宇宙開発利用部会(第84回) 議事録

1.日時

令和6年3月25日(月曜日) 13時00分~15時30分(一部非公開)

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 官民連携による光学観測事業構想について
  2. 宇宙技術戦略と宇宙戦略基金について(一部非公開)

4.出席者

委員

部会長 村山 裕三
部会長代理 田中 明子
臨時委員 秋山 文野
臨時委員 笠原 次郎
臨時委員 金井 宣茂
臨時委員 木村 真一
臨時委員 芝井 広
臨時委員 白井 恭一
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 鶴岡 路人
臨時委員 村松 加奈子
臨時委員 山室 真澄

文部科学省

研究開発局長 千原 由幸
研究開発局宇宙開発利用課課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 池田 宗太郎
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一
研究開発局宇宙開発利用課 宇宙科学専門官 豆佐 哲治
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 橋本 郁也
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室室長補佐 館下 博昭

(内閣府)
宇宙開発戦略推進事務局 参事官補佐 吉元 拓郎

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 第一宇宙技術部門 衛星利用運用センター統括 平林 毅
 第一宇宙技術部門 衛星利用運用センター主幹研究開発員 占部 智之
 第一宇宙技術部門 衛星利用運用センター主幹研究開発員 今井 浩子
 経営企画部 企画課長 笠原 希仁
 経営企画部 企画課 参事 平野 義鎭
 経営企画部 宇宙戦略基金準備室 参事 渡邉 陽平
 経営企画部 宇宙戦略基金準備室 参事 相原 素樹

