防災科学技術委員会(第50回) 議事録

1.日時

令和3年6月18日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 防災科学技術政策の現状等について
  2. その他

4.出席者

委員

上村主査、小原主査代理、大原委員、大湊委員、熊谷委員、小室委員、鈴木(博)委員、鈴木(靖)委員、関口委員、中北委員、永松委員、前田委員、三隅委員、目黒委員

文部科学省

生川研究開発局長、長野大臣官房審議官(研究開発局担当)、鎌田研究開発局地震・防災研究課長、福田研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室長、山田研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室長補佐 他

オブザーバー

国立研究開発法人防災科学技術研究所
平田参与・首都圏レジリエンス研究推進センター長(説明者)、臼田総合防災情報センター長(説明者)

5.議事録

【山田防災科学技術推進室長補佐】 それでは、定刻となりましたので、始めさせていただきます。
初めに、事務局からお知らせいたします。ただいまから、防災科学技術委員会第50回を開催いたします。このたびは、委員の皆様におかれましては、お忙しいところ御出席いただき、ありがとうございます。本日は委員16名中14名に御出席いただいており、定足数を満たしております。
本日はウェブ会議となっておりますので、会議資料につきましては、お手元のPCで御覧ください。また、議事録作成の都合上、御発言の際は、前回同様、冒頭にお名前をおっしゃっていただきますようお願いいたします。
それでは、議事の進行は上村主査にお願いいたします。
【上村主査】 皆さん、おはようございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。12時までという予定にさせていただいております。なるべく円滑に進むように進行させていただきたいと思います。
本日の議題については、前回に引き続きまして、防災科学技術の現状等についてでありまして、特段非公開にすべき事項はないものと思いますので、これ以降の議事につきましては公開とすることとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
特に御異論ある方がおられないようであれば、公開ということで進めさせていただきたいと思います。よろしいですか。
ありがとうございました。それでは、傍聴される方がおられるようでしたら、事務局のほうで接続の手続きをお願いいたします。
【福田防災科学技術推進室長】 かしこまりました。
(傍聴者入室)
【山田防災科学技術推進室長補佐】 ただいま兵庫県の前阪委員が入られましたので、続けたいと思います。
【上村主査】 前阪委員、聞こえておりますでしょうか。
【前阪委員】 聞こえています。よろしくお願いします。
【上村主査】 よろしくお願いします。前回は御欠席ということで、本日初めての御参加ということかと思いますので。
【前阪委員】 初めてです。よろしくお願いします。
【上村主査】 一言、自己紹介を兼ねて御挨拶いただければと思いますが、よろしくお願いします。
【前阪委員】 昨日、兵庫県のほう、本部会議を開きまして、緊急事態宣言が解除されまして、来週なんですけど、新たな措置に入ることになりました。まだまだ感染が完全に収束したわけではありませんので、引き続き頑張っていきたいと思います。
4月から拝命しております。何とぞよろしくお願いします。
以上です。
【上村主査】 どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日御出席の予定の方全てそろいましたので、ここから議題に早速入っていきたいと思います。
それでは、議題の1番について、本日の配付資料及び審議の進め方等について、事務局より説明をお願いします。
【山田防災科学技術推進室長補佐】 御説明いたします。
本日の進め方といたしましては、資料1として、前回の委員会における主な御意見、また、資料2として、政府の防災体制について、そして、資料3として、最近の防災科学技術をめぐる動きについて、この3点につきまして、まず事務局より御説明しまして、そして、防災科学技術研究所より、資料4として、首都圏を中心としたレジリエンス総合力向上プロジェクト、そして、資料5として、防災のデジタル化に関する取り組み、この2点についてプレゼンテーションを頂き、最後に事務局より、資料6として、本日の議論のポイント(例)について簡潔に御説明した上で、残りの時間で自由に意見交換いただければ幸いと考えております。
事務局からは以上です。
【上村主査】 本日の進め方と資料の部分について御説明いただきました。何か委員の皆様から御質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。
特によろしいでしょうか。これから御説明いただきますので、そこの中でまた御質問等いただければと思います。
それでは、今御説明いただいた段取りに沿って審議を進めていきたいと思います。
それでは、まず事務局から、資料1から3について説明をお願いいたします。
【福田防災科学技術推進室長】 事務局でございます。それでは、まず資料1をお開きいただきたいと思います。資料1、画面のほうよろしいでしょうか。こちら、前回の防災科学技術委員会における主な御意見ということでございまして、前回御出席いただいた委員からそれぞれ御意見を賜ったところでございます。そのポイントを事務局のほうでまとめさせていただいたものでございます。
こちら、おさらいということで、適宜御参照いただければと思いますが、一番上に白丸で記載されておりますけれども、防災の取組は多岐にわたるため、他省庁の取組を把握しながら議論を進めることが重要であり、全体像が分かるとよいという御発言を頂いております。主査からも、事務局のほうで何らかの資料を用意することも含めて検討いただきたいということで仰せつかってございます。
これに関しまして、次の資料2を事務局のほうで作成しております。資料2をお願いします。政府の防災体制についてというものでございます。この資料でございますが、これは先ほどの御意見を踏まえまして、政府全体で防災、当然、科学技術以外の側面も含めて、どういった形で各省庁がそれぞれの役割を果たしているのかということに関しまして、ちょうどこの資料の右下、米印で中央防災会議という、当然これは法令に基づいて設置されておる組織でございますけれども、平成13年、つまり、省庁再編がなされた直後に開かれた会議でございますが、その際に配布された資料におおむね沿う形で作成したものでございます。
この資料の上のほうを御覧いただければと思いますけれども、各省庁の所掌に基づく実務的な対応ということでございまして、中央防災会議、当然これは会議の長は内閣総理大臣であって、実質的な事務局は内閣府に防災担当という組織がございますが、そこに特命大臣ということで防災担当大臣が置かれ、そして、その下、事務局として内閣府、これは先ほど申し上げた内閣府防災担当、そして、文部科学省を含む各省庁がそれぞれの役割を果たし、そしてまた災害対策基本法に基づく指定公共機関であるとか、あるいは指定地方行政機関、また地方公共団体といったようなところと連携して実務的な対応がなされているというものでございます。
当然ここで文部科学省の記載もございますが、これはどちらかと言えば小学校ですとか、大学だとか、そういったものを所管する立場としての文部科学省という色合いが基本なのかなと思っております。
他方で、この下にピンクで記載させていただきましたが、基礎的な研究の推進ということでございます。これは各省庁の所掌という関係で言えば、いわゆる研究、様々な研究がございますけれども、その中でも基礎的な研究、それは当然それぞれの分野の最も基盤、また基本的なところに当たるものだと思うんですけれども、そういったところを行っていくというのは文部科学省のまさしくミッションであるということでございます。したがいまして、この委員会は防災ということでございますけれども、当然、他省庁においても、他省庁の所掌の範囲で、主に実用的あるいは応用的な研究、これを国の研究所、あるいは、それぞれの役所が所管する研究開発法人などにおいても研究というのはやっていると思うわけでございます。ただ、そういった面も含めた全体的な基礎的な部分というところに関して、文部科学省が研究面において役割を果たしているというように御理解いただければと思っております。
したがいまして、文部科学省がやっている、例えば、防災科研を含め、その研究の成果が各省庁の所掌の中で実装されていくということも大いにあるということでございまして、この後、防災科研のプレゼンテーションの中でも幾つか事例を紹介いただけるのではないかと考えております。これが資料2でございます。
もう1点、資料3ということで、事務局から紹介させていただきたいと思います。資料3でございます。1点、この資料でございますけれども、これは最近の防災科学技術をめぐる動きについてということでございますけれども、まさしくこれは最近、直近でも様々な動きというのがございますので、実は、本日も金曜日でございますので、閣議が開催される定例日であるのですけれども、本日の閣議において決定されるような文書というのも含まれております。したがいまして、若干事務局のほうでまだ内容が確認し切れていない部分がございますので、本日は委員限りというようなことで画面に共有させていただいている次第でございます。この確定版につきましては、追って文部科学省のホームページのほうで改めて掲載したいと考えております。
この冒頭でございますが、これも事務局のほうで骨太方針と記載してしまっておりますけれども、これは通称でございまして、正式には、「経済財政運営と改革の基本方針2021」というものでございます。実際、今この画面に共有されているものは、この基本方針が定められるところの基になる経済財政諮問会議の資料を基にしたものでございますけれども、この中で、ちょうど今画面の真ん中のあたりに、防災・減災、国土強靱化新時代等の新たな動きというような記載がございます。これは少しこの画面をこのページの下に行っていただきますと、注書きで、【3】というのがございます。「防災・減災、国土強靱化新時代の実現のための提言」というものが、5月25日、先月でございますが、先ほど御紹介した内閣府防災担当のほうでちょうど取りまとめられているというものでございます。これは本日の資料でも参考資料として、これは内閣府防災担当の了解も頂いて添付しているところでございますけれども、これに基づく取組をしっかりと進めていくというようなことが閣議決定でもオーソライズされるという見込みになっているというものでございます。
もう1点、ちょうど画面真ん中のあたりで、【5】というところにつながる防災デジタルプラットフォームというものがございます。これは【5】の注書きのほう、次のページに参りますと、災害対応に必要な情報をシステム間の連携等により収集・分析・加工・共有するシステムというようなことでございまして、こういったものの検討も進めると。この点につきましては様々な動きがございますので、この後の防災科研のプレゼンテーションの中でも触れられるのではないかと思っております。
それから、ページを少し下に行きまして、若干時間は限られておりますので、幾つか飛ばさせていただき、4ページに参ります。ここで総合イノベーション戦略2021というものがございます。こちらは科学技術、あるいは、イノベーションに関する国全体の戦略を定めるものでございますけれども、この中で、ちょうど画面の真ん中やや上のあたりに、これも注書きにつながっているSIP4Dですとか、あるいは、その下何行か行ったところに、ISUTと書いて、これでアイサットと読みます。こういったもの、それから、そこからまた何行か下に行きますと、CPS4Dという、いずれも略称でございますけれども、こういったものに関する記載がございます。これもいずれも防災科研が取り組んでいるものでございまして、こういったものが閣議決定文書にも取り入れられているというものでございます。いずれも、この後の防災科研のプレゼンテーションのほうでまた触れていただけると思っております。
