宇宙開発利用部会(第77回) 議事録

1.日時

令和5年7月24日(月曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 降水レーダ衛星(PMM)プロジェクト移行審査の結果について
  2. 先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)プロジェクト終了審査の結果について
  3. 次期光学ミッションの方向性について
  4. スターダストプログラム「衛星のデジタル化に向けた革新的FPGAの研究開発」成果報告
  5. その他

4.出席者

委員

部会長 村山 裕三
部会長代理 田中 明子
臨時委員 秋山 文野
臨時委員 金井 宣茂
臨時委員 木村 真一
臨時委員 芝井 広
臨時委員 白井 恭一
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 高橋 徳行
臨時委員 鶴岡 路人
臨時委員 松岡 彩子
臨時委員 村松 加奈子
臨時委員 山崎 直子
臨時委員 米澤 千夏

文部科学省

大臣官房審議官 永井 雅規
研究開発局宇宙開発利用課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 上田 尚之
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 理事 寺田 弘慈
 理事 佐野 久
 第一宇宙技術部門 降水レーダ衛星プロジェクト プロジェクトマネージャ 古川 欣司
 第一宇宙技術部門 衛星システム開発統括 匂坂 雅一
 第一宇宙技術部門 地球観測統括 平林 毅
 研究開発部門 第一研究ユニット技術領域主幹 新藤 浩之

5.議事録

【村山部会長】 定刻になりましたので、第77回の宇宙開発利用部会を開催いたします。
 今回も前回同様、オンラインでの開催となっております。委員の皆様には、ご多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 まずは事務局から、本日の会議に関する事務連絡をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 本日もよろしくお願いいたします。宇宙開発利用課の竹上でございます。
 本日、宇宙開発利用部会16名の委員のうち、途中参加の方も含めまして、14名にご出席いただく予定にしており、定足数要件を満たしておりますことをご報告いたします。
 次に、本日の資料ですが、議事次第の通りです。
 オンライン状況について、音声が繋がらないなどの問題がございましたら、事務局へメール、電話でご連絡ください。事務局からの連絡は以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 それでは、本日の議題ですが、3件の審議事項、1件の報告事項に加え、その他として、いくつかの案件について事務局より報告いただくことになっています。
 尚、議題5のその他の案件の一部については、検討中の事業に関する内容であり、当部会運営規則第3条3号の定めにより、非公開とさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、早速議題の方に移りたいと思います。最初の議題ですけれども、降水レーダ衛星(PMM)プロジェクト移行審査の結果についてです。JAXAから審査結果をご報告いただいた後、委員の皆様には、プロジェクト着手の妥当性などについてご審議いただきたいと思います。
 それでは、JAXA第一宇宙技術部門の寺田理事、古川プロジェクトマネージャ、ご説明をお願いいたします。
 
【寺田理事(JAXA)】 JAXA第一宇宙技術部門長の寺田でございます。これから降水レーダ衛星(PMM)プロジェクト移行審査の結果について報告いたします。
 本報告は、宇宙開発利用部会において、実施フェーズに移行に際しまして、事前評価を行うにあたりまして、目的、目標、開発方針、開発計画、成果等についての調査審議をするものとして、JAXAが自ら実施しました、研究開発プロジェクトの評価結果について、その主たる項目として、プロジェクトの目標、成功基準の妥当性、実施体制、資金計画スケジュールの妥当性、リスク識別と、その対応策の妥当性についての結果を報告するものです。
 それでは、降水レーダ衛星プロジェクトマネージャ古川より、詳細を報告させていただきます。
 
【古川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 それでは、降水レーダ衛星プロジェクトマネージャ古川の方から報告させていただきます。
 降水レーダ衛星、英語名称はPrecipitation Measuring Mission、略称PMMと言いますが、プロジェクト移行審査結果について報告いたします。次のページをお願いいたします。
 こちらが、今理事の方からご説明ありました、事前評価の内容になります。一番下に書いてありますけれども、PMMのプロジェクト移行審査につきましては、宇宙基本計画の工程表に記載されております通り、米国NASAが計画中のAOS(Atmosphere Observing System)への参画を前提として実施されました。次お願いいたします。
 まず目次になりますけれども、はじめにプロジェクトの目標の設定、それから、PMMの概要、PMMの開発計画、最後にプロジェクト移行審査のまとめということで報告いたします。青字で示してあるところが、本利用部会での審査項目に該当するところになります。次のページをお願いいたします。
 JAXAは、1997年に打ち上げました世界初の衛星搭載レーダ、TRMM/PR、2014年に打ち上げました、全球降水観測計画主衛星搭載二周波降水レーダ、GPM/DPRと、衛星からの降水レーダ観測をリードしてまいりました。
 この降水レーダ衛星、PMMは、それらを継承発展させたミッションになります。その目的はこちらに記載してあります通り、Ku帯ドップラー降水レーダを搭載する衛星ミッションの実現により、気候変動による世界の雨雪の時空間変化の把握を可能にすることで、雲降水構成システムを解明し、頻発・激甚化する水災害の人間社会への影響を低減すると設定しました。
 このKu帯というのは、衛星からの降水観測に適した周波数、13GHz帯になるのですけれども、これはTRMMのPR、GPM/DPRでも使用した周波数帯になります。
 また今回は、降水粒子の上下方向の移動速度、ドップラー速度を観測するという機能を追加することとしておりまして、本機能につきましては、雲については、JAXAが現在開発中のEarthCARE衛星搭載雲プロファイリングレーダ、CPRにて実現する予定となっておりますが、降水については、このPMMが世界初となります。
 PMMの観測対象である降水の重要性ですが、左下に示しております図が1901年から2019年の世界の降水量の長期変化を示しております。茶色は減少傾向で、青色が増加傾向を示しており、気候変動による降水量の長期変化傾向は地域によって異なっており、洪水・干ばつ両方とも頻度が増えることが示唆されております。長期的な全地球規模での降水監視が必要とされております。
 全地球の降水観測の手段としまして、JAXAでは、GPM/DPRのデータと世界各国の気象衛星や地球観測衛星のデータを活用しまして、右下の図に示す、衛星全球降水マップ(GSMaP)というものを提供しております。
 こちらはインド太平洋地域での水災害監視や農業気象・水資源管理で広く実利用が広がっております。本ミッションでは、このGSMaPの性能向上も行い、上記のミッション目的の達成を目指します。次のページをお願いします。
 本ミッションは、米国のNASAが計画中のAOS参画ということを前提としております。NASAのAOSミッションへの参画の意義ですけれども、国際協力によって、降水観測に留まらない包括的な大気観測を通じて、気象・気候モデル改良に貢献することにより、気候変動政策に係る宇宙分野での日米協力のシンボルとなることを目指します。
 NASAのAOSミッションの目的は以下のようにされております。一点目は、「世界で初めてエアロゾル、雲、降水、待機の鉛直流、および放射を統合的に、かつ時間空間的に同時観測を行う」。
 二つ目は、「雲解像スケールにおけるプロセスの不確定性を低減し、気象予測および気候予測を改善する」。
 三つ目として、「傾斜軌道と極軌道に投入する衛星コンステレーションにより、数時間から数十年におけるタイムスケールでの政策決定に資する」、とされております。
 左下の図に、NASAのAOSの観測対象を記載しております。赤枠につきましては、JAXAの降水レーダが直接観測貢献できるもの。青枠は間接的に貢献できるものを示しております。
 右側の図は、現状NASAで検討中の観測アーキテクチャを示しておりまして、傾斜軌道衛星2機と極軌道衛星2機の衛星コンステレーションということを検討しています。打ち上げは、傾斜軌道、極軌道ともNASAが実施するということにしております。
 JAXAのPMM衛星は、傾斜軌道内で唯一のレーダとなっておりまして、NASAのミッション達成にも必要不可欠であるということから、アーキテクチャの一部として確定しております。次のページをお願いします。
 このミッション目的を達成するために、NASAのAOSミッションに参画を前提として、ミッション目標を以下のように設定しました。
 「我が国が強みを有する走査型降水レーダ観測技術を発展させたセンサを搭載する衛星ミッションを実現し、高度化した三次元降水情報と、品質向上した衛星全球降水マップ(GSMaP)を用いて、AOS他衛衛星の観測や数値モデル等との連携による以下を行う」。
 一つ目は「全球水循環諸量の精緻化とそれによる雲降水プロセスの解明」。2点目は、「気象・防災情報の高度化への貢献」。3点目は「地球規模気候・水課題に資する長期の水資源基盤情報の提供」、という風にしております。
 これらのミッション目標の設定にあたりましては、以下に示しております、コミュニティからのユーザニーズを取り込んでおります。
 それから、政策上の位置づけとしましては、宇宙基本計画の令和5年6月13日の基本計画において、降水レーダ衛星については着実に開発を進めるとされております。次のページをお願いいたします。
 これは目標設定にあたりまして、ユーザニーズの取り組み状況ですけれども、まず一つ目は、国内行政機関・研究機関からの降水観測の継続と発展へのニーズとしまして、気象庁や国立研究開発法人土木研究所のユネスコ後援機関水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)、それから一般社団法人国際建設技術協会(IDI)、農林水産省からのユーザニーズとしまして、降水レーダによる降水観測情報やGSMaPの高度化および継続的な取得による長期化というものが望まれております。
 それから、2点目ですけれども、国際機関・海外ユーザ機関からの降水観測の継続と発展へのニーズとしましては、気象衛星運用機関や宇宙機関で構成される国際機関である気象衛星調整会議(CGMS)と申しますが、こちらからは、降水レーダデータの継続性が将来的な優先課題となっておりまして、構成員である各国の現業気象機関から、TRMM、GPMに続く降水レーダの打ち上げが望まれております。
 さらには、民間事業者や新規利用分野におけるユーザからのニーズとしましては、JAXAの地球観測科学アドバイザリー委員会、降水観測ミッション分科会というところにおいて、民間事業者の委員からの意見も取り込んで、ミッション要求を設定しました。次のページをお願いいたします。
 次は、ミッション達成後の具体的な姿をBefore/Afterで示しております。まず一つ目は、水災害・水資源管理や雪害対策の意思決定に必要な気象・防災情報の提供につながります。
 まず、現状ですけれども、左側のBeforeのところに示してありますように、GSMaPというものは、降水推定が上空の降雪量のアルゴリズムを使用しているということで、GSMaPで基準としていますGPM/DPRが捉えられる降雪量は、総降雪量の5割程度となっています。その結果、現在運用中のGSMaPの精度は大規模河川流域、2万平方㎢、利根川相当になりますけれども、日雨量の推定誤差が40%となっています。空間分解能のイメージは、左下に示す図のようになっております。
 本ミッションで目指す姿としまして、真ん中に記載しておりますけれども、感度向上によって、捕捉できる降雪量を9割以上に改善するとともに、ドップラー観測による雨雪粒子判別精度も改善することによって、上空の降雪量を正確に捉え、GSMaPの雨雪を判別するためのアルゴリズムを改良いたします。
 さらにAOSの参加によって、付加価値として得られたセンサによる、様々なタイプの雪の観測情報を用いて、GSMaPの性能を向上させ、中規模河川流域、こちら2500㎢辺りで、大規模河川流域の約8分の1ということになりまして、日本では、鬼怒川から筑後川相当になります。そこにおきまして、日雨量精度を40%、またはそれ以下に低減すると。空間分解能のイメージは、右下の図のようになります。
 これの結果、Afterに示しますように、インド太平洋地域を中心としたGSMaPユーザは、より細かな流域・地域スケールで水災害監視や水資源管理を実施できるようになります。また。GSMaPの降雪情報等を活用して、国内外の雪害による物流停滞や農林水産物の収穫減・施設被害などのリスクを軽減できます。次のページをお願いします。
 二つ目は、数値予報モデルの改良によって、数日前からの大規模水災害に備えた広域避難ができるようになります。また、洪水や干ばつの頻発・激甚化を正確に捉え、それらへの適用が可能となります。
 現状はBeforeに示しておりますように、気象予報については、数値モデルでの降水の表現は不確実性が大きく、複数の降水システムによって構成される集中豪雨や低気圧・台風の表現には課題があるとされています。
 また、気候変動適応策におきましては、「将来の降水量は地域によって差が激しくなる」と結論付けられておりまして、食料安全保障の確保のための地域毎の正確な生産状況の予測が求められております。
 さらに、本ミッションの目指す姿としましては、ドップラー観測によって、数値モデル内で仮定している降水粒子の落下速度や対流域の鉛直流を直接観測によって、降水の生成、発達、衰退を気象・気候モデル内で正確に再現し、さらには、AOS参加による付加価値として、降水だけでなく、その元となるエアロゾル・雲も含めた生成発達のモデル内の表現も改良する。
 防災の観点では、重要な豪雨に関わる降水システム予測の高精度化と洪水干ばつ観測などの極端現象の予測精度を向上いたします。
 その結果、Afterに示しますように、気象予報につきましては、土砂災害・風災害に関連した気象予報を改善して、発災の3~2日後に避難開始が必要とされる、自治体の大規模避難に必要な気象予測情報を提供しまして、高齢者・障碍者の避難にかかる十分な時間の確保や、交通機関の計画運休に貢献できるようになります。
 それから、気候変動適応策におきましては、海外主要穀物生産地帯における穀物・農産物の生産状況をより細かなスケールで把握できるようになります。次のページをお願いします。
 引き続きまして、プロジェクトの目標になりますけれども、降水レーダ衛星プロジェクトでは、降水レーダ衛星システムおよび地上システムを含む総合システムを開発・運用し、ミッション目標の達成を目指します。実現にあたっては、米国のAOSミッションへの参画を前提といたします。
 プロジェクトが終了するまでに、プロジェクトのスコープの範囲内で実現すべき目標としましては、アウトプット目標、成功基準、この後ご説明いたしますが、を設定いたします。
 さらには、プロジェクト終了後も含め、外部パートナーの協力によって、実現を目指すアウトカム目標も設定いたします。次をお願いいたします。
 こちらはアウトプット目標になります。これらのプロジェクト目標を具体化したものでありまして、まず一つ目としましては、技術開発の目標として、降水タイプの分類や雨雪判別精度の向上による降水量推定の精緻化や、気象・気候予測精度の向上のために必要となるドップラー観測技術の実証、観測情報を得ること等を定めております。
 その他、プロダクト生成、データ提供についても、ここに記載してある目標を定めております。次をお願いします。
 次は成功基準になりますが、こちらは、各アウトプット目標に対する成功基準を以下の表にまとめました。ミニマムサクセス、フルサクセス、エクストラサクセスを設定いたしまして、それぞれ評価を実施する時期を明確にしました。
 例えば、技術開発に関するミニマムサクセス評価としましては、左上の方にありますけれども、こちらは、初期運用の結果、Ku帯降水レーダの高感度化およびドップラー速度計測技術を実証し、観測情報の取得に必要なセンサ性能を達成するということで、評価の実施時期は、定常運用移行時、というように設定しております。以下、お読み取りいただければと思います。次をお願いします。
 次は、アウトカム目標になります。こちらにつきましては、1.2項に示しましたミッション目標の項目毎にアウトカム目標を設定しております。以下の三つの(1),(2),(3)ということになりますけれども、例えば、2番目の気象・防災の高度化への貢献につきましては、高感度化した降水レーダ情報および降水ドップラーレーダの速度情報をデータ同化手法の高度化および数値モデルの改良に利用することで、豪雨・台風等、土砂災害・風災害に関連した気象予報の精度向上につなげるとしておりまして、こちらのパートナー機関は気象庁となります。次のページをお願いします。
 次はPMMの概要ですけれども、これは左の図ですけども、衛星システムの外観図を示しております。衛星の上部に搭載されております、二つの黒い箱がKu帯ドップラー降水レーダになります。
 またPMMには、フランスの国立宇宙研究センターから提供されるマイクロ波放射計を同時搭載するということになっておりますが、こちらは衛星の下の方に付いている小箱がそれになります。
 右の表は、衛星のシステムの主要諸元を示しており、質量は最大2700kgの衛星になります。衛星バスは軌道上で運用中のJAXAの「しずく」や「しきさい」で実績のあるバスを活用しております。また打ち上げロケットはAOSに参画することによって、NASAが分担することとしております。次をお願いします。
 こちらは、Ku帯ドップラー降水レーダの概要になります。左上の図は、衛星搭載レーダによる台風周辺の降水の立体構造の観測図、例になります。赤いほど強い雨、青いほど弱い雨を示しておりまして、このように降水レーダは、降水の三次元構造を観測することができます。
 降水の鉛直分布のデータを利用することによって、マイクロ波放射計の地表面降水量の推定精度を向上いたします。
 さらにKuDPRでは、GPM/DPRからの性能向上に加え、新たに降水粒子の落下速度を計測するということで、雨雪の判別も可能になります。
 右上の図は、現在JAXAが提供していますGSMaPになりますけれども、その作成においては、降水レーダに加えて、世界各機関が保有する衛星に搭載されたマイクロ波放射計データのデータが必要になります。
 しかし、マイクロ波放射計というものは、観測視野内の視線方向の積算の降水量しか得られないということで、右下の図に示すように、雨粒が落ちる間に強くなる場合と、逆に雨粒が落ちる間に雨が弱まる場合という、二つのケースを区別することができません。そのため、地表でどれくらい雨が降っているかを推定するためには、降水レーダによる鉛直情報が必要不可欠になっております。次のページをお願いします。
 こちらは雲・降水レーダのベンチマークになっておりますけれども、縦軸は感度、横軸は観測幅を示しております。上の方には雲レーダ、下の方に降水レーダを合わせて記載しております。KuDPRはTRMM/PR、GPM/DPRの後継観測として、世界最高性能の広域観測を行うとともに、降水レーダとして、世界で初めての降水ドップラー、衛星直下ですけれども、行うこととしております。次のページをお願いします。

