令和7年7月18日(金曜日) 15時00分~17時00分
Web開催
上村主査、小室主査代理、臼田委員、篠原委員、四宮委員、竹内委員、長谷川委員、宮澤委員、安井委員、栁田委員
古田大臣官房審議官、梅田地震火山防災研究課長、久利測地学専門官、大慈弥防災科学技術調整官、黒川地震火山防災研究課長補佐、齊藤専門職、杉岡科学官、橋本科学官、五十嵐学術調査官 他
<冒頭より非公開>
【議題1 主査代理の指名について】
科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会運営規則第5条第7項の規定に基づき、主査の指名により、小室委員が主査代理に指名された。
【議題2 議事運営等について】
議事運営等について事務局より説明された。
<議題3より公開>
【上村主査】 それでは、議題の3に入ります。「防災科学技術委員会における第13期の活動について」、事務局より資料3について説明をお願いいたします。
【大慈弥防災科学技術調整官】 事務局でございます。資料3を御覧になっていただければと思います。早速、2ページ目から御説明させていただきます。
前期、第12期の活動でございますけれども、第6期科学技術イノベーション基本計画、令和3年から令和7年までの計画でございますけれども、これに示されている課題に対応する取組について研究及び開発等に関することや、防災科学技術の分野における研究開発の方向性の議論、そして新規・拡充事業の事前評価や事業期間が終了する事業の事後評価などについて審議を行ってきたところでございます。そして、自然科学、人文社会科学の連携によって「総合知」の創出・活用の計画作成、評価、調査検討をやってきたのが12期の活動の状況でございました。
次のページでございますけれども、前期に決まってございます防災科学技術分野研究開発プランがございます。こちらのプランは、まず目標は、安全・安心の確保に関する課題への対応をするためのものでございまして、地震調査研究の推進(第3期)や、災害軽減に貢献するための地震火山観測研究計画の推進について等に基づきまして、地震等の自然災害から国民の生命・財産を守るための研究開発等を行って、これらの成果を社会に還元するといった考えの下で2つの内容のプログラムを設定しております。2-1、2-2のようなプログラムがございまして、2-1は調査観測シミュレーションの技術、災害リスクの評価手法、高度化を図るといったこと、そして防災・減災対策の実効性の向上や社会実装を加速するといったプログラムとなっております。
そして、2-2のプログラムは、地震調査研究を推進して成果を活用するという、こういう大くくりのプログラムがあるところでございます。
次のページへ行きます。図で示しておりますけれども、プランに沿ってプログラムが幾つかございまして、先ほど御説明した2-1という黄緑色の部分、この1のプログラムの中に地震関係の、地震防災研究戦略プロジェクトと言っていますけれども、こういうプロジェクトと火山関係のプロジェクトがあるところ。そして、プログラムの2-2ということで、一番下の南海トラフ海底地震津波観測網といった、こういうプログラムがあるところでございます。今年は赤い枠のところがタイミングでございまして、オレンジ色のプログラムでございますけれども、情報科学を活用した地震調査研究プロジェクトと次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトについては、まさに今年終わろうとしている状況でございまして、今後の方向性を考えていく必要がある状況でございます。また、現在行われている事業の事後評価を行っていく必要がある状況でございます。
次のページへ行きます。したがいまして、防災科学技術委員会における第13期の活動(案)ですけれども、この委員会のミッションである、先ほど御説明させていただきました防災科学技術分野の研究開発プランに基づく研究開発課題の事前・中間・事後評価では、まず情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト、次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト、そして南海トラフ海底地震津波観測網の構築がまず事後評価が必要になってくると。そして必要に応じて、新規・拡充事業の事前評価を行うとしてはどうかと考えております。
そして、そのほかでございますけれども、本委員会の検討に当たっては、総合科学技術・イノベーション会議や科学技術・学術審議会、研究計画・評価分科会の動向に留意をすること。そして、必要に応じて論点を整理いたしまして、研究計画・評価分科会に報告することを考えております。
説明は以上でございます。
【上村主査】 ありがとうございました。今ほどの事務局からの説明について御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。
新しい委員もおられますし、ちょっと分かりにくいところもありますので、少し補足をしていきたいと思います。繰り返しになるところもあろうかと思いますが、御容赦願います。一番分かりやすいのが資料3の4ページでございます。4ページ出ますでしょうか。言葉がまず難しいんですけれども、プランとプログラムとプロジェクトがございまして、この紙全体、これがプランでございます。この中に、右の上のほうに緑色の文字でプログラム2-1と書かれているものがあろうかと思います。緑の大きな枠で囲まれております。下のほうにオレンジ色のプログラム2-2が書いてありまして、これもオレンジ色の枠でくくられております。したがって、大きなプランの中に2つのプログラムがあることになります。その中に、これは何チャートでしたっけね。横棒、横矢印のようなものになっている、これの一つ一つがプロジェクトという位置づけになっております。このプロジェクトの右に向けた矢印のところをまた御覧いただきますと、逆三角形の黄色、赤、それから青のものがあろうかと思います。各プロジェクトの黄色が事前評価、それから赤が中間評価、青が事後評価になります。したがいまして、この防災科学技術委員会の非常に重要なミッションの一つが、各プロジェクトの事前評価、中間評価、事後評価になります。その評価した結果は、親委員会である研究計画・評価分科会のほうに報告をすることになります。
この赤枠で囲ってあります今年度、2025年を御覧いただきますと、上からいくと地震防災研究戦略プロジェクトが始まったことがお分かりいただけるかと思います。それから、南海トラフとちょっと小さな字で書かれているプロジェクト、これも今年始まったことがお分かりいただけます。その下、オレンジ色、情報科学を活用した地震調査研究プロジェクトが今年度で終わりになりますので、今年度中に事後評価をやることになります。その下、次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト、これが同じく今年度で終わりですので、事後評価をすることになるということでございます。一番下、黄色の南海トラフ海底地震津波観測網の構築、これについても年度の途中で終わることになっておりますので、年度内に事後評価をやることになります。
それと、2026年度以降に少し薄い赤色で矢印が新たに書かれていますけれども、ここのところにこれから始まるプロジェクトが書き込まれていくことになります。そうしますと、事前評価を今年度中にやらなければならないことになります。初めての委員の方もおられて、この辺りが分かりにくいかなということで補足をさせていただきました。それでも分かりにくい部分もあろうかと思います。御意見いただければと思います。いかがでしょうか。
【大慈弥防災科学技術調整官】 すみません、1点だけ補足させていただければと思います。先ほど主査より御説明させていただいた青文字で地震防災研究戦略プロジェクトというのは、もう一度説明いたしますと、点線の部分、2つのプロジェクトでセットになっていて地震関係になりまして、今現在進んでいるのは、南海トラフ地震等巨大地震災害の被害最小化及び迅速な復旧・復興に資する地震防災プロジェクトと、情報科学を活用した地震調査研究プロジェクトの2本のセットで、一応我々としては、これは仮称で、これが地震関係ということで、それと下に火山関係を載せさせていただいているところでございます。
あともう一個、よろしければ当面のスケジュールの御紹介も併せてさせていただければと思います。
【上村主査】 お願いします。
【大慈弥防災科学技術調整官】 もしこちらがよろしければ、当面のスケジュールで一番最後のページでございますけれども、第64回、本日でございますけれども、防災科学技術委員会における、今お諮りしている第13期の活動についてと、防災科学技術分野の取組は後ほど御説明するもの、そして今後取り組むべき施策の方向性といって、今回、話題提供を2件させていただければと思っているもの、そして、次の会議、第65回、7月31日は研究開発の課題評価についてで、先ほど主査から御案内がありましたとおり、赤い部分のところを想定してやっていけたらと思っているスケジュールでございます。
その次、以後でございますけれども、各研究開発課題の進捗報告書、評価、そして第7期科学技術・イノベーション基本計画等の検討の状況を踏まえた議論を適宜行っていきたいと考えているところを補足させていただきます。すみません。
【上村主査】 ありがとうございました。大変失礼いたしました。地震防災研究戦略プロジェクトという青文字の部分については、見出しであるということですね。ありがとうございます。
以上の説明について、何か御質問、御意見等いかがでしょうか。
【大慈弥防災科学技術調整官】 宮澤委員、手を挙げていますでしょうか。
