宇宙開発利用部会(第51回) 議事録

1.日時

令和元年9月26日(木曜日) 15時00分~16時30分

2.場所

文部科学省 3階2特別会議室

3.議題

  1. 令和2年度文部科学省宇宙関係概算要求について
  2. 宇宙航空科学技術推進委託事業の取組について
  3. 次期宇宙基本計画、科学技術基本計画に向けた宇宙開発利用部会の考え方について(まとめ)
  4. 将来宇宙輸送システム調査検討小委員会の設置について
  5. その他

4.出席者

委員

部会長          白石 隆
部会長代理      青木 節子
臨時委員        井川 陽次郎
臨時委員        芝井 広
臨時委員        白井 恭一
臨時委員        鈴木 健吾
臨時委員        高橋 德行
臨時委員        高薮 縁
臨時委員        鶴岡 路人
臨時委員        永原 裕子
臨時委員        林田 佐智子
専門委員        藤井 良一
臨時委員        横山 広美
臨時委員        吉田 和哉
臨時委員        米本 浩一

文部科学省

大臣官房審議官                    岡村 直子
研究開発局開発企画課長               林 孝浩
研究開発局宇宙開発利用課長           藤吉 尚之
研究開発局宇宙利用推進室長           倉田 佳奈江
研究開発局宇宙開発利用課企画官        原田 大地
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐       渡邊 真人
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐       岡屋 俊一
 

5.議事録

【白石部会長】 時間になりましたので、第51回の宇宙開発利用部会の会合を開催したいと思います。
お忙しいところ、お集まりいただきありがとうございます。
最初に、事務局から今日の会議について事務的な確認をお願いします。

【事務局(原田企画官)】 本日は、宇宙開発利用部会にご所属いただいております17名の委員の先生方のうち15名の先生にご出席のお返事をいただいております。永原委員はちょっとおくれているようですが、運営規則に定める定足数の要件を満たしております。したがいまして、本日の会議が成立していることをご報告いたします。
次に、本日の資料ですが、お手元の議事次第の四ポツのとおり配付させていただいております。過不足等がございましたら、適宜事務局のほうにお申しつけいただければと思います。
事務局からの事務連絡は以上でございます。

1.令和2年度文部科学省宇宙関係概算要求について

【白石部会長】 どうもありがとうございます。
それでは、最初の議題は、「令和2年度文部科学省宇宙開発予算概算要求について」でございます。これについて、藤吉課長からよろしくお願いします。

【事務局(藤吉課長)】 それでは、資料51-1に基づきましてご説明いたします。
来年度の文部科学省の宇宙関係予算でございますが、ページをおめくりいただいて1ページ目で、全体像はこのようになっておりまして、基本的には宇宙基本計画に基づきまして宇宙安全保障の確保ですとか、あるいは民生分野における宇宙利用の推進、さらには宇宙産業・科学技術の基盤の維持・強化に積極的に取り組むということで予算を立てております。
また、今回、アメリカが構想しておりますゲートウェイ構想への参加に向けた取り組みについても配慮しております。
全体像は、大きく二つの柱がありまして、H3ロケットや次世代の衛星等の安全保障・防災、産業振興への貢献ということで、ごらんのようなロケット、衛星等の予算を要求しています。これについては後ほどご説明いたします。
二つ目の柱は、宇宙科学等のフロンティアの開拓ということで、国際宇宙ステーションですとか、あるいは月や火星探査といったものの予算でございます。
総額につきましては、右上に小さく書いてありますが2,020億円でございます。昨年よりも約3割増という予算要求でございまして、ここ10年の概算要求レベルでは最高額の予算要求となっています。
次のページからは具体的な中身でございます。安全保障・防災、産業振興への貢献ということですが、まずはロケット、衛星ということで、H3ロケットは現在、開発途上ですが、来年度に初号機を打ち上げようと現在、開発の佳境に入っております。これにつきましては、我が国の自立的な衛星打ち上げ能力の確保や国際競争力といった観点で開発を進めています。これには350億円で、かなり増額しておりますが、これは来年度の初号機打ち上げのための予算となっております。
また、もう一つの基幹ロケットでありますイプシロンロケットの高度化でございますが、これは国際競争力の強化を目的といたしまして、H3ロケットの固体ロケットブースターをイプシロンロケットの第1段モーターに適用するための開発を引き続き行っていきたいと考えています。
次に、昨今話題になっております宇宙デブリでございますが、この宇宙デブリの除去技術の実証ミッションというものを今年度から開始しています。これにつきましては次年度以降も継続的に予算措置していきたいということでございまして、世界初の大型デブリ除去の実証を目指して各要素技術の開発を行っていきたいと考えています。
次のページは衛星群でございます。まず、ALOS-3、4でございますが、ALOS-3は光学衛星です。これは来年度の打ち上げを予定しておりますが、広域かつ高分解能で観測するということで、広義の安全保障(安全・安心)、さらには農林水産業、国土管理といったものにも貢献したいと考えております。
「高分解能」といいますのは、現在の精度が2.5メートルであるところを0.8メートルまで高めようというものでございます。ALOS-4はレーダー衛星ですが、これにつきましては、現在ALOS-2が運用されておりますが、そこで培った技術をさらに発展させたレーダー衛星ALOS-4ということで、「観測幅」をこれまでの約4倍にするということで、令和3年度の打ち上げを予定しております。これらに必要な経費を盛り込んでいます。
続きまして技術試験衛星9号機(ETS-9)ですが、我が国の衛星の国際競争力を強化するという目標のもとに二つの柱、つまり「オール電化」と「大電力化」を実現する技術試験衛星を開発しています。これについても令和3年打ち上げということで、開発を加速するために予算要求させていただいております。
また、「温室効果ガス・水循環観測技術衛星」については、現在、温室効果ガスに関する衛星は昨年打ち上げたGOSAT-2がありますが、これを発展的に継続しまして、温室効果ガスの観測センサに加え、海面水温や降水量等の計測による気候変動・水循環メカニズムの解明、台風の進路予測の向上や沿岸漁場を含む漁海況情報の高度化に貢献するため、今般「しずく」のAMSR2を改良したAMSR3を搭載する衛星を開発するものです。これは令和4年度の打ち上げを予定しております。
次の宇宙状況把握(SSA)システムについては、スペースデブリ、あるいは地球に接近する小惑星等の探査に資するSSAシステムということで、防衛省等とも協力して、令和5年度までにシステムを構築したい検討しているものです。具体的には横にありますように、もともとレーダー、光学がございますが、それらの改修・改善といったものを中心に予算を組んでいます。
また、次の4ページは、宇宙科学等のフロンティアでございます。一つ目は、国際宇宙ステーション「きぼう」の運用等ということで、これにつきましては、従前同様「きぼう」の運用を、また、日本人宇宙飛行士の養成や宇宙環境を利用した実験の実施といったものに必要となる予算を計上しています。
今週、打ち上げに成功いたしました「こうのとり」でございますが、この「こうのとり」は今回8号機でしたが、来年の9号機が「こうのとり」の最終号機になります。その開発に必要な経費として予算を要求しています。
また、「こうのとり」にかわる新しい国際宇宙ステーションへの補給機HTV-Xですが、これにつきましては、現行の「こうのとり」を改良しまして輸送コストの大幅な削減とともに輸送能力の向上、さらには将来への波及性を持たせた機能をHTV-Xに乗せるべく開発を行っていきたいと考えています。HTV-Xの初号機は令和3年度に打ち上げを予定しています。
次のページの宇宙科学等のフロンティアにつきましては、冒頭に申し上げましたように今回アメリカが構想しておりますゲートウェイへの参加が決まった場合の予算を要求させていただいております。月周回有人拠点は約12億円、新規ということでございますが、ゲートウェイに対して我が国として優位性や波及効果が大きく見込まれる技術、例えば有人滞在技術等を提供するための予算ということで計上させていただいております。
また、月極域探査計画につきましては、月極域の水の存在量や資源としての利用可能性を判断するためのデータ取得、さらには重力天体表面探査技術獲得を目指したミッションをインド等と国際協力で進めたいと考えています。これも新規の要求でございます。
次の小型月着陸実証機(SLIM)は、従前から予算要求しているものですが、これも令和3年度にXRISMと一緒に打ち上げる予定です。これは月にピンポイントで着陸する重力天体着陸技術獲得も目指す実証プログラムです。
最後の6ページは探査関係ということで、火星の衛星探査MMXです。これは今年からフロントローディングという形で始めておりますが、火星の二つの衛星の由来を解明するとともに、原始太陽系における有機物・水の移動、天体への供給といった過程の解明に貢献するためのミッションで、来年度から本格的なプロジェクトに移行したいと考えています。
また、SLIMと相乗りで打ち上げるX線分光撮像衛星(XRISM)でございますが、これは銀河団高温ガスなどを従来の30倍以上の分解能で分光観測するものです。これに関する必要な経費を盛り込んでいます。令和3年度の打ち上げを予定しております。
最後に、技術のフロントローディングでございます。今年はMMXのフロントローディングをやっておりました。現在、大型プロジェクト等で、プロジェクト進行途中で壁にぶつかって手戻りが生じないようにフロントローディング活動をやっておりますが、今後こういったフロントローディングの考え方を少し広く捉えまして、技術のフロントローディングということで、プロジェクトに移行する前にミッションの実現に必要なキーとなる技術の事前実証を行うものです。これについては、例えば「冷凍技術」といったものを視野に入れて進めていきたいと思っております。
以上です。

