参考資料6 政府関係会議における報告書(抜粋)

●第4期科学技術基本計画(案) (抜粋)【平成23年8月11日 総合科学技術会議(第99回)】

二.将来にわたる持続的な成長と社会の発展の実現

2.震災からの復興、再生の実現

(2)重要課題達成のための施策の推進

3) 被災地における安全な生活の実現
(前略)また、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、周辺地域及び全国における放射線モニタリングを強化するとともに、こうした情報を国内外に正確かつ迅速に発信する。さらに、国際社会からの協力も得て、汚染された土壌、水等の除全、放射性廃棄物4の処理、処分に関する取組を推進する。また、復旧作業時を含め、労働災害防止に関する研究を推進する。
4放射性物質に汚染されたあるいは汚染されたおそれがある廃棄物

<推進方策>

  • 国は、被災した地域を中心に、地方公共団体、大学、公的研究機関、産業界等が連携して、特区制度も活用し、再生可能エネルギーや医療・介護、情報通信、先端材料、環境技術など、研究のいかなるフェーズでも、世界的に競争力のある領域において、官民の関連研究機関が集積した新たな研究開発イノベーションの国際的拠点等の形成に向けた検討を行う。さらに、国は、これらの拠点を復興、再生のモデルとして、国内外に積極的に情報発信していく。
  • 国は、被災した地域において、大学、公的研究機関、産業界、金融機関等の関係者が結集し、大学等の知を活用した新たな先端産業の創成に向けて、研究開発、事業化構想等を一体的に推進するための「場」を形成する。
  • 国は、大学、公的研究機関、産業界等と連携、協力して、被災地の産業の復興と再生、新たな産業創出に向けた研究開発等の担い手となる人材の育成と確保に向けた取組を推進する。

3.グリーンイノベーションの推進

(2)重要課題達成のための施策の推進
1) 安定的なエネルギー供給と低炭素化の実現
(前略)原子力に関する研究開発等については、東京電力福島第一原子力発電所の事故の検証を踏まえるとともに、今後の我が国のエネルギー政策や原子力政策の方向を見据えつつ実施する。ただし、原子力に係る安全及び防災研究、放射線モニタリング、放射性廃棄物や汚染水の除染や処理、処分等に関する研究開発等の取組は、これを強化する。
(3)グリーンイノベーション推進のためのシステム改革
グリーンイノベーションの推進においては、(2)で掲げた重要課題達成のための施策の推進と併せて、イノベーションを促進し、産業や雇用の創出等による我が国の持続的な成長や地球規模の問題解決に迅速かつ効果的につなげていくための取組を進める必要がある。こうした観点から、イノベーションを加速するための規制・制度改革、技術をはじめとする成果の海外への展開促進など、システム改革を積極的に推進する。
<推進方策>
(中略)
・ 国は、エネルギー、水、交通、輸送システム等の社会インフラの整備に関連して、官民が有する技術実証、管理運営ノウハウ、人材育成等をパッケージ化した総合システムとしてその海外を促進する。(後略)

