第6期地球観測推進部会(第7回) 議事録

1.日時

平成28年10月18日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 科学技術イノベーション総合戦略2016における重きを置くべき施策について
  2. GEO戦略計画推進作業部会の審議状況について
  3. 平成28年度「我が国における地球観測の実施計画」(改訂版)について
  4. 今後の地球観測の推進に関する取りまとめの方向性について
  5. その他

4.出席者

委員

大垣部会長、春日部会長代理、赤松委員、上田委員、河野委員、佐藤委員、高村委員、寶委員、佃委員、中田委員、村岡委員、六川委員、吉村委員、若松委員、渡邉委員

文部科学省

白間文部科学審議官、藤吉環境エネルギー課長、樋口環境科学技術推進官、石橋課長補佐、直井地球観測推進専門官

オブザーバー


5.議事録

出席者
【関係省庁】内閣府 田中参事官
総務省、経済産業省、林野庁、国土地理院、情報通信研究機構、森林総合研究所



【大垣部会長】  ただいまより科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会地球観測推進部会の第7回会合を開催いたします。本日は,お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。
初めに,委員の交代がありましたので御紹介いたします。宇宙航空研究開発機構理事の浜崎委員が委員を退任され,新たに同機構第一宇宙技術部門宇宙利用統括の吉村委員にご参加いただくことになりました。吉村委員から一言御挨拶をお願いいたします。
【吉村委員】  本日から参加させていただきます吉村と申します。JAXA(宇宙航空研究開発機構)で宇宙利用統括をこの4月から務めております。前職は調査国際部長で,国際的な仕事をいろいろさせていただいておりました。現在はJAXAの代表として,CEOS(地球観測衛星委員会)の国際調整も含めて当たらせていただいております。今後ともよろしくお願いいたします。
【大垣部会長】  どうぞよろしくお願いいたします。
次に,事務局から出席者と資料の確認をお願いします。
【直井地球観測推進専門官】  まだお見えでない委員もいらっしゃいますが,本日は15名の出席を予定しており,過半数に達しておりますので,部会は成立ということになります。また,本部会は,部会の運営規則により公開となります。
配付資料は議事次第に記載しているとおりで,資料1-1から資料1-5,資料2,資料3,資料4,資料5-1から5-5になります。また,メインテーブルには机上資料を配付してございます。以上になります。
【大垣部会長】  よろしいでしょうか。それでは議題1に入ります。これは本年5月に閣議決定された科学技術イノベーション総合戦略2016に対し,その中で重きを置くべき施策をCSTI(総合科学技術・イノベーション会議)で取りまとめたものです。本日の議題4では,総合戦略2017に向けた議論を行うことから,その参考とするために,御説明を頂くこととしております。内閣府の田中参事官に御説明をお願いいたします。
【田中参事官】  内閣府で,科学技術・イノベーションのエネルギー環境を担当する参事官をしております田中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私からは,資料1-1から1-5を用いまして,私ども内閣府で取りまとめております総合戦略2016における重きを置くべく施策について御紹介を差し上げたいと思います。
まず資料1-1ですが,内閣府では政府の科学技術政策を総合的に進めるため,この総合戦略のもとになっている科学技術基本計画をこの1月に定めております。これは現在第5期の計画に至っておりまして,5年間の施策ということで計画をまとめております。毎年の施策に関しては,科学技術イノベーション総合戦略を毎年取りまとめ,その中で毎年重きを置くべき施策がどういった分野であるかを定める,そういう立て付けで施策を進めているところでございます。
現在は,今年の5月に取りまとめた2016の総合戦略に基づいて,様々な施策を進めているところです。この総合戦略を更に進めるために,内閣府では重きを置くべき施策を特定する作業をしております。2行目あたりから書いてございますが,限られた資源,財源,人材を重要な分野や効果の高い施策へ重点的に配分すること,それにより資源を有効利用することを目的として,概算要求に先立ち,関係する省庁に集まっていただきまして,有識者によるヒアリングを実施し,重きを置くべき施策を特定する作業をやっているところでございます。
特定した重きを置くべき施策に関しては,政府の予算に実効的に反映されるよう,財政当局には「これは重きを置くべき施策であり,十分に配慮をお願いします」というように,内閣府から財務省の各係に説明に行く形で連携を図っております。
また,取りまとめる過程で得られた課題などの知見につきましては,次の年の重きを置くべき施策の考え方に反映させるために使っていくというように施策を進めています。
1ページめくっていただきまして,今般,平成29年度の各省の予算の取りまとめにおいて取りまとめた特定施策の数が書いてございますが,各省の施策を合わせて232施策,概算要求額で9,538億円を取りまとめました。科学技術の中の様々な観点からこういった施策を特定していますが,大きく切り分けて,未来の産業創造と社会変革といった取組,経済・社会的課題への対応,基盤的な力の強化,人材,知・資金の好循環システムの構築,科学技術イノベーションの推進機能の強化といったような切り口でまとめております。
特に私どもの方で担当しているのは環境分野については,一つは,丸2のところにございますが,(1)の一つ目,エネルギーの安定的な確保といった観点での施策を取りまとめております。
それから(3)のところでは,地球環境情報プラットフォームの構築という観点での施策も取りまとめておりまして,特にこの分野が地球観測の分野と非常に関係の深い分野であると認識をしております。
私どもは,この総合戦略2016に基づいて,様々な施策を取りまとめるという形で進めておりますが,特に2016の中で内閣府として重点的に進めていきたいと考えているのが,次のページの資料にある,Society5.0というコンセプトでございます。昨今,IoT,ビッグデータ,AIといったような新しい動きが激しく動いている中,政府として産業を更に創造していくという観点から,Society5.0という考え方を強力に推し進めていこうというものでございます。
Society5.0という言葉だけではわかりづらいのですが,サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させることによって,地域,年齢,性別,言語等による格差なく多様なニーズ,潜在的なニーズにきめ細かに対応した物やサービスを提供することで,経済的発展や社会的課題の解決の両立を図り,人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会だというように定義をして,これを強力に推進していこうという考えでございます。
このシステムを実現していくために,内閣府では,経済的課題や社会的課題を踏まえ,11のシステムを先行して開発するように考えておりまして,資料にもありますとおり,物づくりのシステムやエネルギーバリューチェーンといったものもございますが,下にありますとおり,地球環境情報に関しても一つのプラットフォームと考えており,地球環境情報プラットフォームを推進していこうという考えでございます。地球環境情報プラットフォームとして現在考えているのは,気候変動関連の情報を提供するシステムでございますけれども,これについては後ほどどういったものを考えているかを御紹介させていただきます。
