宇宙開発利用部会(第99回) 議事録

1.日時

令和7年9月29日(月曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)に係る安全対策について
  2. 文部科学省における令和8年度宇宙関連予算概算要求について
  3. 有人与圧ローバ研究開発の進捗状況について
  4. 基幹ロケットの開発状況について
  5. 今後必要となる民間等による研究開発課題について

4.出席者

委員

  部会長      山崎 直子
  部会長代理   久保田 孝
  委員        田中 明子
  臨時委員    秋山 文野
  臨時委員    大貫 美鈴
  臨時委員    小笠原 宏
  臨時委員    笠原 次郎
  臨時委員    金井 宣茂
  臨時委員    木村 真一
  臨時委員    神武 直彦
  臨時委員    鶴岡 路人
  臨時委員    山室 真澄
  臨時委員    吉井 信雄
  臨時委員    吉成 雄一郎

文部科学省

  大臣官房審議官(研究開発局担当)  古田 裕志
  研究開発局 宇宙開発利用課 課長  梅原 弘史
  研究開発局 研究開発戦略官(宇宙利用・国際宇宙探査担当)  迫田 健吉
  研究開発局 宇宙開発利用課 宇宙科学技術推進企画官  上田 尚之
  研究開発局 宇宙開発利用課 課長補佐  島村 佳成
  研究開発局 宇宙開発利用課 課長補佐  五十嵐 郁貴
  研究開発局 宇宙開発利用課 課長補佐  木元 健一
  研究開発局 研究開発戦略官(宇宙利用・国際宇宙探査担当)付 課長補佐  川端 正憲
  研究開発局 研究開発戦略官(宇宙利用・国際宇宙探査担当)付 室長補佐  佐孝 大地
  研究開発局 研究開発戦略官(宇宙利用・国際宇宙探査担当)付 宇宙科学専門官  今野 良彦


(説明者)
 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
  理事(宇宙輸送技術部門)  岡田 匡史
  理事補佐(有人宇宙技術部門)  川崎 一義
  有人宇宙技術部門 事業推進部 部長  小川 志保
  有人宇宙技術部門 事業推進部 参与  松本 邦裕
  有人宇宙技術部門 事業推進部 計画マネージャ  宮崎 和宏
  有人宇宙技術部門 有人システム安全・ミッション保証室 室長  中村 裕広
  有人宇宙技術部門 新型宇宙ステーション補給機プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ  伊藤 徳政
  有人宇宙技術部門 有人与圧ローバエンジニアリングセンター センター長  筒井 史哉
  宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ  有田 誠
  宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム サブマネージャ  小林 悌宇
  宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム ファンクションマネージャ  石川 主税
  宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ  井元 隆行
  宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム サブマネージャ  中谷 幸司
  宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム ファンクションマネージャ  原 利顕
  宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム ファンクションマネージャ  宇井 恭一
  宇宙輸送技術部門 事業推進部 部長  森 有司
  宇宙輸送技術部門 事業推進部 計画マネージャ  布施 竜吾
  宇宙輸送技術部門 事業推進部 主任  小谷 勲
  経営企画部企画課 課長  笠原 希仁
  経営企画部企画課 主任  嶋田 修平
  経営企画部企画課 参事  林山 朋子

5.議事録

【山崎部会長】 それでは、定刻になりましたので、第99回の宇宙開発利用部会を開催いたします。今回も前回同様オンラインでの開催となっております。
 委員の皆さま、そして発表者の皆さまには、ご多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 まず、事務局より、本日の会議について事務連絡をお願いいたします。

【上田企画官(事務局)】 ありがとうございます。事務局の上田です。
 本日は、16名の委員のうち14名の委員がご出席の予定ということで、今、吉井委員が少し参加遅れておりますが、ご出席の予定と聞いております。
 また、本日の資料につきまして、議事次第に記載のとおりです。
 オンラインの状況について、音声がつながらないなどの問題がございましたら、事務局へメールまたは電話でご連絡いただければと思います。
 事務連絡、以上でございます。

【山崎部会長】 ありがとうございました。それでは、本日も盛りだくさんですので、早速議題のほうに移りたいと思います。
 最初の議題は、新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)に係る安全対策についてです。
 「こうのとり」の後継機である新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)の1号機が、H3ロケット7号機によって10月21日に打ち上げられる予定です。
 搭載貨物容量の増加や太陽電池パドルの装備による電力供給能力のアップなど、さまざまな面で機能が強化されているHTV-Xですが、ISSへ係留される運用として、その安全性の評価は非常に重要な項目です。
 安全性の評価は、ISSを所管するNASAの協力を得てJAXAで実施されていますが、そのプロセスの結果および妥当性について、調査・安全小委員会のほうで確認が行われました。
 本日は、その評価結果について、小委員会の木村主査からご報告いただき、当部会としても審議、決定したいと思います。
 それでは、木村主査、よろしくお願いいたします。

【木村主査】 ありがとうございます。調査・安全小委員会の主査を仰せつかっております木村でございます。
 審査させていただいた結果について、ご報告させていただきます。
 先ほどありましたように、新型宇宙ステーション補給機1号機の安全管理について、いよいよフライトということで、非常に重要な案件として小委員会のほうとしても審議させていただきました。
 こちらの資料99-1-2のほうをご参照いただけますでしょうか。
 まず、この補給機の安全性について、1点目として、先ほどご紹介のありましたように係留フェーズに特化して安全確保・審査プロセスの妥当性を議論するということが、私どものミッションとして設定されております。
 HTV-Xについては、ほかのフェーズももちろんあるんですけれども、ここでは係留フェーズに特化して考えますと、幾つか特徴的なところがあります。HTV-Xは宇宙機という側面と、それから宇宙ステーションと一体化して、いわゆるステーションの一部として機能するという側面がございます。
 係留フェーズではそういう特徴を持っているということが一つ特徴的でありまして、そのあたりを中心に安全性について考えていくというプロセスを取りました。
 また、HTV-Xは、これまで運用されてきましたHTV「こうのとり」で非常に多くの実績があり、この実績を基にして開発をされているので、こことの差分について特に着目をし、HTV-Xにおいてそのまま踏襲される部分についてはそれが正しく維持されているか、あるいは、適切に管理されているか。それから、今回、新しくバージョンアップしている部分がございますので、そのバージョンアップした部分については、今回の係留フェーズにおいて安全であるかということについて網羅的に問題を抽出し、ハザードが適切に抽出されているかということを確認いたしました。
 例えば、先ほどご紹介のあったHTVでは太陽電池がボディマウントだったのですけれども、HTV-Xになりますと展開型になっております。これは係留されている状態において、国際宇宙ステーションとの間で干渉はないかとか、そういった新しい部分がございます。これについては、特に注意してハザードを抽出するというプロセスを取りました。
 また、初号機で、また、非常に重要な案件ということもあり、審査は2回に分けて実施しております。初回では、JAXAさんのほうから安全管理体制、その他技術的な内容についてご報告を頂くとともに、その時点での質疑を行いまして、それから一定期間置きまして、委員のほうで気付いた内容や、さらに資料のほうを深く読んでいく中で生まれた指摘事項等をメールで集めて、メールベースの審議を進めていく中で、安全性の確認を行って行くという、2段階での議論を行いました。
 (3)のところにありますけれども、ハザードおよびハザード原因の抽出というところで、ISSで蓄積された標準ハザードをベースにして、HTV-Xにおいて起こり得るハザードが、FTA、故障の木解析を用いて抽出され、識別されたハザードに対する原因の抽出、それから制御方法、設定の検証について、JAXA/NASAの共同安全審査会において妥当性が評価されているというところをまず確認した上で、18件のハザードが正しく抽出され、個別にハザードレポートが作成されているということを確認いたしました。
 これに対して委員との質疑応答がなされまして、結論として審査・検証が適正に行われているということを確認するに至っています。
 特徴的なポイントとして幾つか下のほうに挙げておりますけれども、今回係留した状態で「こうのとり」の場合にはクルーが中に入って物資の取り出し作業を行うという、そういう運用があります。
 これは宇宙船という意味合いもございまして、今回積載重量が増えておりますので、クルーの作業負担増がないか、どうかという点についても、適切に対応されているということが確認されました。
 それから、1つ飛んで3項目ですけども、感電というハザードも存在しています。クルーが中に入って作業をしますので、そういった点で問題がないかということについても確認をいたしました。
 また、宇宙機としての視点で、係留されているほかの補給機の緊急離脱があった場合、影響を受けないか、こういったような視点もございまして、さらに、先ほどご紹介した5点目のところが、太陽電池パドル、これの影響についてさらにもう一歩踏み込んで、デブリ衝突のハザードに対する設計上の対策についてなども議論させていただきました。
 その結果として、資料99-1-1のほうに移っていただいて、こちらは審査結果の案でございますけれども、こちらのほうに今のプロセス、それから結論についてまとめさせていただいております。
 案として、3の項目ですけれども、調査審議の結果ということで、ここは重要ですので読み上げさせていただきます。
 JAXAは、HTV-X1のISSへの係留フェーズに際して、「こうのとり」における審査・運用実績を踏まえ、新たに追加・変更された機能・仕様に対応した安全対策について、NASAとの役割分担を含む所定のプロセスに則した安全審査を実施し、その妥当性が確認されたとしている。JAXAの安全対策について、調査・安全小委員会での調査検討を経て、当部会で調査審議を行った結果、指針に対して妥当であるということが判断できると、このようにまとめさせていただきました。
 案としてまとめさせていただきましたので、ご審議のほどをいただければと思います。
 あと、JAXAからの説明資料等を参考資料として後ろに付録として付けさせていただいております。また、委員とのやり取りについても付録3という形で全て項目としてまとめてございますので、具体的な内容を確認されたい場合にはそちらのほうを参照いただければと思います。本日は時間がない関係でここは割愛させていただきます。
 私のほうからのご説明は以上でございます。

【山崎部会長】 木村主査、ありがとうございました。それでは、ただ今のご説明に対して、ご意見、ご質問等をよろしくお願いいたします。挙手ボタンでお知らせください。
 金井委員、よろしくお願いいたします。

【金井委員】 ありがとうございます。私のほうからは質問ではなく、いつもながらではありますが、感謝の言葉を申し上げたいと思います。
 HTV-Xの係留期間中は、同僚の油井飛行士をはじめ世界各国の宇宙飛行士がISSに滞在しているという中でありますので、いかに安全を確保するかというのは、何重にも確認しても不足はないというふうに理解しております。
 その中で、調査・安全小委、木村先生以下皆さまで検討いただいて、安全性の評価をしていただいたということを、本当に感謝申し上げます。
 HTV-Xのチームの皆さまにおいては、来月いよいよミッション本番となります。大変期待しております。
 ありがとうございました。

【木村主査】 ありがとうございます。チームの皆さん、一番大変だったと思いますけれども、いよいよということで、ほんとに私も期待しております。ありがとうございます。

【山崎部会長】 貴重なご意見ありがとうございます。ほかにご意見やご質問等はありますでしょうか。あればお知らせください。よろしいでしょうか。
 では、ほかに無いようですので、これまでのご審議を踏まえまして、資料99-1-1について、宇宙開発利用部会として小委員会からの提案どおり決定するということでよろしいでしょうか。また、今後、もし軽微な変更などがありましたら部会長預かりということでよろしいでしょうか。異議がある方はお知らせお願いいたします。

  (異議なし)

【山崎部会長】 では、異議がないようですので、こちらで決定といたします。
 金井委員からもありましたように、ほんとに調査・安全小委員会の木村主査をはじめとして委員の皆さま、そして関係者の皆さま、ご尽力に敬意を表したいと思います。ありがとうございました。

【木村主査】 ありがとうございました。

【山崎部会長】 ありがとうございました。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。
 文部科学省における令和8年度宇宙関連予算の概算要求についてです。
 8月29日に令和8年度予算に対する概算要求内容が公表されました。既に公表された内容ではありますが、本日はそのポイントについて事務局より簡単にご説明いただきます。
 それでは、安全開発利用課の梅原課長、ご説明をお願いいたします。

【梅原課長(事務局)】 宇宙開発利用課長の梅原でございます。資料99-2に基づきまして、簡単にご説明をさせていただきます。
 1枚目が主な概要、2枚目以降はその参考資料となっておりますので、1枚目でご説明をさせていただければと思います。
 令和8年度の概算要求の宇宙分ですが、右肩にございますように、総額は2,060億円プラス事項要求、前年度の予算額は1,550億円と、これに600億円の補正予算がございましたので、その合計額となります。
 事項要求とは、まだ金額が確定できない事項が残っているということで、予算編成12月までの過程においてその金額を確定させ、財務省と調整をするものでございます。
 2カ所、ロケットと、有人与圧ローバのところに事項要求という表現が出てきますけれども、具体的には原因究明が続いているイプシロンロケットの関係と、米国との交渉が続いております有人与圧ローバの部分について事項要求とさせていただき、交渉が整い、部会でご承認いただいた段階をもって財務省としっかり交渉していきたいというふうに考えております。
 左の上の部分ですが、宇宙活動を支える総合的基盤の強化と書いております。ここは主にロケットと宇宙戦略基金の内容でございます。上3つの項目はロケットの関係でございまして、基幹ロケットの開発・高度化、そして基幹ロケットの打ち上げ高頻度化、そして将来宇宙輸送システムについて金額を書いております。
 開発・高度化につきましては、H3ロケットそのものの開発はいったん終わっておりますけれども、今後信頼性向上、さらにこの技術を成熟化していく予算をしっかり積んで、有識者の検討会でも取りまとめたブロック・アップグレードなどもしっかり進めていくための予算を計上しております。
 そして、イプシロンSロケットの金額が固まり次第、要求額を確定させていくことになろうかと思っております。
 2項目めの高頻度化につきましては、主に打ち上げ能力とか、今後の基幹ロケットの高頻度化の能力開発に向けて、特に種子島の組み立て棟の移動発射台ですとか、周辺の燃料タンクですとか、そういったものをしっかり整備して、高頻度化に耐え得る施設整備をしていくという内容でございまして、ここも増額要求をしております。
 また、3点目の将来輸送システム、再使用型のブースタの研究開発とかをしっかり着実にやっていくというところ。
 また、4点目の宇宙戦略基金につきましては、文科省で、今、事務費の分だけ計上しておりますけれども、内閣府において、文科省、経産省、総務省の分の研究開発の予算を今は事項要求してございますので、今後、政府の中での調整において第3期の宇宙基金の規模というようなものをしっかり議論していきたいと思っております。
 左下は、宇宙安全保障の確保/国土強靭(きょうじん)化でございますけれども、主に衛星でございまして、特に今年は1つ目、衛星地球観測重点テーマに基づく技術開発ということで、これまでの開発手法に対し、よりユーザー官庁としっかり議論を重ねる中で、衛星の仕様を定めていく、防災、海洋状況把握、水災害でありますとか、そういったテーマごとにユーザー省庁としっかりコミュニケーションを重ねて、それらの参画も得て、今後衛星開発を進めていくという開発のやり方に変えていくというところでございます。
 また、降水レーダ、PMMでありますとか、官民光学ミッション、そういったところも着実に進めていくということでございます。
 右上につきましては、主にアルテミス計画でございますけれども、有人与圧ローバをしっかり開発を進めていくこと、そして月周回有人拠点、HTV-X、打ち上げの迫っております火星衛星探査計画MMX、こういったところをしっかり増額要求して予算を確保していきたいと思っております。
 また、右下のところでは、RAMSESなどもありますが、プラネタリーディフェンスで2029年4月にやってくる小惑星の対応ということで、欧州と協力して行うミッションについてもしっかりこの機会に活動を進められるよう予算を計上したいと思っております。
 また、一番下の航空科学技術、ここにつきましてもしっかり増額要求をして着実な研究開発を進めてまいりたいと考えております。
 2ページ目以降は、参考資料としてご覧いただければと思います。ありがとうございます。

