宇宙開発利用部会(第36回) 議事録

1.日時

平成29年7月4日(火曜日) 15時00分~16時40分

2.場所

文部科学省 15階特別会議室

3.議題

  1. H-ⅡAロケット36号機の打上げに係る安全対策について
  2. イプシロンロケットのシナジー対応について
  3. 国際宇宙探査の在り方(中間とりまとめ)について
  4. その他

4.出席者

委員

部会長  白石 隆
部会長代理  青木 節子
臨時委員  井川 陽次郎
臨時委員  芝井 広
臨時委員  白井 恭一
臨時委員  高薮 縁
臨時委員  永原 裕子
臨時委員  林田 佐智子
臨時委員  松尾 亜紀子
臨時委員  安岡 善文
臨時委員  油井 亀美也
臨時委員  横山 広美
臨時委員  吉田 和哉
臨時委員  米本 浩一
調査・安全小委員会 主査 山川 宏
国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会 主査 藤崎 一郎

文部科学省

研究開発局長  		   田中 正朗
研究開発局審議官  		   大山 真未
研究開発局宇宙開発利用課長    堀内 義規
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長 庄崎 未果
研究開発局宇宙開発利用課企画官  山之内 裕哉

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 理事 布野 泰広
 第一宇宙技術部門イプシロンロケットプロジェクトチーム/プロジェクトマネージャ 井元 隆行

5.議事録

【白石部会長】 では,定刻になりましたので,宇宙開発利用部会第36回会合を開催したいと思います。まず,事務局から,きょうの会議に関する,事務的な確認をお願いいたします。

【事務局(山之内企画官)】 事務局でございます。本日は当部会に御所属いただいている17名の委員のうち,14名の先生方に御出席いただく予定でございます。二人の委員が少し遅れて到着すると連絡が入っておりますが,運営規則に定める定足数の要件を満足しております。
 次に,本日の資料でございますが,お手元の議事次第の4ポツ資料のとおりお配りしております。過不足がありましたら,適宜事務局にお申しつけください。
 事務連絡は以上でございます。

【白石部会長】 どうもありがとうございます。

(1)H-ⅡAロケット36号機の打上げに係る安全対策について

【白石部会長】  最初の議題は,H-ⅡAロケット36号機の打ち上げに係る安全対策についてでございます。
 調査・安全小委員会において,H-ⅡAロケット36号機に係る安全対策の調査・審査が行われましたので,これについて小委員会の山川主査から御報告をお願いたいと思います。
 どうぞ,よろしくお願いします。

【調査・安全小委員会(山川主査)】 より資料36-1-1及び1-2に基づき説明を行った。

【白石部会長】 どうもありがとうございます。
 それでは,ただいまの御報告について,何か意見,コメント等ございましたら,よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。特にございませんでしょうか。それでは,特に御意見等ないようでしたら,小委員会からの報告について決定するということでよろしいでしょうか。

  (「異議なし」の発言あり)

【白石部会長】 御異議がないようですので決定といたします。どうもありがとうございます。それでは,是非安全で確実な打ち上げの継続を期待したいと思います。

(2)イプシロンロケットのシナジー対応について

【白石部会長】 次は二つ目の議題でございます。議題はイプシロンロケットのシナジー対応についてでございます。イプシロンロケットにおけるH3ロケットとのシナジー対応開発については,今年度から実施中と思いますが,アビオ機器等含めたシナジー対応の検討結果について,JAXAから御説明をお願いしたいと思います。

【JAXA(布野理事)】 JAXAの布野でございます。
 今御紹介ありましたように,イプシロンロケットのH3ロケットシナジー対応開発に関しましては,昨年当部会におきまして固体ロケットブースター,それから軌道調整機器のPBSに関して,シナジーに係る検討状況を御報告したところでございます。本日はH3ロケットの開発の進捗を踏まえまして,検討しておりますその後のシナジーの対応開発につきまして,プロジェクトマネージャの井元の方からから説明をさせていただきます。

【JAXA(井元)】 より資料36-2に基づき説明を行った。

【白石部会長】 どうもありがとうございました。
 これについて,何か御質問,御意見等ございますか。いかがでしょうか。
 どうぞ。

【米本委員】 シナジー効果は,H3ロケットとイプシロンロケットの対象となる各部位の製造会社が同じだから発揮できるという理解でよろしいでしょうか。

【JAXA(井元)】 基本的にはそうです。ロケットにつきましては,液体と固体という違いがありまして,固有部分と共通部分があります。機能が共通する部分について,基本的にシナジー効果を発揮してという考えで,結果論として,会社が同じということにもなります。