【宮澤委員】 すみません、宮澤ですけれども、実は今の事務局の補足説明で理解いたしましたので、結構です。どうもありがとうございました。
【上村主査】 私の説明が混乱を招いたようで、失礼いたしました。
そのほかいかがでしょうか。
それでは、13期の活動について御了承いただいたということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、議題の4に入っていきたいと思います。「防災科学技術分野の取組について」、事務局から紹介をいただければと思います。よろしくお願いします。
【大慈弥防災科学技術調整官】 防災科学技術分野の取組について、事務局より御説明させていただきます。資料4でございます。
文部科学省には、文部科学大臣を本部長とする、青文字で書いてある地震調査研究推進本部と、赤い四角で囲っております火山調査研究推進本部が設置されております。そこで、地震調査研究推進本部という取組もありつつ、文部科学省の取組として、一番下でございますけれども、南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)の構築、火山専門家の育成、そして一番右側でございますけれど、防災科研が行っておりますあらゆる自然災害を対象とした基礎基盤的な防災科学技術の研究開発の推進という取組を行っている状況でございます。
続きまして、予算の形でどういうふうなものになっているかということで、文部科学省の直轄予算事業で、今このページで示されているようなものがございます。先ほど申し上げた大体3つの大きなくくりになってございまして、赤いほうでございますけれども、火山調査研究推進本部を着実に運営して一元的な火山調査研究、火山専門家の育成を推進していくような予算関係、そして右側の青いほうでございますけれども、地震調査研究を推進していくほうの事業、そして一番下の基礎基盤的な防災科学技術の研究開発の推進ということで、これは防災科学技術研究所で行っているものの予算関係というような大きな全体の文科省の直轄事業がございます。
次のページでございますけれども、これらの予算の事業のうち、ナショナルプロジェクトでは、研究開発の課題で総額が10億円以上のものについては、この防災科学技術委員会で評価の対象となる研究開発課題になります。本委員会で定めた、最初、資料3で御説明させていただきました防災科学技術分野の研究開発プランに明記しているものでございます。
現在4つの事業がプランに書かれておりましたけれども、4つの事業が、今この予算で言いますと、左から順番に行きますと、次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト、そして右側に行きますけれども、情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト、そしてこの中の1つでございますけれども、南海トラフの海底地震・津波観測網(N-net)の構築、そして一番下でございますけれども、南海トラフ地震等巨大地震災害の被害最小化及び迅速な復旧・復興に資する地震防災研究プロジェクトを見ていただいている状況でございます。
続きまして、今、南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)の事業の状況でございますけれども、国立研究開発法人防災科研のほうで、南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)について、2019年より観測装置の開発・製造、そして陸上の工事、敷設工事等を進めてきたところでございまして、沖合システムについては令和5年、そして本年、沿岸システムのほう、6月でございますけれども、整備を終えまして、今、N-netの整備を完了した状況でございます。効果といたしましては、地震動を最大20秒程度、そして津波を最大20分早く直接検知可能というものになります。そして、これによって地震や津波のメカニズムの解明、リアルタイムの予測や長期評価の高度化、そして防災科学技術の発展に寄与するというもので進めているものでございます。
このN-netでございますけれども、6月8日に室戸のジオパークの陸上局で、同月14日には完成記念式典を開催した状況でございます。これはまさにN-netの観測データは気象庁に提供されるような調整をしているところで、本格運用に向けて準備が進められている状況でございます。
次の事業でございますけれども、南海トラフ地震等巨大地震災害の被害最小化及び迅速な復旧・復興に資する地震防災研究プロジェクトでございますけれども、こちらは南海トラフや千島海溝沿いで半割れ・一部割れといった、そういうような異常な現象を観測して、それがまさに臨時情報、そして後発地震注意情報等に活用されまして、防災の対応の向上に向けて行っている状況でございます。
こういう取組に向けて、今これが進められている内容といたしましては、南海トラフ地震津波観測網(N-net)のデータを活用した震源決定の精度向上などといった南海トラフ地震の評価手法の高度化とほかの地域への展開を考えている事業でございます。
そして、もう一つは、右側の青いほうの部分でございますけれども、津波・土砂・液状化・火災等の複合災害の連鎖、広域連鎖災害への事前対策の加速に向けて、ハザード評価の高度化、そしてリスク情報の創出などを行うことで進めている状況でございまして、近々、具体的に始まる状況でございます。
続きまして、もう一つのプロジェクトでございますけれども、情報科学を活用した地震調査研究プロジェクトがございます。地震防災研究戦略プロジェクトの一環として取り組んでいるものでございますけれども、こちらは後ほどプロジェクトの取組状況については説明がありますので、割愛させていただきます。
もう一つ、4つ目の最後の事業でございますけれども、次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトがございます。防災・減災に資する観測・予測・対策の一体的な火山研究に向けて実施しておりまして、こちらも後ほど取組状況の説明がございますので、詳細は割愛させていただければと思います。
以上がナショナルプロジェクトとして動いているものでございまして、このうち、本日御議論いただきたい事項といたしましては、情報科学を活用した地震調査研究プロジェクトのこれまでの取組・成果と今後の課題、そして次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトのこれまでの取組と成果、そして今後の課題について御議論していただきたいと思っております。
御参考までですけれども、政府文書のほうも一応御紹介させていただければと思いますけれども、経済財政運営と改革の基本方針2025年で、国民の安心・安全の確保ということで、黄色い部分でございますけれども、物質科学分析の推進など火山調査研究推進本部における調査研究、専門人材の育成・継続確保を推進することが書かれております。
そして、下の文章でございますけれども、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025の改訂版で、地方経済を支える新時代のインフラ整備・安心の確保ということで、黄色い部分でございますけれども、防災DX及び防災科学技術の推進、そして下の黄色い部分でございますけれども、地震・火山噴火・豪雪等の自然災害の予測精度向上のための研究開発や、AI等の先端技術も活用した災害対応における情報共有・意思決定の高度化、防災関連技術の開発、実装を進めることが言われている状況でございます。
以上でございます。
【上村主査】 ありがとうございました。
ただいまの事務局からの説明について御質問等ありましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。
小室委員、お願いします。
【小室主査代理】 ありがとうございます。小室です。今の事務局の御説明で大体分かったつもりになっているのですが、今日のこれからの議題につきましては、先ほど主査もお示ししていただいた4ページのオレンジ色のところの最終評価に当たる、最終評価をこれから私どものこの期でする、そういうプロジェクトだと思うのですが、今日は最終評価をする議論ではなくて、その前段としての御説明を伺う、そういう理解でよろしいでしょうか。
【上村主査】 お願いします。
【大慈弥防災科学技術調整官】 事務局でございます。現在の状況と、そして今後の課題を御説明させていただくということで、先生がおっしゃったように事後評価のことかと思いますけど、それについてはスケジュールの次のところで御案内させていただければと思っていて、今日はまず、ざっくばらんに議論をさせていただく機会と考えている状況でございます。
【小室主査代理】 ありがとうございました。よく分かりました。
【上村主査】 ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。
それでは、本議題はここまでとさせていただいて、次に進めたいと思います。議題5に入っていきたいと思います。「今後取り組むべき施策の方向性について」ということで、本日は情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト、それから次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトの2つのプロジェクトについて、これまでの取組・成果と今後の課題をそれぞれ御説明いただき、議論することにいたします。
