宇宙開発利用部会(第59回) 議事録

1.日時

令和2年11月17日(火曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. H2Bロケット打上げ運用終了について【報告事項】
  2. 宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の成果について【報告事項】
  3. 月周回有人拠点(ゲートウェイ)の利用の基本的な考え方について【審議事項】
  4. ISSを含む地球低軌道活動の在り方について【報告事項】
  5. 国際宇宙探査及びISSを含む地球低軌道を巡る最近の動向【報告事項】
  6. 野口宇宙飛行士のクルードラゴンへの搭乗について(その3)【報告事項】
  7. 革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会について【報告事項】
  8. その他

4.出席者

委員

部会長 角南 篤
部会長代理 青木 節子
臨時委員 井川 陽次郎
臨時委員 大西 卓哉
臨時委員 芝井 広
臨時委員 白井 恭一
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 髙橋 德行
臨時委員 高薮 縁
臨時委員 鶴岡 路人
臨時委員 永原 裕子
臨時委員 林田 佐智子
専門委員 藤井 良一
臨時委員 松尾 亜紀子
臨時委員 村山 裕三
臨時委員 横山 広美
臨時委員 吉田 和哉
臨時委員 米本 浩一

文部科学省

研究開発局長 生川 浩史
大臣官房審議官 長野 裕子
研究開発局宇宙開発利用課長 藤吉 尚之
研究開発局宇宙利用推進室長 国分 政秀
研究開発局宇宙開発利用課企画官 笠谷 圭吾
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 渡邊 真人
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 岡屋 俊一
 
(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 理事 布野 泰広
 信頼性統括 泉 達司
 有人宇宙技術部門 HTV技術センター センター長 植松 洋彦
 宇宙輸送技術部門 事業推進部 部長 佐藤 寿晃
三菱重工業株式会社 宇宙事業部営業部 部長 五十嵐 巌

5.議事録

【角南部会長】角南でございます。定刻になりましたので、宇宙開発利用部会の第59回会合を開催したいと思います。
 本日も新型コロナウイルス感染防止のために、前回同様にオンラインでの開催になっておりますが、委員の皆さまには御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。お礼を申し上げます。
 それでは、事務局から本日の会議に関する事務の確認をお願いします。
 
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省事務局でございます。
 本日は、宇宙開発利用部会に御所属いただいている18名の委員のうち、全員18名の方に御出席いただく予定です。運営規則に定める定足数の要件を満足しております。よって、本日の会議は成立していることを御報告いたします。
 次に、本日の資料ですが、事前送付の議事次第のとおりです。オンライン状況について、音声がつながらない等の問題等がございましたら、事務局へメール、電話等で御連絡ください。オンラインシステムの運用上の注意事項等は、事前送付いたしました運用の手引を御参照ください。
 なお、本日の議題は7件あります。その中で3件目の議題、月周回有人拠点(ゲートウェイ)の利用の基本的な考え方については審議事項となっており、他は報告事項となっております。
 事務連絡は以上です。
 
【角南部会長】それでは、最初の議題でありますH2Bロケット打ち上げ運用終了についてでございます。本年5月21日に9号機の打ち上げの成功をもってH2Bロケットの運用が終了いたしました。今後のH3ロケット及びH-TBXへの円滑なミッション以降のために、本利用部会においてH2Bロケット及びH2Bの成果及び課題についてここで総括をしておきたいと思っております。
 まず、H2Bロケットですが、2009年9月の1号機打ち上げから9機連続打ち上げ成功という実績となっています。これまでの打ち上げ運用の振り返りについて、JAXA及び打ち上げ実施者の三菱重工業の方から続けて報告をお願いいたします。よろしくお願いします。
 
【布野理事(JAXA)】JAXA輸送系を担当しております理事の布野でございます。
 H2Bロケットに関しましては、2005年の開発着手から本年5月の最終号機であります9号機の打ち上げに至るまで、途中MHIによる打ち上げサービス化、あるいは宇宙活動法下での打ち上げという運用形態の形態は変わりましたけれども、終始MHIと緊密な連携を取りながら開発、運用を進めてまいりました。
 まず、JAXAから開発フェーズ、運用フェーズにおきます成果並びにH3への継承等について、事業推進部長の方から報告させていただきます。お願いします。
 
【佐藤部長(JAXA)】それでは、事業推進部長をしております佐藤の方から御説明させていただきます。
 H2Bロケットにつきましては、2010年に1度、試験機打ち上げ後、事後評価という形で受けました。それ以降、運用フェーズを三菱さんの方に移管という話も含めて、本日は開発・運用フェーズを振り返って整理をいたしてございます。
 1ページですけれども、概要ということで、御存じのとおり日本で今の時点、最大級の打ち上げ能力を持つロケットとして、H2Bロケットを開発してございます。開発方式も官民が協力して開発を進めるという形を取りまして、当時、非常に短期間でプロジェクト化から試験機打ち上げまで4年間という短期間及び低コスト、271億円程度ですけれども、こういうコンセプトで開発を完了いたしました。
 これが官民協力、それから民間の役割拡大といったような形で、現在のH3ロケットの開発体制にもつながる貴重な経験になっているというところでございます。
 先ほど御紹介がありましたけれども、3号機までJAXAが開発して打ち上げる形を採りましたけれども、その後、民間移管を行いまして、三菱さんの方で4号機から9号機まで打ち上げを行う。成功率としては100パーセントで、日本の基幹ロケットの高い信頼性を示してきたということと、後ほど、有人部門の方からも報告があると思いますけれども、国際宇宙ステーション計画へ大きく貢献を果たしたと考えております。
 また、この開発で獲得した技術、あるいは人材が現在のH3ロケットに引き継がれているということで、我が国の基幹ロケットの維持、発展に重要な役割を果たしているというものでございました。
 2ページに参ります。主なものになりますけれども、まず開発、運用により得られた成果ということで、開発フェーズのところを御説明させていただきます。
 1つ目、大きな技術としてエンジンのクラスタ化技術というのをH2Bで初めて開発いたしました。エンジンが1個ではなく2個あるということで、それの相互干渉、エンジンの立ち上がり、立ち下がりのばらつき、それからタンクからのフィードラインによる供給のバランス、こういった総合的ないろいろな確認をしなければいけないということで、エンジンクラスタ化というのはいろいろ難しいところがあったのですけれども、これらを採用できるように開発を行いました。
 日本ではエンジンの大推力化をするという、エンジン1個でやることもあったのですけれども、技術的な観点、あるいはそれに対応した試験場の確保など難しい面もありまして、クラスタ化という方式を採りました。これによって既存のLE-7エンジンを使用して、大推力の液体エンジンと同等な性能を得ることが可能となってございます。
 2つ目はタンクの技術を紹介させていただきます。1段を大きくするということに併せまして、推進薬を増量する必要がございました。4メーターから5メーターになったわけですけれども、このタンクの開発に当たりましては、新たな摩擦撹拌(かくはん)接合という溶接技術を獲得するとともに、海外からの輸入に頼っていたタンクのドーム部分、頭、お尻部分、こういったところの一体成形技術を国産化して、タンク製造における日本の自在性、自立性を確保したという技術獲得をしてございます。信頼性、品質の向上にも貢献したという技術になってございます。
 3ページに行きまして、3つ目が大型フェアリングの開発技術ということで、H2Aロケットで5メーターのフェアリングを使っていました。これを更に大型化して、3メーター伸ばしたということ。それから、左の図にありますように、実際に運ぶ物資を直前まで入れるというレイトアクセスを行うために、大型アクセスドアを直前まで開けて、そこから物資の出入りを見ていきます。こういったものも装備いたしました。非常に大型化したフェアリングということで、分離機構の部分の開発を増加した空力荷重に耐えられるように開発をしたという部分で、非常に設計技術等で苦労した部分になります。
 それから、4番目が第2段の機体の再突入技術ということで、ミッション終了後のロケットの第2段機体を事前に設定した海域に制御落下させる、この技術を獲得いたしました。これは当時、米欧に続く3番目の技術例となってございます。早い段階からスペースデブリ対策に向けた日本の先導的立場を示せたのではないかと考えてございます。
 4ページに行きます。こちらから運用フェーズのところを少し紹介させていただきます。4号機から三菱重工さんの方に移管させていただきましたけれども、安定した打ち上げを維持する観点から、民間移管した後もJAXAは各号機の打ち上げのデータを評価するということ、それから打ち上げの中で明らかになった技術課題への対応を三菱さんと協力して実施してきました。
 また、部品材料でコンポーネントメーカーさんが撤退するとか、そういった部分もありまして、そういった枯渇による問題に対応するために、部品材料の再開発についてはJAXAの役割ということで、それに取り組んできたということで、三菱さんとともに長期的に安定した運用に貢献してきております。
 また、JAXAの射場を使うということで、周辺の技術ということ、天候制約をどうやって緩和できるかということ、あるいは投棄物によって海上警戒区域を設定するのですが、ステークホルダーがいろいろいらっしゃいますので、これをなるべく縮小していくと。こういったような打ち上げ運用を改善するというところも我々としては取り組んできたということで、打ち上げの成功と高いオンタイムの打ち上げ率を実現してございます。
 下に1号機から9号機までのタイムラインを示してございます。7号機、8号機は機体、それから地上の問題でオンタイムを逃してしまいましたけれども、全体としてのオンタイム率、これは世界一の高さを誇っているというところでございます。
 1点御紹介としては、技術課題の対応の事例ということで、4ページの下の方に示しておりますけれども、2段エンジンのLE-5B-2につきまして、ターボポンプのローターが軸方向に過大に振動する事象が発生するというケースが過去何回か発生しておりました。この事象が地上での試験で発生しますと、エンジンの作動点調整等の追加作業が必要になって、工程が長くなるということから、H2A含めて多数機の打ち上げがだんだん出てきたということで、課題にはなってきたというところです。
 こういう事象に対しまして、H2Bロケットに向けた研究開発、これも並行で進んでおりましたけれども、ここで得られた理論、あるいは膨大な試験データ、分析結果を併せまして、新たな評価方法、それから抜本的な対応策を確立いたしまして、これによって2段エンジンを評価したところ、原因が究明されたということで、H2A/Bに先行適用したという事例がございます。これをH2Bの8号機で初めて試しました。これによりまして今後のH2Aにもより安定的な打ち上げに貢献しますし、H3にもつながる、こういったような取組をJAXAとしては行っております。
 それから、5ページですけれども、国際標準ペイロードラック、あるいはISSの運用に欠かせないバッテリーのような大型貨物を現在の貨物の移動手段では「こうのとり」でしか運べないということで、「こうのとり」を運ぶ唯一の輸送手段として設定したというところでございます。
 一例として5号機のときの例を書いてございますけれども、このときは事前に各国のロケットが失敗を繰り返してしまったということで、補給が非常に危うくなってきた時期です。このときにH2B、「こうのとり」は成功したということで、一部の貨物、事前に失敗した機体に乗っていたもの、これらを急きょ乗せて打ち上げるという重役を担いましたけれども、これもオンタイムで打ち上げに成功したということで、ステーション計画に貢献をした事例でございます。
 6ページに行きます。これらH2Bで培った技術のH3開発への継承ということで簡単にまとめてございますが、まず先ほど紹介いたしましたエンジンのクラスタ化技術、これはいろいろ技術としては確立いたしまして、H3では2基から3基のクラスタを無事開発いたしまして、ステージとしての燃焼試験も実施できたというようなところに技術としてはつながってございます。
 また2番目では大型フェアリングを開発してございます。新たに炭素繊維複合材の自動積層等の技術も入れておりますけれども、H2Bで開発した分離器等の構造設計など、設計技術も含めてコスト低減、あるいは打ち上げ能力の向上を図るということで、大きな不具合なく開発を完了するということにつながってございます。
 それから、7ページがデブリ化防止対策の充実ということで、H2Bで2段機体の制御再突入を実施してきました。これらをベースに次のH3ではISS軌道以外のSSO、あるいはGTOからの軌道離脱や国際ルールである25年以内の軌道の遷移、こういったものにも対応するということをしようとしてございます。
 右側にまとめてございますけれども、今のところSSO、太陽同期軌道では制御再突入をベースとしつつ、能力等で実施できないような場合は、25年以内に落下できるような軌道に入れる。GTOにつきましては、こちらも25年以内に落下できるようにする、あるいは外の保護領域へ投入する。HTV-Xに向けては制御再突入をするという形で、デブリ問題に対応するということをやっていくというふうになってございます。
 それから、8ページが人的な問題ということで整理いたしました。これはよくH3の開発の立ち上げ前に整理したグラフなのですけれども、2012年頃に各ロケットの開発に携わった人材の年齢分布をまとめたものになってございます。H2Bのところ、JAXAあるいはメーカーさん含めてここに携わった人たちが次のH3につながっているというところになってございます。やはりある程度新しい開発がございませんと、図でいう一番奥側にあります維持や研究開発といったプロジェクト的なものではないところに従事する割合が増えてきていたわけでございますけれども、途中段階でH2Bの開発に携わる経験が入ったということで、技術伝承がうまくH3につながったというところを表してございます。
 9ページ、まとめになりますけれども、H2Bの開発、運用によりまして、ISSの安定運用に貢献しました。また宇宙輸送に関する技術向上、それから官民の力を結集し発揮するための開発体制の構築を含めましたマネジメント力の向上、そして将来を担う人材の育成など、貴重な知見、経験を得ることができたと考えています。
 これらを今開発中のH3ロケット、あるいは更にその先の基幹ロケットの発展へ引き継いでいきたいということで、日本の宇宙開発利用の自立性確保に引き続き貢献していきたいと考えてございます。
 下に9号機のときのブルーライトアップしたものを写真付きで載せてございます。今年、コロナ禍で打ち上げが非常に大変だったところなのですけれども、非常に多くのステークホルダーの方の協力を得ながらの作業となりましたというところで、これも非常に急きょ仕立ててぎりぎり間に合わせたのですけれども、機体を直前にブルーライトアップして、地元、あるいは医療従事者に感謝を伝えるメッセージを発信したというようなことも紹介させていただきました。
 こちらの説明は以上になります。
 
