検査評価といったことを実施してまいりました。また、トランジスタに印加される電圧が定格内となるように部品を選別しました。この結果といたしましては、2段エンジンの着火時のエンジンの電源電流等に過電流や地絡を示す兆候はなく、エキサイタは正常に作動したと評価しております。
 続いて、PSC2(2段の推進系コントローラ)ですが、こちらにつきましてはA系からB系への故障の連鎖を防止するために低電圧ダイオードを削除するという対策を行いました。フライト結果ですが、データから内部短絡の兆候はなく機器は正常に動作したというふうに評価しております。このフライト中には、片系の故障が発生するということで冗長切替えが発生しませんでしたので、連鎖防止の有効性は直接は確認できておりませんが、機器は正常動作しており、この改修が悪影響を及ぼしたということはないことを確認いたしました。
 続いて、改善事項として二つございますが、計測データの充実化というところで、対策効果の確認のために計測項目の追加及びデータレートの向上を行いました。計測データを拡充したことで、先に述べましたエキサイタの作動時の詳細評価に有効であったと評価しております。
 また、冗長切替えのロジック改善ということで、ミッション継続の可能性を広げるためにA系からB系に切り替わるときの判定時間を延ばすといった対策を行いました。これにつきましては、過電流の兆候がなく、ロジックを改善した箇所の効果はA系からB系への切替えが起きませんでしたので直接確認はできておりませんが、先ほどのPSC2と同様に機器が正常動作しておりまして、悪影響がないということは確認できました。次の頁をお願いします。
 こちらからが3号機の準備状況になります。まずTF1、TF2と同様のH3-22S形態という固体ロケットブースタ2基の形態によりまして、先進レーダ衛星(ALOS-4)を打ち上げたいと考えてございます。衛星の分離後にコーストフェーズを経てデブリ防止のための制御再突入を2号機と同様に実施いたします。また、3号機の打上げに先立ちまして、射点での極低温点検を実施いたしまして、試験機の実績からの改善点がいくつかあるのですが、これについて検証を行った上で3号機の打上げに臨みたいと考えております。
 なお、移動発射台に追加整備しておりました機体把持装置につきましては、最終調整に時間を要するということが分かりましたので、今回の極低温点検での検証は見送りまして、後続号機での適用を目指すことにしたいと考えております。次の頁をお願いします。
 こちらが1号機、2号機、3号機との形態の違いを表した表です。赤い文字で書いてあるところが変わったところでございまして、ペイロードがALOS-4に替わる点。その他に、1段エンジンが2号機ではType1が1基、Type1Aが1基という構成でしたが、3号機からはType1Aを2基搭載した形としております。次の頁をお願いします。
 こちらが射場での準備状況を示しております。左側の写真ですが、3月29日に種子島に1段機体が到着し、4月2日に1段、4月3日に2段、4月12日・13日にSRB-3を組み立てるという作業を行いまして、左下の写真にございますように種子島の整備棟で組立をほぼ完了した状態にございます。次の頁をお願いします。
 今後の予定でございますが、現在ロケットの推進系や電気系の機能点検を実施しております。この後、衛星フェアリングを衛星を載せない形で機体に取付けをいたしまして、5月下旬を目標に極低温点検を実施したいと考えております。その後、再度推進系・電気系の点検を行った後、ALOS-4を衛星フェアリングの方に搭載をいたしまして機体に装着するという作業を行います。その後、最終機能点検を経てリハーサル。それから最終の火工品の結線等を行いまして、機体を発射台に移動して、打上げに臨むという形で考えております。音声が悪くて大変お聞き苦しくて申し訳ございませんでした。説明は以上になります。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。ただ今の説明について御意見、御質問がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。鶴岡委員、お願いいたします。
 
【鶴岡委員】 ご説明ありがとうございました。2号機が成功して3号機の準備が順調に進んでいるということで、非常に心強く思いました。2点お伺いしたいと思います。1点目は、1号機の話を余り蒸し返したくもないのですが、3号機に向かっているという中で、やはり1点あらためて確認しておきたいのは、試験機に実用衛星を搭載するか否かの問題です。今回1号機は様々な事情によってALOS-3を積んだと。2号機は試験ということで基本ダミー衛星だったわけです。今後試験機に実用の重要な衛星を積むか否かはその都度の判断だというお話ではありましたが、この2号機の成功を受けて、この点に関する現場の空気感の変化はありますでしょうか。2号機の成功によって変わったところがあるのか、変わっていないのか。結論として試験機にはやはり実用衛星は積まないようにという感じの声が強いのか、あるいは逆に2号機の成功を受けて、試験機のリスクはやはり特に高くないという評価になっているのかというのが1点目です。
 2点目は、試験機の定義についてです。これまではTF1、TF2、そして次はTが取れてF3ですね。これは2号機までが試験機であって、3号機からは試験機ではないということですが、1号機失敗の前から試験機は2回ということだったのでしょうか? 3号機に関してもJAXAが運用に参加する方向だと理解しております。そうしますと、試験機か否かの差といいますか、試験機の定義について、今までは運用形態も大きな要素だったような印象もあったのですが、これは変わってくるのか、何をもって試験機ではないというのかというところで、今回の2号機の成功を受けてもし変更点があるということでしたらご説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【石井副理事長(JAXA)】 最初の点で、3号機へのALOS-4搭載について、今回のマネジメント改革検討委員会でも議論したところでございますので、改めてもう一度ご説明させていただきますけれども、基本的には初号機に対しては性能確認ペイロードを載せる。もちろん何かを載せるということをケースバイケースで判断する可能性は排除しないということをご説明しました。それで、それ以降の号機に対しましてもロケットの飛行実績を評価し、且つ変更点がある場合のそのリスクを評価するというアプローチにし、それらのリスクを踏まえて衛星側で搭載の可否、それから更には最終的には総合的に経営層で搭載についての判断をするというふうに整理をしております。
 今回の3号機の搭載につきましては、まずTF1は試験機1号機でも1段は正常に飛行しておりましたし、それから試験機2号機では実際に2段も含め成功したということでございますが、こういった実績データを基にロケット開発の現場の方のリスク評価というものをしてもらいました。それをJAXA内の独立的な立場にありますチーフエンジニアによりますこのリスク評価の妥当性評価を行っております。これらはロケット開発者のリスク評価、それから第三者の技術評価、これを踏まえて衛星側で打上げ機会の確保の観点も勘案し、搭載の可否を判断したと。要するに衛星側はこれを搭載すべきだろうという判断をしたと。その上で、打上げ全体計画も踏まえて総合的な判断というのをJAXAの理事会議におきまして審議決定をいたしております。3号機へのALOS-4の搭載につきましては、考え方も含めて改めて私が今ご報告しました。2つ目の点については有田さんからお願いします。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 試験機の定義ということでございますが、当初より一つの形態に対しては試験機を1機設けるということで、この22形態については試験機1号機のみで検証するということを考えておりました。この1号機が失敗してしまいましたので試験機2号機は同じ22形態で飛行実施を行うということにいたしました。ということで、3号機につきましては同じ22形態ですので今回は試験機という形には位置付けていないというふうにご理解いただければと思います。
 
