宇宙開発利用部会(第53回) 議事録

1.日時

令和2年2月19日(水曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 3階1特別会議室

3.議題

  1. 令和2年度 文部科学省宇宙関係予算案について
  2. 国際宇宙ステーション(ISS)に提供するISS構成要素及び搭載物の安全性確認について
  3. 超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)プロジェクト終了審査の結果について
  4. 火星衛星探査計画(MMX)のプロジェクト移行審査の結果について
  5. 第26回アジア・太平洋宇宙機関会議(APRSAF-26)結果報告について
  6. その他

4.出席者

委員

部会長          白石 隆
部会長代理      青木 節子
臨時委員        井川 陽次郎
臨時委員        大西 卓哉
臨時委員        芝井 広
臨時委員        白井 恭一
臨時委員        高薮 縁
臨時委員        鶴岡 路人
臨時委員        永原 裕子
臨時委員        松尾 亜紀子
臨時委員                横山 広美
臨時委員        吉田 和哉
臨時委員        米本 浩一

文部科学省

研究開発局宇宙開発利用課長           藤吉 尚之
研究開発局宇宙利用推進室長           倉田 佳奈江
研究開発局宇宙開発利用課企画官        原田 大地
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐       渡邊 真人
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐       岡屋 俊一

(説明者)
調査・安全小委員会
  主査                          木村 真一
経済産業省
 宇宙産業室
  宇宙企画一係長                  田村 幸平
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
  理事                          今井 良一
  理事                          國中 均
 第一宇宙技術部門
  SLATSプロジェクトマネージャ          佐々木 雅範
 有人宇宙技術部門 事業推進部
   部長                         上森 規光
 国際宇宙探査センター
 火星衛星探査機プロジェクトチーム
   プロジェクトマネージャ              川勝 康弘

5.議事録

【白石部会長】 それでは、時間になりましたので、宇宙開発利用部会(第53回)の会合を開催したいと思います。
まず、事務局から今日の会議についての事務的な確認をお願いします。

【事務局(原田企画官)】 本日は、宇宙開発利用部会にご所属いただいております17名の委員の先生方のうち13名の先生方にご出席いただいておりまして、運営規則に定める定足数の要件を満たしております。したがいまして、本日は会議が成立していることをご報告いたします。
次に、本日の資料ですが、お手元の議事次第の四ポツのとおりでございます。ペーパーレス会議としまして、各委員の先生方にお配りしておりますタブレットから資料へのアクセスをお願いいたします。アクセスができないなどのトラブルがございましたら、事務局までお申しつけいただければと思います。
本日の議題は五つございまして、議題2から4は審議事項、議題1及び議題5は報告事項となっております。
事務連絡は以上でございます。

【白石部会長】 どうもありがとうございます。

(1)令和2年度 文部科学省宇宙関係予算案について

【白石部会長】 それでは、最初の議題に入ります。最初の議題は、令和2年度文部科学省宇宙関係予算案についてです。文部科学省における令和2年度の宇宙関係予算案がまとまっておりますので、これについて、藤吉課長のほうからお願いします。

