静粛超音速機技術の研究開発推進作業部会(第4回) 議事録

1.日時

平成19年4月19日(木曜日) 15時~17時20分

2.場所

三番町共用会議室 大会議室

3.議題

  1. 静粛超音速機技術の研究開発のあり方について
  2. 静粛超音速機技術の研究開発 推進作業部会 報告書について
  3. その他

4.出席者

委員

主査 久保田 弘敏
委員 井川 陽次郎
委員 鵜飼 崇志
委員 大林 茂
委員 垣本 由紀子
委員 鐘尾 みや子
委員 河野 通方
委員 高原 雄児
委員 星野尾 一明
委員 柳田 晃
委員 李家 賢一

文部科学省

 文部科学省大臣官房審議官(研究開発局担当) 板谷 憲次
 文部科学省研究開発局参事官(宇宙航空政策担当) 池原 充洋
 文部科学省研究開発局参事官付参事官補佐 湊 孝一
 文部科学省研究開発局参事官付参事官補佐 野田 浩絵

オブザーバー

 和爾 俊樹
 宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))理事 坂田 公夫
 宇宙航空研究開発機構航空(JAXA(ジャクサ))プログラムディレクタ 石川 隆司
(説明者) 	 
 宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))航空プログラムグループ超音速機チーム長 大貫 武
 宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))航空プログラムグループ超音速機チーフ 村上 浩

5.議事録

  • 事務局より議事資料の確認があった。
  • 議題(1)について、JAXA(ジャクサ)より資料1、資料2により、静粛超音速機技術研究開発のプロジェクト管理及び留意事項(人材育成、広報活動、連携 等)について説明があった。
    主な質疑は以下の通り。

【河野委員】
 QCD(品質管理等の手法)はJAXA(ジャクサ)でロケットを打ち上げるときのものに似ているが、技術開発であるということから、若干ニュアンスが違うのではないか。

【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
 基本的には、ハードウエアを作って飛行実験を行うので、品質管理、あるいは信頼性、安全管理の基本的な考え方はロケット、衛星と同じと考えている。ただし、運用のための衛星を打ち上げるプロジェクトではないので、信頼性に対する要求や、どのレベルまで掘り下げるかというところは、ロケット、衛星とは異なるものであると考えている。
 また、技術研究については、モノを開発する際のプロジェクト管理の手法というのは適用しないようにしている。研究というのは、従来からやっていた研究管理カードというものを作って、その中でスケジュール、あるいは技術目標、進め方というのを定義した管理の仕方を考えており、柔軟に対応できるようにしようとしている。

【河野委員】
 「飛鳥」については、技術開発という位置づけで旧航技研はやっていた。だが、世間では、航空機を開発していると思っていた人が多くいたという。今回の超音速機についても同じようなことが言われてしまうのではないか。本件を踏まえて、「飛鳥」の開発の教訓ということをお伺いしたい。

【JAXA(ジャクサ)(村上)】
 プロジェクトをわかりやすく説明をする際に、技術開発の中身として、「本当はこうなる、こういうものができる」といったかみ砕いた説明をしたために、実機を作るような印象を社会に与えてしまったということは否めないと思っている。
 そのため、プロジェクトの広報活動の中で、私どもが留意すべき事項として挙げている、わかりやすい説明というのは、技術開発としてのプロジェクトの位置づけをわかりやすく工夫して説明するという意味である。そこは、「飛鳥」の教訓として気をつけて説明していきたいということで対処したいと思っている。

【河野委員】
 今回説明頂いた品質管理等の手法を用いれば、ロケット実験機の失敗は防げたと考えるか。今回、ロケット実験機のことも教訓と反省ということで取り入れられているようだが、システムをどのように組み込んでいって、失敗を防げたのか。