まず、「情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト これまでの取組・成果と今後の課題」について話題提供です。お手元に資料5-1を御用意ください。事務局と、それから五十嵐学術調査官より御説明をいただきたいと思います。お願いします。
【久利測地学専門官】 事務局で事業を担当しております久利と申します。事業について久利より概略を述べた後、五十嵐学術調査官より地震分野の状況も含めて補足の説明をいただくこととなっております。どうぞよろしくお願いいたします。
では、資料のほうをお願いいたします。1枚めくってください。この事業ですけれども、地震調査研究推進本部のほうの方針に従ってやっておるものです。地震本部では、今ちょうど30年を迎えるところで、例えば観測網の整備をして緊急地震速報や津波の警報等に生かしていくとか、それから活断層調査などを行って、長期評価や地盤の調査を行うことで地震動予測地図などを作成しております。この中で、情報科学を活用してさらに高度化していくプロジェクトを立ち上げているものがこれから紹介する事業となります。特に観測網が整備されているところですので、その中のデータをどんどん活用していこうというところが主眼となっております。
スライド、次お願いいたします。これが事業です。情報科学を活用した地震調査研究プロジェクトです。地震調査研究の基本計画(第3期/令和元年5月)のときに指摘を受けているのが、もっとデータを活用しよう、情報科学のAI等を活用していこうという指摘を受けております。それで、この情報科学分野と地震科学分野を掛け合わせることでさらに成果を出していこうとプロジェクトが立ち上がりました。そこに手を挙げていただいて採択された課題が5課題ございます。東京大学、産業技術総合研究所、東北大学、防災科学技術研究所、統計数理研究所からそれぞれ課題が挙がっております。
次のページをお願いいたします。5課題のうち、特に地震動に着目した課題が3課題ございます。これが課題1の東京大学、課題4の防災科学技術研究所、課題5の統計数理研究所で、東京大学では波形を、どこに地震が起きたかを調査する部分で、自動化して迅速にやっていこうと、その周辺のプログラム解析モデルの開発等をやっていただいております。
それから、防災科学技術研究所では、例えば地震がすごく多発したときに、どうしても拾い切れないような地震が小さい地震では発生してしまいますので、そういうところをAIを活用して捕捉しながらちゃんと評価していこうと、解析プログラムを開発していただいております。
それから、統計数理研究所、こちらはまさに情報科学の分野からの課題提案でして、地震を見るんですけれど、地震以外のいろんな観測項目とどう関わり合っているかという関わりの程度みたいなものを評価するようなものはないだろうかという評価手法の解析のモデルを開発してくださっております。
次のスライドお願いします。こちらが課題2と課題3ですけれども、産業技術総合研究所からは、特に断層と地震の発生の分布域とを比較するような形で、何か新しいメカニズム等を解析できないかと課題の提案をいただいております。
それから課題3、これは東北大学からの提案で、よく南海トラフの地震でゆっくり滑りという言葉を聞かれるかと思いますけれども、ゆっくり滑りをより早く、より正確に検知するようなプログラムを、AIを活用してつくれないかというところで主に取り組んでいただいているプログラムとなります。
プログラム概要は以上となります。
次のスライドお願いいたします。それぞれのプログラム解析モデル等を開発していただいておりますが、非常に成果を上げていただいております。こちらは事務局のほうで世界の論文動向調査をさせていただきました。地震学と情報科学を掛け合わせたような論文を抽出しております。ネットワークの地図になっておりますけれども、この中で日本の研究はどこに強いだろうか、それからこのプロジェクトの研究に関わっている人たちの論文はどこに出ているかを概観した図となっております。特に日本は観測データに基づく4、5、6、7で論文が多数挙がっているということで、観測網を整備して、そのデータを活用して、AIを活用しながら解析モデルの開発をしているというところで、こちらのプロジェクトの狙いどおりの成果が上がっているというところが確認できております。かつ、この解析モデルは研究として役立てるだけではなく、現業官庁と呼ばれる、例えば気象庁での地震監視、それから国土地理院などの地殻変動監視にも活用していけないか、現段階では開発段階ではございますが、将来に向けて意見交換等も始めていただいているところでございます。
次のスライドお願いいたします。特に今申し上げました現業官庁と意見を交換していただいているのが東京大学のもので、先ほど言いました地震の検知に自動化するようなサポートをAIにやらせるような解析モデルをつくっていただいておりまして、成果が出ております。
それから、東北大学のゆっくり滑りでの検知等については、国土地理院と意見交換をしていただいておりますので、昨年度、第4回研究フォーラム「情報科学×地震学 学官連携の未来像」というフォーラムを開催し、研究者の方に話題提供いただき、内外の方に集まっていただき、公開でディスカッションする企画もさせていただきました。
次のスライドお願いいたします。これらの成果を踏まえて例えばAI活用、どういうふうに活用していくかというイメージを出しているものです。例えば、大地震発生後の地震活動の見通しを地震本部、それから気象庁等から発表しているんですけれども、どういう作業を行っているかをステップ1、ステップ2、ステップ3という形で示しております。まずは地震波形を見て、ここが地震が発生したところですよ、複数点で見てこの場所で地震が発生しましたよという地震カタログをつくります。現状は、単発で地震が起きればすぐに分かるんですけれども、多発するとなかなか難しいところで、大きい地震はすぐに分かるんですけれども、小さい地震までカタログをつくろうと思うと、1週間、場合によっては1年、それ以上という時間をかけているところを、AIを活用することで翌日ぐらいまでにもっと早いところで判断できないかのサポートをいただいているのが本事業からの成果が上がってきているところです。
それから、ステップ2、大地震後の震源域内の地震の大きさと回数を把握というところで、先ほど述べました検知できないようなものまで、今の手法だとカタログに載り切らないようなものまできちっと拾い把握する手法も行っております。
それから、ステップ3、地震後の地震域内において今後どれくらい、今どれくらいだから今後はこれくらいだろうという予測手法がありますので、それをステップ1、ステップ2の成果を盛り込みながら、さらにその解析を高度化することを行っております。この全てのステップの中でAI活用を行うことで、全体として非常に早く評価を行えるようなことをイメージしております。
プロジェクトの成果と実際の社会貢献、それから実務官庁での貢献という説明については以上となります。この後、五十嵐学術調査官のほうから、現状での地震学の中で見た観点から観測網や、この後、注視すべき補足の説明をお願いしたいと思います。五十嵐先生、よろしくお願いいたします。
【五十嵐学術調査官】 よろしくお願いします。次のスライドをお願いします。このスライドを用いて地震学における観測網の充実とその成果についてお話ししていきたいと思います。
現在、日本列島周辺には約2,000点の観測点からなる地震観測網が整備されていますが、このような観測網が整備されたのは地震調査研究推進本部の発足した平成7年以降ということになります。まずは、防災科学技術研究所のHi-net、国土地理院のGEONET、気象庁が整備した震度観測点等、日本の陸域全域を網羅した観測網が整備されました。さらに、平成23年に発生した東日本大震災の後には、海域での地震・津波観測の重要性が強く認識されました。その後、東北地方太平洋沖を中心とする日本海溝沿いにはS-net、南海トラフの熊野灘、紀伊水道沖にはDONET、そして高知県沖から日向灘には、先ほども御紹介がありました今年度整備が完了するN-netなどの海底地震・津波観測網が整備されています。このような海域まで広がる地震観測網により、海溝型巨大地震の発生する場所でもほぼ均質に地震を検知し、高い決定精度で震源を決定することが現在できるようになっております。これらの観測点で連続的に計測されているデータについては、現在、通信ネットワークを通じてリアルタイムで配信・流通されており、これまでに得られた記録についても全て収録されている状態になっております。
これらの観測網による観測データから得られた成果としましては、防災上は震度の即時的把握、緊急地震速報、津波警報などのリアルタイム情報の伝達を可能とし、社会に貢献していることが挙げられます。さらに、地震発生可能性の評価にも貢献しております。学術的には、南海トラフにおいて低周波(微動)や短期的・長期的ゆっくり滑りが日本で発見されたことが挙げられます。この現象は現在、世界各地で発見されており、活発な研究がなされております。また、かつてノイズと思われていた地表の振動を活用して地殻構造が推定できることが示され、その調査手法が開発されたことも挙げられます。
このように現在大量に蓄積されている波形の連続記録には、さらに有効活用できる情報が眠っていると考えられます。そこで、これらデータ利用の今後の方向性としては、まず、これまでの地震調査研究の成果により集められた多様かつ大規模で信頼性の高いデータをさらに徹底活用することが挙げられます。そのためには情報科学分野の研究者と地震学分野の研究者が共同研究し、急速に発展している情報科学技術、IoTやビッグデータ、AIなどといった科学技術を導入していくことが重要であると考えております。地震分野においては、先ほど申したような新たな発見や手法の開発がなされたことを踏まえて、最新の情報科学分野の科学技術を活用した取組を進めることにより、新しい解析手法を開発することが重要であるとの声が上がっております。
