令和6年2月26日(月曜日) 10時00分~12時00分
Web会議
部会長 村山 裕三
部会長代理 田中 明子
臨時委員 秋山 文野
臨時委員 金井 宣茂
臨時委員 芝井 広
臨時委員 白井 恭一
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 鶴岡 路人
臨時委員 松岡 彩子
臨時委員 村松 加奈子
臨時委員 山室 真澄
臨時委員 米澤 千夏
研究開発局宇宙開発利用課課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 橋本 郁也
(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
理事/宇宙科学研究所所長 國中 均
宇宙科学研究所 SLIMプロジェクトマネージャ 坂井 真一郎
宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 教授 吉光 徹雄
宇宙探査イノベーションハブ ハブ長 船木 一幸
理事/第一宇宙技術部門長 寺田 弘慈
第一宇宙技術部門 EarthCARE/CPR プロジェクトマネージャ 富田 英一
第一宇宙技術部門 GOSAT-2 プロジェクトマネージャ 久世 暁彦
有人宇宙技術部門 有人システム安全・ミッション保証室 技術領域主幹 荒木 秀二
【村山部会長】 それでは、定刻になりましたので、第83回の宇宙開発利用部会を開催いたします。今回も前回同様オンラインでの開催となっております。委員の皆様には、御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
まず、先日H3の打上げが成功しまして大変喜んでおります。本件については、本部会でも非常に有益な議論をしていただいて感謝しております。誠にありがとうございました。それでは、まず事務局の方から本日の会議に関する事務連絡をお願いいたします。
【竹上企画官(事務局)】 事務局の文部科学省宇宙開発利用課の竹上でございます。本日、宇宙開発利用部会の16名の委員のうち12名にご出席いただく予定となっております。次に、本日の資料ですが、議事次第のとおりです。オンライン状況について、音声がつながらない等の問題がございましたら、事務局へメール・電話等でご連絡ください。事務局からの連絡は以上です。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、本日の議題ですが、メインの議題は4件あり、うち2件が審議事項となっております。それでは、早速議題に入りたいと思います。最初の議題は「小型月着陸実証機(SLIM)、超小型月面探査ローバ(LEV-1)、及び変形型月面ロボット(LEV-2)の月面着陸結果について」です。JAXA國中理事、SLIMプロジェクトの坂井プロジェクトマネージャ、LEV-1担当の吉光教授、LEV-2担当の宇宙探査イノベーションハブ 船木ハブ長、御説明をお願いいたします。
【國中理事(JAXA)】 宇宙研から本日はSLIMの着陸の模様をご紹介します。それから、問題を起こしました500Nスラスタの事故調査につきましては、かなり厄介な問題でありまして、現状まだ原因究明には至っておりません。本日は搭載機器の飛翔データを分析した結果を中心にSLIMについてはご紹介したいと思っております。それから、最新の状況が新たに更新されましたので、SLIMの状況で良いニュースをお伝えできるものと考えております。それから、引き続きLEV-1、LEV-2を担当からご紹介させていただきたいと思います。15分の発表で15分質疑応答というタイムラインを考えております。それでは、坂井君、お願いします。
【坂井プロジェクトマネージャ(JAXA/ISAS)】 ありがとうございます。それでは、坂井の方からSLIMの状況について、時間が限られていると思いますので少し簡潔にご説明してみたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
この辺りは復習になりますので簡潔に行きますが、SLIMというプロジェクトは御承知のとおり2016年4月に始まったプロジェクトでして、ピンポイント着陸、それから、軽量な月惑星探査機システムの実現ということを二つの目的として出発したプロジェクトになります。次の頁をお願いします。
この辺りは外観図をお示しをしてございますので、この後の説明の中で振り返ってご覧になりたいところがあれば、この頁に戻っていただいてご確認いただければというふうに思います。次の頁をお願いします。
では早速ですが、もう御存じの方は多いかと思いますが、1月20日に月着陸を行いましたので、その結果について改めて簡単にご紹介してみたいと思います。まず、高度50 メートルぐらいのところまでの着陸降下。近月点の高度15 kmぐらいから20分近くを掛けて行った着陸ですが、上空50 メートルのところまでは大きな問題もなく極めて順調に推移したというふうに我々は考えています。特筆すべきところは、画像照合航法というピンポイント着陸技術についての肝となる技術があるのですが、これはこのシーケンスの中で合計14回実施をしておりますが、事後の評価の航法結果等も含めた評価も含めて全て正常に行えたというふうに我々は考えているところでございます。次の頁をお願いします。
それから、ピンポイント着陸の方についてですが、まずこちらにお示しをしてあるのは垂直降下といわれている、最後に着陸目標地点の真上の辺りからおおむね真下に向かって下りていくというシーケンスの中での、目標地点に対してその位置がどんどん近付いていくという様子をお示ししている頁になってございます。高度4 km付近、それから500 メートル付近、50 メートル付近での2回と、合わせて4回航法カメラを使った撮像ということが行われていますが、その得られた画像を比較的解像度の高いChandrayaan-2の画像と重ね合わせて、赤丸で書いてある目標地点に対してカメラの中心位置がすなわちSLIMのいるところということになるので、この青点で示してあるSLIMの位置がどういうふうに近付いていっているかということをお示ししているものになってございます。表書きの方を見ていただけると一番分かっていただけるかと思いますが、高度4 kmぐらいでは100 メートルぐらいまで離れていたところが、徐々に目標地点に向かって近付いていって、最終的には高度50 メートル付近で3 メートルないし10 メートルぐらいの距離にまで近付いているということがご理解いただけるのではないかと思います。次の頁をお願いします。
こちらは一番大事な高度50 メートル付近でのピンポイント着陸の精度についての評価結果ということになります。この高度が大事というふうに申し上げましたのは、この高度以降、SLIMはここでの撮像結果を基にして、この画像の中から最も安全と思われる所を言わば新たな着陸目標地点だというふうに設定をして、そちらに向かって下りていくというふうに切り替わりますので、いわゆるピンポイント着陸の精度としては当初からこの高度での評価をもってピンポイント着陸精度については評価をするということにしておりました。
結果として、2回撮像を行っておりますが、1回目の撮像結果で目標地点との距離が3.4 メートル。2回目の撮像の時で距離が10.2 メートルというふうに評価できていますので、我々としては少なくとも10 メートルぐらいの精度ではピンポイント着陸ができたのだろうと考えております。この2枚の撮像のうちどちらが真実に近いのかという点については、おそらくメインエンジン脱落という異常事象による影響を、2回目の撮像結果を既に受けて、東に流れはじめているというふうに考えていますので、実力としてはおそらく3 メートル~4 メートル程度だったのではないかというふうに考えているというところでございます。次の頁をお願いします。
今も言及しましたが、ちょうど時を同じくしてこの高度50 メートル付近ぐらいでは推進系に異常事象が発生しています。SLIMの場合はメインエンジンを2基搭載するという設計になっておりましたが、そのうちの1基がこのタイミングで何らかの異常によってノズルが脱落をするという異常を起こしたというふうに考えております。各所のデータからも、このタイミングで推力の発生がおおむね半分強ぐらいに減っているというところが分かっておりますので、ここでメインエンジンの異常が起こったということについてはほぼ確実だろうというふうに考えているところでございます。次の頁をお願いします。
その後の探査機の方の挙動の話に移りたいと思いますが、ビジーなスライドなっておりますので読み上げまでは割愛しますが、そういうわけでメインエンジン2基のうち1基は残ったということになりますので、ある種一定の冗長性が確保できていた設計となっていたこともあって、たちまち月面着陸ができなくなるといったような事態については回避することができています。その後は、搭載されていた誘導制御系が異常を検知してモードの移行等も実施をして、何とかして異常に対応しようとしたということが行われています。
結果として、探査機としては横方向に移動をなるべく抑えるように姿勢変更をしながら、メインエンジンの噴射を継続して、自律的にシーケンスを進めて着陸モードに移行しています。その過程では、高度約5 メートル付近でLEV-1それからLEV-2(SORA-Q)の二つの超小型ローバの放出も行っています。
最終的には、0時19分52秒ごろというふうに考えていますが、横方向の速度が残った状態で、ほぼまっすぐ立った姿勢で接地をしたというふうに考えています。接地時の降下速度については、仕様の想定していた範囲よりもむしろ低速側ではあったのですが、横方向の速度等の影響によって、接地後には大きな姿勢の変動が起こって、最終的には想定と異なる姿勢で静定したというふうに考えています。次の頁をお願いします。
結果としてどこに着陸をしたのかということについては、我々が持っている航法データからもおおむね同じような位置を推定しておりましたが、その後NASAのLROという月周回機からもSLIMの着陸地点というものの撮影を行ってもらっています。その結果から推定される位置というところを今日のこの資料でお示しをしてございますが、着陸目標地点から東におおむね55 メートル移動したところに最終的には着陸したのだろうというふうに考えております。次の頁をお願いします。
こちらが、推定されている着陸の姿勢から再現をしたCGの画像になっております。この図からお分かりいただけますとおり、この絵の中でいうと右側の方向にちょうど太陽電池の面が向いているのですが、推定される姿勢からすると太陽電池のパネルというのは西を向いた状態で最終的には静定したと。当初想定している姿勢は太陽電池が上を向いた姿勢でしたので、そこからおおむね90度倒れたといいますか起き上がったといいますか、そういう姿勢で静定したのだろうというふうに考えているところであります。次の頁をお願いします。
この後も紹介があるかと思いますが、SORA-Qが撮ってくれたSLIMの実際の写真というのもありますので、これにSLIMのCADデータを重ねてみたというのがこの図になっております。なかなか細かいところまで完全に見切れているわけではないのですが、メインエンジンの脱落というところ以外の点については、少なくともこの写真で分かるようなところについては外観上大きな変化は見られていないということをお示ししている図になってございます。次の頁をお願いします。
それから、SORA-Qの画像を基にして、どういう斜面に最終的には接地をしたのかということについても推定を行っているところですが、おおむね事前想定していた斜度10度あるいは17度ぐらいといったようなところに着陸をしたのではないかというふうに考えているところでございます。次の頁をお願いします。
