原子力科学技術委員会 核融合研究作業部会(第31回) 議事録

1.日時

平成24年7月12日(木曜日)16時~18時

2.場所

文部科学省6階2会議室

3.議題

  1. 今後の核融合研究開発の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

小森主査、疇地委員、石塚委員、岡野委員、小川委員、尾崎委員、金子委員、笹尾委員、髙津委員、東嶋委員、平山委員、堀池委員、森委員(予定)

文部科学省

坂本研究開発戦略官、飯嶋核融合科学専門官、山田科学官、門学術調査官

5.議事録

【小森主査】  それでは、時間ですので、ただいまから第31回核融合研究作業部会を開催いたします。

 本日は、大島委員から御欠席との連絡をいただいております。

 本日は、今後の核融合研究開発の在り方について、その他について、御審議いただく予定です。

 それでは、配付資料の確認を事務局からお願いします。

【飯嶋核融合科学専門官】  お配りしております資料ですが、資料1-1、ブランケット開発(林研究主幹)、資料1-2、ブランケット開発(相良教授)、資料2-1、ダイバータ開発(鈴木研究主席)、資料2-2、ダイバータ開発(上田教授)という資料をお配りしております。あと、参考資料1、今後の核融合研究開発の在り方に関わる審議事項について、参考資料2、第10回ITER理事会の結果概要という資料をお配りしております。過不足等ありましたら、事務局までお申し出ください。

 以上です。

【小森主査】  最初の議題は、今後の核融合研究開発の在り方についてです。本日は、ブランケット開発、ダイバータ開発の2項目について、議論する予定です。各項目につきまして説明のために、JAEAの林先生、NIFSの相良先生、JAEAの鈴木先生、阪大の上田先生に、有識者としてお越しいただいております。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速、ブランケット開発につきまして、JAEAの林先生から御説明をお願いいたします。15分でお願いします。

【林研究主幹】  原子力機構の林でございます。このような場で報告させていただく機会を得まして、大変光栄に思ってございます。ありがとうございます。

 さて、ブランケット開発ということでございますが、相良先生とちょっと大枠で調整させていただきまして、私の方からは固体増殖関係、相良先生の方からは先進ブランケット関係というようなことで、分けて報告させていただく予定でございます。

 まず、ブランケット(固体増殖・水冷却方式)でございますが、1ページ目をめくっていただきまして、2ページ目でございます。構成としまして、原型炉の設計例でございますSlimCSというものの例をここに概念としてつけてございます。モジュラー型の構造でございまして、高さ1.5メートル、幅3メートル、奥行き1メートルぐらいで全個数450個と、第一壁直後から増殖材・増倍材を微小球の充填層として冷却パネルで仕切りつつ、交互に配置するような、こういう構造が想定されてございます。トリチウム増殖材としましては、主案として、リチウム・タイタネート、6濃縮をしたものでございます。中性子増倍材としては今のところ主案としてはベリライドというものを考えてございまして、構造材はF82H、冷却水として高温高圧軽水というようなものでございます。

 次のページをめくっていただきまして、ブランケットに向けた課題でございますが、これは以前にも御報告させていただいているところかとは思いますが、全体として、原型炉のブランケットにおきましては、放射線遮へい、熱エネルギーの取り出し、トリチウム燃料増殖のすべてを同時に満足する、これまでにない機器開発ということでございますので、まずはモジュール規模での実証試験を行うべくということで、モジュールの製作技術の確立、性能評価というところが重要になってまいります。材料につきましては、高耐照射性能とか、高温強度を同時に満足するようなものを実用化するということで、開発・規格化、基準及び検査を含めて、課題が挙げられてございます。そういったものをシステム統合いたしまして実規模へ適用するということで、高い安全性の確保も含めまして成立をさせていく必要がございますし、これをやる中で工学基盤の確立、高性能化ということが重要となってまいります。特に安全性に関しましては、昨今の話でもございますが、高圧水の漏えい、それに伴う過加圧や化学反応等につきまして、きちっとした考慮が必要だというふうに考えてございます。

 下の方にITERと原型炉(固体増殖・水冷却)のブランケット条件のところでの比較したものを整理してございますが、ブランケットの材料、冷却水の条件というところが大きく違っているというところでございます。もちろん、出力含めて、その辺のところもそうでございますけれども、そういうことでございます。

 次のページへ行っていただきまして、原型炉のブランケット開発の留意点として、4項目程度に整理させていただいてございます。一つには、構成材料の基礎データの拡充ということで、非照射・照射下のデータの充実、標準化というのが重要だと考えてございます。また、核融合中性子照射下での挙動評価というものが必要だろうということでございます。構造健全性につきましては、交換期間を通じて確実に健全性が保たれるということを実証することが重要でございますし、トリチウムの増殖回収につきましては、持続的な運転が可能となるようなことを実証する必要がございます。さらに、合理的な遠隔保守性とか、高い安全性の確保、規格基準の構築等につきましても非常に重要と考えてございますし、とにかく、健全性、故障の確認とか、事象管理ができるような形のシステム、こういう安全性をもとにした規格基準というようなところが重要と考えてございます。

 保守性につきましては、次のページを見てもらいますと、稼働率と、もう既に御議論いただいているところではございますけれども、密接に関連してございます。右側の方にセクター方式、左側の方に炉内保守でモジュール方式というものを比較したものをつけてございますけれども、それぞれ特質がございますが、炉内保守でございますと、保守ポートは小さくてすみますけれども、当然のことながら線量に限界がございますし、交換点数が多くて、すべてが交換できないと運転が再開できないということで、想定する評価の一例でございますけれども、2年程度のものが想定されてございます。セクターの一括方式というのは、そういう意味では高線量でも適用可能ですし、スペアセクターをうまく利用しますと交換の期間というものが短縮できる可能性がございまして、2箇月強というような評価例もございますが、全体として保守ポートが大きくなって、ホットセルというものも大型化し得るということで、それぞれの特質というものはきちっと評価する必要がございます。

 そういうことを前提としまして、次のページでございますけれども、原型炉に向けたブランケットの研究開発としましては、大きく分けて二つの方向というものを考えてございます。一つはITERのTBMの計画を活用した開発でございますし、もう一つはそれを補完して原型炉ブランケットに向かう開発というものでございます。TBMの方でございますが、これは日本のTBMとしての主概念でございます固体増殖・水冷却というもののTBMを確実に、補機設備も含めて滞りなく開発して実施していくということでございまして、主にトカマク環境での技術統合、総合的な機能確証というものを目指すものでございます。補完する原型炉ブランケット開発でございますけれども、ITER-TBMではカバーできないような、全体として広範囲で、一部は詳細なデータを含めました、中性子負荷、熱負荷、トリチウム増殖比に係るブランケット内の核反応確証試験というようなものが必要だ。ひいては、遠隔保守、PIE(照射後試験)、廃棄物処理を含めた総合的なRIの取り扱い技術を検証する。また、既存施設を有効活用しつつ、炉工学試験装置群というものを整備していくというようなことが重要と考えてございます。

 次のページにいっていただきまして、まずはTBM計画でございますけれども、上の方に年表が書いてございまして、ITERの現時点でのスケジュールを書いてございます。現時点で2012年でございまして、今年度くらいにDA(各国)とIO(ITER機構)との間でのTBMの取決というものを締結されるということを想定しますと、CDRというのは概念設計、PDRというのは予備設計、FDRというのは最終設計でございますが、こういう設計のレビューを経まして製作に取りかかり、安全性評価試験を並行してやりながら、TBMの1機につきましては初プラズマ後、2機につきましてはDD/DT放電の前といいますか、プレ・ニュークリア・シャットダウンと言われているところで取りつける機会がございますので、そういったところに合わせて製作をし、試験をし、全体としてブロードアプローチでのSA等の協力も含めまして、計画を立ててきてございます。

 次のページに、TBMに提案されている主なブランケット概念というものを整理してございます。左側が固体ブランケット増殖方式、右側が液体の増殖方式でございまして、固体の方式の左側は日本案でございますし、固体の右側の方は欧州案をかいてございます。そのほかに、中国、韓国がこの方式で参加をするということになってございます。液体増殖方式は、左側の方は、HCLLと書いてありますが、欧州案でございまして、右側の方は、ちょっと資料が古くて申しわけないのですが、これはアメリカ案でございまして、今現在はアメリカ案というのは最初の6機の中には入らないということでございまして、同等といいますか、若干違うのですけれども、インドがこの方式で参加をするということになってございます。

 次のページに移っていただきまして、今のはTBM関係でございましたが、それを補完するような研究開発についてでございます。今のようなTBMの計画を通じまして全体的な統合試験をするとともに、それをフィードバックかけながら、1番の項目でございますが、原型炉ブランケットの概念というのを構築していく必要がございます。それに向けて、データなり、いろんな幅広い、補完するデータを集める意味からも大強度中性子源によるブランケット等の核融合炉内機器の核的な特性評価というようなものをとっていく必要があると考えてございまして、体積発熱、ヘリウム効果、トリチウムの生産量評価の高度化というようなところを含めまして、データベースを構築する必要があると考えてございます。そういうことをやりながら、ITERで照射したTBMの照射後試験というようなものができるようなもの、ひいては、そういうものの解体技術、廃棄物低減、安全閉じ込めというようなところを中心に整備をする必要がございます。稼働率とも連携すると先ほど申し上げましたけれども、ブランケットの交換保守概念というもののきちっとした確立といいますか、製作性及び着脱性とか、輸送性とか、大型モジュールですので、その辺のところをきちっとする必要がございますし、総合的な安全確保の概念の検証が重要というふうに考えてございます。

