第6期地球観測推進部会(第5回) 議事録

1.日時

平成28年2月4日(木曜日)13時00分~15時00分

2.場所

中央合同庁舎第4号館全省庁共用1214特別会議室

3.議題

  1. 全球地球観測システム(GEOSS)に関する最近の動向について
  2. 「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」に関する取組について
  3. 地球観測推進部会の今後の進め方及び「GEO戦略計画推進作業部会」の設置について
  4. 今後の「我が国における地球観測の実施計画」の取りまとめについて
  5. その他

4.出席者

委員

大垣部会長、春日部会長代理、赤松委員、岩谷委員、上田委員、甲斐沼委員、河野委員、小池委員、佃委員、中田委員、浜崎委員、箕輪委員、村岡委員、若松委員

文部科学省

田中研究開発局長、森大臣官房審議官(研究開発局担当)、長野環境エネルギー課長、樋口環境科学技術推進官、直井地球観測推進専門官

5.議事録

出席者

【関係省庁】中島内閣府参事官



【大垣部会長】  ただいまより,科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会地球観測推進部会の第6期第5回会合を開催いたします。初めに事務局から出席者の確認と資料の確認をお願いいたします。
【直井地球観測推進専門官】  初めに,環境エネルギー課に人事異動がございましたので御報告させていただきます。2月1日付けで地球観測推進専門官の西川が異動となりまして,私,直井が着任しております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
本日は14名の委員の皆様に御出席いただいており,過半数に達しましたので,部会は成立ということになります。
なお,本部会は部会運営規則により公開となりますので,御承知おきください。
配付資料は資料1から資料4,参考資料1となっております。
【大垣部会長】  それでは早速議事に入りたいと思います。議題1は,全球地球観測システム(GEOSS)に関する最近の動向についてであります。初めに事務局から,昨年9月に開催された第8回GEOSSアジア太平洋シンポジウムの開催結果,11月に開催された地球観測に関する政府間会合,GEO閣僚級会合等について報告をお願いします。その後,村岡委員から2月2日,3日に開催されましたGEOプログラム委員会の結果について説明をお願いしたいと思います。
【樋口環境科学技術推進官】  資料1に基づいて説明をさせていただきます。第8回GEOSSのアジア太平洋シンポジウムの開催の概要でございますが,期間は9月9日から11日で,最終日は午前中までということで約2日半かけて中国の北京で行いました。
アジア太平洋におけるGEOSSの普及,推進に向けた情報交換の場を提供するということで,同地域における研究者コミュニティを育成し,地域の特有の環境問題等への共通理解を深めるのが目的でございます。参加者はアジア太平洋の国を中心に28か国と3国際機関で,人数は約194名です。
結果概要については,最初に各国におけるGEOSSの実施報告をしていただきました。バングラデシュ,インド,ミャンマー,パキスタン,フィリピン,スリランカ,ベトナムといった国と3機関からの発表を受けました。分科会を六つ設置し,テーマごとに議論しました。分野は災害監視,データ共有・GCI構築,農業と食料安全保障,生物多様性観測網ネットワーク,アジア水循環イニシアチブ,全球炭素観測の六つで,我が国の研究者と共催国の中国側からの研究者,それから第三国の方の3名に共同議長を務めていただきました。その後,分科会の共同議長により,次期のGEOワークプログラムへの貢献という観点から,地球規模課題,持続可能開発目標,気候変動の適応と緩和,仙台防災枠組のための取組,データ共有に関する課題についてパネルディスカッションを行いました。次のシンポジウムは2017年の初めに日本で開催することを予定してございます。
続きまして第12回のGEO本会合と閣僚級会合の結果でございます。6ページに本会合の開催概要を書いております。11月11日と12日にメキシコのメキシコシティで開催され,参加者は,共同議長国の中国,EU,アメリカをはじめとする54か国と関係の国際機関でした。
一番大きな話としては,「GEO戦略計画2016-2025」と参照文書の承認であり,参加国と参加機関から,この戦略計画を起草した作業部会のメンバーへ謝意と戦略計画の支持の発言がございました。それから,これまでのGEOの10年計画でも社会利益分野(SBA)は入っておりましたが,新しい戦略計画でもSBAが位置付けられました。これについては8分野で気候変動(Climate Change)は入っていませんが,南アフリカ,ジンバブエ,EC,クロアチア,WMO,ヨーロッパの中期予報センター,それからCOSPARから懸念が表明されまして,気候変動は8分野に横断的なものとして非常に重要であるという部分をより強調する形で修正が行われ,計画は承認されております。
日本からは以下の発言をしております。一つはIPWGの貢献に感謝するということ,その成果である戦略計画を支持すること,それから参照文書につきましては,評価や指標は書かれておりますが,これについて,新しい体制でできるプログラム委員会で引き続き議論してほしいということです。
また,プログラム委員会の委員の選任が大きな議題としてございました。新しい戦略計画に基づいて執行委員会の下に,専門的なことを議論して本会議にインプットをする役割で設けられた委員会でございます。委員の募集をした結果,参加国から15名,参加機関から9名の推薦がありました。規定上は,参加国と参加機関のそれぞれから最低40%は構成員に入るようになっていますが,現状はその要件が充足されていないため,この時点で候補になった人全員の就任が承認され,引き続き推薦を受け付けるという形で会議は進みました。我が国からは沖大幹東京大学教授と村岡先生の就任が承認されています。
その後,本会議が終わった後に参加国,参加機関から推薦を受け付けました。今回は移行期間ということで,最終的にやや人数はオーバーしていますが,推薦された人は全員就任するという形になっております。アフリカからは6名,アメリカから5名,アジアから4名,CISからは入らず,欧州から7人です。今回のプログラム委員会の委員の任期は1年で,次の選出のときに人数の絞り込みをすることになっております。
三つ目はステークホルダーとの連携計画です。これについては,アメリカが強く提案してきたという経緯があり,本会合の場でも提案がございました。アメリカの提案は,GEOとの連携を希望する民間企業のために「コーポレートパートナー」という新たなカテゴリーを創設してはどうか。このコーポレートパートナーは,相互の利益に基づいて,正式な協力関係をGEOへのコミットメントにより構築し,全てのパートナーに対して平等な機会を提供する構想であるという提案でございました。これについては,議論を継続するという扱いになっています。
またオーストリアから,様々なステークホルダーとの連携が重要であるということ,GEOが持続可能な開発目標(SDGs)に貢献することが重要であるという発言がございました。我が国からは,SDGsのフォローアップとレビューにおいては,国際機関のようなステークホルダーとの連携が重要であり,GEOのConvening Power,すなわち招集力の発揮に期待するということを発言しています。
また,執行委員会の委員ですが,コーカス会合で決めて本会合で報告される仕組みになっております。次期の執行委員会では,アジア・オセアニア地域については,中国が引き続き共同議長国を務め,オーストリア,韓国,それから日本が引き続き執行委員会の委員を務めることになっています。
今後の予定は,3月8日から9日,7月6日から7日に執行委員会があり,11月8日から10日に執行委員会と本会合がロシア・サンクトペテルブルクでございます。プログラム委員会については,昨日一昨日と開催されておりまして,その後も開催が予定されております。
続きまして,メキシコシティで開催された閣僚級会合の開催概要でございます。資料の12ページに記載しましたが,宣言文の採択が一つ大きな話としてございました。「GEOSS10年実施計画」のこれまでの成果を評価することと,2025年に向けてGEOSSの構築を継続すること。GEOの戦略計画を承認することとした「メキシコシティ宣言」が紹介され,全会一致で採択されております。
日本からは冨岡文部科学副大臣に出席していただき,GEO戦略計画は本部会でまとめていただいた「我が国の今後10年の地球観測の実施方針」と同じ方向性にあるということ,この「メキシコシティ宣言」を支持するということを発言してございます。
各国のステートメントの機会がございましたが,日本のステートメントについては冨岡副大臣から表明していただいております。我が国のGEOSSへの貢献ということで,一つ目は課題の解決に貢献し得る地球観測データの取得,それから世界各国との共有ということで,GOSAT-2,GCOM-Cの開発,打ち上げ,運用でありますとか,極域観測,現場観測の実施,DIASのGCIの接続継続といったことを発言しております。また,地球観測データの課題解決への利用の一層の推進として,地球観測データを有用な情報に変換するDIASの機能の発展といったことを発言してございます。それから,GEOSSの普及及び推進への貢献に関しては,GEOSSアジア太平洋シンポジウムの開催の継続などを発言しております。次の閣僚級会合は,3年後の2019年に開催する予定になっております。
