宇宙開発利用部会(第49回) 議事録

1.日時

令和元年7月10日(水曜日) 15時00分~16時00分

2.場所

文部科学省 3階1特別会議室

3.議題

  1. 安全確保に関する事項の審議・検討のための評価指針・評価基準について(宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)等物資補給機の運用に係る安全対策の評価のための基本指針(案))
  2. 超高速インターネット衛星(WINDS)運用終了報告及び成果報告について
  3. その他

4.出席者

委員

部会長         白石 隆
部会長代理      青木 節子
臨時委員        井川 陽次郎
臨時委員        大西 卓哉
臨時委員        鈴木 健吾
臨時委員        高薮 縁
臨時委員        永原 裕子
専門委員        藤井 良一
臨時委員        横山 広美
臨時委員        米本 浩一

文部科学省

大臣官房審議官                    岡村 直子
研究開発局宇宙開発利用課長           藤吉 尚之
研究開発局宇宙開発利用課企画官        原田 大地
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐       渡邊 真人
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐       岡屋 俊一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 第一宇宙技術部門
  理事補佐                       舘 和夫

5.議事録

【白石部会長】 それでは、時間が参りましたので、宇宙開発利用部会(第49回)の会合を開催したいと思います。
まず事務局から今日の会議についての事務的な確認をよろしくお願いします。

【事務局(原田企画官)】 本日は、宇宙開発利用部会に所属いただいております17名の委員の先生方のうち10名の先生方にご出席いただいております。運営規則に定める定足数の要件を満たしております。
次に、本日の資料でございますが、お手元の議事次第4ポツのとおり配布させていただいておりますので、過不足等ありましたら、適宜、お申しつけいただければと思います。

(1)安全確保に関する事項の審議・検討のための評価指針・評価基準について

【白石部会長】 それでは、議事に入りたいと思います。
第1の議題は、安全確保に関する事項の審議・検討のための評価指針・評価基準に関して、宇宙ステーション補給機「こうのとり」等物資補給機の運用に係る安全対策の評価のための基本指針についてです。これは宇宙活動法が昨年11月15日より施行されており、それに基づく当該評価指針・評価基準一部の見直しでございます。
これについて事務局から説明をお願いします。

【事務局(原田企画官)】 資料49-1、表題、宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)等物資補給機の運用に係る安全対策の評価のための基本指針(案)をごらんいただければと思います。
こちらは、ただいま部会長の白石先生よりご指摘いただきましたとおり、昨年、宇宙活動法が施行されておりますので、いわゆる人工衛星管理というところにおいて打上げと再突入の部分に関しましては、内閣府が安全管理を担当しています。ただし、「こうのとり」は打ち上げられてからその後、国際宇宙ステーションのほうに係留されるわけでございますが、その間は宇宙活動法の対象外となっております。その部分について引き続き本部会で、総合的かつ系統的に安全確保の確認をするために基本指針(案)の改定を行うという趣旨でございます。表題にございますとおりHTV等というふうに「等」をつけてございますが、現在開発中のHTV-Xがありますので、こちらのほうも読み込めるようにという趣旨で等をつけさせていただいております。
1ページ目をごらんください。1ポツにつきまして、宇宙ステーション補給機には「こうのとり」の呼称がございますが、HTV等と等をつけさせていただいております。
また2ポツの適用範囲ですが、各段階というのはいわゆる、打上げ、接近、係留、離脱、再突入という形で、それぞれのフェーズごとにHTVが運用されるわけでございます。基本的には、打上げ及び再突入につきましては、内閣府の通常の宇宙活動法によって安全対策の確認が行われるということですので、本部会におきましては、主に宇宙ステーションにおける係留の間にかかわる安全対策についてご審議いただくということになります。そのため、打上げ及び再突入にかかわる分に関して記載を取り除くような改正を行いたいという趣旨でございます。
2ページ目も同様にごらんください。例えば(3)に有人活動の特殊性への配慮とありますが、こちらは、「接近」、「離脱」といった文言を削除しており、その他の部分のHTVにつきましては、「等」という形で現在開発中のHTV-Xを読み込めるような改正をさせていただければと考えております。
4ページ目をごらんください。幾つか推進や誘導・制御のところで、HTVは自律的に国際宇宙ステーションに接近してドッキングし、用途が終われば離脱して再突入するわけですが、今回の本安全指針の範囲は係留中にかかわる事項となることから、主にそちらに特化した係留に修正させていただいています。
その他のページも基本的には呼称にかかわるところを問うという形で記載させていただいています。以上のように極めて技術的な修正でございますが、基本指針案という形でお諮りさせていただければと考えております。
以上でございます。

