宇宙開発利用部会(第63回) 議事録

1.日時

令和3年12月13日(月曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 商業デブリ除去実証(CRD2)フェーズ1について
  2. 小型技術刷新衛星研究開発プログラムについて
  3. 「内閣府宇宙開発利用加速化戦略プログラム」(スターダストプログラム)により実施する文科省の戦略プロジェクトの進捗報告・評価について
  4. 自然災害における地球観測衛星データの貢献について
  5. 新たな日本人宇宙飛行士の募集について

4.出席者

委員

部会長 村山 裕三
部会長代理 鈴木 桂子
臨時委員 井川 陽次郎
臨時委員 笠原 次郎
臨時委員 三枝 信子
臨時委員 芝井 広
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 鶴岡 路人
臨時委員 松岡 彩子
臨時委員 山崎 直子
臨時委員 山室 真澄
臨時委員 米澤 千夏

文部科学省

研究開発局長 生川 浩史
大臣官房審議官 原 克彦
研究開発局宇宙開発利用課長 福井 俊英
研究開発局宇宙利用推進室長 国分 政秀
研究開発局宇宙開発利用課企画官 笠谷 圭吾
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 横井 奈央
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 理事 張替 正敏
 研究開発部門 研究戦略部 計画マネージャ 加藤 松明
 第一研究ユニット 研究領域主幹 山元 透

5.議事録

【村山部会長】 定刻になりましたので、宇宙開発利用部会の第63回会合を開催いたします。
 本日も新型コロナウイルス感染防止のため、前回同様にオンラインでの開催になっております。委員の皆様には御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、まず、事務局から本日の会議に関する事務の確認をお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】 文部科学省事務局でございます。
 本日は、宇宙開発利用部会に御所属いただいている16名の委員のうち、12名の委員に御出席いただいております。運営規則に定める定足数の要件を満たしております。よって、本日の会議は成立していることをまず御報告いたします。
 次に、本日の資料ですが、事前送付の議事次第のとおりです。
 オンライン状況について、音声がつながらない等の問題等がございましたら、事務局へメール、電話等で御連絡ください。
 事務局からは以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 それでは、早速、議題に入っていきたいと思います。
 最初の議題が、商業デブリ除去実証(CRD2)についてです。
 それでは、JAXAの張替理事から御説明をお願いいたします。
 
【張替理事(JAXA)】 皆様、こんにちは。今、御紹介にあずかりましたJAXA研究開発部門長をしております張替と申します。本日はよろしくお願いいたします。
 皆様御承知のように、スペースデブリ問題は、持続的な宇宙開発にとって喫緊の課題でありますとともに、その対応で日本は国際的なガイドラインづくりを先導、貢献しているところです。
 商業デブリ除去実証、CRD2は、スペースデブリ対策の事業化を目指す民間事業者様と連携し、大型のロケットデブリを対象とした世界初の低コストデブリ除去サービスの実証を二つのフェーズに分けて実施するものです。
 本日は、2020年度に開発に着手し、来年度22年度の打ち上げを予定しております商業デブリ除去実証フェーズ1の進捗状況を、商業デブリ除去実証チーム長の山元から御報告させていただきます。
 それでは、山元さん、お願いします。
 
【山元主幹(JAXA)】 山元です。よろしくお願いいたします。
 本日の御報告内容ですが、資料2ページに目次がございます。
 まず、商業デブリ除去実証の概要と、それからその中のフェーズ1の概要について御説明いたしまして、続きまして、現在開発中の実証衛星開発の状況をお伝えして、まとめをさせていただくという内容になっております。御参考として、各国の取組ですとか、内閣府で制定されたガイドラインに係る動き、それから今後のフェーズ2の状況についても、併せて御参考としてつけてございます。
 続きまして、3ページ目ですけれども、先ほど張替から御説明申し上げましたが、スペースデブリ問題、デブリが増えていって、運用している衛星等への影響もだんだん深刻化の方向となってきている状況がございまして、そのスペースデブリが増加するメカニズムは、基本的には軌道上でデブリとデブリが衝突をすることによってどんどん増えていくということがございます。デブリが増加していくのを抑制するために、デブリの除去、特に混雑している軌道にある大型のデブリを除去していくことが効果的であることが分かっておりまして、このアプローチでデブリの除去についてJAXAでは研究開発をしておりますし、これを民間企業と実現していこうということを、この商業デブリ除去実証で挑戦しているということになります。
 4ページ目をお願いいたします。
 商業デブリ除去実証の意義・目的でございますが、スペースデブリ対策の事業化を目指す民間事業者等と連携しまして、新たな市場の創出と我が国の国際競争力確保に貢献する取組を行うことと、大型ロケットデブリを対象とした世界初の低コストデブリ除去サービスの技術実証を目指すというのが、意義及び目的でございます。
 この線表のとおり、世界初のデブリ除去技術実証フェーズ1、キー技術実証と、フェーズ2、世界初のデブリ除去の2ステップを踏み台にして、民間企業がデブリ除去を起点に新規宇宙事業を切り開いて、新たな市場を獲得することを実現したいというものであります。
 ここにEOL、エンド・オブ・ライフと書いているのが、後でも出てきまして、ちょっと説明を要すると思いますけれども、ここでは故障した衛星を運用軌道から除去してあげるサービスのことをEOLといっておりまして、ADRというのは、もう少し広い概念、積極的に軌道上からデブリを除去するという概念のことを指して使っております。
 次に、5ページ目をお願いいたします。
 CRD2はフェーズ1とフェーズ2に分かれておりまして、分けている理由は、非常に技術的には新規性が高いので、一息にではなくて、2ステップのプログラムとしたということになります。
 フェーズ1の範囲は、いわゆる非協力的なターゲットであるスペースデブリにランデブーして、近傍制御をして、世界的にも情報の少ない軌道上に長期間放置されたデブリの映像を撮って、運動や損傷や劣化等の状況が分かる映像を取得するというところまででございます。
 フェーズ2は、捕獲等によりまして、その後、軌道を実際に降下させる推進等を行って、実際にその軌道からそのデブリを除去する実証を行うというものです。
 今、フェーズ1をJAXAで研究開発部門の部門内プロジェクトとして実施しているということになります。
 6ページ目をお願いいたします。
 商業デブリ除去実証では、民間事業者の事業化を後押しするために、単なる技術実証プログラムではなく、新しい試みを制度設計の中に入れ込むという調整もやっております。
 右下に、パートナーシップ型契約と書いてある図がございますけれども、これで大体説明できると思っておりますが、JAXAは衛星を調達するのではなくて、サービスと研究開発成果を調達する形になります。サービスの仕様とか安全の要求とかを定めて、そしてマイルストン・ペイメントの事前に定義された4回のマイルストーン達成のたびに、あらかじめ定められた金額が段階的に支払われるという形を取ります。そして企業とのパートナーシップ型の契約になっておりまして、この取組全体の資金はJAXAだけではなく、企業とJAXA両社が拠出して、JAXAへのサービスのほかに、企業も自らのビジネスに必要な技術実証をその衛星で実施できますし、さらにJAXAからのサポート、技術アドバイス、試験設備の供与、それからJAXAの研究成果の知財提供といったことを受けられると、こういう形の新しい制度設計を入れておりまして、緑のところに書いてございますけれども、民間企業のスムーズな事業化を強くサポートするという試みをしてございます。
 7ページ目をお願いします。
 ターゲットのスペースデブリですが、まず、実際に軌道上に長期間存在している、実際のスペースデブリ、日本のロケット上段の大型のデブリを選び、さらに、軌道高度が600キロメートルとやや低めを選びます。軌道高度が高いデブリの方が環境改善効果は高いのですが、今回は技術実証ですので、何か対象に間違って当たってしまってデブリを発生させたときに影響が少ないようにという配慮をして、軌道高度を選んでおりまして、現在、下記2物体を候補にしております。カタログ番号でいうと33500という物体と39771という物体で、この二つから今後最終的に1個に絞っていくということになります。
 右下に想像図がございます。H2Aのロケット上段は、打ち上げたときにはキツネ色をしていますけれども、10年以上軌道上に存在していますと、紫外線の影響で断熱材の部分が濃い茶色に変容しているという想像をしております。
 8ページ目ですけれども、この新しい試みの制度設計の中では、JAXAが企業に求めるサービスとして、サービス仕様書に四つのサービスを規定してございます。
 デブリ接近計画に対する実績の確認サービス、対象デブリの定点観測サービス、対象デブリの周回観測サービス、ミッション終了サービスです。全体として、ランデブーして、まず、ターゲットに対して相対的な位置を固定した状態でずっと撮影して、次に、対象の周りをぐるりと回りながら撮影して、最後に、以後対象物体に衝突しないような軌道に離脱して、終了という四つのサービスを求めるものです。
 JAXAとして安全の要求だけは定めております。JAXAのいわゆる設計標準、管理標準等は適用せずに、事業者側の標準を適用してよいという形にして、事業者側の裁量を大きくとっているということが非常に大きな特徴です。
 マイルストーンは4段階になっております。基本的には、基本設計、詳細設計、それから製造・試験検証が完了したところ、ここまででマイルストーン1、2、3です。打ち上げて、運用して、最後、運用結果をレビューして、マイルストーンの達成を果たすのがマイルストーンの4でありまして、4は打ち上げ後に判断するマイルストーンになります。
 9ページ目になりますが、2020年にアストロスケールさんがフェーズ1のパートナー企業に選定されまして、プロジェクトを開始してございます。
 10ページ目ですが、先ほど申し上げたJAXAへのサービスに、アストロスケールさんもアストロスケールさん御自身のミッションを三つ実施するというミッションの建て付けになっておりまして、これら全体を実施する衛星をアストロスケールさんが主体的に開発するという構図になっております。
 11ページ目をお願いいたします。
 実証衛星ですけれども、ADRAS-Jという名前がついている実証衛星で、アストロスケールさんが設計、製造、試験、許認可申請、打ち上げ、運用まで、主体的に実施します。質量が打ち上げ時WET質量で約180キログラムの衛星でして、2020年度にロケット・ラブ社のエレクトロン・ロケット、ニュージーランド射点より打ち上げ予定です。打ち上げ事業者もアストロスケールさんが選ぶということにしております。
 12ページ目がミッションシナリオですが、こちらは先ほど申し上げたJAXAが求めるサービス1、2、3、4を実現するようなシナリオになっております。ロケットで打ち上がって、ターゲットに接近して、撮像関係の運用を行って、離脱するというのがおおまかな流れになります。
 13ページ目をお願いします。
 これが必要技術ですけれども、一言で言えば、非協力的物体に対するフルレンジのランデブー・アンド・プロキシミティー・オペレーション、ランデブー及び近傍運用技術ということが言えると思います。ポイントの一つは、スペースデブリのような非協力的ターゲット、姿勢制御もしておらず、通信もできず、相対航法センサーが使えるようなマーカーやレーザーリフレクター等の準備もないというターゲットに対してランデブーをしていくという技術になります。もう一つのキーワードとしてはフルレンジというのがあります。これは技術実証の形として軌道上の衛星が模擬デブリを放出して、非常に近い距離のランデブーの実証だけを行うのではなくて、地上からロケットで対象デブリに向けてロケットの打ち上げを行うというところからがランデブーの始まりですので、打ち上げから遠方ランデブーを経て一番近いところまでのフルレンジの実証を行うというのが大きなところかと思います。
 14ページ目は特徴です。これはアストロスケールさんの特徴といっていいと思いますけれども、民生品のセンサーを積極的に採用したランデブーセンサーシステムを開発することに挑戦されているというのが大きいところかなと思います。
 15ページをお願いします。
 開発の進捗状況ですけれども、マイルストーンの1を2021年7月に達成しておりまして、今、マイルストーン2の完了に向けて、詳細設計作業を行っているところです。詳細設計と並行して、いろんな機器のブレッド・ボード・モデルあるいはエンジニアリング・モデルの各種試験を実施してきているということになります。繰り返しになりますが、ロケットの選定も済んでおりまして、ロケットのインターフェースと合致した形での衛星設計というのも進捗している状況にあります。
 JAXAからはいろいろな形で技術的な支援をしておりまして、技術アドバイスとしては138件のアドバイスを今のところ提供しております。それから設備は、一般的な衛星用の設備だけではなくて、かなり特殊なランデブーに特化したような設備について供用したりもしております。それから研究成果の知財提供についても、個別の分野のトピックスに対してJAXAの研究成果の提供を行っているところです。
 まとめとしましては、CRD2を進めておりまして、現時点でマイルストーン審査によるゲート管理と技術アドバイス等々による技術的な支援の両方を二つの活動の柱としまして、比較的新しい試みでありますけれど、これを進めております。マイルストーン1が終わりまして、マイルストーン2の完了に向けて、今、作業を進めているという状況の御報告になります。
 少し時間を使って、軽く参考のところにも触れたいと思いますけれども、18ページ目に各国の取組について書いてあります。細かくはお読み取りいただきたいと思いますけれども、日本は非常にデブリ除去が活発でして、いろんな企業がチャレンジしております。日本のほかで目立つのは欧州でして、特にESAがクリアスペース社というところと契約して、ADRIOS/Clearspace-1というデブリ除去の実証ミッションを立ち上げております。これは一番目立つCRD2にとってのライバルということになりますけれども、19ページ以降に少しそのベンチマーク分析をしております。
 19ページ目です。
 ESAのADRIOS/Clearspce-1というミッションは、資料等を見ますと、ADRをデモンストレーションするとしておりますけれども、実質的にはいわゆるEOLサービス、つまり故障衛星の運用軌道からの排除を少なくとも直近のビジネスとしては狙ったミッションになっていると考えております。したがって、ADRIOS/Clearspace-1の実質的な競合相手は、軌道上の大型デブリの除去までをスコープとしているCRD2ではなくて、アストロスケールさんのEOLサービスで、EOLサービスをどっちが早くものにするかという戦いとなっているという見方の方が多分正しい情報分析だと思っております。
 20ページ目にありますけれども、タイムライン的には、アストロスケールさんはフルレンジの実証を2023年、クリアスペースは2025年に終えるスケジュールですので、アストロスケールさんの方が現状2年早くEOLサービスの技術実証をフルレンジでできるということになります。CRD2は、そのフルレンジでの技術獲得の一翼を担うような機会になっておりまして、そういう意味で強く事業者を後押しする内容ということができているのかなと考えております。
 続けて、ガイドラインですけれども、こちらのガイドラインを内閣府殿・JAXAがいろんな機会で世界に紹介しているということの御紹介です。
 最後、22ページ目です、フェーズ2については、宇宙基本計画工程表上、2025年度以降打ち上げとなってございますが、必要な技術の研究開発をJAXAで進めているところでございまして、今、フェーズでいうと、ミッション定義フェーズ、概念検討という段階で、企業2社と概念検討を実施しているという状況になっております。早期のプロジェクト立ち上げに向けて、こちらも進めてまいりたいと思っているところです。
 御説明は以上になります。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。詳しい説明でよく分かりました。
 若干時間がかかっておられましたので、できるだけ議論を進めたいと思いますので、これから時間厳守でお願いしたいと思います。
 それでは、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。挙手いただければと思いますが、いかがでしょうか。
 日本にとっては重要なプロジェクトの位置づけだと思うのですけれども、いかがでしょうか。
 笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 名古屋大の笠原と申します。御説明どうもありがとうございます。大変日本として非常に重要な技術実証に向けた取組だということを再認識させていただきました。是非とも前に着実にお進めいただきたいなという気持ちを新たにするとともに、1点だけ質問があります。
 最終的な目標が軌道離脱ということで、デブリをリエントリーさせるというところですが、そこへのフィージブルな技術の蓄積や開発状況はどうなっているのかなというのが大変気になっております。といいいますのも、やはり軌道上の物体は非常にエネルギーが大きいもので、軌道離脱のためのエネルギーをどのように与えるのか、その辺り国際的な競争を見ても、各国がどこまでフィージブルな手段を持っているのかというのが、私はこの資料からはちょっと読み取れなかったものですから、その点について御説明いただければと思います。以上です。
 