【角南部会長】MHIさん、続けてお願いします。
 
【五十嵐部長】三菱重工宇宙事業部営業部の五十嵐でございます。本日、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。H2Bロケットのプログラム、大変多くの人と組織が関わってきました。僭越(せんえつ)ではございますけれども、4号機以降、打ち上げ執行を取りまとめてきました三菱重工といたしまして、H2Bロケットについて振り返ってまいりたいと思います。
 次の2ページをお願いします。H2Bロケットの打ち上げの記録を表にしております。先ほどからございますように、2009年の初号機から2020年まで9機全て成功。7機はオンタイムの打ち上げ、全て国際宇宙ステーションに物資を届けるH2B、「こうのとり」の打ち上げでございます。
 オンタイムができなかったのは7号機と8号機です。7号機では打ち上げの当日、機体の推進系のデータに通常と異なる挙動がありまして、打ち上げの中止の判断をいたしました。私もこのときにはブロックハウスに詰めておりました。すぐに原因究明を行いまして問題を解決して、12日後には無事に打ち上げに成功いたしました。
 それから、次の8号機、設備の火災が発生して、打ち上げの作業を中止しました。これもすぐに原因究明を行い、対策を採ることができて、14日後には無事打ち上げに成功いたしました。
 三菱重工としましては、4号機以降、打ち上げ輸送サービスを実施してまいりまして、また8号機からは宇宙活動法が適用されてございます。
 次の3ページ目をお願いします。少し体制について解説いたします。JAXAさんからの契約によって、H2B、「こうのとり」を所定の地球の周回軌道に投入するサービス、これがH2Bロケットのお仕事でございます。
 それから、左から右に移っているのは、8号機からは宇宙活動法が適用されました。これは法律の狙いは2つありまして、1つ目は人工衛星の打ち上げ管理が許可制となって、弊社が取りまとめて許可を取得するということ。2つ目は、打ち上げ者に第三者安全確保の責任が集中して、損害賠償制度による補償を行うことでございます。これらを含める形でロケットの打ち上げ執行してまいりました。
 次の4ページをお願いします。諸外国のロケットの打ち上げ成功率を比較したグラフということで、H2Bは全ミッション成功、高い信頼性を世界にアピールすることができました。
 次のページをお願いします。このグラフは、当初計画から1週間以内に打ち上げた実績を比率で諸外国のロケットと比較したグラフになります。種子島宇宙センターは必ずしも天候的に恵まれているわけではありませんが、それでも天候による遅延を含んだ確率として、H2Aロケット、H2Bロケットはスケジュール遅れが少ないということが分かります。H2Bロケットは9分の7、78パーセントを達成してございます。
 次のページをお願いします。では、成功し続けるためになすべきことは何なのだろうかと。私たちが学んだことの1つは、失敗の本質が何かを問い続ける、そしていろいろな角度から打ち手を継続するというものです。幾つかトピックを紹介したいと思います。
 次の7ページ目をお願いします。1つは、設計、製造、検査のコミュニケーションです。専門に応じて分業して取り組みますが、組織と組織のはざまに失敗の本質が存在します。互いにコミュニケーションを取って、それぞれ全体へ積極的に関わるよう意識付けて、常態化が必要です。品質は全員参加で取り組むのだという意識と行動ですね。これはパートナー者との間でも同様となります。
 次のページをお願いします。2つ目は、4Mというものと3Hというものの見方です。ものづくりの要素としての4M、それから異常のトリガーとなる3H、こういった視点で失敗の本質が隠れていないかなと問い続けるということ。そして、いろいろな角度から打ち手を継続する、この地道な努力が必要だということです。
 次のページをお願いします。3つ目ですが、信頼性を支えるものというのは、同じものを打ち続けることではないということです。先のページで示しましたとおり、まず物は必ず変わっていきます。更にいうと、変えていくということも必要だということです。H2A、H2Bロケットを運用していく中で、エンジンの改良、バルブの改良、アビオニクスの再開発、固体ロケットブースター、フェアリングの改良、これらを積み重ねながら成功を継続してきたということです。
 次の10ページ目をお願いします。ロケットの不適合件数の傾向をイメージ図で示しました。今こういったカーブを描いております。機体の不適合の件数は減少して、安定を維持することができました。設備の不適合も減少してきております。ただし、長年の使用による老朽化という変化が原因のトラブルが増加する傾向があります。こういったところは対処を継続していく必要がございます。
 次の11ページ目をお願いします。こちらの表は打ち上げの最終判断の責任を持つ執行責任者です。それから、打ち上げ体の組織を束ねるMILSET長、ロケットの発射指揮を実際に行うLCDR、それからH2B運用とロケット運用のインターフェースの責任を負うミッションマネジャーの推移を人の名前を入れて表にいたしました。H2Bを通して人の若返りが進んでございます。
 また右側のところには各号機でのファーストフライトの部品数を表に入れました。部品や材料の枯渇、信頼性向上といったところに対応しまして、H2Bのプログラムを通しまして、これらの初フライトの適用確認を行ってきております。そういう意味でもH2B というのは有益な機会を得ながら進んできたということが言えると思います。
 最後、12ページでまとめになります。H2B、「こうのとり」を運ぶ基幹ロケットとして、一つ一つ確実に役割を果たすことができました。特に100パーセントの成功率と打ち上げ遅延の少なさは世界に誇れる実績です。
 H2Bの運用を通して品質を維持し、安定した輸送サービスを提供するということの実績、方法、人材を得ることができました。同じことの繰り返しで達成できるというものではなく、変化に立ち向かう執念、そして物、人、システム、多面的、継続的に更新していくということが不可欠です。官民協力いたしまして、H3、HTV-Xにつないでまいります。
 以上となります。ありがとうございました。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。ただ今の説明について委員の先生方、御意見、御質問等あればお願いいたします。挙手マークを押していただければ有り難いです。いかがでしょうか。大丈夫ですか。
 特に御意見、御質問等ないようでしたら、事務局の方に戻したいと思うのですが、事務局、何かありますか。
 
【笠谷企画官(事務局)】事務局から1点、報告をいたします。本日のこの後の議題でもISSとか野口さんの打ち上げの話はあるのですが、今ほど速報的に一報いたしますと、昨日、野口さんのロケットが打ち上げられましたが、先ほど3時過ぎにクルードラゴンとISSがドッキングいたしまして、ハッチが開きまして、野口さんの方がISSの方に入室というか、ISSとクルードラゴンがつながりましたので、初期フェーズといいますか、最初のISSへ入るというミッションは完了しておりますということをお伝えいたしました。以上でございます。

【角南部会長】ありがとうございます。野口宇宙飛行士が無事にISSに移られたということですが、10年ぶりぐらいになるのですかね。本当によかったと思います。
 もし御意見、御質問等がなければ、次の議題に移りたいと思います。2つ目の議題でございますが、宇宙ステーション補給機「こうのとり」の成果についてでございます。こちらも本年5月21日にH2Bロケット9号機で打ち上げられまして、8月20日に大気圏再突入によるミッションを完了し、H2Bの運用が終了いたしました。こちらも2009年9月の1号機打ち上げから9機連続ミッション成功という実績となっております。これまでのH2B成果の振り返りについて、JAXAから報告をお願いいたします。よろしくお願いします。
 
