静粛超音速機技術の研究開発推進作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成18年12月21日(木曜日) 14時~17時20分

2.場所

三番町共用会議所 大会議室

3.議題

  1. 超音速輸送機(SST)の意義・役割について(その2)
  2. SSTに関する国内の取組み事例の紹介について
  3. その他

4.出席者

委員

 主査 久保田 弘敏
 委員 井川 陽次郎
 委員 鵜飼 崇志
 委員 大林 茂
 委員 垣本 由紀子
 委員 北野 蓉子
 委員 河野 通方
 委員 高原 雄児
 委員 星野尾 一明
 委員 柳田 晃
 委員 李家 賢一

文部科学省

 文部科学省大臣官房審議官(研究開発局担当) 板谷 憲次
 文部科学省研究開発局参事官(宇宙航空政策担当) 池原 充洋
 文部科学省研究開発局参事官付参事官補佐 湊 孝一
 宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))理事 坂田 公夫
 宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))航空プログラムディレクタ 石川 隆司
 宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))航空プログラムグループ超音速機チーム長 大貫 武
 宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))航空プログラムグループ超音速機チームチーフ 村上 哲
 宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))航空プログラムグループ超音速機チーム研究員 牧野 好和

オブザーバー

 飯田 博文、家邊 健吾
説明者(有識者ヒアリング)
 三菱総合研究所産業・市場戦略研究本部主席研究員 奥田 章順 
 全日本空輸課長 河合 巌 
 全日本空輸整備本部技術部技術主幹 松浦 一夫 
 財団法人日本航空機開発協会 鵜飼 崇志 
 国土交通省航空局技術部航空機安全課次席航空機検査官 川上 光男 
 経済産業省製造産業局航空機武器宇宙産業課補佐 和爾 俊樹 
 社団法人日本航空宇宙工業会 柳田 晃 

5.議事録

  • 久保田主査より挨拶があった。
  • 議事前に、JAXA(ジャクサ)より資料1-1により概要を説明した後、ソニックブーム低減化のデモンストレーションを実施した。実施後の主な質疑は以下の通り。

【垣本委員】
 F16などは、航空ショーのときに臓腑に響き渡るような音を体感した。それと比べるとどうかと思ったところはある。

【JAXA(ジャクサ)(牧野研究員)】
 御指摘のとおりで、この部屋でそのスピーカー、そのパワーで再現できるものは非常に高周波なものだけであって、恐らく現地でお感じになったのは低周波のドンと来るもの、ソニックブームはその特徴が当然ある。だから、今日聞いていただいたのは、あくまでデモということであって、これに大きな音ほど低周波の圧迫感のような音が加わる。

【久保田主査】
 この波形を見ると、上の二つはシャープなN型である。一番下のものはハイブリッドというか、屋根型になっている。何dBというdB値とこの波形の形が効いてきているかなと思うのであるが。

【JAXA(ジャクサ)(牧野研究員)】
 今、最後に二つ聞いていただいたのは、同じ音源を単にボリュームを変えただけであるので、その中の周波数特性は変わっていない。今、御指摘いただいたとおり、真ん中の波形と下の波形であると、波形の形自体が違うので、その中に含まれている音の周波数の成分も異なっている。本当であれば、国内には川崎重工さんがお持ちのソニックブーム・シミュレータに入っていただければ、この波形の効果も含めたソニックブームの比較というものを感じていただくことは可能であるが、この部屋ではできなかったということである。

  • 事務局より議事資料の確認があった。その後、資料1-2により、作業部会全体の進め方と今回の審議のポイントについて説明があった。
  • 議題(1)について、有識者からのヒアリングが行われた。まず、三菱総合研究所の奥田氏より資料2-1により、超音速輸送機の事業性について説明があった。主な質疑は以下の通り。

【李家委員】
 コストについて、DOCが良いというお話だが、30人乗りではなく250人乗りのSSTについてはどのくらい違いが生じるのか。

【三菱総研(奥田主席研究員)】
 DOCの数値そのものはJAXA(ジャクサ)の方で試算していただいている。当然、大型の方が高くなっていると思う。事業性ということで言うと、中型や大型の方が、それだけ多くの乗客を確保しなければならないし、全てビジネスクラスではないコンフィギュレーションといったケースもあるので、事業性は若干悪くなる傾向は出ている。

