宇宙開発利用部会(第47回) 議事録

1.日時

平成31年4月18日(木曜日) 15時30分~17時00分

2.場所

文部科学省 15階 科学技術・学術政策局 会議室1

3.議題

  1. 部会長の選任及び部会長代理の指名について
  2. 宇宙開発利用部会運営規則について
  3. 宇宙開発利用部会の活動内容について
  4. 衛星を活用したインフラ点検作業の効率化について
  5. 新たな宇宙関連事業を出口とした協業型研究開発プログラムについて
  6. その他

4.出席者

委員

部会長           白石 隆
部会長代理        青木 節子
臨時委員          井川 陽次郎
臨時委員          大西 卓哉
臨時委員          芝井 広
臨時委員          白井 恭一
臨時委員          鈴木 健吾
臨時委員          高薮 縁
臨時委員          鶴岡 路人
臨時委員          林田 佐智子
専門委員          藤井 良一
臨時委員          吉田 和哉
臨時委員          米本 浩一

文部科学省

研究開発局長                     佐伯 浩治
大臣官房審議官                    岡村 直子
研究開発局開発企画課長              林 孝浩
研究開発局宇宙開発利用課長           藤吉 尚之
研究開発局宇宙開発利用課企画官        原田 大地
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐      佐々木 裕未
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐      岡屋 俊一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 第一宇宙技術部門
  理事補佐            舘 和夫
 新事業促進部長         岩本 裕之

5.議事録

今回の議事は,部会長の選任,部会長代理の指名等があったため,開会から議題(2)までは非公開で実施した。

(傍聴者・JAXA入室)