5.議事録

【村山部会長】 定刻になりましたので、第84回の宇宙開発利用部会を開催いたします。今回も前回同様、オンラインでの開催となっております。委員の皆さまには、ご多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。まずは、事務局から本日の会議に関する事務連絡をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局の宇宙開発利用課の竹上でございます。本日は宇宙開発利用部会16名の委員のうち12名に出席いただいております。本日の資料は議事次第のとおりでございます。オンライン状況について、音声がつながらない等の問題がございましたら、事務局へメールや電話等でご連絡ください。事務局からの連絡は以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。本日の議題は2件あります。2番目の議題については、一部政府内で検討中の内容が含まれますので、その部分については当部会運営規則第3条3号の定めにより、非公開とさせていただきます。それでは、早速議題のほうに移りたいと思います。
 最初の議題は「官民連携による光学観測事業構想について」です。昨年7月に行われた第77回の当部会において「次期光学観測ミッションの方向性について」という議題で一度議論させていただきました。その後、文部科学省及びJAXAを中心に、さらなる具体的検討が進められてきており、本日はその内容について、改めてのご確認とご助言をいただきたいと考えております。
 それでは文部科学省より資料のご説明をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 文部科学省より、資料84-1に沿ってご説明したいと思います。まずは1ページ「はじめに」というところをご覧ください。今回の議題の位置づけと、そこに至る経緯を簡単にまとめているので、ご紹介できればと思います。既にご案内のとおり、文部科学省及びJAXAは、令和5年3月にALOS-3の喪失等を受けて、同衛星の再開発の要否も含めた光学観測の今後の方向性の検討を加速し、CONSEOにおける検討、あるいは文科省及びJAXA、関係省庁との意見交換等の結果を踏まえ、昨年夏、次期の光学観測の方向性について一定の整理を実施し、文科省ならびに内閣府でご報告させていただきました。その後、JAXAにおいては、官民連携での事業構想の共同概念検討を継続してやっていただいておりますし、文科省でも関係省庁あるいはJAXA、民間事業者等との更なる意見交換を行ってきております。
 4ポツ目ですが、並行して予算面では、この夏の方針を受けて概算要求しておりましたところ、令和6年度予算案において、JAXAの交付金で次期光学観測に向けた研究開発、いわゆるフロントローディングの経費を新規計上しておりますし、令和5年度補正予算として民間企業や大学等に対するJAXAの資金供給機能を強化するための基金が創設されました。さらに宇宙政策委員会では、今月中に宇宙技術戦略を策定予定でございまして、現状の宇宙技術戦略案ではこうした一連の検討内容を踏まえた上で、光学観測関連技術のところに記載がなされているところです。以上の状況を踏まえまして、今回改めて官民連携による光学観測事業構想、昨年夏のときは次期光学ミッションと言っておりましたが、事業構想という名前に変更しまして、具体的な取組の全体像・スケジュールを今回改めて整理を行いましたので、ご確認いただければと思います。
 次に2ページをご覧ください。こちらは参考ですが、昨年夏に出した次期光学ミッションの方向性です。下半分のポツのところですが、政府およびJAXAが公的投資も含めて関与することが望ましいという方向性と、5つのミッション実現ということでアジャイル型のミッション、利用ニーズに適格に対応するミッション、革新的な衛星三次元地形情報生成技術の開発・実証に取り組むミッション、コンステレーションを活用・高度化するミッション、官民の適切な役割・投資分担に基づくミッションということで、5つの方向性を出しております。ただし、これは、やりたいことがフルに、全部方向性として書いてあるので、狙いや優先順位、スケジュールをより具体化・ブラッシュアップしていくようにという宿題をいただいておりまして、本日に至るという状況でございます。
 次に3ページをご覧ください。技術戦略における光学観測関連の主な記述です。リモセンというパートがございまして「丸2、時間情報を拡張するコンステレーション技術」という記載がございますが、コンステレーションは非常に様々な価値が生み出せるため、大きな先行投資が必要ということで、高頻度実証・量産化技術の確立・商業化加速に向けた支援の強化が重要であるとされています。また次のパートで、光学センサについては、40cm級の高解像度化・高指向精度化が非常に重要であることや、三次元地形情報の高精度化においては、鉛直方向の地上位置精度1m級の高精度の三次元データの獲得が見込まれるということ、あるいは光学衛星コンステレーションの協調観測等を見据えて、高度計ライダーのISSでの宇宙実証を2020年代後半でやること、さらにその先の衛星への搭載を目指して技術の獲得・実証に取り組むことが非常に重要であるということが記載されており、さらには、革新的な高度計ライダー技術の獲得に向けた技術開発に挑戦することも非常に重要であるという記述がなされております。
 次の4ページが、本日ご確認いただきたいところでございます。技術戦略案が3月に出ておりますので、今説明した内容と重なる部分が多いのですが、取組の全体像(案)として整理させていただきました。一つ目の囲みのところは、いわゆる光学イメージャのシステムに関する記述です。これまでALOSシリーズを通じて、JAXA主体で進めてきた低軌道上の光学衛星観測は、今後、民間事業者主体の取組へとシフトしつつ、国・JAXAによる民間事業者の観測・利用技術の高度化支援を推進するという方向性が一つ目。二つ目はスペックですが、まずは防災・減災、地理空間情報の整備・更新等のニーズへの対応が早期に必要となることから、分解能40cm級、観測幅50km相当以上の小型光学衛星による観測システムを、民間主体で2020年代後半までに開発・実証するということを、最優先で実施することを記載しております。
 この背景として、参考資料の7~8ページにあるような、ユーザーとの意見交換を踏まえた結果として整理をさせていただいております。
 また、3つ目のポツを一つの目標としつつ、アジャイル型の開発を通じて段階的に機能・性能向上を図りつつ、緊急観測や学術研究等の公的ニーズにかかるデータ利用の枠組みは、しっかりと検討・構築するということも記載しております。これが一つ目の光学イメージャに関する取組・方針となっております。
 次は鉛直方向のライダー技術でございます。こちらは高さ方向の高精度観測を可能とする高度計ライダー衛星について、こちらについては技術開発要素が非常に多いところでございますので、まずはJAXA主体で技術開発を実施するという方向性を書かせていただいております。その際に、今後の概念設計、フロントローディング研究をしっかりと進め、開発目標を明確にするとともに、小型軽量化や低コスト化の実現性等をもとに本格開発への移行判断を行うということも記載しております。本格開発への移行と判断された後は、ライダー衛星とイメージャシステムとの協調観測を見据えて、新規技術も柔軟に取り込みつつ、2030年頃までにJAXAにおいて、ライダー衛星の技術開発・軌道上実証を行うとしております。民間事業者はこれを活用して、三次元地形情報生成技術を獲得するということも記載しております。
 三つ目は革新ライダーに関わる話で、光学観測システムにブレイクスルーをもたらし得る、革新的な高度計ライダー衛星の実現を目指し、大学・民間事業者等における小型・高効率・高機能なレーザー技術等の要素技術開発や商業化に向けた取組を、中長期的に促進するという柱を掲げています。
 これをスケジュールという形で5ページ目に整理をさせていただいております。1つ目の柱のところが一番上のラインになります。まずは小型光学衛星による観測システムの開発・実証をアジャイルに行い、2020年代後半までに軌道上実証、要は解像度40cm、観測幅50kmを超えるシステムを2020年代後半までにしっかりと実証していくことが一つ目です。さらにイメージャは小型衛星のため更新が必要になってきますので、ここも民間主体でシステムの高度化なども5年間隔で必要になってくるということで、ライン上に記載しております。
 真ん中にある中段のラインがライダーに関わるところですが、高度計ライダー衛星の開発・実証ということで、まずはJAXA主体で概念設計等をし、開発移行可否判断の後に開発・軌道上実証を2030年頃までに、しっかりとやり遂げるという目標を記載しております。もちろん移行できないという判断もあると思いますので、そうした場合は、一番上のラインの光学イメージャのシステムを最優先でやっていくことになります。また、革新的な高度計ライダー衛星に向けた技術開発・実証は、要素技術開発から軌道上実証まで、約10年の時間をかけて取り組んでいき、最終的な目標としては、全体のシステムを統合して新たな衛星システムの構築・事業創出につなげていきたいという構想をまとめさせていただいているところです。
 最後に7~8ページの補足資料について説明すると、文科省において、昨年もユーザー省庁さんと意見交換させていただいておりましたが、この2月や3月も文科省・JAXA、民間事業者と国土交通省、農水省、防衛省等の関係省庁間で、令和6年能登半島地震での光学衛星の活用状況も含めて、次の光学システムのスペックなどについて、右側に書かれているようなことを意見交換させていただきました。今回、小型光学衛星による観測システムのニーズとライダー衛星のニーズについて、ページを分けて整理させていただきまして、特に小型衛星による観測システムのニーズは、ALOS-3相当のものをユーザー省庁としても、しっかりと実現してほしいということで、観測幅50km以上・解像度40cmという目標を設定させていただきました。
 8ページ目のライダーに関しては、これからJAXAが事業としてやっていくので、現時点で出てきているニーズになります。これについては、引き続き、関係省庁とJAXAでスケジュールの検討等をしていく予定です。
 9ページ以降には、小型観測衛星システムのイメージや、今回やっているフロントローディングの内容、あるいはライダー衛星の観測イメージをつけております。文科省からの説明は以上となります。
 