【村山部会長】 はい、ありがとうございます。その点いかがでしょうか。お願いします。
 
【山元主幹(JAXA)】 スライドとしては最後のページを出していただけたらと思います。デブリを最後にリエントリーさせる部分はフェーズ2のカテゴリーになりますけれども、JAXAで研究しております。
 まず、デブリは、大気の抵抗で自然に落下させた場合に燃え尽きるものと燃え尽きないものとございますけれども、小型のものは燃え尽きます。非常に大型で燃えにくい材料があるものは燃え残ってしまします。燃え残る量が多いものについては、安全に落とす必要がございまして、これが非常に大きな課題となります。現状は、例えば日本のロケットでいいますと、H2Bなどは、打ち上がった後に自分で噴射をして、安全に再突入をすることは実現しておりますし、また、HTVも、ISSから離脱した後に安全に再突入をすることはできております。
 デブリ除去における課題は、やはり落とす対象の物体が非常に大きいことです。一方で、デブリ除去を安く済ませようとすると、デブリ除去宇宙機は小さい必要があります。なので、相対的にいうと、小型の推進系で安全な落下を実現することが技術課題です。例えばHTVの例でいいますと、大体増速量100メートル毎秒が安全な落下に必要になります。このままですと、小さな人工衛星で巨大な物体を背負いながら100メートル毎秒の増速を行うのは非常に負担になりますので、これを極力減らすための研究を行っております。どうやって減らすかというと、具体的には極力大気密度、大気のアシストを限界まで使います。どこまでそれを使って、通常現状で100メートル毎秒かかるところを減らせるかということを、今、研究している段階でございます。
 
【村山部会長】 今の答えでいいでしょうか。
 
【笠原委員】 はい、ありがとうございました。大気アシストがメイン技術だということは理解できました。どうもありがとうございます。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。
 続きまして、鈴木委員、お願いいたします。
 
【鈴木(健)委員】 鈴木健吾です。よろしくお願いします。
 まず、お取組自体、非常にすばらしいものだと思うのですけれども、インセンティブ設計の報酬額の設計みたいなところとか、いろいろ手探りのところはあるかもしれないですけれども、その辺りについて2点、教えていただきたいなと思っています。
 まずは、クリアスペースさんが対応しようとしているものとか、デブリ除去というところの市場点をどのようにJAXAさんとして捉えてらっしゃるかが1点です。
 あとは、マイルストーン設計のときに工夫されている点とか配慮されている点みたいなところを教えていただければなと思っています。よろしくお願いします。
 
【村山部会長】 お願いいたします。
 
【山元主幹(JAXA)】 まず、市場ということですけれども、大きく分けて2種類あると思っておりまして、先ほどから御紹介している言葉でいうとEOL、それからADR、その二つがあると思います。
 EOLと申し上げているのは、故障衛星を運用軌道から外すということで、小さい人工衛星が多いですので、除去したからといってその後の連鎖衝突によるデブリの増殖を抑える効果というのは、1個1個に関していうと、そんなに大きくはないです。その代わり、最近出てきておりますメガ・コンステレーション、すごくたくさんの衛星を自分の運用軌道で運用するようなことをやりたいという事業者にとっては、自分の運用する衛星がたくさん飛んでいる軌道をクリーンに保つというモチベーションがあります。EOLについては、最近メガ・コンステレーション上に事業化の動きが活発ですので、まず直近のビジネス的なマーケットとしてはかなり期待が大きい部分ではないかなと思います。
 次に、ADRは大きな物体を、しかも混雑している軌道から外して、それによってデブリの連鎖的衝突の確率を下げて、環境改善に持ち込みます。こちらについては、商業的な実施という意味では多分EOLよりは少し未来になりますけれども、一方で、スペースデブリ環境の悪化という意味では一番問題であるとされている領域ですので、ここは各国の政府をはじめとする機関が責任のある対応をすべきではないかという議論が比較的多い分野でして、ここの部分は純粋に民間よりは官で、例えばフロントローディング的に最初の技術ミッション等を行って、民間での実施につなげていくというようなシナリオでの商業化がよく語られるということかなと考えております。
 以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。
 あと質問がないようですので、次の議題に移りたいと思います。
 二つ目の議題ですけれども、小型技術刷新衛星研究開発プログラムについてです。
 それでは、同じくJAXAの張替理事から御説明をお願いいたします。
 