次に、またページを少し飛ばしまして、7ページ、これもまさしく同じ日の閣議決定ということではあるんですけれども、これはちょうどデジタル庁が9月から設置されるということで、既に法案は成立しているわけでございますけれども、具体的にどういったことを進めていくかという政府全体の方向性を定めた文書というものが、これも同じく決定される見込みでございます。この中においても、標題で下のほうに防災関係プラットフォームの構築というところで、先ほど申し上げたSIP4D、その他の記載がいろいろ出ているということでございます。したがって、これらの取組は、科学技術の観点においても、それから、デジタル化・DXの観点においても、いずれも極めて重要なものであるというようなことで取り入れられているというものでございます。
それから、あと1点だけ、飛ばさせていただきまして、一番下の11ページでございます。11ページは防災基本計画、これは先ほど申し上げた内閣府防災担当のほうでやっている中央防災会議、これも先月、一部改正がなされたところでございまして、先般の災害対策基本法の改正ですとか、あるいは、最近のコロナ禍における避難の在り方ですとか、そういったようなことなどを踏まえて修正がなされたものでございますが、その中において、この下線部が追加されたと。すなわち、何度も申し上げておりますが、SIP4Dというものでございます。これは当然、防災科研の研究開発プロジェクトという位置づけなわけでございますが、こういった形で防災基本計画にも取り入れられているというようなものでございます。
以上、駆け足でございますが、当面の動きということで御紹介させていただきました。以上でございます。
【上村主査】 ありがとうございました。
ただいまの事務局の説明について御質問等ありましたら、よろしくお願いいたします。
なかなか駆け足で、これをさっと理解するのは大変かと思いますが、せっかくの機会ですので、何なりと御質問いただければと思います。
いかがでしょうか。よろしいでしょうか。じっくりと読んでいただければ、また国の施策の中での位置づけとか、今の動向であるとか、方向性であるとか、重要な部分を抜き出していただいておりますので、御理解いただけるかなという気がいたします。
では、後で戻っていただいても結構ですので、まずこの部分については、前回御質問あったことに対するお答えという部分でもございますし、国の全体的な施策の方向性という部分でもございますので、このあたりを踏まえた上で、次の議論に移ってまいりたいと思います。ありがとうございました。
それでは、次に、防災科学技術研究所の平田参与・首都圏レジリエンス研究センター長より、資料4についての説明をお願いいたします。
【平田センター長】 平田でございます。それでは、今、事務局のほうで映していただいている資料に基づいて御説明します。
それでは、お時間を頂きましてありがとうございます。私のほうは、文部科学省が防災科研に補助事業として、平成29年度から5か年計画、つまり、今年度が最終年度でございます今年度まで予算措置をしていただいた「首都圏を中心としたレジリエンス総合力向上プロジェクト」の、今年度が最終年度でございますので、成果について御説明させていただきます。
御存じのとおり、首都圏というのは、我が国の経済、社会、金融、政治、情報が集中し、文化も集中し、大勢の人が住み、たくさんの建物、構造物がある、そういうような日本の中枢になっております。もしここでマグニチュード7、つまり、熊本や神戸で起きたような地震が発生すると甚大な被害が出るということが、国や東京都や県の被害想定で示されております。この被害を減らすためには、首都圏を中心とした社会の対応力・予測力・予防力、つまり、災害に対するレジリエンス力を向上させる必要があり、本プロジェクトでは、社会科学、理学、工学という学際的な学術研究と、産業界、行政、民間(産官民)と学術が連携する「データ利活用協議会」というものを設置いたしまして、研究開発を進めてきたところでございます。次のぺージから、それぞれについて具体的に御説明します。
まず3つの学術の分野、社会科学、理学、理学といっても地震学でございますが、地震学と耐震工学が、それぞれ、災害に対する対応力、それから、災害がどういうものが起きるか、どんな揺れになるかという予測力、それから、その予測に対して建物が十分に堅牢である、被害が少なくなるような予防力を向上させるためにはどうしたらいいかという研究を進めております。
この中で防災科研は、特筆すべきこととしては、首都圏地震観測網、MeSO-netという地震観測網を運営しておりまして、それが理学の研究の基礎になっております。それから、耐震工学では、兵庫県三木市にある3次元の実物大の振動台、E-ディフェンスを用いた研究をしております。これらの理学的・耐震工学的な研究が社会科学の研究にうまく融合しているということが、このプロジェクトの大きな特徴でございます。
この真ん中にある「デ活」と書いてございましたのは、これは、このような学術的な研究の成果を社会でどのように使っていただけるのか、社会実装する道筋をつけるため、それから、社会がこういった学術の研究に何を期待しているか、社会のニーズを理解するための仕組みとして、データ利活用協議会というものを設置して運営してまいりました。これは狭い意味では、民間の持っているデータ、産業界の持っているデータと防災科研の持っているデータとをうまく融合するということでございますが、そういう具体的なことも重要ですけれども、一番重要なのは、社会が学術に対してどのようなことを期待しているかということに基づいて研究を進めるという、そういうことが非常に重要でございます。
それでは、それぞれの3つのサブプロジェクトについて御説明いたします。
まず、サブプロジェクト(a)として、これは災害時に具体的にどのように的確に迅速に対応することができるか、そういう研究が社会科学の研究でございます。その中で、先ほど申し上げたように、データ利活用協議会という組織を運営して、社会の学術に対するニーズを把握するということと、そのニーズに基づいて、学術の研究をどのように進めるかということを議論する、そういう意味で、プロジェクトの総括とデータ利活用協議会の設置・運営ということが、このグループの一番重要なことでございます。
もちろん、それはロジをやっているようなものでございますので、具体的な研究としては何かというと、地震などの自然災害が発生したときに、何が起きているかを迅速に把握して、その把握に基づいてどのような対応をするべきかということを、災害の発生する前にあらかじめ想定をして、何が起きるかを予測することによって、対応の手順を定式化して標準化するという、そういう研究を進めてまいりました。
様々研究を行ってきましたが、1つの例といたしまして、ここではちょっと図が煩雑で恐縮でございますが、内容を一言で申し上げると、川崎市の幸区というところで、川崎市が防災訓練をしました。このときに、社会科学のサブプロ(a)のグループが開発している対応の手法、ICTの技術を使ったような手法がございますが、それを2018年の大阪府北部の地震のときの実際に発生したいろいろな災害の状況をうまく取り入れて、川崎市幸区の訓練に使ったということです。こういうことをやると、実際に市と区の役割分担であるとか、住民との対応といった具体的な課題が浮き彫りにされて、研究の成果が社会にうまく使えるかどうかということが分かりました。
次は、サブプロジェクト(b)の理学の研究でございます。この理学の研究は、大きく2つのことがございます。1つは、先ほど申し上げた首都圏地震観測網(MeSO-net)を安定に運用するということが、1つ重要な役目でございます。それから、そのデータを使って、地震のときにどのような揺れになるかということを、現状を把握するということと、観測点のないところを推定する、ちょっと先の揺れを予測するという予測の研究。それから、もう一つ、2eというところに書いてあるんですけれども、そもそも南関東、首都圏でどんな地震が起きる可能性があるかという理学的な研究を進めてまいりました。
これはちょっと煩雑な絵でございますけれども、防災科研の持っている基盤観測網のデータ、首都圏ネットワーク、MeSO-netのデータと、民間の持っている、ここではガス会社、スマートフォンのデータ、あるいは、エレベーターとか、様々なデータを統合する仕組みを作っているということでございます。
それで、MeSO-netというのは、首都圏に約300か所ある観測網で、これは地震調査研究推進本部の基盤観測には位置づけられていませんけれども、それと同じように全てのデータが公開され、世界中の研究者が使える体制になってございます。左の下のグラフで、ちょっと小さくて恐縮ですが、例えば、ひと月に100テラバイトから200テラバイトのデータがダウンロードされて、これが研究に使われているということを示しております。
こういったデータと、ここでは例として、東京ガスとセブン-イレブンのデータについて統合するという例をこれからお見せいたします。
我が国は全国に2,000点以上の基盤的な観測を持っている、非常に稠密な観測網を持っているんですが、しかし、首都圏、この山手線のある辺りを見ると、山手線の中には一つも基盤観測点はございません。
この赤いところ、MeSO-netを入れると、このように数が増えて、山手線の中にもたくさんの観測点があります。なぜたくさんの観測点が必要かというと、大きな地震が起きたときに、それぞれの地点でどのような被害が発生しているかということを把握するためには、まず基本的にどのような揺れになっているかということを理解する必要があります。理想的には、建物一棟一棟にセンサーがあって、そこでどんな被害が起きているかということが直ちに把握できることが理想ですが、それは現状ではなかなか難しいので、このようなMeSO-netのデータがあると、間の揺れを適切に補間することによって、予測することができます。
ところが、民間では既に、これは東京ガスの例でございますけれども、大きな揺れがあったときに、ガス管がどこで破損している可能性があるかということを把握するために、東京ガスは約4,000点の観測点を設けて、揺れの強さを把握するということを進めています。このプロジェクトでは、東京ガスのデータとMeSO-netのデータをうまく統合することによって、空間的に高密度な揺れの把握が迅速にできるということを示す、そういう仕組みを作ることができました。
東京ガスのSUPREMEという観測点なんですが、これは1キロ平方メートルごとに東京ガスの供給圏内に約4,000点の観測点がありまして、そこでSI値(Spectrum Intensity)という値を計算し、一定の揺れ、大きさになったときに破損している可能性があるということで、ガスの供給を止めたり、職員が見に行ったり、点検したりということをしています。しかし、このために、例えば、地震学で必要とする時刻の精度が十分でないとか、3成分のセンサーがあるんですが、水平方向の方位が分からないとか、そういうことがあるし、最大の問題は、波形のデータは手動で回収するということによって、大地震後に直ちにデータを抽出することはなかなか難しいということがございます。そこで、MeSO-netのデータとうまく統合することによって、これらの観測点の有効活用をするということができるようになりました。
もう一つの例は、セブン-イレブンの店舗内のセブン銀行のATMに非常に小さな小型の地震計を設置させていただくことができました。これはセブン-イレブンさんとの共同研究を進めてきたわけですが、データ利活用協議会の活動の一環としても、これを進めてまいりました。今映っているのは、MeSO-netの観測点とKiK-netの観測点、基盤の観測点ですが、これにセブン-イレブンの観測点を入れると、このように観測点が増えます。
要するに、たくさん観測点を置くことによって、観測点と観測点の間の揺れがどうなっているかということを把握することができます。この把握するということが非常に重要で、実は、場所場所によって地盤が固かったり軟らかかったりするので、100メートル違うと揺れは大分違います。これを正しく把握するということと、これに基づいて被害を予測するということによって、災害の対応力を上げるということが可能になります。
もう一つ、MeSO-netの重要な研究は、そもそも南関東でどんな大きさの地震が起きる、どこで起きるかということを理解することでございます。現在の地震学は残念ながら次にどこで大きな地震が起きるかは分からないんですけれども、どこで起きる可能性が高いかを知る研究を進めることは重要です。この例は、地震波の伝わる速さの3次元的な分布を、地震波伝播速度異方性といって、地震波の進む方向によって速さが違うということが近年の研究で分かっているんですけれども、そういった最新の知見を使うと、フィリピン海プレートの位置が従来の位置と変わっている、少し浅くなっているというようなことも分かりました。こういったものが将来非常に重要です。