【白石部会長】 どうもありがとうございました。これについて何か質問等ございませんでしょうか。林田委員どうぞ。

【林田委員】 温室効果ガス・水循環観測技術衛星の説明のセクションがちょっとわかりにくいので、質問させていただくのですが、温室効果ガスGOSAT-2云々とありまして、温室効果ガスの観測センサGOSAT-3に加え気候変動・水循環メカニズムの解明、台風進路予測の向上や沿岸漁場を含む漁海況情報の高度化に貢献するために、GCOM-WのAMSR2を高度化した次期マイクロ波放射計等を搭載すると読んだらよろしいですか。ここをそのまま読むと、何かGOSAT-2がAMSR-3に継承されるように読めてしまったので、GOSAT-3はどこにいったのだろうと思ったわけです。

【事務局(藤吉課長)】 おっしゃるとおりで、最近打上げたのはGOSAT-2で、その後継機のGOSAT-3と現在のAMSR2の後継たるAMSR3を一緒にするという趣旨ですので、今のご理解で結構です。

【林田委員】 そうなのですね。

【白石部会長】 ほかに何かございますか。藤井委員どうぞ。

【藤井委員】 どうもありがとうございます。宇宙科学研究所の予算の総額は、どのくらいの概算で出ているのですか。

【事務局(藤吉課長)】 宇宙科学研究所関係では大きくミッションやアンテナ整備といった予算と、それに関係するもろもろの基礎的な予算があるのですが、我々が一般的に言っている宇宙科学関係予算については、今年は145億円で来年度は172億円要求でございます。

【白石部会長】 ほかに何かございませんか。高薮委員どうぞ。

【高薮委員】 全体を見渡させていただいて、現在人類が直面している気候変動問題に対する予算が、この概算要求の中では、ほとんど温室効果ガス観測衛星に対するものしかなく、問題の大きさに比べて大変少ないように感じているのですが、そのあたりはどのように捉えたらよろしいのでしょうか。

【事務局(藤吉課長)】 気候変動という問題の大きさに対して予算が少ないということですか。

【高薮委員】 はい、そういうことです。

【事務局(藤吉課長)】 確かに気候変動は非常に大事な問題で、このGOSATにつきましては予算の多寡というよりも、現在GOSAT-2が打ち上がっておりまして、今年2月から定常運用しておりますが、その後継機のことです。GOSATの後継機は、宇宙という手段を使って気候変動を観測するという意味では非常に重要だと思っていまして、今回GOSATの初号機と2号機の成果として、今年のIPCCで各国が排出する温室効果ガスの測定に関して、宇宙から観測したデータも使えるようにガイドラインを改正できましたので、これらを追い風にして、今後とも宇宙から見る気候変動、温室効果ガスの排出というのを科学的な目からエビデンスを持って示すということで環境省とも同じ方向で実行しています。これについては進めていきたいと思っております。

【高薮委員】 ありがとうございます。温室効果ガスをはかることは非常に重要ですし、GOSATはそのように日本としても主導的なよい役割を担っていくと思うのですが、気候変動問題というものは温室効果ガスを計測すれば済むものではなくて、それが我々に降雨や熱波、干ばつとか、非常に危機的な問題をもたらしているわけですが、それらへの対策にも衛星観測は非常に有益なのです。そのあたりのことがここではAMSR3のマイクロ波放射計を搭載させるというだけのことしか見えてこないのですが、それ以外については対策についても考えていらっしゃるのですか。

【事務局(藤吉課長)】 これに掲載しているものは主なプロジェクトということで、気候変動に関する「しきさい」という観測衛星も実は上げております。そういったものも既に打上がっていて運用しておりますが、それらの運用経費も当然積んでおります。従いまして、これだけが気候変動対策ではないということです。

【高薮委員】 それはよくわかりますが、概算要求としてこのように文科省から出てくるものの中の説明として、今上がっている「しきさい」のような衛星の今後に対する概算要求の考え方はどういうことなのかという質問です。ほかにももう少し考え方が見えるような概算要求の形であったらなと思っています。

【事務局(藤吉課長)】 どうもご指摘ありがとうございました。

【白石部会長】 横山委員どうぞ。

【横山委員】 ご説明ありがとうございます。5ページのゲートウェイ計画についてお伺いします。以前、部会長代理にも大変お手数をおかけいただき、また事務局の皆さんも整理に頑張っていただいたところだと思いますが、どの程度の予算がついてJAXAの中のどの部署の方がどれくらいの人数体制でゲートウェイを来年度にお進めになるのか、大体の規模感と体制を教えていただけますでしょうか。

