分野間連携施策(温暖化分野)に関する調査について(報告)

平成21年3月27日
地球温暖化観測推進事務局/環境省・気象庁

1.経緯

 「地球観測の推進戦略」に基づき、政策ニーズを踏まえた地球観測の統合的・効率的な実施を図るため、関係府省・機関の連携を強化する推進母体として、平成18年に地球観測連携拠点(温暖化分野)が設置された(平成17年8月24日付け地球観測推進部会資料)。
 地球観測連携拠点の機能として、
(1)地球温暖化分野における地球観測へのニーズ等の集約
(2)実施計画の作成、計画実施状況の管理・報告
(3)以下(省略)の取り組み等を促進するための関係府省・機関の調整、情報の収集・分析
が挙げられており、これらの機能の具体的な内容については、例えば、(2)に関連した具体的な実施項目として、「策定した計画の実施状況を取りまとめ、地球観測推進部会に報告する」こと、が示されている。
 このたび、地球温暖化観測推進事務局においては、上記の機能に基づき、分野間連携施策の調査を実施し、さらに、(3)に関連した具体的な実施項目として、「観測プラットフォームなどを有効に活用する相互利用」に関する情報の収集と分析を実施したので、今後の連携施策の検討に資するために報告する。

2.具体的な連携施策の実施状況調査

平成19年度以降の我が国における地球観測の実施方針等で示された、「フラックス観測タワーの共同利用」について、実施状況調査を実施した。具体的には、現地調査、関連するワークショップならびにシンポジウムへの参加、研究者に対する聞き取り調査、さらに事務局主催のワークショップの開催等を実施した。

3.分野間連携の取組案の作成

平成19年度に実施した連携拠点主催のワークショップ「統合された地球温暖化観測を目指して-観測の長期継続と分野間・機関間連携の視点から-」のパネルディスカッションにおいて、陸域炭素循環と生態学の連携について、ご議論頂き、その重要性について認識を共有した。さらに、2.に述べた実施状況調査によって、陸域炭素循環分野と生態系分野の一層の連携が必要であることが明らかになったことから、平成20年12月12日に分野間連携に関するワークショップ「陸域炭素循環観測と生態系観測の連携」を開催した(12月11日~12日に開催した連携拠点主催のワークショップ「地球温暖化の影響/その実態と観測最前線」の一環として実施)。このワークショップには、陸域炭素循環と生態学の専門家約70名が参加し、分野連携の今後の方針等について講演並びに討論を行い、今後の連携施策の検討に資するために、別添のような「陸域炭素循環観測と生態系観測の連携に関する取組について」をとりまとめた。

 

地球観測連携拠点(温暖化分野)平成20年度ワークショップのまとめ
「陸域炭素循環観測と生態系観測の連携に関する取組について」 

平成20年12月12日

1.背景

気候変動対策への国際的な議論の進展を受け、平成20年7月のG8北海道洞爺湖サミットでは環境・気候変動が主要議題の一つとして取り上げられた。我が国では平成16年12月に総合科学技術会議が策定した「地球観測の推進戦略」(以下、「推進戦略」)に応え、利用ニーズ主導の統合された地球観測システムの構築を推進しているが、その中でも「地球温暖化にかかわる現象解明・影響予測・抑制適応」は喫緊の対応が求められているニーズの一つであり、地球温暖化分野の推進戦略により、「アジア地域の陸域炭素循環と生態系観測の統合」は今後10年間を目処に取り組むべき重点的な課題・事項とされている。
「推進戦略」を受けて設置された文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会地球観測推進部会は、平成20年8月に「平成21年度の我が国における地球観測の実施方針」(以下、「H21実施方針」)を策定した。「H21実施方針」に挙げられている具体的な施策の一つである「フラックス観測タワーの共同利用」に関して、地球温暖化観測推進事務局が行った情報収集・分析結果をもとに以下のように取りまとめた。

2.取組(案)

「H21実施方針」及び上記の情報収集・分析結果を踏まえ、陸域炭素・水・熱収支に関する温暖化影響と生態系フィードバックを検出するため、以下に示す取組により、陸域炭素循環観測と生態系観測の統合を実現し、連携施策を推進することが必要である(詳細は別紙参照)。

  • 炭素循環、水循環、生態系、衛星観測を長期的に行うプラットフォームの共同利用
  • 衛星観測との直接的な対比を行うために十分な空間代表性をもつ地上観測網の共同利用
  • 地上・衛星観測データの品質管理と統合解析を総合的かつ長期的に行う体制の確立

上記の機能を既に備えたプラットフォームの国内の候補地を左図に示す。これらの候補地は、我が国の代表的植生である落葉広葉樹林、落葉針葉樹林、常緑針葉樹林、水田を含むが、そのほかに重要な植生である照葉樹林、湿原、草地等におけるプラットフォーム整備についても検討が必要である。