【事務局(藤吉課長)】 それでは、資料53-1に基づきまして、令和2年度の文部科学省の宇宙関係予算案につきましてご説明をいたします。
まず、次のページをご覧ください。文部科学省での宇宙関係予算についてというものが上にありますが、左側の宇宙関係予算としては令和2年度の当初予算と令和元年度の補正予算の案を合わせまして1,865億円となっております。これは対前年比で45億円増になっています。
なお、JAXA総額は、右にありますように、令和2年度当初と元年度補正案を合わせまして1,880億円ということで、これはJAXAしては、過去10年で最大の予算規模となっております。
その中身ですが、柱としては、H3ロケットですとか次世代の人工衛星等の安全保障、防災、産業振興への貢献という柱、また宇宙科学等のフロンティアの開拓という柱がございます。具体的には次のページをお願いします。
2ページ目は安全保障、防災、産業振興への貢献ということでございます。これにつきましては、まずロケット・衛星等ですが、ロケットではH3がございます。これは、現在次期基幹ロケットとして開発が佳境に入っておりますが、令和2年度に試験機初号機を打上げるべく予算を確保してございます。令和3年度には試験機2号機の打上げを予定しております。
また、二つ目はロケットの再使用に向けたCALLISTOプロジェクトでございます。これは新規でございますが、低価格でかつ打ち上げ能力の高い再使用型のロケットシステムの実現に必要な共通な課題のうち、日本に強みのある「誘導制御」ですとか「推進薬マネジメント」といったキー技術につきまして、ドイツ、フランスと協力して小型の実験機による飛行実証を行うというものでございます。ちなみに、小型実験機の飛行実験は令和4年度を予定してございます。
また、宇宙イノベーションパートナーシップということでJ-SPARCがございますが、これは、民間と技術開発、実証を伴う協業型の研究開発プログラムでございまして、民間とJAXAがそれぞれの強み、リソースを持ち寄って、新しいビジネスの創出を目指すというプログラムでございます。
続きまして、3ページですが、ここは衛星等でございます。
まず、先進光学衛星、レーダー衛星、ALOSシリーズでございますが、ALOS-3は、令和2年度打上げ予定ですが、これは我が国の防災・災害対策等を含む広義の安全保障とか、農林水産業、あるいは国土管理等に貢献する広域で高分解能な「光学衛星」を開発しております。また、ALOS-4ですが、こちらは超広域の被災状況の迅速な把握ですとか、地震・火山による地殻変動の精密な検出といったもののために現行のALOS-2で培った天候・昼夜を問わないで観測可能な広域・高分解能のレーダーセンサを発展させた「先進レーダー衛星」でございます。これは令和3年度打上げを予定しております。
また、もう一つの衛星ですが、温室効果ガス、水循環観測技術衛星です。これは、温室効果ガスの観測衛星は既にGOSATの初号機、GOSAT-2も打上がっていますが、そういったものを発展的に継続する後継機として、また海面水温、降水量等の計測による気候変動・水循環のメカニズム解明、台風の進路予測の向上、沿岸の漁場を含む漁海況の情報の高度化、これらに貢献するために、現在のGCOM-W――「しずく」と言っていますが、そこに搭載しているAMSR2という観測センサーを高度化させて打上げることでございます。これは令和5年度打上げを予定しております。
また、下はSSAとデブリですが、宇宙状況把握(SSA)システムの構築ということで、これにつきましては、デブリの増加等による宇宙の混雑化等のリスクに対応するために、防衛省等々関係省と連携して、令和5年度までにSSAシステムを政府一体として構築しようというものの一環でございます。具体的には、レーダーですとか光学望遠鏡等の改修、更新とかが入っております。
また、一番下、デブリ除去でございますが、これにつきましては、デブリの増加を防ぐために、まずは大型デブリ除去が効果的ということで、世界初の大型デブリ除去の実証を目指そうということで、これは今年度から取り組みを始めておりますが、引き続き来年度も着実に推進していくということで、右の上に書いてありますが、まずは大型デブリに近づいて、観測・接近・相対静止、その後、実際に捕獲をしてリエントリ等をさせるということを考えております。
続きまして、4ページです。
4ページは宇宙科学等のフロンティアの開拓ということです。主なプロジェクトとして、国際宇宙探査、これはゲートウェイ構想等と言われていますが、ゲートウェイ構想ではいくつかの研究開発等で関連として、まずは「月周回有人拠点」ということで、アメリカが構想するゲートウェイ構想に貢献するべく、日本としての優位性であるとか、あるいは日本の産業にも波及効果が大きいものといった技術分野、これは有人滞在技術等ですが、これらを提供するということです。
二つ目は、新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)の開発です。現在、国際宇宙ステーションには「こうのとり」(HTV)が飛んでおりますが、これを改良いたしまして、宇宙ステーションへの輸送コストの大幅な削減を実現すると同時に、さまざまなミッションに応用可能な技術の獲得、そういった将来の波及性を持たせた新型宇宙ステーション補給機を開発するものです。これにつきましては、ゲートウェイ構想、月有人周回拠点への物資ですとか燃料の補給もこのHTV-Xで行おうと考えております。これにつきましては、令和3年度の初号機の打ち上げを目指しております。
続きまして、小型月着陸実証機(SLIM)です。これは、月にピンポイント着陸するということを目指したものです。これによりまして、高精度の月面着陸の技術実証を行って、将来の宇宙探査に必須となるような共通的技術を獲得したいと考えております。令和3年度打上げを目指しております。
続きましては5ページ目ですが、同じく月関係で月の極域を探査する計画でございます。これは、月、特に南極付近に水の存在があるのかないのかということで、その利用可能性を判断するためのデータの取得のために探査計画ということで、インド等との国際協力で実施するものでございます。インドがランダー、日本がローバー、そういった役割分担をしてやっていく予定でございます。
また、宇宙探査イノベーションハブですが、これ国内外、あるいは産学官から意欲のある方々を一堂に招集するハブを構築しまして、研究者間分野間の融合ですとか、あるいはユニーク、斬新なアイデアの反映ですとか、さらには宇宙探査と地上の産業双方に有用なシーズの掘り起こしですとか、そういったハブを起点とした地上産業にも有効活用できるような探査技術を獲得していきたいというものでございます。
また、国際宇宙ステーション、これは従来からの国際宇宙ステーション関係ですが、日本の実験棟の「きぼう」の運用等で113億円程度。また、国際宇宙ステーションに物資等を補給する「こうのとり」、これは今年最終号の9号機が打上がる予定ですが、これらの最終的な開発経費も計上してございます。
最後の6ページでは、宇宙科学等のフロンティアの開拓の三つ目ということで、まず火星衛星の探査計画(MMX)です。これは実は本日もご議論いただくものでございますが、その場でプロジェクトへの移行につきまして、ご了承を得られればという前提でございますが、今年度令和元年度にフロントローディングということで、クリティカル技術について集中して取り組んでまいりましたが、その結果を踏まえて今後具体的な計画に移行していきたいと考えるところでございます。
その下は、X線分光撮像衛星(XRISM)でございまして、これは「ひとみ」の後継ということでございますけれども、銀河団の高温ガスなどを従来の30倍以上の高い分解能で分光観測するもので、日本とアメリカと欧州の協力ミッションでございます。
最後に、技術のフロントローディングでございます。これは、今年MMXに特化したフロントローディングをしておりましたが、今後さまざまなプロジェクトに際して、あらかじめ必要となるようなキー技術の事前実証を実施するということです。この方法は非常に有用な手法だということをMMXでフロントローディングの経験通して今般、技術のフロントローディング化ということで、我が国が世界に「先駆け」て獲得すべき共有技術領域の研究開発を重点的かつ継続的に推進するということで、今回新たに予算要求させていただいたものです。
以上です。

【白石部会長】 どうもありがとうございます。
これについて、何かございますか。はい、どうぞ。

【永原委員】 ご説明ありがとうございました。「フロントローディング」に関しては、将来的に非常に有意義な制度と思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
ただし、フロントローディングに当たっては、例えばMMXにおいてそれにより実際どのような結果が得られて、どういうふうにミッションに生かされたのかという総括を明確にして、その有用性、単なる一般的な予算ではなくて、次のミッションにどのように貢献できたのかという点をもう少しクリアにするとよいかと思うのが1点です。
それから、もう一つ、別のことですが、アメリカ国内の将来計画が非常に流動的な感じを受けています。つまり1月末に下院から出された提案では、このアルテミス計画は大きく位置づけが変わるのではないかとか、スケジュールも数年ぐらい先送りになるのではないかと、かなり流動的な感じを持ちました。それに対して、日本はどのように対応していくのか。とりあえず来年度予算の中では、まだメインの部分がそのようなところではないのでよいかと思うのですが、今後その辺をどういうふうに対応して、予算的にもどこにきちっと配分すべきなのかということについての考えを少しお聞かせいただきたいのですが。

【事務局(藤吉課長)】 ご質問ありがとうございます。MMXのフロントローディングにつきましては、今日これからご審議いただく中で、どういうことをやったか、それからその成果について、こういう成果が得られたので開発に移行したいということを説明いたしますので、詳細は後ほどということでお願いします。
また、アメリカの国際宇宙探査の動きですが、永原委員がおっしゃるとおり、米国議会のほうでは、上院は従来のアルテミス計画を踏襲したような案を考えていますが、下院では月よりまず火星だということ、あるいは全体スケジュールを考えるということになっており、上院と下院で流れが少し変わってきております。
ただ、いずれにしても、NASA自体は当初の計画を着実に推進したいということもございまして、当然議会の動きは注視いたしますが、我々は別にアメリカの動きに流されるわけではなく、我々がやりたい月探査、月探査によって獲得したい技術、そういうものがありますので、それらを着実に推進するために、今回計上していただいた予算案を着実に実行していきたいと思います。

【白石部会長】 ほかに何かございますか。はい、どうぞ。

【高薮委員】 ご説明どうもありがとうございます。日本の自然災害の中で気候変動による経済損失は、去年と一昨年の大きな災害を除いても20年間に43兆円と、国連によって見積もられていますが、要するに1年間2兆円の経済損失があるという気候変動に対して、文科省での衛星観測は非常に年数が蓄積してきていますので、変動についても調べることができるような時代になってきております。温室効果ガスのGOSATでは衛星本体開発費用を環境省のほうで持つということで、それに水循環観測の測器であるAMSR3を載せることができて予算節約になりよかったなというところだと思うのですが、これだけでよいのでしょうか。もう少し気候変動対策に対する姿勢が見えるような予算にならないかなと常日ごろ発言をしているのですが、そのあたりについて何かご説明いただけますでしょうか。