次のページを見ていただきまして,地球観測にも関係のある分野として,エネルギーとイノベーションの関連がございます。御存じのように,パリ協定に関しては,現在国会でも審議をされている状況ですが,パリ協定で求めるCO2の削減を実現するためには,抜本的な対策を講じていかなければならないと考えておりまして,そのために2050年に向けた技術開発を更に強力に進めていこうという観点から,各省から施策を出していただくという取組を進めているところでございます。
次のページは省略させていただきまして,重きを置くべき施策を特定するという作業をどういった段取りで進めているかを示したのが6ページの資料でございます。総合戦略2016を5月に閣議決定しており,7,8月にかけて,各省から重きを置くべき施策,特定の要望を出していただくという形で進めております。その中で,出していただいた要望に関して,関係省庁間で調整などが必要であれば実施して,最終的に総合科学技術イノベーション会議,総理にも御出席いただいた会議でこの施策を特定するという段取りで進めているところでございます。
今回,9月15日に会議を開催しましたが,そこで特定された施策をお示ししているのが資料1-2です。文章の形で書かれておりますが,まず見ていただきたいのは,その次のパワーポイントの資料,15ページと書かれた色刷りのページをごらんください。地球情報環境プラットフォームのイメージですが,気候変動の分野が主な焦点になっております。気候変動が避け難い状況で,今後,緩和の対策と適応の取組の両面が求められるということでございます。
適応ということでは,農業や防災,インフラ整備といった様々な分野で影響が考えられるということで,今後どのように気候変動によって状況が変わっていくかという予測が必要になってくると思われます。また,そういった状況に関して,更にデータをわかりやすく発信をしていくことも求められてくるのではないかと思われます。そういった観点から,各省から気候変動に関するデータの収集,加工,蓄積,公開,活用などの施策をお出しいただいて,それを一まとまりの体系として地球環境情報プラットフォームという形で取りまとめるという取組をいたしました。
具体的に出していただいた施策に関しては,30ページとページ番号が書いてある白黒のページに,今回出していただいた七つの施策についてお示しております。
総務省の衛星搭載センサの性能向上に関する施策。文部科学省の気候変動対応に向けた地球観測衛星の研究開発の施策,地球環境情報プラットフォームの構築及び研究成果の社会実装の推進の施策,北極域の研究の戦略的推進の施策。それから国土交通省,これは実質的には気象庁ですが,気候変動の中長期予測の高精度化の施策。環境省からは衛星による地球環境観測の強化,気候変動適応情報,プラットフォームを活用した地域における適応の取組推進と科学的知見の充実という新しい施策,この七つの施策に関して,今回,重きを置くべき施策として特定するという形で取りまとめました。
29年度の予算に関しては,こういう形で取りまとめをいたしたところでございます。それぞれ施策の概要については,パワーポイントの102,103,182,183と記載されているページをごらんください。更に今後,平成30年度の予算要求に向けて,どういった施策を重きを置くべき施策として特定していくかに関して,内閣府ではそろそろ議論を開始したいと思っております。その中の観点については,これから更に議論を進めていかなければならないところですが,私ども内閣府事務局として考えている点に関しまして,最後のページをごらんいただければと思います。
内閣府で環境ワーキンググループという会議を立ち上げ,そこで議論をする形になります。この会議は,昨年地球観測に関する取組のレビューをまとめていただいた会議と同じものでございます。この会議の中で,来年度どういった施策に重きを置くべきか。その前提となる総合戦略2017の中に,どういったことを盛り込んでいくべきかに関して考えているところをお示ししたものがここに書いてある考え方でございます。
今回の議論と引き続き,Society5.0の実現に向けて,どのような施策が必要か。気候変動の適応,これに関しては既に適応に関する計画が閣議決定をされていますので,今後どのような知見を充実させるべきか。科学技術面での対応は,今後どのような体制,役割分担のもとに実施をするべきか。それから,地球環境情報プラットフォームとして,文部科学省のDIAS(データ統合・解析システム)の取組は非常に大きな取組の一つとして位置づけられるかと思っておりますが,適応の施策などを考えたときに,どういった点を改善して使い勝手を向上させるべきか。それから,地球環境情報プラットフォームの構築と他分野のシステムの連携としては,どのような可能性があるか。地球環境情報プラットフォーム側で対応すべき事項は何か。
これまでは気候変動の問題を主に扱ってきたわけですが,環境ワーキンググループの中では,昨年来,生物多様性の問題に関しても,もっと議論すべきではないかと御指摘を頂いておりますので,そういった点に関して,どのような方向性で議論を進めていくべきかを今後議論していきたいと考えているところです。
以上,内閣府の重きを置くべき施策に関する状況に関して御紹介をさせていただきました。
【大垣部会長】  ありがとうございました。それでは,ただいまの御説明に関して,御質問あるいは御意見がありましたらお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。
私から質問させていただきたいのですが,Society5.0を実現することの最終目的は,先ほど御説明があったように,様々な格差によらず質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会を求めるわけですが,実際の施策に係わるものとしてはIoT,あるいはAIとは言わないけれども,そういうサイバー空間のテクノロジーと実社会を結ぶとか,そういう点が中心だというように理解してよろしいでしょうか。
【田中参事官】  先ほど,Society5.0を実現するために,11のシステムを紹介させていただきました。その中では,確かにAIのようなものも入ってくるわけですが,あくまでその社会をより皆さんにとって住みよい社会にしていくことが目的ですので,対象としている11のシステムを紹介をさせていただきますと,エネルギーチェーンの最適化,地球環境情報のプラットフォーム,効率的,効果的なインフラ整備の管理,自然災害に対して強靱な社会を実現するといったシステム,高度道路交通システム,新たな物づくりシステムと,材料の統合的な開発のシステム,健康立国のための地域における人と暮らしのシステム,おもてなしのシステム,スマート・フードチェーンシステム,スマート生産システムということで,必ずしもそのAIやIoT,ビックデータというところだけではなく,社会全般の課題に対応していこうというのがこのSociety5.0の考え方でございます。
【大垣部会長】  ありがとうございます。
【春日部会長代理】  御説明ありがとうございました。エネルギーの観点で,これから再生可能エネルギーの急激な普及を実現化しないといけない状況になっていると思うのですが,それを後押しするために,財政的なインセンティブを与えるような形で,財務省とはどのような議論がなされているのでしょうか。例えば環境省は温暖化対策税ということで,CO2排出をネガティブに影響を受けるような形の税体制を導入しているわけですが,逆にCO2削減を進めるような産業の促進,それを後押しするような財政的な体制も進めるべきではないかと思います。その辺は内閣府として,各省を横断的に見たときに,特に財務省との関係ではどのような施策を今年度お考えなのでしょうか。