(3)宇宙開発利用部会の活動内容について

【白石部会長】 それでは、三つ目の議題に入りたいと思います。議題は、宇宙開発利用部会の活動内容についてです。これについて、事務局から説明をお願いします。

【事務局(原田企画官)】 資料の47-3-1及び47-3-2と47-3-3でございます。こちらをご参照いただければと思います。
まず、1枚目の資料47-3-1は、宇宙開発利用部会(第10期)の調査審議について(案)でございます。
第10期の宇宙開発利用部会の調査審議事項は以下のとおり、五つの事項につきまして、宇宙開発利用に関する重要事項としてご審議いただきたいと考えております。
一つ目は、文部科学省における宇宙開発利用に関する推進方策の議論ということで、文部科学省が宇宙開発利用に取り組むに当たっての基本的な方針などにつきましてご議論いただきたいと思っています。具体的には、文部科学省が進める宇宙政策であるとかJAXAのプロジェクトに関してご意見をいただくことを想定しております。
二つ目は、宇宙開発利用に関する研究開発課題の評価です。進め方につきましては後ほど別紙で述べさせていただきますが、(1)としまして、文部科学省自身が実施する重要な研究開発課題につきまして、事前、中間及び事後評価を行っていただくこととなります。また、(2)としまして、宇宙航空研究開発機構(JAXA)がみずから行う研究開発プロジェクトについて、事前、中間及び事後の評価の妥当性について調査審議をいただくことを挙げております。
三つ目は、国際宇宙ステーション・国際宇宙探査の推進方策の議論としまして、次の事項につきまして小委員会を設置いただき、ご議論いただく予定としております。(1)が、国際宇宙ステーションの着実な運用及び成果の最大化に向けた取組方策。(2)が、国際宇宙探査の方策や参加のあり方ということで、後ほど小委員会の設置についてもご説明をさせていただきます。
四つ目は、JAXAによる安全対策等の評価としまして、JAXAが実施する次の項目の安全対策、安全審査の妥当性について、調査・安全小委員会を設置して、これも後ほど説明させていただきますが、この小委員会で評価いただくことを予定しております。(1)が、宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)等物資補給機の運用に係る安全対策、また、国際宇宙ステーションに提供する物資及び実験装置等に関する安全審査を想定しております。
五つ目は、重大な事故等の調査としまして、文部科学省の進める宇宙開発利用におきまして重大な事故等が発生した場合、必要に応じて調査・安全小委員会で、事故等の原因、あるいは技術的な課題、その対応策について調査審議いただくことを予定しております。
続きまして別紙の評価の進め方でございます。右肩に「宇宙開発利用部会(第10期)の調査審議について 別紙」と記載してある紙です。
評価の進め方につきましては、第9期の利用部会と同様でございます。
まず、1ポツ目としまして、文部科学省自身が実施する重要な研究開発課題の評価としまして、基本的な考え方として、政府全体の評価指針を踏まえまして、文部科学省において定めています評価指針に基づき評価を行わせていただきます。評価の対象は、原則として、総額が10億円以上を要する研究開発課題、また、宇宙開発利用部会で評価することが妥当とご判断いただきました研究開発課題を評価対象とさせていただければと思います。
2ポツ目は、宇宙航空研究開発機構が実施する研究開発プロジェクトの評価として、(1)の基本的な考え方は、JAXAみずからが実施した研究開発プロジェクトの評価結果について、その目的、目標、開発方針、開発計画、成果などについて本部会で調査審議をいただければと思っています。評価の対象は、JAXAが実施する宇宙に関する研究開発のプロジェクトで、文部科学省が予算措置をさせていただいているもののうち、文部科学省が重要と判断させていただくものを想定しております。例えば、宇宙基本計画においては次の三つの視点が掲げられています。宇宙安全保障の確保、民生分野における宇宙利用の促進、また、宇宙産業及び科学技術基盤の維持・強化に関しまして、その研究開発に資するものといった観点で重要と判断されるものを評価対象とさせていただければと思っています。また、予想される開発費が、ロケット打ち上げ費用も含めておおむね200億円を超えるプロジェクトも評価対象と考えています。
次は裏面の(3)で、評価の実施時期でございますが、「研究開発」のフェーズを図示しています。通常、宇宙のプロジェクトは、基礎的な研究からプロジェクトの目的、目標、開発方針を固めるまでの研究段階、あるいは、基本設計要求を定めるまでの開発研究、また、基本設計から打ち上げまでの開発といった形で、幾つかのフェーズによって構成をされています。宇宙開発利用部会、において実施していただく評価は、「実施フェーズ」に移行するに当たって行う「事前評価」は、「開発研究」と「開発」の間に三角で図示したように、「開発研究」から「開発」段階へのプロジェクト化ということで評価をいただければと思っています。また、運用後になりますが、プロジェクトが終了する際には「事後評価」を行っていただくことを基本としたいと考えています。
なお書きになりますが、「企画立案フェーズ」である「研究」段階または「開発研究」段階などの事前段階におきましても、本部会において重要と判断されるものにつきましては、必要に応じて事前評価を行っていただくことを想定しています。また、後段の「実施フェーズ」の期間中も、プロジェクトを取り巻く環境が大きく変化変容した場合に中間評価を行う場合があることを想定しています。
注意事項として1ポツから4ポツまで記載していますので、ご参照いただければと思います。