 次のページを見ていただきますと、それを一つの形にするといいますか、計画にするといったようなものを一つ、提案として整理してございます。これは、核融合フロンティアと呼んでございますが、BA(ブロードアプローチ)の成果及び資源を有効活用して円滑に原型炉の工学R&Dに移行するための計画ということでございます。2030年の半ばくらいまでにITER Q>10 Long Pulse程度のものが実証されるとしますと、そこから原型炉の建設という方向に移行でき得る措置ができるというふうに考えてございます。それに向けて、原型炉の概念を構築し、工学R&Dを実施するということで、中ほどに書いてございますブランケット開発というのはTBMを中心とした開発でございますが、それに並行してブランケットの工学試験施設、ブランケット体系での複合環境の照射試験等々、その辺のところをこの核融合フロンティア計画の中でつないで、全体としてスムーズに原型炉工学R&Dに移行したいというような整理でございます。

 次のページに、BAの資源を最大限有効活用するというような観点で考えたときの一つの案でございます。これは、今の六ヶ所村での施設の、特に中性子源につきましては、IFMIF/EVEDAのインフラを有効利用するというようなイメージでございます。1番と書いてございますのは、先ほどTBMの開発で安全確証試験というようなところの話をしましたけれども、そういった展開の部分。2番と書いてありますのは、その補完をするような意味で、原型炉のブランケット複合RI試験装置群というようなイメージでございます。

 最終的に、最後のページでございますが、まとめさせていただきますと、原型炉のブランケット開発におきましては、ITERのTBM計画を着実に進めて最大限利用するというような方向が重要と考えてございますし、ブランケット技術という観点では、原型炉の設計概念構築のために、TBMと並行して原型炉模擬環境でのモックアップ試験というものが必要だろうというふうに考えてございます。可能な限り既存施設を活用した、例えば核融合フロンティア計画などの炉工学試験装置群の整備が必要と考えてございまして、その推進には、もちろん大学、産業界を含めた相互連携が必要不可欠だと考えてございますし、遠隔保守性との関係では、稼働率は密接に関係してございますので、そういった部分も含めて概念整備と検証といったものが必要だというふうに考えてございます。

 ちょっと過ぎましたかもしれませんが、以上でございます。

【小森主査】  ありがとうございました。

 それでは、続きまして、相良先生からお願いします。やはり15分でお願いします。

【相良教授】  では、引き続きまして、ブランケット開発(ヘリカル炉)というタイトルをいただいていますけれども、主に先進ブランケットにつきまして、液体ブランケットを中心にして、お話しさせていただきます。

 今、原子力機構の林様の方からは今回の具体的な検討事例の2番目を中心にお話しされたわけでございますが、私の方は、1番目の原型炉の稼働率と遠隔保守性との関係、それから3番目の先進的なブランケット開発に対する考え方を中心に、お話しさせていただきたいと思います。

 まず、1枚めくっていただきまして、原型炉の稼働率と遠隔保守性との関係、これで特に留意すべきことということでございますが、保守、安全も含めまして、これについて詳細はまた別途議論の場があるとお聞きしておりますので、ざっくりしたお話をさせていただきますが、一つは、いわゆるRAMIといいますか、信頼性、稼働率、保守性、検査という、これを評価基準とするというのが原則であろうと思っております。優先順位を考える必要がありますけれども、設計という意味でいきますと、保守性という点で設計を優先することになろうかと思います。

 2番目に、事故事象での安全性の確保ということになりますけれども、これは、よく御存じかと思いますが、いわゆるIn-vessel LOCA、炉外のEX-vessel LOCA、それから、LOFA、LOPA、LOVAといったようなことで、これはレベルの順ではございませんけれども、区別した事象が基本的に考えられておりますが、設計という点では、固有安全を最大限取り入れる設計ということになろうかと思います。

 3番目は、これらの各種の設計・評価のための計算コードを開発していくわけでございますけれども、いわゆるV&V、検証と妥当性というものを確認できる体制を整えていくことが大事であろうかと。そのためには大学等の学術基盤の育成・強化ということになりますね。それからもう一つは、国際連携も大事でございますけれども、初めから国産の世界標準を視野に入れて進めていくという点は非常に重要かと考えてございます。

 1枚めくっていただきまして、次に稼働率と遠隔保守の関係についての基本的な考え方はいかがであるかという問いがございますが、稼働率はいわゆる発電単価を下げるのに必要でございます。これは、反比例の関係にございますので、非常に大事なものでございます。稼働率を上げるためには、当然のことながら、平均稼働時間(MTBF)というのを増やす必要がある。もう一つは、逆に交換の平均時間を減らすということになります。稼働率ですけれども、商用炉の場合は、いわゆる計画保守ということがほとんどになりますが、大体80%以上。原型炉の場合は、一応それを見通せるためには50%を一つの目標とするというのが、現状でございます。3番目に、核融合では特に炉内機器のユニット数が非常に多いので、平均稼働時間を増やすためには、機器の材料そのものの長寿命化というのが必須になってございます。これは計画保守という点でも基本的な概念になります。もう一つは、ユニット1個当たりの信頼度を上げていくということです。これは計画外保守を減らすということになります。

 1枚めくっていただきまして、信頼性(長寿命化)でございますが、この要求というのは非常に厳しいものがございまして、1例でございますけれども、これはDEMO炉で稼働率30%を実現するのに必要な各要素の計算例というのが一つございまして、この表で言いますと、真ん中に青い字で先ほどのMTBF(平均稼働時間)、これはイヤーの単位で書いてございますけれども、その隣に保守のための時間、これはアワーで書いてございますが、例えば、真ん中の黄色いところのブランケットを見ていただきますと、平均稼働時間は11年必要で、交換時間に最大で800時間から100時間ということになりまして、これはブランケットの要求という点でいきますと稼働11年で交換に2週間くらいという話になるわけですけれども、実はこれに対する現状での予想というのがございまして、平均稼働時間としてはせいぜいアワーから日くらいという予想に対して、交換に対して数箇月かかるというような予想がございまして、この間に非常に大きなギャップがございます。

 ということで、具体的な方策としまして、1枚めくっていただきまして、先ほど申しましたけれども、中性子壁負荷の低減による炉内材料の長寿命化というのが極めて基本的な必須条件になってございます。一例を挙げますが、ヘリカル炉では、その特徴を生かしまして、中性子壁負荷を2メガワット/平米以下にする設計指針で進めております。これはまた後の方でも述べますけれども、例えば10年運転すると200dpaというような数になるわけでございます。これは、絵の中では黄色いところで少し書いてございますけれども、ヘリカル炉、非常に大型になりますが、逆に内面積が多いということで、壁負荷を減らすことによって長寿命化ができるということになります。

 1枚めくっていただきまして、逆に交換時間を減らすということはもう一方で非常に大事になってくるわけでございますが、もちろん放射線の環境ですので、長寿命化にしても計画外保守というのは避けられないことになりますので、結局、遠隔保守の機器・仕組みが必要になります。この場合はもちろん、定期交換するものと、しないものとの区別というのが、非常に大事になってまいります。もう一つは、いわゆる超伝導マグネットの昇温・冷却には月単位の時間がかかりますので、これの停止・再稼働の問題、それから交換によるいわゆる2次的なリスクをふやさない設計であるということも大事でございまして、再設置での精度の管理という、いわゆる非常に大きな電磁力、あるいは熱負荷がございますので、精度の管理というのは非常に大事なものでございまして、そのために要する時間ということがございますので、結局は炉内機器の分割・引き出しというのが炉設計の骨格を決めることになります。

 1枚めくっていただきまして、次の事例で言いますと、ヘリカルを中心にまとめてございますが、いわゆるモジュラー型のヘリカルでございましても、以前はコイルを移動する考えがございましたけれども、最近は、ここで示している三つはドイツ、日本、アメリカの代表的な設計でございますが、おおむねポートから引き出して交換するというのが主流になってございます。特にLHD型は、大きなポートというのが非常に特徴でございます。

 1枚めくっていただきまして、次は2番目の原型炉用ブランケット開発に対する基本姿勢ということでございますが、これにつきましては先ほど原子力機構の林様の方から詳しいお話がございましたので、ここでは、TBMで足りない点についての今後の進め方につきまして、実はこれは2010年にこの作業部会からの依頼ということで回答をブランケット材料でつくったものがございまして、これは核融合ネットワークのホームページにもございますけれども、この図でいきますと、上のところに、ITER建設中、運転開始等々、ITERのスケジュールがございます。逆に一番下に、原型炉に向けたスケジュールがございます。この間に色分けでどういうふうに進めていくのかということを書いてございますが、これをまとめますと、右側にまとめて書きましたが、(A)のいわゆるITER・BAを利用するというのが、まず基礎でございます。同時に、(B)で、材料開発、検査技術等をITERの試験と並行して進めると。次に、原型炉開始のための要求性能とブランケット概念の選定を受けた後に、(C)の、薄い緑でございますけれども、実規模適応性試験等を開始しまして、原型炉の建設準備に発展させるということでございます。一方、高機能、いわゆる先進ブランケットについてはどうするのかということでございますけれども、(D)の、青いところでございますが、高機能ブランケットと工学基盤は同時に全体に並行して進めると。もう一つは、原型炉が立ち上がった後には、これを利用しまして高機能化を図る。そのためには、いわゆる高機能ブランケットのモジュール、TBMというのを構想する必要があるということでございます。

 1枚めくっていただきまして、先進的なブランケット開発に対する考え方、3番目の課題に移りますけれども、歴史的には代表的な液体コンセプトというのは大きく三つございまして、左上のピンク色、これはリチウム鉛系でございます。それから、右側は液体リチウム金属ブランケット、下の黄色いところが溶融塩です。これは金属ではなくて溶融塩でございますが、フッ素とリチウムとベリリウムの化合物の溶融塩ブランケットという、三つの概念がございます。

