静粛超音速機技術の研究開発推進作業部会(第3回) 議事録

1.日時

平成19年2月19日(月曜日) 15時~17時20分

2.場所

三田共用会議所 第2特別会議室

3.議題

  1. 静粛超音速機技術の研究開発のあり方について
  2. その他

4.出席者

委員

 主査 久保田 弘敏
 委員 井川 陽次郎
 委員 鵜飼 崇志
 委員 大林 茂
 委員 垣本 由紀子
 委員 鐘尾 みや子
 委員 河野 通方
 委員 高原 雄児
 委員 星野尾 一明
 委員 柳田 晃
 委員 李家 賢一

文部科学省

 文部科学省大臣官房審議官(研究開発局担当) 板谷 憲次
 文部科学省研究開発局参事官(宇宙航空政策担当) 池原 充洋
 文部科学省研究開発局参事官付参事官補佐 湊 孝一
 宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))理事 坂田 公夫
 宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))航空プログラムディレクタ 石川 隆司
(説明者)
 宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))航空プログラムグループ超音速機チーム長 大貫 武
 宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))航空プログラムグループ超音速機チーフ 村上 哲

オブザーバー

 和爾 俊樹、家邊 健吾
 航空科学技術委員会主査 杉山 武彦
 航空科学技術委員会委員 石田 寛人、越智 信夫、知野 恵子、萩原 太郎、松尾 亜紀子、宮部 俊一

5.議事録

  • 事務局より、親会である航空科学技術委員会が第4期として新たに立ち上げられたことを受け、本作業部会も再度立ち上げが行われたとの説明があった。
  • 事務局より今期作業部会から新たに加わる委員の紹介があった。
  • 航空科学技術委員会の杉山主査の指名により、作業部会の主査として久保田委員が選出された。
  • 事務局より議事資料の確認があった。
  • 議題(1)について、事務局より資料1により、超音速輸送機(SST)に関する現状及び将来の展望を踏まえた研究開発のあり方について説明があった。主な質疑は以下のとおり。

【河野委員】
 資料1だが、SSTの社会的なニーズという項目は、もう少ししっかり書いていただいた方がよろしいのではないか。

【湊補佐】
 私どもの意図としては、コンコルドは退役したが、それは社会から超音速機自体が要らないと言われて退役したということではなく、よりよい環境適合性、経済性に富んだものがあれば、それはやはり社会としてもまだ待ち望んでいるのであろうということ。

【河野委員】
 今言ったような趣旨があまり出ていないように感じる。

【久保田主査】
 過去の審議の中では、例えば、こうした要求に応えるSSTができた場合の経済価値などの話もあった。そういう中での定量的数値も示した方がよいということか。

【河野委員】
 この資料がどこかに出ていくかわからないが、作業部会で検討した内容が外に出たときには強い印象を与えるものにする癖をつけていくことは大事かと思っている。

【久保田主査】
 わかった。報告書にしていく段階では具体的に書いていくようにしたい。

【井川委員】
 2.国内外の研究開発の動向の項目の結論について、世界的な優位技術の基盤というのはどういう意味か。端的に言うと、超音速機に関する技術としては、日本はまだ基礎技術、萌芽技術ぐらいしか持っておらず、世界的な状況を見ると、このタイミングで積極的にこの分野に投資しないとせっかくの萌芽技術が価値のないものになってしまうという危機感の方がむしろ先にあるべきだという感じがする。この趣旨は正直に書かないと、報告書を作る意味がなくなるのではないか。

【久保田主査】
 今日の審議の内容にも関係してくるかと思うが、私はJAXA(ジャクサ)ではかなり研究が進んでいると理解しており、環境適合性の研究等は世界的に見ても非常に進んでいる。この文章はそういうことを言っているのではないかと思うがいかがか。

【湊補佐】
 考えているところは、井川委員のお考えに沿っていると思っている。書きぶりについては更に検討したい。ここで言おうとしている優位技術というのは、これまでの研究開発で成果が出てきた分野であり、例えばJAXA(ジャクサ)で言えば空力解析の技術、また、経産省の方でやられていたHYPR、ESPRなどの推進技術である。こういったところはまさに国際競争力のある技術として芽が出てきており、引き続き推進していかなければ、将来、同時並行的に進んでいる国際的な研究開発の動向を考慮したときに、価値が失われてしまうのだろうという認識は同感である。

