原子力分野の研究開発に関する委員会 核融合研究作業部会(第10回) 議事要旨

1.日時

平成20年2月6日(水曜日) 15時~17時12分

2.場所

文部科学省 5F1会議室

3.議題

  1. ITER(イーター)設計レビューについて
  2. ITER(イーター)・BA技術推進委員会ロードマップ等検討ワーキンググループ中間報告
  3. 核融合研究分野における人材の確保について
  4. その他

4.出席者

委員

 飯吉主査、石塚委員、大島委員、小森委員、香山委員、笹尾委員、高村委員、常松委員、東嶋委員、平山委員、松田委員、三間委員、吉田委員

文部科学省

 松尾研究開発戦略官、山本核融合科学専門官、三木核融合開発室専門官

オブザーバー

科学官、学術調査官
 吉田科学官、山田学術調査官
外部有識者
 岡野邦彦 電力中央研究所上席研究員

5.議事要旨

(1)ITER(イーター)設計レビューについて

 事務局より、資料1に基づき、ITER(イーター)設計レビューについて、スケジュール及び評価の体制について説明があった。
 主な審議内容は以下のとおり。

【飯吉主査】
 技術推進委員会で評価をやっていただくことは結構だと思うのですが、タスクフォースとの関係が、何か重複している面があってわかりにくいと思います。役割分担を少し明確にして、ある程度責任のとり方も含めて、どこまでがこの作業部会の仕事ということを少し提示しておいたほうがよいと思いますが、いかがでしょうか。

【松尾研究開発戦略官】
 改めて明確にしたものをつくらせていただきますけれども、簡単に申し上げますれば、核融合エネルギーフォーラム、ITER(イーター)・BA技術推進委員会というのをどういう形で活用あるいは意見をいただくかということなのでございます。ただ一方で、核融合エネルギーフォーラムは任意の団体でございますので、その活動・意見というのは、国の意見ということにはならないわけでございます。したがって、核融合エネルギーフォーラム、ITER(イーター)・BA技術推進委員会で精力的に議論していただいたご意見を、それがいいのかどうかというのを国の委員会である作業部会でご審議をいただいて、それを持ってITER(イーター)理事会あるいはSTACに臨む必要がございます。まずは、その核融合エネルギーフォーラム、ITER(イーター)・BA技術推進委員会で議論されたことについてしっかりとウォッチをしていただくということ。それから、ITER(イーター)・BA技術推進委員会は技術的観点から中心的に見ているということもあって、ほかのプロジェクトマネジメントをやった方であるとか、ほかのビッグプロジェクトをやった方であるとか、そのような政策的な観点もしっかり見てもらうこと。そして、国としていいというような評価をいただくというような観点から、タスクフォースを、五、六人のチームをつくっていただき、そのほかにもITER(イーター)・BAのウォッチをしていただいて、国としての観点からしっかりと評価・チェックをしていく。これがやっぱりビッグプロジェクトである以上、今、政策評価の点からいうと、数年内にはちゃんとチェック・評価をするというのがございますので、この作業部会でチェックをいただくということ。その実施主体がタスクフォースというような位置づけでやらせていただければいいかなということでございます。

【松田委員】
 今回出てくるベースラインドキュメントというのは、実際の活動をするにあたって基本的な文書になります。なので、出てくるのも結構時間をかけて出てきますから、それにあわせてレビューするというのはできるかと思うのですが、それが一たん決まると、あとは実作業がどんどん進んでいくわけです。一方、STACというのは毎年2回レギュラーに開かれていて、STACが開かれるときに、実際にドキュメントがITER(イーター)機構から届いてからレビューして、STACにいろんな意見を反映していくまでの期間というのはあまりありません。そうしたときに、今のタスクフォースというのは、ベースラインドキュメント以外のときも常設的にやるお考えなのか、今回はベースラインドキュメントが特別なものなので、そのための体制なのかで、随分話が違ってきて、常設だとすると、これだけステップを踏んでやっている時間的余裕というのは現実的にはほとんど出てこないと思うのです。だから、そこははっきりさせておかないと、現実的な対応が間に合わなくて結局はいろんな会合を並行に開かざるを得なくて、並行に開くということはシリーズの議論というか、積み重ねの議論というのはほとんどできなくなってしまう懸念がありますので、そこはお考えいただきたいというふうに思います。

