参考資料
平成19年3月23日(金曜日)14時〜17時
学術総合センター 特別会議室101、102
井上(明)主査、家委員、井上(信)委員、小川委員、大野委員、金子委員、川上委員、駒宮委員、酒井委員、荘司委員、西村委員、福山委員、横山委員、和気委員
永宮J-PARCセンター長、大野委員(財団法人高輝度光科学研究センター専務理事)
木村量子放射線研究推進室長、他関係官
【川上委員】
2点あるのですが、1点は、3ページのビームパワーの回復のところです。平成22年に400MeV(メガ電子ボルト)のリニアック建設が終わったとすると、最終年度では1MW(メガワット)が出るということですが、最初の200MeV(メガ電子ボルト)で運転する場合でも5年かけて出力をトップにするものが、平成23年から400MeV(メガ電子ボルト)の運転を開始した場合に、平成24年度で出力が1MW(メガワット)に追いつくという曲線が、本当なのかどうかわからないのですが。
【山崎J-PARC副センター長】
リニアックを200MeV(メガ電子ボルト)から400MeV(メガ電子ボルト)に増強するということは、実は、スケーリングでぽんと上がることなのです。普通に考えると、スケーリングで3倍くらいぽんと上がることになります。どうしてこんなに時間がかかるかというと、何しろ世界で初めてのビームパワーを扱うので、シミュレーションなどではなかなかわからず、実験をしないと上がっていかないような、そういうことを一つ一つ積み重ねていって上がっていくからです。本当は階段的にぽんとここで上げたいところですが、200MeV(メガ電子ボルト)のものから400MeV(メガ電子ボルト)のものに入れ替えるので、前の状態に戻るのに少し時間がかかります。
【永宮J-PARCセンター長】
質問は逆で、何で急に上がるのかという質問です。
【川上委員】
そうです。それだったら、本来は上げたところからまた5年かかるのかなと思いました。
【山崎J-PARC副センター長】
5年かけるならそれに応じてビームを実験しながら調整していくのです。200MeV(メガ電子ボルト)から400MeV(メガ電子ボルト)に上げるということは、つまり、スケーリングでぽんと上がるということなのです。ですから、トータルで5年あれば、これを達成することができます。
【川上委員】
でも、それは、例えば5年かけて上げるということは多分意味があることで、徐々に上げていく、または徐々に上がっていくという感じだと思うのです。それが、400MeV(メガ電子ボルト)にした場合に急激に立ち上がるというのは、何か無理をしているということはないのですか。
【山崎J-PARC副センター長】
そうではなくて、200MeV(メガ電子ボルト)でシンクロトロンにビームを入れるときと400MeV(メガ電子ボルト)で入れるときというのは、ある意味で世界が変わるのです。
【永宮J-PARCセンター長】
御質問は、400MeV(メガ電子ボルト)リニアックになったときの出力の増加度はなぜ200MeV(メガ電子ボルト)リニアックで調整している場合よりも急なのか、急にできるのかということでしょう。おっしゃるのは、ここで400MeV(メガ電子ボルト)に上げたときに、チューンアップをしなければいけないだろう。その時間がかかるのではないか。したがって、その分だけ遅れるのではないかという御質問だと思います。
【川上委員】
そのとおりです。
【永宮J-PARCセンター長】
若干そういうことはあると思います。この図は模式的に我々の期待もこめてこういうふうに示してありますが、半年ぐらいの精度というのはありませんので、数カ月とか半年ぐらいの遅れはあるかもしれません。リニアックのところのシンクロトロンのいろいろな調整がかなり手間取ると皆さん言っていますので、それは継続してやっています。
【川上委員】
ずれが生じる可能性があるということであれば、そのずれを表すようにこの図を直しておかないといけないと思います。何か急激に立ち上がっているというのは不自然ですよね。
【山崎J-PARC副センター長】
リニアックを200MeV(メガ電子ボルト)から400MeV(メガ電子ボルト)にしたときに調整する時間を別とすると、この200MeV(メガ電子ボルト)の青の線から400MeV(メガ電子ボルト)になったときに赤の点線にいきなりぽんと移るというのが実は正確かもしれません。ただし、400MeV(メガ電子ボルト)への増強で新しいマシンを入れるので、調整の時間がかかるだろうから、こういうふうに繋げるのが適当だろうという描き方をしただけです。
【川上委員】
そういうことであれば、平成22年が終わったところで、青の線から出ているものが、それよりもちょっと上のほうから緑色が出ていくという形ですか。
【山崎J-PARC副センター長】
それが理解しやすい形です。
【川上委員】
それで、最後に1MW(メガワット)に達するということですね。わかりました。
それともう1点ですけれども、9ページにあるパルス強度について教えていただきたいのですが、SNSは2MW(メガワット)にした場合に相対パルス中性子強度はJ-PARCの1MW(メガワット)よりも小さいということですけれども、SNSは繰り返しが60Hz(ヘルツ)、J-PARCの場合は繰り返しが25Hz(ヘルツ)ということでした。例えばパルス強度が弱くてもパルス数が多く打てるのと、強くても数が少ないのと、そこの差は考慮しなくてもいいのかどうかを教えていただければと思います。
【永宮J-PARCセンター長】
これは単純な算数で、1MW(メガワット)を25で割ったものと2MW(メガワット)を60で割ったものの違いです。あと、パルス当たりの強度とは幅のことですか。
【川上委員】
幅というか、実際に実験のときに、1秒間に60回パルスが出るというものと、25回しか出ない強いものと、そこにどのぐらい差が出るのか、全然差がないのかということです。25Hz(ヘルツ)であっても、1回当たりのパルス強度が強ければ、中性子実験の精度は上がるということであればわかるのですけれども、どうでしょうか。
【大山J-PARC副センター長】
おっしゃるとおり、25Hz(ヘルツ)と60Hz(ヘルツ)の違いにかかわらず、時間をかけて中性子をためるような測定はやはりトータルの中性子の数が重要ですので、それは、J-PARCが1MW(メガワット)、SNSが2MW(メガワット)であれば、SNSは2倍の強度があると言うことができます。ただし、ここで例えば実験精度を挙げましたように、バックグラウンドに対する効果、すなわち信号がよく見えるという意味ではパルス当たりの強度というのが一番重要です。これは25Hz(ヘルツ)でパルス当たりのピークが高いJ-PARCの方が有利になるということですので、そういう実験、特に生物学分野のように非常に長い周期をとったほうが有利になるような実験は我々が有利になると考えています。
【山崎J-PARC副センター長】
繰り返しが25Hz(ヘルツ)で遅いということは、一発のパルスで長い時間測定ができます。ということは、低いエネルギーの中性子のスペクトルまで測定できるということです。ですから、繰り返しが少ないほうが有利な実験というのもあります。
【川上委員】
私がやっているのはタンパク質の構造解析ですけれども、その場合にはどちらが有利ですか。
【大山J-PARC副センター長】
パルス間隔が長い方が、低いエネルギーまで測れますので有利になると考えています。
【川上委員】
