第6期地球観測推進部会(第8回) 議事録

1.日時

平成28年12月16日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. GEOの最新の状況と今後について
  2. 地球観測に関する各省庁の取組について
  3. 今後の地球観測の推進に関する取りまとめについて
  4. その他

4.出席者

委員

大垣部会長,春日部会長代理,赤松委員,岩谷委員,河野委員,寶委員,佃委員,箕輪委員,六川委員,吉村委員,若松委員,渡邉委員

文部科学省

白間文部科学審議官,藤吉環境エネルギー課長,樋口環境科学技術推進官,石橋課長補佐,直井地球観測推進専門官

5.議事録

出席者

【関係省庁】内閣府 田中参事官

農林水産省、水産庁、気象庁、環境省、国立環境研究所


【大垣部会長】  ただいまより科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会地球観測推進部会第8回の会合を開催いたします。本日は,お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。初めに事務局から出席者と資料の確認をお願いします。
【直井地球観測推進専門官】  本日御出席の委員は12名であり,過半数に達しておりますので部会は成立となります。また,本部会は運営規則により公開となります。
配付資料は,議事次第に記載しているとおりです。また,参考までにGEOSSアジア・太平洋シンポジウムのちらしをお配りしてございます。以上です。
【大垣部会長】  よろしいでしょうか。それでは議題1の「GEOの最新の状況と今後について」に入ります。本年11月にサンクトペテルブルクで開催されました第13回本会合の開催結果と,来年1月に開催予定の第9回GEOSSアジア・太平洋シンポジウムについて,事務局から説明をお願いいたします。
【樋口環境科学技術推進官】  資料1-1と1-2に基づいて説明をさせていただきます。
最初に資料1-1が第13回の本会合の開催概要でございます。本年11月9日から10日にロシアのサンクトペテルブルクでGEOの本会合が開催されました。110代表団で計422名の出席があり,共同議長国の南ア,欧州,中国,米国,その他の執行委員国をはじめとする参加国と,様々な参加機関,オブザーバの機関の参加がございました。日本の関係ではアジア太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)が初めて参加されました。
2ページ目が主なアジェンダと概要です。アラブ首長国連邦,ウルグアイ,モンゴルの3か国,それから14の参加機関・オブザーバが新たに加わったことの紹介がございました。これによりGEOの参加国は103か国+EC,106参加機関となっております。
GEOのビジョンの進展に関しては,パネルディスカッションが二つ行われました。一つ目はユーザー及び政策駆動型イニシアティブというテーマです。パネリストは全球農業監視イニシアティブ(GEPGLAM),寒冷地域イニシアティブ(GEO CRI),炭素温室効果ガスイニシアティブ,生態系勘定のための地球観測(EO4EA),SDGsの実施に貢献する地球観測(GEO and SDGs)となっており,各フラッグシップ,イニシアティブの代表が登壇し,取組概要について紹介があった後,コントリビュータ,ユーザーをどのように見つけていくのか,どのような課題があるのかについて議論が行われました。議論の結果ですが,ユーザーとの連携,特に取組の立ち上げから共にデザインしていくco-designの重要性,現場観測と衛星観測の連携の重要性,それから,地球観測データの重要性について働きかけを行うGEOの各国代表の役割,特に自国の統計機関等との関係構築の重要性が共有されました。
二つ目のパネルはGEOSSの実施というテーマで,地球観測衛星委員会(CEOS),GEOの中のプロジェクトであるConnectingGEO,世界気象機関(WMO),欧州委員会(EC)の代表がパネリストでございました。概要ですが,衛星観測や現場観測の調整,地球観測のビジョン,データ共有について各代表から意見が述べられ,GEOSSポータルの利用状況,オープンデータの経済的な恩恵等についてフロアも交えて議論が行われております。議論の結果については,一つ目が政府機関のオープンデータへの理解の重要性,二つ目が地球観測データの利用に係る技術的障壁を低下させること,三つ目がデータの量ではなく品質や利用可能性の重要性について確認されております。
次のページですが,商業セクターの方を招き,初めて商業セクターセッションが開催されております。パネリストは資料に記載のある通りで,様々な地域の方がパネリストとなり,各社の取組,商業セクターとの連携によるGEOにとってのメリット等について意見が述べられております。議論の結果については,商業セクターはGEOSSのユーザー,データ提供者の両面で貢献することができ,GEOとの対話により,双方にとって利益をもたらすことができるという認識が共有されました。それから,能力開発,組織の共有等に向けて連携モデルを明確にしていくためにも,今後も商業セクター連携サブグループとの対話を継続していくことを確認しております。
四つ目は,ステークホルダーとの連携の強化で,これまで執行委員会で継続して議論されてきた連携戦略についての議論が行われております。連携戦略に基づいてGEO全体が注力すべき分野として,持続可能な開発目標(SDGs),気候変動・温室効果ガス監視,防災の3分野を承認しており,各国のGEO代表は国内のステークホルダーとの連携を促進することについて確認をしております。
五つ目が「ワークプログラム2017-2019」の承認です。新しい10年の戦略計画に基づいて初めて作る3年間の計画ということで,継続してプログラム委員会,執行委員会で議論が行われてきたものです。これにつきましては四つのフラッグシップ,21のイニシアティブ,30のコミュニティ活動,10の基盤活動を含む「ワークプログラム2017-2019」が承認されています。この活動の概要は資料の8ページから10ページに記載しております。
もう一つが2017-2019のプログラム委員会の委員の指名がございました。GEO事務局長から構成委員の案が説明され,そのとおり承認されております。我が国からは,枠としては1名ですが,メインが本部会の委員でもある吉村先生,代理が村岡先生で承認されております。委員構成は,カナダ,中国,EC,フランス,ドイツ,ガーナ,ギリシャ,イタリア,日本,マダガスカル,南ア,スペイン,ウガンダ,英国,米国から推薦された委員,参加機関であるCEOS,COSPAR,EEA,ESIP,GOOS,GRSS,ICSU,IEEE,IOC,ISDE,ITC,IUGG,MRI,OGC,POGO,UCAR,WMOから推薦された委員です。
その他でございますが,2017年執行委員国の決定について,コーカス会合の結果を受けて執行委員国が一部改選されております。改選されたのはヨーロッパ・コーカスでドイツから英国に替わっており,アフリカ・コーカスはエジプトからウガンダに替わっております。アジア・オセアニアコーカスについては2年に1度改選することになっているので,これまでどおり,中国,韓国,日本,豪州となっております。それから,第14回,第15回の本会合の発表があり,第14回本会合についてはワシントンDCで10月23日から27日で開催することが,米国からショートビデオの上映とともに発表されております。我が国からは,第15回の本会合を2018年に日本においてホストすることを代表の白間審議官から表明いたしまして,会場から拍手をもって歓迎されております。
次のページですが,JapanGEOの展示ということで,JAXA,JAMSTEC,国立環境研究所に協力を頂き,日本のフラッグシップイニシアティブへの貢献ということで展示をしていただきました。ショートレクチャも実施し,村岡先生の司会によりJAXA,JAMSTEC,国立環境研究所からそれぞれ紹介を頂いたところでございます。サイドイベントの状況につきましては,次のページに参考で付けております。
7ページ目ですが,今後の予定について簡単に説明をさせていただきます。2016年度の第4四半期では,執行委員会が3月9日から10日にございます。また,プログラム委員会の第1回が2月1日から,GEOSSのアジア太平洋シンポジウムは1月11日から13日に東京で開催いたします。本会合は先ほど申し上げたとおりで,2017年10月25,26日に米国,2018年は時期は調整中ですが日本で開催する予定です。執行委員会は来年の7月11,12日と10月24日に決まっております。ワークプログラムシンポジウムについては,今まではジュネーブで毎回,5月の連休ぐらいに開催されていましたが,今回は南アで国際環境リモートセンシング学会(ISRSE)と併催という形で開催される予定になっています。GEOSSアジア・太平洋シンポジウムについては,東京の次はベトナムで開催することが決まっております。GEOSSの最近の動向に関しては以上でございます。