【白石部会長】 今の説明について何かございますか。はい、どうぞ。

【大西委員】 大西です。先ほど宇宙活動法で、打上げ、再突入の部分はカバーされるという話だったのですが、接近と離脱に関して削除されたという点はどういう背景なのでしょうか。

【事務局(原田企画官)】 接近については、国際宇宙ステーションに接近して有人の宇宙構造体であるステーションにドッキングするまでが打上げであり、内閣府が審査する宇宙活動法の範囲は宇宙ステーションと接続するまでとなっております。大西委員よくご存じのように途中ランデブー飛行などをして徐々に接近すると思いますが、その部分に関しても基本的には内閣府の宇宙活動法で審査されて、接続するところから本部会における安全対策の確認をいただくといった仕切りで考えさせていただいております。

【大西委員】 承知しました。ありがとうございます。

【白石部会長】 ほかに何かございますか。どうぞ、藤井委員。

【藤井委員】 素人質問で恐縮ですが、打上げから戻ってくるまで一連のコースを使うと思います。その中でいろいろ分けてみてもオーバーラップするところなどがあると思うのですが、なぜこの係留の部分だけを取り除いたのでしょうか。打上げの部分等、技術的には非常に共通の部分が多い中で、ここだけ取り除くというのは何か国際的な枠組みの中での仕切りの問題なのでしょうか。

【事務局(原田)】 まず内閣府が、係留している間に関しては宇宙活動法の対象外であると整理しているということが事実関係としてあります。その背景とては、内閣府が審査の対象としている打上げや再突入というフェーズは、あくまで無人機ということで、安全水準が全く違うものと解釈されていると理解しています。有人機に接続する間に関しましては、ある意味、人がいるということで、安全基準がかなり異なるといった観点から、係留の間に関しましては内閣府の安全指導の対象となっていないというふうに承知しております。

【白石部会長】 よろしいですか。はい、どうぞ。

【米本委員】 今の質問に関連して、係留のところだけということであれば、全部内閣府でやってもらってもいいのではないかと思います。非常に些細な部分だけをこちらが引き受けるということは少し変だという気がしたので、係留のところも全部やっていただいたほうがすっきりするのではないかと思う次第です。おそらく答えはないと思うので、コメントで終わりにします。

【白石部会長】 ほかになにかございますか。よろしいですか。
それでは、いろいろと釈然としないことがあることはよくわかっておりますが、ご提案とおりこれについて部会として決定するということでよろしいでしょうか。

【各委員】 「異議なし」

【白石部会長】 どうもありがとうございました。

(2)超高速インターネット衛星(WINDS)運用終了報告及び成果報告について

【白石部会長】 では二つ目の議題は、超高速インターネット衛星(WINDS)運用終了報告及び成果報告についてです。
これまでに軌道上運用が完了した超高速インターネット衛星(WINDS)に関して、その結果についてJAXAからお願いします。

【JAXA(舘)】 JAXAの舘でございます。よろしくお願いいたします。
超高速インターネット衛星WINDSについての運用終了報告と成果の報告を行いたいと思います。
資料49-2に基づき説明を行った。

【白石部会長】 どうもありがとうございました。以上の説明については何かございますか。はい、どうぞ。

【永原委員】 当初計画を終わられ、大変立派な成果を出していただいて、特に社会的に大きな貢献につながる成果で、ありがとうございました。
その上で質問したいのですが、当初計画の結果としては非常にすばらしいレベルであり、基盤形成に貢献したということでした。それがその後にどのようにつながっていっているのでしょうか。もちろんこういうものがどういうときに必要なのか、特に災害時の通信手段の確保に重要であるという大変重要な知見が得られたわけですが、片やインターネットの世界はさらに進んでいるわけで、つまりここで得られた教訓がどのように今後の計画などに具体的につながっていっているのか?現在それがどうなっているのか? ということについて、結果に対するご質問というよりは、少しエクストラな質問ではありますが、お聞かせ願いたいと思います。