パルスの間隔が長い方がいいということで、J-PARCのほうが、タンパク質の結晶構造解析に関していえば、有利であると解釈してよろしいわけですね。やはりそこのところを、例えばどういうものに対してメリットがあるとか、どういうところでデメリットがあるということもあわせて書かれているとわかりやすいと思います。
【井上(明)主査】
今の質問の中で、3ページは、図面を修正されるという意図でお答えされたということですか。このまま通されるということですか。
【井上(信)委員】
22年度のところでぽんと上がるという修正の説明もありましたが、実際はまっすぐ上にぽんと上がらない。だけれども、この絵の程度には立ちあがるとして、これを見たら、23年度の初頭も0.2MW(メガワット)ぐらいの差でしょう。23年度の半ばでも0.2MW(メガワット)ぐらいの差であり、追いついているわけではありません。24年度の初頭でちょっとそれが追いついて、差が7割か8割かぐらいにはなっているけれども、縦軸での差が縮まったからといって、横軸をずらしてみれば分かるように、立ち上げてから後は、時間軸で大幅に追いついているわけではありません。最後の飽和しているところでは線が寝ているために一見時間的にも追いついているように見えるだけであるわけです。だから、3ページの絵については修正するといっても微量でしょう。
【永宮J-PARCセンター長】
これはいろいろな予想が入っていまして、修正してもあまり意味がないと思います。
【井上(信)委員】
何で私はそう言ったかというと、平成15年度の評価のときにも私は委員をやっておりまして、まあこんなものかなという感じであったということです。
【井上(明)主査】
では、これはこのままということでよろしいですね。
【山崎J-PARC副センター長】
私どもとしてはそれで結構です。
【駒宮委員】
今の質問に関連してですけれども、中性子の実験で、バックグランドドミナントの実験とフルパワードミナントの実験、それはどういう比でしょうか。
それからもう一つは、7ページでは、より多くのユーザーが利用可能とおっしゃっていますが、これも単純に2倍になったら2倍になるというものではないと思います。全員がフルパワーを使うという極限的な状態では2倍になるかもしれないけれども、普通は一つの実験をする場合、いろいろな時間がかかるわけですね。そこにはマージンが当然あるわけで、なおかつ、皆が皆フルパワーを使うというわけではないので、単純にビームパワーには比例しないと思います。
【永宮J-PARCセンター長】
フルパワーを使うか使わないかという点については、全員フルパワーを使うことになる、MLFの実験はそういう実験です。
中性子の実験は、1日とか2日、あるいは半日のように非常に短いものが多いのです。そのため例えば2日の実験が1日になる。その結果ユーザーの数はだんだん増えていく、そういう意味です。
【駒宮委員】
要するに、バックグランドドミナントの実験だとパルスが離れていてビームが集中している方がよろしいというわけですね。それとフルパワードミナントの実験と、その数の比はどういうふうになっているのでしょう。
【永宮J-PARCセンター長】
半々ぐらいだということですが、これは国際的に見ましても、60Hz(ヘルツ)のサイクルでやる実験は60サイクルのパルス間隔しかありませんので、SNSなどでは間引きをするということをして、かなり長くパルス間隔をとるようなことをする実験もあると聞いています。そうしないと低エネルギーの中性子まで利用できませんので、そういう実験に関しては我々のほうが逆にメリットがあるわけです。
【和気委員】
総合科学技術会議では3年程度で完了というシナリオでしたが、その3年に対して4年というスケジュールが出てきて、90数億円の予算になった。各年度で見ると25億円前後の予算になっていますが、もし3年で可能とすれば、単純には25億コスト削減になる。そういう3年という提案に対して4年かかるという理由を素人にわかる程度に御説明いただきたいと思います。もう一つは、国際レベルの競争力という9ページの棒グラフがありますけれども、これは、ISISなど他の施設でのビーム出力増強の可能性を踏まえてのものでしょうか、つまり、いつの時点での棒グラフなのでしょうか。少なくとも、増強が完了するのは4年〜5年後なので、この5年後の時点で国際競争力が維持できるかというのをどのように理解すればよいのか御説明いただきたいと思います。
【永宮J-PARCセンター長】
最初の御質問ですけれども、3年を4年にしたというのは、実は3年が基本ですが、できたらもうちょっと前から前倒しして、一部分のお金を1年目にいただいて4年計画にしたいと言っていることで、3年という計画自身は実質的には変わっていないのです。
平成20年度に我々のプロジェクトは終わります。だから、順当に行きますと21〜23の3年間となるのですけれども、そうではなくて、できたら20年度あたりから少し予算をいただければ、もう既にそのときにビームが一部出てきていますから、早目にスタートできるという意味の要求です。ストレッチして長くしたという意味ではないのです。
それから、いつの時点の比較かということですけれども、これは、SNSでは2MW(メガワット)、J-PARCでは1MW(メガワット)の最終段のゴールのときの比較です。それで、SNSも今上げていく途中ですから、まだまだ途中の段階というのは比較できないのですが、J-PARCが0.6MW(メガワット)で終わりますと、SNSのどの時点よりも悪くなる、そういう比較です。
それで、どこの研究所もパワーを追求するところはどんどん上げていこうとします。だから、2MW(メガワット)まで向こうが行けば、こちらは例えば4MW(メガワット)に行くかもしれない。それは継続的にそういうことが起こりますから、いつの時点でも終わりということはありません。
【山崎J-PARC副センター長】
お金のところを見ていただくと、今センター長が申し上げたように、第1年度は第2〜第4年度と比べて非常に少ない。設計、準備に関しては、お金が全然ないと我々だけで設計と準備をしていくのですが、そこに少しお金をいただいて、さらにプロトタイプなどを前倒しで作らせていただきたいということです。後の年度と比べると2割くらいの少ない金額になっているのはそういうことです。
【井上(明)主査】
確認ですが、これで回復されたとしても、常に今後においても世界トップを維持できるというべきものではないということですか。
【永宮J-PARCセンター長】
多分、しばらくは世界トップを維持できると思います。1MW(メガワット)から2MW(メガワット)、3MW(メガワット)に行くのは大変な作業ですから。
【井上(明)主査】
そこでの世界トップレベルの学術研究に供することは、当分の間は保証されるということですか。
【永宮J-PARCセンター長】
そうだと思います。
【井上(明)主査】
これは文部科学省にお聞きしたほうがよろしいのかもしれないのですが、ここでこの回復が妥当だという報告を出しますと、実際にかなりの確率で予算がつき、実行に移されていくということになるのでしょうか。
【木村量子放射線研究推進室長】
20年度の予算要求がどれだけ縛りがかかるのかというのは、今の時点でまだ予測できない部分はあるのですけれども、この審議会でこれが妥当だということになれば、我々もそれを踏まえて最大限対応していくことになると思います。今の原子力機構の予算のトレンドを見ても、この計画であればうまく進められるのではないかというふうに現段階では判断をしているところです。