また、情報科学分野からは、スライドの下に示すような生成AIに関わる最新技術の活用をしていくことが提案されております。情報科学技術を活用してデータを十分に活用した研究を一層進めることにより、地震活動や地震動評価の高度化・迅速化も進むものと期待しております。
以上です。ありがとうございました。
【上村主査】 ありがとうございました。今ほどの御説明について御質問、御意見等をお願いいたします。いかがでしょうか。
それでは、先ほど既に御説明いただいておりますけれども、本日御議論いただきたい事項に、まさにこの情報科学を活用した地震調査研究プロジェクトが第1項目にありますので、ここから先は自由に、今までの成果について、あるいはその成果を踏まえた上で今後どういう課題に取り組んでいけばよいかとか、あるいは実装の面からこういうふうに役立てられないのかとか、自由に御発言いただいて結構ですので、どうぞよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
手が挙がりましたかね。篠原委員、お願いいたします。
【篠原委員】 御説明ありがとうございました。大変分かりやすい説明だったと思います。AIというか、ディープラーニング的手法を生かして今まで人間がやっていた仕事を早く済ませる方向は非常にいいと思っています。特に地震の検知にAIを使うのは非常に優れていて、ますます研究が進んでほしいと思っています。リアルタイムのデータでいち早く震源を決めて、いち早く警報なりを出すのは極めて重要で、それにAIを使うことはとても重要だと思います。
それからもう一つ、今後の方向という意味では、今お話しいただいたのは、既存のネットワーク、地震観測ネットワークのデータだったんですけれども、最近は光ファイバーセンシングという新しい地震の観測方法が開発されていて、光ファイバーセンシング、大量のこれまでとは比較にならないぐらいのデータを生成しますので、AIなりディープラーニングの解析が必ず必要だと考えています。そういう意味では、新しい観測を進める意味で、光ファイバーセンシングとAIの技術の組合せを次の課題に上げるとますます進展するのではないかと思いました。
以上です。
【上村主査】 ありがとうございます。
それでは、続けていきたいと思いますが、宮澤委員、お願いいたします。
【宮澤委員】 宮澤です。もともとこのプロジェクト自体が地震本部の第3次基本施策を基に、その活動をサポートするために立ち上げられたものだと認識しております。そして、N-netの構築も進んだ中で、今後一層データが増えていくところもありますので、進めるべきプロジェクトの内容かなと思って聞いておりました。特に気象庁などの実務官庁への社会実装という御説明もありましたけれども、そういったところは社会に実装して役立てていくというところで、まだ実際にはそこまで至っていないところですが、これを実現するためにも、やはり続けていく必要があるかなと聞いておりました。
それから、特に地震本部との関連としては、地震調査委員会のほうの会議資料にもこういった成果が上がってくると、例えば臨時会が開かれ、地震活動の評価を行う際、AI等を使った結果が評価をするにあたり非常に大きな貢献を果たすかなと思っております。
それから最後に、篠原委員が申されていたように、観測技術のほうもかなり進歩しておりまして、先ほど紹介があったような光ファイバーセンシングのような技術によって今まで以上にデータ量がどんどん増えていく事態になっております。ですので、今のプロジェクトの中でも大量のデータを使っていくというところで対応していたんですが、さらにAIのほうの技術を発展させて、今ある観測技術とうまく組み合わせていくことでより一層、研究面もそうですし、そこから得られるような成果も期待できると思っております。
以上です。
【上村主査】 ありがとうございました。
それでは続けていきますが、臼田委員、お願いいたします。
【臼田委員】 臼田です。3点質問させていただきます。まず1点目は、実務官庁との意見交換をされているのはとてもいいことだと思うんですが、それによって社会実装の見込みはどれだけ今得られているのか現状をぜひ教えていただきたいと思っています。例えば、気象庁や国土地理院のどんな業務のどういうところが今回の研究成果によってどう変わるのか。こういったところの見込みが出ているのであれば、例えば実装時期も含めて、分かる範囲で教えていただければと思います。
それから2点目は、この研究によって国民が実感できるような成果が生まれたのかどうかをもう少し教えていただければと思っています。例えば、8ページのステップ3のところで、大地震の後の震源域内で今後どのぐらいの大きさの地震が発生するか見通しを評価というのがあるんですが、地震の規模が、例えば南海トラフ地震ぐらいの規模だと言われてしまうと、今評価はできないことになると思うんですけれども、例えば能登半島地震ですとか、ここ最近のトカラ列島での地震ですとか、そういった地震において、まず適用したのかを知りたいですし、適用した場合に、例えば能登半島地震であれば、その適用の評価がどれだけよかったのか、あるいはトカラ列島であればこれからの見通し、例えば今出せるものはあるんだろうか、そういったところがもし見えてくると、国民視点からすれば、こういうことができるようになってこんなことが分かるようになった実感が持てると思いますので、そういった情報が出せるのか、その辺りを聞きたいところです。
3点目は、ここは防災科学技術委員会ですので、防災という視点からもぜひ教えていただきたいんですけれども、地震を研究する面での成果はよく分かったんですが、これによって防災上どれだけ効果が生まれたのか。例えば、今年3月に南海トラフ地震の被害想定が改めて出ましたが、それに対してこの研究はどれだけ被害を減らすことに貢献でき得るのか。その辺りを示せると、この実施価値が明確になってくるかと思います。そのときに、今回かけた予算に応じてコスト的にもメリットがしっかりあるであるとか、その辺りが明確になると、次の研究としてどのような研究にどれくらい予算をかけていくかの指針になると思いますので、そういった面も出していただければと思っております。
以上、3点です。
【上村主査】 ありがとうございます。御質問いただいておりますので、お答えできる範囲で事務局のほうでお願いいたします。
【久利測地学専門官】 事務局より回答さしあげます。まず、実務官庁とですけれども、実装のところには2段階あるかと思っています。まずは、実務官庁の中でも研究ベースで行っている方たちに委嘱をして、それでその官庁との整合性を見ていただくのが1つ目のステップで、どういうふうに整合性を取っているか、あるいはそのデータをうまくすぐ移植できるのかというステップで、今そこのところを調整している段階です。
それから、さらに実務官庁とでは、大きなシステムを使って流れの中に情報の発表まで持っていくというところがあるので、そちらについては5年以上6年、7年という時間を要してシステムの中に組み込むステップがありますので、そこにはまだ時間がかかるかと思っていますので、まずはステップ1、解析官、研究官等の手元での解析の中との整合性というところで今はやっていただいているところです。
それから2つ目、国民への実感というところですけれども、例えば大地震の見通しについて、現状、気象庁が発表しております、まず大地震が発生した後、1週間程度は同程度の地震に気をつけてくださいという発表をしているのは、これは定型的に、経験的に発表して、1週間を過ぎますと、実際の地震の発生状況から、これぐらいの大きさのものにこれぐらい気をつけてくださいねというようなことが発表されるようになっております。この部分が今1週間かかっているところを、さらに早くカタログをつくり、早く確認し切れていない小さい地震まで推測を加えて評価をすると、翌日から発表することが技術的には今可能となっております。
一方で、その技術的に可能な部分を、本当にこれでいいのかという検証の部分は、今まさに起こっているような地震と比較しながら検証を進めていっていただいているところです。それに関係しまして、能登半島については、今まさにモデルの検証を進めていただいているところですので、今年度ぜひ進めて公表するところまで、事務局から研究者の方にお願いをしているところです。
それから、トカラについてですけれども、こちらにつきましては、実は観測網自体が今不足している状況にありまして、まずは観測から何とかしてほしいというのが地震本部から来ておりますので、これについてはこの後の課題になるかと思っております。もし補足がありましたら、五十嵐先生か杉岡先生からありましたらお願いいたします。
【上村主査】 いかがでしょうか。
【久利測地学専門官】 大丈夫ですか。では、事務局からの回答は以上となります。
【上村主査】 3番目が、防災上の効果、例えばですが、被害軽減の効果はこれぐらい期待できるんじゃないかというお話がもしあれば。
【久利測地学専門官】 そうですね。今の段階では解析モデルでの検証段階ですので、被害軽減までの見積りは行っておりません。一方で、例えばゆっくり滑りに関しては、通常と違うゆっくり滑りが発生したら情報が発表されるところですから、それで過大なことをすれば経済的には大きな負担が社会にかかりますし、それをぜひ、もう少し科学的なところに基づいて幅を狭めることができれば経済的な負担が減るというところでは経済効果があるものだと思って事務局からは見ているところです。
以上が回答となります。
