宇宙開発利用部会(第65回) 議事録

1.日時

令和4年3月23日(水曜日) 14時30分~16時30分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. H3ロケットの開発状況について【報告事項】
  2. 「内閣府宇宙開発利用加速化戦略プログラム(スターダストプログラム)」 の進め方について(第64回宇宙開発利用部会(書面審議)の審議結果報告) 【報告事項】
  3. 「国際宇宙ステーション(ISS)に提供するISS構成要素及び搭載物の 安全性確認について;【審査対象】Cell Gravisensing実験」 調査審議結果について【審議事項】
  4. ISSを含む地球低軌道活動の在り方に関する検討状況(非公開)

4.出席者

委員

部会長 村山 裕三
部会長代理 鈴木 桂子
臨時委員 井川 陽次郎
臨時委員 大西 卓哉
臨時委員 三枝 信子
臨時委員 芝井 広
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 髙橋 德行
臨時委員 鶴岡 路人
臨時委員 松岡 彩子
臨時委員 山崎 直子
臨時委員 山室 真澄
臨時委員 米澤 千夏

文部科学省

研究開発局宇宙開発利用課長 福井 俊英
研究開発局宇宙利用推進室長 国分 政秀
研究開発局宇宙開発利用課宇宙連携協力推進室長 須藤 正幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 笠谷 圭吾
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 田渕 敬一
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 溝田 岳
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 横井 奈央
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室室長補佐 山田 真太郎

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 理事 布野 泰広
 宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田 匡史

5.議事録

【村山部会長】 それでは定刻になりましたので、宇宙開発利用部会の第65回会合を開催いたします。
 本日も新型コロナウイルス感染防止のため、前回同様にオンラインでの開催になっております。委員の皆様には御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、事務局のほうから本日の会議に関する事務の確認をお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】 文部科学省事務局でございます。
 本日は、宇宙開発利用部会に御所属いただいております16名の委員のうち、12名の委員に御出席いただいております。運営規則に定める定足数の要件を満たしております。よって、本日の会議は成立していることを御報告いたします。
 次に、本日の資料ですが、事前送付の議事次第のとおりです。
 オンライン状況について、音声がつながらない等の問題がございましたら、事務局へメール、電話等で御連絡ください。
 なお、本日の議題は4件あり、そのうち3番目の議題、Cell Gravisensing実験に関する安全審査についてのみが審議案件となっております。また、4番目の議題、ISSを含む地球低軌道活動の在り方に関する検討状況については、現在こちらの小委員会のほうで審議が進行中の案件であるため非公開とするのが妥当と判断されますので、運営規則の第3条3号の定めにより、当該部分の審議及び議事並びに議事次第の4ポツで下線を付した資料65-4-1及び参考資料の2については非公開とさせていただくこととします。
 事務局からの事務連絡は以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 それでは議題に入らせていただきます。
 最初の議題は、H3ロケットの開発状況についてです。
 皆様御存じのとおり、H3ロケット試験機初号機につきましては、本年1月に今年度の打ち上げを見送る判断がJAXAより示されました。本日はその判断に至った背景と現在の開発状況について御説明をいただきます。
 それでは、JAXAの布野理事、お願いいたします。
 