次に資料1-2を御覧ください。GEOSSアジア太平洋シンポジウムの準備状況ですが,年明け1月11日から13日にGEO事務局が主催となり東京国際交流館で開催いたします。目的は,アジア太平洋地域におけるGEOSSの普及,推進に向けた情報交換の場を提供することにより,地域における研究者コミュニティを育成し,アジア太平洋地域特有の環境問題への共通理解を深めるとともに,課題解決に向けた具体的な行動につなげるための議論を行うものです。今回は9回目となり,テーマは「アジア太平洋地域における持続可能な開発目標(SDGs)の実施を支援する地球観測」ということで,SDGsにフォーカスしたテーマとしております。初日のアジェンダは,開会挨拶の後,サンジャースレン・オヨーンUNEPの国連環境総会前議長兼世界水パートナーシップ議長,この方はもともとモンゴル出身の方で外務大臣や環境大臣も務められた方でございますが,この方に基調講演をしていただくことを御了承いただきました。もう一つの基調講演は,岸輝雄外務大臣科学技術顧問から頂くことになっています。その後,GEOSSの活動報告をGEO事務局から,また特別セッションとして「SDGs等の地球規模課題と地球観測の役割」についてグローバルな取組を紹介していただき,次に「アジア・オセアニアGEOSSイニシアティブの概要紹介」となります。それから参加国・地域からのGEOSS関連活動報告をして,初日にレセプションをする予定です。2日目は分科会に分かれての議論で,一つ目の分科会がアジア水循環イニシアティブ,二つ目が生物多様性ネットワーク,三つ目が炭素・温室効果ガスイニシアティブ,四つ目が海洋観測,五つ目が食糧安全保障です。それぞれ3人の共同議長で構成しており,WG1は東京大学の小池俊雄先生,WG2は九州大学の矢原先生,WG3は国立環境研究所の三枝先生,WG4は海洋研究開発機構の安藤先生,WG5は東京大学の二宮先生に日本側のチェアをしていただくことになっております。3日目は,それぞれの分科会からの報告を受けまして,最後に特別セッション2で,「アジア太平洋地域における地球観測とSDGs」をテーマに,各分科会の共同議長とそれ以外の方も含めて,今後の取組について議論していただきます。最終的に東京宣言のような宣言文を採択して閉会というスケジュールでございます。
以上,GEOに関する最近の動向とアジア太平洋地域シンポジウムの準備状況を御説明させていただきました。
【大垣部会長】  ありがとうございました。ただいまの説明に関しまして,御質問あるいは御意見がありましたら,お願いいたします。
【春日部会長代理】  少し補足情報を御紹介させていただきたいと思います。Future Earthでも日本学術会議において 1月16日から18日にかけて,GEOとSDGsにアジアの観点から貢献することを検討するためのワークショップを開催します。前週のアジア・太平洋シンポジウムに参加する方々にもお声をかけているところなので,いろいろと連携をとらせていただければ有り難いと思います。
【大垣部会長】  よろしいでしょうか。それでは,次の議題に移りたいと思います。議題(2)は「地球観測に関する各省庁の取組について」です。本部会における提言の取りまとめの議論の参考とするため,前回の部会に引き続き,地球観測に取り組んでいる関係省庁の方に御説明を頂くためにお越しいただいております。御協力に御礼を申し上げたいと思います。
それではまず,農林水産省から御説明をお願いいたします。
【農林水産省】  農農林水産省農林水産技術会議事務局の柚山と申します。私たちの取組は,農業への地球観測の活用です。従いまして,観測データの提供を受け,農業分野での影響がどのようなものであるかを明らかにし,それに適応する技術を開発するというものです。大きく分けまして,影響評価と適応技術の開発に分かれております。提出資料の中では例として,リンゴについて現在から2060年代に至るまで栽培適地がどのように変化するか,適応技術として,高温障害によってお米が白未熟粒という品質低下が起こるのですが,その低下を防ぐための育種・品種開発を載せております。この取組は技術会議事務局の委託プロジェクト研究として実施しており,例えば,幅広く農林業に関わる気候変動の影響評価,極端現象の増加に係わる農業水資源,土地資源及び森林の脆弱性の影響評価を行っております。また適応技術としては,温暖化の進行に適応する品種・育種素材,安定生産技術の開発,豪雨に対応するための圃場の排水・保水機能の活用手法の開発,野生鳥獣による被害拡大の影響予測と対応技術,海外から有害動植物が持ち込まれる危険性が高くなることから,その検出・同定技術という取組を進めております。
このプロジェクトの到達目標は,温暖化の進行による農林水産業への影響を2030年から2100年まで,1キロメートルメッシュで評価すること,それから2度以上気温が上昇しても収量・品質の低下を2分の1に抑えることができる育種素材の開発を行うこと,侵入が危惧される有害動植物を24時間以内に診断できる手法を開発すること,野生鳥獣の低コスト・省力的な被害対応技術の開発などであります。冒頭申し上げたように,提供いただくデータをうまく活用して適応技術を開発するため,空間的・時間的あるいは項目的に農業分野に使える情報を適切に把握しまして,環境省あるいは気象庁との連携の中で,農業の安定生産技術に資する取組を進めようと思っております。以上でございます。
【大垣部会長】  ありがとうございました。それでは,ただいまの御説明に関して御質問等がございましたらお願いします。
【渡邉委員】  御説明ありがとうございます。農業への影響にはいろいろな側面があって,それを総合的に見ていく必要があり,それができる段階になってきたと思います。農業環境技術研究所では,先ほどの作物の影響も気象条件だけなく,病害虫の変化や使える水資源の影響等,総合的にどのインパクトが一番効くのかというような研究をされてきたと思います。そのように情報を総合化して利用するようなアプローチはどのように進んでいるのかをお聞きしたいと思います。
【農林水産省】  様々な情報を共有してきたという現状があり,その情報をうまく農業者,あるいはそれぞれの地域の方に伝えるという工夫をするべく,旧農業環境技術研究所のホームページや農林水産省のホームページ,さらには環境省が適応に関するプラットフォームを立ち上げており,それらを通じて必要とする方に必要な情報が伝わるように努めております。
【大垣部会長】  ほかによろしいですか。
【寳委員】  私は防災が専門ですが,気候変動の影響評価に含めるものとして,台風の進路予測との関係といいますか,リンゴ台風みたいな強風災害や,台風に伴って起こる高潮による塩害や津波があります。津波は気候変動とは言えないと思いますが,そういう沿岸域の塩害,冷害の予測,温暖化しても大量に雪が降ることはあり得るわけで,雪の影響とか,低温が長く続くという予測も農業被害に大変大きいと思います。1993年の冷夏長雨で初めてタイから米を輸入したことがありましたが,冷夏長雨で夏に日照が極端に短くなると,米の生産が極端に悪くなることもありましたので,そういった数か月予測の精度を上げていくことも必要ではないかと思っています。
【農林水産省】  ありがとうございます。防災に関しましては,内閣府を中心に省庁連携でSIPレジリエント防災という取組で進めておりまして,私たちのプロジェクトの中では,特に渇水とか局所豪雨が顕在化するので,そのような状況を1週間前とか,必要なタイミングで把握した上でどう備えるべきか,あるいは局所的な豪雨が生じた場合に営農技術でカバーできるようにするにはどうすればいいかを進めております。
【大垣部会長】  ありがとうございました。ほかにはよろしいですか。
【赤松委員】  私は民間のコンサルタント会社に勤めており,自治体と話をする機会が多いのですが,パリ協定を受けて国の施策が自治体に展開されていく中で,自治体もいろいろとお考えになっているところがあります。御発表は2030年から2100年というロングタームの予測なのですが,自治体のお話を伺うと,もう少し近場の変化が予測できないかという要望を頂いたりします。そのような取組や今後の計画はございますか。
【農林水産省】  現にお米や果樹については影響が出ておりますので,優先順位としては影響が出ているものの適応技術を重視しております。また,農林水産省の別の取組として,全国規模ではなく地域にきめ細かくということで,地域レベルでどういう問題が気候変動によって起こるかを分析し,適応技術を定めていこうという動きがございます。
【大垣部会長】  ほかにはよろしいでしょうか。
【佃委員】  農林水産所の研究所がお持ちの農業者が使いたい土壌の情報は,先ほど話のあった水や地形の情報で,メッシュデータだとマクロに日本列島全体に見られるのはいいと思います。ただ,実際の地形とか,どう土地利用をされているのかがすごく気になるのではないかと思いまして,メッシュデータと既存の地理空間情報との連携はどのようになっているのかを質問させていただきます。