【山崎部会長】 梅原課長、どうもありがとうございました。
 ただ今のご説明に関し、ご意見、ご質問等お願いいたします。いかがでしょうか。
 木村委員、よろしくお願いいたします。

【木村委員】 ご説明ありがとうございます。全体的な動きが非常によく分かりました。
 一つわれわれのほうでちょっと気にしているところが、先ほどのHTV-Xも一つ起爆剤としてあるんですけれども、ここのところ月面、あるいは宇宙環境利用、低軌道も含めた商用化された世界にいかに日本が乗り込んでいくかっていうところが一つ重要なポイントなのかなって思っていますし、あとちょっと分野が違うんですけれども、軌道上サービスで考えているロボットなどの検証用のプラットフォームとしても、実は「きぼう」って結構これから重要度があるっていうことを少し考えていて。ここをうまく何か、日本が「きぼう」を持っていて、かつさらに発展させられる可能性があるっていうのはすごく大きな力になるかなと考えております。これから先、海外に対してプレゼンスを示していく一つの力になるかなと思っているところがあるんです。
 そういう意味で、今回の中で「きぼう」のこの先の利用みたいなもの、あるいはそれをこの後どうやって発展させていくか。ISS小委のほうでいろいろと議論されているとも聞いているんですけれども、そういうような内容って、この中ではどのあたりに反映されている感じでしょうか。

【梅原課長(事務局)】 ありがとうございます。あくまで新規要求ですとか、目立つものだけ今は例示で載せておりますので。「きぼう」の運用経費については大きな経費が別途ございますのでその中でやっていくということで。もちろんながら、2030年に向けてしっかり「きぼう」を使い倒していくことは重要だと思っておりますし、そこでプレゼンスをぜひ発揮できるように、ISS小委も含めて、しっかりこれからも議論をしていきたいと思いますし、先生のご意見もまた頂ければと思っております。

【木村委員】 ありがとうございます。僕ももともとは、軌道上サービス等の分野が「きぼう」の利用と関係してくるというところに頭がいっていなかったんですけれども、このところいろんな視点で見た時に、ここをやっぱり運用しているのってすごい日本の力だなというふうに思っていて、ぜひそのあたりも積極的にご検討いただければいいのかなと思いました。
 感想です。ありがとうございます。

【梅原課長(事務局)】 ありがとうございました。

【山崎部会長】 ありがとうございます。
 木村委員もおっしゃるように、こうして「きぼう」という拠点を持っているということ、日本の強みでありまして、やはり今後の商業宇宙ステーション、それからアルテミスなどへの移行も考えた時に、いかにそうした軌道実証サービスをきちんと強化していくかということが大事ですので、現状の範囲だけではなく、それをさらにどのように使い倒していくかという、強化の部分の戦略もぜひ引き続き検討いただければと思います。私からもよろしくお願いいたします。
 では、続きまして、秋山委員、よろしくお願いいたします。

【秋山委員】 秋山です。よろしくお願いいたします。
 衛星のプログラムについて、やや細かいところですけれどもお伺いしたいところが1点ございます。降水レーダ衛星PMMの開発がいよいよ始まるということで、降水レーダ、ほんとに日本にとっても、あるいはほかの国にとっても重要な衛星だと思うんですが、やや不安要素として、今年の5月のアメリカの政権の予算要求の中で、PMMの打ち上げ担当の部分の予算がキャンセルされるといったことも方向性として示されているので、日本としてはそれはそれとして衛星をしっかり作っていくということだとは思うんですが、そのあたりの国際協調の流れがどんなふうに変化する可能性があるのか、それについては、どのように現在検討されているのかというところについて、もし可能でしたら教えていただけないでしょうか。お願いいたします。

【梅原課長(事務局)】 ありがとうございます。米国の予算につきましては、今、議会のほうでも歳出法案や調整法案ができたりということで、まだいろいろ予断を許さない状況が続いておるというふうには思っております。
 ただ、とりあえず日本の立場としては、これまでの約束どおり粛々と物事が進められる前提でしっかり予算要求をしていくと。そして、予算を確保していって、また引き続き米国また欧州と交渉していくということでございますので、もちろんそこは重要なファクターでございますので、しっかり議会の状況、また予算の今後の見通しなんかもにらみながら、しっかり調整をしていきたいと思っております。

【秋山委員】 はい、分かりました。どうもありがとうございます。

【山崎部会長】 ありがとうございます。では、久保田部会長代理、よろしくお願いいたします。

【久保田部会長代理】 ありがとうございます。いずれも重要なテーマと思っております。特に前回の委員会でご説明のあったRAMSES、プラネタリーディフェンス、2029とありますけど、あまり時間ないと伺っておりますので、ぜひ進めていただければと思います。
 コメントです。

【梅原課長(事務局)】 ありがとうございます。ここはしっかり予算を取っていかないと、小惑星は待ってくれませんので、しっかり優先的に火星探査と併せて予算を確保したいと思っております。

【久保田部会長代理】 よろしくお願いいたします。

【山崎部会長】 ほかにご質問、ご意見等、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。では、本議題については、これで終了したいと思います。どうもありがとうございました。
 一つ一つ重要なテーマですので、こちらも今度はきちんと実行に移すということで期待をしております。
 それでは、次の議題に移ります。次の議題は、有人与圧ローバ研究開発の進捗状況についてです。
 有人与圧ローバについては、昨年4月のNASAと文部科学省との間での与圧ローバに関する月面探査の実施取り組みの署名以降、キーとなる技術の研究開発などが進められてきました。昨年8月の第89回の当部会で現状のご報告を頂きましたが、本日はその後の研究開発の進捗についてご説明いただきます。
 それでは、JAXAの川崎理事補佐、有人与圧ローバーエンジニアリングセンターの筒井センター長、よろしくお願いいたします。

【筒井センター長(JAXA)】 有人与圧ローバーエンジニアリングセンターの筒井と申します。私のほうから説明させていただきます。
 ページめくっていただけますか。
 本日の内容ですが、IAという、こちらにあります実施取り決めが去年の4月に署名されていまして、その後の経緯についてご説明します。
 有人与圧ローバは、現在、月面での居住機能と移動機能を併せ持つ、世界初のローバシステムの実現ということで研究開発を進めています。
 こちらの資料では、ここにあります5つの項目についてご報告してきたいと思います。
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 まず、基本計画書の位置付けです。こちらは、有人与圧ローバの研究開発というのがアルテミス計画の下ということで位置付けられていて、工程表上もこのように明記されています。
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 こちらは、有人与圧ローバに関する月面探査実施取り決めですけども、去年の4月に署名されたものについてです。
 こちらにありますとおり、有人与圧ローバ1台を提供するということだけでなくて、運用とか地上管制への設備であるということも責務の中に明記してありますし、逆に米国側から提供されるものとして、月面活動の機会、日本人が月面に下りるということが約束されていますし、あと有人与圧ローバそのものの月面への輸送というのもNASAが提供することになっています。その他、もろもろこのように責任分担が明記されています。
 次のページお願いします。
 有人与圧ローバの意義価値ですけれども、ここに書いておりますとおりのことになります。
 まず、有人の月面探査の範囲を飛躍的に拡大するものです。人が住みながら移動するということになりますので、非常に長い時間で探査ができるということで、広域の探査ができるようになります。かつ、無人時にも常に遠隔運用探査ができるようになります。ということで、10年間ずっとサイエンスを続けるということができ、サイエンスの幅が大きく拡大していくことになります。
 また、このようなシステムを作ること自体が、月面とか火星面探査の実証という技術的な話としてもつながります。日本としては、初の独立型の有人宇宙システムという側面がありますし、モビリティ技術とか居住技術の実証と、そういったこと。それから、それらを運用した後のデータの獲得ということも一つの技術能力の拡大につながるものと考えています。
 かつ、当然、アルテミス計画における主要要素ということで、こちらは日本初のシステムで、日本だけが提供する方向になっていますし、日本人宇宙飛行士が月面着陸の機会を確保するということで、国際的なプレゼンスの向上につながると考えています。
 次のページ願いします。
 こちらは、米国のアルテミス計画における有人与圧ローバの位置付けを示している絵になります。左の上のほうから、SLSという大型のロケットと有人宇宙船「Orion」に乗って人がやってきます。HLSというもの、月面のランダ―ですけれども、こちらはGatewayという周回拠点場に係留されていて、ここで人が「Orion」から有人着陸船に乗り換えて、そこから月面に下りていきます。そこで、往還することになります。
 月面上にはあらかじめ有人与圧ローバとか、あと左の下のほうにあります有人の曝露ローバというのが配備されていて、こちらに上のHLSに乗ってきたクルーが乗り込んで移動していくということになります。
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 有人与圧ローバの概要です。こちらはアルテミス計画のキー要素としてNASAと仕様に関して調整を継続しているところですけども、こちらにありますとおり、居住空間と移動手段というのを併せて提供する初めてのビークルということになります。
 船外宇宙服を着た状態で人は乗り降りをします。有人与圧ローバの中に入った後は、船外宇宙服を抜いでシャツスリーブで居住することができます。
 ここで1カ月ほど人が暮らすということになります。
 年1回の有人ミッション期間、約1カ月ですけども、それ以外の期間11カ月分は無人の探査ローバとしての探査機能を提供することにしています。その状況を右下の絵にバーチャートで描いてますが、この1年間に30日の有人探査に対して、それが10年間運用を継続されるという、そういうミッション構成になっています。
 探査領域は南極域を想定していて、クルーは2名乗ります。あと、越夜の能力として、有人ミッション中は月の南極の夏の期間に行くことにしていて、比較的短い時間ですけども、無人の期間の時には非常に長い、8日以上の無人期間が考えられますので、それだけ越夜して与圧ローバそのものが生き残るという能力を持っています。
 あと、こちらにあります1充電で18キロ走るであるとか、EVAがどのくらいあるか。EVAというのは、すいません、船外活動のことです。総走行距離、それから速度、斜度といった、こういった仕様についてはNASAとの間でミッションのために必要なものがどういう能力かということで協議を続けた結果として、現状こういう仕様になっています。
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 特徴を幾つか書いています。このページの左上のほうから。これは初めての日本にとっても初めても有人機ということで、当然、質量であるとか、打ち上げの搭載のエンベロープであるとか、故障許容性であるとか、安全性であるとか、あと一番難しいものとしてエネルギー収支がちゃんと合うようにというようなこともあります。
 それから、左の下のほうに出てきますが、走行システムが金属タイヤと、こういうものも今までの宇宙機には当然ないものですので、これも新しい技術開発になっています。
 あと、真ん中あたり、単相の冷媒ループとかラジエータとありますが、非常に大きな電力を扱いますので、排熱の能力も大きなものが必要で、そのシステムというのも新しい要素となります。
 あと、右上のほう、再生型燃料電池システムとありますが、越夜、夜の期間が非常に長いですので、その期間に生き残るためのエネルギーを高効率というか、質量が低いものとして蓄電する必要があります。その方法として、再生型の燃料電池システムの開発を続けて、これを適用しようとしています。
 あと、最後に右下のほうですけども、太陽電池パドルは10メートルほどの高さのものが必要になります。1,000回とか1,500回以上の収納展開が必要な機能ということで、これも普通の宇宙機ですと収納というのがあまりないんですけども、これは新しい技術ということになります。主要諸元としては、おおむね長さとして6.5メートル、高さが5メートル、幅5メートルというような、そういうシステム構成で、打ち上げ時の質量が15トン、それに荷物を積んだりして全備重量の最大として18トンという仕様になっています。
 次のページお願いします。
 NASAとのこれまでのシステム要求の調整とか、あとトヨタ社と連携して技術検討を進めていて、概念設計フェーズの活動はおおむね完了しています。系統設計であるとか、コンポーネントの仕様の設定であるとかいうことを続けてきていました。基本設計の着手に向けた準備を、今、実施中という状態です。
 NASAとの調整の結果として、一番下のほうにありますけれども、システム成立性に一定の見通しを得まして、本年9月にプログラム管理委員会、これはNASAと文科省の部局を交えた管理委員会において、基本設計フェーズに向けた審査プロセスに移行する準備が整っていることを確認しています。現在、JAXA内で今年度中の基本設計フェーズへの移行に向けて審査を進めているところです。
 先ほど前のページをご説明しましたとおり、さまざま仕様が難しいところがありまして、実現可能な仕様になるように、NASAとの要求の調整を進めてきて、それが一定のめどを得たということで基本設計フェーズに移るという状態になってきています。
 それから、ちょっと上のほうにあります試作の試験ですが、走行系のブレッドボードモデルの評価を進めております。こちらについて、次のページで動画がありますのでお見せします。
 1/6のGの環境下の設計検証のために、走行系のブレッドボードの試験走行の様子を見ていただきましょうか。このスロープ20度だったのですが、これは20度を上ることができませんでした。ここは30センチの乗り越えのところになります。これは、10km/hぐらいからのブレーキをかけた時に止まれる性能を見ています。
 前の前のページに移っていただいて。
 走行系ですが、このようなブレッドボードを使って試験データを得ています。こういう環境で、こういうビークルが1/6G下で、ちょうどこのビークルは3トンぐらいありまして、先ほどの走行時18トンに対して1/6Gと、質量的にはほぼそろえてあって、データを取りながらモデルをコリレーションしているという、動的モデルをコリレーションして、これを設計検証に使うということを考えているものです。
 前のページに戻っていただきまして。
 あと、展開・収納型の太陽電池パネルですけども、これはバイステーブル型の展開機構というのを使っていまして、これも10メートルのフルスケールの展開・収納のモデルを作って評価を進めています。
 ほかにも、CFRP複合材を使ったハッチの試作であるとか、操縦シミュレータで操縦性や視認性の評価をすると、そういったことも続けてきています。
 こういった要素、要素の研究開発に合わせてシステム設計、先ほど申し上げたシステムの概念設計を進めていって、今、ちょうどシステム要求/定義審査を進めていると、そういう状態になっています。
 次のページお願いします。
 太陽電池パネルの展開の様子をご覧いただきます。
 次のページです。
 こちらが、10メートルの展開のもので、2倍速ですが、それでもまだゆっくりしているかと思いますが……。ちなみに、この右側と左側の棒の部分が半割状の筒、チューブになっていまして、これが展開しようとしています。真ん中のパネルみたいなものは、あくまでダミーといいますか、この試験のために幕を張ってあるだけで、太陽電池とは直接は関係ありません。こういった展開・収納の試験をやっています。
 ここのページは、CFRP炭素繊維複合材のハッチの試作であるとか、あと右側のほうはモーションシミュレーターです。こちらを使って操縦性の評価をしたりしています。
 次のページお願いします。
 こちらは、南極域はどの辺りというための参照です。
 最後のページは、これでおしまいですかね。
 こちらは、想定しているミッションプロファイルで、先ほど1年間に30日と申し上げた話のもうちょっと見やすくした絵ということになります。
 以上になります。

