宇宙開発利用部会(第62回) 議事録

1.日時

令和3年9月27日(月曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 令和4年度文部科学省宇宙関連概算要求について【報告事項】
  2. CALLISTOプロジェクト移行審査の結果について【審議事項】
  3. GPM/DPR後期利用における成果、並びに米国ACCPミッションにおける降水レーダ後継機の検討状況について【報告事項】
  4. 宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)等 状況報告【報告事項】
  5. 革新的衛星技術実証2号機について【報告事項】
  6. イプシロンロケット5号機の打上げについて【報告事項】
  7. 「内閣府宇宙開発利用加速化戦略プログラム」(スターダストプログラム)により実施する文科省の戦略プロジェクトについて【報告事項】

4.出席者

委員

部会長 村山 裕三
部会長代理 鈴木 桂子
臨時委員 井川 陽次郎
臨時委員 三枝 信子
臨時委員 芝井 広
臨時委員 白井 恭一
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 髙橋 德行
臨時委員 鶴岡 路人
臨時委員 松岡 彩子
臨時委員 山崎 直子
臨時委員 山室 真澄
臨時委員 吉田 和哉
臨時委員 米澤 千夏

文部科学省

研究開発局長 生川 浩史
大臣官房審議官 原 克彦
研究開発局宇宙開発利用課長 福井 俊英
研究開発局宇宙利用推進室長 国分 政秀
研究開発局宇宙開発利用課企画官 笠谷 圭吾
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 横井 奈央
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA) 
 理事 布野 泰広
 理事 張替 正敏
 新事業促進部長 伊達木 香子
 第一宇宙技術部門 地球観測統括 平林 毅
 研究開発部門 革新的衛星技術実証グループ グループ長 金子 豊
 1段再使用飛行実験(CALLISO)プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 石本 真二
 宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 隆行

5.議事録

【村山部会長】 それでは定刻になりましたので、宇宙開発利用部会第62回会合を開会させていただきます。
 本日も新型コロナウイルス感染防止のため、前回同様にオンラインでの開催になっております。委員の皆様には御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 また、部会の開催日が幾度か変更になり御迷惑をおかけいたしました。この場を借りおわびいたします。
 それでは、まず、事務局の方から本日の会議に関する事務の確認をお願いいたします。
 また、文部科学省に幹部人事異動があったとのことですので、その紹介もよろしくお願いいたします。

【笠谷企画官(事務局)】 文部科学省事務局でございます。
 最初に人事異動の件でございますが、7月1日付で審議官の長野が内閣府健康・医療戦略推進事務局次長に異動になりました。替わりまして原が審議官に着任いたしましたので御紹介いたします。審議官、一言御挨拶をお願いいたします。

【原審議官】 ただ今御紹介いただきました原でございます。7月1日付で会計課から異動してまいりまして、研究開発局の審議官に着任いたしました。委員の皆様方におかれましては、是非よろしくお願いいたします。

【村山部会長】 よろしくお願いします。

【笠谷企画官(事務局)】 審議官ありがとうございます。
 続きまして、事務局から続けさせていただきます。
 本日は、宇宙開発利用部会に御所属いただいている16名の委員のうち、14名の委員に御出席いただいております。運営規則に定める定足数の要件を満たしております。よって、本日の会議は成立していることをまず御報告いたします。
 次に、本日の資料ですが、事前送付の議事次第のとおりです。
 オンライン状況について、音声が繋がらない等の問題等がございましたら、事務局へメール、電話等で御連絡ください。
 なお、本日の議題は7件あります。2番目の議題のみ審議事項で、その他の議題6件は報告事項となっております。
 事務局からは以上です。

【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 それでは、議題に入らせていただきます。
 最初の議題は、令和4年度文部科学省宇宙関連概算要求についてです。
 これについて、事務局の方から説明をお願いいたします。

【笠谷企画官(事務局)】 文部科学省事務局でございます。
 それでは、資料62-1について御説明申し上げます。62-1の右下に1ページ目と書いてあるところを御覧ください。こちらは文部科学省の宇宙関係予算についての説明資料でございます。
 前年度予算1,544億円に対しまして、来年度の概算要求は2,125億円となっております。ただ、1点補足といたしまして、令和3年度予算額でございますが、この他にも、最近の予算は補正が結構多くございまして、令和2年度についても補正予算額は570億円強ついておりますので、補正が相当あるということは一言申し伝えさせていただきます。
 その上で、予算の考え方でございますが、こちらの上に書いてありますとおり、内閣府で策定しております宇宙基本計画の中の重点的な事項といたしまして、宇宙安全保障の確保ですとか、災害対策、地球規模課題の解決への貢献、宇宙科学・探査による新たな知の創造、宇宙を推進力とする経済成長とイノベーションの実現や基盤整備等を推進していきます。
 また、宇宙分野につきましては、経済財政運営と改革の基本方針2021においても、宇宙分野は我が国の成長を生み出す原動力、グリーンやデジタル等を支える基盤づくりのための重要分野として位置づけられてございまして、引き続き宇宙の予算をしっかり要求していきたいと考えております。
 それでは、各項目について説明させていただきます。
 まず、左上の宇宙安全保障の確保や、災害対策、地球規模課題の解決への貢献ということで、先進レーダ衛星、ALOS-4号機についてでございます。こちらは、令和4年度、来年度打ち上げ予定でございまして、今、ALOS-2、だいち2号が上がっております。だいち2号については、例えば、昨年の九州の豪雨、また、昨年7月の夏に発生いたしましたモーリシャス沖での油流出事故の測定等、多岐にわたって活躍しております。そちらの後継機として来年度打ち上げ予定でございます。
 大きい特徴といたしましては、観測幅が200キロメートルに広がることでございまして、今ALOS-2は50キロメートルのため、観測幅が飛躍的に広がるということでございます。災害時等に、例えば今九州の場合、九州東西に全域を測ることは難しいですが、この200キロメートルの幅がありますと、九州のほぼ東西全域を見ることができ、災害時等は非常に役立つということでございます。
 続きまして、温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSAT-GW)でございまして、こちらは、GOSATという二酸化炭素濃度を測定する衛星が、今、GOSAT2号機まで打ち上がっております。あとGCOM-Wという、海水温や降水量等を計測する衛星、こちらが既に今上がっております。そちらの後継機が、GOSATとGCOM-Wの2つの主要なセンサを一つにまとめたGOSAT-GWで、こちらを令和5年度、再来年度打ち上げる予定です。
 また、宇宙状況把握(SSA)システムということで、この間、宇宙デブリの問題がやはり深刻化しておりまして、宇宙デブリの状況や、衛星等にデブリ等の衝突がないかを確認するために、JAXAでも今岡山県の美星等で設備の更新等をやっておりますが、それらの更新を来年度も引き続き行います。来年度更新した上で、再来年度よりこちらの運用をしっかり開始していく予定です。
 さらに左下のイノベーションの実現でございますが、こちらはH3ロケットの開発・高度化でございます。こちらは昨年度、エンジンのトラブル等がありまして、打ち上げが1年遅れておりますが、今年度、初号機を打ち上げ、来年度に2号機を打ち上げるということで、H3ロケットの開発を着実に行っていきます。
 また次に、将来宇宙輸送システムロードマップ実現に向けた研究開発ということで、こちらは6月の宇宙開発利用部会で私からも報告させていただきましたが、H3ロケットは、今、今年度の打ち上げを目指して準備しているのですが、更に先の2040年代前半等を見越して、二地点間高速輸送、P2Pなどに対応できるようなものを官民共同でしっかり開発して、抜本的な低コスト化を図っていく将来宇宙輸送システムの実現に向けた研究開発でございます。こちらに必要な要素技術の開発、部品の軽量化や推進系の検討等、また、民間の事業参入もにらみまして、民間の事業者が燃焼試験等を着実に行える場所の整備、そのような民間が開発に参入しやすくなるような環境整備等も含めた予算等にもろもろ40億円を予定しております。
 また、技術試験衛星9号機、こちらも6月の利用部会で説明させていただきました、オール電化の次世代型通信衛星の研究開発、これは令和5年度、2年後の打ち上げを予定しております。
 また、衛星コンステレーションの関連技術開発でございまして、こちらも用意しております。こちらは、JAXAがコンステレーション衛星を、何十基も打ち上げるということではなく、コンステレーション衛星は、最近OneWebやSpaceX等が行っておりますが、こちらは、JAXAがこれまで行ってきた大型・中型衛星と違いまして、非常に小さい衛星でございます。それらによって、時間分解能、観測頻度を上げていくメリットはありますが、1個1個が小さくなりますと衛星の寿命も少なくなり、1個1個の観測時間が短くなるところもあって、それらを伸ばすためのものや、あと効率的に観測するところを導き出す、全体的に最適な観測網をつくる、そのような研究開発と言いますか、システムの開発等を行います。それらの技術を使って、官や民においてコンステレーションを日本においてもしっかりやっていきます。
 右側は、宇宙科学・探査による新たな知の創造でございまして、アルテミス計画等の研究開発でございます。
 まず、新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)で、これまでISSにはHTVというビークルで補給を行っておりましたが、将来のアルテミス計画、月周回有人拠点(Gateway)への輸送を見越してHTV-Xの開発を行っております。こちらは来年度初号機を打ち上げます。ただし、初号機の目的地としては、まだゲートウェイはできていないため、こちらはISSに物資を輸送しまして、HTV-Xの実証をしっかり行います。そして、引き続き、ゲートウェイに対して、我が国が持っている有人滞在技術等の提供や、小型月着陸実証機で、こちらは将来の月・惑星探査に向けて、小型軽量化や民間の技術の応用等も行って、高精度の月面着陸の技術実証を行っていきます。
 また次に、火星衛星探査計画(MMX)で、こちらは火星の衛星であるフォボス、ダイモス等の観測を行って、火星の衛星からのサンプルリターンを行います。昨年末、はやぶさ2のサンプルが帰ってまいりましたが、我が国のサンプルリターンの技術は世界的に見ても非常に高く、引き続きこれらの日本の優位な技術をしっかり発展させていきます。
 その次は、有人与圧ローバということで、これは月面を走行する有人与圧ローバの研究開発を行うということです。
 最後に、科学衛星でございますが、X線分光撮像衛星(XRISM)、こちら、銀河の高温ガスを高い分解能でX線分光観測する、日米欧の国際協力ミッションでございます。こちらは来年度の打ち上げを予定しております。
 また、はやぶさ2の拡張ミッションということで、はやぶさ2本体は、また新たな小惑星を目指して約10年間の旅に向かっておりますが、こちらの、はやぶさ2の活動を引き続き行っていきます。
 すみません。ちょっと早足になりましたが、来年度の宇宙関連予算の説明でございます。

【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 来年度の概算要求のところですけれども、ただいまの事務局説明について、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
 特に御質問はないでしょうか。概算要求ということですので、この後、全般的に御理解いただければと思いますが、いいでしょうか。