【農林水産省】  1キロメートルメッシュということで,微気象の問題はあると思いますが,解析の精度が高まると,誰のところの場所というところまでわかるように技術的にはなりつつあると思うのですが,それをどう見せるかについては,過度な心配をさせてもいけませんし,油断させてもいけないということで,バランスをとりながら研究成果を出す工夫あるいは検討を進めているところです。
【大垣部会長】  ほかにはいかがでしょうか。
【六川委員】  ありがとうございました。このような政策を進めるに当たって,積極的にデータの取得要求を出すとか,データを購入するとか,その辺はプロジェクト全体としては予算的にはどのぐらいの割合を想定しておられますか。
【農林水産省】  購入というよりも,公開されている情報を使う場合がほとんどで,例えば昔はデータ購入で何百万円というのがありましたが,そういうものではなくて,誰でもが使えるということを意識したものが多くなっています。気象庁との研究会の場で,その情報を農業に役立てていくためにはどうするかを議論する場もありますから,データの取得予算のことは,あまり気にしておりません。
【大垣部会長】  よろしいでしょうか。次に水産庁から御説明をお願いいたします。
【水産庁】  水産庁研究指導課の森と申します。水産庁の観測につきましては,資料2-2に記載させていただいております。まず実施計画の132番,133番は両方とも我が国が行っている魚類資源の管理で,TAC管理や国際資源に関して,その基礎情報をとるために海洋観測を行っているもので,この海洋観測に貢献できている事業として二つを挙げております。目的は漁業の持続的発展のために必要とされる水産資源管理に関して,その科学的根拠となる資源評価の精度向上及び充実のため,この基礎となるデータを収集するものです。
調査海域,観測内容ですが,この海洋調査は,基本的には水研機構や都道府県及び大学の実習船,一部民間船舶の傭船なども使っております。調査海域や調査期間は対象となる資源によって大きく異なります。状況によっては,一部の調査のように長期間にわたるモニタリング調査も行いますが,通常は,ある特定の魚種やその一部の目的に応じて調査が計画されるため,全てがモニタリング,要は停船調査のように長い調査となっているわけではございません。一部の調査につきましては,外国人の研究者との共同調査もございます。海洋調査は漁獲試験と海洋観測に大まかに区分されます。漁獲試験に関しては,卵仔稚魚の調査から成魚を対象にした調査もございます。トロールネット,流し網,イカ釣り機,計量魚群探知器などを用いた対象資源に関する採集・計測。海洋観測につきましては,海上気象観測のほか,CTD等を用いた水温・塩分・海流等を計測しております。またプランクトンの採集も実施しております。近年では,最新の観測機器である水中グライダー等の運用試験も実施しております。
社会課題の解決に対する効果ですが,まずこの事業の目的として一番重要な漁業者・国民の理解と近隣国の協力による適切な資源管理の推進がございます。その他分野への波及効果ですが,水温や塩分等の海洋観測データについては以前よりJODC等を通じて共有されております。また大学等との共同研究により,水産資源のみならず,生態系等,より広い分野での海洋研究に資すると考えています。今後10年の我が国の地球観測の実施方針との対応ですが,1番,2番,4番,5番,8番に寄与すると考えております。最後にSociety5.0への貢献ですが,海洋関連のビッグデータ構築への貢献,それらデータによる効率的船舶管理への貢献が期待されます。
次は特に赤潮や貧酸素水塊,有害生物等による漁業被害,どちらかというと漁業に対して悪影響を及ぼす状況に対して調査をする事業でございます。こちらは船舶や自動観測ブイなどにより,赤潮や貧酸素水塊に関する海洋情報の効率的なモニタリングの実施と,収集した情報をもとに赤潮等の発生メカニズムの解明と発生の早期予測に向けた技術並びに防除技術の開発を行います。人工衛星を活用したより広域な赤潮発生・分布状況等の把握手法の開発を行います。またこれらに加えて,栄養塩類と漁業資源との関係を解明するということで,赤潮,貧酸素,有害生物等について,その原因と防除を目的として調査観測を行うことにしております。一部は,ここにあります日中韓の国際的枠組みのもと,大型クラゲの出現動向を把握するための東シナ海及び黄海における調査ということで,国際的な調査もございます。
社会課題解決に対する効果ですが,こちらも安定持続的な漁業・養殖業を推進するための基礎的な情報及び技術的なものを開発するということで貢献しております。その他分野への波及効果ですが,水温・塩分等の海洋観測データについては,既にホームページ等を通じて公開されております。こちらも大学等との共同研究によりまして,水産資源のみならず,生態系等,より広い分野での海洋研究に資するものと考えております。今後10年の対応ですが,1番,2番,4番,5番,8番に貢献すると考えております。また,Society5.0への貢献ですが,海洋関連のビッグデータ構築への貢献が期待されると考えております。
最後に実施計画113番ですが,こちらは観測ではなく新しい観測機器開発を行う事業です。現在,我が国の資源調査で用いられている計量魚群探知器につきまして,従来であれば集団の量を量るのが多いのですが,個体ごとにデータを解析することができ,その反応を魚種・サイズごとに区分して把握することが可能なタイプの魚探の開発を目的としております。この事業は水産庁では,それほど大きな事業ではないのですが,定期的にこのような新しい機器開発があって,それらでできた新しい機器については調査等に貢献できるものと期待しております。
社会課題解決に対する効果としては,次世代機器の開発ということで,低周波かつ広帯域の音波を用いた次世代型の計量魚群探知器を開発することで,効率的かつ高精度の資源調査手法を確立することです。その他分野への波及効果ですが,この機器は水産資源のみならず,プランクトン等,海洋生物全般の調査に利用可能となると期待しております。今後10年の実施方針との対応ですが,5番と8番に寄与すると考えております。以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。それではただいまの御説明に関しまして,御質問があればお願いいたします。
【若松委員】  御説明ありがとうございました。今お話しいただいたものは,今年の夏に海洋政策本部で決まった海洋情報の一元化とはどのように関係してくるのでしょうか。
【水産庁】  海洋情報の一元化ですが,調査船の運航状況等については,公開可能なデータは既に海上保安庁が作っておられるクリアリングハウスに登録しております。また水温や塩分等の物理的なデータについては,以前よりJODCにデータを共有させていただいております。ただ,現状ではクオリティコントロールの関係もあり,リアルタイムでデータが供給できるということではなく,ある程度のタイムラグを頂いております。その他の生物情報については,国際交渉等いろいろな問題を内包するものもございまして,データベース自体は関係者・機関で運用するクローズドなものになっておりますが,共同研究契約等を結んでいただいて,用途を限定・確実にした上で共同運用することは既に行われております。
【大垣部会長】  ほかにはいかがでしょうか。それでは気象庁から説明をお願いいたします。
【気象庁】  気象庁地球環境業務課の藤本と申します。当庁は地球観測に関して日々の気象把握や防災のために気象観測・地震観測などを行っておりますが,今回は気候変動の監視に関する観測について,その概要を御説明申し上げます。
当庁では気候変動の把握のために,総合的な観測・監視体制を構築,維持しているということで,地上観測については全国の地方気象台,特別気象観測所,アメダス等を用いて気象観測を実施しておりまして,気候変動の観測は長期継続の観点から,観測環境の維持に特に気を使って観測しています。地球環境観測におきましては,地上観測として温室効果ガス,エーロゾル,オゾン層等を測っており,海洋については2隻の海洋気象観測船を用いて,海洋による二酸化炭素の吸収,海洋循環,炭素循環等の観測を実施しております。更に航空機を用いまして温室効果ガスの観測等も実施しております。このような形で,気候変動の観測・監視におきましては長期継続的な観測が重要と認識しており,これからも気候変動把握のために観測の継続実施をしていきたいと考えております。
もう一つ,国際的な枠組みにおいては,世界気象機関(WMO),全球気候観測システム(GCOS)等の枠組みの中で,当庁はデータの標準化,品質管理,データセンターなどのセンター機能を運営しており,国際的なデータの流通の促進,品質向上を図っております。
