研究開発評価部会(第42回) 議事要旨

1.日時

平成24年4月18日(水曜日)10時~11時15分

2.場所

文部科学省3F1会議室

3.議題

  1. 平成24年度の科学技術戦略推進費の公募及び審査について
  2. 平成24年度の科学技術戦略推進費の評価について
  3. 「安全・安心な社会のための犯罪・テロ対策技術等を実用化するプログラム」の平成24年度の再審査の進め方について
  4. その他

4.出席者

委員

平野部会長、室伏部会長代理、北澤委員、有信委員、有本委員、受田委員、大島委員、岡村委員、金子委員、小林委員、東嶋委員、冨山委員、西尾委員、福士委員、吉川委員

文部科学省

大山科学技術・学術戦略官(調整・システム改革担当)、奥国際交流官補佐、德成科学技術・学術戦略官付室長補佐

5.議事要旨

 部会長より、議題1について、運営規則第4条第3号及び同規則第5条第2項に基づき、会議を非公開とし議事録を非公表とすることが諮られ、部会において了承された。

○議題1

平成24年度の科学技術戦略推進費の公募及び審査について事務局より資料1-1~1-5に基づき説明を行い、審議の結果、平成24年度の科学技術戦略推進費の公募及び審査について、原案どおり了承された。

【平野部会長】 
 それでは、議題2「平成24年度の科学技術戦略推進費の評価について」の審議に入ります。

ここからは本部会を公開といたします。傍聴の方がお見えでしたら、入室をお願いします。(傍聴者入室)

○議題2 平成24年度の科学技術戦略推進費の評価について

【平野部会長】 
 まず、事務局より資料の説明をお願いします。

【大山科学技術・学術戦略官】
 お手元の資料2-1から2-4をごらんください。
 評価の進め方についてですが、まず、資料2-1は、昨年8月にお決めいただきました、実施プロジェクトの評価の進め方のペーパーでございます。これも昨年と同様でして、推進費による実施プロジェクトについて、中間、事後、そして追跡評価を行うということでございます。

 具体的な進め方につきましては、2ページ目以降でございます。評価対象プロジェクトとして、振興調整費、それから科学技術戦略推進費によるすべての実施プロジェクトを対象とするということに原則としてなってございまして、評価の仕方につきまして、評価時期につきましては、実施プロジェクトの実施中の中間評価、終了年度の翌年度に実施する事後評価、それから、実施プロジェクトがすべて終わった後、一定時間を経過してから波及効果等を確認するための追跡評価がございます。

 3ページ目にございますように、評価の方法につきましては、評価作業部会を部会の下に設置いたしまして、作業部会での審議の後、その作業部会の報告を踏まえて、部会において評価結果を取りまとめていただくということになっております。

 また、評価の観点・基準につきましては、3ページ目の下にございますように、科学的・技術的意義のみならず社会・経済への貢献に係る評価も含めて適切な評価を行うということになってございます。

 続きまして、お手元の資料2-2で、具体的に平成24年度の評価の実施につきまして、評価対象等について記載してございます。

 今回の評価対象プロジェクトは、51のプロジェクトになってございまして、お手元の資料2-2の真ん中に列挙されておりますプログラムのもとで実施されております51の課題、プロジェクトが対象になってございます。

 実施体制につきましては、プログラムごとに内容も異なりますので、7つの評価作業部会を設置するということでございまして、こちらも作業部会構成員は、基準にのっとり、評価部会長にご指名いただくということになっております。

 お手元の資料2ページ、3ページに、実施方法が具体的に記載してございます。被評価者において成果報告書を作成、そして事務局に提出いただいた上で、事務局、それから担当のプログラム・オフィサーのほうでの確認等を経まして、作業部会での作業を進めるということでございまして、作業部会におきましては、まず、書面査読を行って必要な事項を確認した上で、続きましてヒアリングを行うというところです。ヒアリングを経て、評価結果を作業部会として決定し、その結果を作業部会から評価部会にご報告しまして、評価部会において評価結果を決定するということになっております。

 3ページ目の下以降に、利害関係者についての記載もございます。

 5ページ目以降で、今回の評価対象になります具体的なプロジェクトが一覧にしてございます。

 また、7ページ目以降で、それぞれのプログラム、中間評価、事後評価もございますが、それらについての評価項目、評価の視点について、記述しているところでございます。

 最後に、15ページ目には別添ということで、作業部会委員の選定基準についても書いてございますが、専門性、多様性等を考慮して選ぶということで予定しております。

 それから、お手元の資料2-3をごらんください。評価スケジュールについてでございますが、本日の評価部会で実施方法をお決めいただきました後、7月中旬以降、評価作業部会を設置いたしまして、必要なご説明や、あるいは査読といった作業を開始いたします。9月中旬から10月にかけまして、実際の評価作業部会による評価を実施するということで、ヒアリング等も経まして、作業部会としての報告(案)をまとめるという段取りでございます。11月末から12月上旬にかけまして、この研究開発評価部会をまた開催いただきまして、そこで作業部会から評価結果をご報告して、部会として結果を決定していただくということでございます。また、最終的には12月上旬ごろに総合科学技術会議に報告した後、公表・通知を予定しております。

 それから、お手元の資料2-4をごらんください。今までの資料2-2が中間、事後評価についてでございましたが、2-4は追跡評価についてでございます。

 追跡評価というものは、プロジェクトの実施がすべて終わった後から波及効果、副次効果等を把握して検証を進めていくというものでございまして、24年度につきましては、1ページ目の最終段落にございますように、戦略的な人材養成を主眼として実施されました「新興分野人材養成」プログラムを対象としたいと考えております。このプログラムのうちの、平成16年度から17年度に採択されて21年度までに終了した32プロジェクトについて、追跡評価を実施するということで考えております。

