令和6年6月18日(火曜日)16時00分~18時03分
WEB会議
宮園主査、畠主査代理、有田委員、大津委員、大曲委員、岡田委員、加藤委員、金倉委員、金田委員、上村委員、木下委員、桜井委員、澤田委員、鹿野委員、杉本委員、鈴木委員、豊島委員、西田委員、坂内委員、宮田委員、山本委員
塩見研究振興局長、釜井ライフサイエンス課長、廣瀨ライフサイエンス課課長補佐、俵医学教育課長、海老医学教育課課長補佐
【廣瀨ライフサイエンス課課長補佐】 定刻になりましたので、ただいまより、第114回ライフサイエンス委員会を開会いたします。
本日は、Web会議システムによる開催とさせていただいております。本審議会は、報道関係者と一般の方にも傍聴いただいております。
鎌谷委員、熊ノ郷委員、武部委員、辻委員より御欠席の連絡をいただいており、澤田委員からは16時40分から17時30分頃までの御参加と伺っておりますが、出席委員数が総委員数25名の過半数13名に達しており、定足数を満たしていることを御報告いたします。
会議の円滑な運営のため、ZoomによるWeb会議システムで御参加いただいております皆様にお願いしたいことがございます。委員の先生方、傍聴の皆様におかれましては、表示名は、本名、日本語表記、フルネームとしていただきますよう、お願いします。傍聴の皆様は、表示名冒頭に「傍聴」と御入力ください。傍聴の皆様におかれては、マイクとビデオを常にオフにしてください。委員の先生方におかれましては、回線への負荷軽減のため、通常はマイクとビデオをオフにしていただき、御発言を希望する場合はビデオをオンにしてください。また、発言される際のみマイクをオンにしてくださいますよう、お願いいたします。発言が終わられましたら、両方を再度オフにしてください。その他、システムの不備等が発生しましたら、随時お知らせいただきますよう、よろしくお願いいたします。Web会議システムの音声が切れてしまった場合には、事務局より事前にいただいておりますお電話番号に御連絡させていただきます。表示名や音声・映像については、事務局により操作させていただく場合がありますこと、御承知おきください。御不便をおかけすることがあるかもしれませんが、何とぞ御理解いただけますと幸いでございます。
それでは、以降の進行は宮園主査にお願いいたします。
【宮園主査】 どうもありがとうございます。
それでは、本日の議事と配付資料について、事務局から確認をお願いいたします。
【廣瀨ライフサイエンス課課長補佐】 議事次第を御覧ください。本日の議題は、3点ございます。
議題(1)は、ライフサイエンス委員会中間とりまとめ(案)についてでございます。ライフサイエンス分野の今後について、これまで約半年間にわたり、皆様に御議論いただいてまいりました。今回、ライフサイエンス委員会としての中間とりまとめ(案)を、主査御確認の下、作成いたしましたので、皆様に御審議いただきたく存じます。
議題(2)は、今後の医学教育の在り方に関する検討会等についてです。大学病院や医学部での人材育成・研究開発は、ライフサイエンス研究を支える重要な礎です。今後の医学教育・医学研究の在り方を検討すべく、文部科学省高等教育局にて有識者会議を設置し、1年余りにわたって議論を重ねてまいりました。今般、その第二次中間とりまとめが作成されましたところ、有識者会議の運営を行う高等教育局医学教育課より、医学教育・医学研究の現状も含めて、とりまとめの概要を御発表いただきます。併せて、今後の取組の方向性について、事務局より説明する資料を基に皆様に御議論いただければと存じます。
議題(3)は、その他としておりますが、5月から6月にかけてライフサイエンスに関連した政府文書が相次いで取りまとまりましたので、これらについて事務局より御説明いたします。
配付資料は、議事次第に記載されているとおりです。資料は、委員の皆様に事前にメールにてお送りさせていただいております。資料番号は議事に対応しております。不足等ございましたら、議事の途中でも構いませんので、事務局にお声がけください。
事務局からの説明は、以上でございます。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
それでは、これより議題に入らせていただきます。一つ目の議題は、ライフサイエンス委員会中間とりまとめ(案)についてです。まず、事務局よりとりまとめ案を御説明いただきまして、その後、皆様に御議論いただきたいと思います。
それでは、事務局、お願いいたします。
【廣瀨ライフサイエンス課課長補佐】 事務局より御説明いたします。資料1-1、1-2が中間とりまとめ(案)の関係でございます。今回、本文の資料1-2のほうを使って御説明させていただきます。
昨年10月に宮園主査のほうから問題提起をいただいて以来、これまで6回にわたり、議論をいただいてまいりました。今回、宮園主査とも御相談させていただきながら、事務局において中間とりまとめ(案)を作成いたしました。1月に作成した論点整理を踏まえたものでございます。こちらに関しまして、本日御議論いただければというふうに思います。現在、このとおり「(案)」と書かれておりまして日付は入っておりませんけれども、本日御議論いただきまして取りまとめていただきたいと考えております。
それでは、中身につきまして、全部説明することはできませんけれども、簡単に説明させていただければというふうに思います。
冒頭、「はじめに」というところで、この議論に関係いたします、問題意識、経緯につきまして、御説明させていただいております。冒頭、ライフサイエンス研究がいかに興味深い研究領域であるか、また、人類の福祉に貢献するものであるか、そういった重要性について書かせていただいております。一方で、「ところが」のところでございますけれども、論文数のシェア等を見ますと、ライフサイエンス研究の研究力の低下は深刻であるといった懸念が示されているというところも、委員会の共通認識として議論されたかというふうに思います。「また」のところに関しましては、10月に宮園主査のほうから示された視点を元に記載しているところでございますけれども、疾病構造の変化、生活様式の変化、一方で、AIの発展等、ライフサイエンスの研究の方法論の変化、そういったところを踏まえながら議論していく必要があると考えて、そのような視点について書かせていただいております。このような状況を踏まえまして、この半年間、若手・中堅研究者からヒアリングや、理化学研究所、量子科学技術研究開発機構といったインハウス研究機関のヒアリング等を踏まえて、議論をしてきたということを書かせていただいております。こういったものを踏まえまして、Curiosity、Methodology、Missionという観点からのライフサイエンス研究の在り方について、取りまとめさせていただいたところでございます。
続いて、2番に関しまして、説明させていただきます。こちら、冒頭でございますけども、ライフサイエンス研究につきましては、複雑かつ精緻な生命現象を解き明かす、それ自体、知的好奇心を刺激する、大変興味深い研究領域であると。また、それと同時に、健康寿命の延伸等、人類の福祉に貢献する、非常に社会的意義の大きい研究分野でもあると。そういった認識を書かせいただいております。知的好奇心と社会的意義、文脈によっては時に二項対立で語られがちではあるんですけども、こちらは二項対立で語るべきではないというふうに考えております。知的好奇心から生まれる挑戦的・探索的・萌芽的な研究と、社会的ニーズ、政策ニーズの変化を捉えた戦略的な研究開発といったものは、両面を意識してやっていくべきものであり、また、その両者をつなぐものとして、計測・解析技術の飛躍的な進展等に伴う研究の方法論の変化というものも見定める必要があるかなというふうに考えております。
こちら、岡田先生のプレゼンのほうでお示しいただいた概念でございますけども、Curiosity、Methodology、Mission、この3要素が融合し、相乗効果を発揮していくものとして、知的好奇心と社会ニーズ、両方をつなぐものとしてライフサイエンス研究の在り方というのを考えていきたいというところは、論点整理の頃より御議論いただいてきたかというふうに思います。今後、それぞれの潮流に関して少し述べさせいただきますけども、1点、特筆すべきところとして、(1)の上の最後の丸でございますが、特にMethodology、における最新の状況を踏まえますと、ライフサイエンス研究における異分野融合の重要性については特筆すべきかというふうに考えております。医学、情報学、数理科学、AI、生物学、疫学、人文・社会科学と、そういった多彩なバックグラウンドを持つ専門家たちの連携・糾合といったものがライフサイエンス研究において重要であると、そういったことを書かせいただいております。
以降、Curiosity、Methodology、Mission、それぞれにつきまして、最近の潮流を、書き尽くすことは難しいかと思うんですけども、書かせていただいております。
Curiosityに関してでございますけれども、いつの時代も個人の知的好奇心といったものが、研究の多様性、新しい研究領域を切り開くといったことをしてきたと。そういったところは大変重要かというふうに思いまして、様々な先生方の発言にも出ていたのかというふうに思います。「ここで重要な視点となるのは」からのパラグラフでございますけども、武部先生のプレゼンの中でお示しいただきました、Developing、Disruptiveといった言葉については重要かというふうに思っております。発展が期待される領域に重点的に注力してイノベーションを起こしていくDevelopingな研究と、これまでの常識を覆すようなDisruptiveな研究といったものは全く条件が異なるかというふうに思いまして、また、Disruptiveな研究を活性化するためには、挑戦的・探索的・萌芽的な、裾野の広い基礎的な研究というものが大事であると、そのような視点をお示しいただいたかというふうに思っております。また、こちらも、どちらがいいとか、どちらが全てというものではないと思うんですけれども、我が国においてはDisruptiveな研究に適した土壌があると、そういった議論もあったかというふうに思います。また、全て読み上げはいたしませんけれども、近年、知的好奇心を集めている注目の研究領域として、様々な御指摘いただいたというふうに思います。そちらを書き留めさせていただいたものが、こちらでございます。
続いて、Methodology、最新の計測技術、解析技術の新展開のところにつきまして、御説明させていただきます。近年、ライフサイエンス研究はどのように進んでいくのか、そういった潮流を考える上では、ここに書かせていただいてきましたような、ウエット技術とドライ技術、両方が急速に発展しておりまして、それによりライフサイエンス研究の方法論も変わってきているといったことは、必ず注目されなきゃいけないポイントかというふうに思います。また、ここでは、研究の方法論に伴いまして、異分野連携といったものが新しい局面に発展しているといったことも特筆すべきかというふうに思います。異分野連携といっても、様々な連携の在り方、連携の方向性はあるかと思うんですけれども、一つは、数理、AI等のドライ研究者との連携、また、光工学、電磁場等の計測技術の観点での様々な技術との連携、また、老化・加齢学や文化人類学的な、言わば人文・社会科学との連携、様々な意味で研究の方法論というものは変化していっているところはあるかというふうに思います。
また、忘れてはいけないのはMissionで、ライフサイエンス研究として、健康・医療といった、様々な社会ニーズに貢献していくといったことに関してもライフサイエンス研究の価値として極めて重要だというふうに考えておりますし、また、その潮流を捉えて研究を推進していく必要があるというふうに書かせていただいております。こちらは、これまでも、これからも、「健康・医療戦略」等の政府戦略に基づいてライフサイエンス研究を推進してきてまいりまして、近年、創薬に関しても注目されておりますけども、ますます重要になってきているというふうに考えております。特に今、2024年の時点で注目すべきトピックに関して幾つか書かせていただいていますけども、一つは、日本がいち早く少子高齢社会を迎える中で、ライフコースに着目したような、コストをバリューに変えていくような研究というのは一つの視点として重要であろうということを書かせていただいております。また、ライフコースといっても、超高齢社会の部分だけではなくて、早期のライフステージに着目した、こども政策といった観点での対応も重要であるというふうに考えております。また、医療の要請といたしまして、Precision Medicine、Precision Public Health、Precision Nutritionといったものが最近の潮流としてあるかというふうに思いまして、そういった医療におけるニーズに備えて、生命現象を平均で捉えるのではなくて、様々な個人差もしくは個人の変化といった部分に着目した研究といったものも重要かというふうに考えております。また、個人差の中には性差もあるかと思うんですけれども、これまで、男性のみ、または男女の平均を対象とした研究が多くされてきたきらいはあったかと思うのですが、そうではない、ジェンダード・イノベーションということも最近言われておりますけども、性差に着目した研究、また、女性特有の疾患に着目した研究といったことも大事であるというふうに書かせていただいております。ここまで、様々、健康・医療関係のミッションというものを記載させていただいておりますけども、ライフサイエンス研究というのは一方で、健康・医療のみに貢献するものではなく、エネルギー、資源、バイオエコノミー、環境、農業、食料といった、様々なものにも、健康・医療にとどまらないものにも貢献し得るといったことも記載させていただいているところでございます。