【米本委員】 もう一つ質問よろしいでしょうか。
地上システムだけでなく,打ち上げ場所もH3とイプシロンロケットで共有することによるシナジー効果はあり得るのでしょうか。

【JAXA(井元)】 現在,イプシロンロケットにつきましては内之浦,H3ロケットでは種子島ということで,こちらはイプシロンロケットの射場選定のときに,やはり一つの射場にまとまっていると,リスクといいますか,一つの射場で何かがあったときのために,全部とまってしまうというリスクがあるという観点で,内之浦を選定した経緯がございます。
 今,このイプシロンにつきましては,内之浦で打ち上げるということをそのまま継続するということを考えているところです。

【白石部会長】 はい,どうぞ。

【白井委員】 米本先生の最初の御質問と似たような質問になりますが,一般にシナジーというと,二つの会社とか,二つの事業が一緒になって,コストあるいは時間が削減されるだけではなく,何らかのプラスアルファがあるというのが一般的な用法だと思います。ここで御説明いただいた内容は,基本はコスト削減,また時間の短縮だったように聞こえました。
 このコスト削減が大変重要なのはよくわかっておりますが,何かほかのシナジー効果というのはないのでしょうか。

【JAXA(井元)】 あります。今回,このイプシロンの開発に限って御説明したところでございますので,それ以外のところは,先ほど強化型イプシロンロケットからH3ロケットの固体モーターに関するイプシロンからH3への流れということで御説明しました。
 そのほかの例といたしまして,このイプシロンからH3への例といいますのは,例えば音響低減技術があります。こういったところはイプシロンで世界トップレベルの音響環境というものを実現いたしまして,その手法というのは,H3でも適用できると考えており,今正に実験ですとか解析,そういった我々が得た成果といったものを最大限に活用してやっていくということがあります。
 更に,運用性という観点で,火工品回路の点検などをイプシロンでかなり抜本的に変えたのですけれども,そういったものをH3にも適用するということで,点検の効率化といったものが図れる。技術の向上という観点でございますので,そういったところをやっています。

【白井委員】 ありがとうございました。よくわかりました。
 もう一つ御質問しようと思っていたことについてもお答えいただいたような気がします。最終ページのまとめで,イプシロンの2号機に関して,世界トップレベルの衛星搭載環境の維持というのが書かれておりまして,これは何を指すのかとお尋ねしようと思っていたのですが,それは今正におっしゃった音響のことという理解でよろしいでしょうか。

【JAXA(井元)】 二つございます。
 まず一つは,今説明いたしました音響になります。もう一つは,正弦波振動です。こちらにつきましては,制振機構というものをロケットと衛星の間に挟み込みまして,振動を抑えるという技術を適用しまして,それについて世界トップレベルを実現したというふうに考えています。
 あと,次の3号機に適用するのですけれども,低衝撃,衛星分離のときの衝撃,それを低減する技術といったものを3号機に適用いたします。こちらは3号機の話となりますけれども,音響,振動,衝撃,そういったものを世界トップレベルにするということを今考えております。

【白石部会長】 よろしいですか。
 はい,どうぞ。

【芝井委員】 二つ質問があります。
 まず,具体的な質問ですが,これ,前年度お進めになったということなんですけれども,2ページ目の四つある項目の一つ目で,固体ロケットブースタの試験に関して,片方は推力方向制御をしない,もう一方はするということですが,ここでやはり一番費用がかかるものとしては地上燃焼試験ではないかと思うのですけれども,これはどちらで実施されるのでしょうか。推力制御,TVCも含めた試験をされるのかどうかの質問です。

【JAXA(井元)】 まず,H3ロケットで地上燃焼試験を実施いたします。そのH3ロケットの機会を利用いたしまして,イプシロンロケットのノズルを振るためのそのノズルのところ,アクチュエーターのところ,そのアクチュエーターをコントロールする部分,そういったものをH3の燃焼試験の機会を利用いたしまして実施していく計画です。

【芝井委員】 同時にやるということですか。

【JAXA(井元)】 同時にやります。

【芝井委員】 わかりました。それは,大変よいことだと思います。
 それからもう一つ,やはり聞きたいのは,最後のまとめのところで,実機価格が30億円という目標が書かれているのですが,どこをどうしたら実現できるか,具体的な目標達成ができるかどうかという根拠の説明がないと思うのですけれども,そこはできる範囲で御説明いただければ有り難いと思います。