4.ライフイノベーションの推進

(2)重要課題達成のための施策の推進
2) 新しい早期診断法の開発
国民の健康を守るためには、疾患の早期発見につながる診断手法の開発が重要であることから、早期診断に資する微量物質の同定技術等の新たな検出法と検出機器の開発、新たなマーカーの探索や同定など、精度の高い早期診断技術の開発を推進する。
3) 安全で有効性の高い治療の実現
(前略)また、核酸医薬、ドラッグデリバリーシステム等の革新的な治療方法の確立を目指した研究開発を推進する。治療の質と安全性と有効性の向上に向けて、疾患の層別化、階層化等に基づく装薬を推進し、国民の遺伝背景に基づいた副作用の少ない医薬品の投与法の開発を進める。
放射線治療機器、ロボット手術機器等の新しい治療機器の開発、内視鏡と治療薬の融合など診断と治療を融合させる薬剤や機器の開発、更に遠隔診断、遠隔治療技術の開発、それを支援する画像情報処理技術の開発を進める。(後略)
(3)ライフイノベーション推進のためのシステム改革
ライフイノベーションの推進においては、(2)で掲げた重要課題達成のための施策の推進と併せて、これらの成果を医薬品や医療機器として迅速に実用化に結び付けるための仕組みを整備する必要がある。特に、我が国では、医薬品等に関する研究成果を臨床研究、治験、さらには製品化につなげていく際、国際比較で著しく開発時間を要するという問題が指摘されており、これらの問題を解決し、ライフイノベーションを促進する観点から、承認審査に係る規制・制度改革や研究開発環境の整備を推進する。
<推進方策>
・国は、大学、公的研究機関、産業界との連携の下、新たな創薬や医療機器開発につながるシーズを生み出し、その実用化を加速するため、官民を挙げた装薬・医療技術支援基盤の整備を推進する。(後略)

三.我が国が直面する重要課題への対応

2.重要課題達成のための施策の推進

(1)安全かつ豊かで質の高い国民生活の実現
1) 生活の安全性と利便性の向上
自然災害をはじめとする様々な災害等から、人々の生活の安全を守るため、地震、火山、津波、高波・高潮、風水害、土砂災害等に関する調査観測や予測、防災、減災に関する研究開発を推進する。特に東北地方太平洋沖地震の教訓を踏まえ、震災前に想定していた内容を検討した上で、将来、発生が予想される海溝型巨大地震とそれに伴う津波等に関する調査観測等の充実、強化を図る。同時に、これらの成果を積極的に活用し、国や地方公共団体における防災マップの作成等を通じた防災体制の強化、災害発生の際の迅速な被害状況の把握及び情報伝達、リスク管理も含めた災害対応能力の強化に向けた研究開発等の取組を促進する。さらに、火災や重大事故、犯罪への対策に関する研究開発を推進し、国や自治体等における対策等の取組を促進する。
また、人の健康保護や生態系の保全に向けて、大気、水、土壌における環境汚染物物質の有害性やリスクの評価、その管理及び対策に関する研究を推進する。(後略)
(4)国家存立の基盤の保持
我が国が国際的な優位性を保持し、安全な国民生活を実現していくためには、国自らが長期的視点に立って、継続的に、広範囲かつ長期間にわたって研究開発を推進し、成果を蓄積していくべき研究開発課題がある。このような研究開発課題については、国として、国家存立の基盤に関わる研究開発と位置付けて協力に推進する。なお、その際には、国家存立基盤を広く捉え、安全保障に加え、科学技術における新領域開拓に向けた独自の科学技術基盤構築のための研究開発の推進を含むものとする。
このため、国として、具体的には以下に掲げる需要課題を設定し、これらに対応した研究開発を重点的に推進する。その際、宇宙基本計画や海洋基本計画、エネルギー基本計画、原子力政策大綱など、他の計画等に基づく推進との整合性に配慮する。
1) 国家安全保障・基幹技術の強化
(前略)また、原子力に係る安全、防災に関する技術、核不拡散及び核セキュリティに関する技術等の研究開発を大幅に強化する一方、高速増殖炉サイクル等の原子力に関する技術等の研究開発については、我が国のエネルギー政策や原子力政策の方向性を見据えつつ、実施する。核融合の研究開発については、エネルギー政策や原子力政策と整合性を図りつつ、同時に、その技術の特性、研究開発の段階、国際約束等を踏まえ、これを推進する。
さらに、海洋、宇宙、情報(サイバー)、原子力に関する技術など、極めて高度、かつ複雑な技術システムに事故あるいはトラブルが発生した場合の国としての対応や、人々の生活の安全に資する研究開発等を促進する。
(5)科学技術の共通基盤の充実、強化
我が国及び世界が直面する様々な課題への対応に向けて、科学技術に関する研究開発を効果的、効率的に推進していくためには、複数の領域に横断的に用いられる科学技術の研究開発を推進する必要がある。また、広範かつ多様な研究開発に活用される共通的、基盤的な施設や設備について、より一層の充実、強化を図るとともに、相互のネットワーク化を促進していく必要がある。
このため、国として、具体的に以下に掲げる重要課題を設定し、これらに対応した研究開発等の関連施策を重点的に推進する。
2) 共通敵、基盤的な施設及び設備の高度化、ネットワーク化
科学技術に関する広範な研究開発領域や、産学官の多様な研究機関に用いられる共通的、基盤的な施設及び設備に関して、その有効利用、活用を促進するとともに、これらに係る技術の高度化を促進するための研究開発を推進する。
また、これらの施設及び設備の相互のネットワーク化を促進し、利便性、相互補完性、緊急時対応性等を向上するための取組を進める。