【植松センター長(JAXA)】それでは、資料59-2に基づきまして、宇宙ステーション補給機「こうのとり」の成果について御報告させていただきます。
 本来であれば、佐々木理事から御報告がある予定でしたけれども、速報にございましたように15時2分にハッチオープンとなりまして、野口宇宙飛行士の入室ということで現場が佳境になっておりますので、HTV技術センターの植松の方から御報告させていただきます。
 次のページをお願いします。はじめにということで、宇宙ステーション補給機、HTVは、ISSの共通運用経費の我が国負担分に相応する物資の補給、それから有人システムに関する基本技術の習得を目的として、開発、運用が行われてまいりました。
 2009年の技術実証機、初号機の成功以降、今年8月20日に最終号機の9号機が大気圏に突入したことをもって、「こうのとり」全号機の運用を終了しております。
 今回はこの11年間、9機にわたる運用を通じて得た成果を御報告させていただきます。
 次のページをお願いいたします。まずは物資輸送としての成果でございますけれども、全9機で全てのミッションを成功し、確実に物資をISSに輸送いたしました。ISSへH2Bからの物資を安定的に供給することによって、ISS全体の安定的な運用に貢献できたと考えております。
 また、「こうのとり」にしか運べない新型バッテリー、あるいは大型の実験ラック、こういったものを運ぶことによって、ISSの利用成果の創出を引っ張ったと考えております。
 また、国内実験ユーザの試料、装置を日本からISSへ輸送することによって、煩雑な手続等をなくすことによって、「きぼう」利用の機会提供の促進に貢献したと思っております。
 それに加えて、アジア、アフリカ諸国の超小型衛星を輸送して、発展途上国、あるいは宇宙新興国による宇宙利用への参画に貢献いたしました。
 下の方に11年間の年表がございますけれども、11年間の様々なプロセスとして、2015年にはアメリカの宇宙船の失敗によって緊急物資を輸送、あるいは2018年にはソユーズの失敗によって計画を大幅に変更するといったことがございました。先ほどのH2Bの御報告にもありましたように、2015年の5号機の前の2014年10月にはアメリカのシグナス宇宙船の失敗、2015年4月にはロシアのソユーズ、2015年6月にはアメリカのドラゴン宇宙船が失敗するという連続失敗後の8月の5号機打ち上げでしたので、非常に大きなプレッシャーの中、宇宙ステーションで非常にクリニカルである水再生装置の交換物資を輸送するということに成功いたしました。
 次、3ページをお願いいたします。技術獲得としての成果でございますけれども、我が国初の有人施設対応の輸送機を開発いたしました。この技術は将来の国際宇宙探査につながるHTV-Xに継承してまいります。
 具体的には我が国で初となる自立飛行機能を有する宇宙輸送システム技術の獲得。また、ドッキング方式により安全なキャプチャ・バーシング方式を世界で初めて実施をいたしまして、これが米国のドラゴン補給機、シグナス補給機にも適用されて、日本のプレゼンスの向上に貢献したと考えております。
 また、7号機では小型回収カプセルによって拠点からの物資を回収する技術を獲得いたしました。
 非常事態の対応ということにつきましては、例えばHTV3号機でのISSからの分離時にロボットアームによって意図しない初速が与えられたことによって、安全化処置が働くという事態がございましたけれども、このときにも緊急で対処いたしまして、予定どおりの日時に再突入をさせております。この事象につきましては、4号機以降、改善をいたしまして、同事象は発生しておりません。
 次のページをお願いいたします。技術獲得としての成果の続きですけれども、物資の輸送にとどまらず、その輸送機会を利用して、将来の発展につながる技術の飛行実証を行ってまいりました。
 例えば再突入データの収集装置、i-Ballといったものを3号機、4号機に搭載して、再突入時のデータを取得いたしました。4号機というのは再突入する4号機をISSから撮影するということに成功しております。
 また、JAXAで開発した新型の観測センサ、あるいは薄膜太陽電池フィルム、そういったものの軌道上実証を行っております。
 また、7号機では小型回収カプセルを開発、搭載して、我が国として初めてISSからの物資回収に成功しております。
 また、HTV-Xに搭載予定の恒星センサ、こういったものを先行的に8号機、9号機に搭載いたしまして、事前実証という形で実証しております。
 また、9号機におきましては、今後宇宙探査で必要となるドッキング技術の獲得に向けて、HTVに搭載したカメラの映像を無線LANでISSに伝送して、リアルタイムにその様子をモニターするということに成功しております。
 左下の図が小型回収カプセルの回収の様子、また右下の写真が実際に9号機から撮影したISSの映像を掲げております。
 次のページをお願いいたします。もう1つの成果といたしまして、人材育成、あるいは産業振興としての成果を報告させていただきたいと思います。
 HTVプロジェクトが立ち上がってから四半世紀がたちましたけれども、その間の開発、運用を通して、人的資産を形成できたと考えております。特に有人宇宙技術に要求され、こういうものを生み出す機器の開発を通して、極めて高い信頼性を要する宇宙船を実現するといった高い技術能力、専門能力の向上ができたと考えております。
 また、こういった国際プロジェクトに携わることによって、国際的な交渉スキルと技術等を有する人材を多く輩出いたしました。HTVの開発、運用に関わってきた多くの有能な者が多方面の現場でリーダーとして活躍しております。
 また、この11年間で230人の運用管制員を育成いたしました。運用管制員たちは、今後国際宇宙開発等で必要となる緊急事態の対応を含めて、こういったノウハウを生かしてくれるものと考えております。
 次のページをお願いいたします。また、今回、HTVの開発、運用に当たりましては、日本企業としては約400社の企業が参画しております。また、民生技術の採用によって、新たな企業の宇宙分野への参入を促進できたと思います。
 右下にございます写真ですけれども、1つにはパナソニック電工株式会社による世界で初めてLEDを使った与圧部内照明装置の開発。またその下にございますタイガー魔法瓶株式会社との共同研究による真空二重断熱、これは実際に7号機に搭載された回収カプセルに搭載されて、試料を4度に保ったまま回収するといった実績を挙げております。
 また、「こうのとり」を開発してきた技術、これが海外輸出にもつながっております。
 次のページをお願いいたします。例えば我々が開発したランデブ・キャプチャー技術に伴うランデブ運用支援技術、こういったものをアメリカのシグナス宇宙船の運用に我々が委託を受けて支援するといった事象につながりました。
 それから、その下ですけれども、近傍接近システムの通信装置、これを国産化開発いたしました。開発した通信装置についても、シグナス宇宙船に採用されております。
 また、右に行きまして国産のリチウムイオン電池、リチウムイオン電池は国際宇宙ステーションの新型バッテリーにも採用されております。
 その下に行きまして、スラスタ、これはHTV3号機の国産化スラスタを採用しておりますが、この国産化スラスタについて120Nと500Nがありますけれども、特に500Nスラスタにつきましては、世界最高性能の燃費を誇りまして、80台の輸出実績、また72台の打ち上げ実績をもつということで、海外流通につながっていると思います。
 次のページをお願いいたします。ここはやや今まで御説明したところとかぶるところがありますけれども、HTVが大型バッテリー24個の輸送を全て成功させる。また、HTV5号機のように他輸送機の失敗時にも確実に「こうのとり」の運用を実施して、緊急物資を輸送する。あるいは、我々が初めて実現したキャプチャ・バーシング方式がアメリカの宇宙船ドラゴン、シグナスに採用され、またシグナスが我々の近傍通信システムを採用するといったことで、日本のプレゼンスの維持向上に貢献できたと考えておりますし、今回、野口宇宙飛行士がスペースX社の初の国際パートナー搭乗員として選ばれたこと、また欧米等を含む月探査計画への我が国の参画へ道を開いたと考えております。
 次のページをお願いいたします。将来の展望ですけれども、我々が「こうのとり」、HTVの開発、運用を通じて獲得した技術、これを更に効率化いたしまして、ISSへの物資輸送、またそれに加えて国際宇宙探査への貢献、発展につながる新型宇宙ステーション補給機、HTV-Xに継承してまいります。
 HTV-Xは、物資輸送だけでなく、先進的な技術の実証プラットフォームとしての運用、また月周回有人拠点、ゲートウェイへの補給を目指して現在開発を進めているところでございます。
 下にHTVからHTV-Xへの進化が示されておりますが、例えば左にありますサービスモジュールにつきましては、HTVでは量産されていた衛星バス機能をサービスモジュールに集約する。あるいは、その下にございます与圧モジュールについては、搭載能力やサービス能力を更に向上させる。
 また、右にございますこれまでのHTVですけれども、非与圧部を削除して、暴露カーゴを搭載。更に効率のいい搭載方式に変更したということでございます。
 右下にはゲートウェイに向けて更に発展し続けるというイメージ図が示されておりますけれども、今後ゲートウェイの物資補給にも運用していきたいと思っております。
 10ページ、最後のページをお願いします。これは第58回の宇宙開発利用部会からの抜粋でございますが、HTVの技術の継承としては、真ん中辺りにあります赤い破線にて囲ってある部分、HTV-Xを使ったISSへの物資補給により、将来的なゲートウェイの物資、燃料補給といったことにつなげてまいりたいと考えております。
 私からの報告は以上でございます。
 
【角南部会長】ありがとうございます。それでは、ただ今の説明について御意見、御質問等お願いいたします。鈴木さん、どうぞ。
【鈴木委員】鈴木でございます。先ほどの報告と併せてすばらしい成果だと思います。今後の展望のところにも記載がなされていたのですけれども、輸送能力の増強というところで、スライドの2枚目にも「こうのとり」でしか実現ができない大型輸送というコメントがあるのですが、13枚目に参考、ISS物資補給機の比較という形で、船内の物資が他の輸送機に比べて大型のものを運べるというところも客観的に分かる形になっているのですけれども、これが実現できている理由と、あとは大型化させるのに必要な技術開発というものがどういったものなのかというのを教えていただければと思います。これは日本国の技術というものはどこに強みがあってということを皆さんが認識するのに重要かと考えて、質問させていただいています。
 