【張替理事(JAXA)】 はい、承知しました。引き続き、御報告申し上げます。
 令和2年に改訂されました宇宙基本計画におきまして、進展の早い先端技術や、開発期間の短縮、そして省エネや低コスト化につながる新たな開発方式を加味し、双方の衛星に随時取り入れるため、小型・超小型衛星によるアジャイル開発・実証を行う技術刷新衛星プログラムを新たに構築することが示されております。
 ここで御報告いたします小型技術刷新衛星研究開発プログラムは、その目的を達成するために令和3年2月にJAXAの第4期総合事業計画を改定して、新規プログラムとして検討を開始させていただいているものです。
 本日は研究開発部門研究戦略部の加藤計画マネージャより、その進捗状況を御報告させていただきます。
 それでは、加藤さん、よろしくお願いします。
 
【加藤マネージャ(JAXA)】 研究戦略部の加藤です。よろしくお願いいたします。
 それでは、資料に基づきまして御説明いたします。
 まず、2ページ目に移っていただきまして、本日の御報告内容でございますけれども、先ほど張替からありました本プログラムの位置づけにつきまして、サマライズするとともに、この位置づけに基づきまして目的・目標を設定し、研究課題を設定してきたというところでございます。こちらの考え方を御紹介させていただいて、最後、4項で今後の予定を御説明いたします。
 3ページ目になりますけれども、先ほど張替からありましたとおり、ページの上側に本プログラムの背景を示してございます。こちらの宇宙基本計画改訂の際にも議論された内容でございますけれども、課題として大きく二つあると認識しております。
 一つ目が、挑戦的な衛星技術の研究開発・採用機会の不足という課題があるというところでございます。衛星利用や、衛星開発が進んでおりますけれども、着実な開発が求められている一方で、衛星システムの刷新や競争力の強化につながる挑戦的な技術と、その先端技術を採用した研究開発実証の機会が不足しているというところが課題の一つとなってございます。
 それから二つ目が、衛星のつくり方、開発・製造方式の刷新です。欧米等ではかなり取組が進んでいる中、日本ではこういう新たな開発方式、製造方式、特にプロセスのデジタル化や最適化等に取り組む機会が不足しているという課題です。
 こういう背景、大きな二つの課題がございまして、これらを踏まえて、宇宙基本計画の令和2年度の改訂において、先ほど張替から御説明いたしました技術刷新衛星プログラムを新たに構築することが定義されたというものでございます。
 下側に参りまして、左側です。これらを受けまして、JAXAとしまして小型技術刷新衛星研究開発プログラムを立ち上げて、検討を進めてまいっているところでございます。その取組内容としましては、丸1番、丸2番で示してございます。
 丸1番には、どういうことをやっていくかを書かせていただきました。特に先ほどありました革新的・基盤的な技術を早いサイクルで実証する。その結果として、赤字で書いてあるところですが、挑戦的な衛星技術による競争力強化、新たなユーザーニーズを創出していこうというところです。
 それから、Bに書いてありますとおり、新たな開発・製造方式によりまして、最終的に、赤字で示した衛星の短期開発・低コスト化を目指そうというものでございます。
 丸2番は、特に技術成熟度の低いものは、衛星での実証に向けて地上の研究開発から官民連携でやっていこうということで、宇宙実証とアイデアのギャップを解消して、シームレスに研究開発を推進するということです。
 右側の図は、このプログラムの位置づけとして今まで御説明してきたものを絵で描いたものでございます。このプログラムを走らせることによって、上側にあります民間の宇宙活動、ビジネスの拡大のための競争力向上に資するものにアウトプットを出していくというもの。それから、下側にありますピンクの部分で、政府の宇宙活動の宇宙利用拡大にもつながるような技術や開発の仕方を実施していくと、こういうことがぐるぐるとサイクルで回ることによって、このプログラムでやった成果を大きく発展させていこうという考え方で、本プログラムは位置づけられてございます。
 次に、4ページをお願いいたします。
 こちらは、前項に示す政策的な位置づけである競争力向上や新たなユーザーニーズ創出、衛星の短期開発・低コスト化への貢献を目指しつつ、特に動きの非常に激しい昨今の宇宙事業を我々としてもしっかりと見据えて、本プログラムの目的を設定してございます。
 我々として見ております三つの大きな環境としましては、まず、左側の宇宙市場の拡大、競争の激化ということで、特に地球観測分野を中心にこの競争が激化していることです。それから、真ん中のコンステレーションニーズの拡大ということで、コンステレーション、衛星を多数使って、様々な事業を実施していくものでございますけれども、こちらは政府・民生で検討されているということで、このニーズが拡大している中、どのような基盤技術を獲得していくかと、ここは大きな視点になるだろうと考えています。三つ目の視点としまして、デジタル化への期待ということで、宇宙事業だけではなくて、様々な業界でデジタル化が進められておりますけれども、宇宙事業も例外ではなく、近年急速に進展が進むデジタル化、特に衛星のソフトウェア化や開発プログラムをデジタル化によって改善、刷新していき、ここに貢献していくことです。
 こういう大きな三つの背景、取り巻く環境の変化をしっかり捉えて、このプログラムは進めていくべきだろうと考えてございます。
 これらを踏まえ、プログラムの目的としましては、下側の水色の枠に書いてあるとおりでございます。一つ大きなトップの目的としましては、10年先に我が国が世界トップレベルのコストパフォーマンスを持つ衛星利用サービスを享受するというところを設定しております。そのために、国際市場の中で競争力を持つ衛星技術を、既存の企業さんと新規の企業さんの参入も促進して構築していくというところで総合的に進めて、競争力をアップしていこうというものでございます。この競争力を持つ衛星技術の対象領域は、衛星システムレベルの技術ということで、アーキテクチャー、設計・製造及び運用プロセス等として、これらの研究開発、実証を行い、成果の活用を促進していくという目的を設定してございます。
 5ページ目をお願いいたします。
 先ほど御説明しました競争力のある衛星利用サービスを達成するという目的に対しまして、我々としては目標を三つほど設定してございます。
 一つ目は、衛星利用サービスの構想の実現ということで、下側に絵がございます。左側にあるのが現状の衛星利用サービスで、サテライト・アズ・ア・サービス、衛星もつくるのではなくて、サービスを実施していくというものとして定義してございます。現業では、ユーザーニーズの大幅な変更はない前提でシステムがデザインされています。それから、機能の変更、追加、拡張は想定していません。こういう固定的なサービスが今は実施されている状況でございますが、右側に示した他の地上の業界でも進んでいるサービスのように、ユーザーニーズに応じて衛星や地上の役割をダイナミックに変更可能として、新たな機能を持つ衛星を自由に拡張して、サービスの質をフレキシブルに変更していける、こういうサービスができるための技術を獲得していこうというというのが目標の1番でございます。
 6ページをお願いいたします。
 サービスを改善するに当たって重要なポイントでありますフレキシブル性を確保するために、ソフトウェア衛星を目指したアーキテクチャーを構築していこうというのが目標の2番でございます。
 下側の図にありますとおり、従来の衛星アーキテクチャーは、先ほども申し上げましたとおり、打ち上げ後の変更が非常に難しいです。それから、再利用性の低いソフトウェア・アーキテクチャー、さらにハードウェアに依存した設計、検証、運用をやっていまして、これは着実に開発するという中で、これまで実施してきたアーキテクチャーでございます。しかし、刷新プログラムでは、右側にありますとおり、ソフトウェアの能力を最大限活用した新しいソフトウェア衛星のアーキテクチャーの構築を目標として設定してございます。
 右下側にありますとおり、赤字で書いてありますが、打ち上げ後も自由自在にできることがソフトウェアの持つ大きな特徴でございますので、これができるようにすることと、ソフトウェア化によって再利用性の高いソフトウェア・アーキテクチャーも実現し、さらにソフトウェアの中で検証することによって今までハードウェアで実施してきたところを大きく短縮し、開発を効率化していこうというもので、目標設定2を考えてございます。
 さらに、ソフトウェア化に当たりましては計算機が非常に重要になってきますので、デジタル基盤技術としての計算機がムーア則に従うような能力を拡大する開発手法を構築していくのが目標設定2番でございます。
 7ページをお願いいたします。
 さらに目標3番としましては、衛星開発へのデジタルDX開発手法の浸透・効用の顕在化を掲げております。7ページ下の左側に、先ほど御説明しましたソフトウェア衛星の概略図を載せておりますけれども、こちらはあくまで機能をソフトウェアで実現していくというものでございまして、衛星はさらにそれをハードウェアと組み合わせて、試験をして、打ち上げていき、それが宇宙の中でしっかり動くことが必要ですので、こういう機能設計のソフトウェアの部分とものづくりをデジタルの中で連携させる技術にトライしていくという目標を掲げております。特に今回、上のaのところに書いてありますとおり、2年で数十機程度という我が国の民生事業で構想されている小型コンステレーションの開発・運用にこういうデジタル開発を適用して、費用、期間並びに信頼性の要求を満足するこの手法と運用手法を実現していきたいと、こういうものが我々の目標設定3でございます。
 8ページをお願いいたします。
 このような目的、目標の議論を我々としては刷新プログラムという中で実施しておりまして、左側の水色の枠に大きな四つの活動を示してございます。重点課題の識別・設定は、先ほど御説明しました目的・目標の設定も含みます。これと丸2番にありますとおり、ワーキンググループ、コンソーシアム、RFIといったところで、既存の事業者の意見を集約して、重点課題を設定してございます。この議論につきましては、JAXAに閉じることなく、右上にあります赤い四角の枠、有識者検討委員会というJAXAの外部諮問委員会を設置いたしまして、右の表にありますような委員を指名いたしまして、議論を重ねてきておるところでございます。本日は、この後、研究課題をこの枠組みの中で設定していきましたので、そちらについて御紹介いたします。
 9ページをお願いいたします。
 研究課題の設定でございますけれども、先ほど御説明した目的、目標について事業者からの意見を収集すべく情報提供要請を行ってございます。先ほど御説明した目標1、2、3にひもづく形で事業者の皆様から意見いただいておりまして、目標1番につきましては、やはり地球観測データやIoTデータ等の情報化、知識化を、より使いやすい方向に進化する、ですとか、地上で行っている処理を軌道上で行っていくことによる価値の向上があるという意見、オンボード処理の高度化が重要であるというところが意見として出てきております。こういうオンボード処理の向上やサービス実証のPOC、プルーフ・オブ・コンセプトのための場が必要だというところが研究課題の設定として重要なポイントだと我々としては認識しております。一方で、引き続き検討が必要なところもございますので、そこは今後議論していきたいというところでございます。
 同様に目標2番につきましては、ソフトウェア化が非常に重要だというお話がございますけれども、右側に示しております水色の部分、引き続き検討が必要というところで、ソフトウェア化をどういうところをやっていくべきかについては議論が必要と認識してございます。
 目標3番でございますけれども、製造、開発のDX化につきましては、皆さん非常に重要だということでございますけれども、右側にありますとおり、日本の宇宙システムのデジタル化で何を目指していくかは、中長期的な目標を引き続き検討が必要と認識してございます。一方で、小型コンステレーション事業につきましては、非常に短期の中で競争が激化しているというところで、衛星能力の拡大や多品種への対応等の具体的なテーマ設定が必要というところが研究課題の設定と認識してございます。
 10ページをお願いいたします。
 これら事業者さんからの御意見を我々としてはしっかり受け止めまして、研究課題として、(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)の四つのカテゴリーを設定してございます。
 研究課題(ア)につきましては、特に小型コンステレーションに着目いたしまして、リソースの限られているコンステレーションの観測能力の拡大と価値向上に向けた取組が研究課題でございます。
 研究課題の(イ)につきましては、これもコンステレーションに着目したものでございまして、多種多様なミッションへの対応力向上とデリバリーの縮減という研究課題を設定してございます。
 研究課題(ウ)、(エ)につきましては、まだ議論が必要というところがございまして、新しいサービスをどういったものでやっていくのかですとか、デジタル開発として中長期的に日本の宇宙開発として何をやっていくのかというところを引き続き検討していきたいということを識別してございます。
 11ページ以降で、研究課題(ア)、(イ)について簡単に御説明いたします。
 研究課題(ア)につきましては、コンステレーションの観測能力の拡大と地球観測サービスの価値向上ということで、特に下側の図に描いてありますとおり、現在は各種設計解析の連携が固定的であるものについて、シミュレーション技術、モデルベース技術を活用して連携させていくことで、更に試験結果、軌道上データをフレキシブルにデジタルモデルに活用することで、システムが持つ能力を最大限引き出すというものを目指していこうという研究課題でございます。更に加えまして、a, b, cという形で、AI処理や自動化機能などのソフトウェア開発について、容易に新しいプレーヤーが参画できる環境の構築、そのソフトウェア化を支えるための計算機の研究開発、さらに小型コンステレーションの観測能力に資する発熱に対応する熱制御技術の獲得というものをパッケージとして、この研究課題(ア)として設定してございます。
 12ページをお願いいたします。
 先ほど御説明しましたサービスの構築ということでは、左側が地上側の計算機環境で右側が搭載機計算機環境でございますけれども、こちらをシームレスにつなげるようなソフトウェアのアーキテクチャーを構築して、宇宙の人だけではなくて、地上側でアイデアを持つ人が、このオープン領域という上側のサービスの部分に参画をして、新しいサービスを構築して、宇宙で実証できるというソフトウェアのアーキテクチャーを構築していこうというのが研究課題(ア)-aの我々の構想でございます。
 13ページをお願いいたします。
 今、(ア)-aでお示しましたソフトウェアを実装する計算機としましては、宇宙用部品は民生部品に比べまして非常に進展がゆっくりでございますので、民生部品等を活用して、宇宙で新しいソフトウェアの構造、それから新しいアプリケーションを非常に高度な処理ができるような計算機をこの中で開発していきまして、いろいろな方に試していただくところを目指した研究課題として考えてございます。下にありますとおり、非常に信頼性の高いものから、右側にありますとおり、非常に機能の高い、それから容量の大きい、こういうものをうまく組み合わせられる計算機を目指していこうというのが、課題(ア)-bでございます。
 14ページをお願いいたします。
 もう一つの研究課題(イ)ですが、多種多様なミッションへの対応能力ということで、下にありますとおり、衛星の開発はシーケンシャルな設計開発で、顧客要求から衛星の仕様を出すところまで、非常に多くの作業が絡み合って進んでいるものでございます。これを右側にあるとおり、デジタル空間の中でシームレスに実施できるようにして、更にモデルや部品などをデジタル情報として連携させることで、初号機開発からシリーズ開発に行くにつれて、どんどんとこのサイクルを早く短くすることを目指すというものが、研究課題イの目標設定でございます。これによって顧客能力へ速やかに対応できる世界を目指していこうというものでございます。
 15ページをお願いいたします。
 最後、まとめでございますけれども、本年度より本格的に取組を開始しました本プログラムにつきまして、目的、目標を設定してございます。JAXAとして設定した目的、目標につきまして、2021年9月に情報提供要請を行い、20社以上から御意見いただいてございます。これらを踏まえまして、我々としては分析をして、補完的なヒアリングを実施しつつ、今月に有識者検討委員会を開催して、研究課題として四つの項目を設定しました。このうち具体的に検討が進んだ2項目について、具体的な研究及び実証に向け、今後パートナーとなる事業者の選定を行って、研究開発を進めてまいりたいと考えてございます。
 また、今後の検討としました2項目につきましては、研究課題の具体化について更に検討を進めたいと考えております。
 それから、最後のポツでございますけれども、技術実証につきましては、行程表にも書かれた2024年度、2年ごとに打ち上げる刷新衛星に加えまして、よりアジャイルに実証を進めるために、民間衛星、大学、民間企業のキューブサット等と連携して、タイムリーな実証を行ってまいりたいと考えてございます。
 御説明は以上となります。
 