 「新興分野人材養成」プログラムにつきましては、前半、平成13年度から15年度に採択されたものにつきましては、既に平成22年度に追跡評価の対象に一度しておりますので、今回は残りの後半部分について、前半での評価も踏まえながら、追跡評価の対象にするという案でございます。このプログラムは、非常に重要な領域ではあるけれども人材が不足している新興の研究分野、あるいは産業競争力の強化の観点から人材養成・拡充が不可欠な分野において、専門的な研究者・技術者を早期に育成するということを念頭に置いたプログラムでございます。

 資料の2ページ目をごらんいただきますと、今回の追跡評価のやり方について記載してございますが、このプログラムの果たした役割、成果を明らかにし、また、今後のプログラム設計、評価手法に関する改善事項を分析・提案できるように努めたいということで考えております。

 また、2ページ目の一番上のほうにございますが、追跡評価の結果につきましては、総合科学技術会議にご報告をして、今後の科学技術戦略推進費の制度運用にも生かしていただくとともに、将来の政策・施策の形成、研究開発マネジメントの高度化のために生かしていくために実施したいと考えております。
 
 2ページ目から3ページ目につきましては、対象プログラムについての概略が記載してございます。対象プロジェクト数32ということで、分野等につきましては、2ページ目の下にございますような分野にわたっております。

 3ページ目の真ん中あたりから、追跡評価の方法について記述がございますが、やり方といたしましては、新興分野の人材養成ユニットといったものが大学等で創成されたわけですが、それらが継続・発展しているかどうか、あるいはネットワークがきちんと構築されているかどうか、さらには、大学教育、社会へのどういったインパクトがあったかといったことを検証していくということで、聞き取り等による予備調査に加え、アンケート、インタビューなどを通じて検証していくということを予定しております。

 4ページ目をごらんいただきますと、実施者、スケジュールについて記載がございますが、実施については担当のプログラム・オフィサーに進めていただくということでございまして、スケジュールといたしまして、本日、方法をお決めいただきました後に、アンケート等を順次実施いたしまして、秋、10月ごろをめどに報告書を作成して、最終的には、11月下旬から12月上旬にこちらの研究開発評価部会にご報告して、決定していただく段取りでございます。

 以下、5ページ目以降、実施プロジェクトの一覧、公募要領等をご参考でつけてございます。

 以上でございます。

【平野部会長】
 ただいまの説明について、ご質疑、ご議論いただきたいと思います。
 いかがでしょうか。

【有本委員】
 今ご説明があったとおりだと思いますが、研究のファンディングのわりと現場の近くにいるものですから、いつも事後評価とか、あるいは追跡評価で、実施者側といろいろ議論するときに不満が出るのが、何のためにやっているのかということです。そのため、今、将来の様々なファンディングの改革のためであると抽象的に言われましたけれども、自分たちの個別のプロジェクトについて何かできないか、というのが結構ある。

 評価をするときには、常に何のためだということが繰り返し問われていて、もう少しそこを実質的なところで考えることが必要ではないかと思います。総合科学技術会議、この場だけじゃないと思いますけれども、その辺についてもう少し動かないと、いかにも評価のために評価をやっているということになるのではないかと思います。

【平野部会長】
 大変重要なご指摘だと思います。ご指摘いただいたことについて、事務局、何かありますでしょうか。

【大山科学技術・学術戦略官】
 おっしゃるように、我々もそういったお声は現場からよく聞くところでございます。ですから、一般論でございますが、次の別のプログラムに応募するときに、前のプログラムでいい評価を得たら、それがプラスポイントになるとか、次のプログラムを考えるときの、申請に当たって何らかメリットがあるとか、そういったところも考えていかないといけない点かと思っております。

【有信委員】
 今のポイントは非常に重要だと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

 それと、評価をやっていていつも気になるのは、詳細に評価項目が定められていて、項目ごとにS、A、B、Cという形になっているのは非常に親切なのですが、書面評価でこれをやっていくと、結局は、ある意味で定形パターンに入ってしまうというか、形式的な外形上の評価のパターンになっていて、これをより実質的にしようと思うと、今度はヒアリングというのが非常に重要になるんですね。

 特にヒアリングについても配慮されていますが、ここが何とかならないかと思うのは、例えば現地でヒアリングをして、東京に出てきてもらってヒアリングをすると、それぞれで非常に違う印象があるケースがあるわけで、ここについては、やはり評価に対しても、ある程度の費用と時間をかける必要があると思います。特に中間評価については、より実質的な評価になるような部分への配慮が必要だと思います。もちろん書面上の評価も重要ですけれども、そういう直接的な評価のところで、ぜひ配慮をお願いしたい。

 その後の追跡評価については、アンケート等々に大分工夫をしていただいているようですが、特に中間評価というのは、その先の結果に大きく影響してくるものですから。

【平野部会長】
 そのほか、いかがでしょうか。
 
 部会長からあまり言ってはいけないと思うのですが、例えば、今度の戦略推進費については、評価結果の反映が難しい問題だなと思っております。以前、内閣府から出された評価の大綱的指針に基づき、文部科学省の評価指針について、第3期の研究評価部会において取りまとめたのですが、そのとき、継続的なプログラムを動かすときに、どの時点で評価結果を反映させていくのかという議論がありました。

 今度の戦略推進費の公募プログラムも、昨年採択課題を決定してプロジェクトが実施されましたが、その評価がないところでまた審査をして、結論を出して動かなければいけないということで、例えば昨年の報告書を読んで審査をすることもあるだろうと思いますが、特にプロジェクトが継続したときに、1期ずれてしまった評価で打ち切るとかではなくて、できれば今年の決定のところでも、何らかの形で、評価の前段階で生かすことができれば、今の有信委員のご意見も反映されてくるのかなと。 ただ、今までの例でもありましたが、第三者の委員の方々がきちっとご指摘されるところは、プロジェクトを実施している本人たちからすると非常に参考になることも多いものですから、そこをうまくバランスをとってやっていただければと思っております。