【田中参事官】  私どもは科学技術イノベーションという観点で施策を取りまとめておりまして,技術開発の面を主に注目して進めているところでございます。委員御指摘の財政的な側面に関しては,経済産業省なり環境省なりが施策全体の効果も考えて財務当局と調整をされているのではないかと思います。詳細につきましては,必ずしも十分に把握はしておりませんが,いずれにしましても,私どもの方では主に技術の観点からまとめているというのが現状でございます。
【春日部会長代理】  ありがとうございます。
【大垣部会長】  それでは,次に移ってよろしいですか。
次の議題2はGEO戦略計画推進作業部会の審議状況についてであります。今年2月4日に開催した第5回の部会において,作業部会の設置を承認しましたので,その後の状況について事務局から報告をお願いいたします。
【樋口環境科学技術推進官】  資料2を使いながら御説明させていただきます。資料2は,GEO戦略計画推進作業部会の構成員の名簿で,この部会からも何名か入っていただいております。主査につきましては,小池俊雄先生にお願いしております。
この作業部会は,10月13日に第1回を開催しました。議題は四つで,一つ目が主査代理の指名と作業部会の運営規則の決定ということで,主査代理につきましては,村岡先生を小池主査から御指名いただきました。作業部会の運営規則も今回決定してございます。
二つ目が,GEOの動向についての情報共有で,8月にこの部会でも報告をさせていただきましたが,事務局から最新のGEOの執行委員会等の報告をしております。三つ目と四つ目は,国際対応の関係もあるため非公開での議論となっておりますが,アジア太平洋地域におけるGEOSSの発展と,11月に開催されるGEOの本会合への対応について,国際機関から事前に提供のあった資料を用いながら意見交換を行いました。こうした議論の結果については,今後のGEOへの対応に生かしていきたいと考えております。
以上でございます。
【大垣部会長】  ただいまのGEOの作業部会に関する御報告について,御質問あるいは御意見はございますでしょうか。
それでは,次の議題3は,平成28年度「我が国における地球観測の実施計画」の改訂版についてであります。前回の部会での御意見を踏まえて,実施計画の記載項目の追加を行っていますので,事務局から報告をお願いいたします。
【直井地球観測推進専門官】  資料3をもとに説明させていただきます。「我が国における地球観測の実施計画」は,前回の部会でも紹介させていただきましたが,「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」に基づいて,各府省,機関が毎年策定して,本部会において取りまとめることとなっているものです。前回の部会で委員から頂いた御意見に対し,その部分を追記,修正をさせていただいたので,改訂版として今回御報告するものです。
主な修正内容は,5ページ目をお開きいただきまして,右上にデータに関する問合せ先とURLという欄を追加させていただきました。これは,このデータを利用する際の問合せ先やデータの利用条件を公開している場合は,そのURLなどを記載した方が利用者の利便性を図れるだろうという御指摘がございましたので,この行を追加しております。もう一つが備考欄になりますが,例えば同じ5ページの整理番号の3番では,国際連携状況が追加されております。これは各プロジェクトが国際社会でどのように位置づけられているのか,また,どのような国際的な連携のもとに行われているのかということも重要な情報なので,これについて記載を追加してはどうかという御意見を頂いたものについて対応したものです。
そしてもう一つが,同じ備考欄で民間との参画についての項目を追加しております。これは,各プロジェクトに民間がどのように関与しているのか,また,データの利用などに関して民間の関与を期待しているのか,というような状況を記載すると民間の方も利用しやすいという御意見を頂きましたので,備考欄に追加したものです。
修正,追加については以上になります。
【大垣部会長】  ありがとうございました。前回の委員の皆様からの御意見を反映した改正を行ったものでございますが,何か今の報告に関して御質問,あるいは御意見がありますでしょうか。
【春日部会長代理】  今の御説明に加えて,2ページと3ページに全体の一覧表をつくっていただいたのが大変わかりやすくなっていると思います。御説明の追加の部分と併せて本当に感謝を申し上げます。
【大垣部会長】  そうですね。大変わかりやすくなったと思います。
ほかにはよろしいでしょうか。実施計画の資料として大変良いものができたのではないかと思います。どうもありがとうございました。
それでは議題の4に移りたいと思います。今後の地球観測の推進に関する取りまとめの方向性についてです。本日の議題1で科学技術イノベーション総合戦略2016の報告をしていただきましたが,次の総合戦略2017に向けて,地球観測において取り組むべき事項を検討し,CSTIに報告することとしておりますので,前回に引き続き委員の御意見を伺いたいと思います。本日は,地球観測に取り組んでいる関係府省の方に御説明を頂くためにお越しいただいております。御協力に御礼を申し上げたいと思います。
それでは初めに,事務局から説明をお願いいたします。
【樋口環境科学技術推進官】  資料の4をごらんください。前回と前々回の部会では,資料4の項目にございますように,地球観測の重要性,データ利用の枠組み,民間企業等との連携,国際的な視点について議論を頂いており,そのときに頂いた主な御意見を記載しております。事務局では,10月3日に関係府省連絡会を開催いたしまして,地球観測に係わっている関係府省の方々の御意見を伺いました。そうしたところ,継続的な観測に対して,予算措置が大変厳しくなっているというコメントを多数頂きまして,これを踏まえ,継続的な観測がどのように社会の課題解決に役立つかを,各省庁から御説明を頂いてはどうかと考えております。
各省庁には,観測の概要と課題解決に対する効果を,特に観測事業の目的の範囲内での活用だけではなくて,それ以外の目的に活用される可能性や,この部会でまとめていただいた実施方針にある八つの課題のうちのどの課題解決に役立つかということについて,プレゼン資料をつくっていただいております。その中で,次期総合戦略に向けたアピールということで,この部会の取りまとめを考えた場合,第5期科学技術基本計画に掲げられているSociety5.0にどのように貢献するかということも大事ですので,こういったことも記載いただいております。
事務局では,継続的な観測の重要性について,これまで部会で議論いただいてきた地球観測の重要性や民間企業等との連携,それから国際的な視点等が大きく関係すると考えており,こういった視点も入れながら,継続的な観測の重要性を柱にCSTIへの報告をまとめていただければと考えている次第です。
本日は,総務省,林野庁,経済産業省,国土地理院にお越しを頂いております。また,資料の5-5で農林水産省から資料を提出していただいていますが,今回は予定が合わないということで,資料のみの提出になってございます。以上でございます。
【大垣部会長】  それでは各省庁の方々に説明をお願いしますが,質疑は後でまとめて行いたいと思います。
まずは総務省から御説明をお願いいたします。
【総務省】  総務省及び情報通信研究機構(NICT)でございます。資料5-1に基づきまして,総務省と情報通信研究機構の取り組んでいる雲・降水のグローバル観測に関するセンサの開発状況などについて御紹介したいと思います。
