第7回研究施設等廃棄物作業部会
平成21年11月2日
・研究施設等廃棄物の処分については、原子力機構を実施主体として行うが、処分に至るまでの廃棄物の輸送・処理については、「発生者責任の原則」の下、各発生者が責任を持って行うこととなっている。
(1)原子力機構から発生する廃棄物 <約35万本※>
・原子力機構から発生する研究施設等廃棄物については、同機構において貯蔵・処理を実施している。
(2)RI廃棄物 <約13万本※>
・集荷・処理を希望する事業者のRI廃棄物については、各事業者が所要の費用を負担した上で、RI協会が集荷・貯蔵・処理事業を実施している。
(3)大学・民間企業等から発生する廃棄物(核燃料物質関係)<約7万本※>
・大学・民間企業等から発生する研究施設等廃棄物(核燃料物質関係)は、それぞれの事業所において保管されている状況。
・RANDECがこれらの廃棄物を安全確実に輸送・保管・処理をし、処分場へ搬出するための事業化(物流システム)に向けた調査研究を平成20年度から3カ年計画で実施中。
※200Lドラム缶換算(H20.3現在)。圧縮・焼却等により埋設処分が可能な形態(廃棄体)となっていない廃棄物を含む。
(参考)原子力発電所から発生する廃棄物
・原子力発電所から発生する低レベル放射性廃棄物は、それぞれの原子力発電所において処理、保管された後、処分を実施している日本原燃株式会社まで輸送されている。
(1)原子力機構から発生する廃棄物については、輸送の具体化が検討されるとともに処理施設の整備が進められているところである。
(2)RI廃棄物については、集荷・処理体系が既に存在している。
(3)大学・民間企業等から発生する廃棄物(核燃料物質関係)については、現時点では輸送・処理体系がなく、以下のような特徴・課題がある。
<特徴>
<大学・民間企業等の発生者自ら輸送・処理を行う場合の課題>
(1)各発生者に対し処理施設を設置・運転するための人材育成や技術的助言等の支援を行うことにより、各自で輸送・処理を行う場合
(2)廃棄物の属性(可燃/難燃/不燃/廃液、放射性物質の種類、放射能レベル、発生施設の種類、運転/解体廃棄物など)や量などに応じてグループ分けし、各グループごとに適切な協力体制を構築する場合
放射能インベントリ(含有核種、放射能濃度、性状など)を体系的に把握することが必要
処理施設建設費・運転費の費用負担や施設の設置場所の確保、廃棄物の集荷といった各グループ内のマネジメントをする者が必要となるとともに、適切にグループ分けするために大学・民間企業等の発生者全体のマネジメントをする者も必要
(3)専門の事業者に研究所等廃棄物の輸送・処理を一元的に委託する場合
(4)(1)~(3)のうち一部を原子力機構に委託する場合
原子力機構の貯蔵能力、処理能力を考慮することが必要
(原子力機構法上は本来業務に支障が無い範囲内で貯蔵・処理を受託できる旨規定)
原子力機構の施設を有効(効率的)に活用するためには、各発生者側において予め廃棄物の十分な分別管理をしておくことが必要
3.RI・研究所等廃棄物処分事業等の実施体制
3-1.基本的な考え方
原子力政策大綱では、放射性廃棄物は、「発生者責任の原則」、「放射性廃棄物最小化の原則」、「合理的な処理・処分の原則」及び「国民との相互理解に基づく実施の原則」の4つの原則のもとで、その影響が有意ではない水準にまで減少するには超長期を要するものも含まれるという特徴を踏まえて適切に区分を行い、それぞれの区分毎に安全に処理・処分することが重要であるとしている。
「発生者責任の原則」は、「放射性廃棄物の発生者はこれを安全に処理・処分する責任を有し、国は、この責任が果たされるよう適切な関与を行う」というものであり、RI・研究所等廃棄物の発生者が、必要な費用を負担して廃棄物の処理・処分を実施する責任を有することを表わす原則である。
なお、RI協会はRI廃棄物の直接の発生者ではないが、廃棄物の発生者から契約により処分の責任が移転されているので、RI廃棄物の直接の発生者と同等であるとみなすことが適切である。