【JAXA(井元)】 まず,例えば3ページをごらんいただければと思いますが,1段モータにつきましては,SRB-AからSRB-3に変えるということで,まずそこで,既に実機コスト低減効果がございます。その下から順番にいきますと,PBSにつきましても,H3ロケットのガスジェット装置は安いもの,コストが低いものになっておりますので,そういったものを適用するということで,コスト低減を図ります。
 機体構造につきましては,製造の自動化ということで人手がかからない,こういったところでコストが削減されると。モータにつきましても,製造技術,材料と製造技術,こういったところをH3と共通化したり,自動化するということでコスト低減になります。
 あと,アビオニクスにつきましても,その部品,より安い部品を使うですとか,そういったものでコスト低減になります。こちらはシナジーという形で低コスト化になりますけれども,それ以外にも,先ほど口頭で御説明をしましたイプシロン独自の取り組みといたしまして,点検を更に自動化するといったところで人手がかからない,コストを削減するといったようなことを今考えているところでございまして,そういったところはシステムを定義する段階で,きちんと実現性を確認するということにしております。今はまだ概念設計の段階ですけれども,今の段階でも,この30億円以下というものは実現可能であるというふうに判断しております。

【白石部会長】 よろしいですか。ほかに。
 はい,どうぞ。

【横山委員】 御説明ありがとうございます。
 シナジー効果を強めると,その分リスクの共有というのも広い範囲で起こるのではないかと懸念するのですが,例えば1社の開発なり不具合がある製品が出てきた場合に迅速に対応するなど,シナジー効果を高めたが故のリスク対策というのが新たに必要なように聞こえたのですけれども,そのあたりはどのようにお考えでしょうか。

【JAXA(井元)】 おっしゃるとおり,それぞれバラバラでやっていれば,それぞれ対応できるということであるのですけれども,一つに集中するがためにリスクがある程度集中するという形になることはそのとおりだと思います。
 ただ,それらを解決するところのプロジェクトが,一緒になって開発できるというところがありますので,そういったところの力を結集することによって,より迅速に技術的な問題点を解決できるというメリットもあるのではないかと思います。この辺については,やってみないとわからないところではございますけれども,そこはどちらをとるかという問題だと思います。

【白石部会長】 よろしいですか。ほかに何かございますか。
 はい,どうぞ。

【永原委員】 全体的なコストダウンが図られるというのは大変結構なことで,是非進めていただきたいとは思うのですが,開発スケジュールを拝見しますと,実際に今国際競争力を強化できる,すなわち一気に30億円程度まで圧縮できる,その数字が実現されるのは2023年とか,それ以降ということになります。しかし,それまでに実際にイプシロンの打ち上げ計画というのは,それほど多いわけではなくて,国際競争力というものを発揮できるのは,まだ相当先になるのではないかと懸念するわけですけれども,その辺のお考えはいかがでしょうか。
 例えば,H-ⅡAであれば,既に非常に高い国際的な信頼性というのがあるわけですけれども,この新しく開発した機体,それまで数機だけしか打ち上げていないというような状況の中で,数年先に実際に国際競争力を獲得できると考えて良いその先見込みということです。その問題は,開発というよりは国全体の基本計画と関連するかとも思うのですが,もう少し具体的にお聞かせいただけるでしょうか。

【JAXA(井元)】 御指摘の点は,非常に大きな課題だと思います。
 我々としても,できるだけ早くこの30億円の機体といったものを実現したいと思っておりまして,それに向けて全力をそそいでいくつもりです。その前にまだ3号機,4号機というふうに打ち上げ計画がありますので,そういったところでもしっかり成功を積み重ねていくことが大切だと考えています。国際的にも信頼性を積み上げていき信頼できるロケットにしていくことと合わせ取り組んでまいりたいと考えています。
 そういったものを更にこのシナジー機体に還元して,より信頼性の高いものにして,一つ一つ着実に進めていく必要があるのではないかなと思っておりまして,そういった努力を重ねていくしかないなと思っています。

【白石部会長】 よろしいですか。ほかに何かございますか。
 はい,どうぞ。

【芝井委員】 今の永原委員の質問の続きです。少しわからなくなっているのが,国際競争力を本当にこの機体の価格で目指すことを考えておられるのかどうかというところです。このぐらいの打ち上げ能力のロケットを1機30億円以下で提供することについて,国際的な動向として,海外でも使うようになることを期待しているのかどうかということが,ちょっとわかりませんでした。むしろ,さっきおっしゃったような,衛星環境の音響レベルの低減とか,その辺のメリット,長所,アドバンテージを出して,日本国内でまず使用して,それで世界のほかの国でも使えるようにするということなのでしょうか。そこは少し読み取れませんでした。