(「なし」の声あり)

【村山部会長】 ありがとうございます。それでは、次の議題に移りたいと思います。
 2番目は審議事項です。CALLISTOプロジェクト移行審査の結果についてです。
 それでは、JAXAの張替理事から御説明をお願いいたします。

【張替理事(JAXA)】 承知いたしました。
 JAXA研究開発部門長しております張替と申します。本日はよろしくお願いいたします。
 これより御説明いたします1段再使用飛行実験(CALLISTO)は、日仏独3か国の検討チームで設計が固まりまして、本年3月にJAXAとしてプロジェクト移行を行いました。
 本プロジェクトは、6月に本部会で御報告のありました革新的将来輸送システムロードマップの中間取りまとめにおいて、輸送系の低コスト化実現に向けた取組の一つと位置づけられておりますので、本日、その目的、目標、開発方針、開発計画、そして成果等についての調査・審議をお願いするものです。
 それでは、プロジェクトマネージャの石本より、CALLISTOの移行審査の結果について御報告をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【石本プロジェクトマネージャ(JAXA)】 JAXAの石本と申します。よろしくお願いします。
 まず、1ページでございますが、本資料の位置づけということで、JAXA自らが実施した研究開発プロジェクトの評価として、プロジェクト移行審査を行いました。その目的、目標、開発方針、開発計画、成果等について、本部会で調査・審議を行っていただくものでございます。
 この評価でございますが、特に実施フェーズ移行に際して実施する事前評価となっておりまして、2つ目のポツでございますが、その事前評価の評価対象プロジェクトは開発費の規模又は事業性で判断されるということになっております。本プロジェクトの開発費は評価対象規模に到達していないのですけれども、先ほど張替理事からお話がありましたように、ロードマップに関連する重要なものであるということで、重要案件として調査・審議の対象となっています。
 3ポツ目でございます。JAXAにおきまして、本年3月末でございますが、CALLISTOに関わるプロジェクト移行審査を行いました。本資料では、これらの審査項目が1から3までございますが、それぞれ1章から3章、それから最後に、JAXAプロジェクト移行審査の判定について4章でまとめを述べています。
 次をお願いします。
 目次は省略させていただきまして、3ページはCALLISTOプロジェクトの政策的な位置づけを示したものでございます。工程表におきましては、抜本的な低コスト化を目指した革新的な宇宙輸送システム技術の研究開発の取組として、国際協力による1段再使用飛行実験(CALLISTO)と示されております。図において赤い手のマークで示されたものでございます。
 その左の下に、ちょっと小さいですけれども、小型実験機の飛行実験計画というものがございます。矢印でつながっておりますけれども、これとCALLISTOとの関係を述べたものが次のページになっております。
 4ページをお願いします。
 これがCALLISTOの前の小型実験機、我々はRV-Xと呼んでおります、これとCALLISTOの関係を示したものでございます。2つ絵がございますが、CALLISTOの前のRV-Xは、国際協力ではなくて日本単独の研究、こちらはプロジェクトでなくて研究となりますけれども、行っているものでございまして、秋田県の能代実験場におきまして、高度100メートルまで上昇して垂直着陸するという飛行試験を今年度末に予定しております。
 このRV-Xで取得しましたデータを右側のCALLISTOに反映しまして、技術的リスクを効果的に下げる計画でございます。
 右側のCALLISTOは、日本だけではなくてフランスのCNES、それからドイツのDLRという宇宙機関との3機関共同で行うものでございまして、最終的には南米ギアナ宇宙センターで飛行試験を行う予定です。この左側のRV-Xと同じ型のエンジンを1基搭載しておりまして、RV-Xの成果を有効に活用できるというのが大きな特徴です。
 次のページをお願いします。5ページでございます。
 ここからはプロジェクトの目的や目標、それからサクセスクライテリアにまいります。
 まず、目的・目標の青い四角に白抜きになっているとこでございますけれども、目的は、基幹ロケット1段の再使用も含めまして、再使用型輸送システムに共通的に必要となる技術を獲得することです。この目的の実現のために、このミッション、CALLISTOではシステムレベルのキーとなる技術に関しまして、小型実験機による飛行実験を行い、技術成熟度の向上のためのデータを取得すること、それから、再使用による経済的な効果の評価に必要なデータを蓄積する、この2つを目標としております。
 システムレベルのキー技術と申しますのは、5ページの下の表にございますように、帰還技術を細分化しました誘導制御技術、それから推進薬マネジメント技術、それからその下の再使用設計技術、最後の再整備技術を細分化しました再使用運用技術、ヘルスマネジメント技術の5つの技術を指しております。
 これら5つの技術がうまく日本で獲得できるようにフランス、ドイツと交渉しまして、JAXAの分担、日本側の分担を決めております。
 次のページをお願いします。
 ここは、各キー技術の検討状況を示したものです。時間も限られておりますので、絵が入っている3つだけ説明させていただきます。
 一番上の誘導制御技術は、軌道や機体の姿勢を制御する技術でございます。ここでは風耐性のある誘導制御アルゴリズムを実証する予定です。垂直着陸するロケットは飛行機などと比べますと風の影響を受けやすいという欠点、課題がございますので、そこを補う技術を獲得しようとするものでございます。
 その下の推進薬マネジメント技術でございますが、これに関しましては、大姿勢変更でも優れた液保持性能を発揮する軽量のメッシュ型デバイス、これはJAXAが特許を取得しようとしているものでございますが、この技術を実証する予定です。
 再使用型ロケットは、地上に帰ってくるときに、使い切りロケットに比べますと、非常に大きく機体の姿勢を変更します。その際に、タンクの中の液体推進薬が暴れてしまうという課題がございますので、それを抑える技術が必要となっております。そのための技術を実証します。
 一番下のヘルスマネジメント技術でございますが、これは一度飛行したエンジンですとか、搭載機器が再使用で次の飛行に耐えることを確認するための技術でございます。
 飛行後の作業にコストがかかってしまいますと再使用のメリットが薄れてしまうということで、そういった飛行後の作業はなるべく効率的に行いたいという動機がございまして、ここではエンジン燃焼器の非破壊検査装置、これはエンジンを分解せずにエンジンを検査する技術ですとか、物理モデル等に基づく故障診断のための予知アルゴリズムを飛行後点検の一つとして適用する予定です。後者はハードウェアを直接点検することなく、飛行中に取得したデータを、AIと言っていいと思いますが、そういったアルゴリズムを通すことで、故障がないということを確認する技術を適用する予定です。
 次のページをお願いします。7ページ、サクセスクライテリアございます。
 本プロジェクトは国際協力であることを考慮しまして、3機関共通のミッション、目標があるわけですが、それをミニマムサクセスとしまして、それに加えまして、JAXA独自のミッション目標を達成することをフルサクセスと定義しております。
 このJAXA独自のフルサクセスにつきましては、青字のところでございますけれども、基盤技術としてプロジェクト後に残す、飛行実証だけではなくて、プロジェクト後に残すツール・モデル・データベース等が非常に重要だろうと考えまして、これらをアウトプット目標として位置づけまして、それに反映するためにプロジェクトにおいてどのようなデータを取得するかを明確化しております。
 このツールですとか、モデルの整備の狙いでございますけれども、最終的にはデジタルツインと呼ばれるような高精度のモデルを整備しまして、SpaceXでは非常に大規模なハードウェアの試作を行っていますけれども、それに対しまして、大きなハードウェアの試作ではなくて、仮想空間でシステムのシミュレーション・評価を行って、短期間、非常に効率的にシステムの評価ですとか、改良を繰り返す、そういった姿にしたいということで、このツール・モデルというものをアウトプット目標に位置づけております。
 次をお願いします。8ページ。
 これは具体的なサクセスクライテリアでして、ちょっと読み上げませんけれども、右側のフルサクセスを御覧いただきますと、こういったJAXA独自のものがございます。再使用1段の実飛行を模擬した飛行を2回以上行い、そのうち1回はJAXAが開発した誘導制御ソフトウェアによる飛行を行うこと、その下の誘導制御技術につきましては、風耐性の向上に必要なデータを取得すること及びモデル化技術を習得すること、こういった成功基準が提起されております。
 次のページに行っていただきまして、このサクセスクライテリアだけですとプロジェクトが成功したかどうかという評価が非常に難しいので、9ページの別表を使いまして、どのようなデータを取得するのか、さらにはそれを使って、どのようなツール・モデルなどを整備するのかといったところを別途定義しております。
 9ページに示しましたのは誘導制御技術のそういったデータ・モデルの定義の例でございまして、同様な定義がほかの4つの技術についても行われております。
 次のページをお願いします。10ページ。
 CALLISTOの概要2項にまいりまして、CALLISTOの概要でございます。
 まず、開発方針でございますが、大きな方針の一つは、何回も述べておりますように、海外の宇宙機関も含めた3機関による国際共同開発、実験として進めるというものでございます。
 右の上にちょっと小さいですけれども、それぞれ3機関の担当範囲が示されております。赤い枠で囲まれたものが日本の担当になっておりまして、黄色がドイツDLR、それから水色の部分がCNESの担当となっております。CNESはちょっと数が少ないように見えますけれども、地上設備全般をCNESが担当します。
 国際協力のメリットを比較した表がございますが、必要資金の面で非常に大きなメリットがございます。ただ、それ以外にも、ギアナ宇宙センターはCNESが管理している、いわゆるクールーと呼ばれる場所でございますが、CNESが管理するクールーで意義の高い飛行試験が可能になるといったメリットも考えられます。
 次、お願いします。11ページ。
 もう一つの開発方針は、最初の冒頭でも述べましたが、RV-Xによる要素技術の先行実証を行いまして、それをCALLISTOが反映します。これはいわゆるフロントローディング活動でして、RV-Xをフロントローディングとして位置づけまして、それをCALLISTOに反映するものでございます。
 RV-Xは三角幾つかございますけれども、何シリーズかの地上燃焼試験のシリーズを行ってまいりまして、赤い矢印が上から下まで伸びておりますが、この地上燃焼試験で取得したデータはCALLISTOの設計に既に反映しております。
 次のページをお願いします。
 ここはシステム仕様ということで、CALLISTOの機体のシステム構成を示しております。絵がございます。これ先ほどの分担の絵と同じでございますけれども、御覧いただけますように、SpaceXのファルコン9と非常に似たような機体、システム構成になっております。ただ、空力舵(かじ)面、いわゆるフィンでございますけれども、これは、ファルコン9のように網目状のものではなくて、板状の違う技術でデータを取得する予定です。
 機体の規模は、機体の下に表がございますが、直径は1.1メートル、高さが13メートルという小型のロケットでございます。全備質量、打ち上げ全質量が約3.7トン、それから一番下、略語になって申し訳ございませんが、リフトオフ時の推力、スラストと機体重量、ウェイトの比が1.25になっているという意味でございます。
 次のページをお願いします。13ページ目は飛行プロファイルの例を示したものでございます。
 左側は高度とダウンレンジの絵になっておりまして、大分スケールは小さいですけれども、ファルコン9と同じように、打ち上げからUターンして、ループを描いて発射点付近に戻ってくるといった飛行プロファイルを描く予定です。
 右側の図から分かりますように、青い線はマッハ数になっておりまして、帰還時にマッハ1に到達しまして、非常に飛行が難しいと言われておりますマッハ1付近の遷音速と言われる領域をうまく飛行できることも実証する予定です。
 この13ページで示しました飛行プロファイルは実験の中で最後に行う予定でございます。いきなりこういった飛行を行うのではなく、段階的に飛行領域を広げていく計画でございまして、現時点では合計10回の飛行試験を計画しております。
 次のページをお願いします。ここから開発計画にまいりますけれども、まず、3機関による開発体制ということでございます。図がございますけれども、一番上に、Steering Committeeという理事級の意思決定を行う組織がございまして、その下に大きな四角で囲まれております、実務を行う3機関の共同チームがございます。真ん中にProject Management Leaderというのがございますが、これが実務のリーダになっておりまして、これはJAXAのプロマネが務めます。両脇にそのリーダを補佐するコ・リーダが2人いますが、こちらはCNESとDLRのそれぞれのプロマネが真ん中のマネジメントリーダを補佐するという形になっております。
 次のページをお願いします。15ページは国内体制を示したものです。こちらについては、お読み取りいただければというふうに思います。
次をお願いします。16ページは資金計画及びスケジュールでございます。
 まず、資金計画でございますが、JAXA担当分の総開発費は48億円でございます。これにはプロジェクト移行前のプロジェクト準備段階の資金約3億円も含まれております。
 それからスケジュールでございますが、現時点で2024年度にギアナ宇宙センター、南米での飛行試験開始を予定しております。線表がございますけれども、昨年度末のプロジェクト移行後、基本設計と書いてございますが、4月から基本設計がされまして、現在、日本担当分のPDR、基本設計審査の準備を進めています。
 線表の下を御覧ください。プロジェクト移行に際しまして、日独仏の3か国でプロジェクト期間を再検討したところ、初飛行は2024年となります。少し遅いのではないかという印象を持たれていると思いますが、この資料下半分に書いてあるような2つの理由によりまして、意義・価値は維持されるというふうに我々としては考えております。
 一つ目は世界動向の中での意義ということで、青い字になりますが、SpaceX社の動向を分析しますと、再使用における技術課題、例えば、風の不確定性が大きい海上着陸の難しさ、現在も時々失敗がございますけれども、そういったものがより明確になってきておりまして、SpaceXは大分先行していますけれども、まだ技術としては、完成形には達していないと考えておりまして、後発でも部分的には追い抜くことができる部分があるということで、CALLSITOは、そういった課題、まだ完成形に達していない部分の課題に対応できると考えております。
 もう一つは2番目、これは国内ですが、革新的将来宇宙輸送システムロードマップへの貢献です。赤い字は省略しますけれども、先ほど申し上げましたように飛行試験は2024年度ですが、ツールやモデルに関しましては、一度その前、2022年度で一旦取りまとめる予定でございまして、これをロードマップに基づく研究開発、革新的なシステムへの検討などに使う形で提供することを考えております。そういったことを考えますと、CALLSITOの成果は後続の革新的システム、研究開発プログラムですが、そこでもフルに活用いただけるものと考えております。
 次のページをお願いします。17ページは、リスクの識別・対処方策です。リスクに関しましては、一般的なプロジェクトと同様に、リスクの影響度、それから可能性に基づいて、リスクの対象を評価して、それぞれリスクの対処方針を設定しています。ここの17ページの下には、一つ主要なリスクとして、質量超過に伴うミッション要求成立性というのがありますが、こういったリスクを挙げて、それぞれリスク低減策を設定しているところです。これは一般的なプロジェクトと同様なやり方をしております。
 18ページをお願いします。18ページは4項プロジェクト移行審査のまとめということで、まとめのページとなっております。
 プロジェクト移行審査におきましては、このページの上側半分にありますような審査項目1から9に対しまして審査を受けまして、下半分ですが、要処置事項を処置することを条件に、プロジェクト実行フェーズへの移行は妥当というふうに判断されております。ただし、以下の2点については特に留意してプロジェクトを遂行することという意見がつけられております。
 一つ目はちょっと文章が長いのですけれども、簡単に言いますと、CALLSITOから後続の関連する研究開発への成果展開の道筋を明確化するということです。これについては、最後のページでちょっと補足します。
 もう一つはスケジュールキープの観点、3機関全体をマネジメントする立場からも、緻密に全体スケジュール・リスク管理することということで、これにつきましては、JAXAがリードしまして、スケジュール、それからリスクを管理する会議体を設定して、マネジメントを行っているところです。
ここまでが本文でございまして、2枚の補足を説明します。
 まず、補足の1です。
 RV-Xの状況ですが、地上燃焼試験などを進めております。今後の予定のところで、9月中旬まで、地上燃焼試験ナンバー2、その4を実施予定というふうに書いてございますが、これは先週の22日に終了いたしまして、現在は、本年度末、2022年3月の飛行試験に向けた準備を始めたところです。
 次のページをお願いします。20ページが最後のページとなっておりまして、これは、現在検討中のCALLSITOからの成果展開シナリオを示しています。
 右上に6月に策定されました、革新的将来輸送システムロードマップの一部を引用してここに入れております。ちょっと字が小さくて見づらいんですけれども、薄いピンク色で赤い点線、楕(だ)円の点線で囲まれた部分にRV-XとCALLSITOが位置づけられております。このCALLSITOを含むような研究開発活動の成果は点線で上に伸びておりまして、ここは基幹ロケット発展型宇宙輸送システムにつながる形になっております。
 この流れを、JAXAの考えですけれども、少しく圧縮したのが下の図になっております。
 CALLSITOは、先ほど言いましたように飛行フライト実証以外にも、ツール・モデルの整備に力を入れると申し上げましたが、それがオレンジの帯になっておりまして、ここは一度2022年度をもって成果をまとめて、その際にRV-Xのデータを使って部分的な検証を行いますが、それを一番上の基幹ロケット発展型の検討に役立ててもらうという流れを考えております。特に、ロードマップの中で言われております、基幹ロケット発展型のサブスケール飛行実証の検討に使っていただく予定です。
 CALLSITOの飛行試験と並行しまして、その上の帯になっていますが、CALLSITOでは取り組まない技術も含めまして、革新プログラムでシステム設計技術の研究開発が並行して進められております。2024年度には、CALLSITOの飛行試験の結果を反映しまして、その上側のシステム設計技術の中に取り込んでもらいまして、最後はシステムレベルのモデルを構築する形で上に持ってきまして、本格的に基幹ロケット発展型の開発に使ってもらう、こういった成果展開のシナリオを考えております。
 説明は以上となります。

