研究開発評価部会(第52回) 議事要旨

1.日時

平成26年4月4日(金曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省15階特別会議室

3.議題

  1. 科学技術戦略推進費による実施プロジェクトの評価の実施について
  2. 科学技術振興調整費による実施プロジェクトの評価の実施について
  3. 研究開発評価システムの改革について
  4. その他

4.出席者

委員

平野部会長、有信部会長代理、有本委員、伊地知委員、受田委員、大島委員、河合委員、五神委員、諏訪委員、東嶋委員、福士委員、室伏委員、吉川委員

文部科学省

伊藤科学技術・学術政策局次長、村田科学技術・学術総括官、小山企画評価課長、林科学技術・学術戦略官、和田人材政策課人材政策推進室長、高橋企画評価課評価・研究開発法人支援室室長補佐

5.議事要旨

【平野部会長】
 第52回の研究開発評価部会を開催いたします。本日は、科学技術戦略推進費による実施プロジェクトの評価の実施について、科学技術振興調整費による実施プロジェクトの評価の実施について、それから、皆さんの御協力でまとめていただきました研究開発評価システムの改革について、審議したいと思います。
 まず初めに、配付資料の確認をお願いします。

【高橋企画評価課室長補佐】
 本日の資料は、議事次第の配付資料一覧のとおりでございます。資料1-1から1-3までが議題1の資料、資料2が議題2の資料、資料3-1から3-3までが議題3の資料でございます。そのほか、参考資料1から3を配付してございます。また、机上資料としまして、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」、「我が国の研究評価システムの在り方」という日本学術会議からの提言を配布させていただいております。個別に申し上げませんが、資料に欠落等がありましたら、議事の途中でも結構でございますので、事務局までお申し付けいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【平野部会長】
 よろしいでしょうか。
 それでは、議題1に入ります。科学技術戦略推進費による実施プロジェクトの評価の実施についてであります。まず、事務局から説明をお願いします。

【林科学技術・学術戦略官】
 資料に基づきまして、平成26年度科学技術戦略推進費による実施プロジェクトの評価の実施(案)について、御説明いたします。資料1-1から1-3まで、三つございますけれども、資料1-2と1-3で概略を御説明したいと思います。
 資料1-2の1ページ目でございますけれども、1ポツで評価対象プロジェクト・評価項目と書いております。評価対象プロジェクトにつきましては、1ポツの2段落目のところに書いておりますけれども、全部で6プログラムございます。その中の25プロジェクトが今回の中間評価若しくは事後評価の対象になっておりまして、それぞれのプロジェクト一覧は5ページの別添につけてございます。1ページの真ん中にそれぞれのプログラム名が六つ書いておりますけれども、その六つのプログラムについて実施するということで、2ポツで評価の実施体制というのがございます。(1)に書いてございますのは、実施主体は文部科学省より事務委託を受けている科学技術振興機構であり、科学技術振興機構が外部有識者から成る作業部会を作って評価をするということになっております。(2)にもう少し細かく書いておりますが、六つのプログラムがございますので、それぞれのプログラムの特性に応じて六つの評価作業部会を設置する。そして、それぞれのプログラムにはプログラムオフィサー(PO)がおりますので、そのPOが補佐ということで参画して、これまでのプロジェクトの情報のうち必要な情報を作業部会に提供するということになってございます。
 2ページ目を御覧ください。2ページ目の一番上に、評価対象プロジェクトの一覧がございます。全部で25プロジェクトございますけれども、(1)から(6)のうちの(5)以外は事後評価であり、(5)は中間評価ということになっております。具体的な実施方法が3ポツに書いてございます。まず、(1)にございますように、被評価者は成果報告書を作って事務局に提出するということになっております。(2)にありますように、事務局の方でその報告書の確認をしながら、POも確認し、(3)にありますように必要があると判断した場合には資料の追加等を求め、(4)にありますように、当該作業部会の委員にその成果報告書を送るということでございます。そして、(5)にありますように、委員は書面査読を行って、まず事前確認事項(ヒアリングの前に確認をしておくこと)と、ヒアリング留意事項(ヒアリングで聞くこと)を区分けし、さらに、(7)にありますとおり、事前にほかの専門家等々からメールレビューをする必要性を事前に決定して被評価者の方に伝えるということになっております。(8)は、メールレビューを行う場合は、作業部会前までにメールレビューを行うと書いております。そして、(10)にございますけれども、作業部会を開くということで、その作業部会においては、まず評価の実施方法について確認を行うとともに、事前確認事項の回答を議論するとともに、ヒアリングにより明らかにする点を整理していく。その後、ヒアリングを行って評価結果を決定するというようなことになっておりまして、(11)にありますとおり、その結果を踏まえて作業部会は評価部会に報告し、(12)にありますとおり、最終的にこの評価部会で決定するということになっております。
 そこで、資料1-3ですが、大まかにスケジュールが書いてございます。既に成果報告書の作成依頼は行っておりますが、それを6月中旬ぐらいまでに提出していただいて、事務局、PO、作業部会の委員の先生方で査読をしながら、実際にヒアリングをするのは、9月中旬から10月下旬で、適宜作業部会の委員の先生方のスケジュールを調整して行います。10月中には評価結果報告書を作成いたしまして、12月頃に開かれる評価部会にて報告をするというようなことを考えております。
 先ほどの資料1-2に戻りまして、利害関係者の範囲ということで、4ポツに書いてあります。これは一般的な利害関係者の範囲でございますけれども、特徴的なのは、プログラムの中には、大学の学長であるとか所属機関の長を、プログラムの実施主体者にしているプログラムがございまして、その場合につきましては、当該機関に所属している先生全員が利害関係者になるということで審査自体から外れていただく。そこだけ広めの利害関係者になっておりますけれども、そういったような運用をしております。
 6ページ以降にそれぞれのプログラムの評価項目がございます。最初の目標達成度、ミッションステートメントというのは、こういうものを達成しますという内容です。定量的な評価を持っているプログラムですので、まず、それがきちんと達成できたかどうかというようなものを見た上で、それ以外の成果・内容について評価をします。さらに、実施体制はどうだったかという観点と、実施終了後、どういうふうにして継続等を考えているのかというのが主な評価項目になっております。
 簡単でございますけれども、以上でございます。

