原子力分野の研究開発に関する委員会 核融合研究作業部会(第4回) 議事要旨

1.日時

平成18年10月25日(木曜日) 15時~17時

2.場所

三田共用会議所 C-E会議室

3.議題

  1. ITER(イーター)計画、幅広いアプローチに関する国内推進体制について
  2. 今後の共同利用・共同研究について
  3. ITER(イーター)計画におけるテストブランケットについて
  4. その他

4.出席者

委員

 飯吉主査、坂内主査代理、石塚委員、椛島委員、菊池委員、小森委員、香山委員、笹尾委員、高村委員、田中委員、東嶋委員、平山委員、松田委員、三間委員、本島委員

文部科学省

 板倉核融合開発室長、川畑核融合科学専門官、橋爪核融合開発室長補佐

オブザーバー

科学官、学術調査官
 吉田科学官、山田学術調査官

5.議事要旨

(1)ITER(イーター)計画、幅広いアプローチに関する国内推進体制について

  1. 事務局より、資料1-1に基づき、前回の審議における論点について説明があった。
  2. 事務局より、資料1-2、1-3に基づき、「核融合エネルギーフォーラム(仮称)」について説明があった。
  3. 石塚委員より、資料1-4に基づき、「核融合エネルギーフォーラムITER(イーター)-BA技術推進委員会で検討頂きたい事項」について説明があった。

 審議の結果、ITER(イーター)計画及び幅広いアプローチに関する国内推進体制については、資料1-2、1-3の通りとすることが了承された。
 審議の主な内容は以下の通り。

【主査代理】
 ITER(イーター)計画、幅広いアプローチに関する国内推進体制については、前々回の作業部会からご審議をいただいており、相当の調整が図られてきたため、今回の審議で最終的な方向を出せればと考えている。

【委員】
 産業界が希望する長期的なロードマップについては、原子力委員会で平成17年10月に報告書が出ている。具体的に時期を明示することは、予算の関係から非常に難しいため、年次計画のようなものも作るのは困難である。コミュニティで年次的なロードマップについて議論を行うことはよいが、政策に結びつけることは厳しい状況である。産業界としてはどの程度のレベルのロードマップを希望しているのか。

【石塚委員】
 予算と年次を示したような厳密なものではなく、関係者が見通している内容や役割分担についてのコンセンサスがあるものができればよいと考えている。

【委員】
 核融合エネルギーフォーラムの委員会について、原子力機構の委員会であるという説明があったが、すべての委員会が原子力機構の委員会になるのか、それともITER(イーター)-BA技術推進委員会についてのことか。

【事務局】
 フォーラムの運営会議の委員は原子力機構の理事長から任命されることになり、また、運営費自体も原子力機構に交付された補助金を使用し、原子力機構が会議の事務を取り扱うといった点から、形式的には原子力機構の会議ということができるということである。

【委員】
 原子力機構とITER(イーター)の極内機関、BA実施機関はイコールとなるのか。原子力機構の中に、極内機関に対応する別の組織体を新たに作るのか、原子力機構全体が極内機関というふうに考えるのか。

【事務局】
 制度として、国は原子力機構全体をITER(イーター)極内機関、もしくはBA実施機関として指名することになる。その後、原子力機構がどのような形で事務をとり行うかということについては未定である。

【松田委員】
 国が極内機関、実施機関に原子力機構を指定し、原子力機構はそのミッションに対応できるような組織を作ることになる。具体的には、現在の核融合の研究開発部門を中心にしてミッションを達成できるような組織化をしていく。今回、六ヶ所村という新たな場所が幅広いアプローチ活動の一部に加わるため、六ヶ所村での活動も可能となるような組織を考えることになる。

【委員】
 核融合ネットワークについては、大学を中心として、国研や企業も参画した幅広い議論をオールジャパンで行う場を設けるという趣旨で設立されたが、資料1-2の図では、産業界とつながっておらず、当初の理念が矮小化されたイメージになるのではないか。

【委員】
 資料1-2は核融合エネルギーフォーラムについての資料であるため、核融合ネットワークは簡単に記載されているものと思われる。核融合研究を進めていく上では、サイエンスからテクノロジーまでの幅広いインテグレーションを行う必要がある。核融合ネットワークはサイエンスをベースにして、サイエンスから出てくるスピンオフの結果、物理を中心としたナノサイエンス、情報等の他分野の発展にもつながるよう、連携しながら進めていくことになる。その点でネットワークの役割はむしろ拡大してきており、矮小化されているとは感じていない。

