宇宙開発利用部会(第76回) 議事録

1.日時

令和5年6月27日(火曜日) 14時00分~16時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 最近の宇宙に関する動向について
  2. H3ロケット試験機2号機の相乗り小型衛星の選定について
  3. 衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)における次期光学ミッションコンセプト検討の結果について
  4. SLS搭載超小型探査機プロジェクトの状況について
  5. 革新的衛星技術実証2号機小型実証衛星2号機(RAISE-2)の成果について

4.出席者

委員

部会長 村山 裕三
部会長代理 田中 明子
臨時委員 秋山 文野
臨時委員 笠原 次郎
臨時委員 木村 真一
臨時委員 芝井 広
臨時委員 白井 恭一
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 高橋 徳行
臨時委員 鶴岡 路人
臨時委員 松岡 彩子
臨時委員 村松 加奈子
臨時委員 山崎 直子
臨時委員 米澤 千夏

文部科学省

研究開発局局長 千原 由幸
大臣官房審議官(研究開発局担当) 永井 雅規
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 橋本 郁也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 理事 石井 康夫
 理事/宇宙科学研究所所長 國中 均
 理事/研究開発部門長 佐野 久
 第一宇宙技術部門地球観測統括 平林 毅
 宇宙科学研究所 SLS搭載超小型探査機プロジェクトチーム チーム長 橋本 樹明
 宇宙科学研究所 SLS搭載超小型探査機プロジェクトチーム 副チーム長 船瀬 龍
 研究開発部門超小型・小型衛星宇宙実証研究ユニット ユニット長 鈴木 新一

5.議事録

【村山部会長】 それでは第76回になりますけれども、宇宙開発利用部会を開催いたします。今回も前回同様オンラインでの開催となっております。
今回は、初めは対面を含むハイブリッドで開催したかったのですけれども、諸般の事情で実現しませんでした。次回以降にチャレンジしたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。いずれにいたしましても委員の皆さまにはご多忙のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
まずは事務局から本日の会議に関する事務連絡をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局、宇宙開発利用課企画官の竹上でございます。本日もよろしくお願いいたします。
本日ですが宇宙開発利用部会の16名の委員のうち、14名の委員にご出席いただいており、定足数要件を満たしておりますことをご報告いたします。
次に本日の資料ですが、議事次第の通りでございます。オンラインの状況について音声がつながらない等の問題がございましたら事務局へメール、電話等でご連絡ください。事務局からのご連絡は以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは本日の議題ですけれども、全部で5件でありますが、全て報告案件となっております。
それでは早速、議題の方にうつっていきたいと思います。最初の議題ですけれども、最近の宇宙政策に関する動向についてです。第12期の最初の会合でも最新の宇宙政策に関する説明をいただきましたが、今月宇宙基本計画が改訂される等いろいろと進捗があったようですので、改めて現況について事務局より説明をお願いしたいと思います。
 
【竹上企画官(事務局)】 それでは引き続き事務局よりご説明いたします。
資料76-1をご覧ください。先ほど部会長からお話がありましたように、4月の部会でも第1回の会合ということで簡単に政策動向をご説明させていただきましたが、その後政府全体であるとか、あるいは文科省の事業において動きがある部分を中心に簡単にご紹介させていただければと思います。
2ページ目をご覧ください。宇宙基本計画の改訂でございます。2か月前にパブリックコメント版ということで概要資料を使って簡単にご説明させていただきました宇宙基本計画、こちら3年ぶりの改訂ということで、今月6月13日に閣議決定されておりますのでご報告いたします。内容に関しましては2か月前にご説明した内容と骨組みであるとか理念、あるいは取組、おおよそのところ一緒でございます。言葉のところ、例えば宇宙技術ビジョンであったのが戦略という言葉になるなど、一部修正点がございましたが、前回ご説明した内容の通り、閣議決定されておりますので、内容の説明は割愛しますけれども、ご報告させていただきます。
続きまして3ページでございます。また同日付けで、本来、毎年年末に決定しておる宇宙基本計画工程表でございます。こちらは基本計画の改訂と合わせてこの6月に同時に、宇宙戦略本部決定として改訂をしているところです。
全体工程表は細部にわたりますので、1枚だけ簡単にご報告させていただきたいと思います。このページ、基幹ロケットの打上げスケジュールでございます。※印で一番下に書かれていますけれども、前回5月の部会でH3ロケット試験機2号機の開発の方向性をご審議、ご確認いただきました。これを文部科学省から宇宙政策委員会へも報告し、ここの記述、読み上げますけれども、後ろの「なお」からです。「なお、H3ロケット試験機2号機については、試験機1号機で打上げ実績があり、早期の飛行実証が可能となる形態」これは22形態と呼ばれるものですけれども、「この形態とし、また、ロケット性能確認用ペイロードを搭載する方向。」ということで、こういう形で工程表の方に記述がされました、ということをまず1点ご報告。
それと前半ですね、※印の前半ですけれども、やはり現在H3ロケット試験機1号機の原因究明途上でございますので、今回工程表の打上げ年については基本的には変更はせず、H3ロケット試験機1号機打上げ失敗に係る原因究明と対策の状況を踏まえ、今後、これは年末になりますけれども、年末に打上げ時期の見直しを行うということで、※印は重要な部分なのでご報告させていただきました。
また、同じく6月13日に宇宙開発戦略本部決定されたものとして、宇宙安全保障構想がございます。これは昨年、宇宙戦略本部で宇宙基本計画の改訂とともに、防衛3文書の改訂を踏まえ、この宇宙安全保障構想を作るという総理からの指示があったものを受けて作られたものでございます。この宇宙安全保障構想自体は第1、第2、第3のアプローチということで、安全保障のための宇宙の利用ということと、宇宙空間そのものの安全かつ安定的な利用の確保というところと、あとは第3のアプローチとして安全保障と宇宙産業の発展の好循環の実現、この3つのアプローチに分けて取組が整理されております。
この構想を受けて、改訂版の宇宙基本計画を並行して作っておりましたので、この取組自体は先ほどの宇宙基本計画の概要1番に書かれた宇宙安全保障の確保のところで、同様の記載になっている部分が多いです。また、例えば第3のアプローチのところの宇宙技術戦略の実行とか、先端基盤技術開発の強化であるとか、JAXAの役割については、先ほど2ページ目でご説明させていただいた基本計画そのものに統合された、そうした構造になっております。
以上、宇宙安全保障構想をかいつまんでご説明させていただきました。
またもう一つ、文科省の施策で、通常の予算以外の部分で新しい制度としてSBIR制度の抜本拡充というものに動きがございますのでご報告いたします。
スタートアップ5か年計画が昨年に策定されたことを受けまして、令和4年度補正予算で2,060億円、これは5か年の基金ということで政府全体で措置をいただきました。ここの絵にあるように、これまでフェーズ1、フェーズ2と、SBIR制度、NEDO等の事業を中心にやっていた中で、やはりディープテックのところに関してはフェーズ3の部分の投資が少ないのではないかということで、新たに措置された取組となります。
次の7ページでございますけれども、その後これ自体は内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の方で予算措置されたのですけれども、5省庁、文科省・経産省・厚労省・国交省・農水省、この5省庁がそれぞれ予算の移し替えを受けまして、文科省は2,000億円のうちの約695億円の移し替えを受けて、その後宇宙・核融合・防災の3分野に使うという意思決定を内閣府、文科省の双方で行っております。
実施体制はここに記載の通り、まず基金を設置し、運用する法人としては一般社団法人 低炭素投資促進機構を3月15日に選定しております。また運営支援法人に関しては、やはり分野別に、これは技術的支援であるとか、あるいは配分業務、サポートをする法人でございますので、分野別に公募を行いまして、宇宙分野に関しては、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構JAXAが6月12日付けで採択をされておるところです。
あとスタートアップ等への補助金ということでは、文科省・内閣府ですでに分野の意思決定をしておりまして、宇宙輸送分野、民間ロケットの開発・実証に350億円、スペースデブリ対策として、スペースデブリ低減に必要な技術開発・実証に206億円を措置するということを、5月の段階で決定をしておるところでございます。ちょうど、運営支援法人も決まりましたので、文科省がこの両法人とともに、ベンチャーの実際の公募の開始に向けて作業を進めているところであります。7月中には何とか公募を開始できるように今後作業を進めていく予定としております。事務局からの説明は以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それではただいまの事務局からの説明に対してご意見ご質問がありましたらお願いいたします。通常通り挙手いただければというふうに思います。いかがでしょうか。
質問が今のところないようですので、つなぎではないですけれど、私の方から一つだけお願いたします。
SBIRですけれども、これは理想的にはフェーズ1、2、3と、フェーズ1を通った、成功したのが2に上がって、それが3に上がるという、そういうプロセスが理想となるわけですか。その辺りいかがでしょうか。
 
【竹上企画官(事務局)】 ご質問ありがとうございます。今般のフェーズ3に関しては、もちろん他省庁の事業等でフェーズ1、2を通ってきた構想というのももちろん対象になりますが、基本的には、1、2を必ずしも通っていなくても、特にロケット開発等の場合はいきなり要素技術を集めて、いろんなところで統合してフェーズ3からというケースもあるはと思いますので、フェーズ3から手を挙げるということは、制度上は可能でございます。
 
【村山部会長】 実際に近いところだとフェーズ3から入れるということ?
 