【情報通信研究機構】  それでは,情報通信研究機構から御説明させていただきます。まず観測の概要ですが,グローバルな気象・気候の監視や予測精度向上を目指して,以下の地球規模での雲・降水の大気環境の観測に取り組んでいます。
一つは,全球降水観測計画衛星(GPM)ですが,ここには二周波の降水レーダーが搭載されていまして,高精度で高感度な降水観測を行っています。このGPMは日米共同プロジェクトで進んでおり,主衛星は2014年2月に打ち上げられて,観測を行っています。観測データはJAXAとNASAの双方から一般に公開されています。NICTはJAXAと一緒にGPMのコアセンサである二周波降水レーダーの開発及びデータ処理アルゴリズムの開発を行っています。
もう一つ,雲エアロゾル放射ミッション,EarthCAREですが,これに関して,雲プロファイリングレーダーの開発を行っています。EarthCAREは日欧の共同プロジェクトで,衛星は平成30年度に打ち上げられる予定です。NICTは,これもJAXAと一緒にEarthCAREのコアセンサである雲プロファイリングレーダー(CPR)の開発,これは94ギガヘルツ帯を使いますが,CPRの開発とデータ処理アルゴリズムの開発を行っています。右の方にはGPMで観測された去年の台風の例が載っています。
これらのデータに関して,社会課題解決に関する効果ですが,まず地球の水及びエネルギー循環の重要な構成要素である地球気候変動の理解や地球温暖化予測のために必要不可欠と思われる雲や降水の全球分布を把握するという効果があります。それから,GPMで得られる雨の降水データは,全球の降水マップにして,これは3時間ごとの全球の降水マップが公開されており,天気予報や,特に東南アジアや南アジア域の河川の水資源監視,水質等の観点での国際的な実利用が始まっているというように聞いています。
関連する「今後10年間の我が国の地球観測の実施方針」の課題ですが,この降雨衛星に関しては,GPMの前身でありますTRMM(熱帯降雨観測衛星計画)と合わせますと,既に18年以上にわたって全球の降水変動を捉えているということで,こういったものの気候変動に伴う悪影響の探知や,科学の発展に貢献すると考えられます。もう一つ,こちらもGPMですが,複数の衛星を統合して作成する3時間ごとの全球降水マップの高度化にGPMが貢献しており,これも災害への備えと対応に貢献すると考えられます。
Society5.0への貢献については,これは少し変化球的なのですが,衛星降雨レーダーの開発で培われた技術は,今度は地上の降雨観測レーダー,高時間分解能で観測する降雨観測レーダーの開発にもつながっており,これらに関しましては,現在,日本で何台かのレーダー,世界の最先端レーダーが稼働を開始していまして,データに関しても既に気象情報提供スマホアプリとか,自治体ハザードマップとリンクしたゲリラ豪雨対策支援システム,これは自治体の防災の担当の部署と一緒にやっているような仕事ですけれども,こういったものに活用が始まっているということで,こういった観点で社会に展開されているというのが現状です。
以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
それでは次に,林野庁から説明をお願いいたします。
【林野庁】  林野庁から森林総合研究所の佐藤と申します。よろしくお願いします。
お手元の資料5-2をごらんください。御存じのように,森林というのは長寿命でありまして,特に多様性の高い熱帯林ではヘクタール規模の大面積試験地を長期にわたって観測することによって,森林群集の種の共存のメカニズム,これは多様性の維持機構に置き換えられるかもしれませんが,そして炭素動態を明らかにすることが期待されてきました。
森林総合研究所では,1980年代の中頃から,国内の森林を対象に長期大面積試験地を設定してモニタリングを開始してきました。このモニタリングは,環境省のモニタリングサイト1000やJaLTERという仕組みを用いて,現在も継続されています。この試験地設定で培ったノウハウを生かして,90年代初頭から東南アジアの熱帯林を中心に,長期大面積試験地を東南アジアの地元の大学や研究機関と共同で設定を進めてきました。これらの試験地を基盤として,今回御説明しております森林動態観測ネットワークということで,シベリアから熱帯域に至る多様な森林を対象にし,共通の計測手法を用いまして,森林動態及び炭素蓄積に関する調査を実施しているということになります。
この観測ですが,環境省地球環境保全試験研究費によりまして,平成21年から実施しております。この観測は森林を対象としまして,天然林は森林総合研究所,択伐や植林などいわゆる林業活動のある森林は国際農林水産業研究センターがそれぞれ担当しています。
お手元の資料の一番左に地図を示しておりますが,このように6か国14試験地でネットワークを構成しています。具体的にはロシア,モンゴル,カンボジア,タイ,マレーシア,インドネシアとなっています。これを見ると,温帯のところが抜けていますが,これは冒頭申し上げた,私どもが国内でやっている試験地のデータを用いることによって,温帯の部分は補完できるだろうということで,限られた研究資金の中で,このような温帯域が抜けるような形でネットワークをつくっております。
一番右の図は,長期観測から得られた炭素蓄積量の年々変動を示しております。最も古い試験地では,90年代から25年近くの計測結果がありますが,真ん中に示したような,いわゆる直径を図るという非常にローテクな計測を繰り返して得られたデータになります。このような計測手法を統一してやることが重要でして,これが推定精度の低減につながります。それらのノウハウは,緩和策の一つであるREDD+(レッドプラス)における森林炭素モニタリング構築に適用可能な測定手法の開発に貢献するとともに,我々日本や東南アジアを含めた研究者の能力開発の実施ということで,測定技術の普及を図っております。
なお,真ん中の写真の試験地ですが,6ヘクタールの試験地で6,000本の樹木があり,一本一本樹種を同定するとともに,次回の測定と寸分たがわぬところで測定できるように位置を付けたりとか,そういう工夫をしながら計測をしております。
また,これらの長期観測データは,2の社会課題解決の効果のところの中段ですが,今後10年の我が国の地球観測の実施方針の中で示される八つの課題の中では,2ポツに示された地球環境の保全と利活用の両立への貢献ということで,特に森林の現状把握及び変化予測精度の向上への貢献という課題の解決に貢献できるものと考えております。本観測による長期データは,エルニーニョ前後の成長量の変化,例えば乾燥によって枯れてしまう個体が増えるとか,そのようなものが具体的にモニタリングできています。
また,東南アジアの場合は,火災が森林に与えるインパクトが大きいのですが,火災後の種組成の変化も捉えており,炭素蓄積と多様性の関係など,様々な解析の基盤データとなっています。
このような形で,2ポツの最後に示しましたSociety5.0については,基盤データの提供ということで貢献できるのではないかと考えております。以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
それでは次に,経済産業省からお願いいたします。
【経済産業省】  経済産業省の豊川と申します。資料5-3に基づいて御説明させていただきます。南鳥島における微量温室効果ガス等の長期観測でございますが,経済産業省では,産総研の委託研究としまして,気象研究所と共同で,南鳥島における多成分連続観測によるバックグラウンド大気組成変動の高精度モニタリングを行っております。
