第2期地球観測推進部会(第10回) 議事要旨

1.日時

平成20年5月12日(月曜日) 10時~12時

2.場所

三田共用会議所 第4特別会議室

3.議題

  1. 「平成21年度の我が国における地球観測の実施方針」について
  2. その他

4.出席者

委員

 澤岡部会長、石原部会長代理、青木委員、岸田委員、小池(俊)委員、沢田委員、杉本委員、瀧澤委員、佃委員、鳥谷委員、深澤委員、福島委員、藤谷委員、堀川委員、本藏委員

文部科学省

 青山大臣官房審議官、岡村地球・環境科学技術推進室長、西山地球・環境科学技術推進室室長補佐、北野地球・環境科学技術推進室室長補佐 ほか

オブザーバー

 原沢内閣府参事官(環境・エネルギー担当)

5.議事要旨

【澤岡部会長】
 ただいまより第10回地球観測推進部会を開催します。出席予定の方が全員そろっておりませんが、定足を満たしており、定刻ですので、始めさせていただきます。
 委員の交代がありましたので、紹介させていただきます。海洋研究開発機構を木下委員が退職され、本部会の委員を辞任されましたので、後任として同機構の深澤様に就任をお願いしました。
 深澤委員、一言ごあいさつをお願いします。

【深澤委員】
 海洋研究開発機構の地球環境観測研究センターの深澤と申します。海とか大気、いろいろまた皆さんとも協力して観測を進めていきたいと思います。
 よろしくお願いします。

【澤岡部会長】
 ありがとうございました。
 この度、内閣府の青木参事官が原沢参事官に交代されました。一言ごあいさつをお願いします。

【原沢参事官】
 ただいまご紹介にあずかりました原沢です。4月1日より、青木にかわりまして、後任として参りました。昨年度までは連携拠点の影響ワーキングのほうをやっていたんですけれども、今度は逆の立場で、またいろいろご協力頂くことになると思います。よろしくお願いいたします。

【澤岡部会長】
 ありがとうございました。
 それでは、事務局より本日の資料の確認をお願いします。

【岡村室長】
 資料の確認をさせていただきたいと思います。
 本日の資料でございますが、資料は全部で4つでございます。まず資料1、これが21年度の我が国における地球観測の実施方針の中間取りまとめ案、本日のご議論いただくメインの資料でございます。
 それから資料2が第2回GEOSSアジア太平洋シンポジウムの結果、そして参考資料といたしまして、総合科学技術会議のほうでおまとめをいただいている政策ドキュメントを2つ、参考資料1が環境エネルギー技術革新計画ワーキンググループの第6回の関連資料、そして参考資料2が、科学技術外交の強化に向けて、最終取りまとめ案を机上に配らせていただいております。
 さらに、昨年度平成20年度の実施方針、この冊子を席上に配らせていただいております。

【澤岡部会長】
 続きまして、出席者の確認をお願いします。

【岡村室長】
 本日、井上委員、今脇委員、久家委員、小池勲夫委員、柴崎委員、西岡委員、安岡委員、横内委員、和気委員の9名の先生方がご欠席でございます。まだ何名かお見えになっていない先生がいらっしゃいますが、この後お見えになると伺っております。

【澤岡部会長】
 それでは、議事に入ります。
 議事次第によりますと、まず地球観測の実施方針の審議がありますが、その前に関連の報告をいただいたほうが、審議が進めやすくなりますので、順序を変えさせていただきます。たくさんの資料が配付されています。事務局より説明をお願いします。
 まずは、第2回GEOSSアジア太平洋シンポジウムの開催の結果についての報告です。

【岡村室長】
 ご説明をさせていただきます。
 本日ご議論いただく実施方針は、先生方ご案内のように、総合科学技術会議の推進戦略、そしてGEOSS10年実施計画、この2つを、我が国としていかに具現化をしていくか、この立場からご議論いただくものなのでございますが、そのGEOSS10年実施計画に関連しまして、せんだって4月14日から16日、GEOSSの活動といたしましてGEOSSアジア太平洋シンポジウムが開催されました。この結果を資料2に基づきまして、ご説明をさせていただきたいと思います。
 26カ国から230名のご参加をいただきまして、冒頭には政策的なお話、2日目には専門家のご議論、そして3日目にはIPCCのパチャウリ議長の特別講演を含む、そういうような構成でシンポジウムが開催されました。
 今回のシンポジウムは、昨年の11月に南アフリカで開かれました地球観測サミットで、当省の渡海大臣から開催を提案させていただいております。そしてテーマにつきましては、アジア太平洋地域というのが気候変動の影響を非常に大きく受ける地域であるということ、それから本年のサミット、こういうものを踏まえまして、気候変動への取り組みに関しての地球観測の役割、これをテーマとして議論をしていただきました。
 専門家の皆様の、かなり深掘りをした議論というのは、4つの分科会でもって実施をしていただきました。「気候変動のモニタリングと予測」、「持続可能な水管理」、「生態系と生物多様性」、「森林と炭素のマッピング」、この4つの分科会を設けて議論をしていただいております。3日間の会議を通じて、シンポジウムが、GEOの事務局及びGEOのメンバー国に対して、アジア太平洋地域でこのようなことをきちんと取り組んでいくべきではないかという提言をするという位置づけのサマリーレポートがまとめられました。この内容について、少しご説明をさせていただければと思います。
 まず、先ほど申し上げましたように、近年の気候変動への関心は世界的に高まって、G8サミットにおいても気候変動は主要なテーマになっている。そして、特に気候変動の影響を最も受けやすい地域の1つであるアジア太平洋地域の関係者と専門家が集まって、こういうことに関してGEOSSが果たすべき役割について議論を行った、これがまず冒頭のところでこの会議の位置づけを示しているものでございます。
 具体的には、4つの分科会で専門的な議論をしていただきましたので、AからDまでのそれぞれの分科会の報告という形で政策提言がなされております。まず、気候変動のモニタリングと予測。これは気候変動に関する、かなり広範な観測、予測のツールという観点から議論が行われておりますけれども、1ページ目のAと書いてあるところでございますが、5つ大きな方向性が出されております。まずは、大気温室効果ガスの観測ネットワークの構築、これが非常に重要なものですよということ。そして長期の生態系及び陸域炭素フラックスの観測継続、これも不可欠ですという点。3番目が、海洋の気候パラメーター観測というのは、国際協力のもとで運営をされ、強化される必要があるという点、4番目に、放射強制力のよりよい理解には、地表と衛星からのエアロゾル・雲それから放射収支の観測が必要。5番目として、モンスーンが卓越するアジア太平洋地域の気候観測システムの持続的な維持には、可能な場合にはインフラの整備を行うことも含む、高い解像度の長期観測ネットワークが不可欠、こういう点が示されております。
 その上で、GEOSS自体は現在76のタスク、具体的な国際協力が進んでいるわけでございますが、その中で、この気候変動のモニタリングと予測という観点からは、ここの2ページと書いてあるところでございます、冒頭4行、黒丸が4つございます。データ再処理・解析の継続、衛星データによる観測データの取得、グローバル海洋観測システムの構築、シームレスな気象・気候予想システムの構築、こういうタスクをより一層充実させなさいというご指摘が、1番目の分科会では示されております。
 2番目の分科会、持続可能な水管理のための地球観測、ここにつきましても、洪水や干ばつ被害への対応策のためにも、これからしばしば引き起こされる極端現象の予測の高度化が極めて重要。それからアジア太平洋地域の総合的な水資源に関する衛星観測と地上観測のネットワーク、これを構築するべきである。
 3番目として、総合的水資源管理を達成し、気候変動に対する適用策を国際的にきちんと推進していきなさい。
 4番目として、能力開発の推進、こういう点が示され、先ほどと同様にGEOのタスクとしては、ここに示ししたような黒丸の4つ、これが特に重要ですよというふうにまとめていただいております。
 3番目の分科会、生態系管理及び生物多様性の保護のためのGEOSSの活動という点では、やはりアジア太平洋地域が低緯度から高緯度にわたって多様な生態系が存在する、こういう特色のある地域であるので、きちんと観測システムを構築していきなさいという姿勢にのっとり、5つ黒丸がございます。これらのタスクを強化していきなさいというふうに示されております。
 4つ目の森林炭素マッピングでございますが、3ページの冒頭でございます。まず第一に、合成開口レーダー、それから光学、ライダーを含む衛星観測センサーによる森林炭素マッピングが非常に重要ですという点。それから、森林の減少と劣化、また他の土地の被覆変化による炭素排出量の評価、これらに対して観測と予測の貢献が非常に大きいでしょうという点が示され、ここでは6つの黒丸が書いてございます。6つの点をGEOのタスクとしてきちんとこれからしっかりやっていきなさいと、こういう方向性が出されております。
 以上が、アジア太平洋シンポジウムの結果でございます。