【河野委員】
 今回の説明で、いろいろ前提があるが、これらは今の段階で開発をスタートすればということになっているのか。

【三菱総研(奥田主席研究員)】
 どこでスタートするかというのは明確にしていない。その開発がスタートしたときに、開発に5年間かかり、その後、製造に入っていくというストーリーを考えながら事業性を評価している。

【河野委員】
 そうすると、今回の分析の有効期限、つまり何年ぐらいまでこのモデルが使えるかというところはどうか。

【三菱総研(奥田主席研究員)】
 米国でのSSBJもまだすぐ開発しようというところにはなっていない。今、資金調達を進めているところであるので、仮に実用化しても、2010年以降の話だと思う。2010年や2012年になると、原油価格等の外的要因の変化はあるかと思うが、5年ぐらいはそれほど大きく変わらないとは考えている。

【久保田主査】
 SSBJがあって、その次にこの小型SSTがあり、そして大型SSTがある。この三つのパターンに分かれるのだと思うが、SSBJは米国のエアリオン等が実用化しそうな勢いである。一方、大型のSST(300人乗り程度)は、十数年ぐらいやっており、日本航空宇宙工業会でも調査を実施している。50人乗り程度の小型SSTについては、今まであまり調査が行われていないので、その辺の事業性も今から考えておこうという意味で始められたという理解でよろしいか。

【三菱総研(奥田主席研究員)】
 小型SSTは、一つの要素として、最高速度がマッハ1.6辺りと少し小さいところがある。米国のエアリオンは、さらにマッハ数を落としてソニックブームを回避しようというところもある。そういった意味では、技術的にやりやすいというところがあるのかもしれない。

【久保田主査】
 小型SSTの事業化については、課題はそれほどないということか。

【三菱総研(奥田主席研究員)】
 そういうことはない。事業ということになると、販売先の問題や、運航方法の課題等いろいろ出てくると思う。

【垣本委員】
 小型、中型、大型のSSTということで比較した場合に、安全性についてはどう考えられるのか。

【三菱総研(奥田主席研究員)】
 航空機の場合、認証を受けて最終的に作られて売られることになるので、当然、安全性はどのクラスでも同じように確保されるものと認識している。

【河野委員】
 超音速機にこういうメリットがあるとすると、これは世界各国の共通の認識になってくると思われる。そうした時には、やはり早くやった方がたくさん売れるというような状況になるのではないかという気がする。例えば、850機という事業規模は、他では技術がなく作れないという状況での話。競合があった場合はどのような影響を受けるか検討されているのか。

【三菱総研(奥田主席研究員)】
 新しい製品になるので、早くやった方が当然優位だと思っている。いろいろな新しい製品の事業性に関してコンサルティングするときに言うのであるが、新しいことをやるときは、いいものを安く作るよりは、新しいものを早く作った方がいい。

【河野委員】
 そういったことは、御社の報告書に意見として入っていると考えてよいのか。

【三菱総研(奥田主席研究員)】
 そこまでは書いていなかったかと思う。客観的な事業性のシミュレーションということに留まっている。

【河野委員】
 是非そういうことも考慮していただければと思う。

  • 続いて、全日本空輸(ANA)の河合氏より資料2-2により、機種選定におけるエアラインの視点について説明があった。説明の前に、久保田主査より、エアラインからのプレゼンテーションは当初、日本航空(JAL)も含め2件で予定していたが、担当者のスケジュールが合わず、ANAのみにお願いすることとなった経緯の補足があった。主な質疑は以下の通り。