次は,承認される戦略計画の概要ですが,ビジョン・ミッションはこれまでと変わっておりません。引き続き,人類の利益のための意思決定や行動が,調整された包括的かつ持続的な地球観測及び情報に基づいて行われる将来を実現すること,そのためにGEOはGEOSSを構築すること,地球観測データと情報の需要と供給を結び付けることがビジョン・ミッションです。
ガバナンスについては,閣僚級会合をトップにして,本会合,執行委員会があります。また,新しくプログラム委員会を設立して,ワークプログラムの策定,実施状況の監督を行うことになっています。プログラム委員会は参加国と参加機関が推薦する専門家で構成するもので,国だけで構成されている執行委員会とは性格が違うのが特徴です。
社会利益分野は八つでございまして,生物多様性と生態系の持続可能性,災害強靭性,エネルギー・鉱物資源管理,食料安全保障・持続可能な農業,インフラ・交通管理,公衆衛生監視,持続可能な都市開発,水資源管理でございます。これらに横断的なものとして気候変動が記載されております。
実施のメカニズムですが,これまでGEOの下で行われる活動は全てタスクと呼ばれていましたが,それを四つに分類しております。一つは基盤タスクで,主にGEO事務局が調整する活動です。二つ目はコミュニティ活動で,ボトムアップによりコミュニティを構築して,コンセプトとアプリケーションを開発するものです。三つ目が,パイロットサービスやプロトタイプタイプサービスを実施するイニシアチブで,四つ目が,それから実用に近いサービスを提供するフラグシップです。こうした活動を複数年の計画としてワークプログラムを作成すること,また,地球観測が社会の需要に応えるためステークホルダーと連携するのが実施メカニズムです。GEOSSのインフラは観測システムと情報システムがあり,情報,GEOSSのデータ共有原則,管理原則を適用していくというものです。
私の説明は以上です。村岡先生,プログラム委員会の状況をよろしくお願いいたします。
【村岡委員】  村岡でございます。よろしくお願いします。沖先生とともに新しく立ち上がったプログラム委員会に日本から参加することになりました。今,推進官からお話がありましたとおり,一昨日と昨日,ジュネーブで第1回のプログラム委員会会議が開催されました。日本からはネット経由で参加しております。
今回の会議は,新しいGEO戦略計画が始まって1回目になります。また,今年はGEOのトラディショナルイヤーとして第1期10年計画から次の10年計画に転換することもあり,先ほどお話のありましたように新しい実施メカニズムが作られ,それを具体的な実施計画としてワークプログラムを作っていく作業がこれから9月まで進みまして,11月のサンクトペテルブルクでの会合に供されることになっております。
この第1回の会議で主なものとしては,まずは共同議長の選出,それから執行委員会への参加機関からのオブザーバーとなる3機関の選定,今後の仕事の内容とタイムラインを議論することがこの2日間の仕事でありました。
共同議長については3名決まっております。1人目はアメリカからのジョン・マツザキさん,2人目はヨーロッパ環境庁からのティム・ヘイさん,ティム・ヘイさんは新10年計画策定作業部会(IPWG)のメンバーでもありました。3人目は中国のリ・ペンデさん,この3名がプログラム委員会の共同議長として全体をまとめてくださることになっています。
次に執行委員会の参加機関のオブザーバーですが,一つはCEOS,二つ目がGOOS,三つ目がWMOです。この3機関が今後執行委員会でも情報を取得していくことになっています。
仕事の内容をきちんと議論するに当たって,策定されたGEO戦略計画の内容をきちんと全員が理解し,次のタイムラインに沿って計画を立てていきます。タイムラインとしては,次の3月の執行委員会までに今後9月までに終える仕事の計画をきちんと上げることがあります。また,5月にジュネーブでワークプログラムシンポジウムがございます。ここでは,ワークプログラムを策定するに当たってコミュニティとプログラム委員会が十分な議論をして,2017年から2019年のワークプログラムの内容を検討する機会になっています。ここでは是非日本のコミュニティからも皆様と議論をして持っていって,貢献を入れられるようにしたいと考えております。そのワークプログラムの直後に第2回のプログラム委員会がございます。
これらの作業を経て,今度は7月の執行委員会に具体的な内容案を上げることとしています。執行委員会からのレスポンスを経て9月に第3回のプログラム委員会を開いて内容を固め,9月末には計画書を決め,11月の本会合に文書を回すということになっています。これらの作業内容には,実施メカニズムのさらなる具体化とモニタリングと評価に関する指標の策定及び様々なリソースと活動とのバランスの検討が含まれます。
以上でございます。
【大垣部会長】  それでは,ただいまの報告に関して御質問あるいは御意見等ありましたらお願いいたします。
【赤松委員】  9ページに,米国の提案で民間企業のためのコーポレートパートナーという新しいカテゴリーを設ける提案があったとのことですが,この内容をもう少し教えていただきたいのと,日本としてはどのような対応をしていくのかをお教えいただきたい。
【樋口環境科学技術推進官】  内容は余り詳しいものはないとは思いますが,アメリカは以前からこのGEOの枠組みにステークホルダーの一つとして民間企業を巻き込みたいという意向がございました。データを提供する側と,データを使う側の両方が想定されていたように思います。これについては,アメリカは積極的だったのですが,ヨーロッパを中心に否定的な見解がございまして,議論としては継続するということになっております。日本としては,現時点では特にこれに対して明確な反応はしていません。
【春日部会長代理】  多岐にわたる御説明をありがとうございました。
13ページの図の中に示されていますし,その前にも言及がありましたが,社会利益分野の八つの分野プラス横断的な気候変動が,具体的にどんな形で戦略計画の中で機能していくのでしょうか。
【樋口環境科学技術推進官】  戦略計画に基づいて,これから具体的な活動を定めるワークプログラムができることになります。各活動がどの課題に貢献するかをひも付けながらまとめられていくことになると思います。
【大垣部会長】  ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
それでは,次の議題に移りたいと思います。議題の2は「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」に関する取組についてであります。昨年8月の本部会において今後10年の地球観測の実施方針を策定いたしました。この方針に基づき関係省庁,関係機関において具体的な地球観測に関わる事業の検討が進められていると承知しております。今回は,お手元の参考資料1のとおり,海洋研究開発機構,宇宙航空研究開発機構,文部科学省,地球観測連携拠点(温暖化分野)の事務局,環境省からそれぞれの実施方針に基づく取組について御説明を頂きます。なお,御質問などは5件の発表が終わった後にまとめて時間をとりたいと思います。
それでは,実施方針第4章の課題解決の地球観測に関連し,海洋研究開発機構,宇宙航空研究開発機構から説明をお願いします。
【河野委員】  JAMSTECの研究担当理事補佐をしております河野と申します。
今日は地球観測の実施方針に関するJAMSTECの取組について御説明いたしますが,JAMSTECの取組は多岐にわたります。そこで今回は,第4章の課題解決型の地球観測のうち地球環境の保全と利活用への貢献,中でも持続的な海洋の利活用への貢献を中心に説明をいたします。
次のページを見ていただきますと,実施方針でも指摘されているとおり,海洋を持続的に利用していくためには,全海洋の状況を包括的に把握するための観測を持続することが必要であります。こちらの図が国際連携の下に提案されている包括的な観測網の図です。年々,達成率を評価しており,2003年以降大体60%の達成度だったものが2014年には67%になっています。この図の周りに書いてあるのが包括的観測網を構成するそれぞれの観測プログラムです。日本はアルゴフロート観測と船舶観測,係留観測に力を入れて実施しております。
ページをめくっていただきまして,JAMSTECももちろん「みらい」による船舶観測,トライトンブイによる係留系観測,漂流フロート観測の一つであるアルゴプロジェクトに積極的に関わっております。左上の図が,そういった国際的な枠組みの中において10年に1度はこの観測ラインに沿って,表面から海底まで生物化学データを含む多項目のデータを高精度で計測しようという計画でありまして,黒い線がこの10年間我が国が実施した観測線であります。当初よりJAMSTECの海洋地球研究船「みらい」が活躍していたわけですが,最近では気象庁の凌風丸も参加するようになり,二つの機関でカバーをしています。
係留ブイについては,米国と日本のイニシアチブにより,エルニーニョやインド洋ダイポールを観測するための係留系が太平洋域に展開されています。日本は西太平洋と東インド洋の一部を担当して実施しています。左下の図がアルゴフロート観測で,アルゴフロートは海面から2,000メートルまでの水温と塩分を自動計測する漂流型のブイです。30か国以上の協力により,現在では3,900基以上が世界の海洋を漂っており,時々刻々とデータを送ってきています。
