宇宙開発利用部会(第78回) 議事録

1.日時

令和5年8月29日(火曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. H3ロケット試験機1号機打上げ失敗原因調査状況について
  2. 磁気圏尾部観測衛星「GEOTAIL」の30年以上にわたる観測運用での成果について
  3. 気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)プロジェクト終了審査の結果について
  4. 令和6年度概算要求に向けた研究開発課題の事前評価について(非公開)

4.出席者

委員

部会長 村山 裕三
部会長代理 田中 明子
臨時委員 秋山 文野
臨時委員 笠原 次郎
臨時委員 金井 宣茂
臨時委員 木村 真一
臨時委員 芝井 広
臨時委員 白井 恭一
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 高橋 徳行
臨時委員 鶴岡 路人
臨時委員 村松 加奈子
臨時委員 山室 真澄
臨時委員 米澤 千夏

文部科学省

大臣官房審議官 永井 雅規
研究開発局宇宙開発利用課課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室室長 鈴木 優香
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 上田 尚之
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一 
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 池田 宗太郎
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 橋本 郁也
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室室長補佐  館下 博昭

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 理事 布野 泰広
 理事 寺田 弘慈
 理事/宇宙科学研究所所長 國中 均
 宇宙輸送技術部門 H3ロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田 匡史
 宇宙科学研究所 GEOTAILプロジェクト プロジェクトマネージャ 齋藤 義文
 第一宇宙技術部門 GCOMプロジェクト プロジェクトマネージャ 田中 一広

5.議事録

【村山部会長】 それでは、定刻になりましたので、第78回の宇宙開発利用部会を開催いたします。
 今回も前回同様、オンラインでの開催となっております。委員の皆様には、ご多忙のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 まずは、事務局から本日の会議に関する事務連絡をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局の宇宙開発利用課、企画官の竹上でございます。
 本日、宇宙開発利用部会の16名の委員のうち、13名にご出席いただいております。
 本日の資料ですが、議事次第の通りです。
 オンライン状況について、音声が繋がらない等の問題がございましたら、事務局へメール、電話等でご連絡いただければと思います。事務局からの連絡は以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 本日の議題ですが、公開の場では、2件の報告事項、及び1件の審議事項をご議論いただきます。最後の議題4については、検討中の事業に関する内容となりますので、当部会運営規則第3条3号の定めにより、非公開とさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、早速議題の方に移りたいと思います。最初の議題は、「H3ロケット試験機1号機打上げ失敗原因調査状況について」です。本件につきましては、先週23日に実施された、調査・安全小委員会において、JAXAより最新の原因究明状況を報告いただきましたので、本日は、本部会でも同様の内容をご報告いただき、意見交換を行いたいと考えております。JAXAの布野理事、及びH3ロケットプロジェクトの岡田プロジェクトマネージャ、資料の説明をよろしくお願いいたします。
 