【上村主査】 ありがとうございます。ナショナルプロジェクトでございますし、冒頭に御説明いただいたように、やはり大上段に国民の生命と財産を守るというところがございます。この辺りの具体的な期待し得る成果が見えてくると、本当にナショナルプロジェクトとしての意義も明確になってくるかなと思います。ありがとうございました。
臼田委員、質問3つ、今できる回答をしていただきましたけれども、よろしかったでしょうか。
【臼田委員】 ありがとうございます。大変明確で、かつ、非常に理解ができる御説明、ありがとうございます。希望としましては、ぜひそこまで資料に入れていただきたいなと思います。どうしても資料を見ていると、いわゆる自然現象としての解明というところに注力していて、そこまではよく分かるんですが、せっかく今のように、防災という観点にまで向けてきちんと検討されている、そして今、検証中であるということもありますので、そこまで書いていただくと、防災科学技術という観点では、この取組がきちっと防災につながっていくんだということを示せますので、ぜひそれも資料にきちんと載せる形でこれから表現いただけるととてもありがたいです。
以上です。
【久利測地学専門官】 ありがとうございます。
【上村主査】 重要なアドバイスをいただいたかなと思っております。ありがとうございました。
そのほかにいかがでしょうか。自由討論、自由な意見交換でございますので、遠慮なくお願いいたします。
小室委員は、これは「手を挙げる」ではなくて拍手でしょうか。
【小室主査代理】 すみません、手を挙げたつもりで、ごめんなさい。
【上村主査】 失礼しました。どうぞ。
【小室主査代理】 よろしいでしょうか。小室です。今、AIのお話が出ております。例えば大学などの教育現場では、ここ一、二年で生成AIが出てきたことで激変しまして、フェーズが全く異なる状況にあります。一般でも、生成AIがここ一、二年で激変して影響がものすごく大きいというふうに受け取られております。それがこうした専門的な研究、調査、実装において、フェーズががらっと変わるほどの進展が期待できるものなのかどうか。その辺を専門家として示唆いただけたらと思います。
【上村主査】 ありがとうございます。これはどなたがお答えいただけるでしょうか。御懸念のところはとてもよく理解できるところです。
【久利測地学専門官】 すみません、今、情報科学の専門の先生にはお越しいただいていないので、事務局でヒアリングをした範囲でお答えさせていただきたいと思います。
まず、事務局から情報科学の先生にお伺いしたところ、やはり生成系AIというのは、現時点のプロジェクトではほとんど着手しておりません。5年前の計画のところでは、例えば、先ほどステップ1、ステップ2、ステップ3と申し上げましたけれども、それぞれの段階のところでサポート的にAIを深層学習とか、マシンラーニングとかという形で入れているところを聞いていますけれども、この次のステップでは、やはり生成系AIは活用していくべきであろうというコメントをいただきました。特に大規模言語モデルについては、今、広くオープンに解析するところがイメージされるところかと思いますけれども、この地震に関してはデータの信頼性が高いものですから、いろんな情報を入れるよりかは、データを対応しながら拾ってくるような形が今のことだとできるので、その選択とかそういうところで活用して、効率的にデータを活用するような仕組みを今なら使うことができますし、それから解析プログラムがそれぞれ今分かれているんですけれども、それを全部統合するように解析プログラムを持っていくのであれば、生成系AIを使ってプログラムのほうを地ならししていくようなこともできるということで提案いただいております。そういう形でさらに有機的にいろいろ解析をつなげるというところで、重要な情報科学の知見が生かされると思っているところです。
【上村主査】 ありがとうございます。
【小室主査代理】 ありがとうございました。
【上村主査】 日進月歩どころでなく、どんどん進んでいる分野ですので、正直もうどこまで行くのかも、来年のことすら読めないという状況になっていますけれども、篠原委員からも御指摘いただいたように、現状でAIなしに研究も進まないというようなステージまで来ているのかなという気もしております。そういう中で、お話を聞いているだけでも今後の展開が本当に楽しみだなというところまで進んできている印象を持っております。ありがとうございました。
そのほかいかがでしょうか。遠慮なく御質問いただいたり、あるいは遠慮なく、こんなこともできないのかみたいな自由な御意見をいただいても結構です。どうぞよろしくお願いいたします。
臼田委員、手挙がっておりますね。よろしくお願いいたします。
【臼田委員】 せっかくですので、今後に向けての意見として少し述べさせていただければと思います。
今回御議論いただきたい事項として、情報科学を活用した地震調査研究プロジェクトの今後の課題がありますが、このタイトルのまま今後の課題というと、今回の研究の延長というような形になってしまい、情報科学自体は広いにも関わらず、すごく狭くかちっとしたところでやっていこうと捉えることになるのかなと思っております。
一方で、資料4の10ページから言いますと、いろんなところで今、防災に新しい技術をどんどん使っていくべきという話はたくさん出ています。そういうところでは情報科学という言葉よりも、デジタル技術とか、あるいは、ここにもありますが防災DXとか、そういう形で表現されることが多く、もちろん情報科学も入っているんですが、それ以上に科学、いわゆる学だけに限らず、非常に多くの民間企業が開発している技術もありますし、より国民一人一人まで届くための技術にもデジタル技術というのは使われていると認識しています。
そういう意味で、防災科学技術という観点で考えるのであれば、情報科学と地震調査に絞り込むだけでなく、例えば情報科学と防災科学技術という形で広げてもいいと思いますし、情報科学だけでなく情報技術と地震調査研究とか、もっと広く多様な技術を活用した多様な防災科学技術に広げるというのも今後の課題としてはあるのではないかなと思います。そうすることで、最初に私が質問したような、国民に分かりやすく伝わる部分での研究成果の表現であるとか、あるいは本当に被害を減らすところに効果的な、今ある生成AIも含めて、今ある情報技術を使ったらどこまで被害を減らせるのか、そういった評価研究もできると思いますので、より広い観点で今後の研究を企画、検討していくのも大事じゃないかなと思います。
以上、意見です。
【上村主査】 ありがとうございます。また非常に重要な指摘をいただいたと思っています。情報科学も情報技術も、全てあくまで手段であると。目的はやはり国民の命と財産を守るところに資するような広い観点でという御指摘だったかなと思います。ありがとうございます。
そのほかいかがでしょうか。
それでは、たくさん御意見をいただきましたので、ここまでとさせていただきまして、続けて先に進めていきたいと思います。「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト これまでの取組・成果と今後の課題」についての話題提供に移ります。お手元の資料5-2を御覧ください。
それでは、事務局と橋本科学官より御説明をお願いいたします。
【久利測地学専門官】 こちらも事務局の事業担当の久利よりまず大枠を説明さしあげて、事業の内容については、こちらは科学官の方にお願いしております。
まず、最初の事務局の説明にございましたけれども、事業については火山本部の方針と整合性を取るように進んでいるところです。火山本部が立ち上がりましたのは昨年、令和6年度からです。これから紹介さしあげる事業というのは平成28年度から始めている事業でして、令和6年度の立ち上げに伴い、令和5年度までの成果の一部については、火山本部の事業として移管してやっているところでございます。その上で成果等、まず、次のスライドをお願いします。どういうプロジェクトを行っているかという概要ですけれども、この事業につきましては、平成26年9月の御嶽山の噴火などを踏まえて、火山研究の推進及び人材育成が必要だというところで立ち上がったプロジェクトでございます。
既存の火山研究は観測の研究が主流でありましたけれども、防災・減災に資する観測・予測・対策の一体的な火山研究をしていこうと立ち上がったプロジェクトです。研究とともに人材も育成しようと、かつ、火山の人材を育成するためには、その専門性だけじゃなくて隣接分野等にも精通していただこうと、自分の大学だけじゃなくて、ほかの大学についても教育のプログラムについても学べるように体制を整えて人材育成をしてきたという特徴がございます。
概要については以上となります。詳細については、科学官、よろしくお願いいたします。
【橋本科学官】 私、科学官を務めさせていただいております橋本と申します。北海道大学に所属しております。よろしくお願いします。この事業の内容についてかいつまんで説明させていただきます。
まず、順番として、先ほど久利さんから御説明のありました人材コンソーシアムのほうからまず説明して、その後、研究事業のほうの説明という順番でさせていただきます。このスライド、真ん中のほうに参画機関がございますけれども、10年間取り組んできまして、徐々にこの参画機関、協力機関が増えてまいりまして、現在ではかなりの厚みになってきております。従来、単独の大学や研究機関では困難だった火山に関する総合的、学際的な教育体制が実現したと思っております。これ、理学の部分だけではなくて、工学の部分であるとか、社会科学に関することも一緒に教育するという学際的な取組になっています。このコンソーシアムの教育体制というか枠組みと、開発してきた教材のアーカイブというのがございますけれども、これは本事業のレガシーとして今後も維持活用していくことになっております。