それから、着陸後の運用についての簡単な流れですが、そういうわけで着陸当日、太陽電池からの発生電力が得られていないということが分かりましたので、予定されていた異常時の対応手順として、まず着陸降下中に探査機上で記録されていた各種のデータと画像データを含めたもの、所定のものをまず全て取り出すということを行いました。
その後、その時点でのバッテリーの残量も踏まえて、マルチバンド分光カメラの観測運用も一部はできるというふうに判断をしましたので、時間が限られているところでしたが、スキャン画像といわれるような観測対象を探すような運用については、全部ではありませんでしたが一部実施をすることができました。
その後、探査機を永久に失うということを避けるために、コマンドを送ってバッテリーを電源系統から切り離すということを行いましたので、この時点で一旦探査機の電源はオフとなりました。
その後、1月28日の夜でしたが太陽方向が変化してきたことによって再び太陽電池で十分な電力を得られるようになりましたので、探査機との通信を再度確立することができ、その後マルチバンド分光カメラによる科学観測の再開も行っています。
結果として、観測対象は岩石でいえば10個について10バンドでの分光観測を実施することができたということになっております。打上げ前には最低1個でも、というふうに考えていたところですので、これについては想定していたよりも良い成果が得られているのではないかというふうに考えているところでございます。次の頁をお願いします。
こちらは御紹介になりますが、再開後に改めて行ったスキャン画像というのをこの左側にお示しをしてございます。この中から観測対象として有望そうな岩石を10個選んで、詳細な観測を行っておりまして、ここではその一例として、これは10バンドではなくて1バンドだけの画像になっておりますが、「あきたいぬ」というふうに命名されている岩石について、オートフォーカスの機能等も使ってズームを合わせて且つピント合わせた状態で詳細に観測した画像の一例ということも、このシートの右側の方にお示しをしているところということになってございます。次の頁をお願いします。
それから、メインエンジンについて起こったことについて、まだ調査状況の共有といったことになりますが簡単にご紹介したいと思います。まず、このスライドでお示ししてあるのは、打上げした直後からずっとメインエンジンを使っておりましたので、その動作点というものを、横側が燃料の供給圧、縦軸が酸化剤の供給圧といったようなグラフの中にプロットしたものになります。必ずしも細かい時間分解能があるチャートにはなっておりませんが、こういう準静的なデータを見る限り、この青枠が当初想定されていた動作点になりますので、プラスX側、マイナスX側、いずれのメインエンジンについても当初想定していた動作範囲の中できちんと動作をしてきたということがデータからは確認ができているところでございます。次の頁をお願いします。
この後にお示しをするデータと少し関係がありますので、メインエンジン、マイナスX側付近の航法センサの配置の位置をお示ししてございます。右側の方に航法カメラのマイナスZ側の航法カメラ、それから着陸レーダとレーザを使った距離計というものが配置されているということがまず分かります。それぞれの視野を色付きでお示ししておりますが、特にメインエンジンのマイナスX側については、この辺りのセンサの視野内に比較的入りやすいということを分かっていただけるかと思います。次の頁をお願いします。
こちらは現時点で少し分かりかけていることで、まだ多くのことが分かっているわけではないのですが、手掛かりみたいなことが見えてきていますので、その辺りの状況を簡単にお示ししてございます。メインエンジンの作動点としてはおおむね正常だったというふうに判断をしていますので、少し広い視野に立ったデータ解析ということを今行っています。ここでは先ほどご紹介した航法センサのデータについて見ているものについて少しご紹介しています。この次のグラフを見ながらこの辺りを見ていただけるとよいと思うのですが、簡単に申し上げますと、異常が起こった付近で着陸レーダ、それからレーザ距離計が何らかの信号を捉えているということが分かってきています。この辺り、今日はお示ししてございませんが月周回軌道中、着陸降下を行う前に取られている同様のデータと見比べてみると、この事象が起こった付近に特有と思われるような信号も少し見えておりますので、この辺りの事象を追いかけていくことで、何が起こったのかということについて手掛かりが得られるのではないかというふうに考えて調査を進めているというところになります。ですので、この事象の原因については現在詳細調査を行っているという状況ですので、詳細が判明した時点で改めてご報告したいというふうに考えています。次の頁をお願いします。
まだこれは調査中のデータの一例ですので、ごく簡単に今日はご紹介します。いくつかの線が引かれていますが、まずこの赤い線と青い線が、メインエンジンからノズル、それからノズル以外の何かが段階的に離脱をしたのではないかというふうにして考えて、着陸レーダの信号、それから航法カメラで捉えている画像等から、どの時点で脱落が起こったのかということの推定を行っているような線がこの青線と赤線になります。15時19分19秒~20秒ぐらいにかけておそらく脱落が起こったのだろうというふうに考えているところなのですが、この辺りでレーザ距離計には大きな反射光が捉えられている。あるいは、その少し前ぐらいから着陸レーダの方についても何らかの反射波を捉えているということが分かっています。この反射波の方については少し見方に注意が必要でして、このグラフを見ると15 メートル付近にぴったり何かがあるというふうにも見えるのですが、おそらくそうではなくて、もう少しもやもやとした何かがこの15 メートル付近に分布をしているようなことによって、こういう反射波が見えているのではないかというふうに考えているところですので、少し解釈にはいろいろと注意が必要なものになりますが、いずれにしろ今こういったものを見ながら、この付近で何が起こったのかということをもう少し詳細に調べていこうと思っているところになってございます。次の頁をお願いします。
少し時間がもう過ぎていると思いますので読み上げまでは割愛をしますが、そういうわけでピンポイント着陸の達成ということを中心として、お陰さまでSLIMの着陸については大きな成果が得られているというふうに考えているところでございます。
それから、冒頭で所長の方からも言及がありましたが、資料に取り込めなかったことで、昨晩の事ですので本当に速報になりますが、越夜をした後の探査機の復旧状況というところ、我々が見守っていたところでしたが、お陰様で昨晩、日本時間の7時過ぎだったかと思いますが、探査機からのテレメトリを受信することができています。ただ、まだ送信機の温度が非常に高い温度でしたので、長時間継続をしたデータの受信までは難しい状況でしたので、必ずしも探査機の、特に分光カメラ等の状況が今は分かっているわけではないというところもありますが、少なくとも越夜を経て探査機の最低限の機能については機能をしていることが確認できたというような状況になってございますので、速報として併せて共有をさせていただきます。推進系異常事象等の原因調査等についても今後対策の検討等を進めていきたいというふうに考えております。長くなりました。一旦以上にいたします。
【國中理事(JAXA)】 続けてLEV-1/LEV-2をお願いします。
【吉光教授(JAXA/ISAS)】 宇宙研の吉光と申します。遠方から失礼いたします。LEVシステム全体の話から進めていきます。LEVといっているペイロード。SLIMによって月面展開されて自律的に移動し、SLIMの着陸状況、周囲を撮像する小型のローバです。二つありまして、LEV-1が我々ISASの作ったもの、LEV-2が探査ハブということで、形等はここの図に示したとおりで、二つとも同じパッケージにインストールされて、これが図に示すようなものです。それが次の図に示しますとおり月面の数メートル上空でSLIMからのトリガーによって分離されるということで、分離された後、ここの1頁目の図にはLEV-2は中には見えていませんが、次の頁をお願いいたします。
LEV-1とLEV-2が放出されて外に出ると。LEV-2はLEV-1とBluetoothによって通信するという仕組みになっております。次の頁をお願いします。
分離からの動作はどうなっているかというと、放出は上空で投げるように放出されて、フリーフォールして着陸した後、自律的に画像を用いて探査するということになります。LEV-2はLEV-1の通信機を使っていますが、LEV-1に関していうとその後はSLIMに全く頼ることなく地球にダイレクトに通信をして、LEV-1、LEV-2が取得したデータを地球に送信するということになります。そのときにSバンドとUHFという二つを使っていまして、そのときに使っている通信機は図に示したとおり非常に小型のものが中に入っているという状況です。次をお願いします。
そのときの分離運用ですが、まずは2019年の15時19分50秒ごろに分離されて、すぐにSバンドの電波が地球上で受信されたということから、これで分離はうまくいったと。LEV-1は基本的には動作しているということは確認しました。その後、右の図で示しますとおりリアルタイムにデータの復調というのはできなくて、これはSLIMが臼田や内之浦のアンテナを使ってトラッキングされていますが、LEV-1は同じところにいるということでトラッキングしてもらっていますが、残念ながら宇宙機での復調しかできないので、我々はデータを記録して、その記録したデータを相模原に持ち帰って、自分らで復調作業をしています。電波の形等からSバンド等の電波が正しく出たということは確認していまして、おおむね分離後107分間、基本的に地上局に関しては臼田、内之浦、あるいはDSNを使ったSバンドの受信。UHFの電波に関してはアマチュア無線家が受信していると。これは日本とヨーロッパとありましたが、彼らのYouTubeの配信等を見て確認したということです。
その後のデータ解析になりますが、おおむね2時間弱すると機器温度がもう70℃以上になっており、バッテリーの電圧も7.2 V以下に低下していることから、動作しない状況になって機能停止したということになります。復調作業はその後、週末を挟んで月火に行ったということになりまして、次をお願いいたします。
ということで、データを得られたわけですが、LEV-1による状況といたしましては、まずは月から小型通信機で直接通信できたということは非常によかったということで、UHFはアマチュア無線家向けアウトリーチ活動の一環としてやっていますが、これはアメリカでかなり大きな話題になって、世界初の月面アマチュア無線局になったということで、アマチュア無線業界では結構大きなニュースとなりました。
LEV-1に関してはホップしながら移動するという仕組みだったわけですが、これはロボットが小さいので、そもそも車輪型のロボットだとろくに移動ができないということでホップしたということなのですが、107分間の間にデータから7回ホッピングを確認しておりますと。ホッピングの前後で重力の方向とかの変化を確認しており、移動メカニズムとしてはうまくいったと思っています。さらにいうと、これは完全に自律探査で、打上げ後一切コマンドを送っていません。ということで、この辺りのテーマも確実に実行できたと思います。次をお願いいたします。
LEV-1分離後のデータが最後にあります。107分間のホップしている動作の挙動と加速度計の値と、自分がどういうふうになっているかという推定位置。この辺りからLEV-1がちゃんと移動するということは確認できたと思っています。ということで、LEV-1の説明はこれで終わりたいと思います。