【布野理事(JAXA)】 JAXAの布野でございます。
 H3ロケット試験機1号機の打上げ失敗の原因調査に関しましては、JAXA内外の専門家からなる原因究明チームを立上げ、総力を挙げて原因究明作業を実施しているところでございます。
 究明状況に関しましては、節目ごとに、文科省調査・安全小委員会へご報告しているところでございまして、今部会長よりご紹介がありましたように、先週23日に第7回目の報告といたしまして、検討の網羅性を確認した上で、原因の特定、及びその対応策に関してご報告を行ったところで、その妥当性に関し、ご確認をいただいたところでございます。
 本日は、第7回のご報告資料を用いまして、原因調査状況を岡田プロマネより報告させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 H3プロジェクトチームの岡田でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、お手元の資料78-1に沿いまして、ご説明させていただきたいと思います。
 この資料は、先ほどご案内がありました通り、8月23日の資料そのものでございまして、小委員会の資料そのものでございまして、前回この部会でご説明させていただいたのが、4月28日の第3回ということで、この間に4回行われております。したがいまして、かなり資料そのものに飛躍した部分がございますので、そこは注意しながら、できるだけ分かりやすくご説明していきたいと思います。
 まず、前回4月28日には、どのようなご説明をしたかと申しますと、原因究明の途中経過として、失敗の原因になった箇所というのは、下流機器の短絡・地絡の可能性が高いという点。それから、上流部分、機体側に搭載されている機器の中にも、一部詳細評価をする必要がある部分があるというところをご説明いたしました。FTAを使ってご説明いたしました。
 その後、検証試験でありますとか、大きなところで言いますと、第1段/第2段の分離を実際に種子島宇宙センターで行って、衝撃レベルを確認するなどの試験を含めまして、あるいはシミュレーションなどを行いまして、原因を追い込んできた次第でございます。
 本日は、これからご説明しますシナリオの最終評価とその対策を中心にご説明していきたいと思っております。1ページをお開きいただきますと目次が出てまいりますが、1項は、大半は前回ご説明した資料ですので、少しだけ触れさせていただきますけれども、基本2項を中心にご説明していきたいと思います。2ページをお開きください。
 本日のご報告の内容ですが、赤の吹き出しの部分ですね。試験と、あるいはそのシミュレーションを含めた詳細検討によりまして、いくつか我々がシナリオを立てた、そこの部分、その辺りの最終評価の結果をご報告いたします。そして、それに伴って、対策も決定しましたので、その点についてもご説明いたします。
 3ページは、先ほど布野理事より少し触れさせていただきました原因究明の体制ですけれども、今回は電気系統の事象であるということから、JAXA内外の電気系統に関わる専門家に適時追加で参加していただきながら、原因究明を進めてまいりました。
 4ページから13ページまでは、これまでご説明した内容ですので、スキップさせていただきまして、14ページからご説明に入ります。
 14ページは、左側がH3の今回不具合を起こした、不具合が発生した部分の系統。そして、右側がH-IIAの当該部分の系統です。ちょっとおさらいになりますけれども、V-CON、それからPSCというものが、ロケットの機体側に搭載している電気ボックスです。A系/B系と冗長構成になっております。それから下半分、緑のハッチングがしてあるところが、エンジンに搭載されている部分で、ECBという、エンジンのコントロール用の制御ボックス、それからPNPというのは、ニューマティックパッケージ。その中には、ソレノイドが統制されておりまして、ヘリウムの供給をオン/オフいたします。そして、ニューマティックパッケージの先にはエキサイタ、点火器の中で、火花をパチパチとエンジンの中の点火をするために、火花をパチパチと起こすようなエキサイタと、そして、ソレノイドバルブで駆動される各バルブが繋がっていると。この緑のハッチングの部分は、右に目を転じていただきますと、H-IIAと設計としては概ね同等という仕様のものでございます。こういった仕様の違いに十分注意しながら、FTAの中では、H-IIAの共通の要因と、それからH3の固有の要因、ここを識別しながら原因調査を進めてまいりました。
 15ページ,16ページには、4月の時点で皆様にご紹介した、FTAのアップデートしたものが載せてございます。主に、若干復習を兼ねますけれども、アップデートした部分について中心にご説明させていただこうと思います。
 まず、15ページは、上位のFTAでございまして、2段エンジンの不着火の事象を起点といたしまして、1次要因から3次要因までフローダウンしてございます。この中で可能性として残っておりますのが、まず1次要因で言いますと、エレメントナンバーで言うと、3の駆動電源が喪失したということ。そして、その下の、そこから下は、3.2の推進系コントローラからの電源が遮断されたと。ここまでは確定してございます。したがって、上半分は全て×と。
 この3.2のエレメントの下に、さらに3次要因として五つに区分してございまして、これも既に前回ご説明しているのですけれども、変化している部分中心にご説明したいと思いますけれども、3.2.1項のPSC2の過電流の誤検知という部分でございますが、これは、前回は△-ということで評価しておりましたけれども、その後の調査によりまして、最後の行にありますけど、フライトデータの詳細確認、それから再現試験などから、誤検知の可能性はないということを確認しました。したがって、ここは今現在×になっております。
 残るは、オレンジでハッチングがしてございます、3.2.3項の部分ですね。PSC2から電源供給している下流機器の過電流、ここが△として残ってございまして、ご説明しそびれましたけど、共通性という列がございまして、これはH3固有なのか、H-IIA共通なのかということでいうと、この3.2.3項はH3の固有と共通とがまだ混ざっている状態ということで、この中身について、さらにブレークダウンをしたものを16ページにお示ししております。16ページをお開きください。
 この16ページの一番左が3次要因、この起点が先ほどの15ページの最終のところだったのですけども、ここを起点といたしまして、さらに4次から6次までブレークダウンしました。その結果ですけれども、上から順次ご説明いたしますと、エキサイタの系統、またソレノイドの弁、バルブの系統の短絡/地絡という4次要因の中にいくつかぶら下がっておりまして、一つは、上から二つ目ですね。H3のフライト環境の影響で機械的環境はどうだということで、前回はこれを△として残しておったのですけれども、その後、先ほど冒頭で申し上げました、実機大の分離試験を種子島宇宙センターの試験場で行った結果として、衝撃レベルというのは、さほど大きくないということから、これが主たる要因とは考えがたいということで、ここを×にさせていただきました。その下のランダム振動につきましても、同様に設計の評価を詳細に行いまして、これも要因ではないということで×。それから、真空環境がその二つ下にございますけれども、真空環境は前回△だったのですけれども、真空環境の中で、この装置が作動することによりまして、例えば、グロー放電などで不時の何か動作が起こるのではないかということを懸念しておったのですけれども、真空環境下での作動試験などを行いまして、内部損傷や過電流が生じないということを確認いたしましたので、これを△から×にいたしました。
 その下、ずっとご覧いただきますと△が1か所残っていて、3.2.3.1.2.2という、製造ばらつき、環境、仕様による複合要因、これが△として残っております。これは以前変わらず残っております。
 それから、一番下に新たに前回から追加いたしたものがありまして、これはH3の固有のものですけれども、先ほどご説明いたしましたA系とB系という存在があります。これは、お互いが独立というのが、大半はそういう状況ですけれども、一部、ある事象を想定しますと、A系からB系に情報が伝達し得るということが一つ分かってまいりまして、ここを△として残しました。
 このような状況の中で、原因究明を、後で申し上げますけども、大きくは三つの区分に分けて進めてきております。その中身に入る前に、17ページで検討の網羅性についてご説明したいと思います。これは、小委員会の中で、この原因究明にあたっては、FTAそのもの、ないしは、このシナリオの抽出、ここに対して網羅性が担保されるべきであるということで、何度か丁寧にご指導いただきまして、できるだけ、この網羅性が確保できた状態をお示しするということで、前回最終的なことをご報告いたしましたので、それを簡単に述べさせていただきます。
 まず17ページの下ですけれども、A系とB系があるということを申し上げました。これまでのフライトデータの時系列の詳細評価などから、このような流れで事象に至っているということで、まずA系の中で何か現象の起点があって、そして過電流を生じた作用点があると。結果として、丸3にあります、過電流を検知して電源遮断、ほぼ同時に、あるいは並行して、B系も起点があり、作用点があり、B系の電流検知に至ったと、こういったことを大きなフローといたしまして、この中で、丸3と丸4の過電流検知そのものは、テレメーターデータから確認済みです。それから作用点、2と5ですね。これはFTA、先ほどご説明しましたFTAと、ロケットの電気系の系統図をもとに過電流が流れる箇所というのを蓋然性も含めて識別いたしました。起点であります、1と4は、この作用点に影響を与え得る箇所ということで、故障モード影響解析FMEAを展開しながら、この両者の関連付けを行って、網羅的に一点一点部品レベルでここの繋がりをつけて追い込んできたということでございます。
 18ページには、そのFMEAをどのように行ってきたかという、FMEAの視点からの網羅性を、これまで小委員会の方で2回ほどご説明しておりまして、それの一例を載せてございますので、イメージだけでもご確認いただければと思います。
 そして、19ページにまいりまして、まだ網羅性が続きますけれども、この網羅性という中でFTAというのは、一体、完全に網羅されているものなのか、あるいはその結果としてのシナリオはどうなのか、ということで、我々は一つ、小委員会の中でヒントをいただきまして、異なる視点でのFTAをもう一つ作りました。先ほどご説明しました、全体のFTAとそれから異なる視点のFTA、これはPSC2の系統の過電流をトップ事象といたしまして、視点としては、電気的な挙動を視点として    おります。それから、全体のFTAというのは、どちらかというと機能とか部位を中心に識別しております。
 この二つのFTAをそれぞれ進めてきた結果として、結果的には、これからご説明いたします、共通シナリオ、あるいは固有のシナリオに、最後は同じ結論に達したということから、あるいは、途中ではFMEAを活用したということから、抜け漏れなく、この辺りが識別できたのではないかという風に考えております。
 このPSC2系統の過電流を起点といたしましたFTAにつきましては、本日ご説明は割愛させていただきますけれども、23ページ、そして24ページに、小委員会でご報告差し上げたFTA、これは先ほどご説明した16ページ辺りのFTAとは違うFTAですけども、こういったものをご説明しております。
 また、20ページにまいりまして、ちょっと今日はご説明をスキップさせていただきますけれども、20ページ,21ページ,22ページにかけては、シナリオがどのようなタイミング、あるいは誤検知が有りや無きや、というところから、このシナリオが区分されるかということで、タイミングと、21ページにまいりまして、タイミングと、その誤検知の有りや無きや、ここそのものを完全に網羅し、場合分けをしまして、これが網羅的に場合分けした結果として、これらの組み合わせによって、論理的に、あるいはフライトデータから表評価結果が出てくるのですけども、それらの中に、先ほど申し上げました、共通シナリオが属するかどうかというのも評価してございます。ここも併せて、小委員会でご説明いたしました。