 1枚めくっていただきまして、これらの工学設計に向けたR&Dの厳選でございますが、液体増殖ブランケットの魅力は、いわゆる1次系10気圧程度の比較的低い運転圧力であるということと、それから、ここの図の右下にガスタービンの場合の熱効率をかいてございますけれども、約600℃以上で運転できれば40%以上の高い熱効率になるということで、より高い安全性とより高い経済性ということになります。課題ですけれども、キーとなるR&D項目としましては、腐食機構の解明と抑制、材料の高温強度の向上、ヘリウム効果のデータベース、それから液体/材料の新しい組み合わせ、これは、材料との組み合わせはある程度限定されますけれども、それにとらわれない、新しい組み合わせも考えていく必要があるだろうということでございます。この図の左の一番下に材料寿命ということが書いてございますけれども、いわゆる20というのは、2メガワットで10年、あるいは1メガワットで20年、等々で200dpaということになりまして、これに対して出口温度は5~600℃を選んだときにどのくらいの寿命があるかということになるわけでございますが、この場合の液体増殖材と構造材との組み合わせというのは、流動場の非平衡環境での物理・化学的腐食に主に依存します。その理由は、腐食の主なドライビングフォースというのは、高磁場下の電磁流体効果(MHD)と流体の入り口・出口の温度勾配によるものでございます。それから、材料の上限温度に依存しまして、これは熱クリープあるいはヘリウム効果によって主に決まるということでございます。

 1枚めくっていただきまして、各種の液体ブランケット材とシステムの比較の表でございますけれども、ピンクで書いたのが長所でございまして、それに対してブルーの課題がございます。それぞれを克服する研究が進められております。材料の物性値についての課題については変えようがございませんけれども、上から見ていきますと、例えば腐食に関してはすべてに共通するものでございまして、自然対流ループを使った研究等々が行われてございます。それから、熱伝達というものでは、液体金属の場合は非常に熱伝導がいいのですが、溶融塩の場合はそれに対する伝熱促進の研究が必要であるというようなことになります。あるいは、液体金属の場合はMHD効果がございますので、絶縁被覆をする必要がある。あるいは、トリチウムに関しましてはそれぞれ、溶解度が高いリチウム、低いリチウム鉛、あるいは溶融塩ということがございまして、トリチウムの透過抑制のための被覆の研究等々が非常に大事でございまして、各大学で進められているところでございます。

 1枚めくっていただきまして、最後になりますが、今後の進め方でございますけれども、右上に小さな図でかいてございますが、2022年あたりでいわゆるチェック・アンド・レビューを考えた場合に、下に一つの表として、技術成熟度評価、いわゆるTRL(Technology Readiness Levels)というのがございます。これはNASAが考案した表でございますけれども、これでいきますと、レベル6から7に移るところでチェック・アンド・レビューが必要ということになります。現状で言いますとレベル3から5の間にございますので、今後、そのチェック・アンド・レビューまでに何が必要かということをまとめますと、1番として要素データベースの拡充、2番目として流動装置による非平衡環境での単独あるいは複合の実証研究が必要になる。特にここが液体関係固有の課題になります。3番目としましては、実規模モックアップ、あるいは流動ループによる非照射の総合実証が必要になります。大事なことは4番目でございまして、いわゆる中性子照射環境での流動ループ試験というのが実は非常に大事でございまして、核変換が競合する環境での流動試験というのが非常に大事になっております。例えば、IFMIFの中フラックス照射領域あるいは原子炉等の活用を考えるというようなことになります。この辺は材料で別途議論されるかと思いますので、ここでは詳細は割愛いたしますけれども、この表でいきますと、薄いグリーンで示しましたように、ITERあるいは原型炉利用の高機能ブランケット(TBM)を構想する必要がございます。

 以上です。

【小森主査】  ありがとうございました。

 それでは、ただいま二つ御説明いただきましたけれども、この二つにつきまして、御質問、御意見がございましたら、お願いいたします。

 小川先生。

【小川委員】   多分、林さんへの質問になると思いますけれども、ブランケットの安全性という観点でまず1点目の質問を致します。安全性が非常に重要であるということで、安全性に配慮したブランケットを考慮すべきだという視点が強調されている点は、非常に良いことだと思います。一方、相良先生の方で、コードのV&Vが指摘されていますが、その通り非常に重要であると思います。なおV&Vを進めるに当たって、やはりそのもとになる実験データをとらなくてはなりません。そこで林さんに質問ですが、V&Vの基礎データ取得のための研究を、核融合フロンティアでどう組み込もうとされているのか教えていただけないでしょうか。また、相良先生の方も、先進ブランケットにおいてV&Vに関する実験研究をどう考えていらっしゃるか、教えていただければと思います。

 もう1点は、ちょっとマイナーなことですけれども、ITERのTBMで、韓国がホスト国になる可能性があるという話を聞いたことがありますが、その辺の現状を含めて、海外のブランケット開発の最近の進捗状況を御存じの範囲で教えていただければと思います。その2点です。

【林研究主幹】  1点目の安全性の話でございますけれども、ここで紹介をしました、例えば7ページ目のところのTBM計画というものの中に、安全性評価試験というものを実施することになってございます。これは、もともとTBMをITERに取りつけて問題がないということをある程度きちっと報告書として出して許可をもらう必要がございますので、そのための試験でございますけれども、その中で、基本的には構造の健全性ですとか、ペブルの充てん材のモックアップなどをつくりまして、電磁力の荷重試験、全体の構造も含めた試験も考えてございますし、漏水関係の試験、要するに300℃・15メガパスカル程度の高温水関係での耐圧評価ですとか、そういうペブルと水接触による圧力挙動の評価ですとか、そういったものも念頭に置いて整理をするというふうに考えてございます。

【小川委員】  この安全性評価試験に関する私の質問の意図は、事故が起こらないような試験というのではなくて、事故が起こったときの評価試験のことです。昔のICEみたいな試験やLOVAの試験とかいうような、事故が起こった後に関する試験をやられるのかどうかということです。

【林研究主幹】  現時点ではBAの中でそういう試験をやることを念頭に置いてはおりますが、特に、もうちょっと熱負荷的に厳しいダイバータとか、その辺のところを中心に、最初にやる予定にしてございます。あくまでもこのTBMの計画の中では、今言った漏水試験のような形のものは、小川先生がおっしゃっているような試験に近いもののデータとして整備をしていくつもりでございます。

 で、韓国のTBMといいますか、その辺のところでございますけれども、次の8ページ目のところで分類すると、韓国が現時点で提案しているのは固体増殖のヘリウム冷却の方式でございまして、ここには欧州のものしか書いてございませんが、この流れのものとして、前回のTBMPCで正式に6番目のモジュールとして、そういう意味では日本の隣に韓国のモジュールが来るということで、状況を聞いてございます。

【小森主査】  多分、小川先生の御質問は、通常の試験の話ではなくて、事故が起きたときにどの規模になるのか、そういうところまで検討されているのかということだと思います。最近、あり得ないことということがよく言われていますけれども、反応するような事故が起きたとき、どのくらいの規模になって、その安全も検討しなければいけないのではないかというご質問かなと思ったのですが、違いますか。

【小川委員】  昔、私が知っているのは、ICEの実験とか、LOVAが起こったときにダストが逆流する実験などを行い、それを踏まえたコードとのバリデーションをする必要があると思いますが、そのための実験をやられる予定はないのでしょうか。

【林研究主幹】  基本的には、BAを含めて、その辺の原型炉に向けた、いろんな安全評価といいますか、そういうものがされると認識してございまして、そこから出てきたいろんな、ここの部分を実験できちっと確証する必要があるとかっていうようなところのイタレーションも含めまして整理をして、当然やるべきことはやるということだと思います。

【髙津委員】  ちょっと補足させていただいて、よろしいですか。

【小川委員】  はい。

【髙津委員】  もう少し具体的に補足させていただきますと、私がやっていたときと変わってないと思えば、この安全性評価試験で最も具体的な例は、TBMの中で水が漏れたときに、モジュールの中で圧力がどう上がって、どう伝播して、モジュール自体の箱に破壊を起こさないかとか、そういうことを炉外で模擬して試験しようという計画はあったと思いますし、それから、ベリリウムが高温になっている状態にして水と反応させて、どの程度の水素が出てくるのか、化学反応を起こすのかというデータをとって、評価につなげていくと。記憶にあるのは、例えばそんな二つの実験はこの安全性評価試験の中でやる予定だったというふうに記憶しております。

【小川委員】  ある意味で、事故シナリオを踏まえた試験をやるわけですね。

【髙津委員】  はい。先ほど相良先生が出された事故のLOCAとか、ああいうものに対応した実験というのをやろうと。

【小川委員】  分かりました。

【小森主査】  ほかにございますか。どうぞ。

【相良教授】  V&Vについて、小川先生の質問でございますが、とにかくこれは非常に大事な話で、我々のコミュニティーの中でも、実はこういう議論は最近になって出てきている話でございます。そういう意識はあったのですけど、V&Vという言葉できちっと議論され始めたのはつい最近ではないかと思っておりまして、それで特にここを挙げさせていただいたわけでございます。例えば、今、事故の話がございましたけれども、それ以前にも、まずはいろいろな実験データそのものから炉への外挿をどうするのだというところでモデル化して外挿していくということになるわけですけれども、例えば11ページを見ていただきますと、いろいろな課題について実験しているわけでございますが、例えば腐食一つをとってみても、これはもちろんLOVA等々に発展する大事な部分でございますけれども、これも実験をどうモデルで外挿していくのかという点がまだ十分ではないというふうに考えています。

 他方、伝熱流動関係は、流体のコミュニティーはかなり昔からV&Vを意識して進めてきていますので、いわゆる無次元化した形で一般化するという手法を使って、かなり立派なベリフィケーションをすると。そのバリデーションをどうするのかというのは、今まさに始まっているところであろうかと思います。

 もう一つ、ここで強調したいのは、いわゆる中性子環境下でのベリフィケーションをどう実験でやって、それをどうバリデーションしていくかという点は、ある意味ほとんど手がついてない状況かなと思っていまして、それは、先ほど私の方でも強調しましたけれども、中性子環境下での実験をどうしていくかというのをこれからきちっと考えていく必要があるだろうというふうに考えています。