【船木ハブ長(JAXA)】 それでは、引き続きましてあと3頁だけなのですが、LEV-2(SORA-Q)について簡単にご紹介したいと思います。この頁には、開発の経緯、それから中段付近に参画企業・大学・JAXAという4者の開発体制について、それから下の方には仕様諸元をまとめてございます。
この研究は2016年に探査ハブが進める研究提案募集(RFP)に、タカラトミーと昆虫型ロボットを宇宙と地上で使えないかという共同研究からスタートしまして、宇宙で実際に実証するところまで行きましたという、素晴らしい共創のExampleだと思っています。次の頁をお願いいたします。
この頁には、上の方に月面での実証結果、先ほど吉光教授の方からも御紹介があったLEV-1との協調について。それから下段については、この事業面からの評価、それから今後の取組について簡単に記載しております。太字のところだけ読む形になりますが、月面での実証結果としては、右にあるようなSLIMの本体の写真が完全自律で得られましたということで、日本初の月面探査ロボットであり、世界初の完全自律ロボット等の成果を達成し、世界で最小・最軽量の月面探査ロボットとして仕事を成し遂げたと考えております。
こちらの評価の方ですが、太字の部分でオープンイノベーションですとか、それからDual Utilizationの成功事例というキーワードが見えると思いますが、我々は地上の技術と宇宙の技術の融合ということで、探査に活用できる研究開発をオープンイノベーションのスタイルで進めてまいりました。これが初めて月面まで届いた成功例になっておりまして、こうした成果を、宇宙実証の機会を、ぜひ様々な企業様と深めていきたいと思っております。また、この技術自体、4ポツ目に書かれておりますが今後の小型ロボティクスによる探査、それから人あるいは通常ローバが近付けないような危険箇所の探査等に発展できていければと考えております。
次の最後の頁に、今回共同研究開発を一緒にさせていただきましたタカラトミー、ソニーの評価の声をまとめてございます。このプロジェクトは、非常に小さなSORA-QあるいはLEV-2という実証の機会だったのですが、非常に社内外の反響が大きく、タカラトミーからは子供の知的好奇心を一層高ぶらせたと。それから、ソニーグループからも、ソニーは宇宙への企業展開を目指しているところですが、その一つのマイルストーンとなったということで、非常に高い評価と感謝の意が述べられています。また、多くの受賞を下の方にあるようにさせていただきまして、この機会を頂きまして、SLIMチームの皆さん、データを中継していただいたLEV-1、それからLEV-2を開発したスタッフ、サポート等を頂いた、あるいは応援いただいた皆様に感謝したいと思います。私の方からは以上になります。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、ただ今の説明に対して御意見、御質問がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。秋山委員、お願いいたします。
【秋山委員】 秋山です。よろしくお願いいたします。坂井プロマネに質問をお願いいたします。SLIMのメインエンジンのことについてですが、まず、越夜の方が確認されたということで、大変な成果だと思います。おめでとうございます。続いて、メインエンジンについてなのですが、1月25日の記者説明会の時に、メインエンジン脱落の原因はもちろんまだ調査中ということでございますが、外的要因の可能性があるという御説明があったかと思いますが、資料の17頁と18頁等で、この中でどういった部分がその外的要因に関連していると考えていらっしゃるのでしょうかという点についてお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。
【坂井プロジェクトマネージャ(JAXA/ISAS)】 ご質問いただいてありがとうございます。当日もそういう意図で申し上げていたのですが、ここで外的という言い方をしているのは、少なくともメインエンジン単体の何らかの事象によって脱落したのではないのではないかということを念頭に置いて外的という言い方をしておりました。今日の資料の中でも同じようなことを御説明している意図になってございますが、15頁等でもご説明しましたとおり、そのメインエンジン単体のデータ等を見ている限りは、ここがトリガーになってこういうことになったのでは必ずしもないのではないかというふうに考えているところがございまして、17頁の冒頭の方でも触れておりますが、もう少し広い範囲について今いろいろとFTA等も行いながら調べていっておりまして、どこが最初に起点となってこういう事象になったのかということを今調査しているという状況になっているところでございます。これで御質問への答えになっているでしょうか?
【秋山委員】 はい。そうしますと少し確認させていただきたいのですが、外的要因とおっしゃっているのはSLIMのシステムの中でメインエンジン以外の何らかの部分がきっかけとなって、一連の最終的にはエンジン脱落ということに至ったというふうに考えていらっしゃると。それについては今幅広く調査中という理解でよろしいでしょうか。
【坂井プロジェクトマネージャ(JAXA/ISAS)】 はい。まだ原因確定に至っているわけではありませんので全ての可能性が否定されているわけではないのですが、一つ例えば今我々が考えているところという意味では今おっしゃっていただいたとおりの御理解かと思います。
【秋山委員】 分かりました。ありがとうございました。
【村山部会長】 ありがとうございます。続いて、松岡委員、お願いいたします。
【松岡委員】 京都大学の松岡です。私も坂井プロマネに質問させていただければと思います。最初に、坂井先生、この度のSLIMのピンポイント着陸の成功、誠におめでとうございます。エンジンの脱落等はありますが、大変素晴らしい成果であると考えております。
質問の方なのですが、今回のSLIMの着陸は、画像照合航法というものがキーの技術になっているという御紹介がありました。私はこの辺は専門が違うのですが、これまでどのような検討とか開発をされているのか、過去の研究発表会等を見させていただいたところ、JAXAとメーカーとの共同研究で進められてきたということを見聞きしました。そういうところが非常にうまくいった成果なのかなというふうに感じたのですが、今改めてどういう体制あるいはシステム、やり方がこういう成功につながったのか、お考えを聞かせていただければと思います。いかがでしょうか。
【坂井プロジェクトマネージャ(JAXA/ISAS)】 ありがとうございます。ある意味この後につながる話としては大事なところかと思いますので、今後少し丁寧にまた整理もしていきたいと思いますが、今この時点で私自身が考えていることを簡潔にお伝えしたいと思います。
まず、画像照合航法等については、これも多分御承知のことと思いますが、メーカーと、という点もありますが、20年ぐらい前から宇宙研の中で取り組まれてきたような研究テーマになってございまして、特にその頃からは大学のいろんな専門家の方にもこの中に非常に入っていただいて、大学の人たちと一緒に作り上げてきた画像照合航法のアルゴリズムといったところが一つはあるかと思います。ですので、JAXA、宇宙研と、大学の研究者とのこれまでいろんなところで行ってきた、一緒に宇宙開発をしていくというやり方といいますか、宇宙研のその文化のようなところがここでもうまく機能したというところが一つ大きなポイントになるかと思います。
それから、これは画像照合航法に限る話ではありませんが、プロジェクトになってものを作りはじめていくというところでは、もちろん我々自身が探査機を作れるわけではありませんので、関連メーカーの方と一緒にこれを作っていくというところがもう一つ大事になるのですが、仕様のようなものを渡して作ってもらうというのとは少し違う、我々としてはお互い本当に一つのチームを作って、問題があれば一緒に知恵を出し合って解決をする、あるいは作り上げたものについては双方違う視点でチェックをしながら、それで本当によいのかということを確認しながら開発をするといったようなところが比較的うまくできたのではないかというふうに考えておりますので、その辺りも大事なポイントになっているのではないかというふうに思います。まず以上の2点、お伝えをしておきます。
【松岡委員】 どうもありがとうございます。私も今大学におりますので、今後も大学との共同研究という観点もよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。
【坂井プロジェクトマネージャ(JAXA/ISAS)】 こちらこそよろしくお願いします。ありがとうございます。
【村山部会長】 ありがとうございます。他の方はいかがでしょうか。よろしいでしょうか? それでは、どうもありがとうございました。SLIMに関してはまた改めて本部会にて報告いただければと思います。
それでは、次の議題に移らせていただきます。二つ目の議題は、「雲エアロゾル放射ミッション『EarthCARE/CPR』の開発状況について 」です。それでは、JAXA寺田理事、富田プロジェクトマネージャ、説明をお願いいたします。
【寺田理事(JAXA)】 JAXAの寺田です。この雲エアロゾル放射ミッション EarthCAREプロジェクトは、日本と欧州宇宙機関(ESA)で初めて一つの地球観測衛星を開発するというプロジェクトで、2018年に打ち上げました国際水星探査計画 BepiColomboに続く、ESAとの大型協力であります。このプロジェクトのスタートは、日ESA行政官会合での合意に基づいて始まっておりまして、これまでに日本とESAの共同で開発してきておりました。この度、EarthCAREの開発を終えまして、JAXAの中では開発完了の審査会によってその開発の完了を確認したということで、本委員会ではEarthCAREの開発状況を説明して、打上げ及び打上げ後の予定を報告したいと思います。詳細につきましては、EarthCARE/CPRの富田プロジェクトマネージャからお話しさせていただきます。
【富田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 本日の報告の内容ですが、EarthCAREの概要につきまして、開発状況、そして今後の予定をご紹介したいと思います。
雲エアロゾル放射ミッション(EarthCARE)ですが、これは地球全体の雲とエアロゾルの3次元分布を観測して、気候変動予測の最大の誤差要因である雲とエアロゾルの気候モデル内での再現性を高め、気候モデルの予測精度を向上させることが目的となってございます。
経緯のところは、冒頭にもありましたが、1990年代、ESAの中でEARTH RADIATION MISSIONというものが提案されており、同じ頃、JAXA側でも当時ATMOS-B1構想という類似性のあるミッションが構想されていたことで協力の議論が進みまして、2000年に第25回 日ESAの行政官会合で国際共同研究を開始したということになります。その後、2004年にESAの第6次EarthExplorerミッションとして最終的に選定され、2008年に宇宙開発委員会の本委員会にこの報告を行いまして、この開発が承認され、EarthCAREのプロジェクトチームを発足して開発を進めてきたものでございます。