この中で全球気候観測システム(GCOS)について少し説明させていただきます。GCOSは,WMO,国連環境計画,ユネスコの国際海洋学委員会,国際学術連合によって共同運営されているもので,実質的に国連の気候変動枠組条約における気候観測,これは大気・海洋・陸面の全般にわたっての観測なのですが,その推進役を担っており,先月モロッコのマラケシュで開催されたCOP22においては,このGCOSの新しい実施計画が示され,総会において,その実施計画を今後各国で推進していくことが採択されました。
当庁の行っている観測の社会課題解決に対する効果につきましては,気候変動やその影響の実態把握,気候変動対策,パリ協定などの緩和策や適応策の効果の定量的な評価などに活用されると考えております。また,気象及び気候の解析・予測の基礎データとして利用され,気象予測や防災,地球温暖化対策などの国民の生命・財産の保護等に活用されると考えております。今後10年の我が国の地球観測の実施方針との関連につきましては,大気汚染や紫外線予測などを行っておりますので,気候変動に伴う悪影響の探知・原因の特定,地球環境の保全と利活用の両立,災害への備えと対応,健康に暮らせる社会の実現につながり,科学の発展に寄与するものと考えております。以上です。
【大垣部会長】  ただいまの御説明に関して御質問をお願いします。
【箕輪委員】  御説明ありがとうございました。私は民間の保険会社に勤めておりまして,気象庁等で観測されている気温,降水量等の指標を用いた,天候デリバティブ商品インデックス保険を法人のお客様に御提供させていただいているという立場にございます。
御質問したいのは,今後10年の我が国の実施方針の中では,ユーザー,データを必要とするステークホルダーとの対話がキーワードに挙がっていると思うのですが,こうしたデータの標準化や品質管理,あとは本当に必要なデータが網羅されているのかといった点で,学術的な方々や我々のような商業的な利用をする立場といった様々なステークホルダーが対話する場面があるのかどうか,今後積極的に実施していく方針があるのかをお伺いしたいと思います。
【気象庁】  気象庁ではデータ利用を促進する目的で,ワークショップなどを開催し,気象庁のデータを災害も含めて,季節予報等をできるだけ産業とか,民間の方にも使っていただけるような取組を以前から続けております。
【岩谷委員】  私は気象情報を普段から利用している報道機関で,気象関連をやっているのですが,比較的気象庁のデータはホームページ等からも一般の人が利用しやすくなっていて,利用もされているのではないかと思っております。
その上で2点お伺いしたいのですが,気候変動の立場で言うと正確なデータを長期にわたって観測することが必要であり,一方で防災に関して言うと,データの品質以上にデータの観測箇所が多い方が有り難い。その意味では国交省の河川のデータが多くあるのですが,どうしても気象庁のデータと,ほかのデータと一元化されていないので,今後,防災という観点と品質の良い気候変動データを長期的に観測するのを,どう分けて考えていくのかが一つです。
もう一つは,予算の関係もあると思うのですが,海洋観測等で観測回数が減ってきているという話を以前聞いたことがあり,持続的にきちんと観測ができるのだろうかという2点を伺えればと思います。
【気象庁】  1点目の防災のデータと気候データに関しては,気象庁の中でも,気候に使えるデータと防災向けのデータをある程度区別しております。例えば気候に使えるデータについては,都市化の影響が少なく,周辺環境があまり変化していないような地点のものを使用し,設置場所に影響されやすいアメダスの風等はあまり使わず,影響を受けにくい降水量は使ったり等,それぞれの目的に合わせてデータをセレクトして使っています。
【岩谷委員】  一つの例を挙げると,東京の観測所が皇居の北の丸公園に移転したことで,気温が1~2度下がるわけです。一般の人にはこの1~2年で急に気温が下がったように見え,長期的に見ると気候変動がとまったように見えるということが起きたりします。もちろん気象庁の中で,気候変動のところではそういうものは使っていませんということはあるのですが,1地点だけを追ってしまうと,都市化の影響だったり,観測環境が変わることで,すごく変化したように一般の人には見えてしまうことがあるというのが一点。そこはデータを公開するときに,こういうものがあるのだということを周知しないと誤解を招くことがあると思っています。
防災上の観点で言うとデータの一元化はもっと必要で,いろいろな省庁と協力して観測データが一つのサイトにまとめて公開していただきたいというのが私個人で思っているところです。
【気象庁】  ありがとうございます。気候変動の解析の説明に関しましては,私どもの気候変動監視レポートといった刊行物の中で,気温とか,降水量とか,どのようなデータをどのように使っているのかについても書かれておりますので,そういったものを見ていただきたいと思います。各省との連携につきましては,潮位観測とかレーダーとか,できるだけ皆さんの要望をお聞きしながら,もちろん防災のために連携を深めて使っていくような形で,あるいは公開していくような形で進めております。
2点目の海洋については,海洋観測は船の運航があり,なかなか大変なところですが,できるだけ観測を維持して今までのデータを生かすように引き続き努力しているところです。
【大垣部会長】  それでは続いて,環境省から御説明をお願いいたします。
【環境省】  環境省地球環境局研究調査室の磯野でございます。当省の地球観測への取組ということで,非常に多岐にわたる内容の中で主に二つに分けて御説明申し上げます。 一つ目が地球環境の戦略的モニタリングで,地上観測から人工衛星を使ったモニタリングまでの戦略的なストラテジと,二つ目が気候変動影響評価・適応への貢献ということで,主実施機関でございます国立環境研究所の三枝様より,御説明申し上げます。
【国立環境研究所】  国立環境研究所の三枝です。よろしくお願いいたします。初めに地球環境の戦略的モニタリング等より説明いたします。私どもは主に気候変動,特に温室効果ガスの大気・海洋・陸域における監視を中心に据えて地球観測に取り組んでまいりました。資料の1にある地上ステーション,これは北海道や沖縄,また富士山頂における温室効果ガス,加えて大気質のモニタリングです。2は民間船舶の協力を得て,北太平洋及びオセアニアに向かう太平洋上における海洋表層の二酸化炭素分圧のモニタリング,これは世界のグループの中では,環境研のグループが太平洋の品質管理を担うグループとしても貢献しております。そして3としまして,ロシアに広がる広大なシベリアは世界規模で見ても大変な観測空白域になりますので,ここに1990年代から,ロシア科学アカデミー等と協力しまして,航空機及びタワーを使った大気中温室効果ガスのモニタリングを継続し,貴重なデータを得ております。また4としまして,民間航空機を使った大気中温室効果ガスの立体観測,これは日本を発着する民間航空機に自動的に空気をサンプリングできる装置を積み,世界の大気中の二酸化炭素濃度を地上から大気上空まで立体的に観測するもので,世界的にも非常に重要な地球観測のコンポーネントとなっております。また5としまして,陸域における温室効果ガス・フラックス観測タワーを持つ拠点でのモニタリング,これは環境研が独自に行っているのは国内の拠点ですが,同時にアジアには100地点を超えるこのような観測拠点がございますので,国立環境研究所では,アジアにおける活動の事務局を担い,情報の収集とデータベースの管理運用を行っております。またキャパシティビルディングも毎年のように行い,アジアへの技術普及に努めています。
ここまでが直接的な地球観測のプラットフォームの活動ですが,今後10年の活動を見据えて強化しているのが,6の観測データの利活用の促進及び知見の総合化です。例えば私どもの独自の観測データは地球環境データベースということで,これを運用し,公開しておりますが,既にたくさんのデータを蓄えている各種プロジェクト,例えば環境省,国環研,JAXAなどで実施しております温室効果ガス観測技術衛星GOSATプロジェクトのプロダクト類,それから大気・海洋・陸域の各分野における国際データベースとの連携におきまして,これらのデータを様々なモデルに入力し,地球規模での温室効果ガスの吸排出量の分布を高精度で求めようという取組を行っております。当然,これらは私ども独自ではできませんので,この資料の下の方にありますが,様々な国際プログラムやイニシアティブと連携して進めております。例えばIPCCにも大きな貢献をしているグローバル・カーボン・プロジェクトに知見やデータの集積を行う機能がありますので,ここに複数名の職員が総合的な吸排出量の分布を毎年出すという取組の一部に貢献しております。またGEOにおいては,GEO炭素及びグリーンハウスガス・イニシアティブのアジア太平洋における中核的役割を担うということで取り組んでおります。またそれに必要な研究課題としては,国立環境研究所やその他の研究機関と協力して,様々な地球規模の観測データを大気輸送モデル,いわゆる逆解析モデル,プロセスモデル等を使い,地球規模の観測データから,海や陸のどこでどれだけ温室効果ガスが発生しているか,または陸や海に吸収されているか,これらが手にとるようにわかるような解析システムをつくり,その精度を上げるという研究課題に取り組んでいるところであります。