【澤岡部会長】
 ありがとうございます。
 質問やコメントなどございませんか。
 小池委員、2日目に分科会のコーディネーターをされましたがご感想などをお願いします。

【小池(俊)委員】
 日本が主導で、2回目のアジア太平洋シンポジウムということで、1回目は、最初ということもあって、多くの国の方が集まるだろうとは思っていましたが、2回目も大変盛況でした。そして今、室長からお話がありましたように、実質的な議論ができました。私は水を担当しましたが、今年は気候変動が水循環、水資源に与える影響の具体的なディスカッションができました。気候モニタリングのセッション、それから生態系、森林の炭素吸収の話も具体的に話が進んで、大変実り多かったと思います。
 水については、気候変動の影響が各国でどんなふうに起こっているのかというのを、15カ国からリポートしてもらいまして、現在それぞれの国でどんな対応をし始めているかというところまでリポートいただいて、今まとめておるところでございます。
 こういうことを日本がリードして、日本で、東京で2回続けて、2年間続けてやったわけですが、今後のことについては、早めに議論を始めていくことがよろしいかなと思います。

【澤岡部会長】
 ありがとうございました。
 それでは、2つ目の報告に移ります。総合科学技術会議の環境エネルギー技術革新計画に関する第6回ワーキンググループが開催されましたので、報告をお願いします。