3ポツは特記事項ですが、必要に応じて、進め方につきましても見直しを行わせていただければと思っています。
資料47-3-1につきましては以上です。
次に、資料47-3-2をご覧ください。
冒頭申し上げました、調査審議事項の4ポツにかかわることになります。「調査・安全小委員会の設置について(案)」の資料をご覧ください。こちらも第9期の宇宙開発利用部会に引き続きの設置とさせていただければと考えています。
文部科学省が行う宇宙開発利用について、ロケットによる人工衛星の打上げや国際宇宙ステーションISSを利用する活動等、様々なものが含まれております。これらは、人の生命・財産にかかわる重大な事故に至ることが全くないわけではないので、そういったことに至らないように十分に安全を確保して推進をしていく必要がございます。また、大規模なプロジェクトであるロケットや人工衛星に不具合等が発生した場合には、トラブルについて地上から実際の物を確認することができないことが多く、原因究明や対策につきましては高い専門性を求められます。ロケット、人工衛星等の重大な事故・不具合等が発生した場合の原因や技術課題、また、ISSにかかわる安全対策の評価等についてご検討いただく場としまして、本部会の運営規則第2条第1項に基づきまして、本部会のもとに調査・安全小委員会を設けることが設置の趣旨になっております。
2ポツの小委員会での調査検討事項としましては、(1)として重大な事故・不具合等の原因、技術課題及びその対応策の調査となっていまして、必要に応じて次の事項について部会からの個別付託なしに調査検討を行っていただくことを想定しています。
(a)は、我が国の基幹ロケットH-ⅡAやH-ⅡB、また、イプシロン等の打上げにかかわる重大な事故があった場合、また、(b)は、文部科学省及びJAXAの衛星、探査機等の運用において、所期の目的・目標達成を見込むことが困難となる重大な不具合が生じた場合、また、(c)は、ISSの運用における重大な事故が生じた場合で、調査検討事項の(1)として記載しています。
(2)の安全対策の評価として、次の事項も本部会からの付託なしに調査検討を行うこととしたいと考えています。
裏の2ページ目に、具体的にはJAXAが行うISSに提供する物資にかかわる安全審査、また、HTV等物資補給機の運用に係る安全対策の評価を想定しています。
それらのほか、本部会が小委員会において調査審議することが適当であると認め、個別に付託される事項も、本小委員会における調査検討事項とさせていただきたいと思います。
3ポツの調査の進め方ですが、重大な事故・不具合等の原因、技術課題及びその対策等の調査として、進め方を詳細に記載しています。例えば、必要に応じてロケットの打上げ前にその概要の事前説明をJAXA等から受けること、重大な事故・不具合等が仮に発生した場合にはJAXA等が実施する原因調査の報告を受けること、原因調査の報告に基づき今後のロケットまたは人工衛星等の開発に反映すべき技術的な課題を小委員会において検討いただくこと、といった内容を進め方として考えています。
なお、小さい字で恐縮ですが、既に内閣府のもとに宇宙活動法といった法律が、施行されていますので、内閣府においてロケットの打上げ安全管理が審議されているところです。内閣府との十分な連携、情報共有も図りながら、重大な事故・不具合等が発生した場合の調査検討を進めさせていただくことを想定しています。
(2)の安全対策の評価につきましては、既に過去に定められている指針がありますので、例えば、国際宇宙ステーションISSの日本実験棟「きぼう」に係る安全対策の評価のための基本指針であるとか、また、HTVに係る安全対策の基本指針を踏まえながら調査をしていただくことを考えています。
設置期間につきましては、本部会と同様に、本小委員会の設置が決定された日から平成33年の2月14日までです。表記が平成になっていますが、2021年2月14日を想定しています。
次に、資料47-3-3をご覧ください。
二つ目の小委員会でございます。「国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会の設置について(案)」をご覧ください。
こちらにつきましても、第9期の宇宙開発利用部会において小委員会を設置していました。
引き続きまして、1ポツの設置の趣旨となります。我が国をはじめとして国際宇宙ステーションの参加国は2024年まで宇宙ステーションの継続に同意をしており、その着実な運用を図るとともに、成果の最大化に向けた取り組みが求められています。また、皆様ご承知のとおり、近年、色々な国におきまして、月や火星探査などの宇宙探査が計画されておりますし、さらには米国が月近傍における有人拠点Gatewayといわれる月探査の基地を構築する計画も示されています。こういった状況も踏まえて、ISSの着実な運用、成果の最大化、長期的な視点に立った将来の低軌道の利用のあり方や我が国としての国際宇宙探査の推進方策などにつきまして、文部科学省としての考え方を明確にするべく、同じく、部会の規則に基づきまして、本部会のもとに国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会を設置することが趣旨となっています。
2ポツの調査検討事項は、(1)として、ISSの着実な運用及び成果の最大化に向けた方策、また、(2)として、将来の低軌道の利用のあり方、また、我が国としての国際宇宙探査の具体的な推進方策などにつきまして、調査検討いただく予定にしています。
本小委員会につきましても、設置期間は平成33年2月14日迄の約2年間とさせていただいています。
説明は以上です。

