資料2-5 研究開発評価システムの改革に係る検討状況等について

検討事項

第4期科学技術基本計画
平成23年8月19日

総合科学技術会議評価専門調査会
(検討ワーキンググループ)における検討項目案

研究開発評価システム改革の方向性について
(審議のまとめ)平成21年8月4日

1.研究開発システムの階層構造に対応した評価システムの明確化

[1]国は、政策、施策、プログラム又は制度、個別研究開発課題という研究開発システムの階層毎に、目的、達成目標、達成時期、実施主体等の可能な限りの明確化を図る。その上で、これらに基づく評価の実施を徹底するとともに、評価結果を政策等の見直しや新たな政策等の企画立案、資源配分の重点化、効率化等に適切に反映する。

1.政策体系に対応した体系的・効率的な評価システム

(1)政策体系各階層の整合性のとれた評価指標(評価項目・基準等)の設定

[1]政策―施策―プログラム・制度―研究開発課題といった政策体系の関係(位置付け)を明確化するとともに、各階層間で整合性のとれた評価指標を設定することにより、体系的・効率的な評価システムを構築する必要があるのではないか。

(2)プログラム評価の拡大

[1]政策体系の中で、施策の実施に当たっては、プログラム化を進めることにより、より目標を明確化するとともに目標達成期限(マイルストーン)を明確に定め、その達成状況を確認することにより、PDCAをきちんと回していく必要があるのではないか。

[2]プログラムの設計とそれに基づく事前評価(アセスメント)においては、研究開発テーマについての選択と集中という観点のほかに、多様な研究開発のアプローチも可能となる指標を設定する必要があるのではないか。

○国等は、各階層間の関係を明確化し、上位の目的の実現の点から、階層間の適合性、相互接続性を踏まえ、それに即した効率的かつ有効な評価システムを構築する。【2】

説明責任を評価目的とする場合や、社会経済的効果の評価を必要とする場合は、個々の研究開発課題(プロジェクト)を詳細に評価するよりも、施策やプログラム・制度レベルで評価したり、機関レベルに説明責任を課すほうが適当であり、多様な優れた研究活動を長期的な視点から支援できるなど、評価が有効かつ効率的である場合も多く、国等は、施策やプログラム・制度の評価の推進を図る。【8】

○個々の研究開発課題(プロジェクト)の評価基準は上位の施策やプログラム・制度により定められるものであることから、国等は、各施策やプログラム・制度の内部でその目的に即した適切な評価基準を作成するよう再検討する。【7】

[2]国は、研究開発の各階層(政策、施策、プログラム又は制度、研究開発課題)を踏まえた研究開発評価システムの構築も含め、科学技術イノベーションを促進する観点から、研究開発評価システムの在り方について幅広く検討を行い、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」について必要な見直しを行う。

 

2.連続性・一貫性のある評価プロセス(事前評価-中間評価-終了時評価-追跡評価)

(1)事前評価の強化とこれをベースとした一連の評価の実施

[1]技術は一流だが事業化に結びついていないというこれまでの反省を踏まえ、事前評価(アセスメント)の段階から、例えば、普及技術を目指すのか、トップ技術を目指すのかといった目標レベルを明確にするとともに、特に、応用・開発研究については、技術の実用化・普及までを念頭に置いた出口戦略を明確にしておく必要があるのではないか。

[2]プログラム等に対応した事前評価(アセスメント)から中間評価(モニタリング)、終了時評価(エバリュエーション)までの一連の評価過程と方法をあらかじめ公表し、それをプログラム等を推進する側、研究開発を実施する側、研究開発成果を受け取る側で共有しておくことが重要ではないか。

[3]事前評価(アセスメント)の段階で、プロジェクトやプログラム・制度における推進主体及び研究開発実施主体間の責任と権限について明確にしておき、これに基づいてその後の評価を実施する必要があるのではないか。また併せて、計画の見直し等軌道修正への対応のためのプロセスや権限についても明確にしておく必要があるのではないか。

○資金配分機関は、採択のための審査を事前評価として明確に位置づけ、中間評価、事後評価等と適切な関係を持たせたシステムとして適切に運用する。【4】

○研究開発課題(プロジェクト)の公募を開始する前に、これらの位置づけを公表し、評価者、被評価者、評価結果の利用者等の関係者と事前共有する。【4-5】

○一連の評価の場合、長期の研究開発課題(プロジェクト)では、事前評価、中間評価、事後評価の途中で評価者が変わる可能性があり、評価の考え方など連続性と一貫性の維持を図る工夫をする。【5】