【村山部会長】  どうもありがとうございます。それでは、ただいまの説明に対してご意見やご質問がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。秋山委員からお願いいたします。
 
【秋山委員】  秋山です。小型光学衛星とライダー衛星を2つ合わせたシステムに、将来的になっていくということで、その前半の小型光学衛星の部分についての質問です。今のご説明ですと、小型光学衛星で分解能40cmを目指した衛星を民間の力で整備していくというところで、宇宙戦略基金を活用するということと理解いたしました。その場合、衛星の開発に入っていただく民間の方ですが、昨年の提案の段階で既に提案をされた民間事業者さんがいらっしゃることは承知しておりますけれども、宇宙戦略基金を活用するということですと、これから募集を行う際は、募集して手を挙げた事業者さんから選定ということになるのでしょうか。
 
【竹上企画官(事務局)】 秋山委員、ご質問ありがとうございます。基金でやるかどうかということは、これから最終的な意思決定が必要になりますが、基金も選択肢の一つだと思っています。当然、宇宙戦略基金を使う場合は、公募事業でございますので、いろいろな事業者さんが手を挙げられるように意識した上で取組を進めていく方針とさせていただく予定です。もともとCONSEOを通じて事業者さんからいろいろな提案がありました。それをどれか一つに選んだというわけではなく、その3つの構想のいいところをとって、現在制度設計をしているところです。またライダーに関してはJAXAの交付金なので、そこは、そうした事業者さんとは別途に検討することになります。光学イメージャのところは、基金で公募をするのであれば、いろいろな事業者さんが関心を持って手を挙げていただけるのではないかと思います。このコンセプトに沿った形でやっていただく形になると思いますし、今後、事業者さんに対する条件設定をしていくための全体像だと思っています。
 
【秋山委員】 わかりました、どうもありがとうございました。
 
【村山部会長】 続きまして、白井委員お願いいたします。
 
【白井委員】 アジャイル型開発によるコンステレーションについてお願いです。この方式を採用することについての納得感はありますが、過去の経験値からいくと、従来型の開発方針に比べてこの方式の不具合発生確率は、高まると考えています。一定の不具合発生確率を折り込んだ上でのプロジェクトということなのだろうと思います。
 もう一つ、こういったコンステレーションを作ったときに、結構怖いリスクがあると考えております。先月、4基で構成しようと思った衛星が、4基とも同じ原因でおかしくなっているということで、プロジェクトがピンチになっている案件が海外で報じられました。次回以降にこの件をご報告あるいはご提案いただくときは、どのようなリスクがあると考えているか、個々のリスクについてどういう対策あるいは想定を置いているかといったこともご説明いただければありがたいと思っています。
 