その次は、サブプロジェクト(c)の研究の御説明でございます。このチームは、E-ディフェンスという実物大の3次元の振動台を使って、5か年のうちに4回の実際の実験をして、それぞれ建物の崩壊余裕度といって、どのぐらいの強さまで実際に壊れていくか、本当に壊れる前に少しずつ壊れていくんですが、それを実験しました。4回やる理由は、最初の年には木造住宅の耐震の建物と免震の建物、その次は鉄筋コンクリート、RCの建物で、これは行政庁舎、市役所とか区役所を模したような建物で、そこでどのような崩壊余裕度があるか。それから、3番目は、鉄骨、スチール(S)造の建物の実験をしました。これは病院を模した実験でございまして、病院の躯体の被害がどのくらいあるかということと同時に、病院の中のオペ室の装置であるとか、病室の装置がどういうふうに影響があるかということを調べました。今年度、最終年度では、もう少し一般的なオフィスの中がどのように被害を受ける可能性があるかなどという研究をしたわけでございます。
これが最終年度にやろうとしている、学校やオフィスや住宅などの建物の中が大きな揺れに対してどのような被害があるかということを実験する予定でございます。これまでは建物自体が壊れないかどうかという研究が多かったわけですけれども、本プロジェクトでは、実物大というよりは、実物の建物を揺らすということが非常に重要なことになってございます。
それで、今年になってからですが、昨年度の病院の実験について、耐震でも免震でも建物の躯体は両方とも大丈夫だったけれども、中のものは、免震はオーケーだったけれども、耐震ではもう使えなくなってしまったということが分かりました。これはある意味予想されていたことではございますけれども、これは実は京都大学の附属病院の御協力を得て、こういった実験ができる。中のいろんな装置も御提供いただいたということでございます。
こういうような学術的な研究とその成果が民間にどのように活かせるかということについて、データ利活用協議会でいろいろな議論を進めてまいりました。
このピラミッドみたいなものは、データ利活用協議会に参画していただいている団体や個人の数が年々増えてきたということを示す図でございます。現在では、73の企業・団体と15の個人が参画していただいて、ここである意味自由な議論をしております。年に3回のデ活のシンポジウムを開いて、最初の1~2年は実際に対面のシンポジウムを開きましたが、昨年度・今年度は完全にオンラインで、今やっている会議のような形で皆さんに参加していただくということで、毎回300~400人の方がZoomのウェビナーで参加していただきました。ユーチューブでも公開しますので、1,000人以上の方が後から見ていただくというふうになっております。
実はそのほかに、ここに8分科会と書いてございますけれども、テーマごとに深い議論をするための組織をつくって、それぞれ民間の方と研究者とが共同代表になりまして、分科会長、副分科会長として、いろんな民間の方、産業界の方も参加する、そういう活動を進めてまいりました。
ここでは、実は産業界の持っている機微な情報、データそのものもありますし、企業の戦略などについてもお話をさせていただいて、ただし、これは完全にクローズドの議論をするということにしております。このクローズドの議論の中で、一般の方にも聞いていただけるような成果については、一般の方にも聞いていただくということになっております。
これは小さい字で恐縮ですが、73企業がどういう企業か、東京ガスさんをはじめとしてあります。
これはオンラインのシンポジウムでも双方向の議論ができるという例でございます。
これは8つの分科会がどういうものかというものを示します。
このデ活でオープンに議論するということで、地域や組織の共通価値の醸成ということを目指しました。それから、クローズドの分科会で専門的・個別的な議論を非公開で進めるということをしました。これによって、科学的な根拠に基づいた防災に対するイノベーションが少しずつできることが醸成されてきたと思っております。
というわけで、3つの研究と1つのデ活によって、首都圏のレジリエンス力を向上させる研究が進展したと思っております。
時間超過しましたが、以上でございます。ありがとうございました。
【上村主査】 どうもありがとうございました。
このまま議論せずに、次の御説明に移っていきたいと思います。防災科学技術研究所の臼田総合防災情報センター長より、資料5についての説明をお願いいたします。
【臼田センター長】 よろしくお願いいたします。それでは、「防災のデジタル化に関する取り組み」について、防災科研総合防災情報センターの臼田より御紹介させていただきます。
まず、私のことを御存じない方もおられますので、簡単に自己紹介ですが、私、防災科研の中で、総合防災情報センター長、また防災情報研究部門長等を兼務しております。情報を中心とした研究開発を行っております。また、防災科研の取組の一環として、今、防災の研究者をさらに育てていこうということで、人材育成として、筑波大学と協働大学院という形で、リスク・レジリエンス工学学位プログラムの教授も務めております。また、防災をいかに社会に展開していくかということで、民間企業とともにAI防災協議会というのを立ち上げまして、そちらの理事長も務めております。
今日は、防災のデジタル化ということで、防災のデジタル化に関する取組をどういう背景のもと進めてきたのか、また、その経緯、成果、そして今後の展開について御説明していきたいと思います。
まず背景ですが、この21世紀前半には、首都直下地震、また南海トラフ地震を中心に、国難災害と呼ばれるような災害が想定されている。また、毎年毎年、特にこの時期ですけれども、極端気象・気候変動によって洪水災害、土砂災害といった災害も起こっていて、政府としても、毎年どこかで起こっている災害に、派遣をして対応しているような状況です。
こういった中、つまり災害が頻発化し、大規模化し、複雑化している中、社会としては今いかなる状況かと言いますと、まず上のほうにある無形資源として、人が少なくなってきた。さらに、災害防災に特化してスペシャリストとして対応できるような人が、行政の中でどんどん人が異動で変わってしまうために、なかなか定着していかない。また、下にありますように、有形資源としては、ダムですとか、インフラですとか、そういったものも、これまでの想定以上の災害の規模が発生している中で、それに対応していくための有形的な資源も限界に来ている。その中で、この頻発化・大規模化・複雑化に対応していかなければいけないとなると、いかに少数精鋭で効果的な対応をしていかなければならないか。そのためには、やはり対応も標準化し、その標準化された仕組みで、そこで対応する人の誰もが同じ対応ができるようにすることで、効果的に対応していこうという、災害対応DXという考え方が必要であろうと近年では考えられてきております。
では、一方で現状はどうなのかと言いますと、これはここ数年の災害における現場の写真を中心に載せておりますけれども、様々な災害対応に効果的な情報は各所で発信はされているんですけれども、現場に行ってみるとあまりそういうものが使用されていなくて、現場ではやはり電話、FAX、ホワイトボード、紙地図、そこに付箋で書き込みというような形で行われている情報集約の状況が左側です。
情報共有はどのように行われているかというと、右側にあるように、会議体で口頭で説明がされていると。結果的には、右下はDMATの参集拠点なんですが、参集拠点まではルールが決まっているので集合できる。ただ、そこから現場の病院を支援するために、どの病院を優先したらいいのか、また、そのためにはどの道路を通っていったらよいのか、また別の病院に搬送するにはどの道路を通ったらいいのか、そういった情報が入ってこないために、まだ行き当たりばったりになってしまっているところが現状でございます。
そうなると、まさに今こういう絵にある状況なんですが、同時並行で活動する組織が、自分たちが持っている情報で活動するというのは基本にあるんですけれども、それでは状況認識が異なってしまうために、全体で見れば効率的な対応になっていない。
目指すべきは、やはり同時並行で異なる活動をしている組織同士が、同じ情報を持って、状況認識を統一して活動していく。まさに情報共有という言葉を読んで字のごとく、共に有する状態をつくって、知らないという状態をなくすことがまず重要であろうということで、こういう取組を防災科研としても進めてまいりました。
これに対して、2014年から内閣府のSIPという取組が始まりまして、そこで府省庁を中心に、災害対応機関同士で持っている情報を相互に共有できるような仕組みを作っていきましょうということで研究開発をスタートしたのが、このSIP4Dという取組であります。
今日は技術的な話は時間がありませんので省略して、結果的にどんなことができるのかということの紹介にします。まず災害が起こる前ですが、気象庁、あるいは気象業務支援センターというようなところから気象に関する観測情報、予測情報というのが出てきます。こういったものが出てくれば、例えば、防災科研のような研究機関は、その雨が災害に結びつくのかどうかという解析を行うことができます。これはその結果ですが、例えば、50年に一回の雨、あるいは100年に一回の雨はどこで降るのか、あるいは、今降っている雨が浸水災害に結びつくのか、あるいは土砂災害に結びつくのかというような危険度の状況にも作り替えて発信することができています。
それをさらに国交省、気象庁で観測している河川の危険度の情報、あるいは、事前から浸水が想定されているエリアに先ほどの危険度の情報を重ね合わせることで、どのエリアが実際に氾濫する危険性が出るのか、それはどのくらいの範囲に及ぶのかということを把握する情報に作ることもできています。
発災すると、今度は様々な被害状況把握ということが動き出しますが、例えば、衛星運用機関からは、衛星から得られた洪水の範囲がどこまでなのかという情報が得られるようになってきています。
それから、これは防災科研ですが、地震の場合には、地震の観測点の揺れだけでなく、面的にどのような震度分布なのかという情報も出てきますし、建物の被害推定といった情報もリアルタイムで出てきます。
実際に被害はどうなのかというと、民間企業のインフラ企業で把握している、まず停電の情報、これは電力会社から得ますし、通信はどこが使えるのか使えないのかという情報も出てきます。
どの道路が通れるか通れないかは国交省にあります。国交省の地方整備局ごとに情報が異なりますので、それを統一してデータ化する必要がありますが、そんな処理もSIP4Dでできるようになっております。
どこに避難者がいるのかということは、避難所の情報、これまでは都道府県別に全然ばらばらなんですけれども、これも統一的に扱わなければ全体としての支援ができませんので、情報の統合と、同じ表現にしていくという統一化をSIP4Dでは実現しております。
これは自衛隊の支援情報ですね。給水支援、入浴支援はどこで行われているかという情報発信です。
これはNPOが撮影したドローンによる詳細な空中写真になります。
こういった形で、様々な機関で保有している情報を使う側の機関が必要なフォーマットで届けるというのがSIP4Dのコア技術でして、そうすると、組織横断的に情報が共有できる、まさにパイプラインの役割を果たすことができる技術に今なってきているという状況です。
こういうことができますと、フローとしては、左側から、自然災害が発生すると、様々な機関で情報が作られる、それがSIP4Dというパイプラインに流れて、右下に行きますが、まず災害対応機関保有の情報システムに流れていきます。また、SIP4Dに流れてくる情報をさらに処理して、例えば、防災クロスビューという、一般公開と書いてありますが、こちらで一般公開できる情報を閲覧することができる。また、避難所ですとか廃棄物置場といった情報は、一般公開に出してしまうと、そこに支援物資が集中してしまったり、渋滞が発生したりということで、すぐに公開できないということで、そういった情報は災対機関限定のサイト、アイサットサイトと呼びますが、こういったサイトで閲覧できるようにすると。こんな流れが今、実災害上行われております。
防災クロスビューは一般公開しておりますので、今も平時の段階から出しておりますので、もしよろしければ閲覧いただければと思います。
実際に災害が起こると、我々、防災科研は内閣府と一緒にISUTというチームを組みまして、初日から現場に入ります。現場に入ると、左上にあるように、様々な制服を着た組織の方々が現場におられますが、そこで真ん中に大きいディスプレイがありまして、先ほど最初に会議で口頭で説明しているといいましたけれども、それに対して、今視覚的にどういう状況なのかということを表せるように、先ほどのアイサットサイトを使って、その場で見ながら説明するということができるようになっています。右上も同様です。