【井上(明)主査】
最終的にはほかの経費との兼ね合いがあるのでしょうけれども、これは相当前から総合科学技術会議がコミットしている、非常に重要な長期的ビジョンに立った次元の高いものだということですね。わかりました。
【山崎J-PARC副センター長】
先ほどの世界のレベルを維持できるのかというお話ですが、加速器のコミュニティというのは、世界中でいろいろな技術を共有し合っておりまして、今の時点で世界的に考えられるというのは、我々であったら1MW(メガワット)だし、SNSでは2MW(メガワット)です。
これで、どこかがイノベーションを生み出して、どこかができるということになったら、それはコミュニティで共有されますので、普通は同じようについて行ける。また、我々で発明したものも、実は彼らが既に使っています。
【井上(明)主査】
外国と同じように改善していけるということですか。
【山崎J-PARC副センター長】
そうです。しかし、外国もついて来るわけです。こっちがこういうことができたということを示せば、向こうはそれを取り入れてきますので。
【井上(明)主査】
わかりました。
【川上委員】
平成15年の中間評価のところで、まず200MeV(メガ電子ボルト)で開始した理由というのが、資料2の1ページにある「まず実験を開始することが重要であることから」ということですけれども、それだとちょっと理解不十分なところがあるので、もう一度、200MeV(メガ電子ボルト)で開始することになった理由を教えていただけますか。
【永宮J-PARCセンター長】
そのときの理由は非常に簡単でございまして、多少設計変更等もありましたので、それまでに予算化されていたお金では181MeV(メガ電子ボルト)しかできないが、追加で85億円があれば400MeV(メガ電子ボルト)までできるという状態でした。それをまずファンドして着手するか、それはいったん待って、まず実験をスタートしてから、当時で85億円、今では91億円を予算化した方がいいかということです。そこで、まず施設を実験に供して、それから追加部分を建設しなさいということになりました。
【川上委員】
そうだとすると、例えば中性子関係の実験というのは、恐らくパワーに応じて、そのパワーでできるところでやれると思うのですけれども、ニュートリノその他のところでは、本当にそれで十分な実験ができると思われていたのでしょうか。
【永宮J-PARCセンター長】
いや、先ほども申しましたように、フルパワーに達するまでは5年ぐらいかかります。だから、後からフルパワーに達するということで最終的にはそれほど変わらないということです。すぐに1MW(メガワット)が出るわけではありませんから。ニュートリノの人も、みんなパワーは欲しいのです。だから、これは、どのときに最適な予算を投じたらフルパワーになるのに一番効率的か、そういう議論だと考えています。
【川上委員】
ということは、現状では追加のお金が出ると考えていらっしゃるようですので、そういう書き方の方がわかりやすいのかなという気がします。
【永宮J-PARCセンター長】
追加のお金が出るかどうかというのは、今ここで議論していただいて、これがリーズナブルであると言われれば、これから予算要求をすることになるわけです。
【川上委員】
そうすると、例えばこのまま0.6MeV(メガ電子ボルト)であると、どういう実験ができないのでしょうか。要するに、それなりの実験しかできない部分も、全然できない実験もあると思うのですが、そこのところは資料か何かございますか。
【永宮J-PARCセンター長】
これは、例えばタンパク質のデータバンクが45パーセントから80パーセントに増えるとか、そういうことは言えるのですけれども、ビームの強度を増やさないと絶対できなくて、増やしたらたちまちできる、という実験は残念ながらありません。インテンシティー(強度)の問題というのはそういう類のものではなく、実験時間が倍かかるといった話なのです。エネルギーが変わるわけでも何でもありませんから。
【金子委員】
確認させていただきたいのですけれども、6ページの4年になっているところですが、15年度の中間評価のときでは20年度から3年でと言っていたところが、先ほどの話では、何とか20年度に予算をとって20年度から始めたいと言い方が変わっているので、既にそのときに1年ずれているように聞こえたのですけれども、それを20年度に少しでも前倒しにしたいというのはどういうことでしょうか。
【永宮J-PARCセンター長】
ここは説明していなかったので申し訳ないのですけれども、平成15年度の時点では、1年早くプロジェクトが終わる予定になっていたのです。前計画は7年計画でありましたので、すべてが平成19年度末に終わることになっていたのですね。だから、平成20年度からスタートするということになっていました。しかし現在はいろいろな関係で1年遅れました。だから、ここに使っている図が同じでないのは、平成15年度に示した図をそのままここに掲載しましたので、1年スライドしているためです。
【荘司委員】
増強計画のところで、スケジュールの中に据え付け準備があるわけですけれども、リニアックをこれから回復しようとするスペースが空いているところがありますが、それは三等分に分けて装置を入れていくという意味ですか。それとも、2年度のところに1回でどんと入れて、それから徐々に調整していって4年度まで持っていくという意味なのでしょうか。
【永宮J-PARCセンター長】
一般には据え付けるのは1回です。しかし、夏のシャットダウンがございますから、時々据え付けていくかもしれませんけれども、どこかで製作していて、ばさっと据え付けるのです。
【山崎J-PARC副センター長】
据え付け準備は、入れるものだけではなくて、時間をかけて製作するものがあります。それからケーブルの敷設とか冷却水の配管などは、夏のシャットダウン期間中に行います。加速管自体は最後の年に一挙に入れることになります。
【荘司委員】
そうすると、予算配分はこんな感じで大丈夫なわけですか。
【山崎J-PARC副センター長】
はい。
【家委員】
パフォーマンスが上がることは大変結構だと思うのですけれども、200MeV(メガ電子ボルト)で動かしたときと400MeV(メガ電子ボルト)で動かしたときの、つまり1MW(メガワット)で動かしたときと0.6MW(メガワット)で動かしたときの、ランニングコストはどのぐらいの差が出てくるのですか。
【永宮J-PARCセンター長】
ランニングコストはほとんど変わりません。数億円程度は上がりますが、全体に対するフラクションとしては非常に小さいものです。
【家委員】
ついでにお伺いしますと、最初からパワーを上げていきますね。パワーの増加に応じてランニングコストは徐々に上がっていくということでしょうか。それとも、それは変わらないということですか。
【永宮J-PARCセンター長】
それもあまり変わらないのですけれども、一つ一つのコンポーネントをテストしながら入れますから、その電気代は追加でかかってきます。だから、じわじわと上がっていくというふうに考えていただければと思います。
【井上(明)主査】
最後に、きょうの委員の御意見等を総合して、論点としてのリニアックの性能回復の必要性、効果、スケジュールの妥当性、このあたりは特に大きな異論はないということでよろしいでしょうか。
【小川委員】