【小川委員】  ぜひ、バリデーションの実験について、考慮していただければと思います。

【小森主査】  ほかに、御質問、御意見等ございますか。どうぞ。

【金子委員】  ロードマップの議論をしてきまして、やはりタイムスケジュールが入った中での議論というのが必要になってくると思います。現状でいきますと、林さんの方から出された資料の10ページにそれなりのシナリオ等がありますけれども、これを見ると、一番下の原型炉の運転までのロードマップにブランケットは間に合うのだろうかと、そういう心配が出てきます。例えば、先ほど相良先生がおっしゃった中性子環境の試験というのは全くここではできないような形になっていて、環境照射試験の中に若干低い段階での試験が入ってくるかと思いますが、本当にブランケット自身をきちんと設計しようと思うと、やはりIFMIF規模のものが要るのではないかと思います。それを逆に何らかの形でシミュレーションできるとか、そういった具体的なシナリオをこういうところに入れていかないといけません。相良先生が2年前にやられたという、ロードマップにしても、ちょっと概念的なものになっていて、横軸にタイムスケールは入っておりません。こういったものをこれからどのように日本の中でオーガナイズしていくかというのがこの作業部会での議論になると思いますけれども、少なくとも中性子負荷照射試験というのをどういう形でやるのか。例えば、原子炉を使ってというお話がありましたけど、原発ゼロになったら日本の中ではできなくなるのかとか、その辺は深刻な問題になるかもしれず、そういうことも含めながら、早急にこういったシナリオをつくる必要があるのかなと思っております。

 具体的な提案になっておらず単なる感想で、すみません。

【髙津委員】  今の金子先生の御質問ですけど、ちょっと私が誤解しているかもしれないのですが、第3段階の核融合推進方策とブランケットの開発の進め方によれば、ITERでTBM試験をやって中性子環境下でのブランケットの機能を試験する。それで、もう一方、材料については、IFMIFなりで高い照射のデータをとって、二つあわせて原型炉に行くというシナリオが書かれているので、このとおり行けば、ここはまさしくそれがタイムリーにできる案になっているのですけど……。

【金子委員】  いいえ、そうなってないのですね。IFMIFの方は全然ですから。

【髙津委員】  IFMIFの方ですね、おっしゃっているのは。ブランケットじゃなくて、材料の。

【金子委員】  ええ。

【髙津委員】  分かりました。

【金子委員】  それが合致しないと、ブランケットとして成立しないと思うので。

【髙津委員】  分かりました。

【笹尾委員】  今の点で、もう一方、ITERのQ>10 Long Pulseの実験をしている真っ最中に原型炉建設段階に入っているというので、前者の方もやはり時間的な整合性がとれてないような。これは私の誤解なのでしょうか。

【髙津委員】  ITERでは、2030年過ぎあたりにおりてきているので、DTバーニングのスタートからこの間の期間で最低限のブランケットのDT反応下での特性は評価できる。寿命はできないにしても。そういう意味で、ここで第3段階の推進方策で言われている一つの判断ポイントは、ブランケットの特性については得られるでしょうということでこの図はかかれているというふうに理解しています。

【笹尾委員】  多分そうだと思うのですけれども、でも、Q>10 Long Pulseの実験はそれからの10年間でやるわけですね。ここで出てきたアウトプットはどのように反映されるのでしょうか。

【髙津委員】  評価の高度化というのにつなげていく考えだと思います。基本的な特性というものは、DT運転をやって、1,000秒程度のプラズマパルスがある程度運転が続けば、最低限の、設計は正しかった、評価コードは正しかったということは評価できるので、その評価が2040年前までずっと続く運転では高度化はされていくと思うのですけど、判断に足りるデータは2030年過ぎあたりで出てくるという考えです。

【笹尾委員】  そうですか。

【髙津委員】  それから、金子先生の御質問は、IFMIFの方がレディじゃないのではないかということでこの案が出てきているのですね、このフロンティアの案が。IFMIFの建設というのが、どこにもそういう話が出てこない、なかなか難しいということで、IFMIF EVEDAの成果物を使って少し加速器をプラスすれば、ヘリウムの生成が十分意味のある値までの中性子がつくれるということで、最低限のヘリウムdpaの効果を見越した材料の照射データがとれるようにしようというのが、このブランケット体系複合環境照射試験というもののねらいなのですね。だから、本格的なIFMIFの建設は残念だけどないので、EVEDAの成果物を使って、少しプラスアルファして、30から50dpaぐらいまでのヘリウムの効果のデータがこの赤い矢印のところまでにとれるようにしようということで、こんな提案を実は現場では考えているところなのです。ヨーロッパとは、担当者とは話をみんな進めて、林さんなんかが中心になって進めているのですけど、金子先生がおっしゃるように、IFMIFの姿が全然見えないので、国際協力で建設・試験というのは、今、どこにも話がないので、少しそれに先立って、そういったEVEDAの成果物を使って材料のデータをとれるようにしようという検討を進めているのが、フロンティアの中心をなすものなのです。

【金子委員】  それはお聞きしています。

【小森主査】  ほかにございますか。

【山田科学官】  今の髙津委員の御説明ですが、もともとの平成17年の推進方策では、クリティカルな値ですと80dpaという数字が出ていて、今回、フロンティアでお考えなのは30dpaというお話をなされたのですが、ヘリウムでは10ですか、それの、要するにダウンスペックすることの妥当性といいますか、考え方をちょっと御説明いただきたい。

【髙津委員】  まだ、30から50というのが現場で考えている範囲なので、どこまでできるかというのは、検討は不十分です。目標は80dpaというのが定められているので、そこまで持っていけるような装置にしたいというのは、検討はしておりますけれども、まだ未定です。

【山田科学官】  そのときに、これ以上あればこういうサイエンティフィックとかエンジニアリング的に大事なことがわかるとか、そういう目安のポイントがあると思うんですけれども。

【髙津委員】  材料の専門家に聞いていただいた方が良いと思うのですけど、ややグレーなところがもちろんあるのだろうというふうに私は理解していまして、推進方策では大体のトレンドが分かるのが80だということで80dpaが定められているので、なるべくそこに近いような照射ができるような設備にしていきたいというのは思っているのですけれども、個人的な印象ではややグレーな数値なので、幅を含めて考えても、全く意味のない装置になるということはないというふうに思っています。

【林研究主幹】  若干補足しますと、基本的に、材料のところで議論されると思いますけれども、80dpaの照射データというか、例えば低放射化材の照射データというのは原子炉環境ではとろうということで整理はしてございます。一方で、何が違うか、要するにヘリウム生成との関係だとか、そういった核融合炉特有の部分の効果が発現するのはどの程度かというところを、どちらかというと20とか、30とか、そういったところで見きわめられるのではないか。それとあわせまして、要するに原子炉照射の部分とあわせれば、ある程度この辺のところで判断ができるのではないかというようなニュアンスで今は考えてございます。もちろん、髙津委員の話も含めて、どこまでいけるかというのはフロンティアでの考え方にもよりますけれども。

【小森主査】  先ほどTBMの結果をさらに生かしてとおっしゃっていたので、将来的にも固体増殖・水冷却でJAEAさんはいきたいということかと思いますが、TBMの各極の成果や先ほどの安全性も検討されて、どこかで別なものに変えていくことは考えていらっしゃらないのですか。

【髙津委員】  私が答えるのがいいのか、どうか分かりませんけど、以前議論があったように、一定の経済性を見込んだ原型炉とか核融合炉というと、我々の現場の判断では水しかないだろうと。だから、水を主案にして、今やっているのですね。ところが、安全性とか、相良先生から御紹介あったような固有の安全性とか、いろいろ問題を考えると、ヘリウム冷却の方がやはり魅力があるのですね。ところが、ヘリウム冷却は、構造材料が高い温度で耐える材料でないと、全然魅力がない、熱効率の非常に低いブランケットにしかならないので、ありていの言い方をすれば、我々はSiC/SiCでヘリウム冷却の固体増殖ブランケットが究極の目標で、その開発は全くやるつもりであるし、水冷却・固体増殖の先にはあるというふうに思っているのですけれども、SiC/SiCの開発にかかっているので、今、それをTBMに構造材として持ち込むのは難しいところがあるので、身近なターゲットとして低放射化フェライト鋼で水というのを置いているというのが率直なところだと思います。

【小森主査】  もちろん、TBMは今の方式でないと間に合わないと思いますから、それはそうだと思います。ありがとうございました。

【東嶋委員】  ちょっとよろしいですか。

【小森主査】  どうぞ。

【東嶋委員】  全然、研究の中身と関係ないお話なのですけど、1点だけ。

 林先生の資料の11ページで核融合フロンティア研究開発施設群というのを御紹介いただいたのですけれども、先生方のお話の中で安全性ということに関して、例えば事故シナリオを踏まえていろいろデータをとられるというようなことがあって、それも一つ、国民の理解というか、受け入れのために必要なことだと思っているのですが、このくらいにたくさんさまざまな試験棟や実験棟ができてきていますので、現状、一般の国民が核融合の研究がどのくらい進んでいるのかというのを知りたいときに、多分、見に行く施設は核融合研が一番分かりやすいのかとも思いますが、あとJAEAさんもありますが、六ヶ所村に実際に見に行って、例えばモックアップなんかで見られるようなものがあるのか、あるいは研究施設の公開などができるような施設があるのか、そういったことも少し考えていっていただけるとありがたいなと思うのですが。

【林研究主幹】  今既に六ヶ所村の施設でブロードアプローチの研究開発は日欧で進めてございまして、この、書いてないというか、番号の打ってない部分で、そのまま斜線でかいてある例えば原型炉R&D棟とか、ほかの部分のところは既存の施設でございます。ですから、基本的に先ほどから話が出ていますように、IFMIFのためのEVEDAという工学の実証試験棟などもございますので、まだ実は欧州との関係で物がそろってない部分はございますけれども、日本側の整備分といいますか、そういったものというのは、今、現時点でも見れるというか、この辺までやる予定だというようなところは、公開されるといいますか、施設公開もしてございます、定期的に。

【小森主査】  ほかにございますか、何か。

【山田科学官】  東嶋委員が来られているのでちょっとお伺いしたいのですけれども、ITERのテストブランケットモジュールで水冷却をするというのは日本だけでありまして、ほかの極は全部違うのですよ。水冷却を使うと何が違うかというと、スチームができて発電ができるのです。日本のブランケットだけ発電が計画に入っているのですが、そういったことについて何か、東嶋さんの立場からどういうことを感じられますかね。

【東嶋委員】  ごめんなさい、分かりません。

【山田科学官】  ほかのブランケットは発電をしないのですよ。日本のブランケットだけ、発電するのです。

【小森主査】  ITERはたしか50万キロワットの熱出力を出しますが、それは熱出力だけなのですね。ですが、それで電気がつくことはありませんが、日本のように水冷却にすると蒸気ができますから、それでタービンを回して発電すると、よく分かりませんが、豆球くらいつくということだと思います。

【髙津委員】  0.何メガワットくらいまでいくはずですね。

【小森主査】  そうですか。

【東嶋委員】  それをどう思うか?