【白石部会長】 それでは、今の事務局の説明につきまして、何かご質問、あるいはご意見等ありますでしょうか。特にありませんか。

(「なし」の声あり)

【白石部会長】 それでは、資料47-3-1、3-2、3-3については、本宇宙開発利用部会として決定ということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【白石部会長】 どうもありがとうございます。それでは、決定としたいと思います。
宇宙開発利用部会運営規則第2条第4項に、小委員会に属する委員等は部会長が指名するとあり、第2条第5項には小委員会に主査を置き、部会長が指名する者がこれに当たるとありますので、この二つの小委員会に属するメンバーと主査につきましては、今日の会議の終了後、速やかに私のほうで指名させていただきます。
引き続きまして宇宙開発利用部会の活動に関して、最近の宇宙に関する動向について、宇宙開発利用課の藤吉課長から、ご説明をお願いします。

【事務局(藤吉課長)】 それでは、藤吉から説明いたします。資料の番号47-3-4をご覧ください。
先ほどご承認いただきました、本部会の調査審議の内容に関連しますが、事例として紹介させていただきます。
最近の宇宙に関する動向でございますが、まず、イプシロンロケットの4号機の打ち上げがございました。これは今年の1月に鹿児島内之浦から打上げられたもので、これにより革新的な衛星技術実証1号機ということで、JAXA衛星としては初めてベンチャー企業のアクセルスペースに製造をお願いしたものですが、その打上げに成功しています。ここでは、大学、企業などが開発した機器や部品、超小型衛星が打上げられまして、そういった方々に宇宙実証の機会を提供することができました。本件につきましては、平成27年4月の本部会におきましてプロジェクト移行審査を行っていただきました。
次に、中央部の「はやぶさ2」ですが、これにつきましては、本年2月22日に小惑星リュウグウへのタッチダウンに成功しました。また、今月の5日には、リュウグウの表面に人工クレーターをつくるために、衝突装置の実験にも成功しました。今後、クレーターの形成の状況を調査した上で、うまくいけば5月以降に内部のサンプルを採取する予定です。
また、その左下ですが、これは本部会とはちょっと異なりますが、宇宙に関するトピックスということで紹介します。これは4月10日に、世界で初めてブラックホールの撮影に成功したということで、日本を含め、米、欧州などの国際共同研究グループが、国際共同で運用するアルマ望遠鏡を含めまして、世界6カ所八つの電波望遠鏡を連動させ観測を行い、史上初めてブラックホールの存在を直接的に捉えたというものです。これは国際プロジェクトで、200名ぐらいの研究者のうち日本からも22名の研究者が参画しています。
続いて右下は「つばめ」(SLATS)の軌道保持運用開始ということで、今月から超低高度衛星技術試験機「つばめ」が軌道高度をかなり下げて、途中搭載エンジンを作動させて軌道高度を保持するという運用に入っています。ここで搭載エンジンとしては、イオンエンジンを用いて一定期間軌道高度を保持しながら段階的に高度を低下させていきます。右のグラフは見づらいですが、階段状に徐々に高度を下げていくという状況の図です。最終的には軌道高度約180キロ程度まで下げる予定です。この「つばめ」につきましても、平成27年に本部会でプロジェクトの移行審査をやっていただきました。
説明は以上です。

【白石部会長】 今の説明について、何か質問、ご意見等ございますか。どうぞ。

【芝井委員】 少しだけ補足させていただきますと、左下の世界で初めてのブラックホール撮影は、藤吉課長がご説明になったように、国立天文台が中心になって行った研究ですが、実はJAXA宇宙科学研究所が中心になってやってきたX線衛星による観測研究のSMO がかなり関係しており、このすぐ外側にドーナツ状に高温のプラズマが回っているのですね。そのドーナツ状の高温のプラズマが回っているというのはX線衛星でわかってきているということを一つ申し上げさせていただきます。その上にこういう成果があるということと、それから、この国立天文台のチームの中心メンバーは、1995年に打ち上がったと思いますが、「はるか」という衛星でスペースVLBIというのを世界で初めて電波で成功させたチームの系統の人たちが、このアルマ望遠鏡でやはりブラックホールの直接撮像にを行っているということで、日本はやはりブラックホールの研究においてはかなり世界的に大きい貢献をこれまでもやってきたし、今回もやったと私どもは考えております。
以上です。

【白石部会長】 どうもありがとうございました。ほかに何かございますか。

(「なし」の声あり)