当然、現場に行くときにはスマートフォンにデータを入れて持っていくことができますし、やはり現場では紙が必要だということで、ISUTとして紙出力もして、それを現場で置いておくとどんどん使われているような状況です。
また、各ブースが現場にはありまして、自衛隊のブース、あるいはDMATのブース、そういったところでも、このような形でどんどん使われているという状況です。
こういった結果、去年の防災基本計画でISUTが明確に明記されまして、今年の修正で、防災基本計画にSIP4Dも記載されることになりました。
では、SIP4Dで情報を得ることができるという状況になって、その先は何かというと、今度は、得られた情報、つまり、共有できる情報を使って新しい情報プロダクツを生み出し、それをまた社会に還元することで、いかに災害対応を効果的に進めるかという流れが必要だろうということで、SIP4Dから今度はCPS4D、これは政府が今Society5.0という施策の中で、サイバーフィジカルシステムという仕組みを作っていきましょうというような提言がありまして、それの防災版として考えている概念でございます。
例えば、熊本地震のときに、避難所が今こういう状況にあります、ここに避難所があり、このぐらいの避難者がいますという情報です。こういったものを、我々、1日最低1回情報を構築し、更新をしていったんですが、ぱっとこれだけ見ると、どこに大きな避難所があるのかとか、そういったことは把握できるんですが、これが1週間、2週間、あるいは1か月、2か月と続いていくと、ずっとこのようなデータのままのように見えてきてしまいます。
一方で、これをちゃんと時系列的に把握していくと、避難所がだんだん増えていったり、減っていったり、移動したりします。そういったものを一枚の地図だけで見ているとなかなか把握できないんですが、きちんと時系列で情報を見ていくと、本来であれば、地震が起こって、余震が少なくなっていくにつれて、避難者もだんだん減っていくんですけれども、なかなか減っていかない避難所が見えてきます。そうすると、そこは想定と異なっている、つまり、異常事態になっているということが分かりますので、そこを調査すると、このときは保健医療の状況が非常に良くない状況でしたので、そういった支援をしなければいけないという状況だったことが分かりました。
一方で、想定どおり減っていく避難所は、物資支給の支援を縮小していくことができる。あるいは、避難所の移動というのもありますけれども、そういったものもちゃんと情報に表れてくる場合には、それをきちんと支給する側に伝えていかないと、行ってみたけれどももう移動していたというようなことになってしまう。
こういったことが、1つのデータを時系列でしっかり把握していうことでも分かってきますので、こういったことで、情報を共有するだけではなくて、そこから得られる様々な変化を検出し、プロダクツ化することで、次の活動に生かしていこうといった流れの研究開発を今、SIP第2期で進めております。
それが先ほどのCPS4Dという概念で、上側がサイバー空間上で災害動態というものを解析する基盤。また、そこに情報を届けるためには、左下にあるように、SIP4Dを介して情報を出すだけではなく、それぞれの活動やシステムはうまく動いているかどうかというステータスも把握する、そんなようなことも行っています。
また、右下に一人一人との協働ということで、今、防災チャットボットという形で、一人一人とつながる仕組みを作ることで、情報を伝えるということと、一人一人が目にしているもの、あるいは抱えているもの、そういったものを集合知として集めることで、今までの組織の集約では集められなかった情報も集めていこうというような取組も行っています。
幾つかの事例として、先ほど防災クロスビューで様々な情報が入っているというのを示しましたが、非常に多種類にわたっておりまして、日次更新量350ギガ、月間で10テラぐらいの情報が入ってきます。
これを入ってくるたびに10分間隔でデータベース化をしていまして、時系列データとして、それぞれのデータを扱うことができるようになっています。
こういうことができると、例えば、6時間予報に基づいて、水害が起こるのか起こらないのか、起こった場合にはどのくらいの範囲が水害に見舞われるのか、そこには何人の被災者がいて、それに対して各都道府県は何人の職員で対応するのか。それを計算すると、職員1人当たりに何人の被災者を扱わなければいけないのかという負荷量が出ますので、その負荷量に応じて、負荷が高いところに国として支援の部隊を送り込もうと、そういった流れにつながるような取組になっています。
これは真ん中をクリックしてもらうと動画が出てくると思います。これは今10分間隔で計算できるようにしていますが、これはまだプロトタイプ状態で、例えば、ピーク値を迎えたところはピークのまま残していくべきだとか、あるいは、この閾値ではなくて、もっとこういう閾値にするべきだとか、そういったことを現場の意見も頂きまして、今チューニングを行っています。今年の出水期においては、その画面を見ていただきながら、参考にしていただき、そして、実際に使えるものに仕上げていくというのが今のフェーズになっております。
こういうことをやっていますと、今日1枚画面を差し込み忘れたんですが、令和元年の台風19号、東日本台風のときに、先ほどの仕組みで各都道府県から上がってくる建物被害状況を時系列でしっかり見ていくと、最初の段階では、長野県が決壊が大きかったということもあって、非常に建物被害数も多いというような報告が多かったので、そこに非常に多くの支援を入っていきましたし、また、テレビ報道としても、この棒グラフにありますとおり、東京・神奈川はもちろん高いんですが、ほかの県として長野県が突出して高いような状況でした。
一方で、これを最終的に被害量で見てみると、これは線グラフのほうなんですけれども、実際には福島県が一番多い被害の状況でした。ですので、こういった状況を早い段階でつかんで、いかにニュースや、あるいは最初の報告で全ての支援量を決定するのではなくて、だんだん上がってくるような情報から傾向をしっかりつかんで、その傾向から見積もって、今むしろこちらのほうが被害量が大きくなりそうだから、そちらに支援を向かわせるべきではないかということを早期に判断できるような仕組みを作っていく必要があろうということがだんだん見えてきているところでございます。
今度は個人一人一人の抱えている情報から集合知を作っていくという取組で、防災チャットボット、SOCDAという研究開発も行っています。これは右下に示す通り、2月に発生した福島沖を震源とする地震のときの状況ですが、南相馬市にすでに実装しておりまして、そこでは市から何のアナウンスもしなくても、市民から、今自分の家ではこんな状況になっているということが、防災チャットボットとのやり取りの中で投稿されまして、それを集計していくと、南相馬市では水のトラブルが一番多いということが分かりまして、市の職員から改めて、今、市内で水のトラブルが発生しているので水の使用には御注意くださいというようなアナウンスが出せるというような形で、市民から集約される情報を使って市が動いていくというような流れが1つ実証された事例になりました。
また、少し専門機関向けには、保健・医療・福祉という3分野に対して1つの仕組みで支援をしていこうということで、D24Hという取組を、厚労省とも協力をしながら研究開発を進めております。これは従来DMATという医療の分野についてはかなりシステム化も進められてきたんですが、保健の分野、あるいは福祉の分野に対しては、まだまだその部分が足りないということで、同じ枠組で支援ができるように、また、SIP4Dや、先ほどのDDS4Dといった時系列の解析結果をこちらにも持ち込んで、今何が問題なのか、その問題に誰が対処するのか、そういったことを支援できるような仕組みの開発を進めております。
これをコロナ禍において、人がどこに避難しようとしているのかというのを、防災チャットボットSOCDAでつかみ、それを感染シミュレーションも持っているD24Hにかけることで、どのような避難所対策を取らなければいけないのかということを行政側がオンデマンドで対応を考えていくような、こういった仕組みづくりにもつながってきております。
こういった形で研究開発を進めている中、先ほど事務局のほうから御説明がありましたとおり、国としても様々な文書の形で、今後こうあるべきということが描かれるようになっております。
その一つとして、内閣府が進められてきたデジタル・防災技術ワーキンググループというのがありまして、その提言として出されたものが、こちらの1つの絵になっています。こちらにあります赤い部分が、防災のDXを進めていく上で、まだまだ現場として対応が足りていないところであるということで示されていて、この部分を科学技術でしっかり支援していくべきであるということが言われてきております。
今すぐ取り組むべき項目ということで、日本版EEI、つまり災害対応時に、これは必ず共有しましょうという情報で、そのデザインや蓄積をしていくことや、個人情報の対応もしっかりしていくこと、また、真ん中に防災デジタルプラットフォームというのがありますが、防災情報の収集・分析・加工・共有の体制をしっかり進化させて対応していくべきだということが提言としてなされ、これが今後の政策の方向性であるということが示されております。
また、さらにその先、10年で実現すべき項目としては、先ほどの赤い部分が解消された上で、さらに得られる情報をリアルタイムで大容量、そして、現実を再現するような形でサイバー空間で処理をしていくような防災デジタルツイン、そして、その上で行う被災・対応シミュレーションということ、それをリアルタイムにいかに現実に落としていくかということ、さらには、究極的には、行政機関が、どこかに人が集まって対応するということではなくて、デジタルで全てが対応できるようなデジタル行政能力を構築していく。こういったことも大きく先々の方向性として描かれております。
その一つとして、これは私がそこで提言したものですが、「リアクティブ防災」から「プロアクティブ防災」ということで、右上の参考のところにありますけれども、現在、平時や警戒時というのは、ハザード予測ですとか、気象予測、洪水・氾濫予測によって、それに基づいた土地利用規制、避難判断、避難指示といったものが行われるようになっているんですけれども、実際に発生した災害に対しては、なかなか予測情報を活用して対応が行われている状況ではなくて、やはり発生した事象、これが起こったからこれをやりますというリアクティブ対応が中心になっています。これを災害が起こった後、何が今後起こっていくのか、また、対応として何をすればどう社会は変わっていくのかということをしっかり予測して、まさにプロアクティブに対応を取っていくべきであるということも提言として出させていただいております。
従従来は左から右へ、ハザードを分析し、予測をし、それに基づいて対応を決めていく、あるいは、予防方法を決めていき、それに足りない部分を対応で補っていく、こういった左から右へという流れで取組が行われてきましたし、研究の流れも基本的にはそういった流れだったんですけれども、最初に背景として述べましたとおり、複雑化・大規模化していく災害に対しては、対応をいかに行っていくのかということがやはり重要になってきます。その対応に対して必要となる予測とは何なのか、あるいは、その対応に対して必要となる予防とは何なのか、そういったところから描いていって、科学技術の開発を行っていくという、そういう方向性も必要だろうということで、これもプロアクティブ防災の新たな防災の枠組として今検討を進めているところでございます。
私からは以上になります。どうもありがとうございました。
【上村主査】 どうもありがとうございました。
御説明を聞いているだけでなかなか大変かと思いますが、もう一つ、最後に事務局のほうから資料6の説明をしていただいて、それから議論に入っていきたいと思います。それでは、事務局から資料6の説明をよろしくお願いいたします。
【福田防災科学技術推進室長】 失礼いたします。手短にいたします。
資料6、議論のポイントでございます。今事務局より御説明差し上げた最近の防災科学技術をめぐる主な動き、それから、お聞きいただいた防災科研のプレゼンテーションを踏まえ、防災のデジタル化を中心にというふうなことではございますけれども、当然それにとらわれずということも含め、例えば、こういった点について御議論いただきたいと。
1点目は、冒頭にプレゼンのあった首都圏レジリエンス総合力向上プロジェクトにおけるこれまでの成果、課題をどのように考えるかということ。
そして、もう一つのデジタル化に関するプレゼンテーションなども踏まえ、また、政府の動向等も踏まえ、防災科学技術の観点から、今後どのような取組が考えれるかと。
