原子力分野の研究開発に関する委員会 核融合研究作業部会(第6回) 議事要旨

1.日時

平成19年1月31日(水曜日) 13時30分~16時30分

2.場所

三田共用会議所 C‐E会議室

3.議題

  1. 人材育成について
  2. 報告書(素案)について
  3. その他

4.出席者

委員

 飯吉主査、坂内主査代理、石塚委員、菊池委員、小森委員、香山委員、笹尾委員、高村委員、田中委員、東嶋委員、平山委員、松田委員、三間委員、本島委員

文部科学省

 松尾研究開発戦略官、川畑核融合科学専門官

オブザーバー

科学官、学術調査官
 吉田科学官、山田学術調査官

5.議事要旨

(1)人材育成について

  1. 事務局より、資料1‐1に基づき、「核融合分野における人材育成と理解増進の方策」について説明があった。

【事務局】
 今後、核融合分野の研究開発を進めるに当たり、長期的なビジョンで人材育成と理解増進を進めていかなければならないことから、今回、自然科学研究機構核融合科学研究所、大阪大学レーザーエネルギー学研究センター、日本原子力研究開発機構に、特に若手研究者や、大学院生といった、これからの核融合研究を担っていく若い人たちの意見を集約していただき、事務局で取りまとめた。

 審議の主な内容は以下の通り。

【委員】
 若手研究者から様々な方策について意見が出ているが、彼らが現在心配しているようなことが主にかかれているように思われる。例えば、我が国の将来のエネルギーの中で、核融合エネルギーがどうなっていくのかといった観点での意見はなかったのか。

【事務局】
 今回、そのような観点からの意見はない。人材育成や理解増進の方策という観点から問いを出したため、それに対応した意見が出てきたものと思われる。核融合やエネルギー全体についての意見を聞けば、大志を持った研究者は当然いると思われる。

