資料3 地球観測推進部会取りまとめ(案)

地球観測推進部会取りまとめ(案)
~Society5.0の実現に貢献する地球観測~


平成28年○月○日
地球観測推進部会

1.背景

我が国では、平成16年に総合科学技術会議が策定した「地球観測の推進戦略」に基づいて地球観測事業を推進してきた。その後、「地球観測に関する政府間会合(GEO)戦略計画2016-2025」(平成28年11月)への対応を見据えるとともに、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)環境ワーキンググループにおいて実施した進捗状況のレビューを受け、平成27年8月には「課題解決型の地球観測」を推進することとした「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」(以下「実施方針」という。)を地球観測推進部会(以下「本部会」という。)において策定した。
本年(平成28年)、未来社会の姿として「超スマート社会(Society5.0)」を掲げ、11のシステム(※)の開発を進めること等を定めた「第5期科学技術基本計画」(以下「基本計画」という。)が1月に閣議決定され、5月には「科学技術イノベーション総合戦略2016」が策定されたが、社会的な共通基盤としての地球観測の重要性に関する言及は多くない。
地球観測は、地球、自然及び人間社会の現状や将来予測に対する包括的な科学的理解と社会的課題解決のための基本データを与えるものである。気象観測や衛星観測、海洋観測等は社会的な共通基盤の一部として、データの蓄積と利用推進を将来にわたり長期的に継続することにより、社会的課題の解決に貢献し、社会的・経済的価値が生まれるものである。
このような背景のもと、本部会では実施方針に基づき各省庁が作成した地球観測の実施計画を取りまとめるとともに、基本計画の実施に当たって必要とされる地球観測の重要性について提言を取りまとめた。


(※)エネルギーバリューチェーンの最適化、地球環境情報プラットフォームの構築、効率的かつ効果的なインフラ維持管理・更新の実現、自然災害に対する強靱な社会の実現、高度道路交通システム、新たなものづくりシステム、統合型材料開発システム、地域包括ケアシステムの推進、おもてなしシステム、スマート・フードチェーンシステム、スマート生産システム

2.地球観測の社会的重要性

(1)「Society 5.0」実現への貢献と民間との連携

「超スマート社会(Society 5.0)」はサイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させることにより、地域、年齢、性別、言語等による格差なく、多様なニーズ、潜在的なニーズにきめ細やかに対応したモノやサービスを提供することで、経済的発展と社会的課題の解決を両立し、人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることができる社会であり、その実現に向けて地球観測は貢献することができる。
例えば、民間企業が地球観測データを活用して、天候インデックス等の保険商品の開発や防災・減災対策等の途上国開発支援の新たなビジネスを展開したり、地球観測に係る装置の開発や観測そのものの実施等にビジネスとして取り組むことにより、社会的課題の解決だけでなく、新しい市場の開拓にも貢献することが期待される。これらを実現するためには、解決すべき課題を分類・分析した上で、産学官がプロジェクトの初期から連携し社会実装を推進する仕組みを構築することが重要である。さらに、地球観測データの民間企業による利用を促進するためには、オープン化を推進するデータポリシー等データ利用の枠組みの整備やユーザビリティのさらなる向上が必須である。
地球観測データに基づく気候変動対策や、地球観測データを用いた状況把握による効果的な防災・減災活動の実施、交通・輸送や都市計画等の社会インフラの整備、農作物の育成予測に基づいた営農指導など、地球観測データ活用の可能性の広がりは大きい。これには、最新の観測データとともに、過去から継続して蓄積されてきたデータが必要となる。地球観測データの統合・解析と活用のためには、IT分野の専門家とデータを活用する分野の専門家、民間企業等との協働が必要であり、このような場の構築が重要である。これらの取組を強力に進め、基本計画における11のシステムの構築に貢献するとともに、気候変動をはじめとする環境、防災、生物多様性、食料安全保障、公衆衛生、水資源管理等の社会的課題の解決に貢献していくことが重要である。

(2)国際的な重要性

持続可能な開発目標(SDGs)、パリ協定、仙台防災枠組、G7茨城・つくば科学技術担当大臣会合共同声明等で掲げられた地球規模課題の解決のためには、地球観測データとそれに基づく予測が必要不可欠である。このような地球規模課題は一国で取り組むことが極めて困難であり、我が国は、GEOや地球観測衛星委員会(CEOS)、国際海洋データ・情報交換システム(IODE)等の国際的な枠組みの中で地球観測データや解析データを各国に提供することにより、諸外国の様々なデータを利用することができる。このようにして、内外のデータを用いた地球規模課題の解決への利用を推進している。国連気候変動枠組条約をはじめとして、国際的な意志決定に科学的根拠が活用される動きが進む中、日本が地球観測に継続的に取り組むとともに、データの提供と様々な観測の連携、データの統合を進めていかなければ、国際交渉の場での発言力や我が国の外交的プレゼンスの低下につながりかねないことから、これらの取組は国益の観点からも重要である。
特に、GEOに関しては、第15回本会合が2018年に我が国で開催されることが決定しており、人類のための様々な意思決定に地球観測情報を活用するというGEO及び全球地球観測システム(GEOSS)のビジョンの実現が我が国の国益にも資することを再認識することが重要である。

3.提言

地球観測はSociety5.0の実現に貢献するものであり、国際的な枠組みの中で我が国のプレゼンスを示すものでもあるため、本部会は、以下の対応を提言する。
(1)総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)においては、地球観測の重要性を踏まえ、次期「科学技術イノベーション総合戦略」に地球観測の実施及び観測データの利用に十分な予算を確保することを盛り込んでいただきたい。
(2)各省庁や関係機関においては、政策として地球観測に着実に取り組むとともに、それぞれが実施している地球観測の社会や経済への貢献をよりわかりやすく示して国民理解の獲得に努めていただきたい。また、フューチャー・アース構想等も必要に応じて活用しつつ、諸外国の取組も参考に産学官の連携のもと利用の開拓と拡大に向けた具体的活動にも注力していただきたい。
(3)「データ統合・解析システム(DIAS)」は、基本計画に掲げられた11のシステムの一つである「地球環境情報プラットフォーム」の中核であり、文部科学省及びCSTIは、GEOへの貢献に加え、オープン化に向けたデータポリシー等の整備や他の10のシステムとの連携の推進により、各省庁の有する地球環境データの登録や民間企業等も含めた幅広いユーザによる利用を一層推進していただきたい。
(4)文部科学省をはじめとする関係省庁は、GEO本会合の2018年日本開催に向けてGEOの戦略的活用を一層推進し、我が国の地球観測データの地球規模課題解決への利用、DIASを通じた我が国の地球観測データの提供による諸外国のデータの公開促進などの取組を強化していただきたい。

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研究開発局環境エネルギー課

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