【村山部会長】 はい、どうもありがとうございました。
 ただいまの説明について御意見、御質問がありましたら、挙手いただければと思います。いかがでしょうか。
 松岡委員、お願いいたします。
 
【松岡委員】 京都大学の松岡です。御説明どうもありがとうございました。
 一つよく理解したいなと思うことがあって、質問させていただきます。
 衛星のいろんなこれまで使っていたハードウェアをデジタル化していくというのは、いろいろな軽量化とか費用などの点で大変よい方向であると感想を持ちました。
 7ページ、8ページ辺りを伺っていたときには、衛星のバスなども含めた非常に基幹的なところも含めてデジタル化を進めていくのかと想像をして、私はこの辺の話を伺ったのですけれども、もうちょっと後の12ページ目辺りになりますと、オープン領域で自由にアプリをつくって、それでそれを利用したような、実行プラットフォームからは宇宙機メーカーがやるというような、どちらかというと例えば地球観測とかのアプリの方をデジタル化して、いわゆる従来の衛星バスの部分は従来の方法でやるのかという印象も持ちました。でも、実際に衛星の小型化とかをするためには、かなりバスも含めてデジタル化とかをやらないと、なかなか小さくなっていかないのではないかと思っているのですけれども、デジタル化というのをどの範囲で行う予定があるのか、その辺りをもう一度聞かせていただければと思います。
 質問の趣旨がお分かりになったか不安ですが、お願いします。
 
【加藤マネージャ(JAXA)】 御質問ありがとうございます。
 では、10ページに補足させていただきます。
 まず、今御質問いただいたアプリケーションのところにつきましては、この研究課題(ア)の中のaというところで、軌道上のエッジコンピューティングによるサービス環境の構築、要は衛星が取った様々なデータを軌道上の衛星側でコンピューティングをして、いろいろなサービスを考えていこうという研究課題でございます。今御指摘のありました衛星そのものをデジタル化していこうというのは、この上側の一つ目のポツでございまして、衛星をつくっていく上で、観測能力を実現するためには、熱や電力、姿勢といったものが連携して衛星を動くことになりますけれども、これらの軌道上の動作を予測するシステムの能力を最大限に引き出すために、シミュレーション技術ということで、衛星のデジタルモデル、ありていに言うとデジタルツインという言葉が使われていますけれども、そういうデジタルモデルを活用していくことによって、より小さい衛星でも能力を引き出せるようなところにも、この研究課題(ア)の中で取り込んでいこうということを考えてございます。
 さらに研究課題(イ)のところにつきましても、システムの仕様を設定するに当たって、こういうデジタル化を進めることによって、どういうミッション要求だとこの衛星ではどこまでできるのか、どの部分を開発しなければいけないのかといった仕様化の部分の検討をデジタルの中でやっていく、これによって速く検討が進んで、ものづくりに入れると、こういうところも目指して、研究課題の設定として今後のプログラムで進めていこうと考えてございます。
 最後に研究課題(エ)のところです。今説明した(ア)と(イ)は小型衛星ですが、研究課題エの中・大型衛星にこういう技術をどう適用していくとよりよいつくり方になるかというのは、もう少し議論を進めていきたいと考えているところです。
 以上となります。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 
【松岡委員】 どうもありがとうございました。段階的にやりやすいところ、時間がかかるところがあるかと存じますが、段階的に進めていくということと理解しました。ありがとうございます。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。
 続きまして、山崎委員からお願いします。
 