【白石部会長】 なければ、次の議題に入る前に、第10期の部会の発足に当たりました、佐伯研究開発局長から一言ご挨拶をお願いします。

【佐伯研究開発局長】 文部科学省研究開発局長の佐伯でございます。第10期の開始早々、遅参してしまいまして申しわけございません。ちょっと別件の、もう一つやっています南極の仕事が少しありまして遅参してしまいました。何とか間に合いましたので、一言ご挨拶をさせていただきます。
委員の皆様方におかれましては、日ごろから宇宙開発利用、あるいは宇宙科学のさまざまな観点からご協力を賜りましてありがとうございます。そして、今回、お忙しい中にもかかわらずこの宇宙開発利用部会の委員をお引き受けいただきまして、心から厚く御礼を申し上げますとともに、本日につきましても、年度当初のお忙しい中ご参加いただきまして、心より感謝を申し上げます。
今、この部会で扱うものについて、その下の小委員会の構成も含めて、活動のイメージにつながるような最近の出来事などもご紹介申し上げましたが、文部科学省は我が国の宇宙の科学、あるいは開発利用の黎明期から、宇宙科学の振興あるいは宇宙開発利用の推進に尽力してまいりました。先ほど課長がご説明申し上げたとおり、引き続きJAXAの主務省としてさまざまなプロジェクトをいっそう進めてまいりますので、宇宙科学もございますし、本部会においてご審議を賜りたいと思っておりますので、ぜひともよろしくお願いいたします。
特に、宇宙につきましては、非常に利用範囲、宇宙の貢献する分野は広がってきておりまして、安全保障、産業振興、あるいは地球規模の環境問題の対応等、さまざまな分野で宇宙が使われてきております。また、昨今では、「はやぶさ2」の活躍にありますように、その成果といいますか、その挑戦自体が非常に社会的に関心を集めるものでございますので、国民の関心も集めますし、また、青少年も含めて夢につながる、あるいは、誇りにつながるといったような側面も持って、社会的な効果も期待されるものでございます。さらに、実生活の面でも、既に、「ひまわり」のような地球観測衛星、あるいは、日本の「みちびき」といった測位衛星も運用を始めてございますが、測位情報、我々のスマホの地図アプリも含めまして、もう我々の生活になくてはならないというところまで宇宙は進展しております。さらに、昨今では、AIの進展やビッグデータを扱う技術の進展に伴いまして、宇宙データの利用が、従来型を越えたさまざまな新しい使い方が広がってきておりまして、その意味で、今、まさに宇宙の活動が広がってきているといったことが言えるかと思っております。
また、技術的にも今までの大型の衛星に加えまして、小型衛星や超小型衛星、キューブサットといわれる10センチ角の衛星においてもかなり使える、実際に役に立つようなデータをとって来るということが可能になってきておりますので、その意味で、宇宙での観測のあり方自体が大きく変わりつつあるといった時点に来ているかと思います。
そういう中で、私ども、色々な形で新しいものに取り組んでいきたいと思っておりますので、先生方のさまざまなご示唆をいただきながら、ご審議をいただきながら、この宇宙開発事業を進めてまいりたいと思っております。
特に、今年はアポロ11号の月面着陸から50年となりますが、このアポロが切り開いたイノベーションはさまざまな形で米国の競争力につながり、また、私たちの生活の利便性を向上させる技術にもつながってきていると思います。現在、米国は、Gatewayという、月の回りを周回する基地を国際協力でつくり上げようという提案をしてきており、さらに、月面の観測についてはかなり国際競争的な側面も出てきております。その意味で、我が国としても、米国の情勢などを踏まえながら、国際協力としての宇宙探査、あるいは、日本が独自に進めていく月の探査についても、財政上厳しい折ではございますが、何とか工夫して積極的に進めていこうと思っておりまして、その考え方についても早急に取りまとめる必要がございます。この点につきましては、本日設置されます国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会で集中的にご議論いただきたいと思っております。
この第10期の部会の開催中には次の基幹ロケットH3の開発、そして打上げといったようなところにもございますし、それに伴って、より性能を向上させた地球観測衛星、先進光学衛星、先進レーダー衛星の打上げなども予定されてございます。これら重要なミッションを成功に導くためにも、先生方のご意見、ご示唆、ご指導を賜りながら進めてまいりたいと思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございます。

(4)衛星を活用したインフラ点検作業の効率化について

【白石部会長】 それでは、四つ目の議題に入ります。衛星を活用したインフラ点検作業の効率化についてです。老朽化が進むインフラの調査点検事業の効率化を図るために、従来の測量技術等よりすぐれたSAR衛星によるインフラ変位監視技術を、内閣府、戦略的イノベーション創造プログラム事業のもとでJAXAが開発しましたので、その紹介をお願いします。