説明責任の所在を研究開発課題(プロジェクト)より施策やプログラム・制度、機関におくことで、長期的研究や地道な研究を実現可能とするマネジメントが、それら施策やプログラム・制度、機関の内部で実施されるようにする。【7】

○施策やプログラム・制度を新設・変更する際には、内部で実施される研究開発課題(プロジェクト)を選択する事前評価(アセスメント)基準を設定するだけでなく、その後に実施していく中で必要とされる施策やプログラム・制度等の中間評価(モニタリング)、事後評価(エヴァリュエーション)等の基準や、研究開発課題(プロジェクト)の中間評価、事後評価等もあわせて構築する。【7】

2.研究開発の性格に応じた多様な評価基準や項目の設定

[3]国及び資金配分機関は、ハイリスク研究や新興・融合領域の研究が積極的に評価されるよう、多様な評価基準や項目を設定する。

 

(2)評価の質を高め評価を前向きにとらえるための指標の設定

[1]研究開発の性格に応じた評価指標を明確化していくことと併せて、イノベーションの推進という観点から、ハイリスク研究や学際・分野融合研究など新たな領域を開拓する研究を促す評価指標を設定する必要があるのではないか。

○新たな研究領域を開拓していくハイリスク研究や学際・分野融合研究が適切に評価されるよう、事前評価(アセスメント)や事後評価(エヴァリュエーション)の方法・評価基準、マネジメントの仕組みを、施策やプログラム・制度の目的を踏まえて導入する。【8】

ハイリスク研究や学際・分野融合研究の評価に当たっては、それぞれの施策やプログラム・制度の目的に応じて評価を行うことを推進し、事前評価においては、既存の研究領域に変革をもたらし新たな研究領域を創出する可能性がある研究であるかを重視、事後評価においては、挑戦的な研究開発課題(プロジェクト)が当初の目標達成に失敗しても、予期せざる波及効果に大きい意味がある場合には積極的に評価することを許容するような評価基準を作成する。【8】

○学際・分野融合研究には、施策やプログラム・制度がその目的として特定の社会的課題の解決などを挙げ、そのために多様な異分野融合型の研究開発をすすめる学際・融合研究がある。これらについては、目標達成への道筋や必要な技術課題群の明確化を行い、それらを踏まえた評価を行うことで、学際・融合研究が実施されるようにする必要がある。【8】

既存の新しい研究領域の開拓を目標とする施策やプログラム・制度以外の審査においても、学際・融合領域に不利にならないよう、扱い方を明記するなど、研究の芽を適切に拾い上げることが必要である。【9】

○学際・分野融合やイノベーションは、個人だけでできるものではなく、個人と組織との相互連携、それらをつなぐ人の役割が重要。【10】

○国及び資金配分機関は、個別組織(拠点:センター・オブ・エクセレンス型組織)を研究実施機関として取り扱うだけではなく、(現在の科学研究費補助金や、一部の共同研究拠点が対象となり得るような施策やプログラム・制度のように複数の組織が協働する形の)ネットワーク・オブ・エクセレンス型組織も研究実施機関として取り扱いうることを再確認し、後者についても十分に適用可能となるような評価システム等を構築していく。【10-11】

 

[2]研究開発の意義を多角的にとらえるために、研究開発成果以外の、国民に夢を与える、人材育成、アウトリーチ活動など、より多様な評価指標を設定することも必要なのではないか。

○国等は、研究自体の推進と同時に、若手研究者の育成等といった次世代の研究者・専門家等の養成、大学の学部生等への教育効果、アウトリーチあるいは啓蒙等についても、評価基準として積極的に位置づける。【9】

 

[3]アウトカムを重視していく必要があるが、これに係る指標を設定することは困難であることから、目標とするアウトカムとそれに向けたマイルストーンやロードマップについての実現可能性や達成状況を確認していくことで対応していく必要があるのではないか。

「研究者の自由な発想に基づく研究」もあれば「政策課題対応型研究」もあり、プログラムの目的が、学術的な知識の創出の支援にあるのか、政策課題対応(問題解決)にあるのかによって評価方法・基準が異なるはずであり、それらに適した評価のあり方があるのではないか。【7】