実施方針の第5章にはオープンデータ化の推進に寄与すべきということが記載されていますが,外洋の観測についてはこのオープンデータという考えは浸透しており,これらの観測網からのデータは各機関,各観測網が持つデータセンター,我が国ではもちろんDIAS,それからGEOSS,IOC/IODEの枠組みで公開されており,社会応用や科学研究の基盤として流通しています。もちろんJAMSTECも積極的にデータの公開をしており,自らのホームページでもほぼ全ての海洋観測データを公開しています。
特にアルゴフロートに関しては,単にデータを流通させるだけではなく,太平洋アルゴデータセンター,地域データセンターを運用しており,ここでは研究者向けの精度管理済みのデータであるとか,流速分布などのプロダクトを作って公開をしています。これも同じく第5章にあるデータ利活用の推進に通じる取組だと自負しております。
3ページがこの10年間に世界中で実施された係留観測,漂流フロート観測,船舶観測の図で,下の図が,そのうち我が国が実施したものです。御覧になって分かるとおり,太平洋においては非常に高いプレゼンスを示しており,国際的にも高く評価されています。
そのため,GEOSS,GEOあるいはIOCEといった国際機関への貢献が重要ということが実施方針でうたわれておりますので,国連系ではGOOS(Global Ocean Observing System)の中に位置付けられていますし,GEOの中ではブループラネットのイニシアチブの中の活動として位置付けられております。単にデータプロバイダとしてではなく,各観測計画のステアリングコミッティにはJAMSTECを始め多くの日本人が参画していますし,GOOSのステアリングコミッティあるいはBlue Planet Initiativeのステアリングコミッティにもメンバーを出しており,計画の立案段階から関与しています。
このようにこの10年間高いプレゼンスを示してきた観測もここ数年は非常によくない状況で,ページをめくった左上が係留系の数の推移になっています。2012年あたりから減っているのが分かりますし,船舶観測の測点数,これは黒いのがルールに従った観測点数ですが,これも徐々に減っていることが分かります。漂流フロート観測も,新規に投入する数,あるいは現在漂っている数ともに徐々に減ってきています。観測研究全般に対する厳しい予算状況のままだと,実施方針への貢献に懸念を感じざるを得ないという状況にあります。これは,観測やデータ流通システムなどの基盤を各研究者が研究費で賄っているという日本の特徴が原因の一つだろうと考えています。
しかし,そうとばかりは言っていられなく,これも実施方針でうたわれていますが,我々の地球観測は,この後,より高いゴールに向かって推進していくべきであるというようになっており,これまで国連SDGsのGOAL13である気候変動に重点を置いてきたわけですが,そのほかにもGOAL14,これは私なりの意訳で,海洋環境保全にも貢献していくことが今後求められることと考えております。
そこで,JAMSTECと日本のコミュニティでは,アルゴフロートの観測網を更に拡張することがこの貢献に向けて最もいい手段の一つであると考えています。例えば,海洋酸性化,あるいはそれが生物に及ぼす影響,あるいは生物多様性,Food Security,それから国家管轄圏外における大洋管理,マリンプロテクテッドエリアの策定などについて科学的な知見あるいはデータを提供するのが新たなニーズとして起こってくるわけで,これには深層の観測あるいは生物学的観測などを全球展開することが近道だと考えています。
ページをめくっていただきますと,そのような取組の一つとして,アルゴフロートの深さを2,000メートルより深い方に広げる取組があります。各国で競争状態にありますが,我が国はJAMSTECと鶴見精機が共同で4,000メートルまで観測可能なフロートを世界に先駆けて開発しています。現在まで15基を南大洋に入れて観測が成功しているということで,逆に世界の競争に火を付けてしまったというようなこともあります。これもイノベーションに結びつくような取組の一つであろうと自負しています。
もう一つがアルゴフロートに物理だけではなく,生物化学要素を観測できるセンサを取り付ける計画を推進すべきだとJAMSTEC及び日本のアルゴコミッティでは考えています。これは,酸性化や1次生産の現状,それらの変化をグローバルに知るためには最適な手段になります。この展開のためには,EEZ内の観測に関する許可申請などについて,国際的な枠組みを新たに構築していく必要があると考えています。
ページをめくっていただきますと,イノベーションに関する取組として,今問題になっている酸性化を計測するためのpHセンサの開発にも取り組んでおります。これは国際的なコンペティションであるWendy Schmidt Ocean Health XPRIZEの高精度観測部門に応募して3位になったものです。アルゴフロートに取り付けるセンサとしては,フードウェブの最下層を支える1次生産を計測できるような蛍光光度計の開発にも取り組んでおります。
ページをめくっていただきますと,もう一つ,外交的にも重要だと言われている北極域観測があります。JAMSTECでは耐氷機能を持つ「みらい」が建造以来13回の北極海航海をしています。現在このように定期的に北極海で研究航海ができる観測船は「みらい」だけです。文部科学省でArCSという北極研究の予算を作っていただきましたので,平成28年度以降,毎年北極海に観測に行けることになります。これはGEOの中ではCold Region Initiativeの活動として位置付けられており,そのほか,北極協議会が主催する会議の中でも,例えばAMAPで環境評価報告書を出しますが,ここの著者の一人にも選ばれており,氷がないところでの研究については評価が高いところであります。
ページをめくっていただきますと,氷があるところをどう観測するかが北極研究の人たちの課題の一つで,そこにイノベーションが求められており,JAMSTECではアルゴフロートくらいのサイズのフロートにプロペラを付けることで,AUVと言うには少し大げさですが簡易的な知的機能を持たせて氷の下の観測を実施する取組にも着手しており,できれば来年の夏には北極海に投入したいと考えています。
あとは,例えばデータの公開,あるいはデータの流通の促進について,JAMSTECではBISMaLという生物多様性に関するデータのサイトを開設しており,これはIODEの枠組みの中ではアソシエートデータユニットとして登録されています。
スライドは用意していませんが,このほかにアジア太平洋域の各国の経済水域中のデータ,これはデータを集めるのは大変なので,インベントリ情報を集めてみんなで共有するサイトを昨年から開設しております。また,短期寿命の気候汚染物質の観測や,環境省と一緒にやっている森林の観測にもJAMSTECは取り組んでおりますし,最後のページになりますが,気候変動に伴う悪影響の原因特定,生態系生物多様性,それから災害への備え,エネルギー及び鉱物資源等の安定的な供給といった第4章に書かれている項目に対してもここに上げているような研究課題を持っており,貢献をしています。
以上です。駆け足ですが,御報告を終わります。
【大垣部会長】  引き続き,宇宙航空研究開発機構からお願いをいたします。
【JAXA(石田)】  JAXA地球観測衛星による取組について報告させていただきます。宇宙航空研究開発機構の衛星利用運用を担当しております石田でございます。
表紙をめくっていただきますと,JAXA地球観測衛星計画を示してございます。左側に示している「いぶき」から「だいち」2号までの4基が現在運用中です。今,世界中では約135基の衛星を運用しており,そのうちの4基がJAXAの衛星ということになります。
次のページは,GEOSS構築へのJAXAの貢献ということで,GEOの第1期の計画における貢献について書いてございます。JAXAは重点3分野,災害,気候,水の分野で,政策意思決定のツールとして,国内外の社会課題に役立つ衛星観測システムを開発・運用してきています。
その取組と主な成果を以下のページで説明したいと思います。4ページ目は災害分野における代表事例ということで,「だいち2号」による災害監視を示しています。「だいち2号」により日本の地殻変動を常時監視する仕組みが実現できております。特に昨年は,桜島あるいは箱根の大涌谷の噴火といったような非常にローカルな地殻変動あるいは噴火の事象といったところに衛星データが活用され,ローカルの噴火リスクの評価や入山規制の検討にデータが使われるといったようなことがございます。
国際的には,センチネルアジアというアジア地域の宇宙機関と防災利用機関が協力する枠組みをアジア防災センターと共同で運用しており,昨年だけでも20回の地域の災害に対して衛星データを提供し,各国の被害状況の把握あるいは被害復興計画の策定に使用されてきています。
このように,衛星観測を踏まえた情報が災害発生時の政策決定に必要な重要情報となってきています。そのようなことも踏まえ,昨年の国連防災世界会議でも衛星データがローカルな利用に活用できるという位置付けがなされています。
5ページ目には,水分野における代表事例ということで,衛星による洪水,干ばつの予測ができてきているということを示しています。洪水についてはアジア開発銀行,ユネスコの資金を得ましてICHARM,あるいは東大との協力により洪水の予測システムが整備され,パキスタンでは実際にその運用が始まっています。