【知野委員】
 1.SSTの社会的なニーズの結論部分、根強いという言葉をあえて使った理由は何か。

【湊補佐】
 根強いと書いたのは、コンコルドのことが念頭にあり、今実用化されている超音速輸送機がない状況においても、コンコルド時代にあったニーズが引き続きあるということを表現したかった。

【知野委員】
 根強いとあえて使っていると、後ろ向きのイメージで受けとめる部分がある。

【久保田主査】
 非常に強いニーズと言う積極的な意味のつもりだが、表現として報告書では検討させてほしい。

【池原参事官】
 今後、報告書を作る段階で、またいろいろな御意見をいただいた上で、もっと適切な言いぶりに修正したり、もっと客観的なデータを盛り込むといったころを工夫させていただきたい。

【越智委員】
 以前コンコルドがあったからどうだということではなく、今現在、本当にニーズがどうあるのかということを議論しないといけないのではないか。これは、米国で超音速ビジネスジェットの開発が動いている、だから根強いニーズがあるということにも言える。積極的に何かしらのニーズがあるので、過去コンコルドも開発されたし、超音速ビジネスジェットも現在やっている、要は早く移動したいというニーズがあるということがまずあるべきである。早く移動したい、長距離を長時間かけて移動するのはやはり苦痛であるということが根底にあるのだということを説明すれば、確かにニーズがあるというのは素直に伝わってくるし一般の方々も受けとりやすいのではないかという気がした。

【久保田主査】
 おっしゃるとおり。2回目の作業部会に、エアラインの方に来ていただいて、エアラインから見たニーズというものも伺った。そこでは、やはり時間的価値が適合すれば、エアラインとしても使いたいし、お客様もそういうニーズは持っていると言っていた。これは一つの根拠である。

【久保田主査】
 SSTのニーズについて、調査会社は、経済性と時間価値をどういう具合にトレードオフするかとか、環境適合性をどうトレードオフするかという調査はしており、それが社会的ニーズという言葉になっているが、本来であれば、一般の人がどう考えているかということもアンケート調査などをして、早く行きたいだとか、時間を稼ぎたいというようなニーズがあるのかということを確認できれば、社会的ニーズとして前向きな発言ができるのではないかという気がする。そういう調査はしていないのか。

【JAXA(ジャクサ)(村上)】
 これまでに報告された調査結果については、全体で世界の長距離路線、八十何路線というものを選択して、その中の時間短縮効果を見て調査した結果だが、その調査の結果については、旅客のアンケートをベースにして作られたと私どもは聞いている。

【久保田主査】
 この議論のまとめだが、今まで議論の流れ、方向性を確認した。つまり、社会的なニーズが存在するというところは、疑問視する意見もあったが、社会的なニーズが存在するのであれば、それを実現するためには、これからの研究開発が必要であるという流れになっており、こういう方向性で良いと思っているが、よろしいか。これまでにいただいた御意見については、今後、報告書を取りまとめる際に適切に反映していきたいと思っている。

  • 続いて、JAXA(ジャクサ)より資料2により、静粛超音速機技術の研究開発の技術目標について説明があった。主な質疑は以下のとおり。

【河野委員】
 18ページ、小型SSTについては、国際共同開発ということが触れられていないが、その辺少し整理していただけるとありがたい。

【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
 残念ながら、国際共同開発というのはまだ具体的な計画はない。ただ、考えられているのは、大型のSSTで国際共同開発になるであろうということ。大型は、機体の開発規模も大きいし、事業としてのリスクが非常に大きいので、一つの国で大型SSTを開発するというのはリスクがあまりに大きい。また、事業規模が大きくなるので、今の亜音速機のように、いろいろな種類の大型SSTが飛ぶことも考えにくいので、仕様を1つに絞った機体を国際共同開発で開発しようということが各国で言われている。
 だが、大型のSSTというのは、技術のハードルが少し高いところがあり、もっと小型のSST、例えば、マッハ数が1.6で小型であれば、技術的に現在近いところにあるという状況であるので、各国で、小型SSTの研究開発が再燃しているところである。
 小型SSTに関して、国際共同開発になるかどうかという議論はまだ十分されてはいないが、SSBJは一つの企業で十分開発できるような規模と考えられている。特に、米国のSAIとかエアリオンは、1社で独自に開発し、市場投入するという計画を出している。SSBJについては、すでに時間的な競争になっており、他国の出方を待っているということではなくて、どんどん話を進めようというスタンスになっている。