3.重要課題の達成に向けたシステム改革

(2)国主導で取り組むべき研究開発の推進体制の構築
国の安全保障にも関わる基幹的技術や、複数の領域や機関に共通して用いられる基盤的な施設及び設備に関する研究開発の推進に当たっては、これらが長期的かつ継続的に取り組むべきものであることから、国主導の下、関係する産学官の研究機関の総力を結集して研究開発を実施する体制を構築する必要がある。このため、これらの研究開発を効果的、効率的に進めるための新たなプロジェクトを創設する。

<推進方策>

  • 国は、国家安全保障・基幹技術を中心とする基盤技術に関する研究開発について、関係する計画等も踏まえ、それぞれの技術課題ごとに、国主導で研究開発を行うプロジェクト(例えば、国家安全保障・基幹技術プロジェクト(仮称))を創設する。その際、第3期基本計画で選定された「国家基幹技術」の成果を最大限活用する。
  • 国は、本プロジェクトの推進に当たり、個々の研究開発にとどまらず、プロジェクト全体を俯瞰し、実効的な統括を行うプロジェクトマネージャーを設置するとともに、関係機関の連携、揚力を得て、実施計画の策定から知的財産の保護、さらには人材養成に至る中長期的な戦略を策定する。その際、第3期基本計画で「国家基幹技術」として選定された課題の評価結果を踏まえ、プロジェクトの在り方を検討する。

4.世界と一体化した国際活動の戦略的展開

(2)科学技術外交の新たな展開
マル1 我が国の強みを生かした国際活動の展開
わが国は、環境・エネルギーをはじめとする様々な課題について、世界に先駆けた取組を進めており、その科学技術も世界的に高い水準にある。我が国としては、今後、持続的な成長を実現していくためにも、特に成長の著しいアジアを中心として、これら科学技術を基本とした「課題達成型処方箋の輸出」(システム輸出)を促進し、新たな需要を創造していく必要がある。このため、国として、我が国の強みを活かし、社会変革につながるシステムのアジア地域を中心とした新興国への展開を促進する。

<推進方策>

  • 国は、我が国が技術的優位を有する領域において、アジア諸国と協力し、我が国の技術や規制、規準、規格の国際標準化を進めるための取組を支援する。
  • 国は、新興国を中心として、エネルギーや水、交通、輸送システム等の社会インフラの整備に関し、官民が有する先進技術と、管理及び運営ノウハウ、人材育成等をパッケージ化した総合システムの海外展開に向けた取組を推進する。

四.基礎研究及び人材育成の強化

2.基礎研究の抜本的強化

(1)独創的で多様な基礎研究の強化
基礎研究は、研究者の知的好奇心や探求心に根ざし、その自発性、独創性に基づいて行われるものである。その成果は、人類共通の知的資産の創造や重厚な知の蓄積の形成につながり、ひいては我が国の豊かさや国力の源泉ともなるものである。このような独創的で多様な研究を広範かつ継続的に推進するための取組を強化する。

<推進方策>

(中略)