【村山部会長】  ちょっと時間が超えてきていますので、ちょっとスピードアップをお願いします。すみません。

【古川プロジェクトマネージャ(JAXA)】  はい。開発計画になります。こちらは、実施体制になりますけれども、次は資金計画になりまして、こちらは総開発費としては、現在394億円を想定しております。それからスケジュール見通しですけれども、現在、今年度から基本設計に着手いたしまして、2028年末の打ち上げを想定しております。次お願いします。
 あとリスクと対応策ということで、こちらはリスク項目Aに相当するのは1件認識しておりまして、下に書いてあるようなリスクがありまして、これにつきましては、処置方針・処置状況が右下に記載されているように決まっております。今後もウォッチしていくことになると思います。最後のページをお願いします。
 プロジェクト移行審査のまとめになりますけれども、こちら、JAXAにおいて、プロジェクト移行審査を実施しまして、プロジェクト実行フェーズへの移行可否について確認しました。審査項目は、ここに示す内容になります。審査結果を一番下に示しておりますが、上記の審査項目に沿って審査した結果、要処置事項を確実に処置することを条件に、プロジェクト実行段階への移行は妥当と判断されました。ご説明は以上になります。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。急がせてしまって申し訳ありませんでした。
 それでは、ただいまのご説明について、ご意見、ご質問おありでしょうか。いつも通り挙手をいただいて、ご発言いただくことになります。よろしくお願いします。いかがでしょう。鈴木委員から手が挙がっております。よろしくお願いします。
 
【鈴木委員】 鈴木健吾でございます。ありがとうございます。
 ページ13のところで、ミッション目標とアウトカム目標で、このアウトカム目標は外部の協力機関が必要だという風に考えられていて、ご説明の中で気象庁というお話があったのと、あとはページ17には、データ利用機関として、気象庁以外の記載もあるのですけれども、国際的なACCPなどに利用してもらうには、海外の機関も必要かなという風に思いますが、データ利用機関として国内だけではなくて、海外の利用機関とのコミュニケーションを取られる予定があるかどうか、教えていただければと思います。
 
【古川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 本ミッションは、NASAのAOSに参画するということを前提としておりますので、利用機関、データ利用につきましては、NASAとも共同して開拓して探していく、利用機関に提供していくということで、まずアメリカの利用機関というのが挙げられると思います。そこから広がって、全世界の気象機関等には、データが活用されていくという風に考えております。
 
【鈴木委員】 分かりました。NASA側に紐づくデータ利用機関があるということなので、そちらとのコミュニケーションの中で、今回のとられるデータはすごく立派なものだと思うので、アウトプットの形も、ぜひ工夫していただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。他の委員の先生方、いかがでしょうか。松岡委員、お願いいたします。
 
【松岡委員】 松岡です。ご説明どうもありがとうございます。
 ちょっと今のご質問にも少し関連するので確認させてください。このミッションは、5ページ目でご説明いただいた通り、AOSミッションへの参画ということに非常に特徴があるというご説明だったと思います。一方で、7ページ以降のご説明ですと、ユーザとして出てくるのが、全て国内機関という風に理解いたしました。ですので、このAOSの枠組みで、ユーザを、さっきのご質問の答えにもありました通り、海外のユーザにも提供し、海外との協力で進めるというものはもちろんあるのですけれども、ミッションの目標としては、今回、JAXAで行うPMM1機で達成可能なものを、この目標、6ページ目、7ページ目、8ページ目、9ページの辺りは書いておられるという、そういう理解でよろしいでしょうか。ちょっと目標が、何があればできる目標として書かれているのかという理解のために、ちょっと確認をさせていただければと思います。よろしくお願いします。
 