200MeV(メガ電子ボルト)から400MeV(メガ電子ボルト)に行くときにバックグランドが少なくなって性能が上がるということは理解できました。時間が短くて済むからたくさんの人が利用できるというのも理解できるのですけれども、それだけの利用者があるということは見込んでいらっしゃるのですか。
【永宮J-PARCセンター長】
我々は、それだけ十分な利用者があると思っております。
【川上委員】
J-PARC中性子第期計画の必要性というところですけれども、ミュオンなどに比べて、中性子は具体性が非常に乏しい報告になっています。高度化をうたっていますが、具体的にはどういうことを高度化というのかが全然見えてきません。一方で汎用実験装置の建設と記載されていますが、汎用と高度化というのは相反する概念ではないかなと思うので、そこのところをきちんと説明していただきたいと思います。また汎用実験装置を造るということは、ビームラインを増やすことを含んでいるのかどうかをお答え願えますか。
【永宮J-PARCセンター長】
汎用実験装置の建設というのは第期のところで述べたところであり、第
期はもう少し絞られた研究テーマをやるということですので、そこは誤解があると思います。第
期については、昔から提案がなかったわけではないのですけれども、第
期の汎用的なものに比べて、かなり特殊化したものをそこに選んでいるということでありまして、例えば基礎物理学への応用、これは中性子の双極子モーメントとかという新たな領域であるとか、高圧下の物質の構造などについての特殊な実験装置を今考えているというところです。
【川上委員】
装置は今考えているところなのですか。
【永宮J-PARCセンター長】
提案は既にあります。
【川上委員】
装置の具体的な例があると非常にわかりやすいと思います。
【永宮J-PARCセンター長】
第期計画でも装置をつくっていますので、第
期計画でどこまでやるかというのは、もう少し第
期計画のことが立った後できちんとしたいということだと取っていただければと思います。非常に緊急性が高いミュオンなどはすぐにやらなければいけません。第
期計画でもぜひ中性子もやりたいのですけれども、第
期計画が終わった時点で見直すということで考えていきたいと思っております。
【川上委員】
わかりました。9ページでKEKだけ書いてあるのですけれども、何か意味があるのですか。
【永宮J-PARCセンター長】
もともとKEKしか第期計画を提案していなかったからです。逆に言うと、KEKにはもともと実験装置が何もなかったのです。だから、
期計画で実験装置を提案したのです。
【川上委員】
全体でJ-PARCというところなので、内部的にはKEKでもいいと思うのですが、周りから見た場合には、KEKも原子力機構も区別はないと思います。
【木村量子放射線研究推進室長】
中性子ビームラインの整備については、もともとビームラインのポート自体が23マイナス1という限られたリソースの中で、本当にこういう特殊な装置を整備していくのか、あるいは、産業界のユーザーも含めた幅広い汎用性の高い装置を整備していくのかという点に関して、また次回、共用のあり方を議論するときに本格的にやっていただきたいと思っています。
【永宮J-PARCセンター長】
基礎物理に関するビームラインなどは、KEKからしか出てこない提案です。特殊な装置ではありますが、ぜひ期計画の柱としてきちんとやっていきたいという希望は非常に強くあります。ただ、全体をどういうバランスで構成していくかというのは、この第
期計画だけではなく、もう少し全体を見ながらやっていかないといけない問題だと認識しております。下村理事、何かコメントはございますか。
【下村KEK理事】
第期で建設しようとしているものが汎用性があるとありましたけれども、一部には今までKEKが持っていたものがあります。使っていた装置をできるだけ有効に使おうと思っているわけです。ですから、このプロジェクトで造ろうとしているものは、これまで計画されていない、新たな中性子ビームラインを公式に造らせていただきたいというものです。逆に、今までのものは、JAEAあるいはKEKがかなりの努力をしながら、できるだけ早く装置を造り上げたいということで、やや汎用的な装置というものが多いと思っております。
【井上(明)主査】
この第期計画というのは、相当緊急の課題であるリニアックの性能回復を除けば、あくまでも構想的な段階もので、具体的に装置がどうこうというよりは全体構想であるわけですね。ただし、今のKEK中性子ビームラインは、構想にも入るのだと思います。だから、全体の構想の進捗状況を踏まえつつ、それが今後構想を進めていくうえにおいて妥当かどうか、少し大きな視点で御議論いただければと思います。
【永宮J-PARCセンター長】
私どもではプライオリティをつけていまして、早目にスタートしなければいけないものと思っています。
【井上(明)主査】
この中でですか。
【永宮J-PARCセンター長】
はい。ですから、ミュオンであるとかハドロン実験室の拡張であるとか、こういうのは非常にクリアに考えております。
【井上(明)主査】
これらは、この作業部会だけでは済まない、学術分科会全体としての学術と科学技術だとかいった論点とも関係してくると思います。この百何億円というのは91億円とパラレルに進むのか、それともその後の話でしょうか。どういう位置付けになるのですか。
【木村量子放射線研究推進室長】
リニアック性能回復の91億円というのは、どちらかといえば第期計画の積み残しなのです。ですから、リニアックの性能回復は、半ば予算的にも織り込んだ形で進めていきたいと思っています。それで、今第
期計画といっているので、多少誤解があるかと思いますけれども、これはみんな用意ドンで一斉にスタートするわけでは決してなくて、そこは財政状況であるとか、特にこの学術研究に関しては、ほかの分野の研究ともプライオリティ付けをしながら、必要だと思われるものに関して順次進めていくという形をとらざるを得ないと思っています。
【井上(明)主査】
それは、91億円の第期の積み残しの後に進めるのか、それともパラレルで行くという、そういう話ですか。
【木村量子放射線研究推進室長】
双方は全く別の話です。第期計画の予算については、文科省としてもまだ一切コミットしている段階ではないです。
【井上(明)主査】
少し遅れるのだけれどもということですか。
【木村量子放射線研究推進室長】
そうです。もし優先的にこれだけはやらなければいけないという御意見があれば、それは進めていくべきと考えます。
【永宮J-PARCセンター長】
リニアックの財源はJAEA側が負担するのです。今申し上げている核変換はJAEA側ですけれども、これはずっと後に延ばしています。
それ以外の第期計画はKEK側の所掌です。
【井上(明)主査】
J-PARCセンターそのもの、全体の議論ということになると、ちょっと…。
【永宮J-PARCセンター長】
全体の議論をしていただいても結構で、予算の範疇からすると、メリット、デメリット、これはするべきでないということは全体の中でやっていただいて全然問題ないのですけれども、例えば予算要求をするときに、チャネルとしてはそれぞれの格好で出ていくように思います。
【井上(明)主査】
あとは、原子力委員会等での評価が行われていないということは、当作業部会との位置付けはどういうことになるのでしょうか。あちらはあちらで、また専門的な視点からいろいろ意見が食い違う可能性もあるということですか。