 どうぞ、西尾委員。

【西尾委員】
 中間評価のときに、おのおののプロジェクトを最初に選んだときの選定委員と中間評価を行う委員が異なっている場合が往々にしてありまして、そこでまた、新たな要望をどんどんおっしゃられる場合があるんですね。これは、プロジェクトを実施する側にとってはなかなか厳しいことでして、この辺の一貫性に関しては十分配慮いただきたいと思います。

【平野部会長】 
 今の点について、評価の委員はなるべく選考時の委員を引き継ぐということになっていましたよね。

【大山科学技術・学術戦略官】 
 はい。なるべく審査いただいた委員と同じ方に、評価もしていただくというふうにしております。ご意見いただいたように、後出しでどんどん評価基準が変わってくるようでは実施者の方も非常にお困りになると思いますので、その辺は重ねて配慮したいと思います。

【室伏部会長代理】
 今の西尾委員のご意見と似たようなことですが、JSTの担当者の方、PO、それから、実際にプログラムを動かすときにかかわってくださった方たちが、審査にもできるだけかかわるという形にしていただくと、短期間の審査だけではわからないさまざまな事情がそこで浮き上がってきますので、できるだけそういったことにも配慮いただきたいというふうに思っています。

【平野部会長】 
 よろしくお願いします。

【岡村委員】 
 追跡評価についてですが、私も現場を十分理解しているわけではないのですが、多分、代表者の方がいなくなっていたり、ユニット自体がもうなかったりするような場合もあるという、難しさがあるかと思います。しかし、人材養成のプログラムであるだけに、その後の人材の行く末というか、どういう形になっているのか、ぜひ何か形にしていただいて、実名を出して良いのかどうかわからないですが、実際の事例が集まり、広く共有できるような形になれば、今後、人材育成のプログラムをつくっていく上でも参考になるかと思います。ただ、やり方がすごく難しいなと感じるところも、一方ではあるのですが。

【大山科学技術・学術戦略官】
 ありがとうございます。そういった点に留意して進めたいと思います。

【平野部会長】
 そのほかございませんでしょうか。

 ありがとうございます。それでは、平成24年度科学技術戦略推進費による評価の実施について、それから、追跡評価の実施については、提案いただいた本案どおり決定するということで、今後の評価を進めていきます。

○議題3 「安全・安心な社会のための犯罪・テロ対策技術等を実用化するプログラム」の平成24年度の再審査の進め方について

【平野部会長】
 続きまして、「「安全・安心な社会のための犯罪・テロ対策技術等を実用化するプログラム」の平成24年度の再審査の進め方について」の審議に入ります。

 まず、事務局より資料の説明をお願いします。

【大山科学技術・学術戦略官】
 お手元の資料3をごらんください。本プログラムにつきましては、例えば警察庁、防衛省などのユーザー官庁のニーズを踏まえて、出口のところで、例えば爆発物の検知等々、実際に実用化できるということを目指しているものでございますので、実施の中間年で、きちんとその方向に沿った開発が進められているかということを確認するべく、再審査を行うという制度設計になっております。

 今年度は、22年度に開始しました9つのプロジェクトにつきまして、5年の実施期間のうちの3年目の中間年に当たりますので、再審査を行うということでございます。これにつきましては昨年度、3年物のプロジェクトの中間年、2年目ということで、2プロジェクトについて再審査を行っていただいておりますので、基本的にそれと同様のやり方を踏襲してございます。

 スケジュールについてですが、本日、実施方法をお決めいただきました後、実施者に再審査の資料を作成していただきまして、秋に入りましてから作業部会を設置して、10月中旬から11月上旬をめどに、作業部会を開催し、資料の確認とあわせてヒアリングを実施いたしまして、審査結果を取りまとめることを予定しております。そして、11月下旬から12月上旬の研究開発評価部会で、作業部会のほうから結果を報告いたしまして、その後、総合科学技術会議にご報告をして、公表という段取りで考えております。

 お手元の資料1ページ目の下から、実施体制について記述してございますが、作業部会を設けまして、こちらの作業部会につきましては、やはり基準にのっとりまして部会長にご指名いただくということでございまして、作業部会のほうから再審査の結果を部会にご報告、そして部会で決めていただくという段取りでございます。

 再審査の基準につきましては、お手元の資料2ページ目の下にございますように、特に平成22年度に公募したときの選定基準に沿って再審査を行うわけでございますが、達成目標(ミッションステートメント)の達成の見込み、それから実証試験の見通しについて、特に重視して審査をするということでございます。

 具体的な再審査対象プロジェクトにつきましては、お手元の資料の6ページ目に記載がございます。こちらにございますような9つのプロジェクトについて、今回、再審査を行うということで予定してございます。

 簡単ですが、以上でございます。

【平野部会長】
 ありがとうございました。昨年も行ったものでありますが、今年度、提案のあった項目について再審査を進めたいということであります。

 意見がありましたらお願いします。

【冨山委員】
 意見というよりはコメントと質問ですが、これはもともとの表題として「安全・安心な社会のための」という設定がされていて、安全というのは、ある意味、客観的な状況を説明する言葉なのですが、安心というのは主観的心理状態を表現する言葉となるわけで、それを目的関数として政策設定をすると、東大法学部的に言うと、プログラムの評価として、果たしてこのプログラムは、いかに心理的安寧を国民に向かって言うのが評価軸になるわけで、そもそもそういうのを政策目的にすること自体がどうかな、と個人的には思っていたりもするんですが、要は国民の心理とか主観にまで立ち入るというのは全体主義になってしまうので、私は基本的に、この言葉の使い方に対してそもそもネガティブなのですが、そういった主観的な要素は評価項目には入っていないんですよね。要するに、安全性というものを客観的に評価する観点でやられているんですよねという確認です。