基礎研究からイノベーション創出に至るまでの広範で多様な研究開発の局面にそれぞれ適した多様な評価の視点があるのではないか。【7】

 

(3)追跡評価のあり方

[1]出口戦略を検証(達成状況を確認)していく上でも、追跡評価の位置付けなり、役割が今後重要となることから、追跡評価の対象についてどう考えるか、追跡調査の位置付けや追跡評価との役割分担をどう考えるかなどの点について検討する必要があるのではないか。

[2]基礎研究、応用・開発研究など研究のフェーズに対応した追跡評価の実施方法等を検討していく必要があるのではないか。

[3]追跡評価の実施に当たっては、製品化などの研究成果の波及効果や副次的効果を把握する視点だけではなく、なぜそうした効果が発揮できなかったかという技術やコスト等の問題について分析を行う視点も重要ではないか。

特段の記述なし

 

3.評価結果を次の行動に生かす仕組み

[1]PDCAサイクルの実効性の確保に向け、評価結果の活用方法と活用に当たっての責任主体を明確化し、関係者に周知した上で評価を実施していくシステムを再構築していく必要があるのではないか。その際、例えば、プログラム等の推進主体と研究実施主体の各々が評価結果の活用について自己検証を行い、その結果を関係者間で共有する取組みを行っていくことも必要ではないか。

○評価者、被評価者にとって、評価に伴う負担を軽減するためにも、評価の目的を明確にすることが重要であり、国等は、評価結果の活用と責任主体等を明確化し、関係者に周知した上で、評価を実施していくようにシステムを構築する。【13】

施策やプログラム・制度ならびに機関のマネジメントにおいてPDCAサイクルを回すことは重要であり、この観点から、評価をマネジメントに活かすことを奨励する。【13】

[4]有効と判断される場合には、世界的なベンチマークの適用や海外で活躍する研究者等の評価者としての登用を促進する。

 

○世界的な視点での評価について、世界的なベンチマークの活用等、研究開発の特性に応じた世界水準の評価方法など、我が国にふさわしい評価方法を明確化する必要があるのではないか。【11】

・事前評価(アセスメント)や中間評価(モニタリング)においては、海外で活躍する研究者を評価者に含む評価は、第一線の研究者からの率直な意見が得られる反面、研究アイデアの流出の可能性や英語の計画調書作成などの負担も懸念される。国及び研究機関等は、当面は、施策やプログラム・制度レベルや規模の大きな研究開発課題(プロジェクト)など、特に有効と思われる部分でその実施を支援する。【12】

○世界的な視点での評価のあり方については、非英語圏である日本においては研究分野によっては適用可能性が低いことや、分野を横断した単純な比較には意味がないことなど、国及び資金配分機関は、その限界について十分に継続的な調査研究が必要である。【12】

[5]国及び資金配分機関は、優れた研究開発成果を切れ目無く次につなげていくため、研究開発が終了する前の適切な時期に評価を行う取組を促進する。

[2]終了時評価については、評価結果のフィードバックという観点よりも、研究開発成果等のPRに重点が置かれている面があることから、次につなげるための終了前評価を実施する上での課題を含め、終了時評価の意義や評価結果のフィードバック方法等について改めて検討する必要があるのではないか。

優れた成果が期待され、かつ研究開発の発展が見込まれる研究開発課題(プロジェクト)については、次の競争的資金により、切れ目なく研究開発が継続できる仕組みを構築する。【13】

3.評価の重複や過剰な負担の回避のための合理化・効率化の推進

[6]国及び資金配分機関は、評価の重複や過剰な負担を避けるため、他の評価結果の活用を通じて、研究開発評価の合理化、効率化を進める

 

○被評価者である研究開発課題(プロジェクト)の実施者が、評価作業に必要以上の労力をかけることの無いように、資金配分機関等は、評価活 動への対応の仕方について支援や助言を行う仕組みを検討する。【7】

○評価者・被評価者の双方にとって、過重な評価作業負担を回避し、効果的で効率的な評価のあり方の検討が必要ではないか。【12】

○評価者、被評価者とって、評価に伴う負担を軽減するためにも、評価の目的を明確にすることが重要であり、国等は、評価結果の活用と責任主体等を明確化し、関係者に周知した上で、評価を実施していくようにシステムを構築する。【13】