【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
 私どもは、ロケット実験機の失敗から、多くのことを学んだ。
 失敗の直接原因は、小さな穴がありショートしたため、誤作動したことだが、これは基本的には形態管理ができていなかったことが要因である。したがって、この手法をもって直接の原因を網にかけることは、ある程度可能と考えている。
 また、それ以外にも学んだことがあり、責任の明確化、段階的に確認をしていく進め方、外部有識者に参加をいただいて、審査、確認を進めること、あるいは品質管理の仕方等、一言で言うとプロジェクトの進め方なのかもしれないが、その中身を私どもも学んで、かなりのリスクはとれると考えている。

【垣本委員】
 研究管理カードによる研究管理と言うと、いかにも研究者の自由度をなくしてしまうようなイメージが強い。確かに管理カードで評価することは大事だと思うが、研究の自由度との兼ね合いをどう取っているのか。

【JAXA(ジャクサ)(坂田)】
 私どもは研究者の自発的な、はつらつたる研究活動を阻害するような要因は除きたいという強い意思を持っている。したがって、管理というカードの名前がいけないかもしれないという考慮はしている。現実には、管理的な手法をとらずに、挑戦を促すことや、よいものを持ち上げてその価値観を皆に広める等、そういうことを努力しているつもりである。御趣旨は深く受けとめているので、名前を変えるかもしれない。
 もう一点、柔軟なプロジェクト管理、リスク管理体制で識別をしたいところは、実際に実験機を成功裏に飛ばすという部分と、そこに載せた研究開発成果としての技術が、いかに成功の方向へ持っていくかの二つがあると思っている。実際に飛行機を飛ばすことを成功させるのは、すぐれた品質管理の問題に近い。しかし、新しい技術、チャレンジした部分を載せるわけであるから、その点に関してはJAXA(ジャクサ)が全面的に責任を持ち、研究開発の一環として管理、推進していくという二つに分けなければいけない。それが柔軟という意味であると御理解いただければと思う。

【垣本委員】
 外部の中での研究評価というのは、委員会を設置して評価を行うという意味であろうか。

【JAXA(ジャクサ)(坂田)】
 はい。研究はその成果として、外の目からどの程度のものかを見ていただくのが大事だと思っている。そのため、外部評価委員会を作って、そこで研究を御評価いただく形をとることが必要であると考える。もちろん、最終的には外部評価と内部評価を比較して全体評価にするということをやっている。

【鵜飼委員】
 このプロジェクトは、大きな柱として、技術研究と、実験機器・ハードウエアを開発して飛行試験で実証していくという2点がある。その2点を双方実現させようとしているわけであるが、技術開発は、実際にこのハードウエアが飛ぶまでに、あと何年かかかる。その期間に新しい研究結果、成果が得られてくると考えるが、そういった成果を、この実験機に織り込んで、試験で確認しようというような要望が出てくることもあるのではないかと思う。
 実験機といえどもハードウエアであって、設計開発を進めていくと、設計がある程度進んだ段階で、それに新たな要求をつけ加えるとか、設計変更していくとかいうようなことが起こってくると、やはり全体としてのプロジェクト上の問題、例えばコストが上がってしてしまうとか、スケジュールが合わなくなるとかいったようなことも起こってくるかと思う。
 その為、技術研究に重点を置くというのは非常によくわかるし、この実験機の目的とすべきだと思うが、それをどこまでこの実験機で確認していくかということについては、先ほど言われた柔軟な管理という、プロジェクト全体の目的からベストな方策を探っていくということを、是非お願いしたいと思っている。

【垣本委員】
 リスク評価というのは、技術を中心にしたリスク評価ということと受け取ったが、研究者が作業する手順の中で発生するようなエラーやミス等を拾い上げて、なぜそういうことが起きたかというようなマネジメントは、このリスク評価には入らないのか。

【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
 今日掲げたリスクは、技術的なリスクがほとんどであるが、モノを開発するときに、過ちを起こさないこととするのが第一である。しかしながら、人間は、間違いをする、誤りがあるというのを前提に、私どもは地上で確認試験を行うこととしている。それはシステムの中に何らかのエラーがあったものをすくい出し、洗い出すということである。つまり、人も含め、誤りがあるという前提のもとでの試験であるので、人間によるエラーをそういったフェーズでなくしていくという考え方をとっている。