  • 国はこれらの研究から生まれたシーズを発展させ、課題達成等につなげていくため、多様な研究資金制度の整備、充実を図るとともに、科学研究費補助金との連携を強化する。特に、基礎的、基盤的な研究を戦略的、重点的に支援するための研究資金を一層拡充する。
  • 国は、基礎研究の性格を踏まえ、研究者の独創性や研究の発展可能性を考慮し、研究課題の柔軟な選定、国際的基準などの多様な指標に基づく評価の実施など、ピアレビューを含めた審査や評価の在り方について改善を図る。
  • 国は、基礎研究が長期的視野に立って推進するものであることを十分勘案しつつ、施策の企画立案、資源の配分、成果の把握、評価の在り方等について、不断の検証と見直しを行う。(後略)

3.科学技術を担う人材の育成

(1)多様な場で活躍できる人材の育成
マル3 技術者の養成及び能力開発
科学技術イノベーション推進において、産業界とそれを支える技術者は中核的な役割を果たしている。また、技術の高度化、統合化に伴い、技術者に求められる資質能力はますまず高度化、多様化している。このため、国として、こうした変化に対応した技術者の養成と能力開発等の取組を強化する。
<推進方策>
・ 国、大学、高等専門学校及び産業界は、相互に連携、協力して、実践的な技術者養成に向けた分野別到達目標の策定、教材作成、インターンシップ、産学双方向の人材交流を推進する。また、国は、大学が、大学院において、実践的な技術者を目指す学生に対し、複線的で多様なカリキュラム設定を検討するとともに、組織的、体系的な教育体制を整備することを期待する。(後略)

五.社会とともに創り進める政策の展開

2.社会と科学技術イノベーションとの関係深化

(1)国民の視点に基づく科学技術イノベーション政策の推進
マル2 倫理的・法的・社会的課題への対応
科学技術が発展し、その内容が複雑化、多様化する中、先端的な科学技術や生命倫理に関する問題、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けた原子力の安全性に対する不安など、科学技術と国民との関わりは、倫理的、法的、社会的にますます深くなりつつある。このため、国として、科学技術が及ぼす社会的な影響やリスク評価に関する取組を一層強化する。

<推進方策>
(中略)

  • 国は、倫理的・法的・社会的課題への取組を促進するため、研究資金制度の目的や特性に応じて、これらの取組に研究資金の一部を充当することを促進する。
  • 国は、東京電力福島第一原子力発電所の事故の検証を行った上で、原子力の安全性向上に関する取組について、国民との間で幅広い合意形成を図るため、テクノロジーアセスメント等を活用した取組を促進する。

(2)科学技術コミュニケーション活動の推進
科学技術イノベーション政策を国民の理解と信頼と支持の下に進めていくには、研究開発活動や期待される成果、さらには科学技術の現状と可能性、その潜在的リスク等について、国民と政府、研究機関、研究者との間で認識を共有することができるよう、双方向のコミュニケーション活動等をより一層積極的に推進していくことが重要である。このため、研究者による科学技術コミュニケーション活動、科学館や博物館における様々な科学技術に関連する活動等をこれまで以上に積極的に推進する。また、これにより、科学技術に関連する知識を適切に捉え、柔軟に活用できるよう、国民の科学技術リテラシーの向上を図る。

