宇宙開発利用部会(第50回) 議事録

1.日時

令和元年8月27日(火曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 3階1特別会議室

3.議題

  1. 次期宇宙基本計画、科学技術基本計画に向けた宇宙開発利用部会の考え方について(骨子)
  2. 宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機(HTV8)に係る安全対策について
  3. 国際宇宙探査について
  4. 令和2年度概算要求に向けた研究開発課題の事前評価について(非公開)
  5. その他

4.出席者

委員

部会長代理      青木 節子
臨時委員        井川 陽次郎
臨時委員        芝井 広
臨時委員        白井 恭一
臨時委員        高薮 縁
臨時委員        鶴岡 路人
臨時委員        永原 裕子
臨時委員        林田 佐智子
専門委員        藤井 良一
臨時委員        松尾 亜紀子
臨時委員        横山 広美
臨時委員        吉田 和哉
臨時委員        米本 浩一
 

文部科学省

大臣官房審議官                    岡村 直子
研究開発局開発企画課長               林 孝浩
研究開発局宇宙開発利用課長           藤吉 尚之
研究開発局宇宙利用推進室長           倉田 佳奈江
研究開発局宇宙開発利用課企画官        原田 大地
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐       渡邊 真人
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐       岡屋 俊一

(説明者)
調査・安全小委員会主査                 木村 真一
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 有人宇宙技術部門
  有人システム安全・ミッション保証室 室長   白井 達也

5.議事録

【青木部会長代理】 それでは、定刻になりましたので、宇宙開発利用部会の第50回会合を開催したいと思います。
本日はお集まりくださいましてありがとうございました。
まずは事務局から本日の会議の流れの説明をお願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 本日は、お忙しいところありがとうございます。本日は宇宙開発利用部会にご所属いただいております17名の委員の先生方のうち14名の先生方にご出席いただいております。運営規則に定める定足数の要件を満たしております。従いまして、本日の会議が成立することをご報告いたします。
次に、本日の資料でございますが、お手元の議事次第の4ポツのとおり配布させていただいております。過不足等がございましたら、適宜事務局のほうに、お申しつけいただければと思います。
なお、本日予定しております4件目の議題「令和2年度概算要求に向けた研究開発課題の事前評価について」は、概算要求に向けた事前評価となり、8月末の概算要求に関する内容となります。従いまして、本部会の運営規則第3条3号の定めによりまして、当議題部分の審議及び資料50-4については、非公開とさせていただくご提案を申し上げます。事務連絡及び、非公開資料に関わる事項としては以上でございます。

【青木部会長代理】 事務局の提案どおり、議題4及び資料50-4は非公開としたいと思いますがよろしいでしょうか。
ご異議はないようですので、そのようにさせていただきます。

1.次期宇宙基本計画、科学技術基本計画に向けた宇宙開発利用部会の考え方について

【青木部会長代理】 それでは議事に入ります。
一つ目の議題は、「次期宇宙基本計画、科学技術基本計画に向けた宇宙開発利用部会の考え方について」です。これまで各委員からいただきましたご意見等をもとに、次期宇宙基本計画並びに科学技術基本計画に向けた宇宙開発利用部会の考え方の骨子案を事務局にまとめていただきました。本日は、全体構成、システム関係、及び宇宙技術関係の3段階に分けて議論をしたいと思います。
それではまず、事務局から骨子案の全体構成についてご説明をお願いします。

【事務局(原田企画官)】 ありがとうございます。まず資料の説明に入らせていただく前に、参考資料50-1-1について、ご説明させていただきます。前回6月の第49回の部会においてもご説明させていただきましたが、当初、本利用部会では科学技術基本計画に盛り込むべき内容のご議論を予定しておりましたが、6月の政府宇宙開発戦略本部におきまして、現行の宇宙基本計画の改訂を行うということとなりましたので、次期宇宙基本計画に向けた意見についてもあわせてご議論をいただきたいと考えております。
こちらの参考資料50-1-1について、一番左側の部分につきましては、現行の宇宙基本計画における三つの政策の概要が記載されております。
また、真ん中の部分については、宇宙基本計画における産業・科学技術基盤と科学技術基本計画における宇宙技術との関連する部分と考えております。
最後に、一番右側の部分につきましては、科学技術基本計画における共通事項となる、研究人材、研究資金、研究環境に関わる事項として、現在、総合政策特別委員会において議論が進められている部分でございます。
こちらの資料を基に、宇宙開発利用部会の考え方の骨子として、参考資料50-1-1の左側の部分を一ポツ、真ん中部分を二ポツ、右側部分を三ポツとし、さらにはその導入部分をゼロポツとして、資料50-1のとおりに整理させていただいております。
それでは、資料50-1の「次期宇宙基本計画、科学技術基本計画に向けた宇宙開発利用部会の考え方について(骨子)」をごらんいただければと思います。この内容につきまして、主なポイントをご説明させていただきたいと思います。既に8月中に考え方素案については、メールにてご相談をさせていただいておりますので、改めてとなりますが全体構成につきまして、簡単にご紹介差し上げたいと思います。
まず、冒頭部分について、これまで宇宙技術は科学技術基本計画においてフロンティア開拓といった視点が中心として記載されておりましたが、近年は、地球観測・衛星測位といった社会利用、社会価値の提供等の部分が広がっていることが実態となっております。
また、今後その宇宙技術を活用した社会課題の達成目標がSDGsなどで具体化しており、安全保障であるとか産業振興といた様々な場面での具体的な活用が、広がってきているところでございます。
従いまして、既存の宇宙の分野の専門家だけではなく、宇宙技術の利用者などを今後より広げていく必要性が出てきているところでございます。
科学技術全体の動きとして、異分野融合などが求められておりますが、そのためにも、宇宙分野の研究者、利用者の拡大がさらに重要となってくるということを導入目標として記載させていただいております。
次に、一枚めくっていただき一ポツの宇宙政策の目標の考え方について、前回も白石部会長からもご発言がございましたが、宇宙の安全保障を含め、現行の宇宙基本計画と科学技術基本計画との基本的な方向性はなるべく合わせていくべきであると考えております。
具体的には、資料に白抜きのマルが三つ並んでおりますが、これまで宇宙開発利用の発展のために、宇宙の技術だけではなく、地上も含めた科学技術全体の水準向上のために、宇宙を使っていくという内容を盛り込んでいきたいと考えております。
また、宇宙の施策や事業の実施にあたっては、国際社会に影響を与えるような社会基盤をつくるといった観点も重要でないかと考えております。
次に二ポツの宇宙技術の発展の考え方について、これまでの宇宙技術は、最高水準の技術をシステムとして結集させるといったことで研究開発を進めてきており地上の技術へのスピンオフや波及により、社会に様々な価値が提供されてまいりました。
このような考え方だけでなく、今後は宇宙から地上といった方向に加え、地上の最先端の技術を宇宙に適用していくといった観点も重要であると考えており、その趣旨を記載しております。
なお、具体的な技術の内容は、別紙という形で素案を作っておりますので、後ほどご議論いただければと思います。
最後に三ポツの宇宙開発利用のすそ野の拡大を図るための考え方について、記載をさせていただいております。
今年は皆様ご承知のとおり、アポロによる有人月着陸からの50周年ということで、その成果は様々な場所でよく認識されているところでございます。米国アポロ計画では、国家全体が盛り上がったのと同時に、また科学技術における世界のリーダーシップを確保したという歴史的な経緯がございます。
宇宙の魅力といったものを生かして、人々を研究開発に参画させていくこと、またその研究力強化、イノベーションの創出を先導していくことの意味での宇宙の活用という点も、しっかり次期宇宙基本計画に視点を盛り込みたいと考えているところでございます。
その中で、最近の文部科学省及びJAXAの宇宙に関する研究人材、研究資金、研究環境をより充実していくといった観点を見据え、本部会におきまして、ご議論いただきたいと思っております。
全体構成に関するご説明については、以上となります。