【委員】
 「ITER(イーター)-BA技術推進委員会」で緩やかな意見集約を行うということだが、事項によっては意見集約が難しく、本作業部会で決定すべき事項もあると考えられる。以前提案された図では意見集約の場の上に文科省があったが、資料1-2ではなくなっている。文科省と「ITER(イーター)-BA技術推進委員会」との関係を常に明らかにしておくべきではないか。

【事務局】
 文科省との関係については、資料1-2(参考)に記載されているとおりである。国として決めなければいけない事項を文科省の責任において決定する際に、技術的な事項を審議する必要がある場合には、本作業部会での審議をお願いすることが考えられる。また、フォーラムの場で意見が集約すれば、作業部会を開くまでもなく核融合開発室もしくは文部科学省の決定により、国の施策とするということもあり得る。

【委員】
 事項の決定には中立性を確保する必要があるが、核融合科学研究所もしくは核融合ネットワークと原子力機構が「ITER(イーター)-BA技術推進委員会」の事務局となることで中立性を確保しているということか。それとも、本作業部会が常置されることにより中立性を担保していくのか。

【事務局】
 本作業部会の常設化については、今後、本作業部会にお諮りすることになるが、事務局としては今後もITER(イーター)、幅広いアプローチを継続していくため、常設化したいと考えている。ただし、頻度については現在の3カ月に2回程度から、四半期に1回程度に減らすイメージを持っている。そのような常設の委員会がある一方、核融合エネルギーフォーラムで議論・意見集約を進めていき、意見がまとまらない場合には、本作業部会で改めてご議論いただくということになると考えている。
 また、「ITER(イーター)-BA技術推進委員会」の事務局は原子力機構と核融合科学研究所が連携して担当するが、委員会本体には、両者だけではなく幅広い核融合関係者の方に参画いただきたいと考えている。

【委員】
 ITER(イーター)や幅広いアプローチはトクマクを中心とした話だが、原型炉の開発にはヘリカルやレーザーも含まれ、核融合エネルギーフォーラムの中での議論を超える話になるため、その点は慎重に考えてほしい。

【事務局】
 「ITER(イーター)-BA技術推進委員会」はITER(イーター)と幅広いアプローチについての議論の集約の場であるということに留意したい。また、核融合エネルギーフォーラムについては、従来よりクラスター活動において様々な議論が行われてきているが、ITER(イーター)、幅広いアプローチに限らず、広い議論が可能であると同時に、日本全体の戦略を議論する場とはならないと考える。国の戦略については原子力委員会の方針があるため、例えば炉型戦略につながるような議論を行うことはないと思われる。
 議論の内容として考えられることは、炉型戦略よりも、例えば産業界の関心である、どの技術分野を今後強化するのかという点についてのロードマップなどになるのではないか。

【委員】
 炉型戦略については既に原子力委員会で議論されており、かつ、幅広いアプローチは、原型炉に向けてITER(イーター)以外に必要な要素を研究するという点において、トカマク型における原型炉に向けた研究開発というのはある程度まで行う必要がある。ただ、原子力委員会の報告書にあるように、ヘリカルやレーザーが独立した研究開発を進展させることを妨げるものではなく、各方式が連携しながら進めていくものと思われる。その意味では、「ITER(イーター)-BA技術推進委員会」では原型炉の議論は行わないということではなく、幅広いアプローチについて、トカマクに限った形で、原型炉に向けたITER(イーター)を補完する研究開発についての議論を行うことを認めるべきではないか。

【委員】
 トカマクについての閉じた議論をすることは問題ないが、原型炉の話になると、核融合全体の動きや研究開発の状況を踏まえる必要があるため、常に外に対する目が開かれた運営をすべきである。

【主査代理】
 ITER(イーター)、BAの協力の拠点としてオープンな議論が行われるよう、特に原子力機構の松田委員にはこれまでの様々な意見を踏まえて、これに対応できるような運営をお願いしたい。また、大学における研究者コミュニティの中核機関としての核融合研も連携事務局であり、本島委員にも十分のその点を踏まえた運営をお願いしたい。