 そして、今度は、その原因究明の結果の内容にまいりますけれども、まず25ページでございますけれども、シナリオを大きく三つに整理いたしました。一つ目は、エキサイタの内部で軽微な短絡が起きて、SEIG、2段の着火信号ですね、これを送出後に、完全に短絡したというモード、これが一つ目の柱です。これに関しましては、H-IIAと共通のシナリオでございますので、絶縁強化、そして検査の強化を図りまして、これはまもなく打ち上げに臨みます47号機にも適用済みでございます。
 それから、丸2でございますけれども、エキサイタへの通電で過電流状態が生じたと。このエキサイタの内部に、一つトランジスタが組み込まれておりまして、そのトランジスタが部品定格を超過しているということが確認されました。したがいまして、これも定格を超えて使っておったということから、原因の一つという風に可能性があると考えまして、これも47号機でも同様でございましたので、トランジスタが定格超えをしないような設定をするということで見直しまして、47号機以降に適用するということを、策をとってございます。
 それから、丸3ですけれども、これは丸1と丸2がH-IIAと共通な部分ということに対しまして、丸3はH3固有のシナリオとして残っております。PSC2のA系の内部で過電流が生じて、その後、あるルートを通して、B系へそれが伝播するということです。
 これは、A系の中で定電圧ダイオードが短絡故障し、過電流が生じた場合に、B系に伝播するというのが具体的な内容ですけれども、これを試験と詳細な評価によって確認いたしました。これにつきましては、この定電圧ダイオードそのものは、取り除くこと可ということで、そういう評価いたしまして、B系の伝播を防止する策を講じるように考えてございます。
 これまでの究明の活動の中で、先ほどご説明しましたような網羅性を確認しながら、現象を追い込んでまいりました結果として、エキサイタ、もしくはPSC2が損傷することによって、2段不着火事象が発生したという風に評価してございます。これを踏まえまして、対策を行うことで再発を防止するということを考えております。
 徐々に内容に入ってまいります。26ページから28ページまでは、現在残っているシナリオ、先ほど3グループ、三つの柱に分けてご説明しましたけども、それらをまとめて載せてございます。尚、このグレーのハッチングをかけている2か所につきましては、前回の小委員会で、この可能性がないということで、シナリオからは除いている部分でございまして、現在白抜きの部分で言いますと、合計7か所ですね。七つのシナリオが残っております。先ほどご説明した三つの柱でございます。その内容につきまして、29ページからもう少し内容についてご説明したいと思います。柱一つずつについて、簡単にご説明していきたいと思います。
 まず、29ページは、これは全貌ですので、ここはスキップいたしまして、30ページですね。一つ目のシナリオです。エキサイタ内部で軽微な短絡があって、点火信号、通電の後に完全に短絡したと。これらのシナリオというのは、全体的に共通している部分がございまして、それはエキサイタ内部の部品としては、コンデンサやフィルタなどの種類は異なるのですけれども、概ね以下の通りという風に考えております。
 まず、製造時に何らか短絡や地絡を生じやすい状態にあったと。それから二つ目、打ち上げ前までは、その短絡/地絡に至っておらないのですが、打ち上げ時の振動などによって、軽微な短絡/地絡が起きたと。そしてその後、エキサイタに通電が始まりますと、今まで抵抗値が大きかった短絡/地絡の部分が発熱などで過電流を生じるに至ったというものです。ここに6msという数値が載せてございますけれども、今日の資料ではちょっと直接的には触れておらないのですけれども、SEIGから6ms、SEIG+6msから10msの間、この4ミリ秒ほどの間に、大きな電流、過電流を生じるような状況の変化があったというのが、フライトデータから見えてきている内容でございます。
 31ページから32ページにかけましては、今ご説明しましたシナリオの中、これは、シナリオは今五つを、このシナリオ共通的にご説明したのですが、その中の一つを代表的なものとしてピックアップしております。これは、過去に製造工程の中で地絡を生じた事例があって、それを是正措置したものですけれども、非常に代表的なものとして今回ご紹介させていただきました。このエキサイタの中には、フィルタの組み立ての中で、コイルとケース間に絶縁シートがあるのですけども、そのうちシートがずれて組み立てられることによりまして、コイルとケースが接触した状態になると。これは下の写真の真ん中のものです。これが先ほどご説明したような打ち上げの状況、振動などによりまして、接触状態から被覆が剥がれて、コイルの素線が剥き出しになる。これは実際に、これまでの製造の中で、こういった事象が、右下の写真のように事例としてありまして、これが、徐々に発熱が大きくなって過電流を生じたというものでございます。
 32ページには、対応策として絶縁を強化する、その接触の可能性のある部分についての絶縁を強化するということと、それから、その状態をX線CTで事前に検査するということで、対応策をとってございます。
 33ページから35ページにかけましては、同じくH-IIAと共通の要因ですけども、エキサイタの内部のトランジスタの故障によるものです。このトランジスタは、33ページの下にございます、真ん中にトランジスタが一つありますけども、これはエキサイトの中の1次側に一つありまして、1次側のそのトランジスタを含めて、エキサイタの中が電気的発振を行うことによって、1次側から2次側に徐々にエネルギーが伝達されて、2次側の電位が上がって、最後スパークをしていくと、こういう仕組みのものの中で、トランジスタのVce、コレクタ-エミッタ間が、運用の、作動中に、絶対最大定格以上の電圧が常に流れるということが判明しました。これは原因調査の一環として判明したものです。
 こういった定格以上の電圧が流れますと、必ずしも確実に動作するということは保証できませんので、こういった、この33ページの一番下にございますように、電気的発振動作を開始した後で、10msほど経って、トランジスタが耐え切れずに降伏して短絡に至ると。過電流を生じるというシナリオでございます。
 34ページには、その検証結果を載せてございますけれども、これ実際には、定格は超えてはいるのですけれども、試験で確認した範囲の中では、このトランジスタは、なかなか壊れるような状況にはなりませんでした。ただし、その試験の中で分かったこととして、かなり電圧をかけた状態で意図的にトランジスタをいくつも降伏させたのですけども、その降伏の値自体には、かなりのばらつきがあるということが分かりまして。したがいまして、試験ではなかなか再現しないものの、これはシナリオとしてはあり得るという風に判断しております。
 35ページには、対策としては、そのようなトランジスタの運用にならないように、このトランジスタの脇にあります、抵抗値を調整することによりまして、トランジスタが定格の範囲内で作動するようにいたしました。これに伴いまして、35ページの下3行に書いてございますけれども、スパークのレートですね。パチパチと火花の飛ぶ間隔が、レートが低下するのですけども、これは過去に確認された範囲の中で仕上げることが可能でして、少なくともH-IIAについては可能でして、47号機には、既にそれら設計変更したエキサイタが搭載されております。またH3に関しては、ミッション秒時が長く、よりスパークレートが落ちていくことが見込まれますので、今後追加の試験などで、ここを確認していきたいと思います。
 36ページから、3番目のシナリオでございます。ちょっと時間を超過してしまいまして申し訳ございません。これは固有のNo.2というシナリオですけれども、この右下に図がございますけれども、PSC2という中に、降圧回路の下流に定電圧のダイオードがあって、これは右側が下流になります。降圧回路の周りで何らかの事象が起きて、定電圧ダイオードが短絡いたしましたと。仮に短絡いたしますと、リターンを通じまして、B系に情報が伝わっていくということが分かったということです。これは(1)でシミュレーションを行いまして、時間的にはまだ整合はしていないのですけれども、シミュレーションで、電位を変動させるような状況が確認されたということ。
 そして(2)、37ページの(2)、試験結果としても、実際に実機を使って、このA系の定電圧ダイオードを意図的に降伏した状態で、B系に何らかの情報が伝わるかということを意図的に行った時に、B系そのものの、フライトデータと整合するような事象には至らなかったのですけれども、この赤字で書いておりますように、A系の定電圧ダイオードの短絡時の過渡電流によって、リターンの電位が変動し、結果としてB系の降圧回路の電圧モニタ用のオペアンプ、これは左下の図にあります、電圧モニタという中に、右の吹き出しで拡大してありますような回路がありまして、この中のオペアンプの出力が、このリターン電位が変動することに伴いまして、オペアンプの出力が連成しまして、結果、この電圧モニタそのものは、B系の降圧回路のフィードバックを行って、出力をコントロールしていますので、このB系の降圧回路の電圧が変動するというところの事象までを捉えました。
 38ページは、今口頭でご説明したシナリオが書いてございます。ちょっと詳細は割愛させていただきますけれども、このように、A系からB系にフライト中の環境などによって、A系の降圧回路の一部の部品が故障したというところを起点にしますと、その後、A系の降圧回路のフィードバック制御が不安定となっていき、結果として、先ほどご説明したようにB系に回り込んでいくという現象が起こり得るということで、39ページにまとめておりますけれども、A系の定電圧ダイオードの短絡故障を起点として、B系回路へ波及するということから、本シナリオの可能性は否定できないといたしました。
 対策といたしましては、40ページにありますように、A系とB系それぞれにダイオードがついているのですけども、定電圧ダイオードがついているのですけども、この定電圧ダイオードそのものは、下流に対する電圧の保護、過大な電圧を保護するためにここに装着しております。今回の原因究明の中で、この下流にありますエキサイタなどが、かなりの電圧にもつということが分かりまして、この定電圧ダイオードは必要ではないという結論に達しましたので、これを削除することによりまして、A系の定電圧ダイオードが、少なくとも降伏することによりB系への回り込み現象は断ち切るという風にいたしました。ここまでが原因究明の結果でございます。
 41ページ,42ページには、原因究明への結果の最終確認として、総合的な試験を行うことを考えておりまして、それをご説明しているものです。41ページ,42ページまとめてご説明いたしますが、対策の最終確認としましては、この2段のエンジンの着火に関わる装置ですね。これらを、この下の図にございます、電池からエキサイタまで全部ひっくるめまして、真空中で動作することにより、設計変更の妥当性を確認できないとかという風に考えてございます。
 このためには、真空チャンバの中に、電池から各機器、エキサイタまでを含めて各機器を入れた状態にしないといけませんので、今このコンフィギュレーションについては検討中ですけれども、実際に相当なことの模擬ができると思います。
 模擬ができないものは、41ページの下に2点書いてございますが、水素とか酸素、このエキサイタの中に、点火用のガスは導入しないと。エキサイタを作動させるまでということ。それから、振動や衝撃環境は、あるいは熱環境は加えないと。これは機器の単品で耐性が評価できますので、これは加えないと。電気的な動作を行うというものです。
 42ページにありますけれども、ちょっと注意しないといけないと我々が思っていることは、例えば、実機相当のワイヤーハーネスを使うであるとか、フライト時のグランド状態を極力模擬するということで、実際飛ばしたがごとくに、この最終検証ができないかということを考えてございます。
 まとめになりますけれども、重複しますが、残るシナリオを三つに整理したということと、エキサイタ、もしくはPSC2が損傷することにより、2段不着火事象が発生したということと、それについて対策を打つというところまでを、これまでの結果として述べさせていただいています。
 今後の進め方ですけれども、まず対策をH3ロケットの設計に反映いたします。打ち上げまでに、先ほどご説明したシステムレベルの検証を別途行うということ。さらに、この結果から、背後要因分析を現在進めておりまして、水平展開についても併せて行います。この中で、H3ロケットの信頼性を向上させるための設計変更についても、現在検討を進めておるところです。長くなりましたが、ご説明以上です。
 