<推進方策>

  • 国は、大学や公的研究機関等と連携して、科学技術の現状、可能性とその条件、潜在的リスクとコスト等について、正確な情報を迅速かつ十分に、国民に提供していくよう努める。また、国は、海外の事例を参考にしつつ、国民との間で、こうした問題に関する多層的かつ双方向のリスクコミュニケーション活動を促進する。
  • 国は、国民が科学技術に触れる機会を増やすため、地域と共同した科学技術関連の実施等を通じて、双方向での対話や意見交換の活動を積極的に展開する。
  • 国は、各地域の博物館や科学館における実験教室や体験活動等の取組を支援する。また、科学技術に関わる様々な活動を行う団体等を支援する。
  • 国は、大学や公的研究機関における科学技術コミュニケーション活動に係る組織的な取組を支援する。また、一定額以上の国の研究資金を得た研究者に対し、研究活動の内容や成果について国民との対話を行う活動を積極的に行うよう求める。
  • 国は、大学及び公的研究機関が、科学技術コミュニケーション活動の普及、定着を図るため、個々の活動によって培われたノウハウを蓄積するとともに、これらの活動を担う専門人材の養成と確保を進めることを期待する。また、研究者の科学技術コミュニケーション活動参加を促進するとともに、その実績を業績評価に反映していくことを期待する。
  • 国は、学協会が、研究者による研究成果の発表や評価、研究者間あるいは国内外の関係団体との連携の場として重要な役割を担っていることを踏まえ、そうした機能を強化するとともに、その知見や成果を広く社会に普及していくことを期待する。また、国は、研究者コミュニティーの多様な意見を集約する機能を持つ組織が、社会と研究者との橋渡しや、情報発信等において積極的な役割を果たすことを期待する。

●平成24年度原子力関係経費の見積りに関する基本方針 (抜粋)【平成23年7月19日 原子力委員会決定】

2.基本方針

(1)原子力災害対策本部の定めたロードマップにおける中長期的課題への対応

(前略)当面の課題は、環境モニタリングを継続的に実施して放射性物質による環境汚染の程度・態様を把握するとともに、環境放射線を日常生活に差し支えない水準に低下させる取組を多様な状況と要望を踏まえて広い地域において実施し、回収した放射性物質で汚染されたものを適切に管理していくことである。故郷への帰還に向けての土壌等の除染・改良の取組については、この成果を活用するには当然としても、規模が大きくなると予想されるので、国内外から多方面の知恵を動員して最適な方法を見出し、実証試験やモデル事業を実施してこれを推進するための必要なルールとマニュアルとを定め、これに基づいて大規模に実施していくべきである。
放射線安全に関して知見を有する原子力関係機関は、国と自治体の協力により進められる被災住民の方々の安心・安全の確保のための取組に、前面低に協力するべきである。また、食品・海産物等の安全規制とその管理、風評被害の防止についても、原子力関係者は、これまで培った知識を研究開発によって深化・普遍化しつつ有効に活用して、積極的に協力するべきである。
(中略)
当該発電所においては、大量の放射性廃液の処理、この処理に伴って発生する大量の放射性廃棄物の管理、構内の汚染建物・土壌や災害廃棄物の処理、使用済燃料の運び出しや損傷燃料の取り出し、廃止措置を、長期間をかけて着実に進めていくことが必要となる。国と東京電力はこれらの実施に向けてのロードマップを作成し、関係行政庁は連携してその推進体制を明確にし、必要に応じ法的枠組を整備して、東京電力に対して着実にこれらの取組を推進することを求めるとともに、創意工夫が求められる困難な取組に関しては、効果的な技術の研究開発や実証の取組を先行して推進していくべきである。

(2)原子力安全確保対策の強化

国は、大量の放射性物質を内包する原子力の研究、開発及び利用に係る施設が各地に存在し続ける現実を踏まえ、本年6月の原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対し日本政府が提出した報告書に示された具体的な教訓をその安全確保の実務に生かすべきであり、緊急安全対策に係る中長期課題の達成を含む原子力安全規制の充実、原子力防災対応の強化に係る取組を着実に行うべきである。また、安全対策の高度化に有用な技術開発を推進するとともに、安全技術基盤の強化を図るべきである。

(3)被ばくした人々の長期健康管理の取組

国は、福島第一原子力発電所事故により被ばくした発電所従事者、防災業務従事者、住民の長期的な健康管理を行う体制を整備して、これに取り組むべきである。さらに、被ばく医療体制を充実するとともに、被ばくの影響の評価とその低減化に関する研究を含む放射線防護研究の強化を図るべきである。また、放射線に対する正しい理解を目指しての情報開示、情報提供、放射線教育、リスクコミュニケーションの取組も重要である。