【鶴岡委員】 ありがとうございます。そうしますと、運用がJAXAか企業かということではなく、あくまでも一つの形態に対して試験機は基本的に一機ということだったのですね。では今後、22形態以外の、他の形態のときには再び試験機という言い方をすることになるのでしょうか?
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 今後決めていくことではございますが、基本的な考えといたしましては元々の計画では30形態を試験機2号機というふうに位置付けてございましたので、その考え方を踏襲するものというふうに一般的に考えられるかと思います。24形態につきましては22形態の延長線上にあるということで、こちらについては元の開発計画上でも試験機は設けないという考え方にしておりました。
 
【鶴岡委員】 ありがとうございます。仮の話かもしれないのですが、30形態のときにはまた1号機を試験機として、そうしますとそれには実用の衛星は載せない方向と解釈してよろしいでしょうか?もちろんまだ決まっていないとは思いますが。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 そこにつきましては今後の検討・調整だというふうには考えておりますが、原則としては今おっしゃったような考え方でいくのかなというふうに考えておりますが、いずれにしても今後の調整だと思っております。
 
【鶴岡委員】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 それでは続きまして、山崎委員、お願いいたします。
 
【山崎委員】 ありがとうございます。第2号機の御成功、本当におめでとうございます。質問は2点なのですが、まず1点目は、Type2ですね、30形態に移行するその具体的な時期等は今どれくらい見えているのか見えていないのか教えていただければと思います。
 第2点目が、宇宙技術戦略の中でもH3の今後の運用を通じまして自律飛行安全技術の開発と実証を予定していくというふうに識別されていますが、自律飛行安全についてはこの試験機2号機においてもある程度はされていたのでしょうかということです。差し支えない範囲でお願いいたします。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。まず30形態の実証時期につきましては、正に今JAXAの中でも、あるいは政府も含めて相談させていただいているところでございまして、現時点では具体的にお答えできる状況にございません。
 また、Type2とおっしゃったのはLE-9のことと考えてよろしいですかね。LE-9の恒久対策型でありますType2エンジンですが、こちらの実証時期につきましても現在LE-9のType2の開発計画を立て直しているところでございまして、その飛行実証時期についても現在検討中という状況でございます。
 それから、御質問がありました自律飛行安全につきましては、やはりこれは将来に向けて非常に重要な技術だというふうに考えております。私どもとしましても将来的にこれを適用できるように今研究開発を実施しているところでございます。適用号機等についてはまた明らかになったところでお知らせしたいと思います。
 
【山崎委員】 どうもありがとうございました。
 
【村山部会長】 他には御質問等はいかがでしょうか。いいでしょうか? それでは、もうお手は挙がっていないようですので、次に移らせていただきます。
 それでは、次は「「だいち4号」の開発状況について」です。JAXA第一宇宙技術部門の瀧口理事、先進レーダ衛星プロジェクトの有川プロジェクトマネージャから資料の説明をお願いいたします。
 
【瀧口理事(JAXA)】 私は4月から第一宇宙技術部門の部門長を拝命いたしました瀧口と申します。よろしくお願いいたします。ALOSにつきましては、この後ALOS-4をプロマネの有川から詳細をご説明させていただきますが、私も15年前初代の「だいち」ALOSの利用促進ということで、村松先生等かなりお世話になった方々が今日も参加されておられると理解しています。ここで「だいち4号」を打ち上げていくというのは、これはこれまでも部会の方でいくつかご報告されているところと思うので改めて詳細を述べませんが、やはり「だいち2号」の積み上げた実績を継続、それから連続ですね。やはり「だいち2号」ももう10年経っておりますので、いつ設計寿命が尽きるか分からないという中で、やはりユーザーに対しては継続したサービスを提供していくと。私はやはり「だいち」初号機をやっている時に「だいち2号」との間に隙間ができたというのは忸怩たる思いというところもありまして、正に今3号機の方を有田の方から説明ありましたが、このタイミングでやはり「だいち2号」、「だいち4号」とシームレスに投入していくというのは衛星側としても重要だと思っております。それでは、プロマネの有川の方から、有川も次世代系ということで非常に若いプロマネでありますが、有川の方から説明させていただきます。
 