「放射性廃棄物最小化の原則」は、「原子力の研究、開発及び利用活動においては、放射性物質の発生を抑制するとともに、処分するべき放射性廃棄物の発生量がなるべく少なくなるよう努力する」というものであり、この原則に照らし、いずれの局面においても、発生するRI・研究所等廃棄物の量を、最大限抑制するよう努力することが必要である。
また、「合理的な処理・処分の原則」は、「放射性廃棄物は、安全性を確保した上で効率性、経済性に配慮しつつ、合理的な処理・処分を実施する」というものであり、この原則に照らして考えると、RI・研究所等廃棄物の集中的な集荷・貯蔵・処理・処分(以下、「処理・処分等」という。)、関係者による情報の相互共有等を実施することが適切である。
3-2.RI・研究所等廃棄物の処理・処分等の実施体制
以上の基本的な考え方に基づき、RI・研究所等廃棄物の発生者が廃棄物の貯蔵、廃棄物処理(減容(圧縮、焼却)、廃棄体化)及び処分の責任を持つことが原則であるが、発生者によって放射性物質の使用目的、事業規模、経営基盤等が多岐にわたり、しかも、大部分の発生者から発生する廃棄物はそれぞれは比較的少量であることから、発生者が個別に処分までの各工程を実施することは合理的でなく、特定の事業者が廃棄物の集荷、貯蔵、処理及び処分をそれぞれ集中的に実施することが合理的である。この場合、発生者は必要な費用を負担することにより自ら発生させたRI・研究所等廃棄物の処分までの責任を果たすほか、処理・処分等の円滑な実施のために処理及び処分を行う事業者に対し協力をすることが必要である。
具体的な実施体制については、既にRI廃棄物について事業が実施されているRI・研究所等廃棄物の集荷・貯蔵・処理の段階とまだ具体的な事業者が存在していない同廃棄物の処分の段階に分けて検討する。
なお、RI・研究所等廃棄物の処理・処分等に関する検討においては、同廃棄物は、実用発電用原子炉から発生する低レベル放射性廃棄物と異なり、原子力機構等の研究機関、大学、民間企業、医療機関など様々な機関・団体から発生し、その内容も多様であることに留意する必要がある。
(1) RI・研究所等廃棄物の集荷・貯蔵・処理事業の実施体制について
1)RI廃棄物
集荷・処理を希望する事業者のRI廃棄物については、既にRI協会が集荷・貯蔵・処理事業を実施しており、引き続きこの体制を継続することが適切である。
2)研究所等廃棄物
原子力機構から発生する研究所等廃棄物については、同機構において貯蔵、処理まで実施しており、引き続きこれを継続することが適切である。
一方、研究所等廃棄物の量が比較的少ない大学、民間企業等から発生する同廃棄物(以下、「中小施設の研究所等廃棄物」という。)については、特定の事業者が集中的に集荷・貯蔵・処理を実施することが適切である。そのような事業者としては、放射性廃棄物を安全確実に取り扱う技術的能力があること、研究所等廃棄物の処理・処分に向けた取組に実績があること、関係者全員を視野に入れて公益的な視点で事業を行う者であること等の性質を持つことが望ましい。中小施設の研究所等廃棄物の集荷・貯蔵・処理の具体的な実施体制については、今後、中小施設の研究所等廃棄物の発生者の間で詳細に検討されることが期待される。
なお、中小施設の研究所等廃棄物の減容処理、廃棄体化処理については、そのための施設が現在ないので、集荷・貯蔵・処理を行う事業者が、原子力機構と協議して、経済性の観点から、諸条件が整えば、原子力機構の施設の有効活用も検討すべきである。
また、発生者によっては、諸条件が整えば、集荷・貯蔵・処理事業者を介さず直接原子力機構にその所有する研究所等廃棄物の処理を依頼する場合も想定されるが、その場合には、実施条件について発生者が原子力機構と協議すべきである。
(2) RI・研究所等廃棄物の処分事業の実施体制について
RI・研究所等廃棄物の処分についても、各発生者が個別分散的に行うより、集中的に行う方が合理的であることから、経理的基盤を有し、技術的に十分な能力のある者が、処分事業者として、我が国の同廃棄物すべてを対象に処分事業を実施する体制が望ましい。