【石田委員】
 基本的に、こうした技術開発は極めて大事だと思うが、小型SSTがこのまま実現すれば、ファーストクラス料金を払える一部の人はメリットを受けるかもしれないが、多くの人はそうでないかもしれない。我々はなるべく格差のない社会を目指しているが、この分野でテクニカル・デバイドが発生する可能性がある。計画を進める者としては、絶えずそういう意識を持っていなければいけない。
 もう1点、我が国は欧米諸国と違って、特に遠隔の地にあり、ビジネス、文化やその他で、大きな地理的不利を背負っている。こうした状況の我が国が、SSTの開発を行うのは特別な意義があるという言い方がどこまでどうできるのかというようなことを、是非専門家の皆さんで詰めていただけると非常にありがたい。

【久保田主査】
 今の点、技術目標を立てる上でJAXA(ジャクサ)では検討されているか。

【JAXA(ジャクサ)(村上)】
 確かに小型SSTというのは、残念ながら誰でも利用できる機体にはならない。その意味では、我々が当初から言っているように、この研究開発目標は、大型のSSTを将来的に視野に入れる。大型SSTでは、現在の運賃レベルの1.3倍程度の料金を払えば、エコノミークラスも設定できる。そうすると、誰もが超音速旅客機による時間短縮の恩恵を受けることができる。我が国こそ、欧米の経済圏から離れている位置にあり、高速性の恩恵を最も受ける国であるという認識のもとに、我々としては、大型の超音速旅客機の実現を目指して、この研究開発を進めていきたい。
 しかしながら、この5年程度を見通したときに、大型のSSTを経済的に成り立たせるレベルまで成熟させるのは、世界的に見てもなかなか困難であろうということから、小型のSSTについても需要性は十分あるということで、我々としては、小型SSTの目標を今回設定させていただいた。

【JAXA(ジャクサ)(石川)】
 1点補足すると、この技術のもう一つの側面は、対アジアという観点がある。アジアに日帰りができるということも将来は非常にメリットが出るであろうということで、現在政府で検討されている「イノベーション25」という計画に、一つのイノベーションの可能性として提示させていただいている。我が国の地政学的な状況を踏まえて、我が国がやるべきものであるという説明をしている。

【鐘尾委員】
 大型SSTと小型SSTというのは、技術的にはかなりかけ離れていると私は考えている。大型SSTの実現を視野に入れつつと言ったが、そういう二兎を追うことができるのかというのが素朴な疑問である。

【JAXA(ジャクサ)(村上)】
 今、指摘いただいた件だが、大型SSTと小型SSTはどちらも、技術的な面として機体の性能を上げるという点では全く同じである。すなわち、超音速運航時の抵抗を下げること、エンジンの騒音を下げることである。あえて、小型SSTと大型SSTで違うところをいえば、小型SSTの場合は陸上も超音速で必ず飛行できるようにすることが、市場性の観点から不可欠になるということであり、超音速運航の際に固有に発生するソニックブームと言われる爆音を下げる技術が最大の障壁になるということである。
 ちなみに、コンコルドは、小型SSTと大型SSTの間に入る。決して大きい機体ではない。大型SSTとして我々が狙っているのは、300人乗りの機体である。コンコルドは約100人乗りの機体であった。

【垣本委員】
 16~17ページを見ると、本プロジェクトの重点課題が幾つか挙げられているが、例えば、航空機中の操縦士などの人間側の負担や旅客へのヒューマンファクター的な課題というのは、どこかで考えられているのか。

