宇宙開発利用部会(第57回) 議事録

1.日時

令和2年7月21日(火曜日) 15時00分~17時30分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 革新的衛星技術実証1号機 小型実証衛星1号機(RAPIS-1)の成果について【報告事項】
  2. 日本人宇宙飛行士の米国商業有人宇宙船(USCV)への搭乗について(その2)【報告事項】
  3. 月探査協力に関する文部科学省と米航空宇宙局の共同宣言について【報告事項】
  4. 宇宙科学探査ミッション進捗報告(はやぶさ2)【報告事項】
  5. 宇宙ビジネス振興の課題:人材育成の視点から 【報告事項】
  6. 地球観測衛星データを用いたCOVID-19に対する解析状況について【報告事項】
  7. その他(H-IIB 9号機報告、H-IIA 42号機報告、宇宙基本計画改訂報告)【報告事項】

4.出席者

委員

部会長 角南 篤
部会長代理 青木 節子
臨時委員 井川 陽次郎
臨時委員 大西 卓哉
臨時委員 芝井 広
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 髙橋 德行
臨時委員 高薮 縁
臨時委員 鶴岡 路人
臨時委員 永原 裕子
臨時委員 林田 佐智子
専門委員 藤井 良一
臨時委員 松尾 亜紀子
臨時委員 村山 裕三
臨時委員 横山 広美
臨時委員 吉田 和哉
臨時委員 米本 浩一

文部科学省

研究開発局長 生川 浩史
大臣官房審議官 岡村 直子
研究開発局宇宙開発利用課長 藤吉 尚之
研究開発局宇宙利用推進室長 国分 政秀
研究開発局宇宙開発利用課企画官 笠谷 圭吾
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 渡邊 真人
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 岡屋 俊一
 
(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 理事 國中 均
 理事 張替 正敏
 信頼性統括 泉 達司
 研究開発部門 革新的衛星技術実証グループ グループ長 金子 豊
九州大学主幹教授 都市研究センター長 馬奈木 俊介

5.議事録

【角南部会長】定刻になりましたので、宇宙開発利用部会の第57回会合を開催したいと思います。
 本日も新型コロナウイルス感染防止のために、前回同様にオンラインでの開催になっておりますが、委員の皆さま御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 初めに、事務局の方に人事異動があったとのことですので、御紹介をお願いします。事務局、よろしくお願いします。
 
【笠谷企画官(事務局)】委員の皆さま、初めまして。私、原田企画官の後任で7月3日に着任いたしました笠谷と申します。委員会では皆さまからの御意見を賜りまして、より良い政策をつくっていきたいと思います。委員の皆さま、よろしくお願いいたします。
 
【国分室長(事務局)】続きまして国分と申します。倉田前宇宙利用推進室長の後任として7月1日に着任しました。2013年から15年までも正に利用部会の運営事務局として携わっておりまして、一部の方にはまた改めてになりますが、今後ともよろしくお願いいたします。
 
【角南部会長】それでは、事務局から本日の会議に関する事務の確認をお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】それでは、本日は宇宙開発利用部会に御所属いただいている18名の委員のうち、17名の先生方に御出席いただく予定ですが、3名の先生方、今遅れての御出席となります。
 運営規則に定める定足数の要件を満足しております。よって本日の会議が成立していることを御報告いたします。
 次に本日の資料ですが、事前送付の議事次第のとおりです。オンライン状況について音声がつながらない等の問題等ございましたら、事務局へメール、電話等で御連絡ください。オンラインシステムの運用上の注意事項等は、事前送付いたしました運用の手引きを御参照ください。
 本日の議題は7件あり、全て報告事項となります。
 事務連絡は以上でございます。

【角南部会長】ありがとうございます。
 それでは、最初の議題であります革新的衛星技術実証1号機、小型実証衛星1号機の成果についてです。昨年の1月18日にイプシロンロケット4号機で打ち上げられました本衛星が計画どおり1年間の運用が終了しましたので、その成果についてJAXAから御報告いただきます。お願いします。
 
【張替理事(JAXA)】JAXA、張替でございます。部会長から御紹介がありましたように、1年間の定常運用を無事終了しまして、小型実証衛星1号機、これは7つの部品コンポーネントをJAXAがまとめ上げて、200キログラムの衛星として運用したものですけれども、無事運用の終了を終えまして、6月24日に停波いたしました。
 同時に打ち上げましたほかの6機については、現在も実証テーマ側の皆さまの方で運用しております。停波を終えましたので、その現時点での衛星システム及び搭載実証テーマについて同省も目標を設定しておりますけれども、その成功機種に照らしてどのような成果が得られたかということと、更に5年後として設定しました、主に社会実装を目指すアウトカムも既に1年の実証で達成されているものが出ておりますので、そういったものも併せて御報告させていただきます。
 それでは、詳細は革新的衛星技術実証グループ長の金子より御報告させていただきます。
 
【金子グループ長(JAXA)】御紹介のありましたJAXAの革新的衛星技術実証グループの金子でございます。それでは、資料に基づきまして説明させていただきます。
 2ページ目に本日の報告内容の目次がございます。まず1号機の概要、それから実証テーマの成果、それから衛星プラットフォームとしての成果、最後まとめを報告させていただきます。
 資料の右下のページ数でいきますと3ページ目になります。まず革新的衛星技術実証1号機の概要でございますが、目的としましてはそこに書いてございますように大きく3つありまして、最初の丸1は衛星産業の国際競争力の獲得、強化、それから2番目は宇宙利用拡大の促進、それから3番目は宇宙産業のベンチャービジネス促進や優秀な人材の育成といった大きな目的を持っております。
 真ん中の図を御覧ください。これはイプシロン4号機に搭載された図でありまして、それぞれの要素を示しております。上からまず小型実証衛星1号機、RAPIS-1と呼んでいますが、これは200キログラム級のJAXA開発の衛星でございます。ここにその下に書いてある7つの実証テーマを搭載しております。その下に50キログラム級の超小型衛星3機を搭載しました。それから更にその下、ちょっと見にくいのですが、その下に3機のキューブサットを搭載しております。
 右側の図はRAPIS-1の軌道上外観図です。大体サイズは1辺1メートルの立方体に近いもので、3ページの右側の図ですが、実証テーマの1つである軽量太陽電池パドルが展開しているところでございます。
 4ページ目に参りまして、革新的FPGAの軌道上評価ということで、これはNECさんの提案の実証テーマでございます。原子スイッチを用いた放射線に強い宇宙用集積回路を実証するものでございます。
 下に参りまして実証結果ですが、1年間の運用期間を通じて放射線によるエラーは発生しませんでした。
 それから軌道上でのFPGAの書換えにも成功しております。
 それから3ポツ目ですが、このFPGAは耐放射線性が高く、更に書換えが可能なということで特徴を持っております。
 それからサクセスクライテリアの達成状況でありますが、一部のエクストラサクセスまで達成しております。
 アウトカムですが、この本格的な事業化に向けて活動を既に開始したところでございます。
 次のページ、5ページ目に参りまして、X帯のダウンリンク通信の軌道上実証でございます。慶應義塾大学の実証テーマです。これはX帯通信を用いて大容量データのダウンリンクを実証するもので、実証結果としましては合計2.65Gbpsのエラーフリーの通信速度を確認しております。これは低軌道からのダウンリンク通信としては世界最高速度を達成しております。
 それからサクセスクライテリアですが、エクストラサクセスまで達成しております。
 アウトカムですが、これらで得られた知見が宇宙ビジネスのスタートアップ企業に活用されるということが期待されます。
 次のページ、6ページ目に参りますが、これはグリーンプロペラント推進系の軌道上実証です。宇宙システム開発利用推進機構の実証テーマです。これは低毒性推進薬を用いた安全かつ低コストの推進系を実証するものです。
 実証結果としましては、まず低毒性のHAN系推進薬、SHP163というのですが、これを用いた推進系としては世界で初めて軌道上実証を達成したと。
 それから性能も当初の目標を上回っておりまして、もともとの基準である累積噴射回数1万回に対して1万3,660回、それから累積噴射時間4,635秒を達成しております。右の図はその噴射回数の履歴を示したものでございます。
 サクセスクライテリアの達成状況ですが、エクストラまで達成しております。
 アウトカムですが、製造担当メーカーの衛星推進系カタログにFlight ProvenとしてGPRCSの記載がされました。国内衛星システムメーカー2社への適用提案の検討及び海外衛星システムメーカーからコンタクトのフォローアップを実施中でございます。
 次のページ、7ページ目に参りまして、これは粒子エネルギースペクトロメータの軌道上実証で、同じく宇宙システム開発推進利用機構のテーマです。これは民生部品を活用し安価かつ小型、軽量なSPMを実証するものでございます。
 実証結果ですが、右図のとおり、JAXAが搭載したTEDAという環境放射線観測装置と比較した結果、ほぼ同じデータが取得できたということで、右側のグラフに下がJAXA、TEDAの結果、それから上の図がSPMの結果で、ほぼ同じ結果が得られています。
 サクセスクライテリアですが、フルサクセスまで達成しております。
 アウトカムですが、SPMカタログの掲載を開始しておりまして、見積り依頼等の引き合いを得ているということです。
 8ページ目に参りまして、深層学習を応用した革新的地球センサ・スタートラッカの開発、これは東工大の実証テーマになります。民生品を用いて低コストの地球センサやスタートラッカを実証するものでございます。
 実証結果としましては、可視光画像の深層学習を用いた軌道上リアルタイム画像認識を世界で初めて実現しております。右図のようにおおよそ地球の8つの分類で識別を行っております。
 それから2ポツ目で地球センサによる地心推定精度0.4度ということで得られまして、安価なシステムで実用レベルの地心方向推定が実現できました。
 それから3ポツ目で、世界で初めて可視光画像認識を応用した3軸姿勢推定を軌道上で実施しております。
 サクセスクライテリアですが、これはエクストラサクセスまで達成しております。
 それからアウトカムですが、これはスタートラッカの製作や深層学習機能を用いた画像解析を行う東工大発のベンチャー企業、天の技を設立しております。また、小型実証衛星2号機に実証テーマとして搭載されて、この実証を市販する予定となっております。
 次に9ページに参りまして、軽量太陽電池パドル機構の実証テーマです。これはJAXAの実証テーマですが、薄膜太陽電池を用いてその展開を実証するものでございます。
 実証結果ですが、世界最高レベルの出力質量比を実現するパドルにつきまして、右のようにモニタカメラによりまして展開を確認することができました。
 それからその右の図の下にありますように、1年間の電力特性ですが、特に問題なく正常動作を確認しております。
 それからサクセスクライテリアですが、エクストラサクセスまで達成しております。
 あとアウトカムですが、JAXAのプロジェクトの深宇宙探査実証機DESTINY+に採用予定となっております。
 10ページに参りまして、超小型・省電力GNSS受信機の軌道上実証ですが、これは中部大学の提案でございます。最新の車載用の受信機をベースに、アンテナも組み込んだ小型のパッケージ化したものを実証するということでございます。
 実証結果ですが、測位精度、TTFF、立ち上がるまでの時間、それから耐放射線において当初の想定以上の結果を確認することができました。右の図で測位制度を示していますが、ほぼ目標の10メートルは達成できたと確認しております。
 サクセスクライテリアは、エクストラの一部まで達成できておりまして、アウトカムとしましては既に販売実績を上げておりまして、大学及び研究機関に21台、一般企業向けには20台を売り上げてございます。
 次のページ、11ページ目からは衛星のプラットフォームとしての成果でございます。
 一番上のところは13の実証テーマを打ち上げて、実証機会を提供したというところで、今回イプシロンロケット4号機の複数搭載、それからキューブサット放出機構によって7機の複数衛星の同時打ち上げに成功しております。それぞれの衛星とのやりとりを密に行って、適切なコーディネートを行った結果と考えております。
 それから次のところですが、今まで実証機会が少なかった衛星推進系、展開物などを今回、そういうものも軌道上実証していくことを行っております。
 それから短期間、低コストの開発を実現ということでございますが、JAXAで初のスタートアップ企業、アクセルスペースに開発、試験、運用を委託しました。彼らの開発実績と経験とJAXAの知見を組み合わせることで、同クラスの衛星に比べて低コスト、約2年という短期間での開発を実現しております。
 アクセルスペース社は今回開発を行ったことで、200キログラム級の衛星を開発したという実績を得るとともに、JAXAの契約は売り込み時の信頼感に貢献したというコメントを頂いております。
 それからさらに特徴的なことですが、自動化されたシステムで運用し、ヒューマンエラー排除、運用の省力化、低コストを実現しております。
 最後にJAXAがコーディネートすることにより、効果的な実証を実現ということで、下の右から2番目の図がJAXA開発の衛星搭載カメラですが、この処理部に実証テーマである革新的FPGAを組み込んで、その性能を確認した。さらに一方、右側の方にありますように別の実証テーマである軽量太陽電池パドル機構の確認手段としてもこれを活用したということで、効果的な実証を実現したと考えております。
 最後に12ページ、まとめになりますが、当初の計画どおり、1年間の運用を実施して、以下の成果を得ることができました。まず衛星、それから搭載実証テーマ全てフルサクセス以上を達成しております。これがアウトカムである宇宙機器の産業化や新たな企業設立というものについても、一部の実証テーマ等で達成しております。引き続きこのプログラムを通じて、宇宙利用の拡大、それから日本の宇宙産業の発展に寄与する予定でございます。
 資料の説明は以上でありますが、その後補足説明が若干付いていますので御覧ください。
 資料の説明は以上になります。
 