干ばつにいても,温暖化に伴い干ばつの多発や悪化が予測されており,その監視と予測技術の高度化が重要になっております。東南アジアにおいては「しずく」のAMSR-E 2マイクロ波放射計のデータを使った干ばつのモニターシステムが運用されています。また,下の図には東大の小池先生のところで実施された干ばつの予測の結果が示されており,マイクロ放射計のデータを使うことによって干ばつが1年前から予測可能になっているということが示されています。このように,観測網が不十分な地域に対しても衛星データにより災害の予測の可能性が現実化してきているということになっております。
6ページ目に,気候分野における代表事例ということで,JAXAはIPCCの評価,あるいはCOOPの政策決定に使われるような衛星の開発・利用を進めてきており,緩和策については,ここでは温室効果ガスのモニターということで「いぶき」のデータ,それから森林の把握ということでALOS2の森林,非森林の全球マップの例を示しています。二つの地図を並べると,温室効果,CO2の吸収が森林の全球分布に非常に符合しており,森林によってCO2が吸収されているということが非常によく分かると思います。
7ページ目にはIPCCへの貢献ということで,ここでは二つ例を示していますが,左側が高性能のマイクロ波放射計が北半球の海氷面の面積の評価モニターに使われている例です。右側の例は,降水量の評価に熱帯降雨観測衛星に搭載された降雨レーダーのデータがいろいろなモデルの評価の基準データとして使われているという例を示しています。このような気候変動モデルの予測技術の高度化に対して長期にわたる衛星観測データを提供・貢献している事例でございます。
8ページ目はその他の分野ということで,農業あるいは健康の分野で,FAOやWHOのような国際機関との協力により,大気汚染,あるいは感染症のモニター,あるいは食糧統計の整備・共有に衛星データが使われている例です。
9ページ目からJAXAの利用研究について示していますが,JAXAでは,衛星利用センターと地球観測研究センターの二つの研究センターにおきまして,従来はプロジェクトごとの利用研究だったものを,このGEOの戦略計画に対応するような形でプロジェクト横断で課題に対応したような利用研究を進め,それに基づいて,複合衛星の利用,あるいはモデリング技術,同化技術を活用してデータ統合と情報融合を目指す,そういう研究を進めております。
10ページ目は説明を省略いたしますが,今後の10年の実施方針とGEOの戦略計画に対するJAXA衛星の取組ということで,どういった衛星でどういうパラメータを観測して貢献するかを示しています。
11ページ目には,来年度打ち上げ予定の気象変動観測衛星(GCOM-C)の概要を示しています。GCOM-Cは,高い精度で大気補正を行い,高精度の海色あるいは植物プランクトンの観測ができる衛星で,海洋沿岸域の生態系の観測に威力を発揮すると考えています。
最後のページ目に宇宙基本計画の工程表を示してございます。一番下のリモートセンシング,それからセンシング等技術の高度化ということで,Earth CARE以降の計画が決まっておりませんので,これを現在検討しておりまして,今後政府と相談させていただいて,その持続可能な観測を実現していきたいと考えております。
以上でございます。
【大垣部会長】  それでは引き続きですが,実施方針第5章の共通的・基盤的な取組に関連いたしまして,文部科学省から御説明をお願いいたします。
【樋口環境科学技術推進官】  環境科学技術推進官樋口です。よろしくお願いします。
5の1に観測データのアーカイブとデータの統合化・利活用の促進がございますが,これに関して,データ統合・解析システム(DIAS)の成果と今後の展開について説明をさせていただきます。
DIASは国内外の観測・予測データを一つのデータストレージに集め,それを統合的に解析して,様々なデータを使ってソリューションを提供できるような情報を生み出していくものでございます。
DIASを用いた成果としては,次のページになりますが,水関連とか生物とか気候とか農業,健康,都市のようなところのデータのアーカイブが進みつつあります。その統合・解析,利用につきましては,水分野がかなり進んでおります。河川流量モデルの開発,それからDIASの第2期で水資源管理システム,最適なダム操作システムの開発なども進んでいるということで,水分野を中心に進んでいるということが現在の成果でございます。
今後の展開は次のページになりますが,これまでDIASの開発は今年度を含めて10年間になりますが,来年度以降は4億円が予算として計上されています。これまでのDIASはシステム開発段階ということで,700種のデータを格納して,研究者を中心に260機関,1,200人の方々に使っていただいており,水課題を中心に社会課題の解決に資する成果として,利根川と信濃川水系で洪水,内水氾濫等をリアルタイムで予測可能なシステムやDIASで得られた予測情報をアジア・アフリカの水資源管理に活用すること,また,DIASに格納されている全球気候モデルがIPCC第5次評価報告書で世界一引用されていることなど,これまでに成果を上げてきています。
今後の5年間では,システムの開発の段階から,気候変動適応・緩和等に貢献する社会基盤としてDIASを発展的に展開することになります。そのために二つのことを実施するようにしております。一つ目は地球環境情報プラットフォームの構築で,企業も含めた新しいユーザに長期的・安定的に使っていただけるようなプラットフォームの運営体制を構築すること。これはセキュリティの保護,ITサポート,ユーザサポート,データポリシーの整備,利用料金制度の検討といったことをやっていきます。
二つ目は,地球環境情報プラットフォーム活用のための共通基盤技術開発ということで,ユーザを拡大したり,気候変動適応策・緩和策に貢献するようなアプリケーションの開発を行っていきます。これまでの成果を踏まえて水課題に貢献するものなどを開発し,DIASに実装していくことも考えてございます。
これによって期待される効果は,気候変動適応・緩和等の社会課題の解決で世界をリードすることで,多くのユーザに長期的にプラットフォームを有効に活用していただき,その共通基盤技術を基に様々な社会課題解決に資する成果が出るということで,これを通じて,利用料金制度の検討や利用ユーザの増加も組み合わせることにより,国費のみに依存しない運営体制を確立することを考えています。
具体的な実施内容は次のページへ参りまして,DIASを利用したアプリケーションの開発・実装についてですが,DIASの現状を分析したところ,その強みはリアルタイムデータ,解析機能を駆使するというところにあるのではないかということで,これを駆使し将来の予測可能な情報を創出し,予測情報を広く社会に役に立てるためのアプリケーションを大学,企業との合同で開発することとしています。開発課題としては,一つは水課題(防災・エネルギー)に対応したアプリケーションで,Xレインなどを活用しながら,高精度な河川・ダム水位予測に基づいて,洪水対策,水力発電システムに貢献することを考えてございます。
その他の実施課題(可能性調査)としてはエネルギー分野に対応するもので,「ひまわり8号」のデータを活用しながら,高精度な日射量予測に基づいて太陽光発電の需給調整に貢献することを考えてございます。これ以外のアプリケーションの開発については今後検討していくということで,こうしたアプリケーションのユーザは,自治体や企業,海外諸国を想定してございます。
次のページはプラットフォームの部分ですが,ユーザが自発的にDIASを利用してアプリケーションの開発を行いたいと思うようなプラットフォームを作るということで三つの取組を進めてまいります。一つ目はリアルタイムデータを用いたアプリケーション開発の促進ということで,アプリケーションの収集や,アイデア・コンテスト等の開催,データのオープン・フリー化の促進ということでございます。それから,リアルタイムデータそのものの拡充と,DIASシステムの高度化も実施していくということでございます。
これらについては,今後のDIASの事業設計に関する検討会を開催し,有識者の先生方の意見も頂いてまとめており,今後こういう形で進めていきたいと思っています。
以上でございます。
【大垣部会長】  それでは次に,実施方針第6章の統合された地球観測の推進体制・組織に関連いたしまして,初めに地球観測連携拠点(温暖化分野)事務局から御説明をお願いします。
【地球温暖化観測推進事務局(藤谷)】  事務局の藤谷でございます。それでは資料2-4に沿って説明いたします。
地球観測連携拠点は平成19年度から毎年,主に観測の視点からテーマを定めてワークショップを開催しています。テーマとしては陸域炭素循環や森林,雪氷,海洋等です。ワークショップの総合討論の取りまとめ結果はこの部会に報告しており,従前は毎年取りまとめられている実施方針に一部は取り入れられている状況でした。平成27年度は11月19日に「衛星による地球観測の現状と今後の展望」というタイトルで開催し,総合討論では,地球観測における衛星の役割について検討を行いました。プログラム等の詳細については2枚目の別紙に書いてございます。地球観測においては衛星画像が非常に重要ですから,総合討論,取りまとめ結果を本部会に報告いたします。