以上が1枚目の説明になりまして,2枚目の気候変動影響評価・適応への貢献について説明させていただきます。国立環境研究所では,本格的には2011年頃から,地球温暖化に対して脆弱な生態系を複数選び,気候変動の影響把握のためのモニタリングを開始しております。具体的には日本周辺に8か所設けたサンゴの北上を監視しようというモニタリングです。そして,日本の中部山岳や北海道における高山の生態系,これが積雪期間の変動などに伴い,どのようにその生態系が変動しているかを自動撮影カメラなどを併設してモニタリングするような取組を進めております。また国立環境研究所内に地球観測連携拠点(温暖化分野)を以前より設置しておりますが,これを用いて様々な温暖化分野の観測に係わる環境省の連携を推進する活動に貢献しております。
最後に,この地球観測連携拠点の本年度の取組として,一部の機能を強化して関係府省庁の情報基盤と連携し,気候変動影響に適応するための活動基盤となる気候変動適応情報プラットフォームを開設いたしました。これにより,例えば地方公共団体の適応計画や適応情報などをこのプラットフォームに集め,多くの方にわかりやすく情報を見ていただくという取組を今年度から強化しているところです。以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。ただいまの御説明に関して,御質問等をお願いいたします。
【岩谷委員】  温暖化の関連で,私は環境省,国環研の情報を講演やシンポジウム等で使うことが多いのですが,最近,環境省・国環研のデータが国民向けに非常にわかりやすく使いやすいものになっていて,有り難いと思っております。
その中でお話にあった気候変動適応情報プラットフォームですが,これは例えばお米の収量であるとか,温州ミカンのとれる量がどう変化するかなどが非常にわかりやすく,自治体にも使いやすいものになっています。こういうものがいろいろな分野でできるとさらに国民や自治体の人たちが使いやすいのではないかと思っております。
一点だけこのプラットフォームに関して思うことは,気象研究所や東大の大気海洋研究所とか幾つかのモデルを使っており,海外のものを含めて幾つも答えが出てきて,研究者の立場で言うと,モデルごとに結果が違うのはよくわかるのですが,多分,自治体の人はどれを使っていいかわからないということが起こるだろうと思います。その意味で,見せ方については一般国民の目線でもう少し工夫されると有り難いと思っております。全体としては,わかりやすく一般向けに公開されているのでありがたいというのが感想です。以上です。
【国立環境研究所】  有益なコメントをありがとうございます。複数のアセスメントが出てきて,どれが正しいのか,どこに信頼性の高い部分があるのかを一般の方にもわかりやすく示すことは本当に難しいことで,これから取り組んでいかなければなりません。二つやり方があるかと思うのですが,本質的に気候変動予測も世界の複数の研究機関がやっており,様々な異なる解が出てきて,それをどうやって収斂させていくか,複数の解があり,不確実性の大きいところがあるということを含め,わかりやすく伝えていく工夫が必要であると思います。もう一つは,研究をより進め,複数の解が出ているときに信頼性の高い,いわゆるアンサンブルとしての予想あるいはある種の知見をまとめていき,それを発信するという技術もこれから必要になると思いますが,そこはかなり研究要素の強いところでありますので,これからも取り組んでいきたいと思います。
【大垣部会長】  ほかにはいかがでしょうか。
【赤松委員】  地方公共団体の話がありましたが,例えば民間がこうした情報を活用してビジネスをするなどの動きを御存じでしたら教えていただきたいのと,そういう動きをもう少し促進する枠組みを考えられておられれば教えてください。
【国立環境研究所】  私どもの観測コミュニティの中に閉じる話ではなく,国立環境研究所の取組となりますが,国立環境研究所では今年度から,新しく社会対話オフィスをつくりまして,ステークホルダーとの対話をどうしていったらいいか,それを強化する取組を行っております。そういうところに観測技術者なども参加しまして,民間企業の方の御意見を聞き,それに対して観測コミュニティとしてどうしたらいいかを考える場を環境研がつくっております。道のりは長いと思いますが,こうしたところを利用して,私どもも勉強し,利用を拡大することに貢献していきたいと思います。
【赤松委員】  それは我々のようなものも参加できるのですか。それとも,ある程度クローズドな形でやられているのでしょうか。
【国立環境研究所】  オープンなものからクローズドなものまで様々な取組をしております。一般向けの講演会等はなるべくわかりやすくホームページなどから発信し,あるいは一般公開などで高校生に来ていただいて,パネルディスカッションをやるというような取組もしております。比較的クローズドなものとしては,研究所の講演会を行った後に,何人かのいろいろな分野の方にお出でいただいて,御意見を頂くとか,そういった幾つものレンジの取組がなされています。
【大垣部会長】  ほかによろしければ,次に文部科学省の衛星観測につきまして,JAXAの吉村委員から御説明をお願いいたします。
【吉村委員】  私どもは情報を提供しているサイドでございまして,宇宙システムを使って,いろいろなモニタリングをして,皆さんに提供させていただいております。その意味で,実施計画のローマ数字4 章は377項目あるのですが,そのうちの83項目で貢献させていただいております。衛星という特性を生かし,世界規模でいろいろな情報が得られますので,その結果も当然,世界規模の課題に貢献する形になります。
我々は資料に記載があるような衛星を運用しており,また間もなく打ち上げられる予定のものもあります。例えば陸域観測技術衛星「だいち」2号は,2014年5月に上がりまして,5年の寿命ということで運用をしております。これは先代の「だいち」に比べて3倍以上の解像度でレーダー画像が撮れ,そのデータがいろいろなところでの利用が進んでおります。最近では,特に地震や火山での利用が始まっており,地震が起こった後のいろいろな影響,その地震が本当におさまったかどうかを判断するための情報,火山で活動が活発になったときに,どういうふうに今の状況があるかなど,例えば箱根のときにも入山規制を敷くべきなのか,それとも緩めるべきなのかという行政の判断にも使って役立てていただいている状況でございます。
それから世界的な森林保護という観点ですが,一つはJICAと協力しましてJJ-FASTという森林の違法伐採をモニタリングするシステムを構築中ですし,国際的な取組として森林の状況をモニタするツールとしてALOSのLバンドは非常に使いやすいので,世界で18の研究グループがいろいろな形でやっているのですが,ほかにもこの衛星のデータが使えないかという検討も行っております。
それからアメリカとの協力で2014年2月に打ち上げたGPM衛星については,本来3年2か月ということでしたが,これも今はまだ元気でやっております。これも二つの周波数のレーダーを搭載しており,Kaバンドは弱い雨,Kバンドは強い雨で両方のいろいろな雲のプロファイルがわかります。このレーダーを使うと気象予報の精度も向上するのではないかということで,気象庁とも連携しながら使っていただいている状況でございます。
GCOM-W「しずく」という衛星がございますが,これは自然放射のマイクロ波を観測する衛星で,0.5度の精度で海面水温が測れます。これもいろいろな形で気象や気候変動問題に使える衛星でございます。先ほどお話に出てきたGOSATは2009年に打ち上げ,これはもともと5年,10年だったのですが,今でもまだ使えています。2号機のGOSAT2も間もなく上げる予定でして,これは観測精度が1桁上がるものを開発しております。
その他,間もなく打ち上がる衛星では気候変動観測衛星GCOM-Cもございまして,SGLI(多波長光学放射計)という紫外から赤外までの19チャネルのセンサーを積んでおります。これは気候変動問題の基礎的なデータとして貢献できるのではないかと考えております。
もう一つ,欧州宇宙機関(ESA)との共同研究をしているEarthCAREがございまして,ここに日本として雲のプロファイリングレーダーを提供するという活動をやっております。これももう間もなく打上げが行われる予定です。
実施計画のローマ数字4 章の中にある項目の全ての分野において,いろいろな形で情報を提供しており,その成果はJAXAというよりも,いろいろな研究機関と協力し,いろいろな形の貢献をさせていただいているところでございます。その意味で,我々としてもSociety5.0に掲げる社会課題解決に関して,各省と協力して貢献していくことを引き続きやっていきたいと考えております。