【JAXA(ジャクサ)(村上)】
 これらについては、JAXA(ジャクサ)航空プログラムグループで実施されている運航安全の研究開発の中でしっかりやらせていただいている。我々は、二重投資をしないという考え方から、運航安全、あるいはパイロットの負荷を下げる技術というものについては、統一して運航安全の研究開発の中で進めていきたいと思っている。
 それから、乗員全体に関しては、超音速機の高速性により、一般的には拘束される時間が短くなるので、軽減される方向である。超音速固有の問題で唯一あるのは、離着陸時の操縦が、亜音速に比べて難しくなるだろうということである。これらについても基本的には、運航安全の研究開発の中で実施していくということになる。

【井川委員】
 18ページだが、解決するための技術として、操縦・推進・構造連成モード予測技術などいろいろな技術があり、そこには「小型SSTレベルでは必ずしも必要でない」とある。現在は、ロボット技術などが急速に進歩している時代であり、将来的な技術の可能性が随分変わってくることも視野に入れておかなければならない。そう考えると、この表現のように絞るような形ではなく、幅広に書いておいて、今回の目標はこうするというような書きぶりにしておいた方がよいのではないか。また、先ほどの話にも出たが、別のところでやっているからこれでよしとするのではなく、小型SST特有の仕様というものが出てくるのは間違いないので、そういった点も今回の研究開発には盛り込んでおいて、場合によって、別のところでやっている研究開発の成果を取り込んで、小型SSTの性能面の修正などに活かせるようにしておかないと、開発が後になって行き詰まる危険性を感じる。
 もう1点。これは少数意見だろうとは思うが、全国民が乗れるような飛行機を作るのであれば、それは本来国土交通省がやるべきことであって、文部科学省がやるべきことではないと思う。文部科学省は、先端技術を目指す研究開発を行うべきであり、あまり全体多数を配慮する必要はないのではないか。むしろ、先端技術を開発することで、日本の国際的な地位が上がるだとか、その技術を活かした企業が利益を上げて、税収が増えるなど、そういった形で次第に全国民にもその技術が広がっていけばいいと私は思う。

【石田委員】
 気持ちとしては、井川委員のおっしゃるとおり。ただし、我々が研究開発をプロジェクト化して大きな予算を投入していくときには、多くの方々のサポートが不可欠である。多くの方々のサポートをいただくためには、これは国民に成果が還元される技術であるということを、研究開発の初期段階から言っていかないと、なかなか多くの方々のサポートはいただけないというのが私の経験である。

【鵜飼委員】
 このJAXA(ジャクサ)の資料は、要するに、SSTに必要な先端技術が何かという技術開発の面からの観点でまとめられた資料だと私は理解している。
 実は研究機を開発するに当たり、もう一つ設計という重要な要素がある。実際に設計するのはどこかといったら、機体メーカーである。そういうメーカーの設計技術者が、その時点で使用可能な先端技術の成果を利用してうまく設計していくわけである。その時点で、運航安全性はもちろんのこと、他にも非常に多くの要素を同時に反映させていく作業が設計の時点で入ってくるのだと思う。この資料は、そうした設計作業に入る前に、どういう技術を利用可能にしておかなければいけないかという段階での開発事項をまとめたと理解されればいいのではないかという気がした。

【JAXA(ジャクサ)(村上)】
 井川委員のご指摘の点で、小型SSTにしても大型SSTにしても、いつ何どきこの技術が大切だ、となることは当然あり得る。我々としては、世界の動向を注視しながら、柔軟に研究開発を進めていこうと思っている。ただ、ここで、重点化していないと書いてあるものについても、当然我々としては、基礎研究として行い、技術が遅れないレベルを維持するために努力はしていきたい。

【井川委員】
 その姿勢は受けとめていただいて大変感謝している。何も直ちにやるべきと言っているわけではなくて、ここにあるような技術も将来的、長期的には必要になる。だからこそ、当面やるものを分けることは良いが、「必ずしも必要ではない」と書いてしまうと、もうやらないのだと理解される懸念があるので申し上げた。

【JAXA(ジャクサ)(村上)】
 了解した。大型SSTには絶対に必要となる技術なので、当然それは視野に入っているということである。

【河野委員】
 14ページに、超音速旅客機開発の現状技術到達度と重要技術というのがあるが、大型SST性能目標の方とはかなりかけ離れていて、まだ技術開発が必要だということだが、これをどうやってクリアするかということはどこにも出てない。先ほどから聞いていると、エンジン騒音も結構問題だということなのでそういうことも少し触れておいた方が後々のためにはいいのではないか。