【事務局(藤吉課長)】 そういう意味で定量的にはかったことがないので、ちょっと細かいところはすみませんがお答えができません。

【横山委員】 いつかお答えいただきたいと思うのですが、我々が前回心配したのは、これに予算がついたとして、ちゃんと計画が練られて動くのかということを皆さんご意見されたと思います。ぜひ体制等についても今後ご報告いただけると助かります。
以上です。

【事務局(藤吉課長)】 了解いたしました。

【白石部会長】 ほかにございますか。芝井委員どうぞ。

【芝井委員】 参考資料1のご説明はされましたか。これからしていただけるのでしょうか。

【事務局(原田企画官)】 参考として内閣府が集計した政府全体の来年度概算要求でございます。参考としてお配りさせていただいているものでございます。

【芝井委員】 それでは、今これに関しての質問があるのですが。

【事務局(原田企画官)】 我々が今、承知している中身は主に文科省部分でございますが、政府全体でこういった規模感になっているというご紹介をさせていただいています。

【芝井委員】 要するに宇宙基本計画工程表という年次計画があって、文科省部分だけでいいのですが、それと今回の概算要求の内容は工程表をきちんとこなしていけるように処置されているのか。あるいは、どうなのかということは、一番大きな判断だと思うのですが、このあたりの状況はどうなのでしょうか。

【事務局(藤吉課長)】 我々は、毎年改訂されております工程表の内容にのっとって予算要求しております。

【芝井委員】 そうすると、このような表で文科省部分だけの年次計画、年度ごとのグラフがあればわかりやすいのですが、文科省だけのものは載ってないのですか。右の円グラフは載っていますが、棒グラフは載ってないのです。補正予算も含めて毎年、文科省関係でどのくらいということがもしわかればありがたいと思いました。

【事務局(原田企画官)】 後ほど委員の先生方にお配りします。

【白石部会長】 今ここにはないというだけですね。

【事務局(藤吉課長)】 今は用意しておりませんが、後ほどお渡ししたいと思います。

【白石部会長】 ほかに何かございますか。米本委員どうぞ。

【米本委員】 デブリ除去の実証ミッションについて1点質問があります。この研究開発は、現在、各要素技術の研究段階ということですが、デブリ除去を実証する衛星の打ち上げはいつ頃に計画され、今後どのように進められるのかをお聞きしたいと思います。

【事務局(藤吉課長)】 ご質問ありがとうございます。2ページの下のデブリについては、今回、民間の方々の活力を十分生かしてという趣旨でございまして、ロケットそのものの打ち上げは民間で調達していただくというたてつけにしております。
また、ここには書いてありませんが、このミッションは2段階に分けてやろうとしております。令和4年度までのフェーズ1とそれ以降令和7年度までをフェーズ2ということで、最初のフェーズ1ではデブリを観測するところまでです。フェーズ2、令和4年度から令和7年度までのものについては、実際に観測したデータ等を踏まえて、大型デブリを実際に捕獲し、除去させるところまでをしたいと考えております。