【大山科学技術・学術戦略官】
 おっしゃるとおり、安心という心理的なところまではとても立ち入り切れないということがあります。そういう意味では、おっしゃるように、安全・安心と一くくりで安易に使ってしまっている面があるのかと思うのですが、基本的には、安全な社会を実現するためということで、実際、評価の基準になってまいります。お手元の資料で申しますと、5ページ目に、22年度に公募をしたときの選定基準が書いてありますが、要は、きちんと目的とした技術が開発されるということを念頭に置いておりますので、そういう意味で、確かに心理面といったことまでは、必ずしも指標にはなっていないというところでございます。

【冨山委員】
 安心しました。

 それと1点、「安全」と「安心」という単語、英語はどういうふうに使うのでしょうか。「安全」がセーフソサエティーというのはわかるんだけれども、「安心」は、カンファタブルソサエティーとか使っているんですかね。

【大山科学技術・学術戦略官】
 公式の英語表記は私も見たことないのですが、説明資料等ではセーフ・アンド・セキュアといった記載になっているかと。

【冨山委員】
 それは「安心」を意味するのか疑問ですが。

【大山科学技術・学術戦略官】
 そうですね。ほんとうにふさわしいのかどうか、というのは、正直、定まった訳語が今の時点ではないということです。

【冨山委員】
 わかりました。安全が保障された社会みたいな言い方になっているんですね、セキュアだから。

【大山科学技術・学術戦略官】
 そうですね。安全であることで、結果として安心も得られるという程度の使い方かと思います。

【平野部会長】
 大変重要なところで、指標についての問題にもかかわってきますが、今のところ、評価指標上では、そこまで立ち入っていないという理解ということです。

 そのほか、いかがでしょうか。

【金子委員】
 今の議論について、冨山委員の言うとおりで、だれが使い出したかわからないですけれども、我々も申請書を書くときに、安心・安全と言わないと、何か足りないのでは、ということになるのですが、私も2つは全然違うと思っています。

 しかし、例えばですけれども、私が実施している気候変動のプロジェクトの場合には、緩和策と適応策というものがあり、緩和策のほうは、例えばCO2がどのぐらい減ったかとか、エネルギーのピーク時がどのぐらい削られたかということではかるわけですけれども、それ以外に、技術的なものをどう使うかという適応策についても対応する必要がある。フィールドにおける自治体の住民が安心する、というのは評価基準にならないとしても、どのように自分たちからそのことに対して貢献できるかというのは、重要な要素になるかと思います。緩和策は上からおりてくる技術的なものですが、それをどう使うかということはプログラム単位で一つの目標を掲げていると思うので、そういう意味では、安心の評価じゃないですが、それぞれの自主性、自主的な適応策ということに、エンジニアリング的な安全だけではないものも含まれているということを意識する必要がある。

 特にテロなんかの場合にはそういうこともあるので、こういう議論をもっとしていただいてから、安心・安全という言葉を使っていただければいいのですが、そういう側面もあるということで、コメントだけさせていただきました。

【平野部会長】
 ありがとうございます。そのほか、よろしいでしょうか。

 「安心」という表現について議論はございますが、少なくとも評価においては、指標として「安全」を中心に評価をしていくということであります。

 それでは、「安全・安心な社会のための犯罪・テロ対策技術等を実用化するプログラム」の平成24年度の再審査の進め方については、本案のとおり決定して審査を進めることさせていただきます。ありがとうございます。今後の対応として、事務局のほうでもご意見を参考にし、発展させていただければと思っております。

○議題4 その他

【平野部会長】
 続きまして、有本委員から、「政策形成における科学と政府の役割及び責任に係る原則の確立に向けて」という資料を出していただいております。この資料について、有本委員からご説明いただきたいと思います。

【有本委員】
 資料4をご覧下さい。これは2年半ぐらいかけてまとめ、4月の頭にやっと印刷物として公表したものでございます。

 背景は後からお話することにして、2ページ、3ページをお開きいただきますと、科学と政府――政府という意味は、ここの場合には議会、国会でありますとか、あるいは行政府ということで割り切ったほうがいいんじゃないかと思ってございますけれども、この両者の関係というのが、特に3・11以降、日本において非常にいろいろな問題を起こしたのではないかということで、実はその前から、いろいろな調査活動はしていたんですが、急遽、研究開発戦略センター、私、副センター長を務める研究開発戦略センターでセンター長の吉川弘之先生にご相談しまして、少し政策提言をしようということになりました。

 そこで、科学者だけでなく、政治家にもいろいろ働きかけて、両者の構造について、きちっとしたものを成熟させておかないと今後非常にまずいのではないかということで取りまとめたものでございまして、2ページと3ページに、原則試案ということで10項目ほど上げてございます。

 2ページの中段から下のほうに太字で、「政策形成における科学的助言の位置づけ」とあり、4行ほど書いてございますけれども、政府と科学者とか、政策形成における科学的知識というものが今や非常に大事になっているということで、これを政府側はきちっと尊重する必要がある。一方では、科学的助言をする側は、科学的知見が政府の意思決定の唯一の判断根拠ではないということを了解しておかないといけない。財政の問題とか、国際情勢とか、あるいは心理学的な問題、さまざまあるわけでございます。これはさまざまな国で調査をしまして、アメリカにおきましても、イギリスにおきましても、こういうのがきちっと書いてございます。

