令和6年5月28日(火曜日)15時00分~17時00分
文部科学省内会議室とオンラインのハイブリッド開催
【竹之内課長補佐】 それでは、定刻となりましたので、ただ今から第36回原子力科学技術委員会を開催いたします。よろしくお願いいたします。
今回の作業部会は、対面とオンラインを併用したハイブリッド形式にて開催しており、これに関連した確認事項などもありますので、議事に入る前まで事務局にて進めさせていただきます。
まず、オンラインにてご出席されている方への留意事項をご説明いたします。
委員の皆様におかれましては、現在、遠隔会議システム(Webex)上で、映像及び音声が送受信できる状態となっております。ご発言を予定される場合は「挙手」ボタンを押していただくと、画面の左上に「挙手」マークが表示されますので、順番に主査よりご指名をいただきます。ご発言をいただいた後は、もう一度「挙手」ボタンを押して、手を降ろしてください。
会議中に、ビデオ映像及び音声が途切れている場合、その時間帯はご退席されているものとみなします。遠隔会議システムの接続の不具合等が生じた際は、随時、事務局あてにお電話にてお知らせください。
議事録につきましては、事務局にて会議を録音し、後日、文字起こしをいたします。事務局以外の方の会議の録画、録音はお控えください。以上が本日の進行にあたっての留意事項となります。
続いて、本日の配付資料の確認をさせていただきます。委員の皆様及び傍聴の登録をされた方あてに、メールにて配付資料をお送りさせていただいております。
お手元に議事次第を配付しておりますが、本日は議題が4点ございます。1点目が「新試験研究炉の開発・整備の推進」、2点目が「『常陽』の運転再開に向けた課題と高速炉の燃料技術開発」、3点目が「原子力科学技術に関する研究・人材基盤の強化」、最後 4点目が「その他」です。
配付資料として、資料が3つございます。お手元の資料をご確認いただき、不備等ございましたら事務局までお知らせください。またその他にも何かございましたら、随時お申しつけください。
委員の皆様方の御出席状況については、開始前に事務局にて確認しております。本日は、委員11名中9名に出席いただいております。運営規則の第3条に規定されております定足数である委員の過半数を満たしておりますので、御報告をいたします。また、本日は話題提供のため、名古屋大学大学院工学研究科教授山本章夫先生にご参加いただきます。
さらに、オブザーバーとして、一般社団法人日本電機工業会原子力部長小澤隆様にご参加いただいております。また、日本原子力研究開発機構 新試験研究炉推進室から、村尾 裕之様、峯尾 英章様、日本原子力研究開発機構 大洗研究所から、戦略推進部皆藤 威二様高速炉サイクル研究開発センター前田 誠一郎様高速実験炉部 曽我 智則様にオンラインにてご参加いただいております。
続きまして、事務局参加者についてご連絡致します。文部科学省からは、大臣官房審議官の清浦、研究開発局原子力課課長の奥、研究開発戦略官の井出、原子力課課長補佐の生方、髙倉、竹之内が出席しております。
それでは、これから議事に入らせていただきますが、運営規則第5条に基づき、本会議は公開とさせていただきます。また、第6条に基づき、本日の議事録につきましてもホームページに掲載いたします。ここから出光主査に議事の進行をお願いしたいと思います。
【出光主査】 それでは議事に入ります。先ほど事務局からありました通り、本日の議題は4つです。17時までの予定となっています。よろしくお願いいたします。本日最初の議題は、「新試験研究炉の開発・整備の推進」でございます。事務局から説明をお願いいたします。
【奥原子力課長】 原子力課の奥です。今日はよろしくお願いします。資料1-1に基づきまして、新試験研究炉の開発・整備の推進に関する当面の課題を御説明させていただきたいと思います。まず、これまでの経緯を2頁目に記載しております。
続いて3頁目、当面の課題について、一つ目は詳細設計の着実な推進です。いつ設置許可申請を出すかという見込み時期を今年中に出すということを予定していますので、これに向けて全体計画を策定するということ。それと新試験研究炉とそこに付随するビームの実験施設に関して安全規制要求に適合するような仕様の策定を進めるということがまず一つ目です。
二つ目は設置場所に関する検討です。後ほど申し上げますが設置場所は三つ候補地がありまして、この中でまだ決定はしていないという段階にあります。なので、総合的に安全性等を評価した上で設置場所の選定というのを、これも設置許可申請の見込み時期の今年中をめどに選定をするということを想定しています。それに向けてボーリング調査等を今進めているところです。これも踏まえた形での総合的な検討を進めるというのが二つ目です。
三つ目が実験装置群の検討になります。ビームに設置する各実験装置群ですが、現在京都大学を中心にアカデミアにおいてこの実験装置群の在り方というのは検討いただいています。現在優先5装置というのを決定しまして、タスクフォースを設けて具体的な整備計画に向けた検討を進めているところです。また、医療用RIの製造についても今後期待されているところですので、そのニーズを踏まえた形での詳細設計を進めるということを想定しています。また後ほどありますが新試験研究炉に実験装置群を導入するにあたってテストとしてJRR-3を用いた導入検討というのも必要かというふうに思っています。
四つ目が4頁目ですが建設フェーズを見据えた総工費・予算推計になります。現在ボーリングに関する予算というのを文科省の方で計上しています。今年度の予算で6億円計上していますが、今後この総工費というのがどんどん膨らんでいく形になります。したがって、新試験研究炉全体の総工費がいくらになるのか、それと当面予算推計としてどれくらいの金額が必要なのかということを改めて部会の方で検討させていただきたいと思っています。
また、五つ目として、この新試験研究炉は人材育成の拠点としての役割も非常に期待されていますし地域への経済波及効果というのも期待されているところです。ですのでJAEAを中心にして地域の関連政策検討ワーキンググループというのを設けて、関係する自治体、企業、アカデミアの方々に入っていただいて、今後の利用促進の在り方、それと敦賀市の駅前に作る新しい複合拠点の在り方、それと人材育成の在り方という、この三つについて検討を進めていただいているところです。これも踏まえてこの新試験研究炉を中核とした敦賀エリアでの新しい拠点の形成に向けたロードマップを検討してまいりたいというふうに思っております。
続いて5頁目のところですが、この新試験研究炉と別に現在JAEAの方で動かしているJRR-3という試験研究炉があります。こちらについても大学における研究、教育の基盤として非常に重要だというふうに思っておりますので、ここも安定的に運用、利活用していくことがもう一つ必要かというふうに思っています。これまでの背景・経緯としては平成2年にこのJRR-3について改造工事を行いまして出力20 MWの照射機能を持つビーム炉として利用を開始しています。その後、新規制基準への対応を経て令和3年2月に運転を再開しています。これまで中性子ビームの実験であるとか燃料・材料の照射、医療用のRI、特にモリブデンの製造等について現在利活用を進めているところです。これまで着実に企業等における産業利用も進んでいまして、年間大体延べ2万人ぐらいの利用に供しているところです。さらに医療用のRIに関しては内閣府の方でアクションプランというのを作られましたが、ここの中でもモリブデン99の国内製造3割の実現に向けてこのJRR-3を積極的に活用していくということが大きい方針として打ち出されています。
6頁目として今後の当面の課題というのを書かせていただいています。まずはJRR-3について安定的に運用して人材育成機能の強化を図っていくということ。二つ目が医療用のRIに関する研究開発を進めるということ。先ほど申し上げたアクションプランに基づいてモリブデン99の製造に向けたトライアルの技術開発、それとあと製薬企業との連携・協力を進めて実際にこれを市販化するという検討を今進めているところです。三つ目が中性子利用、他施設との連携・協力ということで、JRR-3はもちろん使っていくということが大事なのですが、J-PARCをはじめとする他の加速器であるとか、あるいは放射光施設と相補利用を進めることによって中性子と放射光双方を利用することによって、アカデミア、産業界の研究を更に発展させていくということが大きい方向性として必要かと思っています。さらに四つ目、新試験研究炉の技術的な知見等の提供とありますが、今後の新試験研究炉に実験装置群を導入するにあたって実際にその実験装置が稼働するかどうかということをテストする場というのはこのJRR-3しかありませんので、ここで知見提供・利活用を進めていくということが今後必要になってくるかと思っています。というのが当面の課題になります。
少し重複しますが、この新試験研究炉について現在の状況を簡単に絵を使ってご説明させていただきます。8頁目のところはこれまでの経緯を書いているところですので、これは重複しますので省略をさせていただきます。繰り返しになりますが京大、福井大学と連携・協力しながらJAEAにおいて現在詳細設計を進めているという段階になります。
9頁・10頁のところで基本的な原子炉の仕様というのを検討・決定をしています。熱出力として10 MWの中性子ビーム炉というのが最終的に文科省の方で選定・決定をしています。現在詳細設計の段階で地質調査等を含めて併せて行わせていただいています。
10頁目のところで基本的な仕様を書いています。繰り返しになりますが10 MW未満の出力、それと減速材・冷却材それぞれ冷水を用いるというのと、反射材について重水を用いる、さらにビームの利用としていくつかの実験装置群を作るというのと、加えて照射についても使える炉というのを想定しています。炉心部のイメージは右上で、10頁目の右下のところが全体の完成イメージになっていますが、おおむねのJRR-3と同じような炉の形態を考えています。
11頁目が当面のスケジュールになります。繰り返しになりますが概念設計は去年の3月で終了しまして、現在詳細設計の段階に移行しています。詳細設計はⅠとⅡのフェーズに分かれていますが、この間に設置許可の申請というフェーズがあります。現在この設置許可の申請をいつ出すかという見込み時期を今年の12月までに決定をするということを想定しています。それに向けて詳細設計の設置場所に関する状況調査、それぞれの施設の重要度分類等について検討を進めているところです。
12頁目がその原子炉建屋の候補地になります。ちょうど真ん中のところがもんじゅのあるところでして、このもんじゅの駐車場のポイントを潰して新試験研究炉を作るというのが③になります。それ以外に尾根を登っていったところ、山の上のところに候補地A、A’ということで①、②が候補地として挙がっています。この三つの中から最適な候補地というのを選定するということになりますが、いくつか留意点がありまして、やはりボーリング調査を踏まえてそこに活断層帯がないというのはもちろんのこと、土石流の影響もありますので、この影響を回避できる場所、それと最大の問題ですがもんじゅは今廃止措置の工程にありますので、そのもんじゅの廃止措置工程とバッティングしないということを念頭にこの設置場所を選定する必要があるかと思っています。今ボーリング調査を進めているところで、令和5年度はこの駐車場の部分のボーリング調査を進めています。
13頁目・14頁目がビーム炉、それと照射機能に用いる実験装置群になります。まず13頁目ですが、ビームに設置する実験装置群として優先4装置を京都大学をはじめとするアカデミアの方で選定をしました。小角散乱、イメージング、それと粉末回析、反射率測定、この四つを優先的にまずは整備をするということを想定しています。それに加えて下の方にありますが偏極小角散乱のような以下の装置群については、この優先装置を整備した後さらに多様化・高度化を図る中で設置を検討するという段階になっています。
また、14頁目のところは炉心の中に置く照射実験装置群ですが、これは中性子の放射化分析を優先装置として選定し、さらにこの下にありますように医療用のRIの製造ですとか代理材料照射、ここら辺はその後に引き続く形で整備をするということを想定しています。なので、ビームに設置する4つ、それと炉心に置く照射のための実験装置1つ、合わせて5装置を優先的に整備するということを決定しているところです。
15頁目ですが、それぞれの優先措置に関してアカデミアを中心にタスクフォースを設けて具体的に装置の設計、整備、運用に向けて検討をしていただいているところです。ここは京都大学を中心にJAEA、あと東大の物性研も含めて関係する大学に入っていただいてメンバーを構成し随時検討していただいているところです。