続いて、こういった基本的な現状認識を踏まえた上で、どういった対応方策が重要なのかといったところを3ポツのところで書かせていただいております。こちらの報告書全体としては、基礎研究、人材育成、研究基盤の3要素というものを最も重要なものとしてまとめさせていただいておりまして、論点整理のところからそういった御議論をいただいていたかというふうに思います。当然ながら、再生医療ですとか、がん研究ですとか、様々な個々の研究への支援というものも重要ではございますけれども、今後四半世紀を踏まえた、ライフサイエンス研究全般を支援していくといった中では、基礎、人材、基盤といったものに着目した議論というものをいただいていたかというふうに思います。また、そういった基礎研究の成果をどのように実用化につなげていくのかは、イノベーションの観点としても当然重要かというふうに思っておりますし、また、その他、研究費システムとか、そういったことに関しても議論で触れられましたので、そちらをまとめさせていただいております。
個別の議論に関しまして、かいつまんで説明させていただければというふうに思います。基礎研究、先ほどから述べてきたことと少し重複するところもございますけども、新しい研究領域を生み出し、研究力向上につながるような、また、Disruptiveな研究を推進していくような、基礎研究といったものは大変重要だというふうに考えております。また、別の視点としまして、昨今、国家的課題となっている創薬力といった観点からいたしましても、基礎研究といったものがいかにその創薬力の基盤となっているのか、根幹となっているかといったところを書かせていただいております。また、特にライフサイエンスの基礎的な研究においてはそうではないかと思いますけども、アカデミアにおける基礎研究は、ハイリスクだったり、また、長い時間がかかったりといった特徴があることは、ライフサイエンス委員会の議論でも様々な御指摘いただいたかと思いますし、注目すべきかというふうに思います。また、基礎研究においても異分野融合が重要であるといったことは、改めて記載させていただいております。
続いて、人材育成でございます。研究力低下が言われている中で、多様な観点から人材育成に関して取り組んでいく必要があるというふうに考えています。
研究環境の整備でございますが、研究環境といっても様々な側面あるかと思うんですけども、一つには、研究時間、研究に専念できる環境といった観点、また、経済的な意味での安定性といった観点、最適なタイミングで独立できるような、独立後のスタートアップ支援という観点、また、研究時間を有効に活用するための申請書・報告書の簡素化ですとか、経費の使途制限に伴う負担の軽減ですとか、そういった非効率的なものを効率化していくところに関しましても、御指摘ありましたので、記載させていただいております。
また、本日、医学教育課にもお越しいただいておりますけども、大学病院・医学部における対応も、ライフサイエンス研究を語る上では非常に重要かと思っております。こちら、研究時間の減少は大学病院において特に深刻かと考えておりまして、研究・教育以外にも、診療等、様々な業務を抱えている大学病院における対応は特に重要かというふうに思っております。様々な取組をされているところではあるんですけれども、医師の働き方改革が今後進められていく中で、医師である研究者の研究時間の状況はさらに厳しくなることが予測されるというふうに考えております。今後、議題(2)のところでまた改めて御議論いただこうと思いますけれども、国としては、この状況を打開するため、具体的な支援策を講じていくことが必要であると、また、そのためのプログラムの創設が必要であると、そういったところを書かせていただいておりまして、御提言いただければというふうに思っております。
続いて、研究費支援でございます。研究費の支援を通じて人材育成していくことも非常に重要な観点だというふうに思っておりまして、二つ目の丸ですけども、戦略的創造研究推進事業や革新的先端研究開発支援事業といった競争的研究費に関しまして、非常にポジティブな御意見をいただいたというふうに思っておりまして、組織の壁を越え、アドバイザーや有識者が多様な立場から助言し、トップサイエンスを核としたコミュニティが形成されつつあると、そういった御指摘いただいたかというふうに思います。こうした取組を加速しつつ、さらに若手研究者を対象とする新たなメニューを創設することによって、そちらの支援というものを加速させていきたいというふうに思っております。こちらに関しましても議題(2)のところで扱わせていただければと思っていますけども、文科省として新たな取組をするようにと御提言いただければというふうに思っております。
また、こういった支援に加えまして、ライフサイエンス研究を担う人材の確保、人を呼び込んでいくといったことも重要かというふうに思っておりまして、その観点から、一つは女性研究者の活躍促進、海外に流出させないための待遇面の改善や長期的な支援、また、裾野を拡大するような、初等中等教育段階や学部教育の段階を含めた支援といったものも書かせていただいております。また、大学院生に御参画いただくということも大事かというふうに思っておりますので、そちらも書かせていただいております。
続いて、こちらはある種繰り返しになるところはあるかと思うんですけども、研究者の流動性と多様性は、人材育成の観点からも非常に重要だというふうに考えております。異分野連携がどんどん求められていく中で、多様な職場で多様な他者と接する経験を積んでいただきまして、流動性と多様性を向上させながら人材育成をしていくことが重要とに考えております。こちら、特に医学系において、医学系に限った話ではないかと思うんですけども、流動性と多様性が不足していると指摘されているところでございまして、医学系に関して言うとメディカルドクターが大きな役割を果たしてきたところで、一方で、M.D.以外のPh.D.の研究者の方々との協力も非常に重要かというふうに思っております。こういった多様な人材から成るチームが当たり前になっていくことによって研究が活性化されるのではないかと、そのようなことを書かせていただいております。また、ライフサイエンスとデータサイエンスを横断する人材も重要かというふうに考えておりまして、バイオインフォマティクス人材に関しても書かせていただいております。また、国際的な頭脳循環、武者修行をしてくるということも大事かというふうに思っておりまして、そちらも書かせていただいております。
また、研究支援人材に関しても少し書かせていただいておりまして、研究時間を確保するため、また、より高度な研究をするために研究支援人材の確保は大事かと思っておりまして、そちらを書かせていただいております。
続いて、研究基盤のところでございます。ライフサイエンス研究は、計測・解析技術が発展している一方で、時に高額な機器へのアクセスですとか、技術に関する課題によって、研究機器が研究の障壁になりつつあるといったところも、一つ課題としてあるかというふうに思います。現在もBINDS事業によって文科省のほうで一定の支援をしているところでございますけども、こういった先端研究基盤の整備・維持・共用に関しましては、今後とも重要になってくるかというふうに思います。また、こういった解析機器のコアファシリティ化、拠点化して共用していくといったことを通じまして、解析技術へのアクセスを確保していくということ、導入を確保していくということ、また、そういったものを通じて人材育成をしていくといったこと、そういったことが重要かというふうに考えております。また、ライフサイエンス委員会の中であった議論といたしましては、我が国は導入後の解析機器を使いこなすノウハウには長けている一方で、なかなか我が国発の開発ができていないというところはあるかと思いましたので、そちらに関しましても言及させていただいております。
続いて、データベースでございます。データベースに関しては、データベースを扱う回があったかというふうに思いまして、その議論を踏まえたものでございます。データベースに関しまして、ライフサイエンス研究のデータベース基盤をしっかり提供していくことが重要でございまして、そのために、これまで行われてきたファンディングの継続と、それと同時に、重要な一次データベースに関しては国によって安定的に維持・管理を行っていくことが必要であると、そういったことに御賛同いただけたかと思います。また、単にデータベースをしっかり作っていくことだけではなくて、インターフェースを改善して使いやすくしていくということも大事かというふうに思いまして、AIを活用した解析技術でございますとか、大規模データの利用技術ですとか、そういったところの開発も今後重要かというふうに考えております。また、データベースに関しましては、開発・維持・管理やキュレーションを担う人材の不足といったことも一方で問題でございまして、バイオインフォマティクス人材として、人材をしっかり育成していくといった観点も重要かというふうに思います。また、こちらは必ずしも文科省だけで取り組むことではないかもしれませんけれども、臨床データを、ヒトのデータをいかに取っていくかといったことは今後のライフサイエンス研究で非常に重要なってくるかというふうに思いまして、そういった点に関しても御指摘いただいたかというふうに思いますし、大変重要なことだと記載させていただいております。
続いて、バイオリソースでございます。動物、植物、細胞、病原体といったバイオリソースに関しましては、ライフサイエンス研究に不可欠な基盤だというふうに考えておりまして、こちらも国として継続的かつ戦略的な整備が重要だというふうに記載させていただいております。また、こちらは、経済安全保障上の観点からも、我が国においてしっかり確保していくことが大事だというふうに思います。そのために何をするべきなのかといったところで、一つは、中核的な拠点をしっかりと充実させていくということ。また、単にバイオリソースをリソースとして整備するだけではなくて、ゲノム情報等の付加情報を付記しまして、データ駆動型研究と連携していくといったことも重要かというふうに思っております。また、バイオリソースの使い方に関しましては、日々、日進月歩の変化はあるかというふうに思いまして、研究者コミュニティや社会のニーズ、最近の科学の潮流等を踏まえて、新たな実験手法ですとか、バイオリソースの開発に関する研究などを推進していくといった、前向きな取組といったものも重要かというふうに思っております。
続いて、バイオバンクに関しましても、一定の記載をさせていただいております。ライフサイエンス研究においてゲノム情報の活用はますます重要になってきておりまして、そういった中でバイオバンクは不可欠な研究基盤と言えようかと思います。そちらに関しまして、公開・共有・非属人化の推進ですとか、公平性・透明性の確保が重要だといった御議論を踏まえて、書かせていただいております。
続いて、(2)のところでございますけども、こちらは基礎・基盤人材の重要性といったものを強調した上で、Missionにしっかり貢献していくためには、いかにバリューチェーンをつないでいくのか、社会実装につなげていくのか、社会実装を意識していくのかといったことは重要かというふうに思います。また、今は基礎と臨床を切り分けることが適切ではない場合も増えているかというふうに思いまして、臨床上のニーズを基礎研究にフィードバックすることを含めた双方向のトランスレーショナルリサーチは活発化しておりますし、また、ヒトに係る生命現象の解明を目指すヒューマンバイオロジーのような動きも出てきておりまして、基礎と臨床が近くなっているというところに関しましても、こちらの項目で記載させていただいております。また、スタートアップのところ、こちらも事業の関係でスタートアップに関してもライフサイエンス委員会で議論していただきましたが、我が国では、スタートアップへの支援を強化してきているところでございますが、一方で、欧米、特にアメリカに比べますとスタートアップの育成が遅れているといった指摘は受け止めなければいけないというふうに思っております。アカデミアにおける基礎研究の成果をいかに実用化につなげていくのか、スタートアップを支援していくのかに関しましては、引き続きしっかりと支援していく必要があるというふうに考えております。また、その際、企業と大学・研究機関の間の人的交流ですとか、そういった人的な流動性の向上といったものも大事かというふうに思っております。また、社会実装を推進していくためのもう一つの観点といたしまして、MethodologyやMissionの状況を踏まえた社会の潮流を見通した上で研究をしていくといったことも大事かと思いまして、例えば、個別化医療や予防・先制医療が進展していくことを見越した研究の支援でございますとか、また、AIやデータサイエンスを活用し、どのような研究を進めるか、どのようなことに貢献できるかといったことを踏まえた研究開発が重要になってくるというふうに考えております。また、忘れてはならない非常に重要な観点として、ELSIがあるかというふうに思います。ライフサイエンスは、社会をよりよくしていくことがある一方で、社会にどう受け入れられていくのか、非常にセンシティブな議論も惹起するものというふうに思いますので、ELSIの議論、また、社会実装した場合のルール形成まで視野に入れた取組といったものは大事かというふうに思っております。