【青木部会長代理】 ありがとうございます。今事務局からご説明がありましたように、全体構成については、既に8月上旬には委員の皆様から事前に意見を頂いており、コメントも反映させていただいております。もし、現時点において全体構成につき、さらなるご意見ご質問があればお願いいたします。特になければ、本日の議論の中心となる4ページ以降のシステム関連及び宇宙技術について、進めたいと思います。
全体構成についてご意見ございますか。
はい。米本委員お願いします。

【米本委員】 宇宙基本計画の筆頭に安全保障が掲げられており、ISSも民間企業に開放され、また月や火星にも人類の生存圏が拡大していく中で、将来にわたり日本の宇宙開発の自立性を確保する意味において、今までの衛星の打上げだけでなく、我が国も「有人宇宙輸送」にどのように取り組んでいくべきか、中長期的な視点に立ったシナリオを盛り込んでいく必要があるのではないかと思っています。
有人宇宙輸送を今すぐに実現するということではなく、それを目標として今後どのような取り組み方が必要かぐらいは最低でも触れておくべきと思いますが、その点についてどうお考えなのか確認させて下さい。
それに加えて、いかに民間資金の導入を促し、我が国全体としての宇宙開発利用の予算規模を増やしていくかという点も具体的に書くべきと考えます。
一方、人材育成についても、現時点で宇宙に関わっている人たちをどう育てていくかだけでなく、民間投資を期待するという意味でも企業の若手技術者とどう連携し、その結果として産業基盤を拡大するという主旨にも踏み込んで提言していく必要があるのではないでしょうか。
以上です。

【青木部会長代理】 事務局からお願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 一つ目の「有人関連」ですけれども、別紙のほうでまたいろいろご検討いただければと思っております。
具体的には、7ページに人類の活動領域の拡大を目指した探査等の事項を記載させていただいており、日本の有人宇宙技術については、これまで宇宙ステーション計画における「きぼう」等の開発を通じて、必要な有人宇宙技術の獲得を進めてまいりました。
今後は、地上との相互発展が期待できる技術としても別紙にございますので、改めてご指摘とご議論をいただければというふうに思っております。
二つ目の「民間投資の呼び込み」でございますけれども、後ほどシステム関連で、ご議論いただければと思っております。4頁目に挑戦的・長期的・分野融合的な研究の奨励として、研究資金の記載をさせていただいておりますが、国費に限らずということで、宇宙に携わる者からの積極的な投資も活用して宇宙開発利用を進めていく視点が我々としても重要であると認識しております。

【青木部会長代理】 米本委員どうぞ。

【米本委員】 一番目の質問に対するご回答について、確かに別紙のところで具体的に書かれていることは分かります。もう少し大きな視点、すなわち有人宇宙輸送という観点から、戦略的なシナリオを書いていくべきではないかと考えます。

【青木部会長代理】 ありがとうございました。次回のまとめ案でも思い当たることがあれば願いします。

【吉田委員】 人材育成の部分で、若手研究者の自立促進・キャリアパスの安定、また、国際連携・頭脳循環ということで、非常に要点をきちんとクリアに書いていると思っているところでございます。特に国際連携に関しましては、私自身国際的な教育とか研究の機会、海外で開催される研修会に参加することが多いのですが、正直言いまして、日本からの若者のプレゼンスが極めて弱いと、この10年間非常に憂慮しています。少し踏み込んで申し上げますと、中国からの参加者は非常に多く、インドからも多い。日本からはほとんど見かけない。そういう経験をしており、直接の原因ではないかもしれませんが、現在の月面探査のアクティビティにそのまま直結していると感じております。中国では既に月の裏に「嫦娥」を展開して、インドでも月着陸船が月周回軌道に入ったということです。日本のプロセスはどうなっているかと。このような状況はこの10年、あるいは10年以上の間の差がはっきりと出てきてしまっていると憂慮しているところでございます。
そのため、今後、具体的に戦略的に若手の人材をどう強化していくかというところをぜひ、議論させていただきたいと思っています。後半の別紙では技術で整理されていて、具体的にその人材育成をどうするか、その施策はどうするかを事務局としてどう考えているかを質問させていただければと思います。

【青木部会長代理】 システムとその別紙の部分については、後ほど議論することとなっていたのですが、現在、システムに関して議論が進んでいるようですので、事務局のほうからシステムに続く部分もご説明いただけますでしょうか。

【事務局(原田企画官)】 4ページ目のシステム関連ですが、科学技術学術審議会の総合政策特別委員会でも現在検討させていただいているところであり、4つの白い丸のほうを記載させていただいております。上のほうから研究資金、研究人材、研究環境、そして国際という形で4つのシステム関連の柱として記載をさせていただいております。一つ目の丸は、挑戦的・長期的・分野融合的な研究の奨励として、研究資金に関わる事項です。二つ目の丸が研究人材になり、前回の5月の部会でもご議論いただいたような若手育成であるとか、今吉田先生からもご指摘いただきましたところになります。三つ目の丸が研究環境の実現であり、これまでご指摘いただいた点を整理させていただいております。四つ目の丸につきましても、国際の軸で、例えば宇宙工学に限らず、人文社会科学なども含めた推進や、SDGsの達成に向けたような国際的な宇宙協力といったところも、盛り込ませていただいております。
科学技術基本計画は、宇宙分野に関する意見に、あまり特化し過ぎますと、科学技術全体に関わる開発基本計画に対する盛り込みがやや難しくなる可能性がございますので、ぜひその宇宙分野から他分野に波及・派生、あるいは普遍させるような形での提言をしていきたいと考えております。一つの事例ですが、総合政策特別委員会は、物質材料研究機構のスマートラボといったような取組が例示されており、このスマートラボの取組が他の研発法人のモデルになるとして、総合政策特別委員会のほうでも紹介されています。本日この部会におきましても、当然宇宙分野におけるやり方というのは大事ですが、科学技術全体を見据えた点におきましても、ぜひ宇宙分野から他分野に波及させられるような内容のほうを御議論いただきたいと考えています。
技術関連もあわせて説明させていただきます。
5ページ目以降につきましては、2ポツの技術基盤発展の考え方を補足するものとして、個別技術の例示を、事務局の素案として提示をさせていただいており、ご議論いただきたいと思っております。これまで先生方から、地上技術のリスト化にご指摘をいただいておりましたので、地上技術と宇宙技術がどのように発展するかという視点でこちらのほうをご用意させていただいております。
事務局で考えた試案でございますので、こちらは、ぜひ忌憚なく御意見いただければと思っております。
こういった技術個別、具体的な細かい技術が今後の科学技術基本計画や宇宙基本計画に、個別に記載される可能性は低いですが、今後の我々が議論をしていく際には重要な素材となりますので、よろしくお願いします。以上でございます。