【平野部会長】
 ありがとうございます。
 ただいまの事務局からの説明について御質問等ございましたら、よろしくお願いします。
 どうぞ。

【有本委員】
 文部科学省における研究及び開発に関する評価指針が大幅に変わって、プログラム評価という観点が入るわけです。科学技術戦略推進費及び科学技術振興調整費による実施プロジェクトの評価は、その最初の適用になるのではないかと私は思っています。しかし、今の説明だとほとんどそういう観点が入ってないのではないでしょうか。自らプログラム評価という観点をいれて文部科学省の評価指針を改定したのだから、自らプログラム評価を試行的でもよいので実施していった方が良いと思いますが、いかがでしょうか。

【林科学技術・学術戦略官】
 そうですね。文部科学省における研究及び開発に関する評価指針も改定され、プログラム評価というものが入りますので、どういうプログラムを評価するのかをいろいろ検討した上で、これは科学技術振興調整費という形で長年やってきて、最後に社会システム改革ということで、社会システムのいろいろなものを変えていくという大きな目標までございます。そういう中でよく検討をしていきたいと思います。済みません、まだ全体が決まっているわけではないので。

【有信部会長代理】
 今の御指摘のとおりだと思うのですが、ただ、この科学技術戦略推進費の評価は事後評価でして、これまで同じような観点で評価が続いてきたという部分があります。ですから、評価の継続性・共通性や、ある種のバランスを確保した上で、プログラム評価の視点を明確にどこかで打ち出すという形にして、今回試行的に目立つようにするという方法もあるかもしれないと思います。

【平野部会長】
 この点についてはいかがでしょうか。
 有信委員から御指摘があったように、後付けの評価というのは、被評価者に大変混乱が起こりますから難しいのですが、そこを考慮しつつ、プログラム評価の観点で見たときにはどうなるかということを試行的に加えていただいた方がよろしいのではないかと思っております。どういうふうにするかというのは文部科学省内で検討いただき、時間があればここで御報告いただきたい。

【林科学技術・学術戦略官】
 分かりました。実際に評価を実施するときには、当然、今回改定された指針を踏まえた視点というのも入れながらやっていくべきだと思いますので、そこはPOともよく相談をしてやっていきたいというふうに思います。また、先ほど有本委員がおっしゃったのは恐らくプログラム評価のことだと思うので、いろいろなプログラムがある中でどれに対してプログラム評価を実施していくかということを文部科学省内でもきちんと検討をし、確かにこういう社会システムは本当に変わったのかというような観点もこのプログラムはございますので、そういう中で必要性を見極めながら対応していきたいということでございます。この事後評価をするときにこういった新しい視点を入れ込んでやっていくというのは、実施主体と一緒に考えていきたいと思います。

【平野部会長】
 どうぞ。

【受田委員】
 具体的な評価の視点に関して少しコメントをさせていただきたいのですけれども、私も被評価者の立場でこの評価を受けたことがあります。その立場で少し伺いたいのですが、例えば資料1-2の8ページにある地域再生人材創出拠点の形成(事後評価)の一番下に、ローマ数字6番で中間評価の反映という項目があります。ほかのプログラム、例えば11ページの戦略的環境リーダーの育成拠点形成(事後評価)においても、中間評価の反映という項目があります。この中間評価の指摘事項を事後評価にどういうふうに反映するかという点についてなんですけれども、中間評価の中で高い評価を受けたものについては、基本的に中間評価において余り修正の要請等が書かれておりませんので、S評価が付けられることは、ないと思います。であるにも関わらず、s、a、b、cという区分があって、総合評価に反映されるシステムになっています。ここの部分は中間評価の総合評価をうまく酌み取っていただいて、事後評価においてこの部分がマイナスにならないように御配慮いただきたいというのが、要望でございます。その点がもし反映されていれば結構ですが、よろしくお願いいたします。

【林科学技術・学術戦略官】
 御意見を踏まえて対応をしていきたいと思います。

【平野部会長】
 大変重要なことだと思います。うまく進んできているというところは、最後になると、「まあまあうまくいった」で終わる場合があります。これについては評価者も御理解いただいていると思いますけれども、是非その点について留意していただきたい。
 有本委員のコメントを含めて、よろしいでしょうか。それでは、この評価を進めるに当たっては、是非、御意見いただいたところを踏まえて評価に当たっていただければと考えます。今後の評価は、今の貴重な御指摘を踏まえて進めるようにしていただきたいと思います。
 それでは、よろしければ、次の議題2に進みます。科学技術振興調整費による実施プロジェクトの評価の実施について、まず事務局から説明をお願いします。