【竹上企画官(事務局)】 そうです。
 
【村山部会長】 わかりました。ありがとうございます。他いかがでしょうか。いいでしょうか。村松委員から手が挙がっております。よろしくお願いいたします。
 
【村松委員】 すみません、今の話題にダイレクトに関係しているかちょっと私自身わからないのですけれども、人材育成という意味ではやはりデータを使う人の裾野を広げるということも重要だと思うのですが、そういった場合に例えば自分の専門の方から言わせていただくと、地球観測データの提供システムというのは今G-Portalというのが出ていて、以前に比べたらかなりいろいろ使いやすくなったりしてはいるのですけれども、やはりまだ衛星データのこととかをよく知っている人でないとやはり使えないというようなところがあるような気がするのです。もっと裾野を広げるという意味では、もちろん衛星がちゃんと打ち上って、データが取れるということが一番大事なのですが、それからソフト的なところで、もっとユーザーに優しい感じにデータを提供するという辺りも、今後少し、いろいろと予算の関係もあるとは思うのですけれども、力を入れていただけたらと思いました。以上です。
 
【竹上企画官(事務局)】 はい。ご意見ありがとうございます。概要では全て書ききれていないのですけれども、まさに今回の基本計画の策定は、内閣府、あるいは他省庁とも一緒に議論させていただく中で、まさにそうした人材の重要性、特にリモセン人材のところ、ここは今事業としては経産省を中心にやっているところでありますけれども、本当に人材の重要性については議論されていましたので、それを受けて何か具体化、具体的な取組が何かできないかというのは、まさに議論しているところなので、また先生ともご相談させていただきながら進めたいと思います。ご指摘ありがとうございます。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして山崎委員、お願いいたします。
 
【山崎委員】 はい、ありがとうございます。3ページの打上げの計画、見通しの点なのですけれども、やはり皆さん関心が高いところかと思っております。多々原因究明も踏まえてご尽力してくださっている中ですが、1点お聞きしたかったのが、HTV-Xの1号機がH3で打ち上がる予定になっておりますが、国際協力の中でいつの時期に打ち上げるというような、どこまで合意、日本の時期として決まっているものはありますでしょうか。
 
【竹上企画官(事務局)】 もし可能なら宇宙利用推進室から答えてもらってもいいですか。
 
【橋本補佐】 すみません、山崎委員、ご質問ありがとうございます。宇宙利用推進室の橋本と申します。
HTV-Xの1号機の打上げに関しての国際調整の状況ですけれども、こちらはこれまでの調製の中では、2024年までにHTV-Xの1号機から3号機までを打ち上げるというような形にはなっているのですけれども、この資料の下のところにありますように、H3の状況等もございますので、そういったところも踏まえながら今後具体的な打上げ時期についても国際調整の中で調整を進めていくというふうに考えておりますので、今現時点ではちょっと未定でございます。
 
【山崎委員】 はい、承知いたしました。今後の国際調整ということで理解いたしました。ありがとうございます。
 
【橋本補佐】 すみません、ありがとうございます。
 
【村山部会長】 続きまして鈴木委員お願いいたします。
 
【鈴木委員】 鈴木でございます。SBIRのフェーズ3のところで再び質問をさせていただきたいのですけれども、スタートアップ等への補助金の宇宙分野の投資領域が宇宙輸送とスペースデブリ対策の2つに大きな予算をつけようというふうに至ったプロセスみたいな部分を教えていただければなと、特に基金の設置法人の名前が「低炭素投資促進機構」となっているのに対して、スペースデブリとかというのはどういう関係があるのかみたいなところも少し整合を理解したい部分がありまして質問させていただきます。
 
【竹上企画官(事務局)】 鈴木委員、ありがとうございます。背景から申しますと、2,000億円の予算ができあがる時に、各省がいろんな構想を内閣府に提案をしております。
宇宙関係に関しては我々のみではなくて、経産省は実はまだ領域のどこをやるかというのは経産省内で正式決定をされていないので、私の方から金額や分野をここで発言するのは差し控えたいと思うのですが、経産省がいろいろ事業を打たれているような領域、そこと我々がいわゆる社会実装までちゃんと責任を持つべき領域、これはJAXAの事業を中心にやっているような領域ですね、ここを宇宙事務局の方で音頭を取ってもらって、やはり文科省は基盤をしっかりと実装のところまでやっていくのだよねということで、基本計画でいうと4番のところですけれども、つまり宇宙輸送とデブリ対策を、文科省がしっかりと最後の社会実装のところまでやっていくということで、この領域をやるという意思決定をさせていただき、これがトータル550億円、おそらく経産省の方でも今後宇宙領域、他の分野の決定がなされるというふうには認識をしているところです。
低炭素投資促進機構を選んだというのは、各省に予算が配分されて、これは核融合も防災も含めてですけれども、基金をちゃんと運用できる法人をまた別途公募して、結果的にこの低炭素投資促進機構というところが選ばれたということで、文科省として、基金をちゃんと運用できる法人を選んだ結果としての低炭素投資促進機構である、そういった経緯になります。
 
【鈴木委員】 はい、経緯も含めてよくわかりました。文科省系の宇宙関連の技術みたいなものも既存のものも素晴らしいものがあると思うので、スタートアップ等の組み合わせの中で社会実装を効率的に目指せるようにお願いしたいなというふうに思います。ありがとうございます。
 
【竹上企画官(事務局)】 ありがとうございます。頑張っていきます。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。それでは質問もないようですので、次の議題に移らせていただきます。
2つ目の議題は、H3ロケット試験機2号機の相乗り小型衛星の選定結果についてです。前回の宇宙開発利用部会でH3ロケット試験機2号機計画に関する方向性について議論された際、ミッションに影響のない範囲にていわゆるピギーバック衛星搭載の可能性もついても検討するという話が出ておりました。
今回、その計画が具体化したようですので、それについてご報告いただくことといたします。それではJAXAの石井理事、ご説明をお願いいたします。
 
【石井理事】 JAXAの石井でございます。聞こえておりますでしょうか。
 
【村山部会長】 聞こえています。大丈夫です。
 
【石井理事】 ありがとうございます。それでは説明させていただきます。
H3ロケット試験機2号機、今ご紹介がありました通り、前回の宇宙開発利用部会でお話のあった件の進捗をご報告させていただきます。
これまでの経緯ということで、書かせていただいておりますが、まずH-ⅡAロケットで「超小型衛星相乗り」という活動を実施してまいりました。大学・民間企業等に継続的な軌道上実証機会を確保するということで対応してまいりました。
これまでの経緯というところですが、H-ⅡA ロケット、H3ロケットでの「超小型衛星相乗り」につきましては、2019年12月に「SpaceBD社」と事業移管という基本協定を締結しまして、SpaceBD社がマーケットを開拓していくということを継続してまいりましたが、H3につきましてはまだ相乗りの予定がなかったという状況でございました。
2つ目にありますが、前回の宇宙開発利用部会におきまして、H3TF2の計画につきましてロケット性能確認用ペイロードを搭載し、支障のない範囲でピギーバック衛星を搭載の可能性を検討するということをご確認いただきまして、その後検討いたしました結果50㎏級衛星1機と3Uの衛星1機は相乗り搭載が可能というふうに識別をいたしました。
6月、今月の5日から12日までの約1週間でございますが、相乗り衛星搭載候補に係る情報提供要請を行いまして、その結果4つの衛星から情報提供をいただきました。その内訳は50㎏級衛星が1機と3UサイズのCubeSat衛星3機、すみません、※1のところですけれども、3機という情報提供をいただきました。
先にご説明しました通り、50㎏級1機と3U 1機が搭載可能という中で情報をいただいた衛星の技術的な課題と、それからスケジュールリスク、この観点で相対的な評価をさせていただきまして、搭載衛星としましては50㎏級衛星1機と3U衛星1機を選定させていただきました。
 この内容をご報告するのは本日が初めてということになるのですけれども、ここにあります通り左側にありますのが、キャノン電子株式会社の50㎏級衛星「CE-SAT-1E」、右側にありますのが、3U衛星で「TIRSAT」、これはとりまとめが一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構様で、実際の担当企業さんは衛星バス開発がセーレン株式会社、センサー開発がビジョンセンシング、地上局運用はアークエッジ・スペースという、そういうご提案でございます。投入軌道は初号機と同じ670㎞の高度を予定しております。
 搭載する場所というものをちょっとイメージでご紹介いたしますけれども、一番左側にフェアリングの箇所がありまして、そこの中を、真ん中あたりの写真の下側に黄色い点線と赤丸がございますけれども、赤丸のところは主要な衛星の搭載場所ですので、TF2ではロケット性能確認用のものを搭載いたします。今回の相乗り2機につきましては下のPSS(Payload Support Structure)こちらの方に搭載いたします。その上に絵が書いてございますけれども、支持構造の上に衛星分離機構、それから3Uの場合には衛星放出機構、分離機構と放出機構はちょっと内容は異なりますけれども、こちらを使って支持機構に取り付けるということになります。
 今回の相乗り衛星実施の意義でございますけれども、1つには最初に申し上げましたが、基幹ロケットによる超小型衛星相乗りの事業を継続するという、技術の実証ができるということがございます。
それから2つ目としまして、3U、CubeSatが3つ分の衛星でございますけれども、これと非火工品衛星分離機構の軌道上の実証ができるということでございます。今までは1Uのサイズにしか対応していない衛星放出機構だったところ、最近市場での主流となりつつあります3Uサイズの軽量な衛星放出機構、こちらを開発しまして軌道上実証を実施することができる。それから非火工品による衛星分離機構というのもございますけれども、これも50㎏衛星用でございますが、こちらについても軌道上の実証が可能ということで、これらはJAXAと民間事業者とのJ-SPARCにおける研究開発成果となります。
3つ目ですけれども、キャノン電子のCE-SAT-1E、こちらが光学衛星でございまして、地理空間情報、防災対応、3D都市データ作成、こういうことの研究等が実施できるということがございます。これらはALOS-3のミッションで想定しているものの中の一部でございまして、一部であってもそれがこの民間事業者の衛星と協力することでリカバーできるという効果があるというふうに考えております。
それから4つ目でございますけれども、非冷却小型熱赤外センサーというものがTIRSATというものに載せられることになっています。これは経済産業省さんの委託事業「サプライチェーンの迅速・柔軟な組換えに資する衛星を活用した状況把握システムの開発・実証」という事業において開発をされた衛星でございます。ウクライナ情勢もありまして、残念ながら打上げ自体が確保できずに事業が中断しているという状況だそうでございまして、今回このH3のTF2で打上げることによりまして国の事業の完成に貢献することができると考えております。
 以上、選定させていただきました2つの衛星につきまして、ご紹介させていただきました。今後ですけれども、H3TF2はまだ時期は確定しておりませんけれども、早期の打上げに向けて原因究明と準備作業を進めておるところでございます。この2つの超小型衛星につきましては衛星の無線局免許の取得、一旦取得したというものもあるようなのですけれども、高度が変わるというところがございまして、今回の打上げのために再度取得いただく必要があります。それから宇宙活動法に基づく許可の取得、こちらも必要でございまして、いずれも軌道の変更に伴い再調整が必要ということでございまして、衛星提供者と連携しまして関係省庁への対応を進める予定でございます。
2つ目に書いてございますが、H3の試験機2号機の打上げを最優先といたしまして、今後の準備作業を進めさせていただきます。各衛星提供者との間であらかじめ合意を得て協定等を締結する予定でございます。その協定には1つ目のポツがございますが、衛星の搭載作業に係るトラブルや各種許可申請に係る今後の調整結果等、不可抗力を含みますけれども、衛星の引き渡し期限に間に合わない場合は、H3TF2のスケジュールを優先させていただくということで、衛星ダミーに載せ替えるということについての合意が必要と考えております。もうひとつは打上げにおいて万が一、衛星を喪失した際でもJAXAは再打上げ機会の提供、衛星の開発経費の補償等の処置を取らない、今回TF2で搭載ペイロードの能力を確認するという機会を提供させていただくということで打上げに係る費用はいただかないと、無償で打ち上げるということでございますので、こういったことも条件としてご了解をいただくということで合意をするということを予定してございます。私からの説明は以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それではただいまの説明についてご意見ご質問がありましたらお願いいたします。まず木村委員から手が挙がっております。よろしくお願いいたします。
 