【植松センター長(JAXA)】植松の方から回答させていただきます。与圧部の搭載能力が他の補給機に比べて非常に大きいということにつきましては、与圧部は正に今軌道上稼働しております「きぼう」実験棟です。この与圧部技術を生かすという意味で、この技術を使ってほぼ同じような与圧部を搭載するということで、HTV及びHTV-Xに採用しております。
 HTVについても非常に多くの物資を搭載できるような形になっておりますけれども、他国の宇宙船はそれほど物資の搭載ができないのですけれども、お互いすみ分けを若干しておりまして、他国、特に例えばロシアのソユーズ、プログレスというものは搭載量が少ないのだけれども、年間の打ち上げ数でそこをカバーするというような考え方が導入されています。HTV、あるいはHTV-Xに関しましても、年に1度の打ち上げで大きなものを運ぶことができるというところになっております。
 大型技術に関しては技術的に難しいところがあり、大型ということで重量も大きくなりますし、燃料の消費も技術的には難しいところですけれども、そこはやはり「きぼう」実験棟の開発で生かして、技術的なリスクを可能な限り下げるというようなことだと思います。
 
【角南部会長】よろしいですか。
 
【鈴木委員】はい、分かりました。
 
【角南部会長】ありがとうございます。他に御質問、御意見等ございますでしょうか。井川さん、どうぞ。
 
【井川委員】ありがとうございます。大変興味深い御説明だったと思うのですが、1点だけ、将来、最後の13ページの方に物資補給機の比較が11月現在として、今月現在で出ているのですが、これはコストというのはどういうふうに評価されているのか教えていただきたいと思いまして、すなわちISSまで1キログラム単位でいうと幾らぐらい運ぶのにコスト差があるのかというのが評価されているのか。
 何でこんなことをお伺いするかというと、今後こういう技術を月ゲートウェイとかに生かすときに、やはりコストというのは無視できない要素として相当大きくなってくると思うのですが、日本の場合、とてもいい技術はあるけれども、やはりコストが高いというのが全てのものについて、これは数つくっていないからという側面もあって、それだけで決められないにしても、ざっとした見積りでも、あるいはざっくりした評価でもされたことがあるのかもし分かれば教えていただければと思います。以上です。
 
【角南部会長】ありがとうございます。コストについていかがでしょうか。
 
【植松センター長(JAXA)】コストについて、単位質量当たりの輸送量については別紙の量を行っております。ただ、海外の輸送機の具体的な打ち上げコストについては、日本で開始されていないところは情報を集めています。我々として推定するところで行っています。
 また、日本の宇宙機の輸送量、価格単位で考えるというところは、我々は分析しておりまして、確かにHTV、「こうのとり」については運べる輸送量が非常に大きいものの、やはり他の宇宙機に比べると単位質量当たりの輸送量が高いというような分析をしております。その分析を踏まえて、HTV-Xでは宇宙船に見合うような単位質量当たりの輸送量で競争できるような部分まで下げるということを目的として、単位の効率化を行う方向で開発が進んでおります。
 ただ、御指摘ありましたように、宇宙探査、ゲートウェイへの輸送といったところにつきましては、やはり更に輸送について厳しく見ていかなければなりませんので、HTV-Xを更に軽量化するであるとか、そういったところを更に検討していく必要があると思っております。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。井川委員、大丈夫ですか。
 
【井川委員】はい、ありがとうございます。
 
【角南部会長】その他御意見、御質問等ございますでしょうか。よろしいですか。ありがとうございました。ただ今幾つか意見を出していただきましたけれども、今後のHTV-Xの開発、運用へも反映をお願いしたいと思います。
 それでは、次の議題に進みたいと思います。3つ目の議題、月周回有人拠点(ゲートウェイ)の利用の基本的な考え方についてということです。これは審議事項ということになりますが、我が国の月周回有人拠点(ゲートウェイ)の利用に関する基本的考え方について、ISS国際宇宙探査小委員会にて議論されましたので、その内容につきまして宇宙開発利用部会にて内容を御審議いただきたいと思います。事務局からまずは説明をお願いいたします。
 
【国分室長(事務局)】宇宙利用推進室長の国分です。よろしくお願いします。資料59-3を御覧ください。月周回有人拠点(ゲートウェイ)の利用の基本的な考え方ということで、ISS国際宇宙探査小委員会で審議してきたものを11月17日付で利用部会にお諮りするものでございます。
 冒頭、背景ですけれども、ゲートウェイは最初のコンポーネントを2023年に打ち上げるという予定になっておりますが、ゲートウェイを活用した利用について、ISSと比較してちょっと状況が違うものがございますので、利用の考え方の基本的な部分はまず先にルールを国内で考え方を整理しておいた方がよいだろうということになり、整理を行ったものでございます。
 具体的には冒頭のところにございますが、ゲートウェイはISSと比べて6分の1から10分の1ぐらいの小さなサイズになっておりまして、利用できるスペースですとか時間とか、若しくは利用資源といったものが限定となっています。また、例えば利用の機会という意味では、大体ゲートウェイに人がいる、有人で使われている期間が1年に1回、30日程度というふうになっておりまして、ISSとは状況が異なる。さらに、こういった状況からあらかじめ各極に利用リソースがISSのように割り当てられるということも想定されていません。したがいまして、ゲートウェイでどのように利用ミッションを行っていくというのは全て国際協議で決定されていくことが想定されています。
 こういった状況を踏まえまして、我が国にとって最大限有益な利用ミッションを行っていくという観点から、戦略的な考え方を整理したというものでございます。
 1ポツの全体方針のところですけれども、国際協議に向けた選定のプロセスにおいての考え方は、中段ですけれども、ゲートウェイが月を周回する軌道であるということですとか、将来的に持続的な月面探査を行う際の中継拠点となることなどの特長、つまりゲートウェイならではの特長を最大限に生かしたミッションを優先するということがまず基本的にあるのではないかと考えています。
 また、この際に一番下のところですけれども、ゲートウェイの利用とISSの利用との相補性ですとか相乗効果も期待できるような戦略的なミッションを選んでいくという方針で考えております。
 また、(2)の国際協議の体制でございますが、現在、ゲートウェイの利用ミッションの選定という先ほどの国際協議の場として、当面の間ということで、暫定的に今のISSのフレームワークを使いまして、参加5極の枠組みから派生したゲートウェイ利用調整パネル(GUCP)といったものが暫定的に運用されておりまして、この中でゲートウェイの利用の在り方が今後検討されていくというふうに想定されています。また、ゲートウェイが完全に運用が始まりましたら、GUCPではなくちゃんとしたパネルに改組されていくものと承知しています。
 次のページですけれども、こういった状況を踏まえますと、今我が国としてどうやってGUCPの場に利用の提案をしていくかということを考えたときに、我が国唯一の公的宇宙機関であるJAXAが我が国としての提案を取りまとめ、GUCPに参加するということが適切なのではないかと考えています。
 また、2ポツのところですけれども、こういった前提を踏まえて、JAXAは以下の考え方に沿って利用を検討し、適宜その状況について報告をするという形で動いていただくということを考えています。
 その上で(1)ですけれども、まず我が国がゲートウェイの利用に当たって、選定していくに当たって、我が国として獲得、蓄積すべき技術の実証をまずやっていくべきではないかと。つまり、深宇宙探査に向けて例えばISECGにおけるシナリオ等々も注視しつつ、JAXAが主導して産業界、学術界とも連携した形で、基盤技術の研究開発と実証を進めていくべきではないかと。
 具体的には例えばECLSSですとか測位、それから通信、それから地球環境の大域的な観測、月表面のリモートセンシング、こういったものは獲得、蓄積すべき技術の実証を優先していくべきと考えています。
 また、(2)ですけれども、利用の実験のアイデアそのものを考える前の段階として、利用ミッションのためのプラットフォームをまず獲得していくべきではないかというふうに考えています。我が国のゲートウェイの利用機会を最大化するためには、利用ミッションを提供するプラットフォームが我が国にとって有益なものである。下から4行目ですけれども、この際、我が国としては(1)、先ほど申しました蓄積、獲得すべき技術の実証に関するプラットフォームですとか、またISSでの「きぼう」でもやっているような様々な利用実験に使うためのプラットフォームということで、我が国にとって有効性や利便性が高く、国際的にもリーダーシップを発揮できるプラットフォームの獲得を目指すべきではないかと考えています。
 この上で、次のページの(3)ですけれども、公募による科学利用ミッションを考えていくとしまして、JAXAはまず(1)の我が国としてやっていくべき実証以外の部分として、国内に対して利用ミッションやアイデアの募集をし、国際競争力を持ったミッション提案として、国際的な調整の場に提案していくと。
 ただし、この取りまとめに当たっては、以下の点に留意するとしまして、まず1番目として、当然公平な提案の仕組みを構築していくということ。それから、2番目として例えばということで、あらかじめミッションの選定の基準や観点をできる限り具体的に公表ということで、例えば限られたリソースで実行可能なこと、要素技術の技術成熟度が高いこと、開発スケジュールが確実なこと、国際協力としての提案が歓迎されるということ、先ほど申しましたゲートウェイの特長を最大限生かしたものであること、ISS、ゲートウェイとの相補性や相乗効果が期待できることなどについて、きちんと具体的にあらかじめ示すということが大事なのではないかと考えています。
 また、3つ目ですけれども、費用負担の在り方ですとかISSと比べて利用環境がどう違うかといったことについても正確かつ丁寧に情報提供を行っていくべきと。
 また、最後ですけれども、国際協議の場においては、やはり日本のためだけのものを提案してもなかなか受け入れられないということがございますので、国際協力ミッションであることですとか、国際的な成果の波及効果が大きいことなどが重要視されることを踏まえて、積極的に国際協力の可能性を追求すると。こういったことをJAXAにやっていただくということを考えています。
 この考え方そのものは、まず本格的な利用の検討が始まる前の段階のものとして今回まとめていますので、今後ゲートウェイの計画の進捗を踏まえて、最後の3ポツですけれども、必要に応じてこの考え方は更新するといった形にしているところです。
 以上でございます。ゲートウェイ利用の在り方のまずは基本的な考え方としてお諮りするものです。御審議のほどよろしくお願いいたします。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。ただ今の事務局からの説明について御意見、御質問があればお願いいたします。はい、吉田委員。
 