【委員】
 一般の目から核融合研究がどのように見られているかということについて私見を述べさせていただく。
 核融合には基礎研究や宇宙物理といったものも含まれるが、核融合やITER(イーター)の誘致等に関するこれまでの報道を見ると、一般の目は、核融合発電やエネルギーという社会性、公共性が高い研究を行っているというふうに見ていると思われる。
 大型研究施設が必要になるため、単なる研究予算というよりは、公共事業的な予算と言え、非常に高額な経費が必要となる。その分、例えば1億の研究予算を取るための社会に対する説明責任に比べ、仮に核融合研究が100億の研究予算が必要だとした場合、核融合研究者による社会に対する説明は、必ずしも十分ではなかったのではないか。納税者は、1つのものに100億出すよりも、1億のものを100人の研究者に渡す方がよいというふうに、短絡的に考える可能性もある。つまり、果たして税金を投入するだけの成果が得られるのかということについて説明していかなくてはならない。一方、ITER(イーター)の誘致に関しても、科学者の間で必ずしも共通理解を得られていなかった状況を現在も引きずっており、幅広いアプローチについても科学者の間でも様々な意見がある。そのため、核融合研究者だけでなく他分野の研究者に「核融合をどう思うか」と尋ねると、否定的な意見も出てくるので、核融合に対する理解を得られるよう、科学者間のコミュニティでもっと説明をしていただきたい。
 資料1‐1の若手研究者から出た具体策のうち、研究所公開や出前授業等は、既に研究者の方々が実施されているものである。ただ、これらがまだ効果を出していない。
 一つの問題点として、出前授業や講演会をする際は、もう少し対象を細分化、明確化した方がよいのではないか。予算規模の大きな研究所は広報の専門部署を設けているが、専門部署だけに任せるのではなく、研究者自身が外に出て、顔を出して市民1人1人と対話をすることをお願いしたい。ただ講演を聞くよりも、若手の研究者から実際に説明を聞くことの方が、相手に訴えかけるのではないか。
 一番大事なことは、将来核融合エネルギーを利用することになる社会像がどのようなものか、明確にしていただきたいということである。いつ、どんな社会になるのか、現在は原子力発電を利用しているが、次に高速増殖炉を進めていき、その先に核融合があるのかという点が全く見えない。政治・社会的な状況もあると思われるが、研究者の立場から「将来、このような社会像が考えられ、核融合によって、いつ、どのようなエネルギーが得られ、例えば核分裂のエネルギーと比較してこのような利点がある」というシミュレーションをしていただきたい。一つ、『総研大ジャーナル』の2004年6号の核融合の特集で、平成12年の核融合会議開発戦略検討分科会の報告書が掲載されており、エネルギーの総合評価例として、核融合炉と海水ウランの利用軽水炉、CO2(二酸化炭素)回収付き石炭火力と廃棄物の放射線リスクや安心・安全、資源量などについて比較している5角形の図がある。このように、他のエネルギーとの比較、社会像、コスト、環境への影響等について、一般に対してわかりやすく明確にしていただくことで、核融合の意義がよくわかるのではないか。若手研究者の意見の中に波及効果や基礎研究についての成果も出していくということもあったが、やはり根本の部分は、核融合によってどのような社会が描けるのかという未来像をきちんと出すことではないかと思う。
 ニュースを出す側としてつけ加えさせていただきたいのは、私自身も例えば核融合の話を雑誌などに書きたいと思っても、タイムリーなニュースがないと話題にならないということである。以前、立花隆氏が『文藝春秋』に書いたときも、多額の経費を用いるITER(イーター)の誘致について、ハコモノ行政的なことをやっていいのかという観点で書かれているが、こういったきっかけがないと、やはり書きにくい。
 現在、幅広いアプローチがこれから始まろうという時であり、核融合の研究者も一致団結して共同で進めていこうとしている。これは絶好の機会なので、例えば一般向けの展覧会や研究所公開で、幅広いアプローチでどのようなことができるのか説明を行ったり、研究者に向けて参加を呼びかけたりしてはどうか。
 本作業部会では、核融合コミュニティという言葉をよく聞くが、他の分野ではあまり聞かれない言葉だと思われる。宇宙物理等の基礎研究や波及効果は、様々な分野と連携しているので、幅広いアプローチが開始することを機に様々な共同研究を呼びかけ、核融合コミュニティが閉じないようにしていただきたい。
 例として、一つは2002年にフランス原子力庁がパリの科学産業館で太陽展を開催していた。太陽をテーマに、太陽暦、太陽エネルギー、太陽に関する神話等、様々な学問分野から太陽について紹介されており、最後に核融合が紹介されていた。原子力発電の技術者が小学生に対して核融合の説明をしており、日本とフランスの間ではITER(イーター)の誘致について交渉が行われていることや、フランスの技術が優れているため、フランスに誘致したほうがよいということを話していた。このように、きっかけがあれば小学生にも理解できるように紹介できると思われるので、一般向けにはぜひそういう切り口からも行っていただきたい。
 また、トカマク、ヘリカル、レーザー等の各方式の代表研究者による討論会のようなものを開催し、相互に欠点・長所を述べ合い、自分達にどのようなことができ、どこへ向かっているのかという議論を行うのも、一般に読んでもらうきっかけになるのではないかと思う。

【主査】
 核融合を知ってもらうためのPRの形として、若者に対してはホームページが非常に有効であるため、ITER(イーター)、BA等に関するホームページを魅力あるものとして作成する必要があるのではないか。
 また、国立天文台のすばる望遠鏡は、核融合研のLHDとほぼ同時にスタートしたが、すばる望遠鏡の方がLHDより非常に一般受けしている。研究のテーマは宇宙と太陽でそれほど違わないにも関わらず、差ができているということは、やはり核融合コミュニティは外向けのPRが不得手なのだと思われる。核融合も原点は太陽であることから、ロマンを含めたPRを国立天文台と同等に行っていただきたい。そのためには、広報の専門家に参画してもらう必要があるのではないか。

【委員】
 外部への説明責任という観点から学会の活動について少し紹介すると、ウェブサイトはもちろんのこと、様々な本を作成している。新たに『プラズマエネルギーのすべて』という本ができ、核融合も含む内容で、非常に絵が豊富な、一般の人を対象にしたわかりやすい記述のものになっているので、ぜひ見ていただきたい。
 また、周辺分野の方に対する専門講習会や、高校生に関しては、ボランティアでの出前授業、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)と結びつけた活動等を行っている。

