研究開発評価システム改革検討作業部会(第2回)の主な意見

はじめに

一 基本的考え方

1.目的に応じた評価システムの再構築

  • 事後評価、中間評価の概念はすぐに入るが、事前評価という言葉はあまり普及していない。事前評価である採択審査を評価という観点で位置づけ、事後評価、中間評価と適切な関係を持たせるシステムとして考えることが大事。事前、中間、事後評価の枠組みと考え方をコラムにして書き加えるべき。
  • 追跡評価もコラムに入れるべき。文部科学省の場合、個々の課題について追跡評価をしているが、それはおかしい。むしろ追跡評価でなく追跡調査。追跡評価は本来、制度設計がよかったかどうか、今ほんとうに変えないといけないのかどうかを見るべき。何のための追跡評価なのか、枠組みをきちんと考えておかないといけない。
  • 個々の課題に対する追跡評価は、ケースとしては大規模なもの、特殊なものはあり得るが、小規模のものは普通やらない、むしろプログラムレベルで行う。追跡評価、調査の問題はあるが、あらゆる階層において、事前、中間、事後、追跡の観点で設計することが必要ということが書かれることが大切。
  • 採択時の評価者が報われることも含め、評価者を評価する、何らかの形で評価者にフィードバックする、トラックレコードになるような格好の仕組みをどこかに入れるべき。
  • 評価システムがどのような方向にいくかによって、日本の科学技術コミュニティがどういう性格をもっていくかということに多大な影響を及ぼすと思うので、評価システムを改革するからには、日本のコミュニティをいい方向へ導く視点が必要。
  • 日本の科学技術コミュニティを世界的な水準に高めるためには、「人材の流動性」と「才能の多様性」を頭に置いた評価システムということも含めて、何かそういう視点が必要。コミュニティ全体をもっとダイナミックで活力あるものにするための評価システム改革という視点を入れておくことが必要。
  • 事前、中間、事後評価の途中で委員が交代した場合に、事前評価の考え方を事後評価に引き継ぐといった一貫性の問題について考えてもらいたい。

2.階層構造と階層間の関係が明確化された評価システム群の形成

二 評価システムの当面講ずべき改革の方向性 

1.評価の観点・基準・視点

(1)研究開発に適した評価の観点

(2)研究開発の性格に応じた多様な評価基準

   丸1 「研究者の自由な発想に基づく研究」もあれば「政策課題対応型研究」もある。
      その研究が実施されているプログラムの目的が、学術的な知識の創出の支援にあるのか、
      政策課題対応(問題解決)にあるのかで評価方法・基準が異なるはずであり、
      それらに適した評価のあり方があるのではないか。
   丸2 基礎研究からイノベーション創出に至るまでの広範で多様な研究開発の局面にそれぞれ適した
      多様な評価の視点があるのではないか。
   丸3 新たな研究領域を開拓する挑戦的な研究を促すような評価基準が必要ではないか。

  • 融合はトップダウンで言って進むものではなく、ボトムアップの現場の研究者のディスカッション、プラクティスから生まれるもので、予知は不可能。どう評価するかは、どれだけ基盤を整えているか、どれだけ熱意があるのかということになるが、新しいものを生むことができるかどうかを評価するのはほとんど不可能な状況。
  • 現在の融合領域は、評価の文化ができていないため、結局、人文系から半分、生物系から半分の委員が入って審査を行なっている。学際領域を奨励するような評価方法をつくることは非常に大切。
  • 基礎科学の分野でノーベル賞クラスが生まれた背景や、ほんとうの意味で新しい領域を開拓した者が、あらかじめ仕組まれた融合とか連携によって生まれているのかというと、必ずしもそうではない。アクティビティをしているところに、どれだけ他の分野の人が寄ってきたか、そのオープンさとダイナミックな部分を持っていないと、新しい領域というか、思わぬ創造は生まれない。その要素をどこかに入れておく必要があるのではないか。
  • 予知不可能からノーベル賞が生まれた面は非常に大きいが、予知不可能ということばかり言っていても評価の対象にはならない。問題は、そういう不可能なことも寛容するような精神ではないか。あまり寛容性を強調すると、評価の視点を失ってしまい、そこのバランスは難しいが、ある程度、将来が分らないことに対する寛容性というものを、評価の視点としては、我々が常に持っていなければいけない。
  • 本来研究は、予想以上にとんでもない成果が出て新しい分野ができてしまった、その研究がいろいろな分野に影響を与えた、あるいは方向性が変わったということが一番評価されるわけで、そのような性質を持っている。コラム等で、そのような精神と具体例を入れると読んでいて分りやすい。