【白石部会長】 よろしいですか。ほかに何かございますか。

【各委員】 「なし」

【白石部会長】 ないようですので、それでは、次の議題に移りたいと思います。

2.宇宙航空科学技術推進委託事業の取組について

【白石部会長】 次は「宇宙航空科学技術推進委託事業の取組について」でございます。これも事務局からお願いします。

【事務局(藤吉課長)】 それでは、資料51-2に基づきましてご説明いたします。委託事業のこれまでの成果と今度の取り組みということでございます。この委託事業は、左にありますように宇宙航空分野の裾野拡大、あるいは宇宙利用産業の発展といったものを目的として開始したもので、平成21年度からやっています。
また下にありますように、一つ目は将来を支える人材の育成、二つ目は衛星データを活用した新たなソリューションの提供、そして、3点目はこれからやろうと考えております新しいメニューですが、今までの地球低軌道の超小型衛星等で培われた大学や民間企業の技術を活用して、月あるいは月以遠での持続的な探査活動の実現に向けた基盤技術の開発を新たにメニューとして加えたいと思っております。また、一番下は大学、研究機関を中心とした研究拠点の形成といった趣旨で進めてまいりました。
具体的な中身としまして、2ページから今までの成果をご説明いたします。
まず、人材育成に関してですが、主な成果は二つあります。一つは、慶應大学にお願いして29年度までやっていただいた社会課題解決型の人材育成プログラムというものがあります。これは宇宙インフラを利活用いただいて、アジア各国におけます社会課題、例えば自然災害や交通、さらには農業といった地域に根差した社会課題の解決に取り組んでいただくことを通じて、学生たちがみずから学び、教え合うような課題解決型の人材育成を実施してまいりました。
成果といたしましては、日本を中心として17カ国、200名以上の人材を輩出し、また、10以上のプロジェクトを実施いたしました。さらに、そのプロジェクトの中から世界銀行等の支援を受けて、国内外で4件の事業化が進んだという成果がございます。
また、人材育成の二つ目は、京都大学にお願いして27年度までやっていただいた宇宙地球教育プログラムでございます。これは将来の宇宙地球科学に携わる人材育成ということで、取り扱いが簡易な立体型の表示装置、表示コンテンツといったものをつくるということで、右の絵にありますような半球スクリーンにパソコン及びPCプロジェクタを組み合わせたものです。これは学校や科学館におけるような取り扱いが易しい卓上型のシステムで、球形スクリーン等を用いた立体表示システムを開発しました。また、その表示コンテンツも開発いただきました。これらは、さまざまな教育プログラム、さらには教員の研修プログラムにも活用されています。
続きまして、3ページは衛星データ利用の技術の例ですが、これにつきましては、最初は徳島大学にお願いした機能性宇宙食の開発というものでございます。これは、宇宙飛行士が安全かつ長期に宇宙に滞在できるような機能性宇宙食を開発するものです。
この成果としまして、実際にISS実験を行い、そこで得たサンプルを用いて解明した無重力状態での筋萎縮のメカニズムに基づいた大豆イソフラボンや茶カテキンなどの食材の機能性を同定、つまり筋萎縮を誘導するような因子を改善するような食材を同定して、民間企業とも共同で、こういった食材を用いた骨や筋肉の萎縮等に有効な機能性宇宙食を開発しました。
これは、無重力のみならず地上で寝たきりや加齢による筋萎縮の予防、さらには治療に至るまで波及効果が広がる可能性があるということで、内閣府が進めておりますが、宇宙開発利用大賞を平成30年に受賞しております。
また、下の研究機関でございますが、圃場情報の提供システムです。これは衛星データを活用して、水稲の生育状況や気象情報のデータベース化を行いまして、圃場の管理を支援するものです。実際にJAの北越後やみなみ魚沼といったところでシステムとして導入されています。
4ページの上は衛星データ利用についてです。東大に行っていただいた気象衛星「ひまわり8号」を活用したアジア太平洋地域の林野火災の準リアルタイム観測でございます。これにつきましては、「ひまわり」のデータ活用のための基盤技術のアルゴリズム開発を通じまして、アジア太平洋地域の林野火災を準リアルタイムで観測ができる技術であり、実際にはタイやベトナムにおきまして林野火災や干ばつといった情報を提供するウエブサイトが開設されております。
また、下は高知高専でございますが、GPS津波計による「早期津波警戒システム」です。これは「きく8号」と「みちびき」を活用したGPS津波計によりまして、洋上の海面変化のリアルタイムデータを常時継続的に測定できるシステムを開発したものです。
また、成果の最後の5ページですが、これは拠点形成というメニューでございまして、二つご紹介いたします。一つは超小型衛星開発を中核とした理工学研究拠点ということで、これは金沢大学を中核としまして、超小型衛星を用いたX線観測を主軸とした研究拠点を形成していただきました。これにより、超小型衛星開発をはじめとした宇宙理工学研究を重点的に推進する研究教育体制が構築されています。
また、もう一つ、九州工業大学につきましては、革新的な宇宙技術の信頼性向上とグローバルニーズに応える宇宙利用と人材育成のための国際ネットワーク形成というテーマでやっていただきました。九工大を中核といたしまして、超小型衛星試験センターの運営を通じて国内外の超小型衛星の信頼性の向上、あるいは宇宙利用のための人材育成に貢献できる国際的なネットワークの構築を進めていただきました。これにより、大学や研究機関が開発する超小型衛星18基の試験を同センターで実施していただきまして、国内初の宇宙システム工学科の設立にも貢献していただきました。こういったものがこれまでの委託事業の主な成果でございます。
他方、次のページからは各国の動きでございますが、超小型という意味ではアメリカとヨーロッパについて紹介いたします。NASAでは惑星探査の先導的な主体として、NASAのJPLが深宇宙探査に向けた超小型探査機の技術開発を牽引してきております。世界初の惑星探査技術実証ミッション(MARCO)を実施しています。これは左下の図にあるとおりでございまして、今後、JPLでのミッション以外にも他のNASAのセンターや大学も含めて計13の超小型探査機がSLS/Artemis1相乗りペイロードとして2020年に打ち上げが予定されている状況です。地球低軌道のみならず、深宇宙の探査に向けた超小型探査機のプログラムがアメリカでも進展しているというものでございます。
また、欧州宇宙機関ESAも同様に深宇宙探査に向けた超小型のプログラムを用意しています。ESAは2013年からGeneral Support Technology Programといったもので、超小型の衛星ミッションを計画し実施中であり、これに加えましてDiscovery and Preparation活動の一環として、超小型探査機のミッション検討を実施中です。
それでは、我が国はどうかということで、8ページは我が国の深宇宙探査に向けた超小型探査機への取り組みについてです。左側の2014年に、当時としては世界初の深宇宙探査超小型衛星PROCYONでは東大とJAXAが協力して「はやぶさ2」と相乗りで打ち上げ、例えば「すい星からの水素放出の撮影に成功」といった成果を上げています。
また、今後については、アメリカのSLSの初便に相乗りする国際枠に日本からOMOTENASHIとEQUULEUSが選定されておりまして、OMOTENASHIにつきましては月面にセミハード着陸させ、月周辺環境の放射線計測等を実施するもので、EQUULEUSにつきましては、地球・月系のラグランジュ点への航行を通じまして、将来の深宇宙探査に向けた各種技術の実証といったものを意図しております。
こういったアメリカ、あるいはヨーロッパ、さらには日本での深宇宙探査といった動きがある中で、この委託事業の中でもこのような背景を加味しまして、最後のページにありますが、来年度に新たに宇宙探査基盤技術高度化プログラムといったものを立ち上げようと現在考えております。これは月、あるいは月以遠での持続的な探査活動の実現に向けた大学等における超小型探査機の基盤技術の開発を加速するということで、国際競争力の強化、宇宙分野の裾野拡大を図るものでございます。
背景・課題は先ほども申し上げましたが、各国で月をはじめとして宇宙探査の取り組みが加速していること、また月探査を持続的に進める上では地球・月の間の通信、あるいは月面の土壌の走破、さらには厳しい放射線環境への対応等の基盤技術の開発が急務となっております。そのため、オールジャパンの技術を結集して、これまで大学等で培われた超小型衛星開発の技術を活用し、研発法人と大学等の連携による研究環境・人材育成の維持・強化をしていきたいということです。さらにはアメリカの提唱するゲートウェイの構築後は、月以遠を目指す超小型衛星探査機の開発がさらに本格化すると考えており、そういった意味で、委託事業の中の新しいメニューとして、大学等の技術を活用して月探査に必要な超小型探査機等の基盤技術、システムバス・推進系や月探査機・地球間の通信技術といった開発を進めていきたいと考えています。
以上です。

【白石部会長】 ありがとうございます。
これについては、何か質問はあるでしょうか。林田委員どうぞ。

【林田委員】 人材育成という言葉が随所に出てきまして、特に2ページ では宇宙人材育成のよい事例が紹介されています。これは非常に重要な問題ですということは共通の認識だと思うのですが、ただ、教育というのは3年でできるものではなくて、例えば、せっかく3年間お金をもらっていいカリキュラムをつくって大学1年生、2年生、3年生と教育しても3年で終わったら次に入学してくる学生はその恩恵をこうむれないということです。大体2期6年ぐらいやってらっしゃる例も多いのですが、それにしても10年スパンでやっているわけではないわけですね。
ところが、例えばISASの例でいえば、どうして人材が定常的に供給されるかといえば、ちゃんと大学というものが後ろにあって、学部教育があって、大学院教育があって、その大学院の学生たちがそこに参加できるという基本が後ろにあるからだと思います。ところが、宇宙人材育成といいながら、「高等教育局」との連携というのが全く見えてまいりません。こういった分野は特に重点的に教育をすべきですよということが、例えば具体的に「こういうカリキュラムをやったらこんなに成果が上がった」という実例が多数上がったのであれば、それを定着させて定常的に持ってくるようなシステムを高等教育局と協力して全国の大学に展開していくというのが次のステップではないかなと思います。そういう意味では、最近、国立大学は定員を削減しなさいということで、どこの大学も非常に厳しい立場に追いやられていて、その意味では宇宙人材部門も定員が削減される可能性が大いにあるわけです。
一方で、基礎的なところはどんどん削られて、一時的にこういった委託事業経費がついても、それは逆効果になるだけなのではないかと思います。ここのところは文部科学省として、局を超えて、ビジョンを持って臨んでいただきたいと強く思います。

【事務局(藤吉課長)】 ご意見ありがとうございます。確かに3年程度でできるものではないと思います。ただ、予算も未来永劫続くわけでもございませんし、3年支援いたしますが、できましたら大学で重要性を内部でも考えていただいて、できますれば大学の中でそういったプログラムを後押しするような仕組みをつくっていただきたいなというところもあります。
ただ、高等教育局との連携が足りないのではないかということは、ご指摘のとおりだと思います。我々も宇宙全体を盛り上げていくという役割がございますので、今後こういった有益な成果が出たところについては、高等教育局にもつなげて、うまく盛り上げていきたいと考えております。