【JAXA(舘理事補佐)】 JAXA理事補佐の舘です。よろしくお願いします。
資料47-2に基づき説明を行った。

【白石部会長】 どうもありがとうございます。これについて何かご質問、ご意見等ありますでしょうか。どうぞ。

【鈴木委員】 私から3点質問させていただきたいと思います。
まず1点目は、国土交通省さんの認証を受けるために、認証されるためのポイントあるいは、懸念ということがあるのかどうか教えていただきたいのと、2点目は、技術に関して測量技術の比較という表を出していただいていますが、海外にもSARの技術があると思いますが、それらと比較してどうなのか。そして、3点目は、ツールを有償でとおっしゃっていますが、有償とするときの値段のつけ方のイメージと、有償として得られた収益の使い道について教えていただきたいと思います。

【白石部会長】 いかがでしょうか。

【JAXA(冨井技術領域主幹)】 ご質問ありがとうございます。まず、1点目の国土交通省の新技術情報提供システムNETISの認証のポイントということでございますが、まさに名前のとおり、新技術ということで、その新技術についてどういった性能仕様のものかを国土交通省の技術調査事務所に提供して、大体6カ月から8カ月ぐらいの間に審査を受けて、それで登録されるというものです。

【JAXA(舘理事補佐)】 2点目の、海外のSARについてですが、ご質問の海外とは、海外でも同じようなことをやっているかということですね。

【鈴木委員】 そうです。

【JAXA(舘理事補佐)】 先ほども申しましたように、ドイツのDLRと共同で同じような手法を別のやり方で見ようということでやっておりまして、比較しているところで、そんなに差はないと理解しています。彼らはXバンドを使っているという点だけが違いだと思っています。
最後のロイヤリティーの話ですが、どういうふうにするかというのは未だ決まっていません。また、おそらく大きな収益にはならないと思っていますが、得られた収益を新しい技術の開発に使いたいと思っています。

【JAXA(冨井技術領域主幹)】 追加とさせていただきますと、値段のつけ方に関しましては、代理店を募集して、代理店事業者みずからが価格設定をする形になると思います。
今、舘からも説明があったように、売ることがJAXAの目的ではございません。国の公共事業などで利活用されることかと思います。SIPインフラの出口戦略会議の中で一番何が問題になったかというと、維持管理要領、あるいはそれに基づく点検マニュアルなどに位置づけられないと、国や地方公共団体などで利用されないということです。本技術に関しては、先ほど舘から説明があったように、国土交通省の技術基本計画に位置づけられたということで、5カ年の計画ですので、残り3カ年度にかけて位置づけられていく取組みを行い、点検技術に必要不可欠になることを狙っています。

【鈴木委員】 ありがとうございます。すばらしい技術だと思うので、世の中で最大限活用されるようにお願いしたいと思います。

【白石部会長】 ほかに何かございますか。どうぞ。

【芝井委員】 ALOS-2あるいはALOS-4のことですが、これは測定できるのは日本だけなのでしょうか。外国も測定できるのであれば、ソフトウエアがあれば同じことができるかどうかお聞きしたいと思います。更に、ここで介 されるソフトウエアはALOS-2あるいはALOS-4 だけではなくて、ほかのSARにも応用できるのでしょうか。

【JAXA(舘理事補佐)】 ALOS-2は全世界をぐるぐる回っていて、全世界どこでも使えていますので、全世界でこの技術は使うことができます。一方、我々が開発したこの技術はLバンドでもXバンドでも使える技術ですので、海外の衛星でも使うことができます。

【白石部会長】 ほかに何かございますか。どうぞ。

【藤井委員】 どうもありがとうございます。非常に有効な技術を紹介していただいたと思いますが、最初に、関連部会としては、宇宙開発利用部会と地球観測推進部会と二つあると思うのですが、今後、どのように二つの部会が情報交換を進められるということでしょうか。

【白石部会長】 これについては、むしろ事務局にお答えいただいたほうがいいのではないかと思いますが。

【宇宙開発利用課企画官(原田)】 地球観測推進部会は同じ研究開発局の環境エネルギー課で担当しておりますので、適宜、政策に関しても着実な連携を図ってまいりたいと考えております。