【和田人材政策課人材政策推進室長】
 それでは、議題2.科学技術振興調整費によるプロジェクトの評価の実施について、御説明させていただきます。資料2になります。
 これは、平成22年度まで総合科学技術会議が運用する科学技術振興調整費として実施されていたプログラムのうち、科学技術振興調整費の廃止に伴い、平成23年度から科学技術人材育成費補助金に移行したプロジェクトについて事後評価を実施しようとするものでございます。科学技術振興調整費から科学技術人材育成費補助金に移行したプログラムにつきましては、総合科学技術会議の運用からは外れておりますけれども、報告を求められた場合には評価結果を報告するということになっております。
 初めに、平成26年度の具体的な評価対象ですけれども、今回の評価の対象となるのは、最初に書いております三つのプログラム、若手研究者の自立的研究環境整備促進、イノベーション創出若手研究人材養成、女性研究者養成システム改革加速ということです。最初の若手研究者の自立的研究環境整備促進は、若手研究者が自立して研究できる環境の整備を促進するために、テニュアトラック制に基づいて若手研究者に競争的環境の中で自立と活躍の機会を与える仕組みの導入を図るといったプログラムでございます。2番目のイノベーション創出若手研究人材養成は、イノベーション創出の中核となる若手研究人材が、学問分野の専門能力だけではなくて、国際的な幅広い視野ですとか、産業界などの実社会のニーズを踏まえた発想を身につけるシステムを構築する、いわゆる、ポストドクターと産業界のマッチング、橋渡し的なプログラムでございます。それから、3番目の女性研究者養成システム改革加速というのは、特に女性研究者の採用割合が低い分野である理学系、工学系、農学系の研究を行う優れた女性研究者の養成を加速するための取組ということでございます。
 プロジェクトが17ございまして、4ページですけれども、プロジェクト一覧ということで17プロジェクト載せてございます。
 各プログラムの評価項目・評価基準につきましてはその次のページからになります。例えば若手研究者の自立的研究環境整備促進は、中間評価に対応させたものとしておりますけれども、こちらに掲げてあるような、例えば「人事制度の改革や、必要となる研究組織の改革を積極的に行うことなど、導入するテニュアトラック制の制度設計が十分に行われたか」とかいうような項目を一覧として載せてございます。
 それから、次の6ページですけれども、イノベーション創出若手研究人材養成ということで、これはポスドクのキャリアを支援するものです。例えば「実践プログラムは、イノベーション人材養成システムの目的に沿って、若手研究人材の幅広い知見・経験、発想力、独創的な課題設定・解決能力、コミュニケーション能力等、多様な能力の養成が可能な内容となっており、成果をあげたか」等々、このような評価項目基準とさせていただいております。
 それから、7ページの女性研究者養成システム改革加速ですけれども、女性研究者の数の増加ということですので、例えば「女性研究者の採用割合等が低い分野(理学系・工学系・農学系)で、優れた女性研究者の積極的な採用を促進するシステムが構築され、女性研究者が増加できたか」とか、あるいは、機関において現場の女性研究者のニーズであるとか状況を勘案した適切な取組であったか、といったような内容の項目でございます。
 次に、評価の実施体制につきましては、文部科学省より事務委託を受けている科学技術振興機構が評価作業部会を設置して評価を実施していただくということになります。具体的には、プログラムごとに内容が異なりますので、内容に応じて3つの評価作業部会を設置するということにしております。8ページの別添3の選定基準に基づきまして、構成員を部会長より御指名いただくということになってございます。
 それから、評価の実施方法につきましては、2ページ目以降に具体的に記載してございます。簡単に申し上げますと、まず、被評価者に成果報告書を作成・提出いただいた上で、事務局、主査補佐をお務めいただく担当のPOの確認等を経まして、評価作業部会での作業を進めるということになります。評価作業部会におきましては、まず評価作業部会の委員に書面査読を行っていただいて、必要な事項を確認の上、ヒアリングを行うという流れになります。必要であれば、ヒアリング前に評価作業部会の委員以外に、更に御専門の方に御意見を求めるという趣旨でメールレビューを行う場合もございます。これは、主査と主査補佐で精査し、やるか、やらないかを決定した上で進めるということでございます。ヒアリングを経まして評価結果を評価作業部会として決定し、その結果を評価作業部会から評価部会に御報告いたします。そして、評価部会において評価結果を決定していただくということになります。
 利害関係者の範囲については、3ページの下段の方に記載してございます。これも簡単に申し上げますと、実施機関と同一の機関に所属する者については、基準により利害関係者になるため、当該プロジェクトの評価を行うことはできないということでございます。
 最後に、スケジュールですけれども、ページが前後して恐縮ですが、最後のページ、10ページを御覧ください。本日の評価部会で実施方法をお決めいただきました後、評価作業部会を設置いたしまして、委員への必要な御説明等を開始いたします。9月中旬から10月下旬に掛けまして実際の評価作業部会による評価を実施し評価作業部会としての報告案をまとめるという段取りでございます。その後、12月頃になりますけれども、研究開発評価部会を開催いただきまして、作業部会の主査から評価結果を御報告、そして部会として評価結果を決定していただき、その後、機関への通知・公表という流れでございます。
 以上でございます。

【平野部会長】
 ありがとうございます。
 このプロジェクトの評価についても、先ほど御意見いただいた点を加えて留意をしていただくということでよろしいでしょうか。
 そのほかありましたら、よろしくお願いします。どうぞ。

【諏訪委員】
 これは人材養成のプログラムだと思うのですけれども、確かに養成する側の視点の評価は評価項目があるのですが、養成される側が実際に満足いくものであったかということも本当は見なくてはいけないと思うのですね。確かに養成される側はまだ若い人なので適切な意見は言えない可能性はあるかもしれませんけれども、何らかのアンケートのような、養成される側の意見も吸い上げて評価ができればいいのではないでしょうか。たしか昨年度もこの部会でそういう御意見が出ていたと思います。今回、その観点が入っていないので、なぜその意見が反映されていなかったのかという御説明も、聞きたいと思います。

【平野部会長】
 私もその点は事前に指摘しました。事務局から、加えて説明をお願いします。

【和田人材政策課人材政策推進室長】
 先ほど非常に簡単に触れてしまったので、申し訳ございません。7ページの取組の内容の真ん中あたりですけれども、「採用、養成の取組は、機関における女性研究者のニーズや状況を勘案した適切、具体的なものであったか」という評価基準を設けております。現場の女性研究者の意向を踏まえたものであったかというのは、ここで判断をするということにしてございます。もちろんプログラムを実施するに当たりまして各PO等が直接現場に赴きましていろいろと話をしていく中でそういったニーズというのは常に吸い上げるということをしております。その上での本省側との協議であるとか、調整であるとか、それは随時行っておりますので、引き続き御指摘の点も踏まえてやってまいりたいと思います。

【平野部会長】
 今のような方法でよろしいでしょうか。

【諏訪委員】
 はい。

【平野部会長】
 そのほか。室伏委員、どうぞ。

【室伏委員】
 今の点についてですけれども、私も、大分前ですが、人材育成のプログラムを担当しており、評価を受ける側でした。そのときに、事後評価では養成した人たちの意見というのは聞かれず、その後、追跡調査で養成した人たちに科学技術振興機構(JST)からアンケート用紙などが送られて、かなり詳細にいろいろなことを聞いておりましたので、今後そういう形で進められることだろうと思ったのですけど、それでよろしいのでしょうか。

【和田人材政策課人材政策推進室長】
 もちろんそれも一つございますし、その他、いろいろな形で事後的に、このプログラムに対する評価ですとか、あるいは、今後こうしたらいいですとか、そういった御提案は、正式な報告書の形でもそうですし、あるいは個別にお伺いしたりすることもございますけど、いずれにせよ新しい事業の組立てに対して、参考としてお話をお伺いするなり、過去の報告書をもう一回熟読するなり、いろいろな方法で現場からの声というのを極力今後とも吸収していきたいと思っています。

【室伏委員】
 やはりどういう人が育ったかということがとても重要な視点だと思いますので、是非、追跡していただきたいなというふうに思っております。よろしくお願いします。