【井川委員】
 「飛鳥」の教訓というので重大なことが、抜けているように考える。「飛鳥」は何がいけなかったかというと、長い時間をかけた為、世の中の動きが大分変化してしまったことだと思っている。これは、日本の計画、研究を進めるときの非常に悪い癖ではないかと考える。プロジェクトはスピードが大事だというのを是非とも入れていただきたい。また、予算を取るときに、単年度ではなく、複数年度で取って、前倒しでできるものはどんどんやっていくというような姿勢を検討項目の一つに入れることをお願いしたい。

【JAXA(ジャクサ)(坂田)】
 「飛鳥」の方から申し上げる。エンジンの幾つかのトラブルや、構造上のトラブル等で技術的に延びた。もう一つは、予算が十分にそれぞれにつかなくて延びた、この二つの要因だったと考える。
 是非御理解いただきたいのは、研究所側でプロジェクトの目的や進め方を大きく変えることは非常に難しい。これは施策の上に乗っているので、一度スタートしたら最後までやり切るというのが研究所の基本的な姿勢である。したがって、確かに、短期間でしっかりやる方がよいはずなのであるが、予算や技術の難しさがあって、こうなってしまったということがある。

しかしながら私ども、全くおっしゃるとおり短期間でやるべきだと思う。問題は予算と技術だと思うとこである。
 もう一つ申し上げたいのは、おかげで幾つかの技術的な会得はあった。それはちゃんと日本の航空工業は活かしてくれていると思う。

【板谷審議官】
 では、私の方から予算の関連も含めてお答えする。まず、御期待にできるだけ沿いたいという気持ちは我々も持っている。予算は、JAXA(ジャクサ)全体の交付金の中で考えることになり、また、一気にやるということであるならば、開発フェーズとしてやっていくという方法がある。
 しかし、その場合には、JAXA(ジャクサ)内での資金配分の調整を取ることと、その必要性を含めて、財政が厳しいなか財務省に対して、しっかりプロジェクト着手を認めさせるという二つのハードルがある。そういう意味では、打ち出し方も、研究フェーズでずっとかき集めてきてやるのがいいのか、それとも、開発という形で押し出していくのがいいのかということも、プロジェクトの進め方の形態として、議論できればと思う。我々としても、精一杯の努力をしていくつもりであるが、そういう事情にあるということを御理解いただければと思う。

【JAXA(ジャクサ)(坂田)】
 私どもの願望と考え方という点から申し上げると、技術開発、あるいは研究開発ではあるが、航空技術を結集して、世の中に知らしめるということも含め、あるいは社会、世界から批判なり挑戦を受けるということも含めて、プロジェクト形態で行うという形で外にさらけ出したいと思っている。ロケット実験機のときも、プロジェクト形態をとって世界から見てもらい、それから社会的にも議論をしていただいて、それなりのクオリティのものができてきたのではないかと思う。

【板谷審議官】
 そういった形で仮に打ち出して、ロケット実験機のように失敗した場合には、評価Fである。ところが、本来の技術開発の目的としての要素技術を取得する点については、決してうまく飛ばなくても、そこでデータが得られれば、相応の評価というのは得られることになる。御存じのとおり、科学技術開発というのは、実際行われている途中や行われた後に評価をするというのが、今は当たり前になっている。それらの評価のときに、打ち上げること自体をプロジェクト形式で打ち出すと、うまくいかなかった場合は、そのプロジェクトは失敗という、F評価になってしまう。そこだけは認識いただきたい。
 私は、しっかり研究開発した場合には、これから数年間でソニックブーム強度が半減できるような見込みのある技術というのは、出てくると思う。また、技術研究にあるような課題も、しっかり成果が出てくるのではないかと思っている。そのあたりを踏まえても、やはりそのリスクも冒すということが必要なのかよく考えて欲しい。

