宇宙開発利用部会(第75回) 議事録

1.日時

令和5年5月24日(水曜日) 10時00分~12時30分(一部非公開)

2.場所

Web会議

3.議題

  1. イプシロンロケット6号機打上げ失敗の原因究明に係る報告書について
  2. H3ロケットの開発状況について
  3. (非公開)「内閣府宇宙開発利用加速化戦略プログラム」(スターダストプログラム)により実施する文科省の戦略プロジェクトの新規案件候補について

4.出席者

委員

部会長 村山 裕三
部会長代理 田中 明子
臨時委員 秋山 文野
臨時委員 笠原 次郎
臨時委員 金井 宣茂
臨時委員 木村 真一
臨時委員 芝井 広
臨時委員 白井 恭一
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 高橋 徳行
臨時委員 鶴岡 路人
臨時委員 松岡 彩子
臨時委員 村松 加奈子
臨時委員 山崎 直子

文部科学省

研究開発局長 千原 由幸
大臣官房審議官 永井 雅規
研究開発局宇宙開発利用課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長 池田 一郎
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 上田 尚之
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 池田 宗太郎
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 橋本 郁也
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長補佐 館下 博昭

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 理事 石井 康夫
 宇宙輸送技術部門 事業推進部 部長 佐藤 寿晃
 H3ロケットプロジェクト プロジェクトマネージャ 岡田 匡史

5.議事録

【村山部会長】 定刻少し過ぎましたけれども、第75回の宇宙開発利用部会を開催いたします。
 今回も前回と同様オンラインでの開催になっております。
 委員の皆様には、ご多忙のところ、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 まずは、事務局から、本日の会議に関する事務連絡をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 本日もよろしくお願いします。事務局の文部科学省宇宙開発利用課の竹上です。
 本日は、宇宙開発利用部会の16名の委員のうち、14名にご出席いただいており、定足数要件を満たしておりますので、本日の会議が成立していることを報告いたします。
 次に、本日の資料ですが、議事次第の通りです。
 オンライン状況について、音声が繋がらない等の問題がございましたら、事務局へメールでご連絡ください。
 事務局からの連絡は以上ですが、前回、第12期宇宙開発利用部会の第1回会合ということで、委員の皆様に一言ずつご挨拶をいただいておりました。
 前回ご欠席の5名の委員、皆様本日ご出席いただいておりますので、まずは1人ずつ、ご紹介させていただければと思いますので、カメラをオンにして、一言ご挨拶いただければと思います。
 それでは、最初に田中部会長代理であられます。
 
【田中部会長代理】 初めまして、産業技術総合研究所の田中でございます。
 部会に初めて参加させていただくので、不慣れな点もあるかと思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 ありがとうございます。続きまして、鈴木委員、よろしくお願いします。
 
【鈴木委員】 ユーグレナの鈴木でございます。
 我々は、スタートアップとして、色々なバイオ産業を中心に見てきたのですけれども、宇宙への展開なども検討しているという側面と、あとスタートアップと宇宙を掛け算で、大きな未来が開ける可能性があるかなという風に思っておりまして、その辺りで貢献できれば幸いという風に思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 ありがとうございます。続きまして、高橋委員、よろしくお願いいたします。
 
【高橋委員】 高橋でございます。引き続きよろしくお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 ありがとうございます。続きまして、松岡委員であられます。
 
【松岡委員】 松岡と申します。京都大学理学研究科附属の地磁気世界資料解析センターというところに今おります。前期からの継続となります。
 専門は、人工衛星を使った宇宙空間の磁場観測を行っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 ありがとうございます。最後に、村松委員であられます。
 
【村松委員】 奈良女子大学の村松と申します。理学部の環境科学コースにおります。
 専門は衛星データを使って、植生の炭素吸収量や陸域の土地被覆変化などの解析を行っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 ありがとうございます。前回ご欠席の委員のご紹介、以上でございます。
 
【村山部会長】 竹上さん、どうもありがとうございます。
 それでは、本日の議題ですけれども、全部で3件あります。全部、審議事項になっております。
 最後の議題である、「スターダストプログラムにより実施する文部科学省の戦略プロジェクトの新規案件候補について」は、運営規則第3条3号の定めにより、非公開とさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、最初の議題に入っていきたいと思います。
 最初の議題は「イプシロンロケット6号機打ち上げ失敗の原因究明に係る調査・安全小委員会報告書について」です。
 昨年10月の打ち上げ失敗以降、当部会は、重大な事故などの調査として、調査・安全小委員会に、本件の調査審議を行っていただいておりました。また、前回状況報告もあったところです。
 これらを踏まえ、先週19日金曜日に、原因究明に係る報告書を取りまとめていただきました。
 本日はその内容について、調査・安全小委員会の主査を務めていただいている木村委員より、ご報告いただいた上で、本部会として報告書を受け取って了承し、決定したいと考えております。
 それでは、木村委員、ご説明をお願いいたします。
 