【木村委員】 ありがとうございます。今回テストフライトで相乗り機械を提供いただくということと、その機械を使って、今後相乗り機械の実証に使われる、これは素晴らしいことだと思っております。非常に賛同いたしますし、良い試みだと思います。
その意味で2つ質問がありまして、今回の打上げの時に、実装と言いますか、相乗り打上げの形態、これはおそらく今後についても非常に重要なのではないかと思われるのですけれども、この構造についてはあらかじめ検討が進められてきたものでしょうか。今後もこのような形態を活用されるということで検討を進めてきたものでしょうか。
またこの相乗りのインターフェースについておそらく相乗りというメディアというのは、国際的にも非常にいろんな方法が展開されてきているところなので、それらとの整合性と言いますか、共通性というか、そういうところについてどの程度検討されているのでしょうかというところが、打上げの相乗り機械のところについての質問です。
もうひとつは今回の機械を使って検証される、これも非常に重要だと思うのですけれども、どのような点というか、具体的にどのようなパラメータとか、どのようにして検証されるということをご検討されているのか、その辺りがわかれば教えてください。
 
【石井理事】 ご質問ありがとうございます。まずは基本的な考え方にご賛同いただきましてありがとうございます。
形態につきましては、これは2つ目の質問にも関係があると思っておりますけれども、ある意味ユニバーサルというか、各相乗り機会というのは世の中たくさんございますので、そういったところにつきましてはSpaceBDさんの知見も踏まえて、形態は検討をしてまいったところでございます。
特に50㎏級につきましては過去に経験がございまして、それを踏襲しつつ、分離機構につきましては非火工品のものというのを新しく今回採用しているというものでございます。3Uにつきましてもやはり説明の中で申し上げましたが、3Uは打上げ市場としてはかなり増えてきているという市場の状況を踏まえまして、これもSpaceBDとも相談をしつつですけれども、こういうものが必要であるということで検討はしてあったところでございます。
この短い期間で検討いたしましたので、たまたまこういうものがあって本当に良かったというふうに感じておるところでございます。
あと検証をどういった形でというところでございますけれども、ちょっとそこはまだこれから検討をする部分がございます。どれだけ分離部のところとかでデータを取れるかというところは、ロケット側とも調整が必要なところもございます。基本的にはTF2の打上げのペイロードの能力の確認というところを優先しつつ、データの取れる範囲で確認するべきデータを選ぶということを考えてございます。
 
【木村委員】 ありがとうございます。今後の展開も含めて非常に重要なポイントだと思いますので、ぜひ検討を進められてください。ありがとうございます。
 
【石井理事】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして秋山委員、お願いいたします。
 
【秋山委員】 サイエンスライターの秋山です。2問、質問の方をよろしくお願いいたします。短い時間で大変素晴らしい衛星を選定されたと受け止めております。
まずこの2機の衛星の組み合わせなのですけれども、キャノン電子さんとCE-SAT-1EがRGBの衛星というふうに可視光の、RGBの衛星と認識しております。TIRSATが熱赤外の衛星ということなので、非常に条件の厳しい中だったとは思うのですけれども、だいち3号で予定していたような、だいち3号は6バンドを持っておりましたけれども、部分的ではあっても可視光と赤外領域という波長の組み合わせを、実現できるような組み合わせを選定されたという理解でいいのでしょうかというのがまず1点と、それから特にCE-SAT-1Eの災害時の緊急観測にも今後の次期光学ミッションの検討にも資するということで使われるということで、つまりデータ公開ですね、地球観測衛星のデータをこれから利用されるような方々も含めて、何らかのデータ公開のご検討というのはあるのでしょうかという、この2点です。お願いいたします。
 
【石井理事】 ご質問ありがとうございます。
まず可視域と熱赤が選べたというのは、正直に申し上げまして、たまたま、本当に他に応募がなかったということから考えますと、本当に奇跡的にALOS-3のミッションの一部をカバーできるミッションが選べたというふうに考えています。それを意図して選んだというよりは、先ほど申し上げました技術的課題、これは衛星がどれだけ準備できているか、ということにあると思うのですけれども、その準備の状態がほぼ完成している衛星が2つたまたまありまして、しかもそれが可視光と熱赤外だったということでございまして、我々としては本当に幸運と言いますか、一部でもALOS-3のミッションの検討それから今後の光学衛星計画の検討に資するという位置づけになりますので、本当にどこまでできるかというのはもちろん今後ではあるのですけれども、そこにつきましては本当にたまたまではございますけれども、素晴らしい組み合わせで選べたのではないかと思っております。
2つ目のデータ公開につきましては、今後この選定させていただきました企業さんとも相談をさせていただくことにしておりまして、基本的には可能な範囲でと、無償で打上げをするということにさせていただきますので、ある意味での見返りということになろうかと思いますけれども、うまく打ち上がった暁にはどのくらいのデータはJAXAに提示いただけるかというところはこれから交渉をさせていただくと考えておりまして、JAXAで得たデータはもちろん公開できるというふうに考えております。
 
【秋山委員】 はい、ありがとうございます。私からは以上です。どうもありがとうございます。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして松岡委員、お願いいたします。
 
【松岡委員】 松岡です。どうもご説明ありがとうございました。
実は1つ前の秋山委員の2つ目の質問とかなりかぶってしまうので、ちょっと加えてご質問したいと思います。
今日、ご説明いただいた超小型衛星を相乗りで打ち上げることを推進されていることは大変良いことというふうに思って伺っていました。相乗りの小型衛星というのは比較的小規模の事業者によって行われることが多いと思います。ちょっとJAXAが主導するようなミッションと比べると、マンパワーであるとか資金とかはちょっと限定的であって、そういうことから成果を有効に一般に活用できるようにするようにして、今後の相乗り、こういうミッションをさらに促進するためには、ある程度ちょっとそこにもJAXAが協力をして、手助けをするというか、共にやっていくということも大事ではないかと思います。
先ほどのデータ公開ということもあったのですけれども、JAXAと事業者との間の契約でそういうことも含めて契約を結んで結果を有効活用する、そういうお考えというか、方針があるかどうかというのと、そういうことをお願いしたいと思って発言させていただきました。よろしくお願いいたします。
 
【石井理事】 まずは今回の説明の基本的な考え方にご賛同いただきましてありがとうございます。
ご質問と言いますか、ご提案と言いますか、企業さんからのデータを得るというだけではなくて、JAXAが協力できるところを積極的に協力していった方がいいのではないかというお話をいただいたと思っております。もちろんそのように考えておりますが、我々はここ3、4年、J-SPARCといいまして民間事業者が主体的にビジネスをやるのに対してJAXAの知見で協力をするという枠組みをすでに持っておりますので、そういった今までのやってきた枠組みもうまく活用しながら民間事業者さんと協力をしていきたいと考えております。
もちろんデータを得るということにつきましては、今後合意する文書の方に反映させていきたいと思っております。
 
【松岡委員】 はい。すでに既存の枠組みでもそういう取り組みをされているということで理解いたしました。どうもありがとうございます。
 
【石井理事】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。質問いいでしょうか。それでは次の議題に移らせていただきます。どうもありがとうございました。
 
【石井理事】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 それでは次の議題ですけれども、SLS搭載超小型探査機プロジェクトの状況についてです。JAXA宇宙科学研究所の橋本教授、船瀬教授、ご説明をお願いいたします。
 
【橋本教授】 SLS搭載超小型探査機プロジェクトチームの橋本です。本日は昨年11月16日にNASAのSLSロケット初号機にて打ち上げられましたEQUULEUSとOMOTENASHIの両探査機の現状について、これまでの運用状況についてご報告をいたします。
 経緯につきましては昨年12月にこの部会でもご報告させていただいておりますので、省略して、早速EQUULEUSの現状について船瀬の方からご報告いたします。
 