【JAXA(ジャクサ)(坂田)】
 確かに第1回飛行実験は確実に評価Fである。皮肉なことに、その後、第2回目飛行実験の成功時に得られた教訓はその失敗によってもたらされた。つまり、第1回の失敗を受け、学んだ教訓が第2回の成功という形になっていると思っている。
 それを私どもは第1回目から成功させたいというのが、今度の静粛実験機である。もちろん複数回飛べるので、最初は地上での実験をしっかりやって、徐々に飛び上がるというやり方が成功をさらに高めると思っている。

【井川委員】
 研究開発等いろいろなことがあるのであろうが、予算は、いろいろな手立てを使えば何とかなるもの。一番危惧しているのは、細々と長くやっていくイメージがあることである。
 要するに、この目標からすれば、直ちに作って、直ちに上げればいいではないかというのが、正直な感想であり、細々と旧状維持のためのプロジェクトを作りたいのかと誤解を招きかねないような気がしている。
 これはまさに開発であって、モノを飛ばすと言うのだから、飛ばせばいいだけの話ではないだろうか。それに対して、相応のデータが得られればいいという話なので、それを迅速にやるのが一番大事だと考える。それを細く長くやって、情勢に合わせて変えるといったことだが、もし情勢に合わせて変えれなくなった場合は、この研究は時代おくれになっている恐れがある。世界では、もっと進んだことをやってしまっているかもしれない。
 したがって、私はこれは太く短くやるというのが一番重要だと思うが、そこまでできないのであれば、その気持ちだけは多少入れてほしい。

【JAXA(ジャクサ)(村上)】
 幾つか疑念を生じられているようなお話があったので、少し補足したい。ソニックブームの強度の半減という目標は非常に高い目標で、この目標値はほぼ理論値に近いところをねらっているので、決して何年か後に陳腐になるようなものではない。
 もう一つ、このソニックブームの強度の半減を実施するためには、飛行実験なしには実証できない。逆に言うと、飛行実証をしたときに、ソニックブームの強度の半減ができているかどうかということも、本当のところはわからない。だからこそ飛行実験をするというプロジェクトになっている。
 それと、この開発期間、確かに長いと言われれば長いかもしれないが、基本設計1年、詳細設計1年ちょっとで、製造2年半。この中には、さまざまな確認のための試験を行う。これは、我々と技術的な検討をメーカーと一緒にさせていただいた中で最短のものを選択しているということである。決して我々は、細々とやろうと思っているものではない。重点的に予算を配分していただき、しっかりと技術研究の方も含めてやっていきたいと思っている。

【池原参事官】
 航空を担当している私どもとしては、この作業部会において御審議いただいて、できるだけプロジェクトとして早くに実施をして、それで大きな成果を上げたいと考えて進めている。事務局としては、先生方から貴重な御意見をいただいた上で、財務省にもきちんと説明して、予算が取れるような方向での報告書をまとめていきたいと思うので、よろしくお願いしたい。

【久保田主査】
 是非、よろしくお願いしたいと思う。

【高原委員】
 資料1の3ページに関して、「技術研究」に関する目標の達成手順についても今後詳しい説明を行い、平成25年には「飛行実証」の成果と合わせて、静粛超音速機技術研究開発のプロジェクト目標である「小型超音速旅客機の実現を可能とする技術の実現に見通しを得た」と言えるようになることを明確化した方が良いと考える。

【大林委員】
 グループの人材育成のところで、世界トップクラス、自由な発想、プロジェクト研究ということだが、この3つが全部できれば、もちろん非常にすばらしいのであるが、なかなか難しい面があると思う。具体的には、自由な発想で基礎研究をされている方が、プロジェクトにどうやって入ってくるのかというところで一つ工夫が必要かと思う。
 また、現在JAXA(ジャクサ)にいる若手の方が、どうやって育成されていくのかというところだが、来年度から新卒の採用が再開されるということで非常にうれしく思っている。一つ心配なのは、今プロジェクト研究員という立場でいる人たちが、そのまま締め出されて終わってしまうのでは、全然育成されていないということになるので、しっかりケアをしていただきたい。

【JAXA(ジャクサ)(坂田)】
 新人採用については、大変強い期待をもっており、成果もありそうだと考えている。おっしゃるように、ポスドクの採用については、今後検討しなければならない私どもの課題だと思っており、真摯に取り組もうと思っている。