【竹上企画官(事務局)】 白井委員、ありがとうございます。ご指摘のところはごもっともだと思いますし、そうしたことを念頭において事業推進していく必要があると思っています。今回は、今までのようにJAXAのプロジェクトとしてやるのではなく、民間がビジネスをやりたいということに対して支援するという形式をとっていくので、事業として推進するときの進捗を見ていくやり方のところで、そうしたリスクをしっかりと軽減していけるような仕組みを作っていくことが大事だと思っておりますので、またこうした場でもご報告しますので、ご指導いただければと思います。ありがとうございます。
 
【白井委員】 よろしくお願いします。
 
【村山部会長】 続きまして、村松委員お願いいたします。
 
【村松委員】 村松です。この構想の全体的な枠組みの大きな流れは、大変結構だと思っているのですが、一点気になるのは、ユーザーをどれだけ増やしていくかということにどの程度力を入れていくのかということです。今後、民間事業者がビジネス展開していくことは、もちろんそうなのですが、例えば捕捉資料で小型光学衛星による観測システムのニーズというところで、各省庁の方々が「現在のニーズはこうです」ということを挙げてはいらっしゃるので、それはその通りだと思います。例えば、森林のほうの話で見れば、林野庁は林野庁として活用するということを考えられると思うのですが、実際は森林組合や市町村の林政課の人が、現場で使いたいということになった場合に、現場の人を早い段階から取り込んでニーズを吸い上げる必要があると思いますが、そのような仕組みはどの段階に取り込んでいくのでしょうか。
 
【竹上企画官(事務局)】 ありがとうございます。イメージャの部分とライダーの部分でやり方が変わってくると思います。イメージャのところは、先ほども申しましたように、民間主導で国が支援をしていくという部分になってきますので、これは当然国が支援する条件として、そうしたユーザーの広がり、ビジネス構想などは見ていく予定ですし、もちろん学術利用のほうへの広がりというのも、国が投資するのであれば見ていく形だと思います。いろいろな提案が事業者さんから上がってくるときに、しっかりとユーザーを捕まえられているかということをチェックした上で支援する形なのではないかと思っています。基本的な要件として設定して、民間事業者さんの提案要素として、間違いなく見ていくところだと思っています。ライダーのほうは、これからユーザーを開拓していかなければいけないところなので、ここはJAXAが事業者と一体となって、まさにプロジェクトの開始を決める段階までに、主体的にJAXAが見ていくという進め方なのではないかと思っているところです。
 
【村松委員】 どうもありがとうございました。
 
【村山部会長】 続きまして、木村委員お願いいたします。
 
【木村委員】 ありがとうございます。私からはアジャイル開発の部分について質問させてください。この概念は非常に重要で、先ほどご指摘を受けたように、リスクに対する考え方はもちろん重要ですが、技術的な蓄積という意味で、私はどこかで踏み込むべきだと以前から考えていました。踏み込むことによるリスクといいますか、ジャンプは大きいんですけれども、一回投資することによって、その後の展開あるいは開発の効率が上がってくる可能性があるので、この機会にやることは非常に大事だと思います。具体的にどのような形で事業者さんに課されるのでしょうか。課してしまうと拘束条件にもなりうるものだと思いますが、この辺りどのようにお考えでしょうか?
 
【竹上企画官(事務局)】 現在構想中のところですが、分解能40cmを段階的に目指していく形になると思っていますし、コンステレーションで50km相当以上というのは、組み合わせ次第のところもあると思います。あとは、どれくらいの衛星をまとめて打ち上げるかなどは、事業者さんによって構想が異なる部分もあるので、それらを組み合わせて、掲げるスペックを達成してほしいと思っています。現在、いろいろな事業者さんと話している感じでは、数台ずつ打ち上げるという構想を持たれている事業者さんもいます。最後は事業者さんの企画競争になってくると思いますが、いろいろな提案がある中で、できる限り、リスクが排除できているか、ちゃんとした構想になっているかというところを見ながら、支援をしていくということを現段階では考えております。
 