(4)国際社会における責任ある行動の推進

(前略)なお、原子力損害賠償条約の重要性を改めて想起するとともに、この事故から核セキュリティに係る課題をくみ取り、このリスク管理に係る取組の基本的考え方を整備して、現場における取組の充実を求めるとともに、それを国際社会に発信していくことも重要である。

(5)信頼回復への対応

国は、今回の事故を受けて国民との信頼関係の回復・強化に取り組むべきである。さらに、上記のIAEAに提出した報告書において推進するとした、原子力発電のあり方について国民的な議論を行っていくための取組を進めていくことも重要である。
また、原子力施設の立地地域においては、その安全性に関する正確な説明に対する要求が高くなっているので、関係者は正確な情報の提供等に努めるとともに、このことに関する地域社会の取組に対して積極的に協力し、支援を行うべきである。

(6)当面の課題克服と将来に向けた研究開発・人材の確保への対応

原子力研究開発については、福島支援に高い優先順位を置くべきである。また、シビアアクシデント対策強化のための研究などを国際協力によって推進し、その成果が世界の原子力安全の向上につながるように取り組むべきである。したがって、こうした取組を担う原子力安全研究開発推進体制を強化するべきである。
また、ウラン燃料の安定供給、核燃料サイクル、放射性廃棄物に関する取組については、継続しないと国益を損ねると考えられるものは継続する。特に、放射性廃棄物対策については将来の原子力政策の在り方がどう変化しようと必須の課題であるため、着実に進める必要がある。高速増殖炉とその核燃料サイクルについては、将来の原子力政策におけるその位置づけが定まるまでの間は、技術基盤の維持や国際標準化への貢献のために必要な取組に限って実施するべきである。
 J-PARC等、今回の地震により被災したが、継続的に大きな成果を生み出すことが期待される研究施設については、その復旧に注力するべきである。また、国際約束に基づく研究開発であるITER計画やBA活動などの核融合研究開発については、震災影響の最小化等に向けて関係者間で調整・検討を行うべきである。
上記(1)~(5)の推進の取組には産官学の叡智を結集することが必要であるから、そのための創意工夫を行うべきである。
また、引き続き各方面において専門性の高い人材が必須となる。現在の状況において、このような研究開発等を含む原子力の研究、開発、利用の取組に参加することを志す若い人材を確保するためには相当の努力が必要である。したがって、関係機関は創意工夫を凝らしてこうした人材の育成・確保にと努めるべきである。

●復興への提言 (抜粋)【平成23年6月25日 東日本大震災復興構構想会議】

第3章 原子力災害からの復興に向けて

(2)一刻も早い事態の収束と国の責務

今回の大震災からの復興は、原発被災地の復興を抜きにして考えることはできない。復興に向けた大前提は、国が責任をもって、一刻も早く原発事故を収束させることである。
国は、原子力災害の応急対策、復旧対策、復興について責任をもって対応すべきである。
また、今回の原発事故の原因究明とその影響の評価、事故対応の妥当性の検証を、国際的な信認を得られるよう徹底的に行うべきである。

(3)被災者や被災自治体への支援

被災者(含む事業者)への賠償を迅速、公平かつ適切に行い、また、当面の必要な資金についてもすみやかに仮払いが行われるべきである。
そのための法的枠組として、「原子力損害賠償支援機構法案」の早期成立を図るなど、国が最後まで意を用いていくべきである。さらに、原発事故による風評被害に苦しむ事業者が雇用を維持するための支援を行うべきである。(後略)

(4)放射線量の測定と公開

原子力災害に関して、科学的根拠を持った一次データの公開など、正確な情報発信や継続的な情報開示により、福島県民、ひいては国民全体に安心と信頼を与えるとともに、日本に対する国際的信頼感を回復させることが重要である。
そのためには、すみやかに、放射線量のモニタリングを、全国統一的な方針・基準により、一元的かつ計画的・継続的に行うことが必要である。