(3)研究活動を支える組織、次世代の人材を育成する組織やプログラムの役割を重視する評価の視点

   丸1 ”個人の重視”として、次世代の人材の育成を重視する評価の視点が必要ではないか。
   丸2 ”個人を支える機関の役割”を重視する評価の視点。
   丸3 学際・分野融合やイノベーションは、個人だけでできるものではなく、個人と組織との相互連携、
      それらをつなぐ人の役割が重要。

  • ポスドクのQOLをきちんと考えた評価をしなければいけないとあるが、今の状況を考えるともっとアファーマティブに行うことが必要。事前審査の段階でも研究代表者が、その点を配慮しているかどうか、チェックすることを入れた方がいい。
  • ポスドクは必ず研究者にならなくてはならないというのではなく、社会全体で受け入れるような、それを評価するようなシステムがあるといい。
  • ポスドクの人が頑張れば、講師や准教授になれるという夢を持ってもらうような運営をしなければいけないが、これは評価を超えて社会制度そのもの、我が国の科学文化、科学コミュニティに対して何かしなければいけない。
  • この提言で、そういう提案ができればいいが、現実には、既に書かれているが、次世代の人材を育成するような評価の視点が必要で、科学コミュニティに対するどれだけのアウトプットがあったかということも評価していくことが大切。
  • NIHでは、ポスドク、大学院生1人1人について任務、分担が書いてある。日本は、大学院生の名前やポスドクの名前を書かない申請書が多いので、申請のときに参加してくる人の役割を書くようにするといい。
  • 人材育成の部分を評価する視点は、2世代前の大綱的指針から入っており、形の上では、審査の評価項目の一部に入っている。ただし、判断基準や全体のウェートの中でどうかということがないので、結果的に何の意味もない。それを意味あるものにするためには、目安を示す必要がある。イギリスでは、ファンディング機関がガイドライン設定し成果がでており、日本でも非常に有効ではないか。
  • 任期付きのポスドクを繰り返しても人生の生活設計が立てられない。また、民間企業では博士課程を経た人材を受け入れてもらえないこともあり、社会を変えていかなければいけないという意味でも、個別の研究者や課題の評価だけでなく、施策やプログラムレベルで評価を行っていくべき。
  • 特に、任期的ポジションを経ていくときに、女性のポスドクは大変厳しい状況に置かれており、キャリア支援策についてのガイドラインを設定するところに、女性のポスドク、女性の人材育成にも配慮するという視点を加えていくべき。
  • ここに書かれていることをなんらかの形で具体的に具現化しないとどうにもならない。ここにはその具現化する方法がない。システム中に、ある程度の達成目標を書かない限りは、なかなか理想には近づかないのではないか。
  • 実際に5年間研究を実施し、その後、追跡調査をして、その政策がいいかどうかを判断しようとしたら、少なくとも10年くらいはなければいけないが、最近は、10年目には違うプロジェクトに変わっていることが多い。評価のシステムが政策に反映されるためには、その評価を長い目で見ていくような仕組みが必要。

(4)世界水準の視点での評価

  • 国際評価には、研究成果が漏れてしまう深刻な問題がある。国際評価は絶対に必要で非常に有効であるが、かなり気をつかうし、(招聘の)お金が相当かかる。
  • 研究成果の情報が漏れるということでは、分野によって温度差がある。人文系、情報系はそれほど言っていなかった。
  • 科研費の特別推進では、申請書そのものではなく、業績を主としたサマリーのようなものを外国人に見てもらう妥協的な案となったが、その結果、評価される側から見ると、外国人からきたレポートが有効なものとはいえない状況。
  • 既に日本の研究コミュニティは、国際化しており、「外国人」という標記が誤解を招くおそれがある。外国で活動している研究者という意味ではないか。
  • 日本人でも海外での研究歴が長い人もいるので、日本の科学コミュニティがすでに国際化していることを前提とし、「海外で活動している研究者を評価者に含む」にするか、海外における研究歴(もしくは教育歴)が長い(10年以上など)人も対象としてよい。
  • ベンチマークがない研究でも、ピアレビューの中で、その分野の専門家が国際的なスケールでみたときにどうであるかという視点を入れてはどうか。
  • 機関、組織の評価の際には、海外の人の意見は参考になる。