【木村量子放射線研究推進室長】
もちろん、J-PARCは原子力政策の中で加速器駆動の核変換ということに特化しているわけですから、そこは原子力政策全体の中で核変換技術をどうするのか、先ほど永宮センター長からお話がありましたように、FBRでやるのか、加速器でやるのかという二つのオプションがあるわけで、今はFBRが優勢なのかもしれません。ただ、その加速器をやるにしても、それをJ-PARCでやるのか、ほかのところでやるのかという議論もまた出てくるのかもしれません。
【駒宮委員】
第期計画というものは、きちんと第
期計画が始まって、ある程度めどがついて初めて、どういう方向に持っていくかを議論できるようなものだと思うのです。現在まだその第
期が全く始まっていないような段階で、こういうディテールのことは全く言えないと思うのです。少なくとも素粒子・原子核においては、これは全国共同利用ですから、コミュニティの意見を聞いて、ほかの計画とのバランスを取らないと非常にまずいことになるわけです。その上で、いろいろな財政状況を見てから出発するというのが非常に重要です。この第
期計画は、案としてお出しになったものと理解してよろしいわけですね。
【永宮J-PARCセンター長】
コミュニティの意見を聞くのが重要だということは、全くそのとおりだと思います。ただ、第期計画というのは、7〜8年前に全体計画を作ったときに既にあったものです。事前評価のときに、この部分の重要性は認めるが、ファンディングの問題があるので後ろに延ばしてほしいということになったのです。
【木村量子放射線研究推進室長】
ただ、平成12年の事前評価のときに判断したのは、J-PARC計画の中でのプライオリティ付けであって、コミュニティ全体を含めたプライオリティ付けはやっていません。
【永宮J-PARCセンター長】
そうです。そのときからどのように変化していって、こうなっているかということを考えて言っているものであって、例えばミュオンなどは、ビームラインはあるのですけれども、実験装置はないのです。その辺は随分昔から出てきたものを単にきょうは述べているということです。
【駒宮委員】
もちろんそうかもしれませんが、この第期計画をやっていくと、一体何が本当に重要で、どこに予算を投資しなきゃいけないかというJ-PARC計画の中での話ももちろん変わってくると思います。それと同時に、全体的なコミュニティの話があるわけです。その両方によって変わってくるので、やはりこれはもう完全に変更するものとお考えになった方がよろしいのではないかと思います。
【木村量子放射線研究推進室長】
もちろんそういう意見があれば、どんどんお出しいただければいいと思います。先ほど御説明しましたように、この第期計画については、その構想が今の段階で妥当なのかどうかということだけをまずは御議論いただきたいと思います。それから、コミュニティの中での議論は、また別の場でやっていただければいい話だと思います。
【家委員】
5ページの表を拝見しますと、中性子に関しては第期でかなりできる、それからミュオンとハドロンはかなり緊急性があるというのはわかるのですけれども、フライホイールの位置付けを理解したいのですが。電力節減になるというのはよくわかるのですけれども、これがないとできない実験とはどういうものでしょうか。
【永宮J-PARCセンター長】
50GeV(ギガ電子ボルト)の提案が長期的なビームを要求するようなものがあれば、フライホイールがないと電気代が非常に高くなって、やり切れないということがあるのです。1カ月あるいは半月ぐらいの非常に短期の実験であれば、必ずしもフライホイールがなくてもできます。だから、我々の中でもこれこそよく考えて、実験の推移を眺めながら、インストールすることがベストなのかどうか考えていくべきと思います。ただ、1年間50GeV(ギガ電子ボルト)を運転しますと、これがないと電気代が今の2倍とか3倍かかりますので非常に重要であります。
【駒宮委員】
50GeV(ギガ電子ボルト)という名前がついているから50GeV(ギガ電子ボルト)にしなければいけないと見えるのですけれども、エネルギーよりもパワーの方が重要な実験というのはいっぱいあるわけです。ですから私は、プライオリティは、かなり低いと考えます。
【酒井委員】
駒宮委員の意見に賛成の部分もあるのですが、ハドロンの実験施設というのは、平成12年度にある意味では第期と第
期というふうに分けたわけです。それで、原子核の立場からいえば、ハドロン実験施設の今の規模は、加速器に対して異常に小さいと私は思っています。これでは元が取れないということを最初に指摘しておきます。駒宮委員の意見に賛成の部分は、時間とともに計画は変わりますので、物理だってやはり変わっていくわけで、進捗状況に応じてそれなりの修正は必要なのだろうと思います。ここに第
期計画でもまだできていないものも書かれていませんか。第
期は先ほどの中性子と一緒で、第
期計画の実験装置というのは、今まであった装置を持ち込むだけで、新しい実験はほとんどできないわけです。新たに本当にこれからこの装置を使ってエクスプロイトするようなものは、実は第
期計画に入っていると思っているわけです。これはコミュニティを挙げて議論しなければいけないのですが、第
期計画は非常に重要ですので、計画自体は進めていただかないと困ります。ところで、フライホイールというのは、本当に余分なものなのですか。
【井上(信)委員】
加速器をやっている人は大変欲しいものですけれども。
【酒井委員】
電気代が高くなれば、税金を少し余分に使えばいいというようなものでしたら、やはり税金を払った方がいい。
【井上(信)委員】
それは全体的なアウトプットとの関係ではないですか。
【永宮J-PARCセンター長】
例えば、当初タウニュートリノのアピアランスを見るためにはどうしても50GeV(ギガ電子ボルト)がないと困ると言っていた時代があるのです。ところが、少しオーバーだけれども今は必要なインテンシティーを達成するのに50GeV(ギガ電子ボルト)も要らない。そのようにだんだん実験も変わってきていることを踏まえながら、時間的なスケールも考えた方がいいのではないかということを言っておられるのだと思います。私もそういう対応は必要だと思います。ただ、だからといって、50GeV(ギガ電子ボルト)をほかのユーザーが欲していないというわけではありませんので、その辺は、総合的な判断に基づきながらやっていただけないかということです。
【井上(信)委員】
ここであまり議論をしないということのようですが、核変換についてです。これはもともと、旧原研サイドから見れば、核変換のためにやろうとしていたような計画であるわけで、それが軽いというのは、あまり理解はできないのです。第期計画でやれということは必ずしも言いませんが、加速器駆動の核変換の研究はやるべきであると思います。そのやり方はいろいろあるし、今は「もんじゅ」でFBRの設計データをとることが済んだ後でやればいいという考えが強いわけです。けれども、本当に実用の段階で加速器駆動とFBRのどっちがいいかというのは分からないと思うのですが、今の段階では、まだ研究のツールが必要な段階だと思うのです。研究のツールの段階ではフレキシブルなものの方がいいはずで、「もんじゅ」でやるよりは加速器駆動でやる方が、未臨界の状態から臨界の状態まで状況を変えられるわけですから、燃やすものもいろいろなものをやれるわけです。フレキシブルな研究手段としては加速器駆動の方がいいと私は主張しているのです。