【有川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 それでは、JAXAのALOS-4プロジェクトマネージャをしております有川からご説明させていただきます。音声が途中途切れて聞きづらい点がございましたらご指摘いただければと思います。次のスライドをお願いいたします。
 今、瀧口理事から申し上げましたとおり、「だいち4号」は「だいち」シリーズ衛星のミッションを引き継ぐ衛星でございます。今年3月にJAXA内で「だいち4号」の開発完了を確認いたしましたので、今般この結果をご報告し、先ほどありましたとおり打上げに向けた準備状況をご報告するものでございます。次のスライドをお願いいたします。
 ここはもう先ほどご紹介がありましたとおりですが、初代の「だいち」は2006年に打ち上がりました。そのときは光学・レーダをそれぞれ搭載しておりましたが、2014年に打ち上げました「だいち2号」はレーダミッションを引き継ぐ衛星として、現在もなお運用中でございます。今回「だいち4号」は、このLバンドSARのミッションを引き継ぐ衛星といたしまして、高分解能3mを維持したまま、「だいち2号」から観測幅及び観測頻度を大きく向上させております。幸いにして「だいち2号」はまだ運用を続けておりますので、この継続性・連続性を可能な限り確保し、成果の早期創出や新たな利用開拓を目指してまいりたいと思います。次のスライドをお願いいたします。
 こちら側の「だいち4号」に関する経緯でございます。詳細は割愛いたしますが、2017年1月に先進レーダ衛星(ALOS-4)のプロジェクト移行を報告いたしました。本日の御報告では「だいち4号」として呼ばせていただきます。下の方、2013年12月に宇宙基本計画工程表が改定され、「だいち4号」の打上げがH3ロケット2024年度となされました。また、本年2月に「だいち2号」の運用実績、エクストラサクセスの達成状況を踏まえ、「だいち4号」のアウトカム、アウトプットをより具体化・明確化するということで、JAXAの中で計画変更審査を行って確認してまいりました。次のスライドで詳細にご説明いたします。次のスライドをお願いします。
 今申し上げたとおりですが、「だいち4号」のプロジェクト発足以降、いくつかの状況変化がございました。これを踏まえ、「だいち2号」と比較してどこまで進んだのか、また、最新の宇宙基本計画に対してどのように貢献するのかといったことを示す必要があると考えております。そのため、打上げ年度変更等と併せてJAXAの中の計画変更審査でアウトカム目標、アウトプット目標をより具体化・明確化する見直しを行いました。
 状況変化の一つ目としては、プロジェクト目標の一つ「防災以外の利用」に関して、プロジェクト発足の時には主にインフラ変位に特化した記述となっておりましたが、その後「だいち2号」主に使った利用促進の中で、公共測量への活用、海洋状況把握への貢献、こういった具体的な例が明確化されてきております。
 また、「だいち2号」プロジェクト終了審査をご報告したところでございますが、この中でエクストラサクセスの達成状況もご報告しております。また、プロジェクト発足以降、宇宙基本計画も度々改定がなされており、また、政府の関連する文書等も更新されておりまして、SAR衛星の活用、干渉SARによる地殻変動の監視等の記述が具体化されたこと、また、海洋状況を把握(MDA)等での宇宙技術強化の記載がなされております。これらを踏まえたアウトカム目標の修正を1.3項、また、サクセスクライテリアの修正を1.4項にお示しいたします。
 次のスライドですが、この見直しにあたって考慮した「だいち4号」の強みというものを一度ここでおさらいさせていただきたいと思います。「だいち2号」と比べてということになりますが、新しい技術、デジタルビームフォーミングという技術を採用し、観測幅の拡大、観測頻度の向上を図っております。日本全域において3m分解能で観測幅200 kmの観測ができると。右の図を見ていただきますと、1回帰は大体14日間で同じ軌道位置に戻ってきますが、「だいち2号」ではまだその時に抜けが生じてしまっている。右側の「だいち4号」では抜けなく網羅的に観測できているということがお分かりいただけるかと思います。文章に戻りますが、これによって日本全域を最大年20回程度観測できるということで、例えばより直近の変化、あるいはより精度の高い情報を得ることができるということになります。
 2つ目は広域観測モードでございまして、幅700 kmの観測が可能ということで、右の図を見ていただきますとお分かりのとおり、例えば冬季の流氷監視等においても2倍の観測幅が得られるということになります。また、AISアンテナも搭載しておりますので、船舶過密域における検出率が向上できるということを期待しております。
 3番目としましては、冒頭ありましたとおり「だいち」、「だいち2号」からの蓄積ということで、世界で唯一のLバンドの長期アーカイブということの継続性がございます。いくつか特徴を述べておりますが、ユーザーニーズに応えて「だいち2号」と同じ軌道にするということで、これら二つの衛星データを組み合わせた干渉SARが可能となるといった利点がございます。
 もう一つの強みとしては軌道決定精度の向上がございます。干渉SARという、前回撮った画像との比較を撮るにあたっては、衛星軌道位置の決定精度が大きく寄与いたします。この軌道決定精度を「だいち2号」から高め、より精度の高い情報を得ることができるという特徴がございます。
 次のスライドをお願いいたします。これを踏まえて、「だいち4号」のアウトカム目標ということで改めて整理いたしました。大きく2つの柱がございます。1つ目が事後把握から異変の早期発見へということで、火山、地盤沈下、地すべり等ということになります。「だいち2号」では主に地震発生後や火山活動活発化後ということでしたが、もちろん「だいち4号」でもこれらの観測は続けるものの、観測頻度が向上しますので、3行目辺りですが地殻・地盤変動による異変の早期発見を行いまして、危険判断であるとか注意喚起といった減災を目的に定常利用されることを目指してまいりたいと思います。
 2つ目の柱が地上観測網の補完・補強による貢献です。地上の観測では点での観測になりますので、衛星データによるその面的な観測によって、例えば日本全土あるいは世界の重点地域の網羅的な観測が可能となります。これによって現場作業の効率化を図り、業務負担を軽減することができると考えています。この中で3つのカテゴリーに分けて整理しております。1つ目が、国土強靱化への貢献ということで、インフラの老朽化対策であったり、公共測量への活用であったりといったこと。2つ目が海洋状況把握への貢献ということで、SARとAISの観測情報による海洋状況把握。洋上の船の分布を把握して、効率的な海洋情報の収集に寄与するといったことを考えています。3つ目は地球規模課題への対応ということで、世界の重点観測域の網羅的な観測。また、「だいち」シリーズの特徴であります多偏波といった高分解能観測の活用が期待されます。少し事例を次のスライドからご紹介いたします。次のスライドをお願いします。
 1つ目が、事後把握から異変の早期発見へということになります。SARの特徴でございますが、夜間や悪天候下においても観測可能な「だいち4号」は、災害状況の迅速な把握にも役立ちます。災害前後の観測画像を比較することによって、広範囲の被害状況を一目で確認することが可能となります。こちらにお示ししているのは令和2年7月の熊本の浸水の様子ですが、特にご注目いただきたいのは真ん中の写真で、7月5日の深夜0時の観測結果になります。これは「だいち2号」で撮った画像ですが、深夜にこれだけの流域において浸水が起こっているということを、人やドローン等での観測を行うことは非常に難しいと考えております。したがって、こういったところで人工衛星の力が発揮できるのではないかと考えています。のスライドをお願いいたします。
 それから、高精度な地殻・地盤変動の監視ということで、これはSARの「だいち」シリーズの特徴になりますが、干渉SARの技術活用になります。左上の四角のところですが、異なる時期の2回の観測から送受信の電波のずれを調べると。これによって地表の変動をcmオーダで計測することができます。また、先ほど申し上げたとおり軌道決定精度が非常に向上いたしますので、干渉SAR解析の精度が向上し、価値の高い情報を得ることができる。右側の絵は、ミッションパートナーであります国土地理院が「だいち2号」の画像を使って公開している干渉SARの画像になります。SARマップとして国土地理院のホームページで公開されております。次のスライドをお願いします。
 今年の1月1日に発生しました能登半島地震においては、海岸に沿って大規模な隆起が発生しました。発災直後に「だいち2号」の観測データを用いて地殻・地盤変動の観測を行った結果、この図にあるとおり約4mの隆起が起こっていると。また、こちらは国土地理院による現地の調査とも整合しているということが確認されております。次のスライドをお願いします。