【山崎部会長】 筒井センター長、どうもありがとうございました。ただ今のご説明について、ご意見、そしてご質問等をよろしくお願いいたします。
 木村委員、よろしくお願いいたします。

【木村委員】 ありがとうございます。大変詳しく説明いただきまして、いよいよという感じで、かなり開発も進んでいて、わくわくするというか、ほんとに夢のあるプロジェクトだと思います。ぜひ頑張ってくださいというのが、第一声です。
 あと、今回のご説明の中でもありましたけれども、月面の移動手段であるとともに居住空間を構築するっていう、この側面ですね。そこの部分ってすごく「きぼう」からさらに先ということで、そこの実績をうまく活用されながら進められているのだろうと思いますけれども、月ならではの居住空間としてアップデートしなければならない、レベル的に上げていかなければならない部分も多いと思います。例えばECLSSですとか、そのあたりの話っていうのが発生してくると思います。ぜひこのあたりを日本として獲得していく、GATEWAYを越えて月面までというところが日本の環境技術でこれを獲得していくっていうのは素晴らしいことだと思います。現在、私どももちょっとつながりがあるところで、探査イノベーションハブさんのほうでも検討されているようですし、あと宇宙戦略基金などで民間の活力を一部技術について活用していくっていうのも一つの手なのではないかなというふうに思っています。ぜひこのあたりも居住空間の構築と、それからその中での環境、このあたりについても民間プロジェクトとも連携しながら進められるといいかなと思います。ありがとうございます。

【筒井センター長(JAXA)】 ありがとうございます。まさに「きぼう」で開発したのはまだエアコンのレベルまでだったのですけども、その後GATEWAYで居住設備の開発を続けておりまして、その技術を基本的には適用するという方向で進めております。
 ただ、GATEWAYよりもさらに居住空間が狭いですので、システムの能力、例えばCO2の除去といった処理能力としては意外と速度が速いので、能力としては高くしないといけないという側面があって、簡単にしたいけれども能力は高くしなきゃいけないという側面があります。やっぱりクローズドの単独で生きるモジュールということで、非常に能力は高く、かつリソースは少なくというところで、非常に難しい側面がありまして、さまざま外の民間に流れている技術を取り入れていくということは常に考えてやっているつもりです。
 ありがとうございます。

【木村委員】 ありがとうございます。環境関連技術は日本の強いところなので、何かうまくそこがかみ合うと、日本ならではというところが出てくると思いますし、またその過程で「きぼう」が効果的に使われるというのはすごく良いことかなと思いますので、ぜひ頑張ってください。
 ありがとうございます。

【山崎部会長】 では、続きまして、神武委員、よろしくお願いいたします。

【神武委員】 どうもありがとうございます。アルテミス計画において、有人与圧ローバは日本が持つ一番キーとなるシステムだと思うので、すごく期待があると思っておりますけれども、ここまで進めてこられた上での、実施したからこその技術的課題と可能性というあたり、このご報告の中である程度は分かったのですが、そのあたり少し教えていただきたいということと、あとはこれからも議論になると思うんですが、この有人与圧ローバというのはいろんな技術をこの機会に伸ばすことができると思うんですが、それがいわゆるシスルナ等の経済圏において、どう産業への普及を広げられるか、当然トヨタさんが持ち続ける技術もあると思うんですが。
 一方、これはJAXA、政府として予算を使うというからには、日本の産業界に広げていくというところが一つ大事ではないかなと思うんですが、そのあたり少し教えていただければと思います。

【筒井センター長(JAXA)】 ありがとうございます。まず、今の、先ほどご説明した中で一番難しさという観点でいうと一番難しいのは、ここで右上に書いてある再生型燃料電池システムというのが最もクリティカルといいますか、難しいものになると思います。世の中にない技術で、この技術自体は、基金でも研究開発が進められていると聞いております。やっぱり月面というのは非常に昼と夜の入れ替わりが長いので、長い夜を生き残るために蓄電する技術というのが非常に高いものが必要になって、それが最もクリティカルかなというふうに思っています。
 それから、2つ目、3つ目のご質問だったと思いますが、こういう技術をどうやってつなげていくかという観点でいうと、今回の有人与圧ローバは月面に対しての有人システムで、かつ独立のシステムを今回日本が研究開発することになります。で、提供することになります。これが実現するということは、例えば有人宇宙船とか、そういったものにも当然、有人の独立型のビークルをインテグレートする技術として適用されることになると思っていますので、これが一つの大きな日本にとっての持ち物というか、この技術を使って次の世代の有人機ができていくというような感じになるかなというふうに思います。

【神武委員】 ありがとうございます。1つ目の質問としては、そのことは存じておるのですが、実際に今回研究開発をやってみた上での結果として得られた知見がどういったものだったのかなというところで、やらなければ分からなかったことというあたりがどういうところにあったかというところを教えていただきたかったということです。

【筒井センター長(JAXA)】 分かりました。当然、全てにおいてそういうところがありますけれども、例えば走行システムは、地上で1/6Gと真空、慣性はそのままGが残りますので、それを複合環境で検証するという手法はまだ誰も考えたことがなかったということで、まさにこれを今取り組んでいるわけなんですが、ほかにも質量の関係、エンベロープの関係、システムの故障許容とか、こういったことについても当然頭にはありましたけど、それを実現しようと思うと非常にシステムが重くなりますので、それをいかにして軽くしながら故障許容を担保していくかというようなこともシステム設計としては重要です。
 さまざま、いろんな面で得られていることは、ちょっと言葉で一つ一つ説明するのは、申し訳ないですが、あんまりうまくできないです。

【神武委員】 分かりました。ありがとうございます。2点目のところは、これを日本が持つことによって次につながるのではないかというあたりは、おっしゃるとおりですが、何かそれだとスローガンで終わってしまうので、それが既存の活動の計画にどう寄与するかとか、何かもう少し具体的にアウトプット、アウトカムがどう生きてくるかみたいなところを描けるといいのではないかなと思いました。これは意見です。
 どうもありがとうございます。

【山崎部会長】 ありがとうございます。
 それでは、久保田部会長代理、よろしくお願いいたします。

【久保田部会長代理】 進捗状況、どうもありがとうございました。月面での移動型居住空間ということで、安全性を含め、それから電力、通信、そして熱制御が多分一番難しいのかなと思っております。質問は、この与圧ローバを使ったミッション機器とかミッションというのは、どの程度固まっているのでしょうか。

【筒井センター長(JAXA)】 ありがとうございます。ミッション機器は、まず何が載るかということについては決まっていません。ここのビークルの絵にはあまり出てこないですが、ビークルの外に前、後ろ、右、左、4カ所にペイロードを取り付けるポイントと、そこには当然電力と通信のリソースを提供するコネクタが付いているということ。それから、船内には4カ所、4つのペイロードを載せられるようにしているということ。あとは、後ろのほうに今のところロボットアームを搭載することを考えていて、そこで掘削であるとかサンプリングだとかができるような設備を設けようとしていること、こういったことを考えていて、実際にどういうペイロードが搭載されるかということについては、米国と日本の間で協議しながら、ミッションごとに決めていくというような、そういう段取りになっています。

【久保田部会長代理】 分かりました。システム設計とかミッションとの関係というのを早期に決まっていければなというふうに思っている次第です。
 以上です。

【山崎部会長】 ありがとうございます。
 では、小笠原委員、よろしくお願いいたします。

【小笠原委員】 ありがとうございます。小笠原です。大変興味深く聞かせていただきました。日本として初めての独立型のシステムを持てるということで、大変技術屋としてはうれしいなと思って聞いていました。
 ご説明の中で、要素のいろんな開発が進んでいるところはよく分かりました。システム要求審査というようなキーワードもございました。それから、民生の技術を取り込もうというようなお話もありました。
 ちょっと前のめりで恐縮なのですが、1つ伺いたいのですが、ユースケースです。今、ミッションの機器、まだ決まってないという話がありましたけど、民生の技術とか取り込みを考えるという話になりますと、民間としては恐らくこれをこんなふうに使ったら、こんなビジネスができる、なんてことも考えて、そんなことであればこのローバにこんな機能を入れてほしいなんていう声が聞こえてきたりするんではないかなと。そういうものを持っていると、ゆくゆく日本がその産業分野ないしはそのビジネス分野で世界をリードする、そんなきっかけになるんじゃないかなと思いまして伺うんですが。
 そういうようなビジネスユースみたいなものを考えて、こんな機能を入れてほしいとか、こんな要求してほしい、そんな声は届いていますでしょうか。というか、ありますでしょうか。その辺を教えていただきたいと思います。1個だけです。よろしくお願いします。

【筒井センター長(JAXA)】 月面の活用とか、月面のミッションでビジネスに使うとか、そういう観点でしたかね。

【小笠原委員】 そうです。ローバを使うという意味です。

【筒井センター長(JAXA)】 まだそのような声がダイレクトに届いているということはありません。

【小笠原委員】 そうですか、分かりました。

【筒井センター長(JAXA)】 残念ながらないんですが。有人与圧ローバの先ほど申し上げましたNASAとのミッションの協議の中では、サイエンスだけではなくて、そういうビジネス的なもの、ユースであるとか、あと技術開発的なものも併せて考えるということで協議することになっていますので、いずれそういうニーズが出てくれば取り込んでいけることは十分考えられると思います。

【小笠原委員】 分かりました。ありがとうございます。

【山崎部会長】 では、大貫委員、よろしくお願いいたします。

【大貫委員】 ご説明ありがとうございます。世界でも日本だけが開発しているという有人与圧ローバ、非常に興味深く聞いて、あらためてわくわく感が高まりました。
 私の質問ですが、このローバ、人が住みながら移動するというような機能であったり、船外活動をしたり、ロジスティクス的な役割を担ったりということで、非常に宇宙飛行士にとってもやることも多いですし、システムのほうも先ほどお話にありましたように仕様が難しいということですが、私の質問は、訓練についてになります。
 訓練について、今回のお話の中には含まれてませんでしたけども、いつ頃からが具体的に出てくるのかということです。
 宇宙飛行士の訓練においては、日本も長年やってきてノウハウ、日本が積み上げてきたことが今後に生かせるのか、そういうことも含めて訓練プログラムどういうふうに作っていくのかということが気になったところとしてはありました。よろしくお願いします。

【筒井センター長(JAXA)】 まず、今までのISSで培ってきた訓練の技術というのは、一般的には役に立つものですし、それを引き継がれていくものだと思っています。一方で、月探査になってきますと、月に下り立つとか、月に向かっていく宇宙機の操縦といったことであるとかも訓練の内容になってきますので、個別のミッションに関するクルー訓練というのは違うものが要求されることになります。
 今回の有人与圧ローバに関していうと、今までの宇宙機とは違っていて、月面の土の上を走るということになりますので、与圧ローバの走行シミュレータを使った訓練であるとかいうのも当然必要になりますし、それ以外にもEVAスーツを着て出たり入ったりしますので、それに関する訓練というのも、こちらはEVAスーツを開発しているのがNASA側ですので、NASAの訓練の一部になりますが、有人与圧ローバの狭い空間の中で乗り込んだり、緊急時には早くEVAで出ていかないといけないという場合もあり得ますので、そういった訓練は非常にクリティカルなものとして位置付けられるというふうに思います
 あんまり答えになってないかもしれませんが、かなり特有のミッション、固有の訓練を仕込まないといけないということになると思います。

【大貫委員】 ありがとうございます。先ほど小笠原委員のほうから発言されていましたが、いろんなビジネスの話私も関心があります。月面観光っていうのも、月面に下り立つほうの月観光は早々には出てこないとは思うんですが、将来出てくるかなという想定はできるんじゃないかなと思います。そういった時に、観光で行った人も乗れるぐらいの訓練になったらいいなっていうふうに思いながら(運用・利用の観点も含めて)伺っておりました。
 どうもありがとうございます。

【山崎部会長】 ありがとうございます。
 おっしゃるように、今のISSの有償利用みたいな形で希望されるユーザーが出てくるかもしれないです。また、科学ミッションだけではなくて、産業的な月面基地の構築という面からのニーズも出てくるかもしれません。そのあたり、ぜひ幅広いユーザーコミュニティと連携を取っていただければと思います。
 笠原委員、よろしくお願いいたします。