【委員】
 夢を売るということは大変重要だが、夢を売るだけでは学生は集まらない。プラズマ物理を勉強しても、その後のキャリアパス、就職はどうなるのかという点を見通せることが大切である。核融合炉は実現がまだ20年、30年先のため、どこにどう進んだらいいかわからないところがある。その辺りに非常に気を使わなければ、なかなか学生を集められないのではないかということが現場では言われている。
 今回のBAは絶好の機会であり、大学の中で新しい枠組みを作っていくきっかけを、BAの中で作っていただく必要があるのではないか。他の分野はグローバルCOE等のプロジェクトと抱き合わせて教育を進めているが、核融合そのもののCOEはなく、プラズマ関係のものが日本全国に1つしかない。そのような状況では人材育成にはつながらないので、その辺りは特に核融合エネルギーフォーラムが貢献する必要があると思われる。

【委員】
 核融合会議開発戦略検討分科会の資料については、原子力委員会のホームページに掲載されているが、それを本にしたり、わかりやすく作り変えるといったことができていない状況にある。恒常的なPA活動を行っていくためには、専門に携わる人がいなければ難しいところである。
 また、天文との比較については、天文の本が非常に多く出ているのに対し、核融合の本は非常に少なく、核融合コミュニティはまだあまり本を書いていないと感じる。すばるの写真や宇宙の始まりは、やはり若い人にとっては魅力的だが、核融合のプラズマも非常に魅力的だと思う。ただ、その魅力を熱く語れる人材がいない。プラズマ物理は、素粒子物理やストリング・セオリーと比べた場合、おもしろくないとの意見もあるが、そのおもしろさや地上の太陽としての核融合エネルギーについて熱く語る人材の不在が本質的な問題と考える。

【科学官】
 広く社会において、あるいは大学の学生や研究者との間で、コミュニケーションを可能にする「もの」すなわち意味表象が必要である。それは、天文分野では天体の美しい写真や絵であり、それらを雄弁な媒介項にして社会一般とコミュニケーションを取ることができる。
 核融合の表象はどうしても抽象的で難しくなるが、東嶋委員が指摘されたように、未来像を具体的に描くことが有効と考える。研究者のレベルでは、研究の意味をきちんとわかりやすい形にするということが必要である。たとえば、ストリング・セオリーは決してわかりやすいわけではないが、それを研究する意味は、物理の研究者、数学の研究者の間で広く共有されており、コミュニケーションが可能になっている

【委員】
 人材育成や体制強化について、教育者サイド及び今回の若手の意見から共通に感じられるのは、原子力分野は護送船団方式に慣れており、甘えがあると言われることがあるが、やはり、自分たちの努力に対して保護を求めるというトーンがあったり、内部へ取り込んだ人材の維持・確保といった考えが見られたりして、厳しさが足りないということである。本当に活発な領域においては、保護ではなく激しい競争が行われている。その競争の中からおもしろいものが出てくるものである。
 一番大事なのは、核融合分野で活躍する中に、魅力的な人材がいるということである。大学においても、研究の面白さ以前に、人間の魅力が大きな吸引力になっている。そこで、この分野の早急なマスコミ対応という意味では、魅力的な人材を研究者の将来像として対外的に示し、人を引き込むといった対策が重要ではないか。

【委員】
 将来の核融合エネルギーにおいて、一つの重要な課題は、安全性の問題であるが、実際に核融合炉を作る段階からではなく、ITER(イーター)も含めて、今これから意識して取り組まなくてはできないものと思われる。
 ところが、本作業部会の審議において、安全性に関するぎろんが不十分であることが懸念される。もちろんプラズマや炉工学についても非常に重要であるが、実際に進めていく上での放射線やトリチウム等の問題についても、人材育成も含めて今から取り組んでいく必要があるのではないか。核分裂等の応用も可能かもしれないが、核融合は固有の困難な課題を研究しているので、どのような問題があり、それに対してはどのような解決策で対応するかということを社会に対してきちんと説明した上で、信頼を得るよう取り組んでいく必要がある。

【主査代理】
 様々な場面で将来を見据えた人材育成の重要性が議論されているが、この分野についてはITER(イーター)があり、カダラッシュを拠点として若手研究者が国際プロジェクトに関わることができるという点が、学生への魅力の1つとなるのではないか。
 また、どの分野も基本は人材であるが、学生に早い時期から分野ごとの専門教育を行うという方法に対し、専門付けするのは大学院以降とし、学部ではゼネラルな教養教育を行うべきという議論があった。改めて人材の重要性を考えると、総合的な科学技術を担う人材の育成という点では、学生をある段階までは専門付けせずに、トータルな人材として育成した後、各分野に配分するという視点も重要と思われる。学術会議においても、分野ごとの人材に関する問題を出してから、学術分野全体の人材について議論を行うスキームが動きつつあり、そのような方向で検討するよう、本作業部会から提案していく必要があるのではないか。