 2番目は、的確、タイムリーな助言を得る必要があるだろうということ。これは政府側の義務といいましょうか。

 3番目が、科学的助言の側の独立性の担保。

 右のページに行きまして、4番目に、助言者側の責任の自覚ということでございます。さまざまな問題が3・11以降、起こったわけでありますけれども。

 5番目が、バランスの問題ということを上げてございます。

 6番目が、助言の質の確保と見解の集約というふうに、あえて「集約」という言葉を入れてございます。これは、作業途中でワークショップとかシンポジウム、あるいは各国の方々と議論したときも、いろいろな問題にユニークボイスというのは非常に難しいのではないかということもありますけれども、あえて見解の集約と。やはりその立場、例えば学術会議とか各学会というものになれば、こういうことを常に考えておく必要があるだろうということでございます。

 7項目は、現代の、特に不確実、あるいは多様な状況の中での取り扱いというものについてですね。

 それから、科学的知見の自由な公表。

 9番目が、助言の公正な取り扱い。

 10番目が、透明性の確保ということを上げてございます。

 いきなり中身を、10項目を申し上げましたけれども、28ページをお開きいただきますと、検討経緯を書いてございます。先ほど少し触れましたけれども、これは3・11の前から、私どもの研究開発戦略センターのほうで、どうも科学と政治、あるいは行政が、今から相互作用、どんどん接近していく。その場合のルール、従来の研究のミスコンダクトを防ぐようなものではなくて、研究のコミュニティーと外側、社会、あるいは政治、行政との相互作用、この中でのルールというものをきちっと日本でもつくり、成熟していく必要があるのではないかという観点で、かなり長く調査をいたしました。

 その後、3・11以降のことを、特にここに書いてございますけれども、3・11以降は特に意識的に海外の方々、先週も来ましたけれども、イギリスの首相の科学補佐官のベディントンさん、それから、そこにずっとありますけれども、ベディントンには2回にわたって、先週もいろいろ議論しましたけれども、それから、『nature』あるいは『Science』の今、編集長をやっておりますフィリップ・キャンベルとかブルース・アルバーツとも話をいたしました。ブルース・アルバーツは今、『Science』のエディターですけれども、以前のアメリカの科学アカデミーの総裁という立場からのいろいろなコメントもいただきました。それから、去年の11月7日には、今、アメリカのNOAAの長官をやって、前の国際科学会議(ICSU)の、吉川先生の後の会長でありますけれども、ルブチェンコが来ましたので、そのときもシンポジウムをやっております。

 それから、最後のほうで書きましたけれども、この問題は意識的に、ルールをつくればそれで済むということではないだろうということで、日本学術会議の幹事会、学術会議の総会、総合科学技術会議の有識者会合というところでもいろいろご議論をし、この途中段階では、シンポジウムには政治家も招いて、いろいろ議論するということもやってきた次第でございます。

 少し前に戻っていただきまして、6ページと7ページでございます。この問題は、海外でもこの20年間ぐらいは非常に悩みながら、かなり今、動いているという状況でございまして、6ページの左上のほうには、先生方ご存じのように、ブッシュ政権のときにはさまざまなクライメートチェンジの問題、あるいはステムセルリサーチの問題、あるいは進化論の教育の問題ということも含めて、かなり問題があったのではないかと言われているわけであります。オバマ政権になってからも、メキシコの例のガルフでの原油の流出事故ではいろいろな問題が起こったようであります。それから、ご記憶かあると思いますけれども、IPCCでもデータの扱いというものについて、一定のバイアスがかかった扱いをしたのではないかという疑義が生じました。こういった現状を受けて、中段から下に書いてございますけれども、オバマ政権になってから、加速度的に大統領府でホルドレンがイニシアチブをとりながら、各省がそれぞれガイドラインをつくるという段階に今、来てございます。

 それから、イギリスも同じく、特にBSE問題で非常に科学の不信というものが、一般の国民、あるいは政治の側から出てきたということがありまして、2010年になりまして行政側、ビジネス・イノベーション・技能省が、「政府への科学的助言に関する原則」という非常に啓発されるガイドラインを出してございます。

 次の7ページの右上にありますが、ドイツも、そういう状況を踏まえまして、非常に緻密にいろいろ調査し、議論した上で、ベルリンの科学アカデミーがルールをまとめてございます。

 それから、私ども今、注目していますのが、国際科学会議(ICSU)、それからインターアカデミーカウンシル(IAC)が今年の秋に、研究の公正及び科学の責任、”Research Integrity and Scientific Responsibility”というプロジェクトを立ち上げて、秋までに全世界の科学者に使えるような教育的な教材をつくるということまで動いてございます。

 それから、もう一つ注目していますのは、今年の5月、もうすぐでございますけれども、アメリカのワシントンで、これはNSF長官のスレッシュが主催しまして、グローバル・メリットレビュー・サミットというものをやりました。これは多分、途上国のいろいろな問題、ミスコンダクトなどが起こっていますので、ピアレビューシステムの機能不全とかそういうのが中心になりますけれども、もう少し広く、ガバメントとの相互作用というところも話題になるようでございます。

 これは、実はそれの原則的なものを書きまして、今後、特に日本学術会議とは相当綿密に、大西会長も含めていろいろ議論をさせていただきまして、学術会議で受けとめてもらって、議論を詰めてもらうという段階かなと思ってございます。

もう一つは、これはルールをつくるだけじゃなくて、一種の科学者の文化みたいな、マインドセットみたいなところもありますので、各学会でも要所、要所で、年会などでご議論いただくということで今、考えている次第でございます。