【笠原委員】 ご説明どうもありがとうございます。ほんとに世界に誇るべき日本の技術開発ということで、大変楽しみにしながら私も聞かせていただきました。
 ただし、地球の1/6とはいえ、非常に大きな重力天体に対して、恐らくは人類史上最大級のものを着陸させるということで、非常に難しい。まずは、このローバとして、月面上で活躍するまでのプロセスも非常に難しいのではないのかなというふうな印象を持っております。したがいまして、どのように着陸のプロセスが行われるのかということと、これ有人ローバなものですから、人がどの段階で、どう乗り込むのか。つまり、ローバと、それから宇宙飛行士の皆さまがどういうタイミングで安全を確保しながらそこに乗り込むのかというのがとても気になっております。
 また、先ほど1機の開発という項目がちらっと見えたんですが、やはりかなりな新規領域かと思いますので、複数機の開発などを計画されてはいないのかということも気になっております。
 以上、質問させていただきます。

【筒井センター長(JAXA)】 まず、前者のほうですけれども、説明の中でかなりはしょってしまっていて、申し訳ありませんでした。
 まず、有人与圧ローバは、カーゴランダーという着陸船ですが、それが先に与圧ローバを月面上に下ろしていきます。そこに存在して先にチェック等を済ませておいて、その後から人が「Orion」宇宙船に乗って、それからHLSというヒューマンランダーシステムに乗って月面上に下りてくるというようなことになります。というのがまず1つ目の答えで。
 その有人与圧ローバ自体を月面に下ろしてくれるランダーは、実はHLSという有人用のランダーの技術を適用した亜種といいますか、バリアントのランダーになっていまして、HLSの開発が同時並行で進められているということになります。というので1つ目はいいでしょうか。
 2つ目に関しては、こちらは、まず開発としてはフライト機1つを開発することを考えています。ただ、当然その手前においては、それぞれの要素ごとのエンジニアにモデルを作ったりして評価をしながら、最終的には1つのものにするというような考え方にしています。
 当然、この後もっと売れていけばいいなという気持ちはありますので、そういう外で活用される場面がないかということについては、考えているものです。
 以上になります。

【笠原委員】 どうもありがとうございました。よく理解できました。質問は以上でございます。ありがとうございます。

【山崎部会長】 では、続きまして、吉成委員、よろしくお願いします。吉成委員、聞こえますでしょうか。よろしくお願いいたします。

【吉成委員】  2つございます。委員の方々がこれだけご発言されることも含め、やっぱり注目の高いプロジェクトだなということを感じております。私自身も大いに期待しているんですが、2つございまして、IPの扱いです。
 1つは、今回の開発を通じて、地球外のモビリティのデファクトスタンダードを作るということになるだろうな、と。自動車でいえばT型フォードがその後の設計を決めたようなもので、非常に意義深いプロジェクトだと思うんですが、このデザインに関するIPというのは、どのような形で担保されようとされているのかという知財戦略が1つ目。
 あと、もう一つは、同じようなIPの話ですけども、これ自動走行とか遠隔操作ということで、走行データというのもどんどんたまってくるのではないかと思っておりまして、そのようなデータ、地形のデータを含めて、AIの活用等もあるのでしょうが、そういった時のデータの所有権についての扱いはどうなっているのか、そのあたりを教えていただけますでしょうか。

【筒井センター長(JAXA)】 まず、後者のほうですけども、得られたデータに関しては、基本的には地形データとか観測されたデータについては、公開されるのが原則だというふうに考えています。これは、アルテミス計画全体的にそうなっていると思います。
 ただ、1次データは、JAXAなりが取ったものであればJAXA側に残りますので、そこを活用して何か2次的に新しい成果を出していくというようなことも十分考えられると思っています。
 それから、1つ目のIPとは、多分知財のことをおっしゃられたんだと思うんですが。こちらは、いろいろと要素ごとに取り扱いは違っていまして。基本的には、開発している主体でありますトヨタならトヨタ、例えば展開型の構造物でありましたらそちらの展開型の構造を作っているメーカーがそれぞれ知財を恐らく持つことになると、そういうふうに考えています。以上です。

【吉成委員】 分かりました。そういう意味では、先ほど産業応用というようなお話がございましたが、知財があれば今後別のローバのプロジェクトがあっても声がかかるということもあるでしょうし、それを売っていくというビジネスのチャンスもあるんだなということでよく分かりました。ありがとうございます。

【山崎部会長】 では、続きまして、吉井委員、よろしくお願いいたします。

【吉井委員】 吉井でございます。聞こえますでしょうか。

【山崎部会長】 はい、聞こえます。お願いいたします。

【吉井委員】 ご説明ありがとうございました。大変意義のある、夢のあるプロジェクトだというふうに思います。ほかの委員の皆さんもコメントを頂いていますように、これだけ大きな意義のあるプロジェクトですので、ぜひ商用化を見据えた設計および取り組みを進めていただければというふうに思います。
 以上、コメントをさせていただきます。

【山崎部会長】 貴重なコメントをありがとうございました。
 木村委員、よろしくお願いいたします。

【木村委員】 すいません。2回目手を挙げてしまいまして、簡単にコメントだけ。
 先ほどの小笠原委員からのコメントのところで、産業界の関心という意味でいうと、ちょっとご紹介ですけれども、恐らくプロジェクトのほうは非常に忙しいということを、皆さん、遠慮されるというか、直接は言っていっていないと思うんですけれども、月面産業ビジョン協議会というのがありまして、そちらのほうでローバを利用するだけではなくて、将来の月面の産業ビジョンというところを議論していたりしますので、そういったところとの接点であったり、あるいは宇宙戦略基金の中で一部将来のビジネス展開を狙った要素技術実証というのも今回いろいろと提案があるようですので、そういったところとも、お忙しいとは思うんですけれども、チャンネルを開いていただくといいのかなというふうに思いました。
 以上、コメントです。

【筒井センター長(JAXA)】 ありがとうございます。承知しました。

【山崎部会長】 ありがとうございます。
 神武委員、もう一度手を挙げてくださってるでしょうか。神武委員、よろしくお願いいたします。神武委員聞こえますでしょうか。もしかしたら、前回の挙手が残っているのかもしれないですので、ご確認をと思いますが。そうしましたら、もし後でご質問等ありましたら、別途フォローさせていただくという形で、本議題のほうは終了したいと思います。
 ご説明くださったように、日本初の有人独立システムということで、非常に期待が高い分野だと思います。引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【筒井センター長(JAXA)】 ありがとうございました。

【山崎部会長】 ありがとうございます。
 では、次の議題のほうに移りたいと思います。基幹ロケットの開発状況についてです。
 H-ⅡAロケットが50号機で退機した今、わが国の宇宙輸送はH3ロケットとイプシロンSロケットという2つの基幹ロケットで支えていくことになります。H3ロケットにつきましては、22形態で打ち上げ実績を着実に積み重ねている一方、30形態や、LE-9エンジンなど、まだ開発途上のアイテムも残っています。
 また、イプシロンSロケットについては、2段モータの技術課題を一日も早く解決することが求められています。
 本日は、日本の宇宙開発利用を支えるこれら基幹ロケットの現在の開発状況について、全般的なところをご説明いただきます。
 それでは、JAXA宇宙輸送技術部門の岡田理事、H3ロケットプロジェクトの有田プロジェクトマネージャ、イプシロンプロジェクトの井元プロジェクトマネージャ、お願いいたします。

【岡田理事(JAXA)】 ありがとうございます。それでは、資料の99-4に沿ってご説明したいと思います。
 2ページお開きいただきます。
 今、部会長、おっしゃっていただいたとおりでございまして、冒頭ここで私のほうからまず基幹ロケットを概観させていただきまして、後、各プロマネから説明させていただきます。
 1つ目ですけれども、おっしゃるとおり、基幹ロケットというのは、わが国の自立性を確保する上で非常に重要な存在というふうに承知しております。H3ロケットは、これまで4機の打ち上げに成功しまして、試験機1号機につきましては打ち上げ失敗して大変大きな影響を与えてしまったんですけれども、現在その残る開発を進めているところです。
 具体的な内容につきましては、後ほどご説明いたします。
 この中で30形態の実機型ステージ燃焼試験、種子島宇宙センターで行ったのですが、全般的には計画どおり進めましてデータ取れました。1点特記事項が抽出されましたので、これに確実に対応して飛行実証に臨みたいというふうに考えております。
 さらに、今後は安定化と高頻度化を図りながら、また高度化にも取り組みまして、一層国際競争力を増していきたいというふうに考えています。
 それから、イプシロンロケットにつきましては、昨年11月の燃焼試験中の爆発事故の対応に相応の時間を要する見込みでございます。このため、必要なミッションに対応しながら、そしてまた技術基盤を持続的に維持するという観点から、空白期間を最小限にとどめて、できるだけ早く運用に移行するという方策を検討しているところでございます。
 本日は、これらの現状と今後の方向性につきまして、ご説明いたします。

【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 そうしましたら、H3の状況につきまして、有田のほうからご報告させていただきます。
 次のページお願いします。
 目次でございますが、まず1.1項でこれまでの開発と打ち上げの状況をおさらいし、1.2項でこれまでに飛行実証を終えた22形態につきまして開発目標の達成状況をご説明します。次に、1.3項として新たな取り組みとしての30形態試験機の状況、1.4項で24形態初号機およびそれに向けた取り組み、そして1.5項で進捗のありましたLE-9エンジンの状況、1.6項でその他として試験機1号機を踏まえた改善の取り組みの状況、最後に1.7項で今後の取り組みという具合に進めてまいりたいと思います。
 次のページお願いします。
 このページは、H3のこれまでの開発と打ち上げの状況です。2014年に開発を開始しまして、2023年に試験機1号機の打ち上げにこぎ着けましたが、第2段エンジンの不着火により失敗いたしました。これを受けまして、調査・安全小委員会のご指導やご助言を受けながら原因究明と対策を進めまして、11カ月後の2014年2月に試験機2号機を打ち上げ成功することができました。
 その後、3号機で「だいち4号」、4号機で防衛省の通信衛星「きらめき3号」、5号機で内閣府の準天頂衛星を打ち上げまして、4機連続の成功を続けているという状況でございます。ここまで全て固体ロケットブースタ2本装着した22形態での打ち上げとなってございます。
 次のページお願いします。
 これまでに飛行しております22形態に限りますが、これまでの開発目標の達成状況のご説明になります。
 打ち上げ能力につきましては、フライトデータが蓄積されてきましたので、システムとして持っておりましたマージンですとか、誤差源の見直し、さらにはType2エンジンの適用によって、当初目標としていた打ち上げ能力を達成可能な見込みでございます。
 次に、コストですけれども、打ち上げ能力に応じまして、定常運用段階かつ一定の条件の下でH-ⅡA/Bの約半額の機体価格を実現するという開発目標を達成可能な見通しであります。
 ここでの一定の条件下という意味は、この(※)にございますように、開発開始当時の物価や為替レートを前提として、条件をそれにそろえて比較するという意味でございます。
 一方で、開発開始から10年以上が経過しておりまして、物価や為替レート等といった条件は大きく変動しておりまして、実際の価格にはこれらの条件の違いを適正に反映するということが必要になってございます。
 30形態に換算した場合に、これまでH-ⅡAの半額ということで約50億円というのを目標としておりました。これは、2014年当時の条件の下での開発目標という意味では今でも有効でありまして、引き続きそれを目指すということに変わりはございませんが、現時点や将来の実際の価格という意味におきましては、50億円という絶対額はあまり意味を持たなくなっているというふうにお考えいただければと思います。
 最後に、運用性ですけれども、こちらは年間6機を安定して打ち上げられる見込みを得ているところでございます。
 次のページお願いします。
 次に、固体ロケットブースタなしで3機のLE-9エンジンのみでリフトオフをする30形態試験機の状況でございます。こちらは、7月24日に種子島射点におきまして機体と地上設備を組み合わせまして、3機のエンジンを燃焼させる1段実機型タンクステージ燃焼試験、こちらを実施いたしました。
 作業は順調に進みまして、予定どおり25秒間の燃焼試験を行いまして、良好にデータを取得することができました。
 また、地上風による機体の揺動を抑えるための機体把持装置の検証も行いまして、この機能を良好に発揮できるということを確認いたしました。
 その後、詳細にデータを分析してまいりましたが、最後に書いてあります1段の水素タンク、酸素タンクの両方で昇圧が不足するという事象が起きているということが分かりました。次のページで詳細をご説明いたします。
 次、お願いします。
 事象は、先ほど申し上げたエンジンの燃焼後半におきまして、1段の水素/酸素タンクの圧力が制御圧まで達しないという事象でございました。
 その評価状況ですけれども、原因究明を進めました結果、30形態特有のコンフィギュレーション、こちらは追加したNo.3エンジンからの系統には加圧ガス流量を切り替えるバルブがございませんで、常に小流量を流すというコンフィギュレーションでございましたが、これによりまして加圧ガス量の余裕がもともと少なかったということに加えまして、加圧効率が22/24形態に比べて低くなったということが要因と特定いたしました。
 ここで加圧効率と申しますのは、計算上得られます必要ガス流量と実際の加圧ガス流量の比率でございまして、これが1以上ありますとより少ないガス量で加圧可能であるということを意味する指標でございます。
 この対策案といたしましては、タンク加圧ガス流量の増加と、それからタンク圧制御計画の見直しなどを検討しておりますが、その検証のためには再度CFTを実施する必要があるというふうに現在考えてございます。
 一方、22/24形態につきましては、コンフィギュレーションの違いですとか、これまでのフライト実績等から問題ないということを確認しておりまして、7号機への水平展開、こちらは不要というふうに判断しておるところでございます。
 次の9ページ目、お願いします。
 続きまして、固体ロケットブースタを4本装着しましたH3として最も打ち上げ能力の大きい24形態についてです。こちらは、7号機として30形態試験機である6号機より先に10月21日の打ち上げを予定しております。
 こちらには、先ほど来お話出ております新型宇宙ステーション補給機HTV-Xの1号機を搭載いたします。HTV-Xには、打ち上げ直前に搭載する必要のあるカーゴが載る場合がございますので、大型のアクセスドアを持った衛星フェアリングですとか、大型の分離機構などを持ちます衛星分離部を特別に開発しまして打ち上げに臨むこととしております。
 次のページお願いします。
 次に、この7号機に搭載する2つの飛行実証アイテムをご紹介いたします。1つ目が、かつて山崎部会長からも積極的な取り組みをすべき、とご助言を頂いていた自律飛行安全システムです。ようやくお披露目できる段階になりました。
 自律飛行安全といいますのは、この(※1)にございますように、ロケットに搭載されたシステムが機体や飛行経路に異常が発生した場合に、地上からのコマンドによらずに自律的に状況を判断し、必要な場合には飛行を中断する仕組みのことです。
 今回実証しますシステムは、HTV-XやGTOミッションにおける打ち上げ能力を向上させる目的のものでして、第2段の飛行後半フェーズに適用するものです。
 その原理ですけれども、左の下の図に示しますように、地上局の配置の制約によりまして、2段の燃焼を地上局からのコマンドが届く範囲で終わらせるために、軌道を高く打ったり、蛇行したりさせるという必要があるのがこの上のBeforeのケースなんですけれども、その制約を外しまして、地上局からのコマンドが届かないところでも2段の燃焼ができるようにする、このAfterのようなケースにすることで、飛行経路のロスをなくして打ち上げ能力を向上させることができるというものでございます。
 7号機におきましては、この右下の図に示しますように、新規に開発しました自律飛行安全管制ソフトウェアを搭載しました自律飛行安全計算機、こちらを機体に搭載して、その機能を実証いたします。ただし、今回はあくまでも実証飛行ですので、飛行中断系への結線は行わず、データの取得のみを行います。
 次のページお願いします。
 こちらが、TDRS対応システムの飛行実証についてです。今後、H3で打ち上げ予定のMMXなどの月惑星ミッションでは、地上局とのリンクが取れない領域で2段の再着火を行うという必要があることが多く、これを補うために静止軌道上にあるNASAのデータ中継衛星TDRSのサービスを受けられるシステム、これを開発いたしました。
 7号機には、これに対応する送信機とアンテナを新たに搭載いたしまして、HTV-X1の分離後に大西洋の上空で実際にデータ取得ができるかどうかの検証を行う予定にしております。
 次のページお願いします。
 これらが進捗のありましたLE-9の状況でございます。LE-9につきましては、これまでType1Aという型の開発を完了しておりまして、これまで5号機までで正常に作動をしております。
 また、領収燃焼試験の実施を種子島に加えましてMHIさんの田代試験場でも可能なように、テストスタンドの改修を完了しまして、その検証を目的とした燃焼試験をこの9月から実施しておるところで、左下の図がその状況の写真でございます。種子島と違って、横方向に噴射するというのが特徴でございます。
 一方、Type1Aにつきましては、H3の早期の運用開始を実現するという功績はありましたが、当初の目標に対しまして性能やコスト面で改良の余地があるということで、恒久対策としてのType2の開発を継続しておるところです。
 この開発目的ですけれども、性能向上を阻んでおりますターボポンプのタービン翼の振動問題を解決して性能向上を図るということと、噴射器へのAMと書いておりますが、いわゆる3Dプリンター技術の適用等によって製品コストをドラスティックに低減するというものでございます。その仕様の比較を右下に表で示しております。
 次のページお願いします。
 これまで約2年余りの間に4シリーズ、14回の実機大燃焼試験や、多くのサブスケール燃焼試験を行ってまいりました。その結果、性能やFTPの翼振動といった技術課題を解決するとともに、低コスト化の実現にめどを得ることができました。現在、その他の低コスト化設計を含む詰めの設計を行っておりまして、年度内には認定試験を開始できるというふうに考えてございます。
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 ここからは、試験機1号機の失敗を踏まえた改善ということで、調査・安全小委員会で頂いていたご提言も踏まえた活動のうち、特記的なものを2つご紹介いたします。
 1つ目が、2段エンジン不着火の複数の要因の一つとされました点火器内に電気スパークを発生されるエキサイタについてです。エキサイタにつきましては、これまで絶縁強化や検査の強化といった対策を実施しまして成功実績を重ねてきてはいますが、さらなる信頼性向上を目指して、製造しにくさの改善といった、こちらに示しますような内容を盛り込んだ改良開発を実施してまいりましたが、このたび開発が完了しましたので7号機に適用したいと考えております。
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 次は、こちらの木村先生からご助言いただいていたデジタル化についてでございます。試験機2号機の成功以降、本格的な取り組みを開始しまして、デジタル化やDX化の推進計画を設定しております。
 具体的には、こちらの①から④に示しますように、飛行解析の解析時間の短縮ですとか、AI技術の活用、衛星ロケットインターフェイス設計の効率化、生成AIの導入による業務効率化、技術伝承、こういったことに取り組んでまいります。
 それから、射場作業のDXや、モデルベースエンジニアリング、こういったところの検討も始めているというところでございます。
 次のページお願いします。
 最後に、今後の取り組みというところですけれども、H3の開発完了に向けて、24形態、30形態の飛行実証、Type2の開発を着実に進めてまいります。
 あわせて、成熟度向上、高頻度化に向けた取り組みを進めてまいります。
 また、打ち上げの体制についてですけれども、4号機以降につきましては、顧客との打ち上げサービス契約はプライム・コントラクタ、宇宙活動法上の打ち上げ実施者はJAXAが務めるという形としてまいりましたけれども、今後のフライト結果を踏まえて、民間を主体とした打ち上げへの移行を段階的に進めることとしまして、適用する形態や時期の詰めの調整をしっかり進めてまいりたいと考えております。
 最後に、先日まとめていただきました基幹ロケットに係る有識者検討会での議論も踏まえまして、高度化によるブロック・アップグレードを進めてまいりたいと思います。
 H3に関するご報告は以上です。
 次のページお願いします。井元さん、お願いします。