【委員】
 核融合プラズマの分野は社会性が高く、研究者と一般の間に「社会」がある点が、天文学との相違点なのではないか。現在の環境問題についての危険性が認識されづらい要因も、間に社会が入っていることが指摘されている。研究者から情報を発信していく点は、今後改善できていくと思われるが、非常に高いポテンシャルを持つ日本の科学ジャーナリズムにも期待する部分は大きいので、その点はよろしくお願いしたい。

【事務局】
 文部科学省における人材政策については、科学技術・学術審議会で人材全体について審議していたこともあり、そういった場を通じて議論するのも一案である。
 また、様々な投資によって将来像を提示していき、それが人材育成につながっていくことになるが、現在は、核融合だけで予算を取るのではなく、他分野との連携によって予算を獲得する方法が考えられる。例えば核融合に限らず他分野も含めたテーマとした研究で予算を取れば、研究に参加した分野間での人材のやりとりが可能となる。そのような広がりをもった形になれば、エネルギーや材料の面で広がった核融合の将来像が描けるのではないかと考える。

【主査】
 核融合発電のイメージや未来社会のイメージは、やはり核融合エネルギーフォーラムの中に委員会のようなものを設置して、実のあるものを作り上げることが核融合コミュニティの責任だと思われるので、よろしくお願いしたい。

  1. 田中委員より、資料1‐2に基づき、「核融合炉工学の研究体制・人員計画」について、吉田科学官より、資料1‐3に基づき、「ITER(イーター)/BA推進のための望むべき研究体制(全体)」について説明があった。

 審議の主な内容は以下の通り。

【委員】
 研究体制の図を作るときは、核融合コミュニティに閉じることはせず、工学系ではよく、ある技術型の分野にどのくらい広がっているかといった図や、人材分布図も作るのだが、今回はそういった分析はなされたのか。

【科学官】
 この資料では、核融合分野でも管理あるいは運転部門の人数を含んでいないが、そういった周辺部分まで含んだ数字はある。
 ご指摘のように、ITER(イーター)のような大きなプロジェクトを動かすときには、エンジニアは、同時に様々な関連するプロジェクトを行き来することで技術を循環させたり発展させたりする必要がある。例えば超伝導の技術についても、核融合だけでなく加速器など他の分野も含めて、国全体を見た大きな枠の中で考えていく必要がある。すなわち、国全体としての科学技術開発を行っていく上での、大きなグランドデザインがぜひ必要である。

(2)報告書(素案)について

 事務局より、資料2‐1~2‐9に基づき、「報告書(素案)」について説明があった。
 審議の主な内容は以下の通り。

【委員】
 ITER(イーター)のテストブランケット計画は、ブランケット開発計画の重要な一部ではあるが、このブランケットテスト・モジュールだけ作ればよいわけではなく、それと並行して小サンプルの核融合炉での照射等の寿命に関する研究開発が必要となるので、ブランケット開発研究全体の中でのテストブランケットという形で記載した方がよいのではないか。
 また、人材育成の現状については、ITER(イーター)、BAの時代に活躍できる人材の層が非常に薄いことが問題である。例えばJT‐60の建設の頃に増員された人材は現在50歳、60歳になっているが、建設終了後は人材の補給がほとんどなかったため、特に若い世代の研究者が少ない状況である。そのため、これからITER(イーター)の建設、運転に入る段階において、研究開発あるいは実験等に従事する人材に非常に事欠く状態になっている。
 その原因は、計画の継続性の欠如にあると思われる。1つの大きな計画が終わろうとするときに、次の計画がスムーズに立ち上がっていれば、人材の供給は一定のレベルを維持できるが、そのような形になっていない。特に日本の場合、JT‐60の建設終了後はLHDの建設があり、その後のITER(イーター)の工学設計活動までは、ものづくりあるいは研究開発の機会が一定程度あったが、それらが終了してからITER(イーター)が立ち上がるまで非常に時間がかかったため、その間の産業界、核融合界における人材の供給がうまくいかなかったということは、非常に大きな問題である。そのような点では、人材補給は核融合に限らず各分野の一般的な課題であるが、核融合には特有の問題もあるように思われる。核融合のような長時間を要する研究開発は、常に次にどの計画を立ち上げていくかを考えながら進めていかなければならないのではないか。
 これまでの反省に立ち、ITER(イーター)計画やBA計画がこれから立ち上がっていき、予算も増えていく中で、人材も一定のレベルを確保できると思われるが、ITER(イーター)の建設が終了し、あるいはBA計画が終了する10年後からさらに先の計画を立ち上げていくことが、人材を継続的にキープする方法になるのではないか。その点では、ブランケット計画は例えば10年後以降に、炉工学の研究開発の中でかなり中心的な課題になっていくと思われる。