例えば、JAEAには高速炉の臨界集合体実験装置とか、そういうものが既にあるわけです。そういうものを持ってきて今の200MeV(メガ電子ボルト)の段階でもいいから基礎的なスタディーから始めるようにするなど工夫して、加速器駆動研究のアクティビティを維持してやってほしいというのが私の考えです。今の雰囲気は「もんじゅ」だけみたいになっているから、旧原研で加速器駆動をやっていた人たちの研究意欲を損なっているのではないかという心配をします。ここで扱わないのはやむを得ないかもしれませんが、核変換をそういう方向で努力していた旧原研の人たちのアクティビティを何とか維持することに対する配慮をお願いしたいと思います。
【永宮J-PARCセンター長】
井上委員の御意見に、100パーセント賛成です。日本では研究の主流が加速器駆動からFBRへ移ったために加速器駆動をやめてしまうという風潮があります。しかし、我々が行っているのはR&Dです。加速器でも60MW(メガワット)、100MW(メガワット)というレベルのものが実用機としては必要なので、いろいろな意味でのR&Dがここでできると思います。それから、旧原研がこれまで造ってきたものを何とか続けていくべきだと思います。ベストのシナリオを作っていくためにも旧原研だけではなくて京大の原子炉なども含めて、加速器駆動はぜひやるべきだと思っています。
【山崎J-PARC副センター長】
ADSのことについては、強い意欲を持って加速器としても将来ADSへ行けるようにやっていこうではないかということがありまして、旧原研の方と一緒にやろうということでJ-PARCを立ち上げてきているものです。無駄な投資はしていないのですが、いま造っているプロトンリニアックも、設計段階から将来のADSを見据えた、加速器のR&Dにもなるようなものとして造ってあるのです。ですので、将来的にADSつなげていく、さらに600MeV(メガ電子ボルト)にする、それからインテンシティーを上げていくことができるなど、将来ADSをやるための加速器の基地としては非常にいいものにしてあることを忍ばせてありますので、その点をお含みおき願いたいと思います。
【木村量子放射線研究推進室長】
そこは原子力政策大綱でもきっちりと、必要な技術開発として位置付けられていますので、アクティビティ、モメンタムは維持していかなければいけないと思っています。きょうは原子力機構全体を担当している者が来ておりますので、一言コメントをよろしいでしょうか。
【稲田原子力研究開発課課長補佐】
先ほど井上(信)委員から御指摘のありました加速器駆動のADSでございますが、文部科学省としては、ADSを基礎研究として、実施することついては特段の反対はありません。先ほど「もんじゅ」等実用に近い研究にあまりに集中した結果、基礎研究がなおざりになっているとの御指摘がありましたが、予算区分上は、「もんじゅ」等は特別会計、こちらについては一般会計という形で、お互いに研究費を食い合う関係にはなっていません。むしろ、ADSの研究は、例えば同じ加速器を使う研究であるTIARAであるとかJ-PARCの運転費、あるいはITER(イーター)の建設費等とどちらを優先するか、そういう枠内で議論されているものです。
ただ、今後ADSをプロジェクト研究として推進するか否かの判断を行う際には、その予算をどのように確保するかという問題と、もう1点、実際に実施を行う事業者が現れるのかを含め実用化の目処を立てておかないと、原子力委員会で評価を行う際に、厳しいご意見をいただくことが予想されますので、技術的な基礎研究を続けるとともに、実用化の目処について今後しっかり議論していくことから始める必要があり、第期計画においてADSを始めるかを判断する段階にないのではと考えております。
【金子委員】
中性子等の第期計画に関してですが、第
期で、とりあえず今ある装置を移しただけになっているということで、今後リニアックの性能回復をして400MeV(メガ電子ボルト)まで上げたとしても、ほかの施設との比較になったときに、強度だけが重要なわけではなくて、装置そのものでできることが魅力的でなければならず、ここでしかできないことがあるとユーザーは集まってくると考えております。そういう点で、どこにでもある装置がただ単にあるというだけではなくて、さらに、この精度まで出せるのは世界でもここしかないというところはやはり力を入れていくべきではないかと思います。
【川上委員】
第期では従来型の装置を使って、新しい高性能のパルス中性子の性能を見ていって、第
期で初めて、それを十分生かせる、または100パーセント活用できる装置を造っていくということではないでしょうか。第
期、第
期というところの区分けの説明が我々には不十分と受け取れたのですが、今回の議論で第
期までのセットが重要なのだと私は理解しました。
【井上(明)主査】
今の議論を総合しますと、第期の結果を見なければならないという視点はあるのですが、せっかく第
期でここまで来たものを、第
期を延ばしてしまうと、これまでの投資が生かされないといったことになると思います。細かい点は多々あるかと思いますが、この方向が当作業部会での大体の意見ということでしょうか。
【駒宮委員】
どうして第期にいろいろな重要なものを持ってこなかったのでしょうか。第
期と第
期の区分けがおかしかったのではないかと思います。例えば原子核素粒子の計画で、いろいろな原子核のものは、重要であるにもかかわらず第
期に持っていきました。本当に重要なのだったら、どうして第
期にやらなかったか。第
期と第
期を一つのパックにしているとおっしゃいますけれども、やはり予算区分はきちんと分かれているわけです。やはり第
期に関しては、第
期の成果をきちんと見て、それで考えなければいけないことです。なおかつ外のコミュニティとの関係も、きちんとしなければならないのです。だからこそ、プライオリティ付けというのがあるわけです。その上で他のプライオリティと競争しなければならない。そこのところはきちんと認識していただきたいと思います。
【永宮J-PARCセンター長】
全体計画を認めずに第期と第
期に分けたときに、私はすべてのコミュニティに説明に伺いました。すべての実験装置を造ってほしいという要求がありましたが、限られた予算で一部分しか造れないときに、実験装置を全部造って加速器を造らないか、加速器を造って実験装置の一部を造らないか、どちらかの選択かを迫られたときには加速器を造らざるを得ないということを皆さんに納得していただきました。もちろん、そのときにいろいろな選択をしながら第
期、第
期に分けたことはあります。最低限のことはできるようにしたいとは思いましたけれども、加速器を削ってまで実験装置を全部入れるのはやはり暴論だと思いましたので、加速器は節約しないで全部フルに造りますということを申し上げたことはあります。そういう経緯も御理解いただければと思います。
【福山委員】
最初の全体計画の中の第期は、KEKが財政的に負担をするものであるという御説明ですが、KEKはどういう立場になるのでしょうか。経済的な負担はKEKがやるのですか。
【永宮J-PARCセンター長】
ミュオン、中性子、ハドロンとフライホイール、これはKEKの分担で、核変換が旧原研の分担となりました。KEKには、J-PARC以外に将来の計画がないわけではありません。したがって、KEKの中でのプライオリティを十分議論しなければならない問題でもあります。さらに、コミュニティのプライオリティもあります。ですから、これが全部できるということとは必ずしも思っていないわけです。こういうことは総合的な検討の後に、最終的な決定がされるのだと思っています。