【木村主査】 ありがとうございます。調査・安全小委員会の主査を務めさせていただいております、東京理科大学の木村でございます。
 今、部会長の方からお話いただきましたように、イプシロンロケット6号機打ち上げ失敗について、調査、原因究明を進めてまいりまして、先週金曜日19日の日に、報告書という形でまとめさせていただくことができました。
 本日は、その内容についてご説明させていただこうと思いますけど、この調査を進めるにあたりまして、JAXAの皆さん、それから、文部科学省の皆さん、大変ご尽力いただきました。最初に、その協力に対して、御礼申し上げて進めたいと思います。
 資料の方、資料75-1-1の方に、報告書の全文を入れさせていただいております。まず、目次の方を見ていただきますと、こういう形でまとめさせていただきました。
 調査審議の経緯、それから審議の概要。究明の流れ、直接の要因。直接の要因に対する対策及び水平展開。背後要因について述べた上で、背後要因に対する対策及び水平展開。そのあとで、今後の対策に向けた留意事項ということで、これは、後で申し上げますけれども、委員会の中で直接この件だけではなくて、委員会として、小委員会の方として、ぜひ提言した方がいいという意見がいくつかございましたので、まとめさせていただいているという風になっております。
 さて、1目で、調査審議の経緯ですね。こちらについては、経緯について、委員会を、実際これは、8回にわたって実施してまいりましたけれども、そちらの内容について、概要がまとめさせていただいております。
 10月13日に、初回、この件に関する初回を行いまして、都合、8回、5月19日までということで実施させていただいております。
 審議の概要の方に、移らせていただこうと思います。まず、最初に原因究明の流れですけれども、打ち上げ失敗を受けて、テレメトリー等の解析、それから、製造情報等をJAXAさんの方で検討いただいて、その報告を受けるという形で、まず、最初に2系統ある2段のRCSの1系統(+Y軸側)の下流配管圧力がタンク圧まで上昇しなかったと。これが、RCSが機能しなかったために目標軌道だからずれて、所定の軌道に投入することができなかったと。まず、ここが識別されました。
 このことを受けて、2段燃焼終了後の姿勢異常に対するFTAを実施いたしました。その結果、RCSの片方が機能していないということが分かりまして、原因であると、これが特定されたということです。ここが、原因箇所の特定になります。
 その上で、この異常に対する詳細なFTAを展開しまして、4項目、要因に分解いたしました。丸1計測異常、丸2信号系統の異常、丸3パイロ弁の開動作不良、それから、丸4推薬供給配管の閉塞、この4点に絞りまして、初期の検討で、もう丸1と丸2は要因ではないということで外れます。
 フライトデータで取得したデータをもとにして、パイロ弁点火信号後に、1分解能の圧力上昇が見られたということから、丸3のパイロ弁の開動作不良、これも要因ではないと判断しまして、丸4の推薬供給配管の閉塞ということで、こちらまで特定されたということになります。
 その上で、詳細について、閉塞に至った過程ですね、こちらについての詳細について検討をいたしまして、ダイアフラムのタンクの出口に近接して、パイロ弁開動作時のダイアフラムが液ポートに引き込まれて閉塞したというようなシナリオに特定いたしました。
 その上で、ダイアフラムシール部からの漏洩がこれらの原因であったということで、特定いたしまして、その上で、なぜなぜ分析を実施いたしまして、背後要因の「フライト実績に対する確認不足」というところに、背後要因があったということで、調査を進めてきたというところでございます。
 直接要因について、先ほど軽く触れましたけれども、RCSのダイアフラム式タンクにおけるダイアフラムシール部からの漏洩という風に特定されました。
 これは、ダイアフラムをタンクに組み込む際に、ダイアフラムがリングの間の間隙ですね、こちらのところで噛み込んで、その後の溶接工程で、その噛み込んだ部分が破断するというようなことで、発生したのであろうということが確認できました。
 これは、こういう現象がありますと、ダイアフラムが液ポートに覆い被さって、パイロ弁の開動作時にダイアフラムによって閉塞するという可能性があること。これは、追加検証等を行いまして確認がされましたということです。これが、直接要因としての故障シナリオであるという風に説明されることになります。
 このことを受けて、直接要因の対策及び水平展開ですけど、まず、直接要因の対策として、イプシロンSロケットへの是正措置として、これは、現在二つの案に対して、トレードオフを実施して、最終的に決定するということで報告を受けております。
 一つの案は、現タンクの設計変更をするという案。
 二つ目の案は、H-IIAタンクの活用をするという案。
 これは、現時点では、どちらで行くという方針は決定しておりませんが、今後トレードオフによって実施していくということで、現在、開発中のイプシロンSロケットに対する開発リスクを抑えつつ、信頼性を確保するというようなことを実現するということを考えます。
 衛星への水平展開ということで、これは、ダイアフラム式のタンクを採用している、一部のJAXA衛星で、イプシロン6号機と類似の設計であるX線分光撮影(XRISM)。それから、小型月着陸実証機(SLIM)について水平展開を行います。
 これは、それぞれ実機の疑似推薬を用いた振動試験等を行いまして、問題がないということを確認できております。
 SLIMの推薬システムに搭載しているタンク・ダイヤフラムは、イプシロン6号機に搭載しているものとサイズ、形状が異なりまして、シール部やダイアフラム材料等の一部の設計は異なっているのですけれども、類似しているという事情がございます。
 これについては、実機のダイアフラム組み込み後のリーク試験の結果、これを基にして、技術評価を実施しまして、問題がないことを確認しております。
 H3及びH-IIAロケットへの水平展開です。こちらについては、既に報告があったと思いますけれども、H3およびH-IIAのロケットに関しては、打ち上げスケジュールを考慮して、直接要因のダイアフラム、またパイロ弁、いずれかに絞り込んでいた段階で水平展開を行っています。
 これは、タイミング的に、どちらでも、どちらであったとしてもということで展開を行っているということです。
 ダイアフラムについては、液ポートの閉塞の可能性はない、H3ロケットに関してはないということで、確認されています。
 また、H-IIAロケットに関して、ダイアフラムについて、H3ロケットの評価と同様に懸念は排除されるということです。
 パイロ弁については、H3ロケットとイプシロンロケットで製品として異なるのですけれども、動作原理が同じであるので、懸念が排除できないという可能性を踏まえまして、試験1号機では、H-IIAのロケットのパイロ弁を交換するということの対策をとっております。
 もう一つ、背後要因の方ですけれども、これは、なぜなぜ分析を実施していきまして、背後要因としては、フライト実績品に対する認識不足というところが、識別されました。
 イプシロンロケットでは、M-VロケットとH-IIAロケットで培った技術を最大限活用するという方針をとりつつ、一部で機体仕様に応じて、新規開発でフライト実績品を適用した開発を実施してきたという経緯がございます。
 一方で、こちら、今回不具合が生じた2段RCSは、フライト実績品を適用したもので、信頼性向上に関わる開発の目が入っていなかったというところがございました。
 ですので、そこら辺が、今回の背後要因として、非常に重要なポイントであろうということが識別されまして、ダイアフラムシール部等のタンクの内部について、フライト実績品の方を過度に重視したということで、使用条件が実際違ったのですけれども、考え方・動作原理等を十分理解した上で、確認が不足していたという事情がございます。
 背後要因に対する対策及び水平展開として、まず直接、イプシロンSロケットに対しての対策、先ほどちょっと軽く申し上げましたけれども、信頼性を向上するために、今後、詳細設計の中でフライト実績品に対する十分な確認を実施するということが、まずございます。
 フライト実績品を使用すること自体は問題ではないですが、フライト実績の使用条件が想定と異なる場合はもちろん、20年来の信頼性向上に係る開発の目が入っていないという場合には、開発当時の設計の考え方、それから、使用条件の根拠、製造工程・品質保証方法などに立ち返って確認を実施するということが確認されております。
 また、他のプロジェクトについての水平展開。こちらの方でちょっと詳しく述べると、だいぶ時間がかかりますので、軽く触れさせていただきますけれども、特に今回問題になりましたフライト実績品を使用する場合については、下記のiからiiiの問題提起を共有しまして、プロジェクトのマイルストン審査等において、評価を行うと。
 さらに、独立的な評価やモニタを行っている第三者部門、これは安全・信頼性推進部ですね。安信部の方ですけれども、が、当該結果を確認するということで対策をとるということになっております。
 一点目は、フライト実績品のうち、信頼性確保に係る開発の目が入っていないもの、かつ不具合を生じた際のミッションへの影響度が大きいものですね。こういうものについて、管理すべき対象品目として識別できているかどうか。
 それから、識別された品目の適用について、十分な根拠を持って開発されているか。実績が十分かなど、信頼性の評価に関する技術情報の取得や、ベンダー等との情報授受に関する体制が整っているかというところを確認する。
 それから、技術情報の取得やベンダー等との情報授受の体制が整っていない場合には、対象品目の使用の是非を含めて、リスク管理ができているか。
 この三つの項目について検討をするという、問題提起として共有しているということになります。
 経験・知識継承に関しては、こちらは、JAXAの方で、知見・教訓をデータベース化しているLINKSというシステムがございます。こちらにナレッジシェアとして組織内で共有するという取り組みを進めているのですが、この当該データに、今回の事例を登録しまして、今後のプロジェクトに対して確実な継承を図るということです。
 さらに、プロジェクト業務を行う職員に対して、システムズエンジニアリング/プロジェクトマネジメント(SE/PM)及び安全・ミッション保証(S&MA)に関する必要な知識を有する人材を育成するために、様々な研修を実施してきているので、今回の事例を、これらの研修において教訓事例として取り上げて、得られた教訓の浸透を図るということです。
 ここまでが、実は、直接の原因究明と対策という意味で報告書としてのお答えになるのですけれども、(6)として、今後の対策に向けた留意事項ということで、小委員会でこの審議を進めていく中で、いくつか出てきた意見について、まとめさせていただいております。
 1点目は、今回フライト実績品を使用するということが、一つ問題になったのですけれども、これは、これ自体が問題ではないのですけれども、全体としての、宇宙開発プロジェクトの中で、予算や人員といったリソースが、なかなか制約が厳しいもとで実施せざるを得ないという部分はあると。ここが遠因になっている可能性はないかということの議論になりまして、ぜひ、これはJAXAさん、文科省さんの方では、なかなか声を上げにくい話ではないかと思いますので、委員会としても、適切なリソース配分ということには十分配慮してもらいたいということを、こちらの方で謳っております。
 2番目は、これは、先ほどのリソース配分の新たな考え方というものも一つですけれども、前回のこちらの宇宙開発利用部会の方でいただいたご意見と重なるところがあるのですけど、情報の管理というか、例えば、情報技術を積極的に活用するということが必要なのではないかという、そういう意見です。非常に、やっぱり大きなシステムで、今回のテレメーターのチェックについても、非常に膨大な中から、非常に微細な情報をピックアップする必要があると。こういったところは、ぜひ情報、技術をうまく活用すると。あるいは、計算シミュレーション技術などを活用して、あるいは、AIなども活用して、積極的にこういうことに活用していく人材も含めて、充実を図っていただくということが必要ではないかと。そのためのリソース配分も、ある程度考えるべきではないかという意見があります。これは、対外的に、世界的なベンチャーとか、こういうところに非常に力をうまく入れているというところもございますので、そういうところを拡充していく必要があるのではないかと。
 3点目は、これは今回の調査の中で、イプシロンロケット、この後、H3も出てきますけれども、基幹ロケットの開発は、非常に我々委員一同として、非常に重要であるという認識を持っております。これは、技術的事象に対して、ちゃんときちんと謙虚であるということ、あるいは、徹底した姿勢等が必要ですけれども、十分これは、プロジェクトとして、スピード感を持って進めていただく必要があるものであろうという風に考えております。そうした思いを少し書かせていただいているということです。
 まとめのところは、今までの上記の内容をある程度圧縮して書いてございますけれども、原因が特定され、その直接要因に対する対策及び水平展開。それから、背後要因に対する対策と水平展開について、委員会としては、JAXAさんの取り組みですね、妥当であると判断いたしております。ここまでまとめていく間に、非常に膨大なデータの処理、あるいは製造情報の提供など、JAXAさん、文科省さんには非常にご尽力いただいたと思います。その点について、改めて感謝いたしまして、報告書という形でまとめさせていただきました。
 私の方からの説明以上です。すみません、少し長くなりました。
 