【山崎委員】 はい、山崎です。ありがとうございます。
 目的のところに、本プログラムを通じて10年先に世界に肩を並べる衛星技術と新たな企業を発掘していくということもありますけれども、本プログラムでは恐らく幾つかのメーカーさんと一緒に連携してやられると思うのですけれども、得られた成果をやはり広く還元することも大切だと思います。その辺りの成果の還元方法について教えていただけますでしょうか。
 
【村山部会長】 お願いいたします。
 
【加藤マネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。成果の還元方法でございますけれども、一つは、例えば11ページをお願いいたします。
 こちらは、先ほど小型衛星を活用して研究課題(ア)を進めていくと申し上げました。この心は、やはりデジタル開発を進めるに当たって、特定の明確な課題に対してデジタル技術を活用して、どこまでできるかというところが非常に重要だと考えておりますので、こういう小型衛星を活用した研究パートナーと進めていくというのは御指摘のとおりかと思います。
 一方で、こういうやり方を標準的にどういうモデル化の手法でやればよいかというのは、JAXAとしてはこの取組を通じて標準的な考え方として整理をして、広く宇宙の産業界に使っていけるようにしたいというところが、一つデジタル化の開発部分についての考え方でございます。
 さらに、下にあります研究課題(ア)-aのところで、こういうオープンアーキテクチャーにつきましては、なるべく新しい方が入れるように、特にアプリケーション・レイヤーについてはインターフェース等を明確にして、いろんな方々が活用して、いろいろビジネスを考えられるというふうに進めていきたいと考えてございます。
 基本的な考え方は、ノウハウに関わるところは事業者さんによってクローズになるところはありますけれども、デジタル開発をして標準的に進めることで、日本として価値のあるところはJAXAとして何らかの形で公開できるような形で使っていくと、こういうふうに本プログラムを進めてまいりたいと考えてございます。
 
【山崎委員】 承知いたしました。大切なところですのでよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。
 続きまして、米澤委員からお願いいたします。
 
【米澤委員】 ありがとうございます、米澤です。
 非常に大事な話だと思って聞かせていただいたのですけど、1点教えてください。
 最後のまとめのところに出てきた2024年からの刷新衛星が、今回御説明いただいたソフトウェア衛星と理解してよろしいのでしょうか。よろしくお願いいたします。
 
【加藤マネージャ(JAXA)】 18ページ、補足の付録を御覧ください。
 刷新衛星といいますのは、このプログラムとしては行程表の中の2024年、それから26年という形で打ち上げられる衛星を、今、便宜上刷新衛星と呼んでおりまして、ここも一つ技術実証の場というふうに我々は考えてございます。ですので、刷新衛星という場は、この2024年のこの三角印のところを御理解いただければと思いまして、この中で本日御説明いたしました様々な技術を段階的にパートナーと組んで実証していきたいと考えています。そういうふうに御理解いただければと思います。
 
【米澤委員】 徐々にそちらのソフトウェア衛星を実現させていくという理解でよろしいのですね。
 
【加藤マネージャ(JAXA)】 はい、この刷新衛星の場を使って実証していきたいと考えてございます。
 
【米澤委員】 分かりました。どうもありがとうございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。
 あとは挙手がないようですので、次の議題に移りたいと思います。
 三つ目は審議事項ですけれども、内閣府宇宙開発利用加速化戦略プログラム、スターダストプログラムにより実施する文科省の戦略プロジェクトの進捗報告・評価についてであります。
 本議題については、前回の宇宙開発利用部会において事務局より概要の報告がございました。今回の宇宙開発利用部会では、文科省が実施する各プロジェクトの進捗や本部会での評価の位置づけ、今後の流れについて事務局から説明していただき、各プロジェクトに対して各委員から指摘やコメントいただきたいと思います。
 それでは、事務局から説明をお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】 文部科学省事務局でございます。
 資料63-3の1ページ目でございますが、まず前回、文部科学省の事務局から、内閣府の宇宙開発利用加速化戦略プログラム、スターダストプログラムについて御紹介させていただきました。こちらは、宇宙活動の多様化に伴いまして経済成長や安全保障などの観点から我が国の宇宙活動の自立性を維持、確保するために、戦略的に取り組むべき優先度の高い技術開発であるとか、又はやはり関係省庁の縦割りを打破して、連携して取り組むような技術、そのようなことを内閣府の予算を一元的に取ってきまして、それらをそれぞれ関係の深い関係省庁に予算を付け替えて、そして関係省庁がそれぞれ中心となって進めるということであるのですが、これは内閣府の方で全体予算を取っておりますので、内閣府宇宙政策委員会の下の衛星開発・実証小委員会に状況も報告するとともに、文部科学省といたしましてもこのような宇宙開発利用部会の場を通して有識者の先生方、皆様方に特に進め方ですとか特に先ほど新しい経済成長などの観点があったと思いましたが、この成果の出口の活用等についてコメントを賜りまして、それらのコメントも踏まえて内閣府に御報告するとともに、この施策はそれぞれ短いものでも来年度行うものもありまして、複数年度行うことにもなっておりますので、皆様のコメントですとか進め方に対するコメントを参考にさせていただいて、来年度以降も進めていくということでございます。
 そのような観点で我々から進捗状況を報告させていただいて、皆様のコメントをさせていただくというものでございます。
 続きまして、2ページでございます。
 文部科学省の施策は三つやっておりまして、まず私の方から5分ずつ簡単に引き続き説明させていただきまして、施策ごとに質疑応答を行っていただければと思っております。
 まず、2ページ目ですが、これは衛星用の通信フルデジタル化技術開発ということで、2023年度にETS-9という技術試験衛星を打ち上げる予定ではございます。それが2016年度から開発が始まっておりまして、この間こちらの方にも通信用のペイロードはあったのですが、それはまだフルデジタル化されていませんでした。そういう状況ではあったのですが、特にこういう商業衛星の世界では、ここ近年特に通信容量150ギガbpsを超える通信衛星の引き合いが多くなってきておりまして、少なくともそれぐらいには対応できないと商業的に打ち勝っていけないというふうに、この近年、2017年18年あたりの開発が始まってからの状況の変化もございました。それに対応するということもありまして、文部科学省と特に通信行政をつかさどっております総務省と連携して、ETS-9に対してフルデジタル化ということで追加ペイロードを開発するということを行ったスライドでございます。
 3ページ目を御覧ください。
 事業計画といたしましては、2023年、令和5年度の打ち上げに間に合うように、3年間かけて通信ペイロードの追加開発を行います。
 事業計画にあるとおり、今年度中に詳細設計を終わらせまして、また、並行して部品の調達等を行うということでございます。そして令和4年、令和5年度、実際の試験・実証や維持設計を行うということでございます。
 実施体制は、ETS-9の開発を三菱電機が行っておりますので、引き続きこの追加開発も三菱電機が請け負うという形でやっております。
 4ページです。
 当該年度の進捗状況でございまして、この下の方に絵がありますが、全体のETS-9はこのような形で、この赤色のフルデジタル通信ペイロードというものを装備する予定でございます。こちらは開発の設計等は順調ですが、当該年度の進捗状況b.のところで、一部の部品の納品において新型コロナの影響を受けており、手配に時間がかかっているところがあるのですが、23年度の全体的な打ち上げには間に合うような日程で対応しておるということでございます。
 右の次年度の事業計画でございますが、このフルデジタル通信ペイロードができた暁には、従前の通信ペイロードだけですと、地上の任意の点、5地点ぐらいの決めたところとしか送受信できなかったのですが、フルデジタル化することによって、日本を中心とした任意のところにビームを絞って、集中的にある地域に通信容量を増やすこともできますし、広く例えばバリ島等をカバーするとか、そのようなフレキシブルな対応ができるということでございます。こちらの追加開発をしてやっておるというところが、衛星用の通信フルデジタル化技術開発でございます。
 まず、一つ目は以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 まず、フルデジタル化の部分ですけれども、これについて御質問いかがでしょうか。
 いいでしょうか。また後で回ってきていただいても結構ですので。
 それでは、次のプロジェクトの説明をお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】 それでは、5ページを御覧ください。
 二つ目は、「衛星のデジタル化に向けた革新的FPGAの研究開発」ということでございます。FPGAは半導体で、半導体の開発でございます。半導体は、経済ニュース等で、もろもろ産業利用で不足しているということでニュースにもなっておりますが、宇宙開発の特に衛星とかにおいても半導体の仕様は非常に重要です。そのような場で、半導体の特性といたしまして、28ナノから16ナノというふうにどんどん細いものを作っていくのですが、特に宇宙の場合、放射線の耐性の問題があって、細くなれば、そこに放射線が一発当たって全部壊れてしまうということもありますので、放射線耐性への対応をしていく必要がまず一つです。
 また、消費電力がどんどん上がっていくということもあります。半導体が強くなって高機能化していくのはいいのですが、省エネができないと、衛星の電力自体に限りがありますので、使えないということで、消費電力の省エネも行うということがあります。放射線の耐性と消費電力を抑えるという2点が、宇宙で半導体を使っていくということで非常に大事な技術になるかと思います。
 事業の内容といたしまして、特にJAXAでは、右の絵にある原子スイッチという原理を用いまして、特に省エネの技術を持っております。また、JAXAで独自に高放射線耐性の技術も持っておりまして、それらの高放射線技術と省エネの技術を組み合わせて、そのような半導体を地上において2年間かけて試験的につくって、テストを行うということが本事業の内容でございます。
 6ページの左側です。本年度は、まだ28ナノと16ナノの半導体を試す予定ですが、そのチップの実際の開発は来年度に行います。今年度は、シミュレーション等で放射線の耐性がちゃんとあるのかということを主に試していたということでございます。
 また、この実施体制といたしましては文科省からJAXAへ委託なのですが、その下にNBS、ナノ・ブリッジ・セミコンダクター社がございまして、実際半導体をつくっておられる会社と組んで、実際のチップ製造とかはこちらのNBS社にお願いしている状況でございます。
 先ほど放射線の耐性と省エネが半導体の非常に重要な点だと申し上げましたが、それはもちろん大事ですが、もう一つ大事なこととして、コストの問題があります。やはり宇宙に使う半導体は、なかなか正直宇宙だけでは数、ロットが出せないということもありまして、こちらは正にどういうふうにロットを出して、値段を下げていくかというところで、一つ我々は、車に搭載するということを考えております。端的に申し上げますと、今、車は自動運転等が徐々に進んできております。例えばレーダを使ってほかの車との距離を測るですとか、そのような自動運転ということで、非常に車自体の処理能力を高めるということが必要になっているということで、車も高機能の半導体を求めておられるということでございます。また、先ほど申し上げました省エネという観点も、車にとって非常に必要なことでございますし、また、もちろん地上においては宇宙ほど放射線が飛び交っているということではないのですが、ごくまれに地上においても半導体においてエラーが生じることがございます。ソフトエラーが起こる可能性がありまして、自動運転が進めば進むほど、そのようなことが起こる可能性はより下げる必要があるということでございます。宇宙に求められるぐらいの高い放射線対応レベルのしっかりしたものが車のメーカーさんも必要になるのではないかということでございまして、一部車載メーカーの関連会社も実際使えるかどうかということも見てもらって、実際これらがものになった暁には、宇宙だけではなく地上でも、特に車を対象に使えないかということを行うということでございます。
 7ページでございます。
 当該年度の進捗状況といたしましては、こちらのFPGA半導体に対して、宇宙メーカーを対象に衛星のどのようなところで使われているかを、大手だけではなくて、ニュースペースさんに対してもヒアリングを行って、どういうところに使われているかを確認するとともに、今、28ナノ、16ナノの半導体をチップ製造しようと思っているのですが、そちらを車載で使えるかどうかの相談、調整を進めているというところでございます。
 来年度は、実際NBS社にチップを製造してもらいまして、実際それが放射線耐性を持っているのか、省エネ要求を満たしているのかというところをしっかり見ていきたいと思っております。
 FPGAの説明は以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 二つ目は半導体ですけれども、御質問いかがでしょうか。
 芝井委員から手が挙がっております。お願いいたします。
 