【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 ただいまの説明について御意見、御質問があったらお願いいたします。
 鈴木委員、手が挙がったでしょうか。

【鈴木(健)委員】 鈴木です。よろしくお願いいたします。

【村山部会長】 お願いいたします。

【鈴木(健)委員】 ちょうど今説明いただいたCALLSITOの開発した技術が、基幹ロケットの発展型の宇宙輸送システムにフィードバックできるのではないかということで、これの価格みたいな部分での定量性を持ったイメージができるといいかなと思っていて、基幹ロケット発展型宇宙輸送システムの中で同じようにシステムを独自に整備しようとしたときに、どれぐらい費用がかかるのか。フィードバック先はこの1プロジェクトだけじゃないとは思うのですけれども、この1プロジェクト単独で開発しようとしたどの部分が、今回のこのツールの利用によって補えるかみたいなところがイメージできると、よりサポートしやすいんじゃないかなと思っていて、質問させていただきます。

【村山部会長】 その辺りいかがでしょうか。

【石本プロジェクトマネージャ(JAXA)】 最後のページの青い帯と赤い帯の効果の定量性みたいなことをおっしゃっていると思います。なかなか定量的に申し上げるのは難しいのですけれども、CALLSITOは特に再使用ですね、再び使うというところに特化しておりまして、誘導制御ですとか、先ほどのヘルスマネジメントとか、特にそういった基本的な技術に集中して取り組む予定です。ただ、CALLSITOだけではやはり、その上の基幹ロケット発展型に必要な技術を全部獲得できるものではございませんで、例えば、大型ロケットの軽量化みたいなところはCALLSITOでは取り組むことが難しいですので、そういった部分は青い帯のところで補っていただくということで、ここは、どちらが大きいというのはなかなか難しいですけれども、相補うような関係となっていると考えております。

【鈴木(健)委員】 ありがとうございます。
 正に今、青い部分だけで進めるのであれば、プラス、もうちょっとシステムの設計とか、デジタルツインモデルの整備に近しいことをしなければならないので、大きくコストがかかる部分がここで使えて削減できているようなイメージが数字で理解できると有り難いなと思ったのですけれども、その辺り、ちょっと直接的には難しいということも何となく理解できる部分があるので、ちょっと質問を変えさせていただきます。
 この仕組み自体、オープンイノベーションに近い形で、ほかのCNESのチームとDLRのチームと一緒にやるということでパフォーマンスが上がっているなと思っているのですけれども、参考までに、CNES側とDLR側がどれぐらいの資金を必要資金として考えていて拠出するかで、その額が何となく3等分されているような形だと、バランスがとれてて直感的に何となくよさそうと判断できると思うのですけれども、その辺りはいかがでしょうか。

【石本プロジェクトマネージャ(JAXA)】 何ページだったかな。すいません。ちょっと待ってください。

【鈴木(健)委員】 10ページに48億円って書いてあって、トータルで190億って書いてあるのですけれども。

【石本プロジェクトマネージャ(JAXA)】 非常に細かい内訳は聞いてないですけれども、DLRが約60億円、それからCNESが80億円近い資金だった気がします。当初は3等分を目指していたのですけれども、検討が進むにつれてちょっと大小が生じてまいりまして、CNESが地上設備を全体的に担当するということで、かなり大きくなっております。そういう意味では、JAXAが負担する資金は3分の1よりも大分小さい金額になっているかと思います。

【鈴木(健)委員】 分かりました。私ばかり質問して申し訳ないですけど、あと一つだけ。その中で、資金の拠出は少ないけれども、プロジェクトのマネジメントリーダを任されている人をJAXAから出すことについての、バランスみたいな部分というのはどのような形で決まっているんでしょうか。

【石本プロジェクトマネージャ(JAXA)】 JAXAがリーダとなるのは、CALLSITOの前にRV-Xというのを一つ行っているということで、経験値が高い、実力があるということで、リーダを仰せつかっているものと思います。

【鈴木(健)委員】 分かりました。よろしいかなというふうに私は思います。

【石本プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ここは一つ、交渉する上で、RV-Xは非常に強みになっていると思います。