【村山部会長】 木村委員、ご丁寧な説明ありがとうございます。非常によく分かりました。
 事務局の方から、何か補足はおありでしょうか。
 
【竹上企画官(事務局)】 いえ、特段ございませんので、ご審議よろしくお願いします。
 
【村山部会長】 そうですか。それでは、ただいまのご説明について、ご意見・ご質問がありましたら、お願いいたします。
 尚、本日はJAXAから、佐藤事業推進部長にもオンライン出席いただいているので、JAXAに対しての質問をいただいても、もちろん構いません。それではお願いいたします。
 いつも通り挙手いただいて、それで…松岡委員、手が挙がっています。お願いします。
 
【松岡委員】 どうもありがとうございます。
 まず、今回の事故の調査に対して、委員の皆様、また文科省、JAXAの皆様、大変努力をされたということには敬意を表したいと思います。
 今のご説明、大変よく分かって、先に出ていた情報なんかも併せて、今回のことは、一応理解申し上げているつもりですけれども、一点ちょっと気になっていることがあります。
 もし、誤解がありましたら直していただければと思うのですけれども、ダイアフラムの噛み込みに絞り込んだということは、大変皆さんの努力で良かったとは思うのですけれども、これが出てきた経緯というのを見ると、ちょっと私が受けた印象としては、色々な要因の可能性を出して、その中でこれは違う、あれは違うという、ちょっと消去法的にこのダイアフラムの噛み込みに至ったのではないかという印象を持っております。実際には、なかなか直接的なエビデンスというか、原因を見ていっているというのとは、ちょっと違うのではないかという印象を持っております。
 なかなか飛んだものの失敗ということで、難しいのはとてもよく分かるのですけれども、このような感じで絞り込んだということに対して、委員の皆様、どのような形式考えでやられたかというようなところを伺えれば幸いだと思います。よろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。その辺りいかがでしょうか?
 
【木村主査】 ありがとうございます。まずは私からでよろしいですかね。
 
【村山部会長】 そうですね、お願いします。
 
【木村主査】 JAXAさんの方から追加があれば、報告いただきたいとは思いますが、まず、ダイアフラムに絞り込むところについては、基本的には、フライトデータを根拠に、他の要因ではなく、ここであるということが特定され、そこの部分が非常に大きかったかなという風には思っております。
 もちろん、そこからの噛み込み等については、追加検証等の結果を受けて、推定している部分はあるのですけれども、ここの部分までは、かなり論理的にと言いましょうか、得られたエビデンスをもとにして、直接原因というのはこれであろう、ということを特定してきたというところがございます。
 ただ、おっしゃられたように、やはり、どうしても最終的には、そのものを確認するというのは、なかなか打ちものの場合、難しい面がありますので、そこの部分については、その実態として、そのものを解析したというわけではないというのは、確かにございます。
 その意味で、テレメーターでどこまでの状況を追いかけられるかというところは、一つ疑問になるかなという風には思っております。
 私の意見としてはこのような感じですけど、お答えになっていますでしょうか。
 
【村山部会長】 いかがでしょうか。
 
【松岡委員】 ダイアフラムの噛み込みということでストーリーを作ると、全ての手にしているものが、全て整合的に説明できるということでは、その通りだと思いますので、そういう検討されたということで理解いたしました。ありがとうございます。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 JAXAの方から、何か追加的なご説明あるでしょうか。いかがでしょうか。
 
【佐藤事業推進部長】 佐藤の方から、少し追加のご説明をさせていただきます。
 今、木村先生がおっしゃられたように、飛んでいってしまったものの解析は、非常に難しいというところで、我々FTAというツールを使って、それを展開し、一つずつ消去していくということで絞り込みをしてまいりました。
 ダイアフラムに関して、最後のところは、ダイアフラムが正常に作られたのだけれども、何かしらの原因で閉塞した、あるいは、今回の最後絞り込んだ、異常があって閉塞に至った。最後、この二つまでFTAで追い込んできました。
 最後、今回のところで注目したのは、製造データをよくよく見ていくと、若干の偏心みたいな、寸法の偏りがあるという特異性があったということがございます。
 偏りといっても、非常に細かいコンマ数ミリというものですので、当初の我々考えていた規格では、検査としては問題なくパスをしていたというものになりますけれども、それが何かしら、やはり特異性としてあるというところから、それをとにかく再現をさせてみようということを、最後の最後まで行いました。
 この過程で、実は非常に微妙な条件で再現をしたというところで、簡単に言うと全周がもし噛み込んでいたとすると、実は、こういう現象が起きない。10cmくらいのところが噛み込んだ条件で再現試験をしてみたら、再現をしたということで、全体として非常に微妙な原因だったという風に、最後は絞り込んでいます。
 そういった意味で、そういった製造の特異性に最後注目して絞り込まれてきたというのが、非常に今回は良かったかなという風に考えております。
 以上になります。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。ただいまのご説明でいかがでしょうか。
 
【松岡委員】 追加で大変そういう検証の試験も加えて、これが原因で間違いがないということで特定されたと。非常に条件も微妙だったのですけども、そこまで特定されたということで理解いたしました。
 どうもありがとうございます。
 
【佐藤事業推進部長】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして、白井委員、お願いいたします。
 
【上田課長(事務局)】 すみません、村山先生、事務局ですけど、一つだけ簡単に補足させてもらってよろしいですか。
 
【村山部会長】 それでは、先立ちまして、事務局の方から補足をお願いします。
 
【上田課長(事務局)】 申し訳ないです。松岡先生のご指摘、今答えられた通りですけれども、小委員会の事務局の宇宙開発利用課の立場で、もう少し背景的なものを補足しますと、故障の木解析ですね。これ自体は、消去的な方法に確かに見えます。
 ただ、これは宇宙分野、あるいは産業分野一般に使われている方法という風に承知していまして、過去のロケットの失敗の時にも使われたものでございます。
 こういったものを消去的にやっているように見えますけども、実際この原因究明にあたっている方々は、それぞれその場、その場で、主体的なお考えを持ちながらやってきたことを事務局として見てみています。
こういった原因ではないかという推測を立てつつ、やはり網羅的な網をかけて、兆候を逃がさないというようなことを連綿とされて、今回の原因究明に至ったという風に事務局としても考えております。
 以上です。
 
【村山部会長】 追加説明、どうもありがとうございます。
 それでは、白井委員、お待たせいたしました。お願いいたします。
 
【白井委員】 すみません。まず、木村先生からお話いただいた、報告書の原因究明のプロセス、そして結論、何の異論もないというか、非常に説得力のあるものだということなので、よく納得したということを、まず、お断りした上で、一つ確認したい点があります。
 それは、背後要因というパートで主に書かれていたことですが、私も実は、過去ロケット衛星の不具合、失敗の原因究明のレポートを、結構、それなりにたくさん読んでまいりまして、その結果の習性といいますか、原因を三つのうちのどれだろう、あるいはどれとどれだろう、ということに何か紐付けるという、分類する癖みたいのがあるのです。
 その三つは何かと言うと、一つはデザイン・設計。二つ目が、マテリアル、材料ですかね、部品とか。三つ目が、ワークマンシップ、作業ですね。
 今回、実は色々報道等で、原因究明のプロセスを拝聴しておりまして、これは、ダイアフラムの組み込み時のシール部の噛み込みですから、ワークマンシップが主因なのかなとずっと勝手に考えてきたわけです。
 そうしたところ、今回報告書を拝見しますと、その背後要因としては、フライト実績品の確認不足という、こういうキーワードが使われておりまして、この単語からは、何となくマテリアル、材料が原因だったのかなという気がするような、響き方をしました。
 木村先生とJAXAの皆様に教えていただきたいのは、もし、その三つのファクターに分類して考えるとすると、今回の原因は、ダイアフラムの設計そのものの要因が大きかったというか、あったのか、あるいは、どちらかというと、やはりワークマンシップ、組み込み作業、そしてその結果としての噛み込みが起こっているということの検査が十分でなかったことにあるのか。あるいは、実はマテリアルはないだろうと思っていたのですけど、今のJAXAの佐藤さんのお話を伺うと、マテリアルに若干のデビエーションと言いますか、水準からの外れがあったというように私が理解したご説明があったので、マテリアルにも原因があったのか。
今後のために、その辺を教えていただけるとありがたいと思う次第です。
 よろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。非常に重要なポイントだと思いますので、まず、木村委員からお願いできますか。
 