【布野理事(JAXA)】 JAXAの布野でございます。
 H3ロケット開発に関しましては、先ほど御紹介ありましたように、今年度中の試験機1号機の打ち上げを目指し、総合システム試験、LE-9エンジンの各種試験を進めてきておりましたが、LE-9エンジンの認定試験の実施に先立ち、最終的な対応策の確認のために実施した試験におきまして、一昨年発生しました不具合への対応の見通しは得られたものの、新たに検討を要する課題が確認されました。一連の試験で蓄積したデータを解析し、開発計画に大きな影響を与えることなく打ち上げられる方策の検討を継続してまいりましたけれども、確実な打ち上げを行うための対応が必要と判断し、今年1月に打ち上げを見合わせることとさせていただきました。
 計画どおりに打ち上げが実施できず、関係の皆様の期待に沿えなかったことを大変重く受け止めております。いま一度しっかりと対策を講じ、必要な措置を取った上で、できる限り早期に確実にH3ロケット試験機1号機の打ち上げを果たすべく、関係者一丸となって取り組んでいるところでございます。
 本日は、岡田プロマネより取組状況について報告をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 H3プロジェクト岡田でございます。今日はよろしくお願いいたします。
 それでは、お手元の資料65-1に基づきまして御説明させていただきます。
 1ページは本日の御報告内容で、既に部会長より御案内いただきましたので割愛いたします。
 2ページのH3ロケットの開発経緯でございますが、2014年に開発に着手させていただきました。以来、開発フェーズが進む段階それぞれにおきまして、この部会において御報告をさせていただいてきております。
 2020年5月には、先ほどから話が出ておりますように、認定試験で二つの事象が発生いたしました。LE-9エンジンのあらましにつきましては、15ページ以降に概要、それから、今回、話題とさせていただきましたターボポンプの外観などを載せてございますので、適宜御参照いただきたいと思います。
 この認定試験で起きました二つの事象に取り組む過程におきまして、2020年9月に1度、1号機の打ち上げを延期させていただいております。
 3ページにまいりまして、その後の状況について御説明いたします。
 3ページでは、まずこの1年強、我々が取り組んでまいりましたことについて全般を述べてございます。次ページ以降で個別に御説明しますが、まずこの全般で御説明させていただきます。
 二つの事象の一つ目は、燃焼室の内壁に開口が生じたこと、それから二つ目は、ロケットエンジンの心臓部とも言えます水素のターボポンプのタービンに疲労が観察されたというものです。
 これらにつきましては、それぞれ試験を通じてこの現象を突き止めてまいりました。一つ目は翼振動計測試験、そしてもう一つは技術データの取得試験でございます。これを段階的に実施してまいりました。それぞれの試験につきましては、後ほど御説明したいと思います。
 こういった試験あるいはシミュレーションなどを通じまして、二つの事象のうちの一つ目、燃焼室の内壁の開口につきましては対応策を確立しました。一方、ターボポンプのほうにつきましては、一定のめどは得たものの、確実な打ち上げを行うためにはもう少しお時間をいただいて対応が必要ということになりました。
 これが現時点の状況でございます。これについては後ほど御説明します。
 対応を具体化次第、これまでの方針どおり、つまり、試験を通じてステップ・バイ・ステップで確実にそのリスクを潰しながらいくということと、その上で認定試験を行う、それを確実に行いながら1号機の打ち上げに臨む、この姿勢を変えずにいきたいと思っております。
 なお、またこれも後で御説明しますが、エンジン以外の部分につきましては、1例でございますけれども、総合システム試験などを極力前倒しして、ロケットシステム全体のリスクを低減しつつ開発を進めております。したがいまして、当面はLE-9エンジンの開発に集中していきたいと思っております。
 4ページにまいりまして、個々の事象につきまして、その経過と現在の状況を御説明したいと思います。
 まず、4ページと5ページは、既に対応策を確立した側の燃焼室の課題についてです。
 まず4ページは、2020年9月17日にこの部会におきまして御報告させていただいた内容そのものでございます。当時は、燃焼室の内壁というのは、500か所ぐらいある溝の中の14か所が、幅が0.5ミリ、長さ10ミリ程度開口したということと、それから、その原因につきましてはなかなかまだ絞り込めておらず、ただし、燃焼室内壁が設計値以上に高温化したことはまず間違いないとご報告いたしました。ただ、この高温化の要因につきましては、定常中なのか、あるいは起動ないし停止のときに起きたのか。ここまではまだ絞り込めておりませんでした。したがって、これらの原因を突き止めながら、対策効果の確認をいたしますというのが前回の御報告でございました。
 5ページにまいります。5ページは今度、水素のターボポンプの話です。
 水素のターボポンプにつきましては、幸いなことにといいますか、ほぼ同じ試験でこの事象が同時に起きたということで、タイミング的には同じタイミングで解決に取り組むことができたわけですけれども、その状況は第2段の動翼76枚中の2枚に疲労破面が観察され、これらについて、原因を突き止めるために翼振動計測試験を行うというものでした。それから、その結果として、当初有意な影響があると評価したモード以外の共振が起きて、そのために疲労が蓄積・進行したためというふうに当時推定しておりました。この推定は現時点も変わってございません。
 対応策としては、基本的に運転範囲に関わる構造固有値をその運転領域から除外するためにタービンを設計変更します。これは水素のタービンで起きていますが、念のために酸素のタービン―OTPのタービンについても極力同じような方針で設計変更するということで、同じく翼振動試験を実施した上で検証を行うと御説明いたしました。
 6ページ以降でそれぞれの状況についての進捗を御説明したいと思います。
 まず6ページは燃焼室のお話ですが、以来、2020年11月から燃焼試験を繰り返し行いました。9回1,154秒と書いてございますけれども、様々な燃焼状態において、燃焼室内壁面がどのような温度になるか、燃焼室の外側から、壁のぎりぎり、もう1ミリ以下のところまで温度センサを突っ込みまして温度データを取得しました。試験をやった後には燃焼室の内面をくまなくその変化を観察するということを繰り返しました。また、シミュレーションも並行して行いました。
 こういったことで原因の絞り込みを行った結果としまして、真ん中に書いてございますように、定常燃焼中に壁面に繰り返し高温の温度サイクルが負荷されたことがわかりました。これは一見同じように作動しているエンジンにつきましても、数十度ぐらいの幅で温度が上がったり下がったりするというものなんですけれども、そういったものが負荷されることによりまして、一定方向の塑性の変形が累積して、最終的に開口に至ったというものです。これはシミュレーションでも試験のデータからもほぼ量的に一致するような結果が得られました。
 塑性変形のイメージを下の絵に描いてございます。これはシミュレーションの結果なのですが、左から右に行くように、下側が燃焼室の内面ですが、徐々に膨らみが大きくなって、最後は塑性変形が開口に至るといったことが得られました。
 燃焼温度が高温の状態でこれが進む、ある一定温度以下ではこれが進まないということから、スレッショルドである温度を割り出しました。具体的には下のほうの対応策に書いてございますが、約1100ケルビン以下で作動させることによって、こういった膨らみは生じないということを確立いたしました。
 試験機1号機に関しては、噴射器を機械加工で製造します。これについては、十分な余裕がある運転条件が得られております。また、試験機2号機以降については、コストダウンのために3Dプリンターで噴射器を製造いたしますけども、それについてはもう少しデータを待ちたいという思いがございまして、今後、技術データの取得試験を追加で実施する予定でございます。
 これが燃焼室のお話でございます。
 それから、タービンのほうですけれども、タービンにつきましては、7ページに現状が載せてございます。まず、今回の原因究明、それから対応策の決め手となっているのが、翼振動の計測試験でございます。