【事務局(藤吉課長)】 高薮委員おっしゃるとおり、GOSATシリーズにつきましては、私ども文科省と環境省が連携をしていて、次号機についても開発を行う計画であります。ただし、気候変動全体に対する文科省の姿勢ですが、衛星はGOSATだけということも確かにご指摘のとおりです。ロケット・衛星につきましては、ほかにさまざまなプロジェクトもありまして、まずは「基幹ロケット」、あるいは「基幹的な衛星」の開発というのを優先せざるを得ないという事情がございます。
ただし、高薮委員がおっしゃるように、気候変動対策の重要性も感じておりますので、現在宇宙基本計画そのものの改訂作業があって、地球観測衛星をどうするのかという議論もございますので、関係省庁ともうまく調整をしてできることからやっていきたいと思っています。どうもありがございます。

【白石部会長】 では、米本委員。

【米本委員】 いくつか質問があります。
まず、H3ロケットについて、エンジンが2段階開発になったということを前回お伺いました。それに伴ってどれぐらい予算を増やさなければいけなくなったのでしょうか。
次に、再使用型ロケット実験機CALLISTOの予算について、今年度1億円が新規に認められました。令和4年に飛行実験を予定しているにしては、少な過ぎるのではないでしょうか。今度どのような予算措置になっていくのかということをお聞きしたいと思います。
そして、CALLISTOと連動してJAXAの再使用型ロケットの研究開発計画には、宇宙科学研究所のRV-Xがあります。その予算措置が明確になっていないのは,どのような理由からなのでしょうか。
以上3点をお伺いしたいと思います。

【事務局(藤吉課長)】 ご質問ありがとうございます。
まず、H3ロケットですが、確かに技術開発ものですので、全て順調というわけにはいかずに、ちょこちょことしたトラブルがございます。その中で、前回エンジン開発が2段階になったという説明をいたしましたが、それによってどのくらい総経費が増えたのかということですが、今データが手元にないので正確には申し上げられませんが、それほど大幅に増えることはないと聞いております。
二つ目の、CALLISTOの予算1億円が少ないのではないかということですが、CALLISTOは現在、ドイツとフランスと日本で約100億円のプロジェクトとなっており、大体3国で3等分の予定でございます。従って、日本の負担は30億円強ということになります。飛行実験の年度までに残りの約30億円をどうするのかということは確かに課題でございますが、再使用型ロケットのための飛行実験は、非常に重要だと思いますので、この予算をぜひ確保していきたいと考えています。
また、CALLISTOは、「主なプロジェクト」ということで載せておりまして、特に新規ということでご紹介いたしましたが、RV-Xにつきましては、当然JAXA全体の研究開発の中で予算計上されているということです。

【白石部会長】 よろしいですか。ほかに何かございますか。

【各委員】 「なし」

【白石部会長】 なければ、次の議題に移りたいと思います。

(2)国際宇宙ステーション(ISS)に提供するISS構成要素及び搭載物の安全性確認について

【白石部会長】 二つ目の議題は、国際宇宙ステーション(ISS)に提供するISS構成要素及び搭載物の安全性確認についてです。調査・安全小委員会において、ISS搭載型ハイパースペクトルセンサ(HISUI)にかかわる安全審査について、調査審議が行われましたので、小委員会の木村主査から報告お願いいたします。

【調査・安全小委員会木村主査】 ありがとうございます。調査・安全小委員会の主査を務めております木村でございます。検討結果について、ご報告させていただきます。
資料は資料53-2-1、それから53-2-1の付録として2点ほどございます。また付表がついております。さらに資料53-2-2とあります。これらの資料で説明させていただきます。
まず、資料53-2-1をごらんいただきたいと思います。
1ページ目ですが、こちらに調査審議の概要、それから方法について書かれています。これらはおおむねこれまでの調査安全審議を踏襲していますが、今回調査審議の方法を少し変えさせていただきました。これまでは1回の審議で全ての内容をフィックスするということで議論しておりましたが、非常に内容が多岐にわたっているため、委員会が長時間にわたってしまいます。また、ものによっては資料を追加で用意しないと、なかなか十分でないということもありまして、今回から初回の委員会で概要説明及び論点出しをして、その後書類審議を併用させていただく形をとりました。委員の方々から出た質問を書面で回答する形で、委員の中で共有しつつ審議を進めるというやり方です。
必要であれば、もう一回委員会を開いてフィックスするということにしましたが、おおむね全てのアイテムについて書面確認でクローズできたので、書面審議の結果等をもって委員会の結論とさせていただいております。このような形で、少し効率的に、また、必要な部分についてはより深く審議のほうを進めるということで試みをさせていただきました。
まず、結論に至る前に、付録1、2がございまして、そちらに内容が記載されていますので、そちらから説明させていただきます。
まず、付録1の2ページをごらんください。こちらにHISUIの概要が記載されております。
この内容は、経済産業省が開発を進めてきたISS搭載型ハイパースペクトルセンサ(以降HISUIと呼称)を国際宇宙ステーション(ISS)に取りつけて地球観測を行うことで、石油資源探査、あるいは金属資源探査のさらなる効率化を図るということを目指して実施される観測実証試験です。
HISUIの主要諸元及びハイパースペクトルセンサの概要が4ページ及び5ページに記載されております。詳しい内容は表をごらんください。
7ページにはISSへの輸送とISSへの取りつけについて記載されています。
また、運用上の電力供給ですが、その安全対策が8ページに記載されています。給電部分ですが、ISSへの輸送途中で温度管理をするために必要な給電を行う部分と、ISSに取りつけた後の運用に必要となる給電を行う部分の2か所の構成をとっていますが、その形態についての説明の記述なっています。
続きまして、安全審査の内容に移らせていただきます。資料は付録2のほうでございます。
6ページにFTAを使ったハザードの識別結果を記載しております。「搭乗員」または「ISS機能」の喪失、これらは「カタストロフィックハザード」で、搭乗員の負傷は、「クリティカルハザード」となり、これに至るハザード識別を行って、8件のハザードレポートを起草しました。その結果を7ページ目に記載しております。2件の「標準ハザード」検証結果を8ページ、6件の「ユニークハザード」検証結果を9ページから15ページに記載しております。さらに、ここの項目について、それぞれ妥当であるということを委員の間で議論し、確認しております。
さらに、16ページから22ページ、この詳細については付表1に記載されています。16ページから22ページの記載は検討結果の要約となっており、安全審査の基本指針に対する適合性評価を全項目について実施した記録となっています。この辺、細かくなりますので、説明は割愛させていただきます。
結論としましては、各フェーズにおけるJAXA安全審査において、ハザードの識別、それから制御方法の設定、検証結果の審査、安全解析の適切な実施といった安全審査のプロセスが適切になされているということ、また安全対策は基本指針に定めた各要件を満たしているという判断から、小委員会での調査審議の結果、JAXAが実施したISS搭載型ハイパースペクトルセンサ(HISUI)に関する安全審査の方法や結論は妥当であると小委員会としては評価いたしました。
以上のJAXAが実施している安全審査のプロセスですが、小委員会での審査は、このプロセスが適切に機能しているかどうかの確認を行うことであり、最終的に機能していると判断できると結論いたしました。
今の説明について資料2-2にポイントとしてまとめさせていただいております。
報告は以上でございます。