【古川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 最終的には、サクセスクライテリアは12ページに示したようになりますけれども、ミニマムサクセス、フルサクセスにつきましてはJAXA単独で実施できるものというものを設定しております。
 ただ、エクストラサクセスのプロジェクト生成に関する評価というところになるのですけれども、こちらにつきましては、AOSミッションとのシナジーということで、AOSのセンサも必要になってくるということになります。
 それから、ちょっと説明が漏れていたかもしれませんが、22ページ目の補足の1を出していただきたいのですが。こちら、GSMaPというのは、現在JAXAでも既に提供しているプロダクトになりますが、本ミッションではこのGSMaPの精度向上というものも目標の一つに掲げております。このGSMaPにつきましては、現在でも色々な各国で使われている気象分野では、アジア太平洋地域で非常によく使われていることもありますし、それから、防災での海外の国際河川の洪水予測にも用いられている。さらには、海外の食糧需給レポート等で用いられておりますので、GSMaP自体を精度向上させていくということは、現在JAXAで行っている、このような利用されているところのユーザに対しても、そのデータは活かされていくということで、世界的にも重要なミッションだという風にも考えております。
 
【松岡委員】 ご説明どうもありがとうございました。
 サクセスクライテリアのレベルによって、提供ユーザがちょっと変わっているということで理解いたしました。ありがとうございます。
 
【村山部会長】 続きまして、秋山委員、お願いいたします。
 
【秋山委員】 秋山です。よろしくお願いいたします。
 8ページの資料の、今までDPRで降雪量が5割程度しか捉えられていなくて、それを9割以上に改善するというご説明があったのですけれども、GPM/DPRまでの課題として、弱い雨雪がなかなか上手く捉えられなかったという課題があったという、資料を前に、以前に拝見しておりますけれども、すみません、そこを少し詳しく、といいますか、弱い、それから強い雪というのは、どういったもので、9割ということですけれども、どんな風に捉えられるようになるのかというところをちょっと教えていただけますでしょうか。
 
【古川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 こちらにつきましては、こちらに記載してある感度向上ということで、新しく作りますKuDPRというレーダにつきましては、DPRの時に加えて、感度0.2mm/hくらいから、0.1mm/h以下くらいまでを目指して観測できるようにということを今開発しておりまして、その感度を向上させることによって、弱い雪でも観測が可能になるという風になっております。
 
【秋山委員】 すみません、ちょっと弱い雪というのは、すみません、感覚的な表現になってしまうかもしれないのですが、どのくらい…例えば、1時間に何cm程度とか、そういう表現は可能でしょうか。
 
【古川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 降水の単位で言って、降水強度に直しますと、今までは0.2mm/h程度だったのですけれども、それが0.1mm/hですね。大体2倍くらいという精度で観測できるようになります。
 
【秋山委員】 分かりました。どうもありがとうございました。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。いいでしょうか。ご質問、ご審議どうもありがとうございました。宇宙開発部会といたしましては、資料77-1について、特に20ページに記載された、JAXAの審査結果の通り、プロジェクトに着手することを認めるということでいいでしょうか。特に反対意見はなかったと思うのですが、これでいいでしょうか。
 ご異論がないようですので、決定とさせていただきます。ありがとうございました。
 それでは、次の議題に移らせていただきます。二つ目の議題は、先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)プロジェクト終了審査の結果についてです。H3ロケット試験機1号機の打ち上げ失敗により、軌道投入されずに失われてしまった「だいち3号」(ALOS-3)ですが、打ち上げに至る開発および実機製造の過程で得られた成果などについて、プロジェクトの観点からJAXAにて評価が行われていますので、その結果についてご報告いただいた後、委員の皆様には、評価の妥当性などについて、ご審議いただきたいと思います。
 それでは、再びJAXA第一宇宙技術部門の寺田理事および匂坂統括、資料のご説明をお願いいたします。
 
【寺田理事(JAXA)】 第一宇宙技術部門長の寺田です。ALOS-3プロジェクト終了審査の結果について、これから報告させていただきます。
 先ほどご紹介ありましたように、ALOS-3はH3ロケット1号機の打ち上げ失敗によって、衛星が喪失したということで、本来のプロジェクトの終了審査であります、軌道上の観測運用やデータ利用の成果については、評価できませんでした。
 しかしながら、開発段階での成果において、衛星センサは、初期の目標とする開発を完了し、また次期光学観測衛星等にも活用できる様々な技術を獲得できたということのみならず、軌道上の観測運用、データの処理、利用拡大のための体制構築など、運用の準備は完了していたと評価しております。それでは、元ALOS-3プロジェクトマネージャ匂坂より、詳細について報告させていただきます。
 
【匂坂統括(JAXA)】 ご紹介に預かりました、匂坂でございます。
 それでは、資料に沿って説明させていただきたいと思います。次のページをお願いします。
 この資料の位置づけについては、寺田の方から紹介させていただきましたので、省略させていただきます。次のページをお願いします。
 報告の内容でございますけど、まず「だいち3号」の概要として、「だいち3号」が目指していたこと、それから、設定した仕様等について簡単に説明させていただきます。
 次にプロジェクト目標の実施状況として、アウトプット目標、それから技術目標に対する、打ち上げまでに取り組んだ内容を説明いたします。通常プロジェクト目標と申しますと、アウトプット目標とアウトカム目標となりますが、衛星喪失によりプロダクト提供できなかったということで、アウトカム創出はできておりません。ただし、プロダクト提供が始まれば、すぐに効果が現れるよう、ユーザとなる方々との取り組みについては、紹介させていただきたいと思います。
 最後にJAXAで行いましたプロジェクト終了審査の結果を報告させていただきたいと思います。次のページをお願いいたします。
 「だいち3号」の概要でございます。「だいち3号」広域高分解能の光学観測を実現し、三つの点に取り組むこととしておりました。
 一つ目は、防災・災害対策等を含む広義の安全保障に貢献すること。二つ目は、地理空間情報の整備・更新に対応すること。そして、様々なユーザニーズへの対応を目指し、民間活力を取り込むという、三つについて取り組んでまいることを目標に想定しておりました。では、まずここのページに出ております、防災・災害対策への対応について説明いたします。
 「だいち3号」は発災時の緊急観測の実施や災害対応プロダクトの提供といった応急対応のみならず、防災サイクルのあらゆる段階に貢献することを目指しておりました。この下のところに防災サイクルを書いてございますが、主に右側の方の発災後の話が大きく出ることがあるのですが、「だいち3号」はベースマップ能力が非常に高いものがございますので、左側の事後対策の方にも活用できると考えておりました。
 右側、さらにJAXAとしましては、いくつか衛星を持っております。光学である故に、高い判読性を持つ「だいち3号」、それから、レーダであるところの特徴を使って、夜間や全天候観測が可能となる「だいち2号」、あるいは将来の「だいち4号」第。
 それから、大量のデータを通信可能とする光データ中継衛星の組み合わせによって、個々が持つプロジェクトで達成するもの以上のものをやりたいという風に考えておりました。
 これらによって、私達の生活に欠かせないものになることを目指しておりました。次のページをお願いいたします。
 二つ目、地理空間情報の整備・更新でございます。地理空間情報、これは我々の生活に欠かせないものになっておりまして、ユーザの方から、より精密で確度が高く、且つ鮮度の高い地理空間情報を適切に整備・更新することが求められている状況でございまして、その基盤となります、電子国土基本図、地図情報レベル25000、この25000というのは、2万5000分の1のことでございますが、の更新に対して、「だいち3号」が、航空機による写真測量を補完するものとして使うことを予定しておりました。そのために、この絵の左下でございますけども、位置決定精度に関しましては、この25000レベルが達成できるような値になるように設定していまいりました。次のページをお願いいたします。
 三つ目、民間事業者の活力活用でございます。研究機関であるJAXAの知見だけでは、データ利用拡大、特にユーザを広める取り組みというものには限界がございました。そこで、商用衛星データ配布事業等の経験を要する民間の力を活用して、ALOS-3のデータ利用拡大をやりたいと考えておりました。そのため、運用およびデータ配布事業に関する事業契約を、民間事業者、今回の場合は株式会社パスコ殿と締結しております。
 事業契約の内容でございますが、JAXAの役割としましては、まず、災害対応の窓口、それからプロダクトをJAXA品質に保つこと、ということが大きなところで、この橙で示しております。パスコ殿の役割としましては、まず、自ら投資して、必要な設備を準備し、衛星を運用し、データ配布事業を行うという、この青の部分の事業をやっているところでございます。
 JAXAは、JAXAミッションに必要なデータをパスコ殿から購入していくというかたちになります。それから、パスコ殿は、自分のところで投資しておりますので、できるだけ回収できるようなかたちというところで、独自のサービスをやるために、観測リソースの一部、自由に使えるようなかたちというので、この紫の下の部分ですけど、観測リソース提供というような枠組みを組んでございます。次のページをお願いいたします。
 次に、衛星システム全体の話になります。衛星システムの基本的な要求は、防災関連府省庁殿で構成される、防災のための地球観測衛星等の利用に関する検討会において、防災利用ニーズが整理されておりまして、それを踏まえた目標設定となっております。
 分解能に関しましては、建物倒壊や、道路通行可否を観測するためには、1m以下の分解能が必要であるということ。それから観測幅は、日本の過去の地震や風水害等の災害規模を考えると50km以上の観測幅が必要だということになっておりまして、このところの広域分解能センサのスペックは、そういうかたちから導いております。
 水色の部分は、初代だいちとの比較になってございますが、分解能等を大きく向上させております。それから、初代との違いとしましては、設計寿命でございます。初代は、設計寿命3年、それから最近の衛星でも5年でございますが、JAXAの衛星で始めて7年を目指したというところが大きいところでございます。
 それから、一番下になりますが、広域高分解能ということで、大量のデータが発生してまいります。そのために、下に伝送するためのシステムも新しく開発したということになります。次のページをお願いいたします。
 開発スケジュールでございます。2016年の5月に利用部会殿で事前評価いただいて、計画を承認いただきました。その後、昨年、失礼、今年度の3月の打ち上げまでやってきたというところでございます。維持設計、ここが非常に長く見えますが、これは2回のH3の打ち上げ延期に伴うものでございます。次のページをお願いいたします。
 では、プロジェクト目標に対する実施状況についてご説明いたします。「だいち3号」のプロジェクト目標に対する成果の総括として、1項で説明しました、三つの取り組みに対するアウトプット目標、および技術達成目標に対する打ち上げまでの取り組み状況をこれから示したいと思います。
 各取り組みについては、システムに対するものと、ユーザに対するものとがございます。はじめに、防災災害対策等を含む広義の安全保障に対するものでございます。アウトプット目標、打ち上げ7年、これは設計目標と同じでございますけど、わたって、平時における観測。それから、国内及び海外の災害発生時における緊急観測を行って、プロダクトを提供するというものをアウトプット目標にしてございました。ここは、平時における観測、それから研究観測においては、さらに詳細がございまして、それは後ほど説明いたします。
 システムに対する取り組み状況としましては、この目標を達成するための総合システムを開発いたしました。
 右側の方でユーザに対する取り組みとしましては、防災でございますので、できるだけ早く使っていただくということが大事という観点で取り組んでまいりまして、まず「だいち3号」災害判読事例集、それから防災ユーザズマニュアル等の制定、それから光学画像の防災利用にかかる準備を実施してまいりました。
 それから、災害に関する情報提供推進のために、国土交通省の水管理・国土保全局殿や港湾局殿等、いくつかの機関と協定を結んでございます。
 次に、平時における観測のベースマップの場合は、ベースマップ画像の収集・更新になりますが、そこに対する詳細要求をご説明いたします。
 まず、地域と頻度というところがございまして、日本域に関しましては、まず画像の初期収集として、打ち上げ3年以内に取得すること。それから、全球としましては、打ち上げ5年以内ということを目標に実施してまいりました。更新に関しましては、国内四季がございますので、年3回の観測期間を確保すること。全球も、できれば年に1回取るというかたちで計画してまいりました。
 取り組みの状況でございますけれども、開発結果を踏まえた、打ち上げ2年間の観測計画を事前に立案しました。その結果、こちらの要求は十分達成できると。特に、最初の国内のベースマップを取得するというところに関しましては、事業者とも話し合いまして、事業者の利用ソースを分けてもらうということで、1年間で習得できるような計画が立てられる見込みを得ております。次のページをお願いいたします。
 緊急観測に関しましては、まず初動対応として、国内の任意の地点について、1日以内に観測可能なこと。それから、観測方式が大きいところでございますけども、通常は、南北の方向に軌道に沿って取っていくものでございますが、多くの海岸線、これは西日本の方は東西でございます。そのために、視線方向を変えながらの観測が可能なことというような要求がございます。
 その結果でございますけれども、任意地点を1日以内にとれる。それから、1時間以内にコマンドを送信できる。それから、データを受信したら、1時間以内に3シーンというのは、これは大体210kmに相当するのですが、そのデータを皆様に提供できるというシステムを開発いたしました。
 衛星は、南海トラフ大地震による強震地域に対応した期間、長さは大体1000km以上の領域も観測可能な能力にしてございます。
 それから、地理空間の情報の更新に関するところでございます。こちらは、国土地理院殿と一緒にやっていくというところでおきまして、システムとしましては、観測シミュレーション結果を国土地理院に評価ただきまして、道路・鉄道、建物・構造物等に対して、概ね問題なく判読可能であり、25000レベルの地形図作成に利用可能という見解を得てございます。
 それから、地理院殿とは、この後すぐプロダクトが提供され始めれば、地図更新等に使っていただけるような実施計画も定めてございます。次のページをお願いいたします。
 民間事業者の活力活用に関するアウトプット目標でございます。先ほど1項で説明いたしました事業計画の内容がアウトプット目標になります。これをパスコ殿と締結できたという状況でございます。パスコ殿、民間事業者ならではの工夫により、より少ない人員で効率的な衛星運用ができるようなシステムを構築していただいております。
 ユーザに対しましては、やはりJAXAだけで手が届かなかったところに手が届くというかたちで、官公庁ユーザ殿の拡大が図られました。それから、潜在的ユーザとして、海外への展開が特にできまして、アフリカ諸国とか、中東等、非常に興味を示してくれるところがありました。次のページをお願いいたします。
 こちらは技術目標でございます。技術目標は、広域高分解能解像度1m以下、観測幅50km以上の画像が取得できることと、それから高速伝送1.6Gbps以上というものを技術目標にしておりました。(1)と(2)は、それぞれミニマムサクセス、それからフルサクセス、エクストラということで、これができる期間ということで、軌道上実証ができればミニマム、7年間できればフル、さらに10年までできればエクストラというかたちで設定してまいりました。
 これに対する取り組みでございますけども、仕様で説明いたしました通り、0.8m、観測幅70kmのものを実現いたしました。この際獲得した技術としましては、大型ミラーの鏡面加工や計測技術、それから擾乱低減技術、大容量データレコーダ等がございます。
 こちらの技術、特に計測技術、擾乱低減技術に関しましては、将来の民間主導の小型地球観測衛星の技術支援とか、静止光学等に反映できると考えております。さらにデータレコーダに関しましては、この後は同型機であります「だいち4号」に搭載する予定になってございます。
 それから、高速伝送に関しましては、1.8GbpsのKu帯の直接転送を実現してございます。こちらに関しましても、「だいち4号」に搭載して、今回できませんでした軌道実証をやっていくというかたちで考えているところでございます。次のページをお願いいたします。
 こちらは、技術実証というところで、今回大きいところは、光学センサに関しましては、100%国産化いたしました。材料等、左下にございますけども、ミラー材等も国内のものを使ってございます。
 ベンチマークとして、一番右下になりますが、左上に行けば行くほど性能が良いと。観測幅が広くて高分解能ということになります。残念ながら、今、一番上のところ、中国の衛星に抜かされておりますが、2020年まででしたら、一応このスペックが一番上だったというかたちになってございます。次のページをお願いいたします。
 最後になります。次のページをお願いいたします。最後になりますが、プロジェクト終了審査の結果について報告させていただきます。プロジェクトマネジメント規程・実施要領に基づき、H3ロケット試験機1号機打ち上げ失敗の衛星喪失という結果に十分配慮した上で、プロジェクト終了審査を実施し、プロジェクト終了可否について確認したということで、この十分配慮というのは、アウトプットや波及効果やアウトカムは出せないので、プロダクト提供を開始できれば、目標が達成できたという観点で審議いただいております。
 審査項目については、この実施要領に基づいたものでやっていただきました。その結果でございますけども、1項の審査項目にしたがって審査した結果、ALOS-3のプロジェクトを開発・運用準備で終了することは妥当と判断したという結果をいただいております。報告は以上になります。ご審議の方、よろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 それでは、ただいまの説明について、ご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。まず髙橋委員、お願いいたします。
 