【主査】
 ブランケットについては、ITER(イーター)のテストブランケット・モジュールだけ開発すればよいわけではなく、それ以外の研究も並行して行っていく必要があるという視点は重要と考える。
 また、人材育成については、ITER(イーター)のサイト決定まで非常に時間を要したため、人材育成面で空白期間が生じるという特殊な状況が生じている。今後、そのような事態が起こってはならないということを盛り込む必要があるかということだが、これは人材育成の継続に関する戦略性の問題だと思われる。ヨーロッパでは、例えば核融合の超伝導技術は加速器建設に用いることで継続しており、次はITER(イーター)の建設につなげていくという戦略があったが、日本にはそれが欠けていたのではないか。

【委員】
 特にヨーロッパでは、核融合に対しても、フレーム枠計画は4年単位の計画になっており、ほぼ一定レベルの資金が出ている。そのためITER(イーター)終了後も、暫定活動が可能となり、その間、人材・技術ともにキープできる。日本の場合、プロジェクトが認められれば立ち上がるが、終了すればその時点でなくなるというスタイルは、核融合のような長期的な研究にはそぐわないため、その点への配慮が必要である。

【委員】
 今回の作業部会における主な検討事項の第一には、「ITER(イーター)計画に関する国内における推進体制の構築等」となっているが、その点についてはまだ掘り下げが足りないのではないか。素案の中には、研究開発に際して、全国的な研究体制の構築や、あるいは核融合エネルギーフォーラムについては書かれているが、これから実際に進めていくには、組織的な体制の構築という視点が欠けているのではないか。
 産業界から見て、基礎学術だけではなく、産業技術との高度な統合が必要であるといった認識については書かれているが、例えば10ページの「産業界に技術が蓄積されていくためには、一定量の機器製作の機会が継続することが必要となる」という記述については、そのためにどのような方策がとられていくのか、今後の研究体制の中で、機器の発注にしろ研究開発にしろ、どのように行われていくべきなのかということまでが必要ではないか。

【委員】
 一定の機器製作の機会が継続するということは、言葉を変えると、あるプロジェクトが成り立つと次のプランが立ち上がっているということだと思われる。そのため、どのような順序で核融合の研究開発を戦略的に進めていくかということを、5年単位、10年単位の大きな年次で示していく必要があるのではないか。
 今はITER(イーター)、BAが基本的なプロジェクトとなっているが、それで原型炉に必要なもの全てが研究されているわけではなく、例えば、ブランケットを中心とする部分の開発がITER(イーター)にもBAにも入っていない。そこで、入っていない中の一部分がテストブランケット・モジュールということでクローズアップされたわけだが、他にも原型炉に必要な次の研究開発について、どのようなものが出てくるかというビジョンが示されれば、例えば一定の製作機会を継続することに結びつくと思われる。

【主査】
 原型炉に向けたブランケットの開発については、ITER(イーター)計画そのものの中に含まれているのではないか。

【委員】
 ITER(イーター)計画そのものには含まれておらず、今後どのように具体的にITER(イーター)計画に入れ込んでいくかということについては、今まさに国際的な議論が始められるところである。

【主査】
 その議論を受けて日本が作る戦略はどこに入れればよいのか。

【委員】
 BAの中の国際核融合エネルギー研究センターになると思われるが、今後さらに議論が必要である。

【主査】
 この報告書にその辺りまで細かく書くとすると、報告書の他の部分についても同様に専門的、技術的な面について詳しく書かなければならなくなるのではないか。

【科学官】
 本作業部会のミッション、及び報告書に何を書くのかという視点から言うと、ITER(イーター)計画におけるテストブランケットについての記述が含まれているのは据わりが悪い。研究の中身に係る部分は核融合エネルギーフォーラムの中で意見集約を行うという枠組みを作ったからである。しかし、テストブランケットの件は急を要するものであったため、核融合エネルギーフォーラムではなく本作業部会において議論したことから、その結果を報告書に記載しているということである。
 その意味では、技術的な開発のロードマップの詳細については、本作業部会では議論してきていないため、記載できないと思われる。