【白石部会長】 どうもありがございます。以上の説明について何かございますか。はい、米本委員どうぞ。

【米本委員】 「国際宇宙ステーション(ISS)に提供するISS構成要素及び搭載物の安全性確認」の7ページに記載の8件のハザードレポートについて、今回のミッション固有のハザードはどういうものなのか、あるいは今まで一般的に検討されてきたような標準的なハザードの範囲なのか、それらの対応も含めて説明戴けないでしょうか。

【JAXA上森】 JAXAで安全審査を担当していますので、ご説明させていただきます。今回のハザードは全体的に見て、特殊なものはございませんでした。7ページ目の表で言いますと、STD-6と7、これは過去の経験から13種類のスタンダードが並べてあって、その中から対応するものを選ぶというもので、一般的なハザードの識別とコントロールになります。コントロールについてもチェックマークをつけることでコントロールができるというもので、一般的なハザードです。
また、その下の丸2と書いていますのは、このHISUIのシステムに由来するユニークなものが6件ということですが、中身としては、壊れてはならないとか、圧力システムがあったときにそれが破損してはならないというような内容のもので、全部中身を分解しますと、今まで識別されて、過去いろいろなパターンで審議してきたものに合致します。従いまして特殊なものはなかったと理解しております。

【白石部会長】 よろしいですか。ほかに何かございますか。

【各委員】 「なし」

【白石部会長】 それでは、この件について、資料53-2-1にありますように、調査・安全小委員会からの調査審議結果の報告の通りに決定するということでよろしいでしょうか。

【各委員】 「異議なし」

【白石部会長】 どうもありがとうございます。

【調査・安全小委員会木村主査】 どうもありがとうございました。

(3)超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)プロジェクト終了審査 の結果について

【白石部会長】 それでは、次の議題に移ります。三つ目の議題は、超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)プロジェクト終了審査の結果についてです。JAXAから資料の説明をお願いします。

【JAXA今井】 JAXA第1宇宙技術部門を担当しております理事の今井でございます。
本日は、私どものほうから超低高度衛星技術試験機(SLATS)「つばめ」のミッションについて説明し、その後JAXAとしてプロジェクト終了審査を行いましたので、その結果について、ご報告をさせていただきます。報告は、プロジェクトマネージャを務めましたJAXAの佐々木から行わせていただきます。

【JAXA佐々木】 資料53-3について説明を実施。

【白石部会長】 どうもありがとうございました。今の説明について何かございますか。よろしいですか、鶴岡委員どうぞ。

【鶴岡委員】 説明ありがとうございました。二、三点お聞きします。一つ目は、今回のSLATSのミッションについてです。1から4まであり、それらが全て成功したということですが、1と2から4というのは若干性質が異なると思います。1は超低高度で運用できるということが一番の前提の部分、2、3、4は、超低高度で飛んでいるときに何ができるかということだと思います。
その上で今後について、この1が実証されたということですと、最後のほうの話にもありましたが、2、3、4でどういう可能性があるのかということになります。今回の結果を受けて、この2、3、4の中のプライオリティというか、有望さという観点で、後継のプロジェクトを実施する際に、どのような部分が重点になるかに関して、お考えはありますでしょうか。
第二に、それに関連して、4の実際の映像、画像での高分解能の図の件についてです。今回の話にはあまり出てきませんでしたが、「安全保障」目的で使えるのかというところが一つ論点になるのではないかと思います。
その際に気になるのは、現在のアメリカの偵察衛星、あるいは衛星センターなどで民間から買っているものとの比較です。SLATSで安全保障に有益な画像を撮ることができるようになった際に、他との比較で優位性が期待できるのでしょうか。解像度に関しては、おそらく今後センサーやカメラの性能を向上させていくということになるのでしょうが、使用目的によってどこまでを目指して解像度を上げていくかという方針も変わってくるはずです。
今回、低高度から撮ればより細かく見えるということが実証されたわけですが、ここから解像度をさらに上げるときに、何を目指すのか、そしてもし市場で買っているものより優れている点があるとしたら何かについてお聞かせください。
最後に、確認ですが、寿命が2年ということは、超低高度で2年間運用できるということですか。それとも全体2年の中、超低高度で運用できるのはごく一部の期間ということですか、教えていただきたいと思います。

【白石部会長】 どうぞ。

【JAXA佐々木】 まず、ミッション成果の表でご説明いたします。
丸1のところでございますが、まずおっしゃられたように、イオンエンジンを用いて実際に軌道が保持できるかどうか、この技術が獲得できたというのは、超低高度衛星の根幹になる技術でありますので、これは必須のものということで今回取り組んだものということになります。
次の丸2、丸3、丸4でございますが、やはり丸2の空力解析技術、これは実際に推進薬をどれだけ搭載すればどれだけの期間衛星が運用できるかということになりますので、実用衛星を実現するためには必須の技術ということになります。今回はあくまで試験という位置づけですが、今回の成果に基づいて、将来の実用衛星のミッション期間がより正確に把握できると、必要搭載推薬量もより正確に予測できるということで、次の後継機に反映できる技術ということになりました。
それから、丸3につきましては、原子状酸素でどれだけ材料が劣化するか、それから軌道上の原子状酸素がどれぐらいの環境なのかというところを評価するデータ取得でございますので、今回は試験なので劣化が進んでも、それは知見が得られたということで、その成果を将来の衛星に反映することができればいいと考えております。今回、材料として13種類のサンプルで劣化の評価結果が得られました。原子状酸素がどのくらいの量を照射されるかということも実際に把握できましたので、この結果に基づいて将来の実用の衛星を設計できると考えています。こういうものであれば十分原子状酸素に対して耐性があるということが確認できる基礎データが取得できたと考えています。
丸4につきましては、これも試験という位置づけになっていまして、実際に当初懸念した事項として、大気抵抗が大きいと計画した場所が適切に撮れないのではないかということです。軌道がずれて、それで姿勢も乱れて、さらに位置も乱れることによって計画したところが適切に撮影できなのではないかと懸念したのですが、今回の結果からすると、それなりの精度で目標地点を撮れることがわかりました。それから、イオンエンジンを噴射したときに画像が劣化するのではないかと懸念されたのですが、そういった問題はなかったということが確認できました。この知見に基づいて、将来の実用衛星を設計できるのではないかと判断できる基礎的なデータが得られたと考えています。
次のご質問で、画像の品質はどうなのかということですが、得られた画像は、撮影高度がいろいろ変わっていきましたので、この衛星の画質はどうなのか一概には説明しにくいところがありますが、180kmという高度であれば50センチの分解能が得られました。最終的に150キロの高度で撮像した画像では46センチの分解能の画像が得られたということで、米国の商業衛星のワールドビュー1あるいは2といったクラスの分解能に相当することを確認ができたと言えます。ワールドビュー3、4という、現時点、世界で一番高いレベルの分解能までは達成していませんが、1世代前の商業衛星と同じような画像を取得できたと言えます。それも20センチの口径の望遠鏡で実現できたという点は大きな成果であったと考えております。
今後、実用のミッションということになりますと、どういった形で我々が貢献できるかということは、政府の関係者の方々と調整させていただき、また民間でもこの技術を使いたいという事業者もいますので、そういった関係の方々と協議しながら、この技術を有効に利用していただけるように取り組んでいきたいと考えています。
3つ目のご質問の寿命の件ですが、これはあくまで試験のミッション期間として2年間という寿命を設定しております。これは高い軌道に投入して、そこから軌道を下げていくという計画の関係で、高い軌道で「太陽同期軌道」になるような軌道傾斜角に投入した関係で、軌道高度を下げると軌道面がどんどん変わってしまう、つまり回転してしまうという軌道になっています。この軌道の関係で、イオンエンジンが噴射できる位置に太陽電池パドルを向けられる期間は限られており、このような衛星コンフィギュレーションの制約で寿命が2年になったということで、将来の実用衛星につきましては、もちろん5年以上とか、通常の実用衛星で想定されているミッション期間以上のミッションを達成できるような設計にしていくという考えです。これは大気密度のデータが今回取得できましたので、そのデータに基づいて、適切に設計していきたいと考えています。