【村山部会長】 コスト面、金額面、大切なところですので、これからも詰めていただければと思います。

【石本プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい、すいません。

【村山部会長】 それでは、次に山崎委員、お願いいたします。

【山崎委員】 どうもありがとうございます。2点質問させてください。
 まず1点目が、最後のページにある成果展開シナリオの部分で、将来型の基幹ロケットシステム発展型への反映が明記されているわけですが、RV-Xの成果は概念検討に反映されますけれども、CALLSITOの場合、設計製作の途中段階と読めます。きちんと設計に反映できるようにタイムスケジュールが確保されているかを確認させてください。
 二点目ですけれども、資料で言いますと、9ページのサクセスクライテリアのところですが、例えば、風への耐性向上に関するデータ・モデル化技術習得の10年のアウトカムに関して、サブオービタル機を開発する民間企業に移転ということが書いてあります。これは恐らく一例で、再使用のシステムですとかメンテナンスですとか、共通して横展開できる、産業に資する成果がたくさん出てくるだろうと思いますが、例えばそれら共通技術の民間移転を具体的にどのように展開される予定か、現状を教えていただければと思います。
 以上です。

【村山部会長】 ありがとうございます。その点いかがでしょうか。

【石本プロジェクトマネージャ(JAXA)】 まず、成果の展開のタイミングという御質問だったと思います。
 CALLSITOにつきましては、2022年度ですが、詳細設計が終わりまして、モデル、それからツールは一通り出来上がっている状態だと思っております。一部、地上の試験なども行いますので、部分的ではございますけれども、設計は終わっていて、サブスケール実証へ適用するというタイミングとして、一つ適切かなとは思っております。
 当然、飛行試験はまだ行っておりませんので、飛行試験でちゃんとツールが正しい予測していたということが確認されることが必要と考えますので、2024年度にもう一度確認した上で上側へフィードバックするという2段階のやり方を考えております。2022年度分は、詳細設計が終わって、ツール、モデルの整備も一通り終わっていて、地上の試験も終わっているということで、適切なタイミングだろうと考えております。
 もう一つ、産業界への提供ですけれども、9ページのアウトカム目標の左側に今ツール・モデル等とございまして、いわゆる解析用のプログラムという形になりますけれども、プログラム、それから、それに反映するようなデータを、基幹ロケット発展型だけではなくて、こういったサブオービタル機などの民間機が中心となっているような活動にも提供してまいりたいと考えております。具体的にはこういったコンピュータープログラム、それからそれに反映するデータという形で提供する予定です。

【村山部会長】 ありがとうございます。

【山崎委員】 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。

【石本プロジェクトマネージャ(JAXA)】 よろしくお願いいたします。

【村山部会長】 特に、民間への技術移転については、ここでうまくやらないと成果が無に帰すというか、成果が上がらない場合もありますので、そこはメカニズムも十分考えていただいて民間企業へ移転するように、よろしくお願いいたします。
続きまして、山室委員、お願いいたします。

【山室委員】 私、この委員会への参加が浅いのでちょっとよく分かってないところもあるのですが、先ほどの9ページの民間移転ということが最終的なアウトカムにある中で、次の10ページのところにあります、メリット・デメリットをJAXA単独とほかの国とでやることのデメリットの一番下のところで、日本側が優位な技術が流出するおそれがあるので対応策として特許を取得すると書かれております。上側の図に、JAXA様の技術と、そうじゃない、共同開発する技術が色分けしてあるのですが、この方たちもやはり自分たちが持っている優位な技術というのが恐らくあるわけで、それに対して、例えば同じように特許の取得みたいなことをすると、開発段階ではお互いに顔突き合わせて開発しているからいいのですけれども、アウトカムになったところで、それぞれの特許とかの関係がどうなるのかなということがちょっと気になっています。つまり、JAXAだけの特許じゃないとすると、日本の民間の企業が全体のシステムとして何かやろうとしたときに、膨大な特許料を払わなきゃいけなくなることはありませんでしょうか。アウトカムまで考えたとき、共同で開発することによるメリット・デメリットというのはどうなっているのか、素人ではよく分からないので教えていただければと思います。
 以上です。

【村山部会長】 特許関係ですけれども、よろしくお願いします。

【石本プロジェクトマネージャ(JAXA)】 特許に関しましては、おっしゃるような課題が発生するおそれはあると思っております。もろ刃の剣でございまして、日本が取ればヨーロッパも取るということで、実施するに当たって特許料を支払う必要が出てくるような事態も想定されます。
 ただ、CALLSITOプロジェクトの成果をどこまで3機関で共有するかを実は協定で定めようとしているのですけれども、飛行試験で取得したデータは3機関で共有することになっております。詳細なノウハウまでは、ちょっと共有が難しい部分もあるのですけれども、飛行試験で取ったデータは何の制約もなく共有しまして、後続の研究開発プログラムにも提供できるという約束になっております。そういった意味で、データについては、我々の技術、日本の技術を育て上げていく際の大きな制約にならないと思っております。

【村山部会長】 ありがとうございます。
 特許料の相殺だとか、そういうことをよくやりますよね。そういうことについても契約であったりとか、何か決めてあるのですか。それはまだこれから決めるということなのでしょうか。

【石本プロジェクトマネージャ(JAXA)】 特許の実施に関しては、その都度調整ということかと考えています。

【村山部会長】 まだ、これからということですか。分かりました。

【石本プロジェクトマネージャ(JAXA)】 あらかじめ決めておくというのは難しい面がございます。

【村山部会長】 分かりました。了解です。
 続きまして、芝井委員から。

【芝井委員】 芝井です。最後のページの記述に関してちょっと質問がございます。そのページをお示しいただけますでしょうか。これですね。御説明では、次の基幹ロケット発展型のためにCALLSITO計画の成果が役に立つであろうということだったんですが、3か国共同でやるということもあり、実験の内容を考えても、CALLSITO自身のスケジュールの遅延というのは当然想定しておかないといけないと思います。そのときに、基幹ロケットの発展型というのがどうなるかというのが非常に気になりました。つまり、基幹ロケットの発展型というのは、CALLSITO計画の進行状況に依存するのか、あるいは、あればプラスアルファなるけれども、一応独立に進めるのか、その辺りの考え方を聞かせていただければ有り難いです。

【村山部会長】 お願いいたします。

【石本プロジェクトマネージャ(JAXA)】 2024年度の飛行実験については、これから製作などもしますので遅延の可能性がないとは言い切れませんが、その手前の2022年度の中間成果については時期が守れると考えておりまして、そういった意味で、CALLSITOの2022年度の成果を使うところは、CALLSITOの影響でこの上の発展型が遅れるということはないと思っております。

【村山部会長】 ありがとうございます。ほかはいいでしょうか。
 今までの御質問、特に大きな反対ということではなくて、割とまだ決まってないところが多いという印象を受けましたので、これからも報告あるいは審議という形で、その都度、また、いろいろ報告していただければと思います。
 それでは、今までの審議を踏まえまして、CALLSITOプロジェクト移行について、JAXAの審査どおり決定するということでいいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【村山部会長】 それでは、そういう形で一応前に進めて、詳しいことは、その都度報告していただきながら進めていきたいと思います。どうもありがとうございました。

【石本プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございました。

【村山部会長】 それでは、宇宙開発利用部会では決定というふうにいたします。ありがとうございました。
 それでは、次の議題に進ませていただきます。
 三つ目の議題は、GPM/DPR成果と降水レーダ後継ミッションについてです。それではJAXAの平林統括から説明をお願いいたします。