資料の1ポツのところにございますように,地球観測の衛星をめぐる状況として,平成20年5月に宇宙基本法が成立し,宇宙基本計画がこれまで3度策定されていますが,昨年1月に策定された基本計画では,我が国の宇宙政策をめぐる環境認識の一つとして,地球規模課題の解決に宇宙の果たす役割は増大しているとなっており,実際の目標として,宇宙を活用した地球規模課題の解決,安全・安心で豊かな社会の実現を上げています。
具体的には9項目の宇宙プロジェクトを掲げており,その一つに衛星リモートセンシングがございます。そして,静止気象衛星の温室効果ガス観測技術衛星については,切れ目なくその整備をすることが明記されています。地球環境観測に関しては,災害予防・対応とか地球環境観測,資源探査の取組を着実に進めるとしており,それ以外の衛星に関しては,括弧書きにございますように,新たなリモートセンシング衛星の開発及びセンサ技術の高度化に当たっては,出口が明確なものについて優先的に進めるとしています。
基本計画では地球観測衛星の重要性が指摘されていますが,具体的な工程表では地球環境観測関連の計画は,GCOM-C以後は具体的な後継プログラムが記載されていません。昨年11月の改定工程表では,水循環変動観測については「平成28年度より後継ミッションも含めた今後の在り方として検討を加速」と記載されているところです。
3ポツのワークショップの概要ですが,このような状況を受けてワークショップを開催しました。基調講演はJAXAの中島先生にお願いしまして,一般講演として「ひまわり」あるいは「いぶき」,それからGCOM-Wのお話をしていただきました。また,国際的な問題や高解像度衛星観測のお話をしていただきました。
講演のポイントを四つにまとめますと,国際環境については,主要な国際的枠組みで衛星による地球観測の役割の重要性が認識されつつあります。国内状況としては,先ほどありましたように,2020年度から計画の空白域になること。そして,地球観測衛星の成果としては,様々な社会の抱える課題等の解決に役立っております。特にGCOM-Wについては課題解決に極めて重要なツールとなると認識されています。今後の展望としては,モニタリング,社会課題へ本格的な貢献を目指すとしており,社会貢献にはミッションの継続性が重要であろうと。それから,継続的に実施するためには持続可能な観測システムの構築への努力が必要であり,衛星計画の立案・検討に当たっては,関連する複数の衛星をシステムとして捉えて一体的に検討する必要があるということが言われております。
このような講演を受け,総合討論で長期的な衛星計画の立案の体制や関係機関の連携の在り方,開発システムの在り方,ヨーロッパの衛星計画との検討体制の相違や衛星計画に対する関連の国際的な枠組み・計画等の支援の必要性を議論いたしました。
その中で非常に重要なことを二つ丸で示しております。一つは,GCOM-Wを含む2020年以降の地球観測衛星計画について,直ちに検討に着手する必要があること。そのために関係部局に働きかけを強化すること。それから,工程表に準拠した衛星計画の推進に当たっては,長期的ビジョンに立った柔軟な運用が不可欠であること。さらに,省庁連携,国際連携が重要であることから,特に内閣府を中心に省庁横断型のシステムを作ることが重要であり,また,宇宙政策委員会の中に地球観測関連の部会あるいは小委員会を設置する必要があるというのが大きな結論でございます。
以上でございます。
【大垣部会長】  それでは,最後に環境省から御説明をお願いいたします。
【環境省(竹本)】  環境省研究調査室長の竹本です。資料の2-5を御説明いたします。
地球温暖化分野に係る地球観測連携拠点の機能の強化についてでございますが,環境省,気象庁,文部科学省の連名になっております。
地球観測連携拠点につきましては,先ほど藤谷事務局長から説明がございましたが,これまで,今後10年,我が国の地球観測の実施方針などに基づいて連携拠点を運営してまいりました。今回,実施方針が新しく作られ,気候変動の影響への適応計画が閣議決定されたことを踏まえ,新たに政策ニーズを踏まえた地球観測の統合的・効率的な実施を図るために,関係府省・機関の連携を強化する推進母体とすることを目的として設立された本連携拠点を強化することを予定しております。機能を強化する部分は気候変動適応情報プラットフォームの構築であり,これは,関係府省庁が有する情報基盤などと連携して利用者ニーズに応じた情報提供を行うとともに,適応計画の策定などの行動を支援するツールの開発・提供,優良事例の収集・整理・提供など各主体の活動基盤となるプラットフォームを構築するものです。
また,現在も行っている地球温暖化分野における地球観測へのニーズ等の集約,実施計画の作成,実施状況の管理・報告,また,関係府省・機関の調整や情報の収集・分析に関する作業,観測プラットフォームなどを有効に活用する相互利用ですとか,WMOと連携した取組,あるいは人材育成への貢献,インベントリの整備や品質評価等,こういった取組については引き続き実施していくことを考えております。
枠組みとしては,関係府省・機関の連絡会議を設置することを予定しております。この会議では,実施計画の策定及び計画実施状況の取りまとめ,推進部会への報告を行うことを予定しております。
またあわせて,温暖化分野の観測実務及び観測データを利用した研究等に携わる専門家から成る地球温暖化観測・情報利活用推進委員会,これは仮称ですが,これを設置する予定にしております。この委員会では,実施計画策定等を行う連絡会議に対して,科学的観点から助言を行う,また,委員会の委員長は高度な知見を有する専門家を充てる予定にしております。環境省は連携拠点の事務局を運営し,国立環境研究所内に設置することを予定しています。また,必要に応じて事務局はワーキンググループを設置することを考えております。
次のイメージ図は今説明したものをまとめたものです。真ん中の地球観測連携拠点,破線で囲まれた部分が連携拠点に関わるもので,事務局が右側の連絡会議,推進委員会,ワーキンググループそれぞれの活動をサポートしていきます。また,新たに気候変動適応情報プラットフォームを設置し,関係省庁と連携しながら,例えば政府適応計画の下で重点的に実施すべき地方公共団体の適応の取組などについて,情報の提供,行動支援等を行っていくことを予定しております。
以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
ただいま5件の御説明を頂きましたが,御質問あるいは御意見がありましたらよろしくお願いいたします。
【小池委員】  昨年,今後の10年の実施方針を決めたのですが,今御報告を聞いていて,本当にできるのか非常に不安になりました。河野委員から説明のあった資料2-1で係留系や船舶やフロートの変遷で数が急激に減っている。それから,石田さんからお話のあった資料2-2では,「しずく」の在り方の検討で,まだそういう段階にあると。
このような中で,自分自身も少し関わらせていただいているDIASについては国費のみによらないということになっています。この意味は,国費は入れずともという意味だと思いますが,それだけではやっていけないという意味で,そういう政策をとって次へつなげることをやらざるを得ないというか,やる段階に来ていると言った方がいいのかもしれませんが,このように考えたとき,これからの地球観測を我が国としては本当にどうやって守っていくのか。展開していくよりも,ちゃんと守っていくことを考えないと,5年後にどうなっているかが非常に心配です。
私自身,この2016年からワークプログラムで,先ほどGEOの新しい枠組みの中にオペレーショナルに近付けるということを念頭に置いたフラグシップがあって,次の段階でイニシアチブがありますが,足元がしっかりしないのでそれが出せないんですね。このようなことを考えると,これまで地球観測の分野で,GEOを始め,海洋,宇宙とデータと世界をリードしてきた我が国のスタンスを先ほど言いましたようにどう守ればいいのかを考えないといけないと思います。
それで,二つ三つ申し上げたいと思いますが。一つ目は,資料1でアジア太平洋の枠組みを御紹介いただきました。8回やって,非常に私自身は進んだと思いますが,今の地球観測をあの枠組みで進めようとするときに我が国は何をしないといけないかというと,これまでは文部科学省がやってくださってきたわけですが,それだけでは無理で,例えば水だとか,森林もありますし農業もあるわけです。そうすると,文部科学省と例えば国土交通省とか。国土交通省は世界の9か国と閣僚レベルの防災共同対話を毎年やっています。農業にしろ環境にしろ,そのような枠組みをエンカレッジしながら作っていくことをしないといけないと思う。要するに,現業を持っている省庁とリンクして地球観測を実装していくことをやらなければいけない。日本はこれまでアジア太平洋の枠組みをリードしてきた実績がありますから,それは進める場としていいのではないかというのが1点目です。
2点目は,今回DIASで民間との協働を進めるにあたり,民間というのは,民間がメリットを感じないといけないわけです。電力が例に挙がっていますが,何で国交省じゃなくて電力なのかというと,ダムの最適予測をしたときに,洪水を減らすためには前もって水を放流しておく必要があるんです。そうしておけば洪水が来てもちゃんとためられるというわけです。だけれども,国交省,河川管理者は利水で使う水を先に出しておくということは,もしも穴があいたら利水に補償しないといけなくなり,それはなかなか役所としては踏み切れない。私どもDIASで作ってきましたが,なかなか踏み切れないということがありました。
