参考資料3 「グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス」(GRENE)事業 北極気候変動分野 運用基本方針

平成23年4月19日
北極研究戦略小委員会

1.背景

 文部科学省では、我が国の北極研究の一層の推進を図るため、平成22年5月に「北極研究検討作業部会」を設置し、我が国における北極研究の強化に向けた検討を実施した。同作業部会では、同年7月に「北極研究検討作業部会報告書-中間とりまとめ-」がとりまとめられ、北極圏研究関係者が広く結集して議論等を行うための共通プラットフォームとなる組織として「北極圏環境研究コンソーシアム」の設置、北極気候変動に係るモデル研究と観測研究をパッケージで推進する事を目的とした「北極圏気候変動研究プロジェクト」の創設等が提唱された。
 これを踏まえ、文部科学省は、平成23年度より「グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス」(GRENE)事業 北極気候変動分野として「北極気候変動研究プロジェクト」を実施することとした。
 北極研究戦略小委員会においては、当該事業に係る運用に関して以下の基本方針を決定する。

2.事業内容

 本事業において北極研究を強力に牽引するため定められた中核研究機関は、以下の事業を実施する。

  1. 公募による共同研究の実施
  2. 研究設備等の提供
  3. 「北極環境研究コンソーシアム(仮称)」の運営

3.「北極環境研究コンソーシアム(仮称)」の運営

 中核研究機関は、「北極環境研究コンソーシアム(仮称)」において自主的に行う以下の検討等に関し、効率的かつ効果的な活動となるよう支援する。

  • 北極域に関する研究課題の検討
  • 人材育成や国際協力の在り方などの重要事項に係る検討及び推進
  • 北極環境研究のプラットフォーム保有研究機関等に対する当該プラットフォーム活用に関する提言
  • 国際シンポジウムの開催など研究成果の広報
  • 観測データの統合・相互利用の検討(衛星観測データなど)
  • IASC等の国際的な北極研究の枠組みへの参画等に関する検討

4.研究課題

 本事業においては、複数の分野の研究者が協同で我が国の将来ビジョンにも深く関わるような以下の研究課題の解明を目指す。また、中核研究機関は、広く異なる分野の研究者を参画させるため、公募を行う。公募にあたっては、日本国民への貢献について具体的かつ明確な説明を求めることとする。

1.北極域における温暖化増幅メカニズムの解明

 北極域は、地球温暖化による平均気温の上昇が最も大きく、地球上において気候変動による影響が最も顕著に表れる地域の1つとされていることから、温暖化増幅(Polar Amplification)に関するメカニズムについての研究を実施する。

2.全球の気候変動及び将来予測における北極域の役割の解明

 北極域における環境変化は、大気・海洋循環の変化や雪氷圏変化などを通して、全球的な気候システムにも大きな影響をもたらす可能性があることから、全球の気候変動及び将来予測における北極域の役割を解明し、気候モデルの改良・高度化につなげる研究を実施する。

3.北極域における環境変動が日本周辺の気象や水産資源等に及ぼす影響の評価

 近年、日本においても北極振動が原因と考えられる大雪などの異常気象が発生しており、冬期の気象への影響が注目されている。このような北極域の環境変化が日本周辺の気象に及ぼす影響を評価し、正確な気象予測に資する研究を実施する。また、北極域の環境変動や生態系の変化が周辺諸国の陸域や海洋に与える影響の評価を通じて、水産資源等に及ぼす影響の解明につなげる。

4.北極海航路の利用可能性評価につながる海氷分布の将来予測

 北極海の海氷面積の減少に伴い、 経済活動の面から北極海航路の利用に対する期待が高まっている。そのため、北極海の海氷分布を予測するなど北極海航路の利用に当たって必要な研究を実施する。

5.研究設備等の提供

 本事業において提供すべき研究設備等を以下とし、中核研究機関により提供する。

  1. 耐氷性能を有する海洋研究開発機構の海洋地球研究船「みらい」
  2. 海氷域の変化を捉える観測を機動的に行う砕氷船
  3. 雲の三次元構造を観測する雲レーダー及び北極域データアーカイブ

6.その他

 「北極環境研究コンソーシアム(仮称)」においては、衛星観測データの利用を推進するとともに、衛星観測データ利用の高度化方策について検討する。

お問合せ先

研究開発局海洋地球課