【平林統括(JAXA)】 JAXA地球観測統括の平林より御報告させていただきます。
 次のページをお願いいたします。
 JAXAでは20年以上にわたりまして、宇宙からの降水レーダ観測を継続しております。その衛星搭載降水レーダにつきましては、宇宙基本計画におきましても、我が国が強みを有する技術であって、基幹的な衛星技術として継続的に高度化を推進することとされているところです。
 そして、現在運用中の全球降水観測ミッション、GPM主衛星に搭載されておりますDPR、二周波降水レーダにつきましては、2017年に定常運用を終了いたしまして、その成果につきましては、平成30年4月の宇宙開発利用部会で報告させていただきましたので、本日は、後期利用での主な成果について御報告させていただきます。
 また、NASAよりJAXAに対しまして、米国の次世代科学ミッションでありますACCPの検討活動に参加要請がございまして、TRMM、GPMに続きます日米共同ミッションとして、ACCPとの協力を視野に入れた後継機の検討を進めておりますので、その状況についても御報告させていただきます。
 次のページをお願いいたします。
 GPM計画は、降水の高精度・高頻度観測を目的に、NASA及びJAXAが中心となって進めているものでございまして、複数の衛星群から成るプログラムです。日本が開発いたしましたDPRでは、Ku帯、Ka帯の二つの降水レーダによりまして、その先代であるTRMMから比べますと、弱い雨の観測や粒子情報の取得が可能となりました。また、DPRは高精度に三次元的な降水観測が可能ですので、コンステレーション衛星群での推定降水量に基準を与え、その精度向上に寄与しております。また、コンステレーション衛星群を利用した衛星全球降水マップ、我々はこれをGSMaPと呼んでおりますけれども、これを開発し、様々な分野での利用を推進しております。
 次のページをお願いいたします。ここからはDPR後期利用における成果を御説明いたします。
 まず、初代のTRMMから累積いたしますと、20年に及ぶ長期降水データを有しておりまして、これを用いた研究の一例として、梅雨前線の降水活動が最近10年間は非常に活発化していることが示され、英国ネイチャーリサーチのScientific Reports誌に取り上げられました。また、GSMaPの利用事例といたしまして、3点目のところに書き込みましたけれども、気象モデルとの融合により、5日先までの全球降水予測を実現し、公開しております。また、GSMaPを用いることで台風の強度予測が最大で13%の精度改善が図られることも示されております。
 民間利用につきましても、日本気象協会のtenki.jpで、GSMaPを利用した実況・予報情報の公開が開始されるなど、広がりを見せております。さらには、台風による被害を軽減すべく設立されました台風委員会から、GSMaPによる洪水予測への貢献が認められまして、昨年、キンタナール賞を受賞いたしました。
 次のページをお願いいたします。
 具体的な成果事例といたしまして、2016年3月から気象庁にて、GPM/DPRデータが気象予報に定常的に利用されるようになり、これは世界の気象機関で初めての事例となります。真ん中に示した図は、平成30年4月豪雨に関しまして、DPRのデータを数値モデルに取り込まない場合と取り込んだ場合の、24時間降水予測値と地上観測による実況とを比較したものでございまして、GPM/DPRデータを加えることで、降水予測精度の向上に寄与することを示しています。
 また、線状降水帯の観測に関しましても、令和2年豪雨に関わる気象研究所の報道発表におきましても、線状降水帯の環境場の把握にGSMaPが使用されております。
 次のページをお願いいたします。次に、GSMaPの利用事例について御紹介いたします。
 豪州の干ばつに対しまして、地上のセンサでは捉え切れない広域情報を衛星観測で得られる特徴が認められまして、WMO、世界気象機関の気候に関する声明の中で、GSMaPの干ばつ解析が取り上げられました。
 また、降雨情報につきましては、水災害監視、農業気象、水資源管理などにおいて重要なデータとなっておりまして、特に、東南アジアや太平洋島しょ国でニーズの高いデータとなっており、降水の現況監視などに利用されております。
 次のページをお願いいたします。次に、気候変動の分野の成果です。
 先般、IPCC第6次評価報告書の第1作業部会の報告書が公開されましたけれども、その中で、東京大学高薮先生の研究グループの論文をはじめといたしまして、GPM、TRMM、GSMaPに関連した論文が多数引用されております。また、GSMaPの提供に関しまして、JAXAへの謝辞が同報告書の中で示されております。
 次のページをお願いいたします。
 GSMaPにつきましては、ここに示しましたように、気象、防災、農業をはじめとした実利用ユーザーからアカデミアまで様々なコミュニティーで利用が広がっておりまして、その維持・発展が望まれております。
 一方、GSMaPにおきましては、降水レーダの観測情報が基準となってまいりますので、その維持・発展におきましては、降水レーダの観測継続が必要となってまいります。
 次のページをお願いいたします。ここからは、後継ミッションに関する検討状況について御説明いたします。
 後継機では、気候変動による世界の雨雪の時空間変化を把握し、雲降水システムを解明すること、そして頻発・激甚化する水災害の人間社会への影響を低減することを目指すべきミッションとして検討を進めております。
 次のページをお願いいたします。次に、次期降水レーダで目指す姿について御説明いたします。
 下になりますけれども、後継ミッションでは、感度向上を図ることで捕捉できる降雪量を9割以上に改善し、弱い雨雪を含む三次元降水情報により、豪雨や大雪などの気象予報の改善を目指します。また、降水ドップラー速度観測によりまして、気象モデルでの雲・降水過程の精密化、気象予報改善への貢献を目指します。こういった取組によりまして、土砂災害、風災害や雪害に関する予測向上への貢献を目指してまいります。
 次のページをお願いいたします。
 後継ミッションでは、TRMM/GPMで培った降水レーダ技術と、ESAと共同で進めております、EarthCAREで開発中のドップラー技術を生かした上で、高感度化、そして世界初のドップラー降水速度観測を実現する、Ku帯のドップラー降水レーダの開発を検討しております。
 この次期降雨レーダの高度化によりGSMaPの高精度化を図ることで、台風強度の予測精度の向上など、土砂災害、風水害などに関連する気象予報精度の向上を目指します。また、食糧安全保障分野をはじめとして、様々な分野での利用拡大を目指していきたいと考えております。
 次のページをお願いいたします。次に、米国のACCPミッションを簡単に御紹介いたします。
 ACCPミッションは、極端気象や気候変動を駆動するエアロゾル・雲・対流・降水のプロセスを明らかにすることを目指すミッションでありまして、米国のDecadal Surveyにおきまして、最優先の観測対象とされているものです。NASA、JAXAのほかに、フランスのCNES、カナダCSA、ドイツDLRが検討に参加しておりまして、現在NASAでは、プリフェーズA、概念検討の作業を実施しているところです。
 次のページをお願いいたします。ACCPミッションにおけます一連のプロセス解明の中でJAXAに期待されている役割は、右図の赤枠で囲った降水観測に関わる部分です。
 それから水色の箱の中の2つ目に書きましたけれども、ACCPのアーキテクチャ案では、極軌道に2つ、傾斜軌道に3つの衛星から構成される案が検討されておりまして、センサについても、レーダ、ライダ、放射計など様々なものが検討されております。
 JAXAが降水レーダ衛星をもってACCP計画に加わることで、シナジープロダクトの開発や科学研究を効果的に実施可能であり、気候変動政策における宇宙分野での日米協力のシンボルとなることを目指していきたいと考えております。
 次のページをお願いいたします。最後にまとめとなりますけれども、GPM/DPRの後期運用を行いまして降水レーダの長期観測を継続することで、気象庁の気象予報での定常利用や、GSMaPの国内外での様々な利用が進んでおります。
 そして、これまでの成果を踏まえ、後継ミッションでは、頻発・激甚化する水災害の人間社会への影響低減や気候変動政策への貢献を目指したいと考えております。そして、NASAにおけるACCPミッションに参画することで、シナジー効果によるさらなる成果創出を目指したいと考えております。今後、後継ミッションの立ち上げに向けて、関係機関との調整を進めてまいります。
 報告は以上です。

【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 ただいまの説明について御意見、御質問がありましたら、挙手いただければと思いますが、いかがでしょうか。米澤委員、お願いします。

【米澤委員】 どうもありがとうございます。
 2つほど教えていただきたいことがありまして、これから調整を進めるということなんですけれども、具体的なタイムスケジュールをもしお考えだったら教えていただきたいということと、もう一つ、国内外の機関によりという説明が初めの方にあって、アメリカの計画を中心にお話しいただいたんですけれども、ほかに関係する国際機関としてESAなどが入ってくると思います。具体的なことがあったら教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【村山部会長】 その辺りいかがでしょうか。

【平林統括(JAXA)】 まず、マイルストーンという観点で、打ち上げ時期が一つそれに該当するかと思いますけれども、まず、傾斜軌道の衛星が3基ございますけれども、これにつきましては、2028年度の打ち上げを目指すとNASAから聞いております。それから、極軌道につきましては2基の衛星が打ち上げられますけれども、これは2029年の打ち上げを目指すと聞いております。いずれも1回で3基と2基をまとめて打ち上げる計画です。
 それから、どういった機関が関連しているかということでございます。少し早口の御説明になってしまって恐縮だったのですが、NASA、JAXAのほかに、カナダの宇宙機関であるCSA、それからフランスのCNES、それからドイツのDLRが現在検討に参画しております。
 以上です。

【村山部会長】 ありがとうございます。

【米澤委員】 どうもありがとうございます。

【村山部会長】 ほかの御質問いかがでしょうか。いいでしょうか。

(「なし」の声あり)

【村山部会長】 それでは、次の議題に移らせていただきたいと思います。
 次は四つ目の議題ですけれども、宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)の状況報告です。
 それでは、JAXAの伊達木部長から御説明をお願いいたします。