 8ページにはその翼振動計測試験のあらましを載せてございます。左側にターボポンプの図がありますが、動翼、四角で囲んだ範囲の中が計測対象です。下の絵にイメージ図がございますけども、動翼というのは1秒間に700回転ほど回転しますので、そこに歪センサを張りまして、トランスミッタを通じて給電をして、高周波のデータを得るといったもので、運転をしながら翼のひずみが測れるというものでございます。
 こういったものを新たに導入できたことにより、技術手法、解析手法としては非常に大きなツールが得られたわけですが、こういったものを通じまして、共振モードの特定、それから今後の対応策の検証をするということで進めてまいりました。
 その状況でございますが、7ページに戻らせていただきます。水素のターボポンプにつきましては、2020年5月の現象を受けまして、全ての翼の設計変更を行い、当時、翼列由来とされていた共振については回避できました。その結果も翼振動計測試験で効果を認めました。
 ただ、その計測試験の最中に、今度は第1段のタービンディスクにフラッタという現象の発生を認めたために、現在その対応策を検討中でございます。フラッタというのは、イメージ的には、例えばこいのぼりがたなびくようなイメージで、ある条件が整うと流体が構造と連成して生じる自励的な振動でございます。共振とは少し発生の仕方が違うものでございます。
 それから、酸素のターボポンプにつきましては、水平展開として設計変更しておりまして、これも翼列由来の共振については極力回避できて、改善効果を確認できております。
 ただし、先ほど御説明しました翼振動計測試験におきまして、従来から生じていたものですが、対応すべき振動応答が一つ見いだされました。その原因は、恐らくはタービン入口部の流れが不均一であるがために、それが要因となって共振が起きている。そういったものが新たに把握されております。
 これは過去から生じているものと思われますけれども、これまで一度も課題として具体化されたことはございません。
 こういった水素、それから酸素のターボポンプの振動現象につきましては、8ページと9ページにもう少し補足で載せてございます。8ページの右側は、先ほどの翼振動計測でどんなデータが得られるかというものです。これはイメージ図ですけれども、横軸がターボポンプの回転数で、縦軸が振動の周波数です。これは3次元的に御覧いただきたいのですが、オレンジのピークで書いてあるものが、手前のほうに大きく立ってくるのが共振であったり、フラッタであったりします。
 この翼振動計測というのはターボポンプの回転数を上げたり下げたりして行います。左側からスィープしていきますと、ある回転数に達すると翼の持っている固有のモードと反応いたしまして、そこに共振が現れる、またフラッタが生じたりいたします。そういった現象が捉えられるものです。
 9ページにはタービンの振動現象が一般論的に書いてございます。左側が加振源の例、そして、タービンの振動の現象としては、共振であったりフラッタだったりという形で生じます。加振源というのは共振という結果で現れます。
 それの対応策としましては、右側に書いてございます加振源そのものをなくすであるとか、低減させるであるとか、固有値を調整する、あるいは減衰を増やすといったことが一般的な対応策として考えられております。
 先ほど申し上げたタービンの流れの不均一というのは、9ページの左上にございますタービンの入り口のマニホールドに、ある一方向から流れてきた流れがぐるっと一周回って、その後流に流れていくのですが、ある部分に対しては乱れの偏りの強い部分がどうしても残る、こういったところをタービンの動翼が通過するたびに振動を受けるといったものでございます。
 7ページに戻らせていただきまして、一番下の御説明です。繰り返しになりますけれども、現時点で残された課題というのは2点です。これらを解決した上で燃焼試験に移行したいと考えています。
 10ページにまいりまして、今後の対応でございます。
 残された課題への基本的な考え方です。これは水素と酸素とターボポンプ共通でございますが、まず試験での確実な検証を基本とする、これは変えません。かつ、ミッションへの影響を最小限としたいと考えています。したがって、可能な限り開発の前倒しを図るということを今やっております。
 水素と酸素それぞれの課題に対応して複数案を並行で設計、製造して、その翼振動試験を順次行って、その結果をもって案を選択するという開発ステップを採用しまして、開発リスクをなるべく減らそうと考えております。
 対応案というのは、今、本当に三、四案それぞれ具体化しつつあるのですけれども、それには幅があります。今までの実績であるとか新規性といったものを加味しながらの設計の成熟度、あるいは新たな設計ですと製造にもスケジュールにおおきく幅が出てきますので、そういったものを勘案しまして、独立な複数案を絞り込んで、どの案から試験をしていくかということを今考えながら進めているところです。
 これを我々、一の矢、二の矢、三の矢というように呼んでいるのですが、一の矢から順次射っていって、効果のあるものを採用しようと考えています。順次、設計と製造を進めておりまして、準備でき次第、翼振動試験に入っていきます。検証が十分終えられない場合に備えまして、後続の案を部品まで作って待機させるということも方針として定めてございます。
 まず、従来設計に最小限の変更を施した試験、これは製造が比較的短期間でできますので、その試験から開始するということで、まさに今、種子島宇宙センターにおりまして、うまくいけば、本日あと1時間ぐらい後にエンジンに着火する予定でございます。検証が完了次第、認定試験を開始する予定でございます。
 もう少し設計的な対応方針ですけども、新たなリスクを持ち込まないという観点から、今まで共振等に対して有効性を検証した設計方針は維持したいと考えております。極力、実績重視でいきたいと考えています。ただし、従来設計の延長ではどうしても対応が不十分である可能性もありますので、ここは新規設計も辞さないということで、新たな設計も取り入れてございます。
 水素のポンプに関しましては、フラッタ耐性を高める。そのために剛性の向上、減衰力の強化を図る方針です。酸素のポンプについては、共振耐性を高めるために固有値の調整、あるいは減衰力の強化等を図ります。また、そもそもの現象の源でありますタービン入口部の流れの不均一性についてのメカニズムを定量的に把握して、加振源の抑制の可能性も今、検討しているところです。
 今後の予定といたしまして、種子島宇宙センターでエンジンの燃焼試験を本日から始める予定でございますけれども、順次、確認してまいりたいと考えております。
 11ページは、これまで1年以上我々が取り組んできました活動を、燃焼試験のタイミングなども含めて御説明しているチャートです。2020年5月に課題が確認されて以来、角田のターボポンプの単体試験、あるいは種子島宇宙センターでのエンジンの燃焼試験などを通じて、例えば、従来設計の検証、原因調査、それから、対策をどのように立てていったらいいかという方針をまず立てていきます。そういう中で、新たな現象であるフラッタが2021年6月に発生し、下のほうに行きますと、設計変更というところには、タービンの設計、製造と書いてございますけども、一つの設計と製造を行うのに大体半年以上どうしてもかかってしまうという現状がございます。こういったものをいかに、そのスケジュールを短縮していくかというのに大分苦労してまいりました。例えば、水素のターボポンプですと、6月にフラッタが発生したためにもう一手打ったというのが10月でございます。二手で解決しなかった問題に関して、現在取り組んでおるというわけです。酸素につきましても同様の状況でございます。
 12ページは、試験機1号機の総合システム、種子島宇宙センターへの機体の搬入でありますとか、13ページには、総合システム試験レベルの試験でございます燃料の充填、カウントダウンの試験であります極低温点検の結果を載せてございますので、御参照いただきたいと思います。
 御説明は以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 それでは、ただいまの説明について御意見、御質問がありましたらお願いいたします。挙手をいただければ、こちらから御指名いたします。
 髙橋委員、手が挙がったと思いますけれども、お願いいたします。
 