【松尾研究開発戦略官】
 松田委員が言われたように屋上屋になることと、時間の問題ということがあるので、そこはよく整理をしないといけないと思います。もし設計レビューについてだけであれば、多分、タイムシーリングがほとんどないので、例えばタスクフォースからこういう観点をちゃんと吟味してくれというのをITER(イーター)・BA技術推進委員会のほうに投げるということもあり得ると思います。あとは、ITER(イーター)・BAについては、この作業部会がしっかりとフォローをしていただきたいと思っています。作業部会がフォローする上でいろんな細かい点というのが多分いろいろ出てくる可能性もあるので、そのときにはやはり全体で見るのも機動性がいかがかということなので、少人数のタスクフォースをつくってはどうかということだと理解をしています。したがって、ある程度常設でしっかりと見ていくと。それがやはり国としての評価をするという観点だと思います。今、原子力委員会のほうでも核融合の専門部会をつくってある程度3年に一回の評価をしてございますので、そういった観点からも国としてもフォローしていくと。したがって、この作業部会で全部見られるということであれば、多分、タスクフォースを改めてつくる必要はないと思いますが、逆にこの作業部会もそんなに頻繁に開くことはできないので、そこで見ていただく人が数名いるとありがたいということなのでございます。

【吉田科学官】
 おそらく評価という言葉が多義的で、その評価の内容が違うのだと思います。技術推進委員会は推進をするためのところであって、それに対する評価を行う。そのプロジェクト自体がしっかり実施されているのかどうかということを評価するところと、推進をするところというのが大体2本立てになると思います。それで、ITER(イーター)の設計に関する評価というものは、ある意味でITER(イーター)を行っている前線で生じていることなので、これは評価という言葉であるにしても設計をしていく途中のレビュープロセスなので、おそらく推進に属しているのだと思います。そういう意味で、これをITER(イーター)・BAの推進委員会のほうでしっかりと当事者としての評価・レビューを行って、設計に反映していただくという仕事だと思いますが、それと一方で、行われているプロジェクト全体がしっかり進んでいるかどうかということの評価を文部科学省としてしっかりやっていく必要があるだろうということで、タスクフォースの役割における評価というのは、いわゆる昨今いろいろなところで行われている評価、それに相当するようなものだろうと思います。

【石塚委員】
 先ほど戦略官のほうからも、プロジェクトマネジメントなど政策面も含めてとおっしゃられましたので、これからいろいろ考えていく上でそういう視点のものはぜひ必要だと思います。

【飯吉主査】
 今のITER(イーター)機構のほうでやっていることは、概念設計が終わって、基本設計に入って、製作設計に入るという一応大きな流れがあるとおもいますが、それでいうと、今どこをやっていて、ITER(イーター)のアクティビティは基本設計をやっていると考えていいですか。

【松田委員】
 目的は、発注仕様書をつくる、そのために必要なドキュメント一式です。

【飯吉主査】
 そうすると、やっぱり製作設計ですよね。

【松田委員】
 製作設計まではいかないですけれども、発注者側が……。

【飯吉主査】
 またもう1つ製作設計がこの後に来るのですか。

【松田委員】
 機器の発注契約後に企業が行う設計を製作設計というふうに言うのであれば、現在はその前の段階です。

【飯吉主査】
 いや、そうじゃなくて、企業も交えて全体の設計をするというプロセスが1つありますよね。それから企業にバトンタッチして、そこでさらに部品についての製作設計が行われると。そういう意味でいうと、どこに入りますか。

【松田委員】
 企業に渡す前の段階です。

【飯吉主査】
 前のところ。そうするとプロジェクトマネジメントのところが非常に大事ですね。おそらく専門のどうのこうのというのはここではできないし、むしろITER(イーター)のほうがそれを一生懸命やっているわけですからね。それに対して、日本の取り分ではないけど、そういうものも含めて少しおかしいよとか、日本の得意なところ、こういうところをもっとやらせてもらったほうがいいのではないかとか、そういう進め方は非常に大事になってくると思います。ですから、タスクフォースをおつくりになるのですから、その辺をわかる人をぜひメンバーに入れて、物申すことがしっかり言えないと良くないと思っています。

【松田委員】
 私の申し上げた点は、フォローするというのは当然で必要なファンクションです。問題は、ここで議論した結果をどのタイミングで国際的な場で反映させるかと。それを例えばSTACに焦点を合わせて、その事前の議論をすべてここでやろうとしたら、それは多分とても間に合わないでしょうというのが私の意見で、そうじゃなくて、もっと長いスパンで考えて議論していて、次のSTACのタイミングとか、1つ先のですね、そういう意味での反映というのは十分あるというふうに思っています。