○大綱的指針では、発展が見込まれる優れた研究開発成果を切れ目なく次につなげていくために、事後評価(エヴァリュエーション)を、研究開発課題(プロジェクト)が終了する前の適切な時期に実施することとされているが、結果として評価が頻繁に実施されて過重な負担となっている現状があることから、国は、各施策やプログラム・制度や研究開発課題(プロジェクト)の実状に応じた対応が可能なシステムを再考する必要がある。【13】

過重な評価負担を回避する手段として、次の点が考えられるが、国及び研究開発機関等は、これらの取り組みを検討し、評価システムの効率化・合理化を図り、作業負担の軽減に努める。【13】

[1]評価に活用可能なインフラデータを整備する。

[2]適当な評価期間を設定し、その間の実施活動中におけるアドバイザリー委員会などによるモニタリング・助言の活動を評価活動の一形態として積極的にとらえて推進する。

[3]配分額に応じ、評価の過重を調整する。配分額の少ない研究開発課題(プロジェクト)、プログラム・制度についてはできるだけ評価の簡素化を図る一方、配分額の大きな課題、プログラム・制度については、それに見合うきめ細かくかつ厳格な評価を行う。

[4]評価者と被評価者の議論により、評価の重点項目を不断に見直す。

[5]事前、中間、事後の評価で共通に使える部分は、フォーマットを工夫するなどにより、評価を受ける側の負担を減らす。

[6]研究開発課題(プロジェクト)の事後評価結果を次の研究開発に適切につなげていくためのシステムを整備する。

[7]研究拠点あるいは研究機関において実施される規模の大きなプロジェクト等のモニタリング等の場合に、客観的データや研究代表者等のみとの面接だけよりもはるかに多くの情報が得られ、妥当な判定につながる実地訪問(site visit)を活用することを検討する。

4.評価に関わる専門人材の育成

[7]国は、評価に関する専門的知見や経験を有する人材の養成と確保を進める。

 

○PD、POを持続的に養成・確保していくために、大学や関係機関と協力して、大学院博士課程や若い教員・研究者の研修プログラム等において、競争的資金制度についての知識や、研究課題が申請・評価・採択される流れについての理解を得る機会を設ける。【16】

○資金配分機関は、PD、POを希望する若手研究者に機会を与える目的で、PD、POの空席があった時に一部を広く研究コミュニティから公 募することを検討する。【16】

PD、POの権限、責任を明確化しつつ十分に配置し、常勤のPDの導入、及び非常勤POと常勤POの協力による実施方式の構築など、競争的資金制度の特性に応じて、体制を強化・確立していく。必要に応じて、POらに大胆に権限と責任を持たせるケースも検討する。【16】

○非常勤のPOに対し、本務である教育や研究に活動に支障が生じることがないよう、POや所属機関に対し積極的な支援をする。【16】

○ピアレビューは、優れた方法であるが、現実には一部の現役研究者に評価作業が集中している現状があるため、国及び資金配分機関は、退職した研究者をもあわせて評価者として活用する可能性、適否について調査、検討する。【14-15】

 

[8]国は、大学及び公的研究機関が、業務運営のための情報システムを研究開発評価にも活用できるようにするなど、評価を効果的、効率的に行う事務体制を整備するとともに、これに携わる人材の養成やキャリアパスの確保を進めることを期待する。

 

 

○国等は、評価とともに、研究戦略・企画、プロジェクト管理・運営など戦略的なマネジメントを含めた研究支援体制全般のあり方を検討し、あわせて、評価に関連する専門的知見と経験を有するマネジメント人材、研究支援人材の育成とキャリアパスの確立に向けた検討を行うとともに、それら人材の養成システムの構築についても検討する。【15】

○大学の研究推進部署や評価室の専門人材と、資金配分機関におけるプログラム・制度運営等を行う専門人材の交流を行うなど、評価に関する人材の高度化を行う仕組みを検討する。【15】

○研究開発機関等は、PD、POとして活動した実績を含め、キャリアパスとして評価する仕組みを明確化し、定着させるとともに、その知識や経験を自らの研究戦略の策定等に積極的に活かすことが期待される。【16】

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(調査・評価担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(調査・評価担当))