【木村委員】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 田中委員、お願いいたします。
 
【田中部会長代理】 特にイメージャーのほうは、チャレンジングなライダーと鉛直方向の両方があると思いますが、民間主導ということでビジネス展開をお考えになると思っていますが、国のお金を入れるわけですから、国のサステナブルな防災・減災、緊急観測のようなものが一方であると思っています。そのときのデータポリシーに関して、現時点でどのようにお考えになっていますか。もちろん、現在の時点で各省庁が、ある程度お考えになっていると思いますが、さっき村松委員もおっしゃっていたように、新たなユーザーを獲得する場合、とりあえず使ってもらってどのような感じか掴んでいただくことも重要だと思っています。そのあたりは追々お考えになるという理解でよろしいのでしょうか。
 
【竹上企画官(事務局)】 これから考えるというよりは、まさに並行して検討しているところです。やはりALOS-3のような緊急観測の仕組みや学術利用の枠組みを、完全に民間事業者任せにすると、当然データの囲い込み等も起こるので、結局支援する金額をどれぐらいにしていくかということとの関係性の中で条件設定することになってくるかと思います。緊急観測でどれぐらいのデータを必要としているのか、あるいは学術研究のためにどのような出し方をしていくかというのは、支援のための条件設定のところにかかるので、まずはそこから詰める必要があると考えています。以上です。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。アジャイルについて質問が出ましたが、このあたりは新しい開発方式ですので、アジャイル開発自体がどのように進んでいるかということも、今後丁寧にご説明いただければと思います。
 質問も済んだようですので、資料84-1の4ページおよび5ページの全体像やスケジュールに基づき、今後取組を進めていくことについて、宇宙開発利用部会としてご理解をいただいたということでよろしいでしょうか。異議がないようですので、この内容で進めていくことについて、今後、開催予定の内閣府宇宙政策委員会衛星開発実証小委員会において、文部科学省から報告していただくことにしたいと思います。
 それでは次の議題に移させていただきます。二つ目の議題は、宇宙技術戦略と宇宙戦略基金についてです。前回の当部会において、宇宙戦略基金のテーマなどを定める実施方針の策定にあたり、各省の有識者会議で議論するということ、また文部科学省では当部会がその役割を担っていくことについて、事務局から紹介がありました。加えて先日、内閣府宇宙政策委員会から宇宙戦略基金とも大きく関係する宇宙技術戦略の案文が発表されております。本日は、宇宙技術戦略案の内容について簡単にご紹介いただいた後、宇宙戦略基金に関する議論を進めていきたいと思います。それでは事務局より資料の説明をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 引き続き、事務局よりご説明したいと思います。まず資料84-2-1の技術戦略(案)の概要をご覧ください。まず宇宙技術戦略に関しては、内閣府から3月1日付でパブリックコメントが出ておりまして、基金のテーマ設定にも大きく関係していきますので、冒頭簡単にご紹介させていただきます。その後、資料84-2-3で基本方針・実施方針というのが何なのかということを改めてご説明して、最後に資料84-2-4で今後の検討のスケジュールを説明し、質疑いただきたいと考えております。
 まずは宇宙技術戦略策定の趣旨でございます。宇宙基本計画に基づいて、世界の技術開発トレンド、ユーザーニーズの調査分析を踏まえ、安保・民生分野において横断的に勝ち筋を見据えながら、我が国が開発を進めるべき技術を見極め、開発のタイムラインを示した技術ロードマップも含めた宇宙技術戦略を策定しました。戦略については「衛星」「宇宙科学・探査」「宇宙輸送」「分野共通」の4分野で内閣府の宇宙政策委員会の小委員会中心に議論し、開発の進め方や重要性を検討して必要な技術を可能な範囲で示しました。関係省庁における技術開発予算に加えて、基金を含めて今後の予算執行において参照していくとともに、最新状況を踏まえたローリングを行っていくということでございます。もちろん、基金のためでもありますが、例えばJAXAの運営費交付金で強弱をつけていくものや、あるいは民間事業者の方々主体でやってほしいような技術開発も含めて今回取り上げて、全体を網羅的に記載し整理したものになります。
 2ページ目に、策定プロセスとローリングのあり方を記載しております。今月中には、宇宙技術戦略を、パブリックコメントの意見を踏まえ、修正を施した上で、宇宙政策委員会にて策定予定でございます。ローリングのあり方について、まだはっきりとした方針は内閣府で検討中となっておりますけれども、例えば、毎年度全部というよりは、ローリングの重点テーマを検討・決定して追加的に調査分析をしていく方向性が、内閣府のほうで検討されております。
 3ページは概要のため繰り返しになるので割愛させていただき、4ページをご覧ください。ここから各論を少しずつかいつまんでご説明できればと思います。5ページに衛星技術の評価軸を示しております。一つが技術的優位性です。二つ目が自律性、衛星の場合は三つ目にユースケースを置いて、これらを総合的に判断した上で技術の優先順位付けをしております。本日は詳細までは説明しませんが、本文を読めば、「非常に重要」としている技術や「重要」としている技術、「検討が必要」となっている技術、技術として何も書いていないパターンなど、重み付けしているので、ご参照いただければと思います。