【久保田主査】
 超音速機についてはどういう展望をお持ちか。

【ANA(河合課長)】
 日本で、超音速機のようなビジネスモデルを考える場合、一番考えなければいけない制約として、発着枠の制約がある。ファーストクラスやビジネスクラスのお客様たちに乗っていただく上で、速い飛行機というのは非常に魅力的。ただ、速い飛行機が1回離着陸しても1便、大きな飛行機が1回離着陸しても1便であるので、大型機を飛ばした方が多くのお客様に御利用いただける。ビジネスモデルとして進めていく上で、発着枠等の制約に伴う影響を受けるのではないかと考えている。

【久保田主査】
 そうすると、むしろ大型の方がよいのか。望ましい超音速機というのはどういうイメージか。

【ANA(河合課長)】
 米国本土に行ける航続距離を持っているということ、あるいはヨーロッパまで直接行ける航続性能を持っているということが重要なポイント。例えば、6,500海里ぐらいの運航距離が必要になると思う。ただ、一方では、325ミリオンという機体価格は余りにも高過ぎる。これではなかなかペイしない。

【河野委員】
 発着枠については、羽田等の大きい空港だとそうだが、地方の空港は必ずしもそうでないところもある。地方の空港に超音速旅客機を置いておいて、地方空港までは大型の航空機で行って、そこから外国に出ていくというのはどうか。

【ANA(河合課長)】
 モデルとしては考えることができると思うが、羽田空港、成田空港から直接ヨーロッパまで行けるというフライトと、地方空港で1度乗り換えるというフライトのどちらをお客様が選択されるのか、選択肢になるのだと思う。

【大林委員】
 日本から海外に行く旅客数を見ると、欧米よりもアジアの方が圧倒的に多いと思う。それを踏まえても、やはり超音速機と言えば欧米が対象となるのか。アジアへ4~5時間かかるところを半分で行けるというところに魅力はないのか。

【ANA(河合課長)】
 例えば東京から大阪まで行く飛行時間で、気づいてみたら、香港に着いてしまうのであれば、アジアの中でも十分な競争力が得られると思う。あとは、エアラインとして気になるところはソニックブームといった環境問題とコスト。移動時間の長さがお客様にとって一番負担と感じられているのは欧米であるということは先ほど説明させていただいた状況である。

【李家委員】
 ファミリー化の話だが、エアラインはどのくらい重要視しているのか。SSTの話では、あまり派生型とかいう話は聞いたことがないので。

【ANA(河合課長)】
 エアラインの立場からは、同じパイロットの資格で、同じ機内の装備品で、異なる大きさの飛行機を運航できれば、経済性という点で非常に効果が出る。これは国内線だけではなく、国際線においても今後重要になってくると考えている。

【久保田主査】
 現在の亜音速機でも十分航空旅客需要は満たしていると思うが、現在の亜音速機にプラスして超音速機を飛ばすメリットとデメリットというのはどういうことになるか。正直なところをお聞かせいただければと思う。

【ANA(河合課長)】
 昨今のエアラインはリストラや、路線構成の見直しを行っており、アジアでは香港や上海で、一日2便、3便運航をしているが、1路線で何便も運航するケースは少なくなってきている。このような速い飛行機の活用で一番関心があるのは、欧米のような長い路線であり、1便目を速い飛行機とし、2便目は今までどおりの飛行機で運航するというケース。お客様が値段、時間との相関関係で付加価値を見出して選択していただける場合、それが今までの飛行機と比較して飛行時間に明確な差が出るような路線であれば、高速化は非常な効果があると思っている。
 今の飛行機のスピードでは、ニューヨーク、あるいはヨーロッパに行くのに、毎日運航しようとすると、2機の飛行機が必要になる。それが倍のスピードで飛ぶと飛行機になれば1機分の設備投資で済むようになり、エアラインとしてメリットも出てくる。
 デメリットについては、現在、土日はビジネスで利用されるお客様で満席となるが、平日はそうならないため、旅行需要とビジネス需要をうまくミックスしながら1便当たりの収益を高める必要が出てくる。旅行需要用の座席を少なくして、ビジネスのお客様を中心とすると、例えばテロが起きた場合など、ビジネス需要の変動に対して、リスクを抱えることにもなり得ると考えている。

