資料3-3-1-1 宇宙分野の推進方策について<中間取りまとめ(案)>

注:本資料は9月13日の宇宙開発利用部会(第3回)で配付された資料です。部会での議論を受けとりまとめられたものはこちらのページをご参照ください。

平成24年9月
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会
宇宙開発利用部会 

1.検討に当たっての前提

  • 本年7月に構築された新たな体制(※)を前提に、国家戦略たる宇宙政策において、文部科学省の果たすべき役割の明確化が必要。

    ※宇宙開発戦略本部を支える司令塔機能の内閣府への設置政府全体の宇宙開発利用を技術で支える中核的な実施機関とのJAXAの位置付け 等
     
  • その際の視点は、宇宙空間の「利用の拡大」と「自律性の確保」。

2.新体制の下での文部科学省の役割

(1)宇宙開発利用に係る基本認識

1) 国家セキュリティへの貢献:

 科学技術における宇宙分野は、技術・安心安全・経済などの国家セキュリティとしての意義が高く、幅広い技術分野や匠の技から最先端技術までが統合された巨大科学技術であり、我が国科学技術を底上げし、裾野を拡大。また、革新的なプロジェクトにより得られる知見や経験は、新産業創出や人材育成に繋がる貴重な機会。

2) 国際的なプレゼンスの確保:

我が国が宇宙先進国として国際協力を引き続き推進し、将来にわたり国際社会においてプレゼンスを発揮するためには、先端的な宇宙科学技術の推進が不可欠。これにより、国際協働活動において主導的な役割を果たすとともに、特にアジア地域において我が国の技術力を活かしてイニシアチブを発揮。

3) 人材の育成:

宇宙の利用及び民間活動が拡大する新たな時代になり、我が国においても政府全体で宇宙を推進する体制が構築。これを持続的に発展させていくためには、それを支える人材を育成し供給することが不可欠。特に、先端科学技術への挑戦は、多くの関係分野を取り込み、その成果を社会システムとして定着させるまでを見通した上で、プロジェクトをまとめ上げる総合力を持つ人材が必要である。

4) 社会環境の醸成:

ロケット打上げや「はやぶさ」帰還などは国民の夢や希望となり、我が国の誇りに繋がるとともに、ひいては次世代を担う青少年の科学技術に対する関心を掻き立てるなど、科学技術立国の礎を築くことにも寄与。

5) 震災復興など社会的ニーズへの寄与:

宇宙科学技術の展開は、東日本大震災で失われた科学技術への信頼回復、さらには科学技術による安心安全な社会の実現や経済活動の活性化にも貢献。

(2)文部科学省の役割(取組の基本的考え方)

文部科学省は、活力ある未来に向けた「明日への投資」を担う。

 このため、研究開発により宇宙のフロンティアを拓き、「宇宙先進国」にまで至った我が国宇宙開発の優位性をより発展させ(宇宙を知る)、自律的な国家基幹技術として宇宙利用の基盤となる技術の強化や人材育成により(宇宙を支える)、民生・安全保障分野における宇宙利用(宇宙を使う)に貢献する。

 新体制下において政府全体の宇宙開発利用を技術で支える中核的な実施機関と位置付けられたJAXAは、今後、各府省や産業界のニーズを受けて一層広範な業務を行うこととなるが、文部科学省としては、これらの役割を果たすべく、JAXAが「明日への投資」との観点において業務目標を達成し得るようリソースを重点化していく。

3.文部科学省の主な取組の方向性

-宇宙を知る-

  • 宇宙科学は、宇宙開発の端緒を開き、宇宙開発利用を先導するものであり、人類共通の知的資産創出の源泉となるもの。
    このため、衛星による天文観測など世界をリードする最先端の研究成果を高い頻度で持続的に創出できるよう、我が国宇宙開発の優位性をより発展させ挑戦的なプロジェクトの実施を推進し、宇宙開発利用の革新に貢献。
    その際、JAXA宇宙科学研究所が、学術コミュニティと連携してプロジェクトの優先順位付けを行うとともに、大学共同利用の機能を活かしてトップサイエンスセンターとなるよう支援する。 
  • 宇宙探査は、“宇宙の渚から深宇宙へ”人類のフロンティアを拓くものであり、輸送技術や有人技術の底上げを先導するものとして宇宙開発の牽引役をなす。また、「はやぶさ」を始めとする探査機により新たな知の創造や飛躍的な科学技術の進歩をもたらすとともに、宇宙産業の技術基盤の維持・発展にも貢献。さらに、将来的には資源問題にも寄与。
    このため、これまで国際宇宙ステーション(ISS)計画が有人宇宙技術を培ってきたことや宇宙産業におけるアンカーテナントとして機能してきたことを礎として、国際協働探査への主要国としての参加を視野に、有人・無人探査のキー技術及び最先端能力を効果的に獲得していく。