また、16頁目ですが、この新試験研究炉についての利用促進を進めるための枠組みとして、地域関連施策ワーキンググループというのを設けています。ここはJAEAが事務局になりまして関係する大学と自治体に入っていただいて随時その利用促進に向けた在り方というのを検討しています。サブグループを3つ設けていまして、1つ目は利用促進体制の整備ということで、この新試験研究炉についてはアカデミアのみならず産業界も含めて広く利用に供するということを期待されているものです。なので、どのような利用の支援の在り方があるべきかということを体制も含めて検討していただいているというのがサブグループ1です。
サブグループ2ですが、御承知のとおりもんじゅ、それとそこのサイトの新試験研究炉は敦賀の駅から相当程度離れた場所にあります。ですので、利便性を重視して敦賀市の駅の周辺に新しく複合拠点を作ろうということを想定しています。この複合拠点についてどういう機能を持たせるべきか、利用の支援の体制であるとか、会議室であるとか、あと遠隔の実験装置等々あると思うのですが、何が必要かということの要件を検討するためのグループとしてここではサブグループ2が検討を進めていただいています。
また、3つ目は人材育成ですが、この新試験研究炉を使って中性子の実験を扱うような人材を新しく育成しないといけないということで、原子力機構と福井大学を中心に人材育成に関する取組というのを鋭意検討いただいているところです。この検討結果については随時このワーキンググループと地域のコンソーシアムの方に報告をするという段取りで今調整を進めているところです。
この3つのサブグループの枠組みについては17頁目になりますが、自治体からの要望に応えた形で地域の研究・人材育成拠点の形成に向けたロードマップというのを引いています。詳細設計Ⅰ、詳細設計Ⅱ、それと建設工事、運転開始でそれぞれ利用促進体制、複合拠点、人材育成がどういうふうな機能が求められるのかというのを簡単にまとめたものになっています。例えば利用促進体制につきましては詳細設計Ⅰの段階で実際利用支援をするにあたって新しく利用促進の法人を設ける必要があるのかどうか、その場合には原子力機構と大学との役割分担をどう考えるのかということとか、あとアカデミア、企業、JAEAが中心となって利用推進の協議会を作るべきではないかということ。実際に運転開始をした暁には実験装置の運転・保守であるとか利用課題の審査等、それとトライアルユース、こうした機能が必要になってきますので、これを誰がどういうふうに進めていくのかという辺りを随時検討しているところです。
同じく複合拠点につきましても要件を検討した上で、実際にどこに置くのかということとか、実際に新試験研究炉ができた暁にはそことこの複合拠点との間でどういうふうな役割分担をしていくのかという辺りを鋭意検討しているところです。
人材育成については、現在福井大学において、そこの教員を中心に中性子利用を行うためのセミナーであるとかワークショップというのを開催していただいていますが、これをより広げて全国の学生、研究者、あるいは産業界に広く波及していくための取組をどうしたらよいのかという辺りを検討しているところです。
最後に18頁目に、この新試験研究炉を中核としたこのエリアにおける拠点形成のイメージというのを書かせていただいています。JAEAの敦賀の新試験研究炉はもとより京大であるとか福井大学であるとか、あるいは新しく利用促進のための法人を作るのであればそことの間で連携・協力関係を作っていくということを想定しているところです。一番左側に医療用のRIに関して書いていますが、こちらについては優先5装置ができた後に医療用のRIの製造にも活用していくということで、そのための機能というのも随時併せて検討する必要があるかというふうに思っているところです。すみません、雑駁ですが以上になります。
【出光主査】 ご説明ありがとうございました。それでは、ただ今の御説明に対しまして質問あるいは御意見ございましたらお願いいたします。どなたかございますでしょうか。新井委員、どうぞ。
【新井委員】 ご説明ありがとうございました。新試験研究炉は利用分野は中性子ビーム利用が主というふうに聞いていまして、物理系とか材料系、生物系、医療分野等々多様な分野が想定されますので、原子力放射線分野に限らず関係する分野の人材の裾野が広がるように期待したいと思います。広がりのあるプロジェクトを目指してもらって、幅広い人材の確保、それから育成につなげていただきたいというふうに思います。
また、照射利用としては医療用RI製造に取り組むと明記されていますので、ニーズは非常に高いと思いますので、この通りよろしくお願いしたいというふうに思います。以上です。
【出光主査】 ありがとうございます。他にどなたかございますでしょうか。小澤様、どうぞ。
【小澤原子力部長(日本電機工業会)】 小澤でございます。このもんじゅサイトの試験研究炉はすごく久しぶりということで、大変期待が高いところだと思っております。いろんな研究者のネットワークを使って、いろんなアイデアが出てきていると承知しておりますので、そこはもう研究者の皆さんの創意工夫でどんどんやっていただければよいかと思っています。主体が研究者ということになりますので一つコメントさせていただきますと、やはり設置許可申請ですね。規制対応、それから設備が整ってからの運転管理、施設管理、こういったところはしっかりと体制を組んでやっていただきたいと思っております。JAEAさんがその辺は得意だと聞いておりますので、きっちりとサポートしながら全体として前に進めばよいかと思っております。以上です。
【出光主査】 ありがとうございます。他ございますでしょうか。黒﨑先生、どうぞ。
【黒﨑委員】 ありがとうございます。この新試験研究炉は日本でもずっと今まで長い間建設されていなかった原子炉が今度新しく作られるということでやはりすごく期待感が高まっていると思っています。なので、これは確実に前に進めていくというのがまず一つ目の話になっていまして、その際にどういう形で進めるかということなのですが、2つのコメントがあります。1つが、炉の基本仕様についてはその10 MW未満のビーム利用の原子炉ということでもう決まっています。なので、次のステップとしてはやはりその周辺の付帯設備といいますか、ここでは実験装置群というような名称で呼ばれていましたが、そこをやはり充実したものにするというのが非常に重要だと思っています。ここを充実することによって最先端の研究がこちらでできるようになると、たくさんの人が集まってくるというようなことが期待できます。プレゼン資料の中でニーズに合致したというような言葉もありましたが、その辺りは非常に重要だと感じています。こちらの実験装置群をとにかく良いものを作っていくのだというところが1つ目のコメントです。
2つ目のコメントが、日本全体で見たときに試験研究炉というものの位置付けといいますか、非常に危機的な状況になっていると思っていまして、最初の方で奥課長がおっしゃっていましたが、どんどん国全体として見たときに試験研究炉の数が減っていっているという話がありました。私は京都大学の人間なのですが、京都大学にも同じような試験研究炉でKURというものがあるのですが、これがあと2年で運転を停止するということになっています。つまり国全体で見たときにすごく空白期間が空いてしまうというようなことが事実としてあります。なので、この空白期間に何をやるかというのがとても重要だということが2つ目のコメントになっています。資料の中では駅前の複合拠点であるとか、あるいはJRR-3、現在稼動していてこれからも稼働する原子炉の有効活用という話もありました。後は、京都大学にはKURは運転停止しますが施設としては非常に良いものがありますし、そういった京大の現有の施設などもうまく使いながらこの新しい試験研究炉ができるまでのある期間、しっかりその研究開発、人材育成をやっていくというのが大事だと思いました。以上となります。
【出光主査】 ありがとうございます。どうぞ、竹内さん。
【竹内委員】 ありがとうございます。国際環境経済研究所の竹内でございます。ご説明いただきましてありがとうございました。いろんなところに目配りを頂いている形でこの本当に久しぶりの新試験研究炉のお話が進んでいるというところをお伺いして大変有り難く思いました。いくつか些末なことでございますが感じたところを申し上げさせていただきたいというふうに思いますが、試験研究炉の設置についてやはり国民に広く周知・PRしていただきたいなというふうに思います。原子力技術というのがどのような広範なメリットがあるのか、医療分野、農業分野とかそういった分野に対して貢献のある技術なのかというところがなかなかやはり国民の中でも知らない方がほとんどだというふうに思います。ましてや原子力技術のこうした研究開発に日本が引き続き取り組んでいるといったようなところも余り認識がないところだと思いますので、ぜひこの意義とこういう取組というところを積極的にお伝えいただければ有り難いなというのが1点目のお願いでございます。
2点目が、先ほどからいろいろニーズを吸い上げてというところが出てきたかと思います。原子力機構さん、京大さん、福井大学さんが今中心になっておられると思うのですが、もう少し広げて、以前は原子力を冠した学部があったり研究会があったりしたような大学さんでも今下火になってしまっているような大学さんもやはりこういった形で研究の体制が整い、且つやはりそれこそCOP28でも原子力という技術がなければ気候変動等の対策とこの社会の安定的なエネルギー供給ということの両立はもう困難であるというようなことを世界的に認知されているというようなこういう状況があいまって、やはりそうした大学さんも改めて体制を見直されるというようなところもあろうかと思いますので、そうした大学さんの将来のニーズも含めて聞き取るといったようなところで学術界に広くニーズを問い掛けていただければ有り難いなというところが2点目でございます。
3点目が最後でございますが、コストの部分です。こういったことは本当に久しぶりのことでございますし、総工費は今インフレの中でかなり見積りというところも厳しいところもあろうかと思いますが、どういう形で何にコストがどれくらい掛かるのか、ここをこういうふうに振るとコストがこれくらいこう変わるというようなところが後からよく分かるように、内訳がよく分かるように進めていっていただけると今後につながるのではないかというふうに思います。例えばですが先ほどちらっと出た規制対応のお話も、研究炉の場合には発電炉とは全く違うお話にはなりますが、ただ、過剰な部分であるとか規制についても見直しをしていかなければいけない部分というのが多々ある中で、そうした一つのきっかけにもなるように内訳をお示しいただくといったようなところをしていただけると有り難いなというふうに思っております。私からは以上でございます。
【出光主査】 ありがとうございます。大場先生、どうぞ。
【大場委員】 長岡技術科学大学の大場です。ご説明ありがとうございました。3点あります。1点目は竹内委員のご指摘と同じですが、やはり適切に計画通り進めていくことが日本の科学技術全体にとって非常に重要である中、この試験研究炉の意義や取組をきちんと国民に理解いただくことが非常に重要だと思います。原子力というだけで起きる反応がある中で、この試験研究炉は既にあるものも含めてどういう意義があるのかということを、ぜひ適切に広報していただきたく思っております。
また、2点目ですが、こちらも竹内委員がおっしゃったことに近いのですけれども、総工費等のお話がありましたが、科学の様々な開発等の進行形の段階においても常により良い方向へフレキシブルに対応できるということが重要だと思っております。一旦計画したり作ったりした後も、さらにフレキシブルに現状に合った、あるいは未来を見据えた対応ができる設計等にしていただきたいと考えます。
また、3点目ですが、地域関連施設検討ワーキンググループは非常に素晴らしいなと思いながら見ていたところではあるのですが、こちらが実際に運用される頃は日本の少子化が一層進んでいるという状況になると思います。先日全く別なところである市町村が今後どれくらい人口が減るのかというのを自分でも計算した際、予想を超える急激な減少に驚いたのですが、それはすなわち研究人材も年齢の若い層がもっと減ってしまうことを意味します。そうした中で本当に適切な計画になるのかと、地域との関係性というのも、こういうものは自分たちの希望する良い未来を見て作ってしまうところがあるのですが、より現実に沿った形で地域の今後というのを見据えながら地域も巻き込んで行っていただければと思いました。以上です。
【出光主査】 ありがとうございます。この件、奥課長の方から何かコメントはありますか?