【山田科学官】  いわゆる一般的なインパクト、一般の方々、要するにステークホルダーの方々へのインパクトとして、いかがなものですかねと。

【東嶋委員】  それは、福島の事故後でも、私が例えば各地の商工会議所さんとか市町村とお話させていただくときに、原子力、今の核分裂の方にはこういったリスクがあったと。それはそれとして、核融合の方での発電はどうなのでしょうかというのはすごく聞かれますので、すごく関心があるし、もし日本だけそういった発電に対して一生懸命やっているということだったら、もちろん皆さんの関心は高いのではないかと思いますので、私自身は、核融合で発電するということがだんだん近づいているということを広くお知らせしていく方が良いとは考えています。そのために、今、現実に進んできている施設をもうちょっと利用して、理解を深めるために使っていくという方向でやっていかれたらいいのではないかと、先ほど発言させていただきました。

 以上です。

【小森主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、次に移らせていただきます。続きまして、ダイバータ開発について、まずJAEAの鈴木先生からお願いします。15分でお願いします。

【鈴木研究主席】  原子力機構の鈴木です。本日は、私と阪大の上田先生の方から、ダイバータ開発ということで説明させていただきます。

 まずは、1枚めくっていただきますと、事務局の方から今回いただきました検討の観点というものが五つほど書いてございまして、私の説明では、機器開発、構造設計、システム試験、遠隔保守という視点から、この中の、(2)のダイバータ材・冷却材の選定、それから、(4)のダイバータシステム試験、(5)の遠隔保守、そういうところをメインに説明させていただきたいと思います。

 では、1枚めくっていただきまして、3ページ目になりますけれども、原型炉ダイバータ実現のための課題といたしまして、主に物理的な課題と工学的な課題がここに書いてございます。左側が物理的な課題の方でありまして、ダイバータに関しましては、青い四角で囲われていますけれども、周辺プラズマ制御研究ということで、炉の中に閉じ込められております核燃焼プラズマを維持し、また、ダイバータの熱流制御を同時に両立するような形で維持しなくてはいけない。具体的には、ダイバータ熱流制御というものに関しては、周辺プラズマ放射冷却ということ、そして、放射冷却を維持可能な非接触プラズマを安定的に形成するということ、それから、非定常現象でありますディスラプションあるいはELMを抑制あるいは緩和するということ、これらを両立して核燃焼プラズマを維持しなくてはいけない。さらには、熱流制御を行いつつ、プラズマから発生してきますヘリウム――灰ですね。それを排気するというのもまた、両立しなくてはいけないということになります。

 一方で、右側の方が工学的な課題になっておりますけれども、プラズマ対向機器(PFC)開発研究ということですが、これは除熱性能の達成と長期健全性を確保するということがメインの課題となっております。具体的には、耐照射材料・構造を開発する。健全性の観点から、それらを開発するということ。そして、耐損耗・耐損傷PFM、これはプラズマ対向材料ですけれども、それらを開発するということ。これらを連携して行うことによって、当然、技術的な成立性が第一番に来るわけですけれども、技術的な成立性を持った原型炉の概念を構築し、さらに、安全性、経済性まで考えて初めて、原型炉のダイバータという形ができ上がってくるということをここでは説明しております。

 次のページを見ていただきますと、多くの先生方はダイバータの構造はよく御存じかと思いますけれども、非常に模式的なダイバータの機器の構成をここに書いてございます。左側の図の方でプラズマ対向材料と書いてありますが、赤く塗られた部分、プラズマ対向面、それから熱伝達媒体、ダイバータの表面をコーティングするようなことも考えて一応ここでは色分けしてございますけれども、この部分をプラズマ対向材料。このプラズマ対向材料は、黄緑色の部分の接合材料というものを介して、冷却管あるいは冷却構造といったものに接合されていく。その冷却管の中を冷却材が流れているというのが、ダイバータの非常に簡単な構成であります。このプラズマ対向面、赤く塗られたところには、プラズマからの粒子負荷、あるいは熱負荷というものが来ますし、プラズマから発生します中性子というものは、このプラズマ対向面、あるいは熱伝達媒体を通り抜けて、最終的には冷却管、冷却材の方まで到達することになります。ここのプラズマ対向面で要求されていますのは、損耗が少ない材料であることと、低プラズマ照射損傷ということが求められる。さらに、熱伝達媒体、あるいは、接合材料、冷却管といったものには、低中性子照射影響が求められますし、また、機能的に高熱伝導率、それから高温強度というものを求められます。冷却管の方には、圧力バウンダリーを構成するということもありまして、さらに高い強度(耐冷却材圧力)、それから、冷却材と接することによって腐食という問題が生じますので、耐食性というものも求められる。さらに、主に問題となるのはトリチウムですけれども、ガス透過の低い材料であるということも冷却管には求められるということになります。また、冷却管と冷却材が接していますところに高熱伝達構造と書いてありますけれども、後で説明いたしますが、除熱性能を上げるための工夫のようなものが冷却管にはなされるという、そういう構成でダイバータは成り立っております。

 次のページに、これまで検討を行っております原型炉ダイバータの概念構造というものを示してあります。これは、先ほど林先生の方からもありました、原子力機構の方で設計検討を行っておりますSlimCS、左下の図になりますけれども、そこのダイバータのイメージ図をかいたものであります。真ん中の図はダイバータターゲットと書いてあるイメージ図でありまして、表面をタングステン、構造材料をフェライト系の材料にしたような構造となっております。左側の方に、アーマ材はタングステン、冷却管構造材、それから支持構造材というものに低放射化フェライト鋼(F82H)というものを採用した構造となっており、冷却水としましては、高温水、これは4メガパスカル・200℃で、なるべく高温としたいということもあるのですけれども、そのような形の冷却水を使うということを想定したターゲットとなっております。一番右側に、ダイバータの構造を、切断した断面のようなものがかいてありますけれども、その冷却管の中に細かい溝が切ってあります。それはスクリュウ冷却管というものなのですけれども、内壁をねじ加工するような構造を持っていたり、あるいはITERと同様の、スワール冷却管といいまして、中にねじったテープを入れて伝熱を上げるというような、そういう冷却管を高熱伝達構造として採用したダイバータ概念であります。

 次のページに行っていただきますと、ここに、原型炉ダイバータ機器開発の課題といたしまして、まずITERのダイバータとの本質的な違いというものを書いてございます。二つ大きな違いがありまして、一つは中性子照射。これによりまして、ダイバータを構成する材料が強度的に脆化してしまう、あるいは熱特性が劣化するようなことが生じます。これによりまして、ITERのダイバータでは構造材としては銅合金というものを使っているわけですけれども、原型炉のダイバータでは、固体壁・水冷却を考えますと、先ほど言いました低放射化フェライト鋼に変更するというような、そういう考えとなっております。

 また、もう一つ、ITERとの違いということで、大量のトリチウムを原型炉で扱うことになりますので、トリチウムの吸蔵という点が安全性の観点から非常に大きな問題となるということ。それから、こちらは上田先生の方から詳しい説明があるかと思いますけれども、スウェリングによる寸法変化というものも大きな問題となりまして、ITERではターゲット部分には炭素繊維複合材というものを使っていたのですけれども、原型炉ではそれが使用できず、表面には先ほど申しましたようにタングステンというものを使うことになろうという、そういう概念構造であります。

 その下に括弧書きですべて書いてありますのは、この材料の持っている熱伝導率を書いてあります。上側の方の銅合金の方を見ていただきますと、380ワット/メートル/K、フェライト鋼ですと30ワット/メートル/Kということで、この構造材二つを比較した場合、原型炉では10分の1以下の熱伝導率しか持たないような材料を使わざるを得ない。さらに、炭素繊維複合材とタングステンを見てみると、現状のITERで使われるような炭素繊維複合材は常温で大体300~400ワット/メートル/Kくらいの熱伝導があるわけですけれども、タングステンでは半分以下になるということで、原型炉ダイバータでは、ITERに比べて低熱伝導性の材料を採用しながら、定常的に入ってくるような熱を除去するような熱設計の構築というのが、まず技術的な成立性を得るということに関して大きな課題となっているということになります。