【JAXA(井元)】 まず答えから言いますと,総合力でやっていくというのが答えとなります。ただ,この30億円以下でも国際競争力があるというふうに思っておりまして,特にこのイプシロンの打上げ能力に対応した部分につきましては,ニーズ調査ですとか,競合ロケットの調査,こういったものを実施しておりまして,そういった観点でこの30億円以下が達成できれば実現できると。
 具体的に言いますと,太陽同期軌道500kmの軌道に600kg級の打ち上げ能力があるんですけれども,そういったところのニーズといったものが,今後ますますふえていくであろうというふうに予想しておりまして,特にシングルローンチですね,アジアですとかアフリカ,中南米,そういったところの政府系の衛星といったところがどんどんふえていくのではなかろうかなと。そういったところは,そのシングル打ちという形での需要というものがふえていくと。
 なおかつ,小型,更に小さい衛星については,今,革新実証衛星プログラムの中で,複数衛星搭載システムの開発も進めているのですけれども,この価格を実現できれば,小さいロケットも複数衛星打ち上げに対しても国際競争力があると考えています。更にプラスアルファとして,衛星登載環境,あと運用性,こういったものを更に磨きをかけて,総合力で勝負していきたいと考えています。

【白石部会長】 よろしいですか。ほかに何かございますか。
 どうぞ。

【米本委員】 今の国際競争力に関連して質問があります。単に価格面だけで見てしまうと,ファルコン9ロケットとの比較が気になります。その1段目リユーザブルロケットは,実際に打ち上げられていて,そのことによってイーロン・マスクはコストを半減するとも言っています。本当に正確な価格はわかりませんが,1回の打ち上げで40数億円かかるところ,再利用という形で半分になることが正しければ,30億円は切ってしまいます。その辺の価格競争力をどう考えたらいいのか教えていただければと思います。

【JAXA(井元)】 おっしゃるとおり,今後そういったものがどんどん出てくる可能性は否定できないと思います。
 ただ,我々としても全てを凌駕して,独占していくという,そこまではまだ考えておりませんので,国際競争力をつけた上で,まず国の計画にしっかり対応していくのだということと,あと,産業技術,産業基盤といったものをしっかりサスティナブルにしていくという観点で,年間多数機というよりも,ある一定の打ち上げをきちんと確保していくと,そういったところを今考えておりますので,その観点では,この30億円以下というのが実現できれば,サスティナブルな世界になっていくのではと,我々としては今予想しているところでございます。

【白石部会長】 よろしいですか。
 それでは,大体コメントも質問も出尽くしたようでございますので,是非JAXAではこれからも着実に進めていただければと思います。
 どうもありがとうございました。

(3)国際宇宙探査の在り方(中間とりまとめ)について

【白石部会長】 次は,三つ目の議題でございます。国際宇宙探査の在り方(中間取りまとめ)についてでございます。国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会の藤崎主査からこの取りまとめについて,御報告をお願いしたいと思います。
 どうぞ,よろしくお願いいたします。