【井川委員】
 全日空のような大きい航空会社となれば、なるべく多く集客し、なるべく儲かるところに送り届けて、会社を経営されているという理解をしている。ところが、このSSTは、全日空のような会社が大規模に導入してやるかというと、どうも相当遠い話のように思える。二つお伺いしたいのは、全日空のような会社が、こういう機種を小規模に導入してビジネスとすることがあり得るのか。また、そういう事業をやっている会社というのは世界中にあるのか。
 こういう事業としては、最初は、高い金額を支払っても速く行きたいという人を対象にしてやる専業の会社みたいなところができてやるのが一番いいと思う。先ほどのファミリー化の話や、客室環境を整備するといった話を今回の開発で重視すると焦点がぼけてしまうような気がする。

【ANA(松浦技術主幹)】
 小型のSSTについては、ブレークスルーした技術を導入しなければならないだろうと考えており、将来にわたってメインテインするというのは非常に大きな労力がかかるだろうというのは、開発する前の現段階から、十分に想像できる。5年後に導入できると言われても、課題の大きさを考えれば、認証が取れたら即、安全性を超えたお客様の期待を裏切らない信頼性を備えたものとして導入していけるのかと考えると心配である。
 そういう意味では、小規模のSSTをメインテインしながら、今までの正業である、例えばB767、777の運航を並行してやっていくのは難しいというのが正直な感想である。

【ANA(河合課長)】
 小規模でそのような運航をしていけるのかということであるが、現在の需要特性を前提に考えれば、今エアラインで就航しているサイズの飛行機を飛ばすモデルがが最も高収益であると思う。しかし将来の少子化やいろいろな競争が発生した場合、私たちが一体どこのセグメントをビジネスモデルとして大きくしていくかという点で言えば、特に時間価値に対して高い付加価値を求めていく層が出てくるだろうという検討も行っており、将来に向けては重要な視点だと思っている。
 世界では、ビジネスジェットといった形態で、実際にいろいろ飛び始めている。1席当たりに換算すると、恐らく弊社で言うファーストクラス、ビジネスクラスと同じぐらいになるが、1機借り切って飛んで行く。そうなると、そのお客様たちが望むのは時間だけではなくて、例えばセキュリティ、プライバシー、パーソナルといったようなニーズから安定した需要が生まれる可能性がある。少し長い目で将来の航空、また我々のエアラインがどうなっていくかということを考える上では、この要素は極めて重要なテーマだと思っている。途中、プログラムがつぶれてしまったが、ボーイング社からソニッククルーザーの話が出たときにも、我々エアラインとしては真剣にこういう飛行機がもたらす効果は何だろうかと検討したこともある。スピードという視点は極めて重要であるし、もちろんスペース・居住性という視点も重要だと思う。
 あとは、お客様のニーズがどの方向に行くのかということと、そのタイミングを外すことなく追従できるのかといったところが、エアラインのマネジメントでは重要であり、たとえ小規模であったとしても、チャンスがあれば進めていきたいと考えるのもエアライン経営であると思う。

  • 続いて、日本航空機開発協会(JADC)の鵜飼委員より資料2-3により、超音速機に対する海外エアラインのコメントについて説明があった。その後、国土交通省の川上次席より資料2-4により、国際民間航空機関(ICAO)におけるSSTに関する環境基準の検討状況について説明があった。主な質疑は以下の通り。

【河野委員】
 SSTの基準を作るときに、できない基準を作るということはないわけである。開発状況を見ながら決めていくということになるわけで、そういう段階に達していない場合は、そういうのが出てきてから決まるというのが一般的な考えなのか。例えば日本が先にこういうSSTを開発しているというような話があったときには、それを対象にやってもらうというような要請もできるのか。

【国土交通省(川上次席)】
 ICAOの航空環境保全委員会のワーキンググループには、JAXA(ジャクサ)にも参加していただいて御協力いただいているところ。米国、欧州が中心となって検討しているが、このような場で、例えば日本の研究開発状況、技術的に達成できるところはこういうところなのだということを意見として主張していくことはできると思っている。
 ただ、必ずしも技術的な判断だけでその基準値が決まるというわけでもなく、費用対効果といったような経済的にどういうメリットがあるのかいうことも一つの検討の要素となっている。社会的にどこまでだったら受け入れられるかというところと技術的にはこういうところだという議論の中で答えが出てくるようなことになるのだろうと想像する。