【JAXA(舘)】 先ほどのDMAT(災害医療派遣チーム)の例で説明したいと思います。16ページでございます。DMATはこのWINDSのアンテナを使いたいというご希望があったのですが、WINDSが停波して使えなかったため、商用衛星を使うということで転換をいたしました。本来ならWINDSの155Mbpsに対し商用衛星は1Mbpsぐらいの細い線になりますが、災害時には地上の回線がだめになったことを想定して動く関係で衛星通信しか方法がないということで、彼らは衛星を使ってやる方向で、衛星ならではのことがここで反映できたと考えております。

【永原委員】 JAXAとして今後は、こういう実験をもとに何かをやられることはないということですか。

【JAXA(舘)】 JAXAで現在この通信実験はやっていませんが、一つとしては技術試験衛星9号機というのを現在開発しております。WINDSもNICTとJAXAの共同プロジェクトでしたが、技術試験衛星9号機も総務省とNICTとJAXAの共同プロジェクトとなっており、通信部分については今回、総務省が担当してKaバンドの通信実験をやることになっています。

【白石部会長】 ほかに何かございますか。はい、どうぞ。

【井川委員】 素人なので教えてほしいのですが、WINDS停止後は静止軌道上を行ったり来たりしている状態でずっといるのでしょうか。質問する理由は、静止軌道は現在満杯状態で、このようにふらふらする衛星が軌道上から離脱しなくていいということは日本としてどうなのかということが一つと、今後こういう状態で放置された衛星が増えてしまうと、日本だけではなく他の国の衛星もあるのでしょうが、静止軌道という貴重な資源がどんどん失われてしまうので、こういう対策は基本的に考えているのか、あるいはもう既になんらかの対策があるのか教えていただけますか。

【JAXA(舘)】 まず、衛星が壊れてしまった場合には3万6,000キロの軌道上をこういう形で動くことはやむを得ないとのことです。その場合、衛星はデブリですかと言われれば、デブリです。ただし落ちることはなくて、3万6,000キロの軌道上をずっと行ったり来たりという状況になります。多少南北には変わるかもしれませんがそういう状態です。では他の衛星にぶつかる可能性があるかというと、我々でも衛星を監視している部分もありますし、アメリカの連合宇宙運用センターで監視しているものもありますので、このような監視体制で対応する形をとることになります。一方で本来はどうあるべきか ということは決まっていて、運用を終了する前には、例えばデオービットといって軌道を少し上げたりあるいは下げたりという操作をやらなければいけないことになっています。我々も、21ページにデオービットに必要な推薬と書いてありますが、残推薬量がこの推薬量を下回る前にデオービットさせるという形を考えており、必ず静止軌道を出るような計画にしておりました。ところが、今回は原因がわからなく停止したというとても残念な結果になってしまったという状況です。基本的にはデオービットいたします。例えば過去に「こだま」という衛星がありました。これは最後、少し不安定になったのでデオービットいたしました。従いまして基本的には静止軌道から外れるというのが国際理解となっております。

【井川委員】 WINDSでもデオービットをやるのですか。

【JAXA(舘)】 WINDSではもうできないので、申し上げたように現在はデブリになっており、後は米国の連合宇宙運用センターからのウォーニングを見ながら、ぶつかることはあまりないとは思いますが、場合によっては相手衛星側に回避コマンドを打っていただくという形にならざるを得ない状況です。現在のところ静止衛星で物等にぶつかったということはないです。

【白石部会長】 よろしいですか。ほかにありますか。どうぞ。

【高薮委員】 永原委員のご質問の続きになるのですが、大変よい成果を出していただいたと思います。質問になりますが、商用衛星による社会実装につながったということですが、この商用衛星の軌道はどのようなものですか。