【大垣部会長】  ありがとうございました。それでは続きましてJAMSTECの海洋観測につきまして,河野委員からお願いいたします。
【河野委員】  海洋開発研究機構の河野です。地球温暖化に伴いまして,海洋には様々な脅威があるということが言われています。例えば生物多様性の喪失であるとか,貧酸素水塊の拡大,海洋酸性化の進行,海水温の上昇による海面水位上昇,こういった脅威に対する解決策,あるいは緩和策・対応策が必要となっているところにおきまして,我々の持っているデータあるいは知見は不十分であるというのが国際的な認識になっています。そのため,今年開催されましたG7の科学技術大臣会合あるいは伊勢志摩の首脳会合におきましても,海洋観測の強化の重要性がうたわれています。
そこで気候変化・変動への適応策・緩和策の策定,それらに起因した渇水・多雨等への対策,海洋酸性化への対策などに資するための科学的知見を提示するために,海洋開発研究機構では様々な海洋観測を実施しています。範囲も多岐にわたっておりまして,太平洋,インド洋,南大洋などにおいて海洋地球研究船「みらい」,あるいはトライトンといった係留系,それからアルゴフロートなどによる海洋観測を実施してきております。これらにより,水温や塩分のみならず,温暖化に関連する二酸化炭素やフロンといったデータがとれると同時に,栄養塩,クロロフィル濃度などの生態系にも関連するデータがとられております。これらのデータはJAMSTECのサイトあるいは国際的なサイト,もちろん日本海洋データセンター(JODC)などを通じて広く公開されております。
私たちは主にグローバルな現象を扱っていることから,GEOあるいはGOOSといった国際的な枠組みや,その中で実施されているBlue Planet,ARGOプロジェクト,Ocean SITES,GO-SHIPなどの国際的なプロジェクトに深く関与しながら観測を実施しています。これは単にそこにデータを提供するばかりではなく,ステアリングコミッティなどの委員を出して計画段階から参加することを実施しております。
社会課題に対する効果としましては,日本の気候に影響を与える中高緯度の気候変動予測モデルの高度化に資する,あるいは将来的に漁業資源管理等に資するようなデータをとってきたということです。もう一つ,最近科学的根拠に基づいた決断を国際的にも促していくことが重視されていますので,その国際的なルールメーキングに深くコミットできるような状況をつくることで,国益を確保することが期待されます。さらに,海洋観測を強化するに当たって必要な測機あるいは必要なセンサーなどの開発が必要になります。そこで,こういった国際的な枠組みの中で標準的なものとして用いられるような測機あるいはセンサーを開発することで,国内市場の開拓にも貢献していけるのではないかということを期待しております。
科学的には,気候変動に伴う悪影響の探知・原因の特定,あるいは地球環境の保全と利活用の両立,それから科学の発展などに寄与していきたいと考えております。Society5.0への貢献については,JAMSTECでは観測データを公開することで,基盤となるデータを提供するばかりでなく,これらのデータに付加価値をつけたデータセットもつくっておりまして,例えばアルゴフロートでは,きちんと統合したデータセットをつくっておりますし,最近では効率的な航路の予測ができたり,あるいはどこでイカが獲れるかというようなデータセットもつくっております。Society5.0の基盤は,必要なときに必要なデータなり情報なり知見なりが直ちに得られるということと思われますので,それに対するアプローチも実施しております。こういったことを推進していくことによって,地球情報プラットフォームをつくっていって,Society5.0に貢献していきたいと考えております。以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。事務局に伺いたいのですが,資料2-7はどうするのでしょうか。
【直井地球観測推進専門官】  資料2-7は国土交通省の提出資料ですが,ここに書いてあるXRAINは試験運用中のものであり,今回の観測部会の趣旨とは少し異なるので,資料のみの提出となっております。
【大垣部会長】  それでは,ただいま各省庁・機関から御説明を頂きましたが,全体でお気づきの点あるいは御質問等があればお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。
【寳委員】  いろいろな計画があり,各省庁で地球観測をこういう形でやっていきますというのはもちろん大事なのですが,それを海外へ展開していくことはどのようにお考えなのかを各省庁からお聞きしたいと思います。
【河野委員】  海洋研究開発機構で取り組んでいることの御紹介をしたいと思います。 海洋の分野は必ずしも国内のマーケットが広くないことがあり,なるべく外国でも通用するものをつくっていかなければいけないのが必須になります。これは非常に難しいことで,今,大々的に成功しているものは,率直に言えばありません。例えば,海洋環境の変化ということで,海中の栄養塩の分布がどのようになっていて,どう変化していくかを地球全体で調べるのは大きな課題であり,これを妨げているのは標準物質がないことです。そのため,JAMSTECと気象研究所が協力して,国際的な標準物質をつくろうとしています。10年ぐらいの時間がかかっていますが,科学コミュニティから認められて,それを国際標準にするべく努力しているところです。つくっているのは日本の会社ですので,もしこれがグローバルスタンダードになれば,日本の企業の活性化につながる。
あるいは今,アルゴフロートは2,000メートルまでしか測れませんが,これが深いところまで測れるようにしたいというニーズがあります。これも日本の企業を後押しして,4,000メートルまで測れるようなフロートを開発し,まだグローバルスタンダードとまでは行きませんが,そういった努力をしておりますし,それを推進するようにという強い指導を受けておりますので,少なくとも方針ではあるだろうと思います。
【国立環境研究所】  ただいま海洋のお話がありましたので,その他のところで申し上げますと,例えば海外展開については2種類,大きな方向があると思っています。まずは観測技術の向上です。これは国立環境研究所でもキャパシティビルディングをやっておりまして,アジアの陸域観測サイトをもつ100ぐらいのグループとつながっておりますので,毎年のように一つひとつの国を訪問し,そこの人たちと若手育成の活動を,地球観測の取組の一環として,品質の向上と持続可能性を高めるために実施しております。
それから,これからの課題ではありますが,データ利用の向上があります。例えば,これからパリ協定の発効に伴い,各国の温室効果ガス発生量の報告をしなければなりません。ただ,国によってどれだけの精度を出せるかはばらつきがあります。ですので,大気観測のしっかりとした基盤を持っている日本などのコミュニティが各国のデータユーザーを育て,大気側の観測と自国のイベントリーの排出量の結果が合致するかどうか,もし問題があるのであれば,それを両者で共に考えて解決していく,そういうデータ利用の方法の向上を目指しているところです。
【吉村委員】  宇宙に関する活動を御説明申し上げたいと思います。衛星データを使った例として,例えば農業に対する適応ということで海外展開,特にアジア,西アジア地域では水の問題が非常に厳しいところがあります。そういうところに対して,ADB(アジア開発銀行)などと組んで,どういう形でそこの灌漑事業を進めるかに宇宙技術や気象データを使っていく取組をスタートしております。先ほど御紹介したJICAと組んだJJ-FASTという森林の不法伐採をモニタリングするシステムをつくって,これを現地のいろいろな行政の方に使っていただくところでも展開を図って,日本の企業が入って行くということも実施しています。これら全体的な活動については,私どもはアジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)を文部科学省と20年間やっておりまして,そこで毎年,どのような成果が上がっているかをショーケースのように見ていただいて,それに参加する国がアジア地域から広がってきています。以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございます。そういう国際的な活動が先々では商品の輸出やサービスの輸出に関係してくるということになると思います。ほかにはいかがでしょうか。よろしければ,各省庁,機関の方はどうもありがとうございました。
それでは議題(3)に移ります。「今後の地球観測の推進に関する取りまとめについて」であります。この取りまとめは来年度のイノベーション総合戦略2017に向けて,地球観測において取り組むべき事項を検討し,CSTIに報告するものです。事務局から資料の説明をお願いいたします。