本研究は,平成26年度から平成30年度までの5か年計画で行っておりまして,日本で唯一の温室効果ガスバックグラウンド全球観測所である南鳥島観測所において,酸素濃度と二酸化炭素,同位体の観測を行っております。そのほか,気象研では水素濃度やラドン濃度の観測を行っており,それらのデータを組み合わせています。南鳥島の観測につきましては,平成26年度以前,前身の研究があり,平成23年度から実施しております。
また,酸素濃度観測は,国際単位系(SI)の国家標準に対してトレーサビリティがある標準ガスの開発も併せて推進しております。予算は,環境省の地球環境保全試験研究費により実施しております。
次に,社会課題解決に対する効果でございますが,本研究により,北半球中緯度を代表するバックグラウンド清浄大気の温室効果ガス濃度の変動要因を明らかにすることが可能になることが期待されております。得られたデータを広く公開し,活用されることにより,人為活動や気候変動に伴う温室効果ガスの循環の変動を早期に検出することが可能となり,温室効果ガス濃度や気候変動の予測の高精度化等に資するものになると思われます。
また,標準ガスの開発は,観測分野と計量標準分野間の連携のモデルケースとなるものであり,地球観測データの標準化に資するものになると思われます。
社会課題解決に関しまして,この研究の成果は,今後10年の我が国の地球観測の実施方針の中で,丸1の気候変動に伴う悪影響の探知・原因の特定に貢献し得るものと考えております。
また,観測技術,観測データ及び解析結果につきましては,Society5.0の超スマート社会サービスプラットフォームの一躍を担う地球観測情報プラットフォームの構築に貢献し得るものと考えております。
本日は研究者が都合により出席できませんでしたが,本研究に携わっている研究者からのコメントを御紹介させていただきます。本研究で得られたデータについては,気候変動の予測や温暖化対策の策定のために,様々な分野で活用できるデータセットとして取りまとめていきたい。このためには,長期間にわたる質の高いデータセットが必要であり,様々な地点において連続して測定が可能となることが望まれている。また,観測技術解析手法の開発や改良,新たな標準ガスの調整法の開発など,データの標準化,そして観測の長期的展開等に関する研究を今後も継続して取り組んでいくことが重要と捉えております。
以上で,経済産業省の説明を終わらせていただきます。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
それでは次に,国土地理院から御説明をお願いいたします。
【国土地理院】  それでは,国土地理院から説明をさせていただきます。今御説明がありました三つの機関とはかなり毛色の違うもので,より基盤的な部分の観測となります。
地球観測といいますと,基本的には,いつ,どこで,何が,どのようになっているのかを見るというものかと思いますが,そのどこでの部分を現していくことが必要な要素となってきます。先ほどの三つの機関の説明の中でも,それぞれの資料に地図が載っていたかと思います。そのように地図で現すために必要な要素として,どこでというのを見ていくわけですが,そのときに観測データをまず緯度と経度でひもづけていると思います。この緯度と経度で記述するために必要な事項として,まず地球上に緯度と経度の座標系を決めるというのが一つあります。それから,その上で国内のどの地点がどの緯度,経度であるかをきちんと決めた上で,その上に統計情報を載せていくといった作業が必要になってきます。前半で申しました国内の地点の緯度,緯度を常に把握しているというのが今回御紹介する内容となっております。
では,まず資料5-4,実施計画407の超長基線電波干渉法(VLBI)から御説明したいと思います。この原理を簡単に申しますと,宇宙のはるかかなたに電波を発信する星があり,それを地球上の離れた地点で観測しています。そうすると,当然電波が到達する時間が違うので,この時間差から距離を求めるのがVLBIの原理になります。これは非常に精密な距離の計測ができまして,数千キロくらいの距離を数ミリ程度の誤差で求めることができます。
これを使うと何ができるかと申しますと,地球上の大陸の動きを見ることができます。例えば,地球上はプレートに分かれて運動していますので,そのプレートの運動が何センチぐらいで動いているといったことがわかるようになります。それから,この手法は地球の回転の状況も知ることができまして,実は地球は常に一定の速度で回転しているわけではなく,ときどき揺らいでおります。その状況を観測して,天体の時刻と通常我々が使っている時刻との間にずれが出た場合に,うるう秒の挿入があるかと思いますが,これに貢献しています。ときどき59秒とゼロ秒の間に60秒が入っているといったニュースをごらんになったかと思いますが,実はそういった調整にこの手法が貢献しています。
裏のページは電子基準点測量になります。こちらは,上空を衛星が飛んでおりまして,この衛星の信号を受信することによって,位置を押さえていくというものです。これは国内,例えば私どもの方で今1,300点ほどこの観測局を設置しております。この観測局は常時観測しており,1秒ごとにデータを出しています。そのデータを解析すると,その地点の緯度,経度の値が出てきます。これは通常そんなに動くものではございませんので,常にそのデータを出し続けて,このデータと,もう一つ新しくどこか位置を求めたいところに同じようなアンテナを置いて観測をすることによって,精密な位置を求めることができるというものになります。
これは,ずっと観測をしていくと何がわかるかといいますと,例えば地震が起きたとき,あるいは火山地域だと,ときどき地面が動いていくことがわかります。この動きを見ることによって地殻変動の様子を知ることができる。例えば有珠山のケースだと,噴火前に地面が動いたということがわかり,それが噴火の予測につながったという事例もございます。このような形で地殻変動などにも応用ができますし,常時出しているこの観測データは,一般に公開されていますので,それを使って測量に役立てていただいたり,あるいはナビゲーションなどでリアルタイムに使っていただくといった形の応用がされているところです。
この資料ではSociety5.0との関連については明確に書いてございませんが,これはほかのものと若干違う性質のものでありまして,資料1のSociety5.0の説明の中にお皿みたいな図があったと思います。今回の観測については,どちらかというとお皿を載せている台だと思っていただければと思います。その皿がぐらつかないように,しっかりとした台を置く必要があります。この観測は,それぞれ10年から20年近く行っているものですが,技術が進歩することによって,様々な新技術が出てくると思うのですが,そういった方策を支える立場にあるものと御理解いただければよろしいかと思います。
国土地理院からは以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
それでは,4名の方に御説明を頂きましたが,これまでの説明に関しまして,御質問,あるいは御意見がありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
【中田委員】  林野庁の御説明について,国際的なネットワークをつくられているということで,環境省の資金で平成21年度からということでしたけれども,そのネットワークの構築とか,同じデータを取るための能力開発が重要だと思います。その話もされていましたが,それも環境省のお金で賄われているのでしょうか。