【木村委員】 ありがとうございます。
 あとで、先ほどのように、文科省さん、それからJAXAさんの方から補足いただく件と思うのですけれども、私のここでまとめてきた意識としましては、先ほど、白井委員の三つの要素というのは非常に分かりやすくて、ワークマンシップに見えるのですけれども、私自身はこれシステムと、それから、マテリアルを一部絡んでいるという風に。主には、作り方というか、システムをどう組んで、どのように製造していくかという、プロセスの問題なのかなと。
 これは実は、ワークマンシップと言いながら、実は私も、この結論に至った時に、少し意外というか、これは、潜在的に存在…顕在化してもおかしくなかった事象。これまでも、リスクとしては存在していた事象だと思っています。
 なので、これはシステムとして対応する必要があり、そのシステムとして対応するところの意図としては何かと言うと、フライト実績品をきちんと用途まで含めて確認せずに使っていたというところに、原因があるのではないかと。これは実は、JAXAさんの方でまとめられたところになります。
 一部マテリアルもありますけれども、大きくはシステムの作り方というところに、おそらく、この場合は原因を求めるというのが正しいのかなと思っています。
 ですので、対策として、先ほどお話をした中でいきますと、イプシロンSへの是正措置のところで、これで作り方の方を変えるべきだという結論に至っているのはそういう理由で、ワークマンシップのところを何かコントロールしましょうという発想ではなく、そういうことが起きないように対策を考えましょうという風に、私自身は理解しております。
 このような答えでいかがでしょうか。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。事務局の方から。
 
【上田課長(事務局)】 事務局、文科省の方から、簡単に補足。
 今、木村先生がおっしゃられた通りだと私も思っていますが、より詳しくは、今回の資料の75-1-1の別添というJAXAの報告書、全部で50ページくらいありますが、それの42ページに、この背後要因分析のなぜなぜ分析を3回層にわたって行った結果が載っています。これまたご参照いただければと思いますが、今、木村先生がおっしゃられたような認識がここに書いてあると思っています。
 簡単な補足までです。
 
【木村委員】 ありがとうございます。
 すみません、50ページの方をご参照いただくのはちょっと気が引けていたので。
 そちらの方に、具体的には、こういう議論をしましたというところになります。ありがとうございます。
 
【村山部会長】 白井委員、いかがでしょうか。
 
【白井委員】 ありがとうございました。
 むしろ、マテリアルではないということは、非常にためになるご説明でした。ありがとうございました。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして、山崎委員、お願いいたします。
 
【山崎委員】 まず原因究明にご尽力くださった皆様にお礼申し上げたいと思います。
 一点確認をさせていただきたい点が、衛星の水平展開のことです。JAXAさんからの報告書の方も拝見させていただいたのですが、それぞれXRISMとSLIMと問題がないことを確認したということなのですが、イプシロンの方では、製造の検査の過程で、やはり漏洩を検出できない可能性があったということが原因として挙げられています。
 この衛星の方で、特にSLIMの方は、ダイアフラムがもし異常だったケースの場合にも、実機の製造検査データから確認できて、問題がないということで、結論付けられているのですけれども、イプシロンの方では可能性があったのが、SLIMの方では、そこは大丈夫と言える、その根拠のようなものを教えていただければと思います。
 
【村山部会長】 お願いいたします。
 
【木村委員】 これはJAXAさん、お願いできますか。
 
【佐藤事業推進部長】 では、佐藤の方から説明をさせていただきます。
 今JAXAの報告書を見ていただいたかと思いますけれども、ほぼ設計等が同じなのがXRISMのタンクということでございます。
 XRISMとイプシロンの違いとしては、XRISMの方につきましては、疑似推進薬としての水を入れまして、かなり厳しい環境条件、ここは、XRISMさんの方で使用するにあたっての環境の違いを確認するという目的でやられたのですけども、これを実施しておりまして、そこの試験の中で、水の漏洩がなかったということが確認されています。
 ここが大きな検査上の違いということで、基本的には、それ以降の工程で、XRISMとしては、その試験以上の環境負荷等がないということで、現品そのもので疑似推薬を入れての確認をしたというところで、大丈夫だという根拠にしているものでございます。
 SLIMの方は、タンク形状が、ダイアフラムのところは設計が似ているというところですけども、タンクそのものの形状等は違うというところですけれども、こちらも、そういったことも含めまして、組み込み後のリーク試験等での漏洩のないこと、あるいは、先ほど言った、寸法の若干の偏りみたいなところの検査データもないということで、大丈夫だという判断をされております。
 
【村山部会長】 山崎委員、いいでしょうか。
 
【山崎委員】 ありがとうございます。分かりました。
 そうすると、衛星側で実機を使って、且つ組み込み試験を行っているということが、イプシロンとの間違いであり、構造上の違いもあり、それを根拠としているということで、理解いたしました。
 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 ありがとうございました。続きまして、高橋委員、お願いいたします。
 
【高橋委員】 高橋です。
 まずは、大変丁寧なご説明、本当にありがとうございました。
 私から一つ、JAXAへお願いしたいことがございまして、コメントさせていただきたいのですけれども。
 41ページのなぜなぜ分析を見ていると、やや設計要因に対する分析が、少ないのではないかなという感じがいたします。私は経験的にも、設計が最初のスタートだと思っていまして、設計要因を明確にして、その背後要因を明らかにして、最終的には、設計段階で信頼性を向上していくというのが、筋ではないのかなと思っています。
 設計は設計、製造は製造、検査は検査、ではなくて、やはり製造しやすい設計、検査しやすい設計、そういったものが、設計の責任だと思っています。
 そう考えると、本当の背後要因というか、設計上の背後要因は、設計思想まで踏み込んだ背後要因にしていくべきではないのかなと思います。
 例えば、シール部の噛み込みをしにくい構造にするとか、漏洩を検知しやすい構造にするとか、ダイアフラムシール部の漏洩が、絶対あってはならない不具合だとするならば、設計する段階で、シールを二重構造にするということも、設計思想上あったかもしれないと思うのですね。
 ですから、やはり設計がスタートになりますので、JAXAの方にお願いしたいのは、製造だとか色々なプロセスがありますけども、全ては設計段階で、その信頼性が決まるという考えを持っていただいて、今回の具体的な対策は別としましても、これからの新しい設計、H3も含めて、設計段階で信頼性を保証するという、その設計思想を持っていただければなと思いますが、JAXAの方、もしよければ、コメントいただきたいのですが、いかがでしょうか。
 
【村山部会長】 佐藤部長、いかがでしょうか。
 
【佐藤事業推進部長】 コメントありがとうございます。
 なぜなぜで、一番上の列に設計のことも書いたつもりでしたけれども、我々も設計そのものも考える必要があるという風には考えております。
 今回おっしゃられたように、ダイアフラムをタンクに組み込む工程が、非常にきつい嵌め合いで入れていくようなところもございまして、やはり、その辺の組み込みも含めた全体の設計についても、よく考えていく必要があるだろうということを反省材料として持っております。
 また、その設計の中には、このダイアフラムが、当然ヒドラジンを入れた後、少し性状が変わって、シール性が若干下がるとかという、その性状の違いですね。あるいは、シール性がどのくらいの潰し代だったら漏れるのか、漏れないか、そこら辺の限界の把握。こういった、やはりトータルの設計上の配慮をして、今後は、信頼性の高いものにしていこうという風に考えておりますので、今イプシロンSの中では、先生がおっしゃったことを考慮した見直しをしているというところでございます。
 
【村山部会長】 ありがとうございました。木村委員の方から、追加的なご意見でしょうか。
 
【高橋委員】 後継のロケットですとか、後継者に対する、伝承が大事だと思うのですけれども、伝承する一番の大事なものは、僕は設計思想だと思うのですね。設計思想をいかに後世に伝承していくかということが大事だと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 以上です。
 
【佐藤事業推進部長】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 木村委員の方からも手が挙がっていますので、お願いいたします。
 