【奥原子力課長】 いろいろコメントいただきありがとうございました。まず、この新試験研究炉の意義はおっしゃるとおりで、新規制基準になってからこういう炉を新しく作るというのはおそらく初めてのことになると思うので、原子力の今後の技術基盤の維持・継承という意味からもやる意義というのは非常に大きいと思いますし、原子力そのものがいわゆるエネルギー利用だけではなくて医療であるとか材料であるとかいろんな分野に適用可能な幅広い分野でもあるので、そうした利活用の意義というのを積極的に発信するということは非常に大事かと思っています。
もう一つはニーズを踏まえてというところですが、おっしゃるとおりこのもんじゅの新試験研究炉はいわゆるアカデミアのための研究利用だけではなくて産業界にも広く利用を供するということも目的の一つに据えていますという観点からも産業界、もちろんアカデミアも含めてですが、様々なニーズを踏まえてそれに適合するような実験装置群の検討という話もありましたが、進めていく必要があるというふうに思っておりますので、幅広い主体を巻き込んだ形での検討というのをきちんと進めてまいりたいというふうに思っています。
もう一つは総工費の話ですね。おっしゃるとおり様々な材料が高騰している中で総工費を見積もるのはなかなか難しいのですが、この傘下の作業部会の方で次回の作業部会は6月7日を予定しているのですが、そこの場であらあらの総工費と当面の必要額というのを示すことを想定しています。その際にはざくっとこの金額というだけではなくて、大体内訳としてこういうものが必要だということを大まか示せるような形にしていきたいなというふうに思っていますので、こちらはまた後ほど改めてこの委員会の方にもご提案させていただきたいというふうに思っています。
【出光主査】 ありがとうございました。他にございますでしょうか。先のある話で少し夢がある話かと思いますので、ぜひ計画通りに、また、より良いものになるように進めていただければと思います。よろしゅうございますでしょうか。Webの方も特によろしいですか? そうしましたら、最初の議題は以上といたしまして、次の議題に進みたいと思います。
本日二つ目の議題ということで「常陽」の運転再開に向けた課題と高速炉の燃料技術開発
ということで、まずは資料の説明からお願いいたします。
【井出戦略官】 それでは、井手の方から御説明をいたします。2枚目に行っていただきますと、「常陽」に係るこれまでの審議経過ということでございまして、まず人材部会の方で2回の御議論を頂いています。1回目が3月7日で、この時にはJAEAの方から「常陽」の運転再開に向けた取組と再開後の利用方策について、また、エネ庁の方にも来ていただきまして実証炉の開発についてもお話を頂いています。この時に私の方から当面の課題ということで「常陽」の研究開発に係る課題についてもご説明いたしました。2回目が5月10日でございまして、この時は原子力安全研究協会の山口理事にお越しいただきまして原子力政策と「常陽」に対する期待ということをお話しいただきました。もう一つは高速炉「常陽」の燃料の開発につきましてJAEAの方から御説明を頂いております。
1枚めくっていただきまして、まず「常陽」の概要でございますが、「常陽」は我が国初の高速炉ということでございまして、昭和52年に初臨界ということで、もう40年以上経っているということでございまして、7万時間ぐらい運転をしております。初めての高速炉ということでございますので、ナトリウム冷却系の特性ですとか、あるいは初めての高速炉としてのプラントの技術的な経験の蓄積といった成果が出ております。ただ、平成19年に定期検査中に機器の破損がございまして、これによって今止まってしまっているという状況でございます。こちらは今設備は復旧いたしまして、その間に規制基準が変わりましたので、今はその新しい基準に対して安全審査を求めて去年の7月にこちらの許可を取得しております。今はその取得した許可に基づきましてそれに適合するための安全工事を進めているという状況でございます。2026年度中頃に再稼働の予定となっております。大洗町にございますけれども茨城県の安全対策委員会、こちらには既に昨年御説明をいたしまして、新規制基準を踏まえた安全対策についておおむね妥当という御判断を頂いています。運転再開後は後ほどもう少し詳しくご説明いたしますけれども、OECD諸国で唯一稼働している中性子照射場の高速炉ということでございますので、特にこの先2040年代に実証炉を作っていくという動きもございますので、こちらについて照射の試験ですとか、あるいは先ほどの新試験研究炉でもございましたけれどもラジオアイソトープ、こちらの場合アクチニウム225というものですが、こちらの製造実証等に向けて進めていきたいというふうに考えております。
その次の頁をご覧いただきますと、こちらは今の新規制基準に対応するための具体的な工事の内容でございますが、一つが自然災害対応ということでございます。こちらは規制が非常に厳しくなりましたので、例えば竜巻に対して飛来物が飛んできた場合には壊れないように補強するとか、また、地震対策といたしまして地盤の改良工事、地震そのものに対する対策といたしましてはナトリウムの冷却系の配管がたくさんございますのでこちらの支持系の追加ですとか強化というようなことをいたします。また、事故の対策ということでございまして火災対策。こちらのたくさん走っておりますケーブルの難燃化ですとか、あるいは隔離というようなこと、更には重大事故に対する防止策、こういったものを進めている状況でございます。
次の頁に行っていただきますと、今後の利用方策で、2026年の中頃動き始めた後でございますが、一つは次世代の⾰新炉ということでございまして2040年代に実証炉を動かしていきたいということで今経済産業省を中心に動いておりますけれども、こちらの開発を進めるにあたってやはり一つ実証炉ということで経済性を実証していくというところがございますので、そこの実証炉で使う燃料の照射の試験ですとか、あるいは材料の照射を行っていくというのが一つございます。もう一つは、実証炉の中で環境の負荷を低減していくということで、この二つ目のチェックでございますが放射性廃棄物の有害度を低減していくためにマイナーアクチノイドという半減期が長くて発熱性の放射性物質を廃棄物から取り除きまして、これを燃料にして燃やしていくということがもう一つの大きな目標となっておりますので、そういった研究を進めていくということがございます。
二つ目の大きな利用方策といたしましては新しい医療への貢献ということでございまして、先進的ながん治療、今ラジオアイソトープのアクチニウム225というものを作っていくために「常陽」で実証していくということが計画されております。これは非常にがんに効くということでございますので、この薬剤の研究開発を進めていくというのが一つございます。
また、三つ目でございますけれど、これまで「常陽」を動かしてきてフランスですとかアメリカですとかと国際協力を進んでおりますし、また、大学とかとも協力して例えば核融合炉ですとか他の高速炉のための様々な材料研究を行っております。こうしたことを今後も進めていくということがございますし、あともんじゅを動かすために日々様々な技術者・研究者に来ていただいて「常陽」の中で研修をしていただくと。あるいはメーカーからも来ていただきますし、アジアの諸国からもこれまでたくさん来ていただいておりますので、そういった技術者・研究者の育成を続けていくということがございます。
次の頁に行っていただきまして、高速炉開発に係る政策文書でございます。政策文書の中に「常陽」への期待としてどういうことが書かれているかということがございます。一つは2022年の12月に改訂されました戦略ロードマップです。この中で次世代の実証炉の開発ということが書かれておりまして、2023年の夏に実証炉の炉概念を選定したと。今年度から28年度まで掛けてその実証炉の概念設計を行ってまいります。その中で「常陽」等でその研究基盤を支えていくということがございます。
また、グリーン成長戦略、これは2022年の6月でございますが、この中では2024年以降の技術の絞り込みを行い、こちらで「常陽」での照射試験等による検証が不可欠ということがございますし、やはりラジオアイソトープを大量に製造することは可能となっておりますので、そういった先進的ながん治療への貢献が考えられますというふうに書かれております。
また、昨年のGXの基本方針、この中で直接的には書かれておりませんが次世代⾰新炉の開発に取り組むということでございますので、これを支えていく「常陽」も必要になってくるということがございます。
その次の頁をお願いいたします。今お話しした中で「常陽」への期待といたしまして大きく二つ、一つは実証炉の開発に対する「常陽」への期待ということがございます。先ほど申しましたように高速炉の燃料ですとか炉心の材料といったものの研究開発をやはり進めていくという、高速中性子が当たるこうした燃料とか材料の研究を「常陽」の方でしていくという必要がございます。もう一つはやはり経済性を向上するというのが大きな実証炉の目的でございますので、実証炉で使っていく太径の中空燃料ですとか、あるいはODS鋼という被覆管がございますが、こういったものを照射いたしましてなるべくこういったものが長持ちする、あるいは高温で使うことができるというような研究をいたしまして、それによってなるべく少ない燃料で高効率で燃やしていく、あるいは高温で発電効率をアップしていく、こんな研究を進めていきたいというふうに考えております。
また、二つ目はマイナーアクチノイドで、非常に高温で毒性が強い放射性廃棄物でございますが、こういったものを燃やしていくということでございまして、使用済み燃料からこのマイナーアクチノイドを回収してそれを燃料にしていくと。そしてそれを燃やしていく研究です。最終的にこれは実証炉で行いますが、その事前の研究を「常陽」で行っていくということでございます。また、こうした研究を行っていくにあたって「常陽」で照射するだけでは足りないということがございまして、この写真の中にも書いてありますが照射した燃料や材料を扱うことができるFMFという施設を「常陽」は併設しておりますので、こういったところを使って燃料ですとか材料を照射した後に検査あるいはいろんな測定をしていくということを考えております。
次の頁に行っていただきますと、実証炉に向けた「常陽」を使った研究開発でございますが、もう一つ「常陽」を使って医療用のラジオアイソトープ特にアクチニウム225の生産のための実証研究をしていくということがございます。左側にこのアクチニウム225というものについて少し説明してありますが、がん細胞を非常に死滅させる効果の高いα線をたくさん出すと。4回崩壊してα線を出すという性質がございますので、これを作る研究をしていくと。また、α線は非常に飛距離も短いということでございまして、通常アクチニウム225以外の核種を投与された患者というのは放射線の管理区域で少し管理していなければいけないのですが、そういう方の入退室の管理というのを緩和することもできるということで、患者さんにとっても非常にメリットが大きいということがございます。ただ、このアクチニウム225というのは今非常に供給量が不足しておりまして、今全世界で年間3,000人分ぐらいしか供給されていないということで非常に足りないということがございますので、今このアクチニウム225の確保が十分でないという状況もございます。
こちらを用いまして、この右側になりますが「常陽」を用いて研究していくということでございます。「常陽」は軽水炉に比べて10倍程度の高速中性子束を有するということでございまして非常にたくさんの体積に中性子を当てることができて大量にこういうものを作ることができるというメリットがございます。もう一つは先ほど1枚前でもご説明いたしましたが、照射燃料の集合体の試験施設(FMF)が「常陽」に併設をしておりますので、こちらを使って迅速に照射後に化学処理をしてアクチニウム225を取り出すことができるというメリットがございます。こうした中でラジオアイソトープに関する生産について設置変更の許可を今年の2月に規制庁に対して申請をしておりまして、令和8年度にはアクチニウム225の生産に向けて製造実証をしていくという予定になっております。
