資料5-5 推奨されてきた退避行動の検証

1.「大きな家具に身を寄せる」行動について

(1)地震の揺れによる室内環境の変容に関する研究のうち該当するもの

1危険因子(家具が転倒する、高い所のものが落下する)

  • タンス等の家具については、地震動、階数、床の摩擦係数、家具密度、積み上げ方、配置等により転倒率が異なる。個々の転倒の定量的把握は進みつつある。
  • 高い所のものについては、家具、調度品等の飛散として言及されており、地震動の性質や置かれている家具類の挙動等に影響を受ける。
  • 建物倒壊した場合については、木造・瓦葺・古い建物ほど全壊率が高いという調査結果があるが、倒壊した際の室内の危険因子等についての研究はレビューされていない。

2人が体験する困難な状況(打撲の可能性、ガラスを踏む可能性)

  • 「打撲の可能性」については、家具類の転倒・飛散による直接的なものと家具類の転倒・飛散により室内が散乱し退避行動中につまづくなどによるものがある。
  • 地震被害の調査や実験等も含めた室内被害の定量的な把握の研究等が進んできており、発生する地震(HAZARD)の性質により室内および家財等の被害については、大凡ではあるが定量的に記述される方向で進展している。
  • 建物倒壊した場合については、木造・瓦葺・古い建物ほど全壊率が高いという調査結果があるが、倒壊した際の室内の状況等についての研究はレビューされていない。

(2)地震の揺れが人間に及ぼす影響に関する研究のうち該当するもの

  • 震度5程度の揺れで半数の人が行動の困難さを感じることから、遠くに家具がある場合には、近づくことが困難となる場合がある。
  • 震度6以上の揺れになると、ほとんど動くことができないので、遠くに家具がある場合には、近づくことは極めて困難である。
  • 近くに家具がある場合には、低い姿勢でゆっくりでも近づくことができる。

(3)地震の揺れによる人間の行動と負傷の関係に関する研究のうち該当するもの

  • 地震で揺れている最中の移動により、負傷する事例が多く報告されている。
  • 地震の揺れにより倒れそうな家具等を支持することにより負傷する事例が多く見られるが、その行為により負傷を回避したとの報告もある。
  • 兵庫県南部地震においては、犠牲者の約10%の死亡原因が、転倒した家具等の下敷きによる圧死であったとされている。
  • テーブルの下に隠れようとして負傷した例も見られる。

2.「身を隠して頭を保護する」行動について

(1)地震の揺れによる室内環境の変容に関する研究のうち該当するもの

  • ここでは、1.で述べたこととほぼ同じ内容となるが、身近に頭を保護できるものの位置等を把握しておく等の対策も考えられる。

(2)地震の揺れが人間に及ぼす影響に関する研究のうち該当するもの

  • 地震の揺れの中で、別の場所に移動することが困難な場合が多く、一つの動作に通常よりも多くの時間を要するが、身を隠すためにその場に伏せることは可能であると考えられる。
  • 地震の揺れの大きさによっては、身を隠すための安全な場所へ移動することが困難な場合がある。
  • 頭部を保護する布団や雑誌、頭巾が近くにない場合には、その場から移動して入手する必要がある。

(3)地震の揺れによる人間の行動と負傷の関係に関する研究のうち該当するもの

  • 地震の揺れの最中に静止していることで負傷を免れる事例が多く報告されている。
  • 身を隠す場所が安全な領域でなく、危険な領域であると負傷する。
  • 建物の倒壊により人命が損なわれることがあるため、屋内に身を隠しても安全とはならない場合がある。

3.「地震を感じて慌てて外へ飛び出さない」行動について

(1)地震の揺れによる室内環境の変容に関する研究のうち該当するもの

<室内>

  • ここでは、1.で述べたこととほぼ同じ内容となるが、屋外への経路の安全領域、危険領域を把握しておく等の対策も考えられる。

<屋外>

  • 屋外の危険因子については、建物のガラスの落下、外壁タイル等の落下、ブロック塀の倒壊が触れられており、それぞれ特徴的な条件下で被害が発生している。
  • 屋外の「人が体験する困難な状況」については、建物のガラスの落下、外壁タイル等の落下、ブロック塀の倒壊によるものが触れられているが、どのような状況になったかということには触れられていない。

(2)地震の揺れが人間に及ぼす影響に関する研究のうち該当するもの

  • 震度5程度で約半分の人が行動に困難さを感じ、震度6程度で7~8割の人が動けなくなる。
  • 火を消す、机の下に隠れる、子どもを守る等の能動的な行動が見られる一方で、地震の揺れによる驚愕度等の調査結果からは大多数の人が非常に驚いていることが分かっている。
  • 地震による揺れ方により、全く動けず外に出ることができなかったとする調査結果や10~20%程度のひとが外に飛び出した調査結果も見られた。
  • 余震時に、本震時の恐怖から外に飛び出す人が多いとの調査結果がある。

(3)地震の揺れによる人間の行動と負傷の関係に関する研究のうち該当するもの

  • 地震の揺れ方にもよるが、大きな揺れの最中に移動することで10~30%程度の人が負傷している。
  • 兵庫県南部地震における調査では、全壊住宅の5.6%、半壊住宅の0.1%で死者が発生しているとしている。
  • 兵庫県南部地震における調査では、死者発生家屋において居住者の生存者・死者の数が判明したケースで、死者138名で生存者が130名であった。

4.「火を消す」行動について

(1)地震の揺れによる室内環境の変容に関する研究のうち該当するもの

  • 該当無し

(2)地震の揺れが人間に及ぼす影響に関する研究のうち該当するもの

  • 食事の支度中に地震の揺れを感じて特に女性(主婦)はとっさにコンロの火を消すことが多い。
  • 「ぐらっときたら火の始末」の標語の影響により、反射的にストーブ類の火を消す行動に移ってしまう。
  • 子どもを火から守るために火もとの移動や消火行為を行ってしまう。

(3)地震の揺れによる人間の行動と負傷の関係に関する研究のうち該当するもの

  • 反射的に火を消す行動に移ってしまい、コンロの火や高温の調理器具・材料により火傷を負ってしまう。
  • 火から子どもを守るため本能的な行動により負傷してしまう。

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室

(研究開発局地震・防災研究課)