雲とエアロゾルが気候変動予測の最大の誤差要因であるということですが、二酸化炭素のようないわゆる温室効果ガスというものは温暖化に寄与するということで、この図に書かれていますとおり、右側の赤い方向は温暖化に寄与しているものでございます。ただし、この黒い棒で示されているものは誤差を示すエラーバーになりますが、これは温室効果ガスの温暖化への効果の不確実性は比較的低いというものになります。一方で、エアロゾル等のものについてはこの青い色になっていますが、これは冷却に寄与するということでございます。取り分け雲との相互作用効果に関しては科学的理解度が低いということで、この黒いエラーバーが大きくなっているように、大きな不確実性を含んでいるものとなります。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、報告書で「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことは疑う余地がない」としております。また、地球温暖化がもたらす影響に対して被害を抑えるというようなことのため、具体的な政策が問われる状況になってきております。一方で、2015年のパリ協定では、全球の平均温度を工業化以降1.5℃に抑制するということで、2℃ではなく1.5℃に抑制するということで、これは明らかな便益があると。この平均気温で0.5℃の差でも非常に大きな差があるという報告になっております。しかしながら、現在世界の研究機関の気候モデルのシミュレーション結果で、工業化前に比して1℃~2℃と幅があるという状況で、この予測誤差は、取るべき具体的な政策に違いをもたらすものとなっております。
この予測誤差の最大の要因は、気候モデルの中での雲の取扱いが異なることにあるといわれております。雲には太陽等からの地表面への放射を遮る効果、日傘の効果、これは冷却要因になりますが、これと地球の熱が宇宙空間に逃げることを防ぐ毛布の効果、これは加熱要因になります。これがあるということで、どちらの効果が勝るかは雲の高度及び種類によって異なるとされています。また、雲が雨粒へ成長するプロセスに対して実態がよく分からないということで、雲の鉛直速度、種類及び雲が雨粒へ成長するプロセスというものが、気候モデル内で十分再現できていないといわれております。そこで、EarthCARE/CPRでは雲の鉛直分布を計測して、世界で初めて衛星による雲の鉛直速度を計測、これによる雲の種類の識別等を行うことによって、現行の気候モデルを大幅に改善していくことで、より精度の高い気候変動の予測の提供が可能となるものでございます。
また、2029年には次の第7次のIPCCの報告書が発行される予定になっており、この報告書にEarthCAREの成果を反映することによって、2030年代における各国の具体的な政策に貢献するというのは極めて意義が高いというふうに考えてございます。
この他、気候変動問題以外でも、雲の直接観測は気候予測よりも短期的な気象モデルの評価にも利用されるということで、こういった気象モデルの改良を通じて、昨今頻発する豪雨等のより適切な予測に貢献するものと考えてございます。
EarthCARE衛星の開発分担でございますが、このEarthCARE衛星は四つのセンサを一つの衛星に搭載して、太陽同期軌道によって地球全球を観測するものです。コンステレーションではなくて一つの衛星に同時搭載するということで、時間・空間のそろった高精度の観測を実現いたします。分担として、日本が雲プロファイリングレーダを開発して提供します。残りの三つのセンサと衛星システム打上げ、運用といったものはESAが担当するという分担になってございます。雲レーダによって雲の垂直分布と鉛直方向の速度、ESAの開発する大気ライダがエアロゾルの垂直分布、さらに、多波長イメージャで雲等の水平分布を観測するということで、雲とエアロゾルの3次元の観測をします。この結果を使って気候モデルを改良して、シミュレーションで得られた放射と、実際に搭載している放射計で観測した結果、これを比較することで答え合わせをするというようなコンセプトの衛星になってございます。
雲プロファイリングレーダ(CPR)ですが、これは94 GHzという高い周波数を使う衛星搭載レーダとなってございます。日本はこれまで多くの衛星搭載レーダの開発実績を有しておりまして、JAXAと国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)が共同で、この日本が得意とする衛星レーダ技術を用いてCPRを開発いたしました。これによって、どの高度にどれだけの量の雲粒が存在するかを観測できます。特長としては、ドップラー速度計測機能を有するということで、世界で初めて全球の雲の上下方向の速度を計測できます。また、これまでの衛星搭載雲レーダよりも感度が高いということで、より薄い雲まで観測ができるものになってございます。
技術課題としましては、この雲の上下方向の速度は、雲粒が降雨等へ成長するメカニズムに関係するということですが、よく分かっていないということなので、全球での観測が望まれているものになります。ただし、1秒間に7,700 メートルという非常に速い速度で移動する衛星上から、一般に1秒間に2~8 メートルという速度で鉛直方向に移動する雲の速度を計測するということで、指向精度が不十分だと衛星自身の速度がレーダによる雲の速度の計測結果に混入してしまうという問題がございます。そこで、この高い指向精度を実現するために、熱による歪の非常に低い大型なアンテナを新規に開発しております。さらに、ドップラー計測精度を実現するということで、パルスの繰返し周波数(従来の衛星の約2倍の周波数)でスイッチングできる高出力送信機を開発いたしました。また、ESAのライダ開発も非常に高い技術課題があるということで、ESAではまずEarthCAREのライダをいきなり開発するのではなく、先行するAelousという衛星計画でライダを開発して、得られた技術を用いてEarthCAREの大気ライダを開発するという計画で開発してきました。
CPRの開発ですが、2021年までに国内でのCPRの全ての試験を完了しまして、欧州に最終的に輸送してございます。その後、2022年8月にESAに最終引渡しを完了いたしました。
EarthCAREの衛星全体ですが、ESAは2021年からEarthCAREの衛星システムの組み立てをドイツのエアバス社で開始いたしまして、2022年6月には場所をオランダのESA宇宙技術研究センター(ESTEC)に移し、その後衛星システムの環境試験を進めてきて、昨年6月に試験を完了したという状況にございます。
また、EarthCAREに向けての日欧のサイエンスの取組としまして、一つはJoint Mission Advisory Group (JMAG)といったものを組織しまして、日本と欧州の科学者によってEarthCAREのデータの利用技術の開発を積み重ねてまいりました。原則年2回、日本と欧州で交互に開催してきたというものです。この他、数年に1度の頻度でワークショップを開催してまいりました。
今後の予定にまいります。EarthCAREの打上げですが、打上げロケットの選定経緯と書いていますが、いくつかこれまでに打上げロケットの変遷がございます。当初、ESAは仏領ギアナの射場からソユーズで打ち上げるということを計画してございました。2020年2月にロシアのウクライナ侵攻によりまして、このソユーズが使用できないという見通しとなりまして、ESAは代替打上げの検討を開始。その後、2022年12月に一旦ESAはVega-Cを用いて打ち上げること、バックアップにFalcon-9を使うということを選定しましたが、昨年6月、ESAは2022年12月のVega-C2号機の事故を踏まえまして、バックアップのFalcon-9で打ち上げるということを最終的に決定しております。
打上げの準備としましては、先月までにESA、JAXAとも審査会により開発の完了を確認したということで、現在ドイツのAirbus社で射場への輸送準備を進めているというところでございます。今後ですが、来月2024年3月にEarthCAREを射場となります米国のヴァンデンバーグに輸送し、その後2024年5月にSpaceX社のFalcon-9にて打ち上げるという予定となってございます。次の頁をお願いします。
打上げ後の主な予定でございますが、打ち上げた後は最大5日間のクリティカル期間、それから打上げ後3カ月までの初期機能確認、それから打上げ後6カ月までの初期較正検証といったものを行った後に、打上げ6カ月以降に定常観測に移るという予定となってございます。
EarthCAREのプロダクトですが、JAXAのGポータル、それからESAのWebサイトのどちらからでもEarthCAREの全てのプロダクトが入手・利用可能でございます。また、JAXAでは大学や他の機関の研究者と共にアウトカムの創出ということで、下に書いていますが雲エアロゾルに関する気候変動のメカニズムの科学的根拠の追求に貢献する。さらには、適応策の検討への貢献。また、現業機関の数値モデルやシステムでの利用の実現を目指すということで進めております。それぞれ補足資料を付けてございますが、本日は説明を割愛させていただきます。
打上げ・運用の状況でございますが、ESAと協力しましてEarthCAREの打上げ・運用状況についてはタイムリーに公表できるように準備を進めてございます。JAXAでは、Webの特設サイトで状況をお知らせするとともに、米国ヴァンデンバーグの射場や欧州からの情報提供を計画してございます。次の頁をお願いします。最後の頁です。これはESAがEarthCAREの打上げに向けて発表していますメッセージでございます。私の方からの報告としては以上になります。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、ただ今の説明について御意見、御質問がありましたらお願いいたします。山室委員、お願いいたします。
【山室委員】 ご説明ありがとうございました。このプロジェクトは日本とESAのプロジェクトということだったのですけれども、既にご説明されていたら申し訳ないのですが、13頁に、当初から打上げは日本でもESAでもなくソユーズでの打上げが計画されていて、その後もアメリカの民間ロケットを使用するという御説明だったと思います。例えば資料3にあるGOSATはH-IIAで打ち上げていますし、それから、資料5-1で今後ロケットの打上げということも非常に民間・基幹ロケットも併せて技術開発を進めるということを考えたときに、これは当初からどうして日本でもESAでもなくソ連とかロシアとかアメリカのロケットで打ち上げることになったのかという経緯がよく分からなかったので、教えていただければと思います。
【富田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 まず、打上げについては冒頭分担にありましたように、これは欧州宇宙機関(ESA)側の分担となってございます。ここでソユーズが登場するのですが、実はヨーロッパのアリアンスペース社のロケットのラインナップというのは、一番大型のアリアンロケットシリーズ、それから一番小型のヴェガシリーズで、その中間を補うために、ロシアとの協力でこのソユーズを、ロシアではなく欧州の射場であるフランス領ギアナから打ち上げるというものが、彼らヨーロッパのロケットのラインナップになってございました。そこで、彼らはヨーロッパのロケットのラインナップの中でEarthCAREの打上げに一番適切だということで、ソユーズで打ち上げるということを計画していたということになります。
【山室委員】 ありがとうございました。そうしますと、例えば今回Falcon-9で打ち上げるということですが、もしも当初からこれが日本の担当だったら、日本の基幹ロケットもしくは民間ロケットでも十分打上げできるようなものだったのでしょうか? それとも、今後そういうことも目指して資料5で技術開発を進めていくという感じでしょうか?