そしてまた、防災科研が今後果たすべき役割について、どのように考えるかということでございます。
これに関しまして、防災科研というのは国立研究開発法人でございますので、中長期目標・計画に基づいて業務が進められているところでございますが、現行の目標・計画は、ちょうど今令和3年度でございますので、来年度までというようなことになってございます。したがいまして、そういった今後の在り方というところにもつながってくると思っております。
なお、防災科学技術研究所の設置目的ということでございまして、これは設置法に記載されているものでございますけれども、防災科学技術に関する基礎研究及び基盤的研究開発等の業務を総合的に行うことにより、防災科学技術の水準の向上を図るということでございます。ここで出ている用語、これは下に米印がございますけれども、これもいずれも法律に定められているものでございます。したがいまして、逆に言えば、この法律に基づくものである限りにおいては、様々な可能性が考えられるということでございます。こういったことも含め、御議論いただければと思っております。
事務局からは以上でございます。
【上村主査】 ありがとうございました。
説明をずっと長い時間聞いていましたので、大変だったかと思いますけれども、ここから残りの時間は全て意見交換に充てていきたいと思います。議論の論点についても、今ほど資料6でお示しいただきました。これに沿ってということにはなりますが、多少ここから外れた内容かなと思われることであっても、遠慮なく御発言いただければと思います。
特に指名しませんが、御発言ある方、ミュートを解除していただいて、お声がけいただければと思いますが、いかがでしょうか。
【中北委員】 すみません、京大防災研、中北です。
【上村主査】 中北先生、お願いします。
【中北委員】 御説明、本当にありがとうございました。すごいインテンシブで、インテグレーテッドなシステムができているというのに改めて敬意を表したいと思いますし、びっくりいたしました。ありがとうございました。E-ディフェンスも一遍見学に行かせてもらおうかなとか、お伺いしていて思いました。
2つ、2つ.5になりますけれども、お伺いしたいのですけれども。情報共有ということで、SIP4D、すごく進まれている中で、人文・社会系の中でも次を目指してフィードバックがかかっていくということもすごく分かったんですけれども。自然科学へのメカ解明へのフィードバックということを考えると、この情報がいろんな研究機関との共有というのも大事なところになるのかなと思うんですけれども。そこらのところは、今どういうふうになっているのかというのを1つお伺いしたいと思いました。
これはどちらかというとMeSO-netのほうの話をお伺いして、ちょっと思ったところなんですけれども。例えば、気象関連とかでは、民間が非常に高詳細な気圧とか気温とか湿度の情報、地上観測ネットワークというのがあるのはもう御存じだと思うんですけれども、民間の情報等を、MeSO-netだけという、地震の話だけではなくて、少し気象・水象も含めて考えた場合の話で申し上げていますが、民間のそういう情報という取り込みというのは今どういう状況なんでしょうか。
特に民間の場合、独自のビジネスモデルを模索しながら動かれていますね。その情報をどう次の、Society5.0も含めてだと思いますけれども、どうその財産を生かして、それぞれの企業が生きていって、例えば防災にも役立つ、あるいはメカの解明、リアルタイム予測に利用しようとかいうのがあると思うんですけれども。そういう情報も、ビジネスモデルという彼らの目的もうまく満たしながら、こういうネットワークの中に入って、こういうのが防災科研を通して、またそういう情報、先ほどの研究者という自然科学の部分も含めてフィードバックの方向になればいいなと思いました。
それから、あと、細かいのですけれども、最後、防災チャットボットの話があって、すごくリアルタイムできめ細かな情報ということなんですけれども。水位観測の範囲の中で言いますと、例えば、街中にあるカメラで水位情報をピックアップするというのも、昔、基礎研究でやったとは思うんですけど、そこらの進展も今はどうなっているのか、最後にお伺いできればと思いました。
すみません、3つになりましたが、どうぞよろしくお願いいたします。
すみません、顔を出すのを忘れていました。こんな顔をしております。どうぞよろしくお願いいたします。
【上村主査】 ありがとうございます。2つというか、3つというか、御質問いただきました。
では、御質問の順番で、情報共有のフィードバックの部分については、これは臼田センター長でしょうか。
【臼田センター長】 御質問ありがとうございます。
まずSIP4D自体の技術としては、基本的にデータあるいは情報毎に共有範囲を決めることができるという仕様になっております。ですので、基本的に情報を持っている、つまり、出す側がここまでは共有していいですよということを定めることができて、それが一般でもいい、あるいは研究機関まではいい、民間もいい、また府省庁までである、自治体までであるというようなことをいろいろ定めることができまして、研究機関までオーケーですよというものに関しては、当然、研究機関にもフィードバックできます。
このあたりの決め事というのは、統一ルールを決めるのは非常に難しくて、やはりデータごとにどうしても差が出るんですけれども。一方で、一回決めたらもうずっと変えないというものではやはりなくて、今年はまずこの範囲でやってみましょうというところで始めてみて、災害対応をやっている中で、いや、ここまでこれは共有できますよねというような調整が常に図られていて、毎年変わっているような状況です。
災害対応側からすると、研究機関、あるいは専門家の参加というのは非常に期待されています。ただ、その情報を使って事後の分析に使われるというよりは、今すぐ分析して、今すぐ現場へのフィードバックがかかるようなものがあると、ものすごくありがたい。そういう観点で研究者が入っていることにものすごく期待しているというのは、私は肌感としてはすごく感じています。ある意味、ギブアンドテークの世界でもあると思っているんですけれども、専門家が参画すればするほど、使える情報は増えていきますし、それがまた研究にも役立っていくと私は感じております。
【中北委員】 ありがとうございます。
防災科学技術、イノベーション、両方ですけれども、ということを考えると、事後のことも含めて、全体でものを考えていただく中で、有効利用、今みたいなどんどん進めていただくというのを考えるというのは大事かなと思って、コメントさせていただきました。
大枠としての枠組で、ぜひそういうようなところも入れて定義をしていただくというようなことを考えていただければいいなと思いました。どうぞよろしくお願いいたします。
【臼田センター長】 ありがとうございます。
【上村主査】 ありがとうございます。
サイエンス側としても、こういったすばらしいデータがある意味使わせていただけるというのは、ものすごいことですよね。
【中北委員】 そうですね。
【上村主査】 自分でそもそも書きやすい部分があろうかと思いますので。ありがとうございました。
【中北委員】 使わせていただくだけではなくて、使わせていただくと、すごいのを出してあげるというのもまたあると思いますので、その両方という意味で考えていただいたらいいかなと思います。
【上村主査】 フィードバックというよりは、サイクルができ上がっていくようなイメージですね。
【中北委員】 そうです。おっしゃるとおりです。
【上村主査】 ありがとうございます。
【中北委員】 ありがとうございます。
【上村主査】 では、2番目の御質問、MeSO-netのところで、民間の高精細なデータという、特に気象という部分で御質問いただきましたけれども、これはお答えいただけるのは平田センター長でしょうか。
【中北委員】 あるいは、文科省でも結構ですし。
【平田センター長】 平田からお答えいたします。
MeSO-netというのは、首都圏に約300か所、地中20メートルのところに浅い井戸を掘って、ある意味、地震学の標準的な品質を保証するような観測点でございます。
日本は、防災科研が基盤的観測として、Hi-netが約780か所、KiK-net、K-NETというような強震観測点などを含めて、実は2,000か所ぐらい国の基盤的な観測として運営しているんですけれども、それでも大体平均間隔20キロメートルぐらいなんですね。首都圏などのように人口の稠密なところの揺れの把握をするためには不十分なので、300か所、新たにこの2つ前のプロジェクトで国の委託事業として東大地震研が作ったんですけれども、これを今防災科研に移管して、防災科研が運用しているというところです。 これは国の税金を使ってデータを取っていますので、完全に公開して、どなたでも使っていただけるというところです。それで、想定しているのは、研究者、プロが使うということですけれども、プロの中には、建設とかゼネコンであるとかというような耐震工学の民間の研究者も含まれておりますので、そういう意味で、広く使っていただいています。
しかし、それでもMeSO-netはたくさんあるといっても、間隔の短いところで2~3キロ、長いところでは5キロメートルぐらいの間隔なので、実は、本当は建物一棟一棟のところにどういう揺れがあるかということが分かるのが理想ですが、これはなかなか難しいので、民間の持っているデータとうまく結合するというのが、この最初のモチベーションでございました。
さっき例としてお見せした東京ガスさんは、1キロ平方メートル、大体1キロに1個ぐらいずつ観測点があって、これはなぜやっているかというと、大きな地震があったときに、ガス管が壊れて被害が出るということはガス会社としては避けたいところなので、一斉にガスを止めてしまうんですけれども、そうすると、社員を全部派遣して、しらみつぶしに被害状況を見なければいけないので、これはなかなか大変なので、そこでセンサーをたくさん置いて被害状況を推定して、被害が大きいと思われるところから優先的に点検をするというような仕組みを作られたわけです。 これは非常に優れている仕組みなので、ぜひ学術にも使いたい、あるいは、防災のほかの人たちにも使っていただきたいと思って、このデータとMeSO-netのデータをうまく組み合わせるということをしたいと思っていました。
似たようなものは、例えば、エレベーターですね。エレベーターというのは、揺れを感知してエレベーターを止めるというためにセンサーが付いているんですけれども、そういったものはエレベーターを止めるためだけに特化して、なるべく経済的に設置するというところがあるので、なかなかそれを標準的なほかの目的に使うということが難しいです。
1つは制度的なというか、会社の方針としてというか、コンプライアンス上、めったやたらに人のビルの揺れを公表してしまってはまずいというような配慮もございますし、それと、あとは技術的に、さっき申し上げたように、時刻の精度であるとか、キャリブレーションをきちんとされていないなんていうこともあります。
しかし、そういうことは技術的なことなので、だんだんに良くなるので、一番の問題は、例えば、東京ガスさんは非常に好意的で協力的なんですけれども、それでも、このセンサーのある場所を特定できないようにしてほしいというのがいつも言われていることです。そうしないと、その地域が揺れが大きすぎるということについては、経済的な、土地の価値が下がるとか、この地域はよく揺れて被害が大きいなんていうことは避けたいので、お客様に迷惑になるからなるべく言ってくれるなというような御配慮をされているわけです。そこで、我々としては、データを少し粗視化するとか統計量化して使うというような、そういう技術も今作っておりまして、そこが一番難しいです。
実は、大きなビルにはいろんなセンサーがあって、それを使えるということを我々は期待しているんですけれども、やはり揺れても壊れないという情報をすぐに出してくれることはいいんですけれども、いつも出していてたまに出てこないと、これは大きな被害があったということを暗に示しているので、これは地域の防災上は、そういう情報は必要なんですけれども、建物のオーナーにとってみると、あまりよろしくないということがあります。その辺の社会的なコンセンサスを得るというところが、このプロジェクトを4年半やってきて一番難しいなと思うところです。
もちろん非常に御理解いただけるオーナーや企業もございますので、そういうところとの連携を今後進めていくということが非常に重要かなと思います。国のお金を使って作っている観測点のデータは全て公開できるんですけれども、民間の方がやっているものについては、今のところ、その仕組みというよりは、社会的なコンセンサスを得るというところが非常に重要で、これは社会科学的な研究に期待しているところでございます。