【平野部会長】
 ありがとうございます。大変重要な御指摘だと思いますので、今、説明がありましたように、事後の評価その時点でお聞きするということと、加えて、フォローアップといいますか、後々どういうような方が育ったかということも含めて、対応していただきたいと思います。
 後継施策として、関連したプログラムを打ち出すときに、説得力があるデータになると思います。こういうバックデータを持ちながらプログラムの特徴をきちんと社会に説明ができるようにしなければいけないと思いますので、是非気を付けて進めてください。

【和田人材政策課人材政策推進室長】
 まさしく我々も考えるところは全く同じでございまして、やり方については検討させていただきたいと思います。お考えについては全く、我々も共有するものであります。

【平野部会長】
 ありがとうございます。
 そのほか、いかがでしょうか。どうぞ。

【東嶋委員】
 御説明ありがとうございました。東嶋です。
 今の件なのですけれども、このプロジェクトは、研究に対する予算というよりは、研究体制に対する予算ということです。昨年も同じようなものの事後評価があり、今年度も同様にということですが、昨年までの経験で得た中で、好事例があったとか、あるいは反省するべき事例があったということを、もちろん文部科学省で把握するのは大切なのですが、次の研究プロジェクトを実行されている皆さんにも展開し、例えばまねしていただくことで、好事例を波及させるというようなことはできているのでしょうか。もしできていなければ、今後そういったことも検討いただければと思います。

【和田人材政策課人材政策推進室長】
 報告書という形でこういった好事例がありますというのは各実施機関から上がってまいりまして、その情報というのは当然共有されるわけですけれども、それに加えまして、女性研究者について申し上げますと、この女性研究者養成システム改革加速プログラムとは別ですけれども、今行っている女性研究者研究活動支援事業の拠点型というのを昨年度、今年度から連携型というのを、いずれにしましても単独の機関で女性研究者支援のプログラムを受けていただいた機関が中心となって、そのほかに幾つか連携してさらなる好事例なり波及効果を狙った取組も進めていっているところでありますので、様々な形でそういった取組、好事例は、せっかくの好事例ですので、いろんな形で活用していきたいというふうに思います。

【平野部会長】
 よろしいでしょうか。

【東嶋委員】
 ありがとうございます。

【平野部会長】
 そのほか、いかがでしょうか。よろしいですか。
 ありがとうございます。それでは、この科学技術振興調整費による評価の実施については、ただいま御意見を頂いたところを加えて対応に当たっていただき、今後の評価を進めていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【伊地知委員】
 よろしいでしょうか。

【平野部会長】
 どうぞ。

【伊地知委員】
 今になって気が付いたので。資料2の別添2、7ページのローマ数字の3「取組の内容の評価基準の効率性」の欄の表記に「プログラム内容」とあるのですが、このプログラムの意味は何でしょうか。それとも、単なるプロジェクトの誤植でしょうか。

【和田人材政策課人材政策推進室長】
 このプログラムと申しますのは、この事業を受けて実施していただく各大学としての取組という趣旨でございます。

【伊地知委員】
 だとしたら、そういった誤解がないように表現をしっかり加えてください。

【平野部会長】
 これまでも議論に出てきた、プログラム、プロジェクトという表現に誤解のないように対応してください。総体的に大学が全ての責任をおっているわけではないと思いますので、きちんと対応していただけますようお願いします。
 そのほか、いかがですか。よろしいですか。ありがとうございます。
 それでは、今のところを含めてきちんと対応し、評価に当たっていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 続きまして、議題3に入らせていただきます。研究開発評価システムの改革についてであります。これは、これまで委員の皆さん方に鋭意御議論を頂きまして検討し取りまとめをいたしました「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」について、その後の動きを事務局から報告していただきます。加えて、日本学術会議においても評価の在り方に係る検討をしてくださっていますので、室伏委員からその内容について情報提供を頂き、議論を進めたいと思います。
 それではまず、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」の改定について、前回の部会の議論の後、どのようになったかというところを中心に、分かりやすく御説明いただきたいと思います。