【ISS・国際宇宙探査小委員会(藤崎主査)】 より資料の36-3-1,36-3-2に基づき説明を行った。

【白石部会長】 はい,どうもありがとうございます。
 それでは,今お話しいただいたことにつきまして,質問,御意見等をお願いします。
 はい,どうぞ。

【林田委員】 ありがとうございます。
 前々からこの委員会でも申し上げたことがあるかと思うのですけれども,ISSは地球観測という意味でも非常に重要なプラットフォームでありまして,過去に曝露部を使いました地球観測ということに関しては,日本はたくさんの実績がございます。この報告書の中に,一つもそれが触れられていなくて,地球観測という視点が入っていないことを大変残念に思います。
 もう一つは,やはりこのプラットフォームとしての使いようとしては,そのセンサーがスペースで動くかどうか,新しい技術の技術実証をやる場所としての使い方もございますので,そういう意味での地球,宇宙にかかわらず,様々な探査ミッションに対して貢献することがあると思います。
 三つ目は,アメリカの動向なのですけれども,トランプ政権になりましてから,気候は非常に逆風で,ご存じと思いますけれども,地球温暖化問題に関して,トランプ大統領が非常に否定的な態度をとっている。国際協力に参加しないと。そういう状況の中で,NASAの気候ミッションは非常に厳しい逆風にさらされているところです。
 ですので,今ここでアメリカが言うから,アメリカの言うように一緒にやろうではなくて,アメリカがやらないからこそ,地球環境観測とか,地球のモニタリングといいますか,そういったところで,日本もイニシアチブをとって発言していくチャンスだと思いますし,ESAはそれについてくると思います。現実に研究者のレベルでも,ヨーロッパの研究者と日本の研究者の間で,地球環境の観測ミッションを総合的にこのISSにおいて展開していこうというような,そういった提案も実は出ているので,そういうところをもう少し,この報告書の中でも取り上げていただきたいと思います。
 ただ,そういうことを全然情報を御提供しなかったことは重々反省しておりまして,今後できましたら,この小委員会の方に地球観測のコミュニティの側から,少しインプットさせていただけたらと思います。地球観測の将来像に対しては,例えば学術会議でしたら高薮先生とか中心になって報告書をまとめておられますし,学協会からも報告書が出ておりまして,その中でもISSというのはプラットフォームの一つとして述べられておりますので,そのあたりの情報を今後は提供させていただきたいと思います。
 よろしくお願いします。

【白石部会長】 はい,ほかにいかがでしょうか。
 はい,どうぞ。

【油井委員】 議論の足がかりになるようなすばらしい中間取りまとめをしていただきまして本当にありがとうございます。こういう話があると,宇宙飛行士としても当然やる気が出ますし,私も,じゃ何年ぐらいにはどういう能力を持った飛行士が必要なのだなというのが少しずつ頭に描けてくるので,非常に助かっています。
 ただ,私,実は一つ心配事がありまして,先ほども出ていましたけれども,実はアメリカの動向というのが非常に気になっています。というのは,先月ですけれども,アメリカは新しい宇宙飛行士の候補者を選びました。そのときに,副大統領がヒューストンに来て演説をしたのですけれども,非常にすばらしい演説なんだとは思うのですけれども,私たちは聞いていて寂しかったのは,アメリカはこれから探査をやっていくのだというふうな,非常に勇ましい,すばらしい演説である一方,国際協力ということが余り出てきていなかったのですよね。国内向けのイベントなのでそうなのかもしれないのですけれども,ちょっとそこが心配です。
 一方で,同じ時期にちょうど中国でGLEXというのですか,世界宇宙探査会議という,その会議がちょうど開かれていて,そのときは,私は今まで中国の協力というのは,やっぱり軍事的なところが懸念だったので,余り乗ってこないのかなと思っていたところ,要はそれも中国がやっぱり感じていたのでしょうかね。今度はやっぱり国連を出してきたりとか,あと宇宙飛行士をまた選ぶと言ったのですけれども,そのときに,宇宙飛行士,これからは軍の関係者だけではなくて,民間からも選びますみたいなことを言っていたのですよね。
 ですので,やっぱりそういうところで,アメリカが一国主義になっているときに,そこを,本当に宇宙だけじゃないのですけれども,その枠組みの空白な部分を取り入れようとして,中国が動いているなというのはちょっと感じていて,そこが若干心配です。
 私,これからそのISEF2に向けて,やっぱり私自身アメリカが中心で,アメリカと日本が中心になって,探査の枠組みができて進んでいくといいなというふうに思っているのですけれども,ちょうど中国がそういう枠組みを出したときに,そことは別で,ほかの国がやっぱり中国中心じゃなくて,日米が提案したものがいいなとか思えるような,何かこういう方向で行けばいいじゃないかというアイデアがあれば,ちょっと教えていただきたいと思いますし,もしこれから,私も情報を集めて,そういうアイデアが浮いてきたら,またお話ししたいなとは思うのですけれども,現時点で,こうすれば中国とはまた別のアプローチでみんなが乗ってきやすくなるのじゃないかというアイデアがあるのであれば,ちょっと教えていただきたいなと思います。