【主査】
 テストブランケットに関しては、緊急に決める必要があったと同時に、大学側としても、予算的なことも含めて今後どのように考えていかなくてはならないかということがあるため、報告書に入れる必要があると理解している。

【委員】
 報告書のうち、人材育成の推進に向けた予算の確保や、核融合エネルギーフォーラム等、非常に具体的に書かれていることもあれば、状況の認識のみに留まり、具体的に何をするのかということが不明確なものもある。国内体制を早急に整備する、連携大学院制度の活用を一層推進する、といった記載があるが、具体的に何をするのか見えない部分もあるのではないか。

【主査】
 具体的にどのように進めていくかは、ITER(イーター)/BA技術推進委員会で案を策定するということで、当該委員会の役割に重きを置いているという理解である。

【委員】
 ITER(イーター)/BA技術推進委員会の役割は、ITER(イーター)の実際の推進や、問題が発生した場合に適切な対応策を技術的に検討して出していくということであるのに対し、報告書には学術研究や連携協力といった研究推進のことについては書いてあるが、実際にITER(イーター)計画を開発、推進していく上での体制の構築については触れられていないため、その点を追加してほしいということではないか。

【主査】
 そういった具体的なことの検討において、ITER(イーター)/BA技術推進委員会の役割は重要と思われる。本作業部会の場で議論して決めるよりも、この技術推進委員会に具体策を検討、提言する機能を持たせた方がよいのではないか。

【委員】
 今のご意見は資料2‐3では非常に重要な点と思われる。ITER(イーター)/BA技術推進委員会は、推進という機能が非常に重要だが、資料に書かれている委員会の役割を見ると、推進ということが欠けている。この推進の機能が本当に活かされるような、内容を検討できる場であれば、主査のご意見通りになるのではないか。

【主査】
 この委員会は非常に大事なものなので、役割としてそのような性質を追加し、実行できるようなメンバーで構成すればよいのではないか。
 ただ、産業界からの報告書に関する意見は大事だと思われるので、検討したい。

【委員】
 ITER(イーター)/BA技術推進委員会では議論はできても推進とは言えないという意味は、推進するには予算を伴わなければならないが、予算を伴った判断ができるのはやはり国のこの作業部会でしかないということと思われる。

【主査】
 本作業部会はそれほど頻繁には開催できないため、やはり機動性のある組織が必要となる。大きな枠組みや方向性といったものは、この報告書に入れられるが、それを具体化するのはITER(イーター)/BA技術推進委員会となる。そこからさらに本作業部会に上げていただくことは必要かもしれない。

【委員】
 資料2‐3で、文科省の中に核融合研究作業部会があり、それと核融合エネルギーフォーラム等の活動は関連をしているということだが、具体的な施策を必要とする案件が出てきた際は、ある程度広がりを持ったところで議論する必要があると思われる。このため、本作業部会は、報告書策定をもって終わりではなく、今後も開かれると認識している。また、今回、重点化課題に関するチェック・アンド・レビューが実施されたが、これはあくまで重点化してから3年しか経っていない時点での調査であったので、またしかるべき時期でのチェック・アンド・レビューが必要になると思われる。

【事務局】
 本作業部会の今後の活動については、核融合エネルギーフォーラムの立ち上げ以降は、資料2‐3で本作業部会との間に双方向の矢印があるように、本作業部会で検討したことについて、さらに具体化するために、核融合エネルギーフォーラムにさらなる検討をお願いする、また一方で、核融合エネルギーフォーラムにおいて、まずご議論いただき、作成した案について、政策的な判断が必要な場合は本作業部会でご議論いただくという、双方向の体制を構築したと考えている。
 今後の核融合研究作業部会の件についても、継続的に設置していくことを考えているが、現在の本作業部会の役割は、報告書の取りまとめである。それ以降の展開については、核融合エネルギーフォーラムとの連携でITER(イーター)、BAを推進していくことがあり、またチェック・アンド・レビューについては、原子力委員会の報告書にも記載されているとおり、まずは文科省の科学技術・学術審議会等で評価した上で判断することになる。今後、重点化課題のチェック・アンド・レビューについては、必要性に応じた適切な時点で、実施していくことを考えている。