【伊達木部長(JAXA)】 御紹介ありがとうございます。JAXA新事業促進部、伊達木から御報告させていただきます。
 宇宙イノベーションパートナーシップ、J-SPARCと呼んでおりますが、これ以外にも広く産業振興の目的のための活動ということで本日は御紹介いたします。
 中身の方で、J-SPARCが2個目に書いてありますが、それ以外にもJAXAベンチャー、出資等を本日は簡単に御報告いたします。
 まずは、この表を御覧いただきますと、国の産業振興策の宇宙利用、宇宙技術拡大といった施策がなされていますけれども、JAXAでは、それに連動した形で、施策、産業振興の施策を展開しております。
 この赤い線で矢印というのは、企業、特にスタートアップ等、生まれたばかりの企業がどんどん成長して、事業化が進んで、最終的に上場したり、M&Aを行ったりと、成長曲線に対して、その段階に応じた、成長段階に応じた施策をするということで、黄色い箱で書いておりますようなことを幾つも実施しております。
 下から、潜在企業の掘り起こしやマッチング・イベントというところから人材の関係、それから探査イノベーションハブという組織を使って、特にデュアルユース、地上と宇宙でということを目指しながらの研究や、JAXAベンチャー、それから今のJ-SPARC、軌道上実証機会の拡大、それから、民間企業との出資関係、リスクマネー関係といったところでの連携も図っております。調達等にも工夫をしていくという施策を考えております。
 次のページにいっていただき、具体的に少しJ-SPARCについて御紹介したいと思います。
 すいません、少し文字が細かいところがございますが、上段の左の方を見ていただきますと、J-SPARCというのは1階建て、2階建てと書いておりますが、大きく見ていただくと赤い矢印で上と下を書きました。その新しい事業もつくっていくし、下の方、将来のJAXAミッションにも役立つようにJAXAの技術開発もということで、両方を目指すプロジェクトです。
 真ん中の図で書いておりますのは、従来のプロジェクト開発は、JAXAが真ん中、青い丸で研究開発をして、それを民間に渡して事業運営してくださいという形態だったのですけれども、このJ-SPARCでより早くというのは、アジャイル開発ではないですけれども、民間とJAXAが一体となって早いサイクルで検討を重ねて共創し、そこから開発・実証していく、そして事業運営に入っていけるようにということで、JAXAと企業の関係をより早い段階で一緒になって考えていく、一緒に動いていくというところがJ-SPARCの特徴です。
 下に項目が幾つかございますけれども、先ほど御紹介した政府の支援の施策に対して、JAXAも連動する形でJ-SPARCを2018年から始めております。これは特に、民間企業から、しっかりと事業をするというところの出口のコミットメントを得た上で、JAXAと事業者双方がリソースを持ち寄って――ここではリソースを持ち寄りということで、JAXAから資金を渡してはおりません。それぞれが資金であったり、人員であったり、リソースを出した上で、共同してコンセプトを検討していく、事業のコンセプトを検討していく、それから、しっかり出口に向けての技術開発・実証を行うというところを目指しております。これによって、新しい技術と、それから先ほど1階、2階と書きましたけれども、技術とそれから事業と両方を生み出していくことを目指しております。
 このJ-SPARCに関しましては、これまで300件以上、外部からお問合せを頂きました。頂いたものの実施しておりますのは、全部で延べ34件、21年の8月までになりますが、コンセプト共創12件、共同実証7件、それから共通的な事業化の促進に資する活動5件の合計24件を現在、共創活動ということで実施しています。
 この内容は、新事業促進部14名のプロデューサーと呼ばれる職員が、各部門のメンバーと一緒になって――各部門のメンバーというのはJAXAの中から、いろんな連携関係を呼び出しまして、230名に上ります。JAXAの職員というのは1,600名に足りませんので、そのうちのかなりの職員に入ってもらった上で、この研究開発と事業という両方のシナジーを生み出すための活動を展開していて、全社一丸となって実施しております。
 最後に、このやり方に関しては、最近、好事例としてお話を聞かせてくださいという問合せを受ける例も増えております。我々としても3年目に入ってかなり内容として充実してきているかなと思います。
 今年度は4年目に入ります。中期計画も折り返しになりますので、しっかりと事業実証活動をやっていきたいと思いますし、JAXAのミッションとして、しっかり根づくような技術開発一緒になるように、ミッション創出に向けて、頑張っていきたいと考えております。
 これは、JAXAのこれまでのJ-SPARCのプロジェクトを少し分野別に分けてみました。左と右で非宇宙と宇宙というふうに書きましたけれども、今まで宇宙分野ではなかった方々に入ってきていただく。非宇宙、異分野と言われている方に入ってきていただくということと、それからより宇宙の分野は、これまでも宇宙で入られてきた方、それからニュースペースと呼ばれている新興の宇宙企業などと両方の企業さんたちがいらっしゃいます。
 それから上と下で分けますと、顕在市場と潜在市場ということで、既に宇宙の利用、事業開発ということでよく知られているもの、既にあるものと、ここの軸の下に示した、新しく、より新しい市場を開拓していこう、つくっていこうという観点のもとで活動しているものと両方ございます。一番下は新規市場創出のプラットフォームと書きましたけれども、より広く、例えば暮らしや食といったところで、30社、60社といった多数の会社に参加していただくようなプラットフォームとしての活動も行っております。
 次にいっていただいて、2020年の活動内容を大きく示しております。これは横軸で、こちらは企業名が大分入っておりまして見づらいかもしれませんけれども、多数の企業さんと一緒にやらせていただいている中身になります。
 2020年に新しく入ったところということで、黄色くマーキングしておりますけれども、事業コンセプト共創というフェーズで実施している会社、それから事業共同実証ということで進めている会社がございます。それから、下で事業化の促進に資する活動ということで、こちらも2020年には4種類増えておりました。このように数が増えております。
 少し御参考までに、上のところの細かい表、右上になりますけれども、民間とJAXAの資金負担額ということで、これは協力いただけた、情報が提供いただけた4活動についてのみになりますけれども、JAXAで負担したのは、0.28億円、3,000万円ぐらいの金額に対して、企業では4億円以上の投資になっていたということで、民間のリソースを活用した研究開発活動を共に創り上げることができた。そして、JAXAの投資に対して、企業の方がいっぱい使っていただいて、投資いただいているというところでのレバレッジ効果も大きいプロジェクトであると自認しております。
 こういった内容です。次にいっていただいて。
 これも2020年の状況です。黄色い矢印が下から、もともと、初期の頃というのでしょうか、新規市場が新しくできてくるというところからコンセプト共創して、地上実証、そしてサービスイン、市場投入するところまで成長をさせていくフェーズを表しながら作っている資料です。
 下にございますのは、先ほど御紹介した衣食住分野などは、まだプラットフォームで、より広い企業の方々に、宇宙を利用した、若しくは宇宙技術を活用した衣食住分野に入ってきていただくことを目指しております。
 真ん中の事業コンセプトになってまいりますと、宇宙アバターや、放送局、それから食といったところで具体的な成果が出てきている内容となります。特に、昨年度はコロナや災害といった状況に対しても、しっかりと、こういった技術、宇宙を利用した事業が成り立っていくというところが、昨年度の実績として出てまいりました。
 右上になりますけれども、軌道上実証それからサービスインといったあたりで、JAXAの技術を使ったベンチャー衛星が採用されて運用が始まっているであるとか、右になってきますと、次世代教育ということでしっかりと売上げが立っていく、ビジネスとして踏み出しているものも現れております。
 こういった内容でJ-SPARCは、幅広く3年間活動しまして、4年目も続けている状況です。
 次のページにいっていただいて、こちらはJAXAの認定ベンチャーです。今9社ございますけれども、JAXAの研究開発成果を使ったベンチャーが創業されているという活動となります。御紹介いたします。
 次に、JAXAの出資機能ということで、2021年より、科技イノベ法の改正によって、JAXAが出資できるようになりました。今年度からの機能として追加されました。ここに掲げましたのは、我々のミッションステートメントと申しますか、どういった目的で、方針でやっていくかというところで、JAXAの成果を最大化していく、社会実装の実現を貢献する。それから宇宙産業エコシステムの構築や異分野と糾合し、オープンイノベーションを促進するということ、これらによって産業競争力、それから基盤技術の維持を強化することを目的に出資を行います。
 次のページにいっていただきまして、この出資には3類型ございまして、JAXAはこの3種類いずれの機能も、法律上具備させていただいております。
 一つ目は直接出資で、これは、企業やベンチャー等に対してJAXAの成果を活用している企業に対する直接出資ができる。真ん中は間接出資といって、いわゆるファンドを間に挟んで出資するというやり方です。最後、TLO等と言っておりますけれども、成果活用法人に対して出資ができるという3種類ございまして、いずれも今年度から、ちょっとどこまでできるかというのは今年まだ検討中ですけれども、今年着手するか検討中ですけれども、3機能をうまく活用して、先ほどの目的のためにうまく使っていきたいと考えております。
 次のページにいっていただいて、最後、その他、産業振興に役立つようにということで幾つもの活動をしております。やっぱり宇宙実証機会というのは重要ですので、これを拡大提供できるような仕組みも進めておりますし、先ほどのベンチャーの活用、それから成果を活用したロゴの利用であるとか、それから下はもっと人材面等にも配慮といいますか、一緒にやっておりますクロスアポイントであるとか、ビジネス共創、それから越境プログラムといった内容を載せております。それから、右の下のような地方自治体との連携も進めております。
 このような内容を各種進めることによって、宇宙を使って経済成長、イノベーションの実現を目指しております。
 以上が、私からの報告となります。

【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 個人的には非常に重要と考えている分野でして、興味があります。

【伊達木部長(JAXA)】 ありがとうございます。

【村山部会長】 それでは、ただいまの説明について御意見、御質問……。それでは、鈴木委員からお願いします。

【鈴木(健)委員】 鈴木です。この出資の仕組みって、とても有意義なものになりそうだなあと思うのですけれども、こちらの原資というのは、どのように用意されて、幾らぐらいの規模をお考えになっているか。あとは、リターンがあったときに、また、出資のための原資に組み込まれるのか、そのほかのものに使われるのかみたいな、お金の流れのイメージとかスケールのイメージみたいなものがあれば教えていただければと思います。

【村山部会長】 そのあたりはいかがでしょうか。

【伊達木部長(JAXA)】 ありがとうございます。
 まず、出資に使えるお金というのでしょうか。これは政府からのガイドラインが出ておりまして、自己資金だけとなります。したがいまして、JAXAは交付金を頂いておりますけれども、そんなにそのお金は使えなくて、飽くまで自己収入という範囲の中から出資ができることとなります。そのため、金額の規模といいますと大分小さくて、なかなか、すいません、現状で金額をこれというのは、JAXAの中でどれだけ出資としての割当てをいただけるかというところはまだ調整中ではあるのですが、残念ながら多分世の中が期待するほどの多くの単位のお金が一気に出るということはございませんという回答でお許しいただけますでしょうか。

【鈴木(健)委員】 そうですね。あと、リターンが否が応にも出てくることがあると思うんです、配当であったりですとか。そういったものは、出資のための、また、枠の中にお金としてプールされるようなイメージでしょうか。

【伊達木部長(JAXA)】 そうですね。具体的にリターンがいつ出てくるかというのも、まだまだ計画をこれから詰めていくところではあるんですけれども、使い方につきましては、そのまま中に戻して、また回すというほどのレベルになるかというのも含め、JAXAの中と、それからガイドラインに定められている文科省さんであったり、内閣府さんであったり、関係省庁との確認もした上で、使い方については考えていきたいと思います。

【鈴木(健)委員】 分かりました。個人的な期待としては、正に、年平均成長率、CAGRみたいなところもすごく高い領域なので、順当に出資していくと大きな金額がリターンとして返ってくるのではないかなと。それが回るようになると、すごいすてきなことだと思うので、是非頑張っていただければと期待しています。よろしくお願いします。

【伊達木部長(JAXA)】 どうもありがとうございます。

【村山部会長】 ありがとうございます。
 この分野は結果が出る分野ですので、しっかり審査して、いいプロジェクトに投資していただければと思います。
 続きまして、松岡委員、いかがでしょうか。

【松岡委員】 松岡です。よろしくお願いします。
 半分ぐらい私の興味で聞いてしまうところがあるのですけど。すいません。
 今回、この御説明、JAXAの技術、あるいはJAXAと民間とで一緒に開発する技術、そういうものを活用して新たなビジネスを創出する、そういう話かと思って伺っています。一方で、私が常々感じていることとしては、宇宙ものの、例えばテレビであるとか、そういうメディアの宇宙関係の番組、そういう日常の宇宙に関係する番組とかを見ていても、なかなか日本発というものが出てこなくて、NASAの技術、NASAの映像、ESAの技術、あるいは映像、そういうものを基に外国の会社が番組をつくって、それを日本が輸入して放映しているみたいなものが非常に目立つことを大変残念に思っておりまして、そういう教育を核とした広報みたいなところというのがもうちょっと日本でも盛んにならないものかな、日本発の技術、情報にならないかなということを常々思っております。
 今日、御説明いただいた例えば7ページ目の右に、次世代型教育というものを載せていただいていまして、そういう例もあるかと思うのですけれども、現在あるいろいろなJAXAの成果、そういうものを使ったメディア関係のようなものはなかなかビジネスになりにくい土壌が日本にあるのかどうか。どうしてこういうちょっと残念なことになっているのかと常々考えていますが、今回の試みの中で、なかなかそういう話は上がってこないのか、上がってきているけれども難しいところがあるのか、その辺り、もしありましたら教えていただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
 以上です。

【村山部会長】 お願いいたします。

【伊達木部長(JAXA)】 ありがとうございます。より多くの方に見ていただけるという意味では、頂いたお話だけで2つあろうかと思います。海外のテレビ局などのメディアに使っていただけるような中身、日本発のどんな技術があるかというところでの中身をしっかりとつくっていくという観点では、我々のJ-SPARCであり、JAXAであり、しっかりと頑張っているところで、あとはいかに使ってもらえるかという、そこが2点目だと思います。それはメディア事業というのでしょうか、メディアの方々、既にいわゆるテレビ局とか新聞とか雑誌とかのメディアの方に、より宇宙を使っていただける、見ていただけるというところへの広がりという2ステップあるかと思います。その観点では、ちょっとこの資料にも書いておりますけれども、例えば宇宙放送局という形で我々から正にメディアとして発信していくということも考えております。これは大きな反響も頂いております。
 特に昨今ではユーチューブであるとか、SNSの活用などもしながら、しっかり多くの方々に日本の宇宙技術を見ていただきたいということで進めておりまして、幸いとても大きな反響を頂いております。ここにも書きましたが、50か国以上から550万を超える視聴をいただいということもございまして、注目は大きいと思っておりますので、こういった活動をより広げたいと思いますし、教育でも、ここで御紹介しましたのは宇宙飛行士の訓練方法を活用した教育という内容ですけれども、こういった面でも多くの反響を頂いておりますので、よりまだまだ広がっていく分野かなということで、我々も頑張って精進していきたいと思います。
 お答えになりましたでしょうか。

【松岡委員】 私としては、非常に大事だと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【伊達木部長(JAXA)】 こちらこそ、ありがとうございます。

【村山部会長】 ありがとうございます。
 非常に興味深い分野で、質問も非常に多いと思うのですけれども、ちょっと時間が押してきましたので、このあたりで切らせていただいて、次の議題に移らせていただきたいと思います。
 五つ目の議題は、革新的衛星技術実証2号機についてです。
 それでは、張替理事に説明をお願いいたします。若干時間が押してますので、説明は簡潔にお願いいたします。