【岡村室長】
 ご説明をさせていただきます。
 参考資料の1をごらんいただきたいと思います。この総合科学技術会議の環境エネルギー技術革新計画ワーキンググループは、私ども、この地球観測推進部会の前回から今回までの間に、2週間に1回というような非常にタイトなスケジュールの中で、かなりまとまったドキュメントをここまで総合科学技術会議におまとめいただいているというところでございます。
 まず1ページ、はじめにというところで、この報告書の全体の位置づけをご説明させていただければと思います。この報告書も、やはり洞爺湖サミットに向けて、温室効果ガスの排出低減のための革新的技術を開発して、日本及び国際社会に普及させ、地球温暖化問題に関して指導的役割を担うということを第一義的にといいますか、全面的に目指してまとめられているものでございます。ですから3段落目にございますように、温室効果ガス排出低減には、1番、当面、既存技術の向上と普及を政策的に推進、2番、2050年のエネルギー起源の二酸化炭素排出半減に要する削減量の約6割は革新的な技術の開発とその導入によるとの試算もあり、革新的な技術の研究開発が不可欠、こうありますように、ある技術が社会に導入された場合に、二酸化炭素排出量が何パーセント減るという物差しを1番の物差しとしてまとめられているものです。
 となりますと、気候の観測・予測というのは、よく冗談で言うのですが、衛星を打ち上げるためにどれだけCO2(二酸化炭素)を排出してしまうかと、こういうことになってしまうわけですので、なかなか予測とか観測というのが、この枠組みに入っていくのかどうかというところは非常に私どもも気になっていたところではございますが、従前より青木参事官、そして本日、原沢参事官にこちらにお座りをいただいて、この本部会の一員としてのご議論をいただいて、非常にご理解をいただいているということで、観測・予測というのが、この報告書の中にしっかりと位置づけられているという状況でございます。
 全体の技術の整理論をごくごく簡単にご説明したいと思います。CO2(二酸化炭素)を削減するために、整理論でまず3ページの中ごろ、短中期的対応、2030年までにどんな技術が必要かということ、そして5ページのところ、(2)中長期的対策、2030年以降に必要な技術は何かという点、まずこの大きく2つに分けて技術が抽出されています。
 3ページにお戻りをいただいて、短中期的対策に必要な技術の中で、1.削減効果の大きな技術として、その主要な技術としてエネルギー供給側からは高効率火力発電だとか、軽水炉の高度利用だとか超伝導送電等々が書いてございます。エネルギー需要側も書いてございます。
 それから、短中期的対策の中で、2.地域全体で温室効果ガスの削減を図るための技術として民生技術、それから地域中心の技術ということで事例が掲げられております。5ページ、さらに3.温室効果ガス排出削減効果を高めるための技術として、再生可能エネルギーですとか電力貯蔵等々が挙げられている。短中期的対策については、このような構成になっております。
 そして中長期的対策としては、まず1.削減効果の大きい革新的技術というのが5ページの真ん中に書いてありまして、6ページ2.技術ブレークスルーを実現するための基盤技術、そして3.超長期的に実現が期待される技術、こういう構成になっております。
 しかしながら、それらに加えて、まさに観測、予測の位置づけがどこにあるかということになりますが、その一部がまず8ページにCO2(二酸化炭素)をどれだけ減らすかということだけではなくて、国際的な温室効果ガス削減への貢献策というのが真ん中ちょっと下にございます。この観点の重要性も本報告書に指摘されているものでございます。その下のほうに、下から3行目、IEAやIPCC等の国際的な機関における活動について、我が国もさらなる貢献を進めるということが大きな方向性として出た上で、10ページ下のほうの(2)国際的枠組みづくりへの貢献という重要性が示され、その中で11ページの一番上でございます、ここが当部会に一番関係する2.地球観測、気候変動予測及び影響評価への国際貢献、国際貢献の観点でとらまえられております。ここは少しきちんと読みたいと思います。
 国際的な気候安定化政策は、気候等に関する科学的知見に基盤を置いており、IPCCに代表される科学の成果が大きな流れを作る。我が国の優れた気候関連科学をさらに進め、独自の政策基盤を確保することが重要である。地球上の地域ごとの気候変動予測など、観測・予測精度の向上を図り、IPCCの第5次報告に向けてより一層の貢献を果たし、国際的枠組み作りへの有効な情報、知見を提供する。
 また、開発途上国を中心とした海外への地球観測データや地域の環境影響評価・予測結果等の提供を通じ国際貢献を図ると、こういうことがこの報告書の中に位置づけられているという状況でございます。
 16ページからの後が別添という資料になるのですが、別添2という非常に細かい横長の表がございます。ちょっと細かくて恐縮ですが、今ご説明しました短期的、中期的にCO2(二酸化炭素)をどれだけ削減する効果があるかという技術が並んでいる一番下でございます。地球観測・気候変動予測というのが革新的な技術の1つとして位置づけていただけるようになっております。そして、その次のページからが別添3となりますが、全部で36個ある技術のそれぞれについて技術の概要、それから温室効果ガスの削減の効果、技術ロードマップ普及シナリオ、国際競争力、国際展開という観点から技術の取りまとめをしていただいておりますが、この最後のページ、36ページにあります36項目目、地球観測・気候変動予測につきましても、総合科学技術会議のお計らいで、重要な技術としてきちんと位置づけられたということでございます。
 ここの36ページの中身につきましては、もう先生方ご案内のことでございますが、1つだけポイントとしましては、CO2(二酸化炭素)をこの観測予測でもって直接に削減するということではないながらも、どれだけ重要な情報を提供することが期待されているか、総合科学技術会議からも期待されているかということのあらわれとして、このようにまとまったということでございます。
 今まで2回、この部会でかなり集中的に議論をしていただいた結果として、実施方針と並行して総合科学技術会議のほうで議論が進んでいた環境エネルギー技術革新計画の中でも、きちんと観測予測が位置づけられたということを含めてご報告させていただきます。
 以上です。

【澤岡部会長】
 36ページがこの部会で議論したエッセンスであると考えていいわけですね。

【岡村室長】
 はい、結構でございます。

【澤岡部会長】
 ご質問、コメントなどございましたら、お願いします。
 それでは、3番目の報告をお願いします。

【岡村室長】
 参考資料2でご説明をさせていただきます。
 科学技術外交の強化に向けて、これまた総合科学技術会議のほうで議論を進めていただいているものでございますが、3ページをお開けいただければと思います。この報告書の位置づけでございます。これは冒頭の4行と、4ページの下3行にすべて言い尽くしておると思いますが、科学技術は世界の公共財としての“知”の創出を目指して、科学技術そのものの発展、研究成果の社会への還元を通じた経済社会の発展、安全保障の強化、地球温暖化対策等の地球規模の課題への対応など、現在だけでなく将来も含めた、国民や人類全体の幸福や豊かな生活等に貢献し得るものであると、こういう考え方のもとに、4ページの最後、本年の北海道洞爺湖サミットやG8科学技術大臣会合等においては、本報告書で述べる我が国の科学技術外交の強化に向けた考え方等を基に議論が行われ、成果を得ることを期待すると。すなわちG8サミット、それからその前の科学技術大臣会合に向けた、我が国の国際貢献策をこの報告書の中で議論をし、おまとめをいただいているというものでございます。
 そして、その中においては、非常に地球環境問題に対しての問題意識が高く、もうここそこに地球観測の問題が書かれているわけですけれども、若干ご説明をいたしますと、まず9ページに、地球規模の課題解決に向けた開発途上国との科学技術の強化というのが、真ん中辺に1.と書いてございます。ここに(1)科学技術協力の実施及び成果の提供・実証とございまして、いの一番に、地球規模の課題の中でも、地球温暖化というのが書いてあります。また、水の問題も書いてございます。当該国の社会ニーズに応じて、開発途上国との科学技術協力を実施するということ、そして10ページの第4章科学技術外交を推進するために取り組むべき施策、これは具体のものが書いてあるわけですが、この中でも非常に本部会に関連する内容が多うございます。11ページの下3分の1でございます。地球規模の課題解決に向けた開発途上国との科学技術協力の強化ということで、(1)科学技術協力の実施及び成果の提供・実証、1.地球規模課題について我が国と開発途上国の研究機関等が行う国際共同研究を積極的に推進する。その中で、外務省と文部科学省の施策として「地球規模課題対応国際科学技術協力」、ODAを活用した協力の件が示されております。
 さらに、12ページ右下2)衛星利用というところでは、開発途上国が有する課題の解決に向けて、衛星観測データ等の提供や利用の実証を実施する。具体には、「地球観測衛星データの提供による国際貢献」としてALOSをはじめとする観測データの提供が、13ページ頭に向けて書いてございます。同じ項目の中で、衛星による地球環境観測、そして総務省の施策も含めて、超高速インターネット衛星「きずな」を用いた国際共同実験についても、この重要性が指摘されております。
 13ページの中ごろ、水・食料問題に対しましては、開発途上国における水資源管理・洪水・渇水被害軽減に資する情報の提供についても示されております。
 さらに、16ページに飛んでいただきますと「日米欧の技術協力による地球環境観測プロジェクト」、そして17ページになりますと、その具体的なものとしては、水循環、雲・エアロゾル等を観測するプロジェクトの推進と書かれております。
 その次の2革新的な環境・エネルギー技術開発の推進の中でも、観測・予測関係は17ページの下から7行目から入ります。「気候変動の把握のための革新的技術」としまして、これはまだ十分に実測できていないCO2(二酸化炭素)の分布の観測を可能とする機器の開発等々について示されており、IPCCに貢献しなさいと書かれております。
 さらに、18ページの上から3行目、「地球地図整備」についても、解像度1キロメートルという具体例を掲げながら、より正確な地理情報の整備が示されております。それに引き続きまして、先端的研究インフラとしまして、スーパーコンピューターの活用としての、地球シミュレータによる気候変動予測データ、それから地球観測衛星データの提供による国際貢献、さらに衛星による地球環境観測、それぞれ各省庁の施策が示されておるという状況になっております。
 今、全部を読み上げたわけではないのですが、一例を挙げましても、このように科学技術外交のかなり目玉として、地球観測予測に関する日本のすぐれた技術を使って貢献をしていくということが総合科学技術会議によっておまとめをいただいているという状況でございます。
 以上でございます。