【青木部会長代理】 ありがとうございます。それでは高薮委員。

【高藪委員】 1ページ目から4ページ目に関して少し、よろしいでしょうか。
あらかじめ提示していただいて、たいへんよく書いていただいていると思います。ひとつ意見させていただきたい点として、「地球規模課題解決に向けた」という部分で、パリ協定やSDGsの観点も重要であると記載していただき、大変良い指摘をしていただいていると思うのですが、最近、アマゾンの火災問題などいろいろ地球環境が非常に危機的状況にある、非常に切羽詰まった状況にあることを考えますと、丸のレベルに引き上げて記載いただいたほうが良いのではないかと考えます。よろしくお願いします。

【青木部会長代理】 他にご意見はありませんか。はい。林田委員。

【林田委員】 技術についての別紙でこのごろの予算の緊縮化ということに伴って私が見聞きした範囲でも非常に厳しい競争入札が行われており、結果として、国産の技術を開発するよりも、外から買ってきたほうが早くて安いので、外からの技術を買う方向に流れています。国内メーカーにきちんと開発費を払って時間をかけて開発してきたものが海外に対して競争力を持つためにはどうやって国の技術として育てるか、そこのところをきちんと書いていただかないといけないと思います。全部日本がやるのか否かも含めて検討した方が良いのではないでしょうか。

【青木部会長代理】 まとめて事務局からご回答いただきますので、他に何か、今の時点でございますか。

【白井委員】 私は専門家ではないので、ここにリストアップされた個々の技術面の課題についてはわからないのですが、宇宙と地上との相互発展が期待できる技術というくくりで、政府内のさまざまな折衝等の材料として持っておきたいというご意向はよくわかります。宇宙の分野でやはり過去を振り返ったときに、当初、思ってもいなかった副産物出てくることがあります。例えば、本文も、3ページ3ポツの1行目にアポロの話が出てきまして、「アポロ計画では前項のとおり、宇宙開発が地上の技術を育てた」と書いていますが、この文章では、具体的にどんなことがあったのかが一言も触れられていません。しかし、私が経営学の本から学んだことではありますが、医療の集中治療室の技術はアポロ計画の中から生まれたということが書かれております。つまり、今の段階では、何が出るかわからないけれども結果的には宇宙という分野に取り組むことによってブレイクスルーが生じたという実例は多分他にもあるのだろうと思います。従ってそうした事例を具体的には書けないにせよ、別紙の「なお」書きとして、こういう効果も期待できるということを書いてみてはいかがか、あとですごく役に立つような効果も期待しうるということを、本ペーパーに書いてもいいかなという気がしました。

【青木部会長代理】 ご回答の前に、一つ申し上げたいのは、本日で終わりというわけではなく、次回に向けてまとめの案を事務局が作成してくださいますので、今ご意見がおありの委員はメール等で事務局にご連絡いただけましたらと思います。では、事務局から委員のご意見について回答お願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 まず、林田先生からご指摘いただいております、すべて国としてやるべきなのか否かといったところ、あるいはどうやって育てるかといったご指摘ですが、文部科学省の宇宙開発利用部会としての御提言ということで、いわゆる宇宙分野での研究開発を政府全体として取りまとめて推進する文部科学省の立場としまして、それはいうなればJAXAの研究開発事業として今後それらを発展させていくこととなりますので、基本的にはあくまで期待できる技術ではございますが、今後の日本の競争政策上技術的な競争力であるとか、あるいは国家間技術力と言われてきましたロケットや衛星に関わるような重要な技術を国として今後しっかり維持発展させるべきものを、ある程度リスト化できればと考えているところでございます。他方で先生が冒頭おっしゃられたとおり、全てをフルスペックでなかなか国が持つとか、あるいは日本だけで持つとかいうことはなかなか今後の発展といったところもありますし、例えばその他分野で、半導体であるとかディスプレイといったところの技術におきましても、全て日本がフルスペックで現在持っているかというと、そういった状況でないというところもございますし、当然選択と集中の概念もあろうかと思いますので、まずは、宇宙開発利用部会として、我が国が宇宙開発活動であるとか、その競争力強化、あるいは安全保障とか、本日ご提言差し上げた2ポツの宇宙政策を達成する技術であって、国家的に重要であると考えられるものを、ある程度国として育てて維持していくべきものを、こちらのほうに記載できれば良いかと考えているところでございます。
続いて白井先生からご指摘いただいた点につきましては、まさしくおっしゃるとおりで、宇宙技術のみならず、例えばインターネットも当初は特別なネットワークでしたが、こうやって社会を変えるようなインフラとして利用されているような部分がありますので、将来どう化けるかわからないような技術基盤とか、まさしくイノベーションを起こすといったものの類似事項というのは宇宙に関しては総合システム技術といった特性もございますので、先生にご指摘いただいたとおり、注意書きとか、なお書きのほうで、記載させていただければと考えております。とりあえずは以上でございます。

【青木部会長代理】 ありがとうございます。では、本日の議論及びその後事務局に寄せられるご意見等を総合政策特別委員会での議論も踏まえて事務局は次回までにまとめ案の作成をお願いいたします。

2.宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機(HTV8)に係る安全対策について

【青木部会長代理】 それでは次の議題へ進めます。二つめの議題は、宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機(HTV8)に係る安全対策についてです。調査・安全小委員会において、「こうのとり」8号機に係る安全対策の調査審議が行われましたので、小委員会の木村主査から報告をお願いします。