【林田委員】 それでは、今後は高等教育局とのコミュニケーションを期待してよろしいということで承ってよろしいですか。

【事務局(藤吉課長)】 はい、頑張っていきます。

【白石部会長】 ほかにはございますか。では、吉田委員。

【吉田委員】 最後の9ページ目について質問させてください。ここに宇宙探査基盤技術高度化プログラムという題目で書かれているものは新しいメニューだと思いますが、具体的なプランについて、もう少し教えていただければと思います。どの程度の予算を今、想定されているのか、あるいは今後、おそらく公募のような形で出されるのだと思うのですが、どのようなタイミングで進めようとされているか、そこについて教えていただければと思います。

【事務局(藤吉課長)】 ありがとうございます。この予算と公募等の日程でございますが、まず、予算につきましては、1ページをごらんいただきますと全体で今年は3億6,000万円で、来年度の合計が約5億円ということです。そのうち、今般新たにやろうとしているメニューには約1億5,000万円程度を、仮にその5億円から充当したいと思っています。その1億5,000万円というのは、5,000万円×3拠点というイメージになります。予算が実際に認められれば、委託費全体の公募のスケジュールとしては、年明け以降を予定しております。もし予算がつきましたら、じゃんじゃん応募をよろしくお願いします。

【吉田委員】 どうもありがとうございます。予算が認められればということで了解しました。着実に進むことを願っております。

【白石部会長】 では、藤井委員。

【藤井委員】 今の件と関係するのですが、超小型探査機プログラムというのがありますが、世界的にはこちらの方が活発になってくると思いますが、宇宙研では、どういう体制でこれをやっておられるのかということと、先ほどの5億の中に入っているのかわかりませんが、どういう予算体系でサポートされているのか。現在、実施体制は大学のほうにかなりあるような気がするのですが、その辺の体制と予算についてご説明をお願いします。

【事務局(倉田室長)】 ご指摘ありがとうございます。ご指摘のとおり、宇宙科学研究所ではさらに深宇宙に向けてということで、小型の探査機の研究開発は続けられていらっしゃいます。それは、こちらの件とは別になりまして、こちらの委託事業は先ほどご紹介させていただきましたとおり、主に大学での研究成果の色々な産業化も含めた取り組みを支援させていただくものになっていますので、先ほどご紹介した中で宇宙研の取り組みをしているというわけではございません。

【藤井委員】 それでは宇宙研の主たる体制はどうなっているのですか。

【事務局(倉田室長)】 現在、宇宙科学研究所ではそういった基盤的な研究は進められているということを承知しておりますが、詳細な体制については、確認させてください。

【白石部会長】 よろしいですか。では、永原委員。

【永原委員】 次の議題とも関係してきますが、日本の宇宙に対する社会的なニーズは高まっていくと思います。他方で規模の小ささ、コミュニティの小ささというのは根本的な問題で、裾野拡大ということが一番重要なことになってきます。裾野というのは、つまりJAXAと研究機関・大学、あるいはJAXAと民間、あるいは大学と民間という、その産学の裾野をいかに上手く拡大できるかということが一番重要な点です。それを考えると、この委託事業は非常にすぐれた制度で、例えば、JAXAに行ってしまうと、JAXAからさらに大学に行く分はごくわずかになってしまうので、直接こういう経費が出るということは、民間にしても大学にしても、そういうところに積極的に参加できる 土台をつくってくれることになって、これは非常にすぐれた制度だと思います。現状では、去年から少し増えているということですが、ぜひ今後も委託事業を拡充していただいて、裾野拡大に貢献していただければと期待します。
以上です。

【白石部会長】 ほかにいかがですか。なければ次の議題に移りたいと思います。

3.次期宇宙基本計画、科学技術基本計画に向けた宇宙開発利用部会の考え方について(まとめ)

【白石部会長】 次の議題は次期宇宙基本計画、科学技術基本計画に向けた宇宙開発利用部会の考え方についてでございます。これまで3回の宇宙開発利用部会で議論してまいりましたが、これについて事務局でまとめの案をつくっていただきましたので、まずそれについて説明をお願いします。

【事務局(原田企画官)】 資料51-3-1をごらんください。また参考2で前回の骨子からの修正を、多少見づらいですが、見え消しにしたものもございますので、あわせてご参照いただければと思います。
表題は「骨子」から「まとめ」に本日のバージョンとして更新させていただいております。基本的な内容は前回の骨子から大きく変わっておりませんが、冒頭にございますとおり、現在、「科学技術基本計画」の検討、また、「宇宙基本計画」についても改訂に向けた検討がこれから始まろうとしておりますので、それに向けての当省としての宇宙政策の方向性ということで、その考え方を今回お取りまとめいただくといった趣旨のことを冒頭に記載しておりまして、「0.」でございますが、導入部としましては、こちらも前回の繰り返しとなりますが、宇宙利用が広がっていることと、既に現行の宇宙基本計画におきましても、宇宙安全保障の確保、また民生分野の宇宙利用推進、さらに産業科学基盤の維持強化といった目標がございます中で、さらには地球規模課題といった問題があるところで、今後の宇宙利用範囲の拡大であるとか、また社会課題そのものが多様化している中で、これまでの宇宙の枠組みにとどまらない新たな融合、あるいは振興分野の創出なども求められていることから、宇宙技術への参画者の拡大などを図る必要があるといった趣旨の記載をさせていただいています。
2ページ目をごらんください。こちらの1.は中長期的視点に立った宇宙政策の目標の考え方で、こちらも前回の骨子から大きく変えてございませんが、丸の四つ目でございますが、前回の利用部会でご指摘をいただき、パリ協定やSDGsの国際社会の動向も踏まえた国際社会に必要不可欠な社会基盤となるといったことを宇宙の一つの目標として目指すという視点を盛り込むことは重要であるという記述を、一つ階層を上げるという趣旨で記載させていただいております。
続きまして3ページ目をごらんください。2ポツでございます。宇宙技術の基盤的な発展の考え方でございますが、こちらも前回から大きく修正しておりませんが、これまでも宇宙技術は社会にさまざまな価値を提供してきたわけで、今後も宇宙技術に革新を起こすといったことから、他分野の技術の活用、またソサエティ5.0という動きがある中で、宇宙分野の研究開発においては、地上の最先端の技術をうまく活用することが求められるという趣旨です。二つの丸で示した、AIやバイオ、光・量子といったものの利活用、さらにはこういった宇宙の革新的な技術が地上にもイノベーションをもたらすといった視点も今後盛り込まれるべきではないかといった趣旨の記載をさせていただいています。
具体的な技術の事例については別紙のとおりで、後ほど簡単にご紹介させていただければと思います。
次は4ページ目の3.です。こちらは、現在、科学技術基本計画の検討が行われていますシステム分野における人材、資金、研究環境にかかわる部分です。こちらについては、前回の利用部会の議論を踏まえまして、多少、修辞的な修正をしています。大きく内容は変わってはいませんが、次世代の研究者が必要になるということで、一つ、丸という形で大きく真ん中に人々の参画意欲をかき立てるといった趣旨の文言を強調させていただきつつ、その下のパラグラフ、すなわち「それにより」以下のパラグラフですが、委員の先生方のご指摘を踏まえて、大学や国立研究開発法人で行ってきた研究活動については、当然、大学、国研、また民間事業者、企業などを含む効率的かつ効果的な連携・分担を図りつつ、こういったものを含めて研究開発力の向上を図ることが重要であるという趣旨の記載を追加させていただいています。
5ページ目です。こちらの内容も基本的には前回の利用部会から大きく変わっておりませんが、8月に行われた総合政策特別委員会の検討状況を踏まえて、若干それぞれの観点に関連して、見出しの文章を書き加えているところです。最初の、挑戦的・長期的・分野融合的な研究の奨励につきましては、冒頭に「今後、競争的資金の審査等における挑戦性が重視され……(中略)……といった動向も踏まえ、」といった文言をつけ加えておりまして、また、少し中身を修正しました。例えば、振興・融合分野を促進するような競争的研究資金の充実が求められているといった趣旨を記載しています。
二つ目の観点の、若手研究者の充実・促進、またキャリアパスに関連しても、見出しの文章で、キャリアパスの多様化、流動性の向上といった状況において、宇宙分野のような大規模で長期的なプロジェクトマネジメント能力が重要であるといったことを記載しています。
また、世界最高水準の研究環境の分野についても、見出しで、オールジャパンで大型の研究施設・設備を利用できる拠点を戦略的に整備していくといった趣旨を記載しています。
最後の国際連携・国際頭脳循環に関しても、「人材の国際的な獲得競争が激化し、頭脳循環が進んでいる中で」といった趣旨の文言を記載させていただいた上で、総合的な研究ということで、人文学・社会科学なども含むことを明示させていただきつつ、我が国が宇宙分野における国際協力をリードしていくとか、地球規模課題の国際的な取り組みを進めていくといった趣旨の記載をさせていただいております。
7ページ目以降は別紙という形で、今後発展が期待できる技術事例を記載させていただいております。7ページの冒頭のなお書き以下ですが、前回の利用部会において「ブレークスルーがある」といった指摘もありましたので、そういう趣旨の記載をしつつ、若干中身を入れかえております。
8ページの5ポツで、持続的な月探査等の国際宇宙探査の実現に必要となる技術ということで、こちらは前回お取りまとめいただいたISS国際宇宙探査小委員会の取りまとめ結果を踏まえて国際宇宙探査関連技術などの事例についても加筆しました。
事務局からは以上でございます。