最後、その他の視点として、こちらも議論が活発に出ました研究費システムについて、1点記載させていただいております。ライフサイエンス研究には挑戦的・探索的・萌芽的研究から社会実装を実現するための研究まで多様な研究がございますので、フェーズごとに最適な公と民の投資配分を検討し、その上で支援していくといったことが重要かというふうに思います。その中の一つの視点として、選択と集中があまりに行き過ぎることに伴いまして人材の多様性が失われるといったことへの懸念が示されたかというふうに思いまして、特に若手に対して、多くの研究者に広くファンディングを行う「種まき・水やり」型の研究費といったものが重要だといったことを指摘されたかというふうに思います。そういった基盤的経費や基礎的な競争的研究費といったものを通じた、挑戦的・探索的・萌芽的な支援といったものも大事かというふうに思います。また、一方で、理化学研究所等に御説明いただきましたけれども、インハウス研究機関の果たす役割といったものも非常に重要でございまして、そちらも研究費システムの一環として、一つ重要かいうふうに思います。また、AMEDにおける研究ファンディングも大きな役割を果たしてきておりまして、こちらは引き続き、基礎的な研究開発から実用化まで医療に関する研究開発を推進していくといった観点も重要かというふうに考えております。また、民間資金の重要性に関しましても、御指摘いただきましたので、そちらもしっかり書かせていただいております。
また、その他の支援の二つ目といたしまして、国際展開・科学技術外交に関しても記載させていただいておりまして、我が国のプレゼンス向上をしっかり果たすべきであるということ。また、本来、競争的なものであるので、一定の競争というのはある一方で、国として競争環境の整備をしていくことが大事だということを書かせていただいています。また、重粒子線がん治療ですとか、そういった成果の世界展開・国際展開が見込める研究の推進といった観点も重要かというふうに考えております。また、国際展開の逆の側面としまして、海外から優秀な人材の呼び込み、そのための支援といったことも、記載させていただいております。
また、地域のライフサイエンスについてですが、ライフサイエンス研究においても都市部への集中といったものが一定程度進みつつあるかというふうに思いますけども、地方においても分野によってはキラリと光る取組を行っているところがございますので、そういったところの活性化といったことも大事かというふうに思っております。先ほど申し上げましたとおり、ライフサイエンスにおいては高額・高度な研究機器へのアクセスが一つのネックになることがございますので、そういった点に関しましては、研究機器のコアファシリティ化やバイオリソースの整備といったところを通じまして、しっかりと国も支えていくといったことが大事かというふうに思っております。
ここまで、3ポツのところで具体的な対応方策について記載させていただいてまいりました。
最後、「おわりに」でございます。こちらはこれまでのまとめでございまして、また、後ほどバイオエコノミー戦略等を御説明させていただきますけども、ライフサイエンス委員会もしくは文科省においてのみ推進するものはなくて、その他の国家戦略との連携、足並みそろえてやっていくといったことが重要だということを記載させていただいております。また、最後、政府においてのみ、もしくは研究者においてのみ推進するものではなくて、政府、研究機関、研究者、国民の協働によってライフサイエンス研究は推進されていくべきものかというふうに思いますので、この中間とりまとめが社会全体に対して一定のメッセージを発するものであればよいのではないかと、そういったことを記載させていただいております。
雑駁な説明でございましたけれども、以上でございます。20ページほどの資料でございますので、もう少し対外的に説明しやすいように、概要のポンチ絵を作成させていただいておりまして、こちらも併せて御覧いただければというふうに思います。
事務局からの説明は、以上でございます。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に対しまして、質疑応答に移りたいと思います。発表に関する御質問、御意見がございましたら、ぜひ積極的にお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
それでは、加藤委員、お願いいたします。
【加藤委員】 どうもありがとうございます。内容は本当にすばらしいものであると思います。幾つか気になる点、四つほど気になる点がありましたので申し上げたいのですが、7ページのところに「一部の疾患ではその症状の現れ方に性差が存在することが指摘されているが、男性のみ又は男女の平均を対象とした研究では、その解明に限界がある」という記載があるんですけれども、少し内容が変だなあと思いました。「一部の疾患ではその症状の現れ方に性差が存在することが指摘されているため、オスのみを対象とした動物実験では不十分である」というのが、現在指摘されていることじゃないかと思います。「男性のみ」と言うと医学研究が男性のみでやられているかのような誤解を招きますので、主には動物実験でオスだけを使われていることが多かったというのが問題意識だと思いますので、そこをちょっと修正していただけないかなと思いました。
次は、11ページなんですけれども、バイアウト制度などの取組が行われてきたと書いてあるのですが、私の知る限り、このバイアウト制度というのは本当にどれだけ使われているのか。アメリカで使われているのは聞いていますけれども、日本で活用されているのか、いないのかをちょっと調べていただいて、もしあまり活用されていないのであれば、「一定の取組が行われてきたが、十分に活用されていない」とか、そういう認識を書いたほうがいいんじゃないか。実際、この制度があっても使えてないのが現状ではないかと、私は思います。
それから、12ページのところなんですけれども、従来、M.D.が大きな役割を果たしてきて、医学系研究におけるPh.D.の参入が必要というようなことが書いてあるのですが、これは20年ぐらい前の認識ではないかと。参入は十分してきたんだけれども、医学研究、疾患研究に参入したPh.D.の人たちのキャリアパスが支えられてないというのが私は大きな問題じゃないかというふうに思っておりまして、「医学系研究におけるPh.D.の参入をはじめとして」と書いてありますが、「Ph.D.の参入及びキャリアパス支援をはじめとして」といったような文言を入れてはどうかというふうに思いました。
それから、最後、四つ目なんですが、17ページの最初の丸で「フェーズごとに最適な公と民の投資配分を検討し」と書いてあって、その二つ下の丸にはボトムアップが重要だということが書いてあるんですけれども、研究費、ボトムアップが重要なのは確かなんですが、トップダウンが必要で有効に作用してきたという領域もあると思いますので、この「最適な公と民の投資配分を検討し」というところに「最適な公と民及びトップダウンとボトムアップの投資配分を検討し」というふうに入れたらどうだろうかというふうに思いました。
以上です。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
事務局から何かありますでしょうか。よろしいでしょうか。
【釜井ライフサイエンス課長】 ライフサイエンス課長の釜井ですけれども、結構、委員の先生のほうの手が挙がってますので、一括してできれと思いますが、加藤先生の指摘のほうに関連してなんですが、まず、1点目の性差に関しては適正化させていただきたいと思います。
それから、2点目のバイアウトの話なんですが、御指摘のとおり、どこまで浸透しているか。御承知のとおり、数年前の競争的研究費の改革に基づいて政府としてはCSTIを中心としてバイアウトをやってきたというのはあるんですけど、それがどれぐらい浸透しているかというのを含めまして、ちょっとそこは表現を適正化させていただければと思います。
3点目のPh.D.の参入の件につきましては、まさにキャリアパスのほうが形成されないと、実際にその参入のほうが恒常的なものになっていかないと。先生方も御承知のとおり、融合してやっていかないとサイエンス上のほうもブレークスルーが生まれにくくなっているということはあるので、そこをぜひやっていければと思うんですが、御指摘のとおり、キャリアパスの形成の部分につながっていくかどうかというのはやっぱり肝の部分だと思いますので、それをしっかりやっていければと思います。
それから、さっきのトップダウンとボトムアップのバランスの件につきましては、バランスというのがいいのかというのはありますけれども、こちらでしっかり考えたいと思います。
以上です。
【宮園主査】 ありがとうございます。釜井課長からも話がありましたが、今、既に7人の方から手が挙がっておりまして、事務局からの回答は後日になるかもしれませんし、最後にまとめてになるかもしれませんが、皆様の御発言を優先したいと思いますので、よろしくお願いします。
それでは、桜井委員、お願いいたします。
【桜井委員】 ありがとうございます。私のほうは、スタートアップのところに関係して、一言だけコメントを申し上げます。
16ページに「海外ではスタートアップを介した実用化が主流となる中」というような記載がございます。確かにそうでして、この下のほうに「ベンチャー関係者がもつ自立心を国内でも醸成するなど」というふうにありますが、自立心を醸成するというのは、多分、アントレプレナー教育のことかなというふうには想定されるんですけれども、具体的には多分、大学によって、例えばハーバードでは、優秀な人材が集まってきて、自分たちで勝手に花開いてくださいねというのに比べて、MITは大学自体が実践的な教育を提供するなど、大学に合わせて個性が、提供しているプログラムが違います。ですので、この辺りの、「マインドにおける課題に対応する」ということだけではなく、何か実践的なものというところの、実務支援みたいなところの一文があるといいなあと思いました。
以上です。
【宮園主査】 ありがとうございます。
それでは、杉本委員、お願いいたします。
【杉本委員】 私から、2点申し上げたいと思います。
まず、5ページの下のほうですが、Curiosityというのが強調されたのは大変よかったと思うんですけれども、「ゲノム配列が解明できるようになり、「氷山の一角」しかわかっていなかった生命現象と遺伝子配列の関係が明らかになってきている」ということと、5ページの下から3行目に「生物の進化は」というところが書いてあるんですが、これを少し関連づけたほうがいいのではないかということと、あと、進化と生物多様性は表裏一体なので、これまでモデル生物が主要に解析されてきたんですけれども、まだ未解析の生物が有用化合物を持っているということもこれから重要になってくると思いますので、生物の進化と多様性、あるいはゲノム配列も進化と生物多様性の解明につながっているというところをもう少し強調していただくといいかと思いました。
あと、7ページのMissionのところの下のほうなんですけれども、健康・医療の観点以外のMissionのところで、エネルギー、バイオエコノミーなどが書いてあるところですが、そこも先ほどと同様に生物多様性ということを書き加えると、もう少し強調できるといいますか、例えば国連のCOP15でネイチャーポジティブという言葉が出てきていて、生物多様性の損失を食い止めて回復させることも国際的なゴールの一つとなっていますので、そういう点でも生物多様性は重要である、有用化合物などの発見にもつながるということで、それもMissionの中に書き込んでいただけるといいかと思いました。
以上です。
【宮園主査】 どうもありがとうございます。
それでは、上村委員、お願いいたします。