【JAXA(舘)】 軌道は基本的に静止衛星軌道です。経度が違うだけです。

【高薮委員】 商用の静止衛星ということですね。そうしましたら、静止軌道の実験がそのままつながったということですね。わかりました。ありがとうございます。

【白石部会長】 ほかに何かありますか。どうぞ。

【青木部会長代理】 軌道位置を保持するという話の続きになります。現在、デオービットできないということは、よくあることですから構わないと思うのですが、衛星の軌道位置を失わないように、早急に東経143度に別のJAXAの衛星なりを打上げていただくようにはできないものでしょうか。非常に貴重な位置ですので、1回失ったらもう戻ってこないと思いますので、それを検討していただきたいと思います。

【JAXA(舘)】 ありがとうございます。現在この位置に、先ほど言いました技術試験衛星9号機を持っていくということで国際的な調整を進めていまして、特段問題はないというふうに聞いております。

【青木部会長代理】 はい、ありがとうございます。

【白石部会長】 ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。

(3)その他

【白石部会長】それでは三つ目の議題に移りたいと思います。事務局から報告事項をよろしくお願いします。

【事務局(原田企画官)】 議題の3つ目、その他報告事項という形でご報告させていただきます。資料49-3-1をご覧ください。前回から第6期科学技術基本計画に向けまして利用部会におけるご検討ということで、ご議論いただいています。前回の部会のご議論と、その後メールなどにより追加のご意見などを伺いまして、前回主にご検討いただきましたシステム改革の部分ですが、こちらにかかわるご意見につきまして、資料の内容で事務局として整理をさせていただいております。
システム改革のところは、前回ご提示させていただいた事項としては、研究人材と研究資金と研究環境の改革、また大学改革等という形で主な論点を提示させていただきました。最初の(1)の研究人材に関しましては、全て読み上げることはしませんが、やはり宇宙開発の特性といいますか、長期のものが多いというところがありますので、そういったことを踏まえた人材育成ということが重要ではないかといったご意見などいただいております。
1枚めくりいただいて、研究資金の改革につきまして、こちらも必ずしも宇宙分野に限定されるものではないのですが、資金の多様性が重要ではないかといったご指摘をいただいたと承知しています。
さらに次のページをご覧ください。(3)の研究環境の改革につきまして、こちらのほうはJAXAが持つもの、あるいは「きぼう」などに、貴重な研究設備がありますので、これらの共用を促進すべきではないかといったご意見をいただいております。
最後のページですが、大きな2ポツ、3ポツということで、未来社会デザインとシナリオへの取組みと、そのデザインを実現する先端基礎研究技術開発という形で、前回のご議論とその後のメールなどによる追加のご意見という形で、提示させていただいております。学術の重要性といったご指摘をいただき、また、個別の宇宙の技術といったものを加えていくことが重要ではないか、宇宙でSDGsの領域を広げていくと社会的支持が得られるのではないかといったようなご指摘などもいただいています。こちらのほうは前回の検討ということで簡単にまとめさせていただいたものでございます。
もう1枚の資料、資料49-3-2をご覧ください。宇宙開発利用部会におきましては、前回から第6期科学技術基本計画に向けたご審議ということで、部会としての盛り込むべき事項をご議論いただいておりますが、一つ新たな事象がありますので部会でご検討いただきたい範囲を追加する、すなわち左側の大きな青い点線の箱で、次期宇宙基本計画といった記載をしています。先月の6月4日、総理大臣を本部長として全閣僚が構成員となっている宇宙開発戦略本部が開催され、その場で安倍総理から現行の宇宙基本計画の改訂に向けた検討を行うといったご発言をいただいております。
次の参考資料「内閣府宇宙政策委員会基本政策部会の設置について」といった表題の紙をごらんいただければと思います。こちらのほうで先月24日内閣府の宇宙政策委員会におきまして基本政策部会の設置が決定されております。こちらにおきましても、宇宙基本計画が来年は5年目の折り返しを迎えるということで、現行の宇宙基本計画の改訂に向けた検討をする必要があるということで、基本政策部会の設置が決定されたところでございます。