【髙橋委員】 どうもご説明ありがとうございました。
 今回のご説明をお聞きしまして、改めてALOS-3の役割の重要性を認識しました。今まで打ち上げまでに達成した成果を、ぜひ次のプロジェクトに活かしていただければと思います。
 私が1点お聞きしたいのは、今後のリスクマネジメントについてです。ロケット打ち上げの、今までの失敗例を振り返ると、H2ロケットの5号機、8号機、H-ⅡAロケットの6号機、イプシロンロケットの6号機、そして今回のH3ロケットの初号機に発生いたしましたが、これらの例から、10号機までの打ち上げに失敗が発生しているという事実があります。このような事実も考慮して、今後ですが、衛星を搭載する際のリスクマネジメントを考えていくというようなことを、レッスンズ・ラーンドとして共有した方がいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 
【寺田理事(JAXA)】 髙橋委員ありがとうございます。
 今回、非常に重要な大切な衛星を、H3の試験機1号機に載せたということで、結果それがALOS-3を失う最大の要因になってしまったということがあります。ご指摘の通り、まだH3は開発途上のロケットで、仮に初号機、2号機が成功したとしても、まだまだリスクがあるという認識のもと、それを前提に事業計画を作っていきたいという風に思っております。ご指摘ありがとうございます。
 
【髙橋委員】 よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 
【村山部会長】 村松委員、お願いいたします。
 
【村松委員】 村松です。ご説明どうもありがとうございました。
 今回のALOSの分で、一般事業者との契約も今回入っていたかと思うのですけれども、一般事業者の方も今度はALOSのデータが取得されるにあたって、色々準備されていたと思うのですが、その辺の契約上は特に問題がなかったかという点を1点と、あとは、ALOS-3のデータを色々な地域で利用するというようなことを、こういった契約事業者の方の協力で、アフリカとか、色々なところで利用できると期待されるというような話が今回出ているのですけれども、その辺のフォローアップに関して、教えてください。
 
【匂坂統括(JAXA)】 ご質問ありがとうございます。
 事業者に対しては、今回大変ご迷惑をかけたということは反省すべき点だと考えております。ご質問がありました、まず事業者の影響でございますが、事業者の方の設備に関しましては、保険に入られていたということで、そこの部分はフォローがされているという風に伺っております。
 それから、せっかく獲得したユーザをこの後手放さないというのは、どういう風にするかというところは、今事業者と色々話し合っておりますけども、ここからは個人的な意見になって大変恐縮でございますけど、やはり次の衛星をできるだけ早く上げていくというのも、一つの解決手段にはなるのではないかと思いますが、まずは、今ある、商用衛星なり、国内のデータ等をどういう形で使えるかというような話をしていただくのも、方策の一つではないかと思っております。以上になります。
 
【村松委員】 どうもありがとうございました。ぜひ、今回色々得られた経験を次に活かしていただければと思います。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして、米澤委員、お願いいたします。
 
【米澤委員】 米澤です。どうもありがとうございました。お話に出てきました、今回の終了審査の結果が、ALOS-4にもし何か影響があるようでしたら、その辺のことをご説明いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【匂坂統括(JAXA)】 ALOS-4への影響でございますが、今回ロケットへの打ち上げということでございますので、衛星等の機能に問題があったわけではないという風に考えてございます。
 したがって、打ち上げ時期等については、分からないところがございますけども、直接技術的に問題になるようなところはなかったという風に考えてございます。
 
【米澤委員】 ありがとうございます。ALOS-4のスケジュールも、特に影響なく進んでいくという風に理解してもよろしいでしょうか。
 
【匂坂統括(JAXA)】 打ち上げ時期等については、政府の方も含めて検討していると思っておりますので、ちょっとそこに関しては分からないところがございますけれども、技術的には今のところ問題ないという風に考えております。
 
【米澤委員】 どうもご丁寧にありがとうございました。
 
【村山部会長】 いいでしょうか。それでは、どうもご審議ありがとうございました。
 宇宙開発利用部会として、資料77-2について、特に17ページに記載されたJAXAの審査結果に同意するものとしたいと思います。よろしいでしょうか。
 特にご異論はないようですので、これで決定とさせていただきます。ありがとうございました。
 