【直井地球観測推進専門官】  それでは資料3に基づいて御説明させていただきます。 この資料はこれまでの部会の議論を取りまとめたもので,事前に委員の皆様にはお送りし,頂いた御意見を反映したものになっております。
内容につきまして,まず項目1として「背景」がございます。これは平成16年に総合科学技術会議が策定した「地球観測の推進戦略」に基づいて,我が国の地球観測事業は推進されてきたこと。その後,CSTIのレビューを受け,平成27年に課題解決型の地球観測を推進することとした「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」を本部会において策定していただきました。一方,第5期の科学技術基本計画におきましては,超スマート社会(Society5.0)を掲げた11のシステムの開発を進めることになってございます。また,科学技術イノベーション総合戦略2016が策定されておりますが,社会的な共通基盤としての地球観測の重要性に関する言及は多くないということでございます。
次に地球観測につきましては,地球・自然及び人間社会の現状や将来予測に対する包括的な科学的理解と社会的課題解決のための基本データを与えるものであると。気象観測や衛星観測・海洋観測などが社会的な共通基盤の一部として,データの蓄積と利用推進を将来にわたり長期的に継続することにより,社会的課題の解決に貢献し,社会的・経済的価値が生まれるものであると。このような背景のもとに,実施方針に基づいて各省が作成した実施計画を本部会において取りまとめ,更にその実施に当たって必要とされる地球観測の重要性について提言を取りまとめたということが背景として記載してございます。
2番目の「地球観測の社会的重要性」に関しましては,二つの項目に分けて記載をしてございます。一つが「Society5.0実現への貢献と民間との連携」ということで,Society5.0についてはその実現に向けて地球観測が貢献することができること。2番目のパラグラフにありますように,例えば民間企業が地球観測データを活用して,天候インデックス等の保険商品の開発や防災減災対策等の途上国開発支援の新たなビジネス展開,そして地球観測に係る装置の開発や観測そのものの実施にビジネスとして取り組むことによって,社会的課題の解決だけではなく,新しい市場の開拓にも貢献することが期待されること。これらを実現するためには解決すべき課題を分類・分析した上で,産学官がプロジェクトの初期から連携し,社会実装を推進する仕組みを構築することが重要であると。このようにFuture Earthですとか,co-designの考え方を取り入れたものが必要であるということでございます。更に地球観測データの民間利用を促進するためには,オープン化を推進するデータポリシーとデータ利用の枠組みの整備やユーザビリティのさらなる向上が必須であること。
次は,地球観測データに基づく気候変動対策や地球観測データを用いた状況把握による効果的な防災減災活動の実施,交通輸送や都市計画等の社会インフラの整備,農作物の育成予測に基づいた営農指導など,地球観測データの活用の可能性の広がりが大きいこと。これについて地球観測データの継続的な蓄積,そして分野の研究者とIT分野の専門家との協働,また民間企業等も含めた協働が必要であり,このような取組を進めることにより基本計画に掲げる11のシステムの構築に貢献するとともに,ここに記載のような様々な社会的課題の解決に貢献していくことが重要であると。この課題は,ほぼ実施計画に記載されている課題に対応するものでございます。
2番目の「国際的な重要性」に関しましては,SDGsとか,パリ協定,仙台防災枠組,G7の科学技術担当大臣会合の共同声明等で掲げられている地球規模課題の解決のための地球観測データと予測が必要不可欠であると。このような地球規模課題は一国で取り組むことが極めて困難であり,GEOや,CEOS,IODE等の国際的な枠組みの中で,観測データや解析データを各国に提供することにより,諸外国の様々なデータを利用することができるようになっており,データを用いた地球規模課題の解決への利用を推進していると。国連気候変動枠組条約をはじめとした国際的な意思決定に科学的根拠が活用される動きが進む中,日本が地球観測に継続的に取り組むとともに,データの提供と様々な観測の連携,データの統合を進めていかなければ,国際交渉の場での発言力や我が国の外交的プレゼンスの低下につながりかねないことから,これらの取組が国益の観点からも重要であるということを記載してございます。
GEOに関しましても,2018年の本会合が我が国で開催されることが決定しておりますので,これに向けて我が国の地球観測に関して活動を再認識することが重要であるということを記載してございます。
これに対して「提言」として4点を挙げてございます。一つ目がCSTIにおいては地球観測の重要性を踏まえ,次期科学技術イノベーション総合戦略に地球観測の実施及び観測データの利用に十分な予算を確保することを盛り込んでいただきたいこと。二つ目が,各省庁や関係機関においては,政策として地球観測に着実に取り組むとともに,それぞれが実施している地球観測の社会や経済への貢献をよりわかりやすく示して,国民理解の獲得に努めていただきたい。またFuture Earth構想等も必要に応じて活用しつつ,諸外国,例えば欧州のコペルニクスですとか,オーストラリアのデータキューブなどを取組の参考に,産学官の連携のもと,利用の開拓と拡大に向けた具体的活動に注力していただきたい。三つ目は,DIASについて基本計画に掲げられた11のシステムの一つである「地球環境情報プラットフォーム」の中核に位置づけられておりますので,文部科学省及びCSTIはGEOへの貢献に加え,オープン化に向けたデータポリシー等の整備や,他の10のシステムとの連携の推進により,各省庁の有する地球環境データの登録や民間企業等も含めた幅広いユーザーによる利用を一層推進していただきたいこと。最後に四つ目として,文部科学省をはじめとする関係省庁は,GEO本会合の2018年日本開催に向けて,GEOの戦略的活用を一層推進し,我が国の地球観測データの地球規模課題解決への利用,DIASを通じた我が国の地球観測データの提供による諸外国のデータの公開促進などの取組を強化していただきたい。このような形にまとめさせていただいております。以上です。
【大垣部会長】  ただいまの説明に関して,最後の取りまとめでありますが,御質問あるいは御意見がありましたら,お願いしたいと思います。
【赤松委員】  私は民間の立場ですので,特に社会実装,ビジネス利用の推進やデータのオープン化の推進に関する指摘を幾つかさせていただきました。それを今回の取りまとめに反映していただいことを,まずは御礼を申し上げます。
先ほどGEOの報告もございましたが,ユーザーとの連携,特に取組の立上げから共にデザインしていくというco-designがGEOの中で述べられていること。また,政府機関のオープンデータへの理解の重要性が出ていることで,我々もこういったことを進めていかなければならないと改めて意を強くしたところでございます。
一つだけ,先ほどの御説明の中では,諸外国の取組の中でコペルニクスという言葉が出てまいりましたが,本文の中に書き込んでいただけないかと。コペルニクスが本当にいいのかという話はありますが,こういったことを進めていくときに,概念論だけだとやり方が見えにくいと思います。ですので,先行例として「コペルニクス等」という言葉を入れさせていただきました。本文に書き込むかどうかは別として,注釈として,そういうものがあることを書き込んでいただければと思います。以上でございます。
【大垣部会長】  ありがとうございました。それについて何か回答はありますか。
【樋口環境科学技術推進官】  御指摘のように,コペルニクス以外にも取組があるので,ほかのものも含めて記載する方向で調整したいと思います。ありがとうございました。
【大垣部会長】  ほかにはいかがでしょうか。
【河野委員】  2点あります。一つは,最終的に予算を取ろうとした場合,結局,各省庁各部局が個別にお願いすることになります。そのときに国として,例えば政策アジェンダといったところの中に海洋観測の強化という項目が入っていないと,結局のところ,通常の予算交渉の中でワン・オブ・ゼムになり,方針は理解しましたが,各省庁の努力の範囲で実行してくださいと言われかねないので,なるべく国の高いレベルでの共通認識にするための努力が必要なのだと思います。提言の(1)がそれに該当するのかどうか,そう読めるのかどうかだと思います。
もう一点は単純な言葉の問題なのですが,「提言」のところの「国際的な枠組みの中で我が国のプレゼンス」と書いていますが,「国際社会の中で我が国のプレゼンス」の方がよろしいのではないかと思います。
【大垣部会長】  ありがとうございます。最初の部分に関してはいかがですか。