【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 聞こえますでしょうか。イプシロンロケットの状況につきまして、井元から説明いたします。
 次のページお願いいたします。
 ここでは、イプシロンSロケットの第2段モータの燃焼異常の原因調査状況、それからイプシロンSロケットの開発計画見直しの方向性をご説明いたします。
 次のページお願いします。
 まず、燃焼異常の原因調査状況ですけども、1つ目のところは飛ばしまして、2つ目のところになります。これまでに海中探査を含みまして部品の回収をいたしました。そこの回収品の調査ですとか、あと製造検査データ、それから試験データ、それから追加解析などを行いまして、爆発の発生シナリオを1つに特定いたしました。ただし、その発生要因については、まだ3つ残っているという状況です。
 今後は、燃焼試験を実施いたしまして、さらなる絞り込みを実施していきます。
 次のページお願いします。
 こちらに現象の概要を示しておりまして、まず1つ目といたしまして、点火後約17秒から燃焼圧力が高い側に乖離したということ。
 2つ目が、約48.9秒時点で、燃焼圧力が下降して、これはガスリークが発生しております。
 最後に、49.3秒の時点で、燃焼圧力が急激に下降して爆発したというものになります。
 次のページお願いいたします。
 それぞれに対しましてFTAを展開いたしまして、絞り込みを行っております。
 まず、原因調査状況につきましては、こちらに記述しておりますとおり、FTAのBとC、燃焼ガスリークと爆発です。こちらの絞り込みによりまして、インシュレーションの焼損過大というものが発生して、モータケースの後方側が爆発に至ったという可能性が高いというふうに判断しております。
 次のページお願いいたします。
 22ページになりますけども、先ほどご説明したシナリオに対しまして3つ要因が残っております。
 こちらは、まず1つ目ですけども、製造時に推進薬側のインシュレーション、ブーツフラップですね、そちらと推進薬の間の隙間があって、その隙間に着火することによって発生したというのがまず丸1になります。
 それから、丸2といたしまして、ブーツフラップの推進薬側のインシュレーションですね、そちらが破孔(はこう)して、穴が開いて、燃焼面積が増加するというのが2番目。
 3番目としまして、推進薬が着火温度まで上昇したということで、何らかの要因によってリリーフブーツというモータケースと推進薬の隙間がありますので、その間の入熱が大きくなったためにこの爆発に至ったというものになります。
 そういうものによりまして、ケース側のインシュレーションの入熱量が過大になると。さらにケース側のインシュレーションの焼損が過大になって気密が喪失すると、こういうメカニズムを考えております。
 次のページお願いします。
 ここまで回収品等を基に原因調査を進めてきたわけですけども、これ以上の原因調査をするためには検証試験が必要というふうに考えておりまして、今、大きく2つの検証試験を考えております。
 まず1つ目が、サブサイズモータの燃焼試験ということで、こちらにつきまして、今、試験を準備しているところです。まず全部で6式のサブサイズモータ、径が440ミリですので実際のモータの大体直径にして1/5程度のサブサイズモータを製造して、そちらに要因に関連する模擬欠陥を設けた状態で燃焼させるというもの。
 それから、欠陥のないケースに対しまして、今回の2段モータでありますE-21を模擬したケース。
 それから、正常に作動しておりますM-35という強化型の2段モータのグレイン形状、この差分を調べることによって原因調査をすると、こういうサブサイズモータの燃焼試験を、今、計画しております。
 それから、実機大モータの燃焼試験ということで、こちらはまだ実施するか未決定ということで、計画を検討しているところです。
 この固体モータ内部の燃焼ガスの流れにつきましては、サイズに依存するということも考えられますので、このサブサイズモータ、小型のモータでは要因の絞り込みに至らない可能性があるということで、実機大サイズのモータを使って原因の特定ができないかということを検討しております。
 一方で、モータの爆発をさせてしまいますと、また原因が逃げてしまうという可能性がありますので、モータの爆発は避けないといけないということで、推進薬の一部に燃焼には寄与しない疑似推進薬、疑薬、こちらを使用して燃焼を途中で止める設計というものを検討しているというものになります。
 こういった活動を通じまして原因を特定していくということを考えております。
 次のページお願いします。
 右下24ページになりますけども、まず開発計画の見直しの方向性ということで、この2段モータの燃焼異常の原因調査を最優先で進めているということでありますけども、今、ご説明したとおり、相応の時間を要するということになります。
 一方で、イプシロンロケットの空白期間の短縮化と当面の打ち上げ需要への対応ということで、早期運用を目指した開発計画の見直しも検討しております。
 こちらは、意義は下に書いておりますけども、説明は割愛いたします。
 2番目の四角になりますけども、複数のオプションを検討した結果、強化型イプシロンの2段モータ、これはフライト実績がありますM-35モータになりますけども、こちらを適用するということを検討しておりまして、ただし枯渇部品がありますので代替品を利用するという必要があります。M-35と識別する観点で、M-35aというふうに称しておりますけども、こういう方策を今、検討しております。
 一方で、その2段モータのサイズが小さくなるということで、打ち上げ能力が当初目標より低下するということで、今、当面の適用可能なミッションというものを検討しているものになります。
 このM-35aへの適用機体に対する予備設計を、今、実施しているところですけども、今後システムの成立性を確認していきたいというように考えておりまして、今年末、2025年末を目標に新たな開発計画を設定したいというふうに考えております。
 さらに、E-21の開発につきましては、今、最優先で燃焼異常の原因調査をしているところですけども、その原因が見えてきた段階で対策を検討することとしております。
 次のページお願いします。
 この開発計画見直しの検討状況になりまして、E-21からM-35に置き換えるということを検討しております。
 機体全長は0.4メーター短縮になります。
 M-35aにつきましては、M-35から推進薬とインシュレーションの原材料が枯渇しておりますので、それを反映いたします。モータ性能への影響は、今は微小、ないというふうに考えておりまして、一方でM-35からの変更点があること。それから、E-21の原因究明からの反映事項がないかどうかについて、検討しているところです。
 説明は以上になります。

【山崎部会長】 岡田理事、有田プロマネ、そして井元プロマネ、どうもありがとうございました。
 ただ今のご説明につきまして、ご意見、ご質問等よろしくお願いいたします。
 基幹ロケットという宇宙開発の根幹を成すロケットの開発状況ということでご説明いただきました……。
 久保田委員、よろしくお願いいたします。

【久保田部会長代理】 ご説明ありがとうございました。大体理解したんですけど、H3の30形態について、タンク昇圧不足という事象について大体分かったんですけども。ちょっと教えてほしいのが、これ3機のエンジンがあって、1つだけ流量を切り替える弁がないという構成になっているんですが、この理由はどういったことでしょうか。

【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ひとえにコストダウンというのが正直な理由でございます。

【久保田部会長代理】 分かりました。対策としては、流量を多くするということで再度試験するということなんですけども、それでうまくいかなかった場合には、コスト上がるかもしれませんけど弁を付けるという話もあるんでしょうか。

【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 現在のところ、バルブを付けるまでには至らず、流量を増やすということができるというふうに考えてございますので、おおむねそれでいけると考えておりますけれども、バルブを付けても最大流せる流量が増えるわけでは必ずしもございませんので、これのコントロールができるというだけで、流量を増やすこと自体にバルブは貢献しないというところがございますので、何とかこの流量を増やすという対策でいけるんではないかと思ってます。

【久保田部会長代理】 分かりました。試験の結果を期待したいと思います。

【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。

【山崎部会長】 続きまして、秋山委員、よろしくお願いいたします。

【秋山委員】 秋山です。よろしくお願いいたします。
 有田PMにもう一度質問でして。16ページのところで、今後、開発完了ということで24形態、30形態の飛行実証、それからType2開発を確実に進めるということとご説明いただいたんですけれども。ちょっと細かいところの確認なんですが。このType2エンジンの開発が飛行実証まで全部終わって、そのブロック・アップグレードに進むのは、それと切り替えのような形で進むということでしょうか。つまり、この3つの要素がちゃんと終わったということを確認してブロック・アップグレードには進むという、そういう順番になっているものなんでしょうか。

【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ご質問ありがとうございます。今、考えておりますのは、Type2の開発と、それからブロック・アップグレードの開発はある程度ラップして進められる部分がございますので、特に設計検討みたいなものは早く始めたほうがいいという部分がございますので、そういった部分は並行して進めることになるかと思っております。

【秋山委員】 なるほど、ありがとうございます。その部分整理いただいて分かりました。どうもありがとうございました。

【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。

【山崎部会長】 ありがとうございます。
 では、神武委員、よろしくお願いいたします。

【神武委員】 ありがとうございます。3名の皆さん、ご説明ありがとうございます。
 H3ロケットについてお伺いしたいです。先ほど開発当初の物価や為替の目標に対しては達成されているということだったのですけれども、やはり現状の物価、為替の中でどうH3が役に立っていくかというところを考えた時に、一つは、そこはあまり考えずに自律性というところで価格競争はあまり重視しないというところもあるとは思うんですが、なかなかそうも言っていられないのかなと思った時に、今後どういう戦略を取っていくのかとか、あとは、例えばほかのロケット、以前だと「アリアン」とのお互いの相互補完みたいな戦略で、あちらがうまくいかなかった時にこちらが打ち上げるとか、何かいろいろそのもの自体を良くすること以外の、H3の打ち上げサービスとしての価値を高めるというような戦略があると思うんですが、そのあたりどのように進められて、その結果、開発にもシステム要求にも関わってくると思うんですが、そのあたりを少し教えていただければと思います。
 あと、2点目は、TDRSデータ中継衛星を使うということは、これはH-ⅡAロケットの「かぐや(SELENE)」等で既に行っていると思うんですが、今回何か新たなチャレンジがあるのかということと、これはもしTDRSを使うということでアメリカの衛星を使うので、それに委ねるのにはリスクがあるので地上局ということだとすると、日本がデータ中継衛星を持てば、全てデータ中継衛星を使って地上局は要らなくなるのかなとも理論的には思うんですが、そのあたりどのように考えられているか教えてください。