【松尾研究開発戦略官】
 基本的に長いスパンだと思います。ただ、前線でやっている取り分というのは当然ある話でして交渉でやると思いますが、重要な案件とかはきちんとオールジャパンで議論をしていかないと、ただ単に私ども文部科学省が前線に出てやりとりをして負けてしまって、国益に反することになったらいけませんので、重要な事項についてはしっかりと作業部会ないしはタスクフォースで議論するということです。したがって、細かなところでのやりとりというか、そういうのはいろいろあると思いますが、大きな方向性、例えば物理研究ばかりやっていて建設が一向に進まないよということだったら、それは違うということを日本政府としても言えるような場であるとか、前線で我々がやっているとどうしてもミクロになりがちですので、それをマクロな観点から見ていくということで、一々それの報告を受けるということはありませんけれども、全体の流れとしてそれがいいのかというのを見るということであると思います。

【飯吉主査】
 先ほど戦略官のほうからの説明で、ITER(イーター)・BA技術推進委員会というのはオフィシャルなものではなくてということがありましたが、そうすると、ここでやっている人はあまり責任持たないでということでは困りまして、そこでしっかりとやってもらう、その上でタスクフォースがということにならないと、みんなが責任逃れみたいになっていくと思います。

【松尾研究開発戦略官】
 法的に言うと責任はございません。しかし、前回のこの作業部会でも報告書を出させていただいて、その中でITER(イーター)・BA技術推進委員会というのはアカデミアと産業界の意見を集約する場としてつくってくれというお願いを出していますので、そういう意味で私どもはITER(イーター)・BA技術推進委員会から出てきた報告書というのはしっかりと受け止めて、そして、ここでも報告をさせていただいて、それを次の施策の糧とするということです。前回のサテライトトカマクの設計の評価についても短い期間でしていただいて、今回の設計レビューについても、私ども、しっかりとそれを受けて、この作業部会でご審議をいただいて、それを国の意見としてやるということで、そういうための活動の場として使わせていただきますので、これはよくやっていただくということしかないと思います。

【吉田委員】
 ITER(イーター)・BA技術推進委員会については、今まで核融合にほんとうに深く関与してきた人が大半でございまして、そういうものが自分の責任ということも感じながらやっております。ですから、それはどうぞご安心ください。
 お聞きしたいのですが、ITER(イーター)・BA技術推進委員会は主に技術面で評価するということを我々はやらせていただいていて、ただ、技術面でこれが今可能かどうかとかいうようなことだけではなくて、例えば日本の国内の体制をどうするのかとか、いろんな意味で政策面にもかかわるようなことにも少し踏み込んだ議論をしているところなのですが、ちょっと私の感じでは、むしろこのタスクフォースのところでは、それを単にITER(イーター)に何か物を言うというんじゃなくて、むしろ国の核融合政策に対しても物を言うような、そういうことが求められるようなタスクフォースになるんでしょうか。

【飯吉主査】
 それはタスクフォースとしては重過ぎるのではないでしょうか。

【吉田委員】
 実際にITER(イーター)を進めようとすると、いろんなところで国としてどう取り組むべきかというようなことについての議論は必ず出てくるんですね。それに対して少しこんなふうにしてはどうかとか、こういうような問題があるよとか。そういうことをキャッチボールしていかないと、なかなかスムーズには行かないような気もしますが、そこまではお考えになっていないということですね。

【松尾研究開発戦略官】
 とりあえず我々が考えたのはそこまで考えておりませんでした。ただ、ITER(イーター)とBAというのは核融合の大きなイシュー(課題)ですので、その延長線上で核融合全体ということであれば、それは意見を言っていただければ、この作業部会でもう少し練るということだと思います。したがって、タスクフォースのタスクとしてそれをチャージするというのは若干重過ぎると思いますので、もしそういう意見があれば述べてもらって、それをこの作業部会で消化をしていくということになるのではないかと思います。

【山田学術調査官】
 タスクフォースの役割については非常にクリアになってきたと思いますが、少しフォローアップさせていただきます。後で松尾さんからアメリカの問題について報告がありますが、ITER(イーター)のプロジェクトにおいてアメリカで起こっている障害というのは何も技術的なものではないわけですね。ですから、技術的な問題ではないところにも、いろいろなプロジェクトを進める上での障害というのは生まれるわけですので、そのあたりをこのタスクフォースで分析するなり、ある意味備えるなりして、それをITER(イーター)の理事会に反映していくというファンクションが非常に重要だと思います。