では続きまして次の頁でございますが、こちらは原子力の技術と市場の関係を示したものでございまして、こちらOECD/NEAのSMR Dashboardというところの資料を少し改変したというものでございますが、左側に原子力のいろんな技術、これは高速炉に限らずいろんなマイクロ炉とか溶融塩炉とかございまして、炉の設置方式もいろいろございます。通常はこういう原子力のいろんな技術の種をもって市場側にプッシュしていくということで、また、市場側ではそれを使って例えばRI製造ですとか資源を何回もリサイクルして利用できるですとかそういういろんなメリットがあって、そのメリットの方でプルをしていくという、一般的にはそういう構造になっておりますけれど、原子力の場合はその間に実現のための要件というのがなかなか厳しいところがいろいろございまして、例えば国の政策にも大きく左右される部分もございますし、あるいは規制というものもございますし、あるいは炉で照射するだけではなくてその前と後の部分、燃料を作ったりそれを処理していくというところもございます。また、一般的な技術と同じようにサプライチェーンですとか人材供給ですとかこういう問題もございますので、「常陽」を使って正にこういうところの実現のための要件のところを解決していくことがある程度可能であるというふうに考えています。これは「常陽」を使って市場化のためのRIの製造とか実際の廃棄物の減容化とかそういうところだけではなくて、実現のための要件のところを「常陽」を使って実現していくことができるというふうに考えています。
次の頁お願いします。具体的に「常陽」に期待することでございますが、次世代炉の開発のためには炉の開発自体とバックエンドプロセスの開発が非常に重要ですと。我が国は核燃料サイクルを基本方針としておりまして、こうすることによってエネルギーの安全保障ですとか、あるいは資源のエネルギー・ソブリンティといったものの確保ですとか、資源の有効利用ができるということがございます。そのためには高速炉のスペクトル中性子の活用がどうしても必要になってくるということで、それを実現することができる「常陽」というのは非常に大きなアドバンテージがございます。高速スペクトル中性子の更なる付加価値といたしまして、高次化したプルトニウムですとか先ほどの放射性廃棄物の中にあるマイナーアクチノイドといったものを燃やすことができるという大きなメリットもございます。こうした中性子を活用して原子力技術を開発して「常陽」で実現できることといたしまして、そういった技術を有効となる条件を証明していくことができる、あるいは社会にこういったことを発信して実際に高速炉でこういうことができるのだということをデモンストレーションしていくことができるというようなメリットがあると考えています。
続きまして次の頁ですが、「常陽」の運転の計画のイメージと今後の課題ということでございまして、これは「常陽」の燃料のお話でございますが、「常陽」は当面運転するためには在庫燃料で可能でございますが、高速炉の実用化に向けた実証の研究のためには中長期でやはり燃料の研究等を進めていく必要がございますので、やはり新しい燃料の供給が必要ということでございます。その燃料の調達先の候補といたしましていくつかございます。これまでプルトニウムの開発のための施設がございましたのでそういったところで「常陽」の燃料というのは作られてきたのですが、規制の関係でなかなかそこで今作っていくのが難しいということがございますので、新しい調達先として既存のある程度の施設を改造するですとか、あるいは新しい施設を作っていく、あるいは海外にそれを求めていくというような可能性について今機構の方で検討していただいています。ただ、それぞれに様々な課題がございまして、やはり既存施設の活用につきまして、あるいは新規施設もそうなのですが、新規制基準への対応をしなければいけないというところで非常に大きなお金も掛かってくるというようなこともございます。また、海外調達にしましても「常陽」の炉心にちゃんと合ったものを海外から輸入できるかとか、あるいは「常陽」を動かすスケジュールとの整合性ですとか国際情勢とかいろいろ考えていかなければいけないというところがございますので、この辺りについて今機構の方で検討していただいているという状況でございます。
その下にございますのは、実証炉が2040年に向けて運転を開始すると。その中で基本設計、詳細設計と進んでいくわけですが、その中で「常陽」をしっかり動かして、その下にございますようにMOX燃料とか金属燃料になりますとか、こういったものの様々な照射試験をしていきたいというふうに考えておりまして、これを長期的にきちんとやっていくための新しい燃料が必要であるというふうに考えております。
次の頁に行っていただきまして、これまでにご審議いただきました主な御意見をこちらにまとめております。人材部会で先生方から頂いた御意見がございます。三つに分けておりまして、「常陽」の運転再開に向けてということでございまして、照射後の試験もセットで行う必要があり、照射するだけではよくないということでございますので、先ほどのFMFといった照射した燃料とか材料の試験施設といった施設の整備も「常陽」そのものの安全対策工事と両輪で進めていく必要があるというのが一つございます。あと、新規制基準対応をこれまで規制庁としておりまして、それを受けて安全対策工事を今しておりますが、そういったところで様々な知見を蓄積しておりますので、そういったものを実証炉ですとか今後の商用炉にちゃんと生かしていくべきというような御意見を頂いております。
また、二つ目は運転再開後でございますが、これはやはりOECD諸国において唯一の高速炉と実験炉ということでございますので非常に大きな意義があるということでございますので、こちらをちゃんとアピールしていくべきということ。あと研究者を引き付けるための最先端の研究が可能な施設ということで、研究そのものだけではなくて国際協力とか人材育成にも役立てていくべきという御意見を頂きます。また、実証炉の開発に向けて非常にいろんなデータを取得していくという利活用が重要だということで、こういったデータは実際に利用するだけではなくて学術的にも非常にレベルの高いデータであるということで貴重ですということも言っておられます。
「常陽」の新燃料の供給は、先ほどもご説明しましたが、いろんな選択肢がある中でコストだけではなくて時間的な整合性も考えていく必要があると。また、燃料の確保に向けた検討を行う中で、なかなか今そのサプライチェーンがうまく回っていないところもございますので、そのサプライチェーンの観点でも非常に大きな効果があるのではないかという御意見も頂いております。
こちらの頁は先ほどご説明したバックグラウンドと同じでございますので端折らせていただきまして、先ほど頂きました御意見を踏まえて当面の課題と今後の方向性ということでこちらにまとめております。「常陽」の運転再開に向けて、一つは運転に必要な体制、人員の確保ですとかそういった方々を熟練していく必要がある、訓練していく必要があるということとともに、関連施設を含めて建造してから40年程度経っておりますのでやはり安全対策とともに高経年化対策等にも取り組んでいく必要があるということがございます。あと、OECD諸国で唯一稼働可能な中性子照射場ということでございますので、そういったことを積極的に対外的にも発信していくべきだということと、さらに国内外に対して多様な利用をいろんなところとコネクションを設けて模索していくべきだという方向性もございます。また、運転再開の過程で規制への対応等様々な知見が得られております。これからも得られていくので、そういったものをちゃんと実証開発等にも生かしていきましょうということがございます。
運転の再開後の計画でございますが、こちらはずっとご説明してきておりますように実証炉ですとか商用炉の燃料の高度化、あるいは材料の高度化の照射試験、あるいはマイナーアクチノイドの燃焼試験といったものを実施していくと。あるいはラジオアイソトープ(アクチニウム225)の製造実証を行っていくと。そのために薬剤の研究開発の推進に関する協力体制。今年の2月に国立のがん研究所と協定を結んで一緒にやっていくということがございますが、そういった体制をきちんと構築していきましょうと。また、国内外の大学との先端的な研究あるいは若手技術者の人材育成にも貢献していくべきというような方向性もございます。
3番目として新燃料の供給でございますが、「常陽」の活用等の照射試験の継続的な実施が必要ですということがございますので、やはり新燃料をちゃんと確保していくと。そのための確保方策はいくつもありますが早急に検討を進めて見通しを得る必要があるのではないかということでまとめております。こういった方向で今後検討していきたいということでございます。御説明は以上でございます。
【出光主査】 ありがとうございます。それでは、ただ今の御説明に対しまして御質問あるいは御意見がございましたらお願いいたします。吉橋先生、どうぞ。
【吉橋委員】 名古屋大学の吉橋です。ご説明ありがとうございました。先ほどの議題1の研究炉と同様に、あちらの場合は主に熱中性子がメインだと思うのですが、中性子工学としてこういった高速炉、高速中性子を使った研究というのも非常に今後重要になってくると思いますので、引き続きいろいろ検討していただきたいなと思います。
御説明にもたくさんありましたが、やはり長寿命核種、こういったものの廃棄物減容とかいう話も出てきましたし、特にRIの製造ですね。核医学は今ものすごくホットな研究内容にはなっているにもかかわらず、このアクチニウムや先ほどのモリブデンだけでもなくていろんな核種が検討されているわけですが、そういったものが検討されつつも実際に利用できるかできないか、作れるのか作れないのか、供給不足、そういったところがやはり核医学のところでも問題になっていると思いますので、そういったところの研究がどんどんこういったところで進められて発展していくと、先ほど人材育成という話もありましたが、医学だけではなくて原子力放射線をやっている学生たちにも非常に夢が膨らんでくる話だと思いますので、ぜひこういったところを積極的に進めていただけたらよいなと思います。よろしくお願いします。
【出光主査】 ありがとうございました。では他に御質問、御意見ございますでしょうか。新井委員、どうぞ。
【新井委員】 日本原子力産業協会の新井です。「常陽」は貴重な炉ですので2026年の運転再開をぜひ果たして戦略ロードマップにのっとって高速炉の実証炉開発に貢献していただきたいというふうに思います。それと、これまでも委員の方から意見が出ましたし今の先生の御意見と少しかぶるのですが、放射性廃棄物の有害度低減ですとか新しい医療への貢献というのが一般的には余り知られていない原子力放射線の魅力なのではないかというふうに思います。社会に発信するというのが10頁の一番下に書いてあります。高速炉の価値を見いだし社会に発信していくというのはとても重要だというふうに思います。研究成果を上手にPRする等でこのような原子力、放射線の価値、貢献を広く社会に知ってもらって、将来の担い手である若い人たちを引き付けていただきたいというふうに思います。以上です。
【出光主査】 ありがとうございます。他ございますでしょうか。黒﨑先生、どうぞ。