【久保田主査】
 非常に重要な視点だと思う。今まで基準のことを議論しても国交省の方がいないところで議論していた。我々が幾らそう言っていてもだめだが、国交省の方がそういう気になってくれれば、その辺は非常に進むと思うので、是非よろしくお願いしたいと思う。

【河野委員】
 例えば車では環境基準というものがあり、窒素酸化物だと数値ではっきりとした基準値がある。航空機の場合も騒音を含めて、窒素酸化物の濃度等について問題になると思う。そういった基準値は引き続きだんだん厳しくなっていくわけである。そうなっていったときに、そっちの方の枠で便数など決まってしまい、SSTなど入る余地がなくなっていくのではないかという心配もあるがそこら辺はどうなのか。

【国土交通省(川上次席)】
 今日、御紹介したのは、ICAOのエンジン排出物基準であり、エンジンについてLTOサイクルで測定した排出物の量が基準値以下であればよいということ。一方で、発着枠については、空港周辺の例えば大気汚染や地球温暖化の関連の話であり、エンジンの排出物基準とは別に議論されることになる。全体の発着枠は、物理的な制約で決まってくるものであるから、いかにその発着枠の中で亜音速機なり超音速機が受け入れられるのかという話だと思う。
 さらに言えば、環境という観点から考えれば、仮に超音速機も亜音速機と同じ基準で抑えられるというのであれば、環境の面からは同等という考え方ができると思うので、あとはビジネスの方でどれだけニーズがあるかということだろうと思う。

【久保田主査】
 海外のエアラインはやはりニーズは認めているのではないかという気がするがどうなのか。

【JADC(鵜飼委員)】
 従来の飛行機の発達の延長線上からジャンプアップして高速化するというところで、そのポテンシャルは非常にあるというのはどこのエアラインも言っている。ただ、それを使ってプロペラ機からジェット機に置きかわったようにガラッと置きかわるようなことになるのか、あるいはSSTというのが今までの亜音速機の非常に経済性のいいルートにプラスアルファされる形で入ってくるのか、その辺がまだ見極めがつけられていないというような状況だと思う。

【久保田主査】
 議題1を取りまとめたいと思う。
 この議題は何だったかというと、SSTの意義・役割について、社会的に見て意義があるかということが主題であった。私の感じたところ、SSTのニーズというのは時間価値を生み出すもの、つまり高速移動に対するニーズである。それに対して、デメリットもある。経済性の問題、環境適合性の問題ということがあり、これらは課題として考えていくことが必要であろう。そういうことも考えながら、SSTのニーズというのはあるのではないだろうかと考える。ただし、SSTを飛ばしたいというだけではなく、これが社会にどうやって還元されていくかということが重要であり、これをクリアにすることが研究開発をやっていく上の努めだろう。
(途中退席された)井川委員は「社会のニーズにこたえるには課題も山積しているようであるが、少なくともしっかりとしたニーズ的基盤が確立していないと話にならないことは言うまでもない。技術開発を着実に進めるとともに、社会ニーズへの課題検討を並行して調査研究してみてはどうだろうか」との意見をメモとして残してくれた。
 また、将来の展望ということを考えると、奥田さんが紹介してくれたSSBJは直近の問題、課題として既に世界でもやられている。大型のSSTというのはかなり長期的なものであり、その間をつなぐものとして恐らく小型のSST、50人乗りぐらいのもあるのではないかとのことである。その成否については議論があったが、SSTの方向としては概ね肯定的ではあったかという感じがしている。この流れの中で研究開発も今後加速していくのではないかと思っているが、皆様のお考えを引き続き聞かせていただければと思う。

(休憩)