【大林委員】
 JAXA(ジャクサ)の多くの人は併任がかかっていると思うのであるが、ある研究テーマに集中できず、研究者として育っていくには弊害になる面もあるかと思う。なるべくその辺を配慮して、人材育成というのが掛け声や建前や仕組みに終わらないで、一個一個の人を見ながら、本当に育成していただければと思う。そういう意味では、メーカーとの人材交流だけではなくて、是非大学との人材交流も図りながら進めていただければと思う。

【JAXA(ジャクサ)(石川)】
 併任の問題は、できるだけ少ない人材で大きな成果を上げようということでやっており、場合によっては必要悪的なこともあるかもしれない。ただ、もちろん一つの研究を掘り下げるのは、若いうちに大事なことではであるが、私の経験では、プロジェクトにかかわったことで、研究にアイデアのフィードバックがあったこともあって、いろんなことにタッチするのがすべて悪いかというと、そうでもないということは御理解いただきたいと思う。基本的には、幅広い考え方と掘り下げることの両方ができる人間を育成するということを考えている。

【鐘尾委員】
 「飛鳥」プロジェクトの成果として、今もつながっているものがあるのだと思うが、これはどの程度今もあるのか。

【JAXA(ジャクサ)(坂田)】
 要素技術では、当時の芽が大きく育って、新しいものとして生み出されている。例えば、複合材やCFDである。また、日本の大型ターボファンエンジンといったエンジンの実用化は、初めて「飛鳥」で取り組んだ。それによってV2500エンジンの開発につながったということで、大きな産業力になった。そのような発展の芽を「飛鳥」はたくさん作っている。今のSSTの中にも、CFDや複合材等が生きていると考えている。

【鐘尾委員】
 そういう点に関して、もう少しPRをしてはいかがか。やはり派手な部分と地味な部分があって、地味な部分をいかにクローズアップしていくかが大事ではないか。日本の技術者のレベルというものを、いかにアピールし、レベルを高めること等をもっと考えていただきたい。

【JAXA(ジャクサ)(坂田)】
 そのように進めたい。

【柳田委員】
 ロケット実験機の不具合箇所がロケットと航空機の継ぎ目部分ということだが、こういう事は、設計の際にそれぞれの専門家が集まったときに、一番抜けやすいところではないかと懸念する。この経験を活かし、今度のプロジェクトでは、産業界などからも、表現は適切ではないかもしれないが、一本釣りを含めて一流の人材を必要なだけ集めることによって、プロジェクト自体もよりスムーズに早く進むことになり、リスク軽減に繋がる。是非、その辺も検討していただきたい。

【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
 まず、人材といった観点からも、日本全体のリソースを活用したいと考えている。また、サブシステムとサブシステムのつなぎ目、インターフェースで誤りが残ったというのは、御指摘いただいたように、私ども経験しているので、総合システムという、このつなぎ目を上の部分で見るというような体制、責任の明確化というのは、考えてまいりたいと思っている。

【JAXA(ジャクサ)(坂田)】
 民間で御活躍であった委員の御助力を得ながらやりたいと思うので、よろしくお願いする。

【李家委員】
 人材育成の件で、共同研究等に関して、大学でも積極的に関与させていただきたいと思っている。また、共同研究では事務的な手続き等で、知的財産の保護といったことはきちんとされていると思うので問題ないと思うが、学生教育プログラムという、学生の講義や、演習といったレベルでの連携の話では、知的財産等をうまく管理していく体制が必要であるかと思う。ただ、広報活動ということでは、学部学生、大学院生等にある程度参画させていただくと、それが、学生が航空という学科に入ってきて、本当に学科で勉強してよかったなと思う一つの最大の理由になると思うので、積極的にこの辺のところを考えていただきたいといったこともある。