【澤岡部会長】
 ありがとうございます。
 今までの報告を含めて、何か質問、ご意見などございませんか。
 特にご発言がなければ、本日の一番目の議題に戻りたいと思います。
 「平成21年度の我が国における地球観測の実施方針」中間取りまとめ(案)につきまして、事務局より説明をお願いします。

【岡村室長】
 資料1に基づきまして、ご説明をさせていただきます。今回、第2章、これは前回までのご議論でご案内のように、去年までの在り方と実施方針の中での、より政策的方向性を示したところを、さまざまな情勢変化に基づいて、それぞれのプロジェクトの行くべき方向性についてリバイズをしたというのが第2章の基本でございます。そして、前回、前々回といろいろご議論いただきました。今回の平成21年度の目玉としまして、やはり気候変動の影響を監視・予測するための観測体制の在り方、これが全く新しいもの、もちろんその根っことしては、平成20年度去年の実施方針の中から持ってきたものも多うございますけれども、政策的な見方としては、この第1章はお初のものという状況になります。そして、そういうことを含めて、はじめにということで、位置づけなどを説明しております。
 では、まず「はじめに」のところを、ちょっと簡単にご説明をさせていただければと思います。第1段落については、この実施方針が何であるかを説明したものですので、特にご説明は要らないと思います。
 そして、第2段落でございます。ここに「平成21年度の我が国における地球観測の実施方針」では、地球変動の諸問題に対する世界的な関心が急速に高まっており、北海道洞爺湖サミットにおいても気候変動は最重要課題の一つとして取り上げられることにかんがみて、主に気候変動の影響を監視・予測するための観測体制の在り方の実施方針を提示すると。そして、これまでの本部会の成果を踏まえて、引き続き「推進戦略」で示された基本戦略に沿って、分野間及び府省・機関間の連携を促進する取組、「地球観測に関する政府間会合(GEO)」及び地球観測に関連する国際機関・計画に対する我が国の貢献、国際協力による地球観測体制の確立のそれぞれの実施方針、これは第2章になるわけでございます、提示しているという構成をご説明しております。
 具体的に、第1章についてのご説明をさせていただきたいと思います。まず、第1章の構造でございますけれども、大きく1検討の背景及び目的、そして2基本的な考え方、3具体的方策、この大きく3つの段落立てになってございます。
 では、検討の背景及び目的の中でございますが、まず、(1)として背景、(2)として目的と分けてございます。検討の背景なのでございますが、実は背景も目的もそうですけれども、この3ページの第1章の下の括弧のところに「以下については、最終的に本中間取りまとめ以降の進捗を踏まえ加筆」とございます。まず検討の背景を見ていただきますと、一番下のほうに洞爺湖サミットのくだりが書いてございます。この後の審議のスケジュールとも非常に関係するのですが、本部会の取りまとめによる実施方針を、8月の研究計画・評価分科会に報告するということになりますと、それは洞爺湖サミットが終了した後になります。となりますと、今現在では洞爺湖サミットの首脳宣言文でもって気候変動問題が具体的にどういうふうな書きぶりをされるかということについては、各省、G8各国のシェルパ会合などを通じて、今議論をしているさなかでございますので、明確に今、どうなりますということは言えない状況にあります。もちろん気候変動に関してものすごく期待が高く、その中で観測・予測についても、各国の期待も高いような雰囲気は感じておるものでございますが、首脳宣言で具体にどのようなことが書かれるかということは、この後わかってくるということになりますので、中間取りまとめ以降の進捗を踏まえ、この後加筆となっているわけでございます。
 しかしながら、本日は現時点で物事が進んでいるところまでを背景として書かせていただいております。まず、やはりIPCCの動き、長年に亘る研究の成果による客観的な科学技術根拠を示して、見解を世に提示したことが評価されて、ノーベル賞を取ったのであると、そのところを第一に書かせていただいております。
 そして、しかしながらIPCCのほう、要するに科学的な知の提示でございますが、それも完璧に完結しているわけではなくて、データセットの質、データの数などは改善されたものの、まだまだ観測データや文献の地理的分布に偏りがあり、特に開発途上国においてこれらの不足が目立つということもIPCCは指摘しているということを記載してございます。
 次に、GEOの枠組みにおいては、どういうことが最近進んでいるかといいますと、これは下から9行目あたりからでございますが、第4回地球観測サミットで、気候変動をはじめとする地球観測の国際的な連携の強化が合意されているという、前回の部会でご説明をしました、ケープタウン宣言のくだりが書かれております。それから気候変動枠組条約締約国会合の議論についても、それに引き続き記載をさせていただいております。
 一番大きなところが、下から3行目からでございます。平成20年7月に開催されるG8洞爺湖サミットでは、気候変動が主要テーマの1つとして取り上げられることとなっており、これに向けて同年6月に開催されるG8科学技術大臣会合では、地球規模の課題の解決に向けた科学技術協力の強化等について議論されることとなっていると、このように現時点では書かせていただいています。ですから、この後、7月のサミットが終わりとなりますと、ここについてはきちんと書き込んでいかなければいけない。具体的にサミットの宣言文で、何が観測・予測に対して求められているかということを書き込んでいかなければいけない状況になります。
 先に進ませていただきますが、(2)検討の目的となります。第2パラグラフでございますが、世界全体で気候変動に関し必要となる全球観測データを取得し、気候変動の影響を精密に予測することによって、気候変動への適応策を検討するために必要な基礎的情報を国民に提供していくことを目的の1つとしなければいけないだろう、検討の目的は、ニーズに基づくというところを前面に出させていただいています。
 さらに、検討の目的としまして、先ほど科学技術外交の総合科学技術会議の報告書のご説明をいたしましたが、その中で、観測・予測に関して、途上国のキャパシティビルディングの構築を含めた指摘がされていますので、この検討の目的のくだりの下から5行目、我が国が開発途上国に対する研究協力に加え、能力開発を含めた適応の強化を支援することによって気候変動の脆弱性を緩和することは、我が国自身の脆弱性の低減にも資するものであるというような方向性を記載させていただいておるところでございます。
 基本的な考え方になりますが、今、ご説明させていただいたこととかなり重複いたしますが、(1)として5ページ目、上から2行目でございます。気候変動の影響に対する適応又は緩和のための観測ニーズという項目、そして(2)開発途上国の能力開発、この2点を基本的な考え方として項目立てをしております。
 まず(1)のほうでございますが、(1)の中の6行目あたりからです。将来の気候変動の具体的な影響を評価するために必要な観測データのニーズは高まることが予想されます。各府省・機関においては、平成18年に設置された地球温暖化分野に関する連携拠点の活用等を通じて、具体的な観測ニーズを的確に把握することが求められている。そして、こうした観測ニーズに沿ったデータを提供するためには、観測体制の整備とともに、様々な観測データの統合が不可欠であり、そのための具体的方策が求められる、こういう基本的な考え方を示しております。
 (2)開発途上国の能力開発につきましては、先ほどの「科学技術外交の強化に向けて」のところを参照させていただいております。この能力開発の中の4行目になりますが、「科学技術外交の強化に向けて」においても、途上国との科学技術協力の強化などが言及されているところであります。これを踏まえて、科学技術外交を強化する取組の一環として、開発途上国の観測ニーズを把握するとともに、気候変動の適応又は緩和などの地球規模課題に関し、開発途上国の能力開発を含めた国際共同研究を行うことが期待されるという基本的な考え方を示しております。