【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ご質問ありがとうございます。まず、価格に関しての戦略というところですけれども、ご指摘のように為替や物価、こういったのがかなり上がっているというところから、価格もこれに反映しなくちゃいけないというところはありますけれども、同じ状況は諸外国を含めたライバルのロケットも同じ状況にさらされているというところで、基本的には額面上はこの人たちと張り合える状況は変わってないというのが基本的な認識で、三菱重工、プライム・コントラクタがいろいろ商談を頑張っているというところでございます。
 さらに、コストパフォーマンス、競争力を向上させるために高頻度化ですとか高度化、こういった取り組みを進めていきたいというふうに考えているというのが基本的な考え方でございます。
 それから、「アリアン」との相互補完、これはH-ⅡAの時に確かにお話があったところなんですけれども、なかなか正直うまくいかないというところが過去の経験でもありまして、今のところ「アリアン」やほかのロケットとそういった協業をするというような話は、今のところ私の知る限りは出てきていないというところでございます。
 それから、2つ目、TDRSに関しては、ご指摘のとおり、これもH-ⅡAでもやっているところではあるんですけれども、送信機等このH3に合わせたアビオシステムを完全に刷新しておりますので、送信機、アンテナ、こういったところを完全に刷新をしまして低コスト化も盛り込んだ形でこの新しいシステムには取り組んでるというところでございます。
 以上でございます。

【神武委員】 ありがとうございます。
 最後ちょっと夢のような話かもしれませんが、テレメトリは、地上局なしで全部中継衛星で行うというのは、NASAの衛星じゃなければ、日本の衛星が手にできればそういうやり方も将来考え得るということなんでしょうか。

【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 すいません、1つお答えを漏らしてしまいました。
 日本にもデータ中継衛星あるんですけれども、なかなかカバレッジの範囲が衛星からのデータを地上に送るということを主たるミッションにしているという関係もあって、どうしても大西洋上空はカバレッジに入ってないとか、そういった制約が日本の中継衛星にはございますので、なかなか使いづらいというところが正直ございます。
 一方、アメリカの衛星に頼るというところについては、これは課題があるというのは私どもも考えておりまして、実はこのTDRSはサービスアウトするというアナウンスが既になされておりまして、これについて私どもも対策は打つということで、民間の通信衛星を使ったデータ中継システム、これをTDRS代替という形で現在検討しているところでございます。
 これによってできるだけ自由度を失わないような形で運用をしていきたいというように考えているところです。

【神武委員】 ありがとうございます。モビリティが高いほうがいろいろできると考えると、もう地上局は廃止して民間の通信衛星も含めて、通信衛星でテレメトリは落とせばいいんじゃないかなというふうに思うわけですが、それはできないことはないけれども、一足飛びには難しいなと、そういうことですね。

【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 そうです。特に飛行安全にとって必要なデータを送るのに、やはり出どころがはっきりした、きちんとした通信ルート、これを確保するというのが必要なところでございますので、神武委員がおっしゃるのが理想的なシステムだというところは全く同意見ですので、このあたりバランスも含めて引き続き検討していくことになると思います。

【神武委員】 分かりました。ありがとうございます。

【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。

【山崎部会長】 ありがとうございます。
 続きまして、笠原委員、お願いいたします。

【笠原委員】 井元プロジェクトマネージャにご質問させていただきます。
 まず、非常に丁寧なご説明と、それから非常に大変な異常燃焼の原因究明の活動に対して、心より敬意を表します。ほんとにお疲れさまです。
 まず、1点目確認させていただきたいのは、参考資料の2-2の回収物のところで、イグナイタ・イグブースタのほうは外観溶損なしという記載がございましたので、今回の異常燃焼の原因には、やはりイグナイタ・イグブースタのほうは健全に作動していたというか、問題はなかったというふうな結論を得られたのかなというふうに思っております。
 それに合わせまして、この図でほかの部分も非常に丁寧に回収・分析を行われていて、それぞれの状況が詳しく書かれてあるんですが、ここの表現されている内容と、今日ご説明いただいた原因との関連性というんでしょうか、それは不整合がないというふうには読み取りましたが、ここが原因であるというような、そういう回収物からの原因の特定には至っていないのかなという理解もいたしております。この点が、私の認識が正しいのかどうかというのが1点目の質問でございます。
 2点目は、22ページのほうに詳しく原因の特定が3つ掲げられていますが、すいません、私の勉強不足で大変申し訳ないんですが、リリーフブーツというのは、これは空隙であって、燃焼したガスがダイレクトにこちらに通常入り込む可能性のある空間なのかなというふうに理解いたしました。それと、ブーツフラップと、それから推進薬の隙間、ここは本来あってはいけないもので、そこに隙間が存在することによって着火するというか、推進薬が燃焼していくような状況が発生し得るのかなというふうに理解いたしました。そういう理解で正しいでしょうか。だとすると、主要な原因のお考えというのは理解したつもりにはなっているんですが。すいません。ちょっと分かりにくい質問で申し訳ないんですが、お答えいただけないでしょうか。

【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。まず38ページの回収物の件なんですけども、おっしゃるとおりです。イグブースタ・イグナイタは要因ではないというふうに考えておりまして、この回収品の調査状況と原因は矛盾はないということです。
 一つ説明を追加するとしますと、まず後方ドームです。モータケースのCFRPとインシュレーション、こちら側がかなりばらばらになっておりまして、このどこかで漏えいがあって爆発したというふうに考えておりますので、今、笠原先生がおっしゃったとおりのことになります。それが1点目の回答になります。
 22ページに戻っていただきまして、リリーフブーツにつきましては、もともと隙間が空いているというところで、着火直後から燃焼ガスがこの中に入ってくるというのが正常になります。
 ブーツフラップと推進薬の間の隙間ですけども、こちらのノズルを上側にして推進薬を中継する関係上、最後に小さな隙間が空くというのは、これは完全に真空引きできるわけではありませんので、原理的にはここの隙間というのは残ってしまうというものでして、それが大きいか小さいかという話になってくるかと思います。
 なので、これが即座に原因になるというふうには考えておりませんで、何らかの要因で着火する要因がある場合には着火してしまう可能性があるということで、まだバツにはできてないというものになります。

【笠原委員】 ありがとうございました。丁寧なご説明ほんとにありがとうございます。応援しておりますので、うまく進むことを心より祈念しております。ほんとにどうもありがとうございます。以上でございます。

【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。

【山崎部会長】 議論の途中で恐縮ですが、次の議題もありまして。恐らく予定の3時は過ぎてしまうということで、大変恐縮ですが、もし委員の皆さまの中で3時に退室をしないといけないなど事情がある方がいらっしゃいましたら、チャットなども使ってお知らせいただければ先にご発言いただければと思います。お願いいたします。
 では、質疑、応答少し続けたいと思いますので。小笠原委員、お願いいたします。

【小笠原委員】 小笠原でございます。有田さんにご質問です。
 10ページの自律飛行安全の件でテクニカルな確認と、あと仕組みの確認を1つずつお願いしたいと思います。
 今回のお話は、Afterのほうの自律飛行安全の計算機を作動させます。ただし、飛行中断系へはつながない、すなわちシャドーで打ちますというお話のようなんですが、そうすると本来の飛行安全系、コマンドデストラクトは別の地上から生かした状態、Beforeで飛ばしますかというのが1つ目の質問です。
 もしそうであれば、HTV-Xのミッションというのは、特に自律飛行安全を使うことで打ち上げ能力を上げる必要はないということでいいでしょうかというのが1つ目の質問です。まずお答えをお願いしていいですか。

【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 分かりました。今、おっしゃっていただいたとおり、1号機に関しましては実証ということで、右の図に書いてございます、ちょっと細かくて見づらくて恐縮なんですけれども、飛行安全機器から、これいわゆるコマンドデストラクト・レシーバーですね、ここから青い破線で線が行ってると思いますけれども、自律飛行安全計算機を経由せずに飛行中断指令は機体制御コントローラのほうに通常のミッションと同様に入ってくるという形にしております。ですので、今回は、言っていただいたBeforeのケースで機体のコンフィギュレーションはできております。これがなぜ1号機について可能になっているかということなんですけれども、HTV-X1のミッションにおけるペイロードが少ないということで、X1ミッションについて全体の打ち上げ能力の要求がさほど大きくなかったということがありまして、このようなことが可能になっております。つまり、この自律飛行安全を適用した打ち上げ能力の向上というのが、X1ミッションについては必要なかったということでございます。
 一方、今後のHTV-Xのミッションにおいては、この自律飛行安全の適用による打ち上げ能力の向上が必要になるミッションがあるというふうに理解しております。

【小笠原委員】 ありがとうございます。もう一つだけ。
 この自律飛行安全はすごく大事だと思っていて、今後使われるのも大変そのとおりだと思います。「カイロス」が初号機で自律飛行安全でトラブルがあったと思います。その辺のトラブルに関する技術的な情報のやり取り、JAXAさんとの間は完全にといいますか、JAXAさんは十分にそこのLessons & Learnedを学んでというか、生かしてH3に向かっていっているという理解でいいでしょうか。そこは特に技術的な情報をもらう上では、ハードルは特になかったということでよろしいでしょうか。

有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 今、言っていただいた件につきましては、先方から支援をしてほしいというようなお話もありまして、この共通した話があるのかどうかというところについては、しっかり私どもも見極めさせていただいておりまして。この原因が直接自律飛行安全システムの問題ではなかったということまで確認させていただいておりまして、そのあたりしっかり情報の共有はさせていただいているところでございます。

【小笠原委員】 ありがとうございます。国として、ちゃんと経験が生きているというふうに理解しました。ありがとうございます。以上です。

【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。

【山崎部会長】 続いて、吉井委員、よろしくお願いいたします。

【吉井委員】 イプシロンの地燃試験の原因究明については大変なご苦労をされてると思うんですけれども、国際宇宙保険市場での受け止め方をご披露させていただきたいと思います。
 国際宇宙保険市場では、むしろ商用打ち上げの前にしっかり試験をして不具合があることが分かったということで、ポジティブに受け止めるアンダーライターが複数名おります。なので、現場の、もともと新型ロケットの成功率っていうのも非常に低いというのはコマーシャルの宇宙保険の世界でもコンセンサスがある中で、きっちりその手順を踏んで開発を進めているという印象は持たれているかというふうに思います。
 そういった観点で、現場のエンジニアの方々が委縮しないような環境づくりも非常に重要なのかなと思います。
 空白期間をつくらない取り組みというのも大事なことかと思います。以上コメントさせていただきました。

【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 どうもありがとうございます。最後のほう聞き取りにくくて申し訳ありません。最初のほう、必要な手順は、地上での検証になりますけども、そこは手を抜くことなく、これまでも、これからも続けていきたいと思っております。
 以上です。

【山崎部会長】 ありがとうございます。
 続いて、秋山委員、よろしくお願いします。

【秋山委員】 秋山です。2問目の質問になりまして恐縮です。井元PMに1点お願いしたいんですけれども。
 24ページにお示しいただいたイプシロンSの見直しの方向性ということで、今後2段モータがM-35aになった場合ですけれども、打ち上げ能力が変わるので適用可能なミッションを検討中と頂いていますけれども、このミッション検討中というのは、現状でイプシロンSの候補となっているベトナムの「LOTUSat-1」と、それから革新的衛星技術実証の4号機にも適用されるということでしょうか。それで、もし今回の旧型モータに差し戻したイプシロンSでは打ち上げが難しいということになった場合には、「DESTINY+」と同様に、ほかのロケットへの載せ替えということもあり得るということになりますでしょうか。その点のご確認をお願いいたします。

【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。まず、「LOTUSat-1」につきましては、このM-35aを適用した形態で打ち上げられることができるかという検討を、今、実施しているところであります。
 あと革新4号機につきましては、衛星側でロケットを選定するということになっております。今、われわれとしては、提供可能なようにということで考えているところであります。
 そちらで打ち上げられないとなった場合なんですけども、まず「LOTUSat-1」につきましては、イプシロンSで打ち上げたいというご要望がベトナム側からありますので、まずはもしこれで打ち上げられないと、われわれ何とかして打ち上げられるような検討をしてるところですけども、万が一打ち上げられないとなった場合には、われわれとしてはE-21の対策品を適用したイプシロンSロケットを提供するという方向で検討していくことになるかと思います。
 ただ、一方で衛星側のご要望というものもあるかと思いますので、そちらにつきましては革新4号機と同じような形で衛星側と十分調整して協議して決めていくという形になると考えております。

【秋山委員】 なるほど、ありがとうございます。
 ちょっとだけ確認なんですが、このベトナムの方々がイプシロンSを強くご希望されているという、その理由というか背景はどんなところにあるんでしょうか。

【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 完全に理解しているわけではないですけども、イプシロンのことを信頼していただいているというふうに私は考えておりますし、また環境条件とか、これまでインターフェイス調整を実施してきたところもありますので、親和性がいいといいますか、そういうようなこともあるのではなかろうかなというふうに推定しております。ちょっと正確には相手側にちゃんと聞かないといけないという状況です。

【秋山委員】:なるほど、分かりました。どうもありがとうございました。

【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。

【山崎部会長】:ほかにご質問、ご意見等ありますでしょうか。大丈夫でしょうか。闊達(かったつ)なご議論ありがとうございました。
 皆さまの意見からもありましたけれども、両方の基幹ロケットと、あとその周辺のやはり通信環境であったり、自律飛行もそうですし、地上の設備もそうですし、トータルで考えて力強い基幹ロケットの開発環境を強化していただければと私も思います。引き続きよろしくお願いいたします。