 「だいち2号」から大きく向上した観測頻度によって、異変の早期発見や地上観測網の補完・補強ができると。こちらのイメージを絵にしたものがこのスライドでございます。左側の「だいち2号」では、1回帰14日間経っても全てくまなく網羅することができないということで、次の2周回目は観測地域を一つずつずらしていきながら観測する必要があったと。そのため、日本全土を網羅するには年4回の観測しかできなかったと。ところが、「だいち4号」では2回帰目も同じ範囲を観測できますので、観測頻度が大幅に向上すると。これによって、右側の箱にありますとおり火山活動の継続的な監視、公共測量への活用、インフラ老朽化対策、こういったところに寄与してまいりたいと思っております。次のスライドをお願いします。
 こちらが2つ目の柱になりますが、海洋状況把握への貢献です。「だいち4号」が搭載する衛星のAIS受信機、SPAISE3と呼んでおりますが、「だいち2号」に搭載されているAIS受信機と比べ、船舶が混雑する海域においても個々の船舶の識別を可能とすることができます。この技術を用いまして、SAR観測と連携し、航行の安全確保に貢献するということを考えております。次のスライドをお願いします。
 3つ目の柱ですが、地球規模課題への対応ということで、これは「だいち2号」から継続して発展させていく考えですが、森林や食料資源、エネルギーの確保等、地球規模課題への対応を目指してまいります。左側が森林資源の把握の例です。全球の森林、マングローブの分布を示したもの。右側は食料資源の把握ということで、東南アジアの行政にデータを提供しているものですが、機械学習から得られた水稲作付地域を分析し、利用省庁等にお渡ししているというものの例になります。次のスライドをお願いいたします。
 このスライドは、今度は技術的な観点でのサクセスクライテリアをお示ししたものになります。プロジェクト発足時からの変更点を緑色の部分でお示ししております。上のアウトプット目標は大きく変えておりませんが、3番目の防災以外の利用のところで長期観測データの活用に向けたデータサービスを標準プロダクト後に開始するというふうに明記しました。これは、「だいち2号」の利用を通してやはり長期のアーカイブデータの活用が非常に重要であるといったことが分かってまいりましたので、それを明確化したものでございます。
 また、その下の技術達成目標につきましては、緑色の字のところで、今度は技術的な観点ですが、1.8 Gbps×2系統の高速伝送を軌道上技術実証すると。これはSARのデータがやはり膨大に増えますので、それを迅速に下ろし地上で取得する必要があるということです。右側の備考にありますとおり、これは当初「だいち3号」で実施をする予定だったものを一部「だいち4号」でも引き継いでいると追加したものでございます。また、その下、打上げ後7年のフルサクセス、10年のエクストラサクセスということで明記いたしました。次のスライドをお願いします。
 ここからは少しトピックスが変わりまして、「だいち4号」の衛星システムについてご紹介いたします。左側が軌道上外観図になります。紙面の下側が地球方向になって、紙面の奥側が衛星の進行方向にあたります。衛星の進行方向に向かって右手にPALSAR-3の大型のアンテナを搭載し、左側にSPAISE3のアンテナを搭載しています。進行方向とは逆側に光衛星間通信機器を搭載していると。こういった形態になっております。「だいち2号」と同じ軌道を採用することによって、2号・4号の衛星データを組み合わせた解析が可能となります。右側の諸元につきましては詳細を割愛いたしますが、一点だけ、下から3番目の降交点通過地方太陽時は、おおむね何時に上空を通過するかといったものですので、「だいち2号」と同じく大体お昼の12時ごろ、それから深夜の0時ごろに飛んでくるといった軌道を選択しております。次のスライドをお願いいたします。
 メインのミッション機器でございますフェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ(PALSAR-3)ですが、こちらの他のSAR衛星と比較したベンチマークをお示しした図です。図の横軸が観測幅、縦軸が分解能になります。青い線で囲っているところですが、民間を含めXバンドSARは非常に高い観測幅を持っております。また、ピンク色の白抜きの丸のところで「だいち2号」といったところをプロットしておりますが、このラインが従来方式の限界点でした。これを分解能と観測幅を両立させる右上の方向へ持っていくために新しい技術のデジタルビームフォーミングというものを採用しております。これによって高分解能と広域観測の両立を可能といたしました。
 海外でもこのデジタルビームフォーミングの技術を採用する衛星が出てきておりますが、NASAとインドが共同開発しているNISARも「だいち4号」と同時期の打上げとなるだろうということ。また欧州のROSE-Lという衛星は、2028年以降の打上げが予定されておりますので、こういった分野で日本が先行している状況でございます。次のスライドをお願いします。
 PALSAR-3の観測モード、分解能、観測幅ですが、おおむね「だいち2号」と分解能は変わらず、右下の表にあるとおり「だいち2号」から大幅にそれぞれの観測モードにおいて拡大しているということがお読み取りいただけるかと思います。次のスライドをお願いいたします。
 こちらに新しい技術でありますデジタルビームフォーミングの簡単な非常に御説明のスライドを入れております。まず、SARの観測原理ですが、衛星のアンテナから電波を照射し、跳ね返ってきた電波を受信して、画像(地形図)を得るというものでございます。従来方式ですと1パルス送信し1つの受信信号を処理していたものですが、この絵でいうと4カ所離れた所から時間差をもって跳ね返ってくる受信信号を、一つのタイミングで見れば4つの受信ビームを同時に観測すると。これを衛星搭載の電気回路部でデジタル的に処理をするということになります。これを採用することで、「だいち2号」から観測幅を4倍に拡大することができたということになっております。詳細は飛ばさせていただきまして、次のスライドをお願いいたします。
 もう一つの機器でございますが、光衛星間通信システム(LUCAS)というものをご紹介したいと思います。こちらはJAXAの過去の衛星である「こだま」や「きらり」の技術を発展させた通信システムになります。右上の絵を見ていただくと分かるとおり、周回衛星である「だいち4号」が静止軌道にいる光データ中継衛星に対して光でデータを伝送します。この速度は従来のこだまから約7.5倍に増加しておりまして、1.8 Gbpsという非常に高速で伝送することができます。また、右下の絵にあるように、周回衛星が地上局に送信する時間は約10分ですが、このデータ中継衛星を活用することで約40分連続観測できるということで、即時性の高いコマンド運用、また災害対応等に有効でございます。「だいち4号」の打上げ後、これらの技術実証を行い、光データ中継を経由した観測データの伝送、これを定常的な運用に使っていく計画としております。次のスライドをお願いします。
 「だいち4号」は、先ほど申し上げたとおり2016年度にプロジェクト移行をした後、基本設計、詳細設計、維持設計を行ってまいりました。左下の写真が、それぞれのアンテナあるいは衛星システムの試験の様子をお示ししております。また、本年3月に開発完了審査を終えまして、既に衛星は種子島宇宙センターの中のSFA3という新しい建屋に入り、打上げに向けた準備作業を着々と実施しているという状況でございます。次のスライドをお願いいたします。
 以上の開発状況を踏まえまして、「だいち4号」はH3ロケット3号機により打上げを行う方針としたいと考えております。打ち上がった後、約3日間クリティカル運用ということで、いろんなアンテナを展開していく。また、打上げ後3カ月において衛星システムやミッション機器の初期機能確認を行います。打上げ後6カ月までに標準プロダクトの校正検証運用を行って、それ以降、PALSAR-3の標準プロダクトを提供してまいる予定でございます。次のスライドをお願いいたします。
 この標準プロダクトの利用に向けて現在データ配布方針というものを固めております。協定ユーザー等に向けた方針は、まず2027年度までの間につきましては「だいち2号」の配布方針を継承し、それ以降は民間からの配布への移行を含め検討・調整を進めてまいります。確定しているのは緑の縁取りのところになります。また、一般ユーザー向けの方針につきましては、官民連携でのデータ提供サービスを目指して現在準備・調整をしているところでございます。次のスライドをお願いします。最後のスライドになります。
 「だいち4号」の打上げ・運用状況の公表につきましては、今後JAXAホームページ、プレスリリース、打上げ特設サイト等を使って継続的に情報発信を行ってまいります。また、だいちシリーズ衛星の応援アンバサダーに就任していただいております三浦 大知さんに登場いただきまして、この三浦 大知さん目線での分かりやすい情報発信を引き続き継続いただく予定です。「だいち4号」の理解促進のための広報イベント等を引き続き実施してまいります。打上げ前に限らず、打上げ後も引き続きこういった利用成果、「だいち2号」との協調観測等々を公表し、利用定着に向けて取り組んでまいりたいと考えております。私からは以上です。
 