【富田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 まず、分担として仮に日本がこれを打ち上げるということになれば、日本のロケットのラインナップの中で打ち上げる能力は十分あるものとは考えております。ただ、今回は当初の協力の枠組みの中で、打上げはESA側が分担するということで彼らの中で選定されたというものです。Falcon-9については、この経緯に書いたとおり彼らもヨーロッパのロケットのラインナップで打ち上げるということで、ソユーズのバックアップとしてこのVega-Cロケットで打ち上げることを代替案として考えたと。ただ、このVega-Cが非常に残念なことに2022年12月に2号機が打上げを失敗するという問題がございまして、それの対策や検討を行っていく中で、バックアップとして予定していた、彼らから見ると欧州のロケットのラインナップではないFalcon-9で打ち上げるということを最終的に決定したものになります。
【山室委員】 分かりました。ご説明ありがとうございました。
【村山部会長】 他の方はいかがでしょうか。秋山委員、お願いいたします。
【秋山委員】 秋山です。よろしくお願いいたします。EarthCAREに搭載する四つのセンサのことなのですが、日本側がプロファイリングレーダ担当で、大気ライダに関しては欧州側の担当というふうにありますが、今後地球観測衛星でのライダの技術が例えば次期光学ミッションですとかそういうところに対して日本でも活用が進むということがあった場合に、同じ衛星の中で相手方がライダを開発しているというようなことで、何か日本側にとってもメリット、学ぶところといったものがあれば、その辺りを教えていただけますでしょうか。
【富田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 今回、日本が雲レーダを、主にESA側がライダをハードウェア開発としては担当しています。ただ、これらのセンサのプロダクトの利用に関しては、まず雲レーダについては一義的には日本側、ライダについてはESA側がまずやるのですが、そういったものを組み合わせて使っていくところは、日欧ともにこれはそれぞれの科学者が協力してプロダクトのアルゴリズム開発を進めてございますので、そういった意味ではライダの利用するアルゴリズム技術といったものは、このEarthCAREのプロジェクトを通じて日本のものが世界の中でも使えるようになってきているかと思いますので、今後日本が新たにライダの衛星を打ち上げるというようなことがあれば、そういったものが知見として使えることになるのではないかと考えています。
【秋山委員】 分かりました。どうもありがとうございました。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。続きまして、村松委員、お願いいたします。
【村松委員】 どうもありがとうございました。これからデータが取れるのが大変楽しみな衛星ですが、先ほどプロダクトに関して、ESAとJAXA両方からプロダクトが配布されるというようなことでしたが、これはそれぞれ作られたプロダクトが、どのセンサのものに対してもGポータルと、後はESAの方の提供するソフトウェアの方から提供されるということで、世界中のユーザーの人が自分の使い慣れている方のブラウザを使うというようなイメージでよろしいのでしょうか。中身は全く同じものということですか?
【富田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 その理解で結構でございます。ESA、JAXAと入口は違うのですが、中で用意するプロダクトについては全て同じものが、日本が計算したプロダクトもESAが計算したプロダクトも全てどちらのサイトからも利用可能な状況になります。
【村松委員】 どうもありがとうございました。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、次の議題に移らせていただきます。次の議題は「温室効果ガス観測技術衛星2号『いぶき2号』(GOSAT-2)プロジェクト終了審査の結果について」です。こちらは審議事項になります。それでは、JAXA寺田理事、久世プロジェクトマネージャ、説明をお願いいたします。
【寺田理事(JAXA)】 温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」です。こちらの衛星は2018年10月に打ち上げまして、昨年10月29日に5年間の定常運用を達成し、現在も順調に観測は継続しておりますが、昨年5年の定常運用を達成したということで、GOSATプロジェクトとしてはいわゆるプロジェクトの終了審査というものを行って、JAXAの理事会議でそれについて了承されているという状況にあります。それで、この審議においては、JAXAで行われた審査結果、それから、JAXAのGOSAT-2で挙げた成果について報告したいと思います。報告についてはGOSAT-2のプロジェクトマネージャをしておりました久世の方から報告いたします。
【久世プロジェクトマネージャ(JAXA)】 それでは、よろしくお願いします。本日は、前回審査いただいたプロジェクト移行審査から、衛星を開発して、その後定常運用を終えた部分に関してレビューを頂ければと思います。
GOSAT-2は、2009年に打ち上げまして、現在も運用していますGOSATの後継機として打ち上げられております。GOSATとの違いは、観測対象にCOという、温室効果気体ではありませんが燃焼のときにCO2と一緒に発生する気体が加わっております。GOSATが主に技術開発からスタートしているのに対して、GOSAT-2は環境行政にしっかり貢献しようということで開発されました。軌道はほぼ600 kmで、GOSATの666 kmとは若干異なりますが、これは周回が3日回帰のGOSATに対してGOSAT-2が6日回帰になっているからであります。
こちらはGOSATとGOSAT-2のデータを組み合わせて、毎月の二酸化炭素の全球の変化を示したものであります。我が国の衛星が世界で最も長くCO2をモニターしていると同時に、今でもGOSAT、GOSAT-2が持っている、これは分光という技術を使っておりますが約1万色を分光計で測るという、チャンネル数の多さは世界一のまま長期のデータを提供しております。
ここに書いてありますように、GOSAT-2はCO(一酸化炭素)を追加しておりまして、一酸化炭素は燃焼時に発生するということで、どこからCO2が特に発生したかということが明確に分かるようになりました。あと、GOSAT-2は観測の機能範囲も大きくなりまして、見ていただけますように特に海洋の観測範囲が大幅に向上しております。海洋はCO2の特に吸収する部分で不確定性が多いところですが、そこをしっかり観測できるようになっています。
GOSATは、環境省、JAXA、国立環境研の3者の共同プロジェクトでありまして、今回の定常運用終了に関しましても、3者で特にこの1年間、成果について共同で成果をまとめてきたという経緯がございます。環境省は行政利用。それから、JAXAはセンサ開発から衛星・ロケット打上げ、現在ではそのデータ提供まで行っておりまして、データの品質を保証するための較正までが責任があります。国環研ではそのデータを利用した高次の研究が責任範囲になっております。
スケジュールに関しましては、約4年の非常に短期間で開発をするということで、これはほぼ目標を達成して、ほぼ予定どおりに打ち上げております。
こちらは、GOSAT-2からは特に環境行政への貢献ということが要求されていまして、アウトカムの目標ということで、まずIPCCへの貢献ということで、こちらに関しましては2019年の報告書においてもGOSATの活用例が記載されておりまして、さらに、GOSATシリーズとしてしっかり貢献するようにということで論文も含めて引用されているところです。
それから、WMO(世界気象機関)の温室効果ガス世界資料センターへの貢献ということで、既にGOSATデータは提供を開始しておりますが、GOSAT-2のデータも提供を予定しております。それから、3番目の途上国へのインベントリ報告書への貢献ということで、特に発展途上国におきましては観測手段も限られているということで、GOSATのようなグローバルに観測するデータでそのインベントリの統計値をしっかりと検証していくということに貢献していくということが目標の達成状況になります。
まず、IPCCへの貢献ということですが、ここのIPCCのレポートにも記載されておりますように、GOSATデータがしっかりと有効であると同時に、その後GOSATが世界で最初に口火を切って打ち上げましたが、その後に打ち上がった米国あるいは中国の衛星、それからGOSAT-2、こういったものを使って全ての国のパリ協定に基づく排出量算定や報告の改善、精度向上が期待されるということが、ここの下の方に英語でも書かれているところで、報告書にまとめています。当初IPCCのところではなかなか衛星を利用というところまでは言及されていませんでしたが、GOSAT-2打上げ後2019年にははっきりと明文化されるようになりました。
それから、実際にこのIPCCの第6次の評価報告書には、ここに記載しておりますようにGOSATシリーズがしっかりとデータを供給していって、CO2に関しましては季節変化を繰り返しながら上昇してきたと。特にメタンに関しては一旦上昇が収まったかに見えたのですが、GOSATシリーズが打ち上がってからまた急上昇しているということで、そういった予測された上昇とはまた異なる兆候というのもしっかりと宇宙から捉えているということになります。こういったデータは、先ほど申しましたようにWMOと温室効果ガス世界資料センターへもしっかりとデータを提供していくことになりました。
特に発展途上国に関しましては、まずパイロット的なプロジェクトとして、モンゴルでGOSATデータを使ってもらうということで、環境省とモンゴル政府が協定を結びまして、モンゴル政府自体も地上の統計データをしっかり出してくれるということと、それから、モンゴル特有の事象ですが、ウランバートルを中心としての排出源が集中しているということで、視覚的評価はしっかりと出しやすいということで、ここをまずもってスタートしていますが、モンゴルの中でうまく人工衛星を使ってGOSATシリーズのデータを使って評価ができるということで、現在では更に拡張していって中央アジア5カ国のファイブスタンといわれている国々にも、ここの写真に示しますように今展開を進めていまして、我々としては更に世界中の発展途上国に向けてGOSATデータを広く活用してもらいたいというふうに考えています。
こちらは実際に論文で発表したという例でありまして、最初の例が、環境省が主導して、中央大学の渡邉先生が書いたScientific Reportsに昨年掲載されたものでして、モンゴル政府の統計値、それからGOSATのデータ、それから世界で広く使われている統計値でありますEDGARデータ。ここら辺が非常によく一致しておりますし、ウランバートルという都市のレベルでもしっかりと評価ができているということで、非常に良い成功例として論文を発表したものであります。