下のほうにフローチャートがございますけれども、こちらのほうは発足時の課題、それから、その横に取り組んできた主な取組、それからここまでの主な成果、そして一番右側に今後の将来像というか課題、そういったものを掲げております。詳しいことは説明しませんけれども、次のスライドをお願いいたします。
ここで実際、人材育成はどういうふうになってきたのかということをまとめておりますが、この修了生というのは、大学や研究機関等のみならず、関係省庁とか自治体等、多数就職をしております。こういった意味で人材の輩出につながっていると認識しています。専門知識、技能を生かした仕事に就いている方が多いということになっています。下の棒グラフですけれども、こちらは測地学分科会のほうで作成したもので、政府機関とか国研とか大学等における火山研究者数の推移を示しておりますけれども、これは本プロジェクト自体の統計ではないですけれども、最近約10年間ぐらいの火山研究者の数が、微増と言ったほうが正しいかもしれませんが、やや増えてきているところにこのプロジェクトでの人材コンソーシアムが若手研究者の増加という面で貢献していると認識しています。
次のスライドお願いします。次、研究事業のほうの実施概要を示しております。次以降のスライドで各課題の成果を個別に紹介してまいりますので、このスライドでは研究事業のほうの全体の概要のみをかいつまんで説明いたします。先ほど久利さんからも説明ありましたように、観測・予測・対策をセットで行うのがこの事業の一つの目玉というか、キーワードになっておりまして、この課題、今、B、C、D、Aと並んでおりますけれども、課題Bに相当するところが観測になります。その下のほうに課題B2がありますけれども、そこは技術開発というか、機器開発に特化した課題になっています。いずれにしても「観測」に関する部分になります。
真ん中の課題Cのところが「予測」をキーワードにした取組になっていまして、その横の課題Dが「対策」を念頭に置いた課題になっています。一番下の課題Aが「データの一元化」で、これまでいろんな機関がそれぞれに持っていたデータを流通させる、共有しようということで、このプラットフォームを開発することが行われています。これはJVDNというシステムとして運用されております。
次のスライドでは、A、B2、Bの4つのサブテーマ、それからC、それから課題Dというテーマの順で説明をしていきます。まず、課題Aですけれども、これがデータの一元化で、これまで気象庁とか大学とか研究機関等により、それぞれでデータを管理していたんですけれども、これを共通化しようと、流通させようということで、これを促進するためのプラットフォームを開発したという内容になっています。このプラットフォームは、本プロジェクトでは令和5年度までで一応終了しまして、現在は火山本部の事業として移管しております。移管後も、現在まだ最終年度として続いている本プロジェクトのプラットフォームとして引き続き活用を続けています。
下側の課題のB2ですけれども、技術開発、機器開発の課題、これもR5年度、令和5年度で完了しておりますけれども、こちらは、位相シフト光干渉法による振動計というものを開発したという課題になっていまして、要するに光ファイバーの技術を使っているんですけれども、電気的な回路を内部に持たないので、雷とかそういった災害に非常に強いという特性があります。火山は非常に雷が多いところですので、そういうところに非常に強い有利な機器が開発でき、製品化もされているんですけれども、将来像としては、さらにS/Nの向上がもう少し必要だと聞いています。
さらに、既存の火山周辺に張り巡らされている光ファイバーのネットワーク、こういったものを利用して、これと併せて使うような方法とか、いろいろ発展性が考えられるので、こういったところをより効率的、効果的に利用していく手法を今後追求していくのがいいのではないかと思っております。
次のスライドお願いします。こちらは課題のBですけれども、Bはサブテーマが実は4つありまして、B-1、B-2、B-3、B-4とございますが、時間が限られておりますので、特にB-4について説明したいんですけれども、こちら火山の内部構造を電気的な手法で特性として評価する内部構造の探査ですけれども、とりわけ水蒸気噴火は御嶽山のきっかけになってできたプロジェクトですので、水蒸気噴火を念頭に置いて噴火の切迫性の評価に資する情報として、比抵抗の探査を精力的に進めてきたというのがこのB-4になっています。
ちょっと見にくいかと思うんですけれども、右のほうに、例としてある火山の断面図が出ているのですが、多くの火山で比較的浅いところにキャップ構造という粘土の層がありまして、それが圧力を閉じ込めるような構造として働いていることが多くの火山で共通して見いだされることが分かってきました。これが本プロジェクトのB-4の大きな成果の一つでして、こういった内部構造の解明ができてくると、これがやがて概念モデルという、火山の中のシステムがどういうふうに動いているのかの構築につながっていって、いろんな観測が行われていますけれども、そういったモニタリングデータの統一的な解釈性の向上に貢献することが広く理解されるようになってきました。実際、こういったことがあると分かってきましたので、内部構造の調査を現在、火山本部の基礎情報調査が立ち上がっていますけれども、そういうところに取り入れていく動きが既に始まっております。こういった構造の調査は物質科学的な研究との連携も非常に進んでおりまして、今後、マグマ供給系も、もうちょっと深いところの構造の解明にも進んでいく、そういう可能性があるのではないかと思っています。
次のスライドお願いします。次が課題Cですけれども、こちらは予測に関するところになります。この中でC-2というのは、火山帯でボーリングをしたり、トレンチ調査といいまして、地面を掘って基礎を調べる調査を精力的に行ってきたのがこのC-2になります。これは何のためにやっているかといいますと、過去に起こったその火山での噴火の履歴が火山灰の記録、火山灰、溶岩流、そういったものの噴出物の記録として残っていますので、そういったことを詳細に調べようというのがこの課題になります。これはどの規模の噴火がどういう頻度で起こっているかを調査することになりますので、地震でいうと活断層調査でトレンチをするのと似ていると思うのですが、そういった位置づけになります。
これを系統的に進めることで非常にたくさんのことが分かってきました。これも実は現在立ち上がっています火山本部の基礎情報調査の一部として既に項目に入っており、このプロジェクトでの成果が火山本部の事業に取り入れられてきています。
C-3についても少し触れますと、C-3のほうは数値シミュレーションで噴火ハザードの予測をするようなテーマになっていますけれども、今後、確率論的なハザードマップの作成手法などの提案に結びついていく研究テーマになってきています。
次のスライドお願いします。こちらが対策の部分になります。3つサブテーマがございましたけれども、ここではD-2を紹介したいと思います。こちらは主に活発に噴火している桜島を対象にして研究を進めてきた課題になりますけれども、噴煙をレーダーを使ってリアルタイムにその挙動を把握したり、ディスドロメータという火山灰粒子を捉える計測器を展開することによって、落ちてくる火山灰をリアルタイムで把握する技術が開発されました。今のところ、こういったことが系統的に行われているのは桜島だけですけれども、今後、確率的な降灰予測によるハザード情報をリアルタイムに出していくことを、桜島以外の火山にも念頭に置いて進めていく上でどういうことが必要かというと、恐らく高精度とか高時間分解能で噴煙の状況を即時的に把握して、シミュレーションに連携させていく部分がまだ十分とは言えない部分がありますので、その辺の研究開発をさらにしていく必要があるんじゃないかと考えております。
次、お願いします。次から3枚のスライドは、研究推進事業全体として得られた成果と今後取り組むべき課題についてまとめています。1つ目ですけれども、これは予測精度の向上に注目した図になっていまして、冒頭に書いてありますように、言うまでもなく火山ハザードの予測、ひいては対策をさらに向上させる上で観測と基礎研究、こういうものの継続というのはぜひ必要ですけれども、噴火現象の規模とか様式、それから水位の情報を得るための観測とか分析が充実してこないと、的確なハザード予測を行うことがなかなか難しいということで、この辺は非常に重要なポイントかと思います。
現在、このプロジェクトを通じてある程度できてきたこととまだできていないこと、分からないことというのは分けて書いていますけれども、現在、十分な観測体制がある程度あれば分かるものは火山本部の事業に順次移管していっていることになります。観測自体も火山本部の事業として展開されつつあるものもありますし、その他の部分もありますけれども、ある程度プロジェクトでできてきた部分はどんどん本部の事業に展開していく流れができてきております。
それから、下のほうに書いてあるまだ分からないことも実はたくさんありまして、観測や分析に基づいた一次データだけではまだ分からないことも実はございます。そういったものは、まだ現状では火山本部の本体の業務として実施できる段階には恐らくないので、こういったものについては何らかの形でまださらに研究開発を進めていって、やがて事業に展開していけるような形態に進めていくフェーズがもう少し必要なのかなと思っています。