【髙橋委員】 髙橋です。岡田さん、御説明ありがとうございました。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
 
【髙橋委員】 プロジェクトリーダーとして大変な重圧の日々だと思いますけれども、その辺は御心労察します。頑張っていただきたいなというように思います。
 このH3は初号機を何とか頑張って打ち上げるという一発勝負のロケットではなくて、20機30機ずっと続けて打ち上げる基幹ロケットですので、その前提で今後の対応の方向性について、私なりのコメントを申し上げたいと思います。あくまでも参考ということですけれども。私はロケットの専門家ではございませんので、一般論としてコメントさせていただきたいと思います。
 岡田さんはもう百も承知かもしれませんが、大事なことは設計で保障するということだと思います。これはもう十分認識されていると思いますが、あえて確認の意味で申し上げたいと思います。設計段階で強度を保障して、評価というのはあくまでも確認をするという位置づけが本来の姿ではないのかなと。もちろん実験でデータを取るという場合もありますけれども、いわゆるマイルストーンとして、ゴー・アンド・ストップをかけるような場合の試験は、あくまでもこれは設計どおりにうまくできているかどうかということを確認するためのものではないかなと思います。
 なぜかというと、設計したものを製造すると必ず製造ばらつきがあって、試験というのは製造ばらつきを含めた最悪状態を実現しているわけじゃありませんので、やはり設計できちっと担保する、もし仮に試験で丸が出たとしても、基本は設計で保障するということが重要だと思います。これは十分御認識されていると思います。
 私の今までの経験から、設計変更が多いプロジェクト、あるいは立ち上がり時期の延期を繰り返すプロジェクトというのは、仮に立ち上がったとしても、その後、様々なトラブルに見舞われるというケースを多く私は経験してきました。強度上のトラブルですとか、あるいは機能上のトラブルですとか、そして、コストアップなどがありました。その原因は基本設計に問題がある場合が多かったです。
 これは仮の話ですけども、もしH3ロケットの基本設計に見直すべき課題があるならば、今しか変更するチャンスはないと思います。それで、もし変更する場合ですけども、先ほど一の矢、二の矢という話がありましたけれども、私は本当に思い切って、一点の曇りなく打ち上げ成功の確信が持てるような、理にかなった無理のない合理的な設計であってほしいと思います。
 それには時間とマンパワーと追加予算が必要となります。したがって、技術的な判断だけではなくて、賢明な経営判断が必要となる場合がありますので、これも含めてお願いしたいなと思います。
 コメントは以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。貴重なコメントありがとうございます。
 これに対してもし何かコメントがあるようでしたら、岡田さん、お願いいたします。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ちょっとお待ちいただけますか。隣に布野理事がおりましたので御相談しました。私のほうから答えさせていただきます。
 