 このような考え方を踏まえて、具体的な方策が、5ページの下から7ページまでになります。具体的方策は、4つの章立てにしております。(1)観測データの統合により有用な情報を提供するための方策、それから(2)観測データの標準化と流通の促進、(3)ODA等を活用した開発途上国の能力開発、(4)気候変動への対応として求められる具体的な取組、この4つになります。
 まず(1)になりますが、何度も検討の目的、基本的な考え方で申し上げていますように、観測ニーズに基づく有用な情報の提供を前面に出しておりますので、データの統合ですとか、それからデータの体系的な収集ですとか解析、それから社会的に有用な情報に変換するための活動を、ちゃんと進めていきましょうということが5ページ目から6ページの頭に書いてございます。
 (2)の観測データの標準化と流通の促進につきましては、前回、前々回のご議論を通じて、どこまで書き込めるかということは、随分と先生方とも、それから連携拠点ともご相談をしたところなのでございますが、現在、やはり2段落目に書いてありますけれども、国際的な場において、観測データの国際的流通の在り方というのが、例えばWMO、ICSU、GEO、そういうところで各種の検討が始まっているという状況にあります。だからといって、その議論をすべて日本がはいと言って盲目的に受け取るというのもおかしい話でございますので、この中で日本としてどうしても押さえておかなければいけないところについてはきちんと留意をしなければいけないなという問題意識のもとに、我が国としては既存の国際枠組みによるデータポリシーを踏まえつつ、安全保障や関係する法令に反しない限りにおいて、データを公表することを基本に、国際的な動きに留意しつつ検討することが適当と、このぐらいの事務局案にさせていただいております。
 (3)開発途上国の能力開発でございますけれども、これも問題意識は、これまでご説明したとおりでございまして、それを踏まえて、最後の2行でございます、従来のODAと連携した国際共同研究等を推進し、途上国の自立的研究開発能力の向上や適応策の強化への支援等を図ることが必要、このような案にしております。
 (4)でございますが、これは冒頭にGEOSSのアジア太平洋シンポジウムのサマリーレポートでも、具体的にこのようなものをやらなければいけないとご説明しましたが、やらなければいけない科学技術的なサブ分野といいましょうか、そういうようなものを抽出していただいておりましたので、そこをもとに、少しどんな取組が具体的に必要なのかを案として提示をさせていただいております。
 大きく、気候変動の現状と将来を把握・理解するための取組、気候変動の影響が顕著にあらわれる分野への取組、そして、気候変動に大きな影響を与える森林分布への取組と3つのカテゴリーに分け、それぞれについて全部で10個の取組例を、こちらに案を掲げさせていただいております。まず1個目が、気候変動の現状をより良く把握するための全球的な温度計測、広範囲にわたる雪氷や氷河、氷床の融解の状況の把握、及び世界の海水面の上昇の計測、海洋大循環の変化の状況の把握が1点。2点目が、WMOをはじめとする様々な枠組において、以前から実施されているものの、観測領域や連携等が必ずしも十分でない二酸化炭素やメタン等の温室効果気体の現状や循環の把握を行うための衛星、大気、海洋、陸域での観測の強化・連携。3点目が、エアロゾルと雲に関する衛星等による広域かつ継続的な観測及びプロセスの理解。4番目が、シームレスな気象・気候予測システムの構築のため、観測が十分でない国や地域を含めた詳細な気象・気候観測体制の整備と、予測モデルの向上。5番目が、様々な観測データが多くの分野の研究者間で利用可能となるためのデータの再処理・解析と、有用な情報への変換・提供。
 気候変動の影響が顕著にあらわれる分野としましては、3つ。まず1つが、衛星等による台風や豪雨の極端現象の広域かつ継続的な観測・監視の維持・強化。2つ目が、洪水や渇水による被害軽減のための水循環の把握と、水質も含めた水資源管理のためのモニタリング、決壊する恐れのある氷河湖のモニタリング、予報モデルの高度化のための衛星観測や現場観測データの統合、及び解析と水資源管理のための能力開発プログラムの推進。3つ目が、人間活動に影響を及ぼす可能性のある生態系と生物多様性把握のための観測ネットワークの構築と、その変化や変遷の理解。
 森林分布への取組としては、2つ。1点目が、二酸化炭素収支に大きな影響を及ぼす可能性のある森林のマッピングとその変化のモニタリングに関する、人工衛星と地上観測データとを組み合わせた詳細な把握・理解、全球の樹木被覆率データの利活用促進と時系列データの整備。2つ目が、二酸化炭素のほか、メタンや一酸化炭素などの温室効果ガスの収支の変化に影響を及ぼす可能性のある全球土地利用変化の把握。この10点を具体のものとして、案を出させていただいております。
 次に、第2章でございます。第2章のほうは、大きな抜本的な変化というのはございません。ごくごく簡単に、去年との違いだけご説明をさせていただければと思います。まず、8ページにつきましては、ほぼ変更はございません。てにをは、その他ちょっとした字句の変化はございますが、大きな変化は全くございません。
 9ページでございますが、こちらには1から7までの連携施策それぞれについての今後の方向性があるわけですけれども、2番目の、フラックス観測タワーの共同利用のところにつきまして、文章の2番目、「また」以下のところがタワーでの温室効果ガスフラックスの観測、水循環観測、生態系観測、衛星リモートセンシングの地上検証観測など、ここがさらに平成21年に向けて、拡充していかなければいけないのではないかという問題意識をいただきまして、そこを加えているという状況でございます。
 10ページになりますが、ほとんど変わってございません。
 11ページになりますが、この3科学技術外交の強化による地球観測体制の確立、ここが実は非常に大きく変えてございます。何かといいますと、今まではこの冒頭の2行に書いてありますように、我が国は「推進戦略」及び「10年実施計画」を踏まえて、アジア・オセアニア地域との連携の強化による地球観測体制の確立に向けて取り組んできたということですが、最近の科学技術外交ですとか、それからTICAD、アフリカとの協力の会議がございます。それからやはり、福田総理のさまざまな政策提言の中でも、アジア・オセアニア地域のみならず、広範な開発途上国に向けたさまざまな取組という必要性が強く示されておりますので、「しかしながら」から書きましたように、アジアのみではなくて、気候変動の観測・予測についても開発途上国を広くカバーした形で、物事に取り組んでいかなければいけないと。それから開発途上国における気候変動の影響は深刻であるし、それらは食料輸入、海外渡航を通じて間接的に我が国にも影響を及ぼすことも考えなければいけないということ、そういうことを踏まえて、アジアのみではなくて、アフリカなどの開発途上国の開発に、我が国の科学技術力の果たす役割が非常に大きい、こういう点を示してございます。11ページの下から3行のところ、アジア・オセアニア地域との連携のみではなく、広く開発途上国を対象とし、以下の点について連携を図っていくことが必要であるというふうに、大きく修正をさせていただいている案でございます。それぞれの災害、水、生態、農業の分野につきましては、大きな方向性は変わっておりませんものの、各省・研究機関の研究や取組の進捗状況を踏まえて、若干の軌道修正と、進捗を踏まえた書きぶりの変更をしているという状況にございます。
 13ページも含めて、以上でございます。