【飯吉主査】
 タスクフォースをつくることは多分ご賛同いただけると思いますが、それはよろしいでしょうか。先ほど言いましたように切り分けを少し明確にしていただいて、次回でも仕事の割り振りというか、どういうことをしっかりやってもらうというようなことをしていただいて、あと、メンバーについてはきょうのご意見を伺って事務局と私にお任せいただくということでよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。

(2)ITER(イーター)・BA技術推進委員会ロードマップ等検討ワーキンググループ中間報告

  1. 事務局より、資料2に基づき、原型炉に向けた技術開発ロードマップを核融合エネルギーフォーラムへ依頼した経緯について説明があった。
  2. 電力中央研究所岡野上席研究員より、「ITER(イーター)・BA技術推進委員会ロードマップ等検討ワーキンググループ」の審議状況について説明があった。

 主な審議内容は以下のとおり。

【飯吉主査】
 大変よくできていると思います。1つ質問ですが、クリティカルパスはどれなのでしょうか。

【岡野先生】
 クリティカルパスは非常に多くございますが、幾つかポイントを示してございます。そのディシジョンポイントがあるものを一つのクリティカルパスだと思っていただくといいと思います。最初に多くのディシジョンポイントが出てくるのは2014年ごろでございます。どれか一つクリティカルパスで、それをパスするとうまくいくというものではないので、かなり多くの、どれを落としてもできないというものであるというふうに思っています。

【飯吉主査】
 ええ、そういう意味のクリティカルパスはわかるのですが、矢印が下から上に行って、その時点でできていれば、あと30年で、2039年ぐらいに発電実証ができますということですよね。私が質問しているのは、この矢印をほんとうに達成するために一番クリティカルな技術は何ですかという意味です。私は材料だと思っているのですが。もしそれが正しければ、14年にIFMIF照射実験というのを立ち上げないといけないという話になりますよね。しかし、実際無理ですよね。今、ITER(イーター)を一生懸命建設していて、そんな余分なお金はありませんよね。ですから、もしこれがほんとうに実現するのであれば、ここをしっかりスタートとするという、何としてでも国策としてやるというぐらいの覚悟をしないと、この絵が絵にかいた餅になる可能性がありますよね。材料開発は大丈夫ですよということなら結構なのですが。

【岡野先生】
 材料が非常に重要なクリティカルパスの一つであるというのは、私もそう思っておりますが、IFMIFはそのために非常に重要な装置でございますが、IFMIFが例えば数年おくれたことによって全部後ろに下がるということはないかもしれません。というのは、設計そのものはインパイルテストでやったデータを使ってするわけですし、逆に、原型炉をつくる材料というのは低放射化フェライトでやるということが決まっているので、IFMIFのこの計画が例えば10年おくれたとかそんなことになったら困りますが、照射データを出して、建設開始までにデータを示していただける計画になれば大丈夫なのかなと思っていて、IFMIFを使って新材料を開発するということではないと理解しています。

【飯吉主査】
 では、今のフェライト系で大丈夫だということですね。

【岡野先生】
 ファライト系で大丈夫でないならば、原型炉はこのスケジュールではつくれないと思います。

【飯吉主査】
 だから、ファライト系以外のもっと斬新なもっと低放射化の材料を開発しなければいけないわけでしょう。そうしないと核融合がクリーンであるということの証明ができないのではないですか。

【香山委員】
 より魅力的な核融合炉をつくるということはもちろんいろんな議論があるわけですけど、ここでやっているのは、ボトムラインとして最低限まず実現するためのパスはどう現実的にあり得るかという議論で、そうすると大前提としては、今の低放射化鉄鋼材料が持っているポテンシャルというものをベースにして、しかも非常に高い確率で確認できている特性というもので現実的であるという判断がまず基本にはある。それをITER(イーター)のところの議論でもされているわけですから、それが原則だというふうに思っています。