【村山部会長】 丁寧な御説明どうもありがとうございました。ただ今の説明について御意見、御質問がありましたらお願いいたします。まず、鈴木委員、お願いいたします。
 
【鈴木委員】 鈴木でございます。説明ありがとうございました。非常に分かりやすい説明だったのですが、頁15で記載されている図が分かりやすいかと思うのですけれども、スポットライトモードとか、そういったモードは同時に起動できるものなのかとか、後は、スポットライトモードで見られる領域というのは限定されると思うのですが、どういう決定プロセスでどの領域を見ると決められるのか、その辺りを教えていただいてもよろしいでしょうか。
 
【有川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ご質問ありがとうございます。おっしゃるとおりスポットライトモードというものを具備しております。これらの観測モードは同時には残念ながらできませんので、選ぶ必要がございます。図16頁の絵を見ていただくと分かりやすいかと思いますが、日本域を定常的にカバーするためのモードとしては、高分解能モード、Stripmapモード(右上の緑色の所)このような常時舐めるような形で網羅してまいります。それ以外、例えば災害が起こったときに詳細に状況把握したいときには、Spotlightモードで観測をする。また、広い領域、例えば海洋を見たり、トルコで起こった大地震の様子を広いエリアで観測したいといったときには、広域観測モードを選ぶということになります。ですので、事前の計画を立てまして基本的には高分解能のモードを撮像するのですが、JAXAやミッション、協力機関の要請に応じて、これらのSpotlightモード、広域観測モードの撮像場所を選んで、あらかじめ計画していくという運用になります。
 
【鈴木委員】 分かりました。そういった要望に従って決定されるということですね。もう一つよろしいでしょうか。「だいち2号」の運用の実績で記載されている部分が21頁ぐらいにあったかと思うのですが、「だいち2号」では有償で画像が配布されていたり、実費と書いてある部分とかが多分計算ができるものかと思います。どれくらいの費用とかでどんな形で「だいち2号」が配布されていて、「だいち4号」でもその上限みたいな記載も存在しているのですが、具体的な数字ではなくてもよいのですけれども、どういった形で上限等が決められているかといった部分を、その運用の期待のようなところを回答の中から推し量ることができそうかという意図で質問させていただきたいと思います。
 
【有川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。「だいち2号」のデータ配布実費につきましてこの場で詳細にご説明することは控えたいと思いますが、「だいち2号」から「だいち4号」に向けて、同じ幅の50 kmを1シーンと定義しておりますが、この1シーン当たりの単価は下がっております。これは掛かる経費、計算機だとか解析機だとか、こういったものに対して観測できるデータ量で提供できるシーン数を割ったもので実費として計算しておりまして、「だいち4号」では効率的に提供できる状況になっております。
 「だいち2号」の一般ユーザー向けの民間から実費というところに関しましては、現在「だいち2号」のデータ配布を行っていただいている事業者さんがございますので、そちらの価格に準じているというところになります。「だいち4号」の実費の民間データ配布につきましては現在まだ調整中ですので、ここで回答するのは差し控えたいと思いますが、なるべくその民間の活力も使いながら、いろんな方々に使っていただきたいと考えております。鋭意準備をしているところです。
 