主な検討事項ということで、(1)安全保障、(2)民間における宇宙利用の進展、宇宙の民生利用の取り組み、(3)今後の宇宙産業・科学技術基盤の強化、(4)その他ということになっています。基本的な構造は現行の宇宙基本計画と大きく変わらないと現在のところ考えられますが、そういった形で部会においても次期宇宙基本計画に向けた検討もあわせて行わせていただければと考えているところでございます。現行の宇宙基本計画は主に三つの目標が掲げられており、現在のところ基本的な枠組みは大きく変わりません。丸1宇宙安全保障、丸2民生分野における宇宙利用推進、丸3産業・科学技術基盤の維持・強化といった項目で、これらの部分もあわせてご検討いただきたいと考えております。次回以降となりますが、これらも後で検討したいと思っております。
下のほうに「今後中心的に議論」と赤字で記載させていただいております。宇宙基本計画におきましては宇宙政策の観点からのご議論といったこととなりますが、主に文部科学省における宇宙開発利用といった視点に立ちますと、もちろん安全保障や民生における宇宙利用推進といったところも文科省としても関係が深いところであるものの、中心となる部分は科学技術基盤の維持・強化といったところになろうかと思いますので、そういったところも見据えながら次期宇宙基本計画に向けたご検討もあわせて進めていきたいと考えているところでございます。
また、第6期科学技術基本計画のほうも次回以降引き続きご議論をいただきたいと思っております。視点が異なるものをあわせてやると、若干重複する要素もございますから複線化してしまうかもしれないですが、あわせてご議論いただきたいと思っています。
総政特の論点をまとめる形で右側の上のほうにグリーンの白抜きで文字を記載させていただいております。文科省の中で、科学技術学術審議会の総合政策特別委員会、通称「総政特」と呼んでおりますが、こちらのほうで現状の論点をまとめていただいております。前回ご議論いただきました点が、灰色になっております箱で、研究力向上に向けたシステム改革と、真ん中に示した丸2、丸3の未来社会デザインとシナリオへの取り組み、そのデザインを実現する先端・基盤研究、技術開発といったところを前回ご紹介させていただきました。この議論が若干進展をしており、総政特検討論点(6月27日)とそれぞれ記載してありますが、最近の総政特における検討の視点としましては、システム改革の部分がこの丸1から丸4のところ、右上に関しましては挑戦的な研究の奨励や若手の人材、研究環境などといった形で、言葉の表現は変わっておりますが、基本的には資金や人材、研究環境といったところ、さらに加えて国際といった視点も加わって現在総政特において検討が進められています。下のほうの丸5の矢印で我が国の強みを生かした研究戦略の構築という点は、総政特のほうでも引き続きご議論いただきますが、例といたしまして科学的卓越性や、知財戦略、オープン・クローズ、社会課題の解決・未来社会ビジョンからのバックキャスト、フォアキャストの視点といったようなところが期待されております。こちらのほうは現在の総政特における検討の視点ですので、当部会におきましても、この丸5の我が国の強みを生かした研究戦略の構築といった視点で、引き続き次回以降に議論をしていきたいというふうに考えています。
事務局の考え方としては、次期宇宙基本計画では「宇宙政策」の観点でご議論いただくことになると考えておりますが、第6期科学技術基本計画では「科学技術イノベーション政策」といった観点でのご議論になるので、若干視点が異なります。そういった意味ではわかりづらさも若干残っていますので、その部分はなるべく我々も整理できればと思っております。
特に日本の科学技術イノベーション政策の検討といった視点で考えますと、宇宙に特化したものではなく、例えば異分野と宇宙の協力を得るということや、あるいはこれまでの宇宙開発分野で培ってきた技術をいかに地上の他分野に波及させていくかというような視点、そういったものを通じて日本の科学技術イノベーション全体の水準を向上させるに当たって、宇宙技術がいかにこれまで寄与し、また今後どうやって寄与させていくかといった視点を第6期科学技術基本計画のほうに部会としての意見を盛り込むことができればというふうに考えています。
最初のほうに戻らせていただきますが、次期宇宙基本計画の見直しといった動きがあるとともに、第6期科学技術基本計画についての検討もございまして、それぞれ宇宙政策の観点、また科学技術イノベーション政策の観点といった違った視点ではありますが、そこの部分をなるべくあわせる形で今後中心的に議論する形で書かせていただいております。宇宙ならではの部分での科学技術のあり方や、あるいは宇宙政策における文科省の進める宇宙科学技術とは何かといったところを中心的にご議論いただければと考えておりまして、こちらのほうは、次回以降我々としても論点を整理してご提示をさせていただければというふうに考えております。以上でございます。