【角南部会長】ありがとうございます。ただ今RAPIS-1、あと特に7つの実証テーマについての詳細な御報告、それ以外全部で13の実証テーマの御報告がございましたが、委員の皆さま方から御意見、御質問があればお願いしたいと思います。前回同様、手を挙げるというファンクションが多分あると思うので、もしよろしければそれを使っていただいて、御意見、御質問がある方はそちらを押していただければと思いますが、いかがでしょうか。あるいはもしあれでしたら、ミュートを外していただいてお話しいただきたいと思いますが。井川先生からお願いします。
 
【井川委員】ありがとうございます。1つ情報公開というか、成果の公開についてお伺いしたいと思っていまして、これは企業とかベンチャーの方に参加してもらうというのが大きな目標になっているとすると、企業さんによっては成果も実験の内容も含めて、余り詳細にしたくないというところもあるのだろうと思うので。
 あるいは得られた成果によっては、これはすごい結果じゃないかと思ったときに、余り公開されちゃうと商売敵にとられちゃうみたいなこともあるだろうから、そういった情報公開というのが、もちろん国費を使っているわけで一切秘密でいいのかどうかというのは程度問題でなかなか難しいところだと思うのですけれども、そこら辺の相談、あるいは御要望をどこまで聞いて、どう判断するか、そういうのは考えておられるのでしょうか。
 
【角南部会長】JAXAの方、いかがですか。
 
【金子グループ長(JAXA)】金子からよろしいでしょうか。まず実証テーマの方とは契約書を結んでおりまして、その中で成果部会等での発表、こういった広報活動も含めた普及活動への協力をしていただくことになっております。
 ただし、先ほど委員の方がおっしゃった秘密情報とかやはりそういうところについては、相手から公開に関わる同意が得られた情報を除き、第三者には開示しないこととしておりまして、これが契約書になっておりますが、今回この資料につきましては、全ての実証テーマに確認していただきまして、特にそういった機密情報として出して問題ないかというものを確認して、今回出してございます。
 
【角南部会長】よろしいですか。それでは、鈴木委員、お願いします。
 
【鈴木委員】鈴木です。11枚目のまとめのところで、短期間、低コストの開発を実現というお話があったのですけれども、定量的にどれぐらい低コストになったかというのが表現できるようであればどうなったか、特にコストとして安くなる余地がJAXAさん単独で行うように企画して、どの辺りが圧縮されたかみたいなところが教えてもらえるようだと、これが全体に波及する可能性とかも皆さんイメージできるかというふうに思うので、その辺り教えていただけるようであればお願いいたします。
 
【角南部会長】JAXA、よろしくお願いします。
 
【金子グループ長(JAXA)】金子からお答えさせていただきます。なかなか同じ性能で比較して、低コストであるという同じ条件をちょっと比較しないと、なかなか比較することはできないのですが、そういった意味で我々、仮に同じ衛星を開発したときに、ほかの企業等で幾らになるかというものを試算しておりまして、それで大体3分の1とかそういった数字を得ております。
 
【鈴木委員】圧縮できるコストとして、どこにそのような余地があるかみたいなところについては、期間に比例したものという考えがメインになるのでしょうか。
 
【金子グループ長(JAXA)】はい、期間もあると思います。今回、特にアクセルスペースさんに開発、試験、運用を行っていただいたことで、いわゆる今までの大学衛星といいますか、ほどよしで培った技術を活用していただきましたので、そういったところでコスト低下ができたかと思っております。
 
【鈴木委員】ありがとうございます。民間とJAXAさんというところの協力で、開発力というものを限定的なリソースの中で高めていくのに重要な事例になるかなと思うので、引き続きよろしくお願いします。以上です。

【角南部会長】ありがとうございました。ほかに委員の方、ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、民間との関係のところ幾つか御指摘がありましたけれども、今後の革新的衛星技術実証開発に反映していただければと。お願いします。
 それでは、次の議題へ進みます。金子さん、ありがとうございました。
 次は2つ目の議題ですけれども、前回に引き続き日本人宇宙飛行士の米国商業有人宇宙船(USCV)への搭乗についてです。これは従来、ロシアのソユーズ宇宙船に乗って、日本人宇宙飛行士がISSへ運ばれていましたが、新たに米国商業有人宇宙船によって運ばれることが計画されているということで、前回クルードラゴンの報告からの進捗について、JAXAから説明をお願いいたします。
 
【泉統括(JAXA)】それでは、JAXAの泉から報告させていただきます。
 それでは、資料57-2で報告いたします。めくっていただいて、今表示されているのは目次でございますが、簡単なものですので御覧ください。
 めくっていただきまして、2ページになります。経緯と目的というところでございますが、今御紹介ありましたけれども、今年5月に第56回の本部会におきまして、スペースX社、それからもう一社、ボーイング社による米国商業有人宇宙船の開発の経緯と概要を御報告させていただきました。その際にJAXAのUSCV、商業有人宇宙船の安全確認チームの活動状況と進め方についても報告させていただいています。
 その下に小さいポツで2つほど、そのときのサマリーを記載していますが、NASAとスペースX社が19年3月にクルードラゴン宇宙船の無人試験飛行(Demo-1)を行い、打ち上げから帰還に至る基本的な能力を実証したと。その下に20年にはインフライトアボートテストを実施したと。こういうところまで紹介させていただいておりました。
 次の左側にある2つ目ですが、その後、NASAとスペースX社は5月31日にDemo-2としてクルードラゴン宇宙船を打ち上げました。同日、ISSのドッキングに成功いたしまして、現在、ミッションを計画どおり遂行中であるというものでございます。
 このDemo-2で宇宙船クルーへのデータ表示やコマンド処理、それから同クルーによりマニュアルの操縦機能の確認、室内環境制御、トイレ機能など、クルーとのインターフェースに係る機能も含め実証しているというところでございます。
 今後でございますが、有人飛行試験の成功を踏まえたNASAによる宇宙船システムの認証審査、それから一連の打ち上げ準備審査を経まして、クルードラゴン宇宙船の運用機の打ち上げが8月末以降に想定されるということでございます。今回はクルードラゴン宇宙船に特化いたしまして、JAXAの安全確認の活動進捗と今後の見通しについて報告いたします。
 3ページに参りまして、有人試験飛行(Demo-2)の状況でございます。NASAのお二人の宇宙飛行士を乗せた宇宙船は、5月31日打ち上げ成功したというのは先ほど説明したとおりです。その後、順調に飛行しまして、5月31日にドッキング、6月1日にハッチをオープンしまして、宇宙ステーションへの入室を果たしております。
 今回の試験飛行では、ファルコン9ロケットによる打ち上げ、上昇時の航法、誘導制御機能の確認、ISS遠方域及び近傍域におけるクルーによるマニュアル操縦機能の確認、こういったものを順調に経まして、予定どおり自動制御にてISSのドッキングを完了しています。現在、係留時における各種機能の確認を実施しているというところでございます。
 JAXAにおきましては、宇宙飛行士の宇宙船搭乗開始からISSの入室完了まで、NASAからの情報連絡を受けつつ、ミッションのモニタを行ってきたところでございます。
 今後でございますが、ISSから離脱し、米国フロリダ半島沖に着水、帰還予定ということで、資料には8月頃と記載させていただいていましたが、その後、先週金曜日にNASAの方から8月2日に着水するということで進めるという発表がございましたので、口頭ですが補足させていただきます。
 次4ページに参りまして、安全確認の状況の報告になります。4ページから5ページにかけまして、a、b、c、d、eと全部で5つの分類したもので、前回この分類で報告させていただいております。この進捗というところで、こういったところにつきまして下線を引かせていただきまして示しております。
 a、b、要求の妥当性、それからハザードの識別、制御の妥当性については既に完了しておりました。
 c、無人・有人飛行試験に対するNASAの安全確認プロセスの評価、確認ですが、これは途中であったところでございますが、今回完了ということで、有人飛行試験のミッション機の帰還に係る安全審査及び運用準備審査まで問題ないということを確認しております。
 dでございますが、前回途中でした。一部完了というところでしたが、その後の進捗が幾つかございます。
 丸1ですが、有人試験飛行の打ち上げ前及びドッキング完了時点までの安全評価を完了しております。JAXAのモニタ結果、NASAからの情報を基に、これらが良好に進捗し、搭乗員の安全やミッションの成否に直接影響する不具合はないということを確認してございます。
 丸2ですが、引き続き帰還に向けまして安全を含む準備状況を確認するとともに、帰還後のNASA評価も踏まえまして、クルードラゴン宇宙船の能力に安全上の問題はないことを確認する予定でございます。
 次、5ページに参りまして、これが前回、今後予定だったというところでございますが、運用機というのは実際に認証されたものでございますが、移行前のNASAによる認証審査プロセスの評価とその審査結果の確認でございます。これは現在実施中というステータスでございます。丸1から丸5まで詳細を記載しておりますが。
 まず丸1ですが、NASAとスペースX社は有人試験飛行の前半に係る飛行後評価を実施していると。同ミッション帰還後に後半の飛行後評価を実施しまして、最終的に全ての適合を確認するという予定です。
 丸2ですが、要件の適合を確認されましたら、宇宙船システムとしてのNASAによる認証がされるという予定になります。以降、認証内での打ち上げが可能となり、運用機の運航が開始されるということです。
 丸3、JAXAはほかの国際パートナーとともにNASAからクルードラゴン宇宙船システムの認証プロセスをどういうふうに認証していくかという説明を受けておりまして、NASAのしかるべき担当部署が技術分野ごとに専門知識、専門知見と明確な責任をもって確実に審査する体制が組まれていること。それから、スペースX社による有人試験飛行を含めたこれまでの技術検証の積み重ね状況についても確認しておりまして、NASAやスペースX社からの説明に不備や不合理な点は見られない、妥当であるということを確認しているところでございます。今後、帰還を含めた内容につきまして認証審査の結果を聴取し確認してまいります。
 丸4、JAXAの認証に関するものといたしまして、運用初号機の打ち上げ準備に係る審査会に参加しまして、打ち上げ、帰還時の地上安全に係るFAAライセンス取得など運用を含めました機体とクルーの打ち上げ準備状況の確認を行うということにしております。
 丸5、これらを踏まえまして、最終的に日本人宇宙飛行士の搭乗に安全上問題ないことをJAXAの中で改めて審査いたしまして、これまでのミッションと同様に打ち上げ前の審査におきましてJAXAとしての見解を表明するということにしてございます。
 次に6ページでございます。今後の予定になります。想定されるスケジュールということで、クルードラゴンの打ち上げスケジュールは依然流動的な状況ということでございますが、NASAは有人試験飛行、これは先ほど申したとおり8月2日の帰還を計画しているということでございます。
 NASAは認証審査を段階的に行うとしておりまして、最終的な認証審査は運用初号機の打ち上げ1週間前に行われる飛行準備審査会と同時に実施するという形で開催を検討しているというところでございます。
 JAXAは認証審査、それから飛行準備審査の過程を通じまして、クルードラゴン宇宙船システム能力がNASAの要求に適合していること、それから日本人宇宙飛行士の搭乗安全上問題ないことを確認するという予定でございます。
 以上を踏まえまして、運用初号機の打ち上げ前に宇宙開発利用部会、本部会へ最終確認結果を報告したいというふうに考えてございます。
 メインの資料の説明は以上でございますが、後ろに参考資料を幾つか付けております。このうちほとんど前回報告したものの再掲、リマインドということでございますが、9ページを御覧いただけますでしょうか。これは今回新しく掲載させていただいたものでございますが、クルードラゴン宇宙船のミッションシーケンス、非常に簡単なもので恐縮ですが、こういう順番にシーケンスが進んでいくというものを紹介しています。左から右に時間が流れておりまして、左で打ち上げまして、現在は真ん中、右側3分の1ぐらいですかね、ISSドッキング、ハッチオープン、このハッチオープンの後にございます。これが6月1日でございました。これは試験機の能力が記載されておりますが、ISSから分離まで114日と書いてございます。実際約60日強の8月1日に分離、8月2日に着水ということで計画されているということは、先ほど申し上げたことと整合しているわけでございます。
 あとの2ページは前回と同様ですので説明は割愛させていただきます。
 こちらの説明は以上になります。
 