【鈴木委員】 素晴らしい技術だと思いますので、適切な価格設定で広く利用されて、持続可能な運用が実現できるように期待しています。ありがとうございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。ただ今5名のお手が挙がっておりますので、順番にお願いいたします。まず、松岡委員、お願いいたします。
 
【松岡委員】 ありがとうございます。京都大学の松岡です。カメラがオンにならないので、このままで質問差し上げます。2点あります。1つは、アウトカム目標、アウトプット目標の見直しを行われたという御説明を頂きました。衛星の開発は長い時間が掛かるので、その後のいろいろな状況に合わせて見直しをされる、柔軟な更新は大変良いことと思いました。一方で、衛星の仕様というものはかなり早い段階に決まるものなので、状況の変化に柔軟に対応するのが難しい面もあるかと思います。今回このように見直された内容は衛星のハードウェアには関わらないような、例えば衛星の運用であるとか地上のデータ処理の更新で吸収できるようなものなのか、教えていただければと思います。これが1点目です。
 もう1つ質問があります。今回、「だいち」シリーズをシームレスにやることに非常に意味があるという御説明があり、それは大変そのとおりだと思います。一方で、残念ながら「だいち3号」が喪失するということがありました。大変御説明はしづらいかもしれないと思うのですが、そういうシームレスなシリーズを行うという観点で、「だいち3号」が喪失してしまったことの影響についてどのように考えておられるか、また、悪い影響をなるべく出さないように「だいち4号」でされていることがあれば教えていただきたいと思います。この2点をお願いいたします。
 
【有川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ご質問ありがとうございます。まず1点目を私の方からご回答いたします。アウトカム目標の見直しということで、なかなか開発段階途中において大幅な見直しというのは難しかったのですが、今回やらせていただきました。御理解のとおり、衛星搭載機器に対する修正は入れておりません。地上システムの処理であるとか提供方式、また、利用のパートナーの拡大といった利用促進の面において、このアウトカム目標を反映していくという形をとっております。
 
【瀧口理事(JAXA)】 2番目の御質問は私の方からでよろしいでしょうか。「だいち3号」を喪失したところの影響みたいなところだと思うのですが。
 
【松岡委員】 はい。お願いします。
 
【瀧口理事(JAXA)】 私は「だいち」シリーズの1号機の時にかなり推進してきて利用を伸ばしてきたという活動をやっておりましたので、やはりここの観測継続性は非常に大事だという中で、「だいち3号」の打上げの時ですらもう10年間隔が空いていたというところは非常に忸怩たるところがあります。初代「だいち」には、地球観測衛星はまだ大型化時代で、LバンドSARと立体視センサ、マルチセンサと三つ相乗りしておりました。「だいち2号」以降、やはりセンサを一つずつ分けて、そのセンサの強みをもっと最適化して出していくということで、2号・4号はLバンドSARで継続で来ております。「だいち」のこの立体視、いわゆる可視画像のところは「だいち3号」に引き継いだのですが、昨今「だいち3号」の見える画像というのは、民間活動の方も活発になってきたということもあり、今正にその「だいち3号」の後については、CONSEOといったコンソーシアムを立ち上げながら、どうあるべきかという御議論をさせていただきながら、今正に文科省さんや内閣府さんとも含めて、うまく民間の画像を活用しながら正にそのアプリケーションとしての強みが出るようなスタイルを考えているところでございます。以上です。
 
【松岡委員】 1点目も2点目も大変明確なお返事を頂きました。どうもありがとうございます。
 
【村山部会長】 それでは、続きまして田中委員、お願いいたします。
 
【田中部会長代理】 皆さんから御質問があったところのプラスアルファ的な聞き方になると思うのですが、私も2点質問したいと思います。1つ目は、いま瀧口理事もおっしゃっていましたが、やはりシームレスに「だいち2号」から間隔を空けずに取るというのは、今後のすごく大きな強みだと思います。よって、意外に早く上がりそうでそれはとても良いことだと思っているのですが、実際問題例えばESAのセンチネルなんていうのは多分20年計画を最初から立ててやっておられます。例えば今後のことを考えると、やはり「だいち」のLバンドの継続性というのはすごく大きな強みだと思うのですが、それくらいの長期間な展望というのはなかなか描けないのでしょうかというのが1つ目です。特にサクセスクライテリアのところでも長期観測データを活用するサービスみたいなことを考えておられるようなことを言っておられるので、そういう長期展開みたいなものは結構大きいかというふうに思います。
 それから、NISARが挙がっていましたが、NISARは同じようにLバンドで同じ頃に上がるというふうに今のところ聞いていますけれども、NISARとやはりどうしても比較をされてしまうと思うのですよね。そのときの一つの強みは継続性。もう一つは多分やはり3mの高分解能だと思うのです。やはりその強みをすごく大きくアピールできるようなことができればよいかというふうに個人的には思っています。
 2点目はそれに関係はしているのですが、いつも気になるのはやはりデータ配布方針なのです。NISARはもう無料で皆に配りますといっていて、なかなかそれは個々に事情がありますので同じようにできないということは重々承知なのですが、2027年度までは「だいち2号」のデータ配布方針を継承されるということでした。ということは要するにRA(Research Announcement: 研究公募)ベースということなのですよね。そうすると、特に海外のいろんな方と話していると、そこのところでかなり使いたいという希望はあるけれども使うのに一段ハードルがあるというのはやはりどうしても事実になってしまうと思うので、そこのところを押してでもやはり利用価値があるということを主張していくしかないかというふうに思っています。すみません、雑ぱくになりましたが以上2点、よろしくお願いいたします。
 