【木村委員】 一言だけ。高橋委員の意見は、全くその通りだと私も思っておりまして、非常にそこを設計そのものが、非常に重要だなと。
 この報告書の中で、実はフライト実績品という言い方をしていて、しかも、そこをそのまま踏襲するというところに実は落とし穴があったという風に、我々の議論の中では識別して、そこが実は、設計という発想ではなく、そこは継承が正しく、設計思想まで含めて、まさに今、高橋委員仰っていただいたように、設計思想まで含めて継承されていなかったことによって、問題が発生するリスクがこの中に存在していたということだと思います。
 ですので、まさにポイントを突いていただいたと言いますか、ここでの問題の本質を、まさにポイントアウトいただけたのかなと思っておりまして、そのような形で我々の方は考えておりました。ということを、ちょっとご報告させていただきたいと思います。ありがとうございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。笠原委員の方から手が挙がっています。よろしくお願いします。
 
【笠原委員】 笠原でございます。
 私も、小委員会の委員の1人として、参加させていただいておりました。
 今の高橋委員からのご指摘、非常に強く同感でございまして、そういう見地で、やはり根本的な設計の思想を、そういうところに問題…問題というか、原因があるという風に感じております。
 ちょっとここでコメントをさせていただきたいのは、では、そういう設計思想を生かすためには、やはりどうあるべきだったか、やはり、新たな設計やその時代に合った設計を、十分なリソースで、やはり実施していかないと、そういうものは、受け継がれていかなかったり、生み出されていかなかったり、そうするのではないかなと、一委員として、非常にそういうことは強く感じた次第でございます。
 今回の小委員会の取り組み、小委員会で見させていただいた、その原因究明のプロセスというのは、極めて合理的で冷静で、且つ非常に謙虚なというか、あり方で、終始敬意を持って見させていただいて、私自身勉強になりましたし、本日、部会の先生方からのご意見、大変貴重なご意見だと思いますし、それに対するお答えも、私も非常に納得しながら聞かせていただいて、勉強になりました。
 最後に一言を申し上げたいのは、やはり事故調査というところだけではなくて、今後のこのロケット開発には、もっと支援がやはり必要で、この設計を実現するためには、何より皆様の支援が必要だなということを強く感じている次第でございます。
 ちょっと感想的なことになって恐縮ですが、一言申し上げたく、マイクのスイッチをオンにさせていただきました。失礼いたしました。以上でございます。
 
【村山部会長】 貴重なご意見、どうもありがとうございます。
 それでは、もうお手は挙がっていませんので、それでは、今までの審議を踏まえまして、資料75-1を宇宙開発利用部会の報告書として決定したいと思いますが、これでよろしいでしょうか。いいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
【村山部会長】 ご異議がないようですので、これを決定といたします。どうもありがとうございました。
 特に議事究明に関われた皆様方、本当に感謝いたします。私も横から見ていたのですけれども、本当に一生懸命やられて、真摯に向き合っていただいて、こういう報告書を書いていただいて、本当に心から感謝しております。どうもありがとうございました。
 それと、今の話をしていますと、非常に貴重な経験をされたと思うのですよね。この教訓をぜひとも生かしていただいて、より安全な宇宙開発、より精度の高い宇宙開発に活かしていただければという風に思います。どうもありがとうございました。
 次ですけれども、次の議題は、「H3ロケット試験機2号機計画に関する方向性について」です。
 現在、H3ロケット試験機1号機の打ち上げ失敗の原因究明作業が進められているところですが、その実施が前提ではあるものの、ロケット打ち上げまでの各種準備には、相当の期間が必要なことなどから、次の試験機に係る政策的な検討を進めておく必要があります。
 このため、本日は試験機2号機計画に関する方向性について、文部科学省及びJAXAから考え方を示していただき、委員の皆様には、その内容についてのご確認と助言をいただきたいと考えております。
 それでは、文部科学省内宇宙開発利用課の上田課長、JAXAの石井理事及び岡田プロジェクトマネージャ、説明をお願いいたします。
 
【上田課長】 文部科学省研究開発局宇宙開発利用課長の上田でございます。
 H3ロケットの開発状況の一環としまして、試験機2号機の計画に関しまして、これまで文部科学省、そしてJAXAと共に、様々なケーススタディを含め検討してまいりました。今日、この方向性についてご議論いただきたいと思います。
 次のページをお願いします。
 はじめに、でございます。原因究明…今、部会長からご言及ありましたように、鋭利進められているところでございます。これまで、調査委員会、調査・安全小委員会で3回開催されています。
 前回までに、原因特定解析手法の展開、あるいは再現試験等により、発生要因の絞り込みが進んでいることですとか、あるいは、残された要因について、複数の故障シナリオを抽出し、優先度をつけつつ検証を行っていることなどが報告されておりまして、また近く報告があるものと思います。
 この原因究明作業ですけども、直接要因は当然ながら、背後要因も含めた分析と対策検討に取り組むこととしております。
 その実施は当然ながら前提ですが、一方で、一般的にロケットの打ち上げまでの各種準備、こちらには、相当な期間が必要だということで、次のロケットをどう考えるか、政策的な検討を進めることが必要です。
 
 尚、昨年末の内閣府の宇宙基本計画工程表、こちらにおきまして、試験機2号機は、今年度の後半の打ち上げ時期が想定されておりました。これを目指してロケットですとか、衛星などの各種計画の準備がそれぞれ行われてきたところです。
 また政府では、次期の宇宙基本計画及び工程表の改定に係る作業が進められておりまして、こういった政策動向への検討状況の反映も重要かと考えます。
 また、試験機2号機計画に関しましてですけども、LE-9エンジン、こちらの状況も重要でして、と言いますのも、LE-9エンジンは、2段階開発の計画となっておりまして、先般の試験機1号機、こちらは所定の飛行を1段エンジンは終えたのですけども、試験機2号機に向けては、タイプ2エンジンといったものの開発が進められております。その状況も踏まえる必要があると思いまして、今日、プレゼンの内容に含めさせていただいております。
 次のページに参ります。
 最初に、私どもの方から、H3ロケット試験機に、ではなぜ国の衛星を搭載することとしたのか、ALOS-3という、地球環境観測衛星を載せることとしたのかという経緯をご説明したいと思います。
 H3ロケットの開発は、平成26年度、2014年度より開発に着手して、凡そ10年やっています。その翌年、27年度には、当時基本設計が進んでおりまして、当時の宇宙基本計画におきまして、その時のロケット、H-IIA/Bロケットから、新型基幹ロケットH3、こちらへの移行ですね、円滑な移行について、そろそろ検討を行って、結論を得るというようなことがされておりました。
 これを受けまして、平成28年2月に、文科省の宇宙開発利用部会、こちらですね。JAXA及び打ち上げ輸送サービスを担うMHIより、発表・説明が行われました。
 この中で、新型基幹ロケットの円滑な移行とは、各種、国の衛星計画が計画されていると。そういう中で、打ち上げ計画に影響を与えずに確実に打ち上げていくことという認識のもと、移行計画の一環、この試験機に、文部科学省所管のJAXA衛星であります、地球観測衛星等を搭載する方針について報告され、審議されています。
 また、こちらの審議を受けて、3月に宇宙政策委員会の部会の方に、文部科学省より同じ方針が報告されています。
 こういったプロセスを経て、H3ロケットに、試験機に、JAXA衛星を搭載することとなりました。
 この方針については、効率的な各種計画遂行と、あるいは過去の宇宙開発の経験の観点といったものを勘案して判断されたものと認識しております。
 前者の効率的な各種計画の遂行というのは、ロケットと衛星を含めた全体的な計画の遂行という意味です。
 後者の経験とは、各種ロケットの打ち上げ実績や経験を踏まえたものということですが、例えば、こういった、過去の実績経験を踏まえますと、ちょっと書いてございませんが、例えば、初号機につきましては、過去の経験等を踏まえると、開発の段階から、様々な技術的な開発や検証の目が入るということもあって、必ずしも初号機のみが、リスクが過度に高いわけではないというような認識も当時ございました。
 こちらが、まずは経緯でございまして、私ども文科省からの説明となります。また、次のページに、3ページ目に、基幹ロケットの打ち上げスケジュールということで、昨年12月現在の宇宙基本計画工程表を掲載してございます。
 赤枠がH-IIA/Bでして、H3が青枠に書いておりまして、丁度、今は移行期間の最中ということになります。今回、ここに、後の議論に出てまいりますが、赤字で、H3-22とかH3-30とかいったものを、当面の間は決まってございますので、それを記載させております。後の議論の参考になるかと思います。
 続きましてJAXAからの説明になります。
 