【高橋企画評価課室長補佐】
 それでは、御説明させていただきます。本部会におかれましては、国の研究開発評価に関する大綱的指針の改定に際しまして、文部科学省評価指針改定作業部会を設置していただき、その改定内容を踏まえまして同年12月から検討を行っていただいたところでございます。本年2月に本部会にて改定案を御決定いただきまして、2月26日の研究計画・評価分科会の審議、それから3月3日の科学技術・学術審議会総会にて建議を審議・決定していただきました。省内手続を経まして、一昨日ですが、4月2日に大臣決定をされたところでございます。本部会の委員の先生方におかれましては、改定の審議に御尽力いただきまして、まことにありがとうございました。お礼を申し上げます。
 それでは、資料3-1、3-2を用意してございますけれども、資料3-1は評価指針の概要でございます。こちらにつきましては、先ほど御説明申し上げました、研究計画・評価分科会、科学技術・学術審議会総会での審議の際に、改定内容のポイントを分かりやすく説明するということで、平野部会長、有信部会長代理に御相談いたしまして内容を作成し、野依会長に御確認を頂いたというものでございます。
 それでは、資料3-1をごらんいただきたいと思います。概要といたしましては、まず、評価指針の性格ということです。2段落目の1行目にありますように、文部科学省の所掌に係る研究開発に関する評価の基本的な考え方を示したガイドラインという御説明をしております。今回、大綱的指針の改定や「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方について」の建議などを踏まえまして、五つのポイントを特筆課題としまして今回の改定のポイントを特に強調しているところでございます。
 続いて、2ページ目でございます。それぞれ特筆課題に係る改定のポイントを記載しております。これは、これまで御議論いただきました本文の記載の順序等に合わせまして、1ポツは総括的な記述ということでございます。若干お目通しいただきますと、最初の黒丸のところでございますけれども、科学技術を基盤としてイノベーションの実現を強力に推進していくということがまず述べられまして、三つ目の黒丸のところですが、課題解決を可能としていく研究開発システムの構築について掲げてございます。四つ目には、基礎研究・学術研究の意義としまして、新しい学理・学術領域の創出や既存の学理の再体系化を促すことによって科学技術・学術の進歩に資すること、更に技術の背後にある基礎学理を明らかにすることは、その技術に信頼を与え、それを広く活用することを可能とするものであり、科学技術イノベーションの源泉となるということ。五つ目の黒丸ですが、1行目から2行目に掛けまして、研究開発施策と高等教育施策などの人材育成施策は有機的な連携を図っていくことが大切であるということ。六つ目の黒丸では、一方で評価の頻度・負担の増大の問題に言及しているということ。七つ目の黒丸ですが、それを受けて、評価は何らかの意思決定を行う目的のために実施される手段であって、その目的に応じて個々の評価システムが構築される必要があるということ。八つ目の黒丸ですが、施策の企画立案、資源配分、研究課題の実施等の各段階において主として責任と権限を有する主体を明確化し、当該主体が適切な意思決定を行うために評価が活用されるべきであるという、基本の考え方をポイントとして挙げております。
 3ページ目でございます。ここからは、五つの特筆課題それぞれにつきまして記述をまとめております。まず、(1)科学技術イノベーション創出、課題解決のためのシステムの推進につきましては、最初の黒丸のところですが、研究開発の質の向上を図るため、論文発表数や論文被引用度は客観的・定量的な評価指標であり得るが、論文関係の数値だけに頼り安易にこれらの数値を上げること自体が目的化しないように配慮すること。それから、三つ目の黒丸ですが、課題解決のためのシステム化を促進するため、知の探求のみならず社会ニーズに対応した知の活用を促し、成果の受渡しや成果の実用化など、社会実装に至る全段階を通じた取組を評価へ反映することなどをポイントとして挙げております。
 それから、特筆課題の二つ目、(2)ハイリスク研究、学際・融合領域・領域間連携研究等の推進でございます。最初の黒丸ですが、それらの研究等が適切に評価されるような、事前評価・事後評価等の方法、評価基準、マネジメントの仕組みを、研究開発施策の目的を踏まえて適切に導入するということ。それから、三つ目の黒丸ですが、本来はハイリスク研究の推進自体を目的としない研究開発施策においても、当該目的・評価では推し量れないハイリスクな研究が提案されてくる可能性はある。その場合、当該目的・評価基準では必ずしも優位ではないがリスクをとっても実施する価値があると考えられる案件を採択することを妨げないような審査基準等を設定し、中間・事後評価においてもハイリスク案件であることを前提として評価するなどの取組を推進するということ。五つ目の黒丸ですが、事後評価においては、挑戦的な研究開発課題が当初の目標の達成には失敗したとしても、予期せざる波及効果に大きい意味がある場合等には、次につながる有意義なものとして評定することを許容するような評価基準を設定することなどをポイントとして挙げてございます。
 4ページに参りまして、(3)次代を担う若手研究者の育成・支援の推進ですが、最初の黒丸ですけれども、研究開発課題の評価に際して、ポストドクターや博士課程学生に提供されている処遇や研究環境等々を適正に確認するということ。それから、二つ目の黒丸ですが、若手、女性、外国人等の研究者が研究代表者である優れた研究開発課題を積極的に推進するということ。四つ目の黒丸ですが、若手研究者が励まされ、創造性を発揮しやすくなるような評価方法であるということ。それから、五つ目の黒丸ですが、短期的に結果の出やすい研究に誘導することなく、挑戦的な研究の実施を促進するといったような点を挙げております。
 (4)評価の形式化・形骸化、評価負担増大に対する改善でございますけれども、最初の黒丸におきましては、評価に際しては、評価対象・評価事項等に理解・精通している者が行う評価、すなわち「自己評価」が基本かつ重要であって、その後、3行目ですけれども、自己評価に当たっては客観的で信ぴょう性の高いものとすることに十分留意するということですとか、5行目にありますように、質の高い自己評価をベースとした第三者評価や外部評価については、対象や目的に応じて柔軟に合理的な手法を設定するということでございます。それから、二つ目の黒丸ですけれども、評価は何らかの意思決定を行う目的のために実施される手段であることを再確認するということ。それから、四つ目の黒丸では、各種の評価システムの必要性や有効性、評価の頻度や方法の妥当性等を踏まえて評価の質を高めるということですとか、評価の観点や項目の重み付けを行い、評価すべきことをしっかり評価することが本質的に重要であるといったような点を挙げております。
 続きまして、駆け足で申し訳ございませんが、5ページでございます。(5)研究開発プログラム評価についてですが、最初の黒丸では、ゴール及び時間軸が設定できる場合には、研究開発プログラムレベルで時間軸を設定し評価を行うことが、研究開発施策の評価に際して効果的に機能していくものと期待されるということ。それから、二つ目の黒丸ですが、政策評価などの諸施策の体系と整合性をとりながら導入を進めるということ。それから、最後の黒丸ですが、研究開発プログラムの企画・立案段階から、国、資金配分機関、PD・PO候補者等が適切に関与し、責任・権限や役割を明確にし、態様に適した形で行われることも重要といったことを挙げております。
 特筆課題に係る記載は以上ですが、6ページにございます第2章以降の記載につきましては随所に特筆課題の考え方に対応した部分が改定されております。御承知のとおり評価指針の基本的な考え方等を示した記載ですので、大きくその考え方を変更したものではないということから、項目のみを記載させていただいております。
 なお、資料の事前送付の際にも御説明をさせていただいておりますが、資料3-2の20ページ、21ページを御覧いただければと存じます。20ページの一番下のところに「2.5 研究活動における不正行為、研究費の不正使用との関係」というタイトルがあり、21ページに具体的な記載がございます。この研究活動における不正行為、研究費の不正使用との関係の記述におきまして、これまでの本部会での説明では、「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて」が本年度末に決定するという予定であったため、そのガイドラインを大臣決定するタイミングで改定日を入れまして本評価指針についても大臣決定をするというような御説明をしておりました。しかしながら、その後、適切にパブリックコメントを行って各方面からの御意見なども踏まえ、必要に応じて、再度、有識者会議にも諮った上で、新たなガイドラインを決定、運用開始するということであり、もうしばらく改定時期が遅れるということでございます。そのために本評価指針の改定を先延ばしするということは適当ではないということがございます。また、本部会でも御議論がございましたように、研究開発評価システムと研究不正システムとは異なるものであるものの、研究開発評価システムにおいても、研究開発機関等における研究不正に対応するための規程や組織としての責任体制の整備状況を確認することを通じて、研究不正の事前防止に貢献していくことが重要であるとの御指摘も頂き、評価指針におきましては、評価の過程で不正行為等が発覚した場合には、研究不正使用ガイドラインや当該不正ガイドラインを踏まえて対処するものとすることが記載されておりますので、21ページでは、現行方針を踏まえると同時に、中ほどの※6にございますとおり、きちんと決定後のガイドラインも踏まえて厳正に対処する旨を記載することで、適切に対応できるものとして記述を変更しておりますことを御報告させていただきます。
 それから、本評価指針は4月2日に文部科学大臣決定いたしまして、今後、ホームページでの公表、それから、関係機関、国公私立大学、独立行政法人等、約900機関ございますけれども、本評価指針の周知するための通知の準備を進めております。
 また、文部科学省といたしまして、本評価指針を実効的なものとすべく、今後、研究開発評価シンポジウムの企画でございますとか、国公私立大学、独立行政法人等を対象とした説明会、国立大学協会等の既存の会議における説明、訪問活動など、様々な方法について事務的に検討して、普及活動というものを進めていきたいと考えております。
 説明は、以上でございます。