【村山部会長】 次の議題ですけれども、次期光学ミッションの方向性についてです。前回の宇宙開発利用部会で、次期光学ミッションについての三つの検討チームから、それぞれのコンセプトが示されました。その後、文部科学省およびJAXAにおいて、ユーザ省庁やCONSEO各チームなどとの間で対話を重ね、検討が進められてきたと聞いています。
 本日は、次期光学ミッションの方向性について、文部科学省およびJAXAから考え方を示していただき、委員の皆様には、その内容についてのご確認とご助言をいただきたいと考えております。
 それでは、文部科学省宇宙開発利用課の竹上企画官、JAXA第一宇宙部門の平林統括、ご説明をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 文科省竹上です。
 資料77-3ですね。こちら右肩に文科省と記載されているものを私から、JAXAと記載されているものを平林統括から説明させていただく予定です。
 前回、2ポツ目にも書いておりますけども、前回の宇利部会、CONSEO3チームからの提案をJAXAからご報告をいただきました。
 その後、3ポツ目にありますように、文科省およびJAXAにおきましても、内閣府の協力も得ながら、関係省庁あるいは各提案チームとの意見交換を進めてまいりまして、今般、次期光学ミッションに関する方向性につきまして、政策的に一定の整理を行いましたので、ご審議いただければと思います。次のページをお願いします。
 こちらは、何回かご紹介しておりますけども、6月に改訂された宇宙基本計画におきましても、真ん中辺りですけれども、ユーザ官庁を含めた関係府省庁や民間事業者等と対話を進めながら、このALOS-3については、再開発の要否も含め、今後の方針について検討を進めると記載されているところでございます。次のページをお願いします。
 ALOS-3喪失以降の経緯です。先ほど、あるいは前回の委員会、部会でもご報告しておりましたけども、このALOS-3後継機につきましては、それ以前から議論が行われておりましたので、参考までにご紹介ということで、遡ると2018年度、ここからALOS-3の後継機の検討に着手しておりました。
 2019年4月には、内閣府の宇宙政策委員会、宇宙民生利用部会で検討結果が報告されて、その後の工程表の改訂ですね、太字になっていますけれども、考えうる衛星システムのオプションを複数洗い出すと、そうした意思が示され、前回の2020年6月の宇宙基本計画の改訂の際に、ALOS-3後継機の打上げが2026年度を目途とされたところでございます。
 ただ、ALOS-3の打上げ時期が、その後若干の延期がございましたので、具体的検討が少し止まっておったのですけども、2022年9月に、CONSEOで、より詳細な検討を、というところで議論を開始したところ、今般のALOS-3の喪失があり、ここの場を使って検討を加速し、今に至るというような状況。まずは、背景情報をまとめてご説明させていただきました。
 ここからは、すみません、平林さんお願いします。
 
【平林統括(JAXA)】 では、次のスライドをお願いいたします。
 このスライドでは、CONSEOの三つのチームからの提案サマリーを示しております。
 まず一つ目の衛星データサービス企画をリーダーに、三菱電機などが入ったチームからは、黄色枠に示しましたように、広域観測と高分解能を両立した、ALOS-3のリピート衛星2機体制によるロバストなシステム構築が提案されております。打ち上げ時期といたしましては、ALOS-3リピート2機を2027年度末~28年度にかけて打ち上げると。また官民分担といたしましては、衛星2機は官負担、地上設備の構築・運用につきましては民負担想定という内容でございます。
 二つ目のNTTデータ、アクセルスペース、RESTEC、パスコが入ったチームからは、レーザー高度計技術、小型衛星コンステレーション、アジャイル開発の掛け合わせによりまして、世界最高水準のデジタル3Dマップの実現が提案されております。分解能40cm以下の小型光学衛星8機からなります、コンステレーションシステムでマルチビューイングを行いまして、そこにさらにライダ衛星2機で、高さ方向の精度を高めることで、高精度な3Dマップを整備するというものでありまして、官民分担といたしましては、小型光学イメージャ衛星4機、これを民間側で負担するという提案でございます。
 次に、アカデミアを中心といたしました、三つ目のタスクフォースチームからは、中型の光学衛星4機、小型光学衛星10機、ライダ衛星1機からなるシステムで、災害対応をはじめとした実利用に加えまして、科学研究の更なる推進を図ることが提案されております。官民分担といたしましては、小型衛星10機分は民負担という想定での提案となってございます。次のページをお願いいたします。
 前のページでご説明した三つの提案におきましては、官負担コストに違いがございますので、ALOS-3相当のコストで横並びに比較しつつ、ALOS-3喪失を受けた対応と、次世代の光学観測ミッションとしての提案という観点で、特に評価できる点を黒地にハイライトしたものが、ここからの2枚のスライドとなります。
 まず、災害対応でございますけれども、丸1の案におきましては、南海トラフ大地震におけます、強震動想定域を東西方向に一度に観測可能となります。一方で、丸2、丸3の案におきましては、複数機でより多く、より早く観測機会が得られると。また同時多発、広域災害に対しては、複数機観測によりまして、高頻度・且つ40cmという高分解能観測を実現できるものとなります。
 また、地理空間情報の整備という観点におきましては、ALOS-3では25,000分の1相当の地図整備への活用を目指しておりましたけれども、丸2、丸3の案では、2,500分の1の都市計画区域「内」基盤地図情報への活用を目指した提案となってございます。
 次に、スピード感、事業環境の変化・技術進展の対応性という観点におきましては、2次元の高分解能光学衛星画像が国際的に広く事業展開される環境変化の中で、丸2、丸3の案ともに高精度3次元情報にて新規ニーズ・事業に対応可能な提案となっております。特に丸2の提案におきましては、アジャイル開発におきまして、ニーズの変化・技術の進展に対応可能なものとなります。次のスライドをお願いいたします。
 次にSX、スペーストランスフォーメーションの実現という観点におきましては、丸2、丸3の提案におきましては、高精度デジタル3D地形・全球樹高等のデジタルツインを構築し、これを基盤といたしまして、災害対策や安全保障、GXに向けた取り組みなど、国内外で多様な活用が期待されております。
 また国際競争、新規事業という観点におきましては、丸2、丸3の提案におきましては、高精度なデジタル3D地形情報を活用いたしまして、5000億円市場に新規事業を創出していくことや、さらに丸3のチームにおきましては、Open & Free化によりまして、データ利用・産業の裾野拡大、科学的成果創出が提案されております。
 最後に、新しい官民連携・開発実証プロセスという観点におきましては、丸1の案では、国家インフラとして複数機でロバストなシステムを構築すべきという提案がされております。一方で、丸2、丸3の案におきましても、小型コンステレーションによるロバストなシステム構築。特に段階的にアジャイル型でシステム構築し、官民連携を進めるという提案がなされているところでございます。次のスライドをお願いいたします。
 ここから、文科省にまたお返しいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 今説明のあった三つのオプションをベースとした、次期光学ミッションについての提案について、この間、文科省およびJAXAで、ユーザ省庁とも対話を2か月ほど繰り返してきました。その結果を簡単にご報告したいと思います。
 ここ記載の通り、国交省であるとか、農水省、あるいは防衛省といった関係者の方々、のべ150名以上の方々とこれまで意見交換、あるいは説明というものを実施してきました。各省様々なご意見がありましたけれども、主なもの、特に期待や要望のところをかいつまんでご説明しますと、まずミッション・システム要求に関しては、やはり防災への衛星活用、あるいは地理空間情報の整備・更新、あるいは高精度3D、こうしたものに期待したいという声が多くございました。また、災害対応の観点でいうと、特に時間分解能、これが上がることが大事だというご意見。また様々なバランスを取っていく必要があるということであるとか、また航空機観測によるデータ更新、これがリソースを要するので、部分的に置き換えることも想定できるだろうといったご意見がございました。また、ライダ補正で、地上標高の数値地形モデル、これを提供していくということが非常に魅力的であるといったご意見や、委員会の場でもご意見ありましたけども、通常のカラーあるいは近赤外に加えて、コースタルやレッドエッジ、こうしたところにも期待したいというような声もございました。
 また、開発期間・開発サイクルに関しては、もちろん開発はできるだけ早い方がいいといった声や、またアジャイル開発でのニーズ変化への対応が重要であるというご意見。
 また、データ提供に関しては、今のみならず、やはり10年、20年と安定してデータを提供する体制を整えてほしいというご意見であるとか、やはり行政側としては、利用目的に応じて、無償データ提供、こうしたものの検討もしてほしいといったご意見がございました。
 こうした意見を踏まえまして、本日9ページ目、次期光学ミッションの方向性というかたちで1枚紙に整理させていただきました。
 まず、今の宇宙基本計画では、ALOS-3の再開発の要否も含めて検討となっております。これを踏まえて、やはり太字のところですけども、次期光学ミッションには、民間による事業展開を通じた価値はもちろんのこと、やはり公的観点からも大きな価値があるということで、政府およびJAXAが、公的投資も含め一定関与することが望ましい、としております。
 その上で、今後のミッションということで、五つの柱を示しておりまして、これを軸に置いて、検討を進めていくべきではないかとしております。
 一つ目が、段階的に創出を進める、アジャイル型のミッション。二つ目が、民間事業者によるビジネス創出、それはもちろん政府利用ですね、緊急観測であるとか、地理空間情報の整備、さらに学術利用。こうした利用ニーズにバランスよく的確に対応できるミッションであること。これは言うは易し、ですけども、このためには、さっきお話のあったOpen & Free化ですとか、他方で民間がどこまで民間のビジネスとしてデータ等を取り扱えるのか、無償利用をどうしていくのか、あるいは官民の投資の分担など、論点は多岐に渡りますので、これを実現するためには、特にデータの扱い方については、今後十分な検討を行うことを当然留意していかなければならないと考えております。
 また3点目、今回新しい要素ですけども、衛星搭載ライダ高度計と小型光学衛星群の組み合わせによって、我が国独自の革新的な衛星三次元地形情報生成技術の開発実証を行っていくということ。
 また4点目ですけども、複数衛星により、ロバストなシステムを構築するということのみならず、やはり今後は、スタートアップを含めた民間事業者の競争力強化、こうしたことも狙いにおいて、小型光学衛星コンステレーションを活用・高度化していくということ。
 最後5点目ですけれども、先にJAXAが仕様を示してというこれまでのやり方から一歩進化して、プロジェクトメイキングの段階から、JAXAと民間が共創する官民共創開発プロセスを導入し、官民の適切な役割、そして投資の分担に基づいてミッションを行うこと。こうしたミッションコンセプトを提案させていただいております。
 今後ですけれども、本日、この部会で、ご確認、ご審議いただいた後に、今後、宇宙政策委員会衛星開発・実証小委員会であるとか、ユーザ省庁、民間事業者と引き続き、対話や意見交換を行いまして、2023年度末を目途にミッションをより具体化していく予定としております。以上を本日ご審議いただければと思います。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。
 前回に続いての議論になりますけれども、ただいまの説明について、ご意見、ご質問があればお願いいたします。まず、白井委員お願いいたします。
 