次、お願いします。2番目が火山の評価ですけれども、火山の特性とか火山活動、こういったものを定量的に評価することが極めて重要になるわけですけれども、最初のほうで説明しました比抵抗構造、火山の内部構造の調査と、噴火履歴の調査がこの基礎情報という点で非常に重要になっているということで、これは繰り返しになりますけれども、こういったものについては、本プロジェクトで得られた成果が火山本部の事業として今後実施されていく流れに着実に結びついてきております。今後、火山本部の事業として、多くの火山でこれを系統的に実施していって、そこで得られた知見をさらに火山活動の評価とかハザードの予測、こういったことに結びつけていくところが、まだ多少、研究要素が必要なところになっています。
次、お願いいたします。こちらがハザード対策の部分としてまとめたところですけれども、火山本部の総合的な調査観測計画において、火山ハザードの即時的な把握とか予測というのは施策の重点になっておりますけれども、こういったものは防災計画の策定とか警戒避難対策、あるいは噴火発生後の被災の対応とか復興、こういったところに資する適切な情報発信にも当然、必要な取組になってきています。
迅速なハザード予測には、シミュレーションに入力するための初期値といいますか、例えば降灰予測の場合でしたら、火山灰の噴出率、火口からどれぐらい火山灰が今出ているのかを入力してあげないとシミュレーションは実効的なものになりませんので、そこをきちんと即時的に把握する、正確に把握するための技術の開発も必要になってきております。ここら辺がまだ研究開発要素があるところかと思っております。
最後、次、お願いいたします。これが全体のまとめになるんですけれども、上のほうで、これが立ち上げ時の課題として、測地学分科会の地震火山部会のほうで文書が作られておりまして、ここに5つこういったことが必要だということで掲げられておりました。これに基づいて次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトが立ち上がったわけですけれども、先ほども申し上げたように、4つの課題と、それから人材育成とこのコンソーシアムをセットにした取組としてこのプロジェクトが10年間続いてきたわけで、最終年度の令和7年度はこういうことに取り組んでいますというのが右側に小さい文字で書かれています。下の部分は総括ですけれども、一番上の1から5の括弧に対して、それぞれどういう成果が得られているかがまとめられております。
(5)については、一部これだけに限らないんですけれども、今後必要な検討がまとめられています。例えばですけれども、(5)に書かれているように、現象の即時把握技術の高度化とか開発、それからハザードマップが今もありますけれども、これをもっと分かりやすい形に作成していく、あるいは作成手法を標準化していく、あるいは表現方法を検討していくといったこともハザード対策という意味では非常に重要なポイントになってくるかと思っております。
少し長くなりました。すみません。まだまだ取り組むべき課題も多いことを指摘して私の説明を終わらせていただきます。ありがとうございます。
【上村主査】 どうもありがとうございました。それでは、今の御説明について御質問、御意見ございましたら、挙手にてお願いいたします。いかがでしょうか。
【古田審議官】 もしなければ。
【上村主査】 お願いします。
【古田審議官】 よろしいですか。文科省の審議官の古田です。私、事務局の一員でもあるのでコメントする立場にないのかもしれないんですけど、4ページ目にコンソーシアムの参画機関というのがありまして、これ私、非常にすばらしいというか、いろんなところでコンソーシアムをつくっていますが、大学、あと研究機関、さらに協力団体として各県がおおむね入っている。さらにこういった企業ですね。この組織体というのは非常にいいというか、よくできているなという感じがしています。さらにもっともっと入りたい企業はたくさんあると思いますし、このコンソーシアムの枠組み、人材育成のために今つくられていますけど、この事業にこだわらずというかとどまらず、この枠組みを使っていろんな火山の関係の取組ができるんじゃないかと。これは我々文科省としてもだし、各研究機関や各自治体にとっても非常にいい取組ができるんじゃないかと思いましたので、あえてコメントさせていただきました。
以上です。
【上村主査】 ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。
それでは、先ほど御説明いただいた2項目めになりますが、本日御議論いただきたい事項の2項目め、次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトのこれまでの取組成果ということについて御説明いただきました。今後の課題についても御説明をいただいております。ここからフリーのディスカッションとさせていただきます。今後の方向、あるいはこういう課題に取り組むべきではないか、こういう出口戦略を持ってアウトプットを出していくべきじゃないか、自由に御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
安井委員から手が挙がっております。安井委員、お願いいたします。
【安井委員】 安井です。私自身は、この次世代火山研究の研究事業のほうにまさに参加機関として関わらせていただいております。現在10年目ですけれども、先ほど橋本先生のほうからお話がありました課題のC-2というところでトレンチという話が出たのですけれども、それをまさにやっています。ちょっとだけお時間いただいて、この後ろに写っています浅間火山、最近おとなしいですけれども、れっきとした活火山で、これの歴史を調べるという目的でこれまで35か所トレンチ掘削というのをやってきました。重機でもって5メーター掘って工事みたいな作業ですけれども、地質調査をするというもので、私自身は地質学、火山地質が専門です。
今までは表面をずっと地表踏査していたんですけれども、なかなか地面の下って見えないので、今回、そういう5メーターの掘削というのをたくさんやらせていただいたことで非常に多くのことが分かって、この山の1万年の歴史というのが非常に細かく分かってきたんです。そういう具体的な成果を出させていただいたので非常にありがたかったんです。
それで、今まで火山学会というのは、A会場とB会場に分かれて地球物理の分野がA会場、B会場が地質や岩石学と分かれて、同じ火山を対象にしてはいるんですけれども、分業化が進んでしまって、考え方とか専門用語がお互いに分からないような状態になってきていたんですね。今も火山学会、A会場、B会場と分かれているんですけども、この10年間でそれぞれの課題ですごく研究が進みました。それらに対して報告会などを通じてお互いに異分野というか、異なるアプローチの方法でやっている火山についてどうやっているかお互いの理解がすごく進んだと思うんです。
一方で、火山研究者はすごく少ないと世間でも言われていて、研究事業と両輪で人材育成が行われてきたわけです。私自身はコンソーシアムのほうは関わっていないんですけれども、先日、6月の終わりから7月にかけてスイスで国際火山学会、IAVCEIが開かれていて、行ってきました。その会議の前にフィールドで私はイタリアのエトナ山とかを見る巡検に参加したんですけれども、そこでコンソーシアムの1期生の方と5日間、フィールドや宿で御一緒させていただいたんです。その方は大学の助教さんとして就職されて今まさに活躍されているんですけれども、非常に視野が広くて、一緒に地質も見たりして、着実に人材が育っているのをすごく実感したんです。ですので、こういうプロジェクトは非常によかった。よく言われる問題点としては、連携がまだまだ進んでいないですねという指摘をされて、ようやくお互いの言葉が分かるようになってきて、方法とか考え方もだんだん分かるようになってきた段階ですので、今後さらに連携していくように、この勢いでさらに後継のプロジェクトに期待したいというか、進めていけたらいいんじゃないかなと感じております。
特に噴火の直前予知は、もう今の技術レベルだと可能だと思うんですけれども、噴火が始まってから先、どう推移していくかがやっぱり分からないんですね。それは地質学的に過去を見てこういうヒントがありますというのと同時に、観測データを見ながらリアルタイムで予測していくのが今後大事だと言われていますので、噴火が始まった後の推移予測のためにも、今後このままこの勢いで続けていけるような仕組みがあったらいいのかなと感じております。
すみません、ちょっと長くなりましたけれども、お返しします。
【上村主査】 ありがとうございました。非常に力強い応援をいただいたような気がしております。ありがとうございます。
臼田委員、お願いいたします。
【臼田委員】 臼田です。3点コメントをさせていただきます。まず、人材育成に関しましてですが、資料の5ページで、少なくとも、微増という表現をされておりましたが、増えてきているということはとても望ましいことだと思っています。微増と、あまり控え目にしなくてもいいのではないかという気持ちも少しあります。要するに研究者になろうという総数がそもそも今多くないんじゃないかなという気がしています。正確には分からずにしゃべっていますが、もしその中で火山の研究者がこれだけ増えたということは相対的にどうだったのかなど、そういったこともまた見せ方としてはあり得るんじゃないかなと思ったのがまず1点です。
それから、ここには書かれていないかなと思っているんですけれども、火山研究者そのものの育成はもちろん大切ですが、今後またさらに必要になってくるのは、いわゆる専門の研究者として生きていく人を育てていくことだけでなく、行政の方とか、あるいは市民の防災の方とか、そういった方々の育成というのも重要じゃないかなと思っています。