  • 続いて、事務局より資料3により、静粛超音速機技術の研究開発 推進作業部会 報告書骨子(案)について説明があった。主な質疑は以下の通り。

【河野委員】
 このワーキンググループは推進作業部会であり、方向性を決めることが必要である。骨子案では肝心の方向性が読み取れないように思う。例えば、お金を最大につけて、早く実現させる方向で積極的にやってみたらどうか、ということを委員の気持ちとして加えてもいいのではないか。

【板谷審議官】
 推進作業部会であるので、是非これは、こういうタイミングで推進すべきであるということは積極的に盛り込んでよいと考える。そして、そのための理由はこうであるという形式にしていただきたいと思う。いただいたご示唆をベースにして作ると、現在の案となるが、もっと知恵をいただきたいというのが正直なところである。
 そのため、産業界は、是非とも次のステップを共同開発するために、この技術をこれだけのタイミングで欲しいということを、言っていただけると我々としてもありがたい。

【久保田主査】
 この作業部会では、検討し方向性を出すのが、我々の使命だと思う。
 したがって、この報告書の前文か、あるいは最後に、検討した結果として、やはりこれは推進すべきであるといったまとめ方にするのがいいのではないかと思っている。

【河野委員】
 推進するというのは最初から決まっていることであるので、それをより具体的にするようなものを書いておくということか。

【久保田主査】
 そのとおりである。

【井川委員】
 今これを研究開発しないと、日本が現在持っている基礎的なレベルの研究が無駄になり、世界から取り残されるという趣旨で、前回か前々回に申し上げたのであるが、直っていないので、残念である。この技術を今やらねばならないという切迫感と社会のニーズの両方を入れて、より充実したものに次回はなっていることを、大いに期待したいと思う。
 一つだけ細かいことで、1章の1.の3つ目の丸なのであるが、海外への単身赴任や、留学の増加というのは、世間からあまり理解が得られそうもないので、これは何とかして頂きたい。

【久保田主査】
 今まで私なども、絶対推進したいと言ってきた。ただ、そういうことを言うと、世の中ですごい反感を買うことがある。推進するためには、やはり裏づけがないといけないだろう。第1章というのは、そのための裏づけではないかと思っている。だから、社会が本当にこれを必要としているのだということを言って、我々がそれをもとにやるのだ、やりたいのだというトーンでまとめていくのがいいのでないかと思う。
 以前に石川ディレクタがアンケートをとると言っておられたが、社会がこれを後押ししているというのが一つの根拠になるのではないかと考える。それを含めて我々はやりたいのだという言い方をしたいと思っているのであるが、いかがか。

【JAXA(ジャクサ)(石川)】
 アンケートについて、JAXA(ジャクサ)全体の広報部で一般の方を対象にアンケート調査をするという計画があったが、3月、突然、中止になってしまった。その後についてはどうするか、考えたいと思っている。今すぐどうこうとは申し上げられないが、大変残念なことに、JAXA(ジャクサ)全体の広報部での調査が中止になったということの報告だけさせていただきたいと思う。

【久保田主査】
 それにかわるようなものはないのだろうか。

【JAXA(ジャクサ)(石川)】
 SJACさんのなされた、昔の調査資料は既に存在することはする。ただ、時間的に新しいものということで、検討させていただきたいと思う。

【井川委員】
 これは専門的な開発であるので、これは産業界の方、例えば、産業界のトップに聞いてみるとか、あるいは航空分野の専門家の方に、どういう開発が必要なのかを聞いてみたといったことでないと、無意味な調査になるおそれがある。学協会の方のアンケート、あるいは企業、航空宇宙産業会なりの企業の方のアンケートというのは、建設的かつ意味のある回答をいただけるものだと思うので、その辺の調査を実施してはいかがだろうか。是非検討してみていただきたい。

【久保田主査】
 産業界にもメリットがあるということもSSTの開発を推進する一つの根拠にはなると思うが、産業界から見てこの辺はどうであろうか。

【柳田委員】
 超音速域まで含めた最高レベルの先端技術を他国に先駆けて獲得することは大きなメリットである。またこの先端技術は、超音速機に限らず、今の旅客機などに活用できる。このような先端技術を一般の旅客機に活用することはシェア拡大等にも繋がっていくと思う。
 このような波及効果の扱いについても整理が必要と考える。産業界は波及効果も期待していることを記述する考えがある。それとも、純粋にSSTの先端技術をやっていく必要があることを記述する考え方もある。
 少なくとも産業界は、SSTの課題に対するブレークスルーや、それに付随する周辺技術も含めて、先端技術の研究を積極的に進めてもらいたいと思っている。