【岡田プロジェクトマネージャ】 JAXAのH3プロジェクトの岡田でございます。石井理事、よろしいでしょうか。
 
【石井理事】 お願いします。
 
【岡田プロジェクトマネージャ】 岡田でございます。よろしくお願いします。
 それでは、上田課長からご説明ありました、LE-9エンジンの2号機向けに開発をしておりますけれども、現在の状況について、数ページでご説明したいと思います。
 まず、4ページに参りますと、これは、LE-9エンジンの開発状況の全般ですけれども、2017年、開発着手後に、数年後の2017年に、第1回の燃焼試験を始めました。そして、その後2020年、それから、2022年に、このLE-9エンジンが課題となって、打ち上げ計画の見直しをさせていただいた経緯がございます。
 LE-9エンジンの中でも、燃焼室、そしてターボポンプというのが技術的にチャレンジでして、それらについての取り組みを行ってまいりました。
 そして、下から二つ目ですけれども、試験機1号機に向けまして、まず、しっかりと1号機に対応できるエンジンを開発するということで、2段階開発の中で、1号機に適した仕様を選定いたしまして、これは、我々は、後ほど出てまいりますけども、タイプ1と申しておりますけれども、選定いたしまして、そのエンジンの認定、そして、1号機用のエンジンの領収燃焼試験という試験を行って、1号機に適用してフライトさせました。これが全体の流れでございます。
 5ページに参りまして、これは、開発のかなり後半の段階で、我々が取った方策についてご説明しておるのですけれども、2回の延期の後に、この後にうちのLE-9が要因となって、打ち上げ計画の見直しをしていただくわけにはいかないという覚悟で、いくつかの設計を並行して走らせながら、芽が出た設計を採用していくという方法をとりました。
 これは、並行開発と称しておりまして、我々の通称で0の矢、1の矢、2の矢と呼んでいるのですけれども、FTPという水素のターボポンプにつきましては、0の矢、1の矢まで試験機1号機の前に実施しました。
 OTPという酸素のターボポンプにつきましても、0の矢、1の矢までを試験機1号機の前に実施しまして、それぞれ適切な矢を1号機向けに選びました。
 こういった中で、複数の設計が走りますので、設計チームも複数用意する必要があるので、企業の垣根を越えたターボポンプ開発推進室というものを設置しまして、これらに鋭利取り組んできております。
 先ほど、上田課長からご説明がありましたエンジンの開発方針は2段階でして、2号機以降に向けましては、1号機の内訳と並行しまして試験を実施しまして、2の矢を含めた候補の中から、最適な仕様を選定する予定としております。
 申し遅れましたけれども、1号機に向けましては、FTPは0の矢、そしてOTPは1の矢を採用しております。
 6ページに参りまして、現在の状況ですけれども、タイプ2エンジン、これは2号機以降のエンジンとして目指す姿であったのですけれども、これに向けた翼振動の計測試験を今年2月から実施いたしました。
 この翼振動計測試験というのは、この資料の最後の15ページにございますように、ターボポンプのタービン部に計測センサを貼りつけまして、実際にこの課題となっているような、その翼の応答が、物理現象として手に取るように分かるような状況を作り出しまして、高橋委員が先ほどおっしゃられたような、まさに設計段階で信頼性を作り込むというようなスタンスで、この計測を進めておりました。
 タイプ2エンジンの検証としまして、下の表にございますような、合計5回、1000秒を超える試験を実施した中で、このFTP、2の矢という設計が、その前段階で課題になっておりました、回転の非同期の応答というのは抑制できたのですけれども、一方で、一部、別な共振応答が予想よりも大きく出たことから、これをそのまま使うわけにいかないというような状況で、引き続き改良と試験が必要と判断される状況でございます。
 これに伴いまして、試験機2号機以降には、当面の打ち上げに対応するために、タイプ1を若干ベースにしましたタイプ1Aというエンジンを準備するという方針で、これは、当初からバックアップ計画としては考えておったのですけども、これを発動するという風に考えております。
 一方で、信頼性の高い、LE-9エンジンを作り込むためには、必要なデータを取得しながら、恒久対策を見極めていくという風に考えております。
 7ページには、その具体的な内容を仕様でご説明しておりますけれども、FTP、OTPそして噴射器、その他のコンポーネントを表に載せてございまして、タイプ1は、FTPは0の矢、OTPは1の矢、先ほど申した通りです。噴射機は機械加工の噴射器を使いました。その他のコンポーネントは、タイプ1仕様ということで、これに対しまして、タイプ1A、タイプ2でございますけれども、タイプ1A、2号機以降で現在、現時点でこれを採用しようと考えておるものについては、FTPについては、設計は0の矢、タイプ1と同じ。
 OTPも同じです。これはOTPの場合は恒久対策として、既にこれを採用しようという風に考えております。
 
 噴射機はタイプ1と同じ。その他のコンポーネントは、一部、既に開発試験で実績のあるものについては、恒久対策仕様を導入して、これを採用しようと考えております。タイプ2につきましては、全て恒久対策仕様ということで、この表にございます通り、タイプ1Aというのは、タイプ2で先行して採用できるところはする。そして、確実に打ち上げるために、タイプ1を使うべきところは、タイプ1を使うと。こういった設計を選択してございます。
 ご説明は以上です。
 
【石井理事】 続きまして、JAXA石井の方から、8ページ以降をご説明させていただきたいと思います。
 私の担当は経営企画部というところで、全社的な企画調整を担当しております。そういう観点から、今回、次のH3試験機2号機の打ち上げにつきまして、全社的に、もう議論しておる状況でございまして、その論点をご紹介させていただきたいと思います。
 まず一つ目でございますが、現在、初号機の打ち上げを失敗いたしまして、H3の打ち上げ計画、これをできるだけ確実に、且つ早期に果たせなければ、宇宙基本計画工程表等への影響が非常に大きいと考えておりますので、まず、確実かつ早期の試験機2号機の打ち上げ、これが最も重要であるという風に認識しております。
 次に、第1段エンジンの状況につきましては、今岡田プロマネの方から、説明がありました通りでございまして、技術リスクを抑え、確実かつ早期の打ち上げ、これを果たすために、やはり試験機1号機で正常にフライト動作した、タイプ1仕様をベースとしたエンジンを採用するということを考えている状況でございます。
 次に、ロケットの打ち上げの形態というところをご説明するのですが、ページの12ページ、参考資料に、H3ロケットのシステムの概要というものがご紹介してございまして、そちらにH3-30とか、H3-22とか、H3-24という、この形態が、どういう違いかというのが絵でご覧いただけます。
 H3-30というのは、メインエンジンが三つ、SRBが一つも付いていない。
 それから、H3-22というのが、メインエンジンが二つで、SRBが二つ。
 24というのが、メインエンジンが二つで、SRBが四つ付いているという形態でございます。
 この形態が、当然どれを選ぶかによりまして、その準備、開発に色々時間は要するわけでございます。
 まず、開発リスクという観点でご紹介しますと、当初、試験機2号機では、H3-30形態、メインエンジンは三つで、SRBはついていないという形態。これでいくという予定でございました。
 これにつきましては、基幹ロケットで初めてでございますが、メインエンジンが三つ、それからSRBはないという形態でございまして、1段実機型タンクステージの燃焼試験を実施する必要がある。それからSRBのところで固定していた部分を、メインエンジンのところで直接保持するという形になりますので、ホールドダウンシステムも追加で検証が必要という状況でございました。
 一方で、H3-22,24形態というのは、試験機1号機で確認ができました第1弾の形態でございまして、固体ロケットブースターを含め、実績があるという風に認識をしております。
 それから、この形態につきましては、宇宙基本計画工程表に記載されている直近ミッションがもちろん影響があるのかということを考えねばなりませんが、現状考えられていますミッションにつきましては、H3-22形態、またはH3-24形態で対応が可能であるということも確認ができております。
 当初の計画では、ALOS-4はH3…ALOS-4というのは試験機2号機ですけれども、これはH3-30で実証をするという構想ではございました。
 その次に、ペイロードの形態でございます。何を搭載するかという意味でございます。
 地球観測衛星であるALOS-4、またはロケット性能確認用のペイロードを搭載するかという選択肢があろうかと考えております。初号機を残念ながら失敗してしまいました状況におきまして、次の打ち上げにおいて、ペイロードを喪失するというリスクは、政策的な影響、関連分野への影響を考えますと、非常にこれは大きなものになってしまうのではないかという風に考えております。
 次に最速に打ち上げの実現をするという観点で考えますと、1号機と同じような打ち上げ計画にするということが、最も早く準備が進むということでございますので、例えば、同じ飛行経路で打ち上げるということを考えますと、ALOS-4というのが本当に馴染むのかというところも、検討をする必要があるというものでございます。
 三つ目が、ロケット性能に係る着実なデータの取得という観点でございます。ペイロードに、地球観測衛星を搭載する、実際のALOS-4を搭載するということになりますと、取得するデータには限りが出てまいります。それよりも、搭載するものを、性能確認のためのペイロードとすることによって、データをもっとより多く確保するということも考えねばならないということを考えております。
 今申し上げたような内容は、次のページに参考でございますが、トレードオフ検討ということで、H3-30形態、それからH3-22形態、さらにペイロードはALOS-4なのか、ロケット性能確認用のペイロードなのか、こういうオプションを考えまして、メリット・デメリットを今申し上げたようなことで、詳しく書かせていただいたものを、ご参考として掲載させていただいております。
 補足になりますけれども、ロケット性能確認ペイロードと書いてございますけれども、もちろん、差し支えのない範囲で、何らかの相乗りペイロードというものが搭載できるのであれば、その可能性も考えて、現在検討もしておる状況ではございます。
 JAXAからは以上でございます。
 