 6ページ、衛星に関しては、例えば通信であれば、4つの領域に整理をして、一つが光通信のネットワークシステム、あるいはデジタル通信ペイロードシステムということで、これは文科省でもETS-9やスターダストプログラムの取組の中で実施していますけれども、こうしたものが重要な技術開発という形で記載されておりますし、地上系のネットワーク技術や、秘匿性・抗たん性を確保する通信技術といったものは、主に総務省の取組などを中心に記載されているところでございます。
 次に8ページ、衛星測位システムというパートがございまして、妨害・干渉に強い高精度な衛星測位システムや、利用側の取組は文科省でもスターダストの一部でやっておりますけども、こちらも重要技術として記載されているところです。
 9ページ、リモートセンシングですが、文科省やJAXAの取組が中心となり、先ほどご説明した光学事業もここに含まれます。まず一つ目は、トータルアナリシス技術、コンステレーション技術ということで重要な技術開発とされています。民間コンステの構築・社会実装、要素技術、さらに来年度からKプロで開始予定の静止軌道上の高分解能光学衛星開発も重要なものとして取り上げられております。
 10ページをご覧ください。センサ技術開発も先ほどご説明したとおり、政府衛星の着実な開発をやっていくということと、光学やライダーセンサの高度化技術、SARや雲・降水レーダーセンサの高度化技術といったものが重要技術として取り上げられております。また、これからカーボンプライシングやESGに役立ってくることが見込まれる、多波長・周波数センサ技術などが重要な技術として取り上げられているところです。
さらに、衛星パートには軌道上サービスという概念も含んでおります。軌道上サービスの共通技術、状態監視技術ということで、ロボットアーム/ハンド技術やRPO技術、SSA/SDA体制の構築、デブリ除去・低減技術ということで、ここは文科省で今年度よりSBIR基金で支援を強化していますけれども、デブリ除去技術や衛星等の軌道離脱のための技術がこれにあたります。そして軌道上サービス・デブリ除去のみならず、燃料補給や修理・交換等の寿命延長技術・製造組み立て技術ということで、こちらはKプロで来年度から開始する予定です。さらに、宇宙太陽光発電システムの基盤技術や宇宙天気予報の基盤技術といったものが取り上げられているところです。
 最後に12ページ、衛星基盤技術の部分をご覧ください。SDS基盤技術や電気系、これはスターダストや、JAXAの研究開発部門の取組としてもやっていますが、電気系の基盤技術、機械系基盤技術、地上システムの技術といったものも整理して記載しているところです。
 13ページの宇宙科学・探査は、重要技術の評価軸として、技術的優位性と自律性というものを掲げていますが、そこに加えて、定められたミッションや国際的なプレゼンスを保っていく必要があるので、緊要性というものも標記軸の柱の一つとして位置づけられております。
 14ページは、宇宙物理分野ということで、二つ目のポツには、我が国の強みや特徴ある技術を発展させ、日本独自の先鋭的な中・小型計画を実施していくことが重要であるという重み付けの方針が記載されております。例えば、宇宙用冷却技術です。天文衛星等を低ノイズ・高感度化する冷却技術、観測技術としてのセンサシステム、日本が強みを持つサンプルリターン技術、大気圏突入技術、減速技術、着陸技術なども重要な技術であるということで抽出されています。
 16ページには、軌道間輸送技術や表面等探査技術といったものが、我が国として独創的な研究領域や先鋭的な技術を見出し、開発・開拓していくことが重要ということで、重要技術として取り上げられているところです。
 17ページは月面関係ですが、アルテミス計画が進捗していく中で、国際的なパートナーとともに持続的な月面探査、基盤技術開発をやっていくことが重要ということで、月面科学に関わる技術や月の着陸技術、あるいは長期間の月面滞在を可能とするための発電技術や蓄電技術などのエネルギー技術といったものが取り上げられているところです。
 18ページも引き続き月面関係ですが、月の通信・測位技術、あるいは月表面探査技術ということで、有人与圧ローバなどに役立つ技術、あるいは月の資源の開発技術・利用技術などもアルテミス計画進捗の中で重要ということで整理・記載されております。
 19ページ、科学探査の4つ目はポストISS関係でございます。地球低軌道・国際宇宙探査共通ということで、宇宙開発利用部会の下のISS小委員会のほうでご議論いただいた内容も含んでいると思いますけれども、ポストISSにおける活動の場となる拠点の構築に必要となる技術ということで、物資補給技術や回収を行う技術、有人宇宙滞在拠点システム、あるいは宇宙環境利用、宇宙実験などの観点で整理をしており、重要な技術が抽出されているところです。
 21ページ、最後の輸送のところも同じように重要技術の評価軸があります。輸送については、技術的優位性と自律性に加えて、多様な宇宙輸送ニーズへの対応という観点で重み付けしております。最終的にシステムとして作り上げることが大事であることはもちろんですけれども、今回技術別にブレイクダウンをして、システム技術やシステムインテグレーション、あるいは構造系技術に関しては、これから3D積層あるいは複合素材といったものが大事になるということから重要な技術として取り上げられております。
 23ページは推進系技術ということで、各種エンジン技術あるいはその他の基盤技術ということでアビオ系や再使用型ロケットに必要となる、今すでにCALLISTOというプロジェクトが走っていますが、そこも含めた重要な技術開発要素を記載しております。