【船瀬教授】 では3ページをお願いたします。まずEQUULEUSのミッションの概要です。EQUULEUSのミッションは超小型探査機による深宇宙航行のための軌道制御技術の実証を行って月のラグランジュ点を目指すことです。
工学ミッションとしましては水を推進材とする推進系によって太陽-地球-月圏での軌道操作技術を実証します。
科学観測ミッションとしましては、地球磁気圏プラズマの撮像、月の裏面への隕石衝突の際の発光現象の観測、それから月軌道周辺までの領域のダスト環境の評価の3つがあります。
ミッションのサクセスクライテリアはページが飛んでしまって恐縮ですが、参考の17ページをお願いたします。17ページにサクセスクライテリアを掲載しておりまして、打上げ直後の機能確認までをミニマムサクセス、その後地球-月圏での航法・誘導・制御ができて、科学観測として磁気圏プラズマ撮像ができたところでフルサクセス、さらに地球-月系の第2ラグランジュ点であるEML2へ到達して、月面衝突閃光観測あるいはダスト計測ができればエクストラサクセスというふうに定義しております。
それでは4ページに戻っていただきまして、EQUULEUSのこれまでの運用状況についてご説明したいと思います。打上げ後初期の探査機の機能確認と軌道制御を経まして、最初の月フライバイに成功しました。その後、合計14回の軌道制御運用を予定通り実施しまして、今年年末のEML2到着に向けて航行を続けておりました。
今年2月には長周期彗星、ZTF彗星の観測を行ったりしながら、3種類の観測機のチェックアウトも完了させまして、磁気圏プラズマ撮像装置によるサイエンスデータの取得にも成功して、ここでフルサクセスを達成しました。
その後、EML2到着に向けて航行を継続しておったのですが、5月18日のパスで探査機からの電波が確認できませんでした。その前に正常に運用できていた5月16日以降、いつどのような状況で電波が確認できなくなったのかという直接的な証拠は得られなかったのですが、5月23日から25日にかけてEQUULEUSの最後の地球最接近のタイミングがありまして、そこのタイミングに合わせて世界各地の大型望遠鏡に協力いただきまして、探査機自体の光学観測を実施して成功しました。その結果から、探査機は現在ある軸周りに回転していて、しかもその回転速度が5月16日時点で探査機が持っていた角運動量ともよく合っているということがわかりました。ですから探査機としては現在電源が確保できず無制御で最大慣性主軸周りに回転している状態ではないかとチームとしては推測しております。このような状態に陥った詳細な原因というのはまだ検討中で整理が追いついていないところなのですが、運用チームとしては探査機の太陽電池パドルに太陽光が当たって電源が確保できるようになることを期待しながら探索運用を継続しております。
以上が運用の現状になりまして、次の5ページにはこれまでの成果を改めてまとめております。2つの世界初を達成しております。
1つは水を推進材とする推進系による地球低軌道以遠での軌道制御の成功、もう1つは長周期彗星の超小型探査機による撮像です。科学観測についても論文は発表準備中なのですが、磁気圏プラズマ撮像にも成功しまして、EQUULEUSとしてフルサクセスクライテリアを達成しました。
特にキューブサットとしては世界的にはまだ非常に難しい能動的な高精度な軌道制御運用を今回成功させることができたのは特に重要な成果だと考えております。
このような非常に挑戦的なミッションの開発の過程で、開発に関わる大学にも大きな波及効果をもたらしたと考えておりまして、複数のスタートアップ企業が立ち上がる等、人材育成成果も上げたと考えております。
最後6ページがEQUULEUSの今後の運用予定です。繰り返しになりますが、地球-月圏での軌道制御と磁気圏プラズマ観測に成功してフルサクセスを達成しました。探査機は現在、電源が枯渇して無制御で回転している状況と推測しております。詳しくは解析をまだ終わっていないところでもありますが、姿勢運動・軌道運動によって太陽電池パドルへ太陽光が当たって電源が確保できるような状態を待ちながら復旧運用を継続していく予定です。
それまでの状況としてはEML2到達に向けて大きな軌道変換運用はすべて完了していまして、定期的な軌道修正と科学観測を実施しながらEML2に到達できるような状況でした。ですから探査機が復旧できしだい軌道修正を行ってEML2への航行を再開したいと考えております。以上がEQUULEUSに関する報告になります。
 
【橋本教授】 はい、次をお願いたします。OMOTENASHIについては超小型探査機での月面着陸技術を実証することを目的としていました。合わせて地球磁気圏外での放射線計測も行う予定でした。
しかしながらすでにご報告しておりますように、太陽電池面を太陽方向に向けることができなかったため、バッテリーが枯渇して探査機の電源がオフとなり、通信が取れないという状態になっております。
昨年11月時点での回転が維持された場合、太陽電池に太陽光が再び当たり始めて探査機が再起動する時期が予想できます。それに合わせて本年3月より探索運用を開始しています。軌道が十分な精度で決まらない状態で月の近くを通過したために、軌道推定誤差が拡大しています。そのため探索には時間を要しておりますが、参考資料に記載しましたような、様々な工夫を行って探索の効率化を図っているところです。
月面着陸は断念しましたが、もう1つのミッションであります、放射線計測については成功しています。現在データの詳細評価中ですが、今後の国際宇宙探査に向けた放射線対策に貢献できると考えております。また今回の軌道上不具合から得られた教訓をまとめ、学会発表等を通じて関連コミュニティと知見の共有を行っているところです。
今後の予定としましては、探査機との通信が可能な9月末までは探索を継続する予定です。通信が確立できれば固体ロケット点火実験等の技術実証を行いたいと考えています。OMOTENASHIについては以上です。
 
【橋本教授】 では続けて13ページ目ですけれども、宇宙研の所長から今後のキューブサット小型機に関する考え方をご説明させていただきたいと思います。

【國中所長】昨今、衛星計画が大型化、長期化する状況で頻度が低下して、人材や産業技術基盤の脆弱化が課題となっております。宇宙研としましてはキューブサットなどの超小型衛星、超小型宇宙機は大きさが限られて、リスクは伴っておりますけれども、低コスト・高頻度で挑戦的なミッションが使えるツールだと考えております。
具体的には超小型探査技術を戦略的に発展させて、深宇宙探査の領域でゲームチェンジを起こすプログラムに仕立てていきたいと思っております。宇宙研としましてはキューブサット等の超小型探査機への取り組みは始まったばかりで、今回ご紹介しましたようなEQUULEUS、OMOTENASHIの状況ではございますが、貴重な宇宙運用データを獲得できたものと思っております。この成果、教訓をレッスンズラーンドといたしまして、超小型機をより確実な技術に仕上げていき、宇宙探査で利用していきたいと考えております。
左側の2つはすでに実施した超小型機でありまして、2014年50㎏級の衛星PROCYONとしてはやぶさ2と同時に打ち上げました。2022年今日ご説明させていただいたOMOTENASHI、EQUULEUSは各々10㎏級の探査機というわけです。この技術をさらに発展させて、これはESAとの共同計画でComet Interceptorという計画でESAが作ります母船Comet Interceptorに日本が提供する40㎏級の小型機を提供し現地まで連れていってもらって彗星を観測しようという将来計画であります。
さらには我々が標榜するところでは、はやぶさ2というのは500㎏級の探査機でしたけれども、これを50㎏であるとか、100㎏級で仕上げれば、例えばイプシロンロケットを使ってさえも木星や土星圏までリーチを伸ばすことができます。こういった、もちろん小型機ですので搭載する観測装置はわずかということになりますけれども、ニューフロンティア、フロンティアに到達するようなやり方のミッションにはこういった超小型機の深宇宙利用ということも十分可能であると考えておりまして、こういった方面に技術を発展させていきたいと思っております。
これを実現させるためには、こういった小型機を提供するベンダーを養う、育てるということも重要な項目だと考えておりまして、これを両立させる方向で小型機を発展させていきたい、そして深宇宙で利用していきたいと考えております。宇宙研からは説明以上となります。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。それではただいまのご説明についてご意見ご質問があればお願いいたします。木村委員、お願いいたします。
 
【木村委員】 ご説明ありがとうございます。大変チャレンジングな、小型衛星を本当に効果的に使った超チャレンジングなミッションで、素晴らしい取り組みだと思っています。 
EQUULEUSについてはもうフルサクセス確保されたということですし、OMOTENASHIについてもトラブルはあったとは思うのですけれども、データも取られているかと思っています。かなり難しいミッションにチャレンジされたというところ、まずぜひ評価されるべきではないかなというふうに思います。
そういった意味で2つの観点の質問がありまして、工学のミッションですので今後どういうところに具体的に展開、ここで獲得された技術というのが具体的に展開される先というのがあるのではないかなと思っていまして、そこを少し説明いただけると、ここの技術が次にどうつながるのかが具体的に見えるかなと思いました。
2点目は、まさに超小型衛星を使って深宇宙の探査を実現していくことでゲームチェンジを起こす、國中所長の提案は素晴らしいと思うのですけれども、ここでおそらく小型衛星でペイロードが小さくなるということも、もちろんそうなのですけれども、リソース的に非常に限られてくることによって制約がおそらく発生する、直接発生するであろうところが電力と、通信だと思うのですけれども、この辺りを解決しないとなかなか小型衛星の展開は難しいのではないかなと思っているのですが、その点具体的に何か作戦があれば教えていただきたいと思います。私からは以上です。
 
【國中所長】 深宇宙探査に、ここのページでご説明いたしましたように、2029年打上げ
で計画が進んでおりますESAのComet Interceptorにこの技術を発展させていきたいと考えております。
もちろんご指摘のようにキューブサットは限られた資源の中で運用しておるわけですけれども、深宇宙の利点もあります。常時、日照が得られますので、電力的にはバッテリーへの負担はかなり小さくなると考えますし、温度サイクル、90分で夜昼が繰り返されるというわけでもありませんので、温度環境も非常に安定な環境が得られるので深宇宙利用はある面、地球周回よりも有利な場面もあります。
ただご指摘のように通信についてはかなり厳しい領域の問題がありまして、小さなアンテナ、弱い電力でしか通信ができないので、これは大きな課題になろうかと思っております。
取ったデータをか細い通信でダウンリンクしなければいけないので、取ったデータをかなり長時間かけて地球に伝送するというようなことになるのではないかなと思っております。 
その意味でもフライバイ型のミッションでありますと、通過した後に安定に探査機が運用できれば、すぐさまデータをアーカイブすることはできませんけれども、時間をかけてデータを獲得すると、地球に伝送するというようなやり方を駆使する、さらにはより遠方、木星・土星圏ということを考えますと、ハイバネーションというような運用形態も獲得していく必要があろうかと思っております。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして芝井委員、お願いいたします。
 
【芝井委員】 芝井です。直前の木村委員が仰ったことの繰り返しになりますが、大変素晴らしいプロジェクトで、高く評価させていただきます。
その上で、お願いがありまして、今回EQUULEUSの方はまだ原因究明がなされていない、終わっていないということなのですが、こういう成功した、失敗したという観点はちょっと置いておいて、失敗も非常に貴重な事象ではないかと思いますので、ぜひ原因究明していただいて、広い範囲でそれらの原因に関して共有できるようにして、今後のこの分野の発展に役に立てていただければありがたいと思います。
人の教育もそうなのですが、こういういろんな経験の、知的財産の蓄積・共有、それをうまく利用できるようにするということも非常に大事かと思いますのでよろしくお願いいたします。
 