【角南部会長】ありがとうございました。それではただ今の説明について御意見、御質問があればお願いいたします。米本先生、どうぞ。
 
【米本委員】東京理科大学の米本です。
 最初に戻りまして、資料の4ページ目から4~5点質問があるのですけれども、ドラゴンは基本的には全自動操縦というふうに聞いているのですけれども、この文章の中で一部マニュアル操縦の確認をしたというふうにどこかに書いてあったと思うのですが、そういう操作は恐らく代替機能として持っているだろうと思うのですが、これは国際宇宙ステーション近傍のみなのか、あるいはその他の飛行フェーズ、再突入までほとんど自動だと思うのですけれども、それで何らか宇宙飛行士がオーバーライドしてやれるというような宇宙船になっているのか。言える範囲で結構なので教えていただきたいというのが1点目の質問になります。
 2点目は、NASAの審査にJAXAさんが参加されまして、いろいろ審査のやり方とか、あるいは中身そのものについても直接御参加いただけるということで、非常に日本にとっても有益な情報が入ってくるとは思うのですが、それを持ち帰りまして、これはJAXAさんの中で審査というふうになったときに、一体どういうふうにJAXAさんの中での審査というのが行われるのかということと、それから資料の次の次ぐらいにJAXAさんの中の審査がありまして、それでその結果が見解の表明というふうになっている意味がちょっとよく。
下から何行目かにJAXAさんの中での審査、最後のJAXAさんの結果として、見解を表明するとあるのですけれども、もしそこでNASAの審査に対する疑問とか異議が出た場合に、NASAにフィードバックするようなことって可能性があるのか。前もちょっと伺ったと思うのですけれども、それをもう一度お聞きしたいというのが2点目です。
 3点目は、1ページ目に戻りまして、ハザード解析だけが安全性の確認のための行為ではなくて、ハザード解析は逆に飛行機でやらないのですけれども、飛行機でやっているようなFMECAがあると思うのですね。それってかなり大事だと思うのですけれども、そういったものがNASAの安全確認プロセスの中で行われているかというのが分かれば教えていただきたいというのが3点目になります。
 あと2点あるのですが、よろしいですか。4点目が10ページに飛びまして、頂いた資料で見て、前もこれについて質問したことがあるのですけれども、国際宇宙ステーションにドラゴンを使って、日本の宇宙飛行士が飛行する場合の経費というのがここの共通システム運用経費の負担というところにかかってきて、その代わりとしてドラゴンで宇宙飛行士を輸送しますという関係性だと思うのですが、ちまたの話だとソユーズで日本人宇宙飛行士を届ける場合90億円と言われているのですけれども、ソユーズって使い捨てのロケットなので、今回ドラゴンになったら大分負担が減るのかどうかというのを教えていただきたいと思います。
 これは4点目で、同じページで最後なのですけれども、ここはまだ理解できていないのですが、商業宇宙輸送システム、商業有人宇宙船という位置付けではあるのですけれども、NASAの宇宙輸送プログラムというのは国策なので、FAAのライセンスは必要ないと思うのですけれども、そこでライセンスを申請して認可を得るというのが一体どういう位置付けなのかということを最後に教えていただけないでしょうか。質問が長くなって申し訳ないのですけれども、以上です。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。それでは泉さん。
 
【泉統括(JAXA)】全部で5点質問を頂きました。順番にお答えしたいと思いますが、まず手動で操縦できる範囲ということだったと思いますけれども、基本的には全範囲できるようになっていたと。ただ、手動操縦というのが従来のイメージしているコンピューターなしでオーバーライドして手動操縦できるというものではなくて、コンピューターを通しての操縦になるというところが従来のものと少し違うのかなと思うのですけれども、基本的に全フェーズ手動での操作ができるというふうに承知しております。
 それから2つ目ですけれども、NASAの審査に参加した中でJAXAの安全審査をどのようにやるのかというのが御質問だったかと思いますが、JAXAの方では大きく2通りの審査になるかと考えておりまして、試験機の飛行に対して安全上問題ないかという観点でのNASAの認証まで、あるいは認証に対する評価を実施しておりまして、その結果として安全審査委員会に我々の安全確認チームから付議して審査を受けるという形になっております。この中では技術的なNASAから頂いた情報を含めまして、安全上の懸念がないということを確認した上で、その確認の仕方を含めて審査を頂けるものというふうに考えております。
 その結果としての見解表明ということが5ページの一番下に書いておりますが、先ほど申したのは認証としての審査の話で、その後に日本人宇宙飛行士を乗せる、今回は運用1号機で乗せるということで話が進んでございますけれども、日本人宇宙飛行士を運用1号機に乗せることについての審査というのは、また別にJAXAの中で別のボードがございまして、そこで審査をした上で、最終的には安全審査委員会で審議されるという形になります。そのため、2通りの流れがございます。
 見解表明の話に戻りますが、ここで書いてありますのは日本人宇宙飛行士を乗せてよいかという後者の方の審査を含めた結果をNASAの方で実際に飛ばすときにJAXAも入りまして、JAXAは我々のクルーを乗せて飛ばすということに対して同意する、あるいは同意しないということを言う場が存在するということでございまして、基本的に同意しますので、疑義がある場合はその前にNASA、あるいはスペースX社の方にNASAを通じてになると思うのですけれども、説明させていただいて、疑問を解決した上で同意するということになろうかというふうに考えております。これが2番目になります。
 それから3番目ですが、安全のハザード解析、これは安全上の上でNASAもやっているということに関しまして、その内容まで踏み込んで我々確認しているところでございます。ハザード解析の中で必要であれば、フェイラーモードの影響評価があればそういうのが出てくるというふうに考えておりますが、具体的にどういうふうにFMECAをやっていたかまで今この場で把握できておりませんので、具体例を説明することはできないのですけれども、必要があるところについてはやっているというふうに承知しております。
 それから4番目ですが、経費の話でございますが、安くなるという話も表では出ているところだと思いますけれども、実際、打ち上げ等具体的なところは値段の話にもなってこようかと思いますので、この場で申し上げるのは適切ではございませんし、あとスペースX社ですが、ロケットとしては再利用の能力ということでありますけれども、有人飛行に関しては現状再利用してなっていないというふうには承知しております。
 それから最後ですけれども、FAAのライセンスの話でございますが、これは飽くまで民間のロケット、民間の輸送機という整理になりますので、それをNASAが自分の飛行士を飛ばすのにサービスを買い上げるというふうな運用機になった場合ですけれども、運用機は民間扱い、したがってFAAライセンスが必要ということだと承知しております。
 以上ですけれども、JAXAチームの事務局の久留さん、もし補足等ありましたらお願いできますか。
 
【久留グループ長(JAXA)】ただ今の説明で特に補足はございません。ありがとうございます。
 
【泉統括(JAXA)】以上でございますけれども、回答になっていましたでしょうか。
 
【米本委員】大分よく分かりました。ありがとうございます。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。ほかに委員の方、何かございますでしょうか。よろしいですか。それでは、引き続き御検討をお願いいたします。
 それでは、次の議題へ進みたいと思いますが、3つ目の議題は月探査協力に関する文部科学省と米航空宇宙局の共同宣言についてであります。これは先日、7月10日に国際宇宙探査、アルテミス計画に関連して日米で共同宣言に署名をされましたので、その内容について事務局から説明をお願いします。
 
【国分室長(事務局)】宇宙利用推進室長の国分でございます。改めまして資料の57-3を使って御説明させていただきたいと思います。
 角南部会長から御紹介がありましたように、アルテミス計画につきましては、去年の10月に宇宙開発戦略本部で参画が政府として決定されたところでございまして、これを踏まえて先月、6月29日の宇宙戦略本部で宇宙基本計画を改訂した中で、総理指示としてこれについては我が国として主体的かつ果敢に挑戦していくと、萩生田大臣を中心にしっかりと準備を進めていくようにという指示があったところでございます。これも踏まえまして、今ありましたとおり、本年7月10日に萩生田大臣とブライデンスタインNASA長官との間で月探査に関する文科省とNASAの共同宣言について署名を行ったという背景がございます。
 1ページの一番下に英語名で書いてありますが、Joint Exploration Declaration of IntentということでJEDIと通称呼んでいるところでございます。こちらの計画の署名式はオンラインで行ったので、バーチャルなものをオンラインで取り交わしているところでございます。
 共同宣言の中身でございますが、1ページ目の中にも書いてありますが、3ページ目にポンチ絵を付けていますので、そちらの方が見やすいかと思いますので、御覧を頂ければと思います。黒いバックグラウンドになっている3ページ目の表といいますかポンチ絵でございます。こちらにありますとおり、我が国としての協力内容としては4つ宣言の中で記載しております。
 1つは一番左上に丸1とありますが、ゲートウェイの居住棟への技術、機器の提供ということで、まず2023年に打ち上げられますミニ居住棟、こちらに対するバッテリー等の機器の提供、それからもう少し後になりますが、I-HABと呼ばれている国際居住棟、こちらへの環境制御や生命維持機器の提供、こちらが1つ。
 それから2番目としまして、真ん中の欄ですけれども、HTV-X/H3によるゲートウェイの物資や燃料の補給、こちらにつきまして補給の協力をしていくということ。
 それから左下になりますが、丸3といたしまして着陸地点の選定等に資する月面の各種データの共有ということで、ピンポイント着陸、月極域移動探査で得られたデータを共有していくということでございます。
 最後、右下の丸4でございますが、与圧ローバに関する開発研究、実証研究という手段によって協力をしていくということをお伝えしているところでございます。
 それに加える形で、日本人宇宙飛行士のゲートウェイへの搭乗機会、それから月面での活動の機会、そういったものを前提に詳細を今後策定する日米間の取決めで規定していくということも合意しているところでございます。
 今回の共同宣言につきましては、飽くまで行政機関同士の文部科学省とNASAとの共同宣言という形ですので、今後の手続としましては、国際約束として今あるゲートウェイのISSのフレームワークでゲートウェイMOUですとか、それから月面での活動につきましては、また別途法的フレームワークが必要になるということなのですが、そういった形で具体的に法的根拠を持たせて記載していくということになっていくものでございます。
 あと参考でございますが、2ページ目にありますとおり、フェイスブック、ツイッター等でも文科省もつぶやいておりますし、NASA長官も直後につぶやいていただいています。このほかその翌日、その日の夕刊からですけれども、大手5紙を含めて幾つか報道も好意的な形でなされているというふうに承知しているものでございます。
 文部科学省からの説明は以上でございます。よろしくお願いします。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。ただ今の説明につきまして御意見、御質問があればお願いします。はい、大西委員。
 