【上村委員】 どうもありがとうございました。私、BINDSのPOやっておりまして、BINDSのことが13ページに書いてあったんですけれども、私、創薬等出口につなげるゲノム解析(ゲノム研究を創薬等出口に繋げる研究開発の強化)というほうもやっていて、今、BINDSの支援だけでも1期目の3,000件というのをもう既に2年で、この時期でも上回っているんですね。結局、先生たちが物すごく大変で、御自身の研究ができないぐらい支援が来ちゃって、物すごい大変なんですね。かといって、例えば、電子顕微鏡、クライオEMなんかはまだまだ足りないという状況でございまして、1台当たりすごく使っているのも、日本が世界で一番稼働率があるというのは、それだけ台数が少ないということなんですね。ですから、先ほどもおっしゃられておりましたけれども、そこにBINDSを基軸として使う。それで、先ほどのゲノムのほうも、ほとんど調整費でやるプロジェクトでございまして、結局、予算としては、みんなBINDSの機器を使うというふうになっているんですね。結局、機器は買わなくてそれを使うということになりますと、物すごくそういう計画的なところにコアファシリティとしても投資をしていくということが、しかも古くなりますので、どんどん新しいものにも計画的に変えていくというか、そういうことも必要で、研究環境課の方ともタイアップしていただいて効率的に充実させていくという政策が、先ほどもおっしゃっておりましたが、本当に重要だというふうにと考えます。
あともう1点は、ゲノムをやっておりますとELSIの問題がすごく重要なんですけど、例えばAMEDの中でも、いろいろプロジェクトによって、その辺の捉え方とか規範が、クライテリアがばらばらしている。ELSIの専門家に言わせると、そこまできつくしなくてもいいというところもあるので、一番アプロプリエートなものを、一つの統一した見解というものをプロジェクトによらずつくっていくということをゲノムのほうで今やっているんですけど、ぜひそれを文科省としてもやっていただければというふうに考えております。
以上、2点でした。どうもありがとうございます。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、坂内委員、お願いいたします。
【坂内委員】 ありがとうございます。11ページの一番下の部分でございますが、「異分野の人材も含めた優秀な人材を、海外に流出させずに日本のライフサイエンス研究現場に呼び込むため」というところでございます。しかし、海外に行くこと自体は悪いことではなく、むしろ交流は推進されるべきところであることを考えますと、気持ちは分かるのですが、無理に「海外に流出させずに」という言葉を入れなくてもいいのではないかと。とにかく日本のライフサイエンスの研究現場に人が来てほしのであれば、日本人だけじゃなくて、海外の優秀な方が来てもいいのですから、こちらの表現の御一考をお願いいたします。
【宮園主査】 ありがとうございます。
それでは、続きまして、有田委員、お願いいたします。
【有田委員】 国立遺伝学研究所の有田です。僕、この文書の細かいところもいろいろ気になるんですけれども、まず、全体としてこれをどう使うのか、20ページを丸々Webにアップしてプレスリリースみたいなことをするのかとか、そういうことが明らかになってなくて、どの程度指摘したらいいのかが分かりませんでした。
例えば、CMMというキャッチフレーズについても、書いてあること自身はすごくいいと思うんですけれども、このCMMって人の頭に残らないんですよね。例えば、M3みたいにMでまとめたほうが人の頭に残るというふうに考えるとなると、僕だったら、Curiosityを含む言葉としてMindsetにしちゃえばM3になるなあとか、いろいろ、もっとアピールする仕方があると思うんです。
それから、この文書の中も、最近の国際情勢というのが、ほとんどという言い方は申し訳ないですけど、うまく反映できていない。例えば、オープンサイエンスというのは昨年のG7でアグリーしたにもかかわらず、オープンという言葉が全くここから抜け落ちている。あと、データベースという言葉の使い方も非常に気になっていて、データベースを推進しましょうっていうと、俺がつくっているデータベースにお金をつけろと言う人が増えるだけであって、今と状況は全く変わらないんですね。ですから、もう少し言葉遣いをアップトゥデイトなものにする。それから、国際情勢、例えば、先ほどネイチャーポジティブの意見も出ましたけれども、グローバルに物事を考えるというのが常識になっているので、もっと地球規模で役に立つライフサイエンスという観点で文章を作っていただきたいと思いました。
以上です。
【宮園主査】 どうもありがとうございます。
今の有田委員の、どういうふうに使うかについては最後に事務局から御返答をお願いいたしたいということで、続きまして、大津委員、お願いいたします。
【大津委員】 ありがとうございます。私のほうからは2点。
1点目、14ページ内の、今、御指摘のあったデータベースのところですけれども、上から四つ目の丸のところで、医療情報の利活用というのは各省で言われているのですが、実際上、イノベーションという観点で考えると、臨床情報の質というのは重要であって、臨床研究とか臨床試験に付随した検体での質の高いリバーストランスレーショナルリサーチというのが非常に重要だというのは、企業もごく常識ですので、この点の記載はちょっと改めたほうがいいのかなあと。質の高い臨床情報をデータベース化するというふうにしたほうがいいんじゃないかなと思います。
それから、2点目は16ページのところになりますけれども、下から三つ目のところで、企業との人材交流というのは非常に重要だと思いますが、その後の「企業等からの寄附を活用した」ということですけど、今のCOIの観点等でこれは難しいと思うので、「企業等との共同研究」というふうに改めたほうがいいのではないかと感じました。
私のほうからは、以上でございます。
【宮園主査】 どうもありがとうございます。
続きまして、木下委員、お願いいたします。
【木下委員】 私からも2点ぐらい。
1点目は非常に軽い話ですけども、12ページと14ページにバイオインフォマティクス人材という言葉が出てきます。12ページのほうが多分シリアスだと思うんですけども、「今後、特に重要になるのは」という言い方をしていますが、もう10年前から「今後重要になるのは」というのを言い続けているような気がして、さすがに、これをどう使われるかというのは後ほどもうちょっとはっきりするにしても、この委員会の言葉として残すのはじくじたる思いがあるなというので、もうちょっと言葉を検討いただければなというふうに思います。というのは、当たり前のように必要だということを踏まえた上で、次に、足りないと言われている人材をどうするのかということをもうちょっと前向きに言うといいんじゃないかなというふうに思いました。
同じ言葉は14ページにも出てきます。そこでは、「新しいバイオインフォマティクス人材」という、また謎の職種が生まれています。それは、既にあるバイオインフォマティクス人材にAIとかそういうところが加わると新しいバイオインフォマティクス人材になるのかなというふうに読めないことはないですけども、ちょっと文章としてこなれてないなあというふうに思いますので、この辺り、ちょっと御検討くださいというのが1点です。
もう1点は、同じページのところの「また、ライフサイエンス研究においては」という利活用に関して述べている次の丸のところなんですけども、医療情報の利活用だけが容易ではないように書かれているのですが、先ほど上村先生がおっしゃったのかな? ゲノム情報とか、そういうところで倫理とか何とかのいろんな壁があるので、ヒューマンバイオロジーについてもどこかで触れていただいていたと思うんですけども、その利活用に関して、今、倫理審査の壁が物すごく高いように感じています。壁というのはもちろん、やっちゃいけないことを抑止するという意味ではきちんとあるべきだとは思うんですけど、その一方で、結構時間がかかるんです。しかも、他施設のデータを併せて研究しようと思ったときには、中央一括でやれたりしますけども、それでもより多くの時間がかかるということで、データサイエンスの観点から言うと全く時代に逆行しているような審査基準になっています。だから、3省の倫理指針に関して、侵襲性を持って試料を取るところに関してはきっちり倫理審査はやるべきだと思いますけども、データの利活用に関しては、この時代、もうちょっと簡便に、利活用に振ったような議論がそろそろなされないと、日本の倫理審査でこの分野の研究は数年遅れる可能性があるぐらいの危機感を持っておりますので、ぜひその辺の加筆に関しても御検討いただければと思いました。
以上です。
【宮園主査】 続きまして、畠委員、お願いいたします。
【畠主査代理】 ありがとうございます。内容に関しては網羅的に、私、特に大きな異論はないんですけども、1点だけ、ライフサイエンス研究において研究者倫理の件に言及する必要があるのではないかというふうに思っています。ELSIの件とはちょっと違って、いわゆる研究倫理のところ、特にデータの信頼性ですね。最終的に社会実装という項目もありましたので、やはりその辺りの、特にサイエンス研究の場合はそういった研究倫理的なところが重要であるような記載が、探し切れなかったのかもしれませんが、必要なのではないかなあというふうに思いました。
私からは、以上です。
【宮園主査】 どうもありがとうございます。
続きまして、金田委員、お願いいたします。
【金田委員】 私は2点あります。1点は、15ページのところで「基礎研究から社会実装、イノベーションへの実装、社会貢献へ」というところまで触れていただいているのは、私、すごく重要な点かなあというふうに思うんです。ただ、こういうことを実際にやっていこうとすると、知財の確保が非常に重要なのにもかかわらず、その言葉が出てこない。私は十分見つけられないんですけど、出てないように思うんですね。やはり、論文書く前に必ず知財を取って、できるだけ強い特許を取るというところが基本になると思っていますので、そういうことをどこかに記載、特に15ページの辺りに記載いただければというふうに思っています。
それから、これはどなたかが言われたかもしれないですが、異分野連携のところで、私自身は今、大学で活動していて思うんですけど、やってくださいと言っても、研究者同士がなかなか、自発的に異分野の人たちが集まって議論するということはなかなか難しいです。これは実際にトップダウンで、こういう人たちを集めて議論をしてくださいと。それで、それぞれの研究で啓発されるようなことが何か出てくれば新たな研究が出てくるというふうに感じておりますし、私自身、今までもそういう手応えを何回か感じておりますので、それを盛り込むかどうかは別だけど、異分野連携のところではかなりトップダウンで、そういう研究者同士をマッチングさせる、議論をさせるというようなことがすごく重要だということは念頭に置いていただければというふうに思っております。
以上です。
【宮園主査】 どうもありがとうございます。
それでは、山本委員、お願いいたします。
【山本委員】 ありがとうございます。全体に、非常にいろいろ意見をまとめて作っていただいたというふうに感じておりますが、私からは1点です。
既にほかの委員からもありましたけれども、異分野というか、特に情報系の方の参入というのは古過ぎるという御意見がさっきありましたが、私もそう思います。私、先月、学会ついでにジョージ・ワシントン大の知人の統計家を訪ねて職場見学させてもらったんですけど、医学部の中に100人単位のバイオスタティックセンターがあって、100人のうちの多分六、七十人は統計家で、もちろんテニュアを持った教授が複数いらっしゃって、中には統計家がリーダーになってNIHの事業費を取って、そのチームの中に医者を入れるというような形で運用されてましたので、もう逆転しているんですよね。リーダーシップも統計家が取るような研究が複数出てきていると思います。それがアメリカの中の当然ということになっているのに、この報告書を読んでいても、日本は今、医者がメインで、生命学の生物系というか、医学系研究者がメインで、そこにお手伝いをするような形で入ってもらうというような書き方になってますし、バイオインフォマティクスも、今、こういう需要があるのでそういう人を入れるというような感じになっていて、医学系研究者と同等のレベルの情報系の研究者を医学の中に招き入れて育てる、そして登用するという雰囲気がない。あくまでお手伝いという感じでしか読めない、伝わってこないところがありますので、そこについて、医学系の研究者の中で情報系の人たちが登用されて、しかも、キャリアアップができて、リーダーシップも発揮できるような状況に持っていくということを念頭に少し書いていただければと思いました。
以上でございます。
【宮園主査】 ありがとうございます。
それでは、最後、鹿野委員、お願いいたします。
【鹿野委員】 ありがとうございます。大体、ほかの先生方の御意見はほとんど私も感じるところですが、今まで出てこなかった話を1点、追加でお話しさせていただきたいと思います。
13ページの下から二つ目の丸のところに、計測・解析機器の開発という話があるかと思います。これは今まで私が医療機器関連のところに関わってきて感じたんですけれども、医療機器の開発、新しいものからって、いわゆる国際標準を取っていくということと同じになるんですね。ちょっと前にもそのお話はさせていただいたかもしれないんですけども、そこは日本の医療機器企業メーカーの人たちが手弁当で対応していて、ISOとかIECの会議に出ているんですよ。標準は恐らく日本のデマケで言うと経産省の管轄になるんだと思うんですけど、でも、ライフサイエンス系の医療機器になると経産省のほうはあまりやってなくて、結局、実際に研究している先生方が対応せざるを得ないということになっていますが、あまり認識されてない、特に研究者の間でさほど認識されてないと思いますので、それも含めて、データとかデータ標準の話は出ていましたけど、そういうこともあると思うのですが、国際標準への対応というのは特に機器関係は重要になりますので、それをここに1点加えていただいて、それも意識した形で研究が進められるように仕組みを構築していただきたいなと思いました。これ、今、中国はすごい力を入れていて、特に中国の機器の開発って物すごく早いんですけど、ISOの会議を積極的に中国が主導して開催していたりしますので、皆さんにそういう問題があるということを意識していただく上でも、そこを少し触れておいていただければと思います。