【白石部会長】 どうもありがとうございます。
これについてこの場でぜひということがございますか。もしなければ事務局から連絡事項をお願いします。

【事務局(原田企画官)】 開示資料と議事録の公開につきまして申し上げたいと思います。本部会の運営規則に基づきまして本日の会議資料を公開とさせていただきますので、後日当省のホームページにおきまして掲載をさせていただきます。また議事録についても公開となりますので、皆さんにご確認いただいた後に当省のホームページに掲載をさせていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。連絡事項としては以上となります。

【白石部会長】 それでは最後に岡村大臣官房審議官からご挨拶をお願いします。

【岡村大臣官房審議官】 本日もご意見・ご示唆いただきありがとうございます。実は申し上げなければと思っていたことのほとんどは原田企画官から申し上げたところでございますが、いま一度先生方にはこの図をご参照いただければと思っております。ここで思い出話をしても仕方がないのではございますが、過去の経緯を少し紐解いて考えますと、宇宙基本計画におきましては、5年前に議論をしてつくられた現行のものでも、宇宙安全保障の確保、民生分野における利用の推進、こういう出口戦略に向けて非常に重要なものとして、産業科学技術基盤の維持・強化がきちんと位置づけられております。そして、先生方にこの場においてさまざまな議論をいただいている個々の活動、私どものプロジェクトについても、それぞれしっかりした位置づけをいただいていると思っております。
ただ他方、科学技術基本計画に関して振り返ってみますと、例えば現在は第5期になりますが、第2期、3期ぐらいまでは、先生方もご記憶かと思いますが、分野の重点化という記載がありまして、重点化として言われた項目について、ライフ、情報、環境、ナノ材料という項目が10年間の重点分野、そして次の順位ということで推進するべき分野として、社会基盤やエネルギー、ものづくり、そしてフロンティアでした。このフロンティアの中で宇宙という分野が大きくクローズアップされたわけでございます。平成23年ぐらいからの第4期ではイノベーションという言葉が非常に強く出てきた上、イノベーションの中でもグリーン・イノベーションとライフ・イノベーションという表現が出てきました。ただ宇宙の分野についてはこのあたりから科学技術政策上の位置づけという点は、いま一つ、こちらの目線からではございますが、明確さというか、軸足が宇宙基本計画の中での位置づけのほうに移っているという感じがいたします。第5期、現在の計画Society 5.0は、IoTなどの発展に伴って社会が変わっていく中で、社会の変革の項目が十数個出され、それに向けての計画となっております。
ただ、冷静に考えますと、宇宙の研究開発を推進するに当たって必要な技術は宇宙だけではないわけで、非宇宙のところもあります。それから、宇宙活動における成果物というのは宇宙だけではなくて、宇宙以外のところに非常に裨益していくというようなことから、ぜひ先生方には第6期に向けていま一度、宇宙と宇宙ではないという境目で考えるのではなくて、逆に言うと宇宙の技術がほかの技術との連関の中でいかに重要であるか、どんなことをすべきであるか、こういった点をざっくばらんにご議論いただきまして、ご示唆をいただきたいというふうに思っております。
宇宙予算は、科学技術予算のうち非常に大きな部分を占めますので、科学技術政策上でもきちんとした位置づけを確保していくことが必要という問題意識も個人的に持っており、先生方におすがりしたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【白石部会長】 少しつけ加えますと、私は第4期の時のドラフトの座長をやりまして、今指摘されたことを私も非常に感じました。あのときはイノベーションという言葉があまりに強く言われたので、わざと私は、安全保障・国家技術基盤という言葉を意図的に入れ、安全保障という言葉がそのとき初めて基本計画に入っています。その後の基本計画でもこれが第一の目的になりました。ですからある意味では、この場で記録を残していただくために申し上げておきますと、基礎研究というところを今度の基本計画改訂であまりに強調すると、ますます安全保障・国家技術基盤、あるいは最近の言葉で言いますとエマージングテクノロジーのところが逆に弱くなるという懸念を私自身は持っております。念のために少し申し上げておきます。
ありがとうございます。

以上

(説明者については敬称略)

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課