【木村主査】 今期から調査・安全小委員会の主査を承りました木村でございます。よろしくお願いいたします。小委員会の検討結果について報告をさせていただきたいと思います。資料は、資料50-2-1でこれが本文になり、これに付録が幾つかついておりまして、資料の50-2-2、と合計三種類ございます。
まず本文の、50-2-1ですけれども、宇宙活動法施行の関係で調査・安全小委員会で安全を確認する部分・領域が若干変わりまして、係留フェーズに限るということになりました。対象とする部分については、フライト全般ではなくて、係留部分のみということになりましたが、審査の方法は、基本的には従前の方法と同じ方法を踏襲しております。文言としては、係留フェーズで、というふうに書いてありますけれども、今回のフライトについてこれまでの審査経験を踏まえながら審査を実施いたしました。
付録1のほうをごらんいただきたいのですが、ここにまず今回のフライトの概要をまとめております。おおむね7号機から変更のない内容になりますけれども、特に変更のあるところを中心にご説明をさせていただきたいと思います。また、小委員会のほうでもその点を中心に議論をしてまいりました。
4ページのところ、5ページのところが既にご存じとは思いますけれども、HTV「こうのとり」の概要を示しております。レーザー光のRFリンクを取りながら接近していくという方法です。今回補給物資として運ぶもの、これが6ページのほうにまとめております。代表的なもの4点挙げておりまして、これ以外にも物資を運ぶという役割を担っております。
同じ資料の9ページのところを見ていただきたいのですが、これは運用概要図で打ち上げからランデブー、係留を経て再突入までのシーケンスを書いております。今回先ほど話しましたように、安全評価の対象としては、実際に機体が係留されている間の安全について議論するというのが、我々のタスクでございますので、そこを説明している図でございます。
同じ資料の最後のページ、これが多分わかりやすいと思いますが、ここに今回7号機から8号機への違いをそれぞれ挙げております。調査・安全の立場から考えて、重要になります項目は3項目ございまして、まず変更点6ですね、右上のほうにあります電気モジュールというところに書いておりますが、姿勢センサの変更がございます。第2点が非与圧キャリアのところにありますが、変更点8で分離機構の国産化、という項目がございます。もう一つ、その二つ下のほうですが、変更点11で、HTV7用の曝露パレットをHTV8で廃棄するという、項目になります。これらの点について少し具体的な内容を説明させていただこうと思います。
付録の2のほうに移っていただきまして、9ページになります。まずセンサの件です。HTV7までは、「地球センサ」を搭載しておりました。これがHTV8では「恒星センサ」に変更になるということになります。HTV7まで使っていた地球センサの製造が終了したことを受けまして、代替として地球センサ並みの高精度要求を満たすものがないか調べたのですが、ないということですので、開発中のHTV-Xにも搭載予定の恒星センサを活用するというふうに変更してございます。
11ページにありますように、恒星センサのバッフル部に若干シャープエッジが存在するということと、逆に搭乗員が仮にセンサを蹴った場合、荷重に対する耐性がないということがありまして、運用で接触禁止領域等を設定することでリスクを回避するということを確認しました。
ちなみにここは通常では搭乗員がアクセスするような領域ではない、非常に特殊な領域なのでこのような運用制限で対応していくというふうになります。
第2点目です。13ページに分離機構の説明があります。これはISSのロボットアームに万が一何かトラブルが発生したときに、分離機構がホールドされてしまうということを避けるために、HTVを分離するための装置です。これはこれまでは、海外からの購入品でしたが国産化することで分離機構の性能及び交換に関連する技術を確認しております。これはインターフェイス的にはHTV7と同様でございます。ハザードについても従来と同等であるということが確認されてございます。
3点目は15ページになりますけれども、これはHTV7用すなわち前号機で打ち上げた曝露パレットをHTV8で搭載して破棄するという運用でございます。HTV7のときにHTV7用曝露パレットを持って帰れなかったので、これをHTV8で持って破棄することになりました。この場合、HTV7用の曝露パレットのHTV8への挿入に関して、曝露パレットが非与圧キャリア部への固定に関するハザードについての安全評価が実施されまして、適切に検証されているということを確認いたしました。
ちなみに参考ですが、今回HTV8の曝露パレットを持っていきますが、これはHTV9で同様にして廃棄するというような運用となっており、HTV9用の曝露パレットが最後に残りますので、これはISSのロボットアームで直接外部に投棄するという予定になっております。
以下資料としては、ハザードレポート等細かい内容が続いておりますけれども、全てちゃんとフォローしておりますということで資料をつけておりますが、大変細かくなりますので、説明としては割愛させていただきます。
ということで、幾つか変更がございましたが、それ以外の項目も含めて安全上の対応は十分とれているというふうに確認できております。それを結論として本文の2ページにまとめさせていただいておりまして、これを読み上げさせていただきます。
JAXAはHTV8のISSでの係留フェーズに際して横断的な審査結果と「こうのとり」7号機までの審査・運用実績を踏まえた安全対策について、NASAとの役割分担を含む所定のプロセスに則した安全審査を実施し、安全対策の妥当性が確認されたとしている。JAXAの安全対策に対して調査審議を行った結果、基本指針に定める各要件を満たしていると判断できます。以上のとおり、JAXAによる安全審査により妥当と判断されたHTV8に係る安全対策は、基本指針に定める各要件を満たしており、妥当であると判断いたします。
以上のとおり、審議内容で説明した要点を一枚書きですけれども、資料50-2-2に、まとめてありますので、後でご参考にいただければと思います。小委員会の報告は以上でございます。

【青木部会長代理】 ありがとうございます。ただいまのご報告についてご意見ご質問がありましたらお願いいたします。

【米本委員】 「恒星センサ」を代替で積まれたことについて、搭乗員のキック荷重には耐性がないため接触禁止領域を設定したと説明を受けましたが、具体的に何を目印とされたのか、対応はどうだったのでしょうか。
次に分離機構が国産化されたことによる審査の内容について質問させて下さい。資料の13ページにHTV7と同様であるとされていますが、具体的にどのような内容を審査されて、国産化の分離機構が安全上問題ないと判断されたのか、踏み込んで説明いただけないでしょうか。

【JAXA(白井)】 それでは質問にお答えします。JAXAの白井と申します。よろしくお願いします。
まず1点目の「恒星センサ」の搭乗員のキック荷重に対する耐性ということで、ここは運用上、この恒星センサの場所はわかってございますので、これをISSで運用をするときも、そこでクルーが作業を行う時にそこに触れないような基準を確立しまして、実施したと思います。
2点目は、分離機構のところでございますが、先ほど資料2の13ページのところに小さく書いてございますが、この分離機構が起こすハザードというのをもう一度考えまして、例えばこの分離機構が構造破壊をするハザード、ものを壊して、これ自体が爆発しかけるといったようなハザード、それからここが誤って意図せず分離してしまうということによって誤放出を生ずるというハザード等がありまして、それらに関して新しい分離機構が大丈夫かということを確認し、ハザードも問題がないことを確認しています。

【青木部会長代理】 他にございますか。よろしいでしょうか。それではこれまでのご審議を踏まえて資料50-2-1について小委員会からの提案どおりに決定するということでよろしいでしょうか。