【吉田委員】吉田でございます。どうも御説明ありがとうございました。重要な要点がまとめられていると感じました。
 そこで質問というよりむしろコメントですけれども、先ほどの2ポツの(2)に書かれている部分ですけれども、特に後半ですね。この際以降ですけれども、(1)に関するプラットフォームや「きぼう」における実績も踏まえて、超小型衛星の放出機構とか、超小型船外ペイロード搭載実験等、あるいはI-HAB内船内での生命科学実験支援機構、これらは私も非常にこれまでISSの成果として有効性や利便性が高くて、国際的にもリーダーシップを発揮できる部分だったと感じておりますので、是非これをゲートウェイでも引き続き日本が主導して実現するような形で積極的に提案していくということに賛成でございますので、是非よろしくお願いいたしますというコメントでございました。以上です。
【角南部会長】はい、ありがとうございます。そのほかございますでしょうか。よろしいですか。
 特にコメント、修正意見等ございませんようでしたら、これまでの審議を踏まえて資料59-3について小委員会からの提案どおり決定するということでよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、決定といたします。ありがとうございました。
 それでは、次の議題へ進みます。4つ目の議題ですが、現在検討が進められているISSを含む地球低軌道活動の在り方について、ISS国際宇宙探査小委員会にて中間取りまとめ素案が検討されました。その内容につきまして事務局から報告をお願いいたします。
 
【国分室長(事務局)】宇宙利用推進室長の国分です。こちらは資料の59-4を御覧いただきたいのですが、こちらはISS国際宇宙探査小委員会からの現状の報告でございます。
 スケジュールで申しますと、本件につきましては宇宙基本計画、まず冒頭のところを御覧いただきたいのですけれども、まず本年6月に新しい宇宙基本計画において、2025年以降のISSを含む地球低軌道活動について、各国の検討状況も注視しつつ、具体的に検討を進めるとの方針が示されております。
 一方、現時点ではISSの参加5極の間で運用延長に関する方針はまだ決定されていないという状況であることを踏まえますと、今回中間取りまとめということで、12月末までに素案を中間取りまとめに最終的にまとめていく予定ですけれども、今後延長の方針が決まった際に、他国でも方針が決まりつつあるという状況になった際に、遅滞なく意思決定を行うことができるよう、これまでの経緯ですとか成果を整理し、今後の意思決定に当たって速やかに検証すべき項目を整理するということまでを中間取りまとめの取りまとめる事項としているところです。
 ただ、この際、ISSだけの検証をしてもしようがないので、昨今のアルテミス計画への参画を踏まえた深宇宙探査活動の展開とは政策的にも技術的にも密接に関係しているということにも留意して取りまとめを行っているものでございます。
 1ポツでございますが、経緯といたしまして前回、ISSの運用を延長するときの経緯を書きつつ、その後、費用対効果の向上を図りつつ、2個目の丸ですけれども、研究開発のプラットフォームとしての利用というのを進めていく一方で、国際宇宙探査における有人活動を推進するプラットフォームとしての役割も担ってきたということを書いております。
 さらに去年10月のアルテミス計画への参画を踏まえ、また今年の7月にはブライデンスタインNASA長官と文科大臣との間で共同宣言を署名したということもこちらに記載しました。
 こういうことも踏まえまして、本年6月に先ほど御説明した宇宙基本計画において以下の方針が示されたとして、次のページですけれども、2025年以降の活動については、各国の検討状況を注視しつつ、その在り方について検討を進め必要な処置を講じるとされているところでございます。
 2ポツでございますが、アルテミス計画を踏まえまして、ISSに更なる位置付けが加わっていますという御説明ですが、冒頭にありますように、今後の更なる深宇宙探査のための実証の場としての位置付けが、我が国だけではなく他国においても位置付けが強調されてきているというところで、1つ目の丸では宇宙機関間のグループである国際宇宙探査共同グループ、ISECGの中でも実証の場という位置付けが最近出されたシナリオの中で書かれているものでございます。
 2個目の丸ですけれども、米国においても今年の4月にNASAが公表した計画の中でも、ISSを実証の場として活用と記載されているところです。
 また、3つ目の丸ですけれども、先ほど御説明したとおり、我が国においても宇宙基本計画の中で同じく実証の場という表現が記載されているというところでございます。
 次の3ページ目ですけれども、3ポツの中でこれらを踏まえまして、これまでの活動と成果を総括してございます。また、まだ2020年でして、2024年までまだ4年間は少なくとも運用が決まっていますので、今後の取組としても記載させていただいているものでございます。
 これは全部御説明すると時間がかなり限られておりますので、冒頭のところで御説明しますが、我が国が2024年までのISS運用延長への参画を決定した2015年頃の状況と2020年の現時点の状況を比較して、国際宇宙探査で必要となる技術の実証の場としての活用ということ、加えて利用の拡大、この2点についてそれぞれ大きな進展が見られています。さらに残りのISS運用期間、つまり2024年までを通じて更なる進展が計画されていると。
 一方でとしまして、これまでの活動というのは、日本実験棟「きぼう」が国やJAXAによって運用されていることが前提となっているものでございまして、ポストISSを見据えた民間事業者の参画拡大に向けた取組が始まっているものの、制度面での整備を含め今後も中長期的な取組が必要であるとさせていただいているところでございます。
 この下から(1)としては、深宇宙探査技術の獲得状況ですとか、(2)で「きぼう」の利用の拡大状況、こういったものを記載させていただき、4ページ目に行きまして、「きぼう」の利用の分量がかなり多いので、国内での利用、国際的な利用ですとか有償、無償、それから人材育成といった多岐にわたる観点から成果を記載させていただいております。また(3)の中では民間事業者がこれから参画を拡大していくに向けて、どのような取組を行ってきているか、今後予定されているかといったことを記載させているところでございまして、冒頭に御説明したような概要になるということございます。
 また、5ページ目の4ポツからですけれども、これまでの成果として3ポツに記載させていただいた上で、4ポツにおいては今後の地球低軌道活動について少し中長期的な目線から、ISSの寿命を踏まえた国際的な協力枠組みの展開ですとか、輸送等の技術の進展などが将来的な見通しが必ずしも明らかではないものの、現段階で想定される利用ニーズや期待について、例えば2040年代頃からのバックキャストとして利用ニーズとか期待がどういうふうに考えられるか、どういうポートフォリオがあり得るかということを4ポツの中で簡単にまとめているものでございます。
 まず1つ目の丸ですけれども、2024年代の低軌道活動の姿として、1つは深宇宙探査に向けた持続可能な研究開発基盤として、宇宙環境利用が定着しているのではないかということ。また、有人宇宙滞在の場として多様な宇宙活動の進展が図られているのではないかということが挙げられるのではとさせていただいています。
 また、これらに向けた地球低軌道活動のポートフォリオとしては、丸1として国際宇宙探査に寄与する技術の開発、実証の場、丸2として社会的課題解決や知の創造、それから人材育成等につながる継続的な成果創出の場、丸3として民間による商業利用の場、これらの3つのポートフォリオで持続的な形で整理されていくのではないかというふうにまとめられています。
 また、各種ヒアリングをした結果として、3つ目の丸ですけれども、具体的なニーズがそれぞれ丸1、丸2、丸3については挙げられたということもここに記載させていただいております。
 この上で5ポツのところでまとめていますのが、今後最終取りまとめに向けて検証していくべき事項でございます。5ページ目の一番下ですけれども、今後2025年以降のISS運用延長の可否を判断していくに当たっては、以下に示した事項について検証していくことが必要と考えられるとした上で、6ページ目の上のところは宇宙基本計画の最新のものを抜粋させていただいておりますが、これも踏まえまして下段になりますが、2025年以降のISS運用延長の可否判断に当たって必要な検証項目といたしまして、6つの事項をここに掲載させていただいています。
 1つ目は、国際宇宙探査を見据えた上での地球低軌道活動のビジョンというものが明確に設定できていること。この際、ISSの寿命を踏まえた国際的な協力枠組みの展開等が必ずしも明らかになっていないことも踏まえ、柔軟なビジョンであること。
 2点目としまして、更なる国際宇宙探査に必要な技術の獲得が見込まれること。
 3つ目として、社会的課題の解決、科学的知見の獲得、国際協力等のために、ISSの利用価値が高く見込まれること。
 4つ目として、若手が宇宙環境で実験、研究を経験する場として、ISSを活用することで宇宙活動を担う人材を長期的、継続的に育成する好循環を構築できること。
 5つ目として、民間が主体となった利用へのシームレスな移行が見込まれる。これは宇宙基本計画に書かれていたものですけれども、またそのための方策が実施可能であること。
 そして最後に、これも基本ですが、費用対効果向上のためにコスト削減方策の実施が見込まれること。
 こういった6つの項目を今後、中間取りまとめの後、最後のページにも書いてありますが、まず米国議会でISSの運用延長をどうするかというのが決まった後になることを想定していますが、先ほどの6つの検証項目について最終取りまとめに向けて検討、議論を行っていくということを予定しているものでございます。中間取りまとめまであともう一回小委員会で検討することを予定していますが、現段階での御報告として御説明させていただきました。
 以上でございます。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。それでは、ただ今からの事務局からの説明について、御意見、御質問等があればよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございました。
 それでは、引き続き小委員会の方で中間取りまとめの議論を進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、次の議題へ進めます。5つ目の議題ですが、国際宇宙探査及びISSを含む地球低軌道を巡る最近の動向であります。国際宇宙探査などに関する最近のトピックスについて事務局から説明をお願いいたします。
 