以上です。
【上村主査】 ありがとうございます。
【中北委員】 平田先生、どうもありがとうございました。
今お伺いしたのは、研究者のフィードバックというのとまた別のベクトルでお伺いしたんですけれども。SIP4Dも含めてのことなんですけれども、民間がたくさん持っていられる情報をどんどん入れていかれる方向はありますか。データ連携に関しては、今お話いただいたとおりで、いろいろ試行錯誤されながら実際実現されていらっしゃるし、必要なものはまた研究者のほうにもフィードバックというお話をお伺いできたんですけれども。
もう少し一般論とした場合に、民間は民間で、それぞれのデータをうまく社会に利用してもらって、それをビジネスにしようという発想がある中で、でも、その情報は、こういうSIP4Dも含めて、利用価値がすごくあって、国民のためにすごくいい情報になります。そこらのデマケじゃない、トレードオフじゃない、ちょっとぶつかるところというのをうまく今後調整していく必要があると僕は認識しているんですけれども、そういうような方向も含めて、やっていこうというふうにしたらいいと思っているんですけど、いかがでしょうかという質問です。
すみません、平田先生も、ありがとう。
【上村主査】 時間も限られていますので、地震動に関しては、このMeSO-netプラス民間データの活用で非常に高精細なデータが出始めていると。中北先生の御質問で、プラスアルファというところで、気象データ等も含めて、こういう民間データの活用もという御質問だったかと思いますが。
【中北委員】 はい。
【上村主査】 そうしますと、もしかすると臼田センター長のほうにお伺いしたほうが、気象データ等という部分に関してはいいかなと思ったんですが、いかがでしょうか。
【中北委員】 一般論としてお伺いしていますので、お願いします。
【上村主査】 ありがとうございます。
【臼田センター長】 気象データに関しましてもやっぱり同じ問題はあって、国でやっていることと民間でやっていること、あるいは個人がやっていることというのには、少し整理をちゃんとしないと、何でも自由に共有できるわけではないというのは同じところかなと思っています。
あと、気象は予測の情報をどう扱うかという問題も1つ含まれてくるなというのは思っています。
あと、先ほどの御質問で、3つ目のチャットボットを使った映像や……。
【中北委員】 すみません、時間を取っていただいて、皆様、本当に申し訳ないです。ありがとうございます。
【臼田センター長】 そちらに関しましては、今、我々がやっているSOCDAという防災チャットボットにおいては、どちらかというと個人とのインタラクションのほうに焦点を定めているので、映像の分析、あるいは画像の分析にAIを使っていくというところには焦点を定めていないので、そこはここではやっていないです。
一方で、むしろそちらに焦点を定めた研究開発も、例えば、国交省の河川カメラを全部集めてAI処理をしていくというのは、DIASのほうでやられている。
【中北委員】 そうか、そうか、DIASでやっておられるんですね。
【臼田センター長】 そう聞いております。
一方で、民間のほうでSNSに出てくるような画像や動画をAI分析して、今どこでどんな水害が起こっているのか等は民間のサービスの中で進められていて、それをどうするかというところは、また議論の必要な部分ということだと思っております。
【中北委員】 どうもありがとうございました。平田先生も臼田先生もありがとうございました。委員長、時間を頂きましてありがとうございました。
【上村主査】 ありがとうございました。
本当に気象データなんか特にそうなんですが、公的機関ですら、いろんなデータソースがあって、投入されていなかったというのは実際ありますので、それを考えると、もうすごい時代になってきたなと。いろいろ御配慮も必要かとは思いますが、民間の協力も得られて、非常に社会の共有財産としての情報のプラットフォームができてきたというお話を本当に頂けて良かったなと思います。ありがとうございました。
【中北委員】 どうもありがとうございました。
【上村主査】 委員がたくさんいますので、なるべく大勢の方から御発言いただきたいと思いますが、そのほかの方、いかがでしょうか。
【大湊委員】 地震研究所の大湊ですけれども、よろしいでしょうか。
【上村主査】 大湊先生、よろしくお願いします。
【大湊委員】 臼田先生のプレゼンテーション、非常にすばらしい、夢のようなシステムの紹介をしていただいて、びっくりというか、したんですけれども。
その中でちょっと思ったことは、既にいろんな自治体やいろんな機関が防災情報システムというものを持っていると思うんですよね。それぞれで集めた情報を整理して、処理して、それで各地の住民に直接渡すとか、そういうところまで含めたいろんなシステムが既に動いていると思うんですけれども。それと、このSIP4Dというのの関係がよく分からなくて、既存ものをこれは上書きしていくものなのか、それとも、既存のものとつながって、既存のものを生かす仕組みなのか、そのあたりがどういう関係になっているのかというのはちょっと理解できなかったので、説明いただければと思いました。
【臼田センター長】 ありがとうございます。いいですか、応えて。
【上村主査】 臼田センター長、よろしくお願いします。
【臼田センター長】 スライド、上のほうに行ってもらって、SIP4Dの絵があると思うんですが。
【大湊委員】 ここですね。これで紫のところで、いろんなシステムがつながっていったりして、あるいは、指定公共機関防災情報システムとかとありますけど、この図で見ると、SIP4Dというのは、単にそれらをつなぐもののような書き方になっていましたけど、どうもプレゼンテーション全体を見ると、直接個々人にまで情報を伝えるシステムでもあるような説明もありましたし、そのあたりがどういう形なのかと。
【臼田センター長】 まずSIP4Dは、基本的にはつなぐためのシステムです。基本的に、この紫や青や緑で作られているような仕組み、システムそのものというのは、それぞれの組織で必要に応じて作られたシステムですので、その必要性がある以上、それに代わるシステムを作る必要はないと思っています。ですので、それぞれの機関、それぞれの組織は、自分たちの業務に必要なシステムを自らが使っていれば、一番それが最適になるはずだと。
一方で、その中で使われている情報そのものは、実は、横のシステムにある情報を使えばもっと効率的に動ける可能性がある。そこで、基本的にSIP4Dはつなぐための、我々、土管と呼んでいるんですが、土管に特化をしていこうというのが、まず思想にあります。
一方で、例えば、現場に行くと、下のほうに写真があると思うんですが、現場では、各組織のシステムが現場からはアクセスできなかったり、あるいは、複数の組織が同じ場で議論をするときに、同じ画面を見ながら議論しないと、なかなか意思決定がうまくいかないという場面もありますので、現場でのビューワーとして、我々は先ほどアイサットサイトと、一般に向けては、防災クロスビューというサイトの紹介をしましたが、複数の組織が集まる現場では、こういうビューワーが、実際現場で求められたので、作って提供しているというような形です。
防災チャットボットも、どちらかというと、SIP4Dにつながる1つのシステムという位置づけです。ですので、SIP4Dが全部の情報を全部集めて、全部の処理をして、一つ一つに全部届けるということではなくて、基本的にはもうパイプラインに特化しているといったところが思想にあるというような形です。
【上村主査】 ありがとうございます。いかがでしょう。
【大湊委員】 ある特定の自治体たると想定したときに、その人たちは、今のところそういう自分たち独自のシステムを持っていて、情報を見る仕組みを持っていて、それから、自分たちがそこにいる住民の方にデータを流す部分も持っているけれども、そこに対して、このSIP4Dで出てくる情報というのは、別画面で並行して見たらというイメージなんですか。
【臼田センター長】 ではなくて、まさにパイプラインを通して、その自治体のシステムにデータとしてお渡しをするという形です。ですので、その表現の仕方であるとか、そこから住民への発信はその自治体システムが行うという形になっています。
【大湊委員】 なるほど、なるほど。分かりました。チャットボット、ああいう仕組みは、そういうものを持たない自治体は、それを活用してくださいとか、そんなイメージですね。
【臼田センター長】 そうです。1つの県で収まるような災害なら問題ないんですけど、大きな災害は複数の県にまたがる。そのときに、隣の県の情報はその県に入ってこないので、大抵は紙とか言葉で説明されてしまうんですが、お互いこのSIP4Dでつながっていると、隣の県の情報もデータとして入ってくる。そのときのデータの変換ですとか、そういったことはSIP4Dで行うので、使うシステム側は、口を開けて待っているというのは変ですけど、あらかじめセットしておけば、隣の県の情報も入ってくるので、隣の県の状況も見ながら自分の県の対応ができる、そういったところを目指した仕組みになっています。
【大湊委員】 分かりました。どうもありがとうございました。
【上村主査】 ありがとうございました。
土管という表現、すごく分かりやすくて、うまくつながっているなというのがすごくよく分かりました。
ただ、可能性も、すごくお話を伺っていて感じておりまして、単純に土管でつないで、違うところから出てくるという、それだけでも出口のところが非常に多様になると。ユーザーが固定された特定のシステムとは違って、出口側がいろんなところにつながっていけるという非常に大きな可能性。
それから、ビューワーというところの工夫で、見えにくかったものがすごく見えやすくなるとか、そのあたりの可能性もすごくありますし、もう一つ、私、思ったのが、この先目指されるところというのは、もしかすると、この土管の中で化学変化が起きるようなプラントシステムになっていくのではないかというような、単独のシステムのデータだけでは使えなかった、見えなかったような新たなアウトプットのケミカルが出てくるみたいな、そんなイメージも持ったんですが、いかがでしょうか。
【臼田センター長】 ありがとうございます。
まさにSIP第2期で進めているのが、その化学変化の部分でして、1つの情報を時系列に見ていくというのも1つですが、複数の情報を組み合わせて新たなプロダクツを作っていくことが、SIP4Dがあるからこそできる取組になりますので、今、まさにそこにチャレンジをしているといったところになります。
【上村主査】 土管では済まなくなりますね。ありがとうございました。
【臼田センター長】 水であれば土管に1つ集水場ができて、この集水場を処理しておいしい水を作っていくような、そんなイメージになるかなと思います。
【上村主査】 ありがとうございました。
そのほかの委員の先生方、遠慮なく御発言をお願いします。
【前田委員】 すみません、NTT、前田ですけど、よろしいでしょうか。
【上村主査】 よろしくお願いします。
【前田委員】 平田先生も臼田先生もいつもお世話になっているので、なかなか言いづらいところはあるんですが。デ活にもSIP4D、そして、CPS4Dにも大変期待しております。我々も連携させていただいているところなんですが。先ほど中北先生の御質問にもありましたけど、どうしても民間企業は、勝手に自分たちのビジネスでいろいろなデータベースを含めて、どんどん新しいものを作っていきますので、そこの相乗りというのは、特にSIP4D等については、これからも進めさせていただきたいんですが。
我々、見ている中で、大学の先生方がやはりまだ個別にシミュレーションであるとか、プラットフォーム、AIですね。データの共有までも行かずに、まだまだ新しいものを新規に個別に似たようなものを作られている先生が結構いらっしゃるような気がしています。なので、今後のお願いとしては、この活動の広報というか、宣伝というか、もっともっといろんな機関、特に大学の先生方はもったいないと思いますので、相乗りできるような宣伝活動というか、使った場合の効果とか、そういったところをもっと広めていただければと。民間企業のほうにも、我々を含めて、相乗りしたほうが、これからの社会、こう便利になっていくんだというのを我々も見せながらやっていきたいと思いますので、ぜひ、そのあたり、広報になるんですかね。見せ方なんですかね。ぜひ強化していただければと思っていますので、ぜひよろしくお願いします。
以上です。
【上村主査】 ありがとうございます。