【張替理事(JAXA)】 承知しました。張替です。
 革新的衛星技術実証機、公募で選ばれました8つの超小型衛星キューブサットと、あと6つの部品、コンポーネントを実証するためにJAXAが開発しております小型実証2号機の9つの衛星から構成されてまして、2019年度に開発に着手しました。来月10月1日の打ち上げを予定しておりますので、その状況を御報告させていただきます。
 御報告は革新的衛星技術実証グループ長の金子よりさせていただきますので、よろしくお願いいたします。金子さん、お願いします。

【金子グループ長(JAXA)】 革新的衛星技術実証グループの金子です。
 本日は革新的衛星技術実証2号機の状況について報告いたします。3ページをお願いできますでしょうか。次のページをよろしくお願いします。
 この革新的衛星技術実証プログラムの概要ですけれども、ここに書いてございますように、大学や研究機関等の新規要素技術の実証及び新規事業につながる技術の実証機会を提供するプログラムです。
 成果を我が国の衛星の短期開発・低コスト化と高度化、産業界の競争力強化につなげるとともに、宇宙産業の活性化、これはベンチャー促進でありますとか、優秀な人材育成等、新たなイノべーション創出につなげることを目的としております。
 次のページをお願いします。
 これは宇宙基本計画における本プログラムの位置づけです。次の下のプログラム目的ですが、大きく産業育成、利用拡大、ビジネス創出、競争力強化という大きな目的を持ってございます。
 次のページをお願いします。
 この革新プログラムは、基本的には通年公募で実証テーマを提案いただいていますが、その範囲は部品からコンポーネント、サブシステム、さらには100キログラム級の超小型衛星、それから、6Uまでのキューブサットといった範囲になっております。
 それから選定については、我々、オールジャパンの調整委員会というものを設置しまして、調整委員会による評価、計画に対する助言を受けて、搭載テーマを選定しております。基準としましては、プログラムの趣旨に合っているか、それから軌道上実証の意義が高いか、わざわざ地上だけではなくて軌道上実証で本当にやる意味があるか、それから技術的実現性は十分に見込めるのかといった観点から選定しております。
 次のページをお願いします。
 今回2号機ということでございまして、実は1号機は2019年1月にイプシロンロケット4号機で打ち上げられております。そこでは、もう既に1年間の運用を行って成果を出しておりますが、特に、右の真ん中に書いてございます革新的FPGA、これはNECさんでしたが、ナノブリッジFPGAの製造・販売を行う本格的な事業に向けて新会社を設立して、既に活動を開始しております。こういった成果が得られております。
 次のページ、7ページ目にまいりますが、ここからは2号機の概要です。
 真ん中の図は、今回、打ち上がる100キログラム級のJAXAが開発した小型実証衛星、それから、50キログラム級4基、それからキューブサット4基がイプシロンの上に搭載された図となっております。一番上の右側の黒い箱といいますか、四角いものが小型実証衛星2号機、RAISE-2と呼んでおりますが、6つの実証テーマを搭載しております。その横にありますのは50キログラム級の適用サットですが、その下に、更に超小型50キロ級4基、それから更にその下に、キューブサットが搭載されております。
 次のページをお願いします。8ページはRAISE-2の説明ですが、RAISE-2は今回イプシロンロケット5号機によって高度560キロの太陽同期軌道に投入され、約1年間の定常運用を行います。
 搭載されている先ほどの6つの実証テーマについては、ここに書いてございますような6つのものです。真ん中にRAISE-2の図がありますが、基本的には、左の図でいきますと、上が進行方向で、左の面が地球方向を向くといった構成になっております。
 まず、丸1のソニー製低消費電力マイコンボードですが、これはSPRESENSEというソニーのものですけれども、耐宇宙環境性評価を今回行います。次に右に参りまして2番目の多摩川精機になりますが、クローズドループ式光ファイバジャイロの軌道上実証、更に右に行きまして3番目ですが、天の技というベンチャー企業の小型・安価な国産スタートラッカの軌道上実証、それから下にまいりますが、左4番目、3Dプリンタで製作する廉価版のアンテナの軌道上実証ということで三菱電機さん、それから、丸5、東北大の軽量・無電力型高機能熱制御デバイスの軌道上実証、それから、これはJAXAになりますが、冗長MEMS IMUの軌道上放射線環境での実証という、6つのテーマを行います。
 次のページをお願いします。
 このページでは、RAISE-2には、実証テーマの実証意義をより高める目的で、JAXAコーディネートと呼んでいるんですが、JAXAが開発した機器も搭載しております。
 まず、先ほどの三菱電機さんの実証テーマ、3D-ANTをより評価するために送信機をつけようというのが、この3D-XTXです。さらに、そこにVCM機能というものを実現して発展的な送信機を適用するということで、更にデータ伝送速度向上を図る技術の実証を行います。
 それから下にまいりまして、窒化ガリウム素子を用いた充電制御器を搭載しております。これは窒化ガリウムFETを用いたバッテリー充電器で、高速動作が可能なスイッチング素子となっております。将来、PCUの小型化を推進するということで、今回技術実証を行います。
 次のページをお願いします。次のページは、今回打ち上げる50キログラム級の超小型衛星の説明になります。
 左側から、これは東京工業大学ですが、可変形状姿勢制御実証衛星ひばりになります。図にぱたぱたと羽根みたいなものがついていますが、これをぱたぱた動かすことによって、高速性制御、それから高指向安定性を実現するものです。
 それから下の2番目は三菱重工さんの複数波長赤外線観測超小型衛星、Z-Satと呼んでいるものです。近/遠赤外線を同時に観測して、熱源や温度分布を特定するための技術を実証するもので、将来インフラ監視、それから防災・安全保障用途への応用に貢献するものです。
 それから右上にまいりまして、3番目は川崎重工さんのデブリ捕獲システム超小型実証衛星、DRUMSと呼んでいるものですが、デブリ除去に必要な技術でありますデブリの接近技術とデブリの捕獲機構を実証するものです。図であります白い円筒形のものが分離しまして、それを母衛星が追いかけて、最後にはそこに接触するといった実証を行います。
 それから、右下は帝京大学の多目的宇宙環境利用実験衛星です。今回は、生物実験ということで、キイロホコリカビをこの衛星の中に搭載しまして、軌道上でそれを培養するといった実験を行います。
 次のページをお願いします。11ページ目ですが、これは今回搭載するキューブサットの紹介になります。
 最初が、千葉工業大学の宇宙塵(じん)探査実証衛星になります。そこに膜状のものが展開されていますが、これで宇宙塵(じん)や微小なデブリを観測します。
 それから、下の青山学院大学の速報実証衛星は、既存のEGM又はグローバルスターという民間通信衛星の通信網を利用して、リアルタイムで観測データを地上に送る実証を行います。
 それから、右上に行きまして、これは明星電気の高機能OBC実証衛星ということで、低コスト・高信頼性のキューブサット用のOBCを実証します。
 それから、右下にまいりまして、これは高知工業高等専門学校の2Uサイズのキューブサットになります。これは、全7メートルぐらいのアンテナを展開して、木星の電波を計測しようというものです。主に高専ということで、人材育成やその裾野拡大に貢献するものと思っています。
 次のページにまいります。
 12ページ目になりますが、これまでの開発状況を書いてございますが、2021年4月に、システムプロトフライトモデル試験を開始しまして、以降、様々なシステム試験を行いまして、8月中旬に開発完了を終えております。その後、内之浦へ輸送しまして、現在、射場作業を終えて、8月末に納入前審査を行っております。その後、ロケットへ引き渡して、9月に、主に追跡管制、運用に関する最終確認審査を終えております。
 それから、超小型のキューブサットの状況ですが、超小型衛星・キューブサットについては、開発を既に完了しまして、8月中旬に内之浦に順次搬入しまして、8月下旬にロケット側への引渡し、それから、ロケット構造部への搭載を完了しております。2021年10月1日に打ち上げ予定です。
 次のページをお願いします。
 これは運用計画を書いてございますが、まず、クリティカル運用ということで、基本的には衛星分離の安全モードを確立すると。そして定常姿勢の確立ということで、これに約1.5日、その後、バス機器、それから実証テーマの初期機能を確認する初期段階が約1か月、それから定常運用ということで約1年の運用を行います。
 下の図は、地上系も含めた運用システムになります。右上の衛星から得たテレメトリーを左側に書いてございますように地上局で受け、これを受信して処理するといった流れが書いてございます。
 次のページ、最後のまとめです。
 RAISE-2はシステムPFTを完了し、射場作業へ輸送、そしてロケットへの搭載が完了し、現在、打ち上げが可能な状況です。それから、超小型衛星・キューブサットも同様な状況です。
 以上から、革新2号機は1号機に引き続き、新規技術の実証及び新規事業につながる技術の実証機会を提供するための準備が整っていると考えております。
 参考に最後のページに3号機の状況を示しております。3号機は既にテーマが選定されておりまして、今開発に向けて実施中です。
 資料の説明は以上になります。

【村山部会長】 ありがとうございます。
 ただいまの説明について御意見、御質問がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。今のところ手は挙がっていないようですが、いいでしょうか。山崎委員、お願いいたします。

【山崎委員】 こうした取組はとても大切だと思います。ありがとうございます。例えばボトムアップでこういった実証を望んでいる方と、あるいはトップダウン的にJAXAさんなり、戦略的に実証しながら技術蓄積をしていきたいというバランスが大切だと思いますので、そのバランスをとっていただければということと、あとは軌道上実証機会が、このような技術実証衛星のほかにも、例えばISSでの実証機会など、様々な形があると思います。そのあたりは、広い意味での軌道上実証ということで、どこが相談窓口になったとしても、ここでは駄目でしたけれども、こういった機会があるだとか、橋渡しのようなものはされているのかということを、是非お伺いできればと思います。

【村山部会長】 お願いいたします。

【金子グループ長(JAXA)】 最初の御意見ですが、今回の革新プログラムはボトムアップということですけれども、やはり、トップダウンも必要で、そちらは、新しく刷新プログラムというのが立ち上がっていますので、そちらで行うものと考えております。JAXAとしては両方を進めていくことを考えています。
 それから、窓口は、今回、革新のプログラムで公募してきまして、評価するときも、我々、密に調整しまして、もし駄目な場合は、ほかの有償の利用とか、そういったものを紹介したりしております。

【山崎委員】 かしこまりました。引き続きよろしくお願いいたします。

【村山部会長】 ありがとうございます。
 窓口というのは非常に重要で、ここが分からないと宇宙は敷居が高いとか思われがちですので、是非そのあたりは努力していただければと思います。ありがとうございます。
 ちょっと5時終了予定がかなり押していまして、若干延長することになるかと思います。
 それでは、急いで次の議題に移りたいと思います。六つ目の議題は、イプシロンロケット5号機の打ち上げについてです。
 それでは、JAXAの布野理事から御説明をお願いいたします。説明は簡潔にお願いいたします。