【白石部会長】 いかがでしょうか。

【ISS・国際宇宙探査小委員会(藤崎主査)】 今,現時点で中国と別なアプローチでこれだというふうに議論していたわけではないので,ここで思いつきを申し上げるわけにはいかないのですが,私も全く同じ認識で,今,アメリカが少し,本来あるべき姿から国際協調,国際協力というところから少し離れていっていると思います。
 二つやらなければいけないことは,引き戻して,やはり大きくは,アメリカを一つの核として,日本も協力し,ESAも協力してやっていくという体制をもう一回目指すということと,もう一つは先ほど林田委員も言われたように,穴埋めがもしする場所があるのであれば,そこをやはり我々として,その間しっかり穴埋めをしながら,しかしもう一回協調体制をつくっていくということは,私も全く今油井委員が言われたとおりで,中国の主導権のもとにこういうものが進んでいくような形になることが日本にとって望ましいはずもなく,もう一回きちんとした体制ができないかどうか。
 それを正に議論するためには,このISEFというのは大変日本にとっていい時期なので,文科省も今アメリカ政府と連絡をとって,5月にもアメリカと協議したようでございますけれども,できるだけ今申し上げたような形に持っていかなければいけないので,いろいろなこの利用部会の委員の方々からもインプットを頂いていきたいというふうに思っておりますので,よろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございます。

【油井委員】 どうもありがとうございます。
 これができれば,本当に日本の地位がまたぐっと上がると思いますので,よろしくお願いします。

【白石部会長】 ほかに何かございますでしょうか。
 永原委員,どうぞ。

【永原委員】 基本的な考え方として,国際協調を目指す,その中でまずは国が優位性を発揮できるという,波及効果が大きく,今後延ばしていくべき技術の実証を進めるという,スタンスは,大変結構なことと思います。
 ただし,優位性を発揮できる技術と,今後延ばしていくべき技術は本質的に全く相反する性質なもので,今ここで一くくりにその補給技術や滞在技術という,比較的優位性が強いものと,重力天体着陸技術や探査技術という,著しく劣っていて,とても国際競争で戦えるようなものではないものとが,一くくりの括弧の中に示されていますが,ここはもう少し明確に区別することと,それぞれに対してやるべきことを明確化する必要があるのではないでしょうか。
 特に,今後伸ばしていくべき技術の方に関しては,宇宙研の計画と非常に密接に関係しますし,その技術も是非シェアして,全体としての技術力を上げていただく必要があると思います。着陸技術や探査技術などは宇宙工学と直接的にかかわってきますので,先ほどのシナジー効果ではありませんけれども,国際協力と宇宙科学がどのようなシナジー効果を生むか,あるいは両方の計画をどういうふうに調和的に進めて,日本の宇宙科学,宇宙技術を高め,全体としてより効果的に進めていけるかをもう少し明確に論じていただけたらと思います。

【ISS・国際宇宙探査小委員会(藤崎主査)】 おっしゃるとおりだと思いますので,そこら辺の明確化は必要だと思います。ここで恐らく私どもが言いたかったことは,例えば財政その他の観点から考えて,有人の輸送技術みたいなものが,日本がこれからあっても非常に強くなっていく分野ではないだろうと。今,必ずしも強くなくても,重力天体着陸技術のようなものはこれまでも経験があるし,おくれている部分があるかもしれませんけれども,そういう点は伸ばしていくべき分野であろうと。
 そういう分野を伸ばした上で,更に次の分野については考えていく必要があるけれども,とりあえずはこの4分野を今念頭に置いたわけでございますが,今言われたとおり,既にもうある程度経験のある,補給とか滞在の話と,それから着陸とか探査の話は少し違うのではないかというのはおっしゃるとおりなので,そこら辺は少し踏まえて考えていきます。

【白石部会長】 安岡委員,どうぞ。

【安岡委員】 この中間取りまとめの位置づけということについてちょっとお伺いしたいのですが,冒頭の部分で4行目に月,火星への段階的に進める試みということで,宇宙探査という言葉が使われているわけだと思うのですが,そのすぐ後ろに,その一つとして国際協調の象徴で宇宙ステーション,ISSがあるという論理構成になっていますよね。
 我々が宇宙ステーション,ISSを一番初めに考えたときには,必ずしも月,火星へというところのコンテクストの中でISSに参加したという位置づけではなかったような気がするので,そこのコンテクストがちょっとずれている。つまりISSをどう進めるかという話と,宇宙探査をどうするかという話は,ちょっと合っているようで合っていない部分があるような感じがします。位置づけについてもうちょっと明確にして書いていただいた方が,先ほどの林田委員の意見とかがどういう意味を持ってくるか,というのははっきりするのではないかと思います。

【ISS・国際宇宙探査小委員会(藤崎主査)】 その点は踏まえて,これを最終報告を出しますときは考えますけれども,ここでの考え方は,基本的にはこれまでは国際的に各国では費用対効果の観点もあり,できるだけ独自の探査は進めるけれども,できるところは国際的な流れをやっていきたいと,それがISSが象徴でありますということを述べたわけでございます。
 その前に,今の大きな流れは月近傍,月,火星というふうにみんな進みつつあるけれども,そのときに今申したような,これまでの大前提であるところの国際協調というものが少し前提でなくなりつつあるかもしれないと。それをもう一回,どのように再構築するかということが大事だということで,ISSのときに月云々ということまで考えていたということを言っているんではないんですけれども,ちょっともし,わかりにくければそのところは念頭に置きたいと思います。
 以上でございます。