【JAXA(ジャクサ)(坂田)】
 久保田先生のおっしゃるように、長い目で見ると、これは産業界との連携プログラムなのである。つまり、1990年代から産業界が始められた開発調査、そしてロケット実験機とか、HIPR/ESPRのジェットエンジン開発との連携から、ずっと連綿として続いている部分の文科省分という位置づけが明確にあると思う。また、文科省の役割として、こういう実験機を産業界と一緒に作ることによって、産業界のインテグレーション技術も一緒に涵養できるという部分があり、その部分は、ここへしっかりと書き込むことは可能だと思う。

【鐘尾委員】
 今日、知的所有権、知的財産権と言う点に関して非常に重要になってきているところである。骨子案の最後のところに、「知的所有権など」と書いてあるが、留意事項のところには、どこも出ていない。本件は、最後に書くといった扱いでなく、3章のどこかに入れていただきたいと思う。新規な技術に特許を持つということは、非常に社会に対して強い立場になる。その点に関して、もう少し力を入れていただいた方がよいのではないか。技術開発の方ばかりに目が行くと、特許に関してちょっとおろそかになることがあるので、同じように重きを置いてやっていただきたいと思う。

【池原参事官】
 そのようにさせていただきたい。

【大林委員】
 第1章の出だしに関して、日本の経済発展を、今後拡大していこうと思えば、やはり輸送を拡大するというのは一つの大きな方策で、そのためには、日本も航空を頑張るしかないのだと思う。そういう視点から始まっていて、その中で技術の挑戦としてSSTをやるということが、航空全般に役立つのだというところがあるといいと思う。
 その中で、ソニックブーム半減だけではなく、技術研究の成果がどう生かしてくるのかという視点も入れた方がいいかと考える。例えば、SSTではなくて、今の飛行機にどうやって還元されて、今の飛行機もこれをやることによってよくなるという、航空科学全般に寄与できるのだという論点がいいのかと思う。そうすると、3ページ目の研究開発の技術目標、これはもうSSTの話しか書いていないのであるが、この後に、例えば、こういう技術シードがあると、遷音速機だって、こんなによくなるというのが書いてあってもいいかという気がする。

【垣本委員】
 この1章の第1の高速移動に対するニーズというのは、どちらかというと一般的な人の多くが長時間フライトにうんざりしているわけであるから、そういう人たちにとって、必要なのだという意味で書かれたと思う。しかし、その同じページの3.のところを見てみると、時間単価の高いビジネス旅客をターゲットとしてということが書かれている。そこで、一般的な多くの人は該当しないと思ってしまうのである。そういう意味では、まず、「とりあえず第1段階としては」といった書きぶりにし、1と3がつながるようにしていただかないとまずいかと思う。
 また、前の失敗等を生かして、ちゃんとプロジェクトを立ち上げて、安全なのだということを、どこかで技術的目標のほかに入れておいていただくといいかと考える。

【河野委員】
 予算の枠を考えて、長期的な見通しでやっていくということが先にあれば、夢といったものはなかなか入るすきがなくなる。この話で一番私が気にかかっているのは、なるべく早くやるということのメリットである。これはディファクトスタンダードをとるというようなことが、開発の上で非常に重要だということで、今、宇宙旅行なども、それをねらって、多くのベンチャーが積極的に参入してきている。予算上のことを抑えていたのでは、超音速も同じような議論がここでできなくなり、まずいという気がするがいかがだろうか。

【久保田主査】
 予算上のことは、もちろん必要なことなのであるが、推進部会としては、こういうことがあるから、こうすべきだということを出していいのではないかと思う。それに予算がくっついてきてくれれば一番いいわけである。