【澤岡部会長】
 ありがとうございます。
 それではまず、第1章についてご意見を伺いたいと思います。その後で、第2章について伺います。第1章は今回新しく出てきた部分が沢山あります。どうぞ、自由に発言をお願いします。
 どうぞ、小池委員。

【小池(俊)委員】
 どうもありがとうございます。
 4回目の実施方針の策定ということで、これまで特に事務局のほうで非常に歴代頑張っていただいて、こういう各府省の活動をコレクティブに連携させて、実質的に連携させるということと、その実質的な連携を見せていくというところが進みつつあると思います。
 私自身が経験しているのは、先ほどアジア太平洋シンポジウムのところで申し上げ損ねたのですが、これまでは各コンポーネントで活躍しているグループが発表していたのですけれども、今年4月にやったときは、それぞれやっている人たちが協力して、ポスター発表のブースを協力してつくりまして、日本でやっている地球観測の推進戦略に基づく活動の全体像はこんなことだということを見せる事を目的として、国環研、産総研、JAXA(ジャクサ)、JAMSTEC、それから私ども東大も加わらせていただいてやらせていただいたのですが、こういう府省連携が具体的に進みつつあるなというのを私は感じております。
 ただ、本省レベルの協力がどこまで効果的に動いているのかなということを考えて、2つの点をちょっと申し上げたいと思います。今回G8と、それから昨年のIPCCの非常に大きな成果も踏まえて、日本では気候変動に対応するいろいろな観測のニーズと、途上国への貢献を重視、総合科学技術会議での施策立案に盛り込まれています。大変なご努力だと敬服いたしますが、それが21年度の方針に具体的に見える形にしたほうがいいと思います。
 まず1点目は、気候変化のほうですけども、ここにも書いてありますように、観測のニーズ、あるいは予測も入るのかもしれませんが、地球観測推進部会が担当する地球観測にかかわるニーズの取りまとめが、気候変化に非常に特化しているので、各省からもう少しコレクティブに集めてはいかがかなという気がいたします。私、データ統合・解析システムをやらせていただいていて感じるのは、気象庁も静止衛星と温暖化のことを関連してお考えと伺っていますし、国交省では社会資本整備審議会のもとで2つの小委員会ができて、治水と水資源政策ですが、それぞれの答申が今、もうまとまりつつあるんです。気候変化に対応する治水政策だとか、あるいは水資源政策だとか、そういうところにも観測に関するニーズがきちっと書かれておりますので、そういうものをもう少し入れてはどうかと思うんです。
 先週の金曜日、データ統合・解析システムのフォーラムをやったのですが、農林水産省のほうでもそうですし、環境省の生物多様性のほうでもそうですし、もちろん温暖化は本流だろうと思いますが、これをここの、今の第1章の4ページから5ページの2の基本的な考え方の(1)に対応するところとして、またこれも大変な努力が必要かもしれませんが、これをどういう観測に対するニーズがあるのかということをおまとめいただけると、大変ありがたいなと思います。それが1点目です。
 それから次が(2)の開発途上国の能力開発というところですが、各府省、やっぱり気候変化とか地球環境の問題で、それぞれの所掌している枠組みでODAが進んでいるわけで、それに関して、この地球観測の分野とかなりこれもダブっているという言い方はおかしいだろうと思いますが、関連するものがたくさんあるわけで、これも、こちらでいいますと科学技術外交の強化に向けて、これは主として文部科学省が中心になっていろいろな施策がうまく出ているわけですが、この推進部会でそこの部分もまとめていただくことができたら各分野の努力が相互に見えると、先ほどの実質の連携につながるのではないか。
 あるいは、もう少し先へいくと、ちゃんとデータを共有しながら、というところにいくのではないかなと思います。その点を申し上げたい。