【村山部会長】 はい、お願いいたします。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 どうも貴重なアドバイスをありがとうございました。
 設計で保障するというのはもの凄く大事な考え方だと思います。特にLE-9エンジンというのはまさにその考えを持って、新しい開発の取組をしてきたエンジンです。信頼性というのは設計でつくり込まれるということを肝に銘じてやってきておるのですけれども、いわゆる非常に複雑な物理の現象というのが、どうしても最後に今残っているものの二つではないかなと考えております。
 それに対しては、先ほど製造ばらつきというのは、試験の中で確認し切れないということをおっしゃられたと思いますけども、このエンジンに関して申しますと、それぞれの部品の製造ばらつきが、例えば性能に及ぼす影響をあらかじめ把握した上で、試験の中で最悪値のところのデータを取りに行っています。ですので、設計点だけではなくて、ばらつきを含めた端々のデータを取りながら、仮にこれから100機200機とこのエンジンを造る中で出くわすであろう、そういったものに対して、認定試験の中で保障していくという考えを取っております。ただし、やはりそこは限度のあるものだと思いますので、設計裕度のあるシステムに仕上げていかないと、という思いは私も全くそのとおりだと思っております。
 今おっしゃっていただきましたプロジェクトの初期段階のみならず、今後様々なトラブルが起こり得る、そこは基本設計に課題ありということに関しては、まさにこのターボポンプも今、ある部分は基本設計に立ち返った選択をすることになっておると思います。非常に部分的ではあるのですけれども、そういうことになっています。それが一の矢から二の矢、三の矢と用意しておりますので、そこでこれから一点の曇りもなく、このエンジンを仕上げていくための選択をしていきたいと考えております。
 ちょっと手前みそになってしまうかもしれないですけれども、このエンジンはもう何度か燃焼試験を繰り返しているのですが、非常に技術レベルが上がっているという全体的な実感はあります。ですから、何とか今残されている課題を解決することによって、このLE-9というエンジンを信頼性の高いものとして仕上げていきたいという思いでおります。
 以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 続きまして……。
 
【髙橋委員】 すいません。ありがとうございました。一言だけ。
 どうしても今、開発のプレッシャーという中に日程的な面が入ってくると思います。ですから、今回も開発の前倒しという話がありましたけども、そこは本当に、気にしないでとは言いませんけれども、やはり今後の20年30年のことを考えて、とにかく確実に岡田さんが確信を持てるようなところまで仕上げていただきたい。無理しないでくださいということを最後に申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 どうもありがとうございます。
 
【村山部会長】 続きまして、芝井委員から手が挙がっておりますので、お願いいたします。
 
【芝井委員】 芝井です。大変な御努力、敬服しております。その上であえて意見を申し上げたいのですが、先ほどの髙橋委員のコメントの一部になるかもしれません。私はバックグラウンドが物理なので、どうしてもこういう発言になるのですけれども、やはり今の現象を見たときに、一段深いメカニズム、あるいは理論の理解があるのかどうかが心配になっています。
 今日の御説明ではそこに関する言及がなかったのですが、やはり今の事象の両方、内壁の塑性変形もそうですし、ターボポンプの流れのほうもそうですけれども、もし一段深いことが理解できているのであれば、変更されるだろう基本設計に対する確信は持てるわけですね。今、変更すべきことがあるということは、基本設計の段階でそこが十分ではなかったということを意味しているわけで、そこのところがどうなのかというのが心配になりました。あるのであれば、それで問題ないのですが。
 それともう一つ、どうしたらいいかなんですけども、やはりこういうときは髙橋委員もおっしゃいましたけれども、できるだけ広くいろんな方の知恵を集めるようなことをしていただくのが本当は非常に大事なのだと思います。もちろんいろいろな制約はあるとは思いますが、その制約をなるべく取っ払って、できるだけ日本の英知を集めて、あるいは世界のほかの人の意見を聞けるのであれば聞いた上で、理解をした上で進めていただければいいのではないか。もしそれをしなければ後で後悔するかもしれないので、最善の努力をしていただければ大変ありがたいなと思います。
 以上です。
 
【村山部会長】 はい、どうもありがとうございます。
 それでは、岡田さん、いかがでしょうか。特に前半部分についてのお答えいかがでしょうか。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい、先生、ありがとうございます。
 私自身もこれまでロケットの失敗を何度か経験している中で、現象を分かり抜くということの重要性を非常に感じております。ただ、残念なことにと言いますか、事が起きて初めて深く理解できるということがこれまでもあり、今回もその一つでございます。例えば、フラッタ現象が、今JAXAのスーパーコンピューターを使ってシミュレーションをしておるのですが、どうしても絶対的な数値の評価が難しい。やはりそれは何かというと、物理現象として的確に捉えられていないので、シミュレーションもできないということも一つだと思います。
 そういった中でも、この1年で大分今回のものに関しては我々も知恵がついてまいりました。例えば燃焼室のほうは相当なレベルで深掘りができて、先生おっしゃられるような一段深いところ、今まで設計上は載せてこなかったようなレベルの現象あるいはそのメカニズムを載せた状態で設計を見直すというところまでうまくいきました。タービンに関しましても、フラッタというのは本当に回転機械にとっては天敵で、なかなか物理現象が正確に捉えられなくて、それが要するに再現できないというところはロケットエンジンだけじゃないかもしれないと思っているのですけれども。例えば入口の流れも、今回深く考察する中で分かってきたことも少しずつあります。
 そういったものを対応策の中に何とか載せていけないかなと考えている次第でして、先生のおっしゃられることはまさにそのとおりだと思っております。ありがとうございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 続きまして、鶴岡委員、いかがでしょうか。
 
【鶴岡委員】 はい、御説明ありがとうございました。
 既に一部議論が出ているところですけれども、計画を今後前倒ししていくという話とリスクを軽減していくという点、これはもちろんどちらも重要なのは非常によく分かるところですし、そちらの立場でどちらかを取るとおっしゃれないことも非常によく分かります。ただ、やはりこの二つは非常に明確に方向性が違うことですので、どちらに軸足を置くのかということは明確にしないといけないと思います。
 その観点で計画前倒しというような話であり、これ以上遅れたくないというのはもちろんそのとおりだと思いますけれども、前倒ししなければならない、これ以上遅れてはならないことの一番の制約というのは何なのかなというところが気になっております。予算的な話なのか、オペレーション的な話なのか。それは変えられないものなのか、変え得るものなのか。それによって、前倒しという方向性の話とリスクの軽減という計算が変わってくると思うのです。
 ですから、日程のほうについて、どういうデッドラインがあって、それは変えられるのか、変えられないのかという点について教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。その辺りいかがでしょうか。
 