【白石部会長】 はい,ほかにございますか。
 井川委員,どうぞ。

【井川委員】 きょうのこれは,おまとめになったので致し方ないとして,小委員会を伺っていてちょっと気になったのが,私どもメディアに報道されたのはこちらじゃなくて,JAXAさんがまとめられている構想ばかりが,たしかどこの新聞も取り上げていて,同じ会で報告されたんですが。
 それで,どこで差があるかというと,こちらは大所高所でまとめられておられるんですが,JAXAのやつはそういった制約も考慮しつつ,前広に書かれていて,なおかつ,僕は非常に参考になるなと思ったのは,個別のいろんなプロジェクトにどのくらいの予算規模かかるのだというような評価も一覧表が載っていたりして,これは中間取りまとめなので,今後最終まとめとかいろんなことに,あるいはこれが上がっていく政策委員会と議論するには,添付資料としてつけていただいて出した方が,恐らく政策委員の方々も,こういった国際情勢も踏まえた見方プラス予算規模であるとか,技術の,JAXAという専門機関での検討結果も踏まえた議論ができると思うので,もし可能ならば,なおかつ世間では,それを正しいとは必ずしも申し上げませんが,JAXAの資料にかなり注目が集まったということもあり,今後の議論も,その世論ということも踏まえて,ある程度やるというのを政策委員会に期待するのであれば,是非添付して出されて,一緒に役所,あるいは先生の方で御説明されて,いろんな専門の委員の方に御理解いただくというのもいいんじゃないかなと思った次第で,これはお願いですが,可能ならば是非,そうしていただければなと思います。

【ISS・国際宇宙探査小委員会(藤崎主査)】 確かに,JAXAの報告というかシナリオは,かなり明確に,有人の月着陸というところまで示しているものですから,これは普通の宇宙開発利用部会なり小委員会でなかなかそこまでできないことを,一つの実施機関の考え方ということで,全体まとまったものではないので,ああいう形でかなり進めて,予算についても今,かなり明確とおっしゃいましたけれども,あの試算が果たして本当に詰めたものかどうかというのはいろんな議論があるところでございますから,恐らくJAXAの中でももう一回,そういう形で正式にするのであれば,もう一回詰め直す必要があるかもしれませんが,しかし,ああいうものをつけることがむしろ明確になるのでいいのだというのが宇宙開発利用部会のお考えであれば,それがむしろ,そういうふうにJAXAとも相談して考えていきたい。
 ただ,それは相当に中身に踏み込むものでございますから,今,井川委員が言っていたことがそのまま本当に利用部会,政策委員会と受けとめられるかどうかわかりませんけれども,私はやっぱり先ほど油井さんも言われたように,ある程度その最初に申しましたように,できるだけ個別の項目について,明確な目標を示していくことが大事だという以上,一切工程にも,どこにもそういうものがない形よりは,ある程度の形,どういう形でそれが入っていくのがいいのかなというのは,今,添付がいいのか何がいいのかちょっとわかりませんけれども,もう一回よく相談してみたいと思います。
 御示唆ありがとうございました。

【白石部会長】 はい,どうぞ。

【井川委員】 1点だけ。
 今の件で,僕も言い足りないので,付言させていただくと,こちらのプロジェクトにもアメリカだのヨーロッパのプロジェクトについては書いてあり,正に油井宇宙飛行士が先ほどおっしゃったとおりで,アメリカはゲートウェイ構想をぶち上げていますけれども,結局政権が変わって,NASAの構想みたいなことになっていて,宙ぶらりんになっているという現状があるとすると,必ずしもJAXAのだから駄目かというと,宇宙機関のものという位置づけというのは,おっしゃるとおりあそこに書いてあるエクストラだとか,予算の内訳が正確かどうかというのは,多分外れもあるのでしょうから,そこは議論の材料という程度のものだと思います。他国や,ヨーロッパなどのかなり曖昧な計画も含めてこちらに言及されているのであれば,JAXAもあってもおかしくはないのだなと思うことを付言します。
 別に,これに対して御回答は結構です。