【黒﨑委員】 ありがとうございます。今日の説明の中で私が一番重要だと思ったのは、いくつか出てきたのですがOECD諸国の中で唯一の高速中性子場というところです。今、例えば中国とかロシアとかは高速炉にしろ高温ガス炉の辺りはかなり先に走っていまして、一方で米国・英国などはこれから高速炉、高温ガス炉をやっていこうというような話になっています。そういう中で、日本の中で高速炉の「常陽」、高温ガス炉のHTTRの二つが、「常陽」はもうすぐですが、稼働している状況であるということは実は非常に意義が高いのではないかというふうに思っています。例えば今の原子力開発、全て日本国内の中で閉じてできればよいのですが、なかなかそういうわけにはいかなくて、やはり国際連携、国際協力をしながら研究開発を進めているという面もあります。一例を挙げると、材料の照射研究などでいうと例えば米国と連携していますし、あと軽水炉燃料の再処理などの話でいうとフランスと連携してやっていると。そんのような国際連携が非常に重要な中で「常陽」を我々が持っているということは本当に重要であって、多分OECD諸国から見たときにこの「常陽」というのを使いたい、そこで研究したいという人はものすごくたくさんいると思うのです。何が言いたいかというと、非常に期待感の高いものなのでしっかりやってくださいという、そういう話でした。以上です。
【出光主査】 ありがとうございます。では、竹内委員。
【竹内委員】 ありがとうございます。もう私も今までご発言なさった先生方と一緒で、極めて期待の高いということで、ぜひ遅れることなく進めていただければというふうに思います。ご説明いただいた中でやはりとても重要だなと思ったのがスライド9のところにあります原子力技術、これは原子力に限らずやはり技術というものはおしなべて社会に実装する上では環境整備が重要であって、ここのブリッジが十分でないと技術のポテンシャルというのは発揮できないものなのだろうというふうに思います。これは原子力に限らずの話だというふうに思います。そうした中で、よく私は原子力というのは本当に国民に安定的に安価に極めて大量の脱炭素電源を供給するポテンシャルのある技術であると。ただ、原子力の電気が高いのか安いのかというのは未だにチャレンジもいろいろある中でですが、やはり政策・規制・法制といったものが整うと極めて高いポテンシャルを発揮する技術であろうというふうに思います。ですので、こういった技術について開発を進めるということであれば同時にやはりどれくらいのこの事業環境をしなければいけないのかというところを進めながらでないと、やはり技術だけを一生懸命高めていってもなかなかそのポテンシャルが発揮されることはないということになってしまうのだろうというふうに思います。そうした中でどういう政策が必要なのか、どういう規制が適正なのか、あるいはそれこそ文科省さんの所管でいえば原子力損害賠償制度等、どのようにすれば民間事業者が創意工夫の中でこの技術を使っていくことができるのか。こういったことを極めてよく見極める必要がある。
もう一つ言いますと、サプライチェーン等を維持するためにはやはり工場の生産ラインとかを維持するあるいは開発するということですとこれからどれくらいの規模で日本がこの技術を使っていくのかというトップラインが見えないとメーカーさんは動くことができないかと思います。ですので、そういった大きなビジョンというものを極めてやはり信頼度高く示していくということが重要になってきますので、スライド9でお示しいただいた真ん中の赤字の部分と同時に、「常陽」の活用ですとかそういったところを進めていただくというようなところ、これは「常陽」のところに絡めて申し上げるのが適切だったかどうか分からないのですが、せっかくとても良いスライドを出していただいておりますので、ここを意識していただければ有り難いなということだけコメントさせていただければと思います。
【出光主査】 ありがとうございます。大場先生、どうぞ。
【大場委員】 ありがとうございます。私もここで言うべきなのかと迷っていたのですが竹内委員が言ってくださったので続きます。この後の人材育成に関わってくる話ですが、このスライド9の真ん中のところ、そして先ほど黒﨑先生が御指摘の次の頁の社会に発信するデモンストレーション、イノベーションもそうかもしれませんが、ここに関わってもらえる人材を育成するということ、あるいはその分野に魅力があるのだということを伝えるということも、こうした「常陽」等の中から発信できたらと考えます。後ほどの議論に関わるかと思いますが一言コメントさせていただきます。よろしくお願いします。
【出光主査】 ありがとうございます。他ございますでしょうか。小澤様、どうぞ。
【小澤原子力部長(日本電機工業会)】 ありがとうございます。日本電機工業会オブザーバーの小澤でございます。高速炉についても「もんじゅ」の初臨界からもう30年経っているということで、これも久しぶりのことになろうかと思いますし、高速炉の価値という意味では非常に大きい期待があると思います。先ほど御指摘がありましたようにOECDでは唯一かもしれませんが、中国・ロシアが先に行っているということであれば、日本もうかうかしていられないという危機感でもって推進する必要があると思います。日本で実証炉の計画が立っていますので、そこにいかに「常陽」からタマ球を出せるか。実際にその実証炉がうまくいって商業化ができるか。使ってなんぼの世界に踏み込めるか、。というところが一つの大きなゴールになろうかと思いますので、そこに向かっていくべきなのだろうなと思います。それから、日本だけでというわけにもいかず、やはり国際協力をしながらしたたかに、世界で一番良いものが日本に残るようにやっていくべきかと思っております。
それから高速炉の価値については、後ろの方のスライドの21で具体的に示されているのが、軽水炉のワンススルーに比べて高速炉の無限回サイクルの発電量が100倍の数字が出ているということで、同じウランの量でこれだけの発電ができるというのは大きい価値だし、24頁に行っていただきますと、高レベル廃棄物の有害度低減・減容のところも、何がどう有害度が軽減できて貢献できるのか、高速炉で何ができるのかというところが具体的に示されていると思いますので、この辺、今まで10万年が300年みたいな話が出回っていますが、具体的にどこを狙って何が危なくて何が大丈夫なんだというところをセットで学びながら発信していくということも必要ではないかと思っております。以上です。
【出光主査】 ありがとうございます。他ございますでしょうか。では私の方から。期待が大きいというところは非常に皆様からいっぱい出していただきまして、逆に懸念の方を2点ほど。サプライチェーンについてですがなかなか厳しくなっていまして、既に失われた技術もいくつかございますのでそれをうまく復活させられるのかどうか。それに向けても、実証炉に向けてこれがビジネスとしてやれるというのを見せないとサプライチェーンが育っていかないというのがありますので、その辺りを踏まえて進めていただきたいというところが1つです。
あともう1つはRI製造の方なのですが、先ほど「常陽」の場合横にFMFがあるということなのですが、FMFは核燃料の施設で、RI製造というと純粋RIということで今規制がRIと核燃料が完全に分離していますので、そこをうまく考えないと、新しく建物・設備等を作り直さなければいけないという形になるかと思います。うまくその辺り、規制の方が歩み寄っていただければ有り難いところではあると思いますが、この期待が強いというところも含めて規制側に何らかの働き掛けをしていく必要があるかと思います。以上です。他ございますでしょうか。では、井出さんの方から何かコメントなどはありますか?
【井出戦略官】 先生方から非常に期待が大きいというところもございまして、皆さん応援いただいたということもございまして、まずはやはり安全対策をしっかり工事をやっていくということでございますし、26年にちゃんと動かしていくということが必要だと思います。RIについてもかなり最近特にα核種については非常に期待が急激に世界的に高まっているということも聞いておりますので、それも動き始めてなるべくすぐに実証の研究を進めていくと。実証炉の方も遅らせるわけにはいかないので、そのための基礎的な研究をちゃんとやっていくということだと思っております。また、加えて先生方からいろいろお話しいただきました。ちゃんと魅力をアピールしていくというところも、人材を今後集めていくとか育成していくためにもそういったところをしっかり進めていきたいというふうに考えております。どうもありがとうございました。
【出光主査】 ありがとうございます。他追加等ございますでしょうか。Webの方も特にないですか? では、ありがとうございました。それでは二つ目の議題は以上とさせていただきます。
三つ目の議題に移らせていただきます。原子力科学技術に関する研究・人材基盤の強化ということで、まず資料の御説明をお願いいたします。
【奥原子力課長】 資料の説明に入る前に、山本先生は入っていらっしゃいますでしょうか。
【山本先生】 名大の山本です。よろしくお願いいたします。
【奥原子力課長】 よろしくお願いいたします。では、資料3に基づいて御説明をさせていただきます。めくっていただいて3頁目になります。この委員会の方で原子力科学技術に関する今後の方向性というのを検討するにあたり昨年の12月にこの5本柱を掲げさせていただいています。1つ目の新試験研究炉、それと次世代⾰新炉のうち「常陽」は先ほどご説明させていただいたとおりです。バックエンド対策に関しては別にバックエンド作業部会というところがありまして、ここで検討を進めているところです。もう4つ目の柱として、極めて文科省らしいですが研究人材育成基盤の強化というところを柱と掲げていまして、その中でも(1)で原子力科学技術・イノベーションいわゆる基礎研究の推進、それと(2)で人材育成機能の強化という、この二つを具体的な柱として掲げさせていただいています。5つ目は福島第一原発の廃止措置への対応になります。ということで今回はこの4つ目の柱のところの具体的な方策について事務局の案を説明させていただいて、御意見を頂ければと思っております。
4頁目。現状をまず改めて振り返ると、左側の図にありますように原子力の分野はかつてはトップ集団を走っていたと思いますが、今は2位集団、3位集団に落ち込んでしまっていると。それも右側にありますように原子力関係学科に進む入学者数、学生の数というのが大きく減少しているというところもありますし、先ほど少し話がありましたが原子力工学の専攻を置いているような大学というのが減ってしまっていると。今は学部レベルでは私立大学2校になってしまっているという辺りも非常に問題かというふうに思っています。
こうした中で5頁目のところで各種政策文書において原子力の重要性というのを指摘いただいています。次世代⾰新炉の開発であるとか研究開発人材育成の基盤強化に努めると書いていただいていますが、この具体策をやはり強化していかないといけないだろうというのが我々の問題意識です。というところで一つ目、基礎研究に関してですが、原子力システム研究開発事業という我々の競争的資金制度があります。こちらの中身について今後少し見直しをしていこうかということで御提案をさせていただいているものです。
7頁目になりますが、この原子力システム研究開発事業は年間大体10億円強の競争的資金制度になります。原子力をもっぱらの目的とする唯一の競争的資金制度であると思っています。これについてはNEXIPイニシアティブといういわゆる経産省と連携・協力しながら進めていくという制度になっていまして、文科省はいわゆる基礎研究寄り、経産省の方が実用志向の研究ということで、この両方を密接に連携させることで新しい原子力システムを作っていこうというプログラムになっています。現在この原シスの事業ですが、基盤チーム、ボトルネック、新発想、それと今年度から特定課題推進型という四つの枠組みの下で研究開発の支援をしています。基盤チームは一番大きいもので大体1億円ぐらいで4年間の研究、それ以外のボトルネック、新発想型は数千万円のレベルで研究支援を行っているものです。PD・POに全体を統括していただいていまして、本日御参加の山本先生にこのプログラムのPOを務めていただいています。
8頁目・9頁目で現在の原子力システム研究開発事業の採択のテーマを書かせていただいています。8頁目、基盤チームは少なくて2課題程度ですが、ボトルネック、新発想は一番多くて10課題程度が走っているところです。9頁目のところでこれまで採択された主なテーマ例というのを書いています。かなり分散していますが最近では医療用のRIであるとか放射線の廃棄物の処理みたいなものもテーマとして選定をされているところです。