  • 議題(2)について、経済産業省の和爾課長補佐より資料3-1により、超高速輸送機実用化開発調査について説明があった。その後、日本航空宇宙工業会(SJAC)柳田委員より資料3-2により、超音速機技術の研究開発に関するこれまでの取組について説明があった。続いて、日本航空機開発協会(JADC)鵜飼委員より資料3-3により、超高速輸送機実用化開発調査機体システム調査について説明があった。主な質疑は以下の通り。

【李家委員】
 日仏でやったことをJAXA(ジャクサ)の研究開発にうまくフィードバックをかけることは可能なのか。

【SJAC(柳田委員)】
 具体的な作業を開始した状況であり、どこまで成果が得られ、それをどのように扱っていくかはこれから調整していくという認識である。

【JAXA(ジャクサ)(石川ディレクタ)】
 私ども騒音や耐熱複合材の課題では直接に参加をしており、他の課題についても、守秘義務の制約は受けるものの、積極的に参加させていただいている。もちろん全てというわけにはいかないが、必要なところはJAXA(ジャクサ)の研究にフィードバックがかかっていくと言ってよいかと思う。

【李家委員】
 陸上をマッハ0.95で飛ぶというお話があったが、超音速で最適化された機体がマッハ0.95で飛ぶと亜音速機に比べてどのくらい効率が悪くなるのかということを教えていただきたい。

【JADC(鵜飼委員)】
 数字はつかんでいない。機体の規模を策定するCADプログラムというのがあって、それでデザインポイントにおける要求値を入れると大体この程度の機体というのが出てくる。それをもとに燃料消費率であるとか、もろもろの性能が出てくるので、それをある決められたルートに入れてトータルの運航時間であるとか、トータルの燃料消費量であるとかいったものを試算するという形で比較をしている。御質問に答えるとすれば、亜音速機で同じルートを計算させて比較をすれば出てくるはずである。

【久保田主査】
 フィージビリティスタディをやって、その成果を伝えていくことがSJACの仕事であると言われた。それはそのとおりで、それを今の静粛超音速機の研究開発につなげていくというのは一つの使命だと思う。一方、経済産業省とJADCで今進行中のプロジェクトがあり、その辺のプロジェクトと静粛SSTの連携というのは、これからどうやっていけばうまくいくと思われるか。

【経済産業省(和爾補佐)】
 平成元年以来、SJACで長きにわたり調査事業をやっていただいており、その間にいろいろな技術課題が抽出され、いろいろなメーカにいろいろな知見が蓄積されている。これは、汎用的な、要素的な技術検討をしていただいており、それなりに汎用的な成果を出していただいている。こうしたものが、いい意味で技術波及という形でいろいろなプロジェクトに展開していくというのは、これは非常にいいことではないかと思っている。
 現在JADCでやっていただいているものについても、要素的な複合材の技術であったり、エンジン騒音をいかに低減させるかという技術であり、こういったところで得られた成果をいろいろな形で活用していただくというのは、非常にいいことではないかと思う。

【JAXA(ジャクサ)(石川ディレクタ)】
 現在の日仏の共同研究とJADCで実施している研究開発はかなり重なっているような面がある。私どもも日仏の共同研究の一員として、メーカと一体となって取り組んでいる。特に現場では非常に密にやり取りをしており、常時、そういうことを心がけていけば、それほど御心配いただく必要はないのではないかと思う。

【JAXA(ジャクサ)(坂田理事)】
 枠組みのことだけ言うと、何年も前から共同でいろいろなことをやろうということで、各種の枠組みを作ってきた。典型では共同研究である。得にJADCとはこのSSTで共同研究という契約を結ばせていただいているし、SJAC等とは交流会を実施している。また、各社、三菱、川重、富士重とは共同研究であったり、あるいは委託であったりして一緒の行動をとるということで進めている。こうした枠組みを使ってうまく分担をしながら連携することで、一つの大きな仕事をやっていくという形を作れるものと思っている。

【久保田主査】
 そういう場合に日本の得意分野を重点的にやるのか、あるいは全般的にやるのかという方向があると思うが、静粛超音速機についてはどうか。環境に特化したというような感じがするが。