【村山部会長】 岡田さん、どうも丁寧にご説明いただきありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明について、ご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。いつも通り挙手いただければ幸いです。お願いいたします。いかがでしょうか。
 村松委員、お手が挙がっております。お願いいたします。
 
【村松委員】 とても大変なお仕事をどうもありがとうございます。
 先ほど、何ページでしたっけ。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 どのような話題でしょうか。
 
【村松委員】 部品の規格を超過している電圧がかかったという話があるのですけれども。30何ページかだったのですが。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 33ページからです。
 
【村松委員】 そうですね。
 その場合、何か回路設計の時に、ここにどのくらい電圧がかかるというようなシミュレーションをされていると思うのですけれども、今回のそれは、何かどこかに不具合が生じて、想定しないほどの電圧がかかったというようなことでしょうか。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
 いえ、そうではありませんで、通常の運用で、常に定格以上の電圧がかかっていたというのが事実でございます。
 この33ページの回路図のVceという、ここのコレクタ-エミッタ間の電圧が、この開発当初から規格を超えて、定格を超えていたということが、今回の調査で分かったということです。
 
【村松委員】 どうもありがとうございました。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 他の委員いかがでしょうか。芝井委員お願いいたします。
 
【芝井委員】 設計する時に、シングルポイントのフェイラ、どこか一つ故障した時にも、大きい損害に至らないようにという考え方で、元から設計しておられたと思うのですが、それと今のお話だと、ちょっと分からないところがありまして。
 この三つのうちの前半二つに関しては、どこか一つの損傷が大きい事故に至っているのですか。それとも、ちょっとその辺がよく理解できませんでした。以上です。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 申し訳ありません。説明不足でございました。
 14ページをご覧いただきたいと思います。14ページの、右と左と、H-IIAとH3とございまして、基本、の2段のエンジン周りというのは、緑でハッチングしてございますように共通です。ここは、先生は今おっしゃられたように、全てシングルポイントになっています。したがって、ロケットの設計思想といたしましては、冗長設計をするというよりは、むしろ、基本はシングルで構成すると。電気系に関しては、今回H3では、さらに信頼性を高めるために、上半分の部分を冗長設計にして、下半分はH-IIAから踏襲しているシステムでして、ここは突き合わせております。
 ですので、このH3の冗長設計の考え方といたしましては、この上半分の部分が何か故障を起こした時に、別な系が、それを代わりに担うというところが、上半分のところが冗長設計になってございます。ですので、H-IIAは基本シングルで構成されております。
 ここにH-IIAも、赤い線が2本出ているように見えますけども、これはケーブルが2本それぞれあるだけでして、基本はシングルという風にお考えいただければと思います。
 
【村山部会長】 芝井委員、今の説明でいいでしょうか。それでは、他の方いかがでしょうか。ないでしょうか。
 岡田マネージャーには、本当にここまで真摯に努力をしていただきまして、非常にありがとうございます。今日の説明を協議しまして、大体これから進めていく目処がたって、一段落したように見えますので、これからも引き続きご努力をよろしくお願いいたします。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
 原因究明としては、一区切りいたしましたけれども、これからも信頼性の高いロケットを作り込むように努力したいと思います。ありがとうございます。
 
【村山部会長】 よろしくお願いします。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 今のお話にありましたように、今後JAXAでは背後要因分析などを進めていただきますが、本件については、引き続き、調査・安全小委員会で確認していただきながら、また機会を見て、本部会でも議題として扱いたいと思います。それでは、岡田マネージャ、どうもありがとうございました。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 それでは、次の議題に移らせていただきます。
 二つ目の議題は、「磁気圏尾部観測衛星「GEOTAIL」の30年以上にわたる観測運用での成果について」です。それでは、JAXA宇宙科学研究所の國中所長および齋藤プロジェクトマネージャ、資料の説明をお願いいたします。
 