【芝井委員】 芝井です。今の点ですが、私は必ずしも専門ではないのですけれども、端的な疑問としては、このような高性能の新しい原理を用いた装置だとすると、恐らく地上でそれ用のために相当のスピードで開発が進むのではないかと思うのですが、宇宙のためだけに新しいものを開発するというのは相当敷居が高く、むしろ民生用ですごいスピードで開発されたものを宇宙で使うという方が分かりやすいです。何かその背景とか周辺の状況というのをもう少し説明していただければ、今の疑問が分かると思うのですが、いかがでしょうか。
 
【笠谷企画官(事務局)】 特に28ナノの半導体につきましては、今正にNEDOが28ナノのものをつくっておりまして、それはむしろ車のメーカーさんも使うということを考えておられるということもありますので、こちらの方は正に地上のものを宇宙でも使えるようにというところがございます。
 ただ、我々といたしましては、もちろん28ナノも必要なのですが、やはり衛星自体も今後コンステレーションとかの話もあると処理能力が増していくということもありますので、28ナノの次にはより細い16ナノが来ると考えており、そちらについてもちゃんと地上で使えるか、まずは車ではございますが、使えるかどうかを試す必要があるということでございます。
 芝井先生がおっしゃるとおり、地上であるものを十分活用していくというのはもっともでございます。まずそれをやった上で、まだそこで足りない部分については、また宇宙で必要なのですが、これをまた宇宙だけでやってはロットが足りませんので、何かしら地上とのパートナーシップを探して、ちゃんと安くしていくことが必要かと思います。
 
【芝井委員】 芝井ですが、今のでいうと、疑問としては、16ナノが非常に役に立つのであれば、地上のユーザーはほっとかないと思うのです。そこがよく分からなかったというのですが。
 
【笠谷企画官(事務局)】 地上の携帯とか、もっと進んでいるところでは1桁のナノとかいうところまで入っております。16ナノというのは、地上の最先端のところではもう大分使ってはいるところではありますが、そちらがちゃんと宇宙でも使えるかというところが大事なことかと思っておりますので、おっしゃるとおり地上の方がほっとかないというのもあるのですが、地上でちゃんとあるものはあるのですが、それをちゃんと宇宙にも使える状態にした上で、ちゃんと地上のパートナーもいるという形にしないといけないのかなと思っております。そこを何とかできるように探しているところでございます。先生の指摘はごもっともです。
 
【芝井委員】 はい、分かりました。ありがとうございました。
 
【村山部会長】 あとは放射線の関係とか、そういう部分もあると思いますので、民生と宇宙需要の両方を満たすのが非常に重要なことになりますので、その辺りを詰めていってもらえればと思います。
 ほかは手が挙がっていませんので、それでは、3番目のところの説明をお願いします。
 
【笠谷企画官(事務局)】 それでは、8ページを御覧ください。
 こちらは将来のアルテミス計画などでの月面活動に向けた測位通信技術の開発ということでございます。
 今、地上の測位は、地球の周りをGPS若しくは我が国の準天頂衛星等が回って、測位のポジショニングを取っておりますが、アルテミス計画等の2020年代後半の月面若しくは月の軌道上でどのように測位を取っていくのかということは非常に重要な課題となっております。
 今、ヨーロッパのESAやNASAもこのような検討はしておりまして、まず、彼らは高感度の受信機を地上から大分離れたところで受信のテストを行う予定でございます。それはどういうことかといいますと、先ほど地球の周りをGPS衛星が飛んでいると言いましたが、月と地球は約30万キロメートル離れており、一応月にも微弱な電波は届くということでございまして、高感度の受信機があれば、地球周りのGPS衛星の測位電波を月の周りでも拾うことが一応可能だということでございまして、まず一つは地球の周りの電波を月でも拾う高感度のアーキテクチャーを開発していくということがあるかと思います。ただ、月面での測位をどのような形でやっていくかということはまだ国際的には決まっていないところではあるのですが、日本とかESAとかNASAがそれぞれシステムをつくるということはあり得ませんので、そこはNASAやESAとも連携を取って、しっかり国際状況も把握して進めていく必要があるということでございます。
 9ページを御覧ください。
 その上で、今、JAXAにおいては、測位の在り方としてはもう一つ考えております。JAXAは、まず取りあえずの目標として、航法精度40メートルということで、水平距離40メートルの誤差の範囲で使えるものをちゃんとつくろうということを考えております。
 ただ、40メートルをつくるにしても、先ほど私が申し上げました地球からのGPSの電波を取るだけでは、やはり40メートルまでは行かないということでございまして、ある程度月面でのアーキテクチャー、月面上若しくは月の周りに何か衛星を飛ばすということもしないと、なかなか40メートルは行かないのではないかと考えております。
 それもあって、下の方に測位、通信とありますが、月面上とかでの測位の在り方、地上からの電波を高感度で拾う方法、月・地球間での高感度の送受信を含む通信のアーキテクチャー、それらの検討を本計画では5年をかけて行う予定でございます。
 ただ、こちらは今年度から始まってはいたのですが、内閣府の採択等の関係もありまして、こちらの事業は契約としては始まったばかりでございまして、実施体制の方がまだABCD社となっておりまして、ABCD社については選定中ということもあって、これから実際は進むという状況でございます。
 いずれにいたしましても、月の測位の在り方というのは、正にNASA、ESAの考えもあるので、そこと意見交換を行いながら、ちゃんと月面での活動に資するように、JAXA、文科省としては、月面でのアーキテクチャーの研究開発をしっかり進めていくということを考えております。
 月面活動に向けた測位・通信については、以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 本件につきまして何か質問、コメント、いかがでしょうか。挙手いただければと思います。
 芝井委員、お願いいたします。
 
【芝井委員】 これも大事なことだとは非常に思いますが、今の御説明でちょっと分からなかったのが、アメリカ、ヨーロッパの名前が挙がったのですが、要するにそういうところもこういうのをほっとかないわけですね。我が国が一体どこら辺りに重点を置いて、分野で開発を進めるのかというところをもう少し議論を深めていただいた方がいいのではないかと思うのですが、その辺りは議論されているのでしょうか。何となくやるというのではなかなかうまく行かないのではないのかと思いますが。
 
【笠谷企画官(事務局)】 正に我が国の強みをちゃんと活かして、先ほど私自身も恐らく将来的にシステムとしては国際的なものになると申し上げましたが、日本が全部ということではなくて、日本が強いところをちゃんとつくるということになると思います。例えば日本の強いところといたしましては、昨年JDRSという光通信で中継する通信衛星を静止軌道に打ち上げております。今後打ち上げる予定のALOS-3が地球観測を行って、その電波を静止軌道にあるJDRSの光通信で送るということも考えております。そのような通信機構に強みがあるのではないかと思っておりますので、特に通信分野の強みを生かしていきたいと思っております。
 芝井委員がおっしゃるとおり、今、日本においても5年間かけて地球との通信や月の周りでのアーキテクチャーを、地上でも一応検証は行うのですが、これらは全て日本で、最終的に実費でつくるということではないということでございます。ただ、今申し上げた光中継衛星を上げているとかいう日本の強みとかも踏まえまして、実際このシステムをつくる段においては、特に日本の強いところをちゃんとそこに貢献して、実機でちゃんと日本のものが使われるように働きかけていきたいと思っています。
 
【芝井委員】 御説明ありがとうございました。
 
【村山部会長】 ほかは御質問いかがでしょうか。ほかの二つのプロジェクトについてでも結構ですので、いかがでしょうか。いいでしょうか。
 笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 月面活動に向けた測位通信技術開発ということで、大変チャレンジングで大きな取組で、当然諸外国との連携も必要かと思うのですが、先ほど芝井委員から御発言もあったとおり、日本の優位性を発揮するということは、日本の自律性というか、輸送系を含めた在り方がとても重要になるかと思うのですが、HTV-Xへ大きな輸送系とこのような月面活動における通信測位システムとの連携の在り方というのは、何かお考えなり構想の中にあるのでしょうか。やはりある程度自立に持っていけて、そういう強みを発揮できるのではないかなという考えの下で発言させていただきました。以上、質問になります。
 