【岡田理事(JAXA)】 どうもありがとうございました。

【山崎部会長】 お三方の皆さま、ありがとうございました。
 では、次の議題のほうに移りたいと思います。次の議題は最後の議題となります。今後必要となる民間等による研究開発課題についてです。
 7月に実施した第97回の当部会において、国として民間等を主体とした今後の宇宙開発利用の推進に関わる方向性や論点について、事務局の素案に対して委員の皆さまからさまざまなご意見を頂きました。その後、事務局において関係者からのヒアリングなども含めて検討が進められ、今後解決されるべき研究開発課題として具体的なイメージが描かれつつあります。
 本日は、事務局よりそれらの研究開発課題の案についてご提示いただき、委員の皆さまから忌憚(きたん)のないご意見を頂きたいと思います。
 事務局の島村補佐、ご説明お願いいたします。

【島村補佐(事務局)】 山崎部会長、ありがとうございます。私、8月より着任しました宇宙開発利用課の島村と申します。では、説明を開始したいと思います。
 はじめにという部分でございまして、宇宙市場の規模、2040年には1.1兆ドルとも予測されまして、わが国におきましても約100社の宇宙スタートアップが設立され、2024年にはスタートアップ従業員数の増加率については、宇宙産業が全産業の中で1位となるなど活況を呈している状況でございます。
 こうした動きを後押しするためにも、政府としましては2020年に4兆円の市場規模を2030年代早期に8兆円へ拡大する目標を宇宙基本計画に定めるとともに、わが国の勝ち筋を見据えながら、安全保障・民生分野横断的に開発を進めるべき技術やタイムラインを示す宇宙技術戦略というものを策定し、これを毎年度ローリングすることとしております。
 本日の議題につきましては、この宇宙技術戦略といったところを見越しての議論という形になります。
 こういった動きを踏まえまして、文部科学省としましては、JAXAによる産業力強化に向けた取り組みでしたり、中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)、経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)、また宇宙戦略基金などを通じて、そういった企業の技術開発でしたり、実証を支援しているような状況でございます。
 ただ、やはり国際的な宇宙開発競争激化の一途をたどっておりまして、わが国の民間等を主体とした今後の宇宙開発利用を推進に関する方向性といったところは随時に検討していくことが重要であろうというふうに考えております。
 2回前の部会、7月の宇宙開発利用部会におきまして、民間等による今後の宇宙開発利用について委員の皆さまにご議論いただきました。具体的には、民間等による技術開発・実証については、3つの事項が重要であるというふうな形でご議論いただきました。
 3つの事項といいますのが、1つ目「企業の宇宙参入と技術の宇宙適用」から、それを「宇宙実証」を通じて、ビジネス等の「価値創出」へとつなげていくと、この3つの事項のサイクルを回すことが重要であるというふうな形でご議論いただきました。
 今回、これまでの部会の議論でしたり、宇宙開発の現状を踏まえて今後必要となる具体的な民間等による研究開発課題について議論いただきたいというふうに思っております。
 次のページお願いします。
 少し7月の宇宙開発利用部会の議論を振り返りたいというふうに思いますけれども、3つの事項を大事といったところの、1つ目、新規参入と宇宙適用の加速というところ。こちらは前回の部会の資料ですけれども、これについて現状と課題と方向性と論点というところを議論していただきました。そのほかの2つの事項、宇宙を通じた価値創出の加速でしたり、宇宙実証・宇宙活動の加速といったところにも議論を頂きました。こちらはちょっと時間もございますので、飛ばしたいと思います。
  7月の部会の議論を少しまとめたものがこちらになります。左側の図にございますように、新規参入と宇宙適用の加速といったところを入り口として、出口としての宇宙を通じた価値創出の加速、そのためにはやはり宇宙実証・宇宙活動の加速ということが大事だという、この3つのサイクルをいかに効率的に回すかというところが重要かというところを議論いただきました。
 右側にございます加速に向けた方向性を少しご紹介いたしますと、新規参入と宇宙適用の加速につきましては、JAXAの伴走支援機能の充実でしたり、政府調達のシグナリング、また地上で稼ぎつつ宇宙を目指す経営でしたり、大学等との連携を通じたターゲットの拡大でしたり、リスク分散を求めることが重要ではないかとか、将来技術のいち早い宇宙適用に向けた取り組みの重点的な推進が必要であるというご議論を頂きました。
 また、宇宙実証・宇宙活動の加速につきましては、事業性と機能性の高い船内外システムの構築が重要でしたり、デブリ等の外的リスクへの機動的な対応を可能とするシステムの構築を検討するが必要でしたり、宇宙用デジタルモデル・デジタルツインの実用化・高度化が必要であることが話されました。
 また、地上および軌道上における試験データ・実証データの効率的な蓄積と活用方策を検討することが必要であるといった形のご議論を頂きました。
 また、最後に、宇宙を通じた価値創出の加速といったところについての方向性としましては、例えば衛星観測については、アプリケーションに応じた適切な異種衛星・事業者間での連携運用技術・システムの検討が重要でしたり、低軌道拠点の利用については利用コストの低減、また船内外装置の柔軟性確保等を通じたユースケースの拡大、また、価値創出の一つの将来市場、大きくなっております宇宙資源の活用といったところについては、必要となる技術開発課題について、中長期的な方向性でしたり戦略が必要であって、また裾野の拡大や一体的に推進することも重要である、という形がご議論いただいたところでございます。
 次のページお願いします。
 文部科学省としましては、こういった宇宙開発利用部会での議論を踏まえて、各事業者や大学等との研究者へのヒアリング、またJAXAや関連団体等との意見交換を重ね、さまざまなニーズや政策的な検討を進めてきたところでございます。
 こうした検討を踏まえまして、今後、宇宙技術戦略における「衛星」、「宇宙科学探査」、「宇宙輸送」、「分野共通技術」の各分野で必要と考えられる民間等による研究開発課題について、次ページ以降でお示ししたいというふうに思っております。
 ここからは、各分野の背景と必要となる技術開発というのを検討しておりますので、それについてご意見頂きたいというふうに思っております。
 まず、衛星分野についてでございます。背景としましては、ご案内のとおり、商業衛星分野においては、観測機能の高度化に基づくデータ・サービスの差別化により、ユーザーニーズへの対応力を高め、ビジネス拡大と新規市場創出を推進する潮流というのが加速しております。
 こうした動向を踏まえまして、宇宙戦略基金におきましては、観測機能の高度化でしたり、衛星観測データの新たなユースケース創出、こういったところの企業の支援を進めているところでございます。
 中長期的な視点に立ちますと、わが国が衛星分野における国際的なビジネス競争において優位性を確保していくためには、技術的ブレイクスルーというところが非常に重要でございます。
 文部科学省におきましては、こちらは宇宙に限る話ではございませんけれども、K Programでしたり、未来社会創造事業、Q-LEAP等によって、量子等の先端技術の地上における技術開発や実証を推進してきたことでございます。
 やはり先端技術の宇宙応用の分野においては、地上での技術開発を加速させるだけではなくて、やはり先行者優位を見据えた、そういった地上で培われた技術の早期の宇宙実証へとつなげていくということが重要であるというふうに考えています。
 こういった背景を踏まえまして、必要となる技術開発としましては、例えば衛星事業者や衛星データソリューション事業者等が新たなユースケース・事業構想を創出することを目指しまして、従来比較で桁違いの性能を発揮しゲームチェンジャーとなり得る衛星技術の獲得を戦略的に推進し、量子技術等の先端技術の宇宙応用に向けた技術開発に重点的に取り組むべきではないかというふうに考えています。
 次のページお願いします。
 次は、軌道上サービス分野についてです。軌道上サービス、宇宙空間での物流効率化や、衛星のリプレイスの実現などを通じた宇宙インフラの抜本的コスト削減や、宇宙機運用の革新を生み出し得ることから、今後の宇宙開発の発展に伴う市場規模の急速な拡大というところが予測されております。
 そういった中、宇宙戦略基金でしたり、SBIRフェーズ3、K Programを通じて、軌道上サービスに関する技術開発というのを今まで支援してきたところでございます。
 他方、近年の情報科学技術の急速な進展に伴いまして、地上ではかなりAIとかの技術開発進んでおりますが、宇宙分野でも多様なデジタルモデルというのが開発され、製造・運用・ソリューションに至る各プロセスに大きな影響を与えております。
 また、地上では、既に最先端の技術としてフィジカルAIといわれる、重力や摩擦等の物理法則を理解・反映した上で運動や操作といった行動・判断を実行するAIといったところの、基盤モデルの開発・実装が加速しております。例えば衛星データ分野において、衛星データ事業者がAIと使うといったような形で徐々にAIというのも宇宙に参入してきているところでございますけれども、やはり軌道上サービスを根本的に変える可能性のある技術の一つとしては、やはりAIを活用した軌道上サービスの技術開発というところが想定されるところでございます。
 そういったところを踏まえまして、必要となる技術開発としましては、例えば先進的なAI技術というところを、世界に先駆けて技術実証を目指すために、ボトルネックとなり得るような訓練データの獲得でしたり、基盤モデルの構築等に必要とされるシステム技術の開発・実証に重点的に取り組むべきではないかというふうに考えております。
 次、お願いします。
 地球低軌道分野についてです。2030年のISS運用終了後については、これまで政府で所有・運用されてきた地球低軌道有人拠点というのは、民間所有・運用に移行するということが計画をされておりまして、今後は米国を中心として民間主導による地球低軌道というところが移行されていくというような状況でございます。
 そういった動きを踏まえまして、宇宙戦略基金におきましては、わが国の低軌道有人拠点における実験環境の整備に係るハードでしたりとか、サービスに関する支援というのを実施してきているところでございます。
 そういった動きございますけれども、それに加えて、やはりわが国がISSでしたり、「きぼう」日本実験棟を通じて培ってきた地球低軌道活動を維持・発展させ、地球低軌道に経済圏を構築するためには、宇宙空間から地上に裨益するバリューチェーンを形成できるような利用者目線に立った支援でしたりとか、ユースケースの拡大が必要であるというふうに考えております。
 また、別の観点でございますけれども、わが国が、米国商業ステーションに対して、デブリ回避等の外的リスクへの機動的な対応等の価値ある機能というのを提供することで貢献度を高めていくということも重要であろうというふうに考えております。
 また、ポストISSでは、JAXAもユーザーになるということをわれわれは検討しております。
 こうした背景の中、必要となる技術開発としましては、例えば宇宙実証に向けた研究でしたり装置開発、こちらビジネス視点に立ったものでございます。こういったものに取り組むでしたり、また商業ステーションに対して価値ある機能を提供するための技術開発への支援に重点的に取り組むべきではないかというふうに考えております。
 次、お願いします。
 残り3分野でございます。月面開発・深宇宙探査分野についてでございます。
 背景としましては、世界各国の月面開発が急速に進展していく中、わが国としても持続的な月面活動を見据えた産学官による技術開発というのが必要であります。
 やはり月面活動の前提となるような重要技術の早期獲得というのは、官民を挙げた機動的な対応を求められまして、宇宙戦略基金におきましてはそのような技術への支援というのを実施してきております。
 また、JAXAにおきましては、アルテミス計画における月周回有人拠点や、有人与圧ローバ等の研究開発でしたり、小型月着陸実証機などで獲得した実績と技術的強みというのを有しております。
 他方、持続性ある宇宙開発利用や将来市場を見据えた宇宙資源活用に関する技術開発でしたり、最近よく話題になっておりますプラネタリーディフェンスといった活動を踏まえた技術開発というのも必要であろうというふうに考えております。
 こうした背景を踏まえまして、必要となる技術開発としましては、例えば小惑星探査機「はやぶさ」等の実績で大学および民間企業で培われたわが国が国際的にアドバンテージのある技術等を最大限に活用しつつ、官民の緊密な連携による宇宙資源活用に関する技術開発といったところに取り組むべきではないかというふうに考えております。
 次、お願いします。
 輸送分野についてです。背景としましては、宇宙輸送に係る世界的な開発動向としましては、やはり打ち上げコストの削減でしたり、高頻度打ち上げを可能とする再使用ロケットといった新たな宇宙輸送機体の開発というのが行われてきております。
 わが国におきましては、JAXAにおいて1段再使用に向けた飛行実験CALLISTOなどを行っていたり、またSBIRフェーズ3基金事業においては、こちらは再使用のみを対象としているわけではございませんが、民間事業者によるロケット打ち上げ実証というのも支援しているところでございます。
 こうした動きの中、宇宙戦略基金においては、射場における基盤システム技術でしたり、有人宇宙輸送システムにおける安全確保の基盤技術に関する支援というのを実施してきております。
 今後、ロケット打ち上げシステムや将来の宇宙輸送サービスに参画するためには、実環境における実証や要素技術を踏まえた宇宙輸送システムの設計等を行う必要があるというふうに考えています。
 こうした背景の中、必要となる技術開発としましては、再使用ロケット等の打ち上げから回収を見据えた新しい宇宙輸送システムのアーキテクチャの構築を目指し、地上系技術の基盤システムの拡張性を視野に入れた技術開発でしたり、ロケットの再使用化・大気圏再突入等に求められるキー技術の獲得というところに取り組むべきではないかというふうに考えております。
 こちら最後でございます。分野共通技術についてでございます。
 分野共通技術、やはり将来の宇宙開発利用における分野横断的なボトルネックの解消への技術開発の支援でしたり、それを通じた人材育成というのは非常に重要であるというふうに考えております。
 JAXAにおきましては、高信頼性ソフトウェア技術などを例にそういった研究開発を行っているほか、宇宙戦略基金におきましては熱制御でしたり、電子機器の利用の高度化、また推進系技術に関する要素技術開発というのを推進してきたところでございます。
 しかし、まだ取り組みが十分でない領域というのがございまして、それが必要となる技術開発というところに書かせていただいており、ボトルネックの解消となる技術としては、例えば構造の安定化とそのための新材料開発・適用、計測・分析技術とそれに基づくシミュレーション・予測技術の開発、衛星通信の高速・大容量化技術とそれに伴うデータ処理技術の向上、また環境配慮の燃料・材料技術、宇宙飛行士や宇宙機の環境制御・生命維持に必要なシステムの開発などが考えられます。
 こういった分野共通技術を支援していくことが必要ではないかというふうに考えております。
 以上、駆け足となりましたが、私の説明は終わります。どうぞよろしくお願いいたします。