【齋藤プロジェクトマネージャ(JAXA)】 それでは、GEOTAILプロジェクトマネージャの齋藤の方から、資料の説明をさせていただきたいと思います。では、次のページをお願いできますでしょうか。
 この最初のページの左の写真は、1992年、すみません、戻っていただけますでしょうか。前のページに。1992年7月24日に、ISTPプログラムの一環として打ち上げられました、NASAとISASの共同ミッション、GEOTAILの打ち上げ時の写真です。右の方は、昨年、2022年11月28日に30年間にわたる地球磁気圏尾部の観測を終了しましたけれども、その停波を行った日の写真です。この日は、GEOTAILを立ち上げられて実現されたOBの方々、それからメーカーのOBの方々、現役の観測機器のPIの方々、それからオンラインでは、NASAのGEOTAILプロジェクトの方々にも参加いただきました。次のページをお願いします。
 GEOTAILですけれども、GEOTAILはISTP、これは太陽地球系物理学国際共同観測計画の参加衛星の一つとして、米国NASA、欧州ESA、ロシア、の各Space Agencyが開発して、運用していた衛星とともに、その世界的な観測計画に参加した衛星で、この日米の共同ミッションでしたけれども、日米の役割分担という意味では、衛星開発、追跡管制が日本、それから、打ち上げが米国、データ取得は双方で行うというミッションでした。
 打ち上げロケットは、アメリカのDelta IIロケットで、日本が開発した、この衛星のシステム開発メーカーは、日本電気株式会社(NEC)、それから搭載機器の開発メーカーは、明星電気株式会社、他、に担当していただきました。GEOTAILの目的に関しましては、後のスライドの方で説明させていただきますので、次のページにお願いします。
 この右の方に観測状態のGEOTAILの絵がありますけれども、フラックスゲート磁力計、それからサーチコイル磁力計、磁力計を搭載したマストと呼ばれる伸展物が2本出ています。それから、電場や波動を観測するワイヤアンテナと呼ばれるアンテナが4方向に伸びています。それから、プラズマ粒子の観察装置が、この衛星の壁面に搭載されていると、そういう衛星でした。
 搭載観測装置ですけれども、日本が提供した電場の観測装置、日本が開発した電場の観測装置、それから、日本が開発したプラズマの観測装置、そして、アメリカが開発したプラズマと高エネルギー粒子の観測装置、それに加えまして、日米双方で共同して開発を進めて搭載した、磁場の観測装置と、プラズマ波動の観測装置が搭載されている他、高エネルギー粒子の観測装置では、日本、ドイツ、ヨーロッパで開発されたものも搭載されています。次のページをお願いします。
 GEOTAILの運用と終了するまでの経緯ですけれども、1983年9月にNASAのOPEN計画GTLと、ISASのOPEN-J計画が統合されて、GEOTAIL計画が誕生しました。その後、約10年後ですけれども、1992年の7月24日に、米国フロリダ州ケープカナベラルのケネディ・スペースセンターからデルタII型ロケットで打ち上げられました。約30年間の観測を行ったわけですけれども、2022年6月に搭載データレコーダーのA系が故障しまして、2012年に既に故障していた搭載データレコーダーと合わせて、搭載レコーダーの両系が故障しました。この結果、十分な理学的な成果の創出が難しくなったと、JAXAとして判断しまして、NASAとの合意のもと、2022年11月28日にGEOTAILの運用を終了することになりました。
 その後、海外機関、関係者を含めた、成果を取りまとめるシンポジウムというものを2023年3月28日から31日にかけて、東京大学小柴ホールにて開催しまして、100人規模の参加者がありました。次のページをお願いします。
 磁気圏尾部衛星GEOTAILの工学的成果ですけれども、GEOTAIL衛星は、地球磁気圏尾部を直接探査する特殊軌道へ投入する必要がありました。そこで、二重月スイングバイ(Double Lunar Swingby)による軌道投入を実施しました。このDouble Lunar Swingbyの技術というのは、日米共同プロジェクトだったからこそ、米国側からもたらされたものであって、「ひてん」GEOTAILで獲得された、この月・惑星Swingby技術は、その後の惑星ミッションに活かされているところです。
 この図の左下の方に、1992年から1995年、打ち上げから3年間の軌道が示されていますけれども、地球の磁気圏尾部の月軌道の3倍程度までの領域を集中的に観測しているという状態が分かるかと思います。その後、1999年に8倍の地球半径と30倍の地球半径という、地球に近いところの軌道に軌道を移しまして、その後30年間にわたって観測を継続していました。次のページをお願いします。
 GEOTAILの最も大きな成果として、GEOTAILは磁気リコネクションの存在を実証し、その様子を明らかにしたということが挙げられます。次のページお願いします。
 磁気リコネクションですけれども、これは地球磁気圏の構造やふるまいを理解する上で、要となる概念でありまして、磁気リコネクションの存在というのは、GEOTAILの打ち上げまでは、その存在の予想はされていたのですけども、その存在自体が、特に磁気圏尾部では明らかではありませんでした。
 この図にあります通り、これは地球の磁気圏の磁力線を示した図ですけれども、太陽風中の磁力線と、地球磁気圏の地球固有の磁力線が反平行になると、この図に示しております通り、磁気リコネクションというのが起こります。磁力線の繋ぎ変えです。そうしますと、元々太陽風中にあった粒子が地球磁気圏に入り込むとともに、磁力線はプラズマと一緒に磁気圏尾部の方に流されていって、さらにそこで反平行の磁場構造ができることで、磁気リコネクションが発生して、それでこの地球磁気圏のプラズマの対流が起こると、そういう図を示したものです。この磁気リコネクションに伴って、さらに粒子が加速されて、それが地球の大気に衝突してオーロラが発生するなどの現象が起こります。
 このGEOTAILの観測によって、磁気リコネクションについて、以下のことが解明されました。磁力線をつなぎかえて、磁場のエネルギーを使ってプラズマを加速すること。それから、磁気圏では、磁気圏境界と磁気圏尾部で磁気リコネクションが起こること。それから、磁気圏境界では、太陽風中の磁場に南向きの成分がある場合におきる。それから、磁気圏尾部では、磁気嵐、サブストーム時に激しく起きること。これらのことが解明されてきました。次のページをお願いします。
 GEOTAILの目的ですけれども、プロジェクトの実施において、具体的にはここに示しました、四つの目的が設定されました。
 一つ目は、地球磁気圏尾部と遠尾部でプラズマ、電場、磁場の総合観測を行い、その全体像を明らかにすること。
 それから、2番目としまして、サブストームや磁気圏のエネルギーバランスにおける、遠尾部や地球近傍の尾部の役割を明らかにして、これらの現象と外部駆動機構との関係を理解すること。
 それから、3番目としまして、地球近傍尾部における、磁気リコネクションの開始機構を調査して、磁気リコネクション領域でおきるエネルギー変換の素過程を観測すること。
 それから、4番目としまして、尾部プラズマシートの内部境界、磁気圏境界、バウショックなどの相互作用領域とその周辺領域でおきるプラズマの流入、高エネルギー化、輸送過程を調査する。この4点です。
 JAXA内プロジェクト終了審査において、この四つの目的全てを達成したと評価していただきました。特に顕著な成果として、この後のスライドで、最初の部分に書いた、GEOTAILの大きな成果2というものと、それから、3番目の磁気リコネクションの存在実証とその様子の観測、GEOTAILの大きな成果1と、その2点について、さらに詳しく紹介させていただきます。それでは、次のページをお願いいたします。
 磁気リコネクション観測におけるGEOTAILの貢献という成果ですけれども、磁気リコネクションは、この図に示してありますように、階層構造を持っています。一つは、最も大きなスケールとしましては、地球磁気圏を含む、10万kmを超えるサイズ。それから、もう少し小さなスケールとしまして、プラズマのイオンと電子と磁力線が一緒に動くような、そういう電磁流体スケールと呼ばれているスケールで、これが1万km以上くらいのスケール。それから、さらに小さいスケールになりますと、今度はイオンが磁力線から、束縛から自由に運動をしだすイオンスケール、これが100kmから1000kmくらいのスケール。さらに小さなスケールになりますと、電子も、その磁力線の束縛から解放される電子スケールと、それより小さいスケールと。これが10km以下くらいのスケール。そのくらいの階層的なスケールがあります。特に、このGEOTAILが貢献したのは、このイオンスケールから電磁流体スケールにかけてのスケールになります。次のページをお願いします。
 ここでは、示していただいた通り、GEOTAILの貢献する領域が、この丸のところです。GEOTAILの大きな成果ですけれども、イオンスケールでの磁気リコネクション領域の構造が初めて明らかになったということが挙げられます。サブストーム時の磁気圏近尾部の観測によって、磁気リコネクションの近傍領域でイオンと電子が別々の運動をしていることに起因するホール電流系の証拠が発見されました。これは、この図に示すような電流系で、磁気圏尾部の磁力線に垂直な方向の磁場が、四重極形状の磁場があるということが、このイオンスケールで初めて明らかになりました。これは、磁気リコネクションが実際に存在するということを証明するとともに、その構造を初めて明らかにしたということで、非常にこのデータ結果を見た時には、驚いたのを記憶しています。次のページをお願いします。
 先ほどは、イオンスケール構造という話だったのですけども、さらにそれより小さい電子スケールに関しましては、さらにその10倍、ワンオーダーですね。10倍から、それ以上の小さなスケールを観測しなくてはいけませんので、分解能がGEOTAILでは足りなくて、詳細の構造は観測することはできませんでした。しかし、その領域が存在するということは、GEOTAILの観測で初めて検出することができました。
 これがその成果ですけれども、この図に示しますように、磁場がゼロということになっている領域のところで、電子のスピードが上がっているということが初めて分かりまして、そういう特徴を持った電子スケールの領域が存在するということが初めて同定されました。この成果で、電子スケール構造の詳細な解明という道が開けたわけですけれども、GEOTAILではその分解能が足りなかったのですけれども、GEOTAILが打ち上げられた、20数年後に打ち上げられました、アメリカNASAのMMS衛星によって、これの観測時間分解能が100倍近く向上をする観測が現在行われているところです。次のページをお願いします。
 もう一つのGEOTAILの大きな成果として、太陽活動静穏時の磁気圏遠尾部での地球起源酸素イオンの発見ということが挙げられます。このGEOTAILの観測を始めた当時は、この電離圏起源のイオンが、地球半径の200倍まで到達するということは、誰も考えていませんでした。私は、このデータを初めて見た時をまだ覚えていますけれども、非常に驚いたのを覚えています。
 これは、地球の電離圏から加速、加熱された粒子が磁気圏側に逃げ出したということを示しているわけですけれども、現在でも、電離圏における大気イオンの加熱加速現象については、盛んに研究がされているところです。これは、地球に限らない磁場を持つ、惑星の大気科学への貢献ということが言えます。次のページをお願いします。
 今ご紹介させていただきましたように、太陽活動静穏時磁気圏遠尾部での地球起源酸素イオンの発見に関しては、これはScience誌に掲載されたということがあります。このように、査読論文数としては、トータルで1307編から、総引用回数36,261回、H-index83ということで、このScience誌へ掲載された論文に加えて、天体ガンマ線フレアのエネルギー量の推定に関して、Nature誌に掲載される論文が出るなど、天体物理学への貢献もなされました。このように、他分野への波及効果も含む、質の高い理学的成果をGEOTAILは多く創出したということが言えます。次のページをお願いします。
 論文成果に加えまして、アウトカムがここに書かれている通りです。延べ約1800人の学生が運用に加わりまして、大きな人材育成効果を上げました。GEOTAILの開発・運用に携わった当時の若手メンバーは、今の宇宙科学探査分野を先導するメンバーとして第一線で活躍しています。
 また、米国のGEOTAILプロジェクトと協力して、共同ミッションを円滑に遂行するということで、NASAとの良好な関係の維持に貢献しました。その後に続く、NASAとの協力の礎となったと言えます。
 また、法律的な側面でも整備が進んだということが言えます。
 あと、GEOTAILで培われた、各種機器・観測技術・データの解析から、理学的成果を創出する人材が「あらせ」の開発・運用において中心的な役割を果たしまして、「あらせ」の観測データは、宇宙天気予報を行う上で有益であり、唯一無二のデータとして実社会において活用されているところです。という意味で、GEOTAILが積み上げた知見が実社会に還元されているということが言えるかと思います。次のページをお願いします。
 GEOTAILを踏まえた今後の将来計画ですけれども、この図に示してありますように、地球磁気圏を探査するGEOTAIL、そして「あらせ」に続く衛星として、コミュニティとしては、将来計画として、小型科学衛星による極域編隊探査計画FACTORSを現在構想しているところです。
 また、GEOTAILで培った観測機技術や地球磁気圏への知見というものは、日本の惑星探査計画にも展開されているところで、既に終わったミッションとしましては、かぐや、そして現在進行中のBepi Colombo/MMO衛星、そして、JUICE、MMXという衛星に搭載された観測機器開発や他惑星の磁気圏への理解というところに繋がっているところです。
 さらに、将来の太陽系外の惑星系研究への展開ということで、新しい最終目標として、宇宙における中心恒星と惑星システムの総合的・普遍的理解へ、という目標を設定するに至っています。次のページをお願いします。
 これが最後のスライドになりますけれども、ここに示しました図は、このGEOTAIL衛星というのは、かつてISTP衛星計画に参加する衛星という風な位置づけがありました。そのISTP衛星計画というのは、地球磁気圏を多点で観測するという計画でしたけれども、今後、2020年代後半には、その多点観測というのが、太陽から火星までを含む、内部太陽圏で実現されようとしています。この赤い四角形で囲った緑色で示してあるのが、宇宙研JAXAが、現在運用している衛星、および今後内部太陽圏で運用する衛星です。
 それに加えまして、NASAのParker Solar Probe、それから、ESAのSolar Orbiter、それから、名古屋大学で行っていますような、太陽風のIPS観測、シンチレーション観測などを含めまして、この内部太陽圏で、ISTPの太陽圏版というものが実現されようとしているところです。このような多点観測というのは、今後さらに太陽圏全体へと広がることが予測されます。
 最後に、GEOTAILの長年の運用にご協力いただきました、各関係方面に深く感謝を述べさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。
 非常に大きな成果が上がったということですが、ただいまのご説明について、ご意見、ご質問があればお願いいたします。まず、鈴木委員お願いいたします。
 