【井川委員】
 一つだけ申し上げたいのは、技術開発というのは、スピードが大事で、その意味では、この中に書き込むときに、従来の国の開発プロジェクトの既存の枠組みというのを外れて、それを打ち破ってでも開発に臨むべきであるというぐらいのことは入れておいた方が、いいのではないかと思う。

【高原委員】
 ニーズの観点から言うと、こういった技術は汎用技術であり、安全保障にも寄与できるといった話等、波及効果として、そういうことを書いてもいいのではないかと思う。

【JAXA(ジャクサ)(坂田)】
 私どものアドバイザーである中野不二男先生が、“こういうものを先に行うことによって、技術だけではなく、全体セキュリティの保持にもつながる。日本がこういうものを作れ、こういうものを提案できるという国であると示すことが、国のセキュリティの全体に通じるのだという認識もって取り組んでいってほしい。”とよくおっしゃっている。また、ロケットであれ、衛星であれ、飛行機であろうが、私どもは、ある種の責任者として頑張らなければいけないと勇気付けられるが、この場でも、大いにそういう意を強くしている次第である。

【板谷審議官】
 今、日本が最先端のSSTに関する要素技術を持って、それをさらに一段と高めていることが、国際共同開発として一緒に行おうとしたときに、日本にとって優位性を確保し、世界リードする上で非常に大事なこととなるのである。そこを目指して、我々としてやっていきたいというのが、まさにこのプロジェクトである。そういったことをしっかりこれに書き込んでいくということが大事だと思っている。
 また、予算に関しての制約等は、この場でお考えいただく必要はあまりないと思っている。私どもとしては、是非ともやっていきたいという方向で、来年度の予算折衝には臨みたいと思っており、そういった方向でプロジェクト構想を作っていきたいと考えている。そういった意味で、是非とも推進の力になるような報告書にしていただければと思う。

【久保田主査】
 この報告書が推進の力になれればベストだと思う。その意味で、方向性を、技術開発だけで終わるのか、実用化まで持っていくのか、といったどのような方向へ持っていくべきか、ということが重要だが、ここで出てきたものが産業界に渡され、実用化されることを希望するといったように、期待を持って書くのがよいのではないかと思うが、いかがだろうか。

【井川委員】
 希望するではなくて、産業界の中核になるはずだと書いてよいかと思う。やはり国としてこういう技術開発のプロジェクトがないと、日本の産業界も、人材といい、企業の維持といい、世界でのマーケットの向上を含めて死活問題だと思う。したがって、こういったことを今後の柱となるはずのものだと位置づけていくべきだと考える。

【池原参事官】
 そのあたりは、次回までに、いろいろ関係者の方からも御意見を頂いて、うまくまとまるようにしていきたいと思う。

【李家委員】
 コメントなのだが、報告書として、こういった文言になるのは仕方ないと思うのであるが、私の希望としては、今回の静粛超音速機技術開発をすることによって、ソニックブーム以外にも低抵抗化と軽量化が大きく進んで、そうすると50席クラスの機体でSSTを作って飛ばすようになると、将来的にコスト面で、例えば、今のボーイング777と同じ程度のコストで、場合によっては飛べるようになる可能性があって、そうすると学生の留学にも使えるようになるかもしれないとか、そういった数字での根拠というのを、もし添付できればしていただけたらと思う。文言というよりも、数字で出していただけたらというのが私の希望である。

【星野尾委員】
 3ページの飛行実証の必要性という部分に、離陸から超音速巡航まで自律的に飛行するという部分が書かれているが、実際、航空機を将来において運航するときに、こういう技術というのは、これから重要になってくるのではないかと思っている。直接的に機体を作るというところとは、若干離れたところにあるのかもしれないのであるが、こういう信頼の置ける飛ばし方をできる技術を開発するというのは、これからも非常に重要になってくる部分であるので、こういう面を強調してもいいのかと思う。

  • その他として、事務局より資料4により、前回議事要旨の確認があった。その後、作業部会の今後の予定について説明があった。

-了-

お問合せ先

研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付

(研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付)