【JAXA(ジャクサ)(坂田理事)】
 基本コンセプトとして、全般をやるのは難しいだろうということがある。得意分野で突き進んでいこうというコンセプトをベースに、しかしながら、全般のことを知らなければならないというところから、JADCとSJACでは市場や概念設計という形でのスタディを行っていると認識している。ただ、その中で我が国の特有技術をナイフの先端のように研ぎ澄ませていこうということで、JAXA(ジャクサ)がその役割を担っているというのが現在の形だと思っている。

【星野尾委員】
 いろいろと技術開発研究されているが、目標とする技術に対して、現在、どれぐらいのレベルにあるのかというところをお聞かせいただきたい。

【JAXA(ジャクサ)(石川ディレクタ)】
 JAXA(ジャクサ)の現場の方から、一番フォーカスしているソニックブームの話を中心に説明する。

【JAXA(ジャクサ)(村上チーフ)】
 私どもは小型の超音速旅客機を当面のターゲットとして、将来的な大型のSST向けの技術開発を目標設定してきている。現状としては、低ソニックブームの設計については、本日デモンストレーションさせていただいたが、そのレベルの設計はできる段階にある。課題はそれが実証されていないということだけである。経済性については、小型超音速旅客機は確かに非常に厳しいものがあるが、本日、奥田さんから御紹介があったとおり、事業性としてはあるだろうと考えている。その事業性を確立するために必要な性能、例えば揚抗比といったものは、過去に行った小型超音速実験機などで開発した層流化の技術などほぼ実現できるレベルにあるというところである。
 ただ、将来の大型の超音速旅客機については、かなりのハードルがある。機体が大型化するに伴って機体を軽くしなければ、経済的な性能を満たす指標、例えば構造の重量比、揚抗比といったものがいまのレベルからかなりの飛躍があるということは事実である。私どもとしては、大型機については2017年辺りをターゲットにして実現していきたいという状況である。

【星野尾委員】
 排ガスについてはどうか。

【JAXA(ジャクサ)(村上チーフ)】
 窒素酸化物については、研究室のレベルでは超音速旅客機に求められるであろう窒素酸化物の低減率というのはほぼ実現しつつある。問題はそれを実用化する技術開発ということになる。CO2の排出については、これは端的に言うと超音速旅客機が飛ぶときにどれだけ燃料をたくさん使ってしまうかという問題である。それについては超音速旅客機はどうしても増えてしまうということは事実としてある。
 他には、騒音の問題がある。騒音の問題については、例えばマッハ数1.6のエンジンということを想定すると、現状の亜音速機に使っているような技術のレベルでも何とか騒音規制を満たすことができる機体が成立するかもしれない。ただ、エンジンやノズルに対しては材料の軽量化などの工夫は必要だと思っている。

【久保田主査】
 議題2の議論では、JAXA(ジャクサ)、経済産業省、SJAC、JADC、それぞれで実施している研究開発が連携をとってやっていただけそうであることが確認できた。JAXA(ジャクサ)はJAXA(ジャクサ)で技術力を高度化していくというのは重要な仕事である。将来それを実用化に結びつけていくためには、経済産業省、SJAC、JADCとの連携が重要という方向が見えたような気がした。
 また同時に、いろいろな課題があるだろう。経済性とか、環境適合性ということもあるが、その環境適合性については、現在技術開発を進めており、少なくとも低ソニックブームということはできそうだとJAXA(ジャクサ)からの力強い言葉もあった。それだけではなく、他の環境適合性に関しても技術課題として残るのだろうが、それは徐々に研究開発を行って実用化していけば課題は解決していけるのではないだろうか。それにあわせて、国土交通省から話があった、世界的な中での基準というものが必要であり、そういう面でも世界をリードしていくというのが日本の努めだと思う。
 具体的な技術目標を作るとか、研究課題を集めていくといった研究開発計画の内容については、次回から検討を始めたいと思う。

  • その他として、事務局より資料4により、前回議事要旨の確認があった。その後、作業部会の今後の予定について説明があった。

-了-

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