第6期地球観測推進部会(第2回) 議事録

1.日時

平成27年6月19日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所

中央合同庁舎4号館108会議室

3.議題

  1. 全球地球観測システムにおけるGEO戦略計画の検討状況(報告)
  2. 我が国の新たな地球観測の実施方針に反映すべき目標案ついて
  3. その他

4.出席者

委員

大垣部会長、春日部会長代理、赤松委員、岩谷委員、上田委員、沖委員、甲斐沼委員、佃委員、中田委員、浜崎委員、箕輪委員、村岡委員、六川委員、若松委員

文部科学省

田中研究開発局長、原環境エネルギー課長、木下環境科学技術推進官、西川地球観測推進専門官

5.議事録

出席者
 【関係省庁】中島内閣府参事官


【大垣部会長】  それでは、定刻でございますので、地球観測推進部会の第6期の第2回を開催いたします。
初めに、事務局より出席者の確認と資料の確認をお願いします。
【西川地球観測推進専門官】  本日はありがとうございます。
御出席の委員が14名と、過半数11名を超えておりますので、部会は成立となります。
なお、本部会は、部会運営規則により公開とさせていただきます。
配付資料の一覧は、お手元の議事次第に記載しております。クリップ留めの資料でございますが、資料1から資料2-6まで7点の資料、それから、参考資料が4つございます。
【大垣部会長】  本日は、お手元の議事次第にあるとおり、3件の議題を予定しております。
前回の部会では、今後の地球観測の実施方針の最終取りまとめの検討に当たって、担当委員を決めて、グループ討論を進めていただくことになっていました。今回は、このグループ討論の結果を共有し、委員の皆様から御意見を頂きたいと思います。その結果は、次回予定している地球観測の実施方針の骨子の作成に反映できればと考えております。
それでは、早速でございますが、議題(1)に入ります。議題(1)は、全球地球観測システムにおける戦略計画の検討状況であります。事務局から説明をお願いいたします。
【木下環境科学技術推進官】  ありがとうございます。
それでは、資料1を御覧ください。この実施方針の議論を進めるに当たって、GEOの方ではどういった議論になっているのか、進捗状況を御説明させていただきたいと思っております。
資料1、GEO戦略計画の検討状況についてとなっております。今までは、新10年実施計画と呼んでおりましたが、今、GEOの中での議論では、戦略計画という呼び名になっておりますので、今後はGEO戦略計画の名称を使わせていただきます。
では、ページをおめくりいただきまして、1ページ目です。現在、GEOの検討状況がどこにあるのかというのを示した図でございます。右上の本年11月の本会合、閣僚級会合での採択というのがゴールになります。今年になって調整が本格化しておりまして、左下の2015年3月のGEO執行委員会の前に、第1案が出たところです。そこで、各国の議論を踏まえて、今、第2案の準備が進められているところです。7月8日から9日に開催される執行委員会に当たって、第2案というのが提示される予定になっています。
それまでに途中どういった議論があったかと申し上げますと、5月には、Work Plan Symposiumで、GEOの個別の協力活動に参加している研究者が集まりました。その中で、この戦略計画についても議論をしたところです。また、5月24日には、東京で「地球観測の可能性と将来に関する国際シンポジウム」という銘を打ちまして、議論をさせていただきました。それから、5月25日と26日には、東京で第6回IPWGと呼ばれる専門家会合が開催されて、その議論を基に、今、第2案が準備されているという状況になります。第2案は、先ほど申し上げましたとおり、執行委員会に提示された後、国内の関係者からのコメントを頂いて、フィードバックをする予定にしております。それを踏まえて、9月に第7回IPWG会合で第3案が作成されて、GEO戦略計画の策定に向かって議論が収れんしていくという予定になっております。
本日の議論に関連して、GEOでは今どういった分野やターゲットが議論されているかというのが、次の2ページ目になります。左側にGEOSS10年実施計画という現行の計画の社会利益分野(SBA)を書いてあります。右側に、戦略計画第1案として提出されている分野を書いています。BiodiversityとEcosystemsは一つに合体し、Agriculture、 Disasters、Energy、Health、Waterはそれぞれ右側に書かれた分野名に変わっています。ClimateとWeatherがなくなっており、代わりに、Urban ResilienceとInfrastructure and Transportation Managementというのが追加で提案されています。

5月24日のシンポジウムでの議論では、このClimateとWeatherが抜けているのは問題ではないかという議論があり、Adaptation and Mitigation to Climate Changeという分野が必要なのではないかという提案がありました。ただ、それでは分野が増えてしまいますので、Urban ResilienceとInfrastructure and Transportation Managementという、新規に追加されているものは、一つに合わせて、Urban Resilienceで良いのではないかという提案をさせていただいて、今、IPWGの方の議論に提案するとともに、次の7月の執行委員会でも、改めてその旨を提案したいと考えているところです。
そして、3ページ目では、今、一応8分野提示されていますけれども、それらがどういったことが書いてあるのかという御紹介です。
Disaster Resilienceですと、災害に備え、予測、軽減、対応、回復する能力を高める。
Food Security and Sustainable Agricultureですと、全球の食糧及び農業生産における開発、管理及び予測を支援する。
Water Resources Managementですと、質を維持しながら多目的な利用に供する限りある水資源の管理を向上する。
Energy and Mineral Resources Managementは、鉱物、エネルギー、再生可能及び再生不可能な資源の発見、開発及び管理を促進する。
Biodiversity and Ecosystem Conservationですと、持続可能性及び地球生態系システムの健全性に関する重大な情報の提供、社会への主要な生態系サービスを提供する。
Health Surveillanceですと、マラリアに代表される昆虫媒介性疾病及び環境汚染等の環境関連疾病リスクに対する理解を深める。
Urban Resilienceですと、増加する都市化及び開発のフットプリントに関する客観的な情報の提供、及び持続可能な都市の発展を援助する。
最後、Infrastructure and Transportation Managementということですと、インフラストラクチャ(ダム、道路、鉄道、港、パイプライン)と輸送(空路、陸路、海路)の計画、監視及び管理を支援する。
こういった提案がなされているという状況でございます。
資料1につきましては、以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
ただいまの説明に関しまして、御質問等ございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょう。
【甲斐沼委員】  Climateがなくなったという経緯と、それから、今おっしゃったように、Adaptation and 、Mitigation to Climate Changeを再追加と出して、新規に提案されている2つをUrban Resilienceとして統合を一緒にする。といった提案そういったことを言っているのは日本からだけなんですか。ほかの国からは、Climateを落とすのに異論はなかったかどうか教えてください。
【木下環境科学技術推進官】  Climateが今ないという理由については、余り詳しい情報がないのですが、聞いているところですと、Climateというのは、今ある8分野どれも関連し得る話だということで、少し次元が違うのではないかという指摘があったと聞いております。
一方で、Climate、AdaptationとかMitigationが必要ではないかという点につきましては、日本がまず手を挙げて発言はしているのですが、例えば、先ほどの1ページ目のWork Plan Symposiumであるとか、5月24日の国際シンポジウムでは賛同を得られていますので、問題意識を持っている方は日本だけではないと思っているところです。
【大垣部会長】  ほかになければ、よろしいですか。
それでは、次の議題に移りますが、議題(2)は、我が国の新たな地球観測の実施方針に反映すべき目標案についてであります。
前回の部会では、新たな地球観測の実施方針の検討に当たり、必要に応じて有識者を部会に招き、意見聴取を行うこととなっていました。この部会にも様々な分野で知見を有する委員が多数おられますので、まずは委員の中からお話を頂きたいと思います。
先ほどGEOの新しいSBAの案の紹介がありましたが、地球観測の推進戦略ではまだ十分にハイライトされていない健康分野での地球観測の可能性について、上田委員に話題提供をお願いしております。上田委員、よろしくお願いいたします。
【上田委員】  よろしくお願いいたします。京都大学の上田でございます。
資料2-1を御覧ください。今回、お題を頂きまして、地球観測情報の公衆衛生にどういった応用ができるのか、そして、現状、取組、何が行われているか、そして、それに対しての課題について御説明できればと思います。
これに関しましては、私だけでなくて、長崎大の熱帯医学研究所、あるいは、東京大学の橋爪先生、渡辺先生、そして赤松委員からいろいろと御助言を頂きまして、まとめております。
では、おめくりいただきまして、2ページをよろしくお願いいたします。「健康にかかわる観測」の目標としましては、例えば、健康と安全・安心な暮らしを確保するため、大気汚染物質の実態などを把握する。あるいは、感染症の伝播(でんぱ)経路を特定し、感染拡大を防止するため、感染症の発生状況、媒介生物の出現状況などを把握するといったことが挙げられます。
ただ、具体的には、観測側は、誰と、どういった連携関係を構築して、どういったアクションを起こすとよいのか、こういったということがこれまで余り検討されていないのではないかということで、これまでの取組について、事例を交えて説明いたします。
では、3ページ目を御覧ください。1つの適用としまして、全体的にまず見ますと、現時点では、例えば、疾患の把握、感染症の発生状況や媒介生物の出現状況の把握、直接それら疾患の状況を把握するというのは、地球観測ではなかなか難しい状況です。この下の図でいいますと、左側の部分、人の健康の状態については、直接は観測することは難しい。ただ、右側の部分、媒介生物の出現状況だけでなくて、疾患の発生に関わる環境因子、例えば、媒介生物に関連する環境因子、土地利用や水たまりの状況、あるいは、ヒートアイランドや表面の温度、そして、大気汚染物質濃度、土地利用、こういったものを観測することによって、健康の状態を間接的に把握することが可能ではないかと考えております。
そして、具体的な例としましては、4ページを御覧ください。今、主に取組がなされているのは、熱帯医学研究所の橋爪先生のグループを中心に、感染症についての把握ということが進められています。1つは、Victoria湖におけるホテイアオイの繁殖。このホテイアオイが繁殖すると、コレラ(下痢症)が発生する。そういった関連を把握することによって、それを予測する。そういったモデルを構築することができます。あるいは、植生指数(NDVI)を検討することによってマラリアの発生を予測するようなことができる。また、通常はアフリカなのですが、ポリオウイルスは糞便(ふんべん)を介して感染が伝わっていくので、土地の起伏のデータを使って、下水が溜(た)まりやすい場所を特定する。そこをサーベイランスとして検査することによって、そこにポリオウイルスが検出されると、その上流の村々で予防の取組ができる。こういった取組をできる可能性があるのではないかということが言われております。
そして、次の5ページを御覧ください。気候変動に関連しての健康の影響というのは、高温による影響が言われています。これは東京大学の取組なのですが、ヒートアイランドと下痢症との関連です。衛星情報を用いて、地表面温度をかなり細かく把握できます。そして、ヒートアイランド現象の起こっている地域のうち、衛星画像と健康データを用いた分析によって、あらかじめホットスポットを同定する。そして、その情報と地上観測による警報体制とを組み合わせることで、より効果的な熱関連疾患の予防システムを作ることが可能ではないかということが考えられております。
また、3つ目の事例としましては、6ページ目を御覧ください。これは大気汚染濃度の把握に地球観測情報を用いることができないかということです。日本においては、私も研究が大気汚染の健康影響なのですが、地上観測網が整っています。一方で、例えば、発展途上国、アジアやアフリカでは地上観測網が整っていません。そういうところで、どうやって曝露(ばくろ)情報を得るかというときに、この地球観測情報、衛星の情報によって大気汚染物質濃度を把握することが可能ではないでしょうか。また、日本国内においては、黄砂の健康影響にかなり関心が高まっていますけれども、こういったものも、黄砂の空間的な変動や粒子の量などを、地球観測の情報を使うことによって把握することが可能ではないかと考えております。
さらに、7ページ目に移ります。こういった、主に衛星画像を使った地球観測情報を公衆衛生への利用を促進するためには、どういったことが必要かということを考える前に、まず課題として少し挙げられるのが、そもそも私たち健康影響を担当する研究者が、どのような指標があって、その指標が何を意味するかということがよく分かっていないということです。何か研究はしたいので、こういったものは使えればいいとは思うのだけれども、どういった指標があるかが分からない。あるいは、ユーザー・フレンドリーな衛星データというのがあればいいなという、こういった希望があります。
例えば、空間分布や時間分布の情報については、私たちも分かりやすいのですが、私たちの頭の中には、鉛直方向の分布の情報があるということ自体がありません。健康影響というのは、基本的には地上レベルの観測の情報が必要なんですけれども、実際には、大気観測をしている方というのは、もっと上空のレベルで話をすることが多くて、話がかみ合わないことが多いということがあります。こういったところの話合いが必要です。
そして、これは橋爪先生からの御指摘だったのですが、画像を数値に変換する翻訳者、研究に必要な情報を適切に画像に加工して解析し、データを適切に抽出してくれる人がいるといないとで、全然研究の進み具合が違う。こういったことが意見として出されました。
そういったことから、観測側と健康側の研究者の意見交換をまず持つことが必要、重要ではないかと私たちは思っているわけです。ただ、これまでは個人的な研究者間のつながりが多いというのが現実でございまして、学会の間での、例えば連携研究会など、そういったものがあって、トータルで皆さんのお話ができる機会が持てるといいのではないかといった御意見がございました。また、観測側の要望としましては、健康側からどんなデータが必要かとか、そういった具体的な要求がある方が、こちらとしても考えやすいといった御意見もございました。
具体的に観測対象別の課題としましては、8ページ目になります。
感染症としては、直接、感染症発生状況や媒介生物の出現状況を観測できるわけではないという問題があるのですが、土地被覆や利用、水たまり、地形等、感染症発生や媒介生物の出現と関連する環境因子を観測することによって、それらが発生しやすい場所を同定・予測することが可能という、そういったことで課題を克服できるのかなと考えます。
ヒートアイランドについて言いますと、これは私の個人的な考えでもあるのですが、リアルタイム性はどうなのかということが非常に気になるところです。そして、地上観測との併用はできるのかどうなのか。
また、大気汚染の観測については、鉛直方向の分布についての理解が必要不可欠である。
そして、水質に関する情報の解析利用というのは数多くされているとはお聞きしています。私もちょっとそのあたりは把握できていないのですが、水系感染症のリスクの把握には、そういった情報を使うことによって、有効ではないかと考えております。
そこで、9ページに、こういった「健康にかかわる観測」の目標を達成するためには、まず今どのレベルなのかというと、具体的な施策というよりは、むしろ感染症の専門家、疫学者、現地の公衆衛生担当者と、公衆衛生の改善に役立つような衛星画像から得られる環境指標、及び解析に必要な空間分解能、そして、時間分解能についての意見交換、情報共有を行うというのが非常に大切ではないかと考えました。
具体的にそれを図に示しますと、10ページになります。1つの例ですけれども、地球観測から公衆衛生改善にはどういった流れがあるかということで示しております。左側、リモートセンシングが情報の提供者であると考えます。そして、観測の打ち上げ、センサー作成やリモートセンシングに関しては、打ち上げや運用の技術や体制については、かなり充実している。ただ一方、途中の画像の加工・解析、こういったことの経験や人材というのが必ずしも十分ではない。ここの点線のところは、そこのつながりが薄いということで書いておりますが、特にそこのつながりを補強する必要があるのではないでしょうか。使用者である感染症の疫学者、あるいは環境疫学者が、こういった情報の提供者と使用者とのコミュニケーションを介して、観測で得られた情報を有効利用することによって、それを更に現地の公衆衛生の担当者にこういった情報を提供して、公衆衛生、疾患の予防に役立てることが可能ではないかと考えます。
一方で、これまでお話ししてきた内容、特にこれまでの取組というのは、国外の取組が主であります。国内についての取組というのは余りイメージしづらいというのがあって、実際、国内の具体的にもしそういうのがあれば、それを出すことによって具体例があれば、例えば、国内の公衆衛生関連の研究者に、そういったインパクトがある、こういった理由があるよというふうに説明ができる、そういったことができるのではないかというふうな御意見もありました。
そして、1つの案としまして、今、個人的なつながりでしかコミュニケーションがとれていないということに対して、どういったことをやっていけばいいかということになります。そこで、11ページになりますけれども、現状としては、一番上の、個別の研究者間のコミュニケーションでありますが、それを、実際どのようなデータが共有できるか、応用可能性について、提供者側からもある程度情報を提供する。使用者側からとしまして、公衆衛生の問題を解決するために、どのようなデータが必要かということを話し合っていく。その後、使用者からのフィードバックを基にして、画像の加工・解析の方法に関する情報共有をしていく。これを今進めていかなければいけないところではないかと思います。さらに、今、個別の事例に対して、個人的なコミュニケーションであったものを、より多くの研究者間で進めていくためには、具体的には、各分野の学術総会でのシンポジウム、あるいは、既存の研究プロジェクトとの連携、そういった共同研究の公募等、そういうのがあると、よりコミュニケーションが進むと考えております。
そして、12ページは、これは個別の課題に対しては、どういった連携があるのかということで述べております。感染症、気候変動、大気汚染についても、恐らく省庁も少しまたがるところがあります。そういった連携も必要ではないかと考えております。
以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
それでは、ただいまの御発表に関しまして、御質問、あるいは御意見等ありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
【赤松委員】  ちょっと追加というか、情報提供になるんですけれども。
11ページのところで、下の方に、より多くの研究者間のコミュニケーションをやっていきましょうという話がありますが、今まで確かにリモートセンシングの分野で、疫学などの分野とか、そういうのって余り取り組まれてきてはいなかったんですね。私は、リモートセンシング学会に関わっているのですが、学会の活動の中でもこの分野の事例数は少なくて、やはり今までそこら辺の取組がちょっと不十分ではなかったかというところがあるかと思います。
今年の11月26~27日に秋季の学術講演会を長崎で行うのですが、そのときに長崎大学の熱帯医学研究所と連携して、学術講演会をやることになっております。まさに、そういう疫学とリモートセンシングの連携というものをこれから取り組もうとしているところでございまして、そういった取組がちょうど始まっているということを情報提供させていただきます。
【大垣部会長】  ありがとうございます。
では、沖委員。
【沖委員】  ありがとうございます。
まさに今のコミュニケーションのところなんですが、データ提供者と使用者という言い方をしてしまうと、ちょっと古い話で恐縮ですが、「あなた作る人、私食べる人」というのは、非常に物議を醸し出して。つまり、リモートセンシングデータを提供する側(がわ)は、特段新しく面白いことはないんだけれども、利用者側にとっては、それが使えると非常に研究が進むというのは、利用者側はうれしいと思うんですが、提供者側として、やはり何か研究開発の要素がないと、多分、使われるだけみたいなことになると思うんですが。その辺は、データ提供者側にとっても面白い、新たなやりがいのある研究テーマ的なことがありそうなのかどうかということについて教えていただきたいなと。ですから、どちらかというと、赤松先生。
【赤松委員】  例えば、今の疫学みたいなものを取り上げると、今まである意味ターゲットにしていなかった領域ですので、そこで今まで我々がやっているリモートセンシング技術が適用できるのか検討が必要ですし、ないしは、今まで持っているものだけでは足りないというところが恐らく出てくると思うんですね。
我々は、観測して、解析してということをやるのですが、もう一方では、実は、リモートセンシングを実用に持っていくためには、他情報の併用やモデリングとか、そういったところまで、かなり踏み込んでいかないといけないのではというのがあります。そういうことを考えるときに、疫学というのは、恐らく、単純に今までやってきたようなスペクトル解析の部分だけでは対応できないところが結構出てくると思うんですね。ですので、そういった新技術の研究や、新領域に踏み込んで利用を開拓していくという意味でも、新しい取組というのが必要になってくると考えています。
【沖委員】  ありがとうございます。
【大垣部会長】  ありがとうございます。
どうぞ。
【若松委員】  4ページで御紹介いただいているポリオウイルスの話で言うと、これ、私作る人で、弊社で作ったデータを、WHOさんに使っていただいたものです。この話も、最初、私、WHOさんが買ってくれてという話は、ちょっとびっくりしたんですね。何に使うのかなという感じで。ただ、よくよく聞いてみると、やっぱりこの話もゼロから始まったプロジェクトではなくて、もともと彼らはGIS、地理情報システムを使って、今までもやっていましたと。そこに、より細かい起伏データがあるというので、差し替えてもらったというようなことでして。ですから、疫学の分野でも、いろんな地図を使ったような研究をされている人たちに、こういうデータも衛星から採れるんだよということをアピールして使っていただくようなやり方を、やっぱり少し追っかける必要があるのかなと思いました。
【上田委員】  ありがとうございます。
まさに疫学の分野でも、日本疫学会ではいろんな疫学をやっています。私は環境疫学で、いろんな分野があるのですが、今、特に若手の間では、GISを使った空間疫学の分野にかなり関心を持っています。実際に、来年の1月に環境疫学会でGISを使ったセミナーがあるということですので、このような機会を利用して、そのときに、こういった衛星情報が使えるという紹介があると、そのあたりコミュニケーションが一層進むというふうに思います。こういった情報も使えるということで、利用の幅が広がると考えております。
【大垣部会長】  ありがとうございます。
よろしいでしょうか。それでは、次へ移りたいと思います。
続いて、前回の部会で分担した各グループから御報告を頂きたいと思います。
初めは、活力のある社会の実現のグループから。まず、取りまとめ役の六川委員、よろしくお願いします。それで、発表は15分程度ということになっておりまして、御質問はまとめて時間を設けますので、よろしくお願いします。
【六川委員】  それでは、お手元の資料2-2についきまして御報告させていただきます。
活力のある社会の実現ということで、現在から将来にわたって、発展途上国・先進国の区別なく、人類全体が安心して豊かな生活を営むということで、非常に重い課題です。最初の議論では、将来像としては、やはり重視すべきという分野を最初に挙げました。
ということで、そこに4つほどございます。まず、食糧や水資源に関するセキュリティの確保。
2番目は、エネルギーや鉱物資源に関するセキュリティの確保。
3番目としましては、環境と調和した社会の実現。生態系サービス。サービスというのは、生態系に伴って我々が享受しています。それから、いろいろなワクチンを作るような話もそうですけれども、そういうようなところ。それから、気候変動の緩和と適用。
最後は、今まさしく議論がございましたけれども、感染症の予防、熱中症というようなことで、健康に暮らせる社会の実現ということです。基本的には、食糧、水資源、エネルギー、環境調和、健康というのを、将来像というキーワードに掲げまして、2番目以降の議論を進めさせていただきました。
それから、10年後に実現すべき社会像ですが、10年後ですので、長いようで非常に短い、ショートレンジという見方もありますし、やや中期かなという見方もありますけれども、考え方としては、まず、国が定めております各種基本計画等、そういったものは取り入れましょうと。それから、本年の3月の閣議決定もございましたけれども、そういう「食料・農業・農村基本計画」といったものも十分配慮した、そういう形で議論いたしました。
それで、まずポチが2つございますが、最初の2つは、やはり気候ですとか、農林水産業ですけれども、まず10年ということを考えますと、気候変動に適応した形での世界の食料や水資源の安定、供給されるということを目指す必要がある。
それから、2番目は、農林水産業ですけれども、この生産性ということで、地域の活性化、食料の自給率、それから、農水産物の輸出等による経済発展、この2つを社会像のやや具体的な姿として挙げました。
それから、エネルギーにつきましては、次の2つですけれども、再生可能エネルギーというのは利用が進むということで、化石燃料への依存が低下していく。それで、そういうことを通して、温室効果ガスの排出抑制ということになるわけですけれども、基本的には、これを進めることによって、我が国が国際社会に対する責任を果たすんだ、こういうスタンスでございます。
それから、その次は、これはやや日本の資源戦略ということになるかと思いますけれども、当然、海底下の環境ですとか、そういうことに配慮することですけれども、深海近辺にあるメタンハイドレート、それから、南鳥島近海等の海底の泥に含まれるレアアース等の賦存量が明らかになることによって、従来のエネルギーに対して、逆に我が国が、「資源大国」とはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、輸入オンリーという我が国の方向が少し変わる。こういうことも視野に入れる必要があるのではないかということです。
それから、その次が環境になりますけれども、生態系から我々が享受するものを、もう少し適切な利活用ですとか、それを積極的にやるというようなことを進めてもいいのではないかという点が1点。
それから、気候変動に伴う災害等ございますけれども、それに対する防災・減災、とりわけこの辺が、我が国の置かれる立場を考えますと、重要な点かなということ。
それから、後ろの方に説明がございますREDD+ですけれども、その取組で、いわば森林の減少・劣化を把握するということと、それと、経済メカニズムというようなものを含めた上で、温暖化の進行が抑制されるという、そういう社会像を描いております。
それから、次は、今度は気候変動をプラスと取るべきか、なかなか微妙ではありますけれども、北極海の氷の減少によって、北極海航路という可能性が非常に出てまいりまして、物流という意味では、それをどういうふうにしていくのか。一方、北極というのは、いろんな生態系の始発点になっているようなところもありまして、それについて、北方についての力点を置くということかなと思います。
それから、大気汚染等。これはグローバルな問題ということですが、ここ10年ということでは、大気汚染の問題、それから、今お話がございましたけれども、世界的な感染症の拡大が、それなりの取組によって抑止されるというようなイメージを持っております。
それから、ちょっと北極海の例を示しましたけれども、やはりどうしても食料や資源というものの争奪といいますか、それをどう確保していくかというのは、各国においても非常に死活的な問題でもあるということになります。逆に、それをグローバルな目で見ることによって、それを未然にといいますか、緩和していくというようなことによって、これらの課題が顕在化・深刻化ということが回避される、こういう絵を描きたいということでございます。
以上、10年というようなことで、いろいろ書きましたけれども、基本的には、我が国の国際社会におけるポジショニングを高めるということも、日本の在り方としては非常に重要であるし、世界全体に対する貢献ということにつながるということでございます。
それから、3番目につきましては、上記の社会像を実現するために、具体的にどうするのかということで、10年のことを踏まえて、ざっと挙げました。
まず地球観測ということの最大のメリットといいますのは、宇宙というのは、ある意味で国境がないということもありまして、グローバルなデータを把握できるということです。そういうメリットを生かして、定常的な観測の継続といった体制、特に北極海等につきましては、日本は、レーダー衛星を中心に、非常に実績がございますが、やはりそういう世界的な貢献があるようなものも含めて、定常的な観測を続けるということが、社会像としては必要でしょう。
2番目としては、これは自然環境の価値ということですが、先ほどちょっとモデリングという話もありましたが、より定量的に把握する手法の開発が要るでしょうというのが2番目。
それから、3番目ですが、恐らく衛星だけではなかなか問題解決にいかないということもありまして、観測一つ取りましても、ほかのやり方、グライダー、アルゴスブイ、場合によったら、航空機を活用するというようなこともあり得るかなと思います。
それから、気候変動の解明、予測精度の向上も挙げました。
その次が、開発途上国においては、全国レベルから地域レベルの森林の現況・減少・劣化ということは、なかなか基本的なデータが把握できていないということかなと思います。それから、季節変動がございますので、特に先ほどのREDDのような話が来ますと、ある種の森林としての価値ということもございますので、シーズンの把握というようなこと。
それから、極域におきましては、特に海運ですとか、実務利用の観点から見たときの雪氷ですとか海氷の分布というようなことを把握する。
その次、これはある意味で日本の社会のメリットを生かすという意味では大事かと思いますけれども、市民参加型の観測と書きました。最近ですと、スマートフォンもそうですけれども、いわゆるクラウド型のICTといいますか、それの活用というようなことをやって、地球観測に分野においても、市民一人一人が主役になるというようなことによって、日本の社会のメリットを生かしていくという方法ですね。
それから、あとは、解析につきましては、今の市民のような参加がございますと、じゃ、最終的に指標ですとかをどうやって出すかということで、1つのいわゆるビッグデータとしての解析、それから、データサイエンティストというような職種の中での付加価値を生み出すというような仕組みの開発ということが挙げられる。
それから、次はある種類似ですけれども、いわゆる人工知能的な活用ということで、ディープラーニングと書いてありますけれども、そういったことによって、高次の抽出と利活用、これが技術立国としての1つの大きなキーにもなりますが、そういう姿を描くと。
それから、もう一つは、宇宙の苦手としておりますリアルタイム性。気象観測は静止衛星ですからいいんですけれども、このリアルタイム性ということをもう少し上げていく。それから、あとは、オープンデータとしての活用という絵姿です。
それから、その次は、先ほども議論ありましたけれども、衛星でモニタリングするだけでは、最終的なそれを活用する姿に持っていけないということで、モデリング、それから、よく言うフィードバックサイクルの確立、それから、アウトカム・アウトプットを踏まえたシステムの社会実装といったことも視野に入れて対応するということが重要であるという指摘であります。
それから、高齢化社会ですので、それに対する地球観測の貢献の明確化。恐らくGPS等も含まれると思いますけれども、そういうようなこと。
それから、日本がある意味では得意としなければいけないと思いますけれども、科学技術外交として、地球観測の在り方を明確化していきますということですね。
それから、狭い意味での安全保障ではなくて、広義の安全保障ということ。食料もそうですし、やっぱりそういう広義の安全保障ということで、日本がどうあるべきか、どう貢献すべきかというようなことが大事かと思います。
それから、次のページですが、より実効性の高い人材育成と理解の増進。ここは1行で書いてありますけれども、ここのところは、先ほどの市民参画ですとか、若い人材をむしろ実業に近いPBL型の教育ですとか、そういうところでもう少し巻き込むような工夫が必要かなと、個人的には思っております。
4番ですけれども、具体的な観測に少しずつブレークダウンしていきますが、まずは共通基盤的観測としまして、そこにございますような、大気、気象関係、海洋、土地被覆、それから、先ほどの赤松さんのお話にありました、インフラとしての地図情報、地形情報、こういったものをきちっと整備・把握するという点が、基盤としては必要な観測であると。
それから、食料に関しては、現状をより数理的な形で把握することと、それから、それに関連して、少し物流といった観点からも把握するというようなことが、より出口を意識した場合には必要であるということです。
それから、水産物の場合には、資源の確保や量、漁場、こういうところを把握していく。ある意味では、水産、今の漁業の船というのは、ハイテクの塊になっているのですが、そういうようなところをよりシステマティックにしていくと。
それから、水循環・水資源に関わるところですと、治水・利水、それから、災害の観点からは、それの削減、そういうようなこと、それから、健全な流域の水環境、水資源の管理ということが必要かということですね。
それから、エネルギー・鉱物資源については、これはちょっと安全保障の面もございますけれども、新エネルギーで言えば、風力発電、太陽光などの再生可能エネルギーの安定的確保になるのですが、まず風況(ふうきょう)、日射量、これはある程度やられていますけれども、そういうような世界。
それから、これは資源のエネルギーセキュリティということになりましょうけれども、我が国のエネルギー資源の現状、それから、先ほどちょっと出てきましたけれども、レアアース・レアメタルというような地質に関することですね。
それから、生態系サービスですけれども、これは環境調和というのが基本ですが、森林の現状、生態系の把握、それを定量的に把握して管理をしていくということかなと思います。
それから、気候変動の緩和・適応ですが、これは正確な森林の現況、過去から将来にわたっての森林減少・劣化というようなことを把握していくということ。それから、北極海航路の運用のための、雪氷分布の周期といったものを短周期で把握するというようなことも、必要なものとして挙げられております。
それから、健康に関することですと、大気汚染物質の実態、それから、感染症の伝播(でんぱ)経路、こういったことを把握するということが挙げられております。
それから、観測の利活用と体制ですけれども、これは欧州にならうということではないのでしょうけれども、やはり少し総合的な利用プロジェクト単位ということで、官民連携での観測・解析・利活用、それから、いわゆるエンドツーエンドになりますけれども、アプリケーション開発と現業ユーザーへの普及を促進するというようなことですね。
それから、官庁ユーザーの実務においては、既往の手法を地球観測手法に転換する、そういう事業枠を政策的には少しやるということをしていく必要があるのではないか。先ほど議論がありましたけど、既存のものを宇宙レベルのものに置き換えていくということ。まずその辺から始めて、政策誘導によって地球観測の利活用を図るということも必要であるという意見が、今後少し行うべき必要なこととして出てきております。
それから、REDDの説明につきましては、そこにございますように、基本的には、森林の減少・劣化の抑制等による温室効果ガス排出量の削減ということになっております。
ちょっと急ぎ足でしたけれども、以上でございます。ありがとうございました。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
それでは、質疑は取りまとめて行いますので、次に、「防災・減災への貢献」についてであります。本日は、取りまとめ役の寶委員が御欠席ですので、代わりに浜崎委員にお願いいたします。
【浜崎委員】  浜崎でございます。寶先生、佃先生、浜崎の3名で、テレコン、メール等による議論をいたしまして、最終的に寶先生に取りまとめを頂きました。浜崎から報告いたします。
まず、全般的に「防災・減災への貢献」という観点で、何のためにやるかというトップレベルの議論をいたしました。
まず、自然災害等につきまして、そのリスクを予知して、それを情報提供して、損失や被害を予防し、あるいは軽減すること、さらには、より良い復興に貢献するという5つの大きな項目がございます。これらに対処するためには、観測をするだけでは不足でありまして、そのデータを加工した形にして、国や地方自治体、あるいは企業・団体、個人を含めた方々の行動判断につなげていただけるように。要するに、観測したデータそのもので、例えば、雨がどれだけ降ってきますということではなくて、さらに、それが皆様の行動判断に資する形のところまで加工した形で提供していくということが非常に重要だということが、1つ目のポイントでございます。
2つ目には、災害リスクというのは、災害事象の大きさだけではなくて、受ける側(がわ)の人の人数とか、資産とか、社会や人の脆弱(ぜいじゃく)性によって大きく変化するということで、災害そのものを観測するだけではなくて、被災する側(がわ)の人の動態とか変化、それから、脆弱(ぜいじゃく)性など、これも併せて把握するということが重要だということが、まずトップレベルとして大きな事項ということで、挙げさせていただきました。
2番目の項目で、全体としての貢献項目を幾つか例示しております。
1つ目が、広域波及災害です。まず、地震や津波、台風、森林火災など、非常に広い範囲にわたって起こる事象につきましては、この予測精度を上げるということで、被災の範囲を予測すること、あるいは、被災後には、その被災の範囲を確定すること、それから、これに関連して行う波及的な現象の予測をすることが大事だということでございます。
2つ目は、予兆現象ということで、例えば、大気や地表面の様子を常時観測し、その変化を観測するということで、災害発生の何らかの予兆になるような現象が把握できる。例えば、火山噴火などにつきましては、全てではありませんが、現在でも幾つかそういうような予兆、幾つかのケースで予兆が観測されている事例もありますので、このようなことで貢献できていくのではないか。
(ウ)の項目といたしましては、危険地域のリスクとその変化を把握する。当該地域を常時モニタリングしておいて、それで、リスク等の変化も起こってくるわけで、そこを常に把握しながら、ハザードマップ等の整備等をしておくということ、あるいは、それを見直していくということでございます。
2ページに行っていただいて、どんなことを実施するかということでございます。これまでは、例えば、地震や火山噴火など、災害現象の監視とか観測を主に行ってまいりました。すなわち、現象そのものの観測ということに重点が置かれていたわけですが、今後は、それだけではなくて、その起こる周辺の環境も含めて、しっかりと観測をして、それを効果的に組み合わせるということが必要だという指摘でございます。
(1)の項目といたしましては、観測をしただけではなくて、それと災害予測のモデルとを効果的に連動させること。例えば、現状でも気象観測の場合には、観測したデータが予報になり、更に警報になるということで、観測と予測モデルがうまくつながっている1つの成功事例がございます。この分野でも、まだ精度としては更に向上する必要があろうかと思いますが、このようなことを1つの事例といたしまして、火山の噴煙、あるいは、森林火災のよる煙害等の予測につきましては、大気拡散モデルを使って、比較的近いところでこのアプリケーションは可能ではないか。さらに、将来的には、津波の予想等も可能になってくるのではないか。現時点でも、遠地の津波の場合には、国際的連携組織ができておりますが、まだ精度が不十分というようなことも伺っておりますので、これについての改善が必要という指摘でございます。
2個目といたしましては、災害データと関連観測データのアーカイブでございます。GEOの第1期では、災害に係る現象の把握と解明ということ、それから、社会に貢献できる利用分野を特定できることに集中したというのが、後付けの評価だと思います。さらには、データも、可能な限りの観測データ、衛星のみならず地上データも含めて、これを収集して、1つのデータベースとして管理して、共通のゲートウェイで提供するという、DIASという仕組みもしっかりできてきたというのが、1期のざくっとした評価だと思いますが、これに対して、更に予兆現象を検出していくためには、発生直前のデータ、その地域の観測データが、差分を取るためにも重要であります。それから、発生時、発生直後だけではなくて、場合によっては、非常に長期的にトレンドが重要な場合もありますので、そのような履歴観測データも重要になります。例といたしましては、東北大学の災害科学研究所に災害統計グローバルセンターというのが設置されておりますので、この統計データと地球観測データをうまく連動させて、これを防災政策に活用できるようにできるのではないかという提言をさせていただきました。
3番目には、国際連携と防災の人材育成でございます。GEOの1期では、地球観測衛星等を使って、特に全球とアジア地域において、発災(はっさい)直後の被害を把握する災害時の緊急観測のシステムが整備されました。さらには、アジアの一部の地域においては、この衛星データを活用したハザードマップも整備されるという状況になっています。これに対して我が国は主導的な役割を果たしてまいりまして、国際災害チャータに参加するとともに、センチネルアジアという協力枠組み作り、さらには、日本のデータを使って海外の災害状況把握等に貢献するなどをやってきております。これらの実績に基づいて、今後更にこの連携を進めていく必要があると考えています。さらには、人材育成も非常に大きな課題でございまして、地域ごとに専門家の育成を図るということ。このためには、大学や研究機関、研修機関も活用する必要があると考えています。
4番目の復興でございます。これまでは、どちらかというと原状復帰ということが中心になっておりましたけれども、先日行われました仙台の国連防災会議でも、「より良く再建する(Build Back Better)」というのが優先行動項目の一つとして掲げられるという状況から、これにも大きな貢献ができるのではないかと考えています。例えば、復旧・復興の状況を把握することも可能ということでございますが、これは単に建設事業がちゃんと予定どおり進展しているかということだけではなくて、被災地の環境そのものがどのように回復してきているのかとか、あるいは、復興によってほかの環境に悪い影響を与えていないか、あるいは、工事が新たな災害リスクを発生させていないかというような形で、非常に広い形での復旧とか復興への貢献が可能であろうと考えております。
4ページに参りまして、じゃ、何を目指すのかということですが、これにつきましては、3月の国連防災世界会議で、「仙台防災枠組」というものが策定されておりまして、この中で、2030年までの15年間の目標というのが既に掲げられております。世界レベルで、(a)から(g)にありますように、災害による死亡率を大幅に減らすこと、被災者数を大幅に減らすこと、経済損失を減らすこと、医療などの重要インフラを強靱(きょうじん)化すること、防災戦略を持つ国を増やすこと、途上国への支援を増やすこと、それから、早期警戒システムを更に整備することなどの項目が出ていること。さらには、それぞれのレベルで取り組むべき4つの優先行動項目ということで、災害リスクを理解すること、災害リスク管理のためのリスクガバナンスを確立すること、強靱(きょうじん)性に向けた防災への投資を行うこと、それから、Build Back Betterということで、これらの項目は既に仙台防災枠組等で国際的にも合意されておりますので、基本的にはこの線に沿っていくことが重要だろうと考えています。
これらを踏まえた上で、それではどんなことができるかということで、10年後の目標というのを、要するに、GEO第2期の10年後にどういうステートになっているといいかということを考えてみました。
(1)としては、コンピュータシミュレーションが今後どんどん進みますので、地球観測データの整備、データ同化技術を更に開発して、これをうまく使えるようにする必要があること、5ページに参りますと、災害関連データ等のアーカイブをきっちり進めること。先ほど申し上げたように、行動判断に資する情報提供を目指すという観点から、予防、災害直後の状況把握、復興段階、この全ての段階で、しかも、国内だけではなく、アジア、全球を全部含めた形での防災システムを実現することが肝要だと考えています。そのための手段としては、衛星のコンステレーション、搭載センサーの高度化が必要でありますし、それから、データアーカイブの中から必要なデータを取り出して統合解析するようなシステム、あるいは、使いやすいインターフェースの構築を目指す必要があると考えています。
さらには、国際連携と防災の人材育成ということですけれども、これも既に日本ではICHARMや国際共同研究などの仕組みも進んでおりますし、世界防災研究所連合というのが既に設立されております。こういう形を既に我が国が主導しておりますので、このネットワークを更に発展させて貢献するということが肝要かと考えています。
復旧・復興のところに関しましても、先ほどから繰り返しになりますが、復興計画の立案や実施に貢献すること、さらには、復旧・復興の様子を継続的にモニタリングすること、それから、周辺の悪影響がないかということを監視することを達成目標として掲げるべきだというふうに考えます。
一方で、5ページの一番下ですが、我が国のような観測網や技術の発達した国と、海外の途上国では達成目標の程度も大分違いますので、そこは若干分けて、10年後の状態定義として、どういうふうな状態になっているとうれしいかということで、6ページの表の形でまとめてみました。
全般的には、10年後に防災・減災への貢献として、地球観測による様々なデータが、防災・減災に直接役立っていること、それから、前兆現象の予知とか、リアルタイムの精度が格段に上がっていること、それから、被災直後でも一次的被害の算定が容易となっていることなどが、状態定義として望ましい姿です。
国内の災害については、その下に2つございまして、地震動とか地殻変動など高密度の観測網によるデータと、それから、衛星等の観測網とのデータを更に統合化して、有効に活用できるような状況にしたい。それから、広域的な気象観測から、大雨、干ばつなど、数か月前から精度良く予想できるようにしていきたい。
それから、災害につきましても、地球観測データが迅速に利用でき、さらに、復旧・復興の監視に使えるようになっていきたい。
下の2つが海外、これは発展途上国も含めた全球のイメージでございますが、全球としてはまだここまではなかなか難しいとしても、観測網を定常的に、より高密度に近代化すること、それから、情報伝達ルートが確立されて、すぐに情報が得られるようになっていること、それから、ナウキャストが的確にできるようにしていること、というような状態を目指していきたいというようなことでございます。
それで、どのように実施するかということでは、若干ダブりがございますが、地球観測と災害予測モデルを効果的に連動すること、それから、観測データのアーカイブを進めること。この中で、CEOSという地球観測衛星委員会というのがありまして、世界中の地球観測衛星を有している国同士の委員会がございます。この中で各国の計画がリストアップされておりまして、今後15年間の中で、地球観測衛星の計画としては、合計で268個、このうち80個の衛星が、災害・防災に関連する地球観測衛星ということでリストアップされています。これらの膨大なデータを、多くは広く提供されますので、それをうまく使って、世界的な枠組み、それから、国内の枠組みを駆使して、これらのデータをうまく使えるようにしていく必要がある。ということで、GEO第2期におきましても、我が国及び関係各国の協力のために、このためのシステムの拡充、それから、維持・管理する体制を構築する必要があると考えています。
7ページ、(3)は、国際連携と防災の人材育成、ここはちょっと省略させていただきます。
(4)については、ここもBuild Back Betterということですが、このBetterの定義をもう少ししっかりした方がいいという観点を指摘いたしました。
真ん中あたりに、GEOの第1期、第2期は、もう一度繰り返し書いてありますが、GEOの第1期は、地球観測の探索フェーズということで、現象の把握と解明、それから、利用分野を特定した。それから、データについては、ゲートウェイを提供できるようになったという話を先ほどいたしましたが、これらを拡張するとともに、第2期では、防災戦略に合わせて、最適化されたデータベースをユーザフレンドリーな検索や容易なインターフェースで提供するようにしていく必要があろうかということを提言させていただきました。
8ページ、最後ですが、真ん中のあたりを見ていただきますと、地球観測は、人工衛星観測、それから、地上のルーチン観測、あるいは、研究レベルでの研究観測等、様々なレベルがございます。これをうまく連動させて、best researchの研究成果、あるいは、best practiceとしての実務成果、これを全体として統合した立場、できれば国の立場で収集・整理する必要があるのではないかという提言をさせていただきます。例えば、一例でございますが、どんな成果が本当に得られているのか、どういうフィードバックができるかというようなところを、例えば、この部会の中に成果を評価するようなチームを作ってまとめていくというのも、1つのやり方ではないかということで提言いたします。
それから、ここには書いてございませんが、寶先生から若干コメントが追加でございました。10年間のGEOSS第1期の成果のレビュー、例えば、人工衛星だいちの成果、ひまわりの成果、DIASなどの成果、これをいま一度、これまで中間取りまとめも入ってはおりますけれども、しっかりと再評価をすることをもう少し取り組んだ方がいいのではないか。
それから、災害分野でも、フェーズごとに対応が異なることということもありますので、過去のデータ等も統合的な解析をすることによって、将来の予知・予測につながる成果は出せるのではないか。
それから、緊急対応の観点でも、二次災害防止というのも非常に重要な事項ですので、そういう観点ももう少し検討してみたいというようなこと。
それから、復興について、本当に復興がどう達成されているのかということを地球観測で確認するということも、非常に大きなテーマではないか。
最後に、地球観測データの活用という意味では、いろいろと努力は進んでいるものの、まだまだ完全とは言えない。実務面でも研究面でも、更にこれを推進する必要があるというようなコメントを頂いておりますので御紹介いたします。
佃先生、何か追加がございましたら。
【佃委員】   私がコメントさせていただきたいと思ったのは、1つは、災害の部分で、低頻度大規模災害、東北の地震もそうですけれども、そういった大規模のものの起こるリスクというのは、かなり長期的に観測になったり、歴史記録とか、そういったものがないと予測はやっぱり難しいということで。
それと、日本のセキュリティ、先ほど安全保障上の問題がありましたけれども、経済的に、当然、アジアを含めた国際的に経済活動を非常に活発にやっておるわけで、そこでのリスクをやっぱり把握しないといけないでしょうと。いろんなサプライチェーンの破断だとか、そういった問題やリスクはないかとか、あるいは、今、いろんな形で開発、産業の立地を国際的に行われているわけですけれども、その際のリスク事前に軽減するためには、基本的な、基盤的な情報も併せて採って、その上で観測情報というのを組み合わせていく作業という。先ほどありましたけれども、基盤的情報、例えば、国土地理院さんがやられている地球地図といった活動の中にも、当然、災害情報、あるいは地形情報、土地利用情報、そういったものがございます。そういったものを含めてやるということが重要ではないかと思います。
それと、もう1点は、最終的には、これが社会に実装されるということ。これは最初に述べられておりますけれども、そのためには、やはりサービスというところに行かないと。これはある種の成功例として、我が国の気象災害については、大分いろいろとサービスができるようになってきて、それなりに利用されて、もう社会に取り込まれているところですが、もっとグローバルに、それを災害という分野でもサービスをするところがやっぱり出てこないと、ただ研究データがありますよ、どうぞ御利用くださいというだけでは、最終的に社会が実用化したということにはならないのではないかと思っております。
以上でございます。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
それでは、続いて、3番目の「将来の環境創造への貢献」について、沖委員、お願いいたします。
【沖委員】  それでは、3つ目のグループ、「将来の環境創造への貢献」というところから、沖が代表して発表させていただきますが、最後に、また甲斐沼委員から補足いただきます。
活力のある社会の実現や防災・減災への貢献に比べますと、喫緊の社会的な役割は必ずしもなくてもいいという、のんびりした役割で、非常に書きやすかったのですが、今お話を聞いていますと、切り口は違っても、やること、やらなければならないことは非常に共通していると感じました。そこが地球観測の恐らく特徴で、現在の喫緊の、今役に立つことをやっている、やり続けることが、長期的な地球環境保全、あるいは持続可能な発展に資するというのが、地球環境の生かし方だと思います。
我々のグループ、4人、河野委員、甲斐沼委員、佐藤委員、沖とおりまして、4人で一つずつまとめました。電話会議を経まして、お互い意見を申しましたので、かえってちょっと似てしまったところはあるんですが、そこはうまく取捨選択して、生かしていただければと思っております。また、誰がどこを書いたか、非常に分かりやすい内容となっているかと思います。
まず1つ目の分野1ですが、これは「将来の環境創造への貢献」の中で、主に気候変動の影響とその対処というところに関しての切り口で、地球環境、今後何をしなければいけないか。
「10年後の達成目標」に関しましては、探知、原因特定、これは英語で言うとdetection and attributionで、どんな変化があって、その変化は人為的な気候変動にどのぐらい影響を受けているのか、何のせいなのかというのをはっきりさせよう。ロス・アンド・ダメージをめぐる議論というのは、人為的な気候変動のせいだとすると、その分は、その人為的な気候変動を巻き起こした、主に先進国が責任を取るべきなので、補償せよという議論が、現在、国連気候変動に関する枠組み条約の中で議論されておりますので、そこに資するような情報を提供できるようにするのが大事だろう。
「実現するための道筋」に関しましては、気温、降水量、風、湿度など、いろいろなものが書かれております。こうした中から、真ん中辺になりますけれども、地球規模環境変動監視の要となる地球物理量(Essential Climate System Variables)というのをやはり決めて、何でもかんでも大事だというのではなくて、ECSVsの継続的な観測をやる。さらには、そういう観測とともに、先ほど防災の分野でもありましたが、モデルというのと合わせるというのが地球観測は非常に大事ですので、気候モデルの方のシミュレーション精度の向上とアンサンブル数の増大を推進して不確実性を減少させる。
その実現のために必要なのは、先ほど申しました、要となる地球物理量の絞り込み、それから、国際的な分業・連携を含む体制の強化、それから、両極(北極・南極)を含むグローバルかつ高解像度の観測体制の構築、そして、地球観測手法の高度化も必要だろう。
さらに、2つ目の点としまして、これはデータレスキューでして、今から観測するのも大事なのですが、過去のデータというのが失われてしまっていると思っていたら、実は紙の形で残っていたというのがございます。これを十分生かすというのは、まさに将来の環境創造への貢献だからこそ、過去できるだけ長い期間にわたって使われていない、今、分かっていないと思われていたデータを有効利用するような取組が必要だろう。
それから、長期の地球観測データに基づくメカニズムの解明と早期探知技術で、何か変動があったときに、今これまでと違うことが起こっているぞという、炭鉱のカナリア的な役割をする必要がある。
めくっていただきまして、この課題全体の探知と特定、detection and attributionをやる。
それから、ほかのところでも出ておりますけれども、人材の育成が大事だ。
関係府省・機関間の観測協力体制と安定した観測予算計画の構築、となっております。
2つ目の分野、「持続可能な活用のための長期海洋環境監視」は、今申し上げたような、長期的に将来の環境創造をするのに、海という側面から見たら何かというのが切り口でまとめています。
海という面から見ますと、「10年後の達成目標」につきまして、海洋からの恩恵、海洋の生態系、あるいは、生態系に限らない生物的・物理的なサービスというのを人類はいろいろ受けている。それは気候の平準化、緩和作用とも言いますが、それが二酸化炭素の吸収、そして、水を貯(た)めているということ、あるいは、水産資源、生物多様性の確保、そして、大量の、しかも低炭素の輸送路の確保、あるいは、レジャー、資源といったものがある。こうしたサービスを維持するために、極域を含む全海洋の効果的かつ継続的な地球観測が必要だろう。そこでは、先ほど申し上げていた原因特定のための研究と政策決定の科学的根拠を与えるという地球観測が重要ではないか。
これを「実現するための道筋」に関しましては、既存の観測網の整備と拡張、scrap and buildでどんどん増やせばいいというわけではない。整理で、もう継続しなくていいものは継続しない。ただし、拡張しなければいけないものはあるだろうし、重要な観測網は死守していこうというような、選択と集中を進めましょう。それから、既存の技術を投入するだけではなくて、より効果的・効率的に、あるいは、科学的なイノベーションをもたらすような観測技術のイノベーションも必要で、普及型のpHセンサー、CO2センサーの開発や、海洋深層を自動で平易に精度良く計測する技術、ロボットなども含めて、それから、生態系変動や生物多様性の指標を計測する技術も大事だ。
「これらを実現するために必要な施策」としては、先ほどは地球物理量(ECSV)だったのですが、Climateがoceanに変わりまして、Essential Ocean Variablesということで、とにかく大事なものはやはり絞り込む必要はもちろんあるだろう。それはモニターの観測網の維持と更新が必要で、そうした観測網を情報基盤と考えまして、持続可能にする仕組みも必要である。場合によっては、海洋開発・利用を行う際には、そうした海洋の環境情報基盤を使ってやるのだから、「環境維持経費負担」といったことを考えてもいいのではないかというような提案となっております。
3つ目の分野ですけれども、今度は、そういう地球環境、長期の観測を、炭素循環、あるいは、炭素も含めた、より広く大気環境を変化させているエアロゾルなども含めて観測するという切り口から見たらどうなるかということになります。
「10年後の達成目標」に関しましては、温室効果ガス及び関連物質の状態を、国際的な協調のもと、包括的、継続的に観測して、地球温暖化プロセスの理解を深めることによって、将来予測の不確実性を大幅に低減する。あるいは、大気や地球表層、人間を含む生物圏の環境に与える直接的な影響を把握する。さらには、影響予測の高精度化にこれらは不可欠であって、グローバル及びローカルな気候変動対策の効果を定量的に評価する。そして、よりよい環境の創造に不可欠だということになります。
「道筋」としましては、まず全球的な取組としましては、既存の地球観測プラットフォームの活用によって、恒常的な地球観測を確立すること。それから、GOSAT、GOSAT-2の実施中の全球の温室効果ガス観測の継続に必要な後継衛星の開発と運用。それから、雲とエアロゾル、そして、エアロゾルの重要な前駆物質、エアロゾルに代わり得る人為起源・自然起源の揮発性有機化合物、VOCと呼ばれますけれども、これは自然にも、森林から出たりしているわけですね。あるいは、人為的にも発生しているわけですが、そういうものの発生と輸送の観測を継続すること。それから、自然起源の温室効果ガスも、どうなっているのかを長期観測して、さらに、国別のインベントリ、どこからどのぐらい出ているかというデータの精度評価を可能にするような観測が必要だろう。こうしたデータの統合的な利用が必要だ。
次に、地域的に取り組む課題といたしましては、特に、例えば、メタンの話、次のページになります。それから、雲、そして、4ページの2つ目の箇条書になりますけれども、温室効果関連物質の収支を国レベル、地域レベルで評価できる手法を何としても作らなければいけないだろう。それから、それらをインベントリデータ、つまり、統計的に推計されるものと実際に観測されるものがどのぐらい対応しているのかというのを突き合わせていくということが、我々の理解を進めますし、国際交渉でも非常に重要になってきて、日本は、そういうのに関しまして、国際的な枠組みで役割を担っているわけですが、そこに資するデータをきちんと出すということになります。それから、これらの物質は、単に温暖化に問題なだけではなくて、大気汚染とも密接になっておりますので、特にアジアで地上観測による地球観測体制を戦略的に強化して、地球環境保全に資するデータを提供すること。また、これらに関して、産業界と連携して技術開発をする。また、気候変動、温暖化だけに関しまして、CO2、あるいは、大気中の温室効果ガスだけではなくて、土地利用の改変による温暖化というのも、それなりに影響がこれまでのところございますので、その主要な要因である全球バイオマスの監視、あるいは森林火災の監視、そして、逆に、温室効果ガスを出す火災による排出量の推定も実施するということになります。
これらをやるに当たって、特に必要とされる課題及び技術開発ですが、航空機の観測ネットワークを充実させることを考えていいのではないか。また、技術開発としまして、簡易FTIR、これはフーリエ変換赤外干渉計というものですが、その簡易的なものを開発して、高精度化・普及をする。そうすると、今までですと、非常に限られた6ガスと言われる温室効果ガス全て観測できているわけではないのですが、それを増やす、あるいは、マイナーなものも含めてやりますと、移動・活性がよく分かるということになります。
「それらを実現するために必要な施策」に関しましては、5ページに行っていただきまして、民間及び公的研究機関に対する新規的観測に対する装置や解析システムの開発予算の助成強化。何せ将来の環境創造への貢献ですので、今使える技術だけではなくて、より安価に継続的に安定して観測できる技術を開発するのが大事だ。そして、それを結局支えるのは人材ですので、人材の育成も必要だ。そして、地球観測のビッグデータ化に対応する、データの収集・保管・利用促進を行う体制の確立と強化となっております。
最後に、分野4つ目ですけれども、これは地球観測を地球科学の基礎的な側面から見たら何が必要だろうかというのをまとめた結果となります。
「10年後の達成目標」が一番長いのですけれども、地球システムを構成する固体地球、陸面、海洋、大気、電離圏・磁気圏の相互作用とフィードバック、あるいは、太陽と地球との関係の理解を深める。こうした地球システムの包括的理解に必要な観測をやって、未知なる知見を創出する。
具体的な目標としましては、ジオスペース環境観測の高度化・広域化と、太陽地球系の結合過程の研究基盤形成。それから、大型レーダーネットワーク、これは必ずしも水平に回転させるレーダーとは限らず、鉛直に成層圏まで観測するようなレーダー、あるいは、もっと上のところまで観測するようなレーダーも含めて、大気、熱圏・電離圏に至るグローバルな大気結合と気候影響の解明をする。それから、やはり両極というのが重要だろう。また、海洋底・地殻内部の掘削で得られる地球科学的情報も重要ですので、これらもやる必要があるだろう。あるいは、最近ですと、ミューオン検出器を用いたリニアアレイ観測による火山ダイナミックス、地殻の大半を地球の裏側から通り抜けてくる粒子をうまく捉えることによって、山の中で密度分布がどうなっているかといったことを、今、推定する技術がございます。福島の見えないところの、今どの辺に燃料が残っているか推計したのと同じような技術ですけれども、ああいうものを使って、火山の中で今どんなふうな変化が起こっているかをきちんと推計するような観測というのもやはり大事だ。あるいは、地震・火山噴火ハザードの予測研究の推進。それから、ここでも航空機による機動的な広域的大気観測システムの確立というのを考えてはどうか。それから、海洋に関しては、海洋物質循環や生物資源の変動メカニズムの解明。それから、衛星による次世代全球地球観測システムの開発と継続的な観測維持ということで、水循環、あるいは雲・降水レーダー、森林バイオマス推定の高精度化、あるいは、サブミリ波観測による成層圏オゾン層変動に関わる各化学物質の監視といったものが考えられるだろう。
そして、これらを「実現するための道筋」に関しまして、b)のところでは、科学観測の健全な策定及び評価、適切な規模及び時期での予算化、新たな知を見いだし高めるための継続的な観測予算と研究助成、次の研究展開に生かすための取得整備されたデータの適切な管理となっていますが、問題意識としまして、こうした基礎分野もカバーする地球観測を、何が大事で、どう進めていけばよいかというのが、余り組織的・制度的になっていないのではないか。これを、科学的に大事だから必ずやれというのではなくて、科学的にはやっぱりこういうのが大事だ、それに対して、実用を見据えるとこういうのも大事だ。じゃ、現在の限られたリソースの中で、こういうふうにやるのがいいのではないかというのを、きちんと科学と政策の分野が手を取り合って決めていくような枠組みがあった方がいいのではないかという問題意識がございます。
そのために、c)「それらを実現するために必要な施策」として、地球観測コミュニティの形成と地球観測コミュニティにおける計画策定のスキーム作りがあったらいいのではないか。つまり、こういう観測がいいだろうという「提案」、それを「審査」し、「策定」し、「実現」し、「評価」するという、こういう組織体制作りを考えてもいいのではないか。次は、そういうことをしないと、例えば、新しいけれどもリスクが高い、つまり、ハイリスク・ハイリターンの観測技術開発というのが決して日の目を見ない。ここはやはりアメリカと日本の地球観測の大きな差。日本は、少ない予算・人材でよくやっていると思いますけれども、どうしても今の体制ではハイリスク・ハイリターンで、なかなかブレークスルーができない。それも取り込めるようなことを考えてはどうか。それから、安定した観測体制の確立と研究助成。そして、皆さん共通ですけれども、データのアーカイブと、利用促進を図るための体制の確立と強化となっております。
では、甲斐沼委員からお願いします。
【甲斐沼委員】  分かりやすくまとめていただいて、どうもありがとうございます。
補足ではないのですが、最初、沖先生が、「将来の環境創造への貢献」というのは喫緊の課題ではないとおっしゃっていましたが、これについては、私、少しちょっと違う意見を持っています。これは、非常に喫緊な課題で、今やらないと、いろんなものがロックインされて、将来、非常に地球について負荷を与えるような構造になってしまうと思います。
温暖化に関しましては、1990年にIPCCの第1次報告書が出版されて以来、その前、1988年頃に始まっているわけですけど、今までずっと継続した観測に基づいた評価が実施されてきました。継続して観測したこと、その成果があったからこそ、IPCCが随分注目を集めてきたかたことと思います。ですから、そういったことをとにかく継続して、いろんな情報を集めるということが非常に重要で、1990年頃から継続してずっと温暖化対策の重要性が温暖化ということで言われてきたのですが、温室効果ガスの排出が伸び続けてきました。ただ、最近、IEAが出した報告によると、本当に2030年頃にピークアウトするのではないかと言われていたのが、2014年のCO2排出量は2013年の排出量とほぼ同じになっているので、最近、ひょっとしてピークアウトしてきたのではないかと言われています。ただ、伸びが少なくなっているとはいえ、IPCCが警告を出してからそうは言っても、もう言われてから25年経(た)っています。その間の温室効果ガスは非常に、それまでものすごい排出が伸びてきています。
新しい環境創造に行くためには、今後やはり今、この10年というのは非常に大切な時期であると思っております。例えば、その対策をするために、今回もこの中に入れていただいている、国レベルとか地域レベル、地球観測のグローバルなものと地域の話と、それをリンクドッキングするようなことが非常に大切になってくるということが挙げられます。
1つ懸念しておりますことは、北極圏の話が、いろいろなところでもう具体的に出てきている中で、商業的に非常に有利であるというような意見があります。といいますか、そういうところで、民間では、商業的に北極圏の海氷が溶けて、北極圏のそこの航路を利用して日本、欧米間の行き来が非常に安く行けるようになって、エネルギー消費も少なくなるし、あるいは、新しい資源が発掘できるように新しくなるという期待があります。ただ、それを裏返せば、温暖化が進んでいると言えます。そういった二面性があるわけで、その辺を、こういった観測の中からも、温暖化が進んでいるという話と、その影響であるということをしっかりと結び付けたような観測のプロセスといいますか。最後の方に、沖先生からも強調していただいたのですが、何をどう観測していって、どういったことに結び付けていくか。そういったことが、今後の環境創造についても非常に重要になってくるかなと思っております。
以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
短い時間で3つのグループの発表を頂きました。これに基づいて、事務局の方で整理したものがあるそうですから、事務局から説明をお願いし、その後、質疑をしたいと思います。
【木下環境科学技術推進官】  ディスカッションをしていく際に、参考となる資料を2つ御用意させていただきました。
まず資料2-5は、今御紹介いただきました各チームからの報告を、比較対照できるような形で整理表にまとめたものです。書かれている内容は、既に御発表いただいたとおりでございます。テーマ、それから、10年後にどんな社会にしたいか、そして、それを実現するための道筋、そのために観測としてできる必要なことという並びで整理してございますので、適宜御参照ください。
それから、資料2-6です。これは次回、骨子案を御提示させていただいて、御議論いただこうと思っております、そのたたき台になります。この後、皆様で議論して、どういう目標であるべきかとか、どういう項目を盛り込むべきか、どれが欠けているかとか議論いただくわけですが、その仕上がりをちょっとイメージいただければと思いまして、参考までに御用意させていただきました。
今、こちらの資料2-6は4章構成になっていまして、1章では、これまでの検討経緯を書かせていただいています。それから、2章では、課題解決への貢献として、今御紹介の3つの観点から、解決すべき課題とか実現したい社会の姿ごとにテーマを設定して、10年後の達成目標を示して整理をするという内容になっています。裏面の2ページ目になりますが、それには、その姿に至るまでの道筋であるとか、観測と、及び関連する取組についてまとめるということにしています。
それから、第3章は、今御発表いただいた中にも、それぞれの分野共通的なことが多くあったかと思います。それをまとめてこちらに記載するのではどうかと考えています。1ページ目に戻っていただきまして、第1章では、本部会の中間取りまとめと、総合科学技術・イノベーション会議の進捗状況のレビューの項目を整理していますけれども、このレビューの方の、例えば、マル3からマル7にかけてというのは、かなり共通的な要素があると思いますので、これのレビューの指摘に対応するようなものというのが、この第3章に書かれて整理するのかなと今考えているところです。
最後、第4章というのは、この実施方針の位置付けであるとか、関係府省庁との連携、役割というのをまとめるということではどうかと考えておりますので、これも少し頭に置いて御議論いただければと思っております。
事務局からは、以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
それでは、これから30分弱でありますけれども、討論の時間を設けたいと思います。どのような観点からでも結構ですし、また、資料2-6のような方向、今後のことにも関係するものも出ておりますので、御自由に御発言いただければと思います。
1つ、お気付きの点があればお願いしたいのは、資料を3グループが出しましたけれども、何か欠けているようなポイントがあれば、御指摘いただければと思いますが、そのほかの点、いかなる点でも、いかがでしょうか。
【春日部会長代理】  3つのグループの皆様、本当に短期間でここまで非常に包括的な、しかも網羅的なまとめを頂きまして、ありがとうございました。
どのグループにおきましても、グローバルな展開という水平方向の視点と、それから、地球の地殻から電離圏までの地球システムを更に超えて、太陽まで含めた太陽地球系という垂直方向の視点、さらに、過去の記録から将来像という時間的な視点で、とてもダイナミックに展開されていると感じました。
欠けている視点などというおこがましいことはとても申し上げられないのですけれども、自分の研究の経験から感じたこととしまして、例えば、地球観測データと健康影響を考えたときに、そこに欠かせないのが、実際の人の動き、それから、人が生産するものの動きの関与だと思うのですね。例えば、今の韓国の問題になっていますMERSにおきましては、とにかく感染者の動きをきちんと把握できなかったことが大きなアウトブレークの原因になっていますし、稲わらの移動・輸入が口蹄疫(こうていえき)の原因として強く疑われたこともあります。それから、海洋で言えば、ノロウイルスや病原性の高い腸炎ビブリオなどが、船のバラスト水によって遠く離れたところに運ばれてアウトブレークを起こすというような、そういう事例もありました。
そうしますと、今後、この部会で議論していることを実際に社会に役立てていく上で、そういう人や経済指標のような、地球観測以外のところの情報とどううまくリンクしていくかというところを最後に指摘していただくことも有用かなと思いました。
それに当たりまして、将来像をまず示していただきましたけれども、それを実現するために、どういう人たちと、ユーザーとなっていただくような人たち、どういうステークホルダーと組むべきかという、ステークホルダーの特定の項目というものも加えていただくとどうかなと思いました。
以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
ほかには、いかがでしょうか。どうぞ。
【赤松委員】  不足しているということではないですけれども、今こうやってまとめていただいた各グループから上がってきている案が、例えばいろいろ分量とか、項目や記載内容のレベルの整合関係性とか、そこら辺が多分少しずつ違うのです。この辺は、最終的に取りまとめていく段階で整理をされる予定とかはございますでしょうか。多分、第三者が見たときに分かりにくいというところが出てくるかなと思うのですが、いかがでしょう。
【木下環境科学技術推進官】  事務局としては、そのように考えておりまして、是非、こういうふうにまとめたらいいとか、この観点で整理すると新しい姿を社会に示せるのではないかという御助言を頂きますと、大変有り難いと思います。
【赤松委員】  今まで各このグループでそれぞれ御議論されてきたんですけれども、それをまたグループでやるのか、それとも、事務局の方で中心になってやられるのか、その辺はいかがですか。
【木下環境科学技術推進官】  きょうの御議論を踏まえて、取りまとめの骨子案を事務局で作成して、次回の第3回が7月13日に予定しておりますが、そこで、きょうの御議論を踏まえて、皆さんに審議を頂くという流れにしたいと考えております。
【赤松委員】  その段階で、ある程度レベルの整理のようなことはされると期待しておいてよろしいのでしょうか。
【木下環境科学技術推進官】  一応それに取り組みたいと思いますので、この辺こうだよというふうに言っていただきますと、我々も、きょうの議論を参考にしてまいりたいと思っております。
【赤松委員】  分かりました。ありがとうございます。
【大垣部会長】  ありがとうございます。
ただ、3つの観点がかなり違いますので、防災・減災というのはかなり焦点が絞られていますし、活力あるとか、将来の環境創造ってかなり広いので、グループごとの差はしょうがないという感じで、全体としてまとめた形になればと私は思っているんですけれども、原案を作って、それを皆さんにたたいていただきたい。
ほかに、いかがですか。よろしいですか。ほかにありますか。
先ほど春日委員から、また、初めの健康のときの上田委員からの御発表の中にありましたけど、要するに、データを作る側(がわ)と利用する側(がわ)の関係というのは常にありますので、そのような指摘もあったかと思うんですが、それはどうでしょう。これ、全体に書き込んでありましたか。グループごと、それぞれ書いてある感じでしたか。あんまり明示的にはなかったかなと。その辺も事務局でチェックして、原案に反映していただきたいと思いますが。
どうぞ。
【沖委員】  長期的な将来の環境創造への貢献というところでは、地球観測データをいかに社会に生かしていくかという部分だけではなくて、それを、どういう観測体制が必要かというところにも多少触れているところがございます。これは変な言い方ですけど、環境エネルギー課の所掌を超えた部分があって、ただ、それに対する期待がものすごく強いので、今回作っていただけるGEO戦略計画の実施に向けた我が国の地球観測の実施方針というところに、何かそういう。そういう意味で言うと、ここの場はユーザー側なのですね。地球観測データを有効に利用していこう。その更にもっと基盤になる観測プラットフォームを計画し、作成して、観測データを取ってくるという、コミュニティに対する期待とか、そういうところと連携して、単に技術でシーズオリエンテッドではなくて、ニーズも踏まえた観測体制を作っていくというようなことを書ける範囲で盛り込んでいただけますと、これまでの10年とは違う位置付けができるのではないかと思います。ちょっと御検討いただければと思います。
【大垣部会長】  特にいいですか。3番目のグループの最後に地球科学観測のことを触れておられて、そのこともあるし、そういう地球観測に関する科学真理のような話から社会利用までの構造的なところ、全体像を。
【沖委員】  プラス、もともと、そもそも地球観測情報を取得するコミュニティがあって、そこもいろいろ工夫されているので、うまく連携するといいのではないか。
【大垣部会長】  どうぞ。
【浜崎委員】   1点、事務局に質問になりますが、資料1でGEO戦略計画の検討状況を御説明いただいて、戦略計画の1次案で社会利益分野が定義されているわけですが、今回整理されようとしている社会利益分野と、この目標案の検討のたたき台とが微妙に合っているような、合っていないような、必ずしも食い付きがはっきり見えない格好になっているのが現状だと思います。
もちろん、これに従う必要はないのですが、少なくともやった後で対応がどうなっているかがある程度分かるような工夫をしていただけるととてもいいかなと思いますので、よろしくお願いさせていただきます。
【木下環境科学技術推進官】  次回お示しさせていただくときに、工夫をして、その辺、皆様に認識を共有させていただきながら議論いただけるように準備したいと思います。
【大垣部会長】  これ、同時並行で今動いているわけですね。だから、うまく合わせるように、最後工夫してください。
どうぞ。
【中田委員】  活力のある社会の実現というのを検討するときに、初めに、目指すべき将来像というのを結構明確化しましょうという議論から始めたわけですけれども、これ全体を見たときに、例えば、「将来の環境創造への貢献」という項目で言うと、将来の環境観測ではなくて、あえて環境創造と書かれたわけですよね。その、どういうものを創造していくのかみたいなものがないのですね。その辺、多分、事務局の方でこれを作られたときの思いみたいなものがあると思うのですけれども、その辺をお聞かせいただきたいというのと、できれば、その辺、「はじめに」のところに入ればいいかなと思いました。
【木下環境科学技術推進官】  もともと目標案の議論の準備を始める際に、課題対応であるとか、そういう比較的、今、一般に社会でよく言われていることを意識したというのがあります。ただ、一方で、環境監視という意味で観測することの重要さというのがありますので、それをどう両立できるのかと考えたときに、新しい社会を創っていく、自然環境を創っていくという観点で、今のこの定常観測というのをやっていくべきなのではないかと。それは単に観測していますだけではないというところの気持ちを示したくて、この言葉を探してきたというようなところです。
【中田委員】  そうですよね。そこが「はじめに」のところに書かれるといいと思います。
【木下環境科学技術推進官】  ありがとうございます。
【大垣部会長】  ありがとうございます。
ほかには、どうぞ。
【村岡委員】   皆様の検討内容を伺っていて、生態系サービスという言葉が出てきました。これ、3つのグループのお話を聞いていますと、生態系サービスというのは、実はかなりクロスカッティングなキーワードで、今、「活力のある社会の実現」のところで生態系サービスという言葉が出てきて、お話をお聞きして、割と供給サービスの意味合いで使われているのかなということを思って。ここはお伺いしたかったのですが、調節サービスとか、いろんな意味でのサービスという点でお書きになっているのかどうかというところを。
【中田委員】  私自身が水産という分野もありますので、供給サービスというのはもちろん力点を置きましたけれども、当然、海が持っているサービスというのはそれだけではないので、その辺はもちろん認識しながらということでございます。
【村岡委員】  ありがとうございます。
それで、実は、それを伺った上で、ちょっと気付いたところなのですが、例えば、3ページの生態系サービスに関わる観測の中で、森林の現状、生物の生息環境などをというふうに、幾つかスペシフィックな言葉が出ていますけど、今後、これ、文章を書いていく中で、例えば、森林とその周辺の河川ですとか、要するに、その2つ上で、水循環のところで流域という言葉が出てきていますけれども、様々なタイプの生態系とその生物多様性の状況、及び社会との関係において、複合的な生態系サービスを評価し、あるいは、それに対するストレス要因、影響要因を明らかにすることで、例えば、その適応策につなげるとか、そういう意味合いが出てくると、かなりクロスカッティングなものになって、もちろん、減災という話も出てきますが、今、GEOの戦略計画のところで、そういう話を出しているところですので、日本の特に山地、上流から下流に至る水循環、物質循環、サービスというところまで含めて、日本ならではかなという気がしました。
以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございます。
【六川委員】  私より適当な人はいるのでしょうが、今おっしゃるとおりだと思っていますので、事務局とも話をしつつ、少し全体の捉え方がリーズナブルになるような形にまとめたいと思います。
【大垣部会長】  今の御指摘は、例示を出すのだけれども、余り限られている例示だと誤解を受けるから、生態系サービス全体が分かるような説明の仕方をという感じで。
【村岡委員】  どこをポイントに置くかということだと思うのですけれども。これに出てくる言葉が、例えば、今後の日本での環境研究の在り方に影響するとしたら、いろいろきちんと出しておいた方がいいでしょうし、水の問題だと陸水環境はかなり大事になってきますし、そういう意味で、ちょっと気付いたところを申し上げました。
【大垣部会長】  ありがとうございます。
ほかには、いかがでしょうか。どうぞ。
【岩谷委員】  私は研究は詳しくはないのですが、全体の原案を作っていく上で、前回の地球観測の推進戦略から新しいものを目指す目標なのですよね。そういう意味では、各観測はとても大事なのは私もよく理解していますし、何でも大事だというのはよく分かるのですけれども、前回も同じようなことが書いてあって、観測は大事ですと。じゃ、何が今度違うのか、どういうところに力を入れていくのかというところがいまいち見えないというところが、私は見ていて感じているところです。
いろんな観測がいろんなところに役立つというのはあるのですが、何か立てる上で、例えば、もちろん中に書いてあるのですけれども、観測、予測、それが社会実装につながって、防災・減災であるとか、生活にこれだけ役に立つみたいなところが、道筋の例として重要になるところ、優先順位を、例えば、ここが日本国民の皆さんに見ていただく上で、こういうところに力を入れていくのだとかというのがもう少し明確になるといいのかなと。それも、前回と更に違ったところ。特に沖さんがお話になった創造とか、変えていこうみたいなところはとても重要なのかなと。組織を作るみたいなところもそうだと思うのですが。先につながるようなところというのが、1つ、強調されるといいのかなと感じました。
あとは、これは余談かもしれませんが、気象観測は成功事例の一つというお話がございましたが、実は気象観測も天気予報も、コンピュータよりも人の経験の方がよく当たると言った時代が長くて、数値予報は当たらんというのが、もうつい20年ぐらい前までの話でした。それを超えるまで結構大変で、観測というのをやったときに、いろんな分野に当てはめていくと、よく当たらんとかいうのにきっと当たると思うのですね。そこを、より理解を得ていかないと、途中で頓挫しちゃうというか、こんなものは役に立たないじゃないか、こんな観測役に立たないじゃないかで終わってしまう懸念をすごく感じて、何なら気象衛星ひまわりも途中でやめるというか、打ち上がらないまま、GOESを一時使ったりとか、そういう本当に継続性が危うかったぐらいに、気象庁も予算がないからしょうがないやというところもありましたが。
でも、国民はちゃんと理解して、そこに費用がかかるということは多分理解されると思うのですが、大事なことが伝わらないと、気がつけば、予算がないから終わっちゃいましたとかいう懸念を感じるのですね。そういう意味では、もう少し国民の理解を深めるようなアウトリーチ的なところというか、そういったところも何かこの中にきちんと少しでも入っているといいのかなと。国民参加型の観測というのはとてもいい話だと思いましたし、国民と一緒になってみたいなところとか、これだけ役に立つのだというところがもうちょっと明示できるといいのかなという感想です。
以上です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
将来の環境創造への、というような言葉を使っているのも、ややそういう意味合いもないわけではないということです。
ほかには、いかがですか。どうぞ。
【赤松委員】  先ほどの整理をどうしましょうかという話とも関係するのですが、今のお話にもちょっと関係しますが、今回のやり方が前回と違うのは、あるべき社会像を描いて、そこからバックキャストして、あるべき衛星の姿ですとか地球観測の姿につなげていこうという話だったと思うのですね。ですので、この案を、最終的に整理するときに、やはり求めるものとか、求めていく社会の姿がこうなので、そこからこういう衛星とか地球観測のスペックが導き出されるという流れを明確にしておくべきだと思います。そうすることで、国民から見たときに分かりやすい、こういう世界になるためにこの衛星が必要だとかという提言になっていくのではないかなと思います。そこのところは、まとめる段階で気をつけていきたいと思いますし、そのようにガイドいただければなと思います。
【大垣部会長】  ありがとうございます。
GEOの戦略計画なんかは、ある意味、その1つの材料としてはあるかと思います。
ほかには、いかがですか。どうぞ。
【甲斐沼委員】  最初の話に戻って恐縮ですが、最初に配っていただいた3ページ目の、GEO戦略計画第1次案における新SBAについて1つ確認があります。これと今回の最終取りまとめと、ある程度連動されるのか、そうではないのか。もし連動されるとしたら、最初、なぜClimateがなくなったのかという話をお聞きしたときに、全ての項目に入っているということでした。確かに、これを読ませていただくと、Food Securityについても、最近インドでも、すごい熱波とか、インドで今まで降ったことのない雹(ひょう)なんかも降って、収穫した食糧がほとんどダメージを受けたり、非常に農民の人たちは損害を受けていたり、それから、Waterについても、水資源が変化して、非常に影響が起きていると。再生可能エネルギーなんかも、気候の問題がその開発と普及を後押ししているから、そういったことに行っているとか、全て関係しているのですが、この表を見ただけでは、そこの重要性というのが全然抜け落ちているような感じがするので、ここに新しく入れていただくというのは非常に重要だと思います。もしClimateが入らない場合でも、全てのところに関係しているという軸があるというようなことをも入れておいていただければ、非常に分かりやすくなるかなと思います。
【大垣部会長】  よろしいですか。
【木下環境科学技術推進官】  そのように留意をして進めたいと思います。ただ、我々、今、GEOの方では、ここの8分野が必ずしも気候によらない場合もあると。例えば、防災も、別に気候変動があるから災害が起こっているわけでは必ずしもないと。そこを混同しないようにするためには、やはり気候変動への適応とか緩和というのは、個別に立てないと議論がごっちゃになるのではないかということで、今、提案をしています。
【甲斐沼委員】  私もそちらの方の意見に賛成です。
【木下環境科学技術推進官】  分かりました。ありがとうございます。
【大垣部会長】  どうもありがとうございました。
それでは、よろしいですか。御意見なければ、時間も参りましたので。
本日の議論を踏まえまして、次回の部会までに事務局で新たな実施方針の骨子案を作成していただきたいと思います。
それでは、事務局から何かありますでしょうか。
【西川地球観測推進専門官】  本日の議事録は、後日、事務局よりメールで委員の皆様にお送りさせていただきます。修正等ありましたら、その際に御指摘をお願いいたします。最終的には、文部科学省のWebページに掲載するということで公表させていただきますので、あらかじめよろしくお願いいたします。
次回の第3回部会は、7月13日月曜日の14時から16時を予定しております。場所は、文部科学省3F2特別会議室の予定です。
【大垣部会長】  ありがとうございました。
それでは、これをもちまして地球観測推進部会の第2回会合を閉会いたします。どうもありがとうございました。

 ―― 了 ――

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