【白石部会長】 これについていかがでしょうか。何かございましたら。よろしいですか。芝井委員どうぞ。

【芝井委員】 あまりまとまったことは発言できないので感想だと思ってお聞きください。全体的に焦点が絞り切れていない印象です。アメリカやヨーロッパに比べて日本のリソース、すなわち予算も人数も、あるいは国土の狭さを考えても、宇宙開発利用を考えたとき日本は不利ですが、そのような障害がありつつ今までやってきました。これからどうしていくかを考えておられると思いますが、こういうことを考えるときは、日本としての大きな戦略があったほうがいいと思います。それが何かと言われるとわかりませんが、わからないなりに言いますと、私が長年、アメリカやヨーロッパと宇宙の分野で競争したり協力したりしてきた経験から言えるものがあるとすると、日本人の特殊性といった長所が生かせたらいいと思っています。例えば、同じものをつくるとき、宇宙で役に立つような、細かくて軽くて小さいものをつくるのは日本人のほうが得意です。そういう意味で、超小型衛星技術を開発することは日本人にとって得意なことだと思います。これは単に例ですが、日本人でなければできないようなものがあるといいと思います。そういうところを狙うのではなく欧米と同じことをやっていては、とても日本はやり切れないと思います。
以上、感想です。

【白石部会長】 ほかにございますか。横山委員どうぞ。

【横山委員】 5ページの真ん中あたりの、世界最高水準の研究環境の実現というところは、たびたび私が発言させていただいたところです。「「きぼう」に代表される宇宙の大型施設についても、先端大型研究施設としての意義」という文章がございます。こうした大型施設というのは、例えば、スパコンで、終了しましたが「京」であるとか、東海村のJ-PARCとか、SPring-8であるとかいった超大型施設では、経費をかけるためには非常に厳しい評価があるわけです。ものすごい成果が出ていないと認められないような「先端大型施設」というものが地上にはあるわけです。それと直接、比較することには違和感があります。宇宙開発は平和的な研究環境の場とか、違う付加価値が実際にあることを説明しないといけないと思います。
以上です。

【白石部会長】 ほかにありますか。永原委員。

【永原委員】 全体的によくいろいろな視点から書かれていると思うのですが、今これを読み返してみると、誰に向かって書いているのかという視点が段落ごとにいろいろあるように見えます。つまり、宇宙分野としてはこういう点を強くアピールしたいと上に向かって言っているのか。あるいは「最先端技術を利用し」というのは内部に向かって言っていることですね。宇宙開発に当たっては最先端技術を利用しましょうというのは当たり前ですが、それがあまり整理されていなくて、何を言いたいのかが全体としてわかりづらくなっています。それを少し分けて記述したほうが良いのではないかという印象です。
全体を通して言うと、先ほど申したあげたことですが、とにかく日本全体としてはもっと日本の宇宙というものを進展させるニーズは広まっていて、必要性もあるのですが、そのためには、日本は非常に小さな国で、宇宙にかかわっている部分もすごく小さくて、それを考えるとJAXAを中心に民間とか大学などの協力を得て裾野をいかに拡大させるかが一番重要です。宇宙には宇宙の特性があって、例えばデバイスをつくる場合、小さなラボでちょっとお金を投入するとどんどん新しいものが開発できる状況にありますが、宇宙の特性は、プロジェクトが大きくて長くて、そういう中で人材育成等も当然必要だし、継続した投資が必要であるという特性であるので、そういう視点が必要である。
そのために、宇宙全体の分野としては「こういう仕組みが必要で、今後つくらないといけない、そのためにお金が必要です」というような上に訴えるべきことと、他方、私たちが宇宙にかかわっている分野をこうしましょう、こういうところは直さないとまずいですねというところはもちろんあります。JAXAには何でも自分で頑張ろうとしてしまうところがありますが、もっと協力体制を考えるべきですね。特にこれからの時代、いかにベンチャーなどを巻き込んでいけるかといったところをJAXAは積極的に考えないとだめですとか、いろいろあるわけです。この資料は少しその辺の記述があると良いと思います。もう少し整理できるのではないでしょうか。感想で申しわけありません。