【上田課長】 最後のページになります。10ページ目でございます。
 そして、方向性ということでございますが、こういったロケット形態、あるいはペイロード形態について、複数のオプションが考えられますが、エンジンの開発状況、また今、提示があった論点、今後の後続号機の計画を踏まえることが大事です。
 こういったことを踏まえまして、2号機につきましては、まずはH3-22,24形態の確実な運用を早期に確立することを重視し、従前の計画である30形態の打ち上げから、第1弾の打ち上げ実績がある22形態とし、ペイロードも、ロケット性能確認用ペイロードを搭載する形態の方向性が適切ではないかと考えております。
 こういったことを考えておりますところ、関係の皆様のご理解、ご支援をいただきつつ、文科省、JAXAとして、開発主体として前に進めていきたいと考えています。
 尚、30形態の実証を行う時期ですとか、そもそも、2号機を超えたその後の計画については、引き続き検討を行う必要があるものです。
 このように、今回お示しできるのは、試験機2号機までとなりますが、私どもとしては、原因究明作業と並行しまして、一歩一歩可能な準備を進めて、できる限り早期の打ち上げ再開に万全を尽くしたいと考えています。
 本日、ご質問もいただきまして、ご審議の上、ご確認いただき、ご意見、コメントですとか、ご助言等をいただくとともに、ご理解、ご承知を賜ればと考えております。よろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 今回は、方向性についてのご説明ということだったのですけれども、ただいまのご説明について、ご意見、ご質問がありましたら、お願いいたします。
 まず、白井委員、手が挙がっております。お願いします。
 
【白井委員】 30形態についての質問というか、教えていただきたいのですが、これは、30形態の持ち場といいますか、三つのバージョンの中で、どういう打ち上げのためのバージョンなのかというのを、ちょっと私、記憶がなくなってしまっているものですから教えていただきたい。これが一つ目です。あと二つあります。
 二つ目は、24と比較した時のメリットは何なのでしょう。敢えて、このメインエンジン三つという、かなりチャレンジングなことを今計画されていらっしゃるわけですけれども、これは、例えば、コスト面なのかどうかといったことが知りたいです。
 三つ目は、これはお答えできないと分かった上で伺うのですけど、ここで30形態を今回、Return To Flightで使わないとすると、私はそれでいいような気がするのですけども、そうすると、結局ダミーペイロードを搭載するとなるとすれば、今回は、本当にチャンスであることは間違いないのだと思うのですよ、本来ならば。
 特に、先般の初号機の打ち上げも、第1弾に問題があったわけではない。しかし、見送るとすると、これは、第30形態って、一体いつ頃…将来デビューできるのでしょうか。という感覚ですね。
 つまり、例えば、H3が10回以上の成功を重ねた後でやるというような、割とロングスパンのイメージを持っておられるのかどうか。現段階でお答えされない、できない、とは思いますけれども、何か教えていただければと。以上三つでございます。よろしくお願いします。
 
【上田課長】 最初に、私、文部科学省から答えることを答えて、技術的なところを含めて、JAXAにも答えてもらおうと思いますが、30形態の持ち場は、引き続きございます。
 当面のミッション、政府ミッションにつきましては、22形態、24形態ということが判明しておって、その後ろ、まだ決まっていないのですけども、潜在的にはあり得るということ。
 そして、30形態につきましては、私どもが認識します限り、一番シンプルな形態で、固体ロケットブースターが付いていなくて、柔軟に打ち上げに対応できるという特徴があろうかと思います。
 2点目は、JAXAに委ねまして、3点目ですけども、30ということについては、私ども文科省としては、これは、確実に開発を進めるべきという風に考えていまして、その具体的な時期をいつにするかは、現時点、今日お示しできることはないのですけども、引き続き検討していきたいと考えてございます。
 JAXAからお願いします。
 
【石井理事】 岡田さんお願いします。
 
【岡田プロジェクトマネージャ】 すみません、2点目のご質問を、もう一度確認させていただけますでしょうか。
 
【白井委員】 2点目ですか?1点目と2点目は似ている話ですけど、30と24、二つのバージョンを準備されている。一体、30の持ち場は何で、メリットは…
 
【岡田プロジェクトマネージャ】 では、端的にちょっとお答えします。
 やはり、30はコスト優位があります。ライトバージョンですので、打ち上げ能力的に、24に比べて能力は抑えた分、コストも抑えるということで、どちらかというと中型の衛星に対してメリットがあるという風に考えています。
 主に、ここに載せてございますような、太陽同期軌道のユーザーが比較的多く存在するボリュームゾーンですので、そこを狙っております。
 
【白井委員】 ということは、かなり素人的なざっくりした理解をすると、メインエンジン一つを追加することによるプラスのコストと、SRB2基を使わないことによるコスト削減だと、コスト削減効果の方がやや大きいかと、こういう原価計算になっているという風に理解してよろしいのでしょうか。
 
【岡田プロジェクトマネージャ】 先生の仰る通りです。その通りです。
 
【上田課長】 私、加えますと、私ども政府としては、そういったそのコストだけでもなくて、打ち上げの柔軟性の確保ということで、30がレパートリーに付け加えることによる、全体の柔軟性の確保といったところも大事だと考えています。
 
【白井委員】 よく分かりました。ありがとうございました。失礼します。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。ちょっと時間が押してきましたので、あと3名、お手が挙がっているのですけれども、3名の方が順番に質問していただいて、その後で、事務局の方とJAXAさんの方から、まとめて、質問に答えていただければという風に思います。
 まずは、村松委員、お願いいたします。
 
【村松委員】 村松です。
 今回のH3ロケットの打ち上げに関して、もちろん、宇宙基本計画というところに基づいて、それに間に合うようにということで、打ち上げをしなければいけないというようなことがあるのは、十分承知しておりますが、色々、打ち上げ延期、延期となった中で、やはりALOS-3は、前年度中に打ち上げするというような予定だったので、3月中に打ち上げねばならないというような、期限に対して少し…もうちょっと落ち着いて、しっかりと見直すべきところが、見直せなかったという点はなかったのか、というようなことと、あとは、次の将来の方向性に関しては、やはり1回衛星を10年もかけて作ったものが、やはり使えなくなるよりは、1年2年計画が遅れても、やはり安全に打ち上がった方がいいというような、ユーザー側からの意見としては、挙げていただきたく、今回の割と安全な状況で打ち上げを計画するというような方向性には賛成いたします。以上です。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして、秋山委員、お願いいたします。
 
【秋山委員】 では、できるだけ手短に質問させていただきたいと思います。
 性能確認、ロケット性能の確認ペイロードというものですけれども、まず、これはどういったもので、あと準備はどのようなことが必要なのか、もう既に何かあるセンサのようなものをH3に合わせれば用意できるものなのか、といった点がまず一つあります。
 それから、ALOS-4の打ち上げが、当初の予定より少し遅くなるということで、その間、ALOS-2まだ全然現役だと思うのですが、今年で9年目ということで、万が一ということで、ALOS-2の今の健全性といいますか、軌道上でどのくらいしっかり働いてくれるのかという、そういうところを一つ確認させて…伺えればと思います。
 すみません、三つ目もあるのですけれども、相乗りのペイロードを検討されているということで、これは、ある意味で衛星の事業者さんにとっては、ちょっと思いがけないチャンスになる可能性も、事業者さんか分かりませんが、一つのチャンスになる可能性もあると思うのですが、できるだけ早期に、もしそういうことを決めるのであれば、どんな風に呼びかけて、どのような衛星に機会があるのかというところで、もし検討されていることがありましたら、教えていただけないでしょうか。以上です。よろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして、鶴岡委員、お願いいたします。
 