デ活に関しては、どんどんコミュニティが広がっているという御説明も後段のほうで頂いていたような気がしますし、SIP4Dのほうは、そういう話はちょっと少なかったかもしれませんが、補足があればお願いします。
【平田センター長】 平田、発言します。よろしいでしょうか。
【上村主査】 お願いします。
【平田センター長】 幸いなことに、我々は防災に関しる地域の価値を創造するというような、そういうスローガンで民間の方の御参画を、御理解を得て、このプロジェクト、幸いなことに、我々は防災の地域の価値を創造するというような、そういうスローガンで民間の方の御参画を、御理解を得て、このプロジェクト、5年目ですけれども、だんだん広がってきたと思っております。それで、実は、このプロジェクトは今年度で終わりますので、その後、防災科研として、デ活の活動を継続するかどうかについて、今、議論をしているところですが、皆様の御理解が進めば、継続してできていくのではないかなと思っております。
平田のほうから以上です。
【上村主査】 デ活のコミュニティ、これだけ広がって、皆さんに期待されていると、簡単にはなかったことにはできないですよね。
【平田センター長】 そうだと思います。
【上村主査】 それこそそのあたりの広報戦略とか、お話しいただけるものがあればお願いします。お話しいただけない段階であれば、無理はなさらなくて結構ですが。
【平田センター長】 多分、臼田さんのほうから何かあるのではないですか。
【上村主査】 では、臼田センター長のほうからよろしくお願いします。
【臼田センター長】 防災科研では、昨年度、イノベーション共創本部を立てまして、社会と共創、共に創り合う仕組みにしていきましょうということで、それはSIP4D、あるいは、ある特定プロダクツというような縛りではなくて、ある意味、防災そのものをいかに進めていくかということを、社会――社会というのは、決して民間というだけではなくて、当然、大学とか自治体とかを含めた社会全体になるわけですけれども、いわゆる研究所が研究所として閉じて研究をして、できあがってから外に出していくではなくて、今まで作られてきたプロダクツや技術をうまく活用して、これからの社会をどう描いていくかということを初めから一緒に考えていきましょうという枠組をちょうど昨年度つくったところです。
もうすぐ1年になるところなんですけれども、まだまだ宣伝活動をもっとやっていかなければいけないなということは個人的にも感じておりますし、一方で、今までSIP4Dはどっちかというと、SIPの立てつけ上、まず府省庁からというのもあり、それから自治体というような手順を踏んできたところもありまして、急にこれを開放ですとやると、今まで閉じた中だからこそ出せたというものがそのまま流れるとなると、また閉じられてしまう可能性もありますので、そういったところを国とも一緒に議論しながら、いかに社会の防災力を高めていけるかということを目標に、どうあるべきかという議論をしっかりしていきたいと思っております。
【上村主査】 ありがとうございます。
特にサイエンス、研究室等へのフィードバックという論点での御質問かと思いますが、本当にサイエンス側も、研究そのものが、こういったデータ活用、あるいは、こういうコミュニティに入っていくということで、加速する可能性もあるんですよね。今まで時間を費やしていた、労力を費やしていた部分について、こういうところで非常にスピーディーにコアな研究ができるという可能性も秘めているなと思いましたので、引き続き、大いに大勢の先生方を巻き込んで進めていただければと思います。ありがとうございました。
【目黒委員】 東大の目黒ですけど、よろしいですか。
【上村主査】 目黒先生、お願いします。
【目黒委員】 手をずっと挙げていたんですけど、自分から言えばよかったんですね。
【上村主査】 すみません。声を出さないと(画面上で挙手が)見えないので。
【目黒委員】 分かりました。
プロジェクト全体に関して2つ、個別課題に関しても2つほどコメントがありますので、手短に説明させていただきます。SIP4Dを含め、この研究プロジェクト自体は、コンペティティブな関係の中で、あるチームが採択されて、研究が実施されてきていい成果が上がっている。これはすばらしいことですし、その成果が防災基本計画の中にも組み込まれるということですから、なおさらすばらしい。
しかし一方で、世の中にはこのプロジェクトに採択されなかった研究者たちが大勢おられて、部分的にはいい研究をされている事例も多くあると思いますが、それらが今回の防災基本計画に「SIP4Dを基盤とした……」というような記載によって、取り込みにくくなるようなことは絶対避けられるべきだと思います。そのために重要なのは、先ほどの質問の中にも関係するところはありましたけど、今後は、これまでSIP4Dのプロジェクトに関わってこなかった先生方や研究者の成果をうまく取り込むために、個人的なネットワークの範囲を超えて、適切に取り込めるスキームをつくり、これを広く示していくことが、次のステップのためにすごく重要ではないかなと思います。これが最初の1点です。
2つ目は、今後、少子高齢人口減少や財政的な制約から公助防災がどんどん厳しくなっていく中では、私自身は防災の産業化とか、防災ビジネスの市場の創造や育成が重要になると考えています。防災ビジネスの市場が、国内外に魅力的な市場として展開することで、防災分野に若い優秀な人材が入ってきて、結果として我が国や諸外国の防災が成立するというスキームを作ることが大切だと思います。すなわち、高収入な防災ビジネスで社会貢献するとともに、社会から尊敬される環境整備です。
この考えに基づくと、今回のすばらしい成果を如何にビジネス化していくかが大切になるわけですが、その前提としては、成果をビジネスにつなげていく上での手続きや条件を明確にしておくことが重要です。「勝手に使ってビジネス化して問題ないですよ」とか、「ビジネス化に際しては、○○のような手続きをとってください」などのルール作りです。ビジネスにしようとする側は、このへんが分からないとアクションを起こしにくいのです。
以上の2点が、プロジェクト全体に対してのコメントです。
次は個別の課題に関しての確認事項です。平田先生が御紹介されたE-ディフェンスを使った耐震構造と免震構造の実験で、長周期地震動を作用させたときに、建物の大きな損傷は両者とも免れたが、その後のオペレーションという意味では免震のほうが有利だったという事例の紹介がありました。共振現象を考えれば、長周期地震動と言っても、入力地震動の卓越周期によっては、免震構造の方が不利になるような場合もあり得るのではないかと思いますが、紹介された実験は、ちなみにどれぐらいの周波数の地震動を入力されたものでしょうか。ここで言う長周期地震動とは、どの程度の周期を指しているのか、免震構造の方が有利だという根拠は何かなどに関して、ぜひ教えていただきたいと思います。
個別課題の2つ目は、最後のチャットボットの話です。個々人の皆さんからの情報を取り込んで、全体としていい仕組みを組むというのはすばらしいことで、ぜひやっていただきたいですし、その方向に進むことに私は賛成です。しかし、ここで必ず出てくるフェイク情報について、どうやってそれを排除するかに対して、今日は時間の制限があったので御説明いただけなかったですが、どのようにお考えかを教えてください。
以上です。
【上村主査】 ありがとうございました。
たくさんありますので(順番に)お答えいただければと思うんですが、1番目、今の時点で取り込まれていない先生方をうまく巻き込んでいくというんですか、入りにくくしないとか、そのあたり、いかがでしょうか。
【臼田センター長】 大変ありがたいアドバイス、ありがとうございます。本当にそう思っております。
そうあるべきものの流れの一つとして進めてきているのが、1つはデ活でもありますし、また、我々のイノベーション共創本部というのも、方向性としては、そういう方向で行きたいと思っています。
一方で、防災科研も所帯があまり大きくなくて、結局、こういう研究開発をやっている人間がそういう展開まで全部やらなければいけないような状況でもあり、どういうリソースでそれを実現していくかということも一緒に検討していかなければいけないと思っています。ぜひ先生方のお力もお借りして、そういう枠組ができればと思いますし、本当に我々としても、ぜひそういう方向に持っていきたいと思っております。
ビジネス化に対するルールについても全く同じでして、これも我々、課題として思いつつも、1つのルールを描くのは誰であるべきか、我々が提案として出したとしても、どこにそれを提言して、誰がそれを位置づけるのかとか、そういうところになると、今度は各省庁の関係、あるいは、学会との関係でやるべきなのか、あるいは、こういった防災科学技術委員会をそういう場にするべきなのかとか、いろいろと議論はあるべきだとは思っております。ルールは絶対に必要だと思いますので、またそのあたりも御支援も頂きながら、ぜひ進められればと思います。
ただ、これもまた最初に戻りますが、防災科研の研究者、本当にリソースが足りておりませんので、いかにオールジャパンの形の中で、そのフレームワークを作り、ルールを定めていくのか、そういう場をどうやってつくるのかというのが一番悩ましいところかなと思っています。
最後の集合知のフェイク情報に関しましては、ツイッターのような一方向的な形に対し、チャットボットは、会話を発生させて、1つの情報を1回出すだけではなくて、やり取りを何回か発生させる中で、その人の情報の精度を高めるということと、アカウントを匿名で使えるという形ではなくて、ちゃんと個人が分かる形で使える形を取るということで、フェイク情報を減らすという取組も加えております。
手短に以上です。
【目黒委員】 ありがとうございます。
【上村主査】 ありがとうございます。
もう社会実装がかなり進んでいる雰囲気だからこその、すごく大事な論点を頂いたかなと思います。
E-ディフェンスの件も、平田センター長のほうから簡潔に、免震がいいと言える条件の範囲という御質問かと思いますが、いかがでしょうか。
【平田センター長】 実は、資料では、長周期地震動階級3程度の揺れを3分間病院に入れたというふうに述べていたんですけれども、目黒先生の御指摘のとおり、本当の長周期のときには、免震は必ずしも良くないということはよく分かっています。これ、一般向けにああいう解説をつけてしまいましたので。ですから、数字で何秒とか何ヘルツというのは今すぐは言えないんですけれども、本当の長周期ではないです。基本的には、短周期というか、兵庫県南部地震程度の地震の揺れというふうに御理解ください。あまり正確ではありませんでした。失礼いたしました。
【目黒委員】 分かりました。だとすると、ひょっとすると市民の方々をミスリードする可能性もあったということですね。
【平田センター長】 はい。もちろん、これはプロ向けにはきちんとしたレポートが出ていて、それで、例えば、病院の人に対して、どういった地震に対してどういう効果があるかということはもちろんきちんと理解していただけますけど、短い時間で分かりやすくするという観点から、ああいう若干ミスリードな解説になってしまいました。申し訳ありませんでした。
【目黒委員】 分かりました。ありがとうございました。
【上村主査】 ありがとうございました。
【福田防災科学技術推進室長】 失礼します。事務局から1点補足よろしいでしょうか。
【上村主査】 お願いします。
【福田防災科学技術推進室長】 先ほどの目黒先生の御質問のうち、2点目のルールの件でございます。臼田センター長が説明されたとおりだと思いますけれども、このルールの在り方というのは、ある意味、決して防災だけに限ったことでもなくて、国全体の問題でもないかというところでございます。この点は、先ほどデジタル庁、これが9月に設置されるという法律、これは既に成立しているわけでございますが、この法案と併せて、個人情報保護法ですとか、そういったいわゆる情報の流通に関する根幹となるような法制も幾つか改定がされているところでございます。
もちろん、当然、法律だけで全てが整理できるわけではございませんので、防災を含め、医療ですとか、教育ですとか、そういった重点分野ごとにルールの在り方ですとか、そのプラットフォームとして、どういった形で情報を流通するようにすればよいのかというようなところを、それぞれに検討を進めるというようなことが併せて決まっているというものでございます。
このあたり、当然、世の中の動きも非常に速いところもございますので、民間の知恵ですとか、あるいは法律の関係者ですとか、あるいは自治体ですとか、そういった様々なステークホルダーの方々の御意見も聞きながら、それぞれの分野で進められていくということになるものと考えております。
以上です。
【上村主査】 ありがとうございました。
【目黒委員】 ありがとうございました。