【主査】
 本作業部会は科学技術・学術審議会の学術分科会研究環境基盤部会と、研究計画・評価委員会原子力分野の研究開発に関する委員会の両方との連携で行っているので、両会議へ要所要所で報告をしていくことも必要である。今回の作業部会ではこの報告書を策定し、早くITER(イーター)・BAの活動に具体的に反映させていくことが任務である。

【科学官】
 本作業部会のミッションと、報告書への記載内容に関連して、補足しておく。核融合エネルギー開発のロードマップに関して、具体的、技術的な次元のものは、ITER(イーター)/BA技術推進委員会で作成するのが筋と思われる。同委員会は専門家の自発的な集団として、ある種のNGOとして活動することが期待されるものであり、具体的なロードマップを専門家の共通認識として出していただきたい。国としてはその提言を施策に生かしていく必要があり、今後本作業部会が窓口になることを考えている。すなわち、作業部会では専門家から出てきたロードマップに基づいて、具体的に施策に移し、予算措置していかなければならないものについて審議するという整理になる。
 長期的な大型の開発をしていく際に、技術的な循環系をどのように作っていくのかという点は非常に大きな問題である。その点に関する記述はどうしても抽象的にならざるを得ない面はあるが、やはりこの報告書の中に盛り込んでいくことが重要である。
 また、核融合全体をどのように進めるかということは、原子力委員会で政策面でのロードマップが示され、整理されている。

【委員】
 専門家が決められるレベルは、技術的に判断できる部分であるが、政策まで含めたロードマップ、つまり資金的な裏づけをある程度見越せるようなものに付いては、国レベルで決める必要があることを認識してほしい。

【委員】
 他分野との連携、産業界への人材育成、社会との関係で、高等教育機関としての大学の果たす役割は非常に大きいという視点を(6)「他分野との連携、産業連携」に追加してはどうか。
 例えば、(6)の○(丸)の3のところに、「ITER(イーター)計画や幅広いアプローチ等の核融合プロジェクトを通じて育成される人材が、他分野で活躍し」とあるが、これは同時に、大学、大学院教育の中で育成される人材が、産業界に大きく羽ばたく、あるいは他分野に広がっていくということである。すなわち、大学での研究成果を持って、プラズマ応用や、材料、原子力といった他分野に広がっていくという、波及効果についての視点が必要である。
 また、(7)「国民からの理解と支持」も、「初等中等教育機関との連携活動」とあるが、同時に高等教育機関との連携活動を通じて、日本のリーダーとなる人たちに核融合の重要性を理解してもらうといった活動も重要だと考える。

【委員】
 大学の役割ということで関連して、(5)「人材育成のための方策」について、人材育成はITER(イーター)、BAに必要だが、大学で優秀な人材を育てるには、やはり大学側が最先端の学術研究を行っていないと育たないので、その点についての記述が必要ではないか。

【主査】
 報告書に書かなくても、大学は非常に優秀な人材養成機関であると国民は認識しているのではないか。

【委員】
 最近、法人化されてから、教育と研究は別だという大学の先生もおられ、危惧されるためである。

【事務局】
 研究開発のロードマップをどこでどのように書くかということについて、現在、第3期科学技術基本計画が進行中であり、そこである程度のロードマップができている。もちろん核融合独自のロードマップというわけではないが、どのようなロードマップを作っても、予算は単年度主義のため、ITER(イーター)のような国際協力プロジェクトは別として、国が担保する予算はどうしてもでこぼこができることになる。このため、国の委員会である本作業部会と、技術的なレベルで議論していただくITER(イーター)/BA技術推進委員会とでは、同じロードマップといっても、およそ形態が違うと思われる。当然、作業部会でご議論いただかなければいけない部分もあるが、まずは技術的な観点からITER(イーター)/BA技術推進委員会でご議論いただき、それが国として実施できる予算規模かどうかという観点から議論し、次に原子力コミュニティの中で許容できるものかどうか、さらに国として許容できるものかどうか議論していくという段階を踏まなければ、ロードマップの議論は進まないと思われる。まずはITER(イーター)/BA技術推進委員会でご議論いただくが、本作業部会では何もしないのではなく、例えばもう少し広い視点でITER(イーター)/BA技術推進委員会での議論を受けて、それをコミュニティとしてどのように受けていくかという形で検討するといったことが考えられる。従って、報告書に書く場合もあまり細かなロードマップではなく、ある程度、方向性を出していただくこととし、それをITER(イーター)/BA技術推進委員会、あるいは国に投げてもらうという形が通常だと思われる。