【飯吉主査】
 ITER(イーター)で実証できればいいというわけですね。

【常松委員】
 材料の開発ですけど、時間がかかっているのは照射データをとるというところでかかっていて、それは基本的に安全に何を担保させられるかと。岡野さんの話の最後の環境安全の評価手法に結びつくのですが、要は、安全審査に当然照射データは問われるとは思うのですが、安全の確保に不可欠なものなのか。それが100dpa(ディスプレイスメントパーアトム)レベルなのか、あるいはもう1けた下がってもいいのか。安全のバウンダリーをどこにとるべきかということと多分リンクします。それによって多分5年ぐらい違ってくるんです。ある意味でIFMIFはずっと後でも、建設の終わりでもコンファメーションすればいいというITER(イーター)ライクのロジックだったらあれだけど、多分、発電炉はそうはいかないだろうなとは思いつつも、万が一座長がおっしゃるように、この建設が5年おくれたときにクラッシュするのかどうかというのは、最後に原型炉設計基準とか詳細仕様決定のところは安全審査のところに結びついている話で、ある意味で核融合は環境安全だけだと発電炉でも思えば、そこのところを回避するロジックはあるのかないのかというのは、多分、BAの材料基準を議論される中で一つのキーになるだろうとは思っております。

(3)核融合研究分野における人材の確保について

  1. 事務局より、資料3-1、3-2、3-3、3-4に基づき、核融合研究分野における人材育成・確保について説明があった。
  2. 電力中央研究所岡野上席研究員より、資料3-5に基づき、ITER(イーター)・BA技術推進委員会ロードマップ等検討ワーキンググループ中間報告に伴うITER(イーター)・BA人材計画について説明があった。

 主な審議内容は以下のとおり。

【飯吉主査】
 岡野先生のお話を聞いている限りでは、若い人材は増えないだろうと。あまり魅力がないですよと。だから数も足らないし、それ以外のもっと関連分野も含めれば、おそらく今の大学の研究者の数、学生の数とITER(イーター)に関係している人の数の比率というのはものすごくアンバランスになっているわけでしょう。

【高村委員】
 人材の育成のみならず、人材の当面の確保というのも大変緊急を要する課題だと私は認識しています。松尾戦略官の書かれた幾つかのポイントは非常によくまとまっていると思います。人材の当面の確保について考えていく上で、検討のポイントで言いますと2番目の特に大学の視点から、大学、核融合研等のネットワークということは、ここが一つのキーワードで、なお今座長が言われたように、他分野との流動性、これはこういう考え方で進めていく必要があるわけですけれども、我々に求められているのは、いかに知恵を出していくかということだと思います。例えば、先ほど岡野さんも言われたように、当面ITER(イーター)職員に対する20パーセント近くの人員の確保、それすら達成できないのではないかという、そういう危惧が非常にあるわけです。そこで人材の流動化システムを考えなければ行けない。大学から言いますと、大学の人間は非常に興味を持っているのですが、なかなかITER(イーター)に参画できない。これは繰り返し言われているのですが、これを打破する知恵がないわけです。
 私が申し上げたいのは、我々としては核融合研に代表される中枢研を持っているわけです。それからさらにつけ加えますと、全国共同利用研があるわけです。これらが果たす役割というのは非常に大きいのではないかと。つまり、大学と中枢研がネットワークを組む、もっと踏み込んで言いますと契約を結ぶ。ITER(イーター)のステータスというのは大学でも随分上がってきていると思います。しかしITER(イーター)に行く場合、大学から行くと戻ってこれないという困難があるので、それを中枢研で補てんする。どういうふうに補てんしていくのかというところは、契約を結ぶわけです。例えば非常に具体的な話まで踏み込みますと、大学から1人の人がITER(イーター)に行くと。核融合研からそこを補てんする。核融合研としては、核融合研でなくても別の共同利用研でもいいのですが、そうすると人材不足になるのですが、そこは共同研究ということでバックアップするとか、あるいは核融合研にはそれに対してポスドクを何人かつけるとか、そういう具体的なアイデアを我々が提示してこれを乗り越えていくという、そういう具体案を出さなければいけないと思っています。

【香山委員】
 先ほど、科学技術関係の人材の育成・確保について国がどういう取り組みをしているかというご紹介がありましたけれども、やはりその中でいかにどういう分野で核融合に流れ込んでくれるような人たちの数を確保しなきゃいけないかというのは、あまり核融合分野から主張されたことがないんですね。例えばきょう岡野さんがつくられているものを見ると、私が心配するのは、意外とそれほど数は要らないから、今の人材の規模でも十分供給できるのではないかと思う人が出てくるのを非常に危惧していて、結局、原子力分野では今、なりふり構わず人材確保するというのがありますから、工学系の学生の中で原子力というのは魅力もあるし、将来性もありそうだから、何となく行こうというムードがかなり高まっているのは事実なのです。ところが、核融合はやはりそれがない。ムードでは行けないんですね、核融合は。核融合に入る人はかなりまじめに考えた人が入ってくる。そうすると、幅広い人が流れ込むムードをつくることも大事なのですが、その基本になるような、受け入れてもいい能力を持った人の総数をどれだけ増やすかという必要性みたいなのを少し核融合からアピールする必要があるのではないか。それをぜひ最終的な人材計画の中ではもう一回示していただくといいかなというふうに思います。