以上です。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
時間の関係で皆様のコメント・御意見に全てお答えするのはちょっと難しいかと思いますが、事務局から、特にこの中間とりまとめは今後どのように展開していくかということも含めまして、御発言をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
【釜井ライフサイエンス課長】 ライフサイエンス課長の釜井です。しっかり事務局としては受け止めるということにさせていただきたいと思いますので、かいつまんでお答えのほうをいたします。
まず、桜井先生のほうからの、起業家目線、それから実践的になった上での伴走支援というのはちょっとフェーズが違いますので、そこは書き分けて、それぞれ追加します。
それから、杉本先生のほうの多様性と進化をひもづけてということと、あと、Mission志向で行ったときに、おっしゃるとおり、ネイチャーポジティブ、サステナビリティ、グローバルコモンズの観点がありますので、そちらも追記していきたいと思います。
それから、上村先生におかれましては、BINDSをここまで支援してくださいまして、ありがとうございます。我々、コミュニティのほうからも非常に信頼性の高いものだとは思っております。そういう中で、BINDSのキャパシティのほうはどうかというのもありますし、あとは計画的に更新していくことも重要です。他方、BINDSのほうの役割については、コアファシリティ化というのは今後ますます必要になってくると思いますので、ぜひしっかりやっていければと思います。
それから、ELSIの話がございましたが、全体としてAMEDで見た場合に、今、三島理事長の改革によりまして、社会共創と、全般的にそういう倫理的な側面というのを強化していきたいということがあると思いますので、しっかりやっていければと思います。
坂内先生からのコメントで、「流出させずに」ということはおっしゃるとおりのところでございますので、そこは削除させていただきます。
それから、有田先生のほうからのコメントで、この報告書がどういうふうに反映されていくのかということなんですが、前もちょっと御説明のほうはしたかもしれませんけれども、実際の議論の経過というふうなことにつきましては、内閣府、関係省庁等にも共有しながらやっておりまして、実はこの報告書のエッセンスの一部というのは、統合イノベーション戦略推進会議のほうで決定されましたバイオエコノミー戦略で反映されているところでございます。ただ、来年、「健康・医療戦略」と「健康・医療戦略」の推進基本計画のほうがまとまっていきまして、今まさにそれを内閣府のほうが関係省庁と協力しながらやっているところだと思いますので、そういったところについては、我々としては反映するように働きかけのほうを適時していければというふうに思っているところでございます。
それから、表題のところにつきましては、各先生のほうにも事前にお伺いさせていただきましたが、もっとキャッチーな表題とかがいいとか、そういうのがありましたら、これは委員の先生方が構成員となっておまとめになる報告書でございますので、そういったところで追加すべきような副題とかございましたら、ぜひよろしくお願いできればと思います。
大津先生のほうからありました臨床情報の関係についてはおっしゃるとおりだと思いますし、寄附の表現のところについては、適宜、こちらのほうでも見直したいと思います。
それから、木下先生のバイオインフォマティクス人材のところにつきましては、おっしゃるとおりで、ずっと前から、10年前、20年前から御指摘されていて、ただ、それをちゃんとやり切るということが大事だと思っていますので、そういった観点で修正のほうとかをしていければというふうに思います。
畠先生のほうから、研究倫理、研究者のデータを信頼性のあるものとして輩出していくという点につきましては、ちょっと表現ぶりとかを考えたいと思っております。
それから、金田先生のほうから御指摘ありました、実用化まで持っていく、それに当たっての人材のほうが大事だという点につきましては、おっしゃるとおりだと思いますので、追記のほうを考えていきたいと思います。
金田先生の後半と、山本先生のほうから話がありました異分野とのいい形での連携に当たりましては、まさに繰り返しなんですけれども、M.D.以外のPh.D.の方が研究をやるインセンティブのほうがちゃんと研究所に示していかないといけないというところだと思いますので、ぜひ、そのやり方も含めて考えていければと思いますのと、あと、例えば異分野連携をするに当たっては、アカデミアサイドのほうから言うと評価の仕方とかも結構課題になってくると思いますので、その辺りをしっかりやっていければと思います。
それから、鹿野先生の御指摘の点では、医療機器の国際標準化は経産省のほうと連携しながらということだと思うのですが、計測の、実験機器のISOとか国際標準化につきましては、こちらのほうでも考えていきたいと思っておりますので、しっかり検討をしていければと思います。
長々としていますが、以上でございます。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
そうしますと、本とりまとめ案につきましては、皆様から基本的には御承認いただいたと考えまして、本日の御意見を踏まえまして、事務局と私のほうで検討しながら修正させていただきまして、必要に応じまして御発言いただきました委員の皆様には確認させていただいた上で、ライフサイエンス委員会による中間とりまとめとして決定させていただければと思います。よろしいでしょうか。
それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
では、次の議題に移ります。二つ目の議題は、今後の医学教育の在り方に関する検討会等についてです。まず、検討会の事務局であります高等教育局の医学教育課より、検討会における議論や検討状況の御発表をお願いいたします。続いて、ライフサイエンス委員会事務局より、今後の取組の方向性について発表いただきまして、その後、両発表について委員の皆様からの御意見をいただきたいと思います。
それでは、よろしくお願いいたします。
【俵医学教育課長】 先生、ありがとうございます。文部科学省医学教育課の俵です。今の中間とりまとめの中にも、大学病院・医学部の人材育成あるいは研究力の向上について、取り上げていただいています。ありがとうございます。高等教育局の中でも、医学教育の在り方に関する検討会ということで、有識者の先生方に集まっていただいて、議論をしていただきました。ここでは研究力あるいは大学病院の在り方に関しても議論をいただいていますので、その内容について、大学病院の研究環境も併せ、紹介・説明をさせていただいて、今日の議論につなげていただければというふうに思います。よろしくお願いします。
最初のページをお願いします。最初に、大学病院の研究環境ということで紹介したいというふうに思います。次のページ、お願いします。
これは、国立大学に関してになりますが、大学病院の収益と費用について、ざっとまとめたものです。収益に関しては大体、病院収益が83%、運営費交付金が7.3%、そのほかは、共同研究や受託研究は大体2%の収益になっているというのが現状です。その下、費用を見ていただくと、大体、6割が診療に必要な経費で、4割が人件費と、そんな状況になっています。次のページ、お願いします。
これは、平成22年からの国立大学病院全体の収入と支出を整理したものです。大学病院は、法人化以降、頑張って収入を上げようということで、青い棒グラフが収入になっていますが、ずーっと収入は増えている状況です。ただ、併せて支出も増えていて、赤い折れ線グラフが収益になりますけども、令和元年度までずーっと、黒字にはなっているものの、収益は減っている状況になっています。コロナのときに補助金があったのでぐっと伸びた状況はありますが、コロナの補助金が切れて、恐らくR5に関しては結構赤字のところが出てくる、そんな病院の状況になっています。次のページ、お願いします。
先ほど収入が上がっているのに合わせ支出が上がっているということがありましたが、後で出てきますけども、診療の増加に伴って職員あるいは医師の数もぐっと増えている状況があります。次のページ、お願いします。
手術件数、新しく入院される患者さんの数、外来患者の数を見ると、ぐっと増えていて、収入を増やそうということがある一方で、仕事も増えているというのが現状です。次のページ、お願いします。
これは分野ごとに研究時間の割合を見たものですけど、緑で囲んだ保健分野で見ると、ほかの分野と比べて31%ということで、研究の時間が少ない状況が分かると思います。次のページ、お願いします。
これは、基礎医学と臨床医学について、平成14年から平成30年に向けての推移を調べたものです。基礎医学のほう見ていただくと、73%だったものが56%ということで、減っているものの、一定確保できているという状況かなあと思います。臨床医学を見ていただくと、32%だったものが15.4%ということで、どうしても診療が増えることに伴って研究時間が確保できていないという状況が分かると思います。次のページ、お願いします。
これは最新で、昨年度に見た調査になりますけども、左側は同じく研究時間の割合を示していて、70.7%が診療、その隣の12%が研究という状況になっています。右側は、1週間の中にどれぐらい研究時間が取れているかという内容になりますけども、15%が研究時間はゼロで、約49.7%が5時間以内という状況になっています。次のページ、お願いします。
これは勤務時間短縮に向けてどんな取組を行っているかというのをアンケート形式で確認したものですけども、複数の主治医でチームを編成しているとか、あと、一番下の黄色のところになりますが、オンコール体制を執ることで宿日直を縮減するとか、そういった取組を行っているというのが実態です。次のページ、お願いします。
研究時間の確保のためにはどんな取組を行っているかということで言うと、研究日あるいは時間を設定したり、病棟の業務を免除したり、外来業務を免除したり、そんな取組をしながら研究時間を何とか確保しようと、そんなような状況になっています。次のページ、お願いします。
これは1人の助教の先生の1週間の状況を確認させてもらったものになりますが、昨年度、実は一昨年度になりますけど、昨年度のところで見ると、研究時間、濃いオレンジのところが研究時間になりますが、ほとんど19時以降にやっているというような状況です。右側になりますけども、その中で何とか研究日というのを半日ぐらい確保してもらったりしながら、ほかの先生の協力を得ながら、研究日を設けて研究時間を何とか確保しているというのが、この状況になります。
じゃあ研究力はどうか、見ていただきたいというふうに思います。これも何となく先生方は御存じのことかと思いますけども、次のページ、お願いします。
基礎研究、基礎生命科学の論文で見ると、日本は増加率が111%にとどまっている。日本も頑張ってはいるんですけども、ほかの国はもっと頑張っていて、国際的に見るとどうしても及ばないという状況が分かると思います。臨床医学、これは基礎医学よりもさらに頑張っていて、増加率は148%ということになっていますが、ここに関してもほかの国は増加率がより高いという状況になっています。次のページ、お願いします。
20年前と比較して、Top 10%論文の状況がどうかを見たものです。基礎生命で言うと、4位だったものが12位になっている。次のページ、お願いします。
臨床医学は4位から9位で、臨床医学に関しては、Top 10%論文の数に関しては増えてはいるものの、やはり世界と比較すると伸び率が弱いという状況かと思います。次のページ、お願いします。
これは、昨年度の『Nature』の中で、Top 10%論文の日本の国際シェアが20年間で6%から2%まで低迷しているということが、最初の黒字の太いところで書かれています。黄色のところになりますが、「特に医学分野では若い研究者は診療に多くのエフォートを割いている実態がある」ということとか、次の黒字になりますが、「研究支援人材についても日本の大学は他国に比べて少なく」と、そんなことも指摘されている状況です。次のページ、お願いします。