【瀧口理事(JAXA)】 最初の方の質問です。私も地球観測の継続性というのはずっとこの10年以上訴えてきているところでもあり、やはり継続した仕組みでようやく「だいち」の成果が認められてきているというのは、本当に継続があっての積み上げなのだなと思っています。
 正にALOS-4の後、新しいレーダ衛星をどうするかといったところは、正に文科省さんそれから先ほどのCONSEO、内閣府さんといった所と正にご議論させていただきながら、というところで、できるだけ長期計画という形で長い中長期プランを作れるとよいのではないかと思うのですが、昨今やはりエコシステム、持続可能な仕組みというのも考えなければいけないということで、全部税金というのもなかなか厳しいという中で、民間活力を入れるうまい方策、いわゆる環境でいえばグリーンビジネスみたいな感じですかね、民間の活力をうまく入れながらどういう枠組みだと本当に真の中長期になるかというところを今ご議論させていただいている最中でございます。以上です。
 
【有川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 有川です。その点につきまして回答させていただきます御指摘のとおりNISARが同時期に打ち上がるということになります。NISARは最大7m、基本的には10m以下の分解能ということで、御指摘のあったとおり「だいち2号」・「だいち4号」の3m分解能というのは非常にアピールポイントになろうかと思います。
 もう一つ、本日の説明では詳細を割愛いたしましたが、4偏波といったところも海外の衛星にはない大きな特徴であると思っておりますので、こういったところを日本国内だけでなく世界にもアピールできるような形で利用促進をしてまいりたいと思います。
 データ配布方針につきましては、御指摘のとおり一つはオープンフリーという流れもあるかというふうに承知をしております。現在「だいち2号」では一般ユーザーに向けてこの3m分解能のデータを配布事業として提供させていただいているということであります。もし仮にここを欧米並みのオープンフリーとする場合には、JAXAの中でも大規模なインフラ改善等のインフラの投資、資金が必要となるといったような観点。また、これまでの「だいち2号」の利用でアーカイブデータの利用、長期の撮り溜めたデータを使うことが非常に有意義であるということが分かってまいりましたので、個別のデータ新売りではなく、クラウド上でアーカイブされたデータを使いやすい形で提供していくということが望ましいということが分かってきていると承知しています。したがいまして、こういったところで瀧口理事からありましたとおり民間の活力も使いながらそういった事業を行っていただいて、より使いやすいデータ提供環境を整えていきたいというのが現段階のJAXAの考えです。以上になります。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。あと3名の方ですが、まず秋山委員、お願いいたします。
 
【秋山委員】 秋山です。よろしくお願いいたします。光衛星通信システムのLUCASについて質問させていただきたいと思います。元々LUCASの衛星側の搭載がALOS-3であったと思いますので、ALOS-4で最初の実運用の搭載ということになるのかと理解しておりますが、そうしますと、データ通信の大容量化・長時間化というのは非常に重要なこととは思いますが、一方で、これが初めての運用ということになるかと思いますので、今後利用していくときに光通信ならではの何かリスクといいますか課題というのが現在あるのかというところと、それから、特に災害時のような緊急の重要なところで、そうした利用のときに光通信のリスクみたいなものが発生してしまうようなことが起きたときに、そのバックアッププランといいますか、通常の電波での通信との使い分け、その基本的な考え方みたいなものがあれば教えていただけないでしょうか。以上一点です。よろしくお願いいたします。
 
【瀧口理事(JAXA)】 では私の方から回答させていただきます。光通信はJDRSの打上げからもう3年以上経っておりまして、JDRSはその間、地上のダミーと光通信の試験をいくつか重ねておりまして、できるだけそのリスクの排除というところには努めてきております。我々も当然ALOS-3や4に積む側の通信装置は地上で検証しているところではあるのですが、それは確かに軌道上での初稼働になります。我々も光通信グループのメンバーを、人を維持したままALOS-4の初期機能確認(上がった後の機能確認)に集中的に参加させて、バグ出しといいますか十分な検証を行うという計画でおります。その検証を見てどういう場面で光を使っていくかというのは考えていきたいと思っています。非常に信用の置けるステータスになっていれば当然緊急対応にも使えますが、一方で地上との従来型の通信方式も併用しながら、どこだったら運用として最適になるか、それから、技術的なリスクみたいなものがあればそれも勘案しながら、運用計画を練っていきたいと。しっかりまずは軌道上で光通信の検証をしていきたいと思っています。以上です。
 
【秋山委員】 分かりました。どうもありがとうございました。
 
【村山部会長】 それでは、続きまして米澤委員、お願いいたします。
 
【米澤委員】 どうもありがとうございます。米澤です。私からは21頁のプロダクトの利用に向けていというところを中心に3点ほどお伺いしたいです。まず1点目が、防災に非常に重要だということはもう本当にそのとおりなのですが、やはりそれ以外のところでも使える、先ほど4偏波観測ができるというのを聞かせていただいてすごく良いと思ったのですが、そういう多機能なところがあることについて、関係する省庁等に働き掛けていらっしゃることを、もう少しご紹介いただきたいというのが1点目です。
 それから、広報の面で三浦 大知さんを起用しているというので楽しく見させていただいているのですが、せっかく力を入れていらっしゃるので、広報に何を推してもらうかというようなところがもし整理できていたら教えていただきたいです。
 それから、3点目で運用計画なのですが、運用計画はほぼできているのか、それとももう少しぎりぎりまで練り直すのかというところです。この3点を教えてください。
 
【有川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございました。いずれも重要なポイントかと思います。データ配布方針につきまして、防災以外の利用に向けた取組ということでご質問いただきました。もちろん政府の省庁、ユーザーさんにも、「だいち2号」、4号がタッグを組んで働き掛けを行っているということになります。また、スライドではご紹介しておりませんが、「だいち2号」のALOS-2の事業化実証といったところで、各自治体さん、企業さんをはじめ、そういった「だいち2号」を使って実証していただくといったことも進めております。また、このスライドの中で研究ユーザーといったところを盛り込んでおりますが、RAとして今3年間で240件を超える非常に多くの研究ユーザーさんに参加いただいているということですので、こういったところから利用を広げていくというふうに考えてございます。
 次の三浦 大知さんに解説いただいているというところです。現段階では衛星の仕組みであるとか衛星の動きといったところの発信というものが中心になっているかと思います。今般打上げ時期が明確になりましたら、もう少し利用といった側面も重視いただきながら、より理解を深めていっていただいて、一般的に使っていただけるようにつなげていきたいと思います。
 3点目は運用計画ですが、打ち上がった後の運用計画につきましては、おおむね3カ月ごとに運用計画を見直す予定です。現在打上げ初期の運用計画を調整している状況です。その後も運用状況を含め定期的に見直しをする計画としております。
 