【鈴木委員】 鈴木でございます。
 この度の磁気リコネクションや、地球由来酸素の発見みたいな部分に関して、偉大な成果があるということは、私からもすごく感動したというところと、感謝申し上げたいなと思っています。
 13ページですけれども、査読の論文が1307というかたちで、これもすごく大きな数だと思っているのですけれども、日本の人の寄与というのがどれくらいあるかみたいなかたちで、筆頭著者の日本の割合ですとか、コレスポンディングの日本の人の割合みたいなかたちで、どれくらいの割合を占めているかみたいなことをご存知であれば、教えていただきたいなと思います。
 
【齋藤プロジェクトマネージャ(JAXA)】 すみません、調査はしたのですけど、すぐに数は出てこないのですけれども、特に初期の論文に関しましては、日本人の著者のものが数多く存在していました。
 ただ、最近の十数年間というところにいきますと、このGEOTAILは、Heliospheric System Observatoryと呼ばれる、NASAの衛星群と一緒に観測を行うという側面もかなり強くなってきておりまして、むしろ最近の十数年間に関しましては、海外の方がデータを使って解析をしてくれるという傾向が高くなってきていました。
 
【鈴木委員】 ありがとうございます。
 文部科学省関連の予算みたいなことで言うと、日本の研究能力の向上みたいなものの指標の一つとされる部分もあるので、今回のプロジェクトが大きく寄与されたことを確認するとともに、またこういった取り組みが立った時には、戦略的に、そういった論文の執筆などとかも、上手く効率的に行われるようなかたちになるといいのかなという風に思います。ありがとうございました。
 
【齋藤プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 他はいかがでしょうか。米澤委員、お願いいたします。
 
【米澤委員】 どうもありがとうございました。
 非常に素晴らしいなと改めて思ったのですけど、この30年の寿命を保った秘訣というか、どうしてこれだけのことができたのかということを、何かもしあったら教えていただきたいなと思いました。よろしくお願いいたします。
 
【齋藤プロジェクトマネージャ(JAXA)】 まず一つは、これはスピン衛星です。燃料が無くなっても、そのまま放っておけば、姿勢が安定して、衛星が死ぬことはないというのが、まず一つあったのは確かです。
 それから、もう一つは、軌道が近地点で地球半径の10倍近く、遠地点で30倍近くということで、放射線の影響というのは、地球の放射線帯の影響を全然受けませんので、放射線環境という意味では、比較的楽な環境であったということが言えるのが、もう一つあったかと思います。
 あとは、搭載されている機器の電子回路部分ですけれども、最近では、FPGAとか、あるいは集積回路、非常に集積度の高い回路が使われますけれども、これはもうほとんどディスクリートのICを並べて作ったような、そういう回路が非常に多くありまして、その辺がどちらかといえば、長く運用に耐えるということに繋がったのではないかという風に考えています。
 
【米澤委員】 ありがとうございます。回路が比較的単純だったという風に理解していいのでしょうか。
 
【齋藤プロジェクトマネージャ(JAXA)】 単純。そういう意味では、構成的に単純だったというのは言えるかと思います。
 
【米澤委員】 どうもありがとうございます。
 
【村山部会長】 続きまして、山室委員お願いいたします。
 
【山室委員】 ご説明ありがとうございました。聞こえていますか。
 
【村山部会長】 大丈夫です。
 
【山室委員】 まず、スライド4で運用終了のところまで、時系列を教えていただいたのですが、終了した後の、この機体というのはどうなったのかというのを知りたいというのが一つと、それから、最後のスライドで、先ほどの成果についてのご質問にも関連するのですが、今回のこの成果を踏まえて、また色々な探査がなされているようですが、この中の、今運用している、もしくは今後運用しようとしているものは、やっぱりそういう海外の方との共同で、なかなか日本のプレゼンスを出すのは、初期はできたのだけど、後は…というお話があったのですが、そういうような感じになるのか、それとも、この中にはいくつか日本独自というものがあって、日本でこれからプレゼンスを出していくという感じなのか、半々なのか、みたいな、その辺のイメージを教えていただければと思います。よろしくお願いします。
 
【齋藤プロジェクトマネージャ(JAXA)】 最初のご質問ですけれども、現状その衛星がどうなっているかといいますと、昨年の11月の末に停波、電波を止めましたけれども、その際に、バッテリーの切り離し、その他を行いました。現状は電波が止まった状態にありますけれども、これは非常に地球から離れた所にありますので、地球に落ちてくることはまずありませんので、そのまま飛び続けているという状態がずっと続きます。少なくとも、100年以上はずっと同じ軌道を、少しずつ変わりながら飛んでいるという状況であります。
 それから、次の将来のミッションという話ですけども、現状及び将来のミッションという話ですけども、GEOTAILの開発成果を用いて、搭載される観測装置というのは、これらの新しいミッション、それから将来のミッションにもありますけれども、そこでやっぱり、我々独自の新しい観測装置、観測手法というものを、それぞれ搭載しておりまして、その意味では、他の国との共同というよりは、我々独自でも十分成果を出せる、そういうミッションになっています。もちろん、共同によって、色々成果を出すという良い側面もあるわけですけれども、もちろん我々としては、独自の成果をどんどん出していきたいという風に考えています。
 
【山室委員】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 齋藤マネージャー、どうもありがとうございました。
 質問もこれで無いようですので、非常に大きな成果があったことは喜んでおります。今後ともご研鑽をお積みください。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【齋藤プロジェクトマネージャ(JAXA)】 どうもありがとうございました。
 