(5)土壌汚染等への対応

放射性物質で汚染された廃棄物や土地の早期の処理や、浄化に向けて取り組むべきである。その際、汚染状況などの専門的・継続的な把握だけでなく、一元的な情報の集約と提供を図る必要がある。
放射性物質の除去については、知見が十分に得られていない状況にあるため、関係研究機関の叡智を結集させて、現場レベルでの実証を行いつつ、除染に関する手法を早期に確立し、これを着実に実施すべきである。

(6)健康管理

住民の放射線に対する不安を払拭するために、国の支援のもと、健康管理の問題に早急に着手するとともに、健康維持に関する施策を継続的に実施すべきである。
さらに、放射性物質による汚染が健康にどのような影響を与えるかを長期的に調査し、今後の医療のあり方を検討の上、放射線の影響に関する長期的健康管理や最先端の研究・医療を行う施設等を福島県に整備すべきである。

(7)復興に向けて

福島県は、地域の再生・復興を図る上で極めて困難な条件下に置かれる。原子力災害からの復興に対応する国の態勢の一元化や必要となる法整備を含め、長期的視点から、国が継続して、責任をもって再生・復興に取り組むべきである。
なお、地域の再生・復興にあたっての専門性の高い議論の必要性や長期的視点の必要性等から、政府においては、復旧の状況を勘案しつつ、原子力災害に絞った復興再生のための協議の場を設けるべきである。
福島県においては、放射性物質による汚染を除去する必要がある。大学、研究機関、民間企業等の協力の下、内外の叡智を結集する開かれた研究拠点を形成する。そこでは、環境修復に関する国際的にみて最先端の取組を推進することが重要である。
また、福島県に医療産業を集積し、世界をリードする医薬品・医療機器・医療ロボットの研究開発、製造拠点とするため、「特区」手法を活用する。そのなかで、産学連携で最先端の医薬品・医療機器の研究開発を実施するとともに、先端的な医療機関を整備する。

●東日本大震災からの復興の基本方針 (抜粋)【平成23年7月29日 東日本大震災復興構対策本部】

6.原子力災害からの復興

国は、地方公共団体と調整を行い、できるだけ速やかに、原子力災害からの復興のための協議の場を立ち上げ、地域再生、損害賠償措置を始め復興に向けた十分な対策を講じるため、法的措置を含めた検討を行い、早急に結論を得る。また、下記の事項については、その迅速な対応を図る。