【大西委員】大西です。一人の宇宙飛行士として共同宣言に署名されたことに対して非常に喜んでおります。そこで日本人宇宙飛行士がこれらのミッションへの搭乗を前提にするということで、非常に心強く思っています。
 その上で今後、日本人宇宙飛行士がどのように養成していく必要があるのかなということに対してコメントさせていただきたいのですけれども、現在国際宇宙ステーションで行っている実験というのは、ある意味、私たち人間がつくり出した環境、つまり人間自身でコントロールできる環境で人間がデザインした実験を行っているといった性質があります。なので、そこで行う実験、調査等には正直申し上げて、余り高度な専門知識というのは求められていないのが現状です。
 対して今後月面での活動が実現する場合は、そこでの探査というのはそもそも環境自体がまだまだ未知数なところで探査、実験なりを行っていることになります。従来よりは高度な専門知識が私たち飛行士にも求められていると考えております。ですので、今後ミッションの形、とりわけ科学的ミッションの検討を進めていく上で、現役の飛行士には必要な追加訓練を、また今後新しい宇宙飛行士を選定していくというのであれば、それらの専門分野に特化した人材を最初から選んでいくといった手もあるかと思いますので、そういった面でも検討していっていただきたいなと思います。以上です。
 
【角南部会長】ありがとうございます。引き続き高橋委員。後で事務局の方にコメントしてもらいたいと思います。高橋委員、どうでしょうか。
 
【高橋委員】御説明ありがとうございました。大変重要なプロジェクトだと思います。これから特に日本がアライメント能力を深めていくという観点に立っても非常に重要なプロジェクトで、是非成長させていく必要があると思うのですが、やはり予算の確保が一番の課題ではないのかなと思っています。これは文科省にお願いですけれども、JAXAの予算を減らさずに、アルテミス計画の予算をプラスで確保できるように是非頑張っていただきたいというのがコメントです。以上です。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。それでは、今、大西委員の宇宙飛行士育成の話と、それから予算の話の御指摘がありましたけれども、事務局の方でコメントを。
 
【国分室長(事務局)】ありがとうございます。まず大西委員からの御指摘につきましてですけれども、おっしゃるとおり非常に重要な観点でして、今後の宇宙飛行士、どのようなスペックが日本に求められてくるか、そもそもどのようなスペックが月面での活動に必要か、こういったことはまだ少なくともオフィシャルに議論されていない状況ですので、それもきちんと我々としても把握しつつ、どのような形で我が国として貢献していくかという詳細を今後詰めていく必要があると思っていまして、このためにはやはり我々のこれまでの経験ですとか総力を挙げて考えていかなければならないというふうに考えているところです。
 それから、高橋委員からの御指摘ですけれども、もちろん予算の面は非常に重要だと思っています。我々ももちろん予算を減らしてこの枠をとるということではなくて、追加的に必要な分は確保していくということで頑張ってまいりますので、また御支援等がありましたら是非お願いしたい。我々も当然頑張っていきますので、よろしくお願いします。以上です。
 
【角南部会長】ありがとうございました。ほかに委員の方、ございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、次の議題に移ります。
 4つ目の議題は、宇宙科学探査ミッション進捗報告(はやぶさ2)についてです。現在地球に向かって飛行中のはやぶさ2の地球帰還及びはやぶさ2の拡張ミッションについてJAXAから説明をお願いします。
 
【國中理事(JAXA)】それでは宇宙研から報告させていただきます。はやぶさ2の状況、それから今後の予定になります。
 着陸許可を得るために、現在オーストラリアの宇宙庁と折衝を行っているところです。具体的には着陸許可を取得する旨、申請を行っております。コロナ関係もありまして、少し作業が遅れております。しかし、実務上、宇宙研としてはこの後、いろいろな機材の発注であるとか、入札などの手続をとる必要性がありまして、オーストラリア宇宙庁からの御理解も頂いた上で、着陸許可発出前に着陸日を公表するということを進めました。これは先週、萩生田文科大臣より発表させていただいたのですけれども、地球帰還日は本年、2020年12月6日ということでアナウンスさせていただきました。ここに至るまで、文科省、在豪日本大使館、それから税関や相模原市等、多くの御協力を頂いております。内閣府にも御協力を頂いているものです。
 次のページをお願いいたします。現在、探査機の状況は大変いい健康状態にありまして、イオンエンジンを日々噴射いたしまして、地球にマヌーバをかけております。既に月周回軌道のすぐそばをかすめるところまでこぎ着けております。
 次のページをお願いいたします。具体的には地球にカプセルを落とすという作業に取りかかります。8月中のイオンエンジンで、大体地球近傍を通過する軌道に入れた上で、TCM-0、1、2、3、4、TCMというのはTrajectory Correction Maneuver、精密軌道制御というのを何回かに分けてマヌーバをかけまして、TCM-0、TCM-1、TCM-2を使いまして、地球の高度100キロメートル、200キロメートルをすり抜ける軌道に入れます。探査機の健康状態をオーストラリア政府に示して許可を取りつけた上で、TCM-3というところで地球のリムからオーストラリア内陸に着地点を変更いたします。そしてTCM-4でさらに回収体が待っておる目の前に落ちるように軌道を正確にマヌーバした上でカプセルを分離いたします。カプセルはこの赤い点で示したものですが、カプセルは弾道軌道でそのまま地球に突入してまいります。
 一方、探査機の方はカプセルを分離した以降、TCM-5というマヌーバをかけまして、赤い軌道のように地球を脱出する軌道に乗り換えるという作業を行います。ここが前回、はやぶさ1とは大きく異なるマヌーバになります。
 次のページをお願いいたします。地球に落としますカプセルは、探査機の持っておる速度でもって地球に突入してまいりまして、更に地球の重力で加速された上で、秒速12キロメートルの速さで大気に突入してまいります。カプセル自体はヒートシールドという耐熱材料で覆われておりまして、総重量は16キログラム、直径は40センチメートルという大変小さな物体であります。この技術は既にはやぶさ1で確立したものでありますが、はやぶさ1に加えまして、飛行環境を計測するモジュールというのを新たに追加して、今回は取りつけております。
 次のページをお願いいたします。このページが具体的な回収オペレーションの概要をお示ししたものです。まずカプセルが秒速12キロメートルで大気に突入してまいりますと、高度100キロメートル辺りで発光してまいります。これが流線のように発光するわけですけれども、その様子を地上及び航空機から観測いたしまして、その軌跡を捉えることでそれを延長することで着地点を特定するという手法をまず用います。そして、カプセルは高度10キロメートル辺りでパラシュートを展開するとともにビーコン電波を発射いたします。パラシュートには金属箔(はく)が貼ってありまして、これをオーストラリア・ウーメラ地区に配置しました複数の漁船用のマリンレーダーで空の上での場所を特定するという作業を行います。
 並行いたしまして、ビーコン電波が出ておりますので、電波の発射方向を複数のビーコン探査局で測定いたしまして、三角測量の方法でカプセルを特定するという手法も用います。
 さらに着陸したカプセルは、引き続きビーコン電波を出しておりますので、ヘリコプターやドローン、無人機を使ってカプセルの地上での位置を特定する、こういった方法、6段構えでカプセルの位置を特定するという手法を今回は考えております。
 次のページ以降は詳細な説明になりますので飛ばさせていただきます。
 今御説明したマリンレーダーにつきましては、JAXAが実施しております宇宙探査イノベーションハブ事業の第1回の案件として取り上げて、光電という漁船レーダーを販売しております会社と共同で開発いたしまして、従来のマグネトロン発信のマイクロ発生装置を半導体化するという研究に成功いたしまして、その技術を応用するものでございます。光電につきましては、このレーダーの販売を準備しておるというところです。
 次のページをお願いいたします。カプセル回収計画は、1つ大きな想定外の課題といたしましては、新型コロナ対策というのがあります。現状、日本、オーストラリア間の国際線はほとんど運休状態になってございます。そのような状況にありましても、オーストラリア宇宙庁とタイトなコラボレーションをさせていただいておりまして、この回収のためにJAXAから70名ほどの職員をオーストラリアに送る必要があるわけですけれども、この事業を実行するために、オーストラリア宇宙庁からも大変大きな御尽力を頂いておりまして、これだけの人数がオーストラリア国内にできますようお取り計らいを頂いておるものです。
 また、JAXAといたしましても、オーストラリア現地の環境やJAXAの職員の健康を守るためにも、ありとあらゆる手段をとる準備がございます。具体的にはPCR検査を受けるのはもちろんでございますけれども、現地オーストラリアに2週間早く入りまして、自己隔離をするということもスケジュールに織り込んだ上で、計画を立てておるものでございます。そういったことを報告させていただきたいと思います。
 次のページをお願いいたします。次からの話題ははやぶさ2のフォローミッション、それから後期運用ということを以下のページで御説明させていただきます。まず第1番は、はやぶさ2探査機のその後の宇宙における運用方法に関する事柄であります。もう1つは、はやぶさ2の科学成果を最大化するための活動になります。
 この2番のところを見ていただきますと、丸1、現在、アメリカ、NASAはOSIRIS-RExという小惑星サンプルリターン計画を進めておりまして、はやぶさ2とOSIRIS-RExの共同科学分析ということを計画してございます。
 また丸2になりますが、はやぶさ2、OSIRIS-REx間でサンプルの交換というのを行う予定がありまして、はやぶさ2のサンプルキュレーション設備については既に完成しておりますが、OSIRIS-RExからもらうサンプルを取り扱う設備の整備なども実施していきたいと考えております。また、はやぶさ2の科学成果の最大化ということも大きな課題と考えております。
 その次のページをお願いします。はやぶさ2の後期運用についてであります。既に御説明しましたように、はやぶさ2本体の健康状態は大変十分でありまして、また燃料も十分残っております。したがいまして、地球から脱出した以降、別の新たな小惑星を探査することを考えております。
既に幾つかの案を検討した結果、2つの案まで絞り込んできております。その2つにつきまして、宇宙理工学委員会で評価をしていただいておりまして、そのどちらも科学的な価値が高いということをお認めいただいておるものです。今後、探査機の運用状況も見ながら、9月頃には2つのうちのミッションのどちらかを選定する考えでおります。
 次のページをお願いします。このはやぶさ2の後期運用の大きな目標といたしましては3つ掲げてございます。赤い文字のところですが、1番目が太陽系長期運行技術を進展させるというものです。既に6年の軌道寿命、当初の軌道寿命は過ぎるところでございますけれども、これをどこまで長く引き延ばせるかということに挑戦させていただきたいと考えております。
 また、探査する天体はファーストローテターといいまして、大変速いスピードで自転しておるものです。通常ですとばらばらに砕けてしまうはずなのですけれども、そのような回転速度で存在しているということは、恐らく大きな一枚岩なのだと考えられておりますが、これまでは誰もそれを確定した観測データを持っておりません。こういったところに挑戦していきたいと思っております。
 また、3番になりますが、NEO(Near Earth Object)、地球軌道を横切る小惑星は、地球に衝突いたしますと大災害をもたらすポテンシャルハザーダスな天体でございまして、こういった領域に関する地球規模の災害に関わるような科学と技術の知見を獲得するということも目標としてございます。
 次のページをお願いいたします。こういった事柄を後期運用として掲げております。
 本日の御説明は以上になります。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。それではただ今の御説明について御意見、御質問等があればよろしくお願いいたします。はい、永原委員、どうぞ。
 
【永原委員】はい。ありがとうございます。永原でございます。
 オーストラリアとの関係というのは非常に順調に進んでいるということで、御努力に敬意を表したいと思うのですが、ただコロナのことはどうなるか分からず、日本から大勢が行けるかどうかということはかなり気になるわけですね。もし本当にコロナが更にひどくなっていけないような場合、どういうような手があるか。つまり、セーフティのことはどのように検討されているでしょうか。よろしくお願いします。
 