さらに、GOSAT-2では世界の主たるCO2の過半の排出は大都市から出ているということで、特に大都市観測をGOSAT-2では強化しておりまして、こちらはJAXAの研究としてGOSATシリーズのデータを使って、北京、ニューヨーク、東京等の大都市の排出量推定を行っています。次の頁をお願いします。
こういったGOSATシリーズのデータは、毎年行われているCOPの中でもマイルストーンとして大事な2023年あるいは2028年という5年スケールでの目標でありますグローバルストックテイクというものに関して衛星データをしっかり貢献させていきたいということで、我々としてはまず2023年に関してこのグローバルストックテイクへの情報提供を行いました。実際に国連の方でも採用していただいています。
次に、プロジェクトの達成状況であります。ミニマムサクセスとフルサクセスとエクストラサクセスと3種類に分けております。まず、ミニマムサクセスに対しては各項目の達成目標について達成しております。フルサクセスについても達成しておりますが、少し注記を述べさせていただいていますが、当初打上げを3年で達成しようという項目がいくつかありました。ただ、GOSAT-2の二酸化炭素あるいはメタンの導出というものに関しまして、一定の精度で導出できるというのは当初3年を目標としていたのですが、センサがGOSAT-2に関しては海外調達であったというようなこともありまして、その装置の特性評価に時間が掛かってしまいまして、3年ではなくて5年掛かったところもありますが、こちらも今所望の精度で導出できるようになりましたので、達成という形を取らせていただいています。
それから、エクストラサクセスに関しましては、やっとCO2、メタンが所望の精度で出せるようになってきましたので、それの応用研究として出ている部分、あるいは雲エアロゾルセンサという補助センサを使って出している部分がありまして、少し高次の研究に関しては遅れている部分がありますが、こちらに関しても今後1年でしっかりと行っていくということで達成見込みという形をとっています。ただ、未達成の部分がありまして、こちらはまず熱赤外という太陽の吸収光ではなくてCO2、メタンそのものから熱の放射量から高度分布を出すというもの。こちらは理論的な点からもなかなか精度がいろんな不確定要因があって出しにくいことや、それからGOSATに比較して有効データを1桁増やすというような目標に関しましては、もちろん有効データは増えているのですが数値的に達成が難しいということに関しては、次の頁も含めてですが、ここでも未達成となっています。次の頁をお願いします。特に最後の赤い未達成のところは、1桁増やすというのは、実際には7倍8倍にまで増えていますが、10倍というのはなかなか難しいということで未達成という形をとっています。
こちらは今口頭で説明いたしましたが、これからまず達成していかなければいけない項目に関しましても、特に今後1年というのが大事になってくると思いますので、今まで少し成果を出していくところにビハインドになった部分もありますが、しっかりとリカバーをして達成に向けて行いますということを記載しています。
それから、昨年の11月から後期運用に入っておりますが、特に寿命に関するものに関しては、太陽電池パドルに関してはまだ十分回転数に余裕がありますので、ここも大丈夫と。それから燃料に関しましては、GOSAT-2は非常にたくさんの燃料を積んで打ち上げておりますので、こちらもまだまだ大丈夫という状況にあります。
こちらはJAXAの中での審査結果でありますが、石井理事を審査委員長としまして昨年末に行ったレビュー結果でありまして、ここに書いてある審査項目に関して、いずれも達成しているという結果を載せています。
本報告のまとめですが、定常運用を5年間で無事終了いたしました。特にセンサや衛星に関して問題点はありません。それからGOSAT-2は、特に環境省、国環研も積極的に3者でしっかりとタッグを組んで実施するというプロジェクトでありまして、この協力体制はうまくいっていますので、今後も引き続きしっかりと行っていき、成果に向けて特に日本のプレゼンスを示せるようにしっかりと頑張っていくと同時に、JAXA自体はしっかりとハードウェアを運用していくということを進めていきたいというふうに考えています。以上になります。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、ただ今の説明について御意見、御質問があればお願いいたします。いかがでしょうか? 基準はほとんどクリアしたということで、非常に優秀な成績だと思うのですが、いかがでしょうか。特にありませんでしょうか? よろしいでしょうか。それでは、宇宙開発利用部会として、資料83-3について、特に20頁目に記載されたJAXAの審査結果に同意するものとしたいと思います。それでよろしいでしょうか? それでは、御異論はないようですので、決定とさせていただきます。どうもありがとうございました。
それでは、次の議題に移らせていただきます。次の議題は「国際宇宙ステーション(ISS)に提供するISS構成要素及び搭載物の安全確認について、審査対象をSpace PUPⅡとした調査審議結果について」です。本件については2月16日に開催された第53回調査・安全小委員会において先んじて調査検討が実施されており、本日はその報告を基に本部会で調査審議結果をまとめていただきます。まずは、本議題の趣旨等について事務局から簡単に説明いただいた後、JAXAが実施したSpace PUPⅡを対象とした安全審査の結果について、JAXA有人宇宙技術部門 有人システム安全・ミッション保証室の荒木主幹から説明を頂き、最後に調査審議結果案についての御審議を頂きたいと思います。本日はあいにく小委員会の木村主査の出席が叶いませんでしたので、最後の資料も事務局から説明をお願いいたします。
【竹上企画官(事務局)】 それでは、まず資料83-4-1について簡単に事務局から説明させていただきたいと思います。宇宙開発利用部会では、毎年度この時期にISSの構成要素及び搭載物の安全性に関する調査審議を、小委員会の調査検討結果の報告を踏まえた上で年1回やっていただいております。今期初めて就任された委員が何名かおられますので、簡単に背景情報等をご紹介させていただければと思います。
1頁目でございますが、まずISSの構成要素、搭載物の安全性に係る責任と役割分担ということで、冒頭に記載のとおりNASAと日本国政府の責任・役割の分担、あるいは日本国内での文科省とJAXAの分担、これがMOU(了解覚書)を踏まえて次に記載のとおりに定められております。まず、NASAにおいては、ISSの全体的な安全要求の設定であるとか、あるいは日本側が設定する安全要求がISSの全体的な要求に適合することの確認など、三つの事項をNASA側で担当をしております。
他方、日本国においては、まずJAXAで日本が提供する要素や搭載物に関する安全要求の設定を行うということ。それを基にJAXAが安全審査の実施を行うということ。さらに、この要素や搭載物が安全要求を満足していることの認証を文部科学省が担当するということで役割分担を行っております。
2頁はそれを簡単に図示したものです。続きまして3頁を説明しますが、こちらがこの宇宙開発利用部会と調査・安全小委員会の役割に関する記載でございますけれども、日本国内における安全性の認証の具体的な実施方法ということで、繰り返しになりますが、JAXAは日本が提供する全ての構成要素や搭載物に対して個別に安全審査を実施するということで、そのときには、安全対策の評価のための基本指針というものが、これは平成24年度に制定をしておりますが、これに基づいて、ここへの適合性確認も含めてやるとしております。
それを受けて宇宙開発利用部会及び調査・安全小委員会は、年に1回程度、毎年この時期になりますが、JAXAが実施する安全審査のプロセスが適切であることについてのチェックを実施していただくこと、これが本日やっていただくことになります。このプロセスのチェックにつきましては、打上げ予定の具体的な内容、構成要素や搭載物について、その審査の方法や結果の妥当性を評価することで実施をしていただくということで、今年度についてはこのSpace PUPⅡ、これからJAXAの方から説明いただきますが、これを対象に実施していただきます。毎年、調査・安全小委員会で先んじて調査検討をやっていただいておりまして、本日はその内容について部会でも改めて確認を頂くという形を取らせていただいております。
文科省は、この部会、小委員会が実施する妥当性の評価をもって、日本が提供する要素及び搭載物の安全性を認証するといった形を取らせていただいております。それでは、審査結果をまとめた資料の説明に入る前に、JAXAから、JAXAにおける審査結果の概要を簡単にご説明いただければと思います。
【荒木主幹(JAXA)】 それでは、JAXAの荒木から、JAXAで行いましたSpace PUPⅡの安全確認の結果につきまして、概要を報告いたします。Space PUPⅡと申し上げておりますが、正式な名称は、ほ乳類の繁殖における宇宙環境の影響に関する実験という、ライフサイエンス系の実験となります。次の頁をお願いします。これは資料の概要でございます。次の頁をお願いします。
まず、JAXAの有人宇宙技術部門にございます有人安全審査会というところで、2回の技術的な審査を行ってございます。それから、その結果を受けまして、JAXA全体の安全を審査します安全審査委員会で、今年の1月にその結果を審査してございます。次の頁をお願いします。
有人宇宙技術部門の有人安全審査会におきましては、このSpace PUPⅡの安全評価の具体的なところの確認を行ってございます。その結果を上位のJAXA安全審査委員会に報告するとともに、文科省さんが定められました基本指針にしっかり適合しているかという確認の審査を行ってございます。こちらの結果を本日まとめて報告いたします。次の頁をお願いします。
まず、対象となる実験でございます。こちらはマウスのフリーズドライの精子を宇宙に打ち上げまして、宇宙の環境における微小重力ですとか放射線が生殖細胞にどのような影響を及ぼすのかということを確認します。具体的には、放射線を遮蔽する容器に入ったもの、入っていないものを2通り打ち上げまして、それを比較することによって影響の違いを確認するということで、軌道上に打ち上げた試料を10カ月程度保管して、その後持ち帰って地上で遺伝子の解析を行うという実験でございます。次の頁をお願いします。
先ほど申したとおり、2つのサンプルを打ち上げて比較をするということで、サンプルA、サンプルBというものでございます。詳細は次の頁でご説明いたします。次の頁をお願いします。まず、放射線の遮蔽効果がないということで、マウスのフリーズドライの精子をガラス容器に入れまして、それをステンレス容器の中に入れます。同時に、環境を測るために放射線を計測する線量計を2種類、それから温湿度のデータを取りますロガーを載せまして、これで一つのサンプルといたします。このサンプルを2つ持ってきまして、これを1つはこのままバッグに入れたまま保管するということと、次の頁をお願いいたします。もう1つは、こちらにありますとおり水を使って放射線を遮蔽するということで、このサンプル容器の周りを水で囲うようにいたします。具体的には、ポリカーボネートのケースを作った中に水を入れたバッグを挿入いたしまして、水で周囲を囲うことで水による放射線の遮蔽効果を計測して、これで比較をするという形でございます。次の頁をお願いいたします。