それに対し,利水者だったら自分のところの水なのでやれるだろうと。電力は水を出すということは損するわけで,法的には自分の水なので,喜んで出すわけではないのですが,紀伊半島で台風12号ですごい災害があったとき電力が批難されたことがあり,社会的責任を果たさなければいけないというマインドはあるのですが,なかなか出せない。夏のうちに,水を下げておいてもちゃんと出せるということが実証できれば,国交省と相談して夏季の制限水位を上げる可能性があるのではないかというわけです。そうすると,電力にとっては非常に大きなメリットになりますし,やってみようという議論にもなる。
何らかの民間をドリブンする論理が一つ必要で,そういうものを使って地球観測,いろんな分野で進めていくということが大事ではないかというのが二つ目です。
3番目は,正論ですけれども,昨年仙台の枠組みがあり,SDGがありパリ協定があるわけで,そういう中で地球観測を,人類の目標を達成するツールとして本当に必要なんだということをアクティベートするということは,これまでもやってきわけですが,その結果が今これでありますので,なかなか難しいのかもしれません。
先ほど石田さんから紹介いただいたソマリアの渇水予測は,世銀で発表したらすぐ,是非使いたいということで,今度2回ミッションが日本に来ます。DIAS上にそれを実装していこうと考えていますが,災害であるとか持続可能な開発目標とか,例えば,今ワルシャワメカニズムでクリアリングハウスを作ろうとしています。要するに,気候変動で何らかのロスがあると,それにどう対処するか,そのための保険制度を作ろうと。そのためにはデータが必要なのでクリアリングハウスを作ろうというのが進んでいるのですが,それが本当に日本として,データシステムの中でどうコミットするかというところまで多分行っていないんじゃないかと。私が聞いている話の中にはDIASという言葉は一切出てこないし,そういう方々もそこにコミットされておりません。そういうところにコミットするメカニズムを私たちは持っておく必要があると思います。
そのためには,最初の話ですが省庁連携しておかないとなかなかいかないと思います。例えば,今年はG7が伊勢・志摩でありますが,そこへ提案するアカデミアからのテーマの一つに防災が上げられています。今ドラフティングの最中ですが,その第1はデータとシェアリングにしております。各国のアカデミアからはサポートいただいておりますが,そういうことを通して一つ一つ世界的な合意を積み重ねながら,必ずしも文科省だけではなく,省庁連携でそれを進めていくということが必要なのではないかと思っております。
以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
三つありまして,現業を持った省庁連携と,それから民間の協力,3番目が国際的なアピールの重要性ということかと思うのですが,ほかにいかがでしょうか。
【赤松委員】  今の小池先生の話に関係するのですが,民間の立場で今までこういう場に出てくることが少なかったのですが,出口を考えていくときに,民間のプレーヤがどう関与して裾野を広げられるかというのは非常に重要なことだと考えております。先ほどの説明の中で,例えばDIASをこれから民間で使える形に開放していくという施策をとっていただけるのは非常に有り難いことだと思いますし,そういったことをこれからも拡張していただきたいというのが民間の立場からのお願いです。
例えば,そういう新しい仕組みを作るときに,民間の人間を入れていただいて,どういう形にするのがいいかといった検討に加えさせていただいたり,具体的にパイロットプロジェクトがあるのであれば,民間を関与させて,社会に開放していくにはどういう形がいいのかを具体的に作っていくような場を設けるなど,是非民間の関与を増やしていただければと思います。
以上でございます。
【甲斐沼委員】  先ほども出ましたが,資料1の9ページでも,SDGのフォローアップとレビューにおいて非常に重要であるという資料がございます。また,資料2-4の2ページ目の上から3行目,4行目のところにも,SDGの進捗を評価するインディケータに衛星の役割を位置付けることを関係機関と協力して検討中というSDGに関する記述がありますが,これは非常に重要なことだと私は思っていまして,もう少し御説明いただきたいということで,SDGのフォローアップといいますか,その評価というか推計というのは,するところを今後決めていらっしゃるのか,それとも推計自体研究として推進するのか,あるいはインベントリ業務のような形で推進する機関を作るのか。あるいは国際的なデータ収集ということで,日本だけではなく国際的な形で途上国や,特に日本の場合はアジアでしょうけれども,アジアのSDGの推計にどういった形で地球観測のデータが今後利用されていくのかということについて少し御説明いただければと思います。
【地球温暖化観測推進事務局(藤谷)】  プログラムにございますように,SDGの話は石田先生に講演していただきましたので,石田先生から説明していただく方がいいと思っています。
【JAXA(石田)】  SDGにつきましては,国連の統計局と連携して,空間情報,それから衛星データが具体的にどのように使えるか,どの統計,SDG,ゴールに対して,どのインディケータに対してどんなデータがどう使えるかということを今年1年かけて検討する計画になっておりますので,宇宙機関としては,国際的な衛星計画を調整する地球観測衛星委員会というのがございます。それからGEOでもSDGに対する対応を最優先の課題として位置付けておりますので,GEOの事務局とも連携して検討に参加していきたいと考えております。
国内では,外務省や統計という観点では総務省がその取りまとめをしておりますので,これらの省庁とも相談させていただいて,衛星や空間情報の役割をその中で位置付けていきたいと考えております。
【中田委員】  河野さんの説明でも出ましたが,観測に投入する測器とかブイが減っているというデータは本当に衝撃的です。今まで例えばアルゴタイプのブイも,いろいろな省庁がいろんなプログラムで入れたものを登録する形でやられていましたよね。JAMSTECにはもちろん,それ以外のところもそういう観測に関わるプログラムを推進するように政府としてアピールするということをやっていただくと,それぞれのプログラムでも入れていける枠がそれなりに出てきますので,そういうところをお願いしたいのが1点。
もう一つは,やはりユーザのバックアップが必要ですので,ユーザの部分をきっちりと,今回の提案の中に出てきましたけれども,そういうところをしっかり進めていただくことが重要だと思いました。
以上です。
【上田委員】  これまでにも赤松委員からもお話がありましたが,DIASのユーザ拡大が今後の実施内容というように聞いておりまして,公衆衛生分野というのは,国外ではそういった報告例はあるのですが,国内での活用例が少ないというのが私の実感でございます。一つは,それはDIAS自体が公衆衛生の分野の研究者に知られていない。異なる分野の研究者,特に分野の連携が必要な研究者にとって,ユーザフレンドリーに使いやすいような形で,いかに裾野を広げるかという視点で,検討いただきつつ進めていただけたらと思います。
【大垣部会長】  ありがとうございます。
ほかに御意見はありませんか。では,貴重な御意見どうもありがとうございました。
次の議題に移りたいと思います。議題の3は今後の地球観測推進部会の進め方及び「GEO戦略計画推進作業部会」の設置についてであります。今後10年の我が国の地球観測の実施方針の策定,それからGEO戦略計画の策定などを受けまして,今後地球観測を効率的に推進していくために,本部会の下に「GEO戦略計画推進作業部会」を設置したいと考えております。事務局と内閣府,中島参事官から説明をお願いします。
【樋口環境科学技術推進官】  事務局から資料3-1から3-3で説明させていただきます。まず今後の部会の進め方についてです。背景ですが,この部会では,地球観測の推進戦略を踏まえて関係府省・機関の緊密な連携・調整の下で毎年実施方針を策定することと,実施計画に関する報告を受けるということに取り組んできており,先般8月に今後10年の我が国の地球観測実施方針を取りまとめていただきました。国際社会ですが,GEOの閣僚級会合においてGEOSSの新たな10年計画として戦略計画が承認され,八つの社会利益分野,それからこれらの横断的な気候変動において,政策決定に必要な情報の創出に地球観測が貢献していくという流れになっています。このような国内・国際の動向を踏まえますと,この部会でも,我が国の地球観測の統合的な推進組織として,国内・国際双方の取組に統合的に対応し,国内外の課題解決に地球観測が貢献できるようにしていく必要があると思います。これに対する今後の対応ですが,国内の取組については,10年実施方針に基づいて,各府省・機関が毎年策定する実施計画については引き続き報告を受けるということ,部会では実施計画を俯瞰(ふかん)して,国際動向を踏まえた上で今後の地球観測で取り組むべき事項を抽出し,総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)に報告するということでございます。
二つ目には,国際的な取組であるGEOSSの構築への対応ですが,新しい戦略計画に基づく取組が実施されるということでございますので,この部会の下に作業部会を設置し,これに対する対応について調査審議を行うこととしてはどうかと考えます。部会においては,国際動向や作業部会の調査審議について把握し,必要な指導・助言等を行うということになります。