【國中理事(JAXA)】オーストラリア入国につきましては、オーストラリア宇宙庁にお取り計らいを頂きまして、オーストラリアの入国関係の部署に便宜を図っていただいておる、そういった作業を現在遂行してございます。
 もう1つの懸念は、国際線、飛行機がない、物理的に行く方法がないということが最大の懸念と私は考えております。そこで、チャーター機を手配して、70名規模の人員の輸送を考えております。
 先ほど着陸日を前もって公表するという作業を先週まで行ったわけですけれども、そこの大きな意味合いは、現在、飛行機チャーターのために入札の公募を既にしております。その日に合わせてしております。そういった手配をした上でオーストラリアに出向くと。それから、当然ながら2週間前乗りしてクアランティンを行うと。また、逆に日本に帰ってくるときも2週間日本で自己隔離する必要があろうということも想定しながら作業を行っております。以上になります。
 
【永原委員】ありがとうございます。お伺いしたかったのは、恐らくそういう手は打たれているだろうと思うのですけれども、つまり今の御説明にあった内容は、コロナの事態がどのように推移しても保障されているのかどうかという点がちょっと不安でお伺いしたのですけれども。
 
【國中理事(JAXA)】チャーター機については直接アデレードに向かう計画ですし、飛行機の運用については自前で調達する以上、コロナの状態が悪くなっても運用できると考えております。
 オーストラリアに行った後、オーストラリア政府の判断で入国の可否が決まるわけですけれども、それについても前広に交渉を行っておるところです。
 
【永原委員】ありがとうございました。
 
【角南部会長】続きまして、青木委員、どうぞ。
 
【青木委員】はい、ありがとうございます。永原委員の御質問に若干関係するのですけれども、この帰還、再突入の許可は2018年に改正されたオーストラリア法に基づいたものだと思います。そして、そこで様々な損害賠償ですとか、保険の取扱いがあると思うのですけれども、やはり一般的な第三者損害賠償保険のようなものはオーストラリア法に従う条件で手配されているとは思うのですけれども、実際に現地にうまく入ることができなくなった、それ以外の方法などでパブリックヘルス、公衆衛生上の問題などがオーストラリア側で起きたときの損害賠償の取扱いということについてはもう話合いは行われているものなのでしょうか。その点をお伺いしたいと思いました。よろしくお願いします。
 
【國中理事(JAXA)】コロナに対応するパブリックヘルスについては、JAXAの事務局で説明できますか。
 
【中澤(JAXA)】はやぶさ2プロジェクト、中澤と申します。よろしくお願いします。代わって回答いたします。
 第三者保険については調整をしています。向こうから損害金額も提示されておりまして、今そちらの方で保険の方、調整しているところです。着陸を行うまでにこの保険に入っていることが附帯条件になっていますので、それに向けて調整をしているところです。
 
【青木委員】ありがとうございます。申し訳ございません。そこは入っているとは思うのですが、着陸後のことについて、オーストラリアの宇宙活動法以外のことについての損害賠償保険などのようなものは入っていらっしゃるのでしょうか。あるいは、その話合いというものがオーストラリア政府との間であるのでしょうかということをお伺いしたかったのですけれども、すみません、私の申し上げ方が悪くうまく伝わらなかったように思います。もしお分かりでしたら教えていただけないでしょうか。
 
【加藤(JAXA)】着陸後については範囲外となっております。カプセルが下りることで都市とかに間違って落ちた場合とか、そういったことに関しては確率計算とかを行って出された補償額がありまして、それについて今現在調整しているところで、着陸後については範囲外となっております。
 
【青木委員】分かりました。ありがとうございます。
 
【角南部会長】青木先生のお話ですと、今回は特殊な事例ということもあるので、多分そういったことを念頭に置いて、今後オーストラリア政府と確認をしておいた方がいいという趣旨だったと思うのですが、それについてはよろしくお願いいたします。
 ほかの委員の方、ございますでしょうか。よろしいですか。じゃ、國中所長、ありがとうございました。それでは、12月6日の地球帰還を期待したいと思いますが、私も地球帰還というのではやぶさ2が戻ってくるのかと思ったら、また新たな長いミッションに行かれるということで、非常に大変だと思いますけれども、是非成功を祈っております。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。5つ目の議題ですが、宇宙ビジネス振興の課題ということで、人材育成の視点からです。今年度から宇宙開発利用部会の委員に就任されました村山先生の方から、御専門の視点から宇宙ビジネス振興と人材育成についてお話を伺いたいと思います。それでは、村山先生、よろしくお願いします。
 
【村山委員】ありがとうございます。同志社大学の村山です。どうぞよろしくお願いいたします。
 次のページをお願いします。前回からこの部会には参加させていただいておりますので、若干宇宙との関わりというところからお話を始めたいと思います。私の専門が経済安全保障、技術政策、文化ビジネスということで、一番の専門が経済と安全保障が重なった分野ということです。
 その関連で2000年に「テクノシステム転換の戦略」という本を書きまして、これはアメリカの技術開発システムの話をしたのですけれども、そのときにアメリカの宇宙分野の技術政策について少し書きました。それがJAXAの研究員の方の目に留まりまして、是非とも米国の宇宙産業政策についての調査をしてくれないかということで、これは現地調査ですけれども、行ってきてそれで報告書を書きました。これは宇宙の最初の仕事ということになります。
 帰ってきたらまた次の仕事が待っておりまして、JAXAができたときに産官学連携部というのをつくったと。それでこの部署は宇宙のビジネス化を図るところなので、この分野でどういう方向でやっていったらいいのかというのをこれまたブレーンチームというのをつくって考えてもらえないかという仕事が入ってきました。それでそのときに私が座長を務めまして、きょうも御出席いただいている青木先生などにも参加していただいて、こういうプロジェクトを始めました。「新たな宇宙価値の創造-宇宙利用活性化に向けた官民関係の再構築とJAXAの役割」ということで、これはどういうふうにすれば宇宙をビジネス化できるかという報告書を書きました。この辺りからかなり深く宇宙のビジネス化に関わってきたという経緯です。
 次お願いします。それでそのときの認識ですけれども、ともかく新しい民間分野を宇宙に参入させないとなかなか活性化できないということで、2つの方向性から考えてみました。1つは宇宙を利用した新たな製品サービスの開発ということです。もう1つが民間技術を宇宙分野に入れ込んで、新たな研究開発をやっていくということで、どちらかというと宇宙の方は前者の方を中心にやってきました。
 1つ大きなビジネスチャンスがあると思ったのは、コンピューターと同じように宇宙のダウンサイジングが進んでいると。小型衛星ロケットがかなりビジネスに近づいてきているので、ビジネスベースでもいろんなことができる可能性というのが広がってきていないかという認識を持ちました。
 その一方で、やはり宇宙ビジネスというのは非常にコストが高いのですね。これをどう克服していくか、この辺りのことを念頭に置きながら、宇宙のビジネス化の仕事をしてきたということです。
 次お願いします。それで実際にこういう研究だけじゃなくて、実際にやってきたプロジェクトがありますので、それを通じてどういう課題が浮かび上がってきたかというのを若干お話ししたいと思います。
 2009年にオープンラボに応募しまして、SPACE SAKURAプロジェクトというのを始めました。これはどういうことかといいますと、京都の伝統産業、特に着物分野、それも友禅染を宇宙に参入させたいというかなり突飛なアイデアなのですけれども、そういうプロジェクトを始めました。御存じのように、着物というのは春の桜吹雪をデザインに使うのですね。これは重力が下がるわけです。ところがこれからの着物デザインを考えるときに、無重力で桜吹雪を飛ばしたらどういうふうになるかと。それを新たな着物のデザインに落とせないかというのがこのプロジェクトです。
 実際に2012年2月にきぼうの中にネットを張って、無重力の中で桜吹雪を散らしました。それを3Dカメラによって撮影したという、これは非常にうまくいったのですけれども、そういうプロジェクトをやりました。
 次お願いします。これは実際に使ったトレーサーなのですけれども、実際に友禅染のトレーサーです。それで形状だとか色は実際に東映の映画村に行きまして、そこの小道具さんに会いまして、どういう形でやれば桜吹雪としてきれいかというのもリサーチして、それでこういうトレーサーをつくって実際に宇宙で展開したということです。
 次お願いします。これが実際撮影したものなのですけれども、動画をお見せできないので残念なのですけれども、ネットで探していただければありますんで、是非とも見ていただけたらと思います。これは非常に面白くて、無重力ですのでこういう形で方向性なく桜が漂っていると。それで風は受けますので、扇子をNASAの宇宙飛行士に持っていっていただいて、扇子であおいでもらったのですね。そうしたら風を受けた花びらが直線的に飛んでいくと。その直線的な動きと漂っている動きが非常に面白くて、実験的には非常に成功したものです。
 次お願いします。それを受けて、友禅染のデザイナーにつくっていただいた着物がこれです。デザイン画です。これは通常の桜吹雪じゃなくて、正に漂っている桜を宇宙に見立ててつくった着物なのですね。普通の桜吹雪と違って、ぱらぱらぱらとした感じの桜吹雪です。
 次お願いします。これは3Dで撮影しましたので、それを数理的に表現したらこうなるかということで、着物で絽(ろ)とか紗(しゃ)と呼ばれる素材があるのですけれども、よくお坊さんが夏に着ておられる素材ですね。これにも桜吹雪を付けて、立体的な着物にしようということでつくったのがこれです。
 こういうことで非常に面白いのができたのですけれども、問題はこれをちゃんとビジネスにできたかどうかということなのですね。実は非常に大きな壁がありまして、非常に奇抜なデザインで面白いのですけれども、果たしてどこが実際につくってくれて売ってくれるのかということなのです。非常にリスクが高いので、どこのメーカーもやっぱり受けてくれないのですね。ということで、ここまでできたのですけれども、ここである意味、プロジェクトは頓挫して、別の方向を目指したということです。そこを後で説明しますけれども。
 これが問題点です。
 次お願いします。これはその前にやっていたプロジェクトなのですけれども、これは着物じゃなくて浴衣なのです。これはどういう浴衣というと、白い部分がアラスカの氷河の衛星写真です。それをデザインした浴衣です。これはどういう経緯でできたかといいますと、JAXAの伝統産業が好きな人が集まって、それで京都の方は宇宙に興味のある伝統産業の人が集まって、いろいろなものの製品開発をやったのですね。衛星写真をデザインした時計だとか、バッグだとか、そういうものをつくりました。その中で出てきたアイデアというのが、JAXAの女性職員の方が5~6名集まって、是非とも衛星写真を使った浴衣をつくってくれという話だったのですね。これだと受けられます。というのは、もう既に買う人が分かっていますから、ある程度コストを出せれば向こうが飲んでいただければビジネスになるわけですね。それでこれを5~6枚つくって、JAXAの職員の方に納めました。
 実はこれは非常に評判が良くて、JAXAの方が国際会議に行って、そのときに懇親会だとかパーティーでこれを着られると、注目の的になって周りに人だかりができたということなのですよね。だから本当に特殊な場で、宇宙が好きな人の場でこういうものというのはビジネスになるのかなという実感を得ました。
 次お願いします。先ほどのSPACE SAKURAはどうなったといいますと、最終的にこういう形になりました。これは京都の妙心寺如是院で禅を組む部屋なのですね。これはどういうことかといいますと、宇宙で何とかしなきゃということで、京都にいるアーティストでツトム・ヤマシタ、これは打楽器で有名な方なのですけれども、この方と知り合いまして、この方は伝統産業とコラボしてみたいと、それでツトム・ヤマシタが宇宙を音楽で表すということをやってきたのですね。だからそこに伝統産業を表すように何とかできないかということで、伝統産業であるさっきの友禅染の職員さんとツトム・ヤマシタのコラボが始まりました。
 それで出来上がったのはこれなのですけれども、これは何かというと、ツトム・ヤマシタがサヌカイトという石をたたいて音を出すのですね。それで禅の法要をやったり、音楽をつくったりしているのですけれども、石の波動で染め上げた友禅染です。それをデジタル加工してふすまにしたのですね。禅の場にこれを使ったということですね。
 これはどういう意味があるかというと、宇宙の摂理というのは人の手を離れた動きがあるわけですよね。それから石の波動というのも人の手を離れている。だから、デザインでありながらも、人の手によらないデザインということで、非常に面白いのができたかというふうに個人的には思っております。事実、禅の高僧がここで座禅を組まれまして、これは非常に面白いと。これは人の心を映す鏡だというふうに言われたのですね。これは見るときの気分によっていろいろな柄が表れてくるということを言われたのですけれども、そういうことでアート分野に展開して何とかなったということです。でも、商業分野のビジネスにはなかなかならなかったというのがこのプロジェクトです。
 最後に、こういう体験を経て何が生まれたかというのが最後のところです。ビジネス化するためには2つ大きな条件があると思います。
 1つはマーケットにつなぐシステムの構築です。プロトタイプまではいろいろなところがコスト負担してくれるのでできます。それから、実際にマーケットに持っていって買ってもらうまでがどこがコストを負担するのかという問題ですね。ここが非常に難しい。だから、やっぱり政府プロジェクトでもマーケットにまでつなげるような形をつくって展開しないと駄目なのじゃないかという感じがしました。
 それからもう1つが、ビジネスの知識を持って民生分野につなげる役割を担う仲介人材です。これは宇宙という非常に興味深い専門分野と全く新たな民生分野をくっつけるわけですから、2つ世界が違うわけですね。この2つを仲介できる人材というのが是非とも必要だというのは実感いたしました。実際私はこれをやっていたのでそういう実感があるのですけれども、正にこういう人がいないと動かないなという感じはしました。
 それでこの問題を考えてみますと、やっぱり大学の宇宙教育もこれから改善するべきところがあるかというふうに思っております。大学で宇宙といいますと、やっぱり理工系が中心ですよね。社会科系はやっぱり弱いと。
それで社会科学でも国際法だとか国際政治だとか、そういう分野の研究者がおられるのですけれども、ビジネスの分野はほとんどおりません。大学のプログラムはほとんどありません。だからある意味、いまだに私がこういう場に呼ばれているというのは、ビジネスと宇宙をやっているというのは、本当に人がいないからなのですね。だからそういう人をもう少し増やさないと、この分野、宇宙というのはなかなかビジネス化できないか。だから宇宙ビジネスを振興させるためには、ビジネスと宇宙の両方の知識を持った人材を育成しなきゃならないと。したがって、宇宙ビジネスの専門家と新たな民間のアイデアが出たときにそれをつなげられる人材育成が是非とも必要だという感じはしました。
 それで、先ほどの宇宙浴衣ですけれども、こちらのプロジェクトは割とうまくいったのですけれども、これはどういうふうになったかといいますと、先ほど言いましたように一方でJAXAの方に伝統産業の好きなグループをつくってもらいました。私の方はちょうど伝統産業活性化の塾を開いたので、その塾生の中で宇宙に興味のある者を募りました。それで宇宙班というのをつくって、JAXA側と伝統産業側を月に1回、京都で打合せをしまして、いろいろな製品開発のアイデアとかそういうものを練りました。
 それで、そのアイデアを練った後で、JAXA側はJAXAの代表の方が根回しをすると。伝統産業の方は私が根回しをして、両方ともうまく動くようにすると。それを2つ合わせていろいろなものが実際にできたということなのですね。だからこの場合、2人の仲介人材がいたのですけれども、それがあったおかげで非常にプロジェクトがスムーズにいったという経験があります。
 きょうお話ししたのはかなり特殊な事例でして、ほかの事例にどうやって扱うというのは私も分からないのですけれども、人材育成ということなので、何らかの参考になればということでこういうお話をさせていただきました。
 以上です。どうもありがとうございます。
 