【山崎部会長】 島村補佐、ありがとうございました。
 では、ご意見、ご質問等よろしくお願いいたします。
 金井委員、よろしくお願いします。

【金井委員】 ありがとうございます。ちょっとこの後用務があるため、先にコメントをさせていただきます。
 10枚目、右下のページで9ページ目のところで、低軌道の話ですけども、低軌道でなぜ現在わが国が優位を持っているかというのは、やはり「きぼう」の存在というのは非常に大きいというふうに考えております。
 ポツの一番下とか、下から2番目に関して、ポストISSで「きぼう」がなくなってしまった後に、どうやってその優位を確保して民間の研究開発を低軌道で行っていただくかというところが非常に重要なポイントになるかなと思っております。
 そのためには、ここで書かれているように米国商業ステーションを十全に活用するという、その方向性について異論はないのですけども、わが国としてもやはり独自に確実に確保できる低軌道のアセットというのは、非常に重要かなというふうに思っております。
 その観点で、例えば現在JAXAが打ち上げようとしているHTV-Xのようなものを米国の商業ステーションに代えてなのか、あるいはそれと並列してなのか分かりませんけども、1年なり、1年半なり、軌道上に飛行させて、それを使って民間の研究開発を進めていただくというような、言ってしまえば日本独自のミニステーション的な使い方というのは民間の研究開発を進める上では重要かなというふうに考えております。
 それから、これは私の宇宙飛行士としての先走りなのかもしれず、ほかの委員の先生方のご意見も伺いたいところですけども、やはり日の丸有人宇宙船をわが国独自に保有・運用するというのは、何となく皆さん心の中に思いつつ、なかなかそこに踏み切れないところはあるかと思いますけども、重要であると考えます。宇宙輸送システムという点で、他国に依存せずにわが国独自の輸送系を持つということで、国産ロケットの話がありますように、同じような観点でやはり有人宇宙飛行のアセットもわが国として独自に持っておくということは、この先を考えていく上では非常に重要かなというふうに思います。一足飛びにそこまで行けないにしても、例えば有人宇宙船については他国から、最初のうちは買い取るような形で運用して、技術・ノウハウを蓄積していくというのは、最終的にはわが国、今、持っている強みであるとか、優位性を維持する上では重要なのではないかなというふうに個人的に思います。
 以上、意見です。ありがとうございました。

【島村補佐(事務局)】 金井委員、前向きなコメント、誠にありがとうございます。
 私の受け止めを申し上げさせていただきますと、問題意識、非常に共感しております。まさにここの図にも書いてございますように、宇宙戦略基金の第1期におきましては、物資補給のためのシステム技術でしたり、あとは自律飛行型モジュールシステム技術といったところを支援しておりまして、こういったところを活用することによって日本の貢献度というところを高めていきたいというふうに思ってございますし、また有人技術といったところにおきましては、輸送の部分については宇宙戦略基金の第2期で、要素技術ではございますけれども、有人宇宙輸送システムの安全確保に関する基盤技術を行っていたりとか、やはり有人宇宙技術といったところは結構裾野が広いかなというふうに思っておりますので、12ページにございます分野共通技術のボトルネックの解消の技術としまして、例えばという形で例に書かせていただいている、宇宙機の環境制御・生命維持に必要なシステムの開発といったところもわれわれ重要ではないかなというふうに思っておりますので、複合的にいろんな技術をやりながら、また実際にサービスとしてつなげていくことは重要であろうかというふうに思っております。ご指摘ありがとうございます。

【金井委員】 ありがとうございます。心強いお言葉だと思います。引き続きよろしくお願いします。

【山崎部会長】 では、続きまして、吉成委員、お願いいたします。

【吉成委員】 聞こえますでしょうか。ありがとうございます。
 2点コメントをさせていただければと思うんですが、まず、衛星のデータに関連して、先進技術の開発というのは文科省が背負っているミッションということは十分理解いたしますが、それに加えてなんですけども、やはり既に開発されたセンサー類をいかに組み合わせて、ないしは当初の想定でない使い方をする形で応用範囲を広げていくかという研究も重要ではないかなというふうに思っております。
 具体的に、GPSオシレーションだとか、GPS気象学みたいなのもございますが、当初センサーのGPSはそういう目的で使うわけではなかったわけなんですけども、応用範囲が広がり、それがまた今は民間がそういう衛星を打ち上げるというビジネスになっているということがありまして、そういうような形の多面的活用、さらには使う敷居を下げるような研究というのも非常に重要ではないかというふうにコメントさせていただきたいと思うのが1点目。
 2つ目が、あと軌道上のフィジカルAIのお話で、これも非常に重要な領域だなというふうに思っております。
 これ、フィジカルAIの場合、やはり訓練データがないというところが今は最大の課題になっていまして、例えば一般的に言われてるのはフィジカルAI、特にロボットアームみたいなものを実用化しようとすると、10万時間分のデータが要るというようなお話もございます。結局、これはいかに早く始めてたくさんのデータを取るかということですので、この方針が出ましたら速やかに、そういうデータを集めるという観点でも早く着手されるのがいいのではないかというふうに思っております。
 私のほうからは以上です。

【島村補佐(事務局)】 吉成委員、ありがとうございます。2点ご指摘いただいたかなと思っております。
 1つ目、衛星分野につきまして、問題意識についてはおっしゃるとおりの認識を持っております。われわれとしましても、例えば宇宙戦略基金におきまして、衛星観測データの新たなユースケース創出という形でデータの利用というところを目配りしていたりとか、観測機能の高度化というところも目配りしておりまして、そういう既に開発された技術の組み合わせで新たな価値をといったところは、そういったところの宇宙戦略基金で今まで支援してきたところも見据えながら、引き続きわれわれとしても検討していくべき話かなというふうに感じました。ありがとうございます。
 フィジカルAIの軌道上サービスにつきましてでございます。かなり前向きなご意見頂いて、誠にありがとうございます。問題意識はおっしゃるとおりかなと思ってまして、われわれとしてもなるべく早く先行者優位の高い宇宙での分野で早めに実証して、早くわれわれの立ち位置を高く持っていくというところは重要かなと思いますので、これは引き続き検討したいというふうに思ってます。ありがとうございます。

【山崎部会長】 どうもありがとうございます。
 では、続いて、木村委員、お願いいたします。

【木村委員】 ありがとうございます。時間が過ぎているところ恐縮ですけれども、宇宙戦略基金も含めて幾つかのところで協力させていただいている視点からです。
 全体的な方針は素晴らしいと思います。この方向は間違っていないと思っていて、正しい方向を整理いただいていると思います。
 その上で、今、実際に動かしていたり、あるいは将来こういうところに展開していく必要もあるのかという視点で、少しコメントだけさせていただこうと思います。
 1点目は、実は、今、まさに吉成委員からありました軌道上サービスの関連のところなんですけど、私も全く同意見で、フィジカルAIが発展していったり、あるいは軌道上分野、フィジカルAIだけではなくて、いろんな人が参入してきて、これが進んでいくために最も重要なのは、やっぱりプラットフォームなんだと思っています。いろんな技術を試せる、あるいはAIに食わせるデータが取れる、これをいかに確保していくかっていうところが非常に重要だと思っています。
 その時に、実はこれまで意識していなかったんですけど、ほかの文脈で語られている、例えば「きぼう」実験棟の利用であったりとか、そういったところも有機的につなげていくようなことができると、われわれがプラットフォームを持っているという強みを生かしながら、しかもそこでいろんな実験ができるというところにつなげていけるかなと思っています。
 なので、この話は単に軌道上サービスだけで閉じるのではなくて、「きぼう」もしくはその先の宇宙環境利用みたいなところとリンクさせて考えると、もっと世界が広がっていくのではないかなという期待を持っています。これが1点です。
 2番目が、先ほどの別のところのコメントでもお話ししたのですけれども、似たように、「きぼう」を持っている強みっていうのは非常に重要だと思っていて。さらにそこにつなげていく、今度、地上での検証メディアというのがまた必要になっていくかなと。つまり、バーチャルな世界で検証していくためには、フィジカルな情報がそこのところを裏打ちするために必要で、その部分を例えば地上でステーションまで持って上がる前に、パラボリックフライトであるとか、落下塔であるとか、実は宇宙環境利用の草創期の時にはかなり脚光を浴びてるんですけども、今はなかなかうまく活用されていない感があって、そこをぜひ拡充していくと、もっと世界が広がり、かつこれを教育と結び付けるというのは非常に良いことなのかなと思っています。そういうところを併せて考えていただけると、この宇宙利用の枠組みの厚みがさらに出てくるかなというふうに思っています。
 3つ目が、先ほどの有人与圧ローバのところでもお話ししたんですけれども、居住とかハビテーション、環境コントロールというのは、非常に重要な分野にこれから先なっていくと思います。
 その分野において、やはり地上の技術とうまく連携を図っていく。例えば、企業でいう環境関連とか資源循環とか、そういう文脈で語られてたところに、いろんな快適性であるとか、そういうところにいっぱい玉が転がっているというか、原石が転がってるんじゃないかなと思います。
 なので、そういうところをうまく広げる、そういう分野をある種テーマとして引っ張り出すことによって、これまで設定がなかった技術をうまく誘導していくという取り組みも必要なのだなというふうに思っています。
 4点目はちょっと視点が変わりまして、これはみんなが言ってることなんですけども、私たまたま衛星分野のほうのPOもやっていたりしますので、その視点でいくと2つ大きく課題になっていることはあるように思っています。1つは、やっぱり出口としての政府のアンカーテナンシーみたいなものが、やはり文脈として非常に重要で、それが産業的な発展というか、産業界ではうまく導入されていく仕組みになっていくだろうと。そこをぜひ政府全体としてうまく検討していく方向が必要なのだなというところです。
 もう一つは、戦略基金自体が持ってる横の連携性といいますか、それぞれのテーマ、それぞれ非常に需要なテーマが今はピックアップされていて、ただそれは大きな目で見ると恐らく日本の産業界が宇宙で発展していくための大きな絵図みたいなものがあって、それの下にそれぞれのエレメントが配置されてるんだと思うのです。その連携をうまく取っていくということがとても重要かなと思っていて。
 例えば、私の関連しているところですと、衛星コンステレーションの話と例えばロケットの話がうまく連携するかとか、あとコンステレーションの話と部品コンポーネントの話がうまく連携できるかっていう、そういうような、少し成熟していくことによって横方向の連携についても、今後何らかの枠組みを考えていったり、あるいはそういう中で生まれてくる事象を有機的に実証できるような仕組みというのを考えていくと、ここでの取り組みが二重にも三重にも意味を持ってくるのかなというふうに思います。
 すいません。時間過ぎてるのに多く申し上げまして申し訳ありませんが、以上4点です。

【島村補佐(事務局)】 木村委員、ありがとうございます。どれもわれわれの問題意識と似てる部分があろうかと思ってます。
 その上で、少しコメントを差し上げますと、まず物理AIにつきましては、地球低軌道とリンクさせていくというところは、おっしゃるとおりだと思ってます。ここは、中身引き続き具体化する時に考えたいというふうに思っておりますし、また教育と絡めること大事ではないかというふうなご指摘いただきましたが、これは宇宙産業裾野拡大、非常に需要でございますので、企業だけではなくて、大学等とも人材育成も含めて裾野拡大していくことは重要だろうというふうに考えております。
 また、ハビテーションの話ございましたけれども、今回の資料では12ページ目に大きく分野共通技術として環境制御、生命維持に必要なシステムの開発というのを書かせていただいておりますが、こういったところの実際に技術開発をしてもらう際に、いかに人を巻き込むかというところが大事かなというふうに思っております。
 また、最後頂きましたところは、最後のご指摘のところは、文科省だけではなく政府全体で考えるべき話かなというふうに思っておりますので、アンカーテナンシーでしたり、ビッグピクチャを作ってどこを実証させるかといったところについては、引き続き内閣府含めて関係省庁と検討していきたいというふうに思っております。ありがとうございます。

【木村委員】 ありがとうございます。

【山崎部会長】 ありがとうございます。
 ほかにご意見、ご質問、ありますでしょうか。
 では、吉井委員、お願いいたします。こちらで質問を最後にしたいと思います。お願いいたします。

【吉井委員】 吉井でございます。これまで日本の宇宙技術は信頼性が高い一方で、なかなか海外のマーケットで販売は苦戦してきているというのが現状かなというふうに思います。
 そうした観点では、今後、海外の販路拡大の取り組みというところも、技術戦略と同じようにしっかり検討を進めることで、いいものをしっかり海外に売っていくという仕組みをご検討いただけたらなというふうに思います。
 以上でございます。

【島村補佐(事務局)】 ご指摘ありがとうございます。今回の議題、研究開発課題という形ではございましたけれども、委員おっしゃるように、技術開発するだけではなくて、それを実際に使ってもらうというところが必要であるというご指摘かなというふうに思っております。そういったところ、今回の議論では触れてはいませんが、引き続きわれわれの中でも検討していきたいというふうに思っております。ありがとうございます。

【山崎部会長】 また、笠原委員のほうから、チャットのほうでご意見を賜っています。共通分野の研究開発ですが、やはり時間がかかるものも多数あるかと思います。本当に新しい内容は10年オーダーは必要です。小さくとも幅広い分野に種をまく支援もしていただければありがたいですということで賜っています。

【島村補佐(事務局)】 承知しました。

【山崎部会長】 ありがとうございます。
 では、本日出ましたさまざまなご意見などを含め、文科省さんにおかれては、さらに議論を深めて課題の具体化を進めていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 では、本日の議題はこれで全て終了となります。不手際でかなり時間が超過してしまって申し訳ありませんでした。
 では、最後に事務局から連絡事項があればお願いいたします。

【上田企画官(事務局)】 事務局でございます。本日も長時間にわたりましてありがとうございました。また、事務局側も時間の配分等不十分なところがあったところを長時間ご議論いただきまして、本当にありがとうございます。
 本日の会議資料につきましては、文部科学省のホームページに既に掲載してございます。また、議事録につきましては、これまでどおりでございますが、委員の皆さまにご確認いただいた後に、文部科学省のホームページに後日掲載させていただきます。
 次回の宇宙開発利用部会の日程につきましては、取り扱う議題と併せて事務局で検討中でございますので、委員の皆さまには別途ご連絡させていただきます。
 事務連絡につきましては、以上でございます。

【山崎部会長】 ありがとうございました。以上をもちまして、閉会といたします。本日も長時間にわたり誠にありがとうございました。

(了)

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研究開発局宇宙開発利用課