【各委員】 「異議なし」

【青木部会長代理】 ご異議がないようですので、決定といたします。ありがとうございました。

3.国際宇宙探査について

【青木部会長代理】 それでは、3つ目の議題は、国際宇宙探査についてです。事務局から説明をお願いいたします。

【事務局(倉田室長)】 それではお手元の資料50-3-1、そして50-3-2にもとづきましてご説明をさせていただきます。
昨日、開催をされましたこちらの利用部会の下に設置されております国際宇宙ステーション国際宇宙探査小委員会のほうでご議論いただき、そして案としてとりまとめいただきましたこの資料50-3-1、50-3-2についてご紹介をさせていただきます。
こちらの小委員会では、約2年前に一度国際宇宙探査の在り方ということで、報告を取りまとめていただきこちらの利用部会でも議決いただいたところでございますが、その後も米国の動向等を踏まえながら、小委員会のほうで引き続き日本としての参画の在り方をご議論いただいてきたところでございます。米国を初めとする海外の動向を踏まえつつ議論いただきましたので、50-3-1の背景等をおまとめいただきましたところについてまずご紹介させていただきます。
国際宇宙探査の大きな流れは、月、火星そして新宇宙に集約されつつあるという流れを2018年3月に東京で開催されたISEF2国際宇宙探査フォーラムでも確認をされたという状況でございます。その中で、二段目にもありますとおり、米国のほうは、オバマ政権のときには一時火星を目指しておりましたけれども、トランプ政権になりましてそのステップとしての月、ということで、現時点では、アメリカの中で計画の前倒し等もございましたが、2024年の有人月面着陸そして2030年代の有人火星着陸を目指すアルテミス計画というものが発表されております。そしてその第一歩として月探査を支える有人拠点ということでゲートウェイを国際協力で構築するという計画が発表され、アメリカのほうから各国に参画が呼びかけられている状況でございます。これは米国としてもやはり1国だけで行うよりも国際協力で行うことが効率的であると、また先日の第6回国家宇宙会議でもペンス副大統領がアポロ計画との違いはやはり国際協力そして産業界との協力により行うことだということを明確に冒頭に述べられておりました。
このような中、カナダは既に今年の2月参画を表明し、欧州も本年11月末に予定されています欧州宇宙機関閣僚会議で参画方
針を決定する見通しと言われております。小委員会のほうでもご議論いただきましたけれども、やはり一旦出遅れてしまいますとなかなか盛り返しというのは容易ではないということ、そしてまた国際宇宙ステーションの計画に参画をしてきた経験を踏まえますとやはり初めからそういった検討に入っているということが非常に重要であるということで、引き続きその先頭集団に位置取りをしていくことが重要ではないかということで、一国のみでは有人宇宙探査に取り組むことが困難な我が国にとっては、今まさに好機が到来したということで検討されております。
また、一方で国際情勢を見ますと、米露だけではなく新興国による宇宙開発の加速がございまして、宇宙空間をめぐる地政学的バランスも大きく変化しているということについて小委員会でもご検討いただいておりまして、そのような中で戦略的に国際協力関係を構築することが不可欠であろうということでございます。
2ページ目でございますが、そのような状況の中で日米首脳会談が今年5月にございましたが、その中でも月探査に関する協力について議論を加速することで一致しまして、6月4日に開催されました宇宙開発戦略本部へもゲートウェイについての参画方針の年内早期決定に向けて内外の調整を進めるよう指示があったということでございます。
そのような中、この方向性は明らかであると書かれておりますが、そのような中で可能な限り早くどのような貢献をもって参画する方針であるかというのを示しながら参画を表明するべき時期ではないかと議論をいただきました。そしてこのような中で我々が意義ある部分を確保できるような形をとっていくことが重要であり、その中で日本が将来にわたり、欠くべからざるパートナーとして、そして日本人宇宙飛行士の月面着陸の可能性にも道を開くような方針決定の発表はタイミングが極めて重要であるということを小委員会でもご議論いただき、このような形で昨日議論をまとめていただいているところでございます。
このように、今申し上げましたような背景のところ、もう一つの資料50-3-2に参考資料としてつけさせていただいております。例えば2ページ目でございますけれども、月探査をめぐる各国の動向ということでそれぞれの国の旗印をつけておりますが、もちろんアメリカの計画が2020年代から月に色々とミッションが計画をされていますが、そこの中でやはり中国が2015年代から複数の計画を着々と立てているというような状況がうかがえるかと思います。またそのような中で先ほど申しました3ページ目にアメリカの計画を書かせていただいておりますが、先ほど申しましたアルテミス計画とは、元々こちらの利用部会にも昨年の12月にこの小委員会の検討状況の中間報告ということで報告をさせていただきましたが、その時にはゲートウェイということで2026年までに組み立てて2028年に有人着陸という計画をご紹介させていただきましたが、その後アメリカでも3月にペンス副大統領が月面着陸の前倒しという発表をされました。2024年の月南極への有人着陸をして、その後ゲートウェイを引き続き組み立て完成形としつつ、2028年までに持続的な月面探査を実現するということです。また、このアルテミス計画の目的というのは、月で持続的に活動できる能力を実証すること、そして2030年代の有人火星着陸を実現するために必要な能力を培うことだということも明確にされているところでございます。また、そのような中で月面の科学ですとか、月に水氷があるというふうに言われておりますが、その場の資源利用の研究等もこういった取組の中で進めていくこと等がアメリカで進められているところでございます。
また、4ページ目は火星について紹介をさせていただくとともに、5ページ目には各国のこれまでのローバー等のご紹介をしています。ご参考までご参照いただければと思います。
6ページ目に、月面環境の特性ということでこれまで50年前にアポロ計画で一度人は行っておりますけれども、やはり月面が非常に厳しい環境でありますので、そのような熱環境ですとか日照環境、放射線、様々な厳しい環境の中で持続的に活動するためにはどういう技術が必要か、このようなことも委員会のほうでは確認をいただいております。
このような中でございますけれども、ワードの縦紙のほうへ戻っていただきまして、国際協力による月探査に日本が参画する意義としては、どういうことがあるかということでございますが、こちらのほうは実は2年前のこちらの小委員会でもご議論いただき、そして2年前こちらの利用部会でもご報告をさせていただきました。その報告書で既にその参画の意義というのは一度まとめさせていただいておりますので、それを最近の動向を踏まえながらもう一度整理をしたという状況でございます。
簡単にご紹介させていただきますと、まず国際協力への参画意義でございますが、ISSで既に明らかなとおりでございまして、外交安全保障上そして産業競争力、科学技術や人材育成など様々な観点からの意義があるということ、そして当面月を目指すということについては、やはり月が火星そしてさらにその先の天体の探査に向けた実験場として、近くにあって最適であること、例えば「近い」という意味では通信ですとか物を運ぶ輸送という面で最適であるということ、そして月極域には水氷という資源が存在する、あるいは日照地点があるなど、そのようなことからも月を目指すということには、一定の利があるであろうということでございます。
また、月を当面の目標とすることは先ほど申しましたように2年前の報告書でも整理をいただいたところでございますので、そういう国際協力で月を目指すということであれば、積極的に参画すべきということでご議論をいただいております。