【国分室長(事務局)】はい、承知しました。資料の59-5を御覧ください。
 まず、この資料にはまだ書いていませんが、つい先ほど、3時過ぎに野口宇宙飛行士が無事に宇宙ステーションに到着しまして、ハッチも開き、入室も完了したところでございます。これから半年間の長期滞在になりますが、我々事務局としても今後の無事の帰還を祈っているとともに、今コロナ禍ではございますけれども、野口さんの活躍というものが日本だけじゃなくて世界中の人々に見ていただいて、いろいろな形で応援していただき、夢や希望につながっていくということを期待しているところでございます。
 また、この資料の御説明に移りますが、1枚おめくりいただいて、アルテミス合意についてというものがございます。こちら報道等で御覧いただいた方も多いかと思いますが、先月10月13日、米国時間ですけれども、アルテミス合意に我が国が署名したというものがございます。
 こちら概要のところでございますが、アルテミス合意というものはアルテミス計画を含んだものではございますが、さらにアルテミス計画ですと、火星を見据えた月面の持続的な拠点化というものでございますが、これに限らず水星ですとか小惑星とかも含んだ形での広範な宇宙空間の各国宇宙機関による民生探査、利用の諸原則について、関係各国の共通認識を示すということを目的としておりまして、こちらの法的拘束力のない政治的宣言として合意されたものでございます。
 参加国としましては、こちら記載させていただいております米国や米国が個別に声を掛け、またそれに応じた計8か国という形で、日本、カナダ、イギリス、イタリア、オーストラリア、ルクセンブルク、UAEが最初のフェーズでの合意した国ということになっております。※印のところに書いてありますように、必ずしも今回合意したメンバーだけが参加したという形ではなくて、今後新たな国の署名も受け入れるものでございます。
 こちら、10月中旬に署名されていますが、我が国においては文科大臣と内閣府の宇宙政策担当大臣の両名がバーチャルでオンライン署名をしております。米国側はブライデンスタインNASA長官が署名しております。
 次の2ページ目ですけれども、この合意の中身ですが、基本的に政治的宣言であり、これまでの宇宙条約を含む宇宙諸条約に基づくルールをきちんとやっていきますよという宣言になっております。例えば宇宙空間における民生探査利用のガバナンス強化のために共通ビジョン確立を目的としたもので、各署名国の宇宙機関間によって実施される民生宇宙活動に適用されるものでございます。
 (2)でございますが、国際的な諸原則の確認ということで、例えば平和目的の確認、透明性の確保、相互運用の確保、宇宙飛行士等の緊急時の相互援助、宇宙物体登録、科学的データの公開等、これまでの宇宙に関するいろいろな法的フレームワークに書かれているものをベースとしておりますが、こういったものを今後もきちんとやっていきましょうという内容の確認になっております。
 また、特徴のあるものとして、(3)以下に挙げさせておりますが、例えばアポロ計画のときの月面の旗ですとか足跡ですとか、そういった天体上の活動の証拠をきちんと遺産として保全していきましょうということ。
 (4)が多分一番ニュースになっていると思いますが、宇宙資源の採取及び利用というものが宇宙条約に沿った形で行われるべきだということ。同時に、宇宙資源の採取というものが宇宙条約で禁止している国家による天体等に関する主権の主張等に当たらないということを確認するものでございます。
 文部科学省としては、例えばはやぶさが行っているような資源というか天体の砂の採取といったものというのは、宇宙条約の中ではもともと科学的調査に関するものは除くといって除かれているものですので、現段階で(4)で想定されている活動が日本の中であるものではございません。
 (5)のところですけれども、安全区域を設定してお互いの干渉を避けましょうということ。
 (6)ですけれども、軌道上のデブリについては、低減のための責任がありますよということを明示したものでございます。
 こちらがアルテミス合意に関する説明です。
 3ページ目、別の話ですけれども、新しい日本人宇宙飛行士の募集ということに関して、10月23日に公表させていただいております。募集の開始時期は来年の秋とさせていただいておりまして、募集人数も若干名ということ、また今後5年に1度程度の募集サイクルを繰り返すことで応募の機会を増やしていくという方針も併せて公表しています。
 背景としましては、現役の日本人宇宙飛行士の年齢層がだんだん上がってきておりまして、今7名いらっしゃる宇宙飛行士の平均年齢が51歳で、最年少の金井飛行士も43歳。一方、先ほどのアルテミス計画にもございますが、ゲートウェイの搭乗が始まって、だんだん宇宙飛行士の月面やゲートウェイでの活動が活発化していく2020年代後半を考えますと、2025年には4名、2030年には残り2名というふうに宇宙飛行士の数がだんだん減っていってしまうということが想定されています。
 一方で、先ほど文科大臣とNASA長官の共同宣言において、日本人宇宙飛行士の活動機会が具体化されたということ、それから先ほどのアルテミス合意の署名等によって、国際宇宙探査や月探査に向けた機運が高まっていること、こういったことを踏まえますと、新しい世代の宇宙飛行士を募集していく必要があるのではないかと。
 一方で、上の募集内容の3つ目にありますが、選抜や訓練にはやはり4~5年かかってしまうということを踏まえますと、現段階で来年にはなりますが、募集を開始するということを公表した上で、1年ぐらいのリードタイムを設けて、具体的な公募要領などをつくっていくという方針で公表させていただいたというものでございます。
 以上が新たな日本人宇宙飛行士の募集についての御説明です。以上でございます。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。それでは、ただ今の報告内容について御意見、御質問があればお願いいたします。吉田委員、よろしくお願いします。
 
【吉田委員】吉田でございます。アルテミス合意の内容について1つ質問させてください。基本的にはこれはアルテミス計画を含む広範な宇宙空間の活動について、民生探査とか利用の諸原則についてということで、各国の共通認識を示すものであるというのが一番上に書かれておりまして、2枚目の(1)、目的のところで更に詳細に書かれていますが、1行目から2行目、署名各国の宇宙機関により実施される民生宇宙活動に適用ということなのですけれども、現実的には宇宙機関によって実施されるわけではない、本当に民間が独自で実施する民生宇宙活動というものもこの先にあり得ると思うのですけれども、これだけを読むとそれはこの合意の中にカバーされないのか、あるいはそういう民間主導の活動については、各国はどういう認識で現状あるのかということをもしありましたら是非教えていただければと思います。
 
【国分室長(事務局)】こちらには細かく書いておりませんが、宇宙機関により実施される民生宇宙活動の範囲に、宇宙機関と契約によって実施される民生の宇宙活動というもの、例えば民間の企業とJAXAですとか海外でしたらNASAとかと契約によって行う宇宙活動も同様に含まれる。つまり契約の中で縛るといいますか、アルテミス合意に基づいてやっていきましょうねということが記載される、この精神が反映されるといったことになると思います。
 したがいまして、そういった契約の中で民間の宇宙活動については、アルテミス合意に適用することが可能ですが、一方で完全に宇宙機関とは全く切り離された民間の活動というものがもしあれば、それはアルテミス合意の適用の範囲にはなっていません。ただ、そういった活動に対しては、そもそも合意の署名者に入っていない国ですとか、そういったほかの活動もございますから、そういったところにはアルテミス合意に署名している国が合意に基づいて、ルールに基づいてやっていくのだということを示すことによって、影響を与えていくことができるのではないかということがアルテミス合意の中に記載されています。
 以上です。
 
【吉田委員】御説明ありがとうございました。私もそうあるべきかなとは感じていますが、現実的には米国の民間企業のロケットでそれ以外の国が、独自のどんな企業でも構わないのですけれども、民間プロジェクトとして宇宙活動を行うということがこの先、場合によっては加速度的に広がることになるのかなと。そういうのに対して、少なくとも野放しではなくて、ここで合意した、署名した国が率先して良い前例を示すことによって、それに皆さん従いましょうねという良い宇宙探査、宇宙活動の平和利用に向けた正しい方向性が維持されるのが理想的かなと感じているところです。
 以上です。
 
【国分室長(事務局)】補足ですけれども、今回のアルテミス合意は法的フレームワークとして、つまり国際約束ではございませんで、飽くまで政治的宣言なので、拘束力があるものではございません。ですので、基本的にこれまである宇宙の法的フレームワークに基づいて、各国は活動していくことになりますし、アルテミス合意の中にも書かれているのですが、これからもさらにルールメイキングというのはもちろんしっかりやっていきましょうということも同時に明記されていますので、そういったものを踏まえて、各国は宇宙活動をこれから行っていくというものでございます。
 
【吉田委員】補足説明ありがとうございました。大変よく分かりました。
 
【角南部会長】続きまして、鶴岡委員、よろしくお願いします。
 
【鶴岡委員】ありがとうございます。鶴岡です。宇宙飛行士の募集の件で1点コメントなのですけれども、今回発表されたときに、参考ということで前回の応募条件というのもJAXAの方から資料に入っていたかと思います。これは13年前のものですが、今後応募条件の方を詰めていくのだと思います。
 若干気になったのが、たしか11まである中の8番目に、日本人の宇宙飛行士としてふさわしい教養等ということで、美しい日本語、日本文化や国際社会、文化への造詣等々を有することという項目があるのですね。今までの感じですと、やはり宇宙飛行士に何となく日本代表のようなものを託してきたような感覚があったのだと思います。そういう背景から、日本人としてふさわしいということで、美しい日本語とか日本文化という話が出てくるのだと思います。
 ただ、今の時代ということを考えたときに、もちろん日本語が美しい方がいいのですけれども、こういったものを文字として条件に示すというのは、ちょっと時代感覚からいくとなかなかいかがなものかなという感じがしております。
 ですから、これは前回のということなので、参考で今回も出されているのですけれども、今回、募集を出すときには条件として美しい日本語とか日本文化への造詣というものが入ってくるのはいかがなものかなと。きょうの資料にはありませんでしたけれども、これは気になっていたところです。
 以上です。
 
【国分室長(事務局)】ありがとうございます。確かに発表したときにJAXAから説明資料集というものを出しておりまして、そこで前回、12年前の応募条件についても配らせていただいています。こちら、やはり我々も前回のJAXAからの日本人宇宙飛行士募集は12年前になっていて、人材育成という観点からはこれまでのJAXAが積み重ねてきたノウハウだけではやはり足りないと。この12年間に他の企業、例えば自動車業界ですとか航空業界ですとか、いろいろな業界に人材育成のノウハウは相当新しいものが蓄積されていると考えています。したがいまして、今回リードタイムとなっている1年間に、是非他の企業の方がお持ちのノウハウをどんどん取り入れて、応募要項の中に反映していただくことを考えております。
 御指摘のとおり、もしかしたら今から見るとどうなのかなという古い考え方もいろいろあるかもしれませんので、そういったことについてもこの1年の間に検証して、新しい最新の人材育成に関するものを踏まえた応募条件にしていこうと考えています。御指摘ありがとうございます。
 
【吉田委員】ありがとうございます。
 
【角南部会長】その他御意見、御質問等ございますでしょうか。よろしいですか。ありがとうございました。
 それでは、6つ目の議題に移ります。6つ目の議題は、野口宇宙飛行士のクルードラゴンへの搭乗についてその3ということでございますが、先ほどから御報告がありましたように、日本時間11月16日午前にケネディ宇宙センターからファルコン9ロケットにて打ち上げられましたクルードラゴンへの野口宇宙飛行士の搭乗について、事前に事務局からJAXAにおける安全確認について資料が送付されておりますが、JAXAから現状の報告をお願いしたいと思います。
 