【布野理事(JAXA)】 まず計画の前倒しと言っておりますけども、御案内のとおり、2度の延期をしたということで可能な限り早く仕上げたいという意味です。先ほど岡田のほうから御説明させていただきましたけれども、複数の対応案を準備しているということで、仮に一の矢が折れたときに、また次の手をやるのに時間がかかるとかいうことがないように、事前に前倒しで部品の製作設計を進めて、可能な限り早く仕上げるという意味の前倒しということでございます。
 それから、デッドラインに関しましては、要は計画がもう既に2度も遅延したということで、ユーザーの方には計画どおり上げられてないということで御迷惑をおかけしているという意味で早くということです。そこはリスクをないがしろ、無視して打つとかそういうことではなくて、髙橋先生もおっしゃっていただいたように、一点も曇りがない、自信を持って上げられるということに仕上げて打つというスタンスには何ら変わりがないところでございます。
 
【鶴岡委員】 ありがとうございます。そうすると、リスクの軽減というのがまず大前提だという理解でよろしいでしょうか。
 
【布野理事(JAXA)】 はい。
 
【村山部会長】 はい、どうもありがとうございます。
 手が挙がっていますので、続きまして、松岡委員、お願いいたします。
 
【松岡委員】 松岡です。聞こえておりますでしょうか。
 
【村山部会長】 聞こえております。
 
【松岡委員】 ありがとうございます。御説明ありがとうございます。あと、今伺った髙橋委員ほかの皆さんの御意見にも非常に私も深く同意しております。
 現在、事象の究明、対応策がもう最優先でされていると思います。今、リスクの低減を優先していろいろ対応策を検討されているというふうに理解しました。いろいろこういう開発で不具合が出て、そこを解決していくと、どうしても性能を場合によっては犠牲にするようなことが間々あるように私の経験からも思っております。
 今、考えられている対応策で所定の能力、性能はきちんと維持できているのかというところが少し気になりましたので、そこについて教えていただければ幸いです。よろしくお願いします。
 
【村山部会長】 はい、ありがとうございます。その点いかがでしょうか。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 コメントいただきましてありがとうございます。
 エンジンの性能というのは、例えば、推力であるとか、車でいうと燃費に相当する比推力といったものがあります。その目標は現在変えずに設計変更というのをその範囲でやっております。
 ただし、場合によっては暫定的に少し様子見のために推力を落として、エンジンを一旦仕上げた上で、最終的には開発完了までにその推力を元に戻していくとか、そういったアプローチは取り得るとは思っておりますけれども、ゴールとしては変えていないというような状況でございます。
 
【松岡委員】 はい、どうもありがとうございました。理解いたしました。
 
【村山部会長】 はい、どうもありがとうございます。
 これでもう手は挙がっていませんので、以上にいたします。
 それでは、どうもありがとうございました。次の議題に移らせていただきます。岡田さん、どうもありがとうございました。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございました。
 
【布野理事(JAXA)】 しっかり対応します。
 
【村山部会長】 燃焼試験も始まるところですので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【布野理事(JAXA)】 はい、分かりました。失礼いたします。
 
【村山部会長】 続きまして、2番目ですけれども、2番目は報告になります。
 前回64回の利用部会で書面審議をいたしましたスターダストプログラムの進め方についてです。事務局提案に対する書面審議の結果を、審議会運営規則の定めにより部会長である私から委員の皆様に御報告いたします。
 まず、本件を書面審議とするに至った経緯です。
 去る2月8日の衛星開発・実証小委員会において、令和3年度補正予算の配分額が決定し、2月18日に内閣府から文科省へ、スターダストプログラムの文科省所掌分の予算の移し替えが行われました。本プログラムの進め方については過去の利用部会での指摘もあり、対応策については早急に利用部会で審議承認の必要があったのですが、日程的に困難な面があり、今回は特別な対応として科学技術学術審議会の運営規則にのっとり、2月21日に書面審査を行うことにいたしました。
 審議の内容としては、参考資料1に示しますスタートプログラムの進め方についての確認ということで、メールによる質疑応答を交え、資料65-2にありますように13名の委員の承認を得ることができ、宇宙開発利用部会としてもこれを承認することといたしました。
 以上、報告をいたします。
 これは報告事項で、既に御審議いただいたところですので、3番目の議題に移りたいと思います。
 三つ目の議題は、ISS構成要素及び搭載物の安全性確認についてです。審査対象をCell Gravisensing実験とした第39回調査・安全小委員会での調査審議結果の報告です。
 小委員会の木村真一主査より御報告をお願いいたします。
 
【木村主査】 はい、ありがとうございます。調査・安全委員会の主査を務めさせていただいております東京理科大学の木村でございます。よろしくお願いいたします。
 資料のほうは65-3-1と65-3-2の二つを使って御説明させていただきます。ページ数がちょっと多いので、私のほうでかいつまんで説明をさせていただきます。画面共有も私のほうでさせていただいても大丈夫でしょうか。
 