【村山部会長】 それでは、次の議題に移らせていただきます。
 次の議題は、「気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)プロジェクト終了審査の結果について」です。それでは、JAXA第一宇宙技術部門、寺田理事および田中プロジェクトマネージャー、説明をお願いいたします。
 
【寺田理事(JAXA)】 気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)のプロジェクト終了審査の結果についてということで、「しきさい」GCOM-Cは、2017年12月23日に打ち上げまして、2022年の12月23日に設計寿命であります5年間の定常運用を達成いたしました。5年間の定常運用を終了したということによりまして、JAXAにおいてプロジェクトの終了審査を行っています。
 この報告は、宇宙開発利用部会において、事後評価を受けるため、JAXAが実施したプロジェクトの評価結果を報告するというものになります。GCOM-Cの目的、目標、開発方針や開発計画につきましては、2008年の12月にプロジェクト移行時になりますけれども、宇宙開発委員会推進部会で事前評価を受けておるということで、次のページに、これまでJAXAにおいて行っておりました、審査会の実績を示しております。以降、プロジェクト終了審査の結果につきまして、GCOM-Cのプロジェクトマネージャ田中より、詳細を報告させていただきます。
 
【田中プロジェクトマネージャ(JAXA)】 JAXAのGCOMプロジェクトチーム、プロジェクトマネージャを務めております、田中でございます。よろしくお願いいたします。次のページをお願いいたします。
 今、寺田の方から説明があったように、GCOM-Cプロジェクト終了審査はJAXA内で受けましたので、これまでの結果についてご説明いたします。次のページをお願いします。
 これは、GCOM-Cの外観です。GCOMという衛星は、後ほどご説明しますけども、GCOM-Wという、2012年に上げた衛星と、GCOM-Cという二つの衛星がございます。GCOM-Wは、電波を観測する衛星で、7周波を観測しております。それに対して、今回のGCOM-Cは、17波長を観測している衛星です。
 GCOMは、基本的に電波と光でミッション部は違いますけども、衛星バスについては、70%以上共通化して信頼性を上げようと、そういうプロジェクトでございます。次のページをお願いします。
 搭載されている光学センサ、多波長光学放射計、セカンドジェネレーショングローバルイメージャーという風に呼んでおりますけども、人間の目よりは、遥かに広い波長帯、具体的には380nmから、赤外域の12μmまでの多数のチャンネル、19chを使って、広域を連続で高分解能、高精度の分光観測をするミッションでございます。
 同種の衛星は欧米にもございますけども、欧米よりも高い分解能とノイズ性能を有しているということで、下の左側に気象庁のひまわりのケース、中央がGCOM-Cのケース、右側がアメリカのVIIRSのケースで、GCOM-Cの方が、一番滑らかに細かく見えていることがお分かりいただけると思います。こういうことで、GCOM-Cでは、主に沿岸に寄った観測を中心に、従来されていない研究をしようと、そういうプロジェクトでございます。次のページをお願いいたします。
 GCOM-Cのプロジェクトは、先ほどありましたけども、2007年にJAXA内で発足しまして、2008年に文部科学省の宇宙開発委員会において審議いただいてスタートしてございます。プロジェクトが発足してから、大体10年が経った、2017年の12月の23日に種子島で打ち上げまして、昨年の12月23日で5年間のミッションを達成いたしました。それをもちまして、JAXA内の審査がありまして、最終的には、先月7月18日にJAXAのプロジェクト終了審査を受けていると、そういう状況にございます。次のページをお願いいたします。
 GCOMというのは、先ほどご説明しましたGCOM-WとGCOM-Cという二つの衛星がございます。そのうちGCOM-Cは光学センサということで、主に放射収支とか、炭素循環といった、気候関係のパラメータを観測します。それを右側にございますモデル機関と連携いたしまして、下にあるようなデータ利用の分野ですとか、地球環境の監視分野とか、政策立案の分野に貢献しようと、こういうことを長期継続観測しようということで、概ね10年から15年くらい、太陽周期に近い周期で観測したいということで始まったプログラムでございます。次のページをお願いいたします。
 JAXAでは、GCOM-Cのプロジェクト立ち上げの時に、サクセスクライテリアを設定してございます。縦に、プロダクト生成に関するクライテリアと、それからデータ提供に関するクライテリアがございまして、それぞれミニマムサクセス、フルサクセス、エクストラサクセスを定義してございます。いずれも達成してございます。次のページをお願いいたします。
 この中でも、サクセスクライテリアの中でも、プロダクトの精度に関する状況をこのページで示しております。GCOM-Cは29個のプロダクトがございます。縦の上から2018年12月、打ち上げから1年経った段階で、リリース基準精度という精度を達成しました。これは、精度は高ければ高いほど良いというところはある一方で、精度はともかく、早くデータを出してほしいというユーザーの方々もいらっしゃいますので、打ち上げて1年間経ったところで、最低限の精度ということで、ミニマムのリリース精度を達成しまして、29個のプロダクトを公開開始してございます。
 その後、2018年、2020年、2021年とプロダクトの精度を上げていって、全ての29個のプロダクトが標準的な精度であるフルサクセスレベルまで到達してございます。
 さらには、最終的には、昨年の12月の段階では、それより高い精度のエクストラサクセスのレベルの精度まで到達していると、こういうデータを公開してございます。次のページをお願いいたします。
 こういった、29個のプロダクト、予定通り打ち上げ1年後に公開を開始して、定常終了よりも早く、1年前まで比較的順調に公開していったこともありまして、様々なユーザーの方々にご利用いただいている状況にございます。字が小さくて恐縮ですけども、上側に、後ほどご説明します、文部科学省関係のArCS IIというプロジェクトですとか、SENTANという気候変動に関するプロジェクトとか、もしくは上にございます、JAFICさん、漁業情報サービスセンターの漁業の関係のところとか、ちょっと細かくは省略いたしますけれども、様々な政府系の機関、それから14の都道府県においても、「しきさい」データの公開・利用をしていただいていると、そういう状況が現状でも継続しているというものでございます。次のページをお願いいたします。
 「しきさい」衛星は、光学観測ということで、従来のGCOM-Wの電波観測に比べると、分解能が随分上がるということもあって、今JAXAの共通のデータ提供システム、G-Portalと呼んでいますけども、その中でも、一番データが提供されているのがGCOM-Cになっています。ここに縦棒のグラフがありますけども、赤丸で括ってある真ん中辺が、GCOM-Cのデータ提供実績でございます。ちょっと注意いただきたいのは、これはファイル数、所謂データ数になっていまして、実際には、ファイルのサイズがGCOM-W辺りと比べると3倍くらい大きいので、ファイルサイズにすると、これよりかなり突き抜けているようなサイズになって、非常に多くのユーザーに使われているということがご理解いただけると思ってございます。次のページをお願いいたします。
 GCOM-C、これらのデータを使って、サイエンスに役立てていただきたいということでやっていますけども、光学観測というのが様々なものが見えますので、一番左側の列にあります陸域ですとか、大気、もしくは海洋、もしくは雪氷で、様々な物理量を観測して、それを研究に使っていただいています。最終的には、一番右の欄に書いてありますけども、様々な現業の方とか、政策の方に活用いただきたいということで、詳細は読み上げませんけども、それぞれ色々なプログラムに従って、フェーズを分けて使っていただいている状況にあります。そういうことを通じて、このプロダクトが社会に対する政策とか現業利用に貢献したいということで、GCOM-Cのサイエンス利用を続けていると、そういう状態にございます。次のページをお願いします。
 このGCOM-C打ち上げ、2017年の12月に打ち上げましたけれども、打ち上げたことによって、何が大きく変わったかということを3点まとめてみました。まず、分解能について、先ほどご説明いたしましたけれども、GCOM-Cの分解能は250mということで、同種の広域観測衛星に対しては、4倍くらいの精度、分解能がございます。その結果、左下の方にひまわりとの比較を示しており、これは同じ日の関東の南の海洋の状況ですけども、かなり沿岸に寄ったところの細かい海洋の活動が見えるようになったということで、従来の沖合中心のサイエンスから、沿岸の非常に複雑なサイエンスに対して、様々な活動が始まろうとしていると。それが打ち上げの効果の一つ目でございます。
 それから、二つ目は、今まで海外の衛星しかなかったものですから、どちらかというと、個人ベースの研究でしたけども、今回、GCOM-Cを打ち上げまして5年経ちましたので、様々な人が協力いただけるようになりまして、日本の中で、研究者で連携して、気候変動問題に対して貢献しようと、そういう研究を進めているような体制ができているというのが2点目です。これは、2点目の例として、真ん中の下に絵があります気候のモデル、これは東京大学の例ですけども、右側が気候モデルで計算した、雲の粒子の成長の過程を示したグラフですけども、実際に左側にあります、GCOM-C「しきさい」を使ったSGLI観測と比較しますと、雲の粒径の成長の度合いが少しモデルと合っていないと。すなわち、モデルに対して、こういうところを改善したいということを研究いただいているような例になります。もしくは、最近そういったモデルが、現業的な監視に使われることが多くなってきていまして、右下の絵は、これは環境計算の研究者の方に評価いただいた結果ですけども、モデルをGCOM-Cのデータと同化することによって、モデルの精度が3倍程度向上していると、そういったことを確認しています。そういった様々なサイエンスがGCOM-Cのデータを使って、今、実際に行われているところにございます。次のページをお願いいたします。
 そういったサイエンスのうち、比較的大きなプログラムとしまして、二つをこちらのページで示しています。いずれも文部科学省のプロジェクトで、SENTANという上のプロジェクト。これは気候変動、IPCCなんかの気候モデルの予測に関するプロジェクトで、その中でもGCOM-Cが見える火災ですね。火災が実際にどこで発生していて、どう燃えていて、それからそれが結果としてアルベドとしてどう変化しているということをGCOM-Cで観測いたしまして、それをもとに、右側にあるように今後、気候モデルの中の林野火災に関する様々なプロセスをモデル化しようという協力を、これは具体的にはJAMSTECと議論をして研究を進めているところでございます。もしくは下側は、ArCS IIプロジェクトという、北極圏関係のプロジェクトですけども、比較的長い間、北極圏関係のプロジェクトが続いていますけども、ここに本格的にGCOM-Cのデータを投入いたしまして、右側にありますように、グリーンランドの融解状況みたいなことを、今研究が進んでいる状況にございます。次のページをお願いいたします。
 ここからは、どちらかというと、実利用に関するところをご説明いたします。右側のグラフは、これは漁業情報サービスセンター、JAFICからいただいた例にございますけども、上の方、北の方から、丁度冷たい親潮の流れがあって、そこにサンマの漁場があると。もしくは、下の方から上がってくる黒潮の温かい水に対して、カツオの漁場があると。こういった漁場は、大体温度が変わるところに対して、赤い三角とか青い丸で示しています漁場がございます。そういったところを把握するのに、左側にあるようなGCOM-Cのデータで、Ver.1からVer.3とバージョンアップしていって、精度を上げていって、欠損を減らし、もしくは、左下にございます現場観測データと比較して、従来のセンサよりも高い精度で、現場観測データとマッチする信頼度の高いデータを提供すると。そういうことが、漁場選択の効率化に繋がっているということでご利用いただいている例でございます。次のページをお願いいたします。
 