また、この月面探査を持続的に行うということについては、月と地球を直接行き来するのではなく、その中継的な拠点をつくるということは効率的であるというのは各国との議論の中でも整理をされているところでございますし、またそのISSを通じて培ってきた知見も発揮できるということで、我が国としてもメリットがあるところであることにもご議論いただいております。
このような中、このゲートウェイ建設ですとか月面探査における国際協力に参画するというのは当然のことながら日本の強い分野そして諸外国から求められる貢献をしていくことが必要でありまして、またそれだけでなくその参画することが、我々の科学技術や産業を前進させる、またこの委員会でもご議論がありましたが、人材育成ですとか教育の促進にもつながる、そういったような形で参画すべきではないかということでご議論いただきました。
こちらの5ページ目でございますが、別紙1という形でもう少し詳しく2年前におまとめいただいた参画意義を、記載をさせていただいております。このような形で意義が確認できるということで、2ページ目の3ポツ目でございますが、早期に参画を表明することが極めて重要ではないかということでご議論いただいております。
そのような中ではございますが、参画をする場合にはどういう形で協力の取り組みをするかということでご議論いただきまして、これも2年前の報告書で我が国として優位性波及効果が見込まれる4つの技術を整理いただきました。これが、パワーポイント資料の7ページ目にございます。7ページ目のこの横の表が2年前の報告書にまとめていただいたものですが、この4つの技術というものを念頭にそして先ほど申しましたようなアメリカの動向や今後我が国として可能なリソースあるいはスケジュールそういったものを総合的に勘案しながら、現時点で考えられる協力の取組としてはどういうものがあるかということで、縦紙の資料の3ページ目に4つ項目を出させていただいていますが、そのイメージ図を6ページ目のこの黒っぽい背景の資料につけています。 こちらまず一つ目の項目ですが、アメリカが2024年までにまず初期型のゲートウェイを構築しますのでそこに我が国が強みを有する技術や機器を提供するというのが1点目でございます。例えば、ポンプ、バッテリー、有人滞在を可能とするための熱制御ですとか、空調とかいったものでの貢献でございます。
2点目が、ISSでもう既に補給というのを日本は担っていますけれども、その補給での技術を生かしながらゲートウェイに燃料や物資を補給するということでの貢献です。
そして3点目には、アメリカが今2024年に月の海の南極への着陸を目指しておりますが、やはり着陸地点の選定等には位置上のいろいろなデータが必要となってまいりますので、日本としてもピンポイント着陸を目指していますSLIMですとか、あるいは現在検討中ではございますが、インドとともに月極域の探査というものを検討していますので、それらの取り組みから得られる各種データを共有していく、そのようなことも一つの協力取り組みとしては考えられるだろうということで3点目に挙げさせていただいています。
4点目につきましては、今年の3月にトヨタさんの発表などもございましたが、将来的なところで月面での持続的な探査活動を支える移動手段、例えばローバーと呼ばれるものですが、そういったものの開発も、今後協力としては考えられるのではないかということであげています。
3ページ目にお戻りいただきまして、今述べました4点は現時点で考えられる取り組みということでございますが、なお、こちらの取組については今後さらなる検討精査が必要で、例えば具体的にどのぐらいの費用がかかるか、どのようなスケジュールになるか、そういったことについては引き続き精査が必要であるということです。
また、現在宇宙関連産業のほうでも月に対する取組への関心が非常に高まっておりますけれども、先ほどのトヨタではありませんが、幅広い産業界の参画を呼び掛けていくことも必要です。
他方国際交渉、これは国際協力に関して様々な交渉を今後進めていくわけですけれども、宇宙飛行士によるゲートウェイの建設ですとか、月面着陸の機会を確保して我々としてもプレゼンスを確保していくことにも留意が必要ではないかと、こういった点も留意事項として挙げていただいています。
また、これまでISS計画で得られた技術成果を最大限生かして費用対効果を高い形でやっていくということ、さらには探査で必要になる技術を当面ISSを使って実証していく、そのような形でISSから国際宇宙探査までをシームレスに効率的に進めていくということにも留意が必要ではないかということ。また最後のページではございますけれども、将来的にはいろいろなさらなる発展としてゲートウェイの発展という伸張をしていくというところもあります。さらに火星、さらに新宇宙という展開もある中で将来想定されるニーズというものも念頭におきながら引き続きの技術の展開というものを戦略的に考えていくことも考慮すべきであるということです。
最後でございますが、今回のご議論の中心は、国際宇宙探査ということで探査を中心にご議論いただいたところでございますが、そのISSを含みます地球低軌道の今後の在り方につきましては、現在ISSに、国際的な議論の中で当面、2024年というところまでは運用が合意されているところでその先についてはまだ国際間で議論がなされておりませ。そういう中で将来的には物理的な寿命も迎えますので、ISSの運用が終了された後の地球低軌道の利用ニーズや市場というのを見据えながら、その運用が終了したときにどういうような対応オプションがあるのか、そういたものを今から検討して、そこに向けた取り組みを、スムーズにやっていくことが重要ではないか、そのようなことを最後の留意事項の一つとして挙げていただいているところでございます。
先ほど、4つの技術といいますか、当面の協力として考えられる取り組みとして4つのポイントを挙げさせていただいておりますけれども、それについてそれぞれ、先ほどのパワーポイント資料で13ページ以降ですが、それぞれどういう技術を展開していくのかというものを資料としてつけさせていただいております。
17ページ以降には、現在インドと協力を検討しております探査機についての検討状況、例えば18ページには月極域という探査を各国目指しておりますが、条件のいい場所というのは非常に限られておりますので、国際競争になっているというような状況、またそのような中で19ページですがJAXAにおいてもいろいろな技術開発が進められております。
20ページですが、そういう中でこれはまだ検討状況ではございますが、ロケットとローバーは日本が、そして着陸機はインドが、そのような分担案が検討状況としては出されています。
また、21ページ目ですが、こちらは小委員会でも複数回ご議論いただいたところですが、ISS計画で得られた成果や知見をしっかり国際宇宙探査に生かしていくことが非常に重要であるということは、繰り返しご議論をいただきまして、例えばISSでは、最初は国主導ということで進められましたけれども、今回の国際宇宙探査では最初から産業界も巻き込んで行うことが必要ではないかといった点、あるいはそのスケジュール全体の変更ですとか、いろいろなトラブルというのがISSでもございましたので、そういったことは国際協力では起こるという中で、どのように全体計画をしていくことが必要か、これまでISSで学んだ知見や教訓をぜひ生かすべき、マネージメントに生かしていくべきだ、様々な点からご議論いただいたところでございます。
また、22ページが先ほど報告書の中でも述べさせていただきましたが、国際宇宙探査に向けて必要になる技術をぜひISSを最大限活用して使っていくべきだと、いうことで具体的な取組などを紹介させていただいています。
最後の23ページにつきましては、留意事項の最後で紹介させていただきましたけれども、国際宇宙ステーションの将来の姿というのを見据えながらどのようなニーズがあるのかというのを今から検討を加速していくべきだということで、今後そのようなことを産業界の方々とも共同で検討していくということにしております。
以上で昨日ご議論をいただいた内容をこちらの資料50-3-1におまとめいただきましたので、本日ご議論いただければと思います。以上でございます。