このような国内・国際の取組を効果的に連携させるということで,国内の関係府省・機関の取組,国際動向,作業部会の調査審議状況を把握して,必要な指導・助言・提案等を行うこととしたいと考えております。
資料3-2が「GEO戦略計画推進作業部会」の設置についての案です。平成26年1月の閣僚級会合でジュネーブ宣言が採択され,それからメキシコシティの閣僚級会合で新しい戦略計画を承認するメキシコシティ宣言が採択されております。これを受けましてGEOにおいては,今後,取組の詳細を定めるワークプログラムの策定,ワークプログラムに基づく取組の評価等の戦略計画の推進に関する議論が行われる予定となっております。
今後とも我が国が地球観測において国際的なプレゼンスを示していくためには,有識者,関係府省庁・機関の連携を一層強化し,我が国一丸となってGEOにおける議論に対応していく必要があるということで,この戦略計画の実施に関する対応策を機動的に調査するため,部会運営規則の3条に基づきまして部会の下に「GEO戦略計画推進作業部会」を設置するというのが趣旨でございます。
調査事項としては,戦略計画の推進に関する我が国全体の取組方策に関すること,我が国が関連するGEOのタスクの進捗状況の把握に関すること,GEOの各種会合への対応に関することとなっております。作業部会の設置期間は,作業部会の設置が決定された日から,この観測部会の設置期限と同じ期限まででございます。本部会の庶務は研究開発局環境エネルギー課が処理します。
資料3-3が今後の全体的な作業部会も含めたスケジュールのイメージです。左から,関係府省庁で実施計画を作っていただくのを2月から4月にかけてやっていただき,推進,その計画に基づく観測自体の実施を通年でやっていただくように考えております。実施計画の作成については,概ね4月,5月あたりに文部科学省の事務局で取りまとめてこの部会で御承認いただき,そこから関係省庁から観測内容等についてヒアリングを受けまして,11月頃を目途に今後の地球観測において取り組むべき事項を検討し,1月のCSTIの環境ワーキンググループに報告します。それを最終的にイノベーション総合戦略の策定にも反映していただくというスケジュールでございます。
国際の取組ですが,主にGEOのプログラム委員会や執行委員会の対応のためにGEO作業部会を開催することを想定しております。本会合が11月にありますので,取りまとめた結果を1月には本部会にも報告をさせていただきたいと考えています。このような形で国際と国内をつなげ,国内の取組もCSTIに活用していただける形で報告をしていくような流れで進めていきたいと思います。
それでは,中島参事官から関連の動向について補足いただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。
【中島参事官】  内閣府総合科学技術イノベーション会議の中島でございます。実施計画に関連いたしまして,最近,1月22日に閣議決定されましたが,第5期科学技術基本計画について,本部会に関連することについて御紹介いたしたいと思います。
資料3-4をごらんいただく前に,内閣府と地球観測推進部会の関係に関して,今までの流れを御紹介したいのですが,机上資料の黄色い資料の中で5番と書いてあるのが,平成16年に日本の地球観測を進める基本的な戦略ということで,当時の総合技術会議で笹野さんや野尻さんを中心に取りまとめていただき,その後の10年間の日本の地球観測の流れを定義したものです。それが10年ほどたって,着実に実施されてきたこともありますが,世の中の状況もいろいろと変わってきて,社会的な課題にも対応しないといけないのではないかといったことがございましたので,それをレビューしたのが6番の資料です。
昨年6月にCSTIの環境ワーキンググループで,10年間の進捗状況のレビューということで,地球観測が実際どのような成果を上げてきたかを取りまとめさせていただきました。1ページにCSTIと地球観測推進部会の関係と,観測を実施している各府省・機関の関係を書いてございますが,お互い報告やフォローアップをしながら着実に進めてきたというフレームワークが書いてございます。その中ではGEOSSなどの国際機関との連携も含めて書いてございます。
3章から実際成果が上がってきた例として,これまで10年間でやってきたことを書いてございます。13ページぐらいから,GEOSSやGOOS,GTOSといった取組に関しても書いてございますし,最近出てきたものとしてオープンデータといった取組も書いてございます。
4章以降に近年の状況について書いてございまして,社会状況が変化してきているとか気候変動関連のイシューが大きくなってきているとか,各国の状況が変わってきているといったことが書いてございまして,今後10年間にどのような課題を解決していかなければいけないか,あるいはどういった観測を継続していかなければいけないかといったことを提言としてまとめております。その中で,地球観測推進部会とCSTIの役割分担について提案させていただいて,樋口推進官から提案があったような方向で進めていきたいということをまとめてございます。
それを受けて,文科省で昨年8月に取りまとめていただいたのが今後10年間の実施方針という7番の資料になってございます。
資料3-4に戻っていただきますと,総合科学技術会議では,黄色い丸で囲った三つの任務があり,科学技術に関する基本的な政策を踏まえながら進めていくことや,各省の施策を俯瞰(ふかん)しながらアクションプランで施策を特定して重点的に予算配分を促していくことを行っております。
今年,科学技術基本計画が1月22日に取りまとめられまして,この中で地球観測の推進を重点的に取り組んでいきたいということを書かせていただいております。それが5年ごとに重点的に科学技術を振興するような総合的な計画となっており,この第5期科学技術基本計画では,今年の4月から始まる5年間について書かせていただいております。
それを受けた形で,毎年科学技術イノベーション総合戦略として,5年間の計画の中で特に来年度集中して取り組むべき課題ということで,これはこれから執筆が始まるところですが,毎年5月から6月に,各省の予算要求の前の段階で特定する領域を示して施策として取りまとめた文書を作っていきたいと考えてございます。今年度に関しては,2017年度の予算のアクションプランで取り組むべき課題を想定したような総合戦略2016を,サミットの関係で例年よりも1か月ぐらい前倒しで,今年の5月ぐらいに取りまとめるよう現在作業を進めているところでございます。
それを受けた形で各省さんに今年重点的に取り組む課題を提案していただくのが科学技術重要施策アクションプランでございまして,これは内閣府の役目として,各省庁の施策を俯瞰(ふかん)し,重複がないような形で役割分担をすることで各省のヒアリングを基に施策群として取りまとめていきたいところでございます。
今年度の状況では,地球環境情報プラットフォームというシステムをアクションプランとして特定し,総務省,文科省,国交省,環境省の連携として1群の施策群を特定して,重点的に予算配分を取りまとめていったところでございます。
次のページをおめくりください。第5期科学技術基本計画の概要ということで,全体を俯瞰(ふかん)して取りまとめてございます。1章から7章までに分かれていますが,1章で現状認識や基本的な考え方を示して,どういった課題が重要になってくるかを示した後,2章と3章で,先ほどGEOの中でも世界利益分野SBAということで書いてございますが,第5期科学技術計画でも,第3章の経済・社会的課題への対応ということで,地球規模で顕在化している課題に対応するための取組ということで幾つかの分野に横断するような形で記述してございます。
それを支えるのが第2章で,これに関しては新しいキーワードとして超スマート社会やソサエティ5.0,これは1.0が狩猟社会,2が農耕社会,3が工業社会,4が情報社会としまして,その次につながる,四角で囲ってありますが,必要なもの・サービスを必要な人に必要なときに必要なだけ提供し,社会の様々なニーズに対応して,あらゆる人が質の高いサービスを受けることができる社会ということで,世界に先駆けて日本がそれを実現しようというような意図でこのキーワードを提示させていただいたところです。それを実現するために,各種サービスや事業をシステム化し,それを府省連携の下で共通的な超スマート社会サービスプラットフォームの構築といったような取組として進めてまいりたいと。
右の下に丸い小さな図で書いてありますが,その一つとしてこの地球環境情報プラットフォームを位置付けて実行していきたいというように提案してございます。それを支える基盤技術としては,サイバーセキュリティやIoT,ビッグデータ,AI,デバイス,あるいはロボットセンサー,バイオテクノロジーといった技術に対してそれぞれ達成目標を設定し,それを強化しながら取り組んでいきたいという記述になってございます。
第3章では,13の重要な政策課題ごとに,この第5期科学技術基本計画の執筆で第4期までと大きく変わったところでは,民間の企業の方とか経団連の方々に執筆段階から入っていただいて,先ほど何人かの委員から民間とか企業の取組が重要だというような発言がございましたが,まさに社会実装までを見越したような取組ということでこの5年間を実現していきたいということで書いてございます。その中で,地球環境に関しましても,持続的な成長ですとか国民の安心・安全,あるいは地球規模課題への対応ということで,特に気候変動への対応と生物多様性への対応,海洋,宇宙の開発,利用といったことについて書かせていただいてございます。