【上村主査】 ありがとうございます。では、一通りお答えいただいたかと思います。そのほかの委員の先生方、どうぞ。
【大原委員】 よろしいでしょうか。土木研究所の大原ですけど、私でよろしいですか。
【上村主査】 大原先生、お願いします。
【大原委員】 大変すばらしい御発表ありがとうございました。
私から手短に2点ですけど、防災情報システムを実装すればするほど、365日24時間対応しないといけないことになっていきまして、SIP第2期は現在開発中ということもあろうかと思いますが、防災科研さんとして、24時間対応がどういう状況になっているのかなというのが少し気になっております。臼田さんの健康面も心配でして、ちゃんと24時間対応の措置としかるべき人員の配置とか予算措置とかをしてもらっているんだろうかという、勝手な心配をさせていただきました。
あと、2点目なんですが、全国1,700市町村がありまして、24時間対応と言いますと、1,700掛ける24時間を支える人材が我が国に居たんだろうかというのがすごく懸念されます。先ほどの防災科学技術をめぐる動きの中でも、どんどん仕組みを作りましょうという話になっているんですけど、一方で、人材を育成しましょうという話が全然出てこなかったように思われました。特に金融とか、ほかの24時間対応が必要なシステムがある中で、いつ災害が起こるか分からない防災システムにどれだけの人員が今後割けるのかなというのが少し気になっています。臼田さんも人手不足だというお話を先ほどされていましたが、もう少し文部科学省さんに人員を底上げするような若手育成とか、企業の中の若手の人の育成とか、そういうのを進めていただかないと立ち行かないのではないかなと思っているんですけれども、臼田さん、御意見いかがでしょうか。
【上村主査】 ありがとうございます。
今の体制、現状の体制について、これは臼田センター長、お願いします。
【臼田センター長】 大原さん、御心配いただきましてありがとうございます。
でも、まさに御心配のとおりなんですけれども、防災科研がやっている範囲は、やはり研究所ですので、研究開発の一環という位置づけになっているために、必ずしも24時間365日絶対落としてはならないということにはなっていません。ですので、動かしてはいますけれども、落ちたときは落ちたときで対処するというような形になっています。なので、夜間にずっと誰かが張りついていなければとか、そういう形には、平時にはなっていません。ただ一方で、災害が起こったときは、これはまた研究者としてもやはり取りこぼしたくないというところもありまして、交代制もとりながら対応しております。
そのあたり、これをもしいわゆる国の実システムとして運用していくのであれば、今度は正当に24時間365日運用ができる体制を組まなければいけないということは間違いなくて、これを研究所としてやるのであれば、国としてその位置づけを得た上で、研究所として体制を組むのか、あるいは、国としてそういう運用体制を組んでいただいて、そこに我々は専門家として関与していくのか、そういったところをこれから議論していかなければいけないと考えております。
2点目の人材育成、まさに本当におっしゃるとおりでして、先ほど事務局から紹介のあった国土強靱化、防災・減災新時代の提言には、人材育成についても触れられてはいます。防災教育という面で触れていますが、やはりもっと専門家ですとか、こういうのに対応できる人材の育成というところまで本当は踏み込んで提言をしていくべきだとも思いますし、また、本当に具体的にそういう動きがないと、やっぱり人材のリソースは有限ですので、どうやって立てていくのか。
一方で、今度は技術の面で、いかに人のリソースを割かずに技術で対処できるのか。その技術を単に人が運用すると言ったら、技術の分、人が必要なんですが、なるべく人のリソースを割かない技術の在り方というところに、防災科学技術もきちんと考えていかなければいけないとは思っております。
以上です。
【上村主査】 ありがとうございます。
これに関しては、事務局のほうも何かコメントありますでしょうか。
【福田防災科学技術推進室長】 失礼いたします。事務局でございます。
大原先生、ありがとうございます。文部科学省全体ということでの叱咤激励というようなことで、ぜひ人材育成も含めて頑張っていきたいというように思っております。
1点補足として、先ほど臼田さんからも御紹介ありましたけれども、内閣防災の提言におきましても、SIP4Dというのは、今臼田さんからあったとおり、研究開発プロジェクトであるわけですが、国において別のシステムというのが、これはあくまで国が使うためのシステムということなんですが、動いているもの、総合防災情報システムというのがあるんですけれども、そういったいろいろなシステムの役割や在り方、これを再度整理していくというようなことになっておりますので、その負担面ですとか、そういったことも含め、どういうふうになっていくのかということが、先ほどのデジタル対応、あるいはプラットフォームという中でも議論されていくというように思っております。
もう1点、先ほどの大原先生のお話と別のところに戻ってしまうところはあるんですけれども、この提言においては、中北先生から研究のほうでのコラボというふうなお話もありましたけれども、DIASに関しても記載が幾つかございまして、DIASは云々かんぬんというような研究開発を進めている、今後災害対応を効果的に行うためには、人材育成や訓練等の取組と併せて、防災デジタルプラットフォームとの連携を検討すべきであると、こういったことも提言の中には書かれているということでございまして、かなり全体としては充実した中身になっておりますので、ぜひ一度、参考資料ということでございますけれども、お読みいただければ幸いです。
以上です。
【上村主査】 ありがとうございました。
本当にありがたいことでして、活発に御質問いただいておりまして、時間がもうあまりないんですが、ぜひこの時間しゃべらせろという方、声を出していただきたいと思いますが。
【小原委員】 小原ですけれども、よろしいですか。
【上村主査】 お願いします。
【小原委員】 やっぱり手を挙げているだけではだめですね。
【上村主査】 すみません。
【小原委員】 臼田さんのほうにコメントというか、質問したいことがあるんですけれども。情報共有プラットフォーム、それから、チャットボット、一人一人に対してきめの細かい情報提供ができるというのは大変すばらしいシステムだなと思います。
ただ、これらというのは、災害が起きてからちょっと時間が経った後のサービスというか、システムだと思うんですけれども、もっと早い段階の情報提供というか、発災する前、例えば、地震であれば揺れる前、地震が起きてから、揺れる前に、非常にわずかな時間で有効な情報提供ができるのではないかと。気象庁などで行っている緊急地震速報はそれの一つですけれども、それはどちらかというと情報を送りっぱなしなので、個人個人がいる場所、環境等に応じて、きめの細かい情報提供というのも、サイバー空間とフィジカル空間の融合ができれば、それが可能になってくるのではないかと考えるんですけれども。そういった瞬間的な避難誘導みたいなことは、このプロジェクトの中ではあまりターゲットに入っていないのか、それとも、ほかのところで実際にやられているのであれば、教えていただきたいと思いました。
以上です。
【上村主査】 ありがとうございます。
これについては、どなたがお答えいただけるでしょうか。
【臼田センター長】 まず、SIP4Dや防災チャットボットにおきましては、概念としては当然含まれるんですけれども、やはりそこまでには焦点を定めるほどのリソースがないために、基本的には、中心は災害が起こった後の応急対応といったところに焦点を定めています。
当然、緊急地震速報もありますし、それを含めて、こういうSIP4Dも含めて、新しい研究開発は当然可能だと思いますので、これからチャレンジしていくような分野ではないかなと思っております。
【小原委員】 よろしくお願いします。
【上村主査】 ありがとうございました。
【小室委員】 質問よろしいでしょうか。
【上村主査】 お願いします。
【小室委員】 委員の小室です。すみません、時間がないので手短に。
デジタル防災の中で、いろいろな具体的なものが出てきて、情報を収集して統合するのは、本当に夢のような世界です。ただ、災害発生時にリアルタイムの情報の収集・統合をやろう、あるいは、その配信をしようと思いましたら、今の全ての研究の前提が、通信の安定性ということだと思うんです。先ほどの人員の配置という問題とは別次元の通信の安定性なんですが、これまでの経験から、大災害が起こると、そこのスポットからは情報が入らない、送れないということがございました。
ですから、この通信の安定性については、ハードの強靱化にただひたすら頼っていくのか、あるいは、通信の安定性が脆弱であるということを前提にした何か研究が行われているのか、その辺の見通しがあれば、ぜひ御披露いただければと思います。よろしくお願いします。
【上村主査】 引き続きでしょうか、臼田センター長、お願いします。
【臼田センター長】 御質問ありがとうございます。今日、全くそこについては触れることができませんでしたが。
一応今我々は三方向を考えておりまして、1つはまずハードですね。ハードに関しては、各社さん頑張っておられるので、そこをもう頑張っていただくというのがまず一番かなと思っています。
2つ目が、ソフトといいますか、途切れてもいち早くつなぐための技術開発というのもSIP第2期では行っておりまして、例えば、通信が切れたエリアで救助をしなければならない人が何人ぐらいいるのかということだけを把握するために、ヘリコプターから通信の電波を照射して、携帯電話から返ってくる反応を得て、何人被災者がいるのではないかという情報をゲットするような取組をしております。また、切れているエリアの中で車を走らせていくことで、その車がすれ違いながら拠点拠点の情報を収集して本部に戻ってくるような、そういう技術開発も行っております。また時間があれば、そういったところの御紹介もできればと思います。
3点目は、通信が上がってこないということ自体も情報ですので、面的な地震被害推定とか、水害のハザード情報とかを使って、情報は上がってこないけれども、もともとそこはこのぐらいの揺れだったらこのぐらいの被害が起こり得るわけだから、上がってこないということは、それ相当かそれ以上の災害が起こっているはずだという情報を新たに作って、それに基づいて対応していくような、空白情報をいかに生かした情報プロダクツを作れるかといったところにもチャレンジをしています。
ハード、つなぐための技術、そして、情報としていかに活用するかという技術、そのような3点で今取り組むべきではないかということで進めております。
以上です。
【小室委員】 特に3点目、非常に興味があります。どうぞよろしく進めてください。お願いいたします。
【上村主査】 ありがとうございました。
そこら辺も、大きな今後のテーマにもなり得るところかと思いますし、ぜひよろしくお願いいたします。
もう既に約束の時間が過ぎておりまして、この後の御予定ある方もおられるかと思いますので、御発言いただいていない方、まだたくさんおられるんですが、もしどうしてもということがあれば、事務局のほうに御連絡いただいて、少しやり取りさせていただいてということにさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
よろしいですか。本当に申し訳ございません。進行が不手際で、十分に皆さんから御発言いただけなかったのは本当に申し訳なく思います。
ということで、本当に活発に御議論いただきました。これらを踏まえて、今後の委員会の運営であるとか、防災科学政策のほうへの反映とか、そういったことの検討を事務局のほうで進めていただきたいと思います。
それでは、時間になっておりますので、事務局から連絡事項等ありましたら、お願いいたします。
【山田防災科学技術推進室長補佐】 次回の委員会の日程ですが、後日、こちらから改めて御連絡させていただきたいと思います。
事務局からは以上です。
【上村主査】 ありがとうございます。
どうしてもここで一言委員の先生方から発言しておきたいということがあれば、伺いたいと思いますが、よろしいでしょうか。
ということで、次回、7月30日ということで予定させていただきます。先ほど申し上げましたけれども、そのほか、発言し切れなかった部分等あれば、事務局にお寄せいただければと思います。
それでは、以上をもちまして、本日の委員会を閉会といたします。どうもありがとうございました。
 
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