【白石部会長】 よろしいですか。ほかに何かございますか。

【各委員】 「なし」

【白石部会長】 もし、ないようでしたら、このプロジェクト終了審査結果内容について、了承ということでよろしいでしょうか。

【各委員】 「異議なし」

【白石部会長】 どうもありがとうございます。それでは、了承ということで部会の結論とします。

(4)火星衛星探査計画(MMX)のプロジェクト移行審査の結果について

【白石部会長】 次の議題に移ります。次は「火星衛星探査計画(MMX)」のプロジェクト移行審査の結果についてです。これについて、JAXAから資料の説明をお願いします。

【JAXA國中】 宇宙科学研究所所長の國中です。本年度、フロントローディングフェーズとしてMMX計画(Martian Moons eXploration program)を進めてきましたが、一定の成果が得られましたので、次フェーズに進めさせていただきたいという話を主にさせていただきます。
それでは、担当の川勝から説明いたします。

【JAXA川勝】 JAXAの火星衛星探査機プロジェクトチームのプロジェクトマネージャをしております川勝から報告いたします。
報告内容ですが、宇宙開発利用部会が実施フェーズ移行に関して行う事前評価に資するものです。JAXAでは、昨年末、火星衛星探査計画(MMX)についてプロジェクト移行審査を実施しました。その中で今回の審査の項目に合致する内容を中心に本日の報告を行います。
資料53-4に基づき説明を実施

【白石部会長】 どうもありがとうございます。それでは、これについて何かございますか。はい、吉田委員どうぞ。

【吉田委員】 非常に丁寧なご説明をありがとうございました。MMXのミッションの科学的な背景についても、非常に明確にご説明いただいて、しっかり検討されているということが大変よくわかりました。
また、技術的にも非常に新しくチャレンジングなところもあり、特に「はやぶさ」の1号機、2号機とは違って、対象は重力天体ではありますが、「タッチアンドゴー」ではなくて着陸をして、数時間の滞在中に、ロボットアームによってサンプルをとるというシナリオのもとで、フロントローディングの資料も拝見しましたが、いろいろとシミュレーション、あるいは実験的な検討もされているということだと思います。
一つ教えていただきたいことは、ロボットアームを使ってサンプルをとるということは、うまくいけば今後につながる非常に大きな新しい技術だと思うのですが、技術的にこれまでとは、つまり「はやぶさ」とは違って、かなり複雑になるので、いろいろなリスクが伴うのではないかと思います。単純に言うと、ロボットアームは関節がうまく回転しなかったときにどうなるのかとか、その場合のリスクをどのように検討されたのかということと、もし万一ロボットアームが機能しなくても、サンプルがとれるようなバックアップの手段についても検討されているのかと思うのですが、そういったことについて少し教えていただければと思います。

【JAXA川勝】 ありがとうございます。まず、ロボットアームはおっしゃるとおり、新しく高度な技術なので、慎重に開発をしています。ロケットアームの故障ということに関しては、例えば御説明された関節については、冗長構成を検討しています。つまり、完全に2重冗長というわけではなくて、自由度の観点で冗長になるような構成をとるということでやっています。そういうことで、まずロボットアームとしては、我々の信頼設計の基準上十分なものにしたうえで、我々がコントロールできない火星衛星の表面状況、例えば環境に関してどう考えているかという話を次にさせていただきます。
「リュウグウ」や「イトカワ」と比較して、我々の方が幸運なのは、表面環境についてある程度観測されていて、表面がおそらくレゴリスに覆われているだろうというような観点で、今回の目標や環境状況が設定されています。そういう観点で知見認識をした上で、コアラーでとれるところは、いろいろ無重力の実験も含めて確認しているところですが、万が一、その表面は砂に見えるけれども、中にかたい岩盤があるかもしれないということも考えて、米国から提供されているニューマチックサンプラーというものを別の方式として載せています。これは気体を吹きつけることで、舞い上がったちりを集めるということで、万が一我々のサンプラーでどうしても歯が立たない状態になったときでも成果を得るという対策を打っております。

【吉田委員】 どうもありがとうございました。

【白石部会長】 芝井委員、どうぞ。

【芝井委員】 宇宙科学をバックグラウンドとする委員から一つはコメント、もう一つは質問です。
一つ目のコメントは、大変いろいろなことが紹介されたと思いますが、「惑星科学」、あるいは「宇宙科学」の立場からすると、サンプルを地球へ持って帰ってくるということは大変価値が高い。文面で書かれていること以上にその価値は非常に高いということを感じておりますので、ぜひご努力いただければありがたいということが一つ目です。
もう一つは、27ページ目の費用に関してですが、宇宙政策委員会の工程表で想定されていた10年間で3機打上げる「戦略的中型衛星」とおっしゃったもの、この戦略的中型衛星を10年間で3機というときに想定していた開発費用が5割増しになっているわけです。これをどういうふうにお考えになってこの計画をやるのだということになったのか。宇宙科学全体の振興という点でどういうふうに考えればいいのかをお聞かせいただきたいと思います。