 24ページは輸送サービス技術として多様なペイロードへの対応、あるいは射場・宇宙港技術として追跡管制あるいは地上支援に必要となる技術も非常に重要でございますので、こちらも整理をされているところです。
 最後に25ページ以降は分野共通技術ということで、ハードウェアシステム開発・製造プロセスの変革の取組、機械系技術、ソフトウェア基盤技術、衛星や探査などの複数の方向につながっていく複数宇宙機の高精度協調運用技術(フォーメーションフライト)なども非常に重要な技術として取り上げられているところでございます。
技術戦略は、こうした形で、重要な技術を各省、JAXA、そして内閣府の委員会で議論いただいた上で整理されたものでございます。これだけだと技術の羅列になってしまうので、今日は本文の紹介は割愛しておりますが、本文の最後から2ページ目のみ紹介させていただくと、これは輸送分野のページですが、こうした形で、それぞれの分野でロードマップを作成しております。世界における技術開発の見通しを上部に整理しており、その下にシステムとしての目標を記載しております。このページであれば、基幹ロケットを運用することだけではなく、次期基幹ロケットの開発・実証をして運用していくということ。あるいはサブオービタル飛行・軌道間輸送などの新しい宇宙輸送システムを開発するということ。こちらは、2040年代前半の目標についても書いております。こうした形で、各分野について、システム全体の目標を書いた上で個別技術にブレイクダウンした形で記載する方式を取っておりますので、詳細は資料をご覧いただければと思います。今回、こうした戦略を関係者一体となって作ったことは非常に重要なことで、文科省も内閣府や各省と一体となって作成作業に参画しておりましたけれども、全ての分野において、目標やロードマップ、重要な技術の整理を行っており、これからまたローリングしながら、技術戦略自体も進化していくものと承知をしているところでございます。技術戦略の紹介は以上です。
 次に、資料84-2-3の宇宙戦略基金の基本的な考え方です。こちらは前回に概要で説明をしましたけれども、宇宙技術戦略と関係する部分を中心に改めてご紹介したいと思います。
 3ページ目に、技術開発テーマの設定や目標の考え方を記載しております。本事業の技術開発テーマの設定にあたっては、宇宙技術戦略で抽出された技術項目を参照する、となっておりますので、基本的には宇宙技術戦略で重要とされた技術の中からテーマ設定をしていくことが原則となっております。その上でJAXA主体の研究開発ではなく、民間企業や大学等が主体となって技術開発を推進することで事業全体の目標や各分野の方向性に貢献することが期待できるか、その道筋が示されているかという観点から資源配分を精査し技術開発テーマを設定するとしております。各テーマについては、具体的な成果目標、出口目標、マイルストーン等を設定することや、技術開発テーマごとに審査・評価・運営の考え方や体制、支援の方法等を決定するとしています。支援の方法に関しては、テーマの性格に応じて委託と補助を使い分けます。4ページ目の支援の類型ということで、委託事業、補助事業の場合の補助率などについては、ABCDに分けられます。
 技術成熟度が高く、民間企業等の事業に組み込まれるものについては、補助率を設定し、自己負担ありの補助金でやるという考え方。
 まだ十分な技術成熟度に到達していない場合は、テーマに応じて自己負担があったりなかったりしますが、補助でやるか委託でやるかというのはテーマの性質に応じて変わります。
 将来のゲームチェンジを含む事業化や産学連携が想定され、大学・国研中心にやっていただく革新的な技術開発、あるいは共通的な基盤整備・調査分析のときは、補助の自己負担なしか委託でやることを基本的な考え方として設定しております。
 実施方針については、実施方針で定める事項として、テーマ名、背景・目的、目標、開発内容、支援期間・支援規模、評価の観点、委託・補助の別と補助率、フォローアップの方向性ということで、主にこういうことを実施方針に記載しますので、今回、そして次回の宇宙開発利用部会でご議論・ご確認いただく予定にしております。
 今後のプロセスについては、繰り返しになりますが、基本方針は基本的な考え方のブラッシュアップバージョンを内閣府中心に検討を進めていただきます。また、実施方針、具体的には各テーマの目標、予算などは、総務省や文科省、経産省において、有識者会議の議論を踏まえつつ検討を進めるとしております。
 資料84−2−4の説明に移りますけれども、今後の検討スケジュールということで、改めてこの部会の位置づけを説明したいと思います。本日3月25日の第84回宇宙開発利用部会において、宇宙戦略基金について意見交換を行うとしており、実施方針や個別テーマの詳細については、現在政府内で調整中ですので、本日この後の非公開パートで意見交換を実施させていただきます。その後、4月上旬には次回の部会を予定しておりますので、そこで基金の実施方針について、公開の場で改めて意見交換していただく予定にしております。
 ここで意見交換したものを、宇宙政策委員会の議論を踏まえつつ、基本方針・実施方針として決定させていただく予定にしております。その後はJAXAにおいて、順次公募要領等の準備を進め公募開始、というスケジュール感を予定しております。全体像について、事務局からの説明は以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。ただいまの説明についてご意見やご質問がありましたらお願いいたします。鈴木委員、お願いいたします。
 