この事業について10頁目で主な課題というのを書かせていただいています。我々としてこの検討を始めるにあたって各大学の先生たち、あるいは原子力機構の方々、企業の方々に広くヒアリングをさせていただきました。そこの中から抽出された課題というのを主なものをピックアップしています。繰り返しになりますが原子力システムの事業ですが原子力をもっぱらの目的とする唯一の競争的資金制度ですので、広く成果をいろいろ招集しているところですが、やはりいくつか課題があるかと。一つ目は事業の位置付けですが、この事業について国の原子力政策の中で明確な位置付けが必ずしもなされていないというところ。それと先ほど申し上げたようにアカデミアの研究水準が下がっているというところでこの事業というのがきちんと研究人材の基盤の強化につながっているのかというところ。あるいはNEXIPの枠組みで経産省と協力しながらやっているというところですが、実際にその経産省の事業であるとか企業の事業の方に結び付いているのかどうかという辺りも問題かと思っています。また、実際に今課題提案されている課題の関係ですが、既存の研究開発の延長線上にあるようなテーマが中心となってしまっていて、本来アカデミアに期待されているような新規性のある研究課題であるとか挑戦的な研究テーマという提案が十分ではないのではないかということ。あと原子力以外の周辺分野は電気電子であるとか材料であるとか関係する分野は多々あると思うのですが、そこら辺との連携・協力というのは必ずしも十分ではないのではないかと。あるいは将来的な事業の成果の展開を見据えて他の研究機関とか企業との共同研究というのは十分なのかどうかという辺りも問題かと。あるいは若手の研究者に十分独立した研究者として参画させるような仕組みになっているのかどうかという辺りも問題かと。あと事業の運営関係では現在の課題数というのは金額というのが十分なのかどうかということとか、あと実際に基盤は今4年、それ以外は3年の研究期間になっていますが、実質的な研究期間は2年半か2年ぐらいになってしまっているので、これで十分な研究期間かどうかという辺りも問題かと。あるいは現在のPD・POの体制の下で課題数を増やすとなるとこの体制で十分かどうかという辺りも問題かというふうに思っています。
ということで今後の見直しの方向性としてあくまで我々事務局の案ですが、11頁目・12頁目に書かせていただいています。まず、この事業自体は唯一の競争的資金制度ということで原子力科学技術イノベーションいわゆる基礎研究の中核を担うような事業として明確に位置付ける必要があるだろうと。その上で、その中身についていくつか見直しが必要かと。①で新規テーマ・枠組みの創設とありますが、これまでの基盤、ボトルネック、新発想というものを再編して新しく新領域開拓型(仮称)のような形でテーマ・枠組みを新設してはどうかと。これについて特に原子力のアカデミアの発展を促すべく新規性・独創性・革新性・挑戦性の高い研究テーマを支援するということにしてはどうかと。具体的なテーマ設定とかは特に行わずに研究者の自由な発想に基づく研究提案を歓迎するという形にしてはどうかというのと、あと原子力以外の例えば原子核物理学、情報、医学、宇宙とか他の分野との連携・協力というのを積極的に推奨するという形にしてはどうかということを挙げています。こういった新領域開拓型のようなテーマを設定した上で、ここの中をいくつか金額の規模に応じてカテゴリー分けをしてはどうかということで、大規模のチーム型であるとか異分野融合、若手みたいなものにカテゴリー分けをしてはどうかということと、あと研究期間については基本的に5年間を原則としてはどうか。その際には3年目に中間評価をしてその後に続けるかどうかということを判断してはどうかということです。また、その研究支援の一環としてやはり研究と教育というのは表裏一体ですので、若手研究者の人材育成についても積極的に推奨するという形にしてはどうかということを書いています。
現行継続している課題については引き続き当然ながらその研究期間は継続するとして、新しい公募採択というのをこの新領域開拓型に一本化するという形にしてはどうかということも考えています。また、仮に課題数を増やすということになれば、この課題数に応じてPOの数というのを増やすということを考えてはどうかということ。それと、現在課題の審査をした段階と、あと中間・事後評価というのは必ずしも同じメンバーでやっていないというところがあるので、ここはメンバーを同じにして継続的に進捗管理するということも考えたらどうかということ。更には事業の成果展開に向けてコンソーシアムとか協議会みたいなものを設けたらどうかという辺りを書いています。
これをまとめたのが12頁目で、基盤、ボトルネック、一般・若手というのは、これを全て新領域開拓型に再編をして、それぞれカテゴリー分けをした上で研究期間を5年、金額規模はそれぞれのカテゴリーに応じた形で見直すということにしてはどうかと。発想としてはやはり新規性の高いような研究を支援する、あるいは異分野連携を積極的に推奨するということを旗印として掲げてはどうかというので見直し案を考えているところです。ここまでが基礎研究の事業になります。
続けて恐縮ですが人材の方に移らせていただきます。国際原子力人材育成イニシアティブ事業(人材イニシ)という事業を我々としても進めております。これは未来社会に向けた先進的原子力教育コンソーシアム、いわゆるANECというコンソーシアムを設けて、これに対する支援というのをこの事業で行っているところです。現在7年間を対象とするような人材育成策として既に支援を実施しているところです。これに対応する形でANECの枠組みが設立され、現在はカリキュラムグループ、国際グループ、実験実習グループ、産学連携グループとそれぞれ四つのグループに分けて活動を展開していただいているところです。複数の研究機関と大学が協力して人材育成に取り組むという枠組みでして非常に意義が大きいものだろうというふうに思っています。
15頁目・16頁目でANECの実際の活動の成果というのを書かせていただいています。特にカリキュラムグループの中ではオンラインの教材を製作して公開をしていたり、一部の大学ではその大学の単位の互換をするような取組も進んでいます。また、実験実習では原子炉の実習ができる炉というのが近畿大と京大しかないのですが、ここの炉をうまく使うことによって全国の大学を対象に実験実習の場を提供するということをやっています。また、16頁目のところで国際グループの中では各大学の学生というのを海外の大学に長期あるいは短期派遣をするというような取組をやっていただいています。
17頁目になりますが、こうした事業はやはり多くの参画者を得て非常に大きい成果を挙げていると思いますが、この人材について様々な指摘がされているところですので、こうした状況の変化を見据えて不断の見直しをしていくことが必要かというふうに思っています。現在の主な課題、指摘事項として下にいくつか挙げています。
まず一つ目、原子力の人材層の問題です。現在のANECの枠組みというのが基本的に原子力の関係機関の参画にとどまっているというところがあって、原子力の人材層、人数を増やしていくためにはやはりその原子力以外のコミュニティにも幅を広げていく必要があるのではないかということが一つ問題としてあります。また、ANECの枠組みは基本的に原子力の専門人材を育成するというところが中心になっているのですが、広く量を確保していくためには他学部とか他学科の学生を呼び込むような取組が必要なのではないかということ。単位互換も一部の大学にとどまっているところがあるので、他の大学にも広く広げていく必要があるかというふうに思っています。
また、大学研究機関の参画ですが、自主的な参画をしていただいているところですけれども、裾野を広げるとともに専門人材を育成していくためにはやはり特定の大学に参画をしてもらう必要があるのではないかということとか、その企業の参画というのをより増やすべきではないかというところ。メーカーが現在参加していただいているのですが、そこを更に広げていく必要があるのではないかという辺りも書かせていただいています。
また、他の人材育成の枠組みとして、原子力機構(JAEA)の中で原子力人材育成センターの取組であるとか、新井委員の所でやっていただいている原子力人材育成ネットワーク、日本原子力産業協会でやっている取組等々ありますが、こことANECの枠組みというのをうまく連携・協力していく必要があるかというところ。あるいはエネ庁であるとか原子力規制庁の方でも原子力人材の育成をやっていますが、こうした取組を政府の中でも一体的に進めていく必要があるのではないかという辺りを課題として書かせていただいています。
こうしたことを踏まえて18頁目・19頁目で見直しの方針というのを書かせていただいています。まず、このANECの枠組みは非常に有益な取組だと思いますので、これは国の原子力人材育成の中核事業としてきちんと位置付けていく必要があるだろうと。その際にやはり専門的な知識を持つトップレベルの人材と、多様な人材の裾野の拡大、ここは車の両輪として進めていく必要があるのではないかということを書いています。
見直しの方針として一つ目、この裾野の拡大をするにあたって原子力専攻以外の学生に対して教育機会を提供・拡大していくことが必要ではないかと。具体的には例えば一般教養科目であるとか共通横断科目あるいは副専攻みたいな形で他学部・他学科の学生に対して原子力を広く学んでもらうような教育機会を提供していくということが必要なのではないかということ。
また、二つ目として主要大学とありますが、いわゆる東大であるとか東工大みたいなトップレベルの人材を育成する大学にこのANECの枠組みの中に積極的に参画をしていただく。これによって専門人材、トップレベルの人材というのをより育成していく必要があるのではないかというのを書いています。
また、三つ目に企業の参画促進とありますが、メーカーさんにこの枠組みの中に参画いただいているのですけれども、そこを更に広げる必要があるのではないかということで、企業にとってもメリットを感じてもらうためにも、学生・研究者の交流機会の拡大であるとか、企業の職員の方々に大学の教育に参画してもらうであるとか、あるいは学生にインターンであるとか、企業における実務経験を拡大するであるとか、企業さんもそれなりに実験施設を持っている所がありますので、実験・実習の場として提供してもらうようなことが必要なのではないか。あるいは企業の職について大学でリカレント教育・リスキリングをしてもらうということも考え得るのではないかということを書いています。
また、当然ながらですが既存のネットワークであるとか他省庁の取組を有機的に連携させる必要があるのではないかということと、その際に事務局としてあるべきところを検討する必要があるかというふうに思っているところです。
また、19頁目はそれぞれ四つのグループでこのANECは活動をしていると申し上げましたが、それぞれのグループごとに見直しの方向性というのをいくつか書かせていただいています。重複するところもありますので重複を排除すると、国際グループのところでは英語で講義をするようなものであるとか、学生だけではなくて教員も海外に派遣するとか、それによって広く国際的な交流を展開するということが必要なのではないかであるとか。
実験実習については、大学あるいは企業で所有している小規模施設・設備というのをリストアップしてデータベース化したりであるとか、JAEAにおいて原子炉だけではなくて様々な実験に使えるような研究施設・設備がありますので、これを大学の教育に広く活用していくということも必要なのではないかという辺りを書かせていただいています。