【JAXA(ジャクサ)(村上)】
 大型SSTについては、エンジンの低騒音化というのが大変重要である。そのために、低騒音ノズルの研究というのはかなり重点化して、我々として見ていこうと思っている。経済性も確かにかなりブランクがあるが、何もしないということではなくて、揚抗比を上げる技術、軽量化の技術等を実現することにより、2012年の時点で、大型SSTの性能目標になるべく近づけるために努力はする。

【久保田主査】
 先ほどからの意見では、研究開発の目標の中に、実用化を将来するのかどうかということを想定して、それで研究開発をどこまでやるのかという議論があったかと思う。この作業部会は、研究開発を推進するための部会なので、実用化してほしいということになると思うが、実用化に対する考え方は航空科学技術委員会でしかるべき判断をしていただければと思う。いずれにしても、私は、技術開発だけで終わるのではなくて、将来的には実用化に持っていかなければいけないものだと思って議論を進めている。

【萩原委員】
 将来の実用化を念頭に置いて、こういう研究開発をすることは必要だと思うが、この研究開発で実際にやることは基礎的な研究開発であり、これは大型でも小型でも、超音速で飛ぶということでは基本的には変わらない技術ではないかという気がする。なぜ小型SSTを念頭に置いているような表現をするのか今の議論を聞いてもわかりにくい感じがした。むしろ大型か小型かどちらかという余計な議論を招くような気がしている。

【JAXA(ジャクサ)(村上)】
 我々としては、大型SSTの実現を目指して研究開発をしている。ただ、我々が5年、6年程度を見通したときに、技術的にどこに到達できるかということを、例えば、揚抗比はこのくらいになった、抵抗はこのくらい下がったと説明しても、その技術がどこぐらいのレベルにあるか一般社会にとってはわかりにくいと思う。その意味で、我々としては、分かりやすさの観点から、小型SSTのレベルだということを示している。小型SSTについては、十分需要性もあるだろうということもあり、中間段階の目標という形になるが、目標設定するにはふさわしいと判断し、小型SSTということにした。

【萩原委員】
 こういう基礎研究をやってもこれ単独では、大型でも小型でもSSTができるとは思えない。この研究開発だけで小型SSTができるというと、そういう誤解を与えるような気がする。

【久保田主査】
 私の理解では、横軸に時間をとり、縦軸に技術の到達度をとると、多分右上がりとなり、途中に小型SSTの技術レベルがあって、もう少し時間的に先なところに大型SSTの技術レベルがある。だから、時間をどこで切るかによって、小型であったり大型であったりするということかと思っている。5年というスパンがきいてくるのではないかと思っている。

【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
 おっしゃるとおり。5年というスパンを考えたときの技術的な目標値としては、小型のSSTのレベルであるというところである。したがって、このプロジェクトが終わったときに、直ちに小型SSTの開発を私どもがするという話とは全く違う。技術をそこのレベルまで上げるというのが私どもの目標である。

【JAXA(ジャクサ)(坂田)】
 議論を聞いて、いろいろと整理をしなければならないと思っている。今回は、プロジェクトとして、静粛超音速の研究機を作って、デモンストレーションするというフェーズを、あと5年か6年ぐらいのところに置きたいという意思である。ただ、今までの議論にあったように、大型SSTがすぐできるわけではない。小型SSTも本研究開発が終わったらすぐできると言うにはあまりにもおこがましい部分がある。ただし、日本の周囲を見ると、航空機のさまざまなプログラムがあり、我が国も国際競争力があるということをしっかりと示しておかないと、将来的に日本の意見の入らない世界になってくるだろうという危機感がある。したがって、JAXA(ジャクサ)の役割は、諸外国で超音速機が飛んでしまったという時に日本は何もしてないということではなく、こういう技術があると示すために、デモンストレーションをするというのが大きな趣旨だと思っている。そのデモンストレーションができるということは、日本の技術があるということであり、国際共同開発が開始されるような時には、日本が主役の一員を担えるという意味が大きい。ただ、もし前段階で小型SSTができるとなれば、それは日本独自でも、あるいは国際共同でも、そうした動きをプロモートするなり、国際共同開発において主役の一員になるなり、日本の国内で開発するなり、色々と選択肢ができると思う。その際には、目に見える技術基盤、基盤的なものを持っておくことが重要であり、これが目標になるのだと思う。そして、この5年ぐらいの間で、この程度の目標を技術的には持っておきたいということで、JAXA(ジャクサ)における研究開発の提案をするわけであり、残念ながら5年後にすべての技術ができ上がっているわけではない。ただし、現状ある種の予算をいただいて、提案する研究開発ぐらいのことまでをやり、デモンストレーションがうまくいくと、それによって世界的な地位を獲得できる、そういう意味で見ていただきたいと思う。

