安全・安心科学技術プロジェクト(テロ対策)平成21年度採択課題 事後評価結果

平成24年7月12日
科学技術・学術審議会
研究計画評価分科会
安全・安心科学技術委員会

●大阪大学「NIR容器内液体爆発物検知技術の実用化」

1.成果について 

(1)総合

ガラス、プラスチックボトルに入れられた液体物について、近赤外線吸収スペクトルを用い内容物の同定を行うシステムにより、短時間に開封することなく危険物を判定できる装置が完成した。製品仕様、基礎分光データ、判別式など実用化に必要な項目をバランス良く開発できており、期待される成果が得られている。
開発にあたっては、継続的に技術改善が加えられ、インターラクタンス方式、透過測定方式の併用や、ワインボトルへの対応など機能拡張が進んだ事は評価できる。
また、国内の実証試験が行われ、誤検知率は実用化レベルに達している。今後、欧州民間航空会議(ECAC)や米国運輸保安研究所(TSL)の評価試験の更なる推進を期待したい。

 

<総合評価  B  >

 ※指標の凡例 A.期待以上の成果が得られた    B.期待される成果が得られた
 C.一部で期待を下回る成果となった D.総じて期待を下回る成果となった

(2)個別

1.ミッションステートメントに対する達成度について
「未開封容器にはいった液体物の内容物を数秒以内に検査する装置を開発し、液体爆発物特に過酸化水素水など危険物の濃度を%オーダーで検出する。早期の実用化をめざし、空港などでの実証試験の実施を踏まえて、ユーザの意見を取り入れた使いやすい実用的に配備できる完成度を目標とする」としたミッションステートメントは十分に達成している。

2.課題全体の成果について
開発された装置は、透明、半透明の容器について成分を同定できるものとなっており、スペクトルを解析することにより成分および濃度まで推定可能とした点は優れている。
米国運輸保安局(TSA)ですでに認められている誘電率・赤外吸収法、レーザーラマン法と比較しても、原理的にはそれ以上の性能を達成したと認められる。
検査実務者の使い勝手や処理能力共に実用性を満たしており、多様な容器に対応できるように丹念な試験を積み重ねたことは評価できる。
また、コスト的にも比較的廉価な装置開発が可能と考えられる。

3.実施体制・研究計画について
果実の糖度検査で類似装置を有するクボタと新原理・基礎データ・判別式開発を得意とする大阪大学の組み合わせはすばらしく、機関間の連携も効果的で、目標達成に向けた計画と研究・開発も適切であった。
研究運営は、積極的に取り組まれており、研究とその応用を進展させ、成果として製品レベルの装置まで開発できたと認められる。
一方、開発に併せた国内の実証試験は適切に行われたが、国外機関での評価の開始が遅かったのは残念である。

4.成果の社会実装に向けた活動と見通しについて
社会実装に向けては、最大限の努力がなされ、国内外を含めて積極的に動かれたと認められる。しかしながら、実際に空港等で適用するかどうかは、それぞれの国で方針も異なり、製品の必要仕様が必ずしも一定しておらず難しい問題を抱えていることも明らかとなったが、今回の研究開発とは切り離して考えるべきである。今後、欧米の審査機関に継続的に働きかけることが望まれる。

5.研究成果の発表状況について
論文発表、学会発表、特許出願、関連分野への情報発信など、基本的には適切に行われている。さらには、開発した装置の社会実装に向け、プロトタイプ紹介に繋がる効果的な対外への情報発信が望まれる。また、影響力が大きいインパクトファクターの高い論文への発表も望まれる。

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