【平野部会長】
 ありがとうございます。特に概要については、ここでもミスリードが起こらないように、本文になるだけ忠実に、少し長くなってもいいので本文の言い回しをここに取り入れるという重要な御指摘を頂きましたのでページ数が増えております。そごのないようにできるだけここには書かせていただいたということでございます。
 それから、不正行為等については、先ほど説明があったとおりでございます。
 まず、ここについて御意見があったらお聞きして、その後、日本学術会議の動きについて情報を頂きたいと思います。この件について、よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。本当に皆さん方、作業部会から始まって、取りまとめていただきまして、ありがとうございます。重要なのはこの先でありまして、前回も御意見いただいたように、どのように皆さん方に理解をしてもらい、この評価が次の進展に生かしていけるようにしないと評価の意味がありません。疲弊感、徒労感だけで終わらず、改善に向けていけるように、これを皆さんにきちんと説明をし、御理解いただきながら、評価をするプログラム・プロジェクトにおいては、その趣旨を踏まえて評価し、対応していただきたいと思っております。これはあくまでも指針でありますので、この指針を基にして効果的に動いていただきたいと願っております。
 では、室伏委員の方から、日本学術会議の方で評価の在り方に関しての対応・検討もされておりますので、情報提供を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

【室伏委員】
 ありがとうございます。それでは、日本学術会議で評価の在り方に関する検討を進めておりますので、その点について情報を提供させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。資料は、資料3-3でございます。できるだけ簡潔にと思っておりますので、この資料に基づいて御説明させていただきまして、必要な点について少し補足をさせていただきたいと思っております。
 日本学術会議では、これまで実は数回にわたって我が国の研究開発制度に関する提言を行ってきております。それがなかなか皆様に知られるところになっていないのは大変残念なのですが、最近では2012年10月26日に、これはお手元の机上資料の中に入っておりますけれども、「我が国の研究評価システムの在り方~研究者を育成・支援する評価システムへの転換~」ということで、研究に関わる「評価システム」の在り方検討委員会から提言を発出いたしました。この中では、まず我が国の研究開発システムの現状と課題をアンケート調査などで洗い出しまして、その中から浮かび上がってきた幾つかの点、特に、メタ評価、これは研究資金制度やプログラムに関する評価も含みますけれども、そういったことを実施するということ、そして、若手研究者の育成・支援に資する研究評価システムへの転換方策といったこと、この2つのことを推進してほしい、推進しようということを提言したわけでございます。
 研究開発システムのメタ評価の実施に関しましては、国の研究評価システム全般にわたってのこと、次に教員・研究者の業績評価、研究課題の評価、研究資金制度やプログラムに関する政策評価、大学と研究開発独立行政法人の機関評価、そういったものの現状や在り方について検討を加えまして、提言を行いました。詳しいことはお手元の机上資料の中に書いてございます。実は、この提言につきましては、本部会におきまして、あるいは分科会でも御説明させていただいたという経緯がございますので、覚えていてくださる方もいらっしゃると思いますが、もしよろしければ、後でごらんいただければ幸いでございます。
 それから、若手研究者の育成・支援に資する研究評価システムへの転換方策、これは非常に重要なことだというふうに日本学術会議では考えておりまして、これに関しましては、若手研究者の個人評価の在り方、研究課題の評価における若手研究者育成の視点、大学・研究機関の評価における若手研究者育成の視点といったことについて検討を行いまして、今後どうあるべきかについて、かなり具体的な提言を行っております。これから我が国の科学技術を担っていくためには優れた研究者が育つことが必要ですので、そのために資するような評価システムを作るべきであるということで、かなり細かく議論を行いまして、ほぼ1年半の議論の末にこういった提言を行ったわけです。
 この提言におきましては、研究開発に関わる各種の評価システムの必要性や有効性、効率などに関してメタ評価をするということが必要であるということとともに、評価というものが、説明責任を果たすことのみに視点を置くのではなくて、我が国の科学者コミュニティや科学技術政策における課題解決を促進するための手段として設計されなければならないといったことをこの中で提言しております。これらの提言が、先ほど御説明いただきました改定された「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」の中に、かなり取り入れていただくことができました。これは日本学術会議の委員会の関係者は大変喜んでおります。実はこれはまた他省庁での議論にも生かされておりまして、我々の1年半の努力が実ったということで、大変うれしく思っていることを御報告させていただきます。
 こういった提言をまとめまして、これからもいろいろな面で活用されていくことと思っておりますが、さらに、現在日本学術会議が今後の評価に関してどんな役割を果たせるだろうかということで、議論を進めております。日本学術会議といいますのは、皆様も御存じのように、我が国の人文・社会科学、生命科学、理学、工学、そういった全ての分野の科学者コミュニティを代表する立場として、様々な課題について議論をし、提言をしております。そういった立場から、自ら果たし得る評価機能について検討を行いまして、恐らく4月10日の総会で、「日本学術会議の評価にかかる機能について」という提言をまとめられる状況になってきております。
 そこでは、日本学術会議がこれまでに実施してきました助言や提言、それから審議・評価の依頼など、そういった事項を様々に調査・検討いたしまして、日本学術会議がこれまでそういった評価というものにどのように関わってきたかということを日本学術会議の第三者評価機能に関する検討委員会でまとめ、示す予定になっております。そして、我が国の研究活動、・科学技術評価の現状と課題を俯瞰(ふかん)して、その上で日本学術会議が果たし得る評価に係る機能を整理いたしました。
 こういったことで、日本学術会議が果たし得る評価機能として、幾つかの可能性を挙げました。一つには、科学技術政策の評価・提言。これは実は、第3期、第4期の科学技術基本計画に向けて日本学術会議として提言をまとめて公表したという経緯がございますが、第5期に向けてはいろいろな意味で間に合わなくてまだこういったことはやっていないのですけれども、やはり第5期の科学技術基本計画に向けた何らかのアクションができるのではないかということを考えております。