-宇宙を支える-

  • 技術基盤は、学術における基礎的理解を含む科学技術インフラをベースとして、世界水準の先進的ミッション達成と幅広い分野での宇宙の利用拡大を支えるものであり、新技術創成の理念の下、あらゆる機会を捉えて技術基盤を強化。
    さらに、ここで得られる先端的な研究開発の成果はスピンオフにより様々な方面へ波及する我が国先進技術の源であり、技術の底上げや裾野の拡大、ひいては産業競争力の強化に繋がる。
    特に輸送技術は、我が国が自律的に宇宙開発利用を行う上で不可欠であり、宇宙先進国としてのプレゼンスや宇宙産業基盤の維持にも貢献する国家基幹技術。このため、輸送コスト全体の低減、国際競争力の獲得や技術基盤・産業基盤の維持といった課題に対応しつつ、宇宙探査などの新たな目標や将来技術の獲得等も含めた多様なニーズに応える輸送システムを開発する。
    また、ISS計画については、経費の圧縮を図りつつ、有人宇宙活動に役立つ科学的知見及び技術の獲得や宇宙環境利用の本格化による産業への波及効果の創出などの取組を着実に進める。 
  • 宇宙科学や基盤技術と民生・安全保障分野での実利用の結節点として、そのニーズをとらえるとともに、技術実証等を通じて利用拡大への橋渡しを実質化する機能を絶えず循環的に果たすことが重要である。
    このため、文部科学省は社会的ニーズに対応した宇宙開発利用の推進に向け、我が国宇宙開発利用を技術で支える中核的な実施機関として位置付けられたJAXAにおいて、文部科学省を含む各府省の政策ニーズや宇宙産業におけるニーズの積極的な掘り起こしやそれに応える技術の提供がなされるよう、必要な施策を講じる。 
  • 我が国が宇宙先進国として宇宙開発利用を持続的に進めていくには人材育成が不可欠である。
    このため、宇宙開発利用における魅力あるミッションを通じた研究者・技術者の育成やJAXA宇宙科学研究所における大学共同利用機能の活用など大学院教育等の充実が重要である。特に大学院教育においては、自らの専門分野に加え周辺領域にも広がりを持った知識を身につけるとともに、リスクコミュニケーションも含めた科学技術コミュニケーション力を備えた人材を育成し得るよう、その充実を図る。
    また、将来の人材基盤の構築に向け、宇宙教育支援等により理数系をはじめ幅広い見識を身につけた青少年の育成に貢献する。 

-宇宙を使う-

  • 文部科学省は、宇宙技術開発のみならず科学技術水準の向上という観点から、ユーザー側としても宇宙の利用を推進する。
    例えば、宇宙環境利用による極限環境でしか得られない基礎的な研究成果の蓄積や、地球観測による国民の安心安全の確保や地球規模の課題解決に資する研究基盤・データの提供を実施。他の科学技術分野と連携し新たな衛星利用分野を開拓するともに、国際協働を通じて効果的に推進する。 
  • 今後宇宙の幅広い利用が想定されているところであるが、未だ潜在的であるものが多い。
    このため、文部科学省は、宇宙開発戦略本部や新たに設けられた内閣府という宇宙政策の司令塔の下、宇宙科学以外の分野においても、結節点たるJAXAによるユーザーコミュニティ(※)作りへの支援等を通じて宇宙の利用拡大に貢献する。

    ※利用側と開発側の協議を通じて利用ニーズをとりまとめて具体的なプロジェクトにまとめあげるとともに、プロジェクトの成果を活用発展させるバーチャルな拠点

科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 宇宙開発利用部会委員名簿

平成24年7月19日
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会
宇宙開発利用部会 

(委員)

大垣 眞一郎  独立行政法人国立環境研究所 理事長
柘植 綾夫   公益社団法人日本工学会 会長

(臨時委員)

井上 一       独立行政法人宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所特任教授
河内山 治朗    元宇宙開発委員会委員
服部 重彦    株式会社島津製作所 代表取締役会長
青木 節子    慶應義塾大学総合政策学部 教授

文部科学省における宇宙分野の推進方策について

平成24年9月6日
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会
宇宙開発利用部会 

1.趣旨

 平成24年7月12日に「内閣府設置法の一部を改正する法律」が施行されたことを受けて、我が国の宇宙の開発及び利用(以下、「宇宙開発利用」という。)に係る推進体制は新たなものとなった。文部科学省としてはこの体制の下で、今後どのように宇宙開発利用に取り組んでいくのか明らかにしていく必要がある。
 このため、今後文部科学省が宇宙開発利用に取り組むに際しての基本的な方針を、推進方策としてまとめるべく、宇宙開発利用部会において調査審議することとする。

2.調査審議の進め方

  1. 有識者からの意見聴取等を行い、9月中を目途に中間的にとりまとめる。
  2. 年内を目途に最終とりまとめを行う。

3.その他

 内閣府の宇宙政策委員会においては、8月29日に開催された第三回会合より、新たな宇宙基本計画に盛り込むべき事項の検討が開始されたところ。

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課

-- 登録:平成24年10月 --