【JAXA(國中)】 宇宙科学研究所の所長からお答えしますが、JAXAとしては、科学的な意義のみならず、政策的な意味合いも含めて、この火星探査、つまり火星圏への探査ということを想定してございます。先ほど芝井先生からご指摘のあった10年間である規模のミッションを行うための宇宙科学に関する予算としては、中型衛星規模では300億円と設定しております。今回提示しましたこの464億円のうち、300億円相当が宇宙科学に寄与する分というふうに考えておりまして、残りの部分については、国際宇宙探査のストーリーの中での寄与と理解しましょうという整理を行っております。

【白石部会長】 永原委員、どうぞ。

【永原委員】 ありがとうございます。日本の限られた予算、あるいはこれによって獲得できる技術的な進展とかを考えた上で、非常に魅力的なミッションの提案をいただいたことは有意義だと思います。
その上で、科学の寄与部分ですが、サンプルが成功裏に地球に持ち帰られれば、この科学目標に大きく貢献できるわけです。今考えられているサクセスですが、その科学目標に対して離れていまして、このミニマムサクセスの設定の仕方、要するに実際着陸もうまくできなかった場合、あるいはサンプルもとれなかった場合はせめて火星周回することで得られた情報による成果がミニマムサクセスとして書かれているわけですが、ここについては、もう少し科学的価値を高めるようなミニマムサクセスクライテリアを考えることができないのかということが質問です。

【JAXA川勝】 ありがとうございます。このサクセスクライテリアについての我々の考え方を、MMXに限定されませんが、まず説明させていただきます。ミッションの意義・価値、それに対してどれだけの額が適切かということを考えるに当たって、参考にするのはフルサクセスであります。フルサクセスで得られるものに対して今回の投資が適切であるか、我々のほかのミッションに比較して決定されます。これがまずミッションを「やる・やらない」という意味での成功基準です。
もう一つ、これから我々は探査機を開発し、運用計画を立てていきます。この探査機の開発の中で例えばどういう部分について信頼性を厚くするか、冗長系を載せるか、あるいは運用でどういうようなバックアッププランを準備するかという判断をしていきます。そこの段階で照合して考えていく基準として、この「サクセスクライテリア」を使っていきます。その段階で初めてミニマムサクセスという部分がそれぞれの信頼性、運用計画の立て方の一つの基準として使われていくことになります。 そういう観点でいきますと、ミニマムサクセスとフルサクセスの意味合は、その意義・価値での差異というよりも、設計あるいは運用の中で大きなステップが踏まれる部分の差異というのが一つの見方になります。ということで、今回全体のミッションの流れを見ていく中で、まず火星圏に行く、それから大きくは取り上げませんでしたが、他の惑星の衛星の周りを周回して観測すること自体、木星の衛星等を含めて、今回が世界初になります。従いましてそこの部分を一つのステップ、ミニマムサクセスにすることにしました。それから、今回着陸の機能もつけていますので、ミニマムサクセスの項の一番下に記載されています「探査技術の獲得目的」にありますが、火星衛星の表面に着地するというところまでを第1ステップとして、ミッションとしての100点、この460億円に投資する価値に見合うミッション益としてはフルサクセスに書かれている内容であるということで整理をさせていただいています。

【白石部会長】 永原委員、どうぞ。

【永原委員】 御説明ありがとうございます。着地までがミニマムということですが、そうしますと、その段階で得られる科学的知見ですね、このことが科学目標として書かれている大きい火星衛星、特に内惑星への水や有機物の運搬といった課題に対して、どういうふうに貢献できるかということをもう少し明確に書いていただかないといけないかと思います。今ここで書かれているミニマムサクセスは極めて一般的なもので、小惑星探査に比べるとほとんど同じような内容で、ここをこれだけのミッションがあって、ミニマムサクセスが着地であるならば、その段階での知見に基づいたサクセスクライテリアがあってもよいのではないかと思います。今この場でお答えする必要はなく、ぜひ考えていただきたいという希望です。

【JAXA川勝】 はい、わかりました。

【白石部会長】 横山委員、どうぞ。

【横山委員】 ご説明ありがとうございます。大変興味深くお伺いしました。300億円部分は宇宙科学部分であり、残りの160億円部分は政策的・国際的な貢献で寄与するということでございますが、その160億円部分を何で評価するか、事前に設定しておく必要があると思います。
私自身は、これはやはり「科学ミッション」であるので、「科学」の評価を基軸として国際的な貢献ということも、資金の関係からあるかもしれませんが、それにぶれずに「科学」をしっかりやっていただきたいと思います。といいますのは、国際宇宙ステーションの問題は、やはり「科学」なのか「政策」なのかがグレーゾーンで外部から見ていまして非常に評価しづらいということになっています。せっかくの非常に期待も高い科学ミッションであれば、そうしたグレーゾーンを最初につくることなく、整理していただきたいということです。
そういう点で、先ほどのご説明の160億円部分の評価ということをどのようにお考えになっているのかお伺いできればと思います。

【JAXA川勝】 まず、この「成功基準」ということで設定しているものは、「惑星科学の部分」、及び探査機技術と呼んでいる我々がもともといた「宇宙工学の部分」で構成されています。従いまして、ミッションが終わった時点で評価する部分はまずこれらの部分が最初になります。
搭載ミッション機器として、特に今話をした国際宇宙探査に直接寄与する機器で、放射線環境モニタ装置等がありますが、これについては、今回はこのミッションの機会がMMXにあるので、その機会を活用して搭載するミッションというように設定していて、それはその目的で評価をすることになります。
ということで、ご質問に対する答えとしては、まずこのミッションの成功という意義の評価については、「惑星科学」、拡大しても「宇宙工学」の範囲で評価をしていくという姿勢であります。あと国際宇宙探査での寄与の意義については、どういう形でそこの部分を明らかな形にしていくかということについては、持ち帰って検討させていただきたいと思います。

【横山委員】 御説明ありがとうございました。科学の部分で突き抜けられれば、それが非常に大きな国際貢献にもなるはずだと思いますので、ぜひ科学の部分をしっかりとお進めいただくように応援しております。

【JAXA川勝】 はい、ありがとうございます。

【白石部会長】 白井委員、どうぞ。

【白井委員】 プロジェクトとしての魅力には何の異論もありませんが、31ページの移行審査結果概要の8番「教訓・知見」のところで書かれている1点についてご質問します。
具体的には、開発リスクの低減による請負計画化の実現と書いてある点です。宇宙の分野で請負契約という形態をとること自体がもともと極めてまれで、例外的だと思っているのですが、このようなチャレンジングなプロジェクトで請負契約にしたということは、率直に言ってかなり驚きでした。
これに関して二つ質問があります。
一つ目は、この「開発リスクの低減による請負契約化」と書かれていますが、これはJAXAにとってはそういうことになるのかもしれませんが、メーカー側、すなわち企業から見た場合、要するに開発リスクをたくさんとるという意味を持っているように聞こえます。そういう理解で正しいのかどうかという点です。
もう一つは請負契約であるといことは、企業の側にとっては何らかのゴール、つまり、業務の完了とか仕事の終了の内容が契約上規定されるはずです。ここで言う請負契約のゴールとして何を定めておられるのか、あるいはまだ契約はこれからなのかもしれませんが、その場合は想定されておられる内容をご教示ください。
以上の2点が質問です。