【泉統括(JAXA)】それでは、JAXAの泉の方から報告させていただきます。資料につきましては、事前に事務局の方から皆さまに提出させていただいておりまして、内容についても確認をいただいているものと考えておりますので、詳細な説明は割愛させていただきます。
 皆さまにお送りしたのは11月10日付NC版であったかと思いますけれども、本日の資料ではA改訂版、12日版になってございます。この違いにつきましては、当初のNC版では最終的に未確認であった事象、これを確認できるということを前提に記載させていただいておりましたが、12日までに全て記載どおりで割愛いたしますが、11ページ、まとめのところだけ簡単に紹介させていただければと思います。
 資料の11ページの方をお願いします。5ポツ、まとめでございますが、2017年7月から安全確認チームを設置しまして確認や審議を行ってきておりまして、今回クルードラゴン宇宙船運用初号機への野口飛行士の搭乗に当たりまして、宇宙船、それからその打ち上げロケット、野口さんが搭乗されるそのものの安全性についても問題ないということを確認してございます。
 その他、ISS全体の安全、飛行士の状況につきましても問題ないことを確認した上で、先ほど御説明いただきましたように16日に打ち上げられたものでございます。
 結論としましては、既に打ち上げた後ではございますが、ISS長期滞在のための搭乗は安全性評価の観点から妥当であるという結論に達してございました。
 現状でございますが、飛行中は順調に非常に順調にいっておりまして、細かなものは幾つかあったのでございますけれども、安全に関わるようなものは全くなく、御案内のとおり本日の13時13分にハードドッキングが完了してございます。その後、15時2分にISSとの間のハッチをオープンいたしまして、15時15分頃ISSに入室したという状況でございます。
 本日の報告は簡単でございますが、以上でございます。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。ただ今の御説明について御意見、御質問等などがあればお願いいたします。よろしいですか。ありがとうございました。野口宇宙飛行士のミッション達成を祈願いたしております。
 それでは、次の議題へ進みます。7つ目の議題ですが、革新的将来宇宙輸送システムの実現に向けたロードマップ検討会についてでございます。本件は5月に実施した56回宇宙開発利用部会にて決定されました革新的将来宇宙輸送システムの実現に向けた我が国の取組の強化方針に基づきまして、文部科学省にて設置されました検討会の内容について事務局から説明をお願いします。事務局、よろしくお願いします。
 
【笠谷企画官(事務局)】事務局、文部科学省の笠谷でございます。それでは、御説明させていただきます。
 今ほど角南部会長からもお話があったかと思うのですが、本年1月から5月にかけて当宇宙開発利用部会の下に将来宇宙輸送システム調査検討小委員会を設けさせていただきました。その中で革新的将来宇宙輸送システムの実現に向けて、我が国の取組について小委員会の方で御議論していただきました。
 細部は触れませんが、本日の参考資料2に本年5月の小委員会の提言、取りまとめ内容の概要について記載がございます。5月の取りまとめの中で現状とかそのようなことが言われている中で、今後の取組方策ということで、基本的には今後取組方策として基幹ロケットの維持強化、H2A、H2B、イプシロン等の維持強化をしつつ、そして革新的将来宇宙輸送システムの実現ということで、将来の政策ニーズへの対応や将来の大きな需要、市場形成と一体となり、革新的将来宇宙輸送システムの実現を目指すと。そして、抜本的低コスト化等を産官学が役割を果たしながら実現ということで、これについては将来宇宙輸送システムの実現を行うということがうたわれております。
 この中で今後国としてやっていくことは、研究開発課題の設定と進捗管理ですとか、あと研究開発課題とか目標とか実現時期とかのロードマップを策定するということ。また、今は例えばH2AでしたらJAXAとMHIさんですし、イプシロンロケットでしたらJAXAとIHIエアロスペースさんとやっておるのですが、将来輸送系システムを恐らくJAXAが中心になるかとは思うのですが、JAXAと他の民の方、またアカデミア、産学官どのような体制を組むか。共創体制、共に創造する体制というふうに書かせていただいていますが、そのようなこと。JAXAと民間、アカデミアとの連携体制を構築するかということ。そして、研究開発のマネジメントを推進していくというようなことを検討していく。そのためのロードマップをつくって検討していくということが本年5月の輸送小委員会の提言でうたわれております。
 その点を踏まえまして、本日の資料7-1の方でございますが、こちらの方で検討に際して文部科学省においては、研究開発局長の下に検討会の方を設置いたしました。
 1ポツは設置の趣旨でございますが、文部科学省はこの観点でございますが、今ほど私が申し上げたように小委員会の方でそのような概要をまとめさせていただきまして、ロードマップの策定を行うことになったと。この検討を行っていくということが書かれております。
 また、文部科学省では主に政策ベースの大きな観点でのロードマップをつくろうとは思っておるのですが、その他さらに技術的な詳細については、下の方に必要な調査分析、研究開発等の事業計画や組織機構の立案を別途JAXAにおいて技術ロードマップ検討として進めるということになってございます。
 そして2ポツでございます。この検討会での検討事項ということでございまして、遅くとも2040年代前半、そこを目標としております。そこのために将来宇宙輸送システムの実現の意義ですとか価値を明確化すること、そして(2)として我が国としてのビジョン、政策動向、市場動向に対応して事業化等を含む実用システム(出口)の在り方はどうかと。
 そして3ポツとして、イノベーションを生み出す挑戦的なものを含む研究開発課題の洗い出しと研究開発対象とする技術の方向性ということで検討していこうと思いまして、こちらの方は会の設置期間としては令和4年3月までとあるのですが、ただ基本的にまず当然翌年度の概算要求ですとか、また宇宙政策委員会の方に考え方を反映していく必要もありますので、来年の5月ぐらいまで検討会の方で検討いたしまして、取りあえずのまずその時点での中間まとめというものを出したいとは思っております。それらをまた宇宙政策委員会等の方に報告していくということを考えております。
 それに先立ちまして、こちらの検討会の方は先ほど申し上げました宇宙開発利用部会輸送小委員会の下で提言を受けて検討を行いますので、またこちらの宇宙開発利用部会の方にも報告をさせていただきたいと思っております。
 また、その最後、中間取りまとめだけではなくて、論点ですとか議論の方がある程度固まってきましたら、また、こちらの部会の方にも報告したいと思っております。
 引き続きまして、資料7-2の方は今ほど私が申し上げたロードマップの目標ですとかロードマップの位置付け等が記載されているとともに、3ポツの方で検討会の主な検討事項というのが書かれております。こちらの方も2040年代の社会を目標にしているのですが、そこでの輸送系の在り方を考えるに当たって、バックキャストで2040年代の社会はどのような様態であるかと。
 その社会ではどのように宇宙が使われているかと。そのためにはそれだけの宇宙の利用を支えるためには、やはりどの程度の宇宙輸送システムのニーズがあるのか。例えばどれだけの打ち上げ頻度ですとかどれだけの機体システムですとかどのようなものが求められるかということをバックキャストで検討できればと思っております。
 そしてまた、打ち上げ費用の徹底的なコストダウンを諮るために、もちろん打ち上げ需要の増大ということはあるのですが、その他にも機体システムですとか機体の製造方法、量産化の過程で何かあるのかということ。あと、国際分業体制ですとか地上の追跡系等、またこれは先々の話でまだ具体的にはこれだということではないのですが、制度的な障壁というものがあるのでしたら、それらのものを撤廃することによって何か時間的な短縮ができるのではないかということを考えております。
 2040年代を目標に将来輸送を進めるということになりましたので、ステージゲート方式による研究開発の進捗というものを一例として考えておりまして、例えば何年後までにどのような技術を獲得していくと。さらに、その先というのは技術のレベルを持っている者に対して、次の高いレベルの技術を要求していくというふうなことで、最初は幅広い企業というか幅広いチームに機会の提供を与えつつ、どんどん技術的に高いものを絞り込んでいくようなやり方で考えていければと思っております。
 そして、先ほどJAXAと民間企業様、アカデミアとの共創体制ということを言いましたが、どのような研究体制、共同体制があり得るべきものなのかということを考えております。
 また、少し話の毛色が変わるのですが、日本の宇宙産業の規模というのは、宇宙政策委員会等の報告によりますと大体1.2兆円というふうに言われております。ただ、まだまだこの産業規模を大きくしていくと。大きくしていって、今宇宙に参画していない製造業さんですとか他の企業様も宇宙に参入していただくということを考えて、宇宙の規模を大きくして、先ほど申し上げた打ち上げ頻度、打ち上げ需要の増大、そういうことも考えたいと思っているのですが、民間企業の参入を促すために、企業から見て宇宙は事業予見性があるというか、やれるという、そういうふうに見える必要があるかと思いまして、どのようなことでもって事業の予見性を与えることができるのかというようなことを考えていきたいと思っております。
 7-3はロードマップ検討会の委員の名簿でございます。詳細は個別には言いませんが、主査は遠藤様で、元JAXAの副理事長でございまして、輸送系小委員会の方でも主査を務めていただきまして、引き続きこちらの方の検討でも主査をやっていただくということでございます。
 雑ぱくではございますが、私の説明は以上でございます。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。それでは、ただ今の説明につきまして御意見、御質問等があればよろしくお願いします。米本委員、どうぞ。
 
【米本委員】東京理科大学の米本です。今御説明がありまして、ロードマップ検討会を冒頭のところでの経緯を説明していただきましたが、よく分からなくなってしまったのが、同じ主査でロードマップ検討委員会と将来宇宙輸送システム調査検討小委員会という2本立てにしなければいけなくなった経緯というのは一体どこにあるのか。つまり、将来宇宙輸送システム調査検討小委員会であればいいのではないかと思ったのですが、そこの経緯についてお話ししていただきたいというのが1点目。
 それから2点目は、ロードマップ検討委員会の経緯についてはいろいろな方面から話を聞いていまして、昨年、文科省さんの方が事務局になった将来輸送系に関する意見交換会というのがありまして、そこでかなりいろいろ議論したものが吸い上がって、それでロードマップ検討会の議題として反映されるという流れを聞いていましたけれども、それは一体どうなっちゃったのでしょうかということをまずお聞きしてから、また追加で質問したいと思います。
 以上です。
 