【笠谷企画官(事務局)】 はい、申し上げます。このスターダストの実験自体は、先ほど申し上げました2025年までの地上での検証ではございますが、これは20年代後半なのかどれぐらいになるのか分かりませんが、実際この測位だけではなくて、アルテミス計画が本格化するということで我が国のHTV-Xとかをどんどん月面に飛ばしていくことになるかと思います。
 その上で、まず一つは今開発中ではございますが、H3ロケットの対応ということがありますし、また別途、文部科学省の研究開発局長の下にロードマップ検討会を設けて検討をさせていただいております。
 そのような中で、それぞれミッションがどういうものがあるかを整理させていただきまして、官ミッションといたしまして月面での活動というものを当然パスがあるということは確認しておりまして、特にロードマップ検討会におきましては基幹ロケット発展型ということでございまして、ちゃんとそのロケットはちゃんと月面での輸送に携われる。もちろんコストもちゃんと下げて対応するという議論もしておりますので、当然月面でアーキテクチャーをやる以上は、当然日本としてはもちろん各国分担制ではございますが、ちゃんと日本も輸送系でも貢献するということで、その対応はしっかりしていきたいと思っております。
 
【笠原委員】 ありがとうございました。非常に応援しております。了解いたしました。ありがとうございます。
 
【村山部会長】 はい、ありがとうございます。
 ほかは手が挙がっていないようですね。はい、ありがとうございます。
 事務局から最初に説明がありましたように、スターダストプログラムの評価については、内閣府における衛星開発・実証小委員会とは別に、各省において評価を実施することとされており、文部科学省のプロジェクトについては本宇宙開発利用部会において評価することになっております。今回、委員の皆様から頂きました御意見につきましては、事務局で適宜取りまとめていただき、内閣府や関係機関へ共有していただきながら、よいものへとやっていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 あとは報告が二つあります。
 一つ目が、自然災害における地球観測衛星データ貢献についてです。
 それでは、この件、事務局から御説明をお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】 文部科学省事務局でございます。
 63-4の1ページ目を御覧ください。
 議題4は、JAXAの地球観測衛星等のデータでの貢献について、是非宇宙開発利用部会の委員の方々に報告させていただきます。
 特に今回成果として出ておりますのが、この二つの衛星でございまして、左がだいち2号、ALOS-2でございます。こちらは、Lバンドの合成開口レーダにおいて地表の状況を把握することができるということでございまして、基本的には回帰日数14日ではありますが、大体日本上空だけを見ると、1日2回どこかの日本上空は通っているということでございます。また、Lバンドの合成開口レーダによる測定でございますので、夜間や悪天候時におきましても測定ができるという強みがございます。
 もう一つは、右側のGCOM-C、しきさいでございます。こちらは、特に温暖化関係のメカニズム解明のために、植生や雲・エアロゾル等の状況を赤外センサー等で測定することができます。
 ALOS-2は観測幅が50キロメートルで東西50キロメートルの幅ですが、GCOM-Cは観測幅1,150キロメートルということで、非常に広範囲の幅を、特に海水面等を測定することができるということでございます。こちらは1日1回、日本の上空に来るという衛星でございます。
 続きまして、2ページ目でございます。
 こちらは今年の夏に結構大きいニュースになりました。熱海で土砂崩れが起きまして、土石流が発生いたしました。多くの方がお亡くなりになったのですが、その際の土石流の状況を捉えたものでございます。こちらの左の方は、ちょっと分かりづらいのですが、熱海市の駅の割と近くの山肌を撮っている絵でございます。これは何をやっているかといいますと、ALOS-2の衛星はSARのレーダで地表を測ることができるのですが、本当に同じ上空を通ったときの画像を比べると、干渉ということで差分を見ることができます。こちらは2017年11月26日に撮った衛星画像で、7月4日の発災直後の画像との差分を見たところ、ちょっと見づらいのですけど、斜めの赤線の中は山ですが、左上から右下にかけて赤いぽつぽつが谷に沿って動いているかと思います。これは土砂等の動きがあったということをSARのLバンドのレーダによって示しているということでございます。本件は大分離れたところから土砂崩れが生じていたということもありまして、このようなデータはJAXAから関係省庁に提供され、土石流がどこから発生したのか、どこまで広範囲に広がっているのかということの把握に使われております。
 続きまして、3ページでございます。
 こちらも本年夏の福岡県における大雨の際に、河川からあふれた浸水状況等の把握にだいち2号が使われたということでございます。
 緊急観測という言葉が出てきているのですが、だいち2号は、基本的には先ほど申し上げました日本上空を1日2回通って、例えば関東上空、九州上空、四国上空をそれぞれ通っているのですが、緊急観測がある場合は、例えば仮に四国上空を通っていたとしても、幅は50キロメートルでございますので、レーダの角度を少し斜めに傾けて九州方面に当て、本来四国の上空ではあるのですが、九州の測定を緊急に行うことができます。
 このような緊急観測は、国土交通省や林野庁等の防災関係省庁からの要請に基づいて、JAXAが対応しております。
 このような中で、こちらの図は福岡県久留米市周辺でございますが、右から左に蛇行しているのが川でございまして、この川の周りで少し色が変わっているところで、そのうち少し赤くなっている部分、この青線はJAXAで地図に加えて描いているのですが、この青い線のところは特に今回の浸水があるのではないかと疑われる箇所ということで、このような形にしてデータを関係省庁に提供しております。
 河川の氾濫の場合は、例えば去年の熊本の球磨川とか、そのような河川の氾濫の場合、事象が広範囲で起こり得る可能性があって、どこで発災しているかということの把握がまず大事でございます。また、当然こういう浸水等が起きているときは大雨が降っている場合で、なかなか飛行機・ヘリコプターだけでは上空からの状況は把握しにくいということでございます。このように夜間や雲があっても測定できるALOS-2情報ということで、関係省庁に御提供させていただいているところでございます。
 続きまして、4ページ目でございます。
 こちらはGCOM-Cの測定でございます。先ほど海水面をいろいろ見られるということを申し上げましたが、ちょっと分かりづらいのですが、灰色の真ん中の左が北海道で、左下の方が東北ということで、黒色が北海道ということになっています。こちらは秋頃、北海道の太平洋沖でなかなかサケとかが採れないというニュースがあったかと思います。そのような中で赤潮が発生したというニュースがありました。そのような状況もあったところ、JAXAにおいてもGCOM-Cの測定でクロロフィルaの濃度を測ることができまして、これが多いということは植物プランクトンが多いということで、赤潮が発生しているところと状況的には似ているということでございまして、特に太平洋岸の釧路の南や根室の南、北海道の東の太平洋岸一面が赤くなっております。このように赤潮が非常に広範囲で発生したということが分かるかと思います。載っているのは1日だけの写真ではございますが、この写真を数日分見比べることによって、赤潮の発生原因というか、どこから発生したのかが分かり得るということでございます。このような情報提供も行っております。
 続きまして、5ページでございます。
 こちらもGCOM-Cを用いました。小笠原諸島の福徳岡ノ場において海底火山の噴火が8月に発生いたしました。それが10月頃になって沖縄県、現在ですと鹿児島の奄美ですとか、一部は千葉県の房総半島、あとは伊豆諸島にも漂着しておりますが、軽石の観測状況でございます。
 先ほどのしきさいは1,150キロメートルの幅で測れますので、左下の図は、真ん中に沖縄本島がございまして、右に太平洋が広がっておるのですが、その中で赤く囲んである部分のうっすら白い部分が軽石ではないかということでございます。分かりづらいのですが、濃い白は雲でございます。GCOM-Cは雲があると測定できないので、晴れてないと分からないのですが、大体ほかは雲ですけど、雲がないところのうっすら白いぼやっとしたところが軽石の帯ではないかというところであります。
 そうは言っても、解像度がこれぐらいしかないので分からないのですが、もう少し10月25日、日が近づいたとき、沖縄本島の南の東岸に近づいたときに、ALOS-2で測定した場合、このように黒っぽく出ております。軽石があると波の反射が違ってくるので、こういうふうに少し黒っぽく見えるということでございまして、沖縄本島の大分近くまで軽石が接近しているということが見て取れるかと思います。
 このような情報はJAXAのホームページで随時出しておりまして、また、海上保安庁等、関係機関にも提供しております。また、同じ研究開発局の国立研究開発法人である海洋研究開発機構、JAMSTECにデータを提供しています。あちらは海流に詳しいため、海流等による予測シミュレーションで軽石がどこに流れるかをJAMSTECも発表しておるのですが、そのシミュレーションの精度向上に利用されているということでございます。
 このように衛星ならでは特徴というか、より広範囲にナビゲートですとか、夜間、現地においても測定できる等の特徴を生かした測定を行っておりますことの報告でございます。以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 宇宙からの貢献ということですけれども、何か御質問、コメント、おありでしょうか。いかがでしょうか。挙手いただければと思います。
 それでは、芝井委員、お願いいたします。
 
【芝井委員】 短いです。例えば3ページ目の大雨災害の洪水状況についてというところですが、これは発生したのが8月11日です。関係省庁からの要請があったのはいつで、結果を関係省庁に報告したのはいつですか。つまりどれぐらい時間がかかって、これが関係省庁に報告されたのでしょうか。
 
【村山部会長】 その辺りいかがでしょうか。スピードの課題ですね。
 
【笠谷企画官(事務局)】 ちょっとすみません。今、確認しておりますのでお待ちください。
 緊急観測の要請があれば、基本的にはその数時間以内で取れるとは思いますが、ちょっと実際の要請日については、今、確認しております。すぐ、分かり次第お伝えしますが、すみません。
 