【藤井委員】 どうもありがとうございました。

【白石部会長】 よろしいでしょうか。ほかに何かございますか。

(「なし」の声あり)

(5)新たな宇宙関連事業を出口とした協業型研究開発プログラムについて

【白石部会長】 なければ、次の議題に移りたいと思います。
次の議題は、新たな宇宙関連事業を出口とした協業型研究開発プログラムについてです。この宇宙関連事業を出口とした協業型研究開発プログラムとして、現在、JAXAは、宇宙イノベーションパートナーシップ事業J-SPARCを進めています。この事業について、JAXAからご紹介をお願いします。

【JAXA(岩本新事業促進部長)】 ご紹介いただきありがとうございます。JAXA新事業促進部長の岩本です。本日はよろしくお願いいたします。
資料47-5に基づき説明を行った。

【白石部会長】 これについては、何かございますか。どうぞ。

【林田委員】 ご説明ありがとうございました。
資料の2枚目の現在の宇宙ベンチャーの政府支援策の全体像の中で、J-SPARCプログラムの位置づけをご説明いただきましたが、その枠の中には「衛星データのオープン&フリー化(経産省)」となっています。質問は、まず、文科省と経産省との関係が1点、それから、オープン&フリー化というのと、事業化というと、先ほど有償で売るという話題あったと思いますが、この事業化ということは、おそらくビジネスになるので、無償でみんなにあげるという話ではおそらくないだろうと思いましたが、このあたりの関係について説明していただけないでしょうか。

【JAXA(岩本新事業促進部長)】 まず、2ページの図になりますが、衛星データのオープン&フリー化は、現在Tellusという形で経産省さんが施策として立ち上げているところです。JAXAからは、このTellus事業に関しまして、クロスアポイントメントということで職員を一人派遣して衛星データの利用促進を図っているところです。
それから、下のベンチャー向け技術支援というのは、経産省さんとは別の施策として、現在実施しているベンチャー向け技術支援であり、J-SPARCとしてJAXAがプログラムを立ち上げているところです。
最終的なゴールが宇宙のビジネス化ということで、J-SPARCの段階では、企業さんは企業の実施する部分の予算を準備し、JAXAはJAXAとして技術を実現することをJAXAの資金を使って行うということで、実施しているところです。従って、企業さんとJAXAの間で資金の授受は発生していません。ただし、実際に事業に当たっては更なる資金が必要である場合もありますので、そういう場合は先ほどのDBJさん、INCJさん、それから、ベンチャーキャピタルさん、CVC等との連携も図りつつ、資金の獲得を図っているところです。
また、予算の観点で言いますと、今回のJ-SPARC施策自体は文部科学省さんのもとでR&Dという観点で予算をつけていただいております。ただし、内閣府さんのS-Matching、S-Booster、S-NETという施策があり、経産省さんのTellusといった施策がありますので、それらとは連携あるいは情報交換をさせていただきながら進めているのが現状です。

【林田委員】 ということは、同じ枠組みだけれども別々のお話ということですね。

【JAXA(岩本新事業促進部長)】 はい。

【林田委員】 それからもう一つ、文部科学省さんに聞いたほうがいいのかもしれませんが、基本的に宇宙の財産、データは、あまねく人類のものであるから世界中の人に無償で公開しますよというのが基本方針で来ていると思うのですが、昨今は、予算の状況が厳しいことから、少しでもお金になることはお金を取ってやれという風潮に見受けられます。この辺の二つの相異なる方針の中で、今後の見通しというものを文部科学省さんはどのように考えておられるのか伺いたいと思います。

【白石部会長】 いかがでしょう。

【事務局(藤吉課長)】 我々も実はかなり悩んでいまして、確かに公的なお金を使ってやって、社会的な目的や国際貢献の点であまりお金を取るというのはよくないことです。ただ一方で、おっしゃったように、予算が限られている中で予算獲得の一助ということもあります。
今回、衛星データについては、各国の状況もございますが、基本的に取得した衛星データをそのまま皆さんにお渡ししてもなかなか使い勝手が悪く使えない場合もございますので、使えるようにデータ加工する手間がございます。その場合のデータ加工の費用につきましてはいただくことにしています。