これらの2つのサンプルをそれぞれ何重にも梱包して、最終的には難燃性のバッグに入れて、無人のロケットによって打ち上げます。打ち上げましたものは軌道上で別のバッグに移して、10カ月間保管をして地上に回収いたします。必要な部分、試料とか線量計の入ったステンレスの容器を2つ回収いたしまして、水の遮蔽を行った容器につきましては廃棄をするということでございます。次の頁をお願いします。
この安全審査の範囲でございますが、実際に打ち上げてから回収するまでということで、この赤い線で引いたところが審査の対象範囲となってございます。まず打上げでISSに到着した時に、正常な状態で運べるかということも含めまして安全審査をして、軌道上で運用して、地上に持ち帰るために容器をバッグに入れるというところまでを評価してございます。次の頁をお願いいたします。
審査の体制でございます。まず、この装置の実験を担当してございますのは、きぼう利用センターという部署でございます。こちらで装置を作るとともに安全の管理ですとか解析、データの取得を行います。これらを独立して安全性の観点で評価するのが有人システム安全・ ミッション保証室という所で、調整をして安全性の評価をしたものを有人安全審査会というところで評価をいたします。その辺につきましてはNASAの審査パネルとも確認を得まして、最終的にはJAXAの安全審査委員会の方で最終確認を行うという体制でございます。次の頁をお願いいたします。
この宇宙ステーションで行う実験は、人や機器に与える安全性の観点ということでハザードという形で識別してございます。これは標準的に影響を与えるということで、ここにもありますとおり火災ですとか空気の汚染といったものがございますので、こういったものを標準的なものはハザードとして設定をして、それを標準的な方法でコントロールするということでございまして、今回の実験は1~5番目のハザードが該当するということでございます。通常は14程度のハザードを認識してございまして、これらをそれぞれの実験ごとに当てはめていくということでございます。それから、一番下の赤い部分はユニークということで、実験固有のハザードがある場合は識別をして対応するということで、今回はバッテリーの破損というものがこれに該当するということで、これらについて次の頁から説明をいたします。次の頁をお願いいたします。
まず、1番目は火災でございます。これは可燃性の物質を使うことによって火災が発生する可能性があるということでして、使う材料を難燃性のものを使うとか、可燃性のものはなるべく使わないように量を減らすというようなことでその制御を行う予定でございまして、今回はISSで使える材料リストの中から要求を満たしたものを使っていることを確認し、それから、難燃性のバッグに入れて保管されるということを確認してございます。
それから、2番目は空気の汚染でございます。こちらは使用している材料から発生するガスでございますので、こちらも使える材料を確認して、安全要件を満足しているものが使われていることを確認してございます。次の頁をお願いいたします。
3番目は、水やサンプルの漏えいということで、いわゆる毒ですとか危険なものが漏れないかということでございます。まず、水を使っていますので、水につきましてはまず漏れないように2重3重の構造になっていますし、それから、打上げの環境でも壊れないというようなところで耐えられることを確認してございます。それから、使っている試料等の毒性、バイオセーフティにつきましては、NASAの専門家による評価を受けまして、問題ないことを確認してございます。
次に4番目でございますが、ガラスの飛散ということで、無重力でガラスが飛散して吸い込んだりするというようなことで危害を及ぼす可能性がございます。今回はガラスを使うサンプル等を使ってございますが、封入をして飛散しないように設計してございます。詳細はまた後ほどご説明いたします。
それから、5番目としては鋭利部分です。容器等に手を切るような部分がないかということで、そういった部分につきましては完成品を実際に触ることで試験をして問題ないことを確認してございます。次の頁をお願いいたします。
ガラスの飛散について、でございます。まず、今回の実験装置につきましてはガラスにフリーズドライの精子を入れてございますので、このガラス製のアンプルが割れても飛散しないように、一つひとつテープで覆って飛散しないようにしてございます。そういったものをこのケースに入れてございます。それからまた、放射線の線量計もガラスの線量計が含まれてございますので、こちらもシールをしたものに入れてございまして、そのままでは飛散しないようになってございます。こういったものをサンプルケースに入れ、テープで封入して開かないようにして、それを何重にもジップロックバッグに入れて保管してございます。
今回の実験は、このまま宇宙に持っていって、そのまま軌道上に置いて持って帰ってくるということで、このレベルでは開けるような想定はございませんので、外部にガラスが出ていくということは極めて低いというふうに考えてございます。次の頁をお願いします。
それから、ユニークなハザードとしてバッテリーの破損がございます。これは温湿度を記録するロガーにリチウムボタン電池を使うということでございます。バッテリーを使う場合は全て評価をしてございますが、このバッテリーは市販のもので、米国の製品安全の規格に合致しているということと、エネルギーとしても低いものであり、破損や漏えいはないというようなことで、ISSの要求に合致していることで問題ないというふうに判断してございます。次の頁をお願いいたします。
次からが基本指針に対するSpace PUPⅡの適合性の評価の結果をまとめたものでございます。頁が多くございますが、それぞれの基本項目に対してどのような確認を行ったのかということが書いてございまして、まずそれぞれの項目について書いてございます。次の頁をお願いします。
どのようなハザードを識別して安全評価を行ったのかということがこの頁に書いてございます。次の頁をお願いします。項目によりましては今回の実験に該当しないもの、例えば船外での実験に関するような要求ですとか、今回のものは簡単な実験装置でございますので適用しないものがいくつかございますので、それにつきましては適用外という形で書かせていただいてございます。では、頁を順次飛ばしていただければと思います。19頁も同様でございます。次の頁をお願いします。こちらもそうですね。次の頁をお願いいたします。このような形で基本指針に対しての確認結果を書いてございます。
基本的には先ほど概要でご説明した内容となってございます。結論でございますが、JAXAの有人安全審査会で安全解析が適切に行われることを確認してございます。また、JAXAの安全審査委員会でその審査結果、それから、この基本指針に適合していることを確認してございます。これを調査・安全小委員会の方に報告させていただいてございます。その後は添付資料でございますので説明は割愛いたします。以上でございます。
【竹上企画官(事務局)】 それでは、続いて資料83-4-3の方です。こちらは調査審議結果案を本日ご用意させていただいております。こちらを本日ご確認いただければと思います。1頁目でございますが、1ポツの概要は割愛します。2ポツ目の調査審議の方法ということで、2月16日に調査・安全小委員会で確認、調査検討を行ったということ、あと本日の日付を記載しております。調査・安全小委員会は、JAXAから示された資料を基に、JAXAが実施した具体的な要素及び搭載物に係る安全審査の方法や結果等が、所定の安全審査やプロセス、考え方に即しているかを評価指針に照らして調査検討を行った、また、今回の調査検討においてはSpace PUPⅡを対象としたという経緯を記載しております。
次に結果です。調査・安全小委員会では、当日ここは委員から御質問があったのですが、使用材料に対する可燃性・オフガスに関する評価や、水バッグからの水漏えいリスクに対する検証方法等についての質疑・確認について、これは問題ないと確認されまして、JAXAが実施している安全審査は適切であると判断をしたと。調査・安全小委員会における調査検討状況と、本日報告を受けた上で調査審議を行ったという点を記載しています。
最後の3ポツの調査審議の結果は、こちらは案でございますが、2行目、JAXAが実施したSpace PUPⅡに関わる安全審査の方法や結果等は妥当であると評価するということと、このことから、最初に説明しましたがJAXAが実施している安全審査のプロセスや考え方は適切に機能していると評価するという結果のまとめを記載させていただいております。以上でございます。
【村山部会長】 どうもありがとうございました。それでは、ただ今の説明について御意見、御質問があればお願いいたします。いかがでしょうか。金井委員、お願いいたします。
【金井委員】 ありがとうございます。JAXAの金井でございます。質問ではなくてコメントなのですが、軌道上のクルーの安全のためにこのような評価や審査をしていただいていることを本当に心より感謝申し上げます。研究会等で研究担当者の先生と情報交換をしたりお話ししたりする機会もあるのですが、日本の独自性のある技術を使った生物科学の研究でありまして、これが大きな成果を持って帰ってくることを期待しております。以上です。本当にありがとうございます。
【村山部会長】 どうもコメントありがとうございます。他はいかがでしょうか。よろしいでしょうか? それでは、資料83-4-3については小委員会からの提案どおり決定するということでよろしいでしょうか? それでは、御異論はないようですので、決定といたします。どうもありがとうございました。それでは、最後にその他事項として事務局から3件の報告事項があるとのことですので、よろしくお願いいたします。
【竹上企画官(事務局)】 事務局でございます。今日はその他事項として少し多めに案件を用意しておりますが、まず1点目、資料83-5-1でございます。先日2月6日の内閣府宇宙政策委員会での議論を経て、宇宙戦略基金の基本的な考え方というものが決定されておりますので、簡単に内容を紹介させていただきたいと思います。
説明の方は資料83-5-2の方でさせていただきたいと思います。これは内閣府が作成した資料で、2月6日の会議資料をそのまま使わせていただいておりますが、今般この宇宙戦略基金は、全体3000億円、文科省でも1500億円を補正予算で措置いただきましたが、この基本的な方針を内閣府で決定いただいております。