【白井委員】 過去2回、前回と、その前の回からご説明があったお話で、大変興味を持っておりました。私の質問は、この資料のご説明の中で何回か言及があった、アジャイル開発オプションについてです。二つ質問があるのですけれども、まず最初の質問に答えていただいた上で、二つ目の質問をした方がいいかなと思います。
 アジャイル開発というこの用語は、私の理解では、製品を市場にリリースする、その後ユーザの実際の使用実態とか、あるいはリリース後に判明した様々なフィードバックなどを後からアップデートするかたちで製品を完成に近づける、こういうコンセプトだと思います。IT、例えば、スマートフォンのアプリなどで使っている、ああいうイメージだと思います。
 衛星のプロジェクトは従来からあまりアジャイル開発との相性が良くないという感覚がありまして、あまり使ってこなかった仕組みだと思うのですが、今回、このお考えのアジャイル開発というのは、どういうイメージかが、ちょっと掴み切れないのです。これは、例えば、2案3案は、小規模とはいえ、コンステレーションのご提案ですから、最初の衛星を上げて、その結果、何か色々と問題、あるいはもっと改善したい点があったら、2機目の衛星で設計を変えていくと、こういう趣旨のお言葉として使っていらっしゃるのかどうか。これを最初にお答えいただければありがたいと思います。
 
【平林統括(JAXA)】 では、JAXA平林の方からお答えいたします。
 まず、ご質問の通りでございまして、打ち上げ年度としては、何回かに分けて打ち上げることにしておりますので、途中途中でフィードバックすべき点があれば、それを盛り込むということですとか、それから技術の進展に伴って、機能付加できる部分があれば、機能の改良改善を図った上で上げていくというようなコンセプトとなっております。
 
【白井委員】 ありがとうございます。
 つまり、上げたものを後から、例えば、パッチあてとか、コマンドを打って直していくという、そういう意味でのアジャイルではないという理解で正しいということですかね。
 
【平林統括(JAXA)】 はい。次の衛星にフィードバックをかけていくという意味でのアジャイルでございます。
 
【白井委員】 分かりました。
 それで、二つ目の質問は非常に簡単なことになってしまうのですが、従来の開発方式、俗に多分ウォーターフォール型と呼ばれているものだと思うのですが、アジャイル開発方式を導入することによる問題点とか、あるいは課題について、何があるとお考えでしょうか。
 
【平林統括(JAXA)】 衛星の規模によって、開発の仕方というのは、それぞれふさわしい開発の仕方があるのかなというように思います。衛星の規模というのは、衛星に求められる性能であったり、機能であったりする部分というのは、かなりの部分を占めるかと思います。
 例えば、1番目の説明にございましたようなPMM衛星のように、非常に高性能で高機能な衛星を製造しようとすると、それなりの規模の衛星になってくるというところもございますので、衛星の性格や規模に応じて、どちらのアプローチをとるのかということがあろうかと思います。一方で、産業界としての受け皿という観点も、もちろん考慮すべき点かと思っておりまして、特にこの光学衛星におきましては、産業界においてかなり事業が進展しているところでございますので、民間のそういったような実情も踏まえて、実現可能な事業計画を立てるべきであろうと考えております。
 
【白井委員】 ありがとうございます。
 方向性に特に異論という意味ではないのですが、アジャイル開発、例えば、StarlinkとかOneWebは、そういったアジャイル開発的なコンセプトを導入して事業を進めているという風に理解しています。一定の問題が発生することを織り込んだプロジェクト管理をするという方式をとっている。ちょっとその辺のリスクについても、やはり同時に考えていただきながら、進めていただければと思う次第です。
 
【平林統括(JAXA)】 年度末までの目標に、これから具体化を図っていきますので、ご指摘いただいた点も含めて、検討していまいりたいと考えております。
 
【竹上企画官(事務局)】 貴重なご指摘ありがとうございます。
 
【白井委員】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして、田中委員お願いいたします。
 
【田中部会長代理】 田中です。ご説明ありがとうございました。
 皆さん多分お考えだと思うのですけど、方向性としては多分良いと思うのですけれども、世の中こういう衛星に馴染まなかったアジャイルということ言いつつ、一方で、そこにも書いていただきましたけど、海外なんかでは、メガコンステレーションということがすごく言われていますし、その場合に、割と息の長い10年とか、20年を見越したような計画が立てられていると思うのですよ。今、3案挙げられていて、それぞれ、ある意味自由にお考えになって、それぞれよく練られた案だと思うのですけれども、やはりもうちょっと、条件を絞って、こういう風にしていかないと、ということを考えないと、国際的な競争力には勝っていけないのではないかという、危惧がすごく、一方であります。
 Open & Freeというのも、一方では、民間事業者によるビジネス創出というのと、ある意味相反するようなものがあるわけだし、利用目的に応じて、それぞれやっぱり考えていかないと駄目な条件がどんどん出ていくと思います。
 それで一方、割とチャレンジングなレーダ高度計なんかも言っておられますけれども、これをもしも本当にするとなったら、例えば、所謂リモセン法なんかにも引っかかってくると思いますし、まだまだ色々考える条件が山積みかなという風に感じました。
 質問というよりかはコメントが多いのですけれども、ぜひ前向きにご検討いただければと思います。以上です。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。
 ただいまのご質問、コメントに何かあれば、いかがでしょうか。
 
【平林統括(JAXA)】 ご指摘ありがとうございます。
 仰っていただいた通り、10年、20年というかたちの持続的な事業にすることが非常に重要かと考えておりますので、その点も含めて、これから事業者も含めて、色々と年度末に向けて議論を深めてまいりたいと思っております。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。
 
【竹上企画官(事務局)】 補足ですけども、まさに先ほど、私がこの9ページの説明の時に申し上げたように、これまでは、ある程度かたちを、特にデータ利用のあり方なんかについては、これまでは一定の形を決めて、国の投資割合が大体これくらいで、民間はこれくらいの負担というのがあってから、ルール設計という形で、割とシンプルにできたところもありますけれども、今回、国が主になるところ、民間が主になるところ、あるいは全体のシステム自体が、衛星を打ち上げながら形を変えていくことになりますので、2ポツのところ、データの扱い方なんかは、かなり現場、色々な関係者との対話が必要になってきますので、これは、JAXAのプロジェクトにおいても、おそらく初めてのチャレンジに近いものになると思うので、先生方からのご指摘を踏まえて、しっかりとプロジェクト設計をしていきたいと考えております。ご指摘ありがとうございました。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして、米澤委員お願いいたします。
 
【米澤委員】 ありがとうございます。米澤です。
 先ほども、少しお話に出てきたのですけれども、官民で分担して衛星を上げていくというような方針が大きいのですけれども、その一方で、ユーザ省庁からはデータ提供で、無償データ提供、公開プラットフォームという要求が出ていて、もっともだと思うのです。これに対して、官民分担、民の分の無償データ提供などが可能なのかなというところが気になって質問させていただきました。よろしくお願いいたします。
 
【平林統括(JAXA)】 これからの制度設計になるかと考えております。
 例えば、現在3Dの情報については、JAXAの方で、ある程度分解能の悪いものを無償提供させていただいている上で、プレミアムとして、民間の方で、より高精度な3D情報を提供するといったようなビジネスモデルが一つございますけれども、今後この件について、どのような形でOpen & Freeと民間の事業を両立させるのかというところは、年度末に向けて、事業者とも十分会話を深めていきたいと考えております。
 
【米澤委員】 ありがとうございます。大変期待しております。よろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。
 ただいま、村松委員、秋山委員、芝井委員から伺っております。時間の関係から、まず質問をお三方からいただきまして、その後、まとめてJAXA、文科省の方からお答えをいただきたいと思います。まず、村松委員がお願いいたします。
 
【村松委員】 ご説明どうもありがとうございました。
 今回ユーザの立場からすると、やはり分解能とか頻度とかがどのくらいになるのかというのは非常に興味深いところですけれども、最低限このくらいは達成するというような、何か目標値みたいなものは、今後立てられるのかどうかについて教えていただければと思いました。以上です。
 
【村山部会長】 続きまして、秋山委員お願いいたします。
 
【秋山委員】 資料の7ページにあった、国際競争力のある新規事業の創出というところで、ちょっと2案と3案についてのところですけれども、ここに書いてあるのは、高精度デジタル3D地形情報を活用したデータ利用事業ということだったのですが、そうなると二次元の、所謂衛星画像を利用したビジネスというのはどうなるのか、特に先ほどのALOS-3の審査のところでお話のあった、パスコが、アフリカなど新たなユーザに民間の事業者として興味を示していただいた、そういう関心を呼び込んできたというご説明があったのですけれども、もしここで高分解能のコンステレーションが実現したとして、それを付加価値の高い3Dデータとして活用するというのは、もちろん大変良いことだと思うのですけれども、そちらに注力してしまうと、ある意味これから平面のデータを、例えば、農業とか、そういうところに利用しようとしているユーザは、ある意味置いていかれてしまうのではないのかと、ちょっと思ったのですけれども、その辺りどういう風にフォローしていくのかということと、単純にもう2026年以降に衛星打ち上げということになると、ある程度、高分解能の2次元の衛星データというのは、正直申し上げて、海外の事業者が既に持っていっているということの認識の上で、3Dのデータに注力するということなのか、その点についてお伺いできればと思います。お願いいたします。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。最後に芝井委員お願いいたします。
 
【芝井委員】 資料9ページの4番、真ん中のポツの4番に関する質問です。
 この4番は、複数衛星によりと、色々書いてあるのですが、ここはやはりALOS-3の全損ということが、かなり背景にあって書かれているのだと思うのですが、複数衛星による、ロバストなシステムで、一つの代表的な方法というのは、同じ、全能力の衛星を二つ実現して、どちらかを使うと、片方が駄目な時は、もう片方を使うというのが、一番ロバストな簡単な考え方ですが、この2行目を読むとそうではなくて、たくさんの衛星を上げて、全体としてあるミッションを達成するという意味にとれると思うのですが、この時にたくさんの衛星を上げるというと、また別の意味のリスクが発生して、一体どれくらいの割合の、全く同じものを作るとしても、どれくらいの割合が生きていれば、つまり、どれくらいの割合が機能を失っても大丈夫なのか、というようなことをきちんと考えてやっておられるかどうかが、ちょっとこの文章だけだと気になりますので、そこを明確にしていただければ安心かと思いました。以上です。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。
 それでは、ただいまのご質問についてのお答えについて、まずJAXAの方からお願いいたします。
 
【平林統括(JAXA)】 まず、分解能等の情報でございますけれども、分解能といたしましては、小型衛星群による提案につきましては、40cmを下回る空間分解能で提案がされております。
 これにライダ衛星による補正を加えることによって、高さ方向としては1mを下回る、1m程度の目標精度ということで、この分解能と高さ精度によりまして、2,500分の1の地図にも対応していくといったことが目指されているところでございます。一つ目の回答は以上になります。
 それから、国際競争力という観点で、3Dだけではなくて、2Dを使ったグローバル展開はどうなのか、というところでございますけれども、ここも、これからまさしく事業者の方々との対話、あるいは、ユーザ省庁との対話を通じて、三次元に加えて、二次元がさらに継続的に必要という声がありますようでしたら、そこも含めて対応していきたいと思っております。議論を深めたいと思っております。尚、災害対応につきましてはもちろんのこと、二次元で取れるような機能の提案を受けているところでございます。
 