(2)今後の共同利用・共同研究について

  1. 松田委員より、資料2-1に基づき、第3回資料3-2の訂正部分について説明があった。
  2. 菊池委員より、資料2-2に基づき、JT-60における共同研究について説明があった。
  3. 板倉核融合開発室長より、資料2-3に基づき、共同研究の検討に当たっての視点について説明があった。

 審議の主な内容は以下の通り。

【委員】
 1点目に、JT-60の共同企画や共同研究がITER(イーター)に対してどのような貢献をするのかという視点は考慮されているのか。2点目に、今後、ITER(イーター)・BA計画の共同研究とJT-60、あるいはSA計画の共同研究は全くの独立ではなくなるのか。3点目に、原子力機構のITER(イーター)をミッションとして活動するグループから、JT-60に対して研究テーマが持ち込まれるようなことはあるのか。

【菊池委員】
 ITER(イーター)への貢献については、JT-60もJT-60SAも当然まずITER(イーター)への貢献という視点がある。例えば、ITPAのITER(イーター)のための共同実験を、実際にJT-60の実験の中に組み込んでいる。
 この点については、JT-60のトーラス実験専門部会ではあまり議論してこなかったが、今回、新しく共同企画委員会を立ち上げ、ITER(イーター)への貢献としてJT-60の実験からどのような発信をしていくべきかということを検討することになっている。
 ただし、共同企画委員会では、かなり具体的な実験の話まで含めて検討する必要があるが、検討の内容については、「ITER(イーター)-BA技術推進委員会」においてどの程度詳細な検討を行うかで決まることとなる。
 ITER(イーター)をミッションとする活動については、ITER(イーター)プロジェクトユニットという組織が、主に建設の調達等を担当している。一方、ITER(イーター)から来る物理タスクについてはJT-60を担当する先進プラズマ研究開発ユニットで受ける場合もあり、また、ITER(イーター)の安全性について、例えばJFT2Mでディスラプションの実験をしてほしいという要望を受け、実験を行う場合もある。ただ、現状では、大学との共同研究に重点を置いているとも言えるため、機構の中のユニット間の連携を更に強める必要があると考えている。

【委員】
 ITER(イーター)関連のテーマについては、機構内外が連携してJT-60の共同企画や共同研究を考えてもよいのではないか。例えば、JETの様々なプロジェクトのうち、大学から持ち込まれた共同研究のプロジェクトは、必ずITER(イーター)関連であるか否かという視点で審査されており、JT-60についてもあり得るのではないか。

【松田委員】
 ITER(イーター)からのタスク要請については、ITER(イーター)の物理チームから各国に対して要請が来るという流れが基本になる。原子力機構内でどのようにコミュニケーションするかというのは、応用の話になる。

【菊池委員】
 この数年、大学コミュニティと議論してきた中で一番感じていることは、原子力機構は比較的ITER(イーター)志向の実験を希望しているのに対し、大学コミュニティはITER(イーター)の先の実験を行うべきという意見が多いということである。しかし、実際に実験が進むにつれ、ITER(イーター)関連の実験でも非常に重要な研究内容があるという理解が深まってきた。

【委員】
 共同研究の予算の規模はどのくらいなのか。

【菊池委員】
 共同研究の予算は旅費のみであり、500万円程度である。今後は共同研究経費の拡大が非常に重要だが、原子力機構の予算の他に、核融合分野の競争的資金が作られれば、より幅広い展開が可能と考える。

【委員】
 大学共同利用機関の立場からコメントする。大学共同利用機関の目的は、ビッグからスモールまでを含むボトムアップ手法に基づく学術研究をベースとした、真理や基本原理の発見である。大学共同利用機関であるため、共同利用・共同研究はその存在意義にかかわる事柄であり、予算については、昨年度は運営費交付金のうち約68パーセントを共同研究経費として計上しており、幅広い展開が可能な制度設計となっている。
 これに対して、原子力機構は何のために共同研究を行うのかという点を明確にする良い機会ではないか。ITER(イーター)という非常に大きなミッションがあり、また、開発的な要素が大きい原子力機構において、共同研究は法人の取り組みとして評価されるのか、また、評価されにくい場合には、大学や大学共同利用機関がどのように応援すべきかを確認する必要がある。