【白石部会長】 どうもありがとうございます。ほかに何かございますか。高橋委員どうぞ。

【髙橋委員】 長年、JAXA評価をやっている立場で感想を述べさせていただきます。
JAXAの中長期目標期間の第1期、2003年から2008年までを振り返ると、第1期は先行する米国やロシア、欧州への、いわばキャッチアップの期間だったと思います。第2期の2008年から2013年は宇宙輸送システムの国際的なレベルの信頼性が確立されて、例えば、11基打ち上げて全て成功ということで、成功率が格段に向上しました。また、月周回衛星「かぐや」の成果、「はやぶさ」のサンプルリターン、ISSの長期滞在、HTVの運用など世界トップレベルの分野を創出して、国際競争力が飛躍的に高まったのが第2期だと思います。
第3期は2013年から2018年までが前期ですが、国の安全保障上の重要な役割を付与され、また研究開発成果の社会実装により社会インフラの一翼を担う。さらに災害時や地球規模の課題に対応するなどJAXAの研究開発成果が安心安全な社会や成長発展する国づくりに直結する時代になった、いわば日本にとってJAXAが不可欠な存在になったと言えるのが第3期だと思います。
その第1期から第3期の状況から、今直面している第4期、それからこれから始まる新しい宇宙基本計画をこれまでの流れで見ると、私は第4期、それから次の宇宙基本計画で目指す姿を一言でいうと、「国際社会においてJAXAが不可欠な存在になる」ことです。既に日本においては不可欠な存在になっているわけですから、次はさらに国際社会にとって不可欠な存在になることが次の目指す姿、目標ではないかと思います。
国際的な不可欠な存在になるということはどういうことかを一言でいうと「国際的な影響力を高める」ということではないかと思います。したがいまして、それぞれの技術が国際的な影響力を高めるためにどういう位置づけになっているか、ということをもう少し整理し、全体が俯瞰できるようになると、もう少し戦略的な議論になるように思いました。
以上、感想です。

【白石部会長】 このまとめは、タイトルにあるとおり、次期宇宙基本計画、科学技術基本計画に向けたこの部会としての考え方を提案するものです。ただ、同時に、もう少し長期というか、利用部会として考えることは、先ほど芝井委員から言われましたし、それから髙橋委員からも指摘されましたが、率直に言って、日本の資源制約がこれから楽になるとは思えない。ますます環境が厳しくなる中で、いかにしてこの宇宙分野における日本の競争力を維持し、強化するか。これについては、これとは別にもう1回きちんとこの場で議論したほうがいいように思います。これは次の議題と関係するので、そこでまたもう少し議論できるかと思いますが、本件については最終的に私に一任いただくということで、このまとめについてはよろしいでしょうか。

【各委員】 「了承」

【白石部会長】 どうもありがとうございます。では、そういうことでやらせていただきます。

4.将来宇宙輸送システム調査検討小委員会の設置について

【白石部会長】 次に四つ目の議題ですけれども、将来宇宙輸送システム調査検討小委員会の設置についてです。これについて、また事務局のほうからお願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。資料51-4をごらんください。「宇宙開発利用部会将来宇宙輸送システム調査検討小委員会の設置について(案)」という議題でございます。
今、考え方の整理で宇宙輸送技術といった個別の技術論の話にも多少記載させていただきましたが、現在、H3ロケットの開発を進めておりますが、さらにその先の将来宇宙輸送システムについても、我が国の宇宙活動の自立性を長期的に確保する観点から議論に着手させていただきたいという趣旨で小委員会の設置をご提案させていただきます。
参考資料3をあわせてごらんください。宇宙基本計画の工程表(平成30年度版)において、工程表34番に「再使用型宇宙輸送システム」という項目がございます。こちらのほうで2019年度以降の取り組みとして、やや字が小さくて恐縮ですが、一番下のほうを事務局で赤く塗っております。H3ロケットなどの開発も踏まえながらということで、将来の宇宙輸送システムの検討として、「宇宙輸送システム長期ビジョン」というものが平成26年宇宙政策委員会で取りとまとめられていますが、我が国の再使用型宇宙輸送システムも含む将来宇宙輸送システムのあり方について、課題、技術やコストの観点から検討を進めるといった項目が、宇宙基本計画の工程表という政府全体の取り組みの中に記載されています。
資料51-4に戻っていただき、こういったことも踏まえて、文科省における宇宙開発利用は当然、宇宙活動の自立性の確保ということで、あらゆる活動の基盤となる基幹ロケットの開発が含まれています。これまでも宇宙開発利用部会や、その前身である宇宙開発委員会においても、H-IIA・Bロケット、あるいはイプシロンロケットといった基幹ロケット、また新型基幹ロケットである現在のH3ロケット開発の評価等をいただいているところですが、現状、海外においても、例えば、スペースX社に見られるとおり再使用ロケットの運用を進めていますし、他のところでも再使用型ロケットの計画を発表しているところもございます。
先ほど申し上げたとおり、政府全体で取りまとめている宇宙基本計画の工程表においても、再使用型宇宙輸送システムを実現するに当たっての課題の検討を行うこととされておりますので、先ほどの「宇宙輸送システム長期ビジョン」がございますが、これらの中身をリバイスすることも含めて、将来の宇宙輸送システムのあり方について小委員会を設けてご議論させていただければと考えています。
2.ですけれども、調査検討事項としては、再使用型宇宙輸送システムを含む将来の宇宙輸送システムの基本的な考え方を一つ目に記載させていただいており、二つ目には、それらのシステムを実現するに当たっての課題(技術、コストなど)について、また国内外の将来宇宙輸送システムの研究開発動向についてもあわせてご紹介させていただきつつ、将来の我が国の宇宙輸送システムのあり方についてご議論いただければと考えています。
本日、部会長にご一任いただきました宇宙開発利用部会での考え方も踏まえて、我が国の将来宇宙輸送システムのあり方について小委員会を設けて検討を進めさせていただければと考えています。
以上です。

【白石部会長】 これについてはいかがでしょうか。鈴木委員どうぞ。

【鈴木委員】 本日最初に議論されていたロケットの概算要求としてはとても大きな額が要求されており、またロケットは国際競争力を持つ分野の大きなドメインの一つかなと思っています。国民全体に応援してもらえるように、この開発の意義のような部分は、社会、日本国並びに世界に対して、どうポジティブな影響があるのかといったイメージがなるべく世の中に最終的に伝わるような形、アウトリーチみたいな部分を重視して進める形がとれれば良いと思います。
同時に、KPI設定みたいな部分で、世界における競争力をなるべく数値で目標設定できるような形のアウトプットが、この委員会の最終的なゴールの一つとして定められることを願います。
以上です。

【白石部会長】 ほかに。どうぞ、井川委員。

【井川委員】 新しいものを開発されることは非常に前向きでいいことだと思いますが、過去の最終形のスペースシャトルをまねしたような飛行機だとか、ロケット輸送機みたいなものを開発したときもそうですが、結構哀れな失敗というか、過去のJAXAの開発には、何がだめで失敗したのかがよくわからない計画が結構あって、その当時、その失敗の原因等が精査されて教訓が得られたかというと、どうも怪しい気がしています。
この調査・検討事項の中に別に1項目立てる必要はないですが、できれば、このメンバー等の中に過去の失敗などに詳しい人をぜひ入れていただいて、同じ轍を踏まないように過去の教訓をよく聞きながら効率的かついいものを開発するということを事務局の心の片隅に置いていただけるとまことにありがたいです。