  • 続いて、JAXA(ジャクサ)より資料3により、静粛超音速機技術の研究開発の手法について説明があった。主な質疑は以下のとおり。

【河野委員】
 前回ウーメラでロケット実験機の実験に失敗したとき、私はすごくショックを受けた。ただ、実験というものには失敗はあり得ると思っている。今回は、是非失敗してほしくないと思っているが、前回の実験はどういう原因があって失敗して、それにどう対応してきたかということを、次回この作業部会の場で皆様の審議に十分応じられるように、資料をそろえていただきたいと思う。

【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
 了解した。

【越智委員】
 最後のページ、期待される成果および効果のところ、今の時点で、「大型超音速機は、海上超音速飛行を保障する」と海上のみと限定してしまっているところがある。今後、のことを考えた場合に、やはり大型超音速機は海上のみでは困るわけである。ここで、このような表現で初めから決め打ちされない方がよろしいのではないか。

【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
 将来的に大型SSTも陸上を飛ぶことができればもちろんそれにこしたことはない。需要として増すのは当然のことだと思う。ただ、我々がここで提案している半減というレベルでは、少なくとも大型SSTは海上を飛べることが可能になるだろうというところを述べているだけである。現時点で小型は陸上、大型は海上と限定しているわけではない。

【越智委員】
 この資料をよく読んでくれる方はわかると思うが、よく読まない方には誤解を生む可能性がある。

【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
 文言は工夫させていただく。

【久保田主査】
 研究目標を解決する手法は、研究機による実証がよいのだということが今のプレゼンの趣旨であろう。もちろん、研究機を作るには、様々なツールを開発するし、それに対する基盤技術もやっていくが、目玉は研究機を飛ばすという理解でいいのか。

【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
 研究機を飛ばすのと技術研究が両方走るということだが、やはり目玉である、キーテクノロジーを飛行実証するという意味では、研究機を飛ばすところがプライオリティーとしても高いものだと考えている。

【久保田主査】
 少しこだわりがあるのは、研究機だけで終わるのか。つまり、井川委員がさっき言ったように、先端技術をやればいいと言えばいいのだが、一方では、鵜飼委員が言ったように、実用化に結びつくような設計というようなことも考えることも出てくる。
 私が一番気になっているのは、エンジンを上に配置するという現在のコンセプトであり、それは研究機ならいいと思う。研究機なら、ソニックブームも減るだろうし、離着陸の騒音も減るだろうが、これがうまくいって実用機につなげていくとすると、エンジンが上にあると作業性が悪くなるとか、インテークの吸い込みが悪くなり、結局全く使えなかったという技術ということになってしまわないかという危惧がある。

【JAXA(ジャクサ)(村上)】
 私ども、実機概念の研究というのも当然進めていく。基本的に将来のコンセプトとして、エンジンを上につける方がいいと我々としては考えている。ただ、エンジンを下につけるというケースについても、実機概念の研究の中で、我々のこの技術が実証できれば、低ブーム化できるだろうと考えておりその研究は進める。

【鵜飼委員】
 私が設計と言った意図は、研究機を飛ばすということに対しても、設計という要素が非常に重要であるという意味であり、実機のときにはもちろんその要素は非常に増えてくるが、それはさらにその先の話だということになる。とりあえず今の段階からも、設計というのが研究機のために重要だということは忘れないでほしい。