【樋口環境科学技術推進官】  確かに,基本的には予算はそれぞれで確保することになると思うのですが,それをどう後押しできるかということだと考えております。一つは総合科学技術・イノベーション会議で取りまとめられている科学技術イノベーション総合戦略,これは閣議決定で政府全体の方針になっていますので,そこに対する提言の位置づけは高いものだと思います。
【大垣部会長】  ほかにはいかがでしょうか。
【寳委員】  3ページの(1)から(4)の提言の文末にある「いただきたい」という表現を,例えば(1)ですと,「盛り込んでいただきたい」を「盛り込むことを強く提言する」のような形にしてはどうでしょうか。本部会の立場として,「~することを推奨する」とか「提言する」とか,「強く求めたい」といった表現がいいのではないかと思います。
【樋口環境科学技術推進官】  わかりました。文末の表現をどうするかは,事務局で調整させていただきます。ありがとうございます。
【大垣部会長】  ほかにはいかがでしょうか。
【佃委員】  今年は十分議論されなかったことなので,この提言ではなく来年に向けて是非検討していただきたいことをお話しいたします。地球観測について,グローバルな視点から民間・個人の利用までが,利用という観点で進展してきたのは非常にいいことなのですが,利用者のレイヤとしては自治体があると思います。今日の報告でもありましたが,いろいろな形で自治体についても利用できるように見える化の努力がされてきているので,自治体にどう使ってもらいたいのかを是非議論していただきたいと思います。環境研究所のアクションも非常に重要で,地域のガバナンスにとって地球観測データは非常に重要だと思います。それを使って,自治体の政策決定にどう貢献できるのかも御検討いただければと思っております。
【赤松委員】  今の話とつながる話ですが,佃委員がおっしゃった自治体という考え方は重要なので,やはり言葉として書き込んでいただきたいと思います。例えば,民間企業と書かれているところに,自治体の活用も併記するといった工夫ができると思いますので,是非よろしくお願いいたします。
【大垣部会長】  ありがとうございます。それでは,その方向で修文をするということでよろしいですか。ほかにはいかがでしょうか。
【六川委員】  提言は非常によくまとまっていると思うのですが,文部科学省の役割としてやはり人材育成があると思います。その言葉があまり入っていないので,例えば,将来人材の育成といった言葉を添えたらいかがかと思います。
【大垣部会長】  今おっしゃったのは提言の(1)ですか。
【六川委員】  そうです。例えば「地球観測の実施及び観測データの利用並びに将来人材の育成等に十分な予算を確保する」といったような感じです。
【大垣部会長】  ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
【春日部会長代理】  文部科学省としてもう一つの重要な役割は研究や技術開発なので,それも含めるべきではないかと思います。やはり提言の(1)のところなのですが,2行目の「地球観測の実施」のところに「地球観測に関する研究開発や観測の実施」という形で加えていただいてはいかがでしょうか。
【大垣部会長】  ありがとうございます。特に御異論はないですね。ほかにはよろしいですか。
【渡邉委員】   私の専門に近いところですが,2ページの三つ目の段落の「地球観測データに基づく」以下のところで,3行目に「農作物の育成予測に基づいた営農指導など」とあります。ここは事前に頂いた案では「収量予測」と書いてあったのですが,収量だけではなく,品質や短期的な気象予報に基づく法面や畦の崩壊,高潮による塩害など,いろいろなことがあるので収量だけでは少し狭く,「生育」に置き換えたらいいのではないかということを申し上げました。「育成」は人間側のアクションを示すので,農作物に付けるなら「生育」がいいのではないかと思います。
また「営農指導など」とありますが,営農指導は少し絞り過ぎで,今問題になっているのは営農者自体の活用,農業関係のいろいろな機関の活用があるので,「指導」を取ったほうがいいと思います。細かいですが,御検討をいただければと思います。
【大垣部会長】  ありがとうございます。ほかにはいかがですか。特にないようでしたら, この提言につきましては文部科学省のホームページで公開することになっておりますが,ただいまいただいた御意見を踏まえて修正を行いたいと思います。修正につきましては,今回で今期の部会が終了してしまいますので,恐縮ですが,部会長である私に御一任いただくということでよろしいでしょうか。
(異議なしの声)
それでは,来年1月のCSTIの環境ワーキンググループで文部科学省から報告していただくことにいたします。ありがとうございました。
それでは,その他の議題に事務局から何かありますか。
【樋口環境科学技術推進官】  これまで2年間,先生方に多大なる御協力を頂いてきた第6期の地球観測推進部会でございますが,任期が2月までなので今回が最終回となります。つきましては,環境エネルギー課長の藤吉から,皆様に一言,御礼の御挨拶をさせていただければと思います。
【藤吉環境エネルギー課長】  環境エネルギー課長の藤吉です。今,御説明がありましたように,第6期の皆様方においては本日が最終回となりますので,一言御挨拶させていただきます。
この2年間は,GEOSS推進のための新しい10年計画の策定に対応するという意味で非常に重要な時期だったと思います。本部会におきましては,地球観測の推進戦略が策定から10年を迎えたということで,地球観測を取り巻く国内外の動向を踏まえて,課題解決型という新しいコンセプトの地球観測を柱とする今後10年の我が国の地球観測の実施方針を策定していただきました。昨年11月のメキシコでのGEOの閣僚級会合では,この実施方針とも整合するGEOの戦略計画が承認されたところでございます。また本部会におきましては,新しい実施方針に基づいた初めての実施計画も取りまとめていただきました。これにより社会的課題と各省庁の様々な地球観測活動との関係をより明確に把握することが可能となりました。また本日はCSTIや各省庁に対しましてSociety5.0の実現への貢献や,国際関係における地球観測の重要性を示した提言について御議論を頂きましてありがとうございました。
平成30年にはGEOの本会合を日本で開催いたします。今後,第7期におきましては,今期部会でまとめていただいた実施方針等を基礎とし,GEO本会合の日本開催を重要な契機としまして,地球観測が国内外の様々な社会課題の解決に貢献していくことを目指しまして,我が国における地球観測の実施と利用を産学官で一層推進するための議論を行っていきたいと考えております。
委員の皆様方には,これまで大所高所から貴重な御意見を頂きまして,まことにありがとうございました。今後とも地球観測の推進に関しましては御指導御鞭撻をよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
【樋口環境科学技術推進官】  続きまして,部会長からも一言,お願いできれば幸いでございます。
【大垣部会長】  この6期の間,皆様には委員として御協力を頂き,ありがとうございました。地球観測データあるいは地球観測そのものは基本的に包括的に地球と自然を科学的に理解するためのものでありますし,同時に今回の主要な課題であった社会的な課題解決への貢献もございます。この2番目の方が,この期の議論の中心になりましたが,地球観測活動から得られるデータは,たとえれば社会政策決定のための国勢調査みたいなもので,要するに基本中の基本のデータでありまして,長期的な継続が非常に重要であると思います。その意味で,今回の提言では社会的貢献が中心となりましたが,長期的継続を当然忘れてはいけないと思っております。いずれにいたしましても,国際的な活動に関する提言も含めて,社会的貢献と基礎的な科学的理解のバランスがとれた提言にまとめることができたのではないかと個人的には思っております。
委員皆様の御協力,関係府省・関係機関,事務局の御努力に感謝をいたします。どうもありがとうございました。
【樋口環境科学技術推進官】  ありがとうございます。これまでの御協力に感謝を申し上げます。また,引き続き地球観測及びGEOに御協力を賜れれば幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【直井地球観測推進専門官】  最後に事務連絡をさせていただきます。本日の議事録は,後日事務局よりメールで皆様にお送りいたしますので,各委員に御確認いただいた後に,文部科学省のホームページで公表させていただきます。以上です。
【大垣部会長】  以上をもちまして,地球観測推進部会の第8回会合を閉会といたします。本日は長時間ありがとうございました。

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