【澤岡部会長】
 今の点について、まず委員の方からご意見ございませんか。
 では、室長どうぞ。

【岡村室長】
 確かに、今年は実施方針を政策ドキュメントとして、薄いけれども、集中していろいろな政策提言を書くという形にしたことによって、現状のところを実施計画に落とすという整理の中で、確かに先生のおっしゃるようなところ、薄くなってしまったなという問題意識はありますので、そこのところをうまく工夫して、最低限必要な現状認識として(1)(2)のところ、入れさせていただきたいと思います。そうしないと、確かに、だから何なのという前提のところの現状認識をきちんとしておかなければいけないと思いますので。
 ただ一方で、今度はやり過ぎて、どこどこで何々をやっていますというのをまた書き出すと、以前の実施方針に戻ってしまうので、ちょっとそこのバランスについては工夫をさせていただきたいと思いますが、各省の大きな大局的な政策方針をもうちょっと入れていくというのを努力させていただきたいと思います。

【澤岡部会長】
 ほかにございませんか。
 どうぞ、杉本委員。

【杉本委員】
 観測データの標準化と流通の促進については、大変書きにくい部分でありましたが、4年目にしてようやく、在り方としてこれに値するすばらしいものが出てきたと思います。さらにより良くするために、ぜひ書き足していただきたいことがあります。それは基本的な観測データについてです。例えば地上における流量とか、気温や非常に基本的な気象データでさえも公開がなされない国がるという問題。
 もう1つ、地上のモニタリングの観測予算の削減との関係、日本を含めて観測地点が減少していくという問題があります。
 ですから、ぜひ日本から、基本的な解析に必要な観測データを、ぜひとも公開するようアピールのようなものを入れていただけると良いと思います。データの公開と減少しつつある観測を補う必要性についてぜひ入れていただきたいと思います。
 もう1点、空白の観測区域は開発途上国に多い、それはもう間違いなくそう思います。ところで、開発途上国が何であるかという定義が問題です。例えば中国のように、すごい経済発展を遂げている国でもODAの対象国ということになっていますし、一方、例えば観測の空白域ということを考えると、ロシアはものすごく広大な面積が観測の空白域になっています。ロシアは先進国に定義上されるわけですが、観測の空白域ということからいうと、開発途上国も先進国も関係ないわけです。地球全体の観測をシステマチックにやろうとすると、そういうことに関係なくやるべきで、何か少し開発途上国ということに偏り過ぎているんじゃないかという印象を受けました。

【澤岡部会長】
 ご指摘ごもっともと思います。岡村室長、どうぞ。

【岡村室長】
 まず観測の空白域イコール開発途上国ではないという、この点はすぐに直させていただきたいと思います。
 それから、最初のほうのご下問につきましてですけれども、とにかく世界の観測データの共有をしましょうと。日本の場合はいろいろな条件はあるものの、データを公表することを基本にと書いてありますが、もうちょっと踏み込んでということでございますね。工夫したいと思います。
 例えば、つい先週の日中の首脳宣言の中でも、観測・予測の部分について、1項目合意がなされまして、これはGEOという枠組みを通じてということになりますが、データを共有していきましょうという合意文ができております。ですので、そういうことにも立脚しまして、データを公表していくという姿勢を海外に対しても、もう少し前向きに主張していくということと、先生のご意見を理解いたします。少し書き込ませていただきたいと思います。
 以上でよろしいでしょうか。

【小池(俊)委員】
 今の点ですが、杉本委員がおっしゃった両方のこと、非常に関係していると思うので一言申し上げたいのですが、原則もちろん委員のおっしゃるとおりですけども、例えば途上国、先進国かかわらず、水のデータというのはなかなか出にくいです。国境河川の問題もありますし、それから水が資源であるという特性もあって、出にくいです。
 私どもはこういうことを公表することによって相互にメリットが生まれますといっても、なかなか出てこないのが現実です。どうすればいいかという戦略を私どもは持つ必要があって、アジアの中では今、17カ国が参加して、データを共有して、衛星データや数値予測のモデルなどと統合したら、それぞれの国の河川や洪水や渇水の管理に非常にプラスになります、そのための能力開発も一緒にやりましょうというと、私もデータポリシーを議論するときに驚いたのですが、初め冷や冷やしていたんですけども、積極的に出します、何のバリアもありません、というふうになるんです。それはやっぱり、概念的に公表するのが正しいから公表しなさいというのではなくて、やっぱりそれぞれにメリットを共有できるような戦略を持って対応していくべきだろうと思います。
 途上国の能力開発と、上のデータポリシーというのは、私はその価値がわかってもらえればものは動くと思っていまして、確かに西洋的な考え方といいますか、合理的な考え方では公表したほうがいいに決まっているのですけれども、その価値が必ずしもローカルにはわからない部分があって、そこはあまり無理をするとしんどいと私は思います。
 先ほどの、日中首脳宣言の中の条文は、私もすごいクリーンヒットだと思います。中国が気象業務に関する法律を立てて、非常にデータの流通が難しくなっている中で、共同声明の中にああいう案文が入ったということは、これも文科省の非常に大きなクリーンヒットだと思いますが、そういう気候変化に一緒に対応しようというモチベーションといいますか、運動の中でそういうものが実現していくのだと私は思います。

【澤岡部会長】
 いかがでしょうか。
 どうぞ、深澤委員。

【深澤委員】
 今の杉本委員、それから小池委員の話で、非常にそうだなと私も思うんですが、ただ問題は能力開発という部分と、それから今、小池委員のおっしゃったデータの公開の部分というのは、ある程度分けて考えないと、要は能力開発をすることによってデータの流通をよくするという部分と、それだと確かに開発途上国と呼ばれる部分はいいかもしれないですけど、先ほど杉本委員のおっしゃったような、デベロップトカントリーです、ロシア。僕は海のほうが特に専門で、特に海洋研究開発機構にいますので、水循環にちょっと関係しているんですけれども、ロシアは今アルゴでも、まだ3個しか流していないという。それから、入ってきたら撃沈するというようなことを公表している国です。例えば、そういう国との間でも、どうしても我々はそこのデータは絶対に必要になってくる。
 そういうときに、この6ページの(2)の観測データの標準化のところで少し気になったのは、最初の部分で観測データの標準があるということは、流通に絶対に必要なことです。そのためには、標準を定めるフレームワークが必要になってくる。そのフレームワークがあることによって、逆に今度はデベロッピングカントリーはそのラインの上に乗って、我々がある意味でODAを使ってプッシュすることができるし、あるいはデベロップトカントリーがその上に乗って、逆に自分たちのデータ効果、あるいはデータのエクスチェンジを考えることができるということから考えますと、ここでちょっと気になったのは(2)の部分で、前半の部分で、日本国内のことは書かれてあるんですが、その次の段落では、国際的な場で既に既存の国際枠組みによるデータポリシーが検討が始まっているという部分があって、この2つの関係が少し見えなかったんです。
 ですから、多分これから特に地球観測、そしてアダプテーションはローカルな部分の観測というのが非常に重要になりますし、ローカルのほうの予測も必要になってくるんですけど、そのベースとしてのより大きな、我々の場合でしたら次はアジアなどでしょうし、その次はグローバルになるわけですけれど、その部分の(2)のところの書き分けが、もう少し工夫があったらいいのではないかなという気がした次第です。
 以上です。