【笠谷企画官(事務局)】 はい、大丈夫です。こちらの画面共有を停止いたします。
 
【木村主査】 はい、ありがとうございます。こちらのほうで画面は見えておりますでしょうか。
 
【笠谷企画官(事務局)】 はい、大丈夫です。
 
【木村主査】 このまま説明させていただきます。
 今回、審査対象といたしましては、与圧部での実験装置になりますCell Gravisensing実験ということで、こちらについての安全審査の結果を報告させていただきます。
 少しページを送らせていただきまして、概要のところが3ページ目に当たりますけれども、JAXAでは、日本が国際宇宙ステーションに提供する全ての構成要素、部品及び搭載物について個別に安全審査を実施しています。調査・安全委員会では、この安全審査のプロセスが適切であるかどうかを確認するということを実施いたしました。品質調査の審議方法ですけれども、委員会を2月24日に実施させていただきまして、審議させていただき、本日御報告させていただくという流れになっております。
 まず、審査対象のCell Gravisensing実験について、簡単に説明をさせていただきます。ページとしては6ページになりますけれども、参考資料3として、こちらは安全審査のときに用いました説明資料になります。
 まず委員会の役割について確認をする意味で、ISSの構成要素と搭載物の安全性に関わる責任分担、これは日本政府と、それからNASAとの間での覚書に基づいて役割分担が決まっているのですけれども、そこの確認です。そして、その上で体制として、その次のページにこのような構造の中で実施されておりますということを確認した上で、では委員会では何をするかと申しますと、年に1回、JAXAが実施する安全審査のプロセスが適切であるかどうかについてのチェックを実施する、これが役割ですということを確認いたしました。つまり、安全審査そのものを委員会として実施するのではなく、JAXAが実施している安全審査プロセスがプロセスとして適切に運用されているかということを、運営側からウォッチしますということを確認いたしました。
 その意味で、今回、与圧部の実験装置について、Cell Gravisensing実験、これはかなり間が空いて与圧部実験としては審査に上がったものですから、これをサンプルとして、与圧部実験についての安全審査プロセスというのを確認するというのが今回の議題でございます。
 Gravisensing実験そのものですけれども、少しページを先に進めさせていただきまして、こちらの図が恐らく分かりやすいのかと思います。全体でいうと14ページ目になります。
 審査対象の運用フローですけれども、今回、審査を実施しました装置というのは、新たに何か設備を導入するというわけではなくて、Cell Biology Experiment Facility、CBEF――細胞培養装置ですが、これは既に「きぼう」の中に設置されております。この中に設置して実験を行う、いわゆる供試体に相当するものです。供試体ではありますけれども、実際にはそこに制御系と電源、それからポンプによる循環機能を持っておりまして、それ自体一つシステムとなっております。これを対象としたということになります。
 その次のページを見ていただきますと、今回のGravisensing実験装置の構成ですが、これが多分、先ほどの説明をより分かりやすく説明できるかと思います。
 自動溶液交換器具というのがワンセットございます。これが一つの供試体に相当いたします。この中で培養容器ユニット、貯液ユニット、この間の液体を送るための送液ユニット、これを制御する制御ユニット、このようなものから構成されております。制御ユニットの電源については独立電源になっておりまして、単3乾電池により駆動されるという形式になっております。
 この装置は、右側にございますけれども、軌道上サポート器具、それから、CBEFですね、先ほど申し上げました細胞培養装置、それから顕微鏡、軌道上冷蔵庫といったものと組み合わせて使うことで実験を行うというシステムになっております。
 少しまたページを先に進めさせていただきまして、17ページに、Cell Gravisensing実験の安全審査体制についてまとめてございます。
 「きぼう」利用センターと有人システム安全・ミッション保証室のほうが安全評価を行って、その結果を有人安全審査会に付し、安全審査委員会のほうに付すというような体制になっております。これは基本的には、対象となるところが変わりますけれども、中の構造としては同じものと聞いております。
 具体的な今回のミッションについてのハザードですけど、次から非常に細かい図が続きますので、少し先に飛ばさせていただきまして、このページが多分一番分かりやすいかと思いますけど、20ページでご説明します。ハザード識別の結果ということで、これが今回議論したハザードの一覧になります。
 まず、全ての実験機に求められているスタンダードハザードとして13項目設定されています。これは全ての実験装置においてクリアしなければいけないハザードですので、これについて審査を行うとともに、今回、この装置に固有のユニークハザードということで、化学、生物試料の漏えいがございます。これは液体を内部に持っており、それが一つの特殊性でございますので、それに対するユニークハザードを1件。それから、先ほど申し上げましたように独立電源を持っておりますので、バッテリーに関する安全性。そういう意味でユニークハザードをもう1件、バッテリー破損ということで設定されております。
 それぞれスタンダードハザードについては問題がないことが確認されているというチェックを全て行いまして、さらにここで少し先に飛びまして、24ページから2ページがユニークハザードに相当します。
 今回、先ほどお話ししましたように、中に液体を充填した状態で使う、液体を入れた状態で持っていって、それを循環させて使うということでございますので、これが漏れないかということに対する問題です。これはクリティカルハザードという形で設定されておりまして、評価結果としては、バッグに封入している、打ち上げとか帰還とか廃棄時にはジップロックバッグで二重封入するというような形で対応していると。それから、これは加圧していないので飛散するリスクはないのですけれども、若干漏えいして浸入する可能性はございますので、そこについては速やかに拭き取るというように運用でカバーしているということを確認いたしました。
 もう1点、バッテリーについてですけれども、これはいわゆる単3乾電池を利用しております。民生用ではありますが、適切に部品の検査、スクリーニングを実施して利用に付しているということで、これも確認させていただきました。これもクリティカルハザードとして認識されております。
 その他、ここから先は各項目についての細かな内容が続いておりますので、割愛させていただきまして、ここで審議のほうの議論を少し紹介させていただく意味で、65-3-2の資料のほうの調査審議のポイントを若干説明させていただきます。
 通常どおりの表現で全般とか考え方とかまとめさせていただく、これはいつもどおりの話ですけれども、今回のユニークな部分については、例えば、(4)の項目がございます。抽出されたハザード及びハザード原因に対する対処というところです。特にここで、与圧部内の実験であるので、人体に対する影響・毒性に対する評価というのがあります。これは役割分担上、NASAに対して支援を求めるという、これはMOU上そういう形になっておりますので、そのような位置づけになっています。ここの表現のところが若干、委員会のところで、NASAに依存しているんじゃないかというか、お任せなんじゃないかというふうにも取られかねないので、そこは記述をちゃんとしましょうということになりました。
 もともと毒性評価については、これは役割分担上、NASAに依頼するということになっているのですけれども、中身について、毒性レベルについては、日本―JAXAのほうでも特に問題がないということを確認されて、NASAのほうからも問題がないという確認がされたので、ダブルチェックはできているということです。これはNASAに判断を依頼しているわけですけれども、主体性を損なうものではないとJAXAのほうからも説明がありまして、これを了承しております。
 あと幾つか今回の議論になりました点というか、それほど深刻な議論というわけではないですけれども、封入されている液体の漏えいについて運用で解決するというふうに対応されていますが、これは外で飛散するような状態であると、なかなかその後のハンドリングが難しいのですが、これは加圧されているわけではなくて、飛散等のリスクはないから、拭き取るという動作で恐らく問題なかろうとおもわれます。クルーにとって非常に自然な動作として実現できるということで、妥当と判断されました。
 それから、これは先ほどの繰り返しになりますけれども、細胞培養装置の中に組み込む、いわゆる供試体の扱いですが、制御ユニットが電子的機器類を含むということだとか、電気系のハザードについても当然評価するということが実施されておりましたし、あと、独立電源として使用される民生品バッテリー―乾電池の使用についても、ユニークハザードとしてちゃんと設定されて評価されているということで、これも妥当であると判断されました。
 あと、実験資材については最終的にどうするのですかという議論もありまして、これは実験終了後、回収するのではなく、地球に再突入させることで廃棄するということが確認されたということです。
 以上のような議論を踏まえまして、先ほどの資料に戻っていただきます。最初に戻るのですけれども、ここで調査審議の結果というところを読み上げさせていただきます。
 『JAXAが実施した「Cell Gravisensing実験」に係る安全審査の方法や結果等について、安全審査体制・プロセス、安全解析及びそれへの対処の観点から調査審議した結果、JAXAが実施した「Cell Gravisensing実験」に係る安全審査の方法や結果等は妥当であると評価する。また、このことから、JAXAが実施している安全審査のプロセスや考え方は適切に機能していると判断できる。』
 このような形で、調査・安全小委員会のほうから御報告させていただきます。私のほうからは御説明は以上でございます。
 