【ISS・国際宇宙探査小委員会(藤崎主査)】 参考にさせていただきます。ありがとうございました。

【白石部会長】 はい,吉田委員どうぞ。

【吉田委員】 議論の過程で,一つ教えていただきたいのですけれども,先ほどから幾つかコメントも御質問もありましたけれども,この中間取りまとめの文書は月とか火星とか,重力天体を探査するということが主軸に書かれているというふうに明らかに読み取れるのですが,例えば小惑星とか,コメットのような微少重力天体に関して,どのような議論があったのかというのを質問させていただきたいと思います。
 やはり日本は,はやぶさ,はやぶさⅡのような小惑星探査の実績を上げておりますし,ヨーロッパでもロゼッタというミッションがコメットを探査しております。それから,そういう微小天体は将来資源化という意味でも,国際的にも注目されているという側面もあろうかと思いますが,国際宇宙探査の一つのターゲット,あるいはシナリオとして,そういう微小重力天体をどう捉えて,どういう議論がなされたのか,もしあればお聞かせいただければと思います。

【ISS・国際宇宙探査小委員会(藤崎主査)】 ありがとうございます。
 正に先ほどの4技術のところで,重力天体着陸技術というのを書いておりますし,これにつきましては小惑星についての説明等も受けた上で,こういう分野については日本がこれからも伸ばしていける技術を持っているということで書いておりますので,大きなシナリオとして月近傍,月,そしてひいては火星があるかということでございますけれども,もちろんその過程において,小惑星というものがあるということを念頭に置いて書いております。

【白石部会長】 よろしいですか,ほかにありますでしょうか。
 はい,どうぞ。

【芝井委員】 余り事情をよく知らないかもしれないのですけれども,意見を一つだけ申し上げさせていただきます。
 アメリカあるいは中国の情勢など大変難しいところがある中で,こうやって取りまとめしていただいて大変すばらしいと思いますが,宇宙基地が始まったころのことを考えますと,本音はともかく,宇宙という,人類共通のフロンティアを平和的に利用しようという大きい理念,立派な理念があったと思うのですね。それが今,各国のそれぞれの国の国益がかなり強調されていて,みんなで一緒にやらなくてもよいかもしれないというふうになっているわけです。
 日本として何をするべきかということを考えたときに,先ほど林田委員もおっしゃいましたが,平和利用ということに関しては,日本は是非前向きで取り組むべきだと。もともとの理念からするとやはりそうですので,宇宙をできるだけ多くの国が国際的に協調して,利用して,みんなですばらしいことをやりましょうという姿勢を日本が示せると,あるいはそういうことを実際にやっていくということはかなり重要だと思いますので,どこかに平和利用という言葉がちょっと書いてあればすばらしいと思います。
 もう一つだけいいですか,私,宇宙科学の分野ですので,もし宇宙科学でもそういうふうにせよと言われれば,そういう点で是非こういう計画は前向きに努力させていただかなくてはいけないのではないかというふうに思います。
 以上です。

【ISS・国際宇宙探査小委員会(藤崎主査)】 ありがとうございます。
 正に芝井委員のおっしゃったとおりだと思いますので,ここの,先ほどちょっと御紹介いたしましたISEF2において,日本から発信すべき事項の2番目のところで,宇宙探査に取り組む国が認識するべき共通原則ということで,平和利用,人類への恩恵と,こういうものを日本として強く発信すべきであるという認識は全く共通でございます。

【白石部会長】 ほかにございますか。
 よろしいでしょうか。
 それでは,委員の皆様から頂きました様々な御意見も踏まえて,最終取りまとめをお願いしたいと思います。
 どうもありがとうございました。

(4)その他

【白石部会長】 これで全ての議題を終了しましたので,事務局から連絡事項があればお願いします。

【事務局(山之内企画官)】 事務局でございます。会議資料と議事録の公開について申し上げます。当部会の運営規則に基づいて,本日の会議資料は公開となります。後日,文科省のホームページに掲載させていただきます。また,議事録についても公開となりますので,委員の皆様に御確認いただいた後,文科省のホームページに掲載させていただきますので,よろしくお願いいたします。
 あと1点,高薮委員から7月18日に日本学術会議で「我が国の衛星地球観測計画」というタイトルで公開シンポジウムを行うという御案内を頂きました。ありがとうございます。そのパンフレットを受付の机の上においておきましたので,お帰りの際,御興味のある方はお取りいただければと思います。
 以上でございます。

【白石部会長】 では,これできょうの部会を終わります。
 どうもありがとうございました。

以上

(説明者については敬称略)

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課