【芝井委員】 次の周回でできるのか、二、三周回後かで、数時間の差が出ますね。
 
【笠谷企画官(事務局)】 例えば、先ほど私が申し上げましたけど、夜中の零時と昼の12時ぐらいということではありますが、もちろん災害が発生したタイミングにもよるのですが、例えば夜中の零時の測定でしたら、その日のお昼とか午後ぐらいまでにいただければ、何とか行けるかなということでございます。半日ぐらいいただければ、何とか緊急観測はできると考えています。
 
【芝井委員】 ありがとうございました。スピードが多分重要だと思うので質問しました。以上です。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。いいでしょうか。
 ほかは挙がっていませんので、それでは、最後の議題に移りたいと思います。
 最後の議題ですけれども、新たな日本人飛行士の募集についてということです。これも事務局からの御説明をお願いいたします。
 
【国分室長(事務局)】 宇宙利用推進室の国分と申します。
 資料の63-5を御覧ください。
 新しい日本人宇宙飛行士の募集についてですが、こちらはこの部会にも去年の11月に一度御説明しているものでございまして、そのときに今年の秋頃に募集を開始するということについて御報告させていただきました。
 このページの下半分の参考を見ていただきたいのですけれども、募集の背景です。現役の日本人宇宙飛行士の平均年齢がどんどん上がっていってしまっていて、今現在で52歳。したがいまして、2030年になると、もう残りお二人、JAXAの定年が60歳という前提に置くと、二人しか残らなくなってしまうという状況がございました。
 一方で、2個目の矢じりですけれども、アルテミス計画に関しての了解覚書への署名等によって、日本人宇宙飛行士の活動機会が具体化したこと、そして三つ目の矢じりですけれども、それに伴いまして、国際宇宙探査や月探査に向けた機運が高まっています。
 こういった状況を踏まえまして、新しい日本人宇宙飛行士を募集するということになった次第でございます。
 一番上にありますように、先月11月19日に募集を開始させていただきまして、募集開始後、これから1年程度かけて選抜試験を行い、2023年2月頃に結果発表予定とさせていただいています。
 現在、応募書類の受付が12月20日から3月4日までとなっておりまして、応募書類の提出を待っているという状況でございます。
 募集人数でございますが、若干名とさせていただきつつ、今後5年に一度程度の募集サイクルを繰り返すことで、応募する方々の予見性を高めるという取組も併せて行っているところです。
 主な前回からの変更点でございますが、前回は13年前でございまして、2008年に応募したときには、この表にありますように、学歴、専門性で、例えば4年制大学卒業以上ですとか、自然科学系の分野に限定といった応募要件を課していたのですけれども、今回はそういった学歴や専門分野は不問とさせていただきまして、選抜試験において4年制大学相当の能力や自然科学系の素養を評価するというふうに変更させていただきました。また、医学的要件につきましても、こちらは狙ってやったというよりは、技術的な宇宙船の改良や進歩によって要件が緩和されたものでございますが、前回13年前は身長が158センチメートル以上から190センチメートル以下となっていたところ、今回は149.5センチメートル以上から190.5センチメートル以下というふうに要件が大分緩和されましたので、これによって例えば女性の応募なども広がっていくといいなと考えているところでございます。このように多様な方々がたくさん応募していただけるような募集要項にさせていただいたという状況でございます。
 私からは以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 これはニュースでも広く報道されていた議題ですけれども、何か御質問、コメント、いかがでしょうか。
 鶴岡委員、手が挙がっていますね。よろしくお願いします。
 
【鶴岡委員】 鶴岡です。御説明ありがとうございました。
 この募集について、今もお話がありましたように、昨年の部会での議論も覚えております。その議論でもいろいろありまして、今回実際に出てきたものは非常によい形で条件等が示されたと思います。非常によかったと思います。
 これは別に質問でも何でもないのですけれども、よかった点ということでの変更点についてですが、前回からの主な変更点ということで御説明いただきましたけれども、恐らくそれ以上に私が非常に重要だと思ったのが、前回は条件ということでかなり固く確か7個か8個か9個か並んでいたかと思います。今回は条件というのはかなり限定して、医学的要件であるとか、年齢、国籍の話だけだったかと思いますけれども、それ以外に、評価する特性ということで、条件とは別に分けたというところも非常によかったと思っております。
 以前は、条件というのがどうやって評価するのか分からないような項目が実はたくさんありまして、例えば美しい日本語ですとか、日本文化への造詣とか、条件として非常にかなり疑問を持たざるを得ないものがありましたけれども、今回それがきれいになくなっていまして、しかも直接機械的に判断しにくいものについては、条件ではなく、評価する特性ということになった変化も非常に重要だったと思います。
 あともう1点、評価する特性のところで、異なる文化・伝統・価値への敬意というものも入っておりまして、これは正に有人飛行で、国際宇宙ステーションでほかの国の宇宙飛行士と協力するという点を踏まえた、非常に現代的な新しい時代にふさわしい言葉遣いが入っているのも非常によい点だと思います。
 以上、コメントでした。失礼いたします。
 
【村山部会長】 お褒めのコメント、どうもありがとうございます。
 それでは続きまして、井川委員、お願いいたします。
 
【井川委員】 ありがとうございます。すみません、1点教えていただきたいのですが、さっきJAXAの定年が60歳なので、宇宙飛行士の方は引退せざるを得ないという趣旨の御説明だったような理解なのですが、宇宙飛行士は60歳を超えるとできないものなのでしょうか。
 これは全く素朴な疑問なのですが、有能な体力のある方だろうし、訓練も受けているだろうし、せっかくベテランになったのに早期に辞めていただくのはもったいないなと思って、それはできないものなのかどうかという疑問がありまして、教えていただければ有り難いなと思います。以上です。
 
【国分室長(事務局)】 ありがとうございます。私が申し上げたのは、現在7名のJAXAの宇宙飛行士は全員JAXAの職員という形で勤務しておりまして、JAXAの職員という意味では60歳が定年になっておりますが、じゃあ60歳を超えた後、全員辞めなきゃいけないのかという点については、まだ条件の変化といいますか、やり方はあるとは思っています。
 ただ、今現在どうするかということまでは、JAXAではまだ決まっていません。
 新しく採用する、募集をかけている中では、特に年齢制限は課しておりませんでして、悪まで医学的な観点からその方の身体的な状況とかを評価して、総合的に選抜していくということを考えておりますので、私が申し上げた60歳というのは、悪までJAXAの職員に当てはめればということでして、絶対60歳になったら辞めなければならないということではございません。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。今の答えでいいでしょうか。
 
【井川委員】 ありがとうございます。
 ちょっと一つだけ。もし、じゃあ若田さんが一度定年退職になって、もう一回、宇宙飛行士になるぞと応募してきたら、その時点で平等に評価するというか、若田さんに聞いてみないと分からないですけど、そういうこともあり得るのでしょうか。すみません。
 
【国分室長(事務局)】 JAXAから答えていただいた方がいいのかもしれませんが、正規雇用としての若田さんの、例えばJAXAの職員としてのポジションは、1回60歳というところで消えるのかもしれませんが、それ以外の雇用の形態があるかどうかについては、多分、JAXAで考えていくことになるのかなと思います。
 
【井川委員】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。
 続きまして、山崎委員、お願いいたします。
 
【山崎委員】 どうもありがとうございます。
 13年ぶりに募集が始まるということで、とてもうれしく思いますし、今後、定期的に行われるという発信がとても大切だと私も感じました。
 今回いろいろパブリックコメントで条件面の意見を募集されていたと思うのですけれども、正に今までの議論とも重なりまして、例えば兼業ですとか、クロスアポイントなども検討はされたと思います。今回は反映されていないですけれども、またこうした検討は柔軟に、どこまでできるかというのを引き続き検討されるといいのではないかと思います。
 あと、もう1点質問としましては、世界的にはNASAあるいはヨーロッパでも、むしろ理系の大学院卒業ということで条件をかなり厳しくしている中で、日本は逆に分野を問わず門戸を広げるという新たな挑戦をしていると思っています。この新たな挑戦に対して、選抜過程で調べる面と、あるいは場合によっては訓練で補足をするような場面と、両方あるかと思うのですけれども、場合によっては訓練で何かプラスアルファで補足するようなものも考えるということでしょうか。
 
【国分室長(事務局)】 ありがとうございます。2点頂きました。
 一つは、兼業につきましては、御指摘のとおり、この1年間かけて結構検討したのですが、いろいろ制度的な壁が大きくて、少なくとも今回は兼業に関していろいろクロスアポイントとかを、今回の募集の中に入れることができませんでした。
 ただ、御指摘のとおり、これは非常に重要な課題だと思っていますので、引き続き検討は続けていって、次の5年後の募集には何かしら反映できればいいなと思っています。
 2点目の文系・理系を取っ払ったということにつきましても、正に選抜試験において、一定の大学卒業程度ですとか、一定の自然科学系の素養というのは評価しますが、もちろんそれだけではなくて、訓練の中で補えるところについては訓練の中で補っていくという形になると考えています。以上です。
 
【山崎委員】 承知しました。ありがとうございます。
 
【村山部会長】 ほかの御質問はいかがでしょうか。いいでしょうか。手は挙がっていませんか。
 
(「なし」の声あり)
 
【村山部会長】 それでは、どうもありがとうございました。
 これで議題は全て終わりましたので、最後に事務局からの連絡があればお願いいたします。
 
【笠谷企画官(事務局)】 文部科学省事務局でございます。
 会議資料と議事録の公開について申し上げます。宇宙開発利用部会の運営規則に基づきまして、本日の会議資料は公開資料として既に文科省のホームページに掲載させていただいております。また、議事録についても公開となります。委員の皆様に御確認いただいた後、文科省のホームページに掲載させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 事務連絡は以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 以上をもちまして閉会といたします。長時間にわたる活発な議論、誠にどうもありがとうございました。
 今年最後になりますので、皆様どうぞよいお年をお迎えください。それでは、これで終わらせていただきます。
 

―― 了 ――

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研究開発局宇宙開発利用課