【JAXA川勝】 ありがとうございます。ここではMMXの話として説明しましたが、JAXAの中でこの数年の幾つかの大きなミッションの失敗あるいは異常状況を含めて、大きなプロジェクトの進め方の業務改革に関する話なので、詳しく説明させていただきたいと思います。
まず、一つは我々がプロジェクトを進めるに当たって、どのレベルまでリスクは下げれば我々が国に対して自信を持ってこのミッションを執行できるかというところから議論を始めました。その一つの象徴がメーカーでさえ請け負えないようなレベルのものは、まだまだプロジェクトの開発を始めるには時期尚早であるという基準になりました。従って、我々が開発に移行する前の活動、最後のフロントローディング活動も含めて目標にしていたレベルは、どれだけリスクを下げるかという明確な目標がメーカーにとっても同様のリスクレベルを目標に置いていたということです。
特に、請負契約の話では探査機システムメーカーの話に重点を置きますが、探査機システムメーカーが開発移行後の基本設計、あるいはエンジニアリングモデルの製作を始める前に全体を請け負えるというようなレベルに至るまでに考えるべきリスクは何かという話をメーカーとの対話の中でいろいろ明らかにしました。その点が二つありました。
一点目は、新しく導入する新技術について、基本設計やエンジニアリングモデル製作の中でいろいろとうまくいかないことが見つかって、予定以上の工数がかかる、予定以上の試験が必要になるというようなリスクがあるということです。
二点目は、こういう新しいミッションになると、運用も含めて全体がどういう形になるのか、要求の全貌がどうか、文章で書かれていても理解が不十分だと、その後に基本設計が始まった時点で「こういうことだったのか」となると、設計コスト等が膨らむというリスクがあるということです。
これら二点を重点に、フロントローディングの中での探査機システムメーカーの活動内容を定義していただきました。添付の参考資料の中に幾つか記載がありますが、通常では基本設計の中でやるレベルの詳細検討、画像航法、着陸誘導、あるいは着陸ダイナミクスの解析という新技術の部分について、それ相応の対価を払ってメーカーと一緒に検討をしてきたということが第一の活動になります。
二つ目は、探査系システムの仕様、これは探査機システムのハードウエアの仕様だけではなくて、運用の仕様についてもこの段階で定義をし、メーカーとの共通理解、このようなつもりで書いているが、ちゃんと意図が理解されているかというところで、それをブラッシュアップして、「これで全部要求はわかりました、設計は任せてください」という状況に持っていったということです。
その結果として、RFPに対して、二つのメーカーから請負で提案しますという提案が得られて、そこから選定することができました。我々のフロントローディング活動の中でメーカーと一緒に考えた課題定義の結果として、目標とするレベルまでメーカーとの合意も含めてリスクは下げられたものだと理解しています。
もう一つ質問のあったゴールですが、これも難しいところで、メーカーさんとして責任を持てる範囲はという議論も十分しました。メーカーというぐらいなので、ものづくりをする専門のところであります。ゴールは我々が設定した仕様に対して製品を製造し、それが良品であることを証明して、我々に納入するということになります。従いまして、今打ち上げ直後をメーカーからの納入の時点として、その後の初期運用、あるいは火星での運用というところでいろいろ起こることについては、JAXA側の責任範囲という切り分けをしています。メーカーとして良品を製造するということを請け負うという形態のレベルまで持っていくことができたということになります。

【JAXA國中】 ただいまご質問いただきましたこの「請負契約」化というところは、まさにこのMMXを創出するのに大変苦労したところでありまして、それのきっかけは、少し説明がありましたが、2016年に起こしましたアストロHの事故以降の業務改革でこういったことを実現するべく努力してきた成果でございます。宇宙科学が宇宙科学のための独善的な探査機づくりに終始してしまって、そこで得られた知見を宇宙科学研究所だけが所有しているという環境では日本の国力を強くするということには寄与していかないわけです。もちろんそのPDCAの時間サイクルはともかくとして、最終的にはここで培った最先端技術を日本の企業が取得して、企業が使えるような領域まで落とし込むことが最終的なゴールだという理念のもとで、こういったメーカーとの請負契約で物事を実現するという体制を現在つくりつつあるというところです。

【白石部会長】 よろしいですか。白井委員。

【白井委員】 企業側が受け入れたということがよくわかりました。「地上プラス」という話も一定の短い期間の時点まで、ということですね。

【JAXA川勝】 はい。

【白井委員】 まさか火星に行くまでということはないだろうと思っていたので確認をお願いする趣旨でした。よくわかりました。
あと、あくまでひとつの意見ではありますが、民間企業がとれないリスクをとるというのが国でありJAXAの役割じゃないのかなというのが私の個人的な思いではあります。つまり、民間企業が契約を受けてしまうと、民間側がリスクをとれる範囲というのは圧倒的に小さいはずなので、それを請負契約にするということでいいのか、という気持ちはあります。

【白石部会長】 ほかにございますか。どうぞ。

【芝井委員】 私も今の白井委員と同じ意見を持っておりまして、JAXAの國中宇宙科学研究所長の意見には同意はできません。ただし、これにはいろいろな議論がありますので、進めていただくということでよろしいのではないかと思いますが、根本的には同意しておりません。
以上です。

【白石部会長】 ほかにございますか。米本委員どうぞ。

【米本委員】 只今の質疑に関連して、質問があります。請負契約という形をとりながらも、全体のプログラムの責任はJAXA宇宙科学研究所の責任で進めていくと理解しています。採用された「プライム方式」のプライムとは、メーカーのことを言っているのでしょうか。全体責任を負うという意味でのプライムは、JAXA宇宙科学研究所であるべきではないでしょうか。この観点からご説明戴けないでしょうか。

【JAXA川勝】 資料中の短い文章では書き切れていないところがあるので、実際どういうような体制でどういうような責任関係でやっているかについて説明します。
「プライム」という名称はいろいろな場面でいろいろな使われ方をするわけですが、MMXではどのような形態になっているかというと、例えば探査機システムのバス部分の開発を担うのが三菱電機株式会社です。そのほかのミッション機器については、例えばサンプラー、カプセル等のミッション機器については、我々が直接各企業に発注し、企業で研究開発を行い、製品製作等を請負契約のもとで実施し我々に納入されます。我々がそれをシステムメーカーに支給し、全体をインテグレートして探査機として仕上げるというところまでをシステムメーカーである三菱電機が担っています。従いまして三菱電機はこういう観測用のカメラの開発だとか、サンプラーの開発だとか、カプセルの開発等のそれぞれ専業のメーカーが得意としている部分まで責任を負っているわけではないという形態になっています。
我々がどこのメーカーにどういうような仕様で何をつくるかという部分の責任を負い、ものづくりの部分をそれぞれ得意とするメーカーに担っていただき、全体をインテグレートする役は全体をとりまとめる作業についてはシステムメーカーに担っていただくという形態になっています。
先ほど申し上げたように、ものづくりのところまでがメーカーが担っている部分で、その後の運用をするという部分については、もちろん作業としてのいろいろ支援をメーカーから受けますが、JAXAが責任を持つというような形態になっています。従いまして開発ですね、製造・試験という開発の部分について、それぞれのメーカーが請け負える範囲でお願いしているというのが今の実際の形態となっています。