【福山委員】
過去の経緯は理解したつもりですけれども、今の時点でKEKが、どう考えているかということが一番問題になるのではないでしょうか。第期はKEKがやりたいと言ったはずですよね。やりたいと言った計画だけれども、今KEKで全く別の計画があると言われると、何か話が違うのではないでしょうか。
【永宮J-PARCセンター長】
KEKのJ-PARC以外の計画については、KEKの中で随分議論しなければいけないわけで、第期計画とKEKの他のアクティビティは、方向性を十分考えながら予算計画等々を練っていかなければいけないことは事実です。
【福山委員】
それはわかりますけれども、それを踏まえて、きょうの議論が行われていると思ってよろしいのでしょうか。そうしないと、ここで何を議論していいのかということになります。
【高崎KEK理事】
KEKは、御存じのとおり大学共同利用機関で、さまざまなミッション及び計画が提案されていまして、大学の先生方の期待に最大限こたえるべく、いろいろな場で議論して、いろいろなところでどういう計画をやるのがベストであるかということを選択しつつ、計画を進めているわけです。現在の時点では、J-PARCを早く完成させて、そこから科学的成果を得ることが、機構としてはトッププライオリティであると思って、全員一丸になってさまざまなところで取り組んでいるというスタンスです。しかし、ほかのことは一切やめてもいいということではなくて、現在のプライオリティはそういうことですけれども、さまざまなコミュニティの期待にこたえるべく、さまざまな委員会等の御意見を伺いつつ、当機構で判断して、どういう選択があり得るかというのを決めてやっていっている。
【福山委員】
わかりました。J-PARCの計画の最初に入っていた部分が、今日出てきた第期計画という御説明でした。その計画を今もKEKは、一番中心になってやっているJ-PARC計画の中核のサブジェクトとして、今日出てきている内容をそのまま後押しされる、サポートされるかどうかということが問題かと思ったのです。今日我々に議論しろと言われたのは、そういう位置付けのように思えるのですけれども、どうなのでしょうか。
【高崎KEK理事】
ここに出ているのは、内容を含めてサポートしてやっていくということだと思います。さまざまな世の中の学問の流れに従って、これをどこかで決めたから、未来永劫これだというスタンスではないことは科学者として当たり前のことで、何も特別なことではないと思います。
【福山委員】
全く同感です。わかりました。きょうここで出てきている第期計画の具体的なサブジェクトは、一応は出ているけれども、これが最初に提案されたとき以後のいろいろな情勢の変化、サイエンスの変化、第
期計画の進捗状況等々を踏まえて、内容に関してよりよいものにするという前提条件のもとで、第
期計画があること全体を認めるかどうか、そういうことでしょうか。
【井上(明)主査】
大体そういう形でよろしいのだと思います。全体の流れとしては、やはりこういうことでやっていかないと、せっかく造ってきたものが、J-PARC全体としての機能が発揮できなくなります。細かい点に関してはこの後議論されるのだと思いますけれども、第期計画の構想は進めていくということで。ここで第
期計画はストップして、第
期でこの分野は終わりという報告の仕方もこの作業部会ではあるのだと思いますが、全体の流れを見ますと、いろいろ問題がある。あるいは、第
期でやらなかったかということは、この第
期の提案がいかに重要かということも、裏返しの意味もあるのかもしれません。当作業部会としては、一応はこの構想で進めてもよいのではないかと思います。これはきょう結審する必要はないですね。
【木村量子放射線研究推進室長】
ございません。
【井上(明)主査】
そうですね。一応の流れとしては、作業部会としてはこのような意見があるということですね。
【木村量子放射線研究推進室長】
今後、取りまとめの議論の中で、この議論を深めていただければと思います。
【井上(明)主査】
そうですね。
【酒井委員】
一ついいですか。駒宮委員がおっしゃったのは、すべてゼロセットにして始めなさいとおっしゃったように聞こえたのですが、まさかそうではないですよね。
【駒宮委員】
それは程度の問題です。全くゼロセットということはあり得ません。もっとダイナミックに物を考えなくてはいけない。それから、全体の枠はもうこれで決まっているのだから、これはおれたちの金だというようなものではないということです。
【井上(明)主査】
おっしゃる通り、そういうことはないと思います。
―休憩―
【川上委員】
大野委員は住居関係が非常に重要だというお話をされていましたけれども、交流施設、宿泊施設というところで、何かJ-PARC計画に対してアドバイスがございましたらお聞かせください。
【大野委員】
SPring-8は、当初から国内の研究者のためにも宿泊施設が要るということで、普通のビジネスホテルのシングルルームぐらいのスペースで240人収容できる宿泊施設を造っております。外国から来る短期滞在の方については、その施設を使っていただいています。長期滞在になりますと近くで借り上げるなどしています。私は、東海村の方がはるかに環境面はよろしいと思います。
【永宮J-PARCセンター長】
我々が非常に欲しいのは宿泊施設です。居室はNTT研究所跡地等を借りながらやっても、宿泊施設は本当に、絶望的に困ります。来年からは、外国人だけではなくて国内の方も来ますので、この作業部会報告書で書いていただければ非常にありがたいと思います。
【川上委員】
研究の面ではいろいろ環境を整えるというものはあると思うのですけれども、居住部分という間接的なところは見過ごされていて、宿泊施設に関する計画を作らず、来年には人が来るのに宿泊施設がない状況というのは、落ち度があると思います。
宿泊施設については、早急に茨城県や東海村等の自治体と、もう少し具体的に詰めていただきたいと思います。J-PARCは、長期滞在される方の比率が高いと思います。人が来ても住むところがないという状況であれば、実験そのものができないと思います。
【井上(明)主査】
KEKとJAEAの外国人受け入れ体制は、一本化された形でいろいろ議論が進んでいるということでよろしいのでしょうか。
【永宮J-PARCセンター長】
JAEAと話をしています。J-PARCとしては一本化して考えていることは事実ですけれども、KEKとJAEAはカルチャーが違いますから、JAEAはもともとユーザーオリエンテッドではなかったので、宿泊施設などは非常に不足しています。宿泊施設の話は、茨城県や東海村にも申し上げているのですけれども、すぐには乗ってこられないので、苦慮しているところです。
【井上(明)主査】
今の川上委員の御意見は、少し話を折ってしまったようで恐縮ですけれども、これでよろしいですか。
【川上委員】
はい。
【永宮J-PARCセンター長】
フォローしていただいたと思います。川上委員のおっしゃるとおりだと思います。
【井上(明)主査】
