資料5-6 今後の課題(案)

 1.基礎的研究の充実

(1)室内環境の変容等に関する研究

1 室内の危険因子の挙動に関する研究

室内環境の変容に関する研究については、これまで、(1)「室内および家財等の被災の実態把握」、(2)「建物被害の実態把握」、(3)「室内および家財等の被害状況の定量的把握に関する研究」、(4)「家財等の振動台実験に関する研究」に大別して、主に室内の家具類の転倒・飛散等について進められてきているが、家具類、什器、調度品、窓ガラス、照明等研究が行われていない他の室内の「危険因子」となり得る事象について、どのように危険因子となるか、知見の蓄積が必要である。

2 屋外の危険因子の個別の挙動に関する研究

屋外の危険因子に関する研究は、建物のガラスの落下、外壁タイル等の落下、ブロック塀の倒壊等について、いくつかの研究が見られるが、それらは定性的な原因究明にとどまっており、今後は、他の危険因子も含めて、地震時の挙動を予測できるよう、知見の蓄積が必要である。

3 建物倒壊に関する研究

建物倒壊時における梁や柱の位置、空間の残存状況、倒壊直前の挙動等について知見を蓄積する必要がある。

(2)振動環境下での人間の行動能力に関する研究

1 振動環境下の人の行動に影響を与える生理的要因の研究

振動環境下で人間が身体能力としてどの程度動けるか把握するとともに、夜間に発生する地震では室内が停電となった場合に明るさが乏しいため著しく行動が制約されるなど、環境要因が振動環境下の人の運動能力や行動に与える影響について研究を進める必要がある。

2 振動環境下の人の行動に影響を与える心理的要因の研究

地震時のとっさの行動については、物理的要因や生理的要因に加えて心理的要因が強く影響すると考えられる。心理的な影響について実験的に研究を進めることは困難であると指摘されているが、とっさの行動が危険な行為につながらないよう心理的な要因について研究を進める必要がある。

3 実際の地震を想定した3次元振動環境下での行動能力の実験研究

これまでに1次元の振動による人の行動能力について基礎的実験研究が行われてきたが、人の運動能力や体の制御行動については、多次元の振動について研究を進め、地震時の揺れの最中に避難の可否を判断するための多次元振動環境下での人の行動能力を把握する必要がある。

2.複合的な研究

(1)地震時における人間の行動と負傷に関する研究

1 これまでの地震による被害調査の統合とそれによる人の行動と負傷の関連調査研究

これまでに地震が発生する毎に研究者や防災関係者により被害調査が行われてきたが、それらのデータが統一的にまとめられることはなかった。各地震の被害調査結果を統合し、その中から行動と負傷の関連性に関するデータを抽出して、行動と負傷の関連性について研究を進める必要がある。

2 地震時における危険空間と安全空間の研究

地震被害の実調査では、建物が倒壊したにもかかわらず無傷の人がいる一方で、建物の被害はないものの転倒した家具の下敷きになり死亡する事例も見られる。地震が発生した際に安全な空間にいることが身の安全を確保する重要な条件となるが、実例や実験的研究により、地震時に室内がどのような状況になり、どこが危険領域になるのか容易に予測できる手法を構築することも含め、人が退避すべき安全空間について研究を進める必要がある。

3 屋内から屋外への連続的な危険評価の研究

屋内、屋外の危険度把握の手法の統合により屋内から屋外へシームレスな時系列的被害予測が可能となり、地震時の安全空間の時系列的把握を行い、地震時の避難誘導が可能なシステムを構築するために必要な研究を行っていくことが必要である。

3.利活用促進のための研究

(1)利用しやすいツールの研究開発

耐震性が低いと事前に分かっている建物については、建物内の比較的安全な空間を事前に把握しておき、地震発生時にはその空間に逃げ込むか、そこを通って外に脱出することを想定しておくことが重要であるが、これに対応できるような危険度の把握を容易に支援できるツールの研究開発と、個人が防災情報にどこでもアクセスできるようなシステムの構築および普及のための方法について研究を進める必要がある。

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研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室

(研究開発局地震・防災研究課)