 次の図は、ちょっと古い図で大変恐縮なのですけれども、以前、典型的なダイバータの断面構造に対してどの程度までの熱負荷まで許容できるかということを調べたのが、こちらの図になります。左上に断面が二つ示されていまして、その左側が平板型断面、右側がモノブロック型断面というふうに書いてございます。平板型断面というのは、熱負荷を受ける表面にタングステンを使い、熱シンクとして下側に低放射化フェライト鋼が使われている。一方でモノブロック型断面というのは、冷却管がタングステンの表面保護材をくし刺しにしたような形になっておりますが、そういうような断面構造となっているわけですけれども、全く同じ寸法で解析をした結果が右側に示してあります。右側のグラフは、横軸に熱負荷、縦軸にフェライト鋼の最高温度が示されております。最高温度は、平板型の場合は、赤いシンボルが書いてありますけれども、ちょうどタングステンと熱シンクの接合部分の一番右端、冷却管から遠い端っこになります。一方でモノブロック型の方は冷却管の真上の部分になってくるわけですけれども、その部分の温度をプロットしたのがそちらのグラフになります。解析では200℃・4メガパスカルの冷却材を10メートル/秒という流速で流したということで解析をしておりますけれども、黄緑色の平板型では、そのグラフを見ると、大体3メガワット/平米になるんですけれども、低放射化フェライト鋼の最高使用温度になりますと550℃を超えてしまうということで、平板型では最大許容熱負荷は3メガワット/平米。一方で、モノブロック型の方はもう少しよくて、例えば青の方は、冷却管の肉厚が1ミリの場合ですけれども、それで8メガワット/平米。0.8ミリまで削っていきますと10メガワット/平米程度のところまで何とかいけそうな解析結果となっておりますが、これらの結果は、中性子照射によって冷却管の物性変化とか、それから冷却材と冷却管の接触によって起こる腐食とか、そういうものによる減肉等を考慮したものではないので、非常にこれで設計マージンがないということが分かっていただけるかと思います。

 次の8ページ目に設計の留意点というものをまとめさせていただいておりますけれども、まず、今紹介しました熱設計というものに関して、ITERに比べて中性子照射の観点から低熱伝導性の材料を採用せざるを得ないということで、非常にマージンの少ない設計しか、今のところ固体壁・水冷却ダイバータではできていない。それに対して対応するような方針というものをここに二つ考えてございますけれども、まず方針1として、ダイバータに入射してくる熱負荷を低減するためにはどうするか。それに対しては、ターゲット領域を拡張――受熱面を拡大して、入ってくる実効的な熱負荷を減らそうということですね。あるいは、これはあまりやりたくないことかもしれませんが、核融合出力を縮小するという、そういう対応が、入射熱負荷の低減という観点からあります。この辺の話は、上田先生の方からも詳しくされるかと思います。

 もう一つ、方針2として、ダイバータ自体の耐熱性とか許容熱負荷を向上させるためにはどうしたらいいかということになりますが、私の話では固体壁・水冷却ということで話をしてきましたけれども、それ以外の設計にならざるを得ないかと。その場合は、先進ダイバータ概念ということで、ITERダイバータの技術的な延長からは外れてくるのですけれども、例えば、先ほどブランケットの方でお話が出ましたSiC/SiC構造材・ガス冷却とか、あるいは液体金属による冷却とかいうものを考えていかざるを得ないというふうに思っております。

 一方で、材料の選定に関しまして、今のところ固体壁ではタングステンというものを候補材として考えておりますが、中性子照射という観点からは、現状では10dpaまでのデータはあるのですけれども、それ以上のデータがないということ。それから、タングステンは非常に融点が高いのですけれども、再結晶温度はわりに低いところにありまして、大体1,300~1,400℃くらいのところにあるのですが、それを超えた領域で使った場合の挙動の評価というものも、今後やっていかなくはいけない点として、ここに書いてあります。また、ダイバータの冷却材として、今、経済性の観点から水というものを考えているわけですけれども、例えば、安全性の方に軸足を移したような形になりますが、ガス冷却、あるいは除熱性能という観点から液体金属という冷却材もあり得るのかなというふうにして、このビューグラフにはまとめてございます。

 続きまして、ダイバータ機器開発の手順が次のページに示されておりまして、先ほどから述べてまいりましたけれども、材料開発、プラズマ対向材料と接合材料の中性子照射影響の解明と、耐照射性能の高い材料の開発というもの。それと、ダイバータのシステム設計、熱除去システムの設計と能力の評価、それからモデリングシステムの最適化、これらを並行して行うことによって、ダイバータの構造概念というものを構築して、中性子照射影響評価、照射されましたダイバータモジュールの熱除去性能試験、この程度までを原型炉ダイバータの概念設計検討で実施する必要があろうかと考えているところであります。さらには、炉内複合環境下での経年変化試験ということで、中性子・熱負荷が同時に入った場合での除熱性能試験というものが最終的には必要になろうかと思います。そこに黄色字で強調してありますけれども、これらの負荷、照射損傷とか元素変換、温度勾配が同時に入った場合の除熱性能評価が原型炉ダイバータにとって重要だというふうに考えております。

 次のページには、機器試験に関する主な既存試験装置ということで、現状で使うことができそうな装置ということがここにまとめてあります。加熱試験では、電子ビーム装置、国内にもありますし、国際協力で使える装置もあります。また、中性子照射試験に関しては、既存の原子炉と、それから、先ほど話がありましたIFMIFというものができていれば、そちらの方も利用して、ダイバータのアーマ、あるいは構造材料の照射試験をしていくことになろうかというふうにして、まとめてあります。

 最後のページになりますけれども、遠隔保守に関しましては、先ほど林先生からもありましたが、ITER-BAの方で原型炉の設計が進められておりまして、その中で遠隔保守というものが検討されていると。炉内での高度な遠隔保守は困難ということで、セクター方式というものが原型炉では有力だということで、ここにはいくつか例がありますけれども、いずれの場合にしましても、ダイバータの遠隔保守、ダイバータだけを独立に遠隔保守するというわけではなくて、ブランケット/第一壁の遠隔保守とともにダイバータもやられていくことになろうということから、それらの遠隔保守手法にダイバータは包絡されるというふうに考えられるかと思っております。

 私の方からは、以上です。

【小森主査】  ありがとうございました。

 それでは、上田先生、お願いします。15分でお願いします。

【上田教授】  大阪大学の上田です。それでは、鈴木先生の話と若干かぶるところはあるのですが、基本的には、プラズマ対向材料の選定、要するに炭素かタングステンかという話に関して少し現状をお話ししたいということと、エッジプラズマ研究に関すること、それから最後は、ちょっと私見のようになりますが、研究体制・研究環境に対するコメントのようなものを述べたいと思います。

 それでは、1枚めくっていただきまして2ページ目ですが、まず、そもそもプラズマ対向材料候補材については、先ほど鈴木先生のスライドにもありましたが、プラズマに接しているところだけではなくて、そこから熱を冷却管まで運ぶ部分まで含めて、ここではプラズマ対向材料というふうに定義をしています。このような材料は、高融点・高熱伝導率を持つ材料しか、候補に挙がりようがありません。現状では、その二つの特徴を持つ材料として、タングステン系の材料、もしくは炭素繊維複合材料、CFCと呼ばれる材料があります。タングステン系材料の利点については、低損耗、低トリチウムリテンション、高熱伝導率とありますが、しかしながら課題も非常にいろいろございまして、炉心プラズマへの影響の回避、あるいは、後で述べますが、ヘリウムプラズマを照射したときに表面の損傷が見られる。それから、中性子照射影響ですね。これに関しては必ずしも、まだ基礎的なところもきちんと理解できてない部分があると思います。それから、CFCに関しては、熱衝撃特性はよいのですが、リテンションが非常に多いので、それを低減するとか、あるいはプラズマが当たったときの損耗低減ということも重要なのですが、次に述べますように、実は中性子照射影響が一番問題であるということを、私は強調したいと思います。

 次のページにいっていただきまして、CFC材とタングステン材の中性子照射影響ですが、これは鈴木先生からもお話がありましたが、CFC材の場合は、中性子が当たると、寸法変化する、大きさが変わります。これは実はグラファイト結晶もしくは炭素繊維に対して固有の性質でありまして、グラファイト炭素繊維を使う限りは絶対に避けられない。右側のところに写真がありますが、これは、もともと最初はきれいな立方体、表面が滑らかな立方体だったのですが、1,065℃・10dpaの照射をすると、こういうふうにぼろぼろになってしまう。ということで、現在のCFC材というのは原型炉に明らかに適用はできません。熱伝導率の低下というのもありますが、高温では少なくなります。ただ、こういうふうに材料がぼろぼろになりますと、そもそも熱伝導率を議論する意味がないということです。

 タングステン材につきましては、これはまだ分からないところがあるのですが、基本的には、照射されると硬化(かたくなる)・脆化(もろくなる)する。また、金属は一般的に高い温度になりますと延性が増すのですが、その延性が増す温度が照射によってどんどん高くなっていくということが一般的に知られています。それからもう一つは、タングステン材は中性子が当たると中性子を吸収してベータ崩壊するという反応で、タングステンがそもそもタングステンでなくなります。タングステンは、中性子照射により主にレニウム、オスミウムと変わります。そうしますと、純タングステンから始めた場合は、合金になりますので、熱伝導率が低下するということがまず起こります。

 今後の材料選定のための課題ですが、CFC材に関しましては、照射による寸法変化は極めて問題でございまして、これを何とかしない限りは、炭素という解はないと言ってもいいと思います。タングステン材料に関しましては、十分理解ができていないところもありますし、またそれに対して材料開発の余地はありますので、その辺を進める必要があります。