【青木部会長代理】 ありがとうございます。ただいまのご説明についてご意見をお願いいたします。

【芝井委員】 理由は後で申し上げますが、一文加筆できないかという意見です。資料50-3-1の1ページ目の下から2行目辺りに、特に「中国やインドが月・火星探査や有人探査を加速する中、我が国のプレゼンスの維持・向上の観点からも」、と書いてありますが、前半の「有人探査を加速する中」の次に、「国際協力による宇宙の平和利用の増進及び我が国のプレゼンスの維持・向上の観点からも」、といいうふうに付け加えられないかという意見です。その理由は、2年前にも申し上げましたが、このご報告の全体には詳しく書かれているのですが、一つ抜けている観点というのがあると思いまして、ISS自体に、どういう価値があったかという総括がされていないということです。日本がISSに参加したことの効果は書かれているのですが。それと同様に次の国際宇宙探査に関しても日本が参加するとどういう意味があるかは書かれているのですが、その国際宇宙探査自体が、つまり月のゲートウェイをつくること自体の価値が、あるいは目的が書かれていないのですね。非常に大事なことの一つは、今申し上げましたように国際協力による宇宙の平和利用を促進する点にあるというふうに私は思います。
前回の別紙1ですが、つまり資料の5ページ目ですが、別紙1の上から4、5行目のところには、きちんと、「国際宇宙探査という平和利用の平和目的の協力が行われ」と書いてありますので、それに対応した文言を先ほどの1ページのところに加えられたらという意見です。以上です。

【青木部会長代理】 他にありますでしょうか。藤井委員どうぞ。

【藤井委員】 どうもありがとうございます。国際宇宙探査によるその国際連携、それからリユースは無人に比べて格段に上がっていることは、よく理解してきたのですけれども、その一つ、有人による研究ですね、宇宙科学の研究面でどういうメリットがあるのか、という点をぜひ聞きたいなと思うのですが。それは国際宇宙探査の中に、当面は月と火星が対象ですので、月と火星の科学探査等について、科学研究のためのプロジェクトは今後単独で存在するのか、それとも国際宇宙探査の中に組み込まれるのかということですが、宇宙政策委員会等では、一応別々に立てるような感じの議論があったようには思うのですけれども、その辺の仕分けはどうなっているかということをお聞きしたいと思います。当面は、無人も有人も含めて、例えば火星の衛星探査もこういう国際宇宙探査の中に組み込まれるのか、お聞きしたいと思います。

【青木部会長代理】 少しご意見をまとめてと思うのですけれども、他にないでしょうか。 鶴岡委員どうぞ。

【鶴岡委員】 そもそもの前提として、この国際宇宙探査には日本も参画すべきだというのは総意で、その前提でこの報告書はできているということですね。他方でこの3ページの下のほうにもありますように、厳しい財政制約を踏まえ厳格に評価するということでして、おそらく、政府内にも懐疑論や反対論があるという前提で、我々としてはこれに参加すべきであるというのが報告書の位置づけですね。そこで想定されるのは、具体的にはどのような反対論・懐疑論か。我々が参画意義を提示するにあたっては、現に存在する反対論・懐疑論に、予め対応するようにしておくことが重要なのだと思います。その観点で、参画意義の提示は極めて重要でして、そうした重要なものが別紙に位置している現在の形で果たして本当にわかりやすいのかというのが、一番気になったところであります。
参画意義を含む別紙の内容自体は、2年前の議論に基づくものというご説明でした。この重要部分をアップデートする必要があるのか、ないのかという点と、この意義のところで4つ挙がっていますが、これらの優先順位、この4つの中で何が一番重要かということに関しては、掲載番順という理解でよろしいのか、あるいは特に優先順位はついていないということなのかということについてもお教えください。特に優先順位ついていないとしたら、それはよくないのではと思います。これにしっかり優先順位をつける、もし4つ意義があるというのであれば、どれが一番重要かというところを明示すべきだと思います。というのは、希望する形での予算とか参画の形式ができない場合には、何を優先するのかが当然問われることになると思いますので、予め明確にしておかなければならないのではというのがコメントです。

【青木部会長代理】 永原委員どうぞ。

【永原委員】 今議論すべきことではないかもしれないのですが、そもそもこの国際宇宙探査という言葉つかいが問題ではないかと思います。文章中には国際協力という言葉も出てきますが,これは一般的な国際協力ではなくて、アメリカが中心になって進める計画への協力でしかないわけですね。そのことがこの書類の中では意図的に同意語のような使われ方をしているのですが、これはマスコミであるとか、一般の人の目に触れたときには誤解を招きかねず,適切ではないと思うわけです。国際宇宙探査といいつつ実はカッコつきみたいな言葉である以上、誰が読んでも誤解のないように明確に示すべきでしょう.実際この文章の中でも中国やインドは協力ではなく,単独でやろうとしているということを明確に書いているわけです。これはISSに関する総括の問題とも絡んでいて、本来であれば日本は宇宙基本計画で、宇宙をやっていくことが民間にどれほど貢献できるのかとか、すそ野がどのくらい広がれるかということが今一番強く求められているのですが、ここで書かれていることはご説明も2年前も同じですが、一旦乗り遅れるともう途中で乗れないというものです.その際の議論でも,一旦乗ってしまったら途中で降りられないのではないかという議論もあったわけですが、今回も同じ問題ですね。宇宙科学探査についてここの委員会として議論するという観点からすると、宇宙政策の青字の①宇宙安全保障という内容での宇宙協力・日米同盟強化のゆえの貢献は明確に書かれているのですが、文部科学省として本当に推進すべきものかという部分は実はほとんど抜けています.それでもやる方向であれば、逆にこれはアメリカが中心となってやる宇宙探査であるということを明確にしておくべきで、ISSの延長にそれが来ているということを明確にして、なおかつそれは日本の社会への貢献が何であるかということをもう少し明確にしないといけないと思います。乗り遅れると困るとか国際協力に貢献できるんだという視点だけがここで書かれているのは,文部科学省が進める政策としては不十分だろうと思います。