2.効果的・効率的な評価手法

  • 評価は時間もお金もかかり、それなりの投資が必要。効率的であることは大切だが、評価に対して投資すべきであるということを明確にしておくことが必要。
  • 評価者と被評価者の議論により、評価の重点項目を経時的に設定することは、評価の負担を減らす意味で重要な方法。
  • 研究者にとってみると、終了報告を細かく求められるが、あまりフィードバックされないことが徒労感の原因になっている。事後評価の結果が、次の事前評価に活かされることが重要。

3.研究開発評価に係わる専門人材の育成

(1)評価者、評価専門人材、評価の専門家

   丸1 機関等において、評価の実務や運営に携わり、評価運営の実務的専門性を有する人材の育成と
      キャリアパスの確立。
   丸2 評価対象を分析するための高度な手法を活かし、評価対象の実態を深く把握し評価作業を
      専門的見地から遂行する人材の育成。
   丸3 評価機関、被評価機関の双方において、評価活動を支援することも広義の研究支援の
      一環であり、研究支援態勢の充実に際しては、研究評価に関わる業務にも配慮すべきである。

(2)PD・PO制度改革

   丸1 PD、POの権限と責任の明確化。
   丸2 持続的、安定的、発展的にプログラム・マネジメントを行うために、PD,PO制度、
      人事(キャリアパスを含む)の改革。

  • 評価する専門職を育てるのは基本無理な話かもしれないが、実際問題として必要であると思う。40代前半で研究業績があって優秀な教授を起用して、評価の専門家を若いときから英才教育をしておくことが重要であり、そのためには投資が必要。
  • 評価の本質はピアレビューであるが、評価には、評価に対して見識がない人、バイアスがかかった人も含めた審査の中で、交通整理ができて、いいものを取り上げフィードバックでき、その提案の質を高めていくような審査を作り上げるある程度科学トレーニングを受けた専門人材が必要。
  • 専門人材の育成には、オン・ザ・ジョブだけでは、バイアスもかかるため、大学院の専門教育として作り上げていくことが理想。
  • 日本の企業社会では、博士号取得者を採用しないということが問題になっているが、有力な就職先の一つとして、科学行政や評価の交通整理のような役割もあるということを考えていくことが必要。
  • この提言を通して、投資をしていい評価をする、悪い評価結果であっても循環させ、有効に活用する。しかも研究者側は、そういう評価結果を受け入れるような文化を持つ、ということが成し遂げられたらいい。
  • 評価者を一括りにするのではなく、専門部分を評価する評価者とそれ以外の専門家に分ける。専門部分は、その分野の第一線の評価者のピアレビューとし、なるべく負担なくローテーションするシステムを作る。また、それ以外の専門家については違う方法を考える。その2つの評価者の二人三脚で、はじめていい評価ができるということを書いてはどうか。
  • 第一線の研究者にピアレビューを行ってもらう間、そのかわりに助教をつけてもらっても、研究室の運営を保つのは難しい。現状では、現役の研究者と同じようにピアレビューが行え、かつそのような視点で人材も育てられる退職した研究者を活用せざるを得ないのではないか。
  • 審査はピアレビューで第一線の研究者が行なうべき。ピアレビューの指揮し、研究者の負担を少なくする効率が良い制度を設計するためには、専門家を養成していく以外にない。NIHでは、そういう専門家を上手にリクルートし、大量のマネジメント専門家を抱えている。我々も投資をして、そういう人材を雇っていく、その人たちのキャリアパスをきちんとつけていく時期。学問、科学の文化の中で評価という一つの文化を作り上げる視点が必要。
  • 日本のアカデミズムには、教員と職員しかいないというところに根本的な問題点がある。人材の流動性と価値観の多様性をもって、日本の科学コミュニティを改革すべき。

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科学技術・学術政策局 評価推進室

(科学技術・学術政策局 評価推進室)