【國中所長】 承りました。了解いたしました。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。続きまして笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 どうもご報告ありがとうございます。まず芝井委員、木村委員と全く同じ感想でございまして、非常にチャレンジングで価値のある取り組みを実際に実施されて、本当にSLSに載って地球の軌道を離れたところに持っていくということのみをとっても、非常に価値のあることだと改めて認識を深めております。
まず1点質問は、とはいうものの、相乗りということで今回随分苦しんで、事前、直前の運用等で大変な体験をされているように伝え聞いております。その辺りのご教訓というか、どうしても小型衛星の場合は、現状ですが、そういう大きな衛星の軌道や運用の中の合間を縫いながら二次的三次的なものとしてこういうミッションに立ち向かわなければいけないという、非常に厳しい環境の中でやはりこうあるべきだということを実際に携われた先生方や学生の皆さんや宇宙科学研究所の方では強い何か教訓や思いがあるかと思いますので、その辺りはぜひちょっと今回教えていただきたいなということがまず1つと。
もう1つは、全然関係ないのですが、再使用観測ロケットを私はずっと楽しみにしているのですが、全く打ち上がる様子が見られないのが極めて残念。小型衛星も極めてチャレンジングで世界に誇るべきだと思うものなのですが、あの再使用観測ロケットが直ちに私は飛翔する姿が見たいとずっと思っております。この辺りに関して宇宙科学研究所としてのご見解をお聞きしたいと、この2点質問させていただきます。以上です。
 
【國中所長】 このSLS計画ではピギーバックでロケット1号機アルテミスロケットの空き重量に載せてもらったという、ピギーバック形態でして、やはりメインペイロードの方の事情、この場合はロケットですけれども、ロケットの事情で遅れに遅れたというものです。当初計画からすると2年から3年、確か遅れたように思います。
それから衛星を引き渡した以降も結果として渡してから1年半後くらいに打ち上げになったというような時間関係になっておりまして、その間衛星に手を入れられなかったので、それによって、すぐさまそれによって問題が発生したということではないのですけれども、条件としてはどんどん悪くなっていったという事情があります。
打上げ費用も払ってはいないわけですけれども、ここで実機を検証し、技術を獲得し、ぜひ次につなげていきたいと考えております。
先ほどのComet Interceptorですと小型機を、他の宇宙機関に提供するという型式の協力関係を結びやすくなりますので、Comet Interceptorというようなものであれば、非常に有利にことが進められると考えております。
それから2番目の質問は観測ロケットと仰いましたか?どのロケットのことでしょうか。
 
【笠原委員】 再使用観測ロケットです。
 
【國中所長】 再使用ロケットですか。
 
【笠原委員】 角田でなくで、能代で燃焼試験を行って、今にも飛翔しそうな観測ロケットを宇宙研さんはお持ちだと思っているのですが、あれがなぜ飛ばないのかがとても気になっておりまして、宇宙関係のチャレンジングな取り組みの1つだという認識を持っております。
 
【國中所長】 ちょっと、他部門の活動でして、正確に言いますと、ちょっと私のポジションとしてご説明する状況にないので、申し訳ありません。答えられません。
 
【笠原委員】 承知いたしました。どうもありがとうございました。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは今の件についてはまたわかりましたらこちらの方にお知らせいただければというふうに思います。どうもありがとうございました。それと田中委員から今、手が挙がりました。それでは最後に田中委員、お願いいたします。
 
【田中委員】 皆さんいろいろ言われたので、重なる部分は多いかと思うのですけれども、制約がある中いろいろとお考えの上、いろんなことをチャレンジングなものを取りまとめて非常によくお考えになっていて、姿勢としてはすごく良いことだと思います。
皆さん、よくお考えになっているとは思うのですけれど、こういうのはやはり継続性、ノウハウ、ヒューマンリソース、ありとあらゆるものの継続性というのが結構必要だと思うのです。ESAのものも2029年と仰っていて、こういうプロジェクトは時間がかかるのは重々承知しているのですけれども、やはり複数のものを、プランBというか、いろいろと取り合わせて途切れることがないように、重ね重ね計画をしていただくということが重要かなというふうに感じています。
全てが大成功になるというのはほとんどありえないと思っていて、どこまでできたらという、そういうマイルストーンもきちんと考えられていると思うのですけれども、やはり二重にも三重にも、こうなった時はこう、こうなった時はこう、みたいなものがやはりまだちょっと手薄なのかなという印象を受けました。以上です。
 
【國中所長】 ご指摘のような開発が進められますように努力したいと思います。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それではちょっと時間もおしてきましたので、次の議題に移らせていただきます。今日はどうもありがとうございました。
次の議題ですけれども…
 
【竹上企画官(事務局)】 村山部会長、よろしいですか。先ほどの笠原委員からの質問は、RVXの件のご質問だと思うので、これは研開部門のプロジェクトになりますので、打上げが遅れているという状況に今ありますので、改めて状況をJAXAから聞いて、笠原委員にご連絡差し上げたいと思います。
 
【村山部会長】 そうしていただけるとありがたいです。よろしくお願いたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 ありがとうございます。失礼します。
 
【村山部会長】 それでは次の議題です。衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)における次期光学ミッションコンセプトの結果についてです。JAXA第1宇宙技術部門の平林統括にご説明をお願いいたします。
 