この全体をまとめたのが20頁目のところで、全体としてやはりANECの人材の育成の層というのを拡大していく必要があるのではないかと。いわゆる専門人材、それと多様な人材、この裾野の拡大というのを車の両輪として進めていく必要があるだろうというのが模式図として書いているのが右のところです。この具体的な取組として、専門人材のためのカリキュラム開発に主要大学、東大、東工大みたいなところを参画してもらうことであるとか、後は実験・実習の機会の拡大、それと裾野の拡大、あるいは産業界の促進、それぞれについてこのANECは定期的に公募をしていますが、こういうことに積極的に取り組む課題に対して新しく採択をするということを考えていってはどうかということを書かせていただいています。冒頭申し上げたように、これを検討するにあたって様々な有識者の方々にコメントを頂いています。それを参考として付けさせていただいていますので、こちらもご参照いただければと思います。繰り返しになってしまいますが、この原子力システム研究開発事業のPO、人材育成事業のPDとして名大の山本先生に御尽力を頂いていますので、今回この御議論にも御参画を頂いているところです。私からの説明以上になります。
【出光主査】 ありがとうございます。それでは、まず山本先生にご参加されていますので、山本先生から御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いします。
【山本先生】 名大の山本です。今日はこういう会議にお呼びいただきまして、ありがとうございます。まず、人材と原シス両方に共通していえることなのですが、昨今やはり特にこの2、3年で原子力を取り巻く環境の変化がすごく大きく且つ速く変化しているというところで、その環境変化をしっかり取り入れないといけないかというふうに思っています。あともう一つ重要なのは、変えてよいところと変えていけないところの峻別が非常に重要な時期に差し掛かっているかというふうに思っております。
個別の話なのですが、まず原シスにつきましては、そもそも数年前のことを思い起こすと、どういうふうに日本として原子力に取り組んでいくのかというのを暗中模索だった時代から、今は⾰新炉ワーキングとかでこういう方向で行きましょうとロードマップが示されるということである程度方向性が見える形になっているわけですね。そういう状況で、こういう基盤を支える競争的資金としてこの原シスというのは非常に大きな存在で、これは先ほどご説明いただいたように中核事業として位置付けていただくというのは極めて妥当ではないかというふうに思っております。
今のボトルネック課題解決型というのはテーマをある程度示して公募をやってきたところがあるのですが、ニーズがあるテーマと実際それを実施できる研究者の方にある程度ギャップがある状態で、そういうことも考えると産官学の分担が再整理・再定義されるような形で、ご提案いただいたように門戸を広げるという方向性は妥当なのではないかというふうに思っています。
新領域という言葉を使って新しい取組、新しい領域をご説明いただいたわけなのですが、この前の議題でも会社との接点、産業界との接点の話があったと思うのですが、やはりこの原シスという事業はアカデミアに閉じてしまうとよろしくないかというふうには思っています。そういう意味では新領域というのはどうしても学術的なニュアンスが大学の人間としては受け取りがちではあるのですが、例えば実用に近いテーマであっても新しい考え方に基づく運用とか安全性向上あるいは効率向上ですね、こういう新しい応用領域という意味で新領域という意味を定義付けしてもよいのではないかというふうに思います。
あと原シスについて最後もう一点なのですが、計算科学を一つの主軸にして打ち出しております。昨今よくデジタル敗戦とかAI分野で日本は遅れていますねということをいわれているのですが、そういうことを加味しますと、引き続き計算科学というのを一つの主軸にするという方向性はそのままでもよいかというふうに思います。
次が人材育成の方です。こちらは先ほどご説明いただいたように現在の形になったのが令和2年で、もうかれこれ4年前なのですね。やはり国の取組とか世の中の雰囲気、情勢というのは変わっているというふうに認識しています。令和2年にスタートした時はその時の情勢も考えましてやはり原子力の中核の教育をきちんと保持するというところに注力していたわけですね。ただ、昨今情勢が変わりつつあるのでこういう形で見直すというのは妥当だというふうに思います。この事業についてもやはり国の中核として位置付けていただくというのは非常に重要で、特に他のネットワークと連携を図って、垣根といいますか境界をにじませていくといいますか、ぼかしていくといいますか、そういう取組は非常に有効だというふうに私も思います。
いろいろ問題意識をご提示いただいていますが、ANECの中での議論とほぼ重なっているというふうに理解しておりまして、今回の御提案は大雑把にいうと水平方向とか垂直方向に活動を広げていきましょうという、そういう環境あるいは基盤というのは整いつつあるのではないかというふうに感じています。多分重要なことは中核部分が空洞化しない意識が必要で、私自身のイメージとしては中核部分と水平方向、垂直方向に広げていく活動のボリューム感というのは8対2とか7対3ぐらいなのかなというふうには思っております。これまで4年間やってきてやはり私自身が一番難しいなと思っているのが組織間の連携です。大学間でもそうなのですが、特に省庁間の連携あるいは大学と産業界、ここはやはりかなり難しい問題がいろいろあって地道な取組が必要かというふうに思いますので、産業界の方もぜひ継続して支援頂きたいと思います。
最後なのですが、先ほどからサプライチェーンという言葉が何回か出てきております。このサプライチェーンが切れるという懸念がよく表明されているのですが、皆さんお感じになっておられるように人材もやはりチェーンなのですね。人材のチェーンというのが一回切れてしまうとやはりサプライチェーンに比べてずっとつなぎにくいというのも皆さんお感じになっているところだと思います。そういう意味ではこの人材チェーンというべきものの意義というのは非常に重要で、やはり原子力の安全確保と利用の最後の砦は人なので、こういうところで引き続き御支援、御協力を頂ければというふうに思っております。私からは以上になります。
【出光主査】 山本PO、ありがとうございました。それでは、文科省からの説明と山本POの御意見と併せまして御質問あるいは御意見がございましたらお願いいたします。どなたかございますでしょうか。では、石川委員。
【石川委員】 奥課長、山本先生、ご説明ありがとうございました。まず原シスの方なのですが、異分野連携を推奨されるとか、具体的なテーマの絞り込みは行わず自由発想な研究提案を公募、あと新規性、独創性、革新性、挑戦性を推奨するというのは、非常に私は良い方向性だというふうに感じております。この新しい制度がJSTとかAMEDのさきがけとかCRESTのようにステータスになるとよいのではないかと。それも原子力の分野の中だけですごいといわれるのではなくて、他の分野の研究者から見ても原シスの若手とった人なのか、すごい、立派な方だなというふうに他の分野の人からもいわれるような何かそういう制度になっていくとより研究のレベルも上がっていくのではないかと、あと裾野も広がっていくのではないかと思っています。もちろん産業の方に役に立っていくことも重要で、原子力なので純粋な基礎研究をするというのではないと思うのですが、ただ、悪い言い方をすると何か企業のニーズの下請けになるのではなくて新しい何か産業の種になるような、そういうイノベーションが生まれてくるような研究が推進できればよいのではないかというふうに考えております。
もう一つ、人材育成の方で2回ほど東大と東工大と名指しを受けたのですが、東大の教員としてではなくてこの委員会の委員としてなのですけれども、やはり既にANECに参画されている大学の先生方もそうなのですが、御自身の大学で人材育成をされていると思います。東大でも先ほど出てきた英語でのオンライン講義等もしておりまして、既にそこにかなりのエフォートを割いているのに更に追加でやるということに、それは東大、東工大も、あと既にANECに参画されている大学の先生方もそうならないようにするというのが一つ重要ではないかと思っております。これは原子力だけではないのですが、小中高の教員だけではなくて大学の先生も定額働かせ放題になっております。最近だと学生のマインドも変わってきて、先生が忙しいのを見て大学に残るのはやめたという学生もいます。昔は先生が忙しいというのは憧れだったかと思うのですが。なので、例えば山本先生が先ほど大学間の連携とか難しいとおっしゃったのですが、それも大学とか研究者とは別にそういうコーディネーターを置くとか、あるいは既に講義とか教育の素材があるので、多分オンライン講義だと著作権のクリアとかが結構大変だと思うのですが、そこはもう完全に業者に委託するとか、そういうような発想も必要かというふうに思います。やはり人材育成は非常に重要なのですが、それにエフォートを取られることによって、この原シスの方でまさに先進的な研究をすべき時間が奪われてしまうと結局はまた我が国の原子力のプレゼンスが下がってしまうということになりかねませんので、前半の研究、原シスと人材育成の相乗効果を生み出すような形で進められればよいのではないかというふうに思います。以上です。
【出光主査】 ありがとうございました。他ございますでしょうか。大場先生、どうぞ。
【大場委員】 ありがとうございます。長岡技術科学大学の大場です。システム研究開発の5年というのは非常に良いと思いました。実際3年といっていてもなかなか丸3年使えない中で5年は非常に良いと思います。ただし、3年目の中間評価というのがいつになるのか等々というのも、またどういう視点でやるのかというのも、早めにきちんと伝えることは重要だと思います。たとえば、そのときまでに成果が出ていなくても、今後あと残り2年でどれくらいできそうかとかといったこともあるかと思います。社会的意義もあると思いますので、その辺を適宜対応いただければと思いながら伺いました。
人材のイニシアティブ事業の方ですが、大学教員の実際の大学での評価は研究であって教育というのがなかなか評価されにくい中、原子力の中では非常に重要なことをANECの方でやっていただいていると感じております。そうした中なのですが、例えば18頁のところに原子力人材育成の中核事業として位置付けるというのは大変重要だと思うのですけれども、その後に垂直と水平というお話があり、私がお聞きしたいのは水平ですが、多様な人材確保、裾野拡大、育成、これは非常に重要なのですが、その裾野拡大に関わる方々が決して原子力人材育成をしたいと思っているわけではないと。一つのテーマとして原子力というのを興味深く思っていたりするだけであって、多分文科省のここで書かれた方が望んでいる原子力人材育成の中核事業に関わるという気持ちは全くないのではないかというのがこの資料を読みながら疑問であり、どうかなと感じました。
また、これの次の頁の方で、既にカリキュラムグループがやっていらっしゃる他学部・他学科の幅広い学生というのが書かれていて、これも非常に重要だと思っているのですが、これが水平なのか垂直なのかよく分からなかったのですけれども、私も取組の中で法学部の学生だったり、いういわゆる文系といわれている理系ではない学生と原子力についての話をすることがあるわけですが、そうすると興味を持っている視点がそもそも違うので食いついてくるところが違う、知りたいことも違うということが分かります。そうした中でこの原子力、先ほどの議題2の方の8頁目・9頁目というところで後ほど人材育成のところで触れましたが、こうしたことをテーマにしてくれる学生あるいは教員というものをつくろうと思うならば、原子力の人間ではない、いわゆる工学部ではない方を入れて、例えば法学部の学生のための原子力教材だとか、何か経済学部の学生のための原子力教材といったらどんなことができるのかみたいなところから議論を始めていくということが非常に重要なのではないかと感じております。ぜひその辺りについて取組をしていただければと考えながら伺いました。以上です。
【出光主査】 ありがとうございました。他に御意見ございますでしょうか。竹内委員、どうぞ。