【青木部会長代理】 横山委員どうぞ。

【横山委員】 今の永原委員の意見に強く賛同して、補足させていただきます。アメリカのナショナルプロジェクトに協力する際に、我が国として何を目標にして協働するのか、その位置づけをはっきりと認識して議論を深めていただきたいと思っています。また、ご説明の中で違和感があったのが、目的が乗り遅れるというところで、今から利用方法を一緒に考えていかなければいけないというご説明をいただいているのですが、やはり先に目的を考えるべきであって何のためにこれをやるのかと、しかも文部科学省であれば科学政策としてどのような位置づけで、何のサイエンスをやるためにやっていくのかということは同時に考える必要があると思います。もちろんアメリカとの協働が先にある現状は否定できないですし、全体として国として考えることもございますが、これらを構造化してご議論いただかないと、ただ乗り遅れるからやりましょうというのでは、社会は納得できないと思います。

【青木部会長代理】 ありがとうございます。これは昨日小委員会でご審議があったものですが、このまま事務局からの提案どおりに決定することは、難しいと思いますので、本日はご欠席ですが、部会長預かりとさせていただくことになるかもしれません。2点事務局にお願いしたいのですが、今のご意見についてのご回答ができる部分のご回答、そして今後の対応について教えてください。

【事務局(倉田室長)】 まず、ご質問等いただきました点でございますが、国際宇宙探査の定義というところが1点あるかと存じます。これにつきましても、小委員会で昨日もご議論いただいたときに、今回先ほども申し上げましたような米国の動向そして日米間での動向、そういった動きがある中できのうご議論いただいたことは、「今参画を早期に表明するということ、また、乗り遅れないということが重要ではないか」と、そういう視点を少し強調するような形でご議論いただいたところでございまして、その中で2年前にご議論いただいたこの報告書にまとめている内容はそこでもう一度繰り返すことはできるだけ避け、ポイントだけ絞った形にさせていただくほうが議論のまとめとしてはいいのではないかということで、2年前の報告書に書いてあることはそちらを引用する形となっております。国際宇宙探査の定義につきましても、2年前の報告書で一旦定義をさせていただいておりましたので、同じ定義をこの1ページ目の一番下の注のところに入れさせていただいておりますが、「国際宇宙探査とは」というところで入れさせていただいています。
確かにご指摘のとおり、今アメリカが中心となって行っているISSの次のプロジェクトというものが念頭にはあるわけではございますが、先ほどもご紹介させていただきましたインドとの月極域の探査というものも、一つの国際協力でインドとのみ行うわけではなく、このインドと行いますローバーにアメリカとか、欧州からも色々とミッション機器を載せるということも調整を進めているところでございますので、そういう意味でゲートウェイ、あるいはアルテミス計画だけではなく、ほかのものも含まれるという観点から特にアメリカとは限定はせずに、2年前と同じ定義をつけさせていただいているというのが、こちらの報告書のつくりになっています。また、2年前に一旦整理したところはできるだけそちらを参照するということで、参画意義についても参考と言いますか別紙という形になっているところでございますが、その参画意義順位につきましては、当時の議論でやはり「外交安全保障」ですとか、「産業競争力」というところに非常に重きをおいていくご議論をいただいていたということです。その辺は宇宙基本計画というものを念頭におきつつ、そのような形になっていますが、その中でこの意義というものが2年前の内容を一応なぞってはいるわけではございますが、現時点でもそれが同じような観点で確認されるということで今回も別紙にてそのまま整理をさせていただいているという状況でございます。
また、宇宙科学との整理ということでご指摘をいただきましたが、この宇宙科学との整理でも先ほどの国際宇宙探査の定義にも関係するかもしれませんが、国際宇宙探査というものは、有人宇宙探査及び有人探査のために先行して行われる無人探査ということで、有人のみをさしているわけではないということがまずあります。ただ有人探査のために先行して行われるということで、宇宙科学でのボトムアップで提案が出てくるものとは差別化がされるということで、どちらかといえば内閣府のほうで今ご議論いただいている、いわゆる宇宙科学のミッションとは区分けがされるのだと思いますが、一方でこの国際宇宙探査でやっているものが宇宙科学とは全く関係がないものかというとそうではなく、国際宇宙探査でやっている取り組みが宇宙科学にも貢献をしますし、逆のパターンももちろんあるかと思います。そういう観点で5ページ目の別紙の最後ですが、当面月を目指すことの意義の一つとしても科学的知見の創出の観点というのも入っておりまして、月を探査するということで得られる一つの観点ではございますが、これも挙げさせていただいているということで、全く宇宙科学と切り離せるものではないということで、その関係性も言及させていただいているという状況でございます。
また、ご指摘をいただいた国際協力への取組に対してはいろいろなご意見がある中で、さらなる精査が必要で、特に我々として、いろいろな意議を確認できるわけではございますが、その意義を確認するために何でもかんでもできるかというとそうではないということで、特に厳しい財政状況の中でどれを優先的にやるのか、またほかの宇宙の分野だけを見ましても、宇宙開発利用という分野で全体の政策の中でどういったものをやるべきなのかといった議論はもちろんございますので、そういった中でここはあくまでも現時点で考え得る協力ということにさせていただいていますので、そういうものを引き続き検討や精査が必要であり、厳しい財政制約を踏まえつつ評価を行うという観点でご指摘をいただいているところでございます。
先ほどの平和利用のところにつきましては、ご指摘のとおり5ページ目の意義のところに、2年前にも同じような議論をさせていただいておりますので、そういったところはこちらのほうにも反映をさせていただくことを考えております。

【青木部会長代理】 この部会としての文章につきましては、このまま決めるということは難しいと思いますので、部会長預かりという形で進めることで手続きとしてよろしいでしょうか。ここでそのまま採択というわけにはいかないと思いますので、部会長扱いで一応この場での審議は終了ということでよろしいでしょうか。

【各委員】 「了承」

【青木部会長代理】 ありがとうございます。ではそのように進めていきます。
その次ですが、4の議題が非公開となりますので、事務局から連絡事項があれば、お願いいたします。

【事務局(原田企画官)】 会議の資料と議事録の公開について申し上げます。
宇宙開発利用部会の運営規則にもとづきまして、本日の会議資料は非公開審議資料を除き、公開とさせていただきます。後日文部科学省のホームページに掲載させていただくこととなります。また、議事録につきましても非公開部分を除きまして、公開となりますので、委員の先生方には、ご確認いただいた後、当省のホームページに掲載をさせていただきますので、ご確認のほどよろしくお願いいたします。かっこのその他の説明としては以上となります。

【青木部会長代理】 ありがとうございます。それでは非公開資料に移りたいと思いますので、プレスの方、一般傍聴者の方はご退席をお願いいたします。

[一般傍聴者退出]


(説明者については敬称略)



―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課