【米澤委員】 どうもありがとうございます。
 
【瀧口理事(JAXA)】 米澤先生には初代「だいち」の時から大変お世話になっておりますので、引き続きEORC(地球観測研究センター)等々、RAとかでも活用していただいて、「だいち」の幅を伸ばしていただけると大変有り難いと思っております。
 
【米澤委員】 楽しみにしています。どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、最後になりましたが村松委員、お願いいたします。
 
【村松委員】 村松です。今まで皆さんがいろいろ聞かれたことで大体網羅できているかとは思うのですが、やはりデータの配布の件では、ユーザーの裾野を広げて増やせば、もし有償になるにしても、大分先かもしれませんが将来的には単価も下げられると思います。ぜひ一般ユーザーの辺りで、元々RAで使ったユーザーから一般ユーザーになっていく可能性もあるのかもしれませんが、近年のクラウド上での解析したデータの利用サービスなども利用しながら、余りパワーユーザーではない人もこういうデータに慣れ親しんで使っていけるような環境をぜひ整えていただければと思います。以上です。
 
【瀧口理事(JAXA)】 村松先生にも本当に初代「だいち」からお世話になっておりますので、またRA等でご協力いただけると有り難いと思っていますし、また他の個別の連携協定といったところも引き続き我々の利用センターといったところで推進しておりますので、必ずしも全部商用ベースでというわけではないと理解しております。以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。H3ロケット3号機での「だいち4号」の打上げに向けて、引き続き準備を進めていっていただければと思います。今日はどうもありがとうございました。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 それでは、本日最後の議題に移りたいと思います。最後の議題は「与圧ローバによる月面探査の実施取決めへの署名について」です。皆様に御案内のとおり今月10日、盛山文部科学大臣とネルソンNASA長官との間で与圧ローバによる月面探査の実施取決めが署名されました。本日はその内容について文部科学省より簡単にご報告いただきます。それでは、宇宙利用推進室の鈴木室長、よろしくお願いいたします。
 
【鈴木宇宙利用推進室長】 画面に出ております1枚紙を中心に説明させていただければと思います。最初の1ポツが経緯になりますが、参考資料として付けました3頁目に詳しい経緯がございますので、もしお手元に資料があるようでしたらそちらも見ていただければと思います。
 アルテミス計画については、アポロ計画の対になるという意味でアルテミス計画と名付けられましたが、アポロ計画と違う点として、将来の火星有人探査も見据えて国際パートナーと一緒に月面探査を目指す計画であるという点です。日本は2019年に宇宙開発戦略本部において参画方針を決定しています。具体的な協力については、2020年7月に、当時の文科大臣である萩生田大臣とNASA長官でゲートウェイへの機器等の提供や月面を探査する与圧ローバの開発を目指すという共同宣言に署名をしています。ゲートウェイについては2020年に了解覚書、2022年に実施取決めの方を結んでいますが、4月に月面に関する実施取決めを結びました。次のポツにございますように、2021年には岸田総理から「2020年代後半に米国人以外で初となる日本人の月面着陸の実現を図る」という目標が示されました。
 「与圧ローバによる月面探査の実施取決め」の具体的な内容ですが、日本は与圧ローバの開発の運用を行うこと、米国は日本人宇宙飛行士2回の月面着陸の機会を提供すること等が規定されています。その他、具体的な運用の管理の在り方等も規定しています。その他、着陸時期については可能な限りの早期の搭乗と、与圧ローバが月面に到着したタイミングを考慮するとなっており、与圧ローバの打上げは2031年を目指すとなっております。ローバの運用期間については月面到着後10年間を目指すとしています。
 日本人宇宙飛行士の月面着陸の時期について、具体的なところは実施取決めには記載されていませんが、4月10日の日米共同声明において日本人宇宙飛行士が米国人以外で初めて月面に着陸するとの共通の目標が発表されております。また、去年の12月にはハリス副大統領が米国だけでなく外国の宇宙飛行士もこの10年の終わりまでに月面に降り立たせると言いましたので、これと併せて考えますと、1人目についてはこの10年の終わりまでに米国人以外初として月面に行く。2人目については与圧ローバが月面に到着したタイミング(2031年ごろ)を目指すことが明らかにされました。
 アルテミス何号機に乗るかについては4頁目をご覧ください。アルテミス計画の進捗状況を記載していますが、アルテミスの1号機には人は乗せず、実証機として既に飛んでございます。続く2号機については、月には着陸せず周回を回りますが、2025年の打上げが目指されています。3号機が2026年に打上げ予定でして、これが初めての有人月面着陸になりますが、おそらく米国人宇宙飛行士のみであろうと予想されていますので、早ければ2028年のアルテミス4号機に日本人が乗れると考えられます。
 5頁目に、有人与圧ローバの開発のフロントローディングの資料がございますが、有人与圧ローバの本格的な開発については今後概算要求をします。今は重要な技術要素についてフロントローディングを実施しているところです。今後、有人与圧ローバの開発の具体的な内容・進め方については、宇宙開発利用部会の委員の皆様にもご意見を頂きたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。ただ今の説明について御意見、御質問があればお願いいたします。いかがでしょうか? テレビでもかなり報道されたトピックですが、よろしいでしょうか? ありがとうございました。与圧ローバの開発含めアルテミス計画の進捗状況については、今後も適宜当部会でご報告いただければと思います。それでは、本日の議事はこれで終了となります。最後に事務局から連絡事項があればお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 本日もありがとうございました。会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は文科省ホームページに既に掲載させていただいております。また、議事録につきましては委員の皆様にご確認いただいた後、文科省ホームページに掲載させていただきます。最後に、次回の宇宙開発利用部会ですが、6月ごろの開催を予定しております。委員の皆様には別途ご連絡いたします。事務連絡は以上となります。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。以上をもちまして閉会といたします。本日も長時間にわたり、誠にありがとうございました。それでは、これで終了いたします。
 

―― 了 ――

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研究開発局宇宙開発利用課