 次に、プラズマが当たったときの影響ですが、原型炉の条件、ある程度温度の高い条件を考えますと、基本的にはヘリウムの照射影響が一番大きいであろうと思います。ただ、もちろんこの前提として、ディスラプションとかELMによる過剰な熱負荷は抑制されているとします。そのとき、非常に単純に言いますと、温度が上がっていくにつれて、表面にいろんな構造ができてきます。大体、ダイバータの運転環境である1,000℃近傍ではナノ構造と呼ばれる右の写真の上のようなものができて、さらにもっと高い温度になりますと、大きなぶつぶつとした穴のようなものができます。ナノ構造に関しては、今、議論がかなりされておりまして、むしろこれができた方が望ましいというような意見もあります。現時点で最終的な評価は難しいのですが、ナノ構造は多分問題ないのではないかという方向に意見が行きつつあると思っております。ただ、もっと温度が上がった場合のヘリウム照射影響は、タングステンの再結晶脆化という現象と同時に起こりますので、これは非常に問題になる可能性があります。このように、ヘリウムイオン照射影響については、基本的なところはある程度分かってきていいます。ただ、原型炉を考えた場合にこれはまだまだ不十分だという部分がございまして、それは高フルエンス照射(長時間)影響ということですね。現在までの実験研究では最大1027/平方メートルまで実験されていますが、原型炉では、年単位の運転を考えると、30乗くらいまでこの値が行きまして、ここで3けたくらいギャップがあって、この3けたの間に何が起こるかというのは、現状では分からないというのが実際のところでございます。しかし、これについて何とか見通しをつけるということが必要かと思います。

 次に、5ページ目に移りますが、ここからはプラズマの熱流制御に関連するお話でございます。ここでは、原子力機構の方で検討が進められております原型炉でありますSlimCSを例にとって、熱制御、熱処理の難しさ、課題の重要度などを御理解いただければと思います。SlimCSの場合は、核融合出力が2.95、約3ギガワットとなっています。プラズマの大きさにつきましては、大ざっぱに言えば、ITERに近い、ITERよりやや小さいくらいの大きさということになります。その時、プラズマから、SOL、エッジプラズマに流れるパワー、それは最終的には、放射損失がもしなければダイバータのところへ全部やってきます。もしダイバータに到達するプラズマの幅がSlimCSとITERで同じだとすると、プラズマが到達する部分の面積は、主半径の比になるわけです。従って、主半径をRとして、SOLに流れるパワーをPとすると、P/Rという量で、ダイバータの熱負荷を評価できることになります。実際には、SlimCSもITERもRがほとんど一緒ですので、ダイバータの熱負荷は、Pの比率で決まり、SlimCSの場合はITERよりも大体5~6倍くらい大きいことになります。右下の表でオレンジ色で書いているところがそれで、P/Rの値を書くとこのくらい違うということです。ITERで熱負荷制御の実験は当然なされますが、SlimCSのような原型炉ではさらにそこから、ファクターで5~6くらい飛躍があるということです。ただ、もちろんこれは原型炉の設計に依存するものですから、原型炉の設計が変われば、当然変わる話です。

 次に、6ページ目へいきますが、ITER物理設計の延長で原型炉ダイバータは可能か、ということです。今現在の知見でどうやって熱負荷を減らすことを考えているかといいますと、資料の4行目からの(1)、(2)、(3)、(4)に書いてあるようなことで、例えば、ダイバータの深さと傾斜を増加することがまず重要です。さらにV型コーナーをつけるとか、ドームを設置するとか、これは要するに、ガスの圧力を上げて、プラズマがガスとの相互作用で中性化するということをねらっているわけです。それから、不純物ガスを入射して、放射損失を増大させるということがあります。これらによって、磁力線長の増加によるプラズマの幅の増加、再結合によるプラズマ密度の減少、及び放射損失の増加による熱負荷低減というのをねらっているわけです。しかしながら、原型炉ではITER標準運転よりもさらに大きな放射損失、それから、さらに広い領域で非接触状態を実現するということが求められることになります。

 7ページ目は、基本的には今まで言ったことの繰り返しでありますが、BAの原型炉設計活動におきましては、丸1、丸2、丸3、丸4というようなことを考えて設計が進められていると聞いております。大体、丸1、丸2、丸3、丸4の順番に検討が進んでいるわけですが、特に熱負荷制御というのが極めて重要でございますが、それを今、いろいろ詰めておられると聞いております。しかしながら、先ほど鈴木先生からもお話しがありましたように、熱負荷制御と同時にヘリウム排気も行う必要があります。非常に単純に言いますと、ヘリウム排気とは、プラズマのイオンがダイバータに当たって中性の原子になって、それをポンプで排気するということです。要するに非常に限られたところにプラズマがたくさん当たれば当たるほどヘリウムのローカルな圧力が高くなってヘリウムを排気しやすいということです。従って単純に考えれば、熱負荷を下げるということとヘリウムの排気能率を上げるということは逆方向になるわけですね。ですから、ここである種のジレンマと言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、そこをうまく両立させるような設計が必要になるということでございます。

 次に、8ページへいきますと、これは、今、実際いろいろ検討されているダイバータで、2番のSuper-X、3番のSnow-flakeというのは海外の研究施設で検討されています。原型炉では、トロイダルコイルより内側にポロイダルコイルを置くというのは難しいということを考えますと、ポロイダルコイルにはかなり大きな電流を流してダイバータの構造をつくらなければならず、ダイバータの磁場配位には制約があります。それから、1番のダイバータの脚を伸ばすという手法は、今、原子力機構で検討しておられるわけですが、こういう形でできるだけガスが逃げないようにしてローカルなヘリウム圧を高めてヘリウムを排気するというのは、考え方としては良いと思います。ただ、実際にこれが成立するかどうかは、現在検討中ということでございます。

 次に、9ページ目にいきまして、それでは熱・粒子制御研究はどう進めたらいいかということですが、基本的に大型装置は簡単にいろいろ配位を変えて実験できるわけではございませんので、やはりシミュレーション研究による装置設計というのがまず中心に来るであろうと思います。ただ、このためには炉心、エッジプラズマ、対向壁を含む統合コードの開発が必要で、これは、現在、日本でも、外国でも、進みつつあります。ただ、必ずしもまだ、エッジプラズマのコードが実際のプラズマをきちんと再現できていません。例えばJT-60Uの非接触プラズマについてはまだ、エッジプラズマのコードで実験を再現できていませんので、もう少し基礎過程の解明を含めてモデルの高度化は必要であると思います。従って、基礎過程を明らかにすること、あるいはシミュレーションコードのベンチマーク的な役割ということで、実験研究の役割が非常に大きいということは当然でございます。もちろんエッジプラズマの基礎過程は、ある程度、実験室のプラズマ装置、すなわちリニアプラズマ装置で研究ができます。現在、世界でいくつか新しい装置の建設や計画が進んでいます。しかしながら、例えば、トカマクでもヘリカルでもそうですが、ダイバータの配位を想定した状況で熱負荷を制御する、あるいはヘリウムを排気する、これはコアとエッジのプラズマのカップリングですとか、あるいは形状効果、すなわち磁場の形状や、ダイバータの形状が、密接に関わるものですので、これはどうしても磁場閉じ込めで実験しなければできないということになります。現在のところ視野に入れられる装置は、LHD、JT-60SA、ITERなどですので、特に最後のITERあたりで原型炉への道筋をつけなければいけないと思います。しかしながら、原型炉でのP/Rというのは先ほど説明しましたように、ITERでも原型炉より5~6倍小さいので、原型炉設計の妥当性をどこでどういうふうに判断をするか、どのように判断した時点で原型炉建設へゴーサインを出すかという、そこの判断が非常に難しいのではないかと思われます。これは全くの私見ですが、原型炉の最初のフェーズはそういうエッジプラズマの最後の確認実験に割り当てざるを得ないのかなと思います。

 10ページ目、11ページ目は、最後に私の私見も入れたコメントのようなものです。先ほど中性子照射実験は非常に重要であると申しましたが、これに関しましては、例えば日米の科学技術協力でありますとか、あるいはIEAの線型プラズマ装置協定、これはTEXTOR協定と呼ばれているものの後継協定でございますが、平成25年度からどちらも始まり、どちらも中性子照射材の評価ということが重要なポイントとなっております。国内におきましてもこういう研究アクティビティーをできるだけ早く立ち上げる必要があるのではないかと、私は思っております。

 最後ですが、これは雑駁なお話で、当然といえば当然と思われるかと思うのですが、例えばヨーロッパなどを見ると、大きな研究所がたくさんあって、それらが研究をリードしているわけでございます。例えば、ドイツの場合をとってみれば、ユーリッヒとかガルヒンがプラズマあるいはPWIの研究を主導し、カールスルーエが炉工学関係の研究を主導しています。このような研究所が、密接に協力しながら炉工学の開発を進めているということで、日本でも研究所、大学、産業界が協力して進められるような体制というものをつくる必要があるであろうということでございます。

 以上です。

【小森主査】  ありがとうございました。

 それでは、今の二つの御説明に対しまして、御質問や御意見等がありましたら、お願いいたします。

 どうぞ。

【森委員】  鈴木さんの発表のところで原型炉ダイバータの材料という観点でSiC/SiC構造材という言葉がちょっと出てきているのですが、上田先生のところで中性子照射影響でのタングステンとCFCの問題点というのがあったわけですが、SiC/SiCというのは可能性はあるというふうにお考えなのでしょうか。そこら辺、ちょっと感触をお持ちであったら、聞かせてください。

【鈴木研究主席】  SiC/SiCの方はダイバータの場合ですと冷却管の構造材として考えられておりまして、今のところ大学で基礎的な開発の研究が行われております。実現の可能性というのはちょっと今の段階では難しいですけれども、より高温化できる、ダイバータの耐熱性を上げるという意味では、魅力的な構造材だとは思っています。

【小森主査】  熱伝導率はどのくらいですか。

【上田教授】  熱伝導率は、現状のSiC/SiCの複合材は、フェライト鋼のレベルですので、もう数倍、熱伝導率を上げないと、タングステンやCFCのかわりにはなりにくいと思います。