【松田委員】
 岡野さんにご検討いただいた人材の案というのがこのロードマップに対応するものだとしたら、タイトルに「ITER(イーター)・BA人材計画」って書かれるのは少しミスリーディングで、特に原型炉に向かって必要な計画というのはBAではとても不足しているわけですね。基本的な計画にあるブランケットの開発というのはBAではほとんどカバーされていないのです。そういう意味でロードマップのタイトルの人材計画というふうに書いていただいたほうがいいと思います。それから先ほどITER(イーター)の話で、日本から行く人が少ないのに対して新規に採用して派遣すべきだという記述がありましたが、ITER(イーター)機構の人材はそもそもITER(イーター)機構が採用を決定するので、我が国の方で新規に採用して(決め打ちで)送り込むというシステムではないんです。だから必要なのは、こういうポストがありますよというのを我々は一生懸命アドバタイズしないといけないのですけれども、原子力機構なり何処かが採用して送れば済むという問題ではありません。この点は以前のEDAのシステムとは異なるので、そこは記述を誤解の無いように変えていただいたほうがいいと思います。
 それから3点目は、核融合外から採用する人材の年度展開というタイトルのところで、ここに書いてありますような分野では核融合以外から人材を見出すというふうに書かれているんですが、炉工学分野ですと、本来必要な人材というのは核融合をやっている人というのはほとんどいないんですよ。むしろ機械とか電気とか、ほかの関係をやられていた方が集まってきて、それで核融合の技術開発をやるというのが実態に近くて、だからそういう意味では、先ほど香山先生がおっしゃったような、ほかの分野に対して広がりが見えるかという意味では、ここのページの資料の統計のとり方をちょっと考えていただいたほうがいいように思います。

【笹尾委員】
 人材の確保という点で、かなりこれは緊急を要していて、特に私たち特定領域で燃焼プラズマがよくわかっているような人材を育ててきたのに、彼らは行くところがなくて、結局、最終的に関係のないメーカーとか、あるいはフィッションのほうに職を求めざるを得ないという状況が現状であります。
 もう1つITER(イーター)への人材の派遣なんですけれども、松田先生が今、これはITER(イーター)機構がセレクションするものだからと言っておられるのですが、実際にITER(イーター)機構がアクセプタブルな人材を育てるというのが私たちの責任だと思うんですね。そういう体制、アクセプタブルな人材がどこにいて、あるいはそういう人材を2年後あるいは3年後にはITER(イーター)の必要とする人材とのマッチングをとりながら育てていくという、そういう情報は残念ながら大学のほうには全くなくて、原子力機構でITER(イーター)にかかわる仕事をされてきた方とか、それの関連の企業の方には見えるかもしれないんですけれども、私たちは全然手が出せない状況なので、そこのあたりを少しこれから手を入れていく必要があるのではないかなと思っています。

【小森委員】
 実際に核融合研で助教を1人公募すると、7人から10人くらい、COEを含め非常に優秀な人が来ます。若い人もある程度年をとった人も来ますが、皆かなり優秀でどうしようかということになります。しかし、もちろん1人しか採れません。もっと人をつくれということには我々も賛成ですが、教育の現場としては、計画的にポストをつくっていけば人材はおのずから集まってくるのではないかと考えています。

【飯吉主査】
 この話はむしろ今期のメインの課題でございます。人材をどうやって育成するか。この第4期の科学技術基本計画のメインが人材養成、イノベーションでございますので、ここに先ほど戦略官が示されたようないろんなプログラムが各省であるわけですね。当面は今のITER(イーター)のほうに期待することも多いんですけど、こういうもののどれをうまく活用して人を育てていくかということをもう少し具体的に先生方がお考えになって、そしてそれぞれのプログラムに積極的にアプライして集めていく、育てていくということが必要だと思いますので、その辺についてはまた次回からどういう戦略で行くかということをご議論いただければというふうに思っています。

(4)その他

 事務局より、アメリカのITER(イーター)予算について説明があった。

6.今後の日程等

 事務局より、次回の開催日については3月下旬頃を予定していることの連絡があった。

-了-

お問合せ先

研究開発局研究開発戦略官付

(研究開発局研究開発戦略官付)