【白石部会長】 ほかにございますか。米本委員どうぞ。

【米本委員】 当該小委員会は、2年ぐらい活動されるということです。その間、節々で宇宙開発利用部会に成果が報告されるものと期待します。どのようなタイミングで、どういう形での報告を考えられているのか、今お考えがあればお聞かせください。

【白石部会長】 事務局どうですか。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。小委員会の設置期間を2年間とさせていただいていますが、現在、開発中のロケットの状況も踏まえながら、スケジュール感はなるべくタイムリーに中間まとめなどもさせていただきながら、その中間まとめについては本部会に報告させていただくなどして進めたいと思います。他方で、現在、宇宙基本計画の改訂についての議論もございますので、そこでどう書かれるかも含めて、そこでのマイルストーンを踏まえて、この小委員会は進めさせていただきたいと思っています。いずれにいたしましても、適宜、利用部会に内容をご報告させていただきたいと考えています。

【白石部会長】 ちょっとつけ加えますと、この小委員会というのはあくまでも宇宙開発利用部会の下に位置するものですから、利用部会として報告してもらいたいということになれば、いつでも報告を受けることができます。当たり前のことですが、最終報告まで我々が何も関与しないということは、正直、考えられません。
ほかに何かございますか。芝井委員どうぞ。

【芝井委員】 前も同じことをお聞きしましたが、今の委員長のご発言でいいのですが、調査検討事項の(1)は再使用型システムを含む将来宇宙輸送システムという考え方ですから、再使用が前提とは限らないわけですね。再使用のメリットを前にお聞きしたときは、打ち上げ頻度を上げられることと、1回当たりのコストを下げられる、その両方が非常にすぐれているということであれば再使用を選ぶということで、それは非常に重要なことではないかと思います。
意見です。以上です。

【白石部会長】 よろしいですか。もし何かありましたら。

【事務局(原田企画官)】 もちろん、再使用型については、今の時点で議論に予断を持たせてこれで行くと言っているのではなくて、当然、内外の情勢、経済性などを含めてオプションとして検討させていただければと考えています。

【白石部会長】 ほかに何かございますか。米本委員どうぞ。

【米本委員】 既にJAXAは、国際共同でCALLISTOという将来に向けた再使用のための実験計画を進めています。また、宇宙科学研究所でも再使用型観測ロケットRV-Xのプロジェクトが動いております。当該小委員会が立ち上がった段階で、これらのプロジェクトの現状、そしてその先にある将来をどのように見据えて計画を進めているのか、宇宙開発利用部会で紹介いただけないでしょうか。

【白石部会長】 ありがとうございました。ほかにございますか。

【各委員】 「なし」

【白石部会長】 ないようでしたら、これで決定ということでよろしいでしょうか。小委員会の設置についてはよろしいでしょうか。
それではこれで決定ということにしたいと思います。

5.その他

【白石部会長】 それ以外の事項としまして、事務局からHTV打ち上げの結果、これは随分報道されていますが、それと、NASA長官の訪日にかかわる報告事項がございます。よろしくお願いします。

【事務局(原田企画官)】 参考資料4をごらんください。三菱重工によるプレスリリースでございますが、昨日未明、当初、9月11日に予定されておりましたH-ⅡBロケット8号機による「こうのとり」8号機の打ち上げにつきましてですが、9月25日の午前1時5分に打上がりまして、予定どおり飛行し、無事に軌道投入を完了しています。「こうのとり」8号機については今週の土曜をめどにISSに到着する予定ですが、現下、報道等もされておりますので、ご参考に結果について簡単にご紹介させていただきました。
以上でございます。

【事務局(倉田室長)】 あわせまして私のほうから、NASA長官が今週火曜日、水曜日と東京に滞在され、関係方面の方々と意見交換をされました。その一環としまして、火曜日の午前中に萩生田文部科学大臣を表敬訪問されましたので、報告させていただきます。
NASA長官と萩生田大臣は主に月探査をめぐり意見交換をされましたが、その中でNASA長官から、日本とは長年にわたり強力なパートナーシップを構築してきたこと、その中でNASAは日本を信頼できるパートナーとして非常に高く評価しているということで、高い期待が示されました。そういった信頼関係を発展させながら、月探査もぜひ一緒に進めていきたいというご発言ですとか、日本の持つ技術力への評価、また日本の宇宙飛行士の活躍についても非常に高く評価されていまして、そのような宇宙飛行士の育成も含めてぜひ協力しながら引き続き進めていきたいというご発言がございました。
また、アメリカのアルテミス計画の検討状況についての説明において、現在、米国でもアルテミス計画の予算の確保に向けて議論が進められているわけですが、NASAとしても超党派のサポートを取りつけて進めているといった話がございました。
簡単ではございますが以上です。

【白石部会長】 次に連絡事項をよろしくお願いします。

【事務局(原田企画官)】 会議の資料と議事録の公開について申し上げます。
宇宙開発利用部会の議事録等は運営規則に基づいて公開となりますので、後日、当省のホームページ等に掲載させていただきます。議事録も公開となりますので、委員の皆様にご確認いただいた後、ホームページに掲載させていただきますことをご了承いただければと思います。
事務連絡は以上です。

【白石部会長】 ありがとうございます。
これで今日の議事は全て終了いたしましたが、最後に岡村審議官からご挨拶があります。よろしくお願いします。

【岡村大臣官房審議官】 岡村でございます。本日もさまざまな観点でご示唆に富むご審議をいただき、まことにありがとうございました。特に先生方におかれましては、科学技術基本計画と宇宙の基本計画の考え方を同時にまとめていただき、それも今年の4月からの半年間という大変短い間に活発にご議論いただきました。まことにありがとうございます。
まず科学技術基本計画については、本部会の考え方をこれから私どもの上の基本計画の担当部局でございます総合政策特別委員会に提出することになります。まさに総合政策特別委員会の委員でもいらっしゃる白石部会長に、先生方のお考え、ご議論の方向性を託させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
一方で、宇宙基本計画に向けては、10月以降に内閣府において本格的に議論が開始されます。文部科学省もヒアリングを受けることになりますので、その際には先生方のお考えをしっかりと先方の内閣府に伝えてまいりたいと思います。
また、先ほど部会長からもお話がありましたが、本部会では引き続き将来を見据えた宇宙技術の検討をしっかりと続けたいと思います。今後とも長期的に文部科学省として進めるべき宇宙開発、宇宙の研究開発の方向性についてご示唆をいただければと思います。
改めまして、本日までの半年間、短期間でしたが、インテンシブに議論いただきまして大変ありがとうございます。今後とも引き続きよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

【白石部会長】 どうもありがとうございました。それでは、これで今日の会議を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
 

(説明者については敬称略)


―― 了 ――

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研究開発局宇宙開発利用課