【村山部会長】 それでは、分解能とデータの問題をお答えいただきましたので、あとはロバスト性の問題が残っていますけれども、これは文科省、どちらがいいですかね。
 
【平林統括(JAXA)】 まず、私の方から。
 ロバストなシステムということでございますけれども、衛星、今8機からということでの提案を受けております。それで仮に1機失われたといったような場合におきましては、データの更新頻度が低下してくるということになろうかと思いますけれども、頻度は低下してまいりますが、目指している精度等につきましては、実現可能であろうというように評価しております。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。
 もしも文科省の方から何か付け加えることがありましたら、お願いします。
 
【竹上企画官(事務局)】 ちょっと発言が被ってしまうところもあるのですけど、最初いただいたご質問に関して、やはりALOS-3への期待といったようなこともあったことから、やはりしっかりと防災をはじめ、元々ALOS-3が狙っていたところは意識しながら、さはさりながら、小型を上げていくことによって、一度に見られる幅については、例えば、この2のところで書いてある50km以上と多少落ちるのですが、空間分解能と、時間分解能のバランスを取りながら、さらに、光学イメージャのところに、ライダを組み合わせていくというところを、しっかりと狙っていきたいと考えてはいるところです。
 また、秋山委員からご指摘いただいたところも、そこも平林さんから今、回答がありましたが、我々としては、やはり3D観測、ライダとの組み合わせも狙っていきながら、やはり、ライダに関しては、今後まだ技術開発をしなければいけないので、しっかりと光学イメージャのコンステ群としても機能するように、2026年、先に光学イメージャが上がっていきますので、そうした仕様設計には必ずしないといけないかなと思っておるところです。
 また最後のところも、まだ議論が十分できていないところではあるので、しっかりご指摘いただいたところを、JAXA、あるいは関係者とも相談しながら、これはいずれにしても、まだこれから、内閣府もそうですし、今、3チームに分かれておられるところを、改めて関係者の方々、日本の総力を結集したプロジェクトに仕立てるために議論していきますので、そうした中で、いただいた点をしっかりと詰めていきたいと考えております。以上です。

【村山部会長】  ありがとうございます。
 それでは、これまでの審議を踏まえて、資料77-3の9ページの方向性に沿って、今後進めていくことについて、宇宙開発利用部会としてのご理解をいただいたということでよろしいでしょうか。
 大きなご議論はなかったようですので、この方向性で進めていただくということにいたします。今後、開催予定の宇宙政策委員会、衛星開発・実証小委員会において、文部科学省からご報告いただくこととしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、次の議題に移らせていただきます。次の議題は、スターダストプログラム「衛星のデジタル化に向けた革新的FPGAの研究開発」成果報告です。JAXA研究開発部門、佐野理事、進藤技術領域主幹、ご説明をお願いいたします。
 
【佐野理事(JAXA)】 それでは、冒頭にまず、研開部門長をしております、JAXA理事の佐野でございます。よろしくお願いいたします。簡単に経緯を述べた後、新藤から資料の中身を説明してもらいたいと思います。
 ちょっと経緯を振り返りますと、2021年の4月28日に開催されました、衛星開発・実証小委員会におきまして、衛星のデジタル化に向けた革新的FPGAの研究開発が選定されました。そして同年の7月20日に文科省から公募が発出され、JAXA研究開発部門として応募し、選定されたテーマでございます。そして今年2023年4月、文部科学省に成果を納入して、本事業が完了したというものでございます。
 それでは、中身につきましては、研究開発部門の新藤より説明させていただきます。それでは新藤さん、よろしくお願いします。
 
【新藤主幹(JAXA)】 ただいまご紹介いただきました、JAXA研究開発部門で、この研究の代表を務めさせていただいております新藤の方から報告いたします。次のページをお願いします。
 このページには、この研究の背景・目的を書いてございます。この研究で対象としておりますのは、FPGAと呼ばれる半導体デバイス技術になります。このFPGAの大きな特徴といたしましては、使いたいユーザがデバイスを調達した後、中を目的に応じて、好きな論理回路を組めるというのが、大きな特徴のデバイスでございます。
 こういった特徴を備えておりますので、今の宇宙開発では、このデバイスは必要不可欠な存在になってきているというものでございます。現状、このFPGAというデバイスは、海外製品のみが使えるというような状態でございます。
 さらに赤字で書いておりますけども。技術的には二つの大きな課題がございまして、まず一つ目は、宇宙放射線耐性の確保ということで、これは最近のハイエンドなデバイスは、特に微細な半導体プロセスを使っておりますので、この放射線耐性が比較的弱いということで、ユーザ側で色々な対処をしながら使うということが必要になってきているということと、あともう一つは、消費電力ですね。これが今の技術ですと、1デバイスあたり数十ワットというオーダーになってしまっているというところで、使う上でも、やはり障害になっているというものです。
 この二つに対しまして、この研究では、国産独自の原子スイッチと呼ばれる技術と、あとは耐放射線強化回路技術、これはJAXA、私どもが持っている技術でもございますけども、この二つを組み合わせるということで、国産の新しいFPGAを実現しようと。それに向けて、この研究では2年間で。製品実現に必要な要素回路の技術を作り上げるということを目的で研究を進めてまいりました。
 本研究の目標ということを下に書いてございます。丸1丸2という、大きな二つのことを実施してきております。文字だけでは、ちょっとお伝えしにくいところがございますので、次のページでご説明します。次をお願いします。
 ナノブリッジという技術を使ったFPGAは、今技術が進化してきておりまして、第1、第2、第3世代というところまで進んできております。
 第1世代というのは、下地の半導体技術として使ってきているプロセスが、65nmという配線ルールを使ったものでして、この技術は2017年、2018年に革新衛星1号機で、当時の提案企業が、実際この衛星でカメラの取得画像をJPEG圧縮するというようなミッションを実際に軌道上で行って、正しく動くということが実証されております。
 第2世代と申しますのが次にございまして、こちらの2021年まで実施されていたNEDOのプロジェクトがございまして、こちらでAI処理のためのFPGA技術ということで開発されたデバイスがございます。
 第3世代というのが、このスターダストの中で、私達はこれから新しく作り上げようとしている技術でございます。
 先ほど、研究の目標のところに二つ書いておりましたけれども、一つ目は、この第2世代という、既に出来上がっているチップではございますけれども、これが宇宙で、このままの状態で使えるかという観点で、当然、放射性対策は導入していませんので、放射線耐性の実力を、この研究の中であらかじめ把握して、どれくらいの実力があるかということを調べるというのが、先ほどの一つ目の目的でございます。
 それから、二つ目の目標が、第3世代という、これから新しく作り上げていく技術になるのですけども、こちらがきちんと設計ができて、海外競合品と比べてどれくらいの性能が狙えるのかということを、小規模ながらですけれども、実際に試作チップも作って、性能評価するということを、この二つを進めてまいりましたというものでございます。次をお願いします。
 こちらは、大きく二つあると申しました実施内容に関しまして、よりタスクを詳細にブレイクダウンして、WBSの形で管理してきた、その実績を示してございます。
 一つ一つ細かいところのご説明は割愛しますけれども、このプロジェクトをスタートした当初に設定した計画通り、ほぼ計画通り進めることができました。残念ながら、ごく一部、黄色で塗ってある部分ですね、ここは残念ながら、装置故障が当時発生しまして、そのリカバリーを待つ時間が必要だったというところで、1か月弱程度、スケジュールが少しスリップしてしまいましたけれども、無事所定の目標は、実施すべき項目は全部実施できたということが実績でございます。次のページをお願いします。
 ここからが、この2年間の実施結果のご説明になります。細かいご説明に入る前に、このページに実施結果の全体のサマリーを記載しました。ご説明しますと、まず丸1として、28nm NB-FPGA、これは先ほど第2世代NEDOプロで開発したと申したデバイスですけれども、こちらにつきまして、このデバイスを使って、実際に放射線照射試験を実施しました。これによって放射線耐性を明らかにしましたけれども、後ほど述べますけれども、宇宙でミッション、色々な部分はございますけれども、ミッションによっては、このままの状態でも使用できる可能性がある放射線耐性の実力値を持っているということを確認しました。
 それから、二つ目としましては、第3世代の、これから新しく実現しようと考えております、NB-FPGAに関しまして、チップの試作をして性能評価をしました。その結果が下の表でございます。この目標値というのが、冒頭に記しておりました、研究で狙う目標値をまたここに書いたものでございますけど、それに対しまして、期待通りの動作、あるいは目標通りの実力値が今回の施策で確認できまして、全て達成というのが、今回の研究の全体のサマリーになります。次のページ以降で、実施結果の詳細についてご紹介いたします。次をお願いします。
 最初に、これは研究開発に入るに先立ちまして、使っていただける可能性のあるメーカー、企業殿に、実際このデバイス技術ができたら、どのようなユースケースが在り得るかということについて、ヒアリングを実施しました。
 この中ほどに青字で書いてあるような通信用途ですとか、あるいは画像処理用途、あるいはエッジコンピューティングとしての使用用途という、こういったものが色々と具体的に識別することができました。非常に皆さんに興味を持っていただいて、ありがたいというところでございます。より詳細な性能というのは、今後研究開発をさらに進めていく中で、より詳細に数値化して、研究開発を進めていきたいという風に考えております。次をお願いします。
 ここが、まず大きな二つのうちの最初の結果でございます。これNEDOで開発された、第2世代のナノブリッジFPGAの放射線耐性を実際に実験で確かめた結果でございます。
 ちょっとグラフの見方が慣れないかなと思いましたので、この右の図に、グラフの見方として、ポンチ絵を書かせていただきました。結果としてが、横軸に放射線のエネルギー指標、LETと呼ばれる独特の単位を使いますけども、これを記して、縦軸に放射線をあてたときのエラーの発生頻度をプロットしたようなグラフでございます。
 一般には、放射線のエネルギーを徐々に下げていくと、どこかでエラーが発生しなくなるという部分、緑色の点線の部分がございます。この閾値がLETで示して、なるべく高ければ高いほど放射線耐性に強いというものでございます。一般には、民生品は、これがLETで申しますと、1桁前半台ぐらいの閾値、でラドハード化したデバイスは、大体これが30MeVとか40MeVといったところを確保しているというような世界でございます。
 左側の図が、第2世代のナノブリッジFPGAの実際の照射試験結果でございます。ある程度予想はしておりましたけれども、やはり低いLETでもエラーが発生しておりまして、閾値は非常に低いところにあるということを確認しております。民生品同等くらいの実力値かなという風に捉えることができるのですけれども、ただしこのFPGA全体として、軌道上の発生頻度というものを計算しますと、静止軌道換算で1日あたり0.1回程度の発生頻度に収まるというような値になっているということも確認できましたので、エラー対策が、導入が必要になりますけれども、As Isで使えるミッションもあるのではないかなという風に分析しております。次をお願いします。
 ここからが、新しく実現しようとする第3世代のナノブリッジFPGAの設計、試作結果のご説明になります。
 ここはまず、こういう設計を進めてまいりましたというご説明で、それを図4-2に書いてございます。非常にちょっと込み入った図で分かりにくくて大変恐縮ですけれども、こういった緑枠で囲ったような回路が非常に複雑に組み合わさってFPGAができているという風に読み取っていただければと思います。
 実際にこういう設計をしまして、赤丸で囲ってある部分、ここが記憶回路のデジタル記憶回路の肝になる部分ですけれども、ここに対して、私どもが今特許化を進めております、ラドハード回路を導入して設計をしましたというご説明になります。次をお願いします。
 これが実際、先ほどの設計が終わって、実際に試作したチップの写真になります。大きさは大体4mm×3mmという、非常に小さなサイズですけれども、この中に16nmという下地半導体技術を使っておりますけれども、この中に評価に必要な要素回路を多数搭載して、実際に製造して、特性を測ったというものでございます。次をお願いします。
 ここからが、実際に測定した結果のご説明です。まず、電気的にちゃんとFPGAとして動くかということは非常に基本ですので、大事ですので、これを確認した結果をここにサマライズしてございます。表4-2をお読み取りいただければと思いますけれども、実際に試作したチップを使って、ナノブリッジと呼ばれる、これは銅イオンで配線をブリッジさせる技術ですけれども、ここがちゃんとオン/オフできるかということを確認できております。それから、FPGAとして、将来の製品規模を想定するのですけども、これくらいの大規模な回路を作った時の消費電力と動作速度というものを実測値から推定した結果が、約2.2Wで、700MHz程度は出せるというのが今回の結果になります。後ほどちょっとベンチマークを出しますけども、これは非常に海外競合と比べても優れた値になっているというものでございます。次をお願いします。
 こちらが、もう一つの大事な指標でございます、耐放射線性を実験で調べた結果でございます。この試作チップに対して照射試験をした結果が、図4-8においてでプロットして、黒のラインを引いてあるところです。参考までに、赤とか緑とか青は、これは海外の強豪FPGAにどれくらい実力値があるかというのを並べて書いたものでございます。ご覧いただくと分かるように、今回の試作は狙い通り、閾値LETが非常に高い、40程度のところにあるということが確認できております。これは非常に海外に比べて優れた結果だという風に考えております。次をお願いします。
 今回得られた結果が、ベンチマークとしてどれくらいの位置づけになるかというものを、海外競合の主要な性能値と比較したものがこの表でございます。特に赤点線で囲った部分、放射線耐性の指標と消費電力の指標が、非常に今回のFPGAは優れているということを示しております。消費電力につきましては、単に省エネになるというだけでなくて、これによって冷却システムを非常に簡素化できて、小型高機能になるというような波及もメリットとして得られるというものでございます。
 