【竹内委員】 ありがとうございます。一点だけ気になったのですが、この研究開発をするときに学会という言葉が余り出てきていないのが少し気になったのです。学会に対する期待であるとか検討の中での役割というところをどのように期待していらっしゃるのか少し教えていただいてもよろしいでしょうか。
【出光主査】 御質問ということで、奥課長。
【奥原子力課長】 ありがとうございます。もちろんこれはアカデミア向けの研究資金制度なので、学会に所属する研究者の方々には積極的に参加していただきたいと思っています。もちろん原子力学会もそうなのですが、関連する学会ですね、金属もそうですし材料もそうですし電気電子もそうなのですが、いろんな学会に関わるようなもの、むしろそういう学会の人たちにこの事業に積極的に参加をしていただきたいというふうに思っていまして、我々としてこういう事業を見直した際には各学会に対して広くアピールする機会を設けさせていただきたいと思っています。
先ほど大場先生の御指摘なのですが、おっしゃるとおりで、我々としては昔の原子力専攻にいる人たちだけをそろえて、その人たちだけを育成していてよいのかというのがあって、例えば電力であるとかメーカーとかもそうですが、そこに就職していく人たちというのは原子力を専門に学んだ人たちだけでは必ずしもないのではないかと。そういう原子力の専攻以外の分野の人たちにも触手を伸ばす必要があるのではないかということがあって、これは他学部・他学科と書いていますが、いわゆる原子力の周辺学科にいるような人たちにも原子力をきちんと学んでもらう機会を提供する必要があるのではないかというふうに思っています。その際に、大場先生にもご尽力いただいていますが、法学部も含めて文系の人たちにも学ぶ機会を持ってもらえるとそれはそれで非常に有り難いなというふうに思っていまして、そのためにも必要なカリキュラムがあるのであればここの枠組みの中で開発していくということも当然必要かというふうに思っています。
【出光主査】 ありがとうございます。では、新井委員、どうぞ。
【新井委員】 ありがとうございます。原子力産業協会の新井です。原子力システム研究開発事業に関して、課題を抽出して見直しの方向性が出ているということで、自由発想な研究提案等を分類していくというのは非常に重要かというふうに思います。前回でしたか、放射性廃棄物の熱や放射線を用いた発電技術等が紹介されていたかと思うのですが、ああいう技術は効率が悪くても厄介な廃棄物が資源になるということで、社会的受容性が180度変わるというふうに思います。ですので、何か技術的にあるいは研究的にちょっと魅力がなくてもそういう社会的受容性の価値があるというようなものを拾ってくれると非常によろしいのではないかと思います。それが技術を使って社会的受容性を変えることができないのかというような、そういうイノベーションを幅広く拾っていただけるとよいかと思います。それが自由発想な研究提案というカテゴリーだけでちゃんと拾えるのかどうかというのは私自身もよく分からないのですが、間口が広くなるのは非常に良いことかと思いますので、そういった点も踏まえて進めていただければなと思いました。以上です。
【出光主査】 ありがとうございます。他に御意見ございますでしょうか。石川委員、どうぞ。
【石川委員】 また原シスについてなのですが、これは経費の使途の自由度を確保するというのも重要かなと思いまして。特に私が思うのは人件費のところで、例えば大学院生をリサーチアシスタントとして支援できるとか、あるいは特任教員ですね、特任助教とか特任講師、特任准教授というようなキャリアアップにつながるような形で若手の研究者を雇用できるような、そういうような自由度というのが確保できるように、そういうような配慮もしていただければと思います。以上です。
【出光主査】 ありがとうございます。他ございますでしょうか。黒﨑先生、どうぞ。
【黒﨑委員】 ありがとうございます。今、自由度という言葉が出たのでそれに合わせての話になるのですが、私も原シス事業で研究をやらせていただいていたのですけれども、今までの実感というのでいうと、余り上手に言えないのですが結構自由度がないというような印象をすごく持っていまして、具体的に言うと例えば1年間こういう研究をやりますというような業務計画書というのを書いて、その業務計画書に沿ったとおりの研究をやるというのがすごく重要視されているような、そういう事業だというふうな認識でいました。そうなると、業務計画に書いたことが達成できるかできないかというところが非常に重要視されて、すごく悪いスパイラルに入るケースがあって、達成しなかったら未達になってすごく大変な思いをするから最初から目標を低く設定して達成を狙うとか、そういう悪い方向に流れていくような印象を実は少し持っていました。やはりそれはすごく研究力の強化という意味ではよくなくて、ある程度最初の目標とか最初の計画から外れても別にいいとか、それによって更に良い研究成果が出るというような、そういうところも評価していただくような、それはお金の使い方も併せてなのですが、そういう制度になればよいなというふうに思っています。
もう一つが、人材の育成のところで裾野拡大というような話が出ていて、それは私も非常にこれからの原子力にとって重要だと思っています。その裾野を拡大するときにやはり原子力以外の分野の人に原子力のことを知ってもらうとか原子力の魅力というのを発信しなければいけなくなると思うのですが、その魅力の一つが原子力分野でのすごく良い研究成果だと思います。そういう原子力分野の良い研究成果を出すためにやはりこの原シス事業というのは非常に重要な位置付けになると思っていまして、その意味で言うと今回原シス事業を大きく在り方を変えるというような話で、新しい発想とか期間を5年間にするとかそういう話があったので、人材の方の裾野拡大にすごくうまくリンクするような改革なのかなと思っていまして、私もこの改革はすごく良いのではないかというふうに思っています。以上です。
【出光主査】 ありがとうございました。他ございますでしょうか。私の方も意見を言わせていただきますと、新しい自由な発想は非常によろしいかと思うのですが、以前私も原シスのPOをやっていた時に初期の頃は割と荒唐無稽なものがやってきまして、いや、これができたらよいなと思うけどこれはできないだろうというのが結構入ってきましたので、選別するときの基準は結構選定委員会の中ではそれなりの根拠があるものということがありました。その一つが例えば科研費の萌芽とかそういうのである程度やられていてそれの次のステップに行きたいとか、そういうものであればいけるかなとか、そういうような意見が出ておりました。なので、自由自由というのを先にいってしまうと多分ものすごいものが出てくると思いまして、それが将来本当に役に立つものかもしれないけれども、大体はそうではないものが多いかという気もしますので、その辺り少し気を付けていただければという気がいたしました。
あと予算の自由の話ですが、これは20年ほど前にアメリカのバークレーに行った時にお話を伺ったのですが、アメリカのシステムは予算が通ったらクレジットカードが1枚送られてくると。その研究のものはそのクレジットカードで予算の範囲内で何にでも使っていいと。ただしクレジットカードで全然関係ないものを買ったらそれはクレジットカードの明細を調べるということで、クレジット会社とうまく連携していて何を買ったというのが予算の供給元に伝わるようにというシステムでやっているというのを20年ぐらい前に聞いた時に、そういうふうにできないかといったことがあるのですが日本のシステムでは難しいというふうなことでした。そこまで自由とは言いませんが、やはり自由というのを売り物にすると一つは他分野の人たちも何か面白そうな予算のものがあるからということで寄ってこられる可能性はあるかと思いました。すみません、夢物語の話があります。では、文科省の方から何か答えはございますか。今の件以外で全体で。
【奥原子力課長】 では私から一言申し上げた後で山本先生にもお願いしたいと思います。まず原シスの事業についてテーマ選定の在り方であるとか、あとステージゲートの時期の話、あと資金の使途の話であるとか、あと審査体制についていろいろご意見いただきました。これは我々としてたたき台として示させていただいたもので具体的な制度設計はこれからになりますので、先生方の御意見を踏まえてここの中身は検討させていただきたいと思います。繰り返しになりますが、結局文科省の役割は何だというところに立ち返ると、企業さんであるとか経産省がやる事業ではなくて、文科省は大学、アカデミアを対象に研究支援をしているという以上はやはりその新しい研究テーマを次々と生み出すような原子力の研究を底上げするようなことというのが文科省の役割なのではないかというふうに思っていますので、こうした観点から見直しを検討させていただきたいなと思っています。
あと人材の事業については、こちらも先生方からいろいろご指摘いただきました。東大、東工大はすみません名前を出してしまいましたが、先生方にとって負担の掛からないような形で、むしろ先生たちの負担を軽減して有効に教育資産が活用できるような形で具体的な支援策というのを考えさせていただきたいなと思っておりますので、これは引き続きいろいろご助言いただけると有り難いと思っております。私からは以上で、では山本先生からお願いします。
【山本先生】 山本です。皆さんからご意見いただきましてありがとうございました。こういう形でフィードバックいただくのは非常に有り難いです。石川先生から原シスがステータスになるとよいですねと、これはまさに良いアイデアで、頂戴いたします。ありがとうございます。
あと、先ほどありましたがエフォートの話なのですけれども、私の理解ではこの人材育成の事業はエフォートを上げるための取組ではなくて下げるための取組だと思っています。そういうふうに進めたいと思います。
大場先生からは、他学部を教えるときには教材がそもそも替わりますよということで、これも非常に良い視点だと私は思いまして、今後念頭に置きたいと思います。
竹内委員からは、学会に対する期待ということで、当然ながら学会は専門家集団ですので、先ほど御説明の中でいろんな学会にPRしますよという話があったのですが、そういうことも含めて学会というのは当然ながら重要なステークホルダーという認識であります。
あと新井委員からは、廃棄物で発電の話もあったのですが、まさに受容性が変わるというのは新領域の一つかというふうに私は受け取っておりまして、RIなんかもそれだと思うのですが、そういう観点でも審査できればよいかと思います。
黒﨑先生からおっしゃっていただいた自由度の話は、これはいつも執行側、管理側も悩んでいまして、できれば広げたいというふうには思うのですが、どこまで広げるかという味付けにいつも悩んでいますので引き続き相談させていただければというふうに思います。
最後は出光委員からは荒唐無稽な話が出てくるのをどこまで採るかという話がありまして、これは私も出光先生がおっしゃったのと大体同じなのですが、原理立証されているものならよいのかなと。原理立証は科研費でやってくださいぐらいの仕分けかなというふうには思っております。
いずれにせよいろいろ御意見を頂きまして、私の理解とそんなに食い違っているところはなかったのでむしろ安心いたしました。どうもありがとうございます。以上です。
【出光主査】 ありがとうございました。他にはございませんでしょうか。よろしゅうございますか? それでは、三つ目の議題はこれで終わらせていただきます。その他は何か特にございますか。よろしゅうございますか? なければ少し時間は超過しましたが事務局の方にお返しいたします。
【竹之内課長補佐】 ありがとうございます。事務局でございます。本日はありがとうございました。議事録につきましては議事録案を作成しまして皆様方にメールにて御確認を頂いた後にホームページに掲載をさせていただきます。以上でございます。
【出光主査】 ありがとうございました。本日はお忙しい中ありがとうございました。
―― 了 ――
研究開発局 原子力課
メールアドレス:genshi@mext.go.jp