【村山部会長】 すみません、ちょっと時間が押してきていますので、スピードアップをお願いいたします。申し訳ありません。すみません。
 
【田中プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい、申し訳ありません。
 こちらのページは、火山の例ですので、見ておいていただければと思います。次のページをお願いいたします。
 そういう状態で、衛星自身は、これまで5年間、トピック的なものをいくつか表にまとめました。非常に低い頻度で放射線と思われる影響が出ていますけども、それは全て適切に処置できているので、今後観測は継続に問題がない状態になってございます。燃料も、あと11.5年分くらい残っていますので、十分観測が継続できると、そういう状態に衛星はございます。次のページをお願いします。
 そういったことを受けまして、7月にJAXAのプロジェクト終了審査を受けまして、GCOM-Cのプロジェクトとしては終了することが妥当であり、アウトカムも出ていますので、今後気候変動に重要なデータを取り続けることが適当であるということをJAXAの中で結論を得ているという状況にございます。次のページをお願いいたします。
 以上のように、GCOM-Cは、5年間の定常観測を達成しまして、特段の問題はございません。様々なユーザーの方々に使っていただいております。今週末に、JAXAとしては、GCOMプロジェクトチームを解散して、新しいチーム、「しきさい後期利用チーム」を発足させまして、引き続き同様なサービスを提供していこうという風に考えてございます。
 駆け足になりましたけども、私の説明を終わります。よろしくお願いします。
 
【村山部会長】 どうも急がしてしまいまして申し訳ありませんでした。ありがとうございます。
 ただいまの説明について、ご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。鈴木委員、お願いいたします。
 
【鈴木委員】 鈴木でございます。
 補足の資料も見させていただいて、やはり海外のものとも競争力があるようなデータが出し続けられるということで、後期のプロジェクトとして、新しくまた9月からスタートされるということも合理的かなと思います。それに関して、JAXAの支援を得て、というところの支援の内容と、あとは後期のプロジェクトとしての期間みたいな部分のイメージとかが、現時点でありましたら、参考までに教えていただければと思います。
 
【田中プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
 JAXAの支援という意味ですと、基本的にJAXA自身は、観測データを今まで通り、精度を落とすことなく提供していって、より外部の方に使われるプロダクトに改良していくと、そういう活動をしていく予定です。それに対して、SENTANプログラムとか、ArCS IIプログラムとか、こういった外部プロジェクトの方は、そちらの枠組みに動いています。そういうかたちで相乗効果を狙っていきたいようなことを考えているところです。
 期間については、衛星は特に問題はないので、ずっと継続していきたいというのが本音でございますけども、基本的には国の予算ですので、1年、1年、状態が変化していないことを確認して、次の年の計画を明確にして、観測を継続するということを続けていくと。そういったプロセスを考えてございます。
 
【鈴木委員】 最大、今だと11年以上の燃料が残っているということなので、11年使えるようだったら、みたいなことでしょうか。
 
【田中プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい、その通りです。
 
【鈴木委員】 よろしいかなと思います。ありがとうございます。
 
【村山部会長】 他の方はいかがでしょうか。ご質問はいかがでしょうか。いいでしょうか。秋山委員から手が挙がっております。秋山委員、お願いいたします。
 
【秋山委員】 秋山です。よろしくお願いいたします。
 手短にと言いますか、GCOM-Cに関しては、元々3機の製造と打ち上げという構想もあったかと思いますけれども、その点については、後継機といいますか、同型を、欧州の例えば、Sentinel-3のように、次々と打ち上げて、継続的に観測するというような点については、いかがでしょうか。何か、もし進展というか、何か考えられていることがありましたら、教えていただければと思います。
 
【田中プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
 先ほどご説明しましたように、GCOM-Cは非常に良い状態ですので、基本的には、この衛星を継続して観測したいという風に考えてございます。その中で、先ほどからご説明しました、様々なプログラムとか、利用者の方がいらっしゃいますので、その方々とGCOM-Cの次については、今後議論をしていこうという状態にございます。具体的に何かここで説明するようなところはございません。
 
【秋山委員】 分かりました。ご説明ありがとうございました。
 
【村山部会長】 他の委員の方、いいでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。
 それでは、宇宙開発利用部会として、資料78-3について、特に19ページに記載された、JAXAの審査結果に同意するものとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。特にご異論もなかったようですので、これを正式に決定としたいと思います。どうもありがとうございました。
 
【田中プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 では、ここから先は非公開になりますので、一旦ここまでの範囲で事務連絡があればお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 本日はありがとうございました。
 会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は、非公開資料を除き公開となります。公開資料につきましては、既に文科省ホームページに掲載させていただいております。また議事録につきましても、非公開部分を除き、委員の皆様にご確認いただいた後、文科省ホームページに掲載させていただきますので、よろしくお願いします。
 尚、次回の部会は、秋に開催する方向で今後調整予定です。開催時期が見えてきましたら、委員の皆様には、日程調整のご連絡をいたします。事務連絡は以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 それでは、一般の方はここまでとなります。ここまでのご傍聴、誠にありがとうございました。

―― 了 ――

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