例えば、私は火山メインではなくて、防災の研究で大学でも研究室を持っているんですけれども、今、7人の社会人博士課程がいまして、そのうちの半分は研究者になろうという人ですけど、もう半分は、研究者にはならないんですけれども、自分が社会において研究者と渡り合って議論ができるようになっていきたいから博士を取りたいんだというのが半分いるんです。そう考えると、これから特に防災という観点で言えば、判断や取組が非常に重要になってきますけれども、そういった方々が博士を持って火山研究者と一緒に渡り歩きながら火山防災に取り組んでいくというのも非常に大事な人材育成になると思いますので、次に向けての人材育成においては、必ずしも専属火山研究者だけでなく、行政であったり企業であったり、いろんなところにいる方々を火山の分野での博士を育てて、火山防災を一緒に取り組んでいくような人を育てていくことも一つ視野に入れると、人材育成というのが非常に重要になるんじゃないかなと思います。以上が1点です。
それから、次の1点は、今度は次世代火山研究なんですが、これは私も立ち上がりの頃から横に存在している形で見てはきていたんですけれども、最初の立ち上がりのときに、10年という非常に長い期間で進められていくことに特徴を持っている取組だなというのをすごく印象的に思いました。そのときに、次世代という名前をつけたときの次世代って、どの辺りを視野に入れたんだろうなというのが今になって気になっていまして、その当時の10年後を次世代として見たのか、30年後を次世代として見たのか。それによってこの研究成果の見方がまた変わってくるんじゃないかなと思いました。もし10年後だとすれば、10年後を見越して取り組んだ成果が今ここに来て、その当時思っていた10年後に比べてどうなのか評価をすると、その相対的な予算もまた見えてくると思いますし、30年後が次世代だとすれば、今後20年において、これが助走としてどれだけ効果的だったのかその先の20年の計画に結びつけていくと、次世代という言葉をつけたことの意義がさらに明確になるのではないかなと思いますので、今後の火山研究を伸ばすときに、次世代とつけて10年間取り組んだことをいかに生かすかというところが一つ、今後のポイントになるのではないかなと思います。
最後、3点目は、私は社会防災という冠で研究をしている者なので、社会への影響を非常に気にするのですが、橋本先生も最後におっしゃっていただきましたけれども、やはり社会からすれば、火山の噴火というのは分かっていることと分からないことがすごくあって、その中で防災をしなければいけない。そういう意味では、分かっていることは何で、分からないことは何なのかということがはっきり分かることが、社会において火山災害に備える非常に重要なポイントになると思います。そういう意味で、分かったことは何で、分からないことは何かがはっきり資料でも明確に出てくると非常にありがたいというのがまず一つあります。
それから、最後にハザードマップの作成手法の標準化は非常に重要なところで、社会で防災をやるに当たって、火山について取り組むにはハザードマップからまず入っていかなければいけないというのがやはりあると思います。そのときに、今回のこの10年間の研究で、現在のハザードマップに対してどういう知見が得られたのかというのがここにあって、それを踏まえてハザードマップ作成手法の標準化が必要だと言っていただけると、本当にこれはすごくいいなと感じました。本当に標準化は必要だと思いますし、ハザードマップの高度化も絶対に必要だと思います。それに向けてどんな示唆が得られたからこの標準化、あるいは作成が必要だという形で表現できると、さらに次の研究にしっかりつながっていくと思います。こういったところ、次の研究においても、ぜひ社会に対してどんなインパクトを、アウトプットをどう残すのかというのを意識して計画を立てた研究ができるといいのではないかなと思います。
以上です。
【上村主査】 重要なアドバイス、ありがとうございました。
それでは、竹内委員、お願いいたします。あっ、質問がありましたね。じゃあ、事務局のほうからお願いします。
【久利測地学専門官】 1、2については事務局から回答して、3は必要に応じて橋本科学官のほうから回答いただければと思います。
まず、1のところですけれども、人材が全体に減っている中で微増というのは、文科省としてもそう見て、非常に効果のあった事業だと思っております。もう少しそれをアピールしていきたいと思います。コメントありがとうございました。
2の研究者だけでなく実務人材等についてですけれども、資料の2ページ目を御覧ください。緑の部分で火山研究開発や火山専門家の育成・継続的な確保の推進というのは、火山本部の事業の中でうたわれているものです。それで、1つ目の四角です。即戦力となる火山人材育成プログラムを昨年度、令和6年度から5年事業として立ち上げております。まさに、火山の専門性が高い大学において、社会人の方に火山研究を目指していただこうという、今少し防災等に取り組んでいる方に、火山の防災についてもちゃんと大学院の中で学んでいただこうということや、その機会の提供とか、大学院には入れないけれども研修を受けたいとか、それから火山研究というのは、例えば工学とか防災の研究者にとっても少しハードルが高いんだけれども、これをきっかけに少し共同研究をやって一緒にやっていこうという方たちに入っていただくために即戦力プログラムというものを開始させていただいております。実務者等に、社会人等につきましては、こちらのプログラムでしっかり進めていきたいと思っていますので、御紹介さしあげます。
それから、ハザードマップについては、橋本科学官より少し補足いただければと思います。
【橋本科学官】 ハザードマップの作成の標準化の問題意識がどういうところから出てきているかということですけれども、噴煙のシミュレーションもそうですけれども、1つは、非常に高精度なシミュレーションという方向性があって、それはそれで非常に研究としても意義があることですけれども、それだけではないだろうと。実際に利用しやすいものを目指したときに、いたずらに精度とかそういうものを追求するよりも、そこそこの精度であっても、きちんと物理法則が満たされたという条件はもちろん必要ですが、軽快に走る計算時間が少なくて済むようなものをいろんな条件で大量に回して、確率的な表現としてハザードマップを作っていくことが必要なのではないか、そういうような考え方がこのプロジェクトを進めていく中でも出てきまして、次のプロジェクトにもし取り組むことができれば、そういった方向性を追求していくのが一つの課題になるのではないかというのがお答えになります。
現在、現状としてハザードマップ、非常に多くの火山自治体主体で作られているんですけれども、そのほとんどが、どういった計算コードが使われているとか、どういう条件で計算したということが公表されておりません。ですので、信頼性とか、どういう仮定に基づいているのかということがよく分からない状態で使われているわけですけれども、やはり火山本部というのが立ち上がった以上は、国としてある程度こういう方針でこういうものを使って計算するのがいいですよというような、標準化のレシピというんですか、そういうものを提示するということが極めて重要じゃないかという問題意識が議論の中で出てきまして、そういうことが課題として挙げられるだろうというような流れになっております。
以上です。
【上村主査】 ありがとうございました。
それでは、先ほど失礼いたしました。竹内委員からコメントをいただきたいと思いますが、時間も厳しくなっておりますので、最後の御質問、コメントとさせていただきたいと思います。
それでは、いかがでしょうか。竹内委員、お願いいたします。
【竹内委員】 ありがとうございます。実は、先ほど臼田委員が質問されたこととほぼ同じだったので、もう結構ですと言おうかと思っていたところだったんですけれども、やはり人材育成というところで、火山の人材育成はもちろん重要ではあるんですが、それを防災につなげるときの人材育成ですね、火山の人と行政の人たちがお互いに理解するであったり、先ほど安井委員がおっしゃられていたように、火山の中でもいろいろと共通認識をつくることが重要であったというような、できつつあるというようなお話もありましたけれども、防災でつなげていったときに、今、新燃岳でも断水が発生したりとか、健康被害の件であるとか、そういうところがありますけれども、噴火活動というのが推移とともにどういう影響を与えていくのかという研究、それを理解していく、防災の対策につなげていくようなところもこの人材育成の中に取り入れていただきたいというのがコメントになります。
以上です。ありがとうございます。
【上村主査】 ありがとうございます。
たくさん御意見いただきました。ありがとうございました。時間がそろそろ来ておりますので、本日の議論はここまでとさせていただきます。時間内に発言できなかった御意見等ございましたら、委員会後に事務局までメールで御意見いただければと思います。
それでは、閉会の前に事務局から事務連絡をお願いいたします。
【大慈弥防災科学技術調整官】 事務局でございます。本日は委員会に御出席いただきまして、ありがとうございました。
次の委員会については、7月31日木曜日の10時から開催で考えております。詳細は追って御連絡させていただきたいと思います。御多忙のところ恐れ入りますが、どうぞよろしくお願いいたします。
また、先ほど上村主査からございましたように、本日の議論について追加で御意見があるようでしたら、7月22日火曜日の17時までにお送りいただけると大変ありがたく思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【上村主査】 それでは、以上をもちまして、第64回防災科学技術委員会を閉会といたします。ありがとうございました。
―― 了 ――
研究開発局 地震火山防災研究課