【林田委員】 過去の経験から言いますと、例えば、そのようなデータ加工するというプロセスが入ったにせよ、画像が1枚非常に高価なようです。ですから、研究しようとか、まさに地方自治体で使おうとしたら、画像2枚買ったらもう予算がなくなりました、というようなことも過去にはよくありましたし、現在でも結構そのようなことがあって今後事業化、事業化といってビジネスに結びつけられてしまうと、ほんとうに公共の利益のために使いたい人までも使えなくなるのではないかということを懸念しています。本件は、ケース・バイ・ケースだと思いますので、今後そのようにならないようによく考えて進めていただきたいと希望いたします。

【白石部会長】 よろしいですか。

【事務局(藤吉課長)】 どうもありがとうございます。

【白石部会長】 もう時間が大体来ておりますので、できればここで終わりにしたいと思いますが、いかがでしょうか。

【JAXA(岩本新事業促進部長)】 1点だけ修正させてください。

【白石部会長】 どうぞ。

【JAXA(岩本新事業促進部長)】 先ほど、企業さんとJAXAでクリーンインターフェースという言葉を使ってしまったのですが、ちょっと適切ではなくて、一緒に作業もしていまして、実際には資金の授受がないという言葉のほうが正確です。失礼いたしました。

(6) その他

【白石部会長】 それでは、事務局から連絡事項があればよろしくお願いします。

【事務局(原田企画官)】 会議資料と議事録の公開について申し上げたいと思います。
宇宙開発利用部会の運営規則に基づきまして、本日の会議資料は公開となりますので、後日、文部科学省のホームページに掲載をさせていただく予定となっております。また、議事録につきましても、非公開部分を除きまして公開となりますので、委員の先生の皆様にご確認いただいた後、当省のホームページに掲載させていただきますのでご了承いただければと思います。

【白石部会長】 それでは最後に岡村審議官、どうぞ。

【岡村大臣官房審議官】 大臣官房審議官の岡村でございます。先生方におかれましては、本日、非常に重要なご示唆をいただきまして、どうもありがとうございました。
ご案内のとおり、我が国の宇宙政策につきましては、宇宙基本法に基づき宇宙開発戦略本部が宇宙基本計画を作成し、内閣府宇宙政策委員会を中心に、政府一体となって進めております。この宇宙開発利用部会は、本日、冒頭に御説明させていただいたとおり、大前提として、内閣府宇宙政策委員会との連携は重要ですが、ご案内のとおり、宇宙開発利用部会そのものは、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会のもとに設置されております。すなわち、科学技術と学術の振興の中において、分野としての宇宙開発利用を積極的にご議論いただく重要な役割を担っております。
そのため、科学技術と学術という視点からも、先生方の忌憚のないご意見をいただきたいと思っておる次第でございます。
少し科学技術基本計画の最近の動きについてご報告をしたいと思います。
現在、2016年から2020年までの第5期科学技術基本計画の下で、私どもは科学技術政策を進めておりますが、現在、2021年から開始する第6期科学技術基本計画の議論が始まってきているところでございます。具体的には、昨日は研究計画・評価分科会、本日の午前中は科学技術・学術審議会総合政策特別委員会が開催されており、そこでは、本宇宙開発利用部会などの各部会において、個別分野に関して第6期科学技術基本計画に向けた検討を行い、その結果を10月中に総合政策特別委員会に提示することが求められております。
また、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議においても、つい先ほど会議が開催され、第6期科学技術基本計画に向けて調査審議が始まったと承知しております。
このように現在は非常に重要な時期となってきており、先生方には、今後も様々なご議論をいただきたいと考えておりますが、まずは10月末までの半年間で、宇宙分野がどのように科学技術政策全体の中で位置づけられ、他の分野と比較して、どのような特徴を持ち、また、科学技術水準の向上にどのように貢献できるかを、積極的に御議論いただき、まとめていただきたいと考えております。
そういう中で、長期的に文部科学省の進めるべき宇宙の研究開発の施策につきまして、ご示唆をいただければと思っております
本日の締めくくりにそのお願いをさせていただきまして、私のご挨拶とさせていただきます。本日はありがとうございました。引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【白石部会長】 どうもありがとうございました。
それでは、これで今日の会議は終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

以上
 

(説明者については敬称略)

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