 それから、2番目には研究開発プログラムの評価。先ほど有本委員からも御意見がありましたけれども、研究開発プログラムの評価は、学術や研究者コミュニティへの効果とか、影響とか、それから、社会、経済、文化的な価値の創造への貢献といったものを分析できるような、本質的な評価とすべきであるということから、やはり日本学術会議が何かしなければいけないのではないかという思いを委員の方々は持っております。これは、学術という視点から、プログラムの運営の適切性ですとか、それが学術の進展や人材育成にもたらした有効性を評価することが必要なのではないか、今後のプログラムの在り方について日本学術会議として提言する機能を果たすことができるのではないか、ということを考えて、提言に入れ込んでおります。
 それから、3番目は社会の抱える課題に関する学術の視点からの評価・提言ということですが、日本学術会議は多様な学問分野を横断する総合的な視野から専門的知見を提供できる機関であるということに基づきまして、社会が抱える課題、それについて眷属(けんぞく)した評価・提言ができるのではないか。こういったことで日本学術会議が貢献できるのではないかということを提言しております。
 4番目は大規模な研究開発課題の評価ということですが、これは、現在、国費総額が300億円以上のものは総合科学技術会議が評価を実施しているという状況がございますけれども、日本学術会議が学術という立場に立ってピアレビュー手法によって大規模な研究課題について評価・提言を行うことが有効なのではないかというふうに述べております。
 それから、5番目、評価担当候補者の推進ということですが、様々な専門家がおりますので、府省や研究開発法人などにおける評価担当候補者という者を、日本学術会議が国内あるいは国外の様々な研究者・技術者の中からお選びして、そして推薦することができるだろうというふうに考えております。そういった府省や研究開発法人などの評価活動を間接的に支援するということが日本学術会議の活動として可能なのではないかということも考えられます。
 6番目は研究分野や研究基盤のレビューということですが、これも、我が国の科学技術政策の立案を支援するといった観点から、例えば大型の施設計画や大規模研究計画などのマスタープラン、あるいは研究分野ごとの国際動向を踏まえた我が国の研究推進や研究振興方策、人材育成方策、産官学連携や社会連携などの方策について現状や課題をレビューすることも、それだけの様々な領域の人間がそろっておりますので可能ではないかというふうなことを、この提言の中で挙げております。
 日本学術会議は余り社会の役に立ってないのではないかという言い方をされている時期が長くございまして、10年ぐらい前から、日本学術会議は世界のために役立とうという活動を始めております。その中の一つとして、こういった国の研究開発の進展や、それから人を育てるという上で日本学術会議が何かできるのではないかと、今回こういった議論の末に提言をまとめました。
 ただ、日本学術会議というのは予算的にも厳しい組織でございまして、皆様よく御存じかと思うのですけれども、例えば事務局機能が非常に脆弱(ぜいじゃく)でございます。ですから、現在の体制ではなかなか今申し上げました機能を果たすことは不可能です。何とか事務局の調査分析機能の強化、あるいは評価者の評価専門性を醸成する方策を考えるとか、あるいは、日本学術会議そのものでやっていくことが難しければ、関係諸機関、ここで考えておりますのは、JSTや、日本学術振興会(JSPS)、科学技術・学術政策研究所など、こういったところとの連携を強化して、そして、評価に必要なデータやエビデンスをそういったところで収集していただき、それを頂いて分析し評価に生かしていくということができるのではないかというふうなことも、議論をしてまいりました。
 例えばアメリカでは、ナショナル・アカデミーにほぼ1,000人の職員がおります。年間200件以上の報告書がその中で作られておりまして、ナショナル・アカデミーの中では人材育成も非常に盛んに行われています。例えば12週間の科学技術政策フェローシッププログラムというものが16年間継続されておりまして、その中ではポストドクターレベルの科学技術政策の調査分析能力を有する人材を育てて輩出しておりますが、日本学術会議ではとてもそんなことができる状況ではありません。大変悲しいことに非常勤の学術調査員がたった5名しかおりませんで、その人たちにいろいろなお仕事をお願いするというわけにもいかず、なかなか難しいということがございます。ですから、専任の調査員の配置や体制の整備というのは難しいということがありますので、先ほど申し上げましたJSTやJSPSや科学技術・学術政策研究所などとの連携の上で、これから公表されます提言で述べておりますようなことを日本学術会議の機能の一つとしてこれから社会のために役立てていけるのではないかと議論し、まとめてまいりました。実現できるとよろしいのですが、まだ委員会の段階ですので、もしかすると日本学術会議全体からはそんなことをやっている暇はないと言われるかもしれません。でも、やはり大事なことですので、日本学術会議の機能の一つとして今後何とか進めていきたいというふうに、この検討委員会では考えております。
 以上です。

【平野部会長】
 ありがとうございます。今の状況の御説明については審議ではありませんので、御質問があったら頂きたいと思いますがいかがでしょうか。

【伊地知委員】
 今、資料の御説明を拝聴しておりまして、お話の中にあったアメリカのナショナル・アカデミー、あるいはナショナル・リサーチ・カウンシルの御紹介、あと、例えばイギリスで言えば主要な4アカデミーだとか、そういうことを想定しながら伺っていました。コメントしたいことが、2点あります。一つは、設置法に当たる日本学術会議法の、例えば科学技術政策の評価・提言と研究開発プログラムの評価に関連するのですけれども、そこを狭く読まれ過ぎなのではないか。つまり、日本学術会議、科学者の集まりというのは、決して科学技術政策だけとか研究開発プログラムだけではなくて、まさにあらゆる政策、あらゆるプログラムに対して、科学とか学術の知見を提供し得る、そういった機能を持っているのではないかというふうに思います。確かに、事務局機能は諸外国と比較して大きな差があるというのはよく承知しているのですけれども、やはり、あるべきところ、科学者がどういうふうにして貢献し得るのかという、もうちょっと高邁(こうまい)なところもあってもいいのではないのかなと思いました。
 2点目は、評価者の評価専門性の醸成というのは逆ではないかということです。専門性というのは様々な観点があると思います。もちろん科学的なこともあると思いますし、それから様々な社会あるいは経済に関わるようなことがあると思うのですけれども、そういった専門性がある者が評価に携わるという順序なのではないか。もしかしたらこの資料を作る段階でこういった表現になっているのかとも思うのですけど、その2点、コメントをさせていただきました。