【角南部会長】ありがとうございます。人材育成に関して、事務局より関連資料がありますので、簡潔に説明をお願いします。
 
【笠谷企画官(事務局)】文部科学省の笠谷でございます。事務局の方から資料57-5-2について御報告させていただきます。
 今ほど村山先生の方から宇宙ビジネスを例示して、人材育成、特に社会科学、人文科学系の人材の重要性について触れられたかと思いますけれども、事務局の方からその点について触れられている宇宙基本計画等の関連部署について御紹介させていただきます。
 まず先般、6月30日に閣議決定されました宇宙基本計画におきまして、資料の上の方でございますが、この中で産業・科学技術基盤を初めとする宇宙活動を支える総合的な基盤の強化というところがございまして、その中で宇宙活動を支える人材基盤の強化というところがありまして、こちらにありますとおり、宇宙分野の専門知識に加え、他分野への橋渡しを行う専門人材や国際ルールの形成、海外との連携や市場拡大、社会経済波及効果の分析、新産業の創出等を引っ張る人文・社会科学系の高度な知識を有する人材の発掘と育成を進めるということでうたわれております。
 また、下の方は科学技術・イノベーション政策に関する動向でございますが、こちらの方は科学技術全体のところで総合科学技術・イノベーション会議という、こちらは内閣府の方にもある会議なのですが、こちらの方でもこういう人文科学についての重要性がうたわれておりまして、こちらのワーキンググループの方でイノベーション創出のため、プロセス全体にわたり自然科学と人文科学の連携、協創が必要であり、人文科学の積極的役割が重要ですとか、自然科学と人文科学の扱いを異にする妥当性はなくなっているとの話がありました。
 これはどういうことかと申しますと、実は科学技術基本法という法律がございまして、こちらの法律は大分長くあるのですけれども、こちらの方の法律は実は第1条に、この法律は科学技術(人文科学のみにかかわるものを除く)の振興に関する施策と基本となる事項ということで、実は人文科学のみにかかわるものは除かれておりました。ですが、今ほど申し上げました人文科学の連携とかそういうものは必要であるということもありまして、先日閉会いたしました通常国会におきまして、科学技術基本法の改正が行われまして、人文科学のみにかかわるものを除くとされてきた部分が修正されまして、科学技術基本法の対象にも人文科学のみのものも加わったという次第でございます。
 次のページは宇宙開発利用部会の皆さまに、先ほど少し話しました宇宙基本計画に向けて昨年議論していただいて、御提言を昨年の9月にまとめていただきました。この御提言の中でも下の方ですけれども、宇宙開発利用に関する研究力の向上に向けた研究者や利用者の増加、多様化を見据えた対応が必要であるということもありまして、その中の一番右下の方で、国際連携、国際頭脳循環の強化ということで、宇宙環境保全等を引っ張る人文社会科学を含む総合的研究の推進ということで、こちらの宇宙基本計画の改訂に向けた当部会の提言においても、人文、社会科学を含むということで提言がなされております。
 次のページは今ほど宇宙基本計画ですとか科学技術基本法のことは御紹介させていただいたのですが、先ほど先生のプレゼンもありましたが、我々事務局の方が科学技術基盤となる宇宙関連人文社会科学関係人材の育成の必要性ということで、どのような人材が求められるのかというイメージの例として考えているものを御紹介させていただきたいと思っております。
 1つ目といたしまして、日本の宇宙技術を海外に公共事業、民間ビジネスとして展開するために必要な戦略を立案できる人材及び関係機関と交渉、調整し、インフラ展開を主導できる人材ということで、正に先ほどあったように売手との仲介というかそういうものが必要だということがありましたが、例えの1つとして対象が国ですとか海外の企業とそのようなものが考えられないかということで、このように経済学、国際政治学見地から学術的裏付けのある戦略を立案して、国、民間の海外展開を支援するとか、関係者との交渉、調整を主導できる、そのような人材が1つ考えられます。
 2つ目は、こちらの方は昨今、宇宙の方、いろいろルールが整備されつつところではあるのですけれども、そのような中でこれは宇宙だけではなくて、例えばほかの経済分野でデファクトスタンダードをとるということが非常に重要だということでもあるのですけれども、我が国が他国に先行している研究開発に関して、付随する制度課題に対してグローバルスタンダードとなるような国内ルールを策定できる人材ですとか、3番目の日本の宇宙開発利用と親和性が高い国際基準、標準を策定し、国際ルール化に向けて諸外国と交渉できる人材ということで、日本の宇宙技術を基に国連等の国際機関での標準化に貢献できるというふうな、例えばこれは法学部的な人材なのかもしれませんけれども、そのような人材も必要になってくるかと思っております。
 最後の4つ目は、そもそも人材の裾野を広げるということでございまして、宇宙活動のコンテンツを活用することで、子供たちの主体的、対話的で深い学びの醸成及び科学技術リテラシーの涵養を達成する人材ということで、こちらは教育学部的な人材というか、このような方たちが必要なのではないかということで、昨今宇宙基本計画ですとか科学技術基本法の改正等もありますので、是非人文社会科学関係の人材の必要性というのは高まっているところでございまして、この分野についての対応についても考えていきたいと思っております。
 以上でございます。
 
【角南部会長】ありがとうございます。それではただ今の御説明について御意見、御質問があればお願いいたします。鶴岡委員ですかね。お願いします。
 
【鶴岡委員】鶴岡でございます。ありがとうございます。非常に興味深い御報告、ありがとうございました。
 人文社会系、あるいはビジネスの方と宇宙との橋渡しですとか仲介の人材の必要性というのは、私も正に評価しているところでございます。その観点で2つお聞きしたいと思います。
 1つはビジネスの先ほどの話だったのですけれども、今宇宙とビジネス両方分かる人材が足りないというのは、恐らくそういう現実なのだろうと思います。ただそれがなぜかというのを考えたときに、まだ余り宇宙ビジネスでもうかっている事例がないというのは非常に大きいのだと思うのですね。そうしたときに、もしもうかる事例が国内外でたくさん出てきたら、自然と供給されると自然とビジネス界で宇宙に関心を持つ人も増えるだろうし、宇宙の方からビジネスの方に関心を持つ人も増えるだろうという1つの仮説といいますか予測も成り立つのだと思うのですね。
 ただ、他方でこういう人材がいないからそういうビジネスが発掘されていない、人材がいないが故に利益が見落とされているという部分もあるかと思いますので、現場の感覚としてまだ余りもうかる話がないからみんなが関心を持たないのか、あるいは本当はもうかるかもしれないのに、こういう人材がいないから利益が遺失されているのかというところの感覚をお伺いしたいのが1点です。
 もう1つが先ほどの橋渡し、仲介というところと関連するのですけれども、結局宇宙が一方にあって、他方にビジネスであったり、社会科学であったり、人文であったりするのだと思いますけれども、相互乗り入れといったときにどっちが乗り入れるかということです。これは両方あるのだと思うのですね。サイエンスの方で宇宙をやっていた人がビジネスとか社会の方に広げる、専門家に広げるというのと、あとビジネスをやっていた人たちが社会科学とか人文をやっていた人が宇宙に広げると。これは両方必要なのだと思いますけれども、現場をよく御存じの観点で、どちらがより足りないのか、あるいはどちらがより将来に対して有望なのかという辺りの印象的なところでも結構ですので、何かお教えいただければと思います。ありがとうございます。
 
【村山委員】御質問どうもありがとうございます。成功例を出さなきゃならないって正にそのとおりでして、やっぱりビジネスですんで一度こういうことで成功例が出てうまくいっていることが分かれば、非常に多くのビジネス外の方が参入してくると思うのですよね。その際にやっぱり一番大きな問題になっているのが実は規制なのです。宇宙をビジネスとするためには、書類の量がやたら多いのです。大体ここでビジネスをやっている人は負けてしまうのです。こんなことまでやってJAXA、あるいは宇宙と一緒にやらなきゃならないのかということなのですよね。
 民間ビジネスだともっと規制を外してもいいところなのですけれども、大きな規制の枠が残っているからそこで外せないようなことがあると思うのですよね。だから本当に民間ビジネスをやりたいならば、その規制のところを民間に合うような形で簡素化すると。これが非常に重要な感じがしますよね。
そうしたら、ビジネス外は結構宇宙が好きな人が多いのです。私はびっくりしたのですけれども、伝統産業の中で手を挙げろといったら、4人、5人いたのです。本当に宇宙が好きなの。子供の頃から宇宙が好きだというのですね。そういうことはやりたいけれども、やっぱり敷居が非常に高いし、まずどうアプローチしたらいいか分からないし、やってみたら非常に書類の面で大変だということで引いてしまうということなのですよね。
 だからともかくきっかけをうまくつかませるような、入ったところで規制をうまくマネージできるような、そういうところに注力してほしいのですね。その中で仲介人材というのも役立っていくというような感じがします。
 それから宇宙からのアプローチか、ビジネスからのアプローチか、どちらがいいかということなのですけれども、私の肌感覚からするとやっぱりビジネスからの方がいいと思います。やっぱりビジネスからアプローチする場合は、商売になるから来るわけですよね。だからそれなりのビジネスへの道筋を持ってくる人が来ますので、割と成功例が出しやすいと思います。そういうところで宇宙からアプローチすると、やっぱりコスト感覚というのはどうしてもちょっと緩いところがあるので、いいものができてもなかなかマーケットで売れないということがあるので、どちらかというとビジネスの方からアプローチしていただいて、クレジットをとってくると。そういう方が成功に結びつくかなというふうに思います。以上です。
 