【澤岡部会長】
 今の点について、岡村室長どうぞ。

【岡村室長】
 ここのところは一番悩んでしまっているところですので、もう一度整理をし、場合によっては深澤先生のように、この分野をよくご存じの方にもう一度何回か往復をさせていただいて、リバイズしていきたいと思います。

【澤岡部会長】
 ほかにございませんか。
 第2章についてご意見ございませんか。小池委員どうぞ。

【小池(俊)委員】
 アフリカですけども、具体的にこういうふうに書いていただくのは非常に大事であります。TICADがありますから。具体的に内容のタマがあるのでしょうか。

【岡村室長】
 正直にお答えいたしますと、総合科学技術会議のほうから、科学技術外交の報告書取りまとめにあたって、前参事官のときでございましたが、何回かヒアリングがあった中では、特に具体のタマということではなく、とにかく視野を広く持ってくださいと。かつ、今年TICADがあるということもあって、昔からの三極構造、日本はアジアの中心たれみたいな、そこからもうちょっと脱却をしろというような、わりとちょっと大所高所に立った政策論的なご下問を、総合科学技術会議のほうからいただいているという段階でございます。
 ですので、私どものほうも、実は具体的には小池先生のプロジェクト、アジア水循環の評判が非常にいいわけなのですけれども、ぜひ、アジアだけにとどめておくのではなくて、広げていく視野を持ってくださいと言われているところを踏まえて書いているところです。
 ただ一方で、私どもから申し上げているのは、広げるのはいいけれども、地に足のついたプロジェクトの推進をさせてもらわなければ困るので、何でもかんでも有象無象に手を出していくということは難しいですよ、まずしっかりできるところからやっていき、当然ながらアフリカ等に対しても、今後やっていくという姿勢を出しますという程度であるということが正直なところです。

【澤岡部会長】
 この1年、総理はアフリカの経済支援と人道支援に力を入れているように思います。いつの間にかアフリカというキーワードだけが走り出したような気がします。これにもアフリカが乗ったような印象がないわけではありません。政策が先に走って、後から我々が走っていくという感じがしないでもないと思います。あまり無理しないで、地に足がついた書きぶりは難しいですか。

【岡村室長】
 あともう1個、今、公募中ではありますけれども、科学技術振興機構のほうでODAを使った施策の公募をしている中では、まだ応募取りまとめが済んでおりませんので、どういう状況になっているかはわかりませんけども、当然ながら幾つかのタマは出てくるかなとは思っております。
 ただ、それを見ながら、この後、申し上げましたように地に足のついた形でやっていきたいとは思っております。

【澤岡部会長】
 これは中間取りまとめです。最終的には、8月末の概算要求を目標に最終案をまとめた上で、研究計画・評価分科会に報告することになります。部会で決定することができるので、分科会へは報告という形になります。もう一度字句を練るチャンスはあるかと思いますが、現場では概算要求作業が始まっていますので、この中間取りまとめが指針になると思います。そのような意味で、非常に重要なものです。
 ただ今いただきました意見を参考に、またご発言のあった委員とはメールベースでキャッチボールをしながら修正したいと思います。最後に皆様の確認を得て、中間報告とさせていただきたいと思います。
 更なるご意見を事務局にお寄せください。責任は部会長が持たせていただきます。どのような内容でも結構です。発言がございましたら、よろしくお願いします。
 それでは、石原委員、どうぞ。

【石原部会長代理】
 よくまとまっていると思うのですが、1つ言葉の表現ということで、ちょっと理解しがたかったのですが、4ページの(2)の検討の目的、その最後のパラグラフでしょうか、その半ばから下のほうで、「そのため、我が国が開発途上国に対する研究協力に加え能力開発を含めた適応の強化を支援することによって気候変動の脆弱性を緩和することは」と書いてあるのですが、気候変動の脆弱性という、ちょっと理解しがたい。
 気候変動に対する影響の緩和、あるいは気候変動の影響の緩和、でどうでしょうか。

【岡村室長】
 緩和という言葉を使う以上は、やはりIPCCの形で使っていったほうがいいので、気候変動の影響の緩和、そのあたりに変えていきたいと思います。
 もう一度確認をして、直したいと思います。ありがとうございます。

【杉本委員】
 先ほど述べたことと同じようなことですが、対開発途上国、対先進国の区別について、11ページ、12ページ、13ページに書かれていることは、ほぼ対開発途上国に対することが中心に書かれていて、よくまとまっているように思います。しかし、2番の国際的な地球観測システムの統合化については、対先進国に対して日本がどういうふうにリーダーシップをとっていくかが書かれていると思いますが、11、12、13ページに書かれていることは、両方を含めて書いたほうがよいのではないかという気がします。
 ここの部分、何か章立てを1つ変えるか、2番、3番のようなことについては、個別の分野では何ができるかについて述べるほうが良いと思います。
 例えば、生態系分野のところを見ますと、最初にアジアフラックスについて書かれ、そのあと日本長期生態学観測研究ネットワークJaLTERのことが書かれています。JaLTERは日本国内での話なので、対開発途上国には当たらないと感じましたので、3番に対してのことだけではないというような書き方、あるいは途上国だけではないとの書き方に改めたほうが良いと思います。

【澤岡部会長】
 ありがとうございます。ご意見は十分に反映させていただきます。
 ほかにいかがでしょうか。
 それでは、次回の予定についてお知らせ下さい。

【岡村室長】
 先ほど部会長からお話がありましたように、8月めどに上の研究計画・評価分科会に報告をするということになりますので、7月から8月の間に第11回目を開かせていただきたいと思います。日程調整につきましては、別途ご連絡をさせていただきまして、ご相談をさせていただければと思います。
 以上でございます。

【澤岡部会長】
 本日は、どうもありがとうございました。
 これをもちまして、閉会とさせていただきます。

-了-

お問合せ先

研究開発局海洋地球課地球・環境科学技術推進室

(研究開発局海洋地球課地球・環境科学技術推進室)