 どんどん詰めていきますと、それでは、我々も一種の助言者なんですね。それから今度、政府部内で常勤的に入っておられる方々、さまざまなポジションがあるものですから、それによって緻密に詰めていくとルールが微妙に変わってくる。それから、各国も政治体制、それから政治の、あるいは行政のデシジョンの体制が違っていますので、それによって微妙に違うところがあるわけでありますけれども、それを詰め出すと切りがないものですから、一度原則的なものでたたき台を出しまして、さらに次の段階に行くということで、アメリカはそういうふうにやっているわけでございますけれども、少し長くなりましたけれども、以上でございます。

【平野部会長】
 どうもありがとうございました。大変貴重なご意見をまとめて出していただいておりますが、今お話を伺った段階の内容で結構でございますが、有本さんにお聞きしたいことがありましたら、どうぞ。

【西尾委員】
 有本委員のほうで、こういう内容をきっちりまとめていただけているというのは、私は、科学技術政策の上で、日本として政策的にきっちりやるという観点からも、非常に有意義なことだと思っています。

 その上で、1つ質問させていただきたいんですけれども、例えばここで論じられていることをファンディングの観点で考慮した場合、ここに書かれているようなことは、例えば課題解決型の課題の設定であるとか、あるいは文部科学省でいいますと、戦略目標の設定であるとか、そういうところに生かされていくべきものとして、この議論が重要だということで考えてよろしいでしょうか。つまり、いわゆるボトムアップ的に実施する研究である、例えば科研費のようなものは少し違うという理解でよろしいでしょうか。

【有本委員】
 私は、ここでもよく議論されますけれども、科学技術政策のトップのポリシー、デシジョンのレイヤーと、それから、各省の施策のレイヤー、ファンディングのレイヤーとさまざまにあると思うんですね。その中で、今、西尾先生がおっしゃったファンディングのレイヤーとして、個人的には、さまざまなイノベーションの長いパスの中で、ファンディングのポジショニングはプログラムが違うわけですから、ブルースカイ型のキュリオシティードリブンというものに、こういう考え方が入ってくるというよりは、むしろ今の第4期科学技術基本計画で、あれだけ課題解決、イシュードリブンということが言われていて、これを発想したのはそれも背景にあるわけです。そのときに、イシューはだれが見つけるのか。政治家を通して社会から来るんじゃないかと。

 それを科学がどう受けとめるのかというような、最初のイニシエーションのところからきちっとこういう構造をわかった上で、両方で議論することが重要だということだと思います。なかなか直接の回答になっていないかもしれませんが。

 1つ、非常に印象深い、極めてシンプルで政治家にもわかりやすい絵を入れておきましたので、ちょっとご紹介しておきます。13ページをお開きいただきますと、上のほうに絵がかいてありますけれども、図8「科学と政策の価値観の相違と連続性」、実はこれは去年の11月に福島の原発のシンポジウムで、アメリカの科学アカデミーのCrowleyという局長が来られまして、彼と議論をし、シンポジウムでも議論したときに、Crowleyさんがアカデミーの、大体こういうものだということを言っていましたので、あえて彼にも了解を得て出したんです。

 当たり前のことですが、左側のサイエンスはオブジェクティブである。右側のポリシーをつくる政治家、あるいは行政、組織は非常にノーマティブである。ある一定の価値にこちらは志向する。このグラディエントが大事で、しかし、相互に尊敬しながら、それぞれの案件ごとに、どこにポジショニングがあるか、また、時間軸によって変わってくるところがあるんだと思いますけれども、こういうことをよく両者が、政治行政も、それから科学の側も了解をした上で、議論をしてといいましょうか、案件を詰めていくということが大事なのではないかと。

【西尾委員】
 例えば戦略目標なんかのときの戦略という言葉は、私はバックにフィロソフィーがあるべきだと思っていて、戦術とは違うので、そのとき、今おっしゃったポリシーから、何かフィロソフィーなり、基本となる考え方が導かれて、それで目標が設定されていくということを考えると、やはりここの議論というのが最後の段階へ行くと、ファンディングのところにもうまくつながっていくといいなというのが一方ではありましたので、どうもすみません。

【平野部会長】
 ありがとうございます。

 ほかに。どうぞ、北澤委員。

【北澤委員】
 今の西尾委員との議論の件ですけれども、ここでの議論はどちらかというと、例えば日本では、学術会議なんかはどういう形で現在、存在しているかというと、その存在意義は、総合科学技術会議のほうで政策を決めていくので、学術会議に要求されるものとしては、何かいろいろあったときに、最後のよりどころとしての良識がそこに行くとあるんだというような感じの存在意義を現在は持っているのかと思うのです。

 そのときに、有本委員の今回の報告書について、これから質問です。科学者コミュニティーに対して、現在の科学をだれかがインタープリットしてくれるとしたらどういうふうになるのかということを要求されるのか、それとも、科学者が政治家にもなって、政治にまで立ち入って、例えば今、具体的には、原発は安全なのかどうか、それから、低線量被曝はどこまで、何ミリシーベルトまで許されるのかといったようなことを、科学者の側から20ミリシーベルトにしなさいとか、そういったことを進言するのがここでの目的なのか、それとも、現在の科学ではこういう状況になっていて、こういうところはこういうことでよくわかりませんとかそういったたぐいのことを、今わかっているベストのインタープリテーションはどうなるのか、そこを求めるのかという、ここでユニークボイスというのが、非常に大きな差が出てくる。

 それとともに、その助言というのは、ここに透明性とか民主的とか書いてあるんですけれども、そのインタープリターとなるユニークボイスを最後に発する人というのは、そのときに民主的、透明にあるプロセスを経て決めていって、それをユニークボイスとして持ち上げることをこれは考えているのか、それとも、いろいろな会議に出席したりして、その人も十分な知識を得て、その上で、その人が決めるといったことを考えているのか、ここのところがどういうお考えかということを、あるいは、どういうことがいいと今まで考えられているかということについて、ちょっと言及していただきたいと思います。