【平林統括】 JAXAの平林でございます。本日はCONSEOの事務局の立場といたしまして、CONSEOにおけます次期光学ミッションコンセプト検討の結果についてご説明をさせていただきます。
まず経緯について簡単にご説明させていただきます。CONSEOにつきましては昨年の9月に設立をいたしました。そして10月からCONSEOの光学・SARWG、主査は東京大学の中須賀先生に務めていただいておりますけれども、このWGにおきまして当時の宇宙基本計画工程表の観点も念頭に入れた上で将来の光学・SAR観測のあり方や社会実装の将来像を議論して、複数のオプションを識別した上で、政府に提言すべく、議論を進めていたところでございました。
一方、本年3月のH3打上げ失敗に伴いますALOS-3の喪失を受けまして、新たな宇宙基本計画、すみません、これは案が残ってしまっていますが、案は取れていますが、これにおきまして、防災・減災、地理空間情報の整備、環境保全利用・研究等、先進的な光学データ利用促進の影響が想定されるところ、ユーザー環境を含む関係省庁や、民間事業者との対話を進めながら、再開発の要否も含めて今後の方針について検討を進めるというようにされておりまして、CONSEOにおきましても政府での議論に貢献すべく民間事業者、アカデミア等主体に検討を加速してきたところでございます。
また今年の4月の文科省さんの宇宙開発利用部会におきまして、CONSEOからとりまとめました提言全体のご報告とともに、上記の検討加速の条件についてもご報告をさせていただいたところであります。
そして本年4月から6月にかけてCONSEOの光学・SARWGにおきまして3つの検討チームを立ち上げて具体的なミッションコンセプトの提案を進めていただきまして、この度その提案書がCONSEOの方に提出されたという状況でございます。
本日は政府での次期光学ミッションにかかる議論に資するインプットといたしまして、CONSEOの光学・SAR観測WGで検討されました3つの提案について概要をご報告させていただきます。
 これは宇宙基本計画の関連するところでございますが、1点ご紹介させていただくと、一番下のところでございますけれども、衛星関連先端技術の開発・実証支援ということで光学の観測衛星技術については世界で商業フェーズに入っていることも念頭に置き、官民で役割分担をしながら高精度3次元観測等の革新的な技術開発やデータ分析技術開発によるデジタルツインの構築に向けた取り組みを推進すると掲げられているところでございます。
 このページではこれまでの進め方について示したものになります。青い枠のところに書いておりますように複数の検討主体者によるグループが3つ立ち上がりまして、ミッションの利用ニーズや創出される意義価値も含めて深掘り検討がされたところでございます。流れといたしましてはまず4月24日に会員側の方から様々なニーズをインプットしていただくとともに、3つのグループによる検討結果について中間的に報告を受けた上で、5月23日に公的なニーズのインプットを行った後、それも取り込んだうえで6月6日に改めて検討チームから報告がなされて会員間の議論をして、この度その提案がまとまったというところでございます。この提案につきましては現在各ユーザー省庁さんとの意見交換も並行して実施しているところでございます。
 ここから3つの検討チームの提案概要についてご説明をいたします。まず1つ目の提案チームでございます。左側の灰色のところに書いておりますけれども、Challengers for NEXTAGEというチームでありまして、衛星データサービス企画(株)さんをとりまとめといたしまして、三菱電機さん等々が入られたチームとなってございます。このチームの提案のコンセプトといたしまして、上の黄色枠に示しましたように、ALOS-3ミッションの速やかな継承による我が国の課題解決への貢献と、衛星データ活用産業拡大に向けたロバストな基幹観測衛星インフラの構築ということで、システムコンセプトといたしましては灰色の右側のところに書いていますように、ALOS-3、2機による構成、従いまして観測幅としましては140㎞、分解能80㎝、打上げといたしましては右下にスケジュールは書いておりますけれども、2027年度に最初に1機、2028年度に次の1機と、そして官民の分担といたしまして、灰色のところに書いておりますが、官側の方でALOS-3、2機の整備、民側の方で地上設備の構築・運用を負担するといったような提案をいただいているところでございます。
 開発の目的として2つ掲げられておりまして、防災・災害対策等を含む広義の安全保障、そして地理空間情報の整備・更新ということで、基本的にはALOS-3と同じ開発目的が掲げられております。一方で2機構成ということでこの対応能力としては2倍となるような提案になっております。またこの提案に伴う経済的な価値でございますが、右下にありますように、光学基幹衛星データ活用産業を成長させることによって、その税収でもって次の衛星開発予算を確保していくといったようなエコシステムが構築できるのではないかという提案をいただいております。
 2番目のチームの提案になります。2番目のチームはNTTデータさんを中心といたしまして、RESTECさん、アクセルスペースさん、パスコさんが加わったチームでございまして、提案のコンセプトといたしましては、黄色のところに書いておりますが、レーザー高度計技術の活用、また小型衛星コンステレーションの実現、そしてアジャイルな開発によりまして世界最高水準のデジタル3D地図の提供を可能とするミッションの提案がなされております。プロジェクトの概要といたしましては、システム構成といたしまして、小型光学のイメージャ衛星として8機から、また小型のライダ衛星2機からということで、右側にそのコンセプトを書いておりますけれども、小型の光学イメージャで様々な角度から観測を行うことによって3Dの画像を作り、さらにライダ衛星、ここの資料ではレーザー高度計測、LCP衛星と書いておりますけれども、これによって高精度に高さ方向の補正も行うことによって世界最高水準のデジタル3D地図の提供をするという提案になってございます。打上げ時期としましては2026年度から段階的に、また官民の分担といたしまして小型のライダについては官側で、また最初の小型光学イメージャ4機についても官側でと、一方で民側ではその後の小型光学イメージャ4機を自ら負担するといったような提案でございます。スケジュールのところに書いておりますけれども、これまでの開発につきましては最初に全ての計画を立てて、一括投資してその後の打ち上がった後に成果が出てくるといったような開発形態として左下の方にイメージが書かれておりますけれども、このアジャイルな開発ということで右下のようにニーズの急激な変化や技術的な進展に速やかに対応して段階的に成果を出していくといったような提案がなされております。
 右上のところでございますけれども、3D地図につきましてはすでにAW3Dという形でNTTデータさんを中心にビジネスが展開されておりまして、現在世界130か国以上、3500以上のプロジェクトでの使用実績があるということでございまして、これをさらに高精度化し、デジタル3D地図を活用してデジタルツインコンピューティングの基盤とするということでさらなる発展をさせるという提案がされております。また社会インパクトとしてまず防災国土強靭化の観点ではAfterのところに書いておりますけれども、広域といたしましては50㎞幅の観測を行うともに、分解能としては40㎝のものを実現していくと、また複数地域での同時多発的な災害に対しても対応するとともに、日本全国の3Dベースマップによりまして、災害時だけではなくて、その前の基盤情報として利活用していく、あるいは発生後の高度な分析に活用していくといったような提案もなされております。また地理空間情報の整備という観点ではALOS-3では25,000分の1への対応を目的としていたところでございますが、高精度な3D観測によりまして、都市計画区域2500分の1相当の地図の更新に貢献していくと、また国交省さんの方で進められておりますPLATEAUとの連携も図っていくという提案がなされております。
 次に3つ目のチームの提案でございます。これはアカデミアを中心といたします今後の宇宙開発体制のあり方に関するタスクフォース会合リモートセンシング分科会幹事会による提案でございます。プロジェクトの概要といたしましては、中型の光学イメージャ4機、それから小型の光学イメージャ10機、さらにライダ衛星1機というもので高精度な3次元地図を作っていくということで、コンセプトといたしましては、黄色いところにありますが災害対応・ベースマップさらには環境モニタリングに対するミッションを提案されています。打上げスケジュールといたしましては、26年度に小型、28年度に中型の衛星、そして29年度にライダ衛星を打ち上げるといったような提案がなされております。
 社会的なインパクト、意義価値について、でございますけれども、まず1ポツにありますように、高精度な3D地形情報及び全球の樹高情報によって災害対策、国土強靭化、安全保障、カーボンニュートラルGXに向けた取り組みに貢献するということと、2点目にありますように実利用の分野だけではなくて、それを支える科学研究のさらなる促進に寄与を目指していきたいと、また3点目にありますようにアーカイブデータのクラウド上でのO&F化と高分解能データの商業配布を継続するという提案がされているところでございます。
 次のページから参考資料を示しておりますが、簡単にご紹介させていただきますと、12ページ目をお願いいたします。
この3つの提案につきましてはそれぞれ官負担想定コストに違いがございますので、コストを横並びで比較するという意味で、ALOS-3同等コストを想定した場合にどうなるかという比較をしたものになります。
ALOS-3同等ということで丸1のチームはALOS-3、1機で、丸2のチームはもともとの提案通りでALOS-3並みの負担内でできるという提案になってございます。一方、3番目のチームにつきましては、中型の光学イメージャ4機の提案でございますが、このコストの場合には1~2機くらいと、ライダ1機、一方で民間の方で小型光学イメージャ10機を準備していただくという想定になってございます。
これらの比較といたしまして、基本性能のところでございますが、3つ目の画素位置決定精度のところでございますが、丸1のALOS-3ベースのところは水平7.5m、高さ2.5ということでございますが、丸2のチーム、丸3のチームは高さ方向で1mの精度を出していくといったような提案になってございます。
それから防災・災害対応ということで、ALOS-3の場合には大規模災害時の時に南海トラフ大地震におけます震度6を超える強震動想定域を東西方向に1度で観測する機能を持っております。一方で丸2、丸3のチームは同時多発・広域災害を複数機で観測して高頻度に高分解能の観測になるという提案になってございます。
またその他のところにありますが、丸2、丸3のチームは3Dのベースマップ・緊急観測によりまして災害予測、例えば浸水のシミュレーションや被害状況把握等の高度化を図っていくと、また地理空間の観点では先ほどご紹介しましたように、2500分の1レベルのものを実現するとともにPLATEAU等とも連携を図っていくと。
民間活力という観点で言いますと、丸1のチームは地上設備等に係る部分を民が負担、丸2は小型イメージャ4機分を民が負担、丸3につきましては民の負担として小型10機分というふうになっておりますが、これは想定として書かれているものでございまして、小型衛星事業者側との対話はこれからというような提案になってございます。
 次のページにさらに続きますが、ちょっと時間の都合もありますので割愛させていただきます。
 15ページお願いいたします。参考にALOS-3の概要を2ページほどで示しておりますが、ALOS-3のミッションといたしましては、防災・災害対応を含む広義の安全保障、地理空間情報の整備・更新、民間事業者の活力活用という3つが掲げられております。
 17ページお願いいたします。分解能の比較をシミュレーションしたものでございます。13㎝の航空画像の原画像をシミュレーションして、80㎝、40㎝でどのような見え方になるのかというのを示したものでございます。
それから18ページが、観測幅がそれぞれのチームで異なっておりますので、70㎞、50㎞、それから60~100㎞くらいの提案の場合に関東域でどのくらいの幅が見えるのかというイメージを示した図になります。
19、20につきましてはベンチマークを示してございます。私からの説明は以上となります。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。事務局の方から補足説明があるようですので、お願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 補足ですけれども、先ほどJAXAの方から説明がありましたように、今回のCONSEOからのインプットを受けて、政府側へ検討主体が今後移っていくというふうに認識をしております。
本日3つのコンセプトに関する提案がございましたが、今後文科省およびJAXAを中心に各コンセプトの実現可能性の見極めであるとか、あるいはCONSEOでもすでに議論されてはおりますが、ユーザー省庁等との直接の対話、こうしたものを行いながらコンセプトのブラッシュアップを進めていきたいと考えているところです。
本件につきましてはまた次回以降の宇宙開発利用部会で改めて議題として設定させていただく予定にしておりますけれども、まずは本日CONSEOから提案のあった3つの案につきまして、幅広く様々な意見を頂戴できればと事務局としても考えておるところです。補足説明は以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。次回も検討予定ですけれども、この時点で具体化に向けてJAXAから提案のあったCONSEOからの提案内容についてぜひ忌憚のないご意見をいただければと思います。本当に自由にご意見いただければと考えております。いかがでしょうか。まず鈴木委員、お願いいたします。
 
【鈴木委員】 鈴木です。13ページ目に経済価値や市場規模というのを記載していただいていて、これがやはり重要になってくるかなと、光学系のミッションは民間も含めてマネタイズが輸送とかと並んでしやすい領域かなと思っている中で、こういうふうな市場というのを獲得していくみたいなことが目指せればいいなと思っています。
質問なのですけれども、この辺りの市場をどのようにして獲得していくか、あとは想定されるシェアみたいなもの、この辺りを各チームとイメージのすり合わせをなさっているか、あとはお考えとしてJAXAや文科省としてイメージしているものとかがあれば教えていただければなと思います。
 
【村山部会長】 いかがでしょうか。市場についてです。
 
【平林統括】 ご質問ありがとうございます。本日は各チームの提案ベースでお答えさせていただければと思います。
順不同になりますけれども、丸2のチームにつきましてはすでに先ほどご紹介いたしましたように、AW3Dという形で3次元地図のビジネスを行っており、またそのビジネスのネットワークですとか、ノウハウも有しているというところでございまして、一方で現在航空機ライダの市場がかなりの市場が見込まれているところでございますが、将来的には衛星でそれなりの精度が実現できればある程度の市場を取っていけるのではないかということで見積もられたのがこの経済価値になります。
一方で丸1のチームにつきましては、CONSEOが全体として掲げている産業規模として2兆円というものをかかげているのですが、それが実現できたならばその半分くらいを何とか頑張って光学で取っていきたいと、そうすると税収がこれくらい入るのではないかといったような想定で書かれたのが丸1のチームでありますし、丸3のチームも具体的な積み上げというよりは産業返還分析等々を使って算出したものというのが丸3チームでございます。
 
【鈴木委員】 ありがとうございます。正確な理解のためになのですけれども、2番目のチームは5,000億円の市場規模というのは全体市場ではなくて今回のプロジェクトは5,000億の市場で100%取れるというイメージなのか、もしくは5,000億の市場のうちに参入できるみたいなイメージなのか、どちらかみたいなことを確認させていただければなと思うのですけれど。
 
【平林統括】 後者だというふうには理解しておりますけれども、具体的にどれくらいの産業規模が期待されるのかというのは非常に重要な観点だというように我々も認識しておりますので、より深くここは各提案チームの方に引き続き確認をしていきたいと思っております。
 
【鈴木委員】 ありがとうございます。これはぜひお願いしたいなと思っていまして、競合になるようなサービスもあると思いますので、それに対してどういう優位性を持てば、どういうふうなシェアの取り方ができるかみたいなことまでイメージしきっておくと、社会実装にとって効率の良いアプローチが取れるのではないかなと思いますので、ぜひご検討いただければと思います。ありがとうございます。
 
【平林統括】 ご意見、ご助言ありがとうございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。非常に重要なポイントで、ああいうふうに競争力分析のようなものをある程度入れ込んで、これから詰めていくということも必要かなと思います。ありがとうございます。続きまして秋山委員、お願いいたします。
 