【林野庁】  ネットワーク構築と書いてありますが,調査に携わっているのが森林総研のほぼ同一の人物が試験地を回っているという形でございまして,我々を介してカウンターパートが連携をするという形になっています。平成21年度からは環境省の資金提供を受けているのですが,それ以前からいろいろな形で細々と続けており,まだうまく繋がっているというところです。
【大垣部会長】  ほかにはいかがでしょうか。
【高村委員】  ありがとうございます。全体を通して2点だけ申し上げたいと思っております。私自身は,観測されたデータを使って研究をする,あるいは政策的な議論をするという場合,ユーザ側の立場からの発言になりますけれども,一つは,先般の地球観測の実施方針の議論の中でも出てまいりましたが,これまで以上に観測,そして観測データが社会に具体的に見える形で問題解決に資するという事例が増えてきているように思います。
先ほど内閣府から御紹介があったような,適応策に係わるところはもちろんそうですが,森林総研からありましたREDD+につながるような森林の蓄積量の観測ですとか,あるいはリモートセンシングなどを使って,途上国での気象による農作物の変化というのを観測することで保険の開発につなげるとか,あるいは東北電力が既にやられていると思いますが,気象観測やその観測を用いた予測によって電力の受給調整をするといったような形で出てきているかと思います。これまでの主な御意見の中で既に議論があった点かもしれませんが,観測の重要性はもう言うまでもなく,それがどう社会にきちんと伝わるかという意味と,実際にそれが社会に貢献をしているということは,イコールそれを支える民間との協力が可能ということだと思っております。具体的なコラボレーションの取組,事例を作るということをやってみてもいいのではないかというのが一つでございます。
二つ目は,1点目と逆のことになるかと思いますが,先ほど経産省からあった点かもしれませんが,やはり観測データというのは,私のような素人から見ても,長年の蓄積があってこそ意味が出てくるものでもあると思っていまして,どうしてもプロジェクトベース,あるいは事業ベースでやっていったときに,継続性,特に基礎的な観測をどう確保するのかが,以前から議論になっている点だと思います。これは観測に実際係わっている先生にもお投げしたいですし,文科省もすごく苦労されているところだと思うのですが,やはり何らかのきとんとした財政的な継続性を担保する仕組みが必要ではないかと思います。これは長期的な課題かもしれませんが,検討し始めなければいけないのではないかと考えております。以上です。
【大垣部会長】  貴重な意見をありがとうございました。四つの省庁から御説明いただきましたが,その質問に限らず,継続的な観測の必要性,あるいはSociety5.0への貢献なども含めて御意見をいただければと思います。特に前回御出席いただかなかった委員から御発言を頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。
【赤松委員】  私は民間企業の立場でこちらに参画させていただいておりますが,今,高村委員からお話がございましたように,やはり社会課題の解決への道筋をどうつないでいくのかということと,その中に我々のような民間をどのように関与させ,協力をさせていくのかという部分が重要なポイントではないかと思っております。
まず,社会課題という部分にしっかりとつないでいく上で,地球観測の位置づけをはっきりとさせていくことが重要ではないかなと思っています。今日御説明いただいた中に,例えば河川の水資源管理,農作物の生産,これは森林総研から発表されたものですが,こうした大くくりのテーマからもう少し具体的な課題にブレークダウンしていく必要があるのではないかと思っております。
その上で,課題を解決するために,例えば産官学の連携の体制をどのように作っていくかということを議論していく必要もあるのではないかと思っています。前回も申し上げましたが,コペルニクスという欧州で行われている事例を参考に,社会課題解決のためのサービスの構築を産官学が連携してやるという仕組みをつくっていくのも一つの解決策になるのではないかと思います。そういった仕組みをしっかりと作っていくこともこれから議論すべき重要テーマではないかと思っております。以上でございます。
【大垣部会長】  ありがとうございます。
【佃委員】  先ほどの高村委員の御発言に加えてですが,観測データが民間に利用され,自分たちのビジネスに利用してきたというところ,なかなか我々も知らないところがあるように思います。先ほど保険にも利用されているという情報は,今日のような各省庁の御説明だけではなかなか情報が集まらないような気がしています。ある意味で社会に少しずつ実装されていくというプロセスが,この委員会の中でも見えてこない。それが共有できるようになるといいのではないかと思いました。
社会にどんどん使っていただいて,それをビジネスなり社会で回っていくようになると,当然めぐりめぐって観測の継続性が必要だということになってくるわけで,その辺もうまく情報収集を続けていただければいいと思います。以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございます。
【春日部会長代理】  赤松委員がおっしゃったことと全く共感して同じことを申し上げたいのですが,今,佃委員や高村委員からお話がありましたように,データの利活用は大変進んできており,社会にもだんだん見えるようになってきている。もちろん,もっと見せ方を工夫するというところは御意見のとおりだと思いますが,ユーザや,特に民間企業が観測の計画段階や実施段階からもっと参加できるようになると,その利活用への道筋もよりスムーズになるのではないかと思います。
地球観測に共通するFuture Earthの各プロジェクト,これはその科学運営委員会のメンバーに必ずステークホルダーを入れるようにということで,メカニズムを規定しているわけです。そういう仕組みを最初から導入することによって,ユーザの声を地球観測の計画や改善の段階から組み入れていくことが重要ではないかと思います。
これは全般的な意見で,一つ素人的な質問をさせていただきたいのですが,経済産業省からの御説明のところです。南鳥島はバックグラウンド全球観測所の一つということなのですが,これはハワイで観測されているようなCO2の継続観測と同じような位置づけで全球のバックグラウンドデータとして使われるのでしょうか。
【経済産業省】  ハワイの観測については情報を入手していないのでわかりませんが,ハワイとの連携をしているかについては確認してみたいと思います。
【大垣部会長】  環境省もバックグラウンドを測っていますよね。波照間と,北は北海道の知床で計っていますけれども。
【村岡委員】  ありがとうございます。長期観測の重要性は確かに我々はよく認識しているけれども,それがどう使われて,どう大事なのかということのアピールが必要だということですが,もう一つ,今日のお話を伺っていて感じましたのは,例えば今幾つか異なる観測デザインがあり,それらを担っている観測機関や研究所が様々あるわけですけれども,何かクロスカッティングな要素があって,それを連動させながら長期観測をデザインし,今後も継続していくということを当事者が考え,また部会からもエンカレッジしていくというようなことがあるとよろしいかと思いました。