【主査】
 その意味でも、ロードマップはまず専門家が作成し、核融合エネルギーフォーラムでその辺りを集約することになる。ITER(イーター)/BA技術推進委員会が具体的な課題をフォーラムへ投げかけて、それを検討し、まとめるということになる。さらに政策面での検討が必要ならば、本作業部会へ上げていただくというプロセスになると考える。

【委員】
 資料2‐3の核融合エネルギーフォーラムの役割の中に、「連携強力の推進」という趣旨も入れてもらいたい。

【委員】
 他分野との学術的な連携、産業連携という項目があるが、原子力分野との学術的な、あるいは研究開発的な連携が大変重要になってくると思われるため、ぜひ検討してほしい。人材確保の面もあるし、原子力分野でいろいろと展開されている研究の中にも、核融合炉工学等、核融合に対応できるものが多くあり、また逆方向の展開もあるかと思われる。

【主査】
 それは非常に重要なことである。特に炉工学はかなり共通するところがある。

【委員】
 第1章と第2章は「現状と課題」と「今後の推進方策」に分けられているが、内容の分け方が明確でないのではないか。

【委員】
 報告書の構成について、「国民からの理解と支持」が「学術研究と連携協力」の一部に入っているが、これはITER(イーター)、BAを含めた核融合全てに絡む話なので、別項目に分けて書く方が適切ではないか。

【委員】
 開発研究と学術研究で下記振り等が変わることはよいが、開発研究の方は、ITER(イーター)計画及び幅広いアプローチの推進にやや特化され過ぎているように感じる。ITER(イーター)、BAの先の見通しについても書いた方がよいのではないか。また、開発研究と学術研究それぞれの重要性についてしっかりと書いていくことが必要である。
 「他分野との連携、産業連携」については、まず、他分野と連携するためには、まずその分野そのものが確立している必要があり、そのための連携がある。また、産業連携は、スピン・オフということではなく、研究を進める上で非常に重要な部分を占めている。このため、この項目についても独立させた方がよいのではないか。

【委員】
 学術研究に関する推進方策の部分について、「核融合」という言葉を別の分野の言葉に置き換えても通じるような文章では意味が無いと思われるので、核融合研究の特異性が見えるようなアピールの方法を考えたほうがよいのではないか。

【主査】
 分野による特異性が無いのが学術研究とも言えるが、どうか。

【委員】
 例えば人材育成に対する配慮においても、優秀な人材を育てるといった書きぶりでは、一般的な表現になってしまう。総合的科学技術としての核融合研究が、どのような特別の環境の中で人材を育成する必要があるのかという点はアピールすべきではないか。

【主査】
 学問内容が複合的であり、また非常に国際的な性格を持った研究であるといった形の特異性はいろいろと考えられる。

【委員】
 関連して、現在の大学における核融合研究は、平成15年の核融合研究WG報告書の方針に従い、重点化課題を除き、大学に適した小規模な装置にしていくことになっている。それでも核融合装置は普通の装置よりも大きくなるため、それもできなくなると、大型装置を扱える人材は、核融合研と原子力機構でしか育成できなくなる恐れがある。大学が、大学に適した規模になるとしても、ある程度大きな装置を維持し、核融合の最先端の研究者を育てられるようにする必要があるのではないか。
 大型のプロジェクトが走っているから、大学は人材だけを供給すればよいというようなイメージにならないように、また、大学の研究のレベルを高くしておかなければ、核融合分野は人材も供給できなくなってしまうため、その辺りについてもお願いしたい。

【委員】
 原子力委員会核融合専門部会報告である程度示されているロードマップや、環境の問題等についても、全体として整合性を取る必要があるのではないか。

【主査】
 本日いただいたご意見については、報告書にどのように入れ込んでいくか、各委員から修文案を出していただくこととしたい。

6.今後の日程等

 事務局より、1今後の科学技術・学術審議会に関すること、2報告書(素案)について、今後の関係する委員会等への説明・報告に関すること、及び今回の審議を踏まえて事務局で修正し、後日メールにて各委員へ意見照会を行うこと、3次回の核融合研究作業部会は平成19年3月22日(木曜日)14時から開催する予定であること、等の連絡があった。

─了─

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研究開発局研究開発戦略官付

(研究開発局研究開発戦略官付)