次の3頁目、今後の検討の方向性ということで、この部会でも事前評価等を行っていただいておりますが、改めて本制度のスキームでございますけれども、4府省が基金を造成し、今回予算は3省のみですが、JAXAに基金を造成し、これを委託若しくは補助金という形で企業、大学、国研等へ支援するという形を取っております。支援分野は、輸送、衛星等、探査等の3領域。出口については、市場の拡大、社会課題解決、フロンティア開拓という三つの柱を示し、それぞれのゴールとして、宇宙関連市場の拡大、地球規模・社会課題解決への貢献、知の探究活動の深化・基盤技術力の強化を示したということです。この点までは先日既に御説明をしているところかと思います。
今回、それらの目標を更に深掘りした記載をさせていただきまして、既に一部報道等で出ていたりもしておりますが、次の頁に行きまして、事業全体の目標達成に向けて、各分野において宇宙関連の他の施策の相乗効果を図りつつということで、この宇宙戦略基金だけで達成する目標ではないのですが、宇宙戦略基金としてここに示された目標に向けて技術開発を推進するということで、例えば輸送であれば、国内で開発された衛星や海外衛星、多様な打上げ需要に対応できる状況を見据えてということで、この状況の例示として、2030年代前半までに基幹ロケット及び民間ロケットの国内打上げ能力を年間30件程度確保ということも記載しておりますし、こうした状況を見据えて、低コスト構造の宇宙輸送システムを実現するということであるとか、そのための産業基盤を国内に構築するとともに、新たな宇宙輸送システムの実現に必要な技術の獲得も重要でございますので、こうした目標を記載しております。
次に衛星等でございますが、こちらは国内の民間事業者による小型から大型の衛星事業や軌道上サービス等による国際競争力にもつながる自律的な衛星システムを実現するということで、ここも例示として2030年代早期までにシステムを5件以上構築するということで、これは現時点では0件の状況ですが、国際競争力につながる技術的な衛星システムということで、これは5件以上しっかりと構築していくということ。さらに、輸送と同じ書き方ですが、産業基盤を国内に構築して、革新的な衛星基盤技術の獲得により国際競争力を底上げするということと、やはり市場拡大の目標として8兆円を掲げていますので、上記衛星を含む衛星システムの利用による市場を拡大するといった目標も掲げているところです。
次に探査等でございますが、月や火星圏以遠の探査や、人類の活動範囲の拡大に向けた我が国の国際プレゼンスを確保するということで、これも例示として2030年代早期までに我が国の民間企業等が月・火星圏以遠のミッション・プロジェクトに新たに10件以上参画するという記載をしております。また、2030年以降のポストISSにおける我が国の民間事業者の事業を創出・拡大するということで、こちらも2030年代早期までにビジネスを10件以上創出というような記載もございますし、あるいは、優れた科学的成果の創出や国際的な大型計画の貢献にもつなげるというような記載があります。こうしたことが基金全体の、文科省のみならず宇宙戦略基金4府省を併せた目標として記載がなされているところです。
次に、今後の検討の方向性丸3ということでございますが、今後、事業全体の制度設計については「基本方針」、各技術開発テーマの目標、内容については「実施方針」において具体的事項を記載するということで、下の方に囲みがありますが、まず基本方針は本日ご説明している、基本的考え方がより具体化、発展したものとご理解いただければと思いますが、こちらには事業の目標、概要、あるいは今ご説明しましたが事業全体の目標、支援の基本的な考え方、あるいはJAXAの体制をどうするか、こうした横串的なものが内閣府によって策定されます。
他方、右側の実施方針は、省ごとに内閣府と連名で定める予定にしておりまして、技術開発テーマ名であるとか、テーマごとの成果目標、あるいは支援期間や予算等の支援規模、こうした詳細について実施方針の方で策定するということで、またこの後、上の二つ目のポツに戻っていただきまして、テーマの設定にあたっては宇宙技術戦略で抽出された技術項目を参照するということであるとか、JAXA主体の研究開発ではなく、民間企業・大学等が主体となって技術開発を推進することで目標の達成に貢献することが期待できるか、道筋が示されているか、こうした観点から資源配分するというような記載もなされているところです。
また、次の6頁目は、委託・補助で今回やるということで、それぞれの基本的な考え方であるとか、技術成熟度の高い低い、あるいはその主体がどこかということによる、自己負担や補助・委託の使い分けの考え方も記載がなされているところです。
最後に7頁でございますが、今後のスケジュールでございます。2月6日の基本的な考え方、方向性を踏まえて、実は今日この後夕方に宇宙政策委員会において宇宙技術戦略案が議論される予定になっておりますが、それを受けて3月中に宇宙技術戦略自体が策定される予定になっております。
また、2月~4月に、これは本日も含めてですが、内閣府において基本方針の検討と、あとここにありますが総務省・文科省・経産省の各省において有識者会議の議論を踏まえつつ実施方針の検討を進めるということで、文部科学省の有識者会議は正にこの宇宙開発利用部会のことを指しますので、本日はこの考え方を説明させていただいておりますが、次回、次々回ぐらいですかね、3月、4月の利用部会で、一部非公開審議の部分もあると思いますが、この実施方針をこの部会の場でご議論いただく予定としておりますので、よろしくお願いいたします。
その後、4月以降ということで、最終的には宇宙政策委員会でもご議論いただいて、基本方針と実施方針を、前者は内閣府、後者は内閣府及び各省の連名で決定をして、その後JAXAにおいて、これは並行して進めておりますが、審査・運営体制の整備、公募要領等の準備を進めて、夏ごろをめどに公募開始というスケジュールを今想定しているところでございます。これが1点目です。少し長くなりましたが基金の状況の御報告でございます。
2点目が、スターダストプログラムでございます。こちらは2月9日付けで宇宙開発利用部会の第82回を書面審議いただき、既に文部科学省ホームページに結果を掲載させていただいております。ご協力いただきましてありがとうございました。次の資料83-5-4、スターダストの進め方についてという資料に記載しておりますが、ここに書かれた内容をご決定いただいておりますので、ここで頂いた指摘等を踏まえて、今後文科省分のプロジェクトを推進させていただきますので、御報告でございます。
最後に3点目、村山部会長からも冒頭少し御説明があったと思いますけれども、既に皆さん御案内のことと思いますが、2月17日(土曜日)H3ロケット試験機2号機の打上げが無事成功いたしました。宇宙開発利用部会並びに調査・安全小委員会の委員の皆様には、試験機1号機の打上げ失敗に係る原因究明への御協力をはじめ、ここまで多大なる御支援を頂き、誠にありがとうございました。打上げ結果の詳細等につきましては、また今後の部会で扱いたいと思いますが、まずは本日打上げ成功の御報告と併せまして御礼を申し上げたいと思います。以上、少し長くなりましたが、事務局からの報告は以上です。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、以上の3点についてどれでも結構ですので、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。それでは、鈴木委員、お願いいたします。
【鈴木委員】 鈴木でございます。基金のところで質問させていただければと思います。4頁で輸送と衛星と探査それぞれに対して数値的な目標が設定されているというのは素晴らしいことで、ぜひその数値を追っていっていただきたいのですが、候補となるようなテーマのロングリストを作成するとか、あと、進捗を追っていく主体がどういったチームで、また方法でなされるか、そういったイメージがあれば教えていただければと思います。よろしくお願いします。
【竹上企画官(事務局)】 鈴木委員、ありがとうございます。正に今モニタリングであるとか評価の在り方も含めて、JAXAでどういう体制を作るかということと併せて関係府省で検討・調整をしているところでございます。基本的にはテーマごとにしっかりJAXAにおいてモニタリングする体制をきちんと作っていくことになると思います。
【鈴木委員】 方針について理解しました。ありがとうございます。今後の運用を楽しみにしております。
【村山部会長】 秋山委員、お願いいたします。
【秋山委員】 よろしくお願いします。同じく宇宙戦略基金の今後の検討の方向性についてというところで、来月以降に審議が始まるということですので、今回は質問というよりはそれに向けたコメントという感じになるかと思いますが、5頁の実施方針のところで、進捗管理、フォローアップの方向性というところがございますが、どうしてもプロジェクトによって外部要因での進捗の遅れということが発生するかと思います。先ほどもEarthCARE衛星の打上げのロケットの載せ替えがあったということをお話しいただいておりますし、JAXAの商業デブリ除去実証(CRD2)も、昨年Electronの打上げ失敗によって数カ月打上げが遅れたというようなこともありましたので、そういった外部要因のためにどうしても進捗が遅れてしまうというような事情というのを、どの程度マネジメントの中で見ていくのか、フォローしていくのかというようなところについて、もし今何か方針が既にありましたら教えていただければと思いますが、今後その辺りも議論の中でお話しさせていただければと思います。私のコメントは以上です。
【竹上企画官(事務局)】 秋山委員、ありがとうございます。頂いた御指摘は正に重要な点だと思いますので、しっかりと検討の中に入れていきたいと思いますし、正にそうしたロケット打上げの部分も含めた不確実性の点もあることもあって、今回JAXAに基金という形で措置をしており、予算執行面も含めて、柔軟な仕組みにできるよう措置をしておりますので、いずれしても頂いた意見は参考にさせていただきたいと思います。
【村山部会長】 今ありましたようにやはり進捗チェックというのは非常に基金にとっては重要なところですので、今は体制構築中ということですので、ここはしっかりした体制を持って十分にチェックできる体制を整えていただきたいというふうに思います。他はいかがでしょうか。よろしいでしょうか? どうもありがとうございました。本日の議事はこれで終了といたします。最後に、事務局から連絡事項があればお願いいたします。
【竹上企画官(事務局)】 本日もありがとうございました。会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は文科省ホームページに既に掲載させていただいております。また、議事録につきましては、委員の皆様にご確認いただいた後、文科省ホームページに掲載させていただきます。最後に、次回の宇宙開発利用部会ですが、3月中の開催を予定しております。委員の皆様には別途ご連絡いたします。事務連絡は以上となります。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは皆様、以上をもちまして閉会といたします。本日は誠にありがとうございました。
―― 了 ――
研究開発局宇宙開発利用課