【井川委員】
 私も、何が何でも先端を目指せというわけではない。ただ、一番の失敗は、実証はしたものの低いレベルであって使い物にならないということだと思っている。実験なので、そういうことが起るのも致し方ないが、本当に目標に向かって大胆に目指しているのかという疑問を感じるところがある。機体の規模として、9ページには4トンのところに線が引いてあるが、11ページでは3トンにしている。どうして3トンにしたのかよくわからないが、そんなにコストが違うのか。要するに、クリティカルなところでコストを減らしても仕方ない訳であり、必要であればほかのところで工夫すればいいだけの話。そこは実験が成功する確率が高いところを技術として真摯に目指してほしい。中途半端にやるのであればやめた方がいい。
 もう一点は、機体設計を柔軟に変えられる機体はできないか。つまり、ある機体形状で飛ばしてみたらだめだったので、倉庫に持っていって削るともう一回飛ばせるなどいったようなことはできないのか。

【JAXA(ジャクサ)(村上)】
 最初の点だが、低ブーム波形を実現してそれを計測できるという意味では、2トン以上の機体である必要がある。あとは、飛行実証をするためのエンジンというのも限られているわけであり、我々はエンジンは既存のエンジンを使いたいことから、エンジンの大きさで機体の規模は決まることになり、それが3トンだったということである。
 後の点は、機体の形状の話として、我々は、機体の先端部分は変えられるようにしたいと考えている。低抵抗だけを追求するような別のコンセプトの形状をそこにはめ込んでみたりして、比較評価ができるような飛行実験をしていきたいということを考えている。

【李家委員】
 ここに挙げられている機体の形はまだイメージで、今後も大きく変わって、低ブームを実現して安全に離着陸できる機体を別の形で提案されてくる、という可能性もあると思っていていいのか。

【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
 可能性としてはおっしゃるとおり。この機体の形状はまだまだイメージなので、大きくという点ではどうかわからないが、変わる可能性がある。我々が提案しているのは、ソニックブームを低減する技術であるが、それだけでは飛ばせないので、実際に飛ばすには、いろんな技術を集約して妥協点を見つけないといけないという作業がある。ある程度見通しは得ているものの、細かいところの設計に入っていくと、機体の形状が成立しないのでここを変えないといけない、というようなことは今後想定される。

【萩原委員】
 研究計画の内容そのものは、大変おもしろくてよいと思う。もしソニックブームが半減して、自律的に離着陸ができればすばらしいことだと思う。ただ、全体の超音速機の開発から見ると、今回の研究開発は最初の第一歩であり、開発投資から見ても微々たるものだと思う。それに対して、15ページ、「期待される成果および効果」では、「保障する」、「確保する」、「可能にする」といったような強い言葉が並んでおり、誤解を与えるのではないかという気がする。例えば、設計期間の短縮というのも、様々な細かい状況が全部読み切れないと短縮できないと思う。基本的な幾つかの要素がわかっただけでは短くならないと思う。もう少し現実的に、そういう要素研究であるという位置づけで説明していった方が誤解を招かないのではないかという気がする。

【宮部委員】
 今、この研究機と言うのは、実機を開発する前の一つのフェーズとして、飛行実証をして確認しなければいけない技術の実証を行うという概念でとらえている。要素技術というものが成熟しないと、実機はなかなかできないということだが、要素技術の段階であまりたくさんのことを期待すると、いつまでたっても飛行実証できなくなると思う。そういうことがあるので、その辺を割り切っていただき、今回の研究開発は基本的なものについて確認していくという概念でやられた方がいいのではないか。

【JAXA(ジャクサ)(大貫)】
 優先順位という考え方を置いており、飛行実証する際には、ソニックブームの低減、低抵抗化技術を最優先させるという考え方でいる。

【JAXA(ジャクサ)(石川)】
 1点だけ補足させていただく。資料2に関連して、民意の調査という話があったが、今回、JAXA(ジャクサ)の広報でも、宇宙・航空に関する民意のアンケート調査をやっており、その中の一項目として、超音速輸送というキーワードで挙げ、本年度一般の方々にアンケート調査を実施する方向であるということは聞いている。

  • その他として、事務局より資料4により、前回議事要旨の確認があった。その後、作業部会の今後の予定について説明があった。

-了-

お問合せ先

研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付

(研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付)