【白石部会長】 大分、時間が押してきていますが、ご質問がありますか?米本委員。

【米本委員】 MMX計画では、いろいろ新しい試みがある中で、価格競争による開発費の低減に至ったケースがほんとうにあったのでしょうか。

【JAXA川勝】 もちろん機器によって随意契約になっている部分もなくはないのですが、多くの場面で競争の構図もできましたし、一番大きなシステムの部分については、ほぼ対等のレベルで提案を求めるということが可能になったので、実際に効果はあったと考えています。

【白石部会長】 ほかに何かございますか。これについては、いろいろまだ皆さんご意見があると推測いたしますが、今日のところ、プロジェクト移行審査結果内容について、了承ということでよろしいでしょうか。よろしいですか。

【各委員】 「異議なし」

【白石部会長】 それでは、そういうことでよろしくお願いします。ありがとうございました。

【JAXA川勝】 ありがとうございました。

(5)第26回アジア・太平洋宇宙機関会議(APRSAF-26)結果報告について

【白石部会長】 それでは、次に五つ目の議題に入ります。第26回アジア・太平洋宇宙機関会議結果報告についてです。これは事務局からお願いします。

【事務局(倉田室長)】 それでは、お手元の資料53-5に基づきまして、昨年11月に開催いたしましたAPRSAFにつきまして、報告をさせていただきます。
1ページでございますが、昨年11月に、4日間にわたりまして名古屋で「新たな宇宙時代を拓く多様な繋がりの発展」をテーマにAPRSAFを開催させていただきました。今回は31の国・地域、そして9の国際機関から約500名弱の参加を得て開催いたしました。
結果を総括いたしますと、多様な参加機関を得るという一つのテーマのもと、産業界、今回はトヨタ自動車からの基調講演をいただくとともに、New Spaceの活動を紹介します「宇宙産業フォーラム」というものを今回初めての取り組みとして行いました。全体として、産業界からも初の参加を得まして、非常に幅広いご議論が行われました。
また、全体会合の中では、もちろん産業だけではなく「宇宙探査」ですとか「デブリ低減」、そういったアジア・太平洋地域でも関心が高まりつつある政策課題についても議論を行いました。
また、初の取り組みといたしまして、宇宙機関長と10代の高校生も含めての対話のセッションを設けまして、地球規模課題の解決に向けて宇宙技術がどう貢献できるのか、あるいは50年後の宇宙開発はどうあるのか、このようなことについても幅広い視点からの議論が行われました。
また、分科会ではそれぞれのテーマにわかれて議論が行われたわけですが、その中で新しいイニシアチブなども生まれてきておりまして、例えば衛星データ利用をどう農業や災害対策に使うかということについての議論から、新しい連携体制なども生まれているところです。
最後に、今回26回目ということで四半世紀を振り返りつつ、今後の新しい半世紀を見据えた当面の10年間の目標を定めた「名古屋ビジョン」というものを採択いたしました。
「名古屋ビジョン」では、3ページに書かれております四つの目標を確認しました。まずはアジア・太平洋地域共通の地上課題の解決にどう宇宙技術を活用していくか。そして、人材育成や解決力の向上、さまざまな課題に対する政策能力の向上。最後は冒頭にもありましたように、やはり産業界を含めたニュープレーヤーをどう取り込むか。これらにについて共同して取り組むということを確認し合いました。そのためにも、やはりAPRSAF自身が、始まった当初は宇宙機関間のネットワークであったわけですが、それが今産業界も含めて非常に多様な層の場になっていますので、そういった形でさらなる発展を行いつつ、さまざまな分野について取り組んでいくことを確認したところです。
このような中、参加者の反応ですが、今回このように産業界の方々も多く参加いただきましたので、政策課題に向けた議論を行う場としての高い評価、また宇宙におきましても、デブリの問題ですとか、いろいろと皆さんの宇宙の安定的、平和的な利用についても関心が高まっておりますので、そういうことを議論していく場としてAPRSAFの価値が再評価されているという意見を多数いただきました。
このような観点からも、今まではAPRSAFの次の開催国をこちらからお願いをして調整していたところもありますが、現在では、ぜひ自分たちの国で開催したいということで、開催希望が多数寄せられるような状況になっております。そのような中でも、4ページの下にありますように、次回はベトナム、そしてその次はインドネシア、またその次は現在オーストラリアで調整をしている、というような状況になっております。
今後でございますが、もちろんこのようにアジアの方々にも評価をされている場になっておりますが、日本としてこれをどう活用していくかという観点におきましては、やはり我々の宇宙利用技術のさらなる拡大ですとか、ひいては我が国の産業振興に貢献する場としていきたいと思っておりますし、この場を使って人材育成ですとか、あるいは国際的なプレゼンスの維持・向上に使っていくことを考えております。このような形で戦略を持ってこのAPRSAFを引き続き発展をさせていきたいと思っております。
なお、時間の都合上割愛させていただきますが、6ページ目と7ページ目に主なセッションですとか、具体的に立ち上げた取り組みなどの紹介をさせていただいております。この立ち上げた取り組みには、先ほどのデータ利用のほか、丸3にございますが、各国と宇宙を推進していくに当たっては、法整備もしていかなければならない状況でありますので、そういうところについてのノウハウの共有ですとか、国連に向けての報告書を共同で取り組みながら、一緒にノウハウの共有等をしていくこと。この取り組みをこちらにいらっしゃる青木先生にもご指導いただきながら進めているところでございます。
簡単ではございますが、以上でございます。

【白石部会長】 これについて、何かございますか。よろしいでしょうか。

【各委員】 「なし」

(6)その他

【白石部会長】 それでは、これで一応全ての議題が終わりましたので、事務局から事務連絡をお願いします。

【事務局(原田企画官)】 会議資料及び議事録の公開について申し上げます。本部会の運用規則に基づき、会議資料は原則「公開」とされておりまして、本日の配付資料は既に当省のホームページ上に掲載させていただいております。また、議事録につきましても公開となりますので、後ほど委員の皆様にご確認いただいた後に、当省のホームページにおいて掲載させていただきますので、ご協力のほどをよろしくお願いします。
事務連絡は以上でございます。

【白石部会長】 それでは、これで今日の会議を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

 

(説明者については敬称略)



―― 了 ――
 

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研究開発局宇宙開発利用課