【村山部会長】 はい、木村主査どうもありがとうございました。
 ただいまの説明について御意見、御質問がありましたらお願いいたします。挙手いただければと思いますが、いかがでしょうか。安全性の確認という問題ですけれども、いかがでしょうか。
 それでは、いいでしょうか。特に手が挙がってないようですが。米澤委員から手が挙がりました。米澤委員、お願いいたします。
 
【米澤委員】 米澤です。どうもありがとうございました。
 全く素人で恐縮ですけれども、拭き取るということで、クルーの方に御負担かけないように、普通にキムワイプか何かで拭き取って、密封するというので大丈夫なのでしょうか。
 
【木村主査】 ありがとうございます。私も実はその点が気になりまして、委員会でも質問したところですけれども、無重力空間であちこち飛んでしまうと捕まえるのは大変なのですが、加圧されていないので、恐らく液体がそこから漏れたとしても濡れ性のほうが効きまして、そこにとどまっているという状態になります。なので、袋の表面をキムワイプ等で拭いてしまえば、吸収することはできると聞いております。
 
【米澤委員】 大丈夫ですね。どうもありがとうございます。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 はい、ありがとうございます。
 ほかの委員の方はいかがでしょうか。特にありませんでしょうか。
 
(「なし」の声あり)
 
【村山部会長】 それでは質問がありませんようですので、資料65-3-1について、小委員会からの提案どおり決定するということでよろしいでしょうか。御異議はありませんでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
【村山部会長】 それでは、御異議がありませんようですので、決定というふうにいたします。ありがとうございました。
 
【木村主査】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 木村主査、どうもありがとうございました。御苦労さまでした。
 それでは、次の議題に移りたいと思いますが、これから先は非公開ということになります。ここまでの範囲で事務局からの連絡事項があればお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】 文部科学省事務局です。
 会議資料と議事録の公開について申し上げます。宇宙開発利用部会の運営規則に基づきまして、本日の会議資料はここまでの公開資料につきましては公開となっております。これら公開資料につきましては、既に文科省のホームページに掲載させていただいております。また、議事録についても、ここまでの公開部分についてのみ公開となります。委員の皆様に御確認いただいた後、文科省のホームページに掲載させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 事務連絡としては以上です。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。それでは、ここで公開の部会は終了といたします。
 

―― 了 ――

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