処分事業者の備えるべき能力としては、まず、原子力施設の建設、操業、安全評価等をはじめとする様々な技術的能力を有することが挙げられる。また、処分事業者は、原子炉等規制法で求められる放射性廃棄物の埋設事業の資金計画や事業の収支見積もりを適切に作成する能力がある等の処分事業を的確に遂行するに足りる経理的能力を有することを示す必要がある。さらに、処分事業者には、処分事業を進める上で必要となる高い運営・管理能力も必要であるほか、国民及び周辺住民から信頼感を持たれる組織であることも必要である。
以上を考えると、わが国唯一の総合的な原子力研究開発機関であり、RI・研究所等廃棄物の発生量が最も多く、かつ、技術的経理的能力や運営管理能力も最も高い原子力機構が、国、廃棄物の発生者及び集荷・貯蔵・処理事業者等と協力して、他の必要な研究開発の着実な推進に配慮しつつ、我が国の同廃棄物全体の処分事業を推進することが適切である。
また、RI・研究所等廃棄物処分場の立地についても、原子力機構が、同廃棄物の発生者、RI協会等の集荷・貯蔵・処理事業者の協力を得て、これまでに実施されている立地調査の活動等の経験も活用しつつ具体的な活動を実施することが適切である。
(3) RI・研究所等廃棄物発生者と集荷・貯蔵・処理事業者及び処分事業者との関係について
発生者は、RI・研究所等廃棄物を処理・処分等を行う事業者に引き渡した後も、品質保証に関する照会に誠実に対応する等それらの事業の円滑な実施に協力することが必要である。また、発生者と同事業者の間で、RI・研究所等廃棄物の引渡し時には想定していない事態が発生した場合の処理・処分等の費用負担のあり方についても契約時等にあらかじめ明確にしておくことが必要である。
3-3.RI・研究所等廃棄物の処理・処分等における国の役割
国は、RI・研究所等廃棄物の円滑な処理・処分等が確実に実施されるようにするため、同廃棄物の処分に係る関連法令の整備を図り、これに基づき厳正に規制を実施することで処分事業の安全を確保するとともに、発生者、集荷・貯蔵・処理事業者及び処分事業者が処理・処分等の事業を適切に実施し得る環境を責任を持って整備することとすべきである。また、国は自らが処分事業者と一体となって、自治体との連絡調整等により、RI・研究所等廃棄物処分場の立地を促進するための活動を行うほか、同廃棄物処分の重要性に関する国民の理解を得るための広聴・広報活動等も実施していくべきである。
(業務の範囲)
第十七条 機構は、第四条の目的を達成するため、次の業務を行う。
一~四 (略)
五 放射性廃棄物の処分に関する業務で次に掲げるもの(特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律 (平成十二年法律第百十七号)第五十六条第一項 及び第二項 に規定する原子力発電環境整備機構の業務に属するものを除く。)を行うこと。
イ 機構の業務に伴い発生した放射性廃棄物(附則第二条第一項及び第三条第一項の規定により機構が承継した放射性廃棄物(以下「承継放射性廃棄物」という。)を含む。)及び機構以外の者から処分の委託を受けた放射性廃棄物(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律 (昭和三十二年法律第百六十六号)第二十三条第一項第一号 に規定する実用発電用原子炉及びその附属施設並びに原子力発電と密接な関連を有する施設で政令で定めるものから発生したものを除く。)の埋設の方法による最終的な処分(以下「埋設処分」という。)
ロ 埋設処分を行うための施設(以下「埋設施設」という。)の建設及び改良、維持その他の管理並びに埋設処分を終了した後の埋設施設の閉鎖及び閉鎖後の埋設施設が所在した区域の管理
六~十 (略)
2 (略)
3 機構は、前二項の業務のほか、前二項の業務の遂行に支障のない範囲内で、国、地方公共団体その他政令で定める者の委託を受けて、これらの者の核原料物質(原子力基本法第三条第三号 に規定する核原料物質をいう。)、核燃料物質又は放射性廃棄物を貯蔵し、又は処理する業務を行うことができる。
研究開発局 原子力計画課 放射性廃棄物企画室