【有本委員】
 こういう議論をあちこちでやりたいということで、あえてこれをたたき台ということで出したわけでありまして、私どももしっかり回答があるわけじゃないんですけれども、2つほどお示ししておきたいと思います。

 6ページの図2に、これはイギリスのビジネス・イノベーション・技能省がつくったものを図にしたものでございますけれども、左側が、「政府機関」と書いています。右側が「科学的助言者」。今の北澤先生の話のように、科学的助言は、さまざまな立場があると思いますけれども、少し一般論でありますけれども、科学的な助言者というのは当然、独立性、学問の自由、専門家としての立場、専門知識、これが政府側から尊重される。それから、下にありますように、政治的な介入とか先入観を持った判断というものからは排除されているということの上で、政府側が、真ん中の両方の丸印みたいなものが大事だと思いますけれども、民主主義的な政策形成は、科学は考慮すべき根拠の一部にすぎない。ただし、政策決定が科学的助言と相反する場合には、その理由を公式に説明する。根拠を示す。

 例えばちょっとこれ、語弊があるかわかりませんけれども、3・11のときに直後ぐらいから、今、北澤先生がおっしゃいましたように、小学校の校庭を20ミリシーベルトにするのか、どうするのかということで、政府部内に入った参与が、自分の理論とは違うからやめたということがありましたね。ああいうときに、こういう構造がちゃんとわかっているのか、あのときは、その先生は自分の学理と違うからということでやめた。政府側は見解の相違だということで、何も言わなかった。ああいうのが一般の市民に見える形になっているということが、非常に不信感を呼んだ一つの例じゃないかと私は思ってございます。ちょっと個人的な見解が入るんですけれども。

 もう一つの例を申しますと、49ページに、ドイツのベルリンの科学アカデミーが2008年にまとめた「政策助言指針」がございますが、ここに非常にドイツらしい表現がありまして、四角で囲った前文の第3パラグラフがございます。「この指針は」云々という大きなパラグラフの中段のところから四、五行ありますけれども、「科学的政策助言における知識と、学術的な知識とは同じものではない。科学的政策助言における知識は学術的知識を超えるものである。なぜなら科学的政策助言の知識は、科学的な基準を満たした上に、さらに政治的に効果のあるものでなければならない」、「この指針は、ドイツにおける政策助言の文化を形成し、政治に対する提言や助言のエトスを生み出すための原則になると理解している」。

 非常にドイツらしい表現だと思いますけれども、しからば、これを踏まえて、さっきの北澤先生の質問にはまだ十分答えられないと私は思っています。一体だれが決定するのかということ。3・11当時を思い出したとき、気象学会長、あるいは地震学会、あるいはそれぞれの大学の所要のところが、どういう判断を行ったのか。政策形成における科学と政府の役割及び責任について、何の前提もないままに、いろいろな判断をされたものが非常に影響したことは確かではないかと思います。

【北澤委員】
 ということは、誰がどこまで決定するか、という部分について、この提言では、あまりちゃんと決めていないというか、こっちが必要というようなことを、まだ考えて言っておられるわけではない。

【有本委員】
 はい。

【北澤委員】
 私、一番悩む部分は、科学的なことだけを言う、これは科学者にはできるわけですけれども、そこに経済的なこととか、政治的にやり得るのかとか、あるいは行政的にあまりにも大変かとか、そういったある種の価値観も加えて、それで、では20ミリシーベルトがとか、そういったことを学術会議から提言せよというようなことを言っておられるのか、それとも、科学的なことをきちんとまず言ってくださいということであるかということによって、これの重みというか、大変さというか、ものすごく違ってくるだろう。

 ですから、その価値観を加えた、科学者の知識にプラス価値観を加えて言えということになると、それなりのことを考えなくちゃならなくて、そうなると、今度は決定プロセスというのがものすごく重要になるし、さらには、文書で公に提言、あるいはサジェストしなさいということであるのか、それとも言葉で、後でわからないような日本的な形でアドバイスするのか、その辺も非常に大きく問題になってくると思うんですね。

 だから、これが今、例えば非常にフランクに申し上げれば、低線量被曝の問題なんかにしても、一番困っているのは、政治側からすれば、科学者のほうから20ミリシーベルトとか何か言ってくださいよと。そのほうが我々とっても楽なんですという、早く言えばそういう面がないわけじゃない。ところが、科学者の側からは、どう考えても決めることはできないわけですね。経済的なこととか何らかのことが、ファクターを考えなかったら、科学だけでは決められない。

 そのときにどうするのかという問題を、これは含んでご提言になられるんだと思うんですけれども、そこが一番微妙な、しかも重要なポイントかなと僕は思っているので。

【有本委員】
 さまざまなケースでの運用の問題はありますが、私がベディントンらと話をしたときに思いましたのは、政府から独立した科学アカデミー等の機関におられる方々は、やっぱり科学の知識で提言するということでいいんじゃないかと思います。しかし、政府部内にいる科学者、アドバイザー、常勤的にいる方については、きちんとそういうことを踏まえて、さまざまな政治的なものとか、それで進言をしていく責任があるのではないかと思っています。