【森委員】  分かりました。

【小森主査】  ほかにございますか。どうぞ。

【髙津委員】  上田先生に一つお伺いしたいのですが、非常に幅広い課題を適切に紹介いただいたのですけど、上田先生って、プラズマ物理の研究者で、PSIもカバーされ、材料もカバーされ、工学分野もカバーされ、非常に総合的にダイバータの抱えている問題を理解されている立場で、世界的にも稀有な研究者だと思うのですが、そういうお立場から非常に適切に課題を紹介いただいているのですけれども、私、ちょっと気になったのは、9ページの最後から二つ目に、要するに磁力線の工夫なんかをITERやLHDやJT-60SAの実験で見出し得るのだろうかと、シミュレーションだけで評価できるのだろうかということを書かれておられますね。まさしくそういうふうな気がしまして、ITERで運転モードのいろんな工夫はすると思うのですが、それでほんとうに根本的・抜本的な解が出るのだろうかという懸念ももちろんありますので、この先生が書かれている疑問は非常に同意するところなのですけれども、そういう状況において、次のページに実験装置の提案がもう既にオン・ゴーイングにあるということを考えて、プライオリティーとしてどうなのですかね。いろいろたくさんの問題があるのですけれども、プライオリティーを考えるとダイバータの問題を解決するうえで何が最も必要かというのを、上田先生のお考えというのを聞かせていただけますでしょうか。

【上田教授】  やはり、まずプラズマの熱流制御、先ほども強調しましたヘリウム排気を可能としたうえでの熱流制御が重要です。それができなければ、今、鈴木さんからもお話がありましたように、現実的には原型炉ダイバータは10メガワット(1平方メートルあたり)でもぎりぎりで、普通、機器を使うときはぎりぎりのところで使わないと思いますので、当然、少なくともその半分ぐらいとか、その辺まで熱流制御ができなければいけない。ではそれが簡単にできるかといえば、今のところ、いろんな工夫をしても5メガワット(1平方メートルあたり)まで落とすというのは、シミュレーション上でもいろいろ工夫をされて苦労されているというところがございます。この問題をまず解決、あるいはめどをつけなければ、正直なところ、いかに材料を開発しても、プラズマ対向機器を工夫しても、ダイバータ開発の課題は、なかなか乗り越えられないであろうと思います。

【髙津委員】  私も全く同じような感触を持っているのですけれども、その場合、プルーフ・オブ・プリンシプルでもいいのですけど、実験装置というのは何かアイデアがおありなのでしょうか。IEA線型プラズマ装置とどっちが大事なのかなというふうに思ってしまうのですけど、それは予算規模が違うのかもしれませんが、何がしかそういう装置が要るのではないかという気もするのですけど、いかがでしょうか。

【上田教授】  それは非常に難しい御質問ですが、少なくともリニアプラズマで基礎過程をかなりきちんと調べるということについては、ダイバータに匹敵する高い粒子フラックス、熱フラックスをオランダのMAGNUMという装置で実現される見通しですので、そのような装置で、できる限り基礎過程、原子・分子基礎過程、プラズマの輸送、そういうものをできる限り明らかにしていただいて、それをコードに取り入れた上で見通しをつけていただくというパスがまずないといけないのかなと思います。その上で、それをJT-60SA、ITER、あるいは現在のLHD、これは閉ダイバータ化していますので、そういうところへ適用して、そこでの現象をできる限り正確にシミュレーションをすることが必要であると思います。そのように一歩ずつステップを踏みながら進まないといけないのではないかと思います。最後の段階は、これは全く私の個人的な意見ですが、DEMO炉の最初のフェーズのところでそれを確認しながら進めるということになると思っております。

【髙津委員】  ありがとうございました。

【小森主査】  細かい質問で申しわけありませんが、今出てきたオランダのMAGNUMですか、10ページを見ますと、IEA直線型プラズマ装置協定を結んで、三つの研究所が組んで行うと書かれています。中性子照射材料にプラズマを照射するということですけれども、中性子照射はどこで行うのですか。

【上田教授】  まず、今、中性子照射が予定されているのはMAGNUMではなくてユーリッヒの装置です。従って、完全なダイバータ条件(密度やフラックスの観点から)でプラズマ照射実験をするわけではありません。それから、中性子照射については、私が聞いているところでは、BR2とか、あるいはペッテンといったところが候補に上がっているようです。今、ヨーロッパでは具体的にどう進めるかの検討が進められていると聞いています。

【小森主査】  そういうところで照射した材料をユーリッヒに持って行き、さらにプラズマの熱負荷を加えるということですか。

【上田教授】  そういうことです。

【小森主査】  分かりました。

 ほかにございますか。よろしいですか。

 本日の議題は二つとも御審議いただきました。最後に、報告事項が一つございます。後ろの方にあります参考資料2の、第10回ITER理事会の結果概要につきまして、事務局の方から御報告いただきたいと思います。

 お願いします。

【坂本戦略官】  私の方から、御説明いたします。第10回のITERの理事会は、2ページを御覧いただきますと日程、場所が書いてございますけれども、6月20日~21日、アメリカのワシントンDCで開かれました。各極の政府担当部局の責任者が出席をしております。日本からは文部科学省の藤木文部科学審議官、ヨーロッパからは欧州委員会研究・イノベーション総局長のスミッツ総局長、米国からはエネルギー省科学局長のブリンクマン局長、ほか、ロシア、中国、韓国、インドからも、それぞれ責任者が出席しておるということでございます。ITER機構からは、本島機構長ほか、幹部の方々が出席されました。今回は、こちらにおられます髙津委員が本年1月より議長に就任しておられますけれども、初めて理事会の議長を務められたということでございます。

 3ページを御覧いただきますと、開会のあいさつをはじめ、議題を書いております。ITER機構からの活動報告、ITER計画のスケジュール、予算、テストブランケットモジュールでございますが、それぞれの議題について、ポイントをちょっと御説明させていただきたいと思います。

 4ページを御覧いただきたいと思います。まず、ITER機構からの活動報告でございますけれども、本年5月末現在でITER機構の全職員数は475名ということでございます。そのうち、専門職員308名、支援職員167名ということでございますけれども、専門職員のうち、日本人の方々は、1割を若干切っておりますが、28名ということで、現地で活躍いただいております。

 それから、調達取決の締結状況でございますけれども、ITER全体の調達価格の77%に相当する合計76の調達取決を締結済みということでございます。

 さらに、現地での建設活動も着実に進展しておるということでございます。写真を三つ掲げておりますけれども、一番左がポロイダルコイルの組立て建屋でございますが、こちらは本年1月に完成。真ん中は、ITERの本体が収まるメインビルディングですけれども、こちらの免震ピットが4月に完成したということで、いよいよ、この上に床ができて、建屋ができていくということでございます。さらに、ITER機構の本部建屋ということで、これは8月中に完成予定ということで、10月には本部移転が行われます。次回の理事会も、この本部で行われるということが予定されております。

 次、5ページを御覧ください。スケジュールについてでございます。スケジュールについては、今申し上げましたような、現地の建設工事の進捗、あるいは調達取決の締結状況、さらには参加各極におけるITER機器の製造の進展ということが報告をされました。一方で、真空容器など、いくつかの機器の製造に遅れが出ているということでございましたが、こちらも、先生方御案内のとおり、非常に複雑な構造を持っておりますので、設計が詳細化するにつれて、3次元的な取り合いというところでさまざまな課題も浮かび上がっておるところでございます。ただ、それらにつきましては、ITER機構の方でそのプロジェクト管理の改善方策というものを立案しておりまして、今後3箇月間の主要作業というものを抽出して、事前にその達成可能性を評価すると、遅延が起こりそうであれば遅延対策の検討を実施すると、そういった改善方策を立案し、今、実施し始めております。その方策について理事会でも確認をしますとともに、各極の国内機関と密接に協力してスケジュール回復に向けた取組を進めるということが確認されております。また、そのスケジュール回復の状況につきましては、運営諮問委員会が臨時会合を開催するなど、チェックもしっかりと行い、各極が協力をする体制をつくっていくということも、合意をしたところでございます。

 次でございますが、そのほかの進捗ということで、施設の許認可についてでございます。ITER機構の方から、フランスの原子力規制当局ASNが、ITER施設が安全上の要求事項を満足しているということを認める決定を行ったということが報告されました。今後数週間以内にASNは、フランス政府に対してITER施設の建設を許可するよう勧告するということが予定されております。

 さらに、ITERを進めていくうえの枠組み的な進展という意味では、テストブランケットモジュールの取決がございます。このテストブランケットモジュールにつきましては、各極がITERに持ち込んで試験を行うということでございます。したがいまして、ITER機構とTBMの持ち込み極はそれぞれどういう役割を果たすのか、そこで生まれた情報あるいは知的財産というものはどう管理するのかと、廃棄物はどうするのかと、そういった取決を結ぶ必要がございます。各極の取決内容をできる限り統一化するためにTBMのひな形というものがこれまで議論をされてきておりまして、この理事会におきましてTBM取決のひな形というものが承認をされました。今後、各極個別に取決の締結を行っていくということでございます。あと、TBMの計画については、韓国が参加を正式に表明いたしまして、承認されたところでございます。

 最後に、その他ということで、次回理事会はフランス・カダラッシュにおいて行うと。さらに、その次の理事会については、来年6月に日本で行うということが合意されました。

 また、この理事会にあわせて、米国の計測装置等の調達取決の調印式も行われたということでございます。

 報告は以上です。

【小森主査】  ありがとうございました。

 それでは、本日は以上となりますけれども、事務局から何かございますか。

【飯嶋核融合科学専門官】  次回の作業部会でございますけれども、7月31日火曜日を予定してございます。次回は、議論していただく項目が多くて、4点ほどございますので、3時間ほどの時間をとらせていただいております。2時から5時までという長丁場になりますけれども、よろしくお願いいたします。場所につきましては、現時点においては、振興局の会議室、17階を予定しておりますけれども、本日のように場所が変わることもございますので、その際は御連絡させていただきます。

 以上です。

【小森主査】   それでは、本日はどうもありがとうございました。

お問合せ先

研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当)

小野
電話番号:03-6734-4163
ファクシミリ番号:03-6734-4164

(研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当))