一例では,森林総研が御紹介になった炭素動態観測に関すること,これは生態系の炭素循環という切り口と,生物多様性の一次生産という切り口があります。この炭素に注目して,経済産業省や環境省が進めている二酸化炭素の観測にも関係していきます。同時に,生態系で起こる光合成や呼吸という炭素吸収や放出に係わる過程は気象条件に影響を受けますので,地上あるいは衛星による気象環境の観測データともつながってくるわけです。このようにいろいろな分野からの観測データをつないでいって,もちろん研究者はよくわかっている部分はありますけれども,わかりやすくストーリーを組み立てていくと,より分野横断的なクロスカッティングな要素を持った長期観測,モニタリングというものの重要性をアピールしやすくなるのではないかと感じました。
また,ユーザには研究者も含まれると思うので,そういった意味でも,ユーザも広く組み込んで考えていくとよろしいかと思いました。以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございます。分野横断的なデータの利用,あるいは社会への応用というようなことだと思いますが,ほかにはいかがでしょうか。
【寳委員】  自然災害への対応ということで少しお話しさせていただきますが,昨年,仙台防災枠組が策定され,SDGs(持続可能な開発目標)やパリ協定もあるのですが,2030年をターゲットイヤーとして,特に仙台防災枠組では災害リスクを把握することが優先行動の1番目に挙げられているわけです。日本の得意分野としてはALOS(陸域観測技術衛星「だいち」)や「ひまわり」といった災害監視衛星があるわけですから,そういったものを使って,いわゆる日本国内だけではなく,アジア地区で発生し得る広域波及災害といいますか,津波や火山灰の拡散,台風,サイクロンといったいろいろな問題があると思うのですが,そういった広域波及災害で国際貢献をしていくことが重要だろうと思っています。したがいまして,そういった仙台防災枠組という国際合意を強く意識したような形で,考えていっていただきたいと思っています。
それから,超スマート社会,Society5.0でありますが,災害の分野からいいますと,賢く災害に対応するということで,せっかくの地球観測,これは人工衛星だけではなくて,地上観測や地震観測,水文,気象観測にせよ,すばらしいものを持っているわけですから,そういったものを使って,賢く災害に対応していく。そういった分野で世界を先導していくような施策を進めていただければと思っております。以上です。
【大垣部会長】  災害については,前回までの議論でもあまりクリアには出ていなかったので,御指摘のとおりだと思います。
申し遅れましたが,今日各省庁の方に御説明いただきましたが,ほかの省庁に関しても,次回,御説明を頂くことになっておりますので,そのときまたいろいろ事例が出てくるかと思います。ほかにはいかがでしょうか。
【渡邉委員】  しばらく欠席が続いたので,議論の文脈を把握できてないところがあるかもしれませんが,御了解いただきたいと思います。
一つ目は,今,寶委員も御指摘になったところで,今更申し上げるまでもないのですが,先ほどの資料4の取り組むべき事項の4の枠組みのところは,SDGsだけが具体的に書いてあり,昨年合意された仙台防災フレームワークとパリ・アグリーメントの枠組みはものすごく影響してくると思うので,それとのかかわりは改めて確認してもよいと考えます。これがまず一つ目です。
ふたつ目は,先ほどから皆さんがおっしゃっていますが,長期的に地道に測ることを継続することの重要性は前期からも随分議論してきたところで,資源や経済的な条件で当面フォーカスを当てるべき喫緊の課題に関わるところを重点的に進めることは妥当と思うのですが,今まで当たり前として扱われ,これからもずっと測っていかなければいけないところへのケアを忘れないようにしなければならないと改めて申し上げたいと思います。
今日も森林での観測が話題になりましたが,森林でも温暖化や炭素,生物多様性に関わる最近の課題がありますけど,そもそも森林の状況を把握すること自体がとても大きな課題になっていると思いますので,そういう視点での継続が重要だと思います。私の専門に近い農地に関わることを申し上げたいと思います。例えば先ほど紹介された重きを置く施策でも,エネルギー,食料は一番初め出てきますし,プラットフォームでも農地に関わるところは,気候変動絡みですけど,かなり上に書いてあります。日本の農地をめぐる状況は大きく変わろうとしていて,生産主体の変化や農家の高齢化と減少などに係わりますが,農業の仕組みを国全体として大きく変えようという動きの中で,農地の状況を把握する地道な作業がこの一環としてあってもいいと考える次第です。
わかりやすくまとめられた実施計画でも,耕作放棄地の情報ははっきり書いてあるのですが,それ以外の基本的なところもきちんと把握すべきです。基本的に農地は私有地であり,いわば私的経済活動の場所ですが,公的資金も大きく投入されているので,そこでの情報の把握は重要で,更に先ほどから議論になっているように,こうした情報を使った新しいタイプの農業企業家もたくさん出てきていることもあります。そのような文脈の中で,地道に従来から続いていて,あまりケアされてないところへの注視を忘れないようことが大事だと改めて申し上げたいと思います。農水省から提出された資料について改めて御説明いただくのであれば,そのような状況をも御説明いただけると有り難いといます。以上です。
【大垣部会長】  私も同じような感じを受けていまして,基盤的な,今言われたように農業,森林にしろ,地球観測の基本データみたいなものは,国勢調査のように決してやめるわけにはいかなので,積極的にこういう場で入れておく必要があるかもわかりませんね。
【上田委員】  各省庁からいろいろと御説明いただきましたが,健康分野は比較的利活用の部分が余り記載されていないというのが少し気になった点です。世界的に見ると,健康影響評価の分野には,こういった地球環境の観測データが用いられているということを考えますと,今後の日本においても,今述べられている以外のいろいろな分野に利活用されているということは私もこの部会に出てわかるようになりました。今までに見過ごされていた分野,例えば健康の分野などについても取組を進めるような何かがあればいいというように感じた次第です。
実際にはなかなか結びつきづらいのですが,健康の分野で言うと,例えば医療計画や病院の配置とかに関して,疾患について考える上で,例えば集中豪雨の気象情報を使うときに,そういった健康影響が現れる。そうしたら,それを自治体で共有するだけではなく,保険分野の人にも情報があればアイデアが生まれてくるのではないか,そういった利活用の方法が出てくるのではないかといったこともあります。今は比較的連携がしやすい分野の情報交換は進んでいると思うのですが,それ以外の分野にも広げることも重要だと思うので,そういった取組が進めばいいと考えております。
【大垣部会長】  ありがとうございます。
【中田委員】 先ほど高村委員から保険の話がありましたが,JAMSTEC(海洋研究開発機構)ではDONET(地震・津波観測監視システム)で地震の観測をしていますよね。それで観測された音のデータを使って,鯨の回遊や分布に応用するという試みが,CREST(戦略的創造研究推進事業)の生物多様性領域の中で技術開発されています。今まで目的とされていたデータとは全然違う使われ方をされている例だと思うのですが,今日の実施計画の中で,一覧表になってすごく見やすくなったと思いますが,更に細かいデータを使った例が少しずつでも発信されていくと,思いもよらない使われ方というのが出てくるのかなと思って聞いておりました。以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございます。
【佐藤委員】  私は,人工衛星による地球の環境観測について一言申し上げたいと思います。どの国も非常に経済的に厳しい状況にある中,単独の国だけで全てを観測しようというのは困難な時代になってきています。したがって国際協力が非常に重要になってきているのですが,それが現在余りうまくいっていないのではないかと懸念しております。