これは、臨床医学分野について、各大学のTop 10%論文の数と、いわゆるQ値について調べたものです。この大学に関しては、左から大学病院の予算規模の多い順に並べていまして、黒丸は厚生労働省の臨床研究中核病院に認定されているかどうかを分かるように示したものです。青いグラフが論文の数、オレンジのグラフがTop 10%論文、赤い丸が論文の数に占めるTop 10%論文の数、いわゆるQ値で、質の高さが分かるかと思います。Top 10%論文の数はおおむね大学病院の規模に応じた形で、その数が分かるかと思いますが、この赤い丸に関して言うと結構ばらけているので、質の高さで見ると、それぞれの大学が頑張っているのかなあというのが分かるかと思います。次のページ、お願いします。
これは公立と私立に関して見たものですけど、公立で言うと横浜市立大学、私立で言うと順天堂と慶応義塾大学がTop 10%論文や論文の数で言うと秀でているのかなあというのが分かるかと思います。次のページ、お願いします。
これは治験の数ですけども、臨床研究中核病院とそれ以外で比較したものでして、実はこれ、基のデータとして各大学にあるんですが、公表されてないみたいなので、表でまとめてみました。臨床研究中核病院だけではなくて、臨床研究中核病院以外も一定の治験をやっているというのが分かると思います。これは後に出てくる今年度の当初予算での取組の中にも出てきますけども、研究を行う場合に重点支援というのがどうしても大事になってくるとは思うのですが、各大学の特色というものがあると思いますので、それも踏まえた支援というのが大事になっているかなあということもありまして、ちょっと紹介をさせていただきました。次のページ、お願いします。
働き方改革がこの4月から始まったということで、ここに書いているように、いわゆる一般的には720時間ところ、医師の方は960時間、少し長いですけど、上限は規制が適用になってくると。当面の10年間ぐらいは、ほかの病院で働いている方とか救急で働く方については1,860時間まで可能ということになりますけども、やはり働き方改革進めなきゃいけないということと、10年後にはこの特例もなくなるということも踏まえた対応をしていかなきゃいけないというところがあると思います。次のページ、お願いします。
右側の円グラフは、35.3%と書いていますが、5万人ぐらいの医師の方々のうち、さっきの救急だったり、ほかの病院で働くだったり、特例を申請する方々が大体35%もまだいるということで、これらの先生方の短縮も含めたことを考えていかなきゃいけないということです。次のページ、お願いします。
どんな取組をしてきたかというと、これは検討会で議論をいただいて、今年度あるいは特例申請が終わる10年後を考えると、診療はなかなか減らせないと思うので、一番しわ寄せが行くのは教育・研究だろうということで、この研究時間をどう確保していくのかというのが課題だろうということで、議論をしてきました。次のページ、お願いします。
一番上の大学病院改革の方向性のところを見ていただいて、まず、大学病院においても、運営、人員、教育・研究・診療、財務の観点から自己改革が必要というのが一つあります。国としては、その改革に応じた支援を行うことが重要だということを議論いただきました。その改革の内容に関しては、運営、人員、教育・研究・診療、それぞれ重要な視点を指摘いただいているという状況です。次のページ、お願いします。
この指摘も踏まえて、この6月をめどに大学病院においては改革プランをつくってもらおうということで、ガイドラインを国で用意して、これも参考にしていただきながら、赤字で書いてある、運営、教育・研究、診療、財務・経営と、この四つの改革の観点を含めたプランをつくってもらおうということで、今、検討をいただいている状況です。次のページ、お願いします。
そこに対して国としては、大きく言うと3点、大学病院の医療設備の整備と、次のダイヤのところにありますが、人材養成という観点で、教育・研究支援者の雇用経費を中心にした、人件費の支援をしていくと。3点目、これはちょっと研究とは離れますが、大学病院において医師派遣ということで近隣の病院に医師を派遣していますので、その取組に対しての支援をおおむね100億規模の予算で厚生労働省から支援をしてもらっているという状況です。次のページ、お願いします。
先ほどの人件費に関しては二つのタイプに分けて支援を行うということで、今、公募が終わったので選定委員会による選定というプロセスに入っていますが、左側は、基礎と臨床研究を一体的に取り組むことで臨床研究の強化を行おうという取組に対する支援で、大体10件程度を想定しています。右側は、特に特色のある臨床研究を強化していこうという取組に対して支援しようということで、大体25件程度を考えている。それぞれ、13件、52件の申請をいただいているという状況です。次のページ、お願いします。
昨年度の9月に1回まとめているんですけど、今回また、改めて5月に中間まとめをいただきました。次のページ、お願いします。
ここでは、研究の充実に向けた取組ということで、(2)のところに書いていますが、研究医を増員する方策についての検討と、学部の段階での研究マインドの醸成。それと、(2)の最後のポツになりますが、大学院の魅力向上に向けた取組、こういった指摘もいただいています。(3)のところに研究環境の整備ということで指摘をいただいていまして、大学の研究力の向上に向けた環境整備の取組が大事ということも、指摘をいただいています。次のページ、お願いします。
これは政府の中での議論になりますが、創薬の取組についても議論をいただいていて、次のページになりますけども、薬剤師あるいは医学部・薬学部の教育の段階からの人材育成の取組の重要性と、大学病院関係ということで書いていますが、創薬の観点でも大学病院の研究開発力の向上に向けた環境整備が重要という指摘もいただいていますので、今回、高等局だけではなくて、研究振興局ライフサイエンス課とも一緒になって、研究力の強化に向けて大学病院の支援について取り組んでいきたいというふうに考えています。
以上です。よろしくお願いします。
【宮園主査】 どうもありがとうございます。
それでは、続きまして、ライフサイエンス委員会事務局にお願いいたします。
【廣瀨ライフサイエンス課課長補佐】 ライフサイエンス課の廣瀨でございます。続きまして、先ほど俵課長のほうからも少し言及がございました、医学教育課とライフサイエンス課のほうで考えております今後の取組につきまして、少し述べさせていただければというふうに思います。
1ページ目のところに、今御紹介いただきました医学教育の検討会の取りまとめと、先ほど御議論いただきましたライフサイエンス委員会の中間とりまとめ(案)が抜粋されておりますけれども、両方の取りまとめのほうで国として具体的な支援策を講じることが求められているところでございます。こちら、取組としてどのようなことをしていくことが必要かということは今後具体的に詰めていかなければいけないとは思っているんですけども、その議論の過程につきまして、少し御紹介させていただければというふうに思います。
このスライドの下のほうを御覧いただけばと思うんですけれども、医学系研究の研究力の向上を目指していくためには、大学病院・医学部に所属する医師の研究時間の確保を推進することとともに、限られた研究時間の中で研究成果を最大化する取組が必要かというふうに考えておりまして、そのためには、機関(大学病院・医学部)による環境の整備、それから個人・チームによる研究活動の支援を同時に推進していくスキームが必要なのではないかというふうに考えております。また、その際、先ほどライフサイエンス委員会の取りまとめの議論の中でも出てきましたけれども、分野融合やPh.D.人材の呼び込みということ、こちらは随分昔から言われているといったことはあった一方で、まだ十分されているわけではないかというふうに思いますので、そういった流動性向上・頭脳循環といったことも併せて行っていくことによりまして、研究力の向上を図っていくといったことを考えていきたいというふうに考えております。
こちら、新たな取組のイメージというところで、まだあらあらのものではございますけれども、今後の方向性につきまして、考えさせていただいております。大きな方向性といたしましては、人材育成や研究力向上に取り組む機関、大学の取組を支援していくということ。また、そういった大学の取組への支援というものと、大学を通じた研究者・チームの研究活動の支援といったものを一体的に行っていくという、その両面から支援というものが重要かなというふうに考えております。その具体的なスキーム、こちらもまだ、また様々な議論をしながらかとは思うんですけども、まずは大学において人材育成や研究力向上に向けた計画をつくっていただく。そしてその中に、先ほど医学教育課さんのほうの議論にもあったかと思うんですけども、大学として人材育成や研究力向上に資する、こういったものに記載させていただいての取組といったものを盛り込んでいただく、コミットしていただくといったことがまずあるかなというふうに思っております。
その一方で、大学において個人なりチームの研究者というものを選抜していただきまして、選ばれた研究者・チームは、ほかの研究者と連携・分担した研究体制の構築、DXの推進、研究支援人材の活用等を行いまして、研究時間の確保、また、限られた研究時間の中での研究成果の最大化に取り組んでいただく。そういったことを推進することがあり得るんじゃないかというふうに考えております。その際、単にあらゆる研究者を支援するというよりは、国家的・社会的な健康・医療戦略上の課題への対応といった観点についても検討すべきじゃないかというふうに考えております。また、その際、国等は研究費等を支援することとしていますが、バイアウトはなかなか使われてないんじゃないかといった御意見もあったかとは思うんですけども、診療についてバイアウトするのも可能かと思いますので、そういった研究費の支援と研究時間の確保はある種一体的な支援が適切と思いますし、また、そういった研究費を支援をするに当たりまして、国として重点的に支援する研究人材像を示すですとか、優秀な人材を引きつけるための研究活動に対するインセンティブ方策についても、今後、議論をしていく必要があるんじゃないかと考えております。まだイメージ段階でございますけど、こういった取組といったものを考えておりまして、今後とも、医学教育課とライフサイエンス課のほうで連携して考えていきたいというふうに考えております。
もう1点、これとは別のメニューにはなるんですけれども、別途、革新的先端研究開発支援事業、AMED-CRESTやPRIMEを支援する事業でございますが、そちらの事業における新メニューの創設といったものを考えています。こちらもライフサイエンス委員会の中間とりまとめのほうで御提言いただいたものでございます。こちら、事業といたしましては戦略的創造研究推進事業、革新的先端研究開発支援事業の中で組織の枠を超えた分野横断的な研究を推進するということを通じまして、先ほどの大学病院・医学部の支援は一定程度臨床研究に近いところかもしませんけども、こちらは基礎生命科学への代表的な支援事業として確立しています。この事業においても人材育成に関する支援というのは大事かというふうに考えております。こちらの革新先端事業でございますけれども、若手研究者の人材育成の観点からいたしますと、PRIMEにつきましては必ずしも若手研究者を支援するプログラムとはなってはいないという指摘もあるところでございます。一方で、独創的・挑戦的な研究が期待でき、将来にわたりライフサイエンス研究に貢献していくような若手研究者を支援していくといった観点が重要であるということから、このPRIMEにおきまして、異分野連携や出口を意識した研究を牽引できるような若手研究者を育成するといった観点から、若い研究者に対象を限定した新たなメニューを創設してはどうかというふうに考えております。こちらは、先ほどの別の事業の別のメニューといたしまして、今後、予算要求に向けまして、省内の検討を進めていきたいというふうに考えております。
ライフサイエンス事務局からの説明は、以上でございます。
【宮園主査】 どうもありがとうございます。
それでは、議論に入ります前に、本日欠席の熊ノ郷委員からコメントをいただいているということで、事務局から紹介をお願いいたします。
【廣瀨ライフサイエンス課課長補佐】 ありがとうございます。それでは、熊ノ郷先生からのコメントを事務局のほうから読み上げさせていただきます。
今回の取組、大変心強く感じており、賛同させていただきます。日本の医学における研究力の低下は、今や危機的な状況を迎えています。その根本的な原因は、次代の医学を切り開く人材の枯渇です。従来は基礎研究者の育成の観点でこれらの議論はなされてきましたが、今や臨床現場においても、なぜかと問いかけることのできる、研究医、フィジシャン・サイエンティストが枯渇しようとしています。研究人材の育成には、1、学部・大学院教育の充実、2、附属病院の強化・支援、3、卒後研修専門医制度の効率化・改善、大学院研究医のインセンティブの工夫が3本の矢で重要で、この三つのうちの一つが欠けても研究人材の育成はできません。今回の中間とりまとめの提言は、この中の2にまず焦点を絞った取組と理解しております。中間取りまとめの中にあるように、医学のさらなる発展のためには、他分野の研究者が垣根なく医学研究に関わる環境や仕組みが必須です。それと同じく、また、ある意味それ以上に効率的なのは、6年間、医学を学び、初期・後期研修を通じて皮膚感覚で患者さんや疾患と対峙してきた医学部生・医師を医学研究にいかに関わらせるかということだと思います。研究には裾野が重要です。