【鶴岡委員】ありがとうございます。
 
【角南部会長】続きまして、鈴木委員、どうぞ。
 
【鈴木委員】鈴木です。私が考えるビジネス側の難しさみたいなところでいうと、小さい企業でトップダウンでの意思決定であれば、夢とかそういったワードで意思決定することもできるのですけれども、大きい産業にしていこうとすると、やはり意思決定のプロセスというのが非常に複雑になるという中で、例えばIRR、インターナル・レイト・オブ・リターンなどの和訳で知られていますけれども、利益率、幾らぐらい投資すると幾ら返ってくるんだみたいなところとかが分かりやすい数字で挙げられるといいのではないかなと。
 宇宙に関するリテラシーと経営などに関するリテラシーと両方持ち合わせていないと難しいというところもあるけれども、この辺りの数字みたいな部分の詳細が詰まっている必要があるわけではなくて最初はいいと思うのだけれども、粗々の数字で示せるような人というのが出てくると、いろいろな意思決定の遡上に上げるための議論とかができるようになってこないか。足りない部分は必要な人で補てんしていくみたいな形で進めていけばいいと考えています。
 特に土木とかゼネコンの領域では、PFI、プライベート・ファイナンス・イニシアチブという仕組み自体がうまくいっている事例、うまくいっていない事例、両方ありますけれども、こういった部分が宇宙産業への展開の中の参考になるのではないかと。コメントまでなのですけれども、以上です。
 
【村山委員】ありがとうございます。正にIRRでクリアできれば一番いいと思います。特に大会社で取締役会を通す場合、やっぱりこれをクリアしていないとなかなかプロジェクトとして成り立たないですよね。
 ところが、宇宙というのはリスクがあるので、なかなかこのベースには乗らないというのがあると思います。だから大会社が宇宙を手がけるためには、社内ベンチャー的なものを立ち上げてもらった方がやりやすいかなというふうに思います。IRRをある程度外して、本当にやる気のある者を募って新しいものをつくっていくと。そちらの方が入り口としてはいいのかなという感じはいたします。私も印象ベースの分なのですけれども、そういう感じはいたします。
 
【鈴木委員】おっしゃるとおりかというふうに思って、例えば衛星の話とかについても将来の市場がどうなるか分からないところはありながら、現在飛んでいる個数とか1年後飛ばすだろう個数とかそういった部分は少なくとも見積もれるはずで、今回の1つ目のお話にあったコストがある程度低減されたということ自体が、市場における衛星を飛ばすときのコスト優位性がどれぐらいあるかみたいなところからできる部分もあると思うのですね。そういった議論までなされて、例えばこの場に出てくるのであれば、意思決定のしやすさ、ファイナンスの多様性もあると思うのですけれども、そういった選択もとれるかというふうに思っています。
 
【村山委員】確かにそうなのですよね。だからそのためには成功事例があったら非常に有り難いのです。こういう成功事例があって、IRRもこういう形でクリアしていますよとなったら割と大企業は動きやすいのですよね。ともかくこの分野でまず何かいい成功事例を出すというのが大切な感じがいたします。
 
【鈴木委員】衛星の事例も成功事例の1つとしてお伝えすることもできるかと考えていて、コメントさせていただいた部分もあったのですけれども、あとは収益率みたいな部分とかをある程度確定的な部分にさせるために、国として開発にかかるはずだったコストというのが削減されつつ、民間に支払えるみたいな部分とかが一部提示できるようであれば、その辺りうまく情報のコミュニケーションをとりながら進めて、組める枠組みもあるのではないかと期待しています。
 
【村山委員】言われましたように、民間だけではなかなかIRRをクリアできないので、国が一部を補助して、だから官民連携、PPPみたいな枠組みをつくって、それで民間としては利益が出やすくするみたいな、そういう枠組みがしっかりできれば助かります。もう既に始まっていると思いますけれども、そういうふうに思います。
 
【鈴木委員】ありがとうございます。
 
【角南部会長】ありがとうございます。そのほか何か委員からございますでしょうか。よろしいですか。それでは、村山委員、ありがとうございました。
 
【村山委員】どうもありがとうございました。
 
【角南部会長】では次の議題に移りたいと思います。6つ目の議題ですが、地球観測衛星データを用いたCOVID-19に対する解析状況についてです。昨今の新型コロナウイルス感染症の世界的流行に関連しまして、地球観測衛星データを用いた解析により社会の貢献につながる活動をJAXA、NASA、ESAの宇宙3機関にて進めています。それらの状況についてJAXA及び共同で検討されている九州大学の馬奈木先生からお話を伺ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
【平林統括(JAXA)】では、まずJAXAの平林の方から地球観測衛星データを用いましたCOVID-19に対する解析の状況について御報告させていただきます。
 次のページをお願いいたします。新型コロナウイルス、COVID-19の世界的な流行前後におけます地球環境や社会経済活動の変化につきまして、JAXA、NASA、ESA、3機関共同での解析を4月下旬から開始いたしました。解析に当たりましては、気候、商業、水質、農業、大気質の5つのワーキンググループを構築しております。3機関共同することによりまして、合計で17の地球観測衛星の情報を活用することができました。またJAXAからは現在運用中の6衛星の情報を提供しております。
 解析結果につきましては、6月25日に公開するとともに、日米欧合同での記者会見も開催しております。
 また、COVID-19に関連するハッカソンにつきましても、関連する宇宙機関共同のもとで開催されております。本日はこの1ポツについて更に説明させていただきたいと思います。
 次のページをお願いいたします。これは気候に関しての解析結果であります。用いたのはGOSATのデータですが、GOSATの強みといたしましては、大都市部を集中観測できるということ、そして大気の下層域と上層域に分離してCO2濃度を出すことができます。これによりまして、CO2の発生源により近い大気下層の濃度の増減を把握することができます。
 右側の図で東京の場合ですが、過去4年間の平均に比べまして、2020年はCO2の濃度差が小さくなっていることが分かるかと思います。
 また右の棒グラフにおきましては、各年の月平均を示したものでありますけれども、2020年が例年に比べて小さくなっております。これはCO2濃度の上昇の増加ペースが鈍っているということを表しております。
 次のページをお願いします。これはALOS-2の情報を用いた解析結果でありまして、左側はシンガポールのコンテナや駐車の台数の変化を解析したものです。シンガポール政府によります仮設テントの宿泊施設の設置に伴いまして、車、コンテナの数が4月下旬から減少している変化を捉えております。
 また右側は北京にある自動車工場の駐車台数の変化を解析しているものでありまして、ロックダウン期間中の台数の現象を捉えております。
 次のページをお願いいたします。これは水質に関しての解析結果ですが、きょうは時間の都合で割愛させていただきます。
 次のページをお願いします。農業の関連の解析結果でありますけれども、カリフォルニア・サクラメント地区の作付け状況の変化を解析したものになります。真ん中の折れ線グラフがGCOM-Cによる植生指数の変化を示したものでありまして、今年は赤い矢印で示した時期に水田への灌水(かんすい)が行われたと考えられまして、過去2年と比べてみますと1か月近く早まっているということが見てとれます。
 また右側の図はALOS-2の画像解析結果でありまして、2020年のみ水田に灌水(かんすい)している地点を赤色で示しております。四角のポツの3つ目に書いているのですが、コロナの影響によりまして米の供給量の減少並びに国際的な米の需要の高まりから、カリフォルニア作付面積が増えている可能性が考えられますけれども、詳細につきましては社会経済学的な関係も含めて分析が必要だというふうには考えております。
 次のページをお願いいたします。これは石油や石炭など化石燃料を燃やした際に発生するNO2の濃度について解析したものでございますが、詳細は割愛させていただきます。
 次のページをお願いいたします。次のページはESA、NASA、JAXA、3機関共同での公開ウェブサイトのトップページを示したものです。ここにいろいろな解析結果を掲載しております。
 次のページをお願いします。JAXA単独でもウェブページをつくっておりまして、右側にありますようにJAXA for earth on COVID-19という専用のページを構築しております。
 次のページをお願いいたします。まとめでございますが、6月25日に解析結果をウェブサイトで公開いたしまして、4月1日までに約8万件のアクセス数がございました。今回3機関協力して行ったわけでございますが、そのメリットといたしましては、データの保管と様々なセンサの観測データ複数組み合わせることによって比較検証ができましたので、単独で行うよりも地球環境の変化を捉える制度を高めることができただろうというふうには思っております。
 今後ですが、解析結果の更新を継続するとともに、対象領域の拡大につきましても検討していきたいと思っております。またこの解析結果の利活用に関しましては、従来の科学分野での利用に加えまして、社会経済学等の新たな分野での利用を開始したところでありまして、この後九大の馬奈木先生からも御説明いただく予定であります。
 私からの説明は以上です。
 
【角南部会長】馬奈木先生、よろしいですか。
 
【馬奈木教授】それでは発表させていただきます。地球観測衛星データの社会科学評価といたしまして、九州大学、馬奈木俊介より発表いたします。
 次のページをお願いいたします。まずそもそも衛星画像といったものは、この5年ほど社会科学、特に経済学の方で非常に使えるようになりました。特に経済活動のプラスの面として、どれだけアクティブに活動されているかということであるとか、汚染データ、大気、CO2などのデータを使いながら、地域的にそういった環境の悪い側面も含めて、早い段階で1~2年後の経済社会統計を待って分析するよりも、推定値を使いながら衛星画像の加工に用いて、その結果としてなるべく早い段階でその状況が分かるということが非常に重要になっております。一番端的に表れますのが現在の九州の豪雨でありますとか、災害が起こったときのその直後の影響などは、通常は地域ごとのアンケートを活用しながら、その状況がどれだけ復興に向かっているか、経済が復活したかなどを議論するのですけれども、そういったことをせずに、衛星画像を使うことによって比較的早くその状況が広範囲に分かるというのは、かなり政策上、経済上も大事なモデルになります。
 今回短い時間の発表ですので、その影響を特に大気汚染、CO2、水質汚染に基づいて分析を行います。用います考え方は、環境経済学ではスタンダードとなっておりますCO2を含めた環境の価値を全て経済の何円、何ドルといった経済価値に直すという手法であります。これのいい点は、普通の経済価値、GDP、収入などと同じような単位で表すことによって、一切の環境対策を行うことによって、プラスの効果がどれだけ価値があるかということを分かることがいい点でありまして、PCCでありますとか、特に今回我々が使った指標は国連の環境計画でありますInclusive Wealthという新しい地域の富、国の富といったものを表す指標がございます。つい4日前にも「ザ・エコノミスト」で特集を組まれまして、wealth、富の度合いを測る指標として自然の度合いがどれだけ落ち込んでいるかということを表す最大指標的な資料として取り扱われました。その国連の報告書を私が代表しておりますので、今回の指標を用いました。
 実際個別の経済価値には直しておりませんけれども、生物多様性でありますとか、大気汚染、CO2といったものに対してCOVID-19が個別地域でどういう影響があったかというのは、本年度から出始めております。
 次のページをお願いします。今回JAXAから提供いただきましたデータを用いまして、これから空港の近くでのモニタした値からのCO2傾向、そして都市の傾向などをお話しいたします。ここで出しております地域は、飽くまでそこでとれたデータに基づきますので、その地域だけの実際の排出量というものではなく、その地域に流れ込んだCO2の濃度から算出されたものがありますので、地域全体の、また空港地域全体のCO2量の経済価値を表したものではありません。まず飽くまで計測手法としてどれだけ精度を高くやれるかということを確認するために、今各地域のデータを使いながら行っております。
 そこでまず、空港のデータといたしまして、GOSATからとりましたCO2濃度の値から温度などほかの変数の理解をしながら質量に変換します。それをトン辺りの経済価値に直すという作業を行いまして、主に空港の航空機数が減ったことに伴うCO2からの温暖化に関連する経済被害というものが減少しますので、その減少した分をプラスと把握して出した結果をここに載せております。
 次のページをよろしくお願いします。もう少し違う地域で複数のデータポイントで都市ごとに値がとれていますので、それを例えば地域とみなして出したものがこういったものになります。この値は地域ごとで一日当たりどれぐらいのCO2の量があるかということを表しております。
 次のページをお願いいたします。ここでは交通量の移動に対してどういうふうな数値が見られるかということを取り扱おうというふうなトライアルをしております。やった手法といたしましては、先ほどのCO2の濃度から計算をしたというやり方ではなく、今度は交通量を流れるこの場合は、首都高速湾岸線で赤の線で囲みました左が緊急事態宣言前、右がその後ですけれども、その前後でどういうふうな変化があったかということを道路の移動から計算しています。
 次のページをお願いします。その値を使いまして、そこを経過した自動車数、走行距離、平均燃費を別データからとっておりまして、被害数をビフォーアフターで出したのがこの図になります。
 次のページをお願いします。同様に東京湾の水質も水質データをとることによって、実質503万ドル、5億円程度の経済的な損失を回避することができたということが表しています。
 次のページをお願いします。最後になります。このようなやり方をすることによりまして、最終的に社会経済影響の経済のプラス分、復興の度合い、又はそれ以外のCO2、交通量や水質といったことを見ることによって、うまく解析手法を開発することができれば、社会経済状況がどういう状況になっており、次にどの対策をすべきかにつながるかというふうに思っております。
 以上です。ありがとうございました。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。それではただ今のJAXAと馬奈木先生からの御説明につきまして、御質問があればお願いいたします。林田委員。
 