【松田委員】
 原子力機構の基本はミッション研究であり、そのミッションを達成するための視点が重要である。共同研究については、以前は原子力機構の研究者が主体になり、大学の研究者が若干名参加するという形で行われていたが、近年は共同で研究した方がよい成果が出るということから、現在のスタイルになったものである。ただし、課題を選定する際、原子力機構に託されたミッションを遂行するために適切かどうかが大きな判断基準の1つになる。
 また、核融合研究は長期的に進める分野であることから、人材育成という観点も重要である。人材は大学から育つため、大学と共同で研究していくことが、ひいてはミッション研究にとっても重要であるという点が、2つ目の大きな柱である。

【科学官】
 共同研究の中で特にITER(イーター)・BA計画に係る部分については、ITER(イーター)にいかに資するのかという評価軸(縦糸)と、大学の研究の多様性(横糸)という評価軸がある。この縦糸と横糸の交点をいかに探るかという点が難しい部分である。ITER(イーター)計画等が動く中で、大学の足腰が弱くならないよう行政にも配慮を求めたい。
 ミッションのための共同研究を行う際には、大学に対していかなる知を求めているのかを明確にすると、縦糸と横糸の交点を探ることにつながると考える。

【菊池委員】
 原子力機構の核融合研究開発部門が特に共同研究に責任を持っているが、原子力機構の努力だけでは足りず、制度設計の整備が予算の確保につながるため、国の総意として競争的資金や共同研究の研究費が必要であるということについて応援してもらえれば、原子力機構や文科省核融合開発室も連携して予算の獲得に向けた努力が可能となる。
 また、トカマクの複雑性は、今まで観測されなかった様々な現象が出てくるため、その中には大学へ要素還元できるものがあると考えている。

【委員】
 「検討に当たっての視点」で、「世界(特にアジア)において」とあるが、なぜアジアなのか。次回お答えいただきたい。

(3)ITER(イーター)計画におけるテストブランケットについて

  1. 田中委員、原子力機構核融合エネルギー工学研究開発ユニットの高津ユニット長より、資料3-1及び参考資料4に基づき、わが国のブランケット開発のこれまでの方針と現状について説明があった。
  2. 田中委員より、資料3-2に基づき、わが国のブランケット開発に関する今後の研究開発の進め方について説明があった。

 審議の主な内容は以下の通り。

【委員】
 大学では、従来、日米協力による基礎的な材料開発や工学の研究が進められ、現在は様々な要素技術を統合して、工学としてまとめ上げるという方向に動いている。ブランケット概念では、原子力機構の固体増殖/水冷却方式でない部分の先進的な部分の開発を行うことになっている。特に固体増殖のヘリウム冷却、液体増殖という概念で、要素技術も含めて幅広く行われている状況である。

【委員】
 固体増殖については原子力機構だけではなく、大学の研究者が固体増殖に関連して学術的部分について関心を持っている。

【委員】 JUPITER計画をはじめとして、大学の研究者は通常の液体流動等の理論的な面、熱流動も含めて、活発に幅広い研究活動を行っており、核融合の工学ネットワークの中のアクティビティとなっている。既に決定しているブランケット、ポートは原子力機構の責任において進められるが、もう1つぐらい可能性があるという話がある。
 ただし、1つ100億円程度の経費がかかるため、大学が工夫をしてコストを下げることが可能になると思われ、核融合ネットワークからも知恵を出すことができる。

【委員】
 産業界としては開発に見合った適切な予算が確保され、同時に将来に向けた技術を保持していくという点に大きな関心があり、常に多額な予算を確保してほしいということではない。今後、産業界も議論の中に参加させていただきたい。

【主査】
 大学側として、ブランケットの研究開発に関してどのような提案を出していくのかについては、大学における核融合研究の中核機関である核融合研が核融合ネットワークで議論していただくなどして意見集約をお願いしたい。その上で、次回、本島委員からその結果をご報告願いたい。

【委員】
 先進ブランケットに関する議論は、以前より核融合研のネットワークの中で系統的に行ってきている。それとアドホック・グループやITER(イーター)のTBMの活動に結びつけるための議論は核融合フォーラムの中で行われている。主案に関しては原子力機構が提案し、大学側は原子力機構をサポートするという体制になっている。したがって、今後のブランケット研究開発の進め方に関する提案については、核融合フォーラムも協力して検討することがいい。

6.今後の日程等

 事務局より、第5回の核融合研究作業部会は12月26日(火曜日)午後2時から5時に開催する旨の連絡があった。

-了-

お問合せ先

研究開発局原子力計画課核融合開発室

(研究開発局原子力計画課核融合開発室)