【鈴木委員】 鈴木でございます。今回の戦略において、全て自国で開発するというわけではなくて、アルテミス計画やポストISSだと他国でみたいなお話もあったと思いますが、自国をベースとして開発を進めるものと、他国との協力と、ここはフォローしてもフォローしきれないので他国で開発された技術を活用しようという、国間での技術開発の関係性みたいなものに根ざして今回の戦略が立てられたという側面があれば、その背景について説明していただければと思います。
 
【竹上企画官(事務局)】 ありがとうございます。鈴木委員がおっしゃったように、例えば機器やコンポーネントなどのボトルネックになっている部分は国産化を狙っていきますし、他方、国際協力してやっていかなければいけない領域については、そうした前提で技術戦略が書かれているので、そこは技術・領域次第だと思っています。
 
【鈴木委員】 わかりました。予算も限定的な中でどこにどれくらい力を入れていくという兼ね合いもあり、難しいバランスを取りながら全体の戦略を立てられていると思いますが、そのあたりも鑑みながら、個別の技術に関しても確認させていただこうと思います。
 
【竹上企画官(事務局)】 技術戦略は、領域ごとに、各小委員会でそれぞれ議論をしていましたが、一つひとつの領域・技術で、観点が異なると思います。
 
【鈴木委員】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 他にありませんか。それでは冒頭で申し上げたとおり、以降は政府内で検討中の内容を含む議論となるため非公開とさせていただきます。事務局から事務連絡をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は、既に文科省ホームページに掲載させていただいております。また、議事録につきましても、ここまでの内容は公開となりますので、委員の皆さまにご確認いただいた後、文科省ホームページに掲載させていただきます。
 なお、次回の宇宙開発利用部会は、4月上旬の開催を予定しております。委員の皆さまには改めてご連絡いたします。事務連絡は以上です。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。これで公開部分の会合を終了といたします。一般の方やプレスの方は、ここまでとなります。傍聴ありがとうございました。
 

―― 了 ――

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