【村山部会長】 ちょっとお時間が押してきていますので、スピードアップをお願いします。
 
【新藤主幹(JAXA)】 失礼しました。次をお願いします。
 これが最後のご報告になります。この技術につきましては、今、産業用途、それから宇宙用途、両方について使っていただけるように、各企業と対話をして、並行して評価も進めさせていただいております。
 また併せて、軌道上実証というものも取り組むべく、各方面と調整を進めてございます。次のページをお願いします。
 これで最後、まとめさせていただきます。今回ナノブリッジFPGAという新しい技術を、実際に実力を確かめまして、非常に魅力ある技術であるということを分析しております。引き続きこの技術を使って、製品開発に向けた研究開発を本格化させていきたいと考えております。報告は以上になります。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 それでは、本件は報告事項ですけれども、ただいまの説明について、ご意見、ご質問があればお願いいたします。木村委員お願いいたします。
 
【木村委員】 ありがとうございます。大変興味深いと言いますか、意義深い開発だと思います。
 国際的な半導体の普及の中で、FPGAは非常に肝になると思うので、これは絶対に進めるべきだなと思っていました。特に、日本の和製技術で、これを解決されるというのは、非常に意義の深い取り組みだという風に思っております。
 ここのところで質問を二つばかりお願いしたいのですけれども、これは論理回路を構成していく上で、ハードウェアとしての、ハードウェアのラドハード性というのは示されているというのは分かるのですが、こういうものを開発していく上での開発環境であるとか、IPの互換性、これを全部自分のところで新たに開発するとなると大変だと思うのですが、そういったところについての、ソフト面、論理回路関係のところの環境について教えていただきたいということが1点です。
 それから、2点目ですけど、放射線耐性というのは、論理合成の方法によって、ラドハード性を獲得されているという理解でよろしいのでしょうか。とすると、実際には、容量的には有効な容量がおそらく圧迫されているのではないかなという風に懸念されるのですけれども、そういった面の容量面での不利はないのかというところに質問がございます。以上2点、お願いいたします。
 
【新藤主幹(JAXA)】 ありがとうございます。
 まず、開発環境につきましては、FPGAの開発環境は、一般には、まず論理合成をするというところ、ここはどんなFPGAでも共通化された標準的なものが使われるのが理想的ですけども、そこにつきましては今、ハードウェアの研究開発と並行して、ハードウェアの開発を請け負ってくれている企業が、所謂業界標準的なツールベンダーと今協力して、そこの移植、このFPGA向けに移植をしていただいているという状況でございます。まだ道半ばではございますけれども、非常にユーザにとって使いやすい環境をいずれ整えなければいけないという課題意識のもと、そのように向けて今実施しております、というところでございます。
 それから、放射線耐性につきましては、ちょっとご説明をだいぶ割愛してしまいましたけれども、FPGAの基本的なフリップ・フロップですとか、そういった回路の要所々々に、あらかじめラドハード化した設計を仕込んでおりますので、使っていただくユーザ側は、放射線耐性を確保するために、こういう回路にしなければということを意識しなくても、論理合成すると、自動的にラドハードな回路ができるというものでございます。
 ただし、こういうラドハード化した論理回路をハードウェアにあらかじめ仕込むというのは、当然のごとく、面積的なペナルティとかも発生するのですけれども、今回私達が導入した回路というのは、ラドハード化する前と比べて、今のところですと、面積増としては、数%程度に収まっておりますので、いずれ将来製品を作った時にも、大きく容量が落ちるということはないかなという風に分析しております。以上になります。
 
【木村委員】 ありがとうございます。期待しております。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 急がせておいて申し訳ないのですが、私の方からも一つお聞きしたくて。
 これは非常に重要な研究と私は個人的に考えておりまして、特に防衛分野でもこれは応用可能だと思うのですけれども、防衛絡みの引き合いというのは、これはかなり出てきているのでしょうか。
 
【新藤主幹(JAXA)】 現状、まだそちら関係とは、対話がまだ十分できてないというのが正確かなと思うのですけれども、まだ具体的には、そちらの話ができていないというところでございます。
 ただ、そちらと話をする上では、想定されるのは、デバイスそのもののセキュリティみたいなところも一つ、もう一つ重要な観点として入ってくるのかなと思っていますので、そこも部品技術として、しっかり外から守るということも、ちょっと検討しなければいけないかなとは考えております。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。そちらの分野にも、ぜひともよろしくお願いいたします。
 他に質問はいいでしょうか。どうもありがとうございました。
 
【新藤主幹(JAXA)】 ありがとうございました。
 
【佐野理事(JAXA)】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 それでは、その他の案件として、事務局より2件報告があるようですので、お願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局より、2点でございます。
 まず1件目、資料77-5、スターダストプログラムの新規採択案件ということで、5月24日の利用部会で、非公開審議の際に扱わせていただきましたが、スターダストプログラムの二次提案に加えて、その直後に、内閣府から三次提案の依頼が来たので、こちらについては、この部会の場ではなくて、委員の皆様にメールでご意見等があればということで、内容確認もあわせてお願いをしておりました。
 その後、内閣府衛星開発実証小委の方で審査を受けておりまして、この度この資料の通り、4月6日付で文科省より提案していた5件、計17.3億円ですけども、いずれも配分が決定となりましたので、この場を借りてご報告をさせていただければと思います。
 また、このプログラムに関しては、この利用部会の場で、年度ごとの審査、確認を行っていただいて、先ほどのFPGAについては事後報告ということもやっていただきましたけども、こういう形で、その都度ご確認いただくというかたちになりますので、この5件、実は一次申請でさらに3件走っておりますので、今年度の開始が8件ということですけども、引き続きよろしくお願いできればと思います。
 特に1件目、光学衛星のデータ解析技術の研究と利用実証ですが、ALOS-3を喪失して、2か月前にもご説明しましたけども、まさにユーザ側で早く何か着手できないかということで、我々の方で構想して新しくできた提案です。こうしたものも使いながら、衛星ユーザの方々を、しっかりサポートをしていければと考えております。
 また、2点目の報告事項です。資料をご用意できておりませんけれども、今月14日、JAXAの能代ロケット実験場で発生したイプシロンSロケットの第2段モータ燃焼試験における事故につきましては、その後17日、月曜の祝日ではございましたが、JAXAから第2報、これが発表されておりまして、その後も、JAXAにおいて、現在も詳細なデータや映像等の確認作業を進めているところでございます。
 原因調査の状況につきましては、今月31日、来週月曜日で開催を予定しております、次の調査・安全小委員会、これはH3ロケット試験機1号機打上げ失敗に関する6回目の会合でございますけども、H3の議題と合わせるかたちで、ここの場で能代の件につきましても、JAXAから報告いただく予定となっております。
 委員の皆様には、来週の調査・安全小委の報告内容について、これまでと同様、事務局から共有させていただくことはもちろんですし、今後の宇宙開発利用部会におきまして、今般の事故対応も含めた、イプシロンSロケットの開発状況の全般、こちらの方をJAXAからご報告させていただく、そうした機会を改めて必ずとりたいと思っておりますので、その際はよろしくお願いいたします。報告事項は以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 ただいまの報告について、何かご質問はおありでしょうか。いいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、ここから先は非公開となりますので、一旦ここまでの範囲で事務連絡があればお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 会議資料と議事録の公開について申し上げます。
 本日の会議資料は非公開資料を除き、公開となります。公開資料につきましては、既に文科省ホームページに掲載させていただいております。また議事録につきましても、この後の非公開のものを除き、委員の皆様にご確認いただいた後、文科省ホームページに掲載させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 尚、次回の部会でございますけれども、来月下旬の開催で調整予定でございます。委員の皆様には、後日日程調整のご連絡をいたします。事務連絡は以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 それでは、一般の方はここまでとなります。ここまでのご傍聴、誠にありがとうございました。

―― 了 ――

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