追加のコメントとして、今回は触れられていない3について、触れさせていただきます。国際認証のための実習の前倒しと長期化、臨床実習前評価の共通試験化、卒後の初期研修・後期研修以降の専門医取得プログラムは、それぞれ管轄が違うこともあり、内容に重複が多く、例えると運転免許を取るのに何度も教習所実習を受けるような状況になっています。教習所で一通り技術をマスターした後は、一般道に出たほうが運転技術は上がります。F1レーサーは、教習所を複数繰り返し経ても、生まれてきません。また、大学院入学や研究を行うことのインセンティブが卒後の研修制度の中でフォローされていないという点も、現状の大きな問題点です。今回の中間取りまとめをまず第1の矢として、今後、第2、第3の矢を放っていくことが重要と考えます。
以上でございます。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
それでは、ただいま御説明がありました医学教育の在り方に関して、質疑応答に移りたいと思います。発表に関する御質問、御意見がございましたら、ぜひお願いいたします。いかがでしょうか。
坂内委員、お願いいたします。
【坂内委員】 今見えている資料でございますが、文科省の方にお伺いしたいのですが、最後のページをお願いいたします。
こちらのページでは若手研究者の支援ということを重点的に書いてあるかと思いますが、今、若手だけに絞っていいのでしょうかという疑問がございます。例えば、AI、数理、工学といった異分野を現役の人は無理なのでしょうか。研究時間がなかったり、臨床が忙しかったり、数が少なくなっている中で、あまり年代で分けないほうがいいのではというふうに思いました。
【宮園主査】 それでは、続けて、コメントをお願いいたします。宮田委員、お願いいたします。
【宮田委員】 ありがとうございます。臨床系の独立PIの件というのは本当に重要な話で、ぜひ今後もこれを継続的に進めていただきたいと思っております。これまで、臨床の現場でも基礎研究がメインだったときには、講座の中でいろんなものが完結してきたと思うんですね。そもそも講座制というのは地域の関連病院などをまとめていくために非常に重要なコアであったと思うのですが、先ほどあったように、臨床研究をやるとなると、治験を含めて高額な研究費をどうやってつくってくるのか、また、様々なステップを効率よくやっていかなきゃいけない。必ずしも臨床の教授が全てそういうことを分かっているわけではないと思います。また、ビッグデータを使って人工知能をやるとしても、これまでの研究分野とがらっと変わってしまうので、そういった人たちを研究の場でどうやって生かしていくかということで、本学に関してはまだまだできてはいないんですけれども、やろうとしている一つは、新しく講座の長とは別にメンターをつくって、例えば、そういった独立PIが独立していけるように、講座とは独立しながら、例えば治験をやったり、場合によってはスタートアップをしながら長期的な臨床試験やっていくような考え方であるとか、ビッグデータを使えるような、そういったことをメンタリングする。これは、橋渡し研究機関などの支援機関とは違って、完全にメンタリングなので、そういった形をやってある程度育成していかなきゃいけないだろうということで、そんなことができたらいいということでやっています。
今、一つ前の委員の方がおっしゃっていましたけれども、もちろん啓発啓蒙活動としては若い方がいいと思いますが、実際に、治験を含めた現場をある程度知った方のほうが、むしろそういう意味では独立系のPIとして後世を育成するために伸びていただきたいとも思っていますので、私も、かなり若い方というよりは、教授は遅いとは思いますけれども、助教、講師辺りでも、そういった方たちが新しい枠組みの中で、講座制とは別個に新しい教育を受けて研究に集中できるようなインフラをつくっていくというのも一つかなあと思っております。
以上です。
【宮園主査】 ありがとうございます。
それでは、加藤委員、お願いいたします。
【加藤委員】 今見えている資料の1枚前の2ページ目の一番下のところなんですけれども、「優秀な人材を研究活動に引き付けるための研究活動に対するインセンティブ」と書いてあるのですが、もし大学病院とか大学医学部が研究できる場所であれば、研究活動ができるということ自体がまさにインセンティブでありまして、優秀な人材を大学病院や大学医学部に引きつけるためのインセンティブ、具体的には、診療とか、教育とか、あるいは生活費を稼ぐためのパート診療、ほとんどの時間をこういったことに食われているので、そういうことなく研究活動に専念できるような環境こそがインセンティブになるんじゃないかというふうに思います。
以上です。
【宮園主査】 どうもありがとうございます。
では、木下委員、お願いいたします。
【木下委員】 ありがとうございます。全体としては特に大きな異論はないですけども、ちょっと不思議だった点と、ちょっと検討いただくといいのかなと思った点を述べたいと思います。
不思議だった点というのは、医学研究だけの話にかなりフォーカスした方向というものの検討ですけども、今、どの分野でも人口減少ということを踏まえて、人がとにかく足らん足らんと言っている状況の中で、その中でどうバランスを取って医学研究を強化するのかということを大前提として議論をせずに、とにかく足りないから何とかしようという議論になっているのは、ちょっと不思議だなあというふうに思いました。
もう1点は、最初のほうの委員何名かもおっしゃってましたけども、そういう状況の中で若手だけを鍛えるというのは、若手があまりないので、多分、ほぼ無理なんです。そういう状況で、一昔前はリカレント教育みたいなことが非常に盛んに言われたのが、最近はあまり言われなくなって、そういう視点というのをこの中に盛り込むことはできないのかなあというふうには思います。
以上です。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
では、有田委員、お願いいたします。
【有田委員】 有田は、若手に関しては、若手と言ってしまっていいと思っています。というのは、年が行った人たちって、教えてもなかなか変わらないんですよね。時間はかかるかもしれませんけど、次の世代を変えていかないと、この状況は変えられない。
今足りない視点は、僕、もう1回強調したいのは、やはりグローバルな視点なんです。COVID-19のことをあたかも忘れたかのような話になっていますけれども、グローバルヘルスということは盛んに言われていたし、それから、気候変動の影響で、これから新しい感染症とか、今までの例えばマラリアなんかもどんどん入ってくる時代になるわけですね。そういったことを若い人にもちゃんと教えて、他国と連携して医療を展開していかなきゃいけない。それから、DXが普及したら、遠隔医療ができるようになるわけです。だから、それを前提とした教育というのは、本当は今すぐ必要だと思っています。
以上です。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
数多くの御意見いただきまして、ありがとうございます。これまでの5人の先生からいただいたコメントにつきまして、事務局から何かございますでしょうか。
【釜井ライフサイエンス課長】 後ほど俵医学教育課長のほうからもあればということなんですけど、まず、ライフサイエンス課の釜井のほうから、お答えのほうをいたします。
まず最初に、坂内先生のほうからコメントがありました、何でも若手というふうなことではなくて、全体をポートフォリオとかで見た上で支援のほうをしていくというのが必要ではないかということでございます。今回、3枚目のほうで提起いたしましたのは、例えばJSTのほうの情報系へのもので言うと、ACT-Xと言って、さきがけとか、そういったもののさらに前の段階の方についての支援メニューもあったので、ほかの方のほうからの御指摘もあってそういうふうなメニューを創設するというのはどうなのかというふうな形で御意見のほうを拝聴しているというのが現状でございますが、繰り返しとして、全体としてファンドを見ていく必要があるというふうに思っていますので、そういった中での御指摘というのを、改めて坂内先生のところに直接お伺いして意見交換のほうをさせていただこうと思っているんですけれども、そういう形で考えております。
それから、宮田先生がおっしゃられたことはおっしゃるとおりでございまして、我々のほうも俵課長のほうと、初めて現場の先生方、現場の医学部・大学病院のほうを結構回っているんですけれども、独立した臨床のPIというのはやっぱり必要というか、そういうのは非常に有効だとは思いますし、メンターというか、そういった形で研究に専念できる環境というのも非常に需要だというふうに考えております。それから、助教とか、講師とか、特に俵課長のほうからも御指摘ありましたが、助教クラスの研究時間というのは現状としてはなかなか課題があってということなので、それをいかに押し上げていくかということが大事だというふうに思います。
それから、加藤先生のほうから御指摘のありましたインセンティブのところなんですけど、大変ありがたく存じます。研究活動のほうではやっぱり、各研究者におきましてはいろんな興味・関心のほうがありますけれども、臨床系の先生だとグラデーションがありまして、本来であれば研究活動のほうをもっとやりたいという先生方も現場に多数いらっしゃるというふうに思っていますので、そういったところをいかに酌み取っていくかということが大事なんじゃないかなというふうに思います。
それから、木下先生のリカレント教育のところにつきましては、検討のほうさせていただければと思います。
有田先生の言われるグローバルヘルス、グローバルな視点でということは、まさにおっしゃるとおりでございまして、資料のほうでは2ページ目のほうに書かせていただいていますけれども、国家的・社会的な課題への対応というのは、ヘルスの観点で言えば、ひいてはグローバルな視点というのは避けられないところだと思いますし、ぜひ積極的に考えていかないといけないと思っていますので、そういった点も取り込みながら、検討のほうを深化していければというふうに考えてございます。
俵課長のほうから、ありますでしょうか。
【俵医学教育課長】 ありがとうございます。研究活動に対するインセンティブ、イコール研究に専念できる環境の整備じゃないかという御意見いただきました。今、釜井課長からもありましたけど、僕らも同じような考えでいます。多分、アメリカなんかを見れば、診療に専念する医師の方と研究に専念する医師の方、ある程度役割分担をしつつ、対応しているんじゃないかなあというふうに思います。今、日本では1人の先生が診療も教育も研究も行っているような状況にあるかと思います。中期的に見れば、そもそもの医師の先生の働き方、あるいは大学病院の在り方、それについても検討を進めたいというふうには思っています。これまで大学病院全体の議論はしてきたんですけども、個々の地域の実情に応じた状況についてはまだ十分ではないところもありますので、そういった視点での検討はやっていきたいと思います。
併せて、短期的な視点という形で、さっきライフサイエンス課から紹介いただいたような形で、研究に専念できる環境を予算的な支援も含めて考えていくと。これは短期的な取組として考えていきたいというふうに思っています。よろしくお願いします。
【宮園主査】 ありがとうございます。
ほか、何かございますでしょうか。
桜井委員、どうぞ。
【桜井委員】 貴重なお話、いろいろありがとうございました。社会実装というところの観点からいきまして、こういった、研究者の先生、若手の先生に手厚くいろいろ支援をされようという取組はすごくいいと思いますが、逆に、教授というか、トップマネジメントをする立場の人たちの意識改革がすごく必要だなと思っています。企業ではプレーヤーなのかマネジャーなのかというところのマインドの教育とかがすごくしっかりしていますので、こういったものを実践的に組立てていくためには、それぞれの役割とか、バックキャスティングして自分の役割を意識していただくような、そんな取組が全体像としてあるといいかなと思いました。ありがとうございます。
【宮園主査】 どうもありがとうございます。
それでは、時間が予定より大分超過しておりますので、3番目の議題に移ります。三つ目の議題はその他としておりますが、今年5月から6月に取りまとめられましたライフサイエンス関係の政府文書につきまして、事務局より説明がございます。よろしくお願いいたします。
【廣瀨ライフサイエンス課課長補佐】 事務局でございます。時間もございますので、簡潔に説明をさせていただければというふうに思います。
この5月から6月に、一つは創薬力構想会議の中間とりまとめ、また、バイオエコノミー戦略という、ライフサイエンスにとっても非常に関わりの深いものが取りまとまりましたので、御報告させていただければというふうに思います。