(1)応急対策、復旧対策

国は、原子力災害の応急対策、復旧対策、復興について責任を持って対応する。復興に向けた大前提として、国が責任を持って、原子炉を冷温停止状態に持ち込むとともに、大気や土壌、海水への放射性物質の放出を防ぐなど、一刻も早く原発事故を収束する。また、原子炉施設の安定性の評価、詳細モニタリングの実施などの結果をふまえつつ、地方公共団体との連携を取りながら、区域解除の具体的検討・実施を行う。
マル1 応急対策、各種支援、情報提供等
(1) 我が国に対する内外の信認を回復させるような取組を推進する(例えば、正確な情報提供・共有体制の強化や、原発事故の収束、安全基準の設定、除染技術等の利用等に関する国際原子力機関(IAEA)を含む国内外の世界トップレベルの専門家の叡智の活用など)。
(2) 原子力災害時の応急対策拠点施設の体制や、原子力災害に関する国民からの質問・相談等に応じる情報提供体制を強化する。また、事故の収束に向けた研究開発を実施する。
(3) 被災者や被災地方公共団体への支援、統一的な基準・指標に基づき放射線量等きめ細かで抜け落ちのないモニタリングと迅速でわかりやすい情報提供、科学技術により検証された情報提供等を引き続き着実に実施する。また、これらの取組により、風評被害にも対応する。
マル2安全対策・健康管理対策等
(1) 食品中の放射性物質に係る安全対策について、中長期的な観点を踏まえ、規制値の再検討を行うとともに、各自治体が行い検査の支援、長期的なフォローアップなどのための体制整備を行う。
(2) 子どもたちが受ける被ばく線量(内部被ばくを含む)を低減させる取組を引き続き着実に実施する。
(3) 放射線の影響に関する長期的健康管理や最先端の研究・医療を行う施設等を福島県に整備し、子どもをはじめとする住民の継続的な健康管理を実施する。
(5) 原子力発電所の労働者の健康診断を徹底するとともに、被ばく線量等をデータベース化するなど長期的な健康管理を行う。また、放射線の健康への影響に関する把握・評価を着実に実施する。
マル3賠償・行政サービスの維持等
(1) 「原子力損害賠償支援機構法案」及び「平成23年度原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律案」の速やかな施行を図り、避難住民や、農林水産業者、中小企業者等、厳しい状況に置かれている被害者に対して、迅速、公平かつ適切な賠償や仮払いを進める。また、事業再建を行う事業者や、風評被害に苦しむ事業者の雇用の維持を支援する。
マル4放射性物質の除去等
(1) 放射線に関する住民の不安の高まりに対応するため、放射線やその除染、子どもにも十分に配慮した放射線による健康への影響等に関する情報提供や、住民とのコミュニケーション活動を継続的に実施する。
(2) 放射性物質による大気・水・土壌・森林等の汚染を除去する必要があることから、環境修復技術の早期確立等を目指す。このため、大学、研究機関、民間企業等の協力の下、福島県に国内外の叡智を結集する開かれた研究拠点を形成する。また、国の責任において、除染に関する考え方や手法を早期に確立するとともに、地方公共団体の協力を得つつ、現場レベルでの実証や汚染土壌等の除染、下水汚泥等の適切な処理及び災害廃棄物の最終処分に必要な措置を講じる。

(2)復興対策

マル1 医療産業の拠点整備
(1) 特区制度の活用等を通じ、福島県に医療産業を集積し、世界をリードする医薬品・医療機器・医療ロボットの研究開発、製造拠点とする。
(2) 産学官連携で世界最先端の医薬品・医療機器の研究開発を実施するとともに、先端的な医療機関を整備する。
(3)政府系研究機関の関連部門等の福島県への設置等の促進
(1) 復旧・復興を進めていく観点から、政府系研究機関の関連部門等の福島県への設置等を促進する。

 ●「革新的エネルギー・環境戦略」策定に向けた中間的な整理(抜粋)

【平成23年7月29日 エネルギー・環境会議】

6.革新的エネルギー・環境戦略の実現に向けて

(1) エネルギー・環境会議は、この中間的整理を出発点として、関係省庁及び関係機関と協力して、国民各層と対話しながら、新たなエネルギーのベストミックスの姿、新たなエネルギーシステムの姿の具体化に向けて議論を本格化する。
(2) すなわち、以下の体制で中間整理の具体化を図り、年末を目途に革新的エネルギー・環境戦略の基本的方針を定める。

  • エネルギーベストミックスに関しては、本中間的な整理を踏まえ、まずはコスト等検証事項の具体化をエネルギー・環境会議の下に分科会を設けて行う。その成果を踏まえながら、エネルギー・環境会議と総合資源エネルギー調査会等関係機関が協力して議論を深める。
  • 再生可能エネルギーや省エネルギー、化石燃料のクリーン化、電力システム改革などを支える技術革新に関しては、グリーン・イノベーション戦略としてエネルギー・環境会議が検討を行う。
  • 電力システムについては、エネルギー・環境会議と総合資源エネルギー調査会等関係機関が連携して議論を進化する。
  • 原子力については、この論点整理を踏まえて、原子力担当大臣の下で具体化する。

(3)年末に策定予定の基本方針を踏まえ、来年のしかるべき時期に、エネルギー・環境会議において、新たなベストミックス(新エネルギー基本計画)、エネルギー・環境産業戦略、グリーン・イノベーション戦略からなる革新的エネルギー・環境戦略を策定する。

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研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当)

小野
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