【角南部会長】まずその2点についてお願いします。
 
【笠谷企画官(事務局)】お答えいたします。まず、輸送小委員会の方で御議論を本年の1月から5月までやっていただきました。そして今回、ロードマップ検討委員会の方を別途局長の私的諮問会議で立ち上げた理由といたしましては、もちろん今米本先生がおっしゃったように、議論の継続性というかそういうことも大事ではございますが、将来20年先の検討ということもありまして、正に今申し上げました民間のニーズですとか事業性ですとかそのような観点からも検討していただくということでございまして、ロケットとか現在利用されている方以外にも、将来的に利用される方、全日空さんですとか、あと今後民間企業の事業予見性ということもありましたので、要は事業に出資するような方々、銀行さんですとかベンチャーキャピタルさんですとかそのような方々。そしてあと、宇宙基本法で安全保障の話が大きく出ているということもありますので、防衛省の防衛研究所の方、安全保障の観点からも議論いただくということで、そのような方々を集めて議論して、将来輸送について検討しようと思いましたので、局長の私的諮問会議という形で新たに立ち上げさせていただいたということでございます。
 また2点目について、中須賀先生とか稲谷先生が別途勉強会をやられてはおります。そちらの方も文部科学省はいろいろ御意見も聞いて、意見交換をさせていただいてはおりますが、現状、そこの勉強会の方は先日行われて以降は止まっておりますので、特にそこから直接論点というかそこが来るという関係にはなっておるので、そちらの方の勉強会の話が進みましたら、そちらの方の状況はお聞きしたいとは思っております。基本的には5月までの輸送小委員会で提言と各界の皆さまからのヒアリングに基づいて、論点というかそういうものを整理させていただいて、検討の方を進めていきたいと思っております。以上でございます。
 
【米本委員】意味は分かりました。私としては、将来輸送系に関する意見交換会という流れでかなりいろいろな意見が吸い上げられるというふうに伺っていまして、最後の第5回の宿題については、東京理科大学としても個人としても、かなり誠意を持って何回も会合をつくったということがありまして、それが全く今関係ないと言われてしまいますと、文科省さんが事務局だったということもありまして、それを聞いて正直申し上げましてがっかりしました。一体その成果はどうなっちゃったのだろうと思っています。
 これは私のコメントなので特にお答えいただく必要はありませんが、話の中でも出てきているのが2040年代というビジョンは今から20年後の話になります。野口宇宙飛行士が搭乗したのも民間で開発した、もちろんJAXAさんの大きなトピックになっているわけでありますけれども、乗っているのは民間の宇宙船であるということと、NASAもバックアップしていることは確かですが、官民を挙げての新しい展開になっていまして、そういった宇宙輸送を有人という枠組み、そういう形のビジョンというのは2040年代もう既に始まっているということは、20年後の世界というのは当たり前になってしまうと思うのですね。そこから何度も言われたように、バックキャストという言い回しは急に稲谷先生とかから出てきていまして、そういったところを見越すと、それに向けて我が国としてのロードマップを考えていかなければいけないのかというのが大きなテーマになると思うのですね。
 資料の59-7-2を見てみますと、4つ項目が上がっていまして、そこには一言も有人のことが書いていない。キーワードすら出ていないということに関して違和感を持っています。いろいろな事情があってそうなるということがされるのではないかと思うのですが、既に2014年の内閣府宇宙政策委員会案のところにもはっきりと宇宙輸送の発展性をどうするのかという議論がある中で、それが消されているという中でのロードマップの検討委員会というのが一体何を考えながら進んでいくのかというのが非常に不安になりましたので、どうお考えになっているのかということを言っていただければと思います。
 以上です。
 
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省です。今ほど言いました有人につきましては、現在、本年6月の宇宙基本計画の中では、こちらの輸送系に関しては、将来における有人輸送の重要性に留意することとするということで、ちゃんと有人輸送の重要性に留意して検討していくということになっております。
 こちらの検討会の方でその点についてどのように議論するか、今詳細は決まっておりませんが、ただ当然、私、輸送のニーズということを申し上げましたので、当然有人飛行の市場規模というものはどれぐらいなのかですとか、実際それの研究開発のコストというのはどうなのかということの検討というのは、当然されるものだと思っております。
 あと、先ほど勉強会の話が少し出ましたが、私の言い方が誤解を招いたのは申し訳ないのですが、そこが意見交換をさせていただきたいと思っておりますので、我々がそこを全く対応しないとかそういうことではないと思いますので、私の言い方が誤解を招いた言い方でしたら申し訳ありませんでした。
 
【角南部会長】米本委員、よろしいですか。
 
【米本委員】本当はよろしくないのですけれども、説明としては分かりました。言っておかないと終わらないので。
 
【角南部会長】後でまた意見交換するということでございますので。
 
【米本委員】コメントですけれども、やっぱり我が国がこれだけ野口宇宙飛行士もどういう状況で国際宇宙ステーションに行っているかということだとか、宇宙船を開発している民間の企業が月、火星というところまで踏まえていろいろ言っている中で、国際社会はみんなそれに向けて一体どうしたらいいのかというのを相当議論されているところで、やはり日本の腰が引けているなと思われているのはしゃくだと思います。以上です。
 
【角南部会長】ありがとうございます。芝井委員、どうぞ。
 
【芝井委員】前回の最後にも少し申し上げたのですが、今提示していただいているところの丸の3つ目に打ち上げ費用の徹底的なコストダウンを図るということが書かれています。前回は数十分の1と書かれていたので、さすがに難しいのではないかという御意見を申し上げましたが、やはり2040年代以降の新しい宇宙輸送システムとしては、コストダウンというのはとても大事な側面で、そのこと自身は大賛成なのですが、例えばロードマップを作成されるに当たって、もう1つのメンバーリストを見せていただきますと、本当に打ち上げを開発してきた方が割合としては少ないのではないかと心配しております。
 徹底的なコストダウンというのは、本当に新しいアイデアとか、新しい技術開発がなければ、ほとんどそういうことはできないと思いますので、もちろん出資してくださる方が多いことは大事なのですが、どういうふうな技術開発したらどれぐらいコストダウンできるのかというもう少し丁寧な議論をしていただいて、地に足の着いたロードマップが作成されるということを是非期待したいと思います。
 以上です。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。事務局、どうですか。
 
【笠谷企画官(事務局)】事務局でございます。今ほどの委員の御指摘はもっともかと思います。我々といたしましても、今委員がおっしゃっている技術がなければ、いかに出資者がいようともというのはおっしゃるとおりで、その面もあると思います。
 我々としても、検討会のメンバーとしてはこのメンバーではあるのですけれども、例えば検討会ごとにロケットでしたら今ニュースペースの方も含めて現状とか将来に向けてどうかというヒアリングというのはさせていただく予定でございますので、委員が言われたように、我々も20年後ということで例えば100分の1とか10分の1とかコストダウンありきで夢物語的なロードマップというか、技術的に裏付けのないものをつくっても確かに意味がございませんので、そこはしっかり技術的にちゃんと裏打ちのあるところも考えたいと思います。
 ただ、一方、20年間というのは短いか長いかというのはあるのですけれども、その間に技術的なブレークスルーですとか量産効果によるコスト減とか、そういうようなものもいろいろあるとは思いますので、そこはいろいろな方面からコスト減にはアプローチしていきたいと思います。おっしゃるとおり、まずは技術の裏付けがないと駄目だというのはおっしゃるとおりかと思います。その点、しっかり留意して取り組んでいきたいと思います。ありがとうございました。
 
【角南部会長】よろしいでしょうか。横山委員、どうぞ。
 
【横山委員】横山です。関連するようでしないかもしれないので恐縮なのですけれども、芝井先生の御発言の後に申し上げるのもすごく心苦しいのですが、先頃SPICA衛星が残念ながら候補から取下げという報道がありまして、非常に驚いておりまして、芝井先生を初め非常に高い評価を得ているプロジェクトで、文科省としても推進に尽力をされてきたと思います。大型プロジェクトがいかに難しいかという芝井先生の御発言は、非常に実感がこもった貴重なものであると思いますし、あとSPICAが今後どうしてこれだけ長年多くの研究者が尽力していたにもかかわらず、残念ながらこういうことになったのかというのも文部科学省としては非常に押さえておく必要があるかと思いますので、今のコストダウンの話に関連付けて精査していただくと、今後全体として貴重な財産になるかと思いますので、僭越(せんえつ)ながら発言させていただきました。以上です。
 
【角南部会長】芝井委員、今に関連するところでしょうか。
 
【芝井委員】横山先生、SPICAに言及していただきまして、ありがとうございます。この件に関しては別途、JAXAの方で御報告があるのではないかと期待しております。私自身は推進の中心にはいましたけれども、定年退職後は実質的には関わっておりませんでして、大変残念ではあります。
 以上です。
 
【角南部会長】米本委員、また手が挙がっているということでしょうか。どうぞ。
 
【米本委員】度々で申し訳ありませんが、芝井委員の言葉のとおり、コストダウンしなければ宇宙利用は進みません。イーロン・マスクが実施をしたのは、スペースシャトルもそういうことを目指していたのですけれども、再利用において輸送コストが下がると。今の段階で既に競争力は世界ナンバーワンになっています。部分的な再利用ですけれども、それを彼は完全再利用にすれば100分の1にしてやるということの最初の証明をしたというところで考えていただきたいと思います。
 ですから、量産効果でコストダウンの限界はあるのですね。使い捨てである限り。ですから、再利用が1つの大きなキーであり、再利用によって信頼性、安全性が高まったところで人も乗れると。そういうロジックになっています。これはずっと長年言い続けられていることでありまして、私が特に言っていることではないのですけれども、そういうロジックです。
 本当かというふうに言われて、何度も同じような議論はたくさんあるのですけれども、一番いい例は飛行機です。787の開発費はどんどん高騰して、2兆円までたどり着きましたが、我々が海外に行くのに30万で安いチケットで行けるというのは、5万回という発着、20年という使用ということができるからです。
 宇宙は他に技術的に難しい事情があるので、全くそれと同じことをすることができませんが、そこまで行かなくても再利用というものをイーロン・マスクは示してくれたとおり、それによる宇宙開発の発展というのはあるのだと世界中は今信じているわけですね。そういうところをやっぱり共通に理解して、何をすべきかを本当に議論していただきたいと思います。これ以上言うと声が大きくなってスピーカーが壊れると思うのでやめます。
 以上です。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。そのほか御意見ございませんでしょうか。よろしいですか。ありがとうございました。米本委員はじめ芝井委員、いろいろと御意見を頂きましたので、今後の検討会の議論へ反映もお願いしたいと思います。
 それでは、最後になりますが、事務局から連絡事項があればお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】本日は御議論の方ありがとうございました。会議資料と議事録の公開について申し上げます。宇宙開発利用部会の運営規則に基づきまして、本日の会議資料は公開となっております。また既に文部科学省のホームページで資料も掲載させていただいております。議事録についても公開となりますので、委員の皆さまに御確認いただいた後、文部科学省のホームページに掲載させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 事務連絡としては以上となります。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございました。以上で本日の議事は終了いたしました。これをもちまして本日は閉会といたします。長時間にわたりましてオンラインで誠にありがとうございました。
 

―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課