今画面共有されているものが創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構造会議の中間とりまとめ概要でございまして、こちらは、創薬というところに焦点を当てまして、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス問題、我が国の医薬品産業の国際競争力の低下、産学官を含めた総合的・全体的な戦略・実行体制の欠如といったものを問題意識として取りまとめられたものでございまして、創薬に関して総合的に国策として進めていくといった文書でございます。こちらは、文部科学省の関係といたしましても、戦略目標の右のところに「豊かな基礎研究の蓄積と応用研究の進展」とございまして、基礎研究からシーズを目指していく、そういった観点も重要だというふうに指摘されております。
全体のポンチ絵の中では左下のところでございますけども、アカデミアやスタートアップの絶え間ないシーズ創出・育成ということで、アカデミア・スタートアップの支援でございますとか、知財・ビジネス戦略、また、持続可能な創薬力のための基礎研究の振興、AIやロボティクスとの融合、再生・細胞医療・遺伝子治療といった、我が国に強みのある分野の支援でございますとか、また、先ほど俵課長のほうから御紹介ありましたが、大学病院の研究開発力の向上といったところに関しても言及されております。
こちらは本文の14ページ以降のところでしっかりと記載されておりますので、こちらも後ほど御覧いただければというふうに思います。
あともう一つ、6月3日に取りまとまりました文書といたしまして、バイオエコノミー戦略といったことについても、御説明させていただければというふうに思います。こちらは、ある種、健康・医療とは少しすみ分けられたような形で、諸課題を解決しながら持続可能な経済成長につなげていくといった意味で、バイオテクノロジーをバイオエコノミーにつなげていくといった戦略でございます。実は、バイオエコノミー戦略は、新しくつくったものというよりは、もともとバイオ戦略と言われていたものを改定したものではあるのですが、以前の文書ではあまり、基礎研究、基盤的施策に関しましては記載されてなかったんですけれども、今回、取りまとめのほうと議論をいたしまして、かなり加筆・充実させていただいたというところで、全体のポンチ絵の中では、一番下の黄色いところ、基礎的施策というところで、人材、基盤、基礎研究といったことを盛り込んでいただいております。こちらは、ライフサイエンス委員会において取りまとめました論点整理なども紹介しながら文科省としても議論に参加したものでございまして、ライフサイエンス委員会の議論とも足並みをそろえた形で、国家戦略として取りまとめられたものというふうに考えております。
詳細に関しましては、書いてあるとおりでございまして、こちらも59ページのなかなか膨大な資料でございますけども、50ページからの基礎生命科学の研究力強化というところで、人材育成、研究基盤、基礎研究といったところを記載されておりますので、後ほど御覧いただければというふうに思います。
簡潔でございましたけれども、ライフサイエンス事務局のほうからの二つの政府文書の紹介に関しましては、以上でございます。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
それでは、少し時間を短縮していただきましたけれども、ただいまの説明内容について、お気づきの点、質問、コメントがありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
山本委員、宮田委員の順でお願いいたします。
【山本委員】 ありがとうございます。方向性は別にいいんですけど、ちょっと1点だけ。
多分固定されているので、これはこれで仕方がないと思うんですけれども、資料3-2の創薬力の文書の12ページです。私も当事者なので、当事者の愚痴みたいな感じになってしまいますけれども、治験・臨床試験業務に従事する人材の育成・キャリアトラック整備のところですが、関係している人材を一まとめ、十把一からげにされているような感じで、当事者としては非常に乱暴な書き方だなというふうに感じました。いわゆる支援人材も、どちらかというと研究者に該当する、生物統計家とか、あと、医者もこの中に入っていますし、そういうみんなが支援に対して重要な人材であることは確かで、育成とかキャリアトラック整備は必要だと思いますけども、あまりに問題の違うところを、方向性も違うものを10行以内にまとめてしまっているところが乱暴だなというのと、この領域に対してまだあまり理解が深まってないんだなというのをちょっと感じましたので、一言言わせていただきました。
以上でございます。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
宮田委員、お願いいたします。
【宮田委員】 ありがとうございます。国の創薬力のために大学・アカデミアがやれることというのは、まだ本当に限定的だと思っています。ただ、こういうことをしなきゃいけないということなのでちょっとコメントをさせていただきますが、特にオーファン性の高いところというのはアカデミアがやらなきゃいけないのですが、低分子の第II相まではAMEDのおかげでかなり経験値を積んでいるんですけれども、第III相を実際やってみますと、本当にハードルが一気に上がります。PMDAの戦略相談も使えないので、対面助言だけでも1,000万近いお金が要るということもほとんどの方は知らないと思いますけれども、実際、本当にハードルが高いので、大学がオーファンを含めた研究力競争の中に入っていくためには、今後、また新しい第II相から第III相という大きなハードルをみんなで超えていかなきゃいけないのだろうと思っています。私もバイオ医薬品はいろいろAMEDでさせていただいておりますが、なかなか難しくて、最大のボトルネックというのはものづくりなんですね。核酸、抗体、遺伝子治療、ベクターを含めて全て、大学で工業レベルの製造は難しいので、国内にそういうところがないという限界もあって、そういうところはアカデミアが頑張ってもどうしても乗り越えられないところがあると思いますので、そこは国を挙げて、製造、物をちゃんと作れるようになるといいなと思っています。
また、スタートアップの重要性というのは繰り返し言われていて、それはそのとおりで、医薬品のように長期間、高額医療の場合は、大学あるいは個人がある程度、当たった当たらないでつないでいくというのは難しいので、企業に導出するといってもなかなか難しいので、自分で長期的な視野でもってスタートアップつくるのはいいんですけど、今、たくさんつくれということで、1人1個ずつスタートアップをつくっても要素技術の組合せができなかったりしますので、スタートアップで関連するところをまとめていくような仕組みとか、効率よく、そういったスタートアップみたいなところで関連した研究者がマスとして開発できるような枠組みというのを一方でつくっておかないと、小さいベンチャーがいっぱいできてもしようがないと思いますので、ぜひそこも御検討いただきたいと思います。
【宮園主査】 それでは、続きまして、加藤委員、お願いいたします。
【加藤委員】 創薬力の向上によりという構想会議の中間とりまとめの資料を拝見したんですけれども、創薬の中でも特に中枢創薬というのが非常に困難であって、ほかの領域と比べて開発にはるかに時間がかかる上に成功率も低いというようなことが繰り返し指摘されているかと思います。そして、世界的にもビックファーマーが中枢創薬から撤退しているなんていうことが、大分前にはいろいろ言われました。そういう中で日本の会社は頑張っているということも指摘されてはいたのですが、現実には、やはり中枢創薬は成功率が大変低いので、企業も難しい状態になっていると思います。そういう時間がかかって成功率の低い中枢創薬こそ、アカデミアが頑張らなければならないし、国が支援しなければみたいな視点というのがこの資料の中に一言もなくて、中枢とかという言葉が全く出てこないのが少し残念だなというふうに思いまして、その辺を何とか検討いただければというふうに思いました次第です。
以上です。
【宮園主査】 それでは、有田委員、お願いいたします。
【有田委員】 僕自身は、この資料に書かれている創薬のことをよく知らないので、ぜひ皆さんの意見を採用していただきたいんですけども、僕は、今回の資料全体を通して、環境というキーワードがあまりにも抜け落ち過ぎていると思います。我々は、もっと地球環境のことを考えて、気候変動も含めて地球環境のことを意識した生命科学というのをやっていかないといけないと思いますし、環境と健康ってすごく密接に関連していると思うんですよ。でも、全ての資料の中を通して見ても、環境とか、例えば生物多様性という言葉も一言もないし、本当に基礎科学、特に基礎生物学の人たちが重要視してきたことがごっそり抜け落ちているというのが、僕の今回の印象です。
以上です。
【宮園主査】 どうもありがとうございます。
事務局から、いかがでしょうか。
【釜井ライフサイエンス課長】 ありがとうございます。最初に創薬構想会議のほうの中間とりまとめなんですけど、申し訳ないんですが、これは取りまとまっているということでございまして、ただし、山本先生ないし有田先生のほうから御指摘いただいたことは事務局の内閣府と厚生労働省のほうにもしっかり私のほうから伝えていきたいというふうに思います。
それで、宮田先生のほうから御指摘のありました、III相の話、バイオ創薬、スタートアップの視点というのは、本当におっしゃるとおりだと思います。AMEDも今、第2期から第3期に向けた在り方ということで、三島理事長を中心に、いろいろ関係省が協力して検討のほうはしていますけれども、まさにバイオ医薬品等を念頭に置いた場合の第II相から第III相の在り方、それから、スタートアップのほうとかもどういうふうにユニコーン企業をつくっていくかというのは、多分、問題意識としては非常に一致しているところだと思いますので、ぜひ、協力しながら検討のほうを深めていければと思います。
それから、加藤先生のほうから御指摘ありました中枢、中枢という言い方がいいかというのはあるんですけど、例えば脳科学の中枢神経系のほうの創薬におきましては、非常に足の長いアカデミア発の基礎研究を、バイオ企業、バイオベンチャーのほうと共同研究をやりながらというのはあると思いますし、他方で、日本のパイプラインのほうでは部分的には非常に強い部分というのもありますので、そういった意味では、アカデミアのほうの役割というか、そういったものはこれまで以上に重要になってくると思います。少なくとも文科省といたしましては、そういうふうな視座というのを忘れないように、かつ、今後のいろいろな政策文書のほうにも反映していくようにしていければと思います。
それから、有田先生の、環境、グローバルな視点につきましては、少なくともライフサイエンス委員会の取りまとめの方にはしっかり盛り込んでいきたいと思っておりますし、第3期の「健康・医療戦略」のほうにも、我々のほうとしてもそういった視座を打ち込んでいければと思っていますので、そういったところにつきましては、今後のそういう計画とか、そういったところにおきましても、専門調査会を中心に議論のほうをされていくと思いますけれども、応援のほうをよろしくお願いできればと思います。
以上です。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
それでは、時間が少々過ぎてまいりましたので、今日のライフサイエンス委員会はここまでとさせていただければと思います。
では、事務局から、連絡事項をお願いいたします。
【廣瀨ライフサイエンス課課長補佐】 本日は、活発な御議論いただきまして、誠にありがとうございました。
議事録につきましては、事務局作成の案を委員の皆様にお諮りし、主査の確認を経た後、弊省ホームページにて公開いたします。
次回のライフサイエンス委員会の日程につきましては、既に御連絡させていただいておりますとおり、8月2日、金曜日を予定しております。詳細な議事等は、追って御連絡させていただきます。
事務局は、以上でございます。
【釜井ライフサイエンス課長】 宮園先生、課長の釜井からなんですけれども、今日、中間とりまとめの案文をめぐりまして非常に活発な御意見のほうを賜ったと思っております。もしよろしければということなのですが、細かく御意見いただいたものを事務局として宮園主査の下で調整のほうをいたしまして、各コメントをいただいた先生のほうとも丁寧に調整のほうさせていただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
以上です。
【宮園主査】 どうもありがとうございました。
それでは、時間が過ぎておりますが、今日は、皆様には本当にたくさんの貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。先ほど釜井課長からもありましたが、皆様からいただきました御意見を十分に検討しながら、とりまとめ、その他に反映していきたいと思います。どうぞ、今後もよろしくお願いいたします。
それでは、ライフサイエンス委員会はこれにて閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
―― 了 ――
研究振興局ライフサイエンス課