【平野部会長】
 ありがとうございます。まだ大いに、この点についてだけでも、どこかで議論をしなければいけないところだと思います。

 別の会議でもたまたま似たような議論がありまして、科学者は、そもそもの科学的背景に基づいた提言と、今、北澤委員も言われた、科学政策者の立場というものの関係がある。科学者そのものの提言は、その判断の一つである。尊重はするけれども、判断の一つであり、政治的、経済的等々の背景を踏まえて、政策者としては決定をする。しかし、そのときには、きちっとその背景を説明すべきだということが一つありますが、同時に、科学者がといいますか、政策提言者の中に入り込んで、どこで責任をどうとるのかというところがあいまいにならないようにするということが非常に重要でありまして、科学者そのものが科学的知見に基づいて提言したことが、その時点でベストの提言をしたことが責任問題になるということを非常に危惧するという点もありまして、まだそこでも結論が出たわけではありませんが、いろいろな意見があります。

 せっかくまとめてくださっておりますので、この委員会で一つの課題として取り上げるだけでなく、総会なり何かで、しっかりと議論していかなければいけない問題かなと思っておりますし、総合科学技術会議がどういう立場をとって、どういう司令塔になるのかということにもよってくるのかと思っております。

 今日は、有本委員からこういう戦略提言があったということと、それから大変貴重な議論をいただいたということで、必要な場合にはまた、ここの評価にもかかわってきますので、議論ができればと思っておりますが、ほかにご意見ございましたらどうぞ。

【冨山委員】
 別の視点で、私は社会科学・人文科学系の人間なので、これは先ほど出た、やや安全・安心とかぶる議論の部分もあり、先ほどの金子先生の話はもっともだなと思って、安心に入ると、実はノーマティブな議論が入ってくるんですね。

 まさにこういう話は、社会科学・人文科学でも同じ問題があって、自然科学はやっぱりすごくまじめだとつくづく思ったんですけれども、社会科学の分野では、結構、いいかげんな提案をして、いいかげんに責任をとらない人がいっぱいいるので、願わくばこういう議論を社会科学の人にもちゃんとやっていただきたいなというふうに思います。

 例えば今の日銀の政策委員の問題とかというのは、まさにこの問題なんですよ。要は学者を選ぶときに、ある種、変な議論が今、日本には入ってきているので、私も少し気をつけて、社会科学としても問題提起をしていきたいと思っています。

【平野部会長】
 ありがとうございます。科学技術の基本問題の委員会でも、自然科学と人文・社会科学との、真の融和をどうとって、どのような連携をとるべきであるかという議論もありますので、ぜひ共通的な問題としても、こういう核になる議論はしておく必要があると思います。

 この部会においても、通常の評価等々の議題に追加できるときには、もう一度、議論を詰めていきたいと思います。

 こういうことで一番大事なのは、どこへ提言をして、どういう認識を持ってもらうのか、これが非常に重要だと思いますので、総合科学技術会議の有識者の委員の方々にも意見を聞かれているようでありますが、ほんとうの意味の科学技術政策の責任を持った司令塔はどこであるかということを踏まえて、また議論を進め、あるいは提言を打ち出していただければと、部会長としては望んでおります。

【金子委員】
 1点だけいいですか。まず、こういう提言が出てきたことは大変すばらしいことだと思います。今、部会長がおっしゃったとおりなんですけれども、でも、ほんとうにちゃんと理想的な形で政策に反映される、ないしは制度ができるということは、我々の力ではなかなかそこまですぐには行けないと思います。

 ただ、今、世界が日本に注目しておりまして、例えば中国では親日のものが非常にたくさん出ている一方で、日本の科学技術に対する不信感というのもある。これは科学技術だけの問題じゃないんですけれども。

 私が言いたいのは、「こういうふうになった」ということを今、見せることはなかなか難しいんですけれども、「こういうことをやっている」というプロセスをしっかり見せられれば、日本もぐずぐずにやっているのではないというのが分かるのではないか、それがどのぐらい政治的なプロセスへ反映されるかについては、これからみんなでやっていくと思いますけれども。実は私、気候変動のプロジェクトを実施していますが、宮古の震災の医療システムにずっと携わっています。気候変動と災害とは、ちょっと違うんですけれども、かなり重なっているところもあると思いますので、これは中間評価とは関係ないんですけれども、そういうものもやっているということを、私なりに科学技術の一つの社会への適用と思っています。

 つまり、これが評価されるかどうかは別にして、こういう形で、日本もしっかりと科学技術に対する不信感に対処するための検討を行っている。このことを、国際的にもアピールし、プロセスをはっきりしていくことを、我々も含めて、やっていきたいと思っております。

【平野部会長】
 ありがとうございます。この件については、おまとめ頂いた冊子を読む時間が充分になかったと思いますので、今日お帰りになられて、理解をされた上で、もう一度、時間をとってご議論いただきたいと思っております。

 今日はここのところで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

予定した議題の3件については、委員の方々に了承いただきましたので、これらの決定事項について、後日、開催される研究計画・評価分科会に報告させていただきます。最後に、事務局から連絡等ありましたら、ご案内ください。

【德成科学技術・学術戦略官付室長補佐】
 事務局から3点、ご連絡させていただきます。

 1点目ですが、今回の議事録につきましては、部会運営規則第5条にのっとり、非公開の議事部分を非公表として議事録を作成し、各委員にご確認いただいた後に、ホームページにて公表させていただきます。

 2点目ですが、次回の部会については、6月下旬ごろに開催したいと考えております。主な議題としましては、「平成24年度科学技術戦略推進費の採択プロジェクトの決定」等を予定しております。後日改めて日程調整をさせていただきます。

 3点目ですが、本日の配付資料につきましては、審査の秘匿性を保つ観点から、資料1-4につきましてはお持ち帰りいただけません。その他の資料につきましては、机の上に置いていっていただければ、後日郵送させていただきます。

 以上でございます。

【平野部会長】
 ありがとうございました。それではこれで本日の部会を終わります。

―― 了 ――

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(調査・評価担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(調査・評価担当))