大学においても、外国人の宿舎あるいは学生の寄宿舎などを国に建てていただこうなんて大学において考える人は、法人化後はほとんどいなくなってしまったのかもしれない。PFI方式の場合には確実に外国人の宿泊料収入が見込めますので、そのような方式を積極的に活用してやっていかないと、恐らく国に幾ら頼んでも予算をつけていただけないということがあり得ると思います。そこは最大限、法人化の特徴をフル活用していただければと思います。
【永宮J-PARCセンター長】
ホテル等で、興味を示しているところもありますので、積極的にPFIの活用も考えたいと思います。
【井上(明)主査】
法人自身が赤字にならないために、コンサルタントなどを活用していただければと思います。
【駒宮委員】
SLACの場合ですけれども、SLACは、昔宿舎が全くなかったのでハウジングオフィスというのが非常に充実しています。短期の場合はそれでは難しいかもしれませんが、長期的にやる場合は効果的ではないかと思います。
【永宮J-PARCセンター長】
それは非常によい仕組みだと思います。東海村にも若干の宿泊施設があります。なるべくJ-PARCに使わせていただけるように、JAEAと交渉を進めています。
【小川委員】
宿泊施設についてですが、ホームステイのようなシステムは、日本にはあまり根付いていないので研究者が広めていけばよいのではないかと思います。東海村で可能か分かりませんが、外国人のホームステイ先をJ-PARCセンターに登録しておくシステムなども考えられると思います。
【山崎J-PARC副センター長】
東海村長が国際化に非常に熱心で、村中でのホームステイに前向きな発言をされていました。是非活用させていただければと思います。
【小川委員】
3日とか4日ならば、有料で宿泊させることは、外国では普通のことです。
【大野委員】
SPring-8の場合はかなり特殊でございまして、兵庫県が非常に力を入れております。特に、長期滞在者あるいは職員の宿舎については、県が山の上にかなりの数のアパートを建てております。そこを私ども職員は使っております。茨城県や東海村も同じようなことをお考えだろうとは思いますが、御参考までに。
【家委員】
「外国の研究環境を知り、日本のシステムを理解する支援者の雇用」、これは非常に大事なことだと思うのですけれども、もう少し具体的にどういう人材母体で、どの程度の規模をどういう身分で雇うかということは考えていらっしゃいますか。
【永宮J-PARCセンター長】
我々も少し思案しているのですけれども、支援者は、日本の企業のことをよく知っていて、かつ外国のしきたりもわかるという人でないと務まりません。そういう人は、なかなかいないので、きちんと見つけ出し養成しないといけません。支援者のニーズは非常に高いので外国人はお金を払ってもいいと言っているのです。だから、問題ではサラリーではなくて人を見つけ出すことです。また、J-PARCセンターで雇うとすれば支援者をどう評価するかも含めて、そういう人材をきちんと入れていかなければいけないというのは非常に強く感じています。
【家委員】
ポスドク問題を絡めるのはどうかとは思いますけれども、そういう人をテンポラリーに雇うのではなくて、きちんと職業として位置付けるようなことを目標に是非お考えいただければと思います。
【横山委員】
11ページのその他の必要な努力というところにあるものですが、その他の点ということで少し寂しいなという思いをしたのですけれども、国際的な広報活動の強化について少しコメントをしたいと思います。J-PARCとして広報をする相手は一体誰なのかということを考えたときに、これは漠然と英語のページがあればいいというものではなくて、やはり研究者に向かって、より多くの研究者に来ていただくための広報活動が必要なのだと思っています。そのために、ほかの研究所の広報との連携が非常に大事になってくると思います。高エネルギーの分野ですと、インタラクションズオルグという会合がございまして、各研究所を代表する広報官が集まって、年間数回お互いにどうやって国際的に広報を進めていくのかという会合を開いております。その中でもやはり非常に優秀な広報官を持っている研究所は、発言力もありますし、国際的な広報活動を動かす力も非常に持っていると思います。J-PARCとしても是非広報官として非常にすぐれた方を御採用いただきたいと思います。広報は、宣伝だけではなくて、研究者コミュニティをよりよく存続させ、また将来に向かっていい提言をしていくものだと思っております。国際的な広報の強化の項目がその他というところにならないで、もう少し重要な位置付けになることを願っております。
あと、拝見していると、これまでの大変重要な議論と比較して、どうしても広報は後手になっているように感じるのですが、やはり同時並行の広報というものが非常に求められています。社会から見ても研究者サイドから見ても、広報が同時に進まずタイムラグが生じると、その情報の価値はなくなります。そういった意味で、広報もこういった議論と同時に充実されていくことを望みます。
【井上(明)主査】
ここに外国人雇用の促進が資料の最後にその他に近い形で記載されているように感じます。これは国策的な技術等で意図的に、あまり雇用の促進をしないということがあるのでしょうか。
【永宮J-PARCセンター長】
確かに我々のところは外国人がそれほど多くないのですけれども、外国人で来たいという人は意外といるので実際に雇用しています。やはり雇用をもっと促進するような策を講じないと、なかなか外国人を積極的には雇用できません。昔KEKでも少し外国人を雇用したことがあるのですけれども、なかなか増えませんでした。外国の研究機関では、外国人の雇用は普通ですから、そういう意味で、国際的な研究機関になるためには、今後は外国人の雇用をきちんとやらなければいけないと思います。
【和気委員】
SPring-8の御説明の中でも、いわゆる国際連携の対象の国々というのは比較的ワールドワイドで、欧米も、もちろんアジアもあるのですが、実際に研究者がどこからいらっしゃるかといえば、ほとんどアジアの方のように受けとめました。世界の先端の研究センターという場合には、少なくともワールドワイドで研究者がそこに集まってきて、それが魅力でアジアの人たちも日本に来れば世界の最先端のコラボレーションの研究が可能になるということなのだろうと思うのです。だとすると、アジアの中心というよりは、欧米を含めた世界の研究者が日本で一緒に研究することにいかに魅力を感じるかということが重要です。そのため、生活環境やインフラも含めて、世界の超一流の研究者たちにとって、J-PARCセンターで研究することがいかにいいのかという、トータルの国際化戦略の枠組みやビジョンを作っていただいた方がいいと思います。そうでないと、アジアからの研究者だけが集中的に集まってくるということもあり得る。
【永宮J-PARCセンター長】
おっしゃるとおりです。世界の研究・教育拠点としてのJ-PARCを目指すことがアジア・オセアニア圏におけるJ-PARCのリーダーシップにつながるということで、アジア圏だけにフォーカスを当てるのではなくて、世界的なところにフォーカスを当てて、自然とアジアでセンターになっていく姿が正しいと言っておられるのだと思います。そういう観点で進めていくべきだと思います。
【金子委員】
最初の話に戻ってしまうのですけれども、やはり衣食住は非常に重要ですので早急にお願いしたいところでございます。
【井上(明)主査】
今回は、研究環境整備、海外研究者との交流、共同研究促進、全般的なことでいろいろ御意見をいただきました。財務状況もいろいろあるかと思いますが、その方向で検討していきたいと思います。
―了―