【布野理事(JAXA)】 JAXAの輸送系担当理事の布野です。
 イプシロン5号機に関しましては、本日、午前中にカウントダウン移行前の審査を実施いたしまして、10月1日の打ち上げに向けて、カウントダウン作業移行可能と判断したところです。これまでのイプシロン5号機の状況につきまして、井元プロマネから御説明させていただきます。

【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 それでは、井元です。
 資料をめくっていただきまして、右下1ページをお願いします。こちらはイプシロンロケットの全体計画を示しておりまして、イプシロンロケットはステップ・バイ・ステップで開発を進めているところです。
 この5号機につきましては、第1段階の開発成果を適用したものです。さらに並行して、H3ロケットとのシナジー効果を発揮して国際競争力を強化する、イプシロンSロケットというふうに我々は称していますけれども、その開発も進めているところです。
 2ページをお願いいたします。
 こちら先ほど金子グループ長から説明がありましたとおりですけれども、4号機につきましては7基の衛星を搭載しておりました。5号機は9基の衛星ということで、ここが一番大きな特徴になっております。
 次のページをお願いいたします。
 その9基の衛星に対応するために搭載構造、複数衛星搭載構造というふうに称しておりますけれども、こちらの開発をしておりまして、その成果を簡単にまとめたものでありますが、説明は割愛させていただきます。
 4ページに移っていただきまして、4号機と5号機の機体諸元の比較であります。衛星搭載のところ、分離機構以外は基本的に同じでありまして、5号機では9基の衛星を搭載するための分離機構を備えているところです。
 5ページをお願いします。
 こちらが飛行計画とシーケンスオブイベントになっておりまして、太陽同期軌道ということで、右のシーケンスオブイベントで言いますと15番、RAISE-2分離は、打ち上げ後約52分、南米のサンチャゴ上空辺りで分離いたします。その後順次、中米から北米上空で残りの衛星を分離していくというシーケンスになっております。
 6ページをお願いいたします。
 そちらの衛星分離に関しまして、衛星分離時の衛星側からの要求に対応して、まずはRAISE-2を太陽方向に向けて分離いたします。その後、TeikyoSat-4、ASTERISCを分離いたしまして、近地点高度を下げるというシーケンスを行いまして、残りの6個の衛星を順次分離していく、最後、NanoDragonを分離してミッションを終了するという計画になっております。
 7ページをお願いいたします。
 こちらが射場作業の準備状況になりまして、各段モーターを搬入いたしまして、9月23日、Y-0リハーサルを良好に終了しております。あしたから10月1日の打ち上げに向けまして、カウントダウン作業を実施いたします。
 8ページに移っていただきまして、こちらは写真になっておりますので、御確認ください。
 9ページ、こちらは複数衛星の搭載の写真です。
 10ページが、1段、2段、頭胴部搭載の写真になっております。
 最後に11ページを御覧ください。まとめといたしまして、5号機につきましては、繰り返しになりますけれども、9基の衛星を打ち上げます。
5号機の状況につきましては、本日午前中にカウントダウン移行前審査を実施しまして、あしたからカウントダウン作業を実施し、10月1日の打ち上げに向けて作業を実施していきます。
 簡単ではございますが、説明は以上になります。

【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 10月1日に打ち上げということで、最終段階に入ったわけですけれども、今の説明について何か御意見、御質問があればお願いいたします。いかがでしょうか。最終段階ということですので、余り質問も出てこない感じがいたしますので、いいでしょうか。

(「なし」の声あり)

【村山部会長】 それでは、次の議題に移りたいと思います。最後の議題です。内閣府の宇宙開発利用加速化戦略プログラム、スターダストプログラムと言われているものですけれども、これにより実施する文科省の戦略プロジェクトについてです。
 それでは、事務局から説明をお願いいたします。

【笠谷企画官(事務局)】 文部科学省事務局です。
 では、資料62-7について説明させていただきます。こちらは、宇宙開発利用加速化戦略プログラム、通称スターダストプログラムと呼ばれているものですが、こちらは内閣府が、昨年度、令和3年度予算で概算要求をして認められたものです。その結果、宇宙開発利用推進費ということで令和3年度の当初予算で13億円、令和2年度の補正で57億円、合わせて70億円の予算がついています。
 今、宇宙は、例えば文部科学省であれば研究開発、人材育成、また、総務省であれば通信系や、経済産業省であれば産業界との関連等、そのように各省によって担当している分野がもちろんありますが、昨今、宇宙開発が、例えば衛星利用や月面開発等、そのように割と各省庁が連携して取り組むプロジェクトがたくさん出てきていることもあって、内閣府が、各省の縦割りを排して連携して取り組むべきプロジェクトがあるのではないかということで、それらをきちんと推進していくために、内閣府でこのような予算をとられました。
 これらは内閣府の衛星開発・実証小委員会で、対象となる戦略プロジェクトを選定します。各省に対してどのようなものがあるのかをこの衛星開発・実証小委員会が聞いてきて、各省からもろもろ提案させていただいて、衛星開発・実証小委員会が採択する、戦略プロジェクトの決定をするということです。
 その結果、内閣府の予算ではありますが、それぞれ担当する省庁に予算が移し替えられて、そしてまた、それぞれの担当省庁から公募等によって委託して、実際の施策を進めていく予算の建てつけです。
 このような予算が70億円ありましたが、初年度は文部科学省において3課題を実施しているため、その状況について御説明させていただきます。
 2ページですが、一つ目は衛星用の通信フルデジタル化技術開発で、こちらは、前回6月の宇宙開発利用部会でETS-9の開発状況の報告をさせていただいたかと思います。その際に、要は通信のフルデジタル化を行うという説明がJAXAからあったかと思います。従前の通信衛星であれば、事前に地上のアンテナとやりとりを行うのですが、向き等が決まっている何か所かの固定されたアンテナとしか送受信ができませんでした。それらをフルデジタル化することによって、日本周辺の区域の中で、任意の点に集中して信号を送って、例えば、そこで需要が高まれば、そこに信号を集中させる等、任意の点、決まった点ではないため、必要な点を任意で結んで通信を行うことが可能になるということで、このフルデジタル化という追加ペイロードの開発を進めております。こちらは令和2年度の補正で30億円、令和2年度の補正のため、事実上今年度、令和3年度の初年度に30億円でこのフルデジタル化を行っております。ETS-9の打ち上げは、令和5年度のため、今年度、来年度、再来年度の3年かけて、この打ち上げに間に合うようにフルデジタル化も並行して対応していく施策です。
 続きまして、3ページです。
 衛星のデジタル化に向けた革新的FPGAの研究開発で、昨今、半導体が色々取合いになっているところもあって、車の生産が止まっている等、色々半導体の影響が社会的なニュースになっております。当然、宇宙分野もこの例に漏れず、当然衛星等のキーとなる部分には半導体を使っています。御案内のとおり、半導体の線の幅がどんどん細くなって、どんどん小さくなることは良いのですが、宇宙においては、当然地上と違って高い放射線があるため、それらが当たった場合、線が細いだけであれば全部故障してしまいかねないため、並行して放射線への耐性をしっかり組み合せていき、その上でより幅の狭いFPGA、半導体を研究開発していくことが大事でございまして、これらを開発することによって、宇宙衛星においても高機能のものをつくることができ、これは地上で使っている汎用的なものをベースに高放射線耐性化をすることによって、要は宇宙だけのものではなく、ちゃんと地上でも使えるものとなって、大きなロットでつくれるということでございまして、それによってコストの引下げができないかということも考えております。デジタル化に向けたFPGAの研究開発ということで、これは、今年度、来年度の2年間をかけて行います。
 4ページです。三つ目の課題ですが、私、冒頭の予算や宇宙開発利用部会でも何回か説明させていただいたように、今、月を目指すアルテミス計画が進められております。そのような中で、もちろん月にHTV-X等で物資を届けることや、月に拠点をつくることはもちろん大事なのですが、それらを支えるもろもろのものの中で、月との大容量の通信を支えることや、また、月の周りの測位等、月面での測位については、当然、今は月の周りに測位衛星は回っておらず、どのように月での測位を行っていくかという課題がございます。そのような中で光通信を行って、光通信のため大容量が期待されるため、光通信で月・地球間という超長距離での大容量通信の確保や、また、月面での測位技術・システムの構築ということで、月面での測位をどのように行っていくかという研究開発を5年程度かけて進めて、月面での活動をしっかり支えていこうと考えております。
 こちらは他省庁分も含めた今年度、1年目の内閣府採択状況の全体図です。こちらは内閣府の予算ではありますが、文部科学省へ付け替えてやっております。こちらは始まったばかりで、ある程度成果が見えてきましたら、また、利用部会の方々にも、成果の評価等、成果についてまた御審議いただきたいと思います。本日はこのような案件が始まっているということをまず御紹介させていただきました。
以上です。

【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 ただいまの説明について、何か御意見、御質問があればお願いいたします。いかがでしょうか。内閣府のプロジェクトということですけれども、いかがでしょうか。
 米澤委員。

【米澤委員】 米澤です。よろしくお願いします。

【村山部会長】 お願いします。

【米澤委員】 この研究の実施方法についてなんですけれども、実質、委託されるというようなことが書いてあるのですけれども、公募を考えていらっしゃるんでしょうか。

【笠谷企画官(事務局)】 申し上げます。まず、1件目のETS-9の、この追加ペイロード、フルデジタル化については、ETS-9をつくっているのはJAXAのため、こちらはJAXAとの随契で行っております。また、残りの2件については、文部科学省で公募を行うということで、機関の採択を進めているところです。

【米澤委員】 分かりました。どうもありがとうございます。

【村山部会長】 ほかはいかがでしょうか。いいでしょうか。
 もう手は挙がってないようですので、質問がないということで、これで終わりたいと思います。
 これで全てです。今日は長時間にわたりありがとうございました。本日は、プログラム全体と採択された研究開発案件の紹介が多かったのですけれども、これからそういうことについての進捗状況も含めて報告・審議していただければと思います。
 今日は時間が押し気味でしたので、ちょっと事務局とも相談しまして、もうちょっと余裕を持って議論ができるように設計したいと思います。
本日の議題は以上です。
 それでは、最後に事務局から連絡事項があればお願いいたします。

【笠谷企画官(事務局)】 事務局です。
 会議資料と議事録の公開について申し上げます。宇宙開発利用部会の運営規則に基づきまして、本日の会議資料は公開資料として既に文部科学省のホームページに掲載させていただいております。また、議事録についても公開となるため、委員の皆様に御確認いただいた後、文部科学省のホームページに掲載させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 事務連絡は以上となります。

【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 それでは、以上をもちまして閉会といたします。長時間にわたり、熱心な御審議、御議論、誠にありがとうございました。それではこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

 

―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課