【鶴岡委員】 ご説明ありがとうございました。
 今、画面共有で出ている、この方向性自体については特に異論ありません。
 ただ、この方向性自体は、技術的知見に基づいて、最終的には政策判断ということだと理解しています。
 ですから、これの説明の仕方というのが、実は、今後非常に重要になってくると思います。特に、この説明の一貫性をどのように確保するかということです。
 その点で気になるのが、最初に説明にありましたように、この初号機のリスクが特に高いわけではないと。この判断というのは、今回の失敗を受けても変わっていないという理解でいいのでしょうか。
 そうだとすると、では、どうして次の試験機には、このALOS-4を載せるのを敢えて避けるのかというところの説明が求められるのだと思います。
 その時に、一度失敗したので繰り返しの失敗は避けたいというのは、議論としては非常に分かりやすいのだと思うのですね。
 ただ、そうすると、また次の新しいロケットという時に、初号機に載せるのか、載せないのかというのは、その都度、政策判断だとは思いますけれども、ちょっとこの辺りの議論を整合させないといけないと思います。
 その際に、もう一つどうしても説明が求められるのは、失敗した1号機にALOSを載せたことの判断というのが、これが失敗だったのかどうかということですね。
 ですから、もし今後、試験機には、実機を、実際の本当の衛星を載せないということにするのだとしたら、今回載せた判断は、やっぱり失敗であって、今後はそのようなことをしませんという意味なのか、あるいは、技術的に初号機のリスクが高いわけではないという判断を踏襲するのだとしたら、今回は、その都度判断することであって、特に1回失敗したので、2回目は避けたかったというところを強調して、この試験機に実機を載せないことは前例とはしないということを、おそらくかなり強く明確に示す必要があるのだと思います。その辺りの方向性、方向性というか、政策判断の説明の仕方について、もう少し教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。それでは、まとめて、まず事務局の方からお願いいたします。
 
【上田課長】 文部科学省上田でございます。
 私の方から、村松先生の1問目と、鶴岡委員のご質問についてお答えしたいと思います。
 まず、延期が繰り返される中でALOS-3、期限が決められて、3月中に打ち上げるということに関して見直せないものかといったことで、ちょっと一般的な説明になります。
 H3の1号機打ち上げの時、2月の17日に当初打ち上げを試みたのですけど中止となって、その後、延期になって、結果3月7日に打ち上げられたわけですが、これ予備期間の中の話でした。
 予備期間というものが何かということですけど、打ち上げというのが、そもそも、1日近く前から、色々な人の規制が入ります。
 周辺は道路も立ち入り禁止になりますし、所謂、緊急車両も通れなくなります。また、上空及び海上に警戒区域を設けて、入らないような周知がなされる。こういった、生活、交通、行政機関の管理まで制約が至るものでして、こういったものを予備期間も含めて設定するということは、通常打ち上げをするという発表を2か月前にさせてもらっているのですけど、それよりも随分前から、かなりの時間をかけて、関係機関と調整しながら準備を整えるということで、その予備期間の中で打ち上げるというのは、一つの、そのプロジェクトにとっての使命とはなっています。
 一方で、今回予備期間の中で打ち上げることは可能だったということ。また、2月の17日の打ち上げ中止事象に関しての、不具合。これは、解消された上で打ち上げに至ったこと。また、1号機が打ち上げられた後の事故の不具合の原因というのは、第2段ロケットだったということを勘案しまして、私どもとしては、この3月中、JAXAが必ずしも急いで打ち上げたとも思ってもございませんし、延期されたといったことについて、急いで打ち上げたとも思っていませんし、それが、今回の2段の打ち上げ失敗の原因になったとも、現時点では考えてございません。
 鶴岡先生からのご指摘がございました、政策的判断の過去からの整合性の…ですね。仰る通りの観点はあろうかと思います。
 私どもの見解をちょっと述べさせてもらいますけども、まずは一般論になりますけども、初号機が、過度にリスクが大きいわけではないという認識、先ほど私、述べさせてもらいましたが、これについては、必ずしも変わりはございません。
 また、同様にロケットの性質として、当初の10基ほどは、これは過去からの経験ですけども、10基ほどは、技術・製造の安定化を図っていくことが必要と。裏返せば、10基ほどは、技術・製造の安定化を図るフェーズであって、気が抜けないフェーズだということも言えるのですけども、こういった、ロケットの性質に関する認識については変わるものではございません。
 ただ、今回H3ロケットですね、ALOS-3という、地球環境観測のユーザーの実利用も想定される衛星の打ち上げだったということ、これを失敗した。また、後に多くの打ち上げ計画を抱えている中で、打ち上げができることを、ユーザーに対して可能な限り、早期に示していくことも重要という風な状況が今ございます。
 こういった中で良い選択肢を選ばなければいけないのですが、今回は、H3ロケットを取り巻く状況を真摯に捉えまして、早期に試験機を実証することが重要と判断されるものと捉えています。
 2016年当時の政策判断ですが、認識自体は、必ずしも間違っていなかったのかもしれませんが、結果的に、その政策判断をしたことについては、反省も必要かとは思います。
 一方で今後、初号機のリスク認識は必ずしも変わらないですので、今回のものは、今回の政策判断と捉えつつ、今後の宇宙開発全般に活かしてまいりたいと思っている次第でございます。私からは以上です。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして、JAXAの方から、主として、秋山委員のご質問にお答えいただければと思います。
 
【石井理事】 ありがとうございます。秋山委員の一つ目のご質問は、性能確認用ペイロードというのは、どういうようなもので検討が進んでいるかというようなお話だったかと思いますが、準備する期間、当然、非常に限られておりますので、衛星打ち上げを想定した場合のポイントとなるようなインターフェース、質量でありますとか、重心でありますとか、振動数でありますとか、そういったところに問題が生じないシンプルなものというものを想定しております。当然、これから検討するということになります。
 それから、二つ目のALOS-4が遅くなることによる、ALOS-2への影響という話でございますが、ご理解の通りで、長期間の運用をALOS-2は継続しておる状況ではございますが、現時点では、懸念されるような不具合、大きな問題は生じておりませんので、引き続きデータ供給ができるという風に現状は考えてございます。
 もちろん、ALOS-4もできるだけ早く打ち上げるということを考えなければならないということも付言させていただきます。
 三つ目、相乗りペイロードというものでございますけれども、これも時間のない中で、どういうものがあり得るのかというのは、民間事業者さん、それから、色々な政府関係の皆さんからもお話を伺いながら、情報を集めているというのが現状でございます。
 なかなか、限られた時間の中でございまして、本当に成案するかどうかもまだ分からないというところでございますので、具体的な候補名等は、差し控えさせていただきたいと思います。以上でございます。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。
 ただいまのお答えについて、特に何か、ご意見、その他おありでしょうか。いいでしょうか。
 今回、方向性ということだったのですけれども、それでは、今までの審議を踏まえまして、資料75-2の10ページの方向性に沿って、今後進めていくということについて、宇宙開発利用部会として承認したということでよろしいでしょうか。異議はないでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
【村山部会長】 それでは、ご異議ないようですので、この方向性で進めていくことについて、今後、開発予定の宇宙政策委員会において、文部科学省から報告いただくこととしたいと思います。
 それでは、今までが公開部分でして、これからは議題が非公開になりますので、一旦ここまでの範囲で、事務局から連絡事項をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 ありがとうございました。
 会議資料と議事録の公開について申し上げます。
 本日の資料は公開資料を除き、公開となります。公開資料につきましては、既にホームページに掲載させていただいております。
 また、議事録につきましても、非公開部分を除き、委員の皆様にご確認いただいた後、文科省ホームページに掲載させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 尚、次回部会ですけれども、来月の開催で調整予定です。委員の皆様には、後日日程調整の連絡を差し上げたいと思います。
 事務連絡は以上でございます。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。
 それでは、一般の方はここまでとなります。ここまでの傍聴、誠にありがとうございました。

―― 了 ――

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