【林田委員】林田です。大変興味深いお話、ありがとうございました。簡単に3つだけコメントさせてください。
 まず1つ目はやはり全体を通して地球観測というのがいろいろなことに役に立つのだ、そしてこんな突然のコロナウイルスのパンデミックというような非常事態といいますか、予期せぬ自体に対しても、こういった対応ができるのだということは、やはり過去からずっと地道に観測してきたということの上にあるものなのですよね。急に何かあったからセンサをつくってということじゃできないわけですから、その意味ではふだん地味かもしれませんけれども、地球観測というのをこつこつと積み上げていくことの重要性ということを改めて認識させていただいたというふうに感じております。
 2つ目のコメントです。先ほど前半のお話で5番目の大気質のところ、残念ながら飛ばしてしまわれたのですけれども、私、馬奈木先生に1つだけ申し上げたいのは、大気汚染というのは大気質の問題ですので、やはりこういった5番目のNO2のような事例を見ていただきたいなと思います。
 なぜかと申しますと、コロナウイルス、COVID-19の重篤化して死亡する人の割合、死亡率というのは、実はNO2の濃度の変化と関連付けられた論文が何本か出ておりまして、要するに大気汚染にふだんさらされているところの方が、重篤化して亡くなる方の割合が高いというふうに言われているのですね。ですから、大気汚染というコンテクストでお話しされるのでしたら、そういった死亡率だとか、正に命の価格というとあれですけれども、健康ということを経済的に評価していただければ有り難いなと。CO2はやはりどっちかというとクライメートチェンジの方のお話になるかと思いました。
 3つ目は人材育成のお話が先ほどから出ておりますけれども、やはりこういった研究、たくさん今ばっといろいろなジャーナルに関連研究、先ほどの死亡率なんかも出ているのですけれども、日本の方のコントリビューションってすごく少なくて、結局こういったデータをぱぱっとうまく使えるという人材も育てていかないと、裾野が広がっていかないと、こういったときにも対応できないと思いますので、是非そういう方面の人材育成というのも考えていただきたいと思います。
 以上3つでした。
 
【角南部会長】ありがとうございます。馬奈木先生、何かありますか。
 
【馬奈木教授】ありがとうございます。私はちょうどインドの大気汚染がすごく世界中で一番大きな問題ということから、それの人的資源、学校に来られなくなるといったことから、どのような経済被害があるかというのを以前やっておりました。
 今おっしゃった内容は正にそのとおりで、NO2の分析もやる予定にしております。特に病気の重篤な方がより亡くなりやすいという点からもNO2の重要性はありますので、是非経済価値を出して、人が社会に貢献できる人的資本という価値において、どれくらいの大きな損失があったかなどは理解していきたいと思います。
 3つ目の人材育成も正にそのとおりと思っておりまして、今回記者会見してから2週間程度で出した結果なのですけれども、JAXAの方々から質問すると、本当に早く大量にいろいろ協力いただいております。こういったことがやはり蓄積としてのいろいろな人材育成の結果だと思いますので、是非進めていただければ大変有り難いです。ありがとうございます。
 
【角南部会長】ほかに委員の先生方ありますか。いかがでしょうか。大丈夫ですか。JAXAの方も何かありますか。大丈夫ですか。
 
【平林統括(JAXA)】JAXAの平林でございます。林田先生から1点目でコメントいただいた点でございます。私どもそのとおりだと思っておりまして、これまで30年以上にわたりまして私ども地球観測に取り組んでまいりました。それで様々な過去のトレンドデータを有しておりましたので、そういう過去のトレンドと今回のものを比較することによって、変化がどうであったのかというのを抽出できたと思っておりますので、まさしくこういうデータを地道に積み重ねることというのはとても大事だと思っております。
 また、今回COVIDのこういう変化の状況を記録として残して、後世に残していくということも大切な仕事だというふうに思いながら取り組んでまいりました。以上でございます。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。ほかによろしいでしょうか。それでは、馬奈木先生ありがとうございました。平林さんもありがとうございます。
 それでは、その他の事項に移らせていただきますが、事務局の方から先日のH22B・9号機打ち上げ及び昨日のH2A・42号機打ち上げの結果と宇宙基本計画改訂について報告事項がありますので、よろしくお願いいたします。
 
【笠谷企画官(JAXA)】文部科学省でございます。御報告させていただきます。
 参考資料の1でございますが、こちらの方は5月21日2時31分に宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機(HTV9)を搭載しましたH2Bロケット9号機は予定どおりに打ち上げられ、「こうのとり」9号機は無事にISSに到着し、現在ミッションを継続中でございます。
 また、資料はございませんが、昨日7日の早朝、6時58分14秒にH2Aロケット42号機は予定どおり打ち上げられました。ペイロードといたしましては、アラブ首長国連邦の火星探査機ホークがありまして、こちらの方を所定の軌道に投入したところでございます。この火星探査機は来年2月に火星周回軌道に到達予定でございます。
 参考資料1は以上でございます。
 続きまして、参考資料2について御報告いたします。参考資料2の方は、先日6月30日に閣議決定されました宇宙基本計画の概要についてでございます。
 まず全体といたしまして、赤字部分が文科省の関係の施策となっております。こちらの方でございますが、まず昨今、安全保障における宇宙空間の重要性ですとか、経済社会における宇宙システムへの依存度の高まり、そのリスクの深刻化、諸外国や民間の宇宙活動の活発化、宇宙活動の広がり、科学技術の急速な進展等々、昨今の宇宙を巡る環境変化を踏まえまして、宇宙基本計画の方が改訂されたところでございます。
 その改訂の中で多様な国益に貢献するために、戦略的に同盟国等とも連携しつつ、宇宙活動の自立性を支える産業、科学技術基盤を強化し、宇宙利用を拡大することで基盤強化と利用拡大の好循環を実現し、自立した宇宙利用大国となることを目指しております。
 そして、宇宙基本計画の基本的なスタンスといたしましては、出口戦略を明確化する、民間活力の活用、資源の効果的活用、また同盟国、友好国等との戦略的連携ということで、きょうの話にもありましたとおり、民間の話ですとかそういうルールづくりですとか、そのようなことも盛り込んでおられます。
 そして、宇宙政策の目標と具体的アプローチでございますが、多様な国益への貢献といたしまして、宇宙安全保障の確保ということで、特に文科省の関係といたしましては、宇宙状況の把握ということで、こちらの方はJAXAの方が岡山県の方でやっております。
 そして次に災害対策、国土強靱化や地球規模課題の解決への貢献ということで、こちらの方はJAXAの今ほどCOVIDの話でもありましたが、地球観測衛星、ALOSですとか、また温室効果ガス、GOSAT等の技術衛星の方の開発ですとか現に運用していることがございます。直近でございますと、九州ですとか岐阜県で豪雨の被害がございました。その中でもJAXAは関係省庁の要請に基づきまして、緊急観測を行っているところでございます。
 次に宇宙科学探査による新たな知の創造ということでございまして、こちらの方は本日の話にもありましたはやぶさ2のミッションですとか、アルテミス計画、そしてISSのことについて触れられております。
 そして4番は宇宙を推進力とする経済成長とイノベーションの実現ということで、こちらはJAXAさんの方でJ-SPARC、宇宙イノベーションパートナーシップ等そのような産学の連携の取組等が触れられております。
 次に産業科学技術基盤を初めとする我が国の宇宙活動を支える総合的基盤の強化というところでございまして、こちらの方はまず基幹ロケットの開発、運用、こちらの方は今ほど私が申し上げましたH2Aですとか、先般運用を終了いたしましたH2B、また固体燃料ロケット、イプシロンからなる基幹ロケットの運用、そして次世代の基幹ロケットであるH3ロケットの開発を着実に進めるということでございます。
 そしてそれにとどまらず、将来の宇宙輸送システムの研究開発を進めるということで、抜本的な低コスト化を目指した革新的な将来宇宙輸送システム技術の研究開発の推進を行うところでございます。
 そしてまた、衛星につきましても、衛星開発、実証を戦略的に構築する枠組みということで、衛星開発、実証のプラットフォームを構築するということがうたわれております。
 9番の方、先ほど少し私が申し上げました宇宙活動を支える人材基盤の強化等についても触れられております。そしてまた、宇宙基本計画を策定するに当たりまして、委員の方々に改めて申すまでもありませんが、こちらの方は宇宙開発利用部会で昨年6月より御議論いただきまして、昨年9月に提言をまとめていただきました。それについては昨年11月に宇宙政策委員会、基本政策部会の方で報告させていただいております。また、特に輸送系につきましては、部会の下にあります将来宇宙輸送システム調査検討小委員会において、今年に入って6回御議論いただいて、こちらの方も本年5月に提言として取りまとめて、こちらの方も内閣府の方に報告させていただいているということでございます。
 宇宙基本計画の概要については以上でございます。
 事務局からの報告は以上でございます。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございます。ただ今の3件の説明について何か御質問がございましたらお願いします。特によろしいですか。
 それでは、引き続き事務局の方から連絡事項があればお願いします。
 
【笠谷企画官(事務局)】会議資料と議事録の公開について申し上げます。宇宙開発利用部会の運営規則におきまして、会議資料は原則公開することとされており、本日の会議資料は既に文部科学省のホームページに掲載させていただいております。また、議事録についても今後公開となりますので、委員の皆さまに御確認いただいた後、文部科学省のホームページに掲載させていただく予定でございますので、よろしくお願いいたします。
 事務連絡としては以上となります。
 
【角南部会長】はい、ありがとうございました。
 以上で本日の議事は終了いたしました。これをもちまして本日は閉会といたします。長時間にわたります御議論、オンラインで2回目ということで、かなり私も慣れてきたのかなというふうに思いましたけれども、ただ長時間ですので、オンラインですから2時間ぐらいになるとかなり疲れるなということで、この辺りが限界なのかなというふうに思いますけれども、ありがとうございました。以上で閉会になります。御苦労さまでした。

―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課