私の専門は大気で,オゾン層なども専門の一つです。昨年のオゾンホールは過去3番目ぐらいに大きくなっており,オゾンホールの問題は解決したかに思われていますが,現実はまだ出現しています。オゾン層を調べるためには,オゾン破壊や生成の化学反応にかかわるいろいろな微量成分を同時に測る必要があります。それらは,現在,衛星で観測されておりますが,数年後にそれがなくなる可能性が非常に高いと言われていて,世界中で研究者は危機感を持っています。アメリカやヨーロッパが頑張ってくれるだろうと思っていると,結局,どこも上げていないというような,そういう状況に陥る危険性があるわけです。これは,今後,オゾン層に異変が起こったときに,その原因を突き止めるためのデータがないという状況となることを意味しています。
このような状況の中で,日本がどういう役割を担うべきかという議論が,国を超えて行われる必要があり,日本の衛星観測を担っている情報通信研究機構やJAXA,環境研などは,国際的な場においてどんどん発言していっていただきたいと思っております。
もう一つ申し上げたいのは,衛星観測に関しては,一朝一夕に打ち上げるというわけにはいかず,最低でも5年かかると言われていることです。つまり打ち上げから5年前倒しで計画を進める必要があり,そこには人材育成や機器開発等いろいろ関わってきますので,経済的な担保という中に,このように長期的なビジョンを入れていただく必要があります。少し難しい政策になると思うのですが,是非その辺を認識していただき,進めていただきたいと思っております。以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございます。衛星の打ち上げには時間がかかるわけで,それを担う組織がきちんとないといけなくて,いろいろな研究所が協調していかないといけないという面もあります。
【吉村委員】  衛星の国際的な調整についてお話が出ましたので,一言申し上げておきますと,確かにそういう点がございまして,各国とも継続性が大事である,そういうクリティカルな観測が大事であるというのはもちろん認識しておりまして,それについてどこが欠損するというような話は出ております。ただ,残念ながら各国も予算的な制約が厳しいところがございまして,衛星を提供しようという形になかなかならないというのが現状でございます。もちろんその衛星がいろいろな形で使っていただけるということでは,最近特に衛星のデータの信憑性も上がってきているので,特に国が行政的に使うというのを,具体的に宇宙とか環境という形ではなくて,違う分野で,それぞれの国の施策の中で反映していただくというようなことが,衛星を使って,それで何かを実現するという話として出てくるのが大事だと考えております。今,各省や各研究機関の方々と,いろいろな政策に書き込みができないかというのを協議させていただいております。
そういう形で書き込まれると,それに対する予算ができて,JAXAとして,宇宙機関としてやれることも固まり,またそれをもって相手国のカウンターパートに,我々はこういうことをやるから,そちらの方でこういうことをやってくれないかというような協議もしやすくなってきますので,そういうことも考えられたら良いのではないかと考えている次第です。
【大垣部会長】  ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
【河野委員】  全般的なことなのですが,これから先,今後の地球観測において取り組むべき事項を取りまとめていくと思いますが,資料4の1ページ目の最初のポツ,我が国としてしっかり守っていくことを考えるべき,これは実態を非常に色濃く反映しているコメントだと思いますが,先ほどから伺っていると,観測は必要だという方ばかりで,私の専門分野に近いところでも,例えば国連関係だと,ワールド・オーシャン・アセスメントと言って,海洋の環境状況を国連加盟国全体でアセスメントしようという活動の第2ラウンドが始まりますし,生物多様性ではIPBESといったところで基本的には観測データがもとになって議論が進んでいくわけです。
それから,先ほど出ていたパリ協定の1.5度なのか2度なのかはありますが,1.5度に抑えようとしたら,それは精緻な予測が必要になりますし,そのためには観測が必須なのは言うまでもなく,また,二酸化炭素が原因であるなら地域別の排出量の把握も必要になってくるわけです。
ほかにも,例えば海底資源開発においても,その開発とともに環境を保全しなければいけないので,その調査が必須だというようなことが言われているわけで,これから先,何かをしようと思ったら,海洋観測があることが前提になってくる。つまり,少なくとも,例えば外交戦略にしたところで,そういう観測をきちんとやっていないと発言力がなくなっていくようなことが考えられるわけです。したがって,守っていくのではなくて,これはやっていかないと,今後,日本としては立場がないというような強い論調を最初に押し出していくことが気概を示すという意味でも大事だと思いました。
【大垣部会長】  ありがとうございます。そのとおりだと思います。
【若松委員】  若松でございます。ICTの立場から一つコメントさせていただければと思います。冒頭に御説明いただいたSociety5.0のプラットフォームの話は非常に意義のあることですし,どんどん進めていただきたいと思うのですが,プラットフォームと,その上に載るシステムの話を並行してやろうとすると,なかなかうまくバランスがとれない。プラットフォームが先か,システムが先かという非常に難しい問題で,うまくバランスがとれないことがあるので,かじ取りが非常に重要だと思っております。
一方,地球観測推進部会に非常に係わりのあるDIASにつきましては,既にもう実績があって,データもあればアプリケーションもあるというような状況ですので,このDIASの取組をうまく政府全体の取組にもアピールしていって,地球観測の関係のものから良いプラットフォームの仕組みが発信できればいいのではないかと感じました。
【大垣部会長】  ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
いろいろな御意見を伺いましたが,本日の御意見を含め,CSTIの環境ワーキンググループへの報告資料を作成したいと思いますので,事務局は部会終了後,速やかに骨子案を作成してください。委員の皆様には,骨子案を事務局からメールでお送りするようにいたしますので,御意見をいただけますよう,是非よろしくお願いをいたします。
次回の部会では,本日お越しいただいた以外の省庁からの御説明を頂くとともに,委員の皆様の意見も取り入れた報告案を事務局において準備し,審議したいと思っておりますので,是非御協力のほどをお願いいたします。
そのほかの議題について,何かありますでしょうか。特にないようですので,事務局から連絡事項をお願いいたします。
【直井地球観測推進専門官】  事務局から連絡をさせていただきます。本日の議事録につきましては,後日,メールで委員にお送りしますので,御確認いただいた後,文部科学省のホームページで公表させていただきます。
次回第8回の部会は12月16日金曜日を予定してございます。開催案内につきましては,改めて御案内させていただきます。以上です。
【大垣部会長】  以上をもちまして,地球観測推進部会の第7回会合を閉会といたします。本日はどうもありがとうございました。

お問合せ先

研究開発局環境エネルギー課

メールアドレス:kankyou@mext.go.jp

(研究開発局環境エネルギー課)