【室伏委員】
 ありがとうございます。もっと高邁(こうまい)なというのは確かにそうだと思うのですが、今回、実はこの検討委員会はある一定の期間だけ設置される委員会で、その中でかなり焦点を絞って議論してきたということがございます。本当は全てのことに対して提言ができる、そういう機関であるということは、皆さん重々承知はしているのですが、現在、国や様々な機関から要請されていることとして、こういった科学技術、科学技術政策、そういったものに対する評価に対して日本学術会議は何ができるかと、そういうことで議論を進めてまいりましたので、多少狭い議論になっているというふうに、私たちも思っております。ただ、今回はこれでまとめて、次のステップにまた別の、もうちょっと高いところの議論をというふうに思っております。けれども、それができるかどうかはまた皆さんと御相談しなければいけないのですが、是非もうちょっと高邁(こうまい)なところでというふうには思います。
 評価者の評価専門性の醸成、これは、日本学術会議として、事務局で調査分析をする、そういう人たちの専門性を育てて、そして働いていただくようにする。つまり、先ほど申し上げたアメリカでの例のように、そこで働いてくださる方の専門性を高めるという、そういう意味です。

【平野部会長】
 有本委員、どうぞ。

【有本委員】
 二つコメントがあるのですが、この委員会というよりも、日本学術会議全体の在り方なのかも分かりませんけれども、今のような委員の選出の仕方を含めて、日本学術会議の設置法が大きく変わって、もうそろそろ10年たつと思います。そのときに、今の体制を見直すという議論があったと思います。ですから、日本学術会議として自主的に総点検をするべき時期だと思います。その点について、まだ日本学術会議の中で動きがないことが気に掛かります。こういう貴重な提言を総括して、今の体制を日本学術会議全体として検討するタイミングなのではないでしょうか。
 これは一つの転機であり、総合科学技術会議は非常に政治に近いところにある一方で、日本学術会議というインデペンデントな組織がバランスをとりながら、車の両輪として機能するということになっていたかと思います。総合科学技術会議が去年6月に、「イノベーション総合戦略」を定めており、シンクタンクが連携して総合科学技術会議を支えてほしいというメッセージが出ているとも考えられます。このシンクタンクは、日本学術会議や、私も属しております科学技術振興機構研究開発戦略センター、それから、科学技術・学術政策研究所とか、いろいろありますが、なかなか連携しづらいのが現状です。実務的なところでの連携がなかなか継続できていないので、シンクタンクが連携して、しっかり日本の政策を支えることが重要です。
 第5期科学技術基本計画をどういう体制で作っていくのかも論点になると思います。私としては、文部科学省が日本学術審議会と連携して、ボトムアップで裾野の広い基本計画のドラフトを作った上で、それを総合科学技術会議に諮り、政治の観点も入れて作成していくという構造が良いと思います。しっかりしたボトムアップの素案がない状態で、総合科学技術会議では策定できないのではないか。もちろん日本学術会議も連携していただきたいと思います。
 いずれにせよ、シンクタンクがしっかり連携してほしいというのは、既に総合科学技術会議から要望が出ているわけですから、是非それらの点を上手に加味して動いていただきたいと思います。もちろん、科学技術振興機構研究開発戦略センターも協力をしたいと思っております。

【平野部会長】
 ありがとうございます。日本学術会議全体に向けた御意見でしたね。

【室伏委員】
 とても大事なことですので、持ち帰って検討委員会で少し議論をさせていただきたいと思います。現状のままでは、日本学術会議はいろいろな意味で衰退するのではないかという危機感を持っておりまして、日本学術会議の機能を強化するということをいろいろな委員会で話し合っております。ただ、有本委員の御意見にありました、連携していくという観点が今は少し足りないのではないかということを、また日本学術会議の皆さんにお知らせしたいと思います。ありがとうございました。

【平野部会長】
 よろしくお願いします。

【有信部会長代理】
 今、有本委員の御意見にありました日本学術会議の見直しの話は、意識はされていて、現実的に見直しのための委員会が組織されて、議論がスタートしました。現状では、会員の選び方というところまでしか議論できておらず、委員の中に確かに意識はあるのですが、なかなか思うように進んでいないというようなところがあります。建設的な議論に向けて、私も尽力したいとは思っています。
 それからもう一つ、日本学術会議は、政府の組織として組織されているというのが制約になっており、政府で決められた予算内で決められたことをやるべきだということになっており、事務員の雇用や外部の資金を導入が難しくなっています。そういう中で科学者コミュニティを代表するという役割をどう果たすのか、あるいは果たすことができるのかといった議論を本質的にはしていくべきだろうと思っています。日本学術会議の中でも意識が統一されているわけはないので、これからきちんと議論していきたいと思います。

【平野部会長】
 ありがとうございます。常々、私は、真の日本の科学技術・学術の司令塔が見えないことに危機感を持っています。いろんな場で皆さんに是非検討いただいて、また議論をしていただきたいと思いますし、本日の御意見は室伏委員から何らかの形で日本学術会議にお伝えいただければと思います。どうもありがとうございました。
 本日、主要の三つの議題について、皆さん方の御理解、御協力で審議ができたと思います。
 特に、これからの評価の在り方について、貴重なコメントを頂きました。これはまた事務局で体制に反映していただきたいと思います。
 それから、指針については、作業部会からはじまり、本部会において皆さん方の大変なる御尽力によって取りまとめることができ、文部科学大臣に建議できたということについて、部会長として皆さん方に感謝申し上げます。どうもありがとうございました。今後は、この指針を基に、私どもとしては粛々と評価部会としての評価そのものについて審議していきたいと思っております。
 それから、本日の決定事項については、後日開催されます親部会である研究計画・評価分科会に報告をいたします。
 最後に、事務局から連絡事項等ございますか。

【高橋企画評価課室長補佐】
 それでは、事務局から御連絡させていただきます。
 今回の議事録につきましては、部会運営規則にのっとりまして、議事録を作成し、先生方に確認いただいた後に、ホームページに公表させていただきます。
 それから、次回の部会については、現在、改めて日程を調整させていただきたいと存じます。
 以上でございます。

【平野部会長】
 どうもありがとうございました。
 これで本日の部会を閉会いたします。どうもありがとうございました。

 

―― 了 ――

 

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