余り時間がないのでその後は省略いたしますが,次のページで我々のフレームワークを書いており,総合科学技術イノベーション会議の下に,それぞれの重要な課題を解決する組織,会議体として重要課題専門調査会を設置し,その下に幾つかの分野に分かれた戦略協議会を設置しまして,それを横串的に見るような位置付けとして環境ワーキンググループを設置しております。また,一番右端に緑色で囲ってございますが,新たにエネルギー・環境イノベーション戦略策定ワーキンググループを設置しまして,これは,昨年末のパリでのCOP21における総理指示に対応して,エネルギー・環境イノベーション戦略によってCO2を大幅に2030年から50年に削減していこうということで画期的な技術を特定するという目的で設置された会議体でございます。
次のページをおめくりください。これは重要課題専門調査会と環境ワーキンググループの検討対象ですが,左側は今走っている総合戦略2015で,この中で地球環境情報プラットフォームは,エネルギーシステムの実現の中の一分野として上から二つ目の丸のところに書いてございます。第5期科学技術計画では,3章の中の緑色で書いたところを横断的に環境ワーキンググループが見る形にフレームワークを書き替えていますので,例えば生物多様性の課題や生活環境の保全といった分野に関しても環境ワーキングで取り扱うことになってございます。
最後のページになりますが,環境ワーキンググループで議論すべき課題として,資源の循環利用,生活環境,安心・安全の確保のほかに大きく二つ分野を特定し,地球規模の気候変動への対応と生物多様性の対応ということで,地球観測部会と連携しながら取り組んでいきたいと考えてございます。
内閣府からは以上です。
【樋口環境科学技術推進官】 今御説明したような進め方とスケジュール,内閣府から説明いただいた背景を踏まえ,資料3-2のように部会を設置することでよろしいか,御審議いただければと考えてございます。よろしくお願いいたします。
【大垣部会長】  今の御説明と作業部会の設置について,併せて御意見をどうぞ。
【岩谷委員】  日本ではいろいろな観測をしていて,各機関の観測,そして今後の計画も非常に多岐にわたる分野で,こういう観測が行われればすばらしいとは思いますが,先ほど河野さんから予算が減っているという話もありました。何でこれだけすばらしい観測をしていて予算が減っていくのかが理解できないし,国にとって非常に役立っていると思います。
ただ,予算が減るということは何かしら効果が見えていないのかなとも考えていまして,例えばアルゴや衛星からの観測を見ていても,エルニーニョ現象が分かったり,それが使われて長期予報につながっているのですが,一般の人から見ると,長期予報は役に立っていて,エルニーニョ現象という言葉は聞いたことあるけれども,アルゴ計画なんて知らないというのが一般だと思うんです。その意味では,国民は観測の価値を理解していないので,もっとPRとか観測の重要性を出していかなければいけないと思っています。
観測計画の中で,観測自体は重要ですが,どう国民に理解してもらうか,国民に価値を知っていただくかをもう少し出せるように,計画の中にどこか委員会があったときにも入れていただきたい。そこをやらないと,すばらしい観測はあるけど結局予算がないのでできないというようなことになるのではないかと危惧しております。
また,マスコミにもう少し情報提供して,例えば災害があったときに出せば,観測の結果がテレビや新聞を通じて世の中に出ていきます。いろいろな観測が災害発生からよりリアルタイムに近いところ,若しくは数日以内にすぐ出して使ってもらえれば,その観測の効果が非常に見えるのではないかと。その意味では,マスコミに対する広報の仕方も,基本計画の中で少し考えていただきたいと思いました。
そして,地球観測は重要であるということをPRとしていただきたいのですが,国民に対する,民間利用ということを併せて,例えば民間利用推進のような枠組みをしっかり作る,そして国民へのPRや普及啓発をもう少しできるような枠組みを作るとか,こういったものが必要と思っております。
委員会等がこれから立ち上がっていく中で,可能であれば,ワーキンググループには研究者だけの発想にならないように,民間企業や自治体,NPO,使う側の人たちも関われるように入れていただいて,観測する研究者側とユーザ側でうまくできたらと思っております。
以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございます。天気予報ごとに地球観測の重要性を言っていただくとか。ほかに御意見はいかがでしょうか。
それでは,本部会の下にGEO戦略計画推進作業部会を設置することに御異議はないということでよろしいでしょうか。
それでは,資料3-2の案のとおり作業部会を設置することといたします。作業部会については,本部会運営規則第3条に基づき,部会長である私が事務局と相談しつつ委員と主査を指名させていただきますので,御承知おきいただければと思います。また,今後のスケジュールについては資料3-3の案に基づいて進めていくことといたします。ありがとうございました。
それでは,議題の4に移りたいと思います。今後の「我が国における地球観測の実施計画」の取りまとめについてであります。我が国の地球観測の実施計画は,昨年8月に策定した実施方針に基づき毎年策定することとされております。今回は新たな実施方針の下で策定する最初の実施計画となることから,その策定方針について各委員の御意見を伺いたいと思います。まずは事務局から説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
【樋口環境科学技術推進官】  資料4に基づいて説明させていただきます。
これまで地球観測の推進戦略に基づいて地球観測業務は推進してきておりますが,その後,先ほど中島参事官からも御説明があったようなレビューもあり,本部会において8月に今後10年の地球観測の実施方針をまとめていただきました。
推進戦略の下では,毎年「我が国における地球観測の実施計画」を策定してきましたが,この新しい実施方針の下で,関係府省・機関が引き続き毎年この計画を策定し,この部会では必要に応じて,実施方針とそれに基づく事業の進捗についてCSTIに報告を行うことになっているというのが背景でございます。この「我が国における地球観測の実施計画」の取りまとめですが,これまでの実施計画につきましては年度ごとに別紙1の様式でまとめてきております。ここでは担当省庁を記載し,項目と取組概要,観測対象・地点などが書かれています。その取組があった上で実施方針や分野別の推進戦略のどこに該当するかに丸を振っていただくような取りまとめでございました。
今後の実施方針では,課題解決型の地球観測を志向するということで,地球観測が貢献すべき課題を抽出し,必要な観測内容を示していただいたということで,それを我が国全体で効率的かつ効果的に推進していくことを目指し,今後我が国が新たに必要とする地球観測の内容を俯瞰(ふかん)できるような形で実施計画をまとめるようにできないかと考えております。そのための計画を別紙2(案)の形でまとめ,課題解決型の地球観測の実施内容の現状を把握するということでございます。
別紙2の一番左側に実施方針があり,それに対応するような形で,どういう取組があるか,項目の種別として,観測なのか機器開発なのかデータ利用研究なのか,観測対象は何か,観測主体は何か,観測域や観測地点は何か,観測頻度はどれぐらいか。それから,担当する府省庁や組織の名前,事業名,予算額,新規・拡充,計画期間を書いていただくようなまとめ方にすると,全体が俯瞰(ふかん)できるのではないかと考えてございます。
以上でございます。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
それでは,ただいまの御報告に関して御質問あるいは御意見はございますでしょうか。
【小池委員】  この実施計画を取りまとめるときに,先ほど申し上げた3点を是非考慮いただければと思います。
【大垣部会長】  ほかにはよろしいでしょうか。
それでは,この方針に基づいて事務局にて各省庁・関係機関の地球観測の実施計画を取りまとめていただき,次回の部会で御報告いただきたいと思います。ありがとうございました。
そのほか何かありますでしょうか。特にないようでしたら事務局から連絡事項をお願いします。
【直井地球観測推進専門官】  事務局から連絡事項をお伝えいたします。まず初めに,先ほど議題3で御審議いただきましたとおり,GEO戦略計画推進作業部会の委員及び主査は,部会長に御指名いただいた後に必要な任命手続等を進めさせていただきます。
また,本日の議事録につきましては,後日事務局よりメールで委員の皆様にお送りいたしますので,御確認をお願いいたします。議事録につきましては文部科学省のウエブページで公表させていただく予定にしておりますので,御承知おきください。
次回,第6回の部会につきましては今後日程の調整をさせていただきたいと思っております。今のところ,予備日として確保をお願いしておりました3月25日若しくは新年度に入ってから開催させていただく方向で検討しております。追って連絡をさせていただきます。以上でございます。
【大垣部会長】  それでは,これをもちまして地球観測推進部会の第5回の会合を閉会いたします。本日は長時間大変ありがとうございました。


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