【秋山委員】 サイエンスライターの秋山です。よろしくお願いいたします。
今後も継続審議ということなので、今回はちょっと簡単な質問を2つさせていただければと思うのですけれども、主に開発の時間に関してなのですが、まず1番のChallengers for NEXTAGEチームのご提案でALOS-3を再建するという形でご提案されているのですけれども、このプランの一番時間がかかると言いますか、すでに12年の光学衛星の空白が伸びるという点ではちょっと時間がかかるのかなというふうに思われるわけですけれども、2機の衛星を作って、これから作って4年という時間の内訳と言いますか、これは2機作るのでこれだけの時間がかかるということなのか、それとも単純なALOS-3の再製造が何か難しい理由が、ご事情があるのかというところがまず1つです。
それから2番目の質問は、3チーム目のタスクフォースチームのご提案に関してなのですけれども、これについては打上げは26年度から段階的にということなのですが、このチームですと製造にあたるところがまだお示しになっていないので、これは製造の選定というのはどんなふうに進められるのか、そこが時間的なネックになったりはしないのかという、その2点についてお伺いしたいと思います。お願いいたします。
 
【平林統括】 ありがとうございます。まず丸1のチームのリピートにおけるスケジュールでございますけれども、リピートということで基本的にはALOS-3の設計を踏襲したということになると考えております。
その場合に部品ですとか、コンポーネント、こういったものをいろいろと調達してくるわけなのですが、それにやはり1年、2年というオーダーでどうしてもかかってしまうといったようなところがあって、こういう提案になっていると聞いております。
他方で、すでに開発が終わったという状況がございますので、引き続きこれが調達できるかどうかも含めて改めてフィジビリティスタディが必要だというようなこともこのチームからは提案をいただいているところでございます。
それから丸3のチームにおける製造の観点でございますけれども、今、秋山委員のご指摘の通り、このチームでは製造を担うチームが、検討チームに加わっているわけではございませんので、こういうものがあってほしいという形で書かれております。このあと具体的にどういう方向性に次期光学ミッションをするのかという方向性が定まった際に、改めてどういう事業者で事業を進めていくのかというところの提案を取っていくことになると思いますので、その際に製造事業者を含めて、より細かく検討されたものが提案されてくるものと理解をしております。
 
【秋山委員】 ご回答ありがとうございました。私からは以上です。ありがとうございました。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして米澤委員、お願いいたします。
 
【米澤委員】 どうもありがとうございます。米澤です。整理されていてとてもわかりやすかったです。
検討の考え方についてお伺いしたいのですけれど、今3つお話がありまして、これをそれぞれ別個で、どれか一つというふうに考えていけばいいのか、それとも合わせ技というようなこともあり得るのかということを確認したいというのが1つ。
あともう1つタイムスケジュールとして今、各省庁を含めてヒアリング検討中ということですけれども、大体いつぐらいに大まかな方針というのが出てくると考えていらっしゃるのかというのを教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【平林統括】 この3つの中から選ぶのか、ミックスになるのかという観点でございますが、今まさしくお話いただいた通り、関係するユーザーの方々とお話をしておりますので、それを踏まえた上で、この1つ、どれかがいいのか、ミックスするのがいいのかというところもフラットに考えていきたいと思っておりますし、これはあくまでもこの3つのチームからの提案でございますので、これについての技術的な観点でのJAXAの評価もこのあと加えていきたいと思っておりますし、文科省さんの方では政策的な観点での評価もお願いしたいというように考えておりますので、そういういろんなことを取り込んだ上でどういう方向性になるのかというのは、これからの議論だというふうには考えております。
 
【竹上企画官(事務局)】 後者は文科省からの方がいいですね。
 
【平林統括】 お願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 前者の説明に関しては、先ほど平林さんからお話があったようにこれから実現可能性も見ながらいろんなオプションが、どれか1つということもありますし、良いとこ取りしていくという、そこはフラットで、文科省としても同じ考えです。
2つ目のいつまでにというのは、まさに光学の空白期間をできるだけ少なくしていくということが重要になってくると思いますので、意思決定が早ければ早いほど、アクションとして動かしていけるので、仮に必要な予算を来年度に向けて要求をしていくという仮定に立てば、夏くらいまでに一定の方向性、その方向性というのが何を指すかというのはまた検討していく必要がありますけれども、ある程度は示していく、そんなスケジュール感で考えているところです。以上です。
 
【米澤委員】 どうもありがとうございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。続きまして笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 笠原でございます。発言させていただきます。大変素晴らしいコンセプト検討だと思います。
私はH3とイプシロンの事故調査の小委員会の方にも委員としてちょっと出席させていただいておりますが、イプシロンの方はまた再び喪失された小型衛星の方の様々なサポートがあるのではないかと期待しておりますが、このH3の方、ALOS-3の実際に作り上げたチームというか、人々のことが気にかなりなっておりまして、このALOS-3の喪失を受けて、その資産を継承するようなことを非常に冷静に合理的に進められて、素晴らしいことだと思うのですが、そのALOS-3に携わった方々へのサポートというか、意気消沈されたことへの何らかの手当というか、要するに3つ今チームがありますが、どのチームになってもその方々も参加することができるのか、何らかの技術貢献ができるのか、そういうことが非常に気なっています。
一技術者としてやはり衛星喪失というのはかなり大きな精神的なダメージもあるかと思いますし、それまで築き上げてきたものの一瞬での喪失というのはかなり大きなインパクトがあると思いますので、その辺りのサポートがちょっとこの資料だけからはわからなかったものですから、方向性は素晴らしいと思うのですが、やはり実際動かれている方はお一人お一人の努力の上で進まれているものだという認識を持っているものですので、その点ちょっと質問をさせていただいてもよろしいでしょうか。以上でございます。
 
【平林統括】 大変温かいお言葉をいただきありがとうございます。今回ご報告させていただきましたのは、CONSEOにおけます3つの民間事業者からなるチームの提案でございます。
一方でこれと並行いたしまして、JAXAの中でも次期光学ミッションについての検討を内部的には行っております。この技術的な検討につきましてはALOS-3で携わってきたメンバーも加わってもらっておりまして、彼らの知見とか思いも入れながら様々な検討をしているところでございます。
 
【笠原委員】 ありがとうございます。大変安心いたしました。応援しておりますので今後ともぜひよろしくお願いいたします。失礼いたします。
 
【平林統括】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。続きまして村松委員、お願いいたします。
 
【村松委員】 次の光学ミッションに関してのご検討ありがとうございます。
私自身もALOS-3のデータを使うのを楽しみにしていた立場からいろいろと意見を言わせていただきたいと思います。
ALOS衛星の時にすごく特徴的だなと思ったのは、光学系センサーと多方向観測から地形の形を測定するとか、樹冠高を推定するというようなことにも利用できるということがわかり、すごく面白いセンサーだなと思いました。
ALOS-3では、レッドエッジを搭載するということで、植生の活性に関するインフォメーションを取り入れることを予定していましたが、その時には立体視的なものが抜け落ちてしまっていて、今回またこの案を見ていると、立体視というか3Dのものに対して、また復活させたいというような、ご意見が上がってきているのだなというのを感じました。私の希望としては衛星で可視のインフォメーションにより地表の様々な状態、植物だったら植生の活性度とか、そういったものがわかるようなセンサーと、かつ、形が一緒にわかるというのがとても重要だと思うので、先ほど米澤委員からも質問がありましたけれども、このレッドエッジと形を測る両方の混合型のようなものが、今後計画していただけたらありがたいなという感想になります。よろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。
 
【平林統括】 コメントありがとうございます。今ご指摘いただきましたように、ALOSの初号機におきましては3方向から観測をいたしましたけれども、ALOS-3になって高分解能化されて、センサーが大きくなったということで、直下が基本の形になりました。
一方でALOS-3立ち上げの時に比べまして、民間事業者による小型コンステレーション事業というのは非常に活性化してきているということで、今回は民間事業者の小型コンステレーションを活用した提案も出てきていると、さらにライダ技術でもって高精度な3次元情報というような提案も出てきているというところでございます。
一方でバンドをどのくらい加えていくのかというところはユーザー省庁ですとか、ユーザーの方々のご意見ですとか、冒頭ご指摘のあった経済市場規模だとか、いろんな観点からどういうバンドを設けるのかというのは、これからの検討課題だというふうに認識しております。以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは最後に田中委員の方からお願いいたします。
 
【田中委員】 ありがとうございます。次回以降の審議事項ということなので、今回ではなくて次回ぜひこういう資料があったら助かるかなということだけをひとつコメントさせてください。
ALOS-3を設計された、考えられた時から時間は経っているので、その時に比べていろんな市場の状況も変わっているということは皆さん承知の上でいろいろお考えになっているとは思うのですが、一方現状、例えばESAだとセンチネル-1はどうやっていって、どういうふうな市場規模があってというようなことが今はもうかなり明らかになってきていると思いますので、そういう表も合わせて参考資料を作っていただければ、やはりこういうところをもうちょっと強化した方が、競争力が高くなるのではないかとか、事業性が高いのではないか、みたいなことに参考になるのかな、というふうに思いました。以上です。
 
【平林統括】 はい。ありがとうございます。次回に向けて準備させていただきたいと思います。
 
【村山部会長】 よろしいでしょうか。本件は次回もより具体的な資料が出てくると思いますので、それについて議論を進めていきたいと思います。それではどうもありがとうございました。
 
【平林統括】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 次の議題に移らせていただきます。
 
【木元補佐(事務局)】 村山部会長、事務局からご連絡です。先ほど笠原委員からご質問のあった再使用観測ロケットにつきまして、次の発表者でありますJAXAの佐野理事からご説明があるようです。
 
【村山部会長】 そうですか。わかりました。冒頭にそれではお話をいただくということで、了解いたしました。ありがとうございます。それではそれを含めまして、次の議題に移らせていただきたいと思います。
次の議題は革新的衛星技術実証2号機 小型実証衛星2号機(RAISE-2)と言われていますけれども、この成果についてです。JAXA研究開発部門の佐野理事のご説明をお願いいたします。
 
【佐野理事】 ただいまご紹介に預かりましたJAXA理事、研開部門長を務めております佐野でございます。よろしくお願いいたします。
RAISE-2のお話に入る前に、先ほど笠原委員からご質問がありました、能代の再使用ロケット、我々はRV-Xと呼んでおりますけれども、これがなぜいつまでも飛ばないのかというご質問、私もこの場で聞いており、私の研開部門で今RV-Xを進めておりますので、私の方からご回答させていただきたく思います。
大きな理由といたしましては、以前飛びましたRV-Tの時と異なりまして、基幹ロケットにつなげる技術開発という観点から飛行安全の技術管理を厳しく行っておりまして、そこに時間を使わせていただいております。これが主な理由でございます。
加えて、試験場であります能代は大変多くの皆さんが事業にお使いいただいておりまして、試験時間の確保が難しいというところもございまして、この2つが理由でございます。お答えになっておりますでしょうか。
 
【笠原委員】 ありがとうございます。よくわかりました。本当にご回答、誠にありがとうございます。しっかり認識いたしました。実はSpace-XのFalcon9が飛ぶ前からRV-Xの計画が進んでいたので、まさに世界を牽引するようなプロジェクトだと思い、今日に至っている次第でございます。
ぜひ、もちろん安全に気を付けて、進めていただいて大きな成果とあげていただくことを心より祈っております。どうもご説明ありがとうございました。
 
【佐野理事】 承知しました。ありがとうございます。安全に関してしっかり見て、進めてまいりたいと思いますので、引き続き応援よろしくお願いいたします。
 それでは本題の方に入らせていただきます。革新2号機の、小型実証衛星2号機RAISE-2と我々は呼んでいるものでございますけれども、運用終了を4月に行いました。その成果も含めまして、革新2号機の運用状況の説明を今日はさせていただきたく思います。
資料の内容の具体的な説明は担当部署の責任者であります鈴木からさせていただきたく思います。それでは鈴木さんよろしくお願いいたします。
 
【鈴木ユニット長】 それでは資料の方を説明いたします。
2ページ目をご覧ください。初めに報告の概要でございます。革新的衛星技術実証2号機、このあと革新2号機と称させていただきます。こちら2021年11月にイプシロンロケット5号機により打ち上げております。搭載される衛星についてはあとのページでご紹介いたします。このうちJAXAが開発した小型実証衛星2号機RAISE-2と言います。こちらについて2022年2月に定常運用に移行し約1年間の定常運用を実施してまいりました。
途中、姿勢制御系の機能の一部に異常が発生しまして、一部の実験に制約が起きたものの、代替機能を使用することで運用を継続し、先ほど紹介があったように2023年4月に運用を終了しております。
本日の報告としてはこのRAISE-2の定常運用を終えた時点で、当初設定した成功基準の達成状況、それから5年後として設定しておりますアウトカムの達成見込みを含めまして成果を報告させていただきます。
 3ページ目は目次になっております。お目通しください。
 4ページ目にまいります。この革新2号機のプログラムとしては、A)、B)、C)の3つの目的を掲げております。これらについては次のページで紹介させていただきます。
衛星の写真が真ん中のところに掲載されておりますが、右上がRAISE-2になります。6つの部品・コンポーネントの実証テーマを搭載した100㎏級の衛星になります。それから左側にまいりまして、超小型衛星50㎏級として写真では3つが表に出ておりますが、裏側の1機も含めて4機が搭載されております。それからキューブサット4機についても、放出機構3つありまして、1つは裏に隠れておりますが、合計4機の衛星、これらを合わせて革新2号機ということで構成されております。
 5ページ目はRAISE-2の成果のサマリでございます。プログラム目的〈A:衛星産業の国際競争力の獲得・強化〉に対しまして2点。衛星システム及び搭載実証テーマにおいて1つ以上のフルサクセス、また4つの実証テーマにおいてはエクストラサクセスを達成いたしました。それから実証した機器が今後打上げ予定のキューブサットへ採用される等、1号機に引き続きまして商品化が進んでおります。これらの成果に対しまして、さらなる改善ということで矢印で示させていただいておりますが、国際的にも売れる製品とするために繰り返し実証機会が必要といった有識者からの提言もいただいております。提言に対して公募条件の設定ですとか、バス機器の従系等への採用、それから他プログラムとの連携の可能性、こういったものを今後引き続き検討していきたいと考えております。
 次にプログラム目的〈B:宇宙産業の活性化〉、〈C:ベンチャービジネス促進、人材育成〉に対する成果といたしまして、インターフェース条件をあらかじめ明確化することで実証のハードルを下げ、新たな企業が実証テーマとして採用されたということ、それから若手の技術者に一定範囲のプロジェクトを任せる経験をさせる等、中大型衛星では困難な人材育成の機会を与えることができたと考えております。これらについてもさらなる改善として、参画企業等から設計に関する技術的な情報共有の希望等を意見でいただいており、本プログラム内のコミュニティ形成の検討等を図っていきたいと考えております。
 ここからRAISE-2に搭載しました各実証テーマの成果になります。
1点目、ソニーセミコンダクタソリューションズ製のマイコンボードになります。これを用いまして低軌道の軌道上の測位ですとか、カメラを用いた地球、星空の撮像等に成功しております。ただサクセスクライテリアと設定した姿勢推定について一部未達だということから、フルサクセスについては一部達成という評価になっております。こういった実証成果によりまして5機以上のキューブサットで搭載に向けた、このSPRESENSEの搭載に向けた検討が進行中ということでアウトカム成果として示させていただいております。
 2番目としまして、多摩川精機株式会社による高精度かつ低価格な国産光ファイバジャイロになります。こちらについては姿勢マヌーバ時の衛星バスのテレメトリー等と出力を比較しまして、これは非常によく一致していることを、グラフでも示しております。これをもちましてエクストラを含めて達成されたという評価になっております。アウトカムとしても、本実証の成果によりまして、3軸慣性計測装置としての商品化が進行中ということになっております。
 3点目が、株式会社天の技による国内初のCubeSat搭載可能な商用スタートラッカになります。こちらについては軌道上で姿勢決定機能それから精度の評価を実施しております。目標精度にわずかに達しなかったという観点でフルサクセスの部分は一部達成となっておりますが、アウトカムとして他社からの技術協力の問い合わせ等をいただいているという状況です。
 4点目、三菱電機株式会社によります3Dプリンタ製のアンテナの開発・軌道上実証になります。このアンテナが軌道上でも健全に動作することが実証され、エクストラサクセスまで達成しております。アウトカムといたしましても、3Dプリンタを適用した衛星搭載用の通信系機器の開発を進行中と聞いております。
 東北大学によります複数の国産デバイスを組み合わせた熱制御コンポの実証ということで、高熱伝導サーマルストラップ、流体式サーマルストラップ、これらについての性能の実証を行っております。サーマルストラップについては実証が達成しておりますが、フレキシブル展開ラジエーターについては展開動作が確認できなかったということ、それから最初の方で申し上げた衛星システムの制御のトラブルによりまして実験の一部が実施できなかった等がありまして、フルサクセスの一部達成という評価になっております。アウトカムとしては高熱伝導サーマルストラップ、右側の写真になりますが、こちらについて共同開発企業が受注生産を開始したと聞いております。
 6点目、これはJAXAの開発になりますが、国産冗長MEMS   慣性センサユニット(MARIN)になります。放射線耐性に関するデータを蓄積しております。片系で放射線エラーが発生しても、もう片系で正常な慣性計測値を出力できたということを確認でき、エクストラサクセスまで達成したという評価になっています。またアウトカムとしても本成果によりまして、共同開発企業が本機器MARINの販売を開始したということになっております。
 12ページ目はRAISE-2衛星の開発成果及びまとめということで、軌道上プラットフォームとしての成果として、100㎏級標準プラットフォームの仕様を確立して、3号機以降のベースラインとできたこと、それから実証テーマ機器の搭載インターフェース条件書を制定して、公募の効率化等に貢献できたことを成果として挙げております。
加えてJAXAコーディネートということで、実証テーマに意義価値をさらに与えるという点で2つ行われております。
1つは3D-ANTの実験に用意するX帯送信機にVCM(可変符号化変調)機能を付加したということで、データの伝送速度を向上させるということで、事前変調方式を動的に切り替えてもデータ欠損なく連続的に伝送できるということが、世界で初めて実証できたものになります。
それから右側、窒化ガリウム素子を用いた充電制御器ということで、軌道上で高速スイッチングによるバッテリー充電制御に世界で初めて成功したということで、今後は電力制御機器(PCU)の開発に着手していくということになっております。
 13ページ目に以上のまとめとしまして、RAISE-2は1年間の定常運用を計画通り実施し、あらかじめ定めた成功基準に対して達成しているということ、軌道上の評価をもって機器の商品化、それから他衛星での利用など、アウトカムの成果が今後も見込まれていくということ、本プログラムの実施によりまして、宇宙産業の国際競争力強化、活性化に今後とも寄与していきたいと考えております。
 14ページ以降は補足資料として4点つけております。1点目がRAISE-2のサクセスクライテリアの達成結果の詳細になります。2点目が革新2号機の、本日はご紹介を割愛しました超小型衛星、それからキューブサットの状況の報告になります。それから3点目が革新3号機、RAISE-3等についてはイプシロンロケットの6号機の打上げ失敗によって失われましたが、超小型衛星についてはもともと代替ロケットによる打上げ計画ということで、こちらは現在ファルコン9による打上げに向けて準備中となっております。それから最後4点目、革新4号機の状況ということで選定された実証テーマの機器、それからキューブサットの一覧を補足資料の方に掲載しております。私からの説明は以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。
予定時間4時を少しすんでいますけれども、ご意見ご質問がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。やはりいろんな成果が上がったようですけれども、いかがでしょうか。特にこれを聞いておきたいというのは、ありませんでしょうか。いいでしょうか。
それではご質問がないようですので、これで最後の件は閉めさせていただきます。どうもご説明ありがとうございました。
 
【鈴木ユニット長】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 それでは本日の議事はこれで終了となります。最後に事務局から連絡事項があればお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 本日はありがとうございました。会議資料と議事録の公開について申し上げます。
本日の会議資料は文部科学省ホームページにすでに掲載させていただいております。また議事録につきましては、委員の皆さまにご確認いただいた後、文科省ホームページに掲載させていただきます。
なお、次回の宇宙開発利用部会は来月の開催で調整予定です。委員の皆さまには後日、日程調整のご連絡をいたします。連絡は以上となります。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。以上をもちまして閉会といたします。今回も長時間にわたる活発なご議論、誠にありがとうございました。感謝いたします。それではこれで終了いたします。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課