 我が国におけるプラットフォーム候補地

図1.我が国におけるプラットフォーム候補地

3.効果

陸域炭素循環の微気象学的手法と生態学的方法の相互比較検証、観測手法の標準化により、観測データが持つ不確実性が低減される。そのデータを共有し利用促進を図ることにより、我が国の主要な生態系において均質で包括的なデータが継続的に得られる。一方、衛星観測と直接対比できる地上観測網の共同利用体制整備により、これまで困難であった生物季節や融雪時期等、地球温暖化に対する生態系影響・適応に関わる重要指標の検出精度が大幅に向上する。地上観測と衛星観測の統合により、陸域炭素循環・水循環・生物季節等を広域で評価する事が可能になる。国内で確立したプラットフォームの相互連携の手法と体制を国際的な観測ネットワークを利用してアジアへ普及する。陸域炭素循環と生態系観測を統合した地上観測網によるデータは、温暖化に伴う生態系の反応やフィードバックを組み込んだモデルによる温暖化影響の予測精度向上に大きく貢献する。さらに、温暖化影響下における陸域の生態系サービスの脆弱性評価の新たな手法の構築が可能となると期待される。

 (別紙)

1.分野間連携による長期継続可能な陸域観測プラットフォームの共同利用促進

陸域炭素循環、水循環、生態系観測、衛星地上検証観測を同一地点で長期的に行うことのできるプラットフォームを共同利用できる体制を確立する。これらのプラットフォームでは、分野間連携による観測を長期継続するために必要な人材育成を目指す。
陸域観測プラットフォームは、現在運用中の観測ネットワークである日本長期生態学研究ネットワーク(JaLTER)、モニタリングサイト1000、JapanFlux、生物季節観測ネットワーク(PEN)等を基盤とし、我が国における代表的な陸域生態系を含むことを考慮のうえ、既に分野間共同利用の機能を備えた観測点とする。各プラットフォームにおける観測は、陸域炭素循環、水循環、生物季節や養分動態を含む生態系観測、衛星地上検証観測に必要不可欠な観測項目を網羅すると同時に、1つまたは複数の観測ネットワークをリードする役割を担うため、個別に重点課題を設定する。

・プラットフォーム候補の主な役割
北海道・北海道北:北方針広混交林における大規模伐採・植林実験による炭素循環の長期変化 北海道・苫小牧:冷温帯落葉広葉樹林における温暖化実験と大規模自然攪乱の影響評価
茨城県・真瀬:東北アジアの水田を対象とした炭素循環研究とフラックス観測手法の確立
山梨県・富士北麓:平坦地形を生かした衛星データ地上検証、観測手法標準化
岐阜県・高山:山岳地森林生態系での衛星データ地上検証と手法間比較検証,各手法の融合による流域スケールでの炭素・水循環解析

2.衛星観測と直接対比できる地上観測網の共同利用促進

各プラットフォームでは、衛星観測と地上観測が観測点の空間スケールを一致させることによりデータの直接対比を可能にするため、衛星の空間分解能を考慮した観測領域を設定する事が必要である。衛星観測との対比に必要不可欠な地上データは、観測点の詳細な位置情報、気象要素、地表面・地中状態、植生状態、物質輸送量、分光特性などであり、必要に応じて航空リモートセンシングを活用する。地上の観測領域では、衛星観測の観測領域における各種物理量、植生状態、物質輸送量の空間代表値を観測する。このような機能を備えたプラットフォームの共同利用促進を図る。

3.陸域における衛星・地上観測の統合解析・品質管理体制確立

アジア陸域における地上観測及び衛星観測データの品質管理と統合解析を総合的かつ長期的に行うことのできる体制を確立する。まず国内プラットフォームの相互連携により、総合的な観測を基盤としてデータ品質管理、精度検証、標準化、統合解析等の手法を確立する。次に国際長期生態学研究ネットワーク(ILTER)、AsiaFluxなどの国際的な観測ネットワークを利用して、得られた知見をアジア陸域における他の観測点へ普及する。同時に、アジア陸域で収集される複雑で多様な観測データの精度検証と標準化、多点・分野間統合解析を実施することのできる人材育成を目指す。

以上の取組により温暖化に伴う生態系反応、農業・林業等との関連を含む生態系サービスの脆弱性評価向上に大きく貢献する。

 

略語集ならびに各ネットワークのホームページ

  1. JaLTER (Japan Long-Term Ecological Research Network)
  2. モニタリングサイト1000
  3. JapanFlux
  4. PEN (Phenological Eyes Network)
  5. ILTER(International Long Term Ecological Research)
  6. AsiaFlux

お問合せ先

研究開発